(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】センサデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01N24/00 P
G01N24/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538176
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022086752
(87)【国際公開番号】W WO2023117974
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514233369
【氏名又は名称】エレメント シックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】コラール ピエール-オリヴィエ フランソワ マルク
(72)【発明者】
【氏名】エドモンズ アンドリュー マーク
(72)【発明者】
【氏名】マーカム マシュー リー
(57)【要約】
第1の検知表面積及び第2の検知表面積を含むセンサデバイス。第1の検知表面積及び第2の検知表面積は、ダイヤモンド材料上に位置する。第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、スピン欠陥はダイヤモンド材料内に存在する。バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源、伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源、及び検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器も提供する。第1及び第2の検知表面積は、異なる検知目的のために最適化される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデバイスであって、
第1の検知表面積と、
第2の検知表面積と、
を備え、
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積はダイヤモンド材料上に位置し、
前記第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記センサデバイスは、
バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源と、
伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源と、
前記検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器と、
をさらに備え、
前記第1及び第2の検知表面積は、異なる検知目的のために最適化される、
ことを特徴とするセンサデバイス。
【請求項2】
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積は、単一のダイヤモンド材料の表面上に位置する、
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記第1の検知表面積は、第1のダイヤモンド材料の表面上に位置し、前記第2の検知表面積は、第2のダイヤモンド材料の表面上に位置する、
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した単一の窒素空孔中心を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記ダイヤモンド材料は、化学気相成長(CVD)ダイヤモンド材料、天然ダイヤモンド、及び高圧高温(HPHT)ダイヤモンド材料のいずれかを含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、前記第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なる、
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかは表面パターンを含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかは、電気接点を形成する金属コーティングを含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記検知目的は、核磁気共鳴、磁気測定、及び高周波スペクトル分析のいずれかから選択される、
請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかは、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルと接触する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項12】
前記第1及び第2の検知面積のいずれかは、5000μm以下、1000μm以下、100μm以下、50μm以下、10μm以下、及び1μm以下から選択される最大線形寸法を有する、
請求項1から11のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項13】
前記スピン欠陥を制御するように構成されたマイクロ波源をさらに備える、
請求項1から12のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項14】
センサデバイスを形成する方法であって、
第1の検知表面積を設けることと、
第2の検知表面積を設けることと、
を含み、前記第1及び第2の検知表面積はダイヤモンド材料上に位置し、前記第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第1及び第2の検知表面積は異なる検知目的のために最適化され、前記方法は、
バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源を設けることと、
伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源を設けることと、
前記検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器を設けることと、
をさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積の両方を単一のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の検知表面積を第1のダイヤモンド材料の表面上に設け、前記第2の検知表面積を第2のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される、
請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、前記第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なる、
請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥は、前記ダイヤモンドを成長中にドープすること、イオン注入、前記ダイヤモンド材料をアニール処理すること、及び前記ダイヤモンド材料に放射線を照射することのいずれかによって設けられる、
請求項14から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかに表面パターンを設けることをさらに含む、
請求項14から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかに金属コーティングを施して電気接点を形成することをさらに含む、
請求項14から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から13のいずれか1項に記載のセンサデバイスの使用方法であって、
前記第1及び第2の検知表面積が分析すべき物質に近接するようにセンサデバイスを配置することと、
前記第1の少なくとも1つのスピン欠陥から第1の測定値を取得することと、
前記第2の少なくとも1つのスピン欠陥から第2の測定値を取得することと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイス、特にダイヤモンド材料から形成されたセンサデバイスの分野に関し、このようなセンサデバイスを形成して使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
合成ダイヤモンド材料内の点欠陥、特に量子スピン欠陥及び/又は光学活性欠陥を、例えば発光タグ、磁力計、核磁気共鳴(NMR)及び電子スピン共鳴(ESR)装置などのスピン共鳴装置、磁気共鳴イメージング(MRI)のためのスピン共鳴イメージングデバイス、量子通信及び量子計算などの量子情報処理装置、磁気通信装置、及びジャイロスコープを含む様々なイメージング、センシング及び処理用途で使用することが提案されている。
【0003】
特定の欠陥は、センシング又は量子処理用途にとりわけ有用であることが分かっている。例えば、合成ダイヤモンド材料内の負に帯電した窒素空孔欠陥(nitrogen-vacancy defect:NV-)は、以下を含む複数の望ましい特徴を有しているため、有用な量子スピン欠陥として多くの関心を集めている。
(i)その電子スピン状態は、高い忠実度でコヒーレントに操作することができ、極めて長いコヒーレンス時間を有する(これは、横緩和時間(transverse relaxation time)T2及び/又はT2*を使用して定量化し、比較することができる)。
(ii)その電子構造は、欠陥がその電子基底状態(electronic ground state)に光励起(optically pumped)され、極低温でなくてもこのような欠陥が特定の電子スピン状態に置かれることを可能にする。この特徴は、小型化が望ましい特定の用途に対する高価で大型の極低温冷却装置の要件を排除することができる。さらに、欠陥は、全てが同じスピン状態を有する光子の供給源として機能することができる。
(iii)その電子構造は、放出電子スピン状態及び非放出電子スピン状態を含み、これによって光子を通じた欠陥の電子、スピン状態の読み出しを可能にする。この特徴は、磁気測定(magnetometry)、スピン共鳴分光(spin resonance spectroscopy)及びイメージングなどのセンシング用途で使用される合成ダイヤモンド材料から情報を読み出すのに好都合である。さらに、この特徴は、NV欠陥を長距離量子通信及びスケーラブルな量子計算のための量子ビットとして使用するための重要要素(key ingredient)でもある。このような結果から、NV-欠陥は固体量子情報処理(QIP)の有力な候補となっている。
【0004】
ダイヤモンドのNV-欠陥は、炭素空孔に隣接する置換窒素原子から成る。その2つの不対電子(unpaired electrons)は、電子基底状態(3A)でスピン三重項(spin triplet)を形成し、縮退したms=±1サブ準位(sublevels)はms=0準位から2.87GHz離れている。NV-欠陥の電子構造は、ms=0サブ準位が光励起された時に高い蛍光率を示すようなものである。対照的に、欠陥がms=±1準位で励起されると、非放射性の一重項状態(singlet state)(1A)にクロスオーバーした後にms=0準位に緩和する確率が高くなる。この結果、スピン状態を光学的に読み取ることができ、ms=0の状態は「明るく」、ms=±1の状態は「暗い」。外部磁場又は歪み磁場が印加されると、スピンサブ準位ms=±1の縮退が解除され、磁場の場合にはこれがゼーマン相互作用(Zeeman interaction)を介して行われる。これにより、印加された磁場/歪磁場の大きさ及びその方向に依存して共鳴線が分裂するようになる。この依存性は、マイクロ波(MW)を使用して共鳴スピン遷移(resonant spin transitions)をプローブし、光学的に検出された磁気共鳴(ODMR)分光法を使用して印加磁場の大きさ及び任意に方向を測定することにより、磁気測定に使用することができる。
【0005】
合成ダイヤモンド材料内のNV-欠陥は、以下を含む複数の異なる方法で形成することができる。
(i)合成ダイヤモンド材料の成長中に窒素原子及び空孔が窒素空孔対として結晶格子に取り込まれる成長中の形成、
(ii)結晶格子を通じて空孔欠陥が移動して天然の単一置換窒素欠陥とペアになる温度(800℃前後)で材料を成長後アニール処理することによる、成長過程中に取り込まれた天然の窒素及び空孔欠陥からのダイヤモンド材料合成後の形成、
(iii)合成ダイヤモンド材料に放射線を照射して空孔欠陥を導入し、その後に結晶格子を通じて空孔欠陥が移動して天然の単一置換窒素欠陥とペアになる温度で材料をアニール処理することによる、成長過程中に取り込まれた天然の窒素欠陥からのダイヤモンド材料合成後の形成、
(iv)ダイヤモンド材料合成後に合成ダイヤモンド材料に窒素欠陥を注入し、その後に結晶格子を通じて天然の空孔欠陥が移動して注入された単一置換窒素欠陥とペアになる温度で材料をアニール処理することによる、ダイヤモンド材料合成後の形成、及び、
(v)合成ダイヤモンド材料に放射線を照射して空孔欠陥を導入し、照射前又は照射後に合成ダイヤモンド材料に窒素欠陥を注入し、結晶格子を通じて天然の空孔欠陥が移動して注入された単一置換窒素欠陥とペアになる温度で材料をアニール処理することによる、ダイヤモンド材料合成後の形成。
【0006】
先行技術では、磁力測定などの用途のための低窒素含有単結晶化学気相成長(CVD)ダイヤモンド材料を開示する国際公開第2010/010352号及び国際公開第2010/010344号、並びに磁力測定などの用途のための照射及びアニール処理を受けた単結晶CVDダイヤモンド材料を開示する国際公開第2010/149775号などのように、様々な異なるタイプの磁力測定用途で使用される様々な異なるタイプのダイヤモンド材料が開示されている。
【0007】
ODMRの代替案として、磁気共鳴の光電検出(Photoelectric Detection of Magnetic Resonance:PDMR)が提案されている。PDMRでは、励起されたスピン中心によって発生する電荷キャリアの検出に基づいて、ダイヤモンド格子中のスピン欠陥のスピン状態を光電的に直接測定することができる。この技術は、Bourgeois,E.他著、「ダイヤモンド中の窒素空孔中心の電子スピン共鳴の光電検出(Photoelectric detection of electron spin resonance of nitrogen-vacancy centres in diamond)」、Nature Communications、6、2015年、及び米国特許第10,274,551号に記載されている。
【0008】
PDMRは、磁気共鳴時のスピン欠陥光電流強度(spin defect photocurrent intensity)の変化を利用する。PDMRの利点は、電子システムとの統合がODMRよりも容易であり、再結合速度が速いことによって検出率が向上し、光電流の2次出力依存性によって解像度が向上する点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/010352号
【特許文献2】国際公開第2010/010344号
【特許文献3】国際公開第2010/149775号
【特許文献4】米国特許第10,274,551号明細書
【特許文献5】国際公開第2020/201211号
【特許文献6】国際公開第2001/096634号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bourgeois,E.他著、「ダイヤモンド中の窒素欠陥中心の電子スピン共鳴の光電検出(Photoelectric detection of electron spin resonance of nitrogen-vacancy centres in diamond)」、Nature Communications、6、2015年
【非特許文献2】Bishop他著、「電子ビームを用いたダイヤモンドの決定論的ナノパターニング(Deterministic nanopatterning of diamond using electron beams)」、ACS Nano 2018、12、3、2873-2882
【非特許文献3】Toros他著、「誘導結合プラズマによる単一結晶ダイヤモンドの反応性イオンエッチング:最新技術及びレシピカタログ(Reactive ion etching of single crystal diamond by inductively coupled plasma:State of the art and catalog of recipes)」、Diamond and Related Materials 108、107839、10.1016/j.diamond.2020.107839
【非特許文献4】Wannemacher他著、「サブミクロン解像度でのダイヤモンドの蛍光色中心の生成及び検出(Generation and detection of fluorescent color centers in diamond with submicron resolution)」、App Phys Lett、75(20)、3096-3098
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ダイヤモンドセンサの独立したNV含有領域又はダイヤモンド内の単一スピン欠陥を効率的にアドレス指定する能力が制限されるというODMRに関連する問題に対処するダイヤモンドセンサデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、第1の検知表面積(sensing surface area)及び第2の検知表面積を含むセンサデバイスが提供される。第1の検知表面積及び第2の検知表面積は、ダイヤモンド材料上に位置する。第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、スピン欠陥はダイヤモンド材料内に存在する。バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源、伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源、及び検知表面積の少なくとも1つに近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器も提供する。第1及び第2の検知表面積は、異なる検知目的のために最適化される。
【0013】
オプションとして、第1の検知表面積及び第2の検知表面積は、単一のダイヤモンド材料の表面上に位置する。別のオプションとして、第1の検知面積は第1のダイヤモンド材料の表面上に位置し、第2の検知面積は第2のダイヤモンド材料の表面上に位置する。
【0014】
任意に、第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される。さらなるオプションとして、第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した単一の窒素空孔中心を含む。
【0015】
ダイヤモンド材料は、化学気相成長(CVD)ダイヤモンド材料、天然ダイヤモンド、及び高圧高温(HPHT)ダイヤモンド材料のいずれかを任意に含む。
【0016】
第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と任意に異なる。
【0017】
オプションとして、第1及び第2の検知表面積のいずれかは表面パターンを含む。
【0018】
オプションとして、第1及び第2の検知表面積のいずれかは、電気接点を形成する金属コーティングを含む。
【0019】
オプションとして、検知目的は、核磁気共鳴、磁力測定、及び高周波スペクトル分析のいずれかから選択される。
【0020】
オプションとして、第1及び第2の検知表面積のいずれかは、少なくとも1つのマイクロ流体チャンネルと接触する。
【0021】
オプションとして、第1及び第2の検知面積のいずれかは、5000μm以下、1000μm以下、100μm以下、50μm以下、10μm以下、及び1μm以下から選択される最大線形寸法を有する。
【0022】
オプションとして、センサデバイスは、スピン欠陥を制御するように構成されたマイクロ波源をさらに含む。
【0023】
第2の態様によれば、センサデバイスを形成する方法であって、第1の検知表面積を設けることと、第2の検知表面積を設けることとを含み、第1及び第2の検知表面積がダイヤモンド材料上に位置し、第1の検知表面積が、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、第2の検知表面積が、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在する、方法が提供される。方法は、バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源を設けることと、伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源を設けることと、検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器を設けることと、をさらに含む。第1及び第2の検知表面積は、異なる検知目的のために最適化される。
【0024】
オプションとして、方法は、第1の検知表面積及び第2の検知表面積の両方を単一のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む。別のオプションとして、方法は、第1の検知表面積を第1のダイヤモンド材料の表面上に設け、第2の検知表面積を第2のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む。
【0025】
オプションとして、第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される。
【0026】
任意に、第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なる。
【0027】
第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥は、ダイヤモンドを成長中にドープすること、イオン注入、ダイヤモンド材料をアニール処理すること、及びダイヤモンド材料に放射線を照射することのいずれかによって任意に設けられる。
【0028】
方法は、第1及び第2の検知表面積のいずれかに表面パターンを設けることを任意にさらに含む。
【0029】
オプションとして、方法は、第1及び第2の検知表面積のいずれかに金属コーティングを施して電気接点を形成することをさらに含む。
【0030】
第3の態様によれば、第1の態様において上述したようなセンサデバイスの使用方法であって、第1及び第2の検知表面積が分析すべき物質に近接するようにセンサデバイスを配置することと、第1の少なくとも1つのスピン欠陥から第1の測定値を取得することと、第2の少なくとも1つのスピン欠陥から第2の測定値を取得することと、を含む方法が提供される。
【0031】
PDMRは、電子回路とのインターフェイスをより単純かつ小型にすることができる。PDMRを上述したセンサデバイスと組み合わせることで、ダイヤモンドセンサデバイスの異なる領域の効率的かつ正確な個別アドレス指定が可能になる。この結果、単一のセンサを使用して単一の試料上で異なるタイプの分析を実行できるようになる。
【0032】
以下、添付図面を参照しながら非限定的な実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】例示的なセンサデバイスの概略的側面断面図である。
【
図2】第2の例示的なセンサデバイスの概略的側面断面図である。
【
図3】第3の例示的なセンサデバイスの概略的側面断面図である。
【
図4】例示的なセンサデバイスの製造方法を示すフロー図である。
【
図5】さらなる例示的なセンサデバイスを概略的に示す図である。
【
図6】本明細書で説明するセンサデバイスの例示的な使用方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、少なくとも1つのスピン中心を含むダイヤモンドから形成されたセンサに言及する。便宜上、本明細書では、例示的なスピン中心が負に帯電した窒素空孔中心(NV-)であることに言及する。しかしながら、ダイヤモンドには様々なスピン中心を形成できることが知られている。これらは、シリコン-空孔中心、スズ-空孔中心、ゲルマニウム-空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥を含む。当業者であれば、本明細書で説明する構造及び方法は、ダイヤモンドセンサで使用できるあらゆるタイプのスピン中心に適用されると理解するであろう。
【0035】
上述したように、ODMR測定に関連する複雑な光学装置は、ダイヤモンドセンサの独立したスピン欠陥含有領域及び単一のNV中心を効率的にアドレス指定する能力を制限する。PDMRは、電子回路とのインターフェイスをより単純かつ小型にすることができる。PDMRをパターニング法と組み合わせることで、異なるセンサ領域の効率的かつ正確なアドレス指定が可能になることが分かっている。これにより、単一のセンサデバイスを使用して単一の試料上で複数のタイプの分析を実行できるようになる。
【0036】
ダイヤモンドのNV中心は、磁気センシング、高周波(RF)センシング、及び量子情報処理(QIP)などの複数の異なる用途にとって有用であることが示されている。
【0037】
本発明者らは、センシングモードに最も適した電子機器と個別に相互作用する複数のセンシング領域を有するデバイスを開発した。これらの領域は、異なる試料、或いは異なる領域上に存在する又は異なる領域を通り抜ける試料に関する測定値を提供するように選択的に(別個に又は同時に)アドレス指定することができる。通常、センサの異なる領域は、NV中心などの異なる濃度のスピン欠陥を有することができ、これらの濃度は、異なる感度範囲、異なるセンシングモード(例えば、NMR、磁力測定、過分極磁力測定、及びRFスペクトル分析)に適合する。これに加えて又は代えて、センシングデバイスの異なる領域は、実行されるセンシングのタイプを最適化するように異なる表面パターニング又はコーティングを有することができる。
【0038】
図1に、センサデバイスを一例として示す。この例では、第1の検知表面積2及び第2の検知表面積3を有するダイヤモンドセンサデバイス1を提供する。第1の検知表面積2は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥4の相互作用可能距離内に存在し、第2の検知表面積3は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥5の相互作用可能距離内に存在する。第1の検知表面積2は、1つのタイプのセンシングのために最適化され、第2の検知表面積3は、異なるタイプのセンシングのために最適化される。
【0039】
図2には第2の例示的なセンサデバイス6を示しており、ここでは第1の検知面積7が、高濃度のNV中心を有するダイヤモンドの領域の上方に存在し、従って感度のために最適化されている。第2の検知面積8は、低濃度のNV中心8を有するダイヤモンドの領域の上方に存在し、従って高解像度センシングのために最適化されている。第3の検知面積9は、ナノNMR用途のための極低濃度のNV中心を有するダイヤモンドの領域の上方に存在する。使用時にはその上を流体10が流れ、PDMRを使用して各検知面積7、8、9を個別に照会(query)することにより、異なる検知面積7、8、9を有する同じダイヤモンドを使用して上記の異なるタイプのセンシングを液体試料に対して同時に実行することができる。このようなセンサデバイスは、例えばプロテオミクス(proteomics)のためのマイクロ流体チャンネルで使用することができ、第1の検知面積7は、小磁場を検出するために使用され、第2の検知面積8は、検出されたタンパク質のサイズ及び/又は数に関するより正確な情報を与えるために使用され、第3の検知面積9は、流れている液体10にナノNMRを実行するために使用される。
【0040】
図3には第3の例示的なセンサデバイス11を示しており、ここでは一定濃度のスピン欠陥を有するダイヤモンド材料の領域の上方に第1の検知面積12が存在し、第2の検知面積13が表面パターン又はコーティングを有する。例えば、ダイヤモンド表面は、400nmのピッチ及び3μmの深さを有するダイヤモンドナノグレーティングを使用することによってナノNMR能力を高めるようにパターン化することができる。例示的なパターニング技術は、Bishop他著、「電子ビームを用いたダイヤモンドの決定論的ナノパターニング(Deterministic nanopatterning of diamond using electron beams)」、ACS Nano 2018、12、3、2873-2882、及びToros他著、「誘導結合プラズマによる単一結晶ダイヤモンドの反応性イオンエッチング:最新技術及びレシピカタログ(Reactive ion etching of single crystal diamond by inductively coupled plasma:State of the art and catalog of recipes)」、Diamond and Related Materials 108、107839、10.1016/j.diamond.2020.107839に記載されている。このような技術は、異なる特定の形状の方が電極配置を最適化するために望ましいと考えられるにもかかわらずPDMR用途を目的とする際に使用することができる。
【0041】
例えば、必要な電気接点を形成するためにメタライゼーションなどのコーティングを使用する場合には、標準的なフォトリソグラフィ技術をサブミクロン解像度で使用することができる。Siyushev他著、「ダイヤモンドの単一窒素空孔中心の光電子イメージング及びコヒーレントなスピン状態読み出し(Photoelectrical imaging and coherent spin-state readout of single nitrogen-vacancy centers in diamond)」、Science 15 Feb 2019、728-731に記載されているように、例示的な電極標準パターンは櫛形電極である。
【0042】
各検知面積の寸法は、デバイスのサイズ及び必要なセンシングのタイプに依存する。典型的には、これらの検知面積は、ミリメートルオーダーの最大線形寸法(円形検知面積の場合には直径)を有するが、1000μm以下、100μm以下、50μm以下、10μm以下、及び1μm以下であることもできる。異なる表面パターニング又はメタライゼーション方法では、いずれもさらに小型の又は1μm前後の最小寸法が可能になる。測定すべき試料(例えば、マイクロ流体チャンネル内の液体試料)を考慮すると、検知面積は、ナノNMR用途では数μm程の小さなものであり、バイオマーカーの広視野検出でははるかに大きな領域(最大mm)であることができる。
【0043】
図4は、センサデバイスを形成するステップを示すフロー図である。以下の付番は
図4の付番に対応する。
S1.ダイヤモンド材料上に第1の検知表面積を設ける。
S2.ダイヤモンド材料上に第2の検知表面積を設ける。ダイヤモンド材料は、第1の検知表面積が設けられるものと同じダイヤモンド材料であることができる。第1及び第2の検知表面積は、第1及び第2の検知表面積の各々に接触又は近接する物質の特性を検知するためにスピン欠陥を使用できるように、いずれもそれぞれのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在する。例示的なスピン欠陥は、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥を含む。第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なることができる。さらに、第1又は第2の検知表面積のいずれかにおけるダイヤモンド材料の表面に表面パターンを適用することができ、電気接点を形成するために金属化コーティングを適用することができる。
S3.バイアス磁場を印加するように構成された磁気励起源を設け、スピン欠陥内に光電効果を誘発するように光源を設ける。
S4.検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器を設ける。
【0044】
次に、国際公開第2020/201211号に記載されているプロセスを使用して、異なる濃度のスピン欠陥に近接する異なる検知面積を含むダイヤモンドセンサを製造する例示的な方法を実行することができる。合成中に、異なる窒素濃度の層を生成するように窒素ドーピングレベルを制御する。その後に基板を除去し、残りの材料を垂直にスライスする。照射及びアニール処理後に、国際公開第2001/096634号に記載されるような低不純物層でプレートを過成長(overgrown)させる。例えば、ダイヤモンドセンサデバイス1は、窒素不純物が極めて少ないダイヤモンドから成る下層を有する。第1の検知表面積2は、50ppbの窒素濃度を有するダイヤモンド材料の層上に存在し、第2の検知表面積3は、5ppmの窒素濃度を有するダイヤモンド材料の層上に存在する。
【0045】
このような構造は、異なる窒素濃度を有する2つの層を成長させた後に、両窒素含有層上に低窒素層を過成長させることによって形成することができる。或いは、ダイヤモンドの低窒素層を設け、高窒素濃度の面積を過成長させる前にマスクを適用することもできる。この方法で相当に複雑な構造を構築することができる。
【0046】
或いは、国際公開第2001/096634号に記載されるような低窒素のダイヤモンド材料を提供することもできる。選択した面積をマスキングすることにより、イオン注入を使用して、例えば照射及びアニール処理によって処理できるスピン欠陥前駆体欠陥(spin defects precursor defects)を注入してNV中心などのスピン欠陥を形成することができる。イオン注入は、Wannemacher他著、「サブミクロン解像度でのダイヤモンドの蛍光色中心の生成及び検出(Generation and detection of fluorescent color centers in diamond with submicron resolution)」、App Phys Lett、75(20)、3096-3098に記載されている。
【0047】
図5に、
図1に示すセンサ1を検知対象の物質15に近接して配置したセンサデバイスを示す。センサ1に近接して磁気バイアス場16が配置され、ダイヤモンド物質中の1又は2以上のスピン欠陥に向けられた励起エネルギーを生成する。伝導帯内に電子を励起するために光源17を設ける。電流検出器18は、検知表面積のうちの少なくとも1つに近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成される。1又は2以上の光電検出器を設けることができる。重要な点は、1又は複数の光電検出器が、第1及び第2の検知面積の各々に近接するスピン欠陥を個別に照会できる点である。
【0048】
PDMRを使用して各検知表面積を個別に照会するには、各検知表面積に関連するスピン欠陥に近接して電極を配置しなければならない。Eビームリソグラフィ技術では、電極を表面上に高精度で付着(deposition)させることができる。これにより電極アレイを付着させて、1対の電極が単一のNV中心を選択的にアドレス指定できるようにすることができる。この技術の第1の利点は、各NVセンサの特性(配向、安定性)を素早く評価できるとともに、好適なNV中心のマップを素早く確立できる点である。第2の利点は、選択された独立した単一のNV中心を同時に操作できる点である。個別にアドレス指定できる単一のNV中心間の距離は、回折限界(diffraction limit)よりも良好な電極を製造するためのフォトリソグラフィ技術の解像度によって制限される。この技術は、単一のNV中心アレイを使用する用途の改善を可能にし、量子情報処理にとって特に興味深い。
【0049】
電極は、ダイヤモンド表面上に付着させる必要はない。PDMRは、ダイヤモンドの表面に配置された電極において電荷収集が発生するだけでなく、ダイヤモンドの本体内に導電性領域が設けられている場合に最適化することができる。このようにすると、電荷収集を最適化して収集される信号及び感度を向上させ、さらに多くのダイヤモンドを利用することができる。さらに、ダイヤモンドの個々のスピン中心を識別する(interrogated)ことができる。機能するには、スピン中心及び導電性領域を相互作用可能距離内に配置しなければならない。実際には、通常、このことは、スピン中心からの電荷キャリアが導電性領域に到達して検出されるために、スピン中心及び導電性領域が電荷キャリアのドリフト長内に存在することを意味する。5×104V cm-1の典型的な電場では、典型的な移動度及び再結合寿命を考慮すると、ダイヤモンド内の電荷キャリアのドリフト長の理論値は、窒素不純物濃度がppbの範囲内にある超高品質ダイヤモンドでの1メートル超から高欠陥ダイヤモンドでの20μm未満まで様々である。
【0050】
なお、
図5に示すデバイスは、2つの検知表面積を有する単一のダイヤモンド片を示すものである。第1の検知表面積が第1のダイヤモンド材料の表面に位置し、第2の検知表面積が第2のダイヤモンド材料の表面に位置するデバイスを形成することも可能である。
【0051】
次に、
図6に、上述したセンサデバイスを使用する例示的なステップを示すフロー図を示す。以下の付番は
図6の付番に対応する。
S5.少なくとも第1及び第2の検知面積を有するセンサデバイスを分析すべき物質に近接して配置する。上述したように、通常、第1及び第2の検知面積は異なる特性を検知するように最適化される。
S6.第1の検知面積に関連する第1の少なくとも1つのスピン欠陥から第1の測定値を取得する。
S7.第2の検知面積に関連する第2の少なくとも1つのスピン欠陥から第2の測定値を取得する。なお、第1及び第2の測定値は、PDMRシステムの能力及びセンシングの要件に応じて同時に又は連続して取得することができる。
【0052】
上記実施形態を参照しながら、添付の特許請求の範囲に定められる本発明を図示し説明した。しかしながら、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく形態及び詳細の様々な変更を行うことができ、また例示的な補償システムについて説明したが、温度によって誘発されるB磁場変動を補正する他のタイプの補償システムを使用することもできると理解するであろう。
【符号の説明】
【0053】
1 ダイヤモンドセンサデバイス
2 第1の検知表面積
3 第2の検知表面積
4 スピン欠陥
5 スピン欠陥
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデバイスであって、
第1の検知表面積と、
第2の検知表面積と、
を備え、
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積はダイヤモンド材料上に位置し、
前記第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記センサデバイスは、
バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源と、
スピン欠陥を励起して伝導帯内に電荷キャリアを
生成するように構成された光源と、
前記検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器と、
をさらに備え、
前記第1及び第2の検知表面積は、異なる検知目的のために最適化され
、
前記第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、前記第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なる、ことを特徴とするセンサデバイス。
【請求項2】
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積は、単一のダイヤモンド材料の表面上に位置する、
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記第1の検知表面積は、第1のダイヤモンド材料の表面上に位置し、前記第2の検知表面積は、第2のダイヤモンド材料の表面上に位置する、
請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される、
請求項
1に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかは表面パターンを含む、
請求項
1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかは、電気接点を形成する金属コーティングを含む、
請求項
1に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記検知目的は、核磁気共鳴、磁気測定、及び高周波スペクトル分析のいずれかから選択される、
請求項
1に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記スピン欠陥を制御するように構成されたマイクロ波源をさらに備える、
請求項
1に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
センサデバイスを形成する方法であって、
第1の検知表面積を設けることと、
第2の検知表面積を設けることと、
を含み、前記第1及び第2の検知表面積はダイヤモンド材料上に位置し、前記第1の検知表面積は、第1の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第2の検知表面積は、第2の少なくとも1つのスピン欠陥の相互作用可能距離内に存在し、前記第1及び第2の検知表面積は異なる検知目的のために最適化され、
前記第1の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度は、前記第2の検知表面積に近接するスピン欠陥の濃度と異なり、前記方法は、
バイアス磁場を提供するように構成された磁気励起源を設けることと、
伝導帯内に電荷キャリアを励起するように構成された光源を設けることと、
前記検知表面積の少なくとも一方に近接する1又は2以上のスピン欠陥から励起された電荷キャリアを検出するように構成された電流検出器を設けることと、
をさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1の検知表面積及び前記第2の検知表面積の両方を単一のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の検知表面積を第1のダイヤモンド材料の表面上に設け、前記第2の検知表面積を第2のダイヤモンド材料の表面上に設けることを含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥のいずれかは、負に帯電した窒素空孔中心、シリコン空孔中心、スズ空孔中心、ゲルマニウム空孔中心、ニッケル関連欠陥、及びクロム関連欠陥のいずれかから選択される、
請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の少なくとも1つのスピン欠陥は、前記ダイヤモンドを成長中にドープすること、イオン注入、前記ダイヤモンド材料をアニール処理すること、及び前記ダイヤモンド材料に放射線を照射することのいずれかによって設けられる、
請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の検知表面積のいずれかに表面パターン
及び金属コーティングのいずれかを設けることをさらに含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
請求項
1に記載のセンサデバイスの使用方法であって、
前記第1及び第2の検知表面積が分析すべき物質に近接するようにセンサデバイスを配置することと、
前記第1の少なくとも1つのスピン欠陥から第1の測定値を取得することと、
前記第2の少なくとも1つのスピン欠陥から第2の測定値を取得することと、
を含むことを特徴とする方法。
【国際調査報告】