IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

特表2024-545770発酵液からアミノ酸含有製品の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】発酵液からアミノ酸含有製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/04 20060101AFI20241204BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20241204BHJP
   C12P 13/22 20060101ALI20241204BHJP
   C12P 13/06 20060101ALI20241204BHJP
   C12P 13/12 20060101ALI20241204BHJP
   C12P 13/24 20060101ALI20241204BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C12P13/04
C12P13/08 D
C12P13/22 A
C12P13/08 C
C12P13/06 C
C12P13/06 B
C12P13/12 A
C12P13/24 C
C12P13/22 C
C12N1/20 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538228
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2022021270
(87)【国際公開番号】W WO2023121423
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187593
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ミン キョン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, サン ミン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ジ-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミン ソプ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE05
4B064AE06
4B064AE07
4B064AE10
4B064AE16
4B064AE26
4B064AE29
4B064AE34
4B064CA02
4B064CC30
4B064DA11
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA24X
4B065AC14
4B065BD14
4B065BD25
4B065BD50
4B065CA17
4B065CA43
(57)【要約】
本出願は、発酵液からアミノ酸顆粒を製造する方法に関し、製造されたアミノ酸顆粒は、菌体が除去されたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸を含有する発酵液から菌体を除去して発酵濾液を準備する第1ステップ;
前記発酵濾液から顆粒を形成する第2ステップを含む、アミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記アミノ酸は、25℃での水に対する溶解度0g/100g超20g/100g以下のアミノ酸である、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項3】
前記アミノ酸は、バリン、トリプトファン、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン及びフェニルアラニンからなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項4】
前記第1ステップは、前記発酵濾液を濃縮するステップを含む、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項5】
前記第1ステップは、前記発酵液からアミノ酸結晶を分離するステップをさらに含み、
分離した前記アミノ酸結晶は、前記第2ステップに提供される、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項6】
前記第1ステップは、前記発酵液及び/又は発酵濾液中に存在するアミノ酸結晶を溶解するステップをさらに含む、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記第1ステップは、さらに前記発酵液及び/又は発酵濾液にカルシウム源を添加するステップを含む、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項8】
前記カルシウム源は、カルシウムイオンがアミノ酸に対して0.02~2.0モル比で添加されるように提供される、請求項7に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項9】
前記第2ステップで得られたアミノ酸シードの少なくとも一部を顆粒形成工程に再供給するステップをさらに含む、請求項1に記載のアミノ酸顆粒の製造方法。
【請求項10】
アミノ酸含有量が50%以上であり、菌体を含まないアミノ酸顆粒。
【請求項11】
前記アミノ酸顆粒は、製品中のアミノ酸に対して0.02~2.0モル比のカルシウムを含む、請求項7に記載のアミノ酸顆粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、発酵液から菌体が除去されたアミノ酸顆粒を製造できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飼料用アミノ酸顆粒を生産する方法の一つとして微生物を用いる発酵方法が用いられており、微生物発酵液を直接乾燥させて固体化してアミノ酸顆粒を生産することができる。
【0003】
特に、溶解度の低いアミノ酸の混合型顆粒化方法(US 2021-0094903 A1)が公知となっている。
【0004】
前記発酵液からアミノ酸顆粒を製造する場合、発酵液生産工程に用いられた菌株(菌体)が発酵液に残留する。菌体がアミノ酸顆粒に含まれる場合、市販時に製品登録過程が複雑になり、GM菌株の問題がある国で製品販売が困難であるという問題がある。また、顆粒の場合、発酵液の純度以上の製品を生産し難いという問題があるが、菌体を除去することにより、既存の顆粒より高含有量の製品を生産することができる長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報US 2021-0094903 A1
【特許文献2】米国特許登録公報US 8465962 B2
【特許文献3】米国特許登録公報US 9885093 B2
【特許文献4】米国特許登録公報US 10351859 B2
【特許文献5】米国特許登録公報US 7863435 B2
【特許文献6】米国特許登録公報US 10787692 B2
【特許文献7】米国特許登録公報US 9029105 B2
【特許文献8】米国特許登録公報US 2021-0094903 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一つの目的は、菌体が除去され、既存の顆粒剤品よりGM菌株の問題が少なく、既存の発酵液に比べてアミノ酸含有量が高く、粒度別の含有量が均一な顆粒製品の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本出願の一つの目的は、菌体が除去され、既存の顆粒製品よりGM菌株の問題が少なく、基本発酵液に比べてアミノ酸含有量が高いアミノ酸顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された多様な要素のあらゆる組合が本発明の範疇に属する。また、以下に記載される具体的な記述により本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。
【0009】
また、本明細書の全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照され、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として組み込まれ、本出願が属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0010】
前記目的を達成するために、本出願の一態様は、アミノ酸を含有する発酵液から菌体を除去して発酵濾液を準備する第1ステップ;前記発酵濾液から顆粒を形成する第2ステップを含む。
【0011】
本出願の製造方法は、アミノ酸顆粒を製造する過程で菌体を除去することにより製品登録過程を単純化し、遺伝子組み換えに関する(GM;Genetically Modified)問題がある国にあらかじめ対応することができる。また、顆粒の場合、発酵液の純度以上の製品を生産し難いという問題があるが、菌体を除去することにより既存の顆粒より高含有量の製品を生産することができる長所がある。したがって、本出願の製造方法を利用すると、製品純度の多角化が可能である。
【0012】
本出願の用語、「アミノ酸顆粒」とは、顆粒(granule)形態のアミノ酸含有混合物を意味する。ただし、必要によっては、アミノ酸顆粒の剤形は、本出願の発明の思想を変更しない範囲で、異にすることができる。また、前述したように、多様なアミノ酸顆粒の剤形を具現するために、後続工程をさらに行うことができる。前述のアミノ酸顆粒は、動物飼料の添加剤などとしても用いられ、用途には制限がない。
【0013】
以下には、本出願の一様態によるアミノ酸顆粒の製造方法の各ステップについてより詳しく説明する。
【0014】
まず、アミノ酸を含有する発酵液から菌体を除去して発酵濾液を準備する第1ステップ(S100)が行われる。
【0015】
本出願の用語、「菌体が除去された」は、溶液又は製品内に菌体が全く提供されないという意味に限定されるものではない。具体的には、溶液又は製品内から菌体が除去されたとは、アミノ酸発酵液を製造するのに使用された菌株が質量を無視できる程度に溶液又は製品から分離したことを意味する。したがって、菌体が除去された発酵液である発酵濾液又はこれから製造されたアミノ酸顆粒の質量と製品の組成を分析するにおいて、菌体が占める質量は無視することができる。
【0016】
第1ステップの発酵液に含まれたアミノ酸はL-アミノ酸であってもよく、特に、前記アミノ酸は、溶解度が低いアミノ酸であってもよい。例えば、本出願の製造方法を適用できるアミノ酸は、25℃での水に対する溶解度0g/100g超20g/100g以下である低い溶解度を有するアミノ酸であってもよいが、これに限定されず、前記のように低い溶解度のアミノ酸に適用することにより、従来の工程に比べてより顕著な効果が期待できる。
【0017】
具体的には、前記アミノ酸は、バリン、トリプトファン、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン又はフェニルアラニンであってもよいが、これらに制限されない。
【0018】
第1ステップの発酵液に含まれたアミノ酸は、抽出法、合成法、発酵法、酵素法などにより製造されたものであってもよい。場合によってアミノ酸は、微生物を用いた発酵法により製造された発酵物から提供される。その時、本出願において用語「発酵物」又は「発酵液」は、微生物を用いた有機物質の酵素的又は代謝的合成又は分解の結果物を意味する。例えば、微生物を培養培地で培養して得られた微生物を含む培養物自体、又はそれから微生物を除去して得られた培養物の濃縮物、乾燥物又は凍結乾燥物を含むことができる。併せて、その場合に、アミノ酸混合溶液は、L-アミノ酸及び発酵物全体を含むか、発酵物から不純物が除去されたものであってもよい。本出願において、前記アミノ酸を含む発酵液は、公知となった微生物発酵方法(US 8465962 B2、US 9885093 B2、US 10351859 B2、US 7863435 B2、US 10787692 B2、US 9029105 B2、US 2021-0094903 A1)により得られた発酵物の液体であってもよいが、これらに制限されない。
【0019】
本出願の「アミノ酸を含む発酵液」は、「アミノ酸含有発酵液」又は「アミノ酸発酵液」と混用され得る。
【0020】
第1ステップでアミノ酸を提供するために製造された発酵液は、L-アミノ酸を生産する微生物を培養して得られた結果物であってもよい。その時、本出願において用語、「L-アミノ酸を生産する微生物」は、野生型微生物や天然又は人為的に遺伝的組み換えが生じた微生物を全て含み、外部遺伝子が挿入されるか、又は内在的遺伝子の活性が強化又は不活性化されるなどの原因により、特定の機序が弱化又は強化された微生物であり、目的とするタンパク質又は産物の生産のための遺伝的組み換え(modification)を含む微生物であってもよい。
【0021】
第1ステップで使用される前述の微生物は、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、エシェリキア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属、エンテロバクテリア(Enterobacteria)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属又はシュードモナス(Pseudomonas)属などの微生物又はその人工変異株から選択される少なくとも一つであってもよい。したがって、第1ステップは、前述の微生物の少なくとも一つを利用したアミノ酸混合溶液を製造するステップをさらに含むことができる。
【0022】
第1ステップで用いられる本出願の前述の微生物中、「コリネバクテリウム属微生物」は、すべてのコリネバクテリウム属微生物を含むことができる。具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・スタチオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)又はコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であってもよく、より具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムであってもよいが、これに制限されない。
【0023】
コリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物、特に、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)は、L-アミノ酸及びその他の有用物質の生産に多用されているグラム陽性の微生物である。前記L-アミノ酸及びその他の有用物質を生産するために、高効率の生産微生物及び発酵工程技術の開発のための様々な研究が行われている。例えば、L-トリプトファン、L-バリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-ヒスチジン又はL-スレオニンなどの生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増加させるか、又は生合成に不必要な遺伝子を除去するような目的物質特異的アプローチが主に用いられている。
【0024】
第1ステップでは、前述したように準備された発酵液から菌体を除去する。菌体を除去することが必ず発酵液から菌体を完全に除去して発酵液を滅菌状態にすることではないことは、前述した通りである。菌体を除去するために、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC及びこれらの方法が組合わせて用いられる。前述の方法以外にも当該分野に公知となった適切な方法を用いて菌体を発酵液から分離することができる。
【0025】
第1ステップにおいて、場合によっては、菌体を分離する前に、発酵液からアミノ酸結晶を分離するか、又は発酵液中におけるアミノ酸結晶を溶解するステップが行われてもよい。アミノ酸結晶は、発酵液中に溶解度が相対的に低いアミノ酸が高濃度で含まれる場合、一部のアミノ酸が発酵液中で結晶をなしたことを意味する。溶液にアミノ酸結晶が含まれている場合、菌体の除去過程でアミノ酸結晶も共に除去される恐れがある。アミノ酸結晶は、菌体の除去の前に、発酵液中に溶解させたり別々に分離してリサイクルすることができ、これにより発酵工程で生産されたアミノ酸が捨てられることを防止することができる。
【0026】
第1ステップでアミノ酸結晶を発酵液から分離する場合、分離した結晶をその後の第2ステップでリサイクルすることにより工程効率を上げることができ、アミノ酸結晶の投入量を調節してアミノ酸顆粒中におけるアミノ酸含有量(アミノ酸純度)を調節することができる。
【0027】
第1ステップでアミノ酸結晶を発酵液中に溶解させる場合、発酵液に溶媒をさらに投入することができる。溶媒をさらに投入する場合、アミノ酸の溶解度だけ溶媒を投入することができる。その時、溶媒は。水(HO)であってもよい。
【0028】
また、第1ステップは、カルシウム源を添加するステップを含むことができる。具体的には、第1ステップで発酵液から菌体を除去する以前又は以後に発酵液にカルシウム源を添加することができる。
【0029】
本出願の用語、「カルシウム」は、骨を丈夫にし、血液循環を円滑にする機能をするので、脊椎動物に必須のミネラルである。カルシウムの99%以上は骨と歯に存在し、残りは血液や筋肉などに存在する。十分な量のカルシウムは、骨の健康を維持し、骨粗鬆症を予防する。筋肉を収縮させ、筋肉の痙攣を防ぎ、コレステロール値を低くし、心血管疾患の発生を減少させる役割も果たす。しかし、カルシウムが不足すると、骨が正常に形成されず、筋肉と神経に異常が生じ、小さな外傷でも骨折などの負傷が発生しやすくなり、骨粗鬆症のリスクが大きくなる。このようなカルシウムは、下痢や赤痢を予防し、特に子豚において、消化及び吸収を助けるために飼料添加剤の形態で動物に供給することもある。
【0030】
本出願の用語、「カルシウム源」とは、カルシウムイオン(Ca2+)を供給できる物質を制限なく指す。前記カルシウム源としては、水酸化カルシウム(Calcium carbonate,Ca(OH))、酸化カルシウム(Calcium oxide,CaO)、炭酸カルシウム(Calcium carbonate,CaCO)、硫酸カルシウム(Calcium Sulfate,CaSO)又は塩化カルシウム(Calcium chloride,CaCl)が用いられるが、これらに制限されない。
【0031】
本出願の用語、「水酸化カルシウム(calcium hydroxide,Ca(OH))」は無機化合物であり、無色の結晶又は白色の粉末形態を有する。水酸化カルシウムは、水に溶解して塩基性を帯び、コストが安く毒性が低いため、本出願においてカルシウムイオンの提供源として用いられる。
【0032】
本出願の用語、「酸化カルシウム(calcium oxide,CaO)」は、水に溶解してカルシウムイオンを生成する、前記水酸化カルシウムと同様の役割をする物質である。水に溶解する過程における溶解熱が比較的大きいため、事前に水と反応させた水酸化カルシウムスラリーの形態として工程に供給されてもよい。酸化カルシウムから水酸化カルシウムになる反応式は、次の通りである:CaO + H2O→Ca(OH)。水酸化カルシウムと同等量、即ち、カルシウムイオンを基準として同等なモル比率で用いるためには、水酸化カルシウム分子量に対する酸化カルシウム分子量の値である0.76を水酸化カルシウムに乗じた量を水と反応させて投入することができる。前記反応式のように、酸化カルシウムと水は1:1のモル比で反応するため、使用された酸化カルシウムの全部が反応できるように、追加投入する水の量は、投入した酸化カルシウムを必要な水酸化カルシウムから引いた値だけ又はそれ以上投入することができる。
【0033】
前記第1ステップにおいて、カルシウム源は、アミノ酸を含む発酵液中のアミノ酸に対してカルシウムイオンが0.02~2.0モル比、0.05~2.0モル比、0.07~1.5モル比、0.1~1.0モル比、0.2~0.6モル比で添加され得るが、これらに制限されない。
【0034】
前記カルシウム源は、カルシウム源を添加するステップで粉末の形態、水溶液の形態又はスラリーの形態で添加されてもよいが、これらに制限されない。
【0035】
前述したように、第1ステップを行った後、アミノ酸を含有する発酵液から菌体が除去され、発酵濾液が準備される。準備された発酵濾液に対して第2ステップの顆粒を形成する前に、発酵濾液中のアミノ酸濃度を高めるために、発酵濾液を濃縮する濃縮ステップが行われてもよい。
【0036】
濃縮ステップでは、発酵濾液を濃縮して濃縮された発酵濾液を準備する。発酵濾液を濃縮するとは、発酵濾液に含まれた溶媒の量を減らし、これによりアミノ酸の濃度を高める工程を意味する。
【0037】
前記濃縮ステップで使用される濃縮装置には制限がない。例えば、強制循環式(forced circulation)濃縮管を使用でき、パドル乾燥器(paddle dryer)、スラリー(slurry)乾燥設備などが濃縮工程に使用できるが、これに制限されない。
【0038】
前記濃縮ステップにおいて、濃縮は0%(w/w)超75%(w/w)以下の濃縮度で行うことができる。濃縮度は、発酵濾液と濃縮された発酵濾液を比較した時、溶媒が除去された程度(重量比)を意味する。前記濃縮度の範囲を超過する場合、濃縮液がゲル化し、流動性が顕著に低くなり、その後のステップへの進行が困難であってもよい。ただし、前述の濃縮度は、アミノ酸顆粒の製造工程に使用される設備の種類及び/又は駆動方式などに応じて変わる。例えば、前記濃縮は、5%(w/w)以上75%(w/w)以下、10%(w/w)以上70%(w/w)以下、又は20%(w/w)以上65%(w/w)以下であってもよいが、これらに制限されない。
【0039】
前記濃縮ステップにおいて、必要によってはカルシウム源を投入するステップをさらに行うことができる。濃縮ステップにおいて発酵濾液を濃縮した時、溶液中のアミノ酸の濃度が高くなり、これによりアミノ酸が結晶の形態で析出される恐れがあるが、濃縮液にカルシウム源を追加することにより、濃縮過程でアミノ酸が析出することを防止できる。特に、前述の第1ステップでカルシウム源を投入していない場合、濃縮前後に発酵濾液又は濃縮された発酵濾液にカルシウム源を追加することができる。
【0040】
また、前記濃縮液中の結晶を粉砕するステップを含むことができる。これは、通常のホモジナイザー(Homogenizer)を使用して行うことができるが、これに制限されない。前記粉砕ステップを通じて発酵液中の結晶の平均粒度を減少させることができ、例えば、流動層造粒機の使用時に発生し得るノズル詰まりを防止することができる。
【0041】
前述したように、濃縮液中へのカルシウム源の添加及び/又は結晶の粉砕を通じて相対的に高い濃縮度で濃縮工程を行うことができ、濃縮度が増加するにつれてより多くの量の溶媒が除去され、その後の第2ステップの顆粒工程で除去しなければならない水分の量が減少し得る。
【0042】
次に、第1ステップで得られた発酵液から、場合によっては第1ステップで得られた発酵液を濃縮した溶液から顆粒を製造する第2ステップが行われる。
【0043】
第2ステップにおける「顆粒(granules)」とは、粉末(powder)のような小さい粒子が集まって形成される相対的大きなサイズの永久凝集体である巨視的粒子(macroscopic particles)であり、平均粒子直径が50μm~5mm、75μm~4mm又は100μm~3mmの大きさの粒子であってもよい。
【0044】
第2ステップにおいて、粉末又は微小固体物質から所定の大きさを有する粒子の顆粒を形成するために行うものであり、当業界で公知の顆粒化方法であればいかなるものを用いてもよい。例えば、混合型造粒機にフィーダからシードを一定の速度で注入すると共に定量速液ポンプで前記発酵液を供給することにより顆粒を得る混合型顆粒化方法、又は流動層造粒機に所定の分量のシードを投入して所定の分量の発酵液を一定の速度で注入しながら顆粒を形成する流動層顆粒化方法を適用してもよい。その時、得られた顆粒を乾燥するステップをさらに含んでもよいが、これに制限されるものではないない。
【0045】
第2ステップにおいて発酵液のスラリー固形分に比べてシードの混合比率は300~900%(w/w)であってもよい。スラリー固形分に比べてシードの混合比率は「シード投入比率」と混用され得る。場合によっては、シードの混合比率は、300~850%(w/w)、350~800%(w/w)、300~800%(w/w)であってもよい。前述の割合でシードを投入して工程を行うことにより顆粒の形成を促進させることができる。ただし、シードの混合比率は、工程に投入されたアミノ酸の種類、第2ステップの顆粒形成のための工程運営条件などに応じて変わり、前述の範囲に制限されない。
【0046】
本出願の用語、「シード(seed)」とは、種結晶又は種晶ともいい、液体の結晶化又は顆粒化のために触媒剤として用いる物質を意味する。具体的には、本出願におけるシードは、アミノ酸結晶、例えば、顆粒化しようとする発酵濃縮液に含まれるアミノ酸と同種のアミノ酸の結晶であってもよいが、これに制限されない。前記シードは、発酵液に接触すると、発酵液中に存在する固形成分がシードと結合して凝集がなされることにより顆粒を形成する。
【0047】
例えば、この時に用いるシードは、150~300μmの平均粒度を有するものであってもよい。具体的には、150~250μm、200~300μm、又は200~250μmの平均粒度を有するシードを用いることができるが、これらに限定されるものではない。前述した用いるシードの粒度は、結果として本出願による顆粒の製造の生産性に影響を与えるところ、所望の水分含有量などを考慮して当業者が適宜選択することができる。
【0048】
併せて、本出願の製造方法は、前記第2ステップの前に、排出水分率を5~50%(w/w)に調節するステップをさらに含んでもよい。本出願における用語、「排出水分率」とは、「混合水分率」ともいい、混合物全体において水分が占める割合を意味し、混合物全体の100%(w/w)から全固体量%(w/w)を引いて算出する。本出願と関連し、排出水分率が高くなると、その後の顆粒化のために発酵液をシードと混合して混合機に投入の際の再使用率(recycle)が低くなり、生産率が高くなるという効果が得られる。例えば、前記排出水分率は、5~50%(w/w)、5~45%(w/w)、6~40%(w/w)、10~30%(w/w)又は15~30%(w/w)に調節されるが、これらに制限されるものではない。しかし、排出水分率が前記範囲未満では、単位の高い粘度によりスラリーの移送が困難になり、前記範囲を超えると、顆粒進行の際に後工程の過負荷及びスチーム過剰使用の問題が生じる。前記排出水分率は、濃縮液に含まれるアミノ酸の種類に応じてその範囲が多少異なる。
【0049】
前記排出水分率は、前記発酵液のスラリーの投入速度に応じて決定される。具体的には、前記スラリーの投入速度が増加するほど顆粒粒子の水分含有量が増加し、前記スラリーの投入速度が減少するほど顆粒粒子の水分含有量が減少する。前記投入速度は、発酵液スラリーのスケール(scale)に応じて決定されるので、当業者が適宜選択して決定することができる。
【0050】
また、本出願の製造方法は、発酵液を準備するステップ;pH調整ステップ;濃縮ステップ;乾燥ステップ;及びふるい分けステップから選択される一つ以上のステップをさらに含んでもよい。前記各ステップは、当業界で公知の方法(US 2021-0094903 A1)であればいかなるものを用いてもよい。さらに、工程の最適化のために具体的な条件を適宜変更することができるが、これに制限されない。
【0051】
本出願によると、先に検討したように、第1ステップ~第2ステップを経て菌体が除去されたアミノ酸顆粒を得ることができる。アミノ酸顆粒は、菌体を含まないため、製品中にアミノ酸の含有量が少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、又は90%以上であってもよい。したがって、本出願の製造方法は、アミノ酸高含有量の製品を提供するのに適している。
【発明の効果】
【0052】
本出願の製造方法は、菌体が除去されたアミノ酸顆粒を提供する。本出願により提供されたアミノ酸顆粒は菌体を含まないため、菌体を含む他のアミノ酸顆粒と比較した時、同一重量でアミノ酸の含有量がより高い。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、下記実施例により、本出願をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本出願を例示するものにすぎず、本出願の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0054】
実験例1.トリプトファンを含むアミノ酸顆粒の製造
実験例1では、トリプトファンを含むアミノ酸顆粒を製造した。そのために、下記トリプトファンを含む発酵液(濃度90.0g/L、固形分13.5%(w/w)、比重1.035、Purity 64.4%、菌体15%)を準備し、トリプトファン含有発酵液からcentrifuge(PTM006、トモエ工業(株)、4000/3500RPM、Feeding rate 2.1LPM,Dam no.1)を用いてアミノ酸結晶を分離した後、板状ろ過膜(Ceramic filteration system/ピュアテック、温度60℃、TMP 1.0,Inverter 40Hz)を用いて菌体を分離し、発酵濾液を準備した。前記発酵濾液にカルシウム源を添加した後、20Lの濃縮管(N-21NS、EYELA、water bath温度70℃、真空圧力120torr)を用いて濃縮した後、ブレンダー(ハニル電気、SHMF-3600TG)を用いて濃縮液中のアミノ酸結晶を粉砕して濃縮された発酵濾液を準備した。前記濃縮された発酵濾液と工程で発生したシードを混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)に混合して製品を得た。
【0055】
工程で発生したトリプトファン含有アミノ酸結晶の重量は、約4.9kg、アミノ酸結晶中のトリプトファンの含有量は約2.0kg、アミノ酸結晶中の水分含有量は約57.8%(w/w)、アミノ酸結晶中の固体含有量は約42.2%(w/w)であると分析された。
【0056】
また、工程で使用されたトリプトファン含有発酵濾液の重量全体は約31.0kg、全体体積は約31.1L、発酵濾液中のトリプトファン含有量は約390.1g(約1.9mol)、発酵濾液中のトリプトファンの濃度は約12.5g/L、発酵濾液のpHは約5.8、発酵濾液中の固体含有量は約2.5%(w/w)(0.8kg)、発酵濾液に含まれたトリプトファンの量は、固体含有量全体の約50.3%であると分析される。
【0057】
工程に投入されたカルシウム源は水酸化カルシウムであり、投入量は約28.3g(約0.2mol)であった。
【0058】
カルシウム源は発酵濾液に投入され、カルシウム源が投入された発酵濾液の固体含有量は約2.6%(796.6g)、カルシウム源が投入された発酵濾液に含まれたトリプトファンの量は固体含有量全体の約49.0%であると分析された。
【0059】
また、前述のカルシウム源が投入された発酵濾液を濃縮して提供した濃縮された発酵濾液の場合、約240.7g/Lの濃度を示し、固体含有量は約48.3wt%であった。
【0060】
実験例1-1.トリプトファン純度が84%であるアミノ酸顆粒の製造
前記実験例1で準備された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シードを用いてトリプトファン純度が84%水準であるアミノ酸顆粒を製造した。
【0061】
アミノ酸顆粒においてトリプトファン純度は、アミノ酸顆粒に含まれた固体含有量全体(重量全体で水分が占める重量を除いた値)でトリプトファンが占める重量の割合を求めて算出した。
【0062】
下記表は、工程に投入された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シード及びそれらから製造されたアミノ酸顆粒の投入量、それぞれの要素中の固体含有量、水分含有量及びトリプトファン含有量を整理したものである。
【0063】
【表1】
【0064】
アミノ酸顆粒の製造結果、約882.0gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は697.7g、水分含有量は184.3g、トリプトファン含有量は588.1gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約84.3%、水分比率は約20.9%であると分析された。工程で製造されたアミノ酸顆粒に含まれたトリプトファン顆粒の大きさによる分類結果は、次の通りである。
【0065】
【表2】
【0066】
前述の実験結果から菌体を除去した後、濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶及びシードからトリプトファン純度が高いアミノ酸顆粒を製造できることを確認した。また、トリプトファン顆粒の大きさ分析を通じて各粒度別のアミノ酸の含有量が均一であることを確認した。
【0067】
実験例1-2.水分含有量が調節されたアミノ酸顆粒の製造
次に、実験例1で準備された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶及びシードを用いてトリプトファン純度が84%水準のアミノ酸顆粒を製造するにおいて、最終製品中のトリプトファン純度を維持しながらも水分含有量を変化させることができるかどうかを確認した。
【0068】
下記表は、工程に投入された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シード及びそれらから製造されたアミノ酸顆粒の投入量、それぞれの要素中の固体含有量、水分含有量及びトリプトファン含有量を整理したものである。
【0069】
【表3】
【0070】
アミノ酸顆粒の製造結果、約761.0gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は614.1g、水分含有量は146.9g、トリプトファン含有量は515.8gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約84.0%、水分比率は約19.3%であると分析された。
【0071】
【表4】
【0072】
アミノ酸顆粒の製造結果、約826.0gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は642.5g、水分含有量は183.5g、トリプトファン含有量は539.7gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約84.0%、水分比率は約22.2%であると分析された。しかし、水分比率が約25%である場合、顆粒化がうまくいかないことを確認した。
【0073】
実験例1-3.トリプトファン純度約90%であるアミノ酸顆粒の製造
次に、前記実験例1で準備された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シードを用いてトリプトファン純度が異なるアミノ酸顆粒も製造可能かどうかを確認した。具体的には、同一の濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シードを用いてトリプトファン純度が91%であるアミノ酸顆粒の製造可否を確認した。
【0074】
下記表は、工程に投入された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シード及びそれらから製造されたアミノ酸顆粒の投入量、それぞれの要素中の固体含有量、水分含有量及びトリプトファン含有量を整理したものである。
【0075】
【表5】
【0076】
アミノ酸顆粒の製造結果、約1099.1gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は846.3g、水分含有量は252.8g、トリプトファン含有量は773.5gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約91.4%、水分比率は約23.0%であると分析された。工程で製造されたアミノ酸顆粒に含まれたトリプトファン顆粒の大きさによる分類結果は、次の通りである。
【0077】
【表6】
【0078】
前述の実験結果から菌体を除去した後、濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶及びシードからトリプトファン純度をより高めたアミノ酸顆粒を製造できることを確認した。また、トリプトファン顆粒の大きさ分析を通じて各粒度別のアミノ酸の含有量が均一であることを確認した。
【0079】
実験例1-4.トリプトファン純度が約70%であるアミノ酸顆粒の製造
次に、前記実験例1で準備された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シードを用いてトリプトファン純度が低下したアミノ酸顆粒も製造可能かどうかを確認した。具体的には、同一の濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シードを用いてトリプトファン純度が70%であるアミノ酸顆粒の製造可否を確認した。
【0080】
下記表は、工程に投入された濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶、シード及びそれらから製造されたアミノ酸顆粒の投入量、それぞれの要素中の固体含有量、水分含有量及びトリプトファン含有量を整理したものである。
【0081】
【表7】
【0082】
アミノ酸顆粒の製造結果、約830.0gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は678.5g、水分含有量は151.5g、トリプトファン含有量は469.6gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約69.2%、水分比率は約18.2%であると分析された。前述のトリプトファン純度が約70%であるアミノ酸顆粒に対し、トリプトファン純度は維持したままで水分含有量だけ変化させることができるかどうかを確認した。
【0083】
【表8】
【0084】
アミノ酸顆粒の製造結果、約900.0gのトリプトファン顆粒が製造され、トリプトファン顆粒中の固体含有量は710.5g、水分含有量は189.5g、トリプトファン含有量は491.5gであると分析された。トリプトファン顆粒に含まれた固体中、トリプトファンが占める割合であるトリプトファン純度は約69.2%、水分比率は約21.2%であると分析された。工程で製造されたアミノ酸顆粒に含まれたトリプトファン顆粒の大きさによる分類結果は、次の通りである。
【0085】
【表9】
【0086】
前述の実験結果から菌体を除去した後、濃縮された発酵濾液、アミノ酸結晶及びシードからトリプトファン純度を下げたアミノ酸顆粒を製造できることを確認した。また、純度を下げながら多様な水分含有量を有するアミノ酸顆粒の製造が可能であることを確認した。また、トリプトファン顆粒の大きさ分析を通じて各粒度別のアミノ酸の含有量が類似したことを確認した。
【0087】
ただし、水分含有量が約15%である場合、顆粒がうまく形成されないことを確認した。
【0088】
実験例2.スレオニンを含むアミノ酸顆粒の製造
実験例2では、スレオニンを含むアミノ酸顆粒を製造した。そのために、スレオニンを含む発酵液(濃度221.0g/L、固形分23.3%(w/w)、比重1.028、純度92.4%、菌体16.7%)を準備し、スレオニン含有発酵液から遠心分離機(PTM006、トモエ工業(株)、4000/3500RPM、Feeding rate 2.1LPM、Dam no.1)を用いてアミノ酸結晶を分離した後、板状ろ過膜(Ceramic filteration system/ピュアテック、温度60℃、TMP 1.0、Inverter 40Hz)を用いて菌体を分離し、発酵濾液を準備した。前記発酵濾液にCa(OH) 0.3モル比で添加した後、20Lの濃縮管(N-21NS、EYELA、water bath温度70℃、真空圧力120torr)を用いて濃縮し、濃縮後ブレンダー(ハニル電気、SHMF-3600TG)を用いて濃縮液中のアミノ酸結晶を粉砕して濃縮された発酵濾液を準備した。シードの場合、Double drum dryer(DS-21、大成機械工業、Steam圧力0.4bar、Feeding rate 0.5LPM、10RPM)を用いて製造した。
【0089】
スレオニンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、顆粒化工程にそれぞれ混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)(実験例2-1)と流動層造粒機(FBG-3、(株)エスワンコリア)(実験例2-2)を用いた。
【0090】
実験例2-1.混合型造粒機を利用したスレオニン含有アミノ酸顆粒の製造
スレオニンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0091】
【表10】
【0092】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。
【0093】
【表11】
【0094】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したスレオニン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0095】
【表12】
【0096】
前述の実験結果、スレオニン純度が79.2%であるアミノ酸顆粒を得た。
【0097】
実験例2-2.流動層造粒機を利用したスレオニン含有アミノ酸顆粒の製造
スレオニンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機(FBG-3、(株)エスワンコリア)を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0098】
【表13】
【0099】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、パイロットドラムドライヤーを用いて製造した。
【0100】
【表14】
【0101】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したスレオニン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0102】
【表15】
【0103】
前述の実験結果、スレオニン純度が80.9%であるアミノ酸顆粒を得た。前述したように、スレオニンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機と混合型造粒機をいずれも利用できることを確認した。製造されたアミノ酸顆粒中のスレオニン純度は、両方の場合で実質的に同一であった。
【0104】
実験例3.イソロイシンを含むアミノ酸顆粒の製造
実験例3では、イソロイシンを含むアミノ酸顆粒を製造した。そのために、下記イソロイシンを含む発酵液(濃度86.9g/L、固形分10.5%(w/w)、比重1.030、純度81.0%、菌体11%)を準備し、実験例2の方法と同様の方法で濃縮された発酵濾液を準備した。
【0105】
イソロイシンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、それぞれ混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)(実験例3-1)と流動層造粒機(FBG-3、(株)エスワンコリア)(実験例3-2)を用いた。
【0106】
実験例3-1.混合型造粒機を利用したイソロイシン含有アミノ酸顆粒の製造
イソロイシンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、混合型造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0107】
【表16】
【0108】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、パイロットドラムドライヤーを用いて製造した。
【0109】
【表17】
【0110】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したイソロイシン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0111】
【表18】
【0112】
前述の実験結果、イソロイシン純度が69.4%であるアミノ酸顆粒を得た。
【0113】
実験例3-2.流動層造粒機を利用したイソロイシン含有アミノ酸顆粒の製造
イソロイシンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0114】
【表19】
【0115】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、パイロットドラムドライヤーを用いて製造した。
【0116】
【表20】
【0117】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したイソロイシン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0118】
【表21】
【0119】
前述の実験結果、イソロイシン純度が67.9%であるアミノ酸顆粒を得た。前述したように、イソロイシンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機と混合型造粒機をいずれも利用できることを確認した。製造されたアミノ酸顆粒中のイソロイシン純度は、両方の場合、均一であった。
【0120】
実験例4.バリンを含むアミノ酸顆粒の製造
実験例4では、バリンを含むアミノ酸顆粒を製造した。そのために、バリンを含む発酵液(濃度68.4g/L、固形分10.1%(w/w)、比重1.020、純度66.8%、菌体5%)を準備し、実験例2の方法と同様の方法で濃縮された発酵濾液を準備した。
【0121】
バリンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、それぞれ混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)(実験例4-1)と流動層造粒機(FBG-3、(株)エスワンコリア)(実験例4-2)を用いた。
【0122】
実験例4-1.混合型造粒機を利用したバリン含有アミノ酸顆粒の製造
バリンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、混合型造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0123】
【表22】
【0124】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、パイロットドラムドライヤーを用いて製造した。
【0125】
【表23】
【0126】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したバリン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0127】
【表24】
【0128】
前述の実験結果、バリン純度が74.3%であるアミノ酸顆粒を得た。
【0129】
実験例4-2.流動層造粒機を利用したバリン含有アミノ酸顆粒の製造
バリンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0130】
【表25】
【0131】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、パイロットドラムドライヤーを用いて製造した。
【0132】
【表26】
【0133】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したバリン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0134】
【表27】
【0135】
前述の実験結果、バリン純度が75.5%であるアミノ酸顆粒を得た。前述したように、バリンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機と混合型造粒機をいずれも利用できることを確認した。製造されたアミノ酸顆粒中のバリン純度は、両方の場合で均一であった。
【0136】
実験例5.ヒスチジンを含むアミノ酸顆粒の製造
実験例5では、ヒスチジンを含むアミノ酸顆粒を製造した。そのために、ヒスチジンを含む発酵液(濃度97.0g/kg、固形分15.4%(w/w)、純度63.0%、菌体13%)を準備し、実験例2の方法と同様の方法で濃縮された発酵濾液を準備した。
【0137】
ヒスチジンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、それぞれ混合型造粒機(Ploughshare mixer granulator,Lodige)(実験例5-1)と流動層造粒機(FBG-3、(株)エスワンコリア)(実験例5-2)を用いた。
【0138】
実験例5-1.混合型造粒機を利用したヒスチジン含有アミノ酸顆粒の製造
ヒスチジンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、混合型造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0139】
【表28】
【0140】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、バキュームドライヤーを用いて約100℃で2時間乾燥して準備した。
【0141】
【表29】
【0142】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したヒスチジン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0143】
【表30】
【0144】
前述の実験結果、ヒスチジン純度が66.6%であるアミノ酸顆粒を得た。
【0145】
実験例5-2.流動層造粒機を利用したヒスチジン含有アミノ酸顆粒の製造
ヒスチジンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機を用いた。実験に使用されたフィード(濃縮された発酵濾液)の組成は、次の通りである。
【0146】
【表31】
【0147】
次に、実験に使用されたシードの組成は、次の通りである。シードは、バキュームドライヤーを用いて約100℃で2時間乾燥して準備した。
【0148】
【表32】
【0149】
前記濃縮された発酵濾液フィードとシードを投入して製造したヒスチジン顆粒形態のアミノ酸顆粒の組成分析結果は、次の通りである。
【0150】
【表33】
【0151】
前述の実験結果、ヒスチジン純度が66.0%であるアミノ酸顆粒を得た。前述したように、ヒスチジンを含有するアミノ酸顆粒を製造するにおいて、流動層造粒機と混合型造粒機をいずれも利用できることを確認した。製造されたアミノ酸顆粒中のヒスチジン純度は、両方の場合で類似した。
【0152】
前記実験例を通じて多様なアミノ酸に対して多様な装置を用いて菌株が除去されたアミノ酸顆粒を製造できることを確認した。前記実験例で確認できるように、菌株を除去し、アミノ酸顆粒を製造する場合、最終製品中のアミノ酸含有量が増加するにつれてアミノ酸高含有量の製品を製造するのに有利であることを確認した。
【0153】
また、工程に使用されるシード、濃縮された発酵濾液、そして必要によってはアミノ酸結晶の投入量を調節することにより、流動層造粒機と混合型造粒機の両方に対してアミノ酸顆粒の製造が可能であることを確認した。
【0154】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことをで理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】