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特表2024-545773段階アスファルテン排除による重質油最大変換のためのプロセススキーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】段階アスファルテン排除による重質油最大変換のためのプロセススキーム
(51)【国際特許分類】
   C10G 67/04 20060101AFI20241204BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20241204BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20241204BHJP
   C10G 7/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C10G67/04
C10G47/00
C10G21/00
C10G7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538342
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022053795
(87)【国際公開番号】W WO2023122264
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/265,872
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/069,556
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ラマセシャン, ヴィノッド
(72)【発明者】
【氏名】アル スバイエ, イマード
(72)【発明者】
【氏名】インファンテ, ヘクター
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】イズマジロフ, ルスタム
(72)【発明者】
【氏名】アル-バラウィ, アブドゥルアジズ, エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー, アショク, クマール
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA08
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA13
4H129MA14
4H129MB05A
4H129MB05B
4H129MB05C
4H129MB14B
4H129MB14C
4H129MB20A
4H129MB20B
4H129MB20C
4H129MB20D
4H129NA20
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA27
(57)【要約】
減圧塔500、水素化分解ユニット510、高リフト溶剤脱れきユニット520、低リフト溶剤脱れきユニット530、及びビチューメン吹込みユニット540又はピッチペレット化ユニット640、並びに任意選択で水素化処理反応器750を含む、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流101をアップグレードするシステムが提供される。該システム及びその構成要素は、留出物及びナフサ生成物、ライトエンド生成物、アスファルテンリーン重質脱れき油流125、アスファルテンリッチピッチ流126、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、重質油流137、ビチューメン及びアスファルト流145、又は固体燃料を送ることができる。さらに、直留減圧残渣又は分解供給原料をシステムに導入する工程と、該システムを運転する工程とを含み、該システムを運転する工程が、分留工程、溶剤段階脱れき工程、及び水素化分解工程を含む、プロセスが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力流をアップグレードするシステムであって、
減圧塔と;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと;
上記減圧塔及び上記高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、上記減圧塔及び上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているビチューメン吹込みユニットとを含み、
上記減圧塔が、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流を受け、上記入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成され、
上記水素化分解ユニットが、上記減圧塔軽質流及び重質脱れき油流の合体流、並びに水素流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成され、
上記重質脱れき油流が、上記水素化分解ユニットと、さらには上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しており、
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、ブタン流、並びに上記減圧残渣流の第1の部分、水素化分解ブリード流の第1の部分、及び重質油流の合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成されており、未変換油流が、上記水素化分解ユニット、上記高リフト溶剤脱れきユニット、及び上記ビチューメン吹込みユニットと流体連通しており、
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、プロパン流、及び上記減圧残渣流の第2の部分を受け、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成され、
上記重質油流が、上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しており、
上記ビチューメン吹込みユニットが、上記水素化分解ブリード流の第2の部分、上記減圧残渣流の残部、及び低粘度軽油流の合体流を受け、ビチューメン及びアスファルト流を送るように構成され、
上記低粘度軽油流が、上記ビチューメン吹込みユニットと流体連通しており、
上記減圧残渣流が、上記高リフト溶剤脱れきユニット、上記低リフト溶剤脱れきユニット、及び上記ビチューメン吹込みユニットに対して並列である、システム。
【請求項2】
上記減圧残渣流の第1の部分が、上記減圧残渣流の約40重量%~約60重量%の範囲であり、上記減圧残渣流の第2の部分が、上記減圧残渣流の約5重量%~約15重量%の範囲であり、上記減圧残渣流の残部が、上記減圧残渣流の約25重量%~約45重量%である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記水素化分解ブリード流の第1の部分が、上記未変換油流の約80重量%~100重量%の範囲であり、上記水素化分解ブリード流の第2の部分が、上記未変換油流の0重量%超~約20重量%の範囲である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
上記減圧塔軽質流が、560℃以下の温度で沸騰する炭化水素を含み、上記減圧残渣流が、560℃超の温度で沸騰する炭化水素を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
上記減圧残渣流、上記未変換油流、及び上記重質油流の合体流が、合体された減圧残渣、未変換油、及び重質油を形成し、
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、約5:1の比のブタン:上記合体された減圧残渣、未変換油、及び重質油を受けるようにさらに構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、約8:1の比のプロパン:減圧残渣を受けるようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記低粘度軽油流が、800~1200センチストークスの粘度を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
入力流をアップグレードするシステムであって、
直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流と;
減圧塔と;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと;
上記高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているピッチペレット化ユニットとを含み、
上記減圧塔が、上記入力流を受け、上記入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成され、
上記水素化分解ユニットが、上記減圧塔軽質流及び重質脱れき油流の合体流、並びに水素流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成され、
上記重質脱れき油流が、上記水素化分解ユニットと、さらには上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しており、
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、ブタン流、並びに上記減圧残渣流の第1の部分、水素化分解ブリード流としての未変換油流、及び重質油流の合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成され、
上記未変換油流が、上記水素化分解ユニット及び上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しており、
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、プロパン流、及び上記減圧残渣流の第2の部分の合体流を受け、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成され、
上記重質油流が、上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しており、
上記ピッチペレット化ユニットが、アスファルテンリッチピッチ流を受け、固体燃料を送るように構成され、
上記アスファルテンリッチピッチ流が、上記高リフト溶剤脱れきユニット及び上記ピッチペレット化ユニットと流体連通しており、
上記減圧残渣流が、上記高リフト溶剤脱れきユニット及び上記低リフト溶剤脱れきユニットに対して並列である、システム。
【請求項9】
上記減圧残渣流の第1の部分が、上記減圧残渣流の約70重量%~約90重量%であり、上記減圧残渣流の第2の部分が、上記減圧残渣流の約10重量%~約30重量%である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
上記減圧塔軽質流が、560℃以下の温度で沸騰する炭化水素を含み、上記減圧残渣流が、560℃超の温度で沸騰する炭化水素を含む、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
上記減圧残渣流、上記未変換油流、及び上記重質油流の合体流が、合体された減圧残渣、未変換油、及び重質油を形成し、
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、約5:1の比のブタン:上記合体された減圧残渣、未変換油、及び重質油を受けるようにさらに構成される、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項12】
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、約8:1の比のプロパン:減圧残渣を受けるようにさらに構成される、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項13】
入力流をアップグレードするシステムであって、
直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流と;
減圧塔と;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと;
上記減圧塔の下流に連結され、上記減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと;
上記高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと;
上記高リフト溶剤脱れきユニット及び上記低リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、上記高リフト溶剤脱れきユニット及び上記低リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している水素化処理反応器と;
上記減圧塔及び上記高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、上記減圧塔及び上記高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているビチューメン吹込みユニットとを含み、
上記減圧塔が、上記入力流を受け、上記入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成され、
上記水素化分解ユニットが、水素流、並びに上記減圧塔軽質流及び上記水素化処理反応器からの流出物の合体流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成され、
上記水素化処理反応器からの流出物が、流出物水素化分解供給流として上記水素化分解ユニットと流体連通し、さらに上記水素化処理反応器と流体連通しており、
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、ブタン流、並びに上記減圧残渣流の第1の部分及び水素化分解ブリード流の第1の部分の合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成され、未変換油流が、上記水素化分解ユニット、上記高リフト溶剤脱れきユニット、及び上記ビチューメン吹込みユニットと流体連通しており、
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、プロパン流、及び上記アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分を受け、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成され、上記重質油流が、上記水素化処理反応器と流体連通しており、
上記水素化処理反応器が、水素流、並びに上記アスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分及び上記重質油流の合体流を受け、ライトエンド生成物を送るように構成され、
上記ビチューメン吹込みユニットが、上記水素化分解ブリード流の第2の部分、上記減圧残渣流の第2の部分、上記アスファルテンリッチピッチ流、及び低粘度軽油流の合体流を受け、ビチューメン及びアスファルト流を送るように構成され、
上記低粘度軽油流が、上記ビチューメン吹込みユニットと流体連通しており、
上記減圧残渣流が、上記高リフト溶剤脱れきユニット及び上記ビチューメン吹込みユニットに対して並列である、システム。
【請求項14】
上記減圧残渣流の第1の部分が、上記減圧残渣流の約50重量%~約80重量%であり、上記減圧残渣流の第2の部分が、上記減圧残渣流の約20重量%~約50重量%である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
上記水素化分解ブリード流の第1の部分が、未変換油流の約80重量%~100重量%であり、上記水素化分解ブリード流の第2の部分が、上記未変換油流の0重量%超~約20重量%である、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
上記アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分が、アスファルテンリーン重質脱れき油流の約50重量%~約80重量%であり、上記アスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分が、上記アスファルテンリーン重質脱れき油流の約20重量%~約50重量%である、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項17】
上記減圧塔軽質流が、560℃以下の温度で沸騰する炭化水素を含み、上記減圧残渣流が、560℃超の温度で沸騰する炭化水素を含む、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項18】
上記高リフト溶剤脱れきユニットが、約5:1の比のブタン:合体された減圧残渣及び未変換油を受けるようにさらに構成される、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項19】
上記低リフト溶剤脱れきユニットが、約8:1の比のプロパン:減圧残渣を受けるようにさらに構成される、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項20】
上記低粘度軽油流が、800~1200センチストークスの粘度を有する、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項21】
直留減圧残渣又は分解供給原料をシステムに導入する工程と;
上記システムを運転する工程とを含み、上記システムを運転する工程が、分留工程、溶剤段階脱れき工程、及び水素化分解工程を含み、
上記分留工程が、上記直留減圧残渣又は上記分解供給原料の入力を用いて減圧塔から分留された留出物、軽油生成物、及び減圧残渣が生成されるように上記システムを運転する工程と、上記分留された留出物及び上記軽油生成物を減圧塔軽質流として単一の内部流に合体させる工程とを含み、
上記溶剤段階脱れき工程が、減圧残渣及び未変換油の合体内部流の入力を用いて高リフト溶剤脱れきユニットからアスファルテンリーン重質脱れき油及びアスファルテンリッチピッチが生成されるように上記システムを運転する工程を含み、
上記溶剤段階脱れき工程が、減圧残渣又はアスファルテンリーン重質脱れき油の入力を用いて低リフト溶剤脱れきユニットから潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油が生成されるように上記システムを運転する工程をさらに含み、
上記水素化分解工程が、減圧残渣及びアスファルテンリーン重質脱れき油の合体内部流の入力を用いて水素化分解ユニットからナフサ生成物及び未変換油が生成されるように上記システムを運転する工程を含む、プロセス。
【請求項22】
上記水素化分解工程が、上記水素化分解ユニットから合体された留出物及びナフサ生成物、ライトエンド生成物、並びに未変換油が生成されるように上記システムを運転する工程をさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
上記減圧残渣及び未変換油の合体内部流が、重質油をさらに含む、請求項21又は22に記載のプロセス。
【請求項24】
ビチューメン吹込み工程を用いて上記システムを運転する工程をさらに含み、
減圧残渣、アスファルテンリッチピッチ、未変換油、及び低粘度軽油の合体内部流の入力を用いてビチューメン吹込みユニットからビチューメン及びアスファルト生成物が道路等級アスファルトを含むように生成されるように上記システムを運転する工程を含む、請求項21又は22に記載のプロセス。
【請求項25】
水素化処理工程を用いて上記システムを運転する工程をさらに含み、
アスファルテンリーン重質脱れき油及び重質油の合体内部流の入力を用いて水素化処理反応器からライトエンド生成物及び水素化処理されたライトエンド生成物が生成されるように上記システムを運転する工程を含む、請求項21又は22に記載のプロセス。
【請求項26】
ピッチペレット化工程を用いて上記システムを運転する工程をさらに含み、
アスファルテンリッチピッチからペレット化又はフレーク化ピッチを含む固体燃料が生成されるように上記システムを運転する工程を含む、請求項21又は22に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
製油所残油は、多くの場合、カッターストックとブレンドされて、輸送可能で市場性のある燃料油が製造される。製油所によっては、燃料油を製造するための熱分解技術を取入れている。
【0002】
一般的な熱分解技術プラットフォームは、ビスブレーキングユニット及び熱分解ユニットの両方を含み得る。これらの運転により製造される燃料油は、「分解燃料油」として知られているものになる。直留残渣(すなわち、分解されていない)も燃料油を製造するために使用されるが、直留残渣は分解燃料油と混ぜ合わされても、混合されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本概要は、詳細な説明においてさらに説明される選び抜いた概念を導入するために設けられる。本概要は、特許請求の主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0004】
一態様において、開示される1つ又は複数の実施形態は、減圧塔と、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているビチューメン吹込みユニットとを含んでいてもよい、入力流をアップグレードするシステムに関する。減圧塔は、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流を受け、入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成されていてもよい。水素化分解ユニットは、減圧塔軽質流及び重質脱れき油流の合体流、並びに水素流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成されていてもよい。重質脱れき油流は、水素化分解ユニットと、さらに高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通していてもよい。高リフト溶剤脱れきユニットは、ブタン流、並びに減圧残渣流の第1の部分、水素化分解ブリード流の第1の部分、及び重質油流を含み得る合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成されていてもよい。未変換油流は、水素化分解ユニット、高リフト溶剤脱れきユニット、及びビチューメン吹込みユニットと流体連通していてもよい。低リフト溶剤脱れきユニットは、プロパン流、及び減圧残渣流の第2の部分を受け、潤滑油基油供給原料であり得る軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成されていてもよい。重質油流は、高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通していてもよい。ビチューメン吹込みユニットは、水素化分解ブリード流の第2の部分、減圧残渣流の残部、及び低粘度軽油流の合体流を受け、ビチューメン及びアスファルト流を送るように構成されていてもよい。低粘度軽油流は、ビチューメン吹込みユニットと流体連通していてもよい。減圧残渣流は、高リフト溶剤脱れきユニット、低リフト溶剤脱れきユニット、及びビチューメン吹込みユニットに対して並列であってもよい。
【0005】
別の態様において、開示される1つ又は複数の実施形態は、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流と、減圧塔と、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと、高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているピッチペレット化ユニットとを含んでいてもよい、入力流をアップグレードするシステムに関する。減圧塔は、入力流を受け、入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成されていてもよい。水素化分解ユニットは、減圧塔軽質流及び重質脱れき油流の合体流、並びに水素流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成されていてもよい。重質脱れき油流は、水素化分解ユニットと、さらに高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通していてもよい。高リフト溶剤脱れきユニットは、ブタン流、並びに減圧残渣流の第1の部分、水素化分解ブリード流としての未変換油流、及び重質油流の合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成されていてもよい。未変換油流は、水素化分解ユニット及び高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通していてもよい。低リフト溶剤脱れきユニットは、プロパン流、及び減圧残渣流の第2の部分の合体流を受け、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成されていてもよい。重質油流は、高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通していてもよい。ピッチペレット化ユニットは、アスファルテンリッチピッチ流を受け、固体燃料を送るように構成されていてもよい。アスファルテンリッチピッチ流は、高リフト溶剤脱れきユニット及びピッチペレット化ユニットと流体連通していてもよい。減圧残渣流は、高リフト溶剤脱れきユニット及び低リフト溶剤脱れきユニットに対して並列であってもよい。
【0006】
別の態様において、開示される1つ又は複数の実施形態は、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力流と、減圧塔と、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している水素化分解ユニットと、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している高リフト溶剤脱れきユニットと、高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している低リフト溶剤脱れきユニットと、高リフト溶剤脱れきユニット及び低リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、高リフト溶剤脱れきユニット及び低リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している水素化処理反応器と、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通しているビチューメン吹込みユニットとを含んでいてもよい、入力流をアップグレードするシステムに関する。減圧塔は、入力流を受け、入力流を減圧塔軽質流及び減圧残渣流に分離するように構成されていてもよい。水素化分解ユニットは、水素流、並びに減圧塔軽質流及び水素化処理反応器からの流出物の合体流を受け、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成されていてもよい。水素化処理反応器からの流出物は、流出物水素化分解供給流として水素化分解ユニットと流体連通していてもよく、さらに水素化処理反応器と流体連通していてもよい。高リフト溶剤脱れきユニットは、ブタン流、並びに減圧残渣流の第1の部分及び水素化分解ブリード流の第1の部分の合体流を受け、アスファルテンリーン重質脱れき油流及びアスファルテンリッチピッチ流を送るように構成されていてもよい。未変換油流は、水素化分解ユニット、高リフト溶剤脱れきユニット、及びビチューメン吹込みユニットと流体連通していてもよい。低リフト溶剤脱れきユニットは、プロパン流、及びアスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分を受け、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を送るように構成されていてもよい。重質油流は、水素化処理反応器と流体連通していてもよい。水素化処理反応器は、水素流、並びにアスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分及び重質油流の合体流を受け、ライトエンド生成物を送るように構成されていてもよい。ビチューメン吹込みユニットは、水素化分解ブリード流の第2の部分、減圧残渣流の第2の部分、アスファルテンリッチピッチ流、及び低粘度軽油流の合体流を受け、ビチューメン及びアスファルト流を送るように構成されていてもよい。低粘度軽油流は、ビチューメン吹込みユニットと流体連通していてもよい。減圧残渣流は、高リフト溶剤脱れきユニット及びビチューメン吹込みユニットに対して並列であってもよい。
【0007】
さらに別の態様において、開示される1つ又は複数の実施形態は、直留減圧残渣又は分解供給原料をシステムに導入する工程と、該システムを運転する工程とを含んでいてもよく、該システムを運転する工程が、分留工程、溶剤段階脱れき工程、及び水素化分解工程を含む、プロセスに関する。分留工程は、直留減圧残渣又は分解供給原料の入力を用いて減圧塔から分留された留出物、軽油生成物、及び減圧残渣が生成されるようにシステムを運転する工程と、分留された留出物及び軽油生成物を減圧塔軽質流として単一の内部流に合体させる工程とを含んでいてもよい。溶剤段階脱れき工程は、減圧残渣及び未変換油の合体内部流の入力を用いて高リフト溶剤脱れきユニットからアスファルテンリーン重質脱れき油及びアスファルテンリッチピッチが生成されるようにシステムを運転する工程を含んでいてもよい。溶剤段階脱れき工程は、減圧残渣又はアスファルテンリーン重質脱れき油の入力を用いて低リフト溶剤脱れきユニットから潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油が生成されるようにシステムを運転する工程をさらに含んでいてもよい。水素化分解工程は、減圧残渣及びアスファルテンリーン重質脱れき油の合体内部流の入力を用いて水素化分解ユニットからナフサ生成物及び未変換油が生成されるようにシステムを運転する工程を含んでいてもよい。
【0008】
特許請求の主題の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、1つ又は複数の実施形態に係る、ビチューメン生成を含む並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。
【0010】
図2図2は、1つ又は複数の実施形態に係る、ビチューメン生成を含まない並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。
【0011】
図3図3は、1つ又は複数の実施形態に係る、ビチューメン生成を含む溶剤脱れき分解原料残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
1つ又は複数の実施形態は、油の分離及びアップグレーディングのためのシステム及びプロセスに関する。具体的には、システムは、残渣を燃料及び石油化学供給原料に変換するために使用される。
【0013】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、重質油変換プロセスに関する。プロセスは、減圧残渣流を燃料(ディーゼル、ガソリン、及びナフサ等);潤滑油基油供給原料;エチレン、プロピレン等のオレフィン;並びにブチレン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族化合物に変換し得る。
【0014】
油の分離及びアップグレーディングのためのシステムは、1つ又は複数の実施形態において、残渣を含む入力流、減圧塔、減圧塔軽質流(留出物及び軽油)、減圧残渣流、水素化分解ユニット、高リフト溶剤脱れきユニット、低リフト溶剤脱れきユニット、及びビチューメン吹込みユニットを含む。
【0015】
プロセスは、分留及び段階溶剤脱れきを含む。段階溶剤脱れきは、段階的アスファルテン排除とも呼ぶことができる。1つ又は複数の実施形態において、減圧残渣のアスファルテン排除は、段階溶剤脱れきにより可能になる。1つ又は複数の実施形態における生成された脱れき油は、水素化分解又は流動接触分解ユニットにより処理される。例えば、溶剤脱れき段階から排除された重質ピッチは、ビチューメンにアップグレードされるか、又はガス化のための燃料として使用され得る。
【0016】
システムは、減圧塔、水素化分解ユニット、高リフト溶剤脱れきユニット、及び低リフト溶剤脱れきユニットを含み得る。システムは、ビチューメン吹込みユニット又はピッチペレット化ユニットをさらに含み得る。ビチューメン吹込みユニットは、減圧残渣を受けるように構成されるため、減圧残渣ビチューメン吹込みユニットと呼ぶこともできる。
【0017】
水素化分解ユニット、低リフト溶剤脱れきユニット、及びビチューメン吹込みユニットから生成される生成物は、燃料生成物、例えば、ホワイトオイル、潤滑油基油供給原料、石油化学供給原料、及びそれらの組合せとなり得る。
【0018】
入力流は減圧塔に導入される。入力流は、直留常圧残渣又は分解供給原料であり得る。減圧塔は、入力流を受け、入力流を減圧塔軽質流(軽油)及び減圧残渣流(塔底流)に分離するように構成される。減圧塔軽質流は、公称560℃未満の真沸点(TBP)で沸騰する物質を含む。
【0019】
水素化分解ユニットは、減圧塔の下流に連結され、減圧塔と流体連通している。水素化分解ユニットは、減圧塔軽質流及び高リフト溶剤脱れきユニットからの重質油流を水素及び触媒を用いて処理するように構成される。水素化分解ユニットは、軽油、留出物、及び重質脱れき油をナフサ、留出物、並びに「ライトエンド」、例えば液化石油ガス(LPG)及び天然ガス等の高価値燃料生成物に変換する。水素化分解ユニットは、留出物及びナフサ生成物、並びにライトエンド生成物を送るように構成される。同様に、水素化分解ユニットは、水素化分解ブリード流と呼ばれる未変換油流を送るように構成される。未変換油(排除)流は、ビチューメン吹込みユニットに送られる。
【0020】
高リフト溶剤脱れきユニットは、減圧塔及び低リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、減圧塔及び低リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している。高リフト溶剤脱れきユニットは、水素化分解ユニットと流体連通している。高リフト溶剤脱れきユニットは、アスファルテンリーン重質脱れき油及びアスファルテンリッチピッチを生成するように構成される。
【0021】
低リフト溶剤脱れきユニットは、潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油、及び重質油流を生成する。重質油流は、高リフト溶剤脱れきユニットに送られる。
【0022】
ビチューメン吹込みユニットは、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットの下流に連結され、減圧塔及び高リフト溶剤脱れきユニットと流体連通している。1つ又は複数の実施形態において、ビチューメン吹込みユニットは、減圧塔、高リフト溶剤脱れきユニット、及び水素化分解ユニットの下流に連結され、減圧塔、高リフト溶剤脱れきユニット、及び水素化分解ユニットと流体連通している。高リフト溶剤脱れきユニット(塔底)ピッチは、複合体を用いて生成された少量の軽質排除燃料流とブレンドされ、空気が吹込まれてもよい。少量の軽質排除燃料流は、減圧塔への新鮮供給物率の約3~約10%である。ビチューメン吹込みユニットは、ビチューメン、及び道路/舗装用アスファルトであり得るアスファルトを生成する。
【0023】
ピッチペレット化ユニットは、固体燃料として使用され得るペレット化又はフレーク化ピッチを生成する。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、水素化分解ユニットは、流動接触分解ユニットによる水素化処理に置き換えられる。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、アスファルトを生成することができない場合、ピッチは、ボイラー又は部分酸化ユニットへの燃料として処分され得る。
【0026】
1つ又は複数の実施形態は、ビチューメン生成を含む並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体に関する。
【0027】
1つ又は複数の実施形態は、ビチューメン生成を含まない並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体に関する。
【0028】
1つ又は複数の実施形態は、ビチューメン生成を含む溶剤脱れき分解原料残油アップグレーディング複合体に関する。

ビチューメン生成を含む並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体
【0029】
図1は、ビチューメン生成を含む並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。システム100は、並列溶剤脱れきとビチューメン生成とを含む残油アップグレーディング複合体である。これは、高リフト溶剤脱れきユニット及び低リフト溶剤脱れきユニットが、単一の供給源に由来する減圧残渣の並列入力を有することを意味する。1つ又は複数の実施形態において、ビチューメン吹込みユニットもまた、同じ供給源からの減圧残渣の並列入力を有する。
【0030】
システム100は、幾つかの供給流及び生成物流を有する。入力流101は、減圧塔500に導入され、370℃超の真沸点(TBP)を有する炭化水素を含む。入力流101は、以下に限定されないが、370℃超のTBPを有する原油蒸留ユニットから生成された常圧残渣油を含む入力された製油所残油であり得る。水素供給流115は、水素化分解ユニット510に導入され、水素からなる。低粘度軽油流142は、他の流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流144になる。低粘度軽油流は、約300℃~約450℃の範囲のTBPを有してもよく、約3センチストークス(cSt)~約8cStの粘度を有してもよい。低粘度軽油流142は、ビチューメン吹込みユニット供給流144(合体流)が約800cSt~約1200cStの範囲の粘度を有し得るようなものである。ビチューメン吹込みユニット供給流144は、約50重量%の減圧残渣(減圧残渣流103C由来)、約30重量%のピッチ(アスファルテンリッチピッチ流126由来)、並びに低粘度軽油流142及び水素化分解ブリード流111B由来の残りを含み得る。水素化分解ブリード流111Bは、全ビチューメン吹込みユニット供給流144と比較して約2重量%~約20重量%の軽油を有し得る。
【0031】
ライトエンド流116は、水素化分解由来の軽質ガス及び軽質物として生成される。ライトエンド流は、約2%未満のオレフィン含有量に加えて、飽和物を有し得る。ライトエンド流116は、水素化分解ユニット510から出て、水素化分解ユニットの運転由来の過剰な水素を含む。
【0032】
合体された留出物及びナフサ生成物流117は、水素化分解ユニット510から出る。合体された留出物及びナフサ生成物流は、燃料又は石油化学供給原料を含む。
【0033】
軽質脱れき油生成物流136は、低リフト溶剤脱れきユニット530から出る。軽質脱れき油生成物流は軽質脱れき油を含み、軽質脱れき油は、例えばブライトオイルを作製するために使用することができる潤滑油基油供給原料であり得る。
【0034】
ビチューメン及びアスファルト流145は、ビチューメン吹込みユニット540から出る。
ビチューメン及びアスファルト流145は、屋根等級、舗装等級、道路等級アスファルト(ビチューメン)、又はそれらの組合せを含み得る。
【0035】
システム100において、入力流101は、減圧塔500を介してシステム100に導入される。1つ又は複数の実施形態において、システム100の構成により、減圧塔500からの2つの生成物:560℃未満のTBPで沸騰する炭化水素を含む、留出物流102A及び減圧軽油流102Bの合体流である減圧塔軽質流102、並びに560℃以上のTBPで沸騰する炭化水素を含む減圧残渣流103の生成が可能になる。
【0036】
留出物流102Aは、約370℃未満のTBPで沸騰する炭化水素を含み、減圧軽油流102Bは、約370℃~約560℃の間のTBPで沸騰する炭化水素を含む。
【0037】
システム100は、減圧塔500から出る減圧残渣流103が3つの並列流に比例的に分割されるように構成される。減圧残渣流の第1の部分103Aは、処理のために高リフト溶剤脱れきユニット520に導かれる。減圧残渣流の第1の部分103Aは、約40重量%~約60重量%、例えば約45重量%~約55重量%である。減圧残渣流の第2の部分103Bは、処理のために低リフト溶剤脱れきユニット530に導かれる。1つ又は複数の実施形態において、減圧残渣流の第2の部分103Bは、減圧残渣流103の約5重量%~約15重量%、例えば、約8重量%~約12重量%であり、低リフト溶剤脱れきユニットに送られる。減圧残渣流の残部103Cは、処理のためにビチューメン吹込みユニット540に導かれ、例えば約25重量%~約45重量%、又は約35重量%~約45重量%である。減圧残渣流の残部103Cは、ビチューメン吹込みユニット供給流144に導入され、それがビチューメン吹込みユニット540に導入される。
【0038】
3つの並列流に分割された減圧残渣流103は、各流が直列である場合と比較して供給物品質が低い場合に有利となり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、並列流構成により、脱れき油(DAO)が固定床触媒ユニットに供給するのに十分な品質を維持することが可能となる。対照的に、直列流構成は、流動接触分解(FCC)による残渣水素化処理装置を必要とする可能性が高く、その結果、処理の選択肢が制限される。
【0039】
システム100は、減圧残渣流の第2の部分103Bが低リフト溶剤脱れきユニット530に送られ得るように構成される。低リフト溶剤脱れきユニット530は、減圧残渣流の第2の部分をプロパン流(溶剤として、図示せず)と合体させて、減圧残渣流の第2の部分を2つの生成物に分離するように構成される。溶剤:減圧残渣供給物の比は、1つ又は複数の実施形態において、約6:1~約8:1の比であり得る。低リフト溶剤脱れきユニット530は、40%以下、例えば40%未満、約35%未満、約30%未満、又は30%未満のリフトを提供する。1つ又は複数の実施形態において、低リフト溶剤脱れきユニット530は、リフトが0%ではないことを意味する非ゼロリフトを提供する。
【0040】
システム100は、低リフト溶剤脱れきユニット530が、2つの生成物流:生成物としてシステム100から出る軽質脱れき油生成物流136、及び排除流として底部から出得る重質油流137を生成し得るように構成される。生成された軽質脱れき油は、脱れき油よりも清浄な潤滑油基油供給原料である。生成された軽質脱れき油は、軽質脱れき油生成物流136の1.5ppm(百万分率)未満の金属を含み、35cSt(センチストークス)未満の粘度を有することで、グループI基油原料ブライトストック品質を満たし得るが、これは当業者によって理解される。
【0041】
システム100の構成は、減圧塔軽質流102が水素化分解ユニット510に向かって送られ得るような構成である。高リフト溶剤脱れきユニット520からのアスファルテンリーン重質脱れき油流125は、減圧塔軽質流102と合体して、水素化分解供給流113を形成し得る。さらに、水素からなる水素供給流115が水素化分解ユニット510に導入される。水素化分解ユニットは、後述する固定床触媒を含む。水素化分解ユニット510への供給物は、構成要素としての重質脱れき油の量によって制限され得る。重質脱れき油は、高変換率水素化分解ユニット、例えば95%以上の変換率を有するユニット又は供給物の40重量%以下であり得る。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、システム100は、水素化分解ユニット510が水素化分解条件下かつ過剰な水素及び触媒の存在下であり得るように構成される。運転中の水素化分解ユニットは、合体された留出物、軽油、及びアスファルテンリーン重質脱れき油を留出物、ナフサ、ライトエンド、及び排除物質に変換するように構成される。1つ又は複数の実施形態において、水素化分解ユニットの運転温度は、約360℃~420℃の範囲である。水素化分解ユニットの運転圧力は、約70絶対バール(bara)~170bara(水素分圧)の範囲である。
【0043】
水素化分解ユニット510はまた、生成物を幾つかの生成物流に分離するように構成され得る。ライトエンド生成物及び過剰分は、留出物及びナフサ生成物が、合体された留出物及びナフサ生成物流117として水素化分解ユニット510及びシステム100から出て、さらに処理され得るように構成され得る。水素化分解ユニット510は、ライトエンド生成物及び過剰な水素が、ライトエンド流116として水素化分解ユニット510及びシステム100から出得るようにさらに構成され得る。水素化分解ユニット510は、水素化分解ユニット510からの排除物質が、システムリサイクル流である水素化分解ブリード流111として該ユニットから出るようにさらに構成され得る。
【0044】
1つ又は複数の実施形態において、システム100の構成は、水素化分解ユニット510が接触分解ユニットであり得るような構成であり得る。接触分解ユニットは、従来のライザー流動接触ユニット又は高触媒/油比ダウナー設計であり得る。
【0045】
システム100は、未変換油(又は未変換油流)を含む水素化分解ブリード流111が2つの流れに分割されるように構成される。水素化分解ブリード流の第1の部分111A、例えば約80重量%~100重量%は、高リフト溶剤脱れきユニット520に送られ得る。水素化分解ブリード流の第1の部分111Aは、高リフト溶剤脱れきユニット520に導入される前に、他の流れと合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流124になり得る。水素化分解ブリード流の第2の部分111B、例えば0重量%超~約20重量%は、さらなる処理のためにビチューメン吹込みユニット540に送られ得る。水素化分解ブリード流の第2の部分111Bは、ビチューメン吹込みユニット540に導入される前に、他の流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流144になり得る。
【0046】
システム100の構成では、複数の流れが合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流124となり得る。システム100において、減圧残渣流の第1の部分103Aは、水素化分解ブリード流の第1の部分111A及び低リフト溶剤脱れきユニット530からの重質油流137の両方と合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流124を形成し得る。システム100は、高リフト溶剤脱れきユニットに、減圧残渣、アスファルト化重質油、及び水素化分解ユニットからのリサイクル物質の合体物が供給され得るように構成され得る。
【0047】
高リフト溶剤脱れきユニットは、有用な流体生成物をシステム100に戻してリサイクルさせ得るという点で、システム100における「最終手段のユニット」と考えることができる。すなわち、このユニットからの塔底生成物は、ビチューメン吹込みプロセスにおける変換のために送られ、化学処理のための有用な物質を回収するためにはもはや利用できない。システム100は、高リフト溶剤脱れきユニット供給流124が高リフト溶剤脱れきユニット520に導入され得るように構成され得る。システム100はまた、高リフト溶剤脱れきユニット520が、ブタン溶剤の存在下で減圧残渣、未変換油、及び重質油の合体物を用いて処理されてアスファルテンリーン生成物及びアスファルテンリッチ生成物になり得るように構成され得る。高リフト溶剤脱れきユニットは、ブタン流を受けるように構成され得る。溶剤(ブタン):油(合体された減圧残渣、未変換油、及び重質油)の比は、約3:1~約8:1、例えば約3:1~約7:1、約3:1~約6:1、約4:1~約8:1、約4:1~約7:1、又は約4:1~約6:1の範囲であり得る。ブタン(及び適用可能な場合はプロパン、ブタン流又はプロパン流として)は図示していない。高リフト溶剤脱れきユニット等の溶剤脱れきユニットの抽出圧力は、溶剤脱れきユニットで利用される溶剤の臨界圧力よりも大きい。
【0048】
システム100は、高リフト溶剤脱れきユニット520が、高リフト溶剤脱れきユニット供給流の変換から2つの生成物を生成し得るように構成され得て、その両方が追加の処理のために他のユニットに提供される。アスファルテンリーン重質脱れき油流125は、軽質生成物として生成され得る。前述したように、アスファルテンリーン重質脱れき油流125は、減圧塔軽質流102と合体されて水素化分解供給流113を形成する。アスファルテンリッチピッチ流126もまた、塔底生成物として形成され得る。アスファルテンリッチピッチ流126は、変換のためにビチューメン吹込みユニット540に向かって導かれる。
【0049】
システム100の構成では、複数の流れが合体されてビチューメン吹込みユニット供給流144になり得る。減圧残渣流の残部103C(第3の部分)は、高リフト溶剤脱れきユニット520からのアスファルテンリッチピッチ流126及び水素化分解ブリード流の第2の部分111Bと合体される。さらに、システム100に導入される低粘度軽油流142はまた、3つの他の流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流144を形成し得る。減圧残渣流の残部103Cとアスファルテンリッチピッチ流126とのブレンド比は、103C(減圧残渣の混合物)が40%超、アスファルテンリッチピッチ流126(ピッチ)が30%未満、残りが、ビチューメン吹込みユニット供給物の粘度を約1200センチストークス(cSt)未満に維持するための軽油カッターであるような比である。
【0050】
システム100は、ビチューメン吹込みユニット供給流144がビチューメン吹込みユニット540に導入され、ビチューメン及びアスファルト生成物に変換され得るように構成される。ビチューメン吹込みユニットは、炭化水素混合物(ビチューメン吹込みユニット供給流144)が約300℃~約500℃の温度範囲に加熱され、約1バール~約2バールの圧力で空気が吹き込まれる空気吹込みユニットである。得られたビチューメン及びアスファルトは、道路等級生成物であり得る。ビチューメン及びアスファルト生成物は、ビチューメン及びアスファルト流145を介してビチューメン吹込みユニット540及びシステム100から出得る。

ビチューメン生成を含まない並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体
【0051】
図2は、並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。システム200は、ビチューメン生成を含まない残油アップグレーディング複合体である。これは、高リフト溶剤脱れきユニット及び低リフト溶剤脱れきユニットが、単一の供給源に由来する減圧残渣の並列入力を有することを意味する。
【0052】
システム200は、幾つかの供給流及び生成物流を有する。入力流201は、減圧塔600に導入され、370℃超のTBPを有する炭化水素を含む。水素供給流215は、水素化分解ユニット610に導入されるが、水素からなる。ライトエンド流216は、水素化分解ユニット510から出て、水素化分解ユニットの運転由来の軽質ガス及び過剰な水素を含む。合体された留出物及びナフサ生成物流217は、水素化分解ユニット610から出て、燃料又は石油化学供給原料を含む。軽質脱れき油生成物流236は、低リフト溶剤脱れきユニット630から出て、ブライトオイルを作製するために使用することができる潤滑油基油供給原料である軽質脱れき油を含む。固化ピッチ流245は、ピッチペレット化ユニット640から出て、固体燃料として使用され得るペレット化又はフレーク化ピッチを含む。
【0053】
システム200において、入力流201は、減圧塔600を介してシステム200に導入される。1つ又は複数の実施形態において、システム200の構成により、減圧塔600からの2つの生成物:560℃未満のTBPで沸騰する炭化水素を含む、留出物流202A及び減圧軽油流202Bの合体流である減圧塔軽質流202、並びにTBP560℃以上の温度で沸騰する炭化水素を含む減圧残渣流203の生成が可能になる。
【0054】
留出物流202Aは、約370℃未満のTBPで沸騰する炭化水素を含み、減圧軽油流202Bは、約370℃~約560℃の間のTBPで沸騰する炭化水素を含む。
【0055】
システム200は、減圧塔600から出る減圧残渣流203が2つの並列流に比例的に分割されるように構成される。減圧残渣流の第1の部分203Aは、処理のために高リフト溶剤脱れきユニット620に導かれる。減圧残渣流の第1の部分203Aは、高リフト溶剤脱れきユニットに送られる減圧残渣流203の約70重量%~約90重量%、例えば約75重量%~約85重量%であり得る。減圧残渣流の第2の部分203Bは、処理のために低リフト溶剤脱れきユニット630に導かれる。減圧残渣流の第2の部分203Bは、低リフト溶剤脱れきユニットに送られる減圧残渣流203の約10重量%~約30重量%、例えば約15重量%~約25重量%であり得る。
【0056】
システム200は、減圧残渣流の第2の部分203Bが低リフト溶剤脱れきユニット630に送られ得るように構成される。低リフト溶剤脱れきユニット630は、減圧残渣供給流の第2の部分をプロパン流(溶剤として、図示せず)と合体させて、減圧残渣供給流の第2の部分を2つの生成物に分離するように構成される。溶剤:減圧残渣供給物の比は、1つ又は複数の実施形態において、約8:1の比であり得る。
【0057】
システム200は、低リフト溶剤脱れきユニット630が、2つの生成物流:生成物としてシステム200から出る軽質脱れき油生成物流236、及び排除流として底部から出得る重質油流237を生成し得るように構成される。生成された軽質脱れき油は、潤滑油基油供給原料である。
【0058】
システム200の構成は、減圧塔軽質流202が水素化分解ユニット610に向かって送られ得るような構成である。高リフト溶剤脱れきユニット620からのアスファルテンリーン重質脱れき油流225は、減圧塔軽質流202と合体されて水素化分解供給流213を形成し得る。さらに、水素からなる水素供給流215が、水素化分解ユニット610に導入される。水素化分解ユニットは、後述する固定床触媒を含む。
【0059】
1つ又は複数の実施形態において、システム200は、水素化分解ユニット610が、水素化分解条件下かつ過剰な水素及び触媒の存在下で合体された留出物、軽油、及びアスファルテンリーン重質脱れき油を留出物、ナフサ、ライトエンド、及び排除物質に変換し得るように構成される。
【0060】
水素化分解ユニット610はまた、生成物を幾つかの生成物流に分離するように構成され得る。システム200は、ライトエンド生成物及び過剰分が、留出物及びナフサ生成物が、合体された留出物及びナフサ生成物流217として水素化分解ユニット610及びシステム200から出て、さらに処理され得るように構成され運転され得る。水素化分解ユニット610は、ライトエンド生成物及び過剰な水素が、ライトエンド流216として水素化分解ユニット610及びシステム200から出て、さらに処理され得るようにさらに構成され得る。水素化分解ユニット610は、水素化分解ユニット610からの排除物質が、システムリサイクル流である水素化分解ブリード流211としてユニットから出るようにさらに構成され得る。
【0061】
1つ又は複数の実施形態において、システム200の構成は、水素化分解ユニット610が接触分解ユニットであり得るような構成であり得る。接触分解ユニットは、従来のライザー流動接触ユニット又は高触媒/油比ダウナー設計であり得る。
【0062】
システム200は、水素化分解ブリード流211が高リフト溶剤脱れきユニット620に送られ得るように構成される。
【0063】
システム200の構成では、複数の流れが合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流224になり得る。システム200において、減圧残渣流の第1の部分203Aは、水素化分解ブリード流211及び低リフト溶剤脱れきユニット630からの重質油流237の両方と合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流224を形成し得る。システム200は、高リフト溶剤脱れきユニットに、減圧残渣、アスファルト化重質油、及び水素化分解ユニットからのリサイクル物質の合体物が供給され得るように合体され得る。
【0064】
高リフト溶剤脱れきユニットは、有用な流体生成物をシステム200及び他のユニットに戻してリサイクルするための、システム200における「最終手段のユニット」と考えることができる。すなわち、このユニットからの塔底生成物は、ピッチペレット化プロセスにおける変換のために送られる。システム200は、高リフト溶剤脱れきユニット供給流224が高リフト溶剤脱れきユニット620に導入され得るように構成され得る。システム200はまた、高リフト溶剤脱れきユニット620が、ブタン溶剤の存在下で減圧残渣、未変換油、及び重質油の合体物を処理してアスファルテンリッチ生成物及びアスファルテンリーン生成物にし得るように構成され得る。溶剤(ブタン):油(減圧残渣、未変換油、及び重質油)の比は、1つ又は複数の実施形態において、約5:1の範囲であり得る。
【0065】
システム200は、高リフト溶剤脱れきユニット620が、高リフト溶剤脱れきユニット供給流の変換から2つの生成物を生成し得るように構成され得て、その両方が追加の処理のために他のユニットに提供される。アスファルテンリーン重質脱れき油流225は、軽質生成物として生成され得る。前述したように、アスファルテンリーン重質脱れき油流225は、減圧塔軽質流202と合体されて水素化分解供給流213を形成する。アスファルテンリッチピッチ流226が、塔底生成物として生成され得る。アスファルテンリッチピッチ流226は、変換のためにピッチペレット化ユニット640に向かって導かれる。
【0066】
システム200は、アスファルテンリッチピッチ流226がピッチペレット化ユニット640に導入され、ペレット化又はフレーク化ピッチに変換され得るように構成され得る。固化ピッチは、例えばボイラー又は部分酸化ユニットで使用され得る固体燃料であり得る。例えば、固化ピッチは、蒸気を生成するためにボイラー内で燃料として使用され得て、蒸気は、発電するために蒸気タービン発電機を駆動するために設備内で使用され得る。固化ピッチは、部分酸化されて合成ガスになり得て、合成ガスは、例えば電力又は蒸気を生成するためにガスタービン内で燃料として使用されるか、あるいは水素を生成するために使用され得る。ペレット化又はフレーク化ピッチは、固化ピッチ流245を介してピッチペレット化ユニット640及びシステム200から送られ得る。

ビチューメン生成を含む溶剤脱れき分解原料残油アップグレーディング複合体
【0067】
図3は、ビチューメン生成を含む溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体であるシステムを示す。システム300は、ビチューメン生成を含む残油アップグレーディング複合体である。システム300において、高リフト溶剤脱れきユニット及びビチューメン吹込みユニットは、単一の供給源に由来する減圧残渣の並列入力を有する。
【0068】
システム300は、システム300が段階的フローシステムであり得ること(溶剤脱れきユニットが直列(流)であることを意味する)から、システム100及びシステム200と一部異なる。減圧残渣は、最初に高リフト溶剤脱れきユニットに送られ、次いで脱れき油の一部が低リフト溶剤脱れきユニットに送られる。システム300において、水素化分解ユニット710の上流に固定床残油処理(水素化処理反応器750)がある。したがって、脱れき油の品質は、システム100又は200と比較して、システム300ではより低品質となり得て、直列流の溶剤脱れきユニットが機能し得る(変換ユニット内の脱れき油品質がより低品質であるため)。
【0069】
システム300は、幾つかの供給流及び生成物流を有する。入力流301は、減圧塔700に導入され、370℃超のTBPを有する炭化水素を含む。水素化処理水素供給流355は、水素化処理反応器750に導入されるが、水素からなる。水素供給流315は、水素化分解ユニット710に導入されるが、水素からなる。低粘度軽油流342は、他の流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流344になる。低粘度軽油流342は、約800~1200cStの範囲の標的粘度を有する軽油流である。水素化処理されたライトエンド流356は、水素化処理反応器750から出て、ライトエンド生成物を含む。ライトエンド流316は、水素化分解ユニット710から出て、水素化分解ユニットの運転由来の軽質ガス及び過剰な水素を含む。合体された留出物及びナフサ生成物流317は、水素化分解ユニット710から出て、燃料又は石油化学供給原料を含む。軽質脱れき油生成物流336は、低リフト溶剤脱れきユニット730から出て、例えばブライトオイルを作製するために使用することができる潤滑油基油供給原料であり得る脱れき油を含む。ビチューメン及びアスファルト流345は、ビチューメン吹込みユニット740から出て、道路等級アスファルトを含み得る。
【0070】
システム300において、入力流301は、減圧塔700を介してシステム300に導入される。1つ又は複数の実施形態において、システム300の構成により、減圧塔700からの2つの生成物:560℃未満の温度で沸騰する炭化水素の、留出物流302A及び減圧軽油流302Bの合体流である減圧塔軽質流302、並びに560℃以上の温度で沸騰する炭化水素を含む減圧残渣流303の生成が可能となる。
【0071】
留出物流302Aは、約370℃未満のTBPで沸騰する炭化水素を含み、減圧軽油流302Bは、約370℃~約560℃の間のTBPで沸騰する炭化水素を含む。
【0072】
システム300は、減圧塔700から出る減圧残渣流303が2つの並列流に比例的に分割されるように構成される。減圧残渣流の第1の部分303Aは、処理のために高リフト溶剤脱れきユニット720に導かれる。減圧残渣流の第1の部分は、減圧残渣流303の約50重量%~約80重量%、例えば約50重量%~約70重量%、又は約50重量%~約60重量%であり得る。減圧残渣流の第2の部分303Bは、処理のためにビチューメン吹込みユニット740に導かれる。減圧残渣流の第2の部分は、減圧残渣流303の約20重量%~約50重量%、例えば約30重量%~約50重量%、又は約40重量%~約50重量%であり得る。減圧残渣流の第2の部分303Bは、ビチューメン吹込みユニット供給流344に導入され、これはビチューメン吹込みユニット740に導入される。
【0073】
システム300の構成は、高リフト溶剤脱れきユニット720からのアスファルテンリーン重質脱れき油流325が2つの部分に分割されるような構成である。アスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分325Bは、低リフト溶剤脱れきユニット730からの重質油流337と合体されて水素化処理供給流353を形成する。さらに、水素からなる水素化処理水素供給流355が、水素化処理反応器750に導入される。
【0074】
言及したように、システム300の構成において、水素化処理供給流353は、水素化処理反応器750において処理され得る。低リフト溶剤脱れきユニットと高リフト溶剤脱れきユニットとの合計リフトは、75%超、例えば80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上である。高リフト脱れきユニット単独でのリフトは、約60%以上、例えば65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上である。水素化処理供給流353は、高いコンラドソン炭素値を有し得る。水素化処理供給流353は、有機金属汚染物質を有し得る。例えば、脱れき油中の金属含有量は、10百万分率(ppm)超であり得て、供給物中のコンラドソン残留炭素(値)は、8ppm超であり得る。水素化処理によって、水素化処理反応器において過剰な水素及び触媒を利用することで、これらの汚染物質が低減され得る。
【0075】
1つ又は複数の実施形態において、システム300は、水素化処理反応器750が、合体されたアスファルテンリーン重質脱れき油及び重質油を水素化処理し、それを重質水素化処理流出物及びライトエンドに変換するように構成される。重質水素化処理流出物の組成は、(約370℃で沸騰する物質として)85%以上の残留する流入重質供給物を含み、金属及びコンラドソン炭素比が除去され、該供給物がより低い硫黄含有量(例えば、90%以上の脱硫)まで水素化処理されているものであり得る。水素化処理反応器750からの1つ又は複数の生成物流が存在し得る。システム300は、水素化処理されたライトエンド流356が水素化処理反応器750及びシステム300から出て、さらに処理され得るようにさらに構成される。水素化処理反応器750は、ライトエンド生成物を生成する。水素化処理反応器からの流出物は、流出物水素化分解供給流313として、さらなる処理のために水素化分解ユニット710に導かれる。
【0076】
システム300の構成は、減圧塔軽質流302が水素化分解ユニット710に向かって送られ得るような構成である。水素化処理反応器750からの流出物水素化分解供給流313は、水素化分解ユニット710において減圧塔軽質流302と合体され得る。さらに、水素からなる水素供給流315が、水素化分解ユニット710に導入される。水素化分解ユニットは、後述する固定床触媒を含む。
【0077】
1つ又は複数の実施形態において、システム100は、水素化分解ユニット510が、水素化分解条件下かつ過剰な水素及び触媒の存在下で合体された留出物、軽油、及びアスファルテンリーン重質脱れき油を留出物、ナフサ、ライトエンド、及び排除物質に変換し得るように構成される。1つ又は複数の実施形態において、水素化分解ユニットの運転温度は、約360℃~420℃の範囲である。水素化分解ユニットの運転圧力は、約70絶対バール(bara)~170bara(水素分圧)の範囲である。
【0078】
水素化分解ユニット710はまた、生成物を幾つかの生成物流に分離するように構成され得る。システム300は、ライトエンド生成物及び過剰分が、留出物及びナフサ生成物が、合体された留出物及びナフサ生成物流317として水素化分解ユニット710及びシステム300から出て、さらに処理され得るように構成され運転され得る。水素化分解ユニット710は、ライトエンド生成物及び過剰な水素が、ライトエンド流316として水素化分解ユニット710及びシステム300から出て、さらに処理され得るようにさらに構成され得る。水素化分解ユニット710は、水素化分解ユニット710からの排除物質が、システムリサイクル流である水素化分解ブリード流311として該ユニットから出るようにさらに構成され得る。
【0079】
1つ又は複数の実施形態において、システム300の構成は、水素化分解ユニット710が、接触分解ユニットと置き換えられ得るような構成であり得る。接触分解ユニットは、従来のライザー流動接触ユニット又は高触媒/油比ダウナー設計であり得る。
【0080】
システム300は、未変換油(又は未変換油流)を含む水素化分解ブリード流311が2つの流れに分割されるように構成される。水素化分解ブリード流の第1の部分311A、例えば約80重量%~100重量%は、高リフト溶剤脱れきユニット720に送られ得る。水素化分解ブリード流の第1の部分311Aは、高リフト溶剤脱れきユニット720に導入される前に、他の流れと合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流324になり得る。水素化分解ブリード流の第2の部分311B、例えば0重量%超~約20重量%は、さらなる処理のためにビチューメン吹込みユニット740に送られ得る。水素化分解ブリード流の第2の部分311Bは、ビチューメン吹込みユニット740に導入される前に、他の流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流344になり得る。
【0081】
システム300の構成では、複数の流れが合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流224になる。システム300において、減圧残渣流の第1の部分303Aは、水素化分解ブリード流の第1の部分311Aと合体されて高リフト溶剤脱れきユニット供給流324を形成し得る。システム300は、高リフト溶剤脱れきユニットに、減圧残渣及び水素化分解ユニットからのリサイクル物質の合体物が供給されるように構成され得る。
【0082】
高リフト溶剤脱れきユニットは、有用な流体生成物をシステム300及び他のユニットに戻してリサイクルするための、システム300における「最終手段のユニット」と考えることができる。すなわち、このユニットからの塔底生成物は、ビチューメン吹込みプロセスにおける変換のために送られる。システム300は、高リフト溶剤脱れきユニット供給流324が高リフト溶剤脱れきユニット720に導入され得るように構成され得る。システム300は、高リフト溶剤脱れきユニット720が、ブタン溶剤の存在下で減圧残渣及び未変換油の合体物を用いて処理されてアスファルテンリーン生成物及びアスファルテンリッチ生成物になり得るように構成され得る。溶剤(ブタン):油(減圧残渣及び未変換油)の比は、1つ又は複数の実施形態において、約5:1の範囲であり得る。
【0083】
システム300は、高リフト溶剤脱れきユニット720が、高リフト溶剤脱れきユニット供給流の変換から2つの生成物を生成し得るように合体され得て、その両方が追加の処理のために他のユニットに提供される。アスファルテンリーン重質脱れき油流325は、軽質生成物として生成され得る。アスファルテンリーン重質脱れき油流325は、アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分325Aとアスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分325Bとに分割され得る。アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分は、アスファルテンリーン重質脱れき油流の約50重量%~約80重量%、例えば約50重量%~約70重量%、又は約50重量%~約60重量%であり得る。アスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分325Bは、約20重量%~約50重量%、例えば約30重量%~約50重量%、又は約40重量%~約50重量%であり得る。第1の部分と第2の部分との分割は、生成される潤滑油の所望の量を考慮してこれらの範囲内で変動し得る。アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分325Aは、変換のために低リフト溶剤脱れきユニット730に導かれ得る。アスファルテンリーン重質脱れき油流の第2の部分325Bは、重質油流337と合体されて水素化処理供給流353を形成し得る。アスファルテンリッチピッチ流326もまた、塔底生成物として形成され得る。アスファルテンリッチピッチ流326は、変換のためにビチューメン吹込みユニット740に向かって導かれ得る。
【0084】
前述したように、システム300の構成において、アスファルテンリーン重質脱れき油流の第1の部分325Aは、低リフト溶剤脱れきユニット730に導入され得る。低リフト溶剤脱れきユニット730は、減圧残渣供給流の第2の部分をプロパン流(溶剤として、図示せず)と合体させ、次いで減圧残渣供給流の第2の部分を2つの生成物に分離するように構成される。溶剤:減圧残渣供給物の比は、1つ又は複数の実施形態において、約8:1の比であり得る。
【0085】
システム300は、低リフト溶剤脱れきユニット730が、2つの生成物流:生成物としてシステム300から出る軽質脱れき油生成物流336、及び排除流として底部から出得る重質油流337を生成し得るように構成される。生成された軽質脱れき油は、潤滑油基油供給原料である。
【0086】
システム300の構成では、複数の流れが合体されてビチューメン吹込みユニット供給流344になり得る。減圧残渣流の第2の部分303Bは、高リフト溶剤脱れきユニット720からのアスファルテンリッチピッチ流326、及び水素化分解ブリード流の第2の部分311Bと合体される。さらに、低粘度軽油供給流もシステム300に導入され、また、他の3つの流れと合体されてビチューメン吹込みユニット供給流344を形成し得る。
【0087】
システム300は、ビチューメン吹込みユニット供給流344が、ビチューメン吹込みユニット740に導入され、ビチューメン及びアスファルト生成物に変換され得るように構成される。ビチューメン及びアスファルトは、道路等級生成物であり得る。ビチューメン及びアスファルト生成物は、ビチューメン及びアスファルト流345を介してビチューメン吹込みユニット740及びシステム300から出得る。

システムを使用するプロセス方法
【0088】
1つ又は複数の実施形態において、プロセスは、図1図3に記載されるシステム等のシステムに供給物を導入する工程を含み得る。プロセスはまた、分留、溶剤段階脱れき、水素化分解、水素化処理、ビチューメン吹込み、ピッチペレット化、又はこれらの組合せが、導入された供給物から1つ又は複数のシステム生成物を生成するようにシステムを運転する工程を含み得る。
【0089】
プロセスの1つ又は複数の実施形態から生成され得るシステム生成物としては、ディーゼル、ガソリン、及びナフサを含むが、これらに限定されない高価値燃料及び供給原料;潤滑油基油供給原料;並びにエチレン、プロピレン、及びブテンを含むが、これらに限定されないオレフィンが挙げられる。システムによって生成される生成物についてさらに説明する。
【0090】
プロセスは、半変換又はハイドロスキミング製油所における複数の塔底アップグレーディングプロジェクトのために使用され得る。
【0091】
プロセスは、1つ又は複数の実施形態のシステムに供給物を導入する工程を含む。供給物は、直留減圧残渣、分解供給原料、又は直留及び分解供給原料の両方であり得る。供給物は減圧塔に導入される。
【0092】
分解供給原料を導入する場合、プロセスは、限られた方法で潤滑油基油供給原料を生成し得るが、高価値燃料及びコアビルディングブロック石油化学製品も生成し得る。潤滑油基油供給原料を生成するためには、供給物中の分解供給原料構成要素は、15%以下、例えば15%未満、10%以下、又は5%以下である。
【0093】
システムを運転する工程は、入力流を分留する工程を含む。分留工程は、減圧塔において沸点によって導入された供給物を分離する工程を含む。減圧塔は、減圧蒸留塔であり得る。
【0094】
例えば、分留工程は、留出物、軽油、及び減圧残渣が生成されるようにシステムを運転する工程を含む。留出物は、約370℃以下で沸騰し得る。軽油は、約370~560℃の間で沸騰し得る。減圧残渣は、約560℃超で沸騰し得る。分留工程はまた、分留された留出物及び軽油生成物を単一の内部流、例えば留出物及び減圧軽油流(減圧塔軽質流)へと合体させる工程を含み得る。
【0095】
システムを運転する工程は、分留された生成物(減圧残渣)を溶剤脱れきユニット及び水素化分解ユニットの両方に送る工程を含み得る。ビチューメン吹込みユニットがシステムに含まれる場合、システムを運転する工程は、分留された生成物(減圧残渣)をビチューメン吹込みユニットに送る工程を含み得る。
【0096】
1つ又は複数の実施形態において、システムが水素化分解ユニットの代わりに接触分解ユニットを含む場合、システムを運転する工程は、分留された生成物を溶剤脱れきユニット及び接触分解ユニットに送る工程を含み得る。
【0097】
溶剤段階脱れき工程は、1つ又は複数の実施形態において、減圧残渣及び未変換油(水素化分解ユニットからの排除流)の合体内部流が、高リフト溶剤脱れきユニットにおいて脱れきされるようにシステムを運転する工程を含み得る。合体内部流は、重質油、例えば低リフト溶剤脱れきユニットからの塔底生成物をさらに含み得る。高リフト溶剤段階脱れきによって、2つの生成物:アスファルテンリーン重質脱れき油及びアスファルテンリッチピッチが生成される。
【0098】
溶剤段階脱れき工程は、減圧残渣が低リフト溶剤脱れきユニットに送られ、脱れきされるようにシステムを運転する工程を含み得る。
【0099】
溶剤段階脱れき工程は、アスファルテンリーン重質脱れき油が低リフト溶剤脱れきユニットに送られ、さらに脱れきされるようにシステムを運転する工程を含み得る。
【0100】
低リフト溶剤段階脱れきによって、2つの生成物:軽質脱れき油及び重質油流(アスファルテンを含み得る)が生成され得る。軽質脱れき油は、有用な潤滑油基油供給原料であり得るシステム生成物である。
【0101】
1つ又は複数の実施形態において、システムを運転する工程は、水素化分解ユニットからナフサ及び未変換油を生成する工程を含み得る。システムは、「ナフサモード」下で運転され得て、その場合、水素化分解ユニットからナフサ及び未変換油が生成され、ライトエンド生成は、水素化分解ユニットへの供給物の15~20%と高くなり得る。
【0102】
1つ又は複数の実施形態において、水素化分解ユニットの代わりに接触分解ユニットが利用されるシステムが構成される。1つ又は複数の実施形態において、プロセスは、減圧残渣流を接触分解ユニットに導入する工程と、減圧残渣流が接触分解されるようにシステムを運転する工程とを含み得る。1つ又は複数の実施形態における減圧残渣流は、減圧残渣及びアスファルテンリーン重質脱れき油を含み得る。システム運転により、接触分解ユニットから複数の生成物が生成され得る。生成物は、接触分解ユニットからの生成物が水素化分解ユニットからの生成物と比較してよりオレフィン性及び芳香族性であることを除いて、水素化分解ユニットからの生成物と同じタイプの沸騰生成物である。そのため、接触分解ユニットからの生成物は、水素化分解ユニットからの生成物以外の目的のために使用され得る。
【0103】
1つ又は複数の実施形態において、プロセスは、水素化処理供給流を水素化処理反応器に導入する工程と、水素化処理供給流が水素化処理されるようにシステムを運転する工程とを含み得る。1つ又は複数の実施形態における水素化処理流は、アスファルテンリーン重質脱れき油及び低リフト溶剤脱れきユニットからの重質油流を含み得る。水素流は、水素化処理反応器に導かれる。システム運転により、水素化処理反応器から2つの生成物が生成され得る。生成物は、システム生成物であるライトエンド生成物、及び水素化処理されたライトエンド生成物を含み得る。
【0104】
1つ又は複数の実施形態において、プロセスは、ビチューメン吹込みユニット供給流をビチューメン吹込みユニットに導入する工程と、ビチューメン吹込みユニット供給流がビチューメン吹込みユニットにおいて処理されるようにシステムを運転する工程とを含み得る。ビチューメン吹込みユニット供給流は、減圧残渣、アスファルテンリッチピッチ、水素化分解ユニットからの未変換油排除物質又はリサイクル流、及び低粘度軽油(約800~1200cStの範囲の粘度を有する)から構成され得る。システム運転により、ビチューメン吹込みユニットからビチューメン及びアスファルトが生成され得る。ビチューメン及びアスファルトは、道路等級アスファルトを含むシステム生成物である。水素化分解ユニットの代わりに接触分解ユニットが含まれる場合、接触分解ユニットからのスラリー油は、ビチューメン吹込みユニットに導かれる。
【0105】
1つ又は複数の実施形態において、プロセスは、アスファルテンリッチピッチをピッチペレット化ユニットに導入する工程と、アスファルテンリッチピッチがピッチペレット化ユニットにおいて処理されるようにシステムを運転する工程とを含み得る。システム運転により、システム生成物として固体燃料が生成され得る。固体燃料は、ペレット化又はフレーク化ピッチを含む。
【0106】
実施例
【0107】
実施例1を表1に記載する。表1は、例えば図1(ビチューメン生成を含む並列溶剤脱れき残油アップグレーディング複合体)と併せて、1つ又は複数の実施形態に係るシステム及びプロセスを使用する高レベルバランスの一例であるフロースキームを示す。
【0108】
【表1-1】
【0109】
表1、続き
【表1-2】
【0110】
表1において、「g/mL」は1ミリリットル当たりのグラム数であり、「wt%」は重量パーセント(w/w)であり、「ppmw」は重量百万分率である。「cSt」はセンチストークスであり、「dmm」はミリメートルの10分の1である(針入度試験における針入度等級ビチューメンの表面への針入深さを指す)。
【0111】
実施例1において、入力流101(図1、供給物)が100TPHである場合、アスファルト流145(図1、ビチューメン残渣リフト)は28.2(約28重量%)であり、生成される生成物(アスファルト又はビチューメン以外)は(入力流からの)全供給物の71.78(72重量%)である。さらに、ビチューメン吹込みユニット供給流144(図1)の全28.7TPHは、約53重量%の減圧残渣(15.3TPH)、約31重量%のピッチ(8.89TPH)、約2重量%の未変換油(0.46TPH)、及び約14重量%の軽油(4TPH)を含む。
【0112】
実施例1(図1)では、約370℃未満で沸騰する留出物流102A、及び約370℃~約560℃で沸騰する減圧軽油流102Bが合体されて減圧塔軽質流102を形成する。
【0113】
実施例1において、減圧残渣流の第1の部分103Aは、減圧残渣流103の全重量(100重量%)の50重量%であり、減圧残渣流の第2の部分103Bは12重量%であり、減圧残渣流の残部103Cは38重量%であり;水素化分解ブリード流の第1の部分111Aは、水素化分解ブリード流111の全重量(100重量%)の81重量%であり、水素化分解ブリード流の第2の部分111Bは19重量%である。
【0114】
有利な効果
【0115】
1つ又は複数の実施形態のシステム及びプロセスは、世界の製油産業に有用な幾つかの属性を有する。本開示の1つ又は複数の実施形態は、以下の利点の1つ又は複数を提供し得る。
【0116】
1つ又は複数の実施形態において、減圧残渣及びピッチ(溶剤脱れきユニットにおいて生成される)の混合物はシステム生成物に変換される。例えば、道路等級アスファルトを含むビチューメン及びアスファルトが生成され得る。
【0117】
1つ又は複数の実施形態において、カスケード式溶剤脱れきユニットは、水素化分解ユニットと密接に連結した運転で利用される。このような構成により、変換が最大になる。これは、ビチューメンも生成される場合は、残渣の60%がより軽質の生成物に変換され得て、ビチューメンが生成されなければ、変換率は80%に達し得る(ピッチ生成の場合)ことを意味する。本明細書で使用される「カスケード式」は、残渣が、それぞれリフトが異なる1つの溶剤脱れきユニットから次の溶剤脱れきユニットへとカスケード式に流れることにより、重質分子をカスケードから排除し、最終生成物として処理又は送られる分子を含む方法である。
【0118】
1つ又は複数の実施形態において、水素化分解及び溶剤脱れきの密接に連結した運転により、重質多核芳香族化合物の排除が可能となる。重質多核芳香族化合物の排除及びその後のリサイクルにより、水素化分解ユニット単独での処理と比較して重質原料の高変換が保証される。「高変換」は、水素化分解ユニットが、供給物の90%超を、370℃未満の温度で沸騰する生成物に変換し得ることを意味し;水素化分解ユニットにおける公称変換率は、90%超、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は98%であり得る。
【0119】
1つ又は複数の実施形態において、高価値燃料、潤滑油基油原料供給物、及び石油化学ビルディングブロックが、システム生成物として生成される。理論に拘束されることを望むものではないが、1つ又は複数の実施形態のフロースキーム(システム)とは異なる従来のシステムが使用される場合、従来のシステムは高価値燃料を生成し得るが、1つ又は複数の実施形態のフロースキームと比較して経済的に実行可能ではないより高いコストとなる。
【0120】
1つ又は複数の実施形態において、システムを運転する工程は、直留減圧残渣又は分解原料(残油)の両方を高変換して、燃料及び潤滑油の両方を生成する工程を含む。
【0121】
1つ又は複数の実施形態において、溶剤脱れきシステムを通して重質多核芳香族化合物を排除する能力により、水素化分解ユニット高変換が可能となり、可能な場合にはビチューメンを生成することができる。
【0122】
定義
【0123】
「流」又は「流れ」という用語は、直鎖、分岐、又は環状アルカン、アルケン、アルカジエン、アルキン、芳香族化合物等の様々な炭化水素、並びにガス及び不純物等の他の物質を含み得る。流又は流れは、芳香族及び非芳香族化合物の組合せを含み得る。
【0124】
「ゾーン」という用語は、1つ若しくは複数の機器又は1つ若しくは複数のサブゾーンを含む領域を指し得る。機器は、1つ又は複数の反応器又は反応容器、加熱器、交換器、パイプ、ポンプ、コンプレッサー、及びコントローラを含む。さらに、反応器ドライヤー又は容器等の機器は、1つ又は複数のゾーンをさらに含み得る。
【0125】
「真沸点」という用語は、ASTM D2892によって定義される物質の沸点を意味する。ASTM D2892は、分析データを得ることができる標準化された品質の液化ガス、留出分、及び残油の製造、並びに質量及び体積の両方による上記留分の収率の決定のために、物質の沸点を決定するための試験法であり、これにより、5:1の還流比を有する塔において15の理論段を使用して温度VS留出質量%のグラフが作成される。
【0126】
「ホワイトオイル」という用語は、約370℃未満の真沸点(終点)を有する炭化水素生成物を意味する。液化石油ガス中の炭化水素、並びにナフサ及び留出物範囲を含み得るが、これらに限定されない。
【0127】
「留出物」という用語は、150~370℃の真沸点範囲を有する炭化水素を意味する。灯油及びディーゼル生成物を含み得るが、これらに限定されない。
【0128】
「残油」という用語は、370℃を超える真沸点を有し、減圧蒸留塔への供給物である炭化水素を意味する。
【0129】
「軽油」という用語は、370~560℃の真沸点範囲を有する炭化水素を意味する。分留区画における減圧蒸留塔からのサイドカットとして得られる軽油を含み得るが、これに限定されない。
【0130】
「減圧残油」(又は「減圧残渣」)という用語は、560℃を超える真沸点を有し、燃料油流からより軽質の成分をフラッシュした後の塔底流として得られる炭化水素を意味する。
【0131】
「ピッチ」という用語は、高リフト溶剤脱れきユニットからのアスファルテンリッチ流である。
【0132】
「アスファルテン」という用語は、重質極性留分を意味し得るが、溶剤脱れきユニットに供給される供給残渣からレジン及び油が分離された後に残る残渣である。コンラドソン炭素及び金属(汚染物質)の1つ又は複数の実施形態は、後述される水素/炭素原子比(H/C)並びに金属及び他の成分の濃度とともに記載される。減圧残渣由来のアスファルテンは一般に、15~90重量%のコンラドソン又はラムズボトム残留炭素、及び0.5~1.5(質量比)の水素/炭素(H/C)原子質量比を有することを特徴とする。アスファルテンは、50ppm~5000ppm超のバナジウム及び20ppm~2000ppm超のニッケルを含有し得る。アスファルテンの硫黄濃度は、脱れきユニットへの減圧残渣油供給油中の硫黄濃度よりも110重量%~350重量%高い範囲であり得る。アスファルテンの窒素濃度は、脱れきユニットへの残渣油供給油中の窒素濃度よりも100重量%~350重量%高くなり得る。
【0133】
「レジン油」という用語は、脱れきユニットへの供給残渣から分離されたアスファルテン(ピッチ)と脱れき油との中間体である芳香族極性留分を意味する。レジンは、脱れき油よりも高密度又は重質であり得るが、アスファルテンよりも軽質であり得る。レジン生成物は、脂肪族置換側鎖を有する芳香族炭化水素を含み得て、ニッケル及びバナジウム等の金属も含み得る。
【0134】
「脱れき油」という用語は一般に、脱れきユニットで生成される最も密度の低い生成物であり、飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び一部の芳香族炭化水素を含む。脱れき油は、30重量%未満の芳香族炭素、及び10%未満の比較的低レベルの硫黄以外のヘテロ原子、例えば10重量%未満のヘテロ原子を含み得る。減圧残渣由来の脱れき油は一般に、1~12重量%未満のコンラドソン又はラムズボトム残留炭素、及び1.0~2(質量比)の水素/炭素(H/C)原子質量比として特徴付けることができる。脱れき油は、100ppm以下、例えば5ppm以下、5ppm未満、2ppm以下、又は2ppm未満のバナジウムを含有し得る。脱れき油は、100ppm以下、例えば、5ppm以下、5ppm未満、2ppm以下、又は2ppm未満のニッケルを含有し得る。脱れき油の硫黄及び窒素濃度は、脱れきユニットへの残渣油供給油の硫黄及び窒素濃度の90重量%以下であり得る。
【0135】
「重質脱れき油」という用語は、リフト(生成される脱れき油の量)が(減圧残渣供給物の重量基準として)60%を超える場合に、重質溶剤(ブタン又はより重質の分子量の炭化水素)を使用して溶剤脱れきユニットから通常生成される、レジンと脱れき油との混合物を意味する。
【0136】
「軽質脱れき油」という用語は、リフト(生成される脱れき油の量)が(溶剤脱れきユニットへの供給物の重量基準として)40%未満である場合に、軽質溶剤(プロパン等)を使用して溶剤脱れきユニットから通常生成される脱れき油を意味する。
【0137】
「水素化分解ユニット」という用語は、留出物、軽油範囲、及び脱れき油を、ナフサ又は超低硫黄ディーゼルのいずれかを最大化するホワイトオイル生成物に変換するために使用される固定床触媒プロセスユニットである。水素化分解プロセスは、360℃~420℃の反応温度範囲及び70bara~170bara(水素分圧)の範囲の反応圧力で実施される。水素化分解ゾーンにおける変換率は50~98%の範囲であり得て;液空間速度は0.5~3/時間(hr-1)であり得る。1つ又は複数の実施形態において、変換率は、2段階ユニット構成で約95%であると予想される。水素化分解ユニット中の触媒は、1つ又は複数の第VIII族金属及び1つ又は複数の第VIB族金属を含む不均一系固定床触媒である。第VIII族金属は、鉄、コバルト、及びニッケルからなる群から選択される1つ又は複数である。第VIB族金属は、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される1つ又は複数である。第VIII族金属は約2~20重量%の量で存在し得て、第VIB族金属は、約1~25重量%の量で存在し得る。一般に、これらの金属は、シリカ、アルミナ、又はそれらの組合せ等の担体材料上に含まれる。ゼオライトの形態の追加の酸性度が、水素化分解触媒又は促進剤、例えば第XV族酸化物のために存在し得る。第XV族酸化物は、残渣変換及び水素化処理触媒のために存在し得る。1つ又は複数の実施形態において、水素化分解ユニットは2段階水素化分解構成である。これは、変換効率及び供給物品質に役立ち得る。
【0138】
「溶剤脱れきユニット」という用語は、減圧残油、又はアスファルテンリッチピッチ流としてピッチ流中のアスファルテンが排除された重質供給物から脱れき油及びレジン(生成される場合)のより軽質なカットを生成する、C/C/C溶剤を利用する液液抽出ユニットである。溶剤脱れきユニット中の溶剤/油比は3:1~8:1であり、溶剤脱れきユニットの運転は、使用される溶剤の亜臨界又は超臨界圧力及び温度範囲のいずれかの下である。リフト(脱れき油、及び生成される場合にはレジンの生成量)は、(残油)供給物の30重量%~80重量%の範囲であり;最適には70重量%未満である。
【0139】
「ピッチペレット化ユニット」という用語は、溶剤脱れきユニットからのピッチがペレット化又はフレーク化されて、燃焼又はガス化のための燃料として使用され得る固形物を生成するユニットである。
【0140】
「減圧塔」という用語は、常圧残渣(原油蒸留ユニットからの370℃超で沸騰する炭化水素)を処理する減圧蒸留塔であって、大気圧未満の圧力(通常、フラッシュゾーンにおいて約300℃~約500℃の運転温度でフラッシュゾーンで約25水銀柱ミリメートル(mmHg)~約100mmHgの範囲)で運転され、軽油生成物(560℃未満で沸騰し、残渣は560℃超で沸騰する)を生成する減圧蒸留塔である。
【0141】
主要な液体生成物の流体結合が1つ又は複数の実施形態において示されており、他の流れ(プロセスフロースキームによる炭化水素及びその他)は1つ又は複数の実施形態において示されていないが、それらの包含が当業者によって理解され得る。
【0142】
「主要な」という用語は、流れ中の化合物又は化合物類が約50重量%、例えば約80重量%の量であることを意味し得る。
【0143】
「実質的に」という用語は、流れ中の化合物又は化合物類が約80モル%、例えば約90モル%又は約99モル%の量であることを意味し得る。
【0144】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprise)」、「有する(has)」、及び「含む(include)」という単語、並びにそれらの文法的変形例はそれぞれ、追加の要素又は工程を除外しないオープンで非限定的な意味を有することが意図される。
【0145】
「任意選択で」とは、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。この記載は、該事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含む。
【0146】
「およそ」又は「約」という単語が使用される場合、この用語は、±10%まで、5%まで、2%まで、1%まで、0.5%まで、0.1%まで、又は0.01%までの値の変動があり得ることを意味し得る。
【0147】
範囲は、おおよその1つの特定の値からおおよその別の特定の値までとして、それらを含めて表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の1つ又は複数の実施形態は、その範囲内のすべての特定の値及びそれらの組合せとともに、1つの特定の値から別の特定の値までであることが理解されるべきである。
【0148】
以下の請求項の1つ又は複数は、移行句として「where」又は「in which」という用語を利用することに留意されたい。本技術を定義する目的で、この用語は、構造の一連の特徴の記載を導入するために使用されるオープンエンドな移行句として請求項に導入され、より一般的に使用されるオープンエンドなプリアンブル用語である「含む(comprising)」と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。本技術を定義する目的で、「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲を記載された構成要素又は工程及び任意の天然に存在する不純物に限定するクローズドプリアンブル用語として請求項に導入され得る。本技術を定義する目的で、「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、1つ又は複数の請求項の範囲を記載された要素、構成要素、物質、又は方法工程、並びに特許請求の主題の新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の記載されていない要素、構成要素、物質、又は方法工程に限定するために請求項に導入され得る。「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、「含む(comprising)」及び「含む(including)」等のオープンエンドな移行句のサブセットであると解釈され得るため、一連の要素、構成要素、物質、又は工程の記載を導入するためのオープンエンドな句の使用はいずれも、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」というクローズドの用語を使用する上記一連の要素、構成要素、物質、又は工程の記載も開示すると解釈されるべきである。例えば、構成要素A、B、及びCを「含む(comprising)」組成物の記載は、構成要素A、B、及びC「からなる(consisting of)」組成物、並びに構成要素A、B、及びC「から本質的になる(consisting essentially of)」組成物も開示すると解釈されるべきである。本出願において表される定量的値はいずれも、「含む(comprising)」又は「含む(including)」という移行句と一致するオープンエンドな実施形態、並びに「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句と一致するクローズド又は部分的にクローズドな実施形態を含むと考えられ得る。「含む(comprise)」、「有する(has)」、及び「含む(include)」という単語、並びにそれらの文法的変形例はそれぞれ、追加の要素又は工程を除外しないオープンで非限定的な意味を有することが意図される。
【0149】
本開示の1つ又は複数の実施形態を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の恩恵を受ける当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

図1
図2
図3
【国際調査報告】