(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ポリメリックカルボジイミド、その生産プロセス、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 18/02 20060101AFI20241204BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241204BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241204BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08G18/02 050
C08G18/76
C08L101/00
C08L79/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538191
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022086838
(87)【国際公開番号】W WO2023118036
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002AA012
4J002AA022
4J002BF032
4J002CF032
4J002CF062
4J002CF072
4J002CF182
4J002CF192
4J002CK022
4J002CM051
4J002FD031
4J002FD081
4J034AA05
4J034HA01
4J034HA04
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC71
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB03
4J034KD17
4J034KE02
4J034QB17
4J034RA05
4J034RA11
4J034RA17
(57)【要約】
本発明は、調製が単純且つ安全であり、高平均モル質量を有し、優れた加水分解保護を引き起こす新規なポリカルボジイミド、並びにその調製プロセス及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリカルボジイミド
【化1】
(式中、
基Rは、同一であっても異なっていてもよく、NCN-R
I(ここで、基R
Iは、C
1~C
22-アルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
12-シクロアルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C6~C
18-アリール、又は未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
18-アラルキルを表す)から選択され、
R
1、R
2、及びR
3は、各場合とも互いに同様に又は独立して、メチル、エチル、i-プロピル又はn-プロピル、n-ブチル又はi-ブチル又はt-ブチルを表し、
nは、20~500、好ましくは30~100、とくに好ましくは30~50であり、
ただし、平均モル質量Mwは10,000超であり、30,000g/mol以上のモル質量を有するポリカルボジイミドの割合は20重量%未満である)。
【請求項2】
前記平均モル質量が、10,000g/mol~20,000g/mol、好ましくは12,000g/mol~18,000g/mol、とくに好ましくは14,000g/mol~16,000g/molである、請求項1に記載のポリカルボジイミド。
【請求項3】
30,000g/mol以上のモル質量を有するポリカルボジイミドの前記割合が、15重量%未満、好ましくは12重量%未満である、請求項1又は2に記載のポリカルボジイミド。
【請求項4】
R
Iが、C
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
12-アリール、好ましくはC
1~C
4-アルキル-置換C
6~C
12-アリール、とくに好ましくはモノ-~トリ-C
1~C
4-アルキル-置換C
6-アリール、なかでもとくに好ましくはジ-及び/又はトリイソプロピルフェニルを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド。
【請求項5】
R
1、R
2、及びR
3が、i-プロピルを表し、R
Iが、ジイソプロピルフェニル及び/又はトリイソプロピルフェニルを表す、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド。
【請求項6】
基R対式(I)の化合物基の質量比が、1:100~1:20の範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド。
【請求項7】
前記カルボジイミド含有率が、14~17重量%、好ましくは14~16重量%、とくに好ましくは14~15重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド。
【請求項8】
式(I)
【化2】
のポリカルボジイミドの生産プロセスであって、
式(II)
【化3】
の芳香族ジイソシアネート及び式R
I-NCOのモノイソシアネート(式中、基Rは、同一であっても異なっていてもよく、NCN-R
I(式中、基R
Iは、C
1~C
22-アルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
12-シクロアルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
18-アリール、又は未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
18-アラルキルを表す)から選択され、
R
1、R
2、及びR
3は、各場合とも互いに同様に又は独立して、メチル、エチル、i-プロピル又はn-プロピル、n-ブチル又はi-ブチル又はt-ブチルを表し、
nは、20~500、好ましくは30~100、とくに好ましくは30~50であり、二酸化炭素を脱離する触媒及び任意に溶媒の存在下、80℃~200℃の温度で、)
のカルボジイミド化による、生産プロセスにおいて、
ジイソシアネート対モノイソシアネートの質量比は、20:1~100:1、好ましくは25:1~50:1、なかでもとくに好ましくは30:1~40:1である、生産プロセス。
【請求項9】
最初に、式(II)のジイソシアネートと式R
I-NCOのモノイソシアネートとを混合し、次いで、反応温度に加熱して混合物として反応させる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
最初に、式(II)のジイソシアネートを触媒及び任意に溶媒の存在下で部分カルボジイミド化し、次いで、その反応混合物に式R
I-NCOのモノイソシアネートを添加してカルボジイミド化を完了する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
反応後、減圧下、昇温で、好ましくは160~180℃で前記混合物を撹拌し、イソシアネートの残留含有率を<0.1重量%に低減する、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応時に得られたポリカルボジイミドを冷却用ベルト上でペレット化するか、又はフレークローラー上でフレークに仕上げる、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応が、160℃~180℃の温度で行われる、請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
エステルベースポリマー、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)から選択されるポリマー、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との修飾ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はPLA誘導体、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、並びにブレンド、好ましくはPA/PET又はPHA/PLAブレンド、ポリウレタンエラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、又はローラブルポリウレタン、PUペイント及び塗料、好ましくは溶媒ベースディスパージョンを安定化させるための、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカルボジイミドの使用。
【請求項15】
エステルベースポリマー、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)から選択されるポリマー、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との修飾ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はPLA誘導体、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、並びにブレンド、好ましくはPA/PET又はPHA/PLAブレンド、ポリウレタンエラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、又はローラブルポリウレタン、PUペイント及び塗料、好ましくは溶媒ベースディスパージョンと、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカルボジイミドと、
を含有する組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カルボジイミドは、たとえば、サーモプラスチック、ポリオール、ポリウレタン、トリグリセリド、及び潤滑油用の加水分解抑制剤として多くの用途に有利であることが証明されている。
【0002】
これには、好ましくは、高立体障害ポリカルボジイミドが利用される。長いポリマー鎖(高モル質量)の高立体障害芳香族ポリカルボジイミドは、とりわけ、塗料及びペイント用のポリアミド、ポリエチレン又はポリブチレンテレフタレート及びコポリエステル、たとえば、TPE-E、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、ローラブルポリウレタンエラストマー、及び溶媒ベースポリウレタンディスパージョンの安定化に特異的に有利であることが証明されている。しかしながら、こうした高立体障害長鎖状ポリカルボジイミド、たとえば、トリイソプロピルフェニルイソシアネートをベースとするものは、時間及び設備のかなりの投資を行った場合のみ大きな産業規模で生産可能であるにすぎないという欠点を有する。ジイソシアネートに排他的に基づくポリカルボジイミドは、非常に高い粘度を有するとともにカルボジイミド化ステップ後でさえも依然として制御不能な重合を起こす可能性があることから、非常にコストのかかる複雑なペレット化などの各種欠点を伴う。溶媒中での代替生産プロセス(結晶化)は、複数のプロセスステップが関与するためコストがかかるうえに、粉末形の生成物をもたらすので、最終用途でダストを回避するために、こうして得られた粉末の追加のコンパクト化を必要とする。これに関連するプロセスは、とくに(特許文献1)又は(特許文献2)にすでに記載されている。
【0003】
エンドキャップ芳香族ポリカルボジイミドを生産するのはそれほど困難ではないが、比較してみると、それは所望の高安定化を示さないうえに、毒性副生成物に起因して有害である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第176572号明細書
【特許文献2】欧州特許第2933285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、先行技術の上述した欠点を示さない、すなわち、製造が容易且つ安全であり、高平均分子質量を有し、理想的には無害であり、優れた加水分解安定化を図る、新規なポリカルボジイミドの必要性が存在していた。それゆえ、本発明の目的は、対応するポリカルボジイミド及びその生産プロセスを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このたび、驚くべきことに、上述した目的が式(I)のポリカルボジイミドにより達成されることを見いだした
【化1】
(式中、
基Rは、同一であっても異なっていてもよく、NCN-R
I(ここで、基R
Iは、C
1~C
22-アルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
12-シクロアルキル、未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
18-アリール、又は未置換若しくはC
1~C
12-アルキル-置換C
6~C
18-アラルキルを表す)から選択され、
R
1、R
2、及びR
3は、各場合とも互いに同様に又は独立して、メチル、エチル、i-プロピル又はn-プロピル、n-ブチル又はi-ブチル又はt-ブチルを表し、
nは、20~500、好ましくは30~100、とくに好ましくは30~50であり、
ただし、平均モル質量Mwは10,000超であり、30,000g/mol以上のモル質量を有するポリカルボジイミドの割合は20重量%未満である)。
【0007】
ポリカルボジイミドの鎖長は、典型的には分布関数に従うので、繰返し単位nの以上の定義は、ポリカルボジイミドが具体的に示された範囲よりも小さな又は大きな値nを有する化合物を含まないことを意味するものと解釈されるべきではない。しかしながら、具体的に示された平均モル質量及び30,000g/mol以上のモル質量を有するポリカルボジイミドの割合を考慮したとしても、かかる化合物の割合は、典型的には無視しうるほど小さな範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態では、RIは、C1~C12-アルキル-置換C6~C12-アリール、好ましくはC1~C4-アルキル-置換C6~C12-アリール、とくに好ましくはモノ-~トリ-C1~C4-アルキル-置換C6-アリール、なかでもとくに好ましくはジ-及び/又はトリイソプロピルフェニルを表す。
【0009】
優先されるのは、R1、R2、及びR3がi-プロピル-を表し、
RIが、ジイソプロピルフェニル及び/又はトリイソプロピルフェニルを表す、式(I)のポリカルボジイミドである。とくに優先されるのは、分子中の基RIが同一である実施形態である。
【0010】
また、好ましいのは、10,000g/mol~20,000g/mol、好ましくは12,000g/mol~18,000g/mol、とくに好ましくは14,000g/mol~16,000g/molの平均モル質量を有する式(I)のポリカルボジイミドである。平均モル質量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、好ましくは模範的実施形態に記載の方法により決定される。
【0011】
30,000g/mol以上のモル質量を有するポリカルボジイミドの割合は、好ましくは15重量%未満、とくに好ましくは12重量%未満である。30,000g/molのモル質量(M)を有するカルボジイミドの割合は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により同様に決定される。
【0012】
基R対式(I)の化合物基の質量比は、好ましくは1:100~1:20の範囲内である。
【0013】
本発明に係るカルボジイミドのカルボジイミド含有率(シュウ酸による滴定により測定されるNCN含有率)は、典型的には14~17重量%、好ましくは14~16重量%、とくに好ましくは14~15重量%である。NCN含有率を決定するために、NCN基と過剰に添加されたシュウ酸とを反応させ、次いで、系のブランク値を考慮に入れて、未反応シュウ酸をナトリウムメトキシドによりポテンショメトリックに逆滴定する。
【0014】
本発明に係るポリカルボジイミドは、エステルベースポリマー、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)から選択されるポリマー、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との修飾ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はPLA誘導体、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、並びにブレンド、好ましくはPA/PET又はPHA/PLAブレンド、ポリウレタンエラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、又はローラブルポリウレタン、PUペイント及び塗料、好ましくは溶媒ベースディスパージョンの安定化に例外的に好適である。
【0015】
本発明はさらに、本発明に係るポリカルボジイミドをポリマーに組み込むことにより以上のエステルベースポリマーを安定化させるプロセスに関する。上述したカルボジイミドは、好ましくは、固形分計量ユニットを用いてエステルベースポリマーに添加される。
【0016】
本発明との関連での固形分計量ユニットは、好ましくは次の通り:1軸、2軸、及び多軸スクリュー押出し機、連続コニーダー(ブス型)及び不連続ニーダー、たとえば、バンバリー型。
【0017】
本発明に係るポリカルボジイミドは、式(I)
【化2】
のポリカルボジイミドの生産プロセスにより得られうるものであり、
二酸化炭素を脱離する触媒及び任意に溶媒の存在下、80℃~200℃の温度で、
式(II)
【化3】
の芳香族ジイソシアネート及び式R
I-NCOのモノイソシアネート(式中、基R、R
1、R
2、R
3、及びR
I並びにnは、以上に定義された通りである)のカルボジイミド化により得られ、
ジイソシアネート及びモノイソシアネートを20:1~100:1、好ましくは25:1~50:1、とくに好ましくは30:1~40:1の質量比で利用することを特徴とする。
【0018】
先行技術によれば、式(I)のポリカルボジイミドの合成は、塩基又はヘテロ環の触媒作用により行われる。典型的に使用される触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物さらにまたリンを含有するヘテロ環式化合物である。対応する触媒は、たとえば、Angew.Chem.1962,74,801-806及びAngew.Chem.1981,93,855-866に記載されている。
【0019】
使用されるイソシアネートは、とくに好ましくは、1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート(DIPI)、又は2,4,6-トリイソプロピルフェニルイソシアネート(TRIPI)である。
【0020】
本発明の一実施形態では、イソシアネートから式(I)のカルボジイミドへのカルボジイミド化に好ましい触媒は、強塩基又はリン化合物である。優先されるのは、ホスホレンオキシド、ホスホリジン又はホスホリンオキシド、さらにまた対応するスルフィドの使用である。使用されうるさらなる触媒は、第3級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属酸化物、水酸化物、アルコキシド、又はフェノキシド、金属カルボキシレート、及び非塩基性オルガノメタリック化合物である。好ましい触媒としては、とくにアルキルホスホレンオキシド、たとえばメチルホスホレンオキシドなどが挙げられる。
【0021】
反応(カルボジイミド化)は、好ましくは140℃~200℃、とくに好ましくは160℃~180℃の温度範囲内で行われる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、最初に、イソシアネート(ジイソシアネート及びモノイソシアネート)を混合一体化し、次いで、混合物としてカルボジイミド化する。
【0023】
さらなる実施形態では、最初に、式(II)のジイソシアネートを触媒及び任意に溶媒の存在下で部分カルボジイミド化し、次いで、反応混合物に式RI-NCOのモノイソシアネートを添加してカルボジイミド化を完了する。
【0024】
好ましい実施形態では、反応混合物は、カルボジイミド化後、減圧下、昇温で、好ましくは反応温度で撹拌され、イソシアネートの残留含有率は、<0.1重量%に低減される。
【0025】
本発明の好ましい変形形態では、最終反応マスは、たとえばSandvik Holding GmbH製のペレット化装置で、又はたとえばGMF Gouda製のフレークローラーを介して、ペレット又はフレークに仕上げられる。
【0026】
本発明はさらに、本発明に係るポリメリックカルボジイミドと、エステルベースポリマー、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)から選択されるポリマー、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との修飾ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はPLA誘導体、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、並びにブレンド、好ましくはPA/PET又はPHA/PLAブレンド、ポリウレタンエラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、又はローラブルポリウレタン、PUペイント及び塗料、好ましくは溶媒ベースディスパージョンと、を含有する組成物を提供する。ポリメリックカルボジイミド対エステルベースポリマーの重量比は、典型的には0.1:100~5:100、好ましくは0.5:100~4:100、最も好ましくは1:100~3:100である。
【0027】
後続の実施例は、本発明を明らかにする働きをするものであり、限定する作用を有するものではない。
【実施例】
【0028】
モル質量の決定:
【0029】
【0030】
カルボジイミド化
CDI1に対しては純1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)、又はCDI2、4、5、及び6に対しては1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)と2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート(DIPI)との混合物、又は1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)とシクロヘキサノールとの混合物を、<1%のNCO含有率が達成されるまで、約0.1%メチルホスホレンオキシドの存在下、160℃でカルボジイミド化した。
【0031】
結果は、以下の表1に列挙される。
【0032】
行われた試験は以下の通りである:
1)CDI 1:約14重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=NCOの式(I)に適合し、1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネートから生成されたポリカルボジイミド(比較例)
2)CDI 2:約13.5重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=NCN-RI(ここで、RI=2,6-ジイソプロピルフェニル)の式(I)に適合し、約80重量%1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート及び20重量%2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネートから生成されたポリカルボジイミド(比較例)。
3)CDI 3:約12.5重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=オキソシクロヘキシルの式(I)に適合し、約80重量%1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート及び20重量%シクロヘキサノールから生成されたポリカルボジイミド(比較例)。
4)CDI 4:約14重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=NCN-RI(ここで、RI=2,6-ジイソプロピルフェニル)の式(I)に適合し、約92.5重量%1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート及び7.5重量%2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネートから生成されたポリカルボジイミド(比較例)。
5)CDI 5:約14.5重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=オキソシクロヘキシルの式(I)に適合し、約97重量%1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート及び3重量%シクロヘキサノールから生成されたポリカルボジイミド(比較例)。
6)CDI 6:約14重量%のNCN含有率を有し、R1、R2、R3=イソプロピル及びR=NCN-RI(ここで、RI=2,6-ジイソプロピルフェニル)の式(I)に適合し、約97重量%1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート及び3重量%2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネートから生成されたポリカルボジイミド(本発明)。
【0033】
【0034】
表1から明らかなように、本発明のポリカルボジイミドのみが、相対的に容易な且つ信頼性のある生産及び仕上げの能力があり(反応器内での又はフレークローラーやペレット化ベルトなどの仕上げ領域への及びその中のコンジット内での重合暴走のリスクなし)、同時に所望のモル質量(Mw>10,000g/mol)及び0.1重量%の適合限界未満に低減された毒性モノメリックカルボジイミドの割合を示す。ポリマー鎖がより長く、モノメリックカルボジイミドの割合が低いため、放出特性はさらに低減される。
【0035】
ポリエチレンテレフタレート(PBT)の加水分解抑制
PBTの加水分解抑制を評価するために、以下に記載の測定前にWerner & Pfleiderer製のZSK25実験室2軸スクリュー押出し機を用いてそれぞれ2.5重量%の研究対象カルボジイミドをPBT中に分散した。次いで、Arburg Allrounder320S150-500射出成形機で、得られたグラニュレートから破壊強度測定用F3標準試験試料を作製した。
【0036】
加水分解試験では、これらのF3標準試験試料を120℃の温度の水中に貯蔵し、それらの破壊強度をMPa単位で測定した。表2は、相対破壊強度=(x日間貯蔵後の破壊強度/0日後の破壊強度)×100を示す。相対破壊強度の下限は、通常70~75%である。
【0037】
表2に、以下の通り結果を示す:
【0038】
【0039】
ポリウレタンベース配合物中及びローラブルポリウレタン中の分散性及び相溶性
表3は、DMF/ポリウレタンディスパージョン中及びローラブルポリウレタンエラストマー(Urepan(登録商標)、LANXESS Deutschland GmbH)中の相溶性試験の結果を示す。
【0040】
【0041】
表3から明らかなように、先行技術のポリカルボジイミドと比較して、本発明のポリカルボジイミド発明品は、より良好な分散性及び溶解性に起因して安定且つ均一なポリウレタン配合物をもたらす。本発明のポリカルボジイミド中の30,000g/mol超のより高分子量のポリマー鎖の比率がより低いことから、多くの用途及び配合物で相溶性を有意に改善することもまた明らかである。
【国際調査報告】