(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241204BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538351
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2022020406
(87)【国際公開番号】W WO2023121136
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184601
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】パク、 サンウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 スン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ウン-テ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジュン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ムンキュ
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072BB07
4G072DD04
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH01
4G072LL15
4G072QQ20
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT02
4G072TT30
4G072UU30
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本実施例は、シリコン系負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。一実施例に係るシリコン系負極活物質は、粒度分率(particle size fraction)D1が1μm以上であり、D99は20μm以下であり、酸化度は0.3%ないし3.0%の範囲であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分率(particle size fraction)D1が1μm以上であり、
D99は20μm以下であり、
酸化度は0.3重量%ないし3.0重量の%範囲である、シリコン系負極活物質。
【請求項2】
前記シリコン系負極活物質の球形化度は0.9以上である、請求項1に記載のシリコン系負極活物質。
【請求項3】
前記シリコン系負極活物質は、D99/D1が1.0ないし12.0の範囲である、請求項1に記載のシリコン系負極活物質。
【請求項4】
前記酸化度は0.32%ないし2.5%の範囲である、請求項1に記載のシリコン系負極活物質。
【請求項5】
シリコン粒子を準備した後、D99が20μm以下となるように粉砕するステップと、
前記D99が20μm以下となるように制御された粒子を湿式分類装置を用いて、D1が1μm以上となるように分類するステップと、
前記D99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を熱処理して、酸化度が0.3ないし3.0の範囲である粉末を製造するステップと、
を含むシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記D99が20μm以下となるように粉砕するステップは、
湿式ビーズミル、エアジェットミル、ピンミルおよびディスクミルのうちの少なくとも一つを用いて行われる、請求項5に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記D1が1μm以上となるように分類するステップは、
タンク、撹拌機および超音波生成器を用いて行われる、請求項5に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記D1が1μm以上となるように分類するステップは、
前記粉砕された原料をタンクに連結されたパイプに供給するステップと、
前記パイプを通じて供給された原料を撹拌機および超音波生成器を用いて粒子を分散するステップと、
前記分散した粒子を沈降させて沈殿物および上澄み液を得るステップと、
前記タンク下部に連結されたバルブを開け、一方向に位置するパイプを通じて沈殿物を排出するステップと、
前記沈殿物が排出された反対方向に位置するパイプを通じて上澄み液を排出するステップと、
前記沈殿物を乾燥してD99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を得るステップと、
を含む、請求項7に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記撹拌機および超音波生成器を用いて粒子を分散するステップは、
200RPMないし300RPMで撹拌しながら行われるものである、請求項8に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記撹拌機および超音波生成器を用いて粒子を分散するステップは、
300Wないし500Wの20kHz pulse超音波を30分ないし2時間照射して行われる、請求項8に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記D99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を熱処理して、酸化度が0.3ないし3.0の範囲である粉末を製造するステップで、
前記熱処理は大気雰囲気で、300℃~690℃範囲で1時間ないし2時間行われる、請求項5に記載のシリコン系負極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載のシリコン系負極活物質を含む負極と、
正極と、
電解質と、
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンは、非常に高い理論容量(Li15Si4:3600mAh/g)と低い作動電圧(>0.1V vs.Li/Li+)特性によって二次電池用負極材料として高い関心を集めていた。しかし、一般的なSi系負極材料の場合、サイクル中300%に達する体積変化とともに低い放電容量特性を示し、実際の電池に適用し難いというデメリットがある。
【0003】
このような問題を解決するために、最近、シリコン粗大粒子を(数ミクロン)活用し、理論的容量より少ない使用により、このような問題を解決しようとする試みらがある。
【0004】
しかし、シリコンを粉砕する過程で、微細に粉砕された粒子が容易に凝集するか大粒子の表面に再付着されるなどシリコン粒径が増加しながら電解液との副反応による被膜反応が増加し、そのために不可逆容量が増加して寿命が顕著に縮まる問題点が発生している。
【0005】
したがって、シリコン系負極材料を用いながらも電池の寿命特性を向上させることができる技術の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示では、寿命特性に優れたシリコン系負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るシリコン系負極活物質は、粒度分率(particle size fraction)D1が1μm以上であり、D99は20μm以下であり、酸化度は、0.3%ないし3.0%の範囲であってもよい。
【0008】
他の実施形態に係るシリコン系負極活物質の製造方法は、シリコン粒子を準備した後、D99が20μm以下となるように粉砕するステップと、前記D99が20μm以下となるように制御された粒子を湿式分類装置を用いて、D1が1μm以上となるように分類するステップと、前記D99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を熱処理して、酸化度が0.3ないし3.0の範囲である粉末を製造するステップと、を含む。
【0009】
他の実施形態に係るリチウム二次電池用電極は、一実施形態に係る負極、正極および電解質を含む。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、充電および放電時にシリコン粒子の体積膨張による寿命劣化を抑制することができ、表面にSiO2層が発達するので、電解液との反応性を低減させることによって非常に優れた寿命特性を確保することができる。
【0011】
また、シリコン粒子の表面に親水的な特性が与えられ、水系での分散性が向上し、電極製作時に極板の品質が低下することを防止できるので、電気化学的性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るシリコン系負極活物質の製造方法に用いられる装置を概略的に示したものである。
【
図2】
図2は、比較例3、実施例1および実施例5によって製造された負極活物質を用いて負極極板を製造した後、カメラを用いて撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1、第2および第3等の用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにだけ使用される。したがって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲から外れない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及されることがある。
【0014】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるのではない。
【0015】
ある部分が、他の部分の「の上に」または「上に」あると言及する場合、これはすぐに他の部分の上にまたは上にあることがあり、またはその間に他の部分が存在することもある。対照的にある部分が、他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在されない。
【0016】
特に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。普通使用される辞典に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的であるか非常に公式的な意味で解釈されない。
【0017】
シリコン系負極活物質
前述のように、シリコン系負極材料の場合、低い放電容量比率の特性を示すので実際の電池への適用が難しいというデメリットがある。
【0018】
このようなシリコン系負極活物質は、充電および放電時に発生される体積膨張によって寿命が劣化する問題点があった。したがって、本開示では、このような問題点を改善するためにシリコン粗大粒子を用いて、充電状態(State of Charge;SOC)を20%以上および80%以下に制限して用いるとき、最も効率的な寿命特性を実現できるシリコンの粒度分布および酸化度を有するシリコン系負極活物質を提供しようとする。
【0019】
具体的に、一実施形態では、粒度分率(particle size fraction)D1が1μm以上であり、D99は20μm以下であり、酸化度は、0.3%ないし3.0%範囲である、シリコン系負極活物質を提供する。
【0020】
本実施形態において、シリコン系負極活物質の粒度分率(particle size fraction)D1は1μm以上、より具体的に、1μmないし3μmまたは1.5μmないし2.5μmの範囲であってもよい。シリコン系負極活物質のD1が前記範囲を満たす場合、SOCを20%以上および80%以下に制限的に用いるとき、電気化学的寿命特性を効果的に向上させることができる。具体的に、前記のように、微粉を含まない適切な範囲の粗大シリコン粒子を用いる場合、SOCを制限して充放電するとき、シリコン粒子の膨張に起因した寿命劣化を防止することができる。また、リチウム充電反応は、表面に集中することになるが、このとき、負極活物質粒子の内部コア部分はシリコンの状態で存在し、表面はLixSiの形態でいることになる。本実施形態では、充電反応時に未反応の内部コアが収縮・膨張に対する支持体役割をすることになり、寿命特性が向上し、表面でのみ主に反応するため、出力特性も向上する。
【0021】
しかし、シリコン粒子のD1大きさが1μm未満の微粉の場合は、内部まで容易にLiと反応することになり、このような効果を奏し難い。そのため寿命特性が顕著に低下する。また、シリコン粒子のD1大きさが1μm未満の微粉は、電解液と副反応を増加させるドメイン(domain)の役割をするため、これによっても寿命特性が低下する。
【0022】
このような効果は、SOCを制限的に用いるときに具現される効果である。
【0023】
また、シリコン系負極活物質のD99は、20μm以下、より具体的に、1μmないし19μmまたは6μmないし15μmの範囲であってもよい。シリコン系負極活物質のD99が前記範囲を満たす場合、本実施例のシリコン系負極活物質を用いて電極を製造する場合、圧延工程で局部的に電極が押される現象が発生することを防止できるので、極板の品質を向上させることができ、そのために優れた電気化学性能を有する電池を実現することができる。
【0024】
前記シリコン系負極活物質は、D99/D1が1.0ないし12.0の範囲であってもよい。D99/D1値が前記範囲を満たす場合、寿命特性に優れるとともに電極製造工程が容易である。また、製造されたリチウム二次電池の電気化学的性能に優れている。
【0025】
次いで、前記シリコン系負極活物質の球形化度は0.9以上、より具体的に0.90ないし0.98の範囲であってもよい。球形化度が前記範囲を満たす場合、表面でのリチウム充電を均一に制御して充放電過程での表面劣化を抑制することができる。
【0026】
次いで、前記シリコン系負極活物質の酸化度は、0.3重量%ないし3.0重量%、より具体的に0.32重量%ないし2.5重量%または0.34重量%ないし2.3重量%の範囲であってもよい。
【0027】
本明細書で酸化度は、全体活物質で酸素が占める含有量を重量%で示すことを意味する。前記シリコン系負極活物質の酸化度は、LECO ONH836 Seriesを用いて測定した。
【0028】
本実施形態のシリコン系負極活物質で、シリコン粒子は、一定量の酸化処理をすることにより、表面にSiO2層が発達する。つまり、D1粒径およびD99粒径とともに酸化度を適切な範囲で制御することによって、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0029】
本発明では、シリコン系負極活物質のD1粒径およびD99粒径が前記範囲を満たすとともに、酸化度が前記範囲を満たす場合、シリコン系負極活物質の可逆的膨張および収縮が容易であるとともに、本実施形態のシリコン系負極活物質を用いた極板品質に優れているという点で有利な効果を有する。また、本実施形態のシリコン系負極活物質を適用したリチウム二次電池に対して優れた寿命特性および電気化学的特徴を確保することができる。
【0030】
シリコン系負極活物質の製造方法
以下、一実施形態に係るシリコン系負極活物質の製造方法を述べる。
【0031】
他の実施形態に係るシリコン系負極活物質の製造方法は、シリコン粒子を準備した後、D99が20μm以下となるように粉砕するステップと、前記D99が20μm以下となるように制御された粒子を湿式分類装置を用いて、D1が1μm以上となるように分類するステップと、前記D99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を熱処理して、酸化度が0.3ないし3.0の範囲である粉末を製造するステップと、を含んでもよい。
【0032】
まず、シリコン粒子を準備した後、D99が20μm以下となるように粉砕するステップを行う。
【0033】
シリコン粒子は、例えば、粗大シリコン粒子であってもよい。
【0034】
また、シリコン粒子のD99が20μm以下となるように粉砕するステップは、湿式ビーズミル、エアジェットミル、ピンミル、ディスクミルのうちの少なくとも一つを用いて行われてもよい。D99を前記方法のうち、エアジェットミルで粉砕する場合、粒子の球形化度が良くなるというメリットがある。
【0035】
次いで、前記D99が20μm以下となるように制御された粒子を湿式分類装置を用いて、D1が1μm以上となるように分類するステップを行う。
【0036】
前記D1が1μm以上となるように分類するステップは、タンク、撹拌機および超音波生成器を用いて行われてもよい。
【0037】
より具体的に、前記D1が1μm以上となるように分類するステップは、例えば、
図1に示された装置を用いて行われてもよい。
【0038】
図1を参考にすると、前記粉砕された原料をタンク7に連結されたパイプ1に供給するステップと、前記パイプ1を通じて供給された原料を、撹拌機6および超音波生成器5を用いて粒子を分散するステップと、前記分散した粒子を沈降させて沈殿物および上澄み液を得るステップと、前記タンク下部に連結されたバルブを開け、一方向に位置するパイプ2を通じて沈殿物を排出するステップと、前記沈殿物が排出された反対方向に位置するパイプ3を通じて上澄み液を排出するステップと、前記沈殿物を乾燥してD99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を得るステップと、を含む。
【0039】
前記撹拌機および超音波生成器を用いて粒子を分散するステップは、200ないし300RPMで撹拌しながら300Wないし500W 20kHz pulseの超音波を30分ないし2時間照射して行われてもよい。
【0040】
次いで、前記D99が20μm以下、D1が1μm以上となるように粒度が調節された粉末を熱処理して、酸化度が0.3ないし3.0の範囲である粉末を製造するステップにおいて、前記熱処理は大気雰囲気で、300℃~690℃の範囲で1時間ないし2時間行われてもよい。このとき、熱処理温度は、より具体的に、300℃~650℃の範囲で行われてもよい。
【0041】
本発明の他の実施形態では、前述した本発明の一実施形態に係るシリコン系負極活物質を含む負極、正極、および前記負極および正極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0042】
前記負極は、負極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を混合して負極活物質層形成用組成物を製造した後、これを負極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0043】
前記負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
前記負極活物質としては、前述した本発明の一実施形態と同一であるので省略することにする。
【0045】
前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース/スチレン-ブタジエンゴム、ヒドロキシプロピレンセルロース、ジアセチレンセルロース、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。前記バインダーは、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して1重量%ないし30重量%で混合されてもよい。
【0046】
前記導電材としては、電池に化学的変化を引き起こすことなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスキー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。前記導電材は、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して0.1重量%ないし30重量%で混合されてもよい。
【0047】
次いで、前記正極は、正極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を混合して正極活物質層形成用組成物を製造した後、この組成物を正極集電体に塗布して製造することができる。このとき、バインダーおよび導電材は前述した負極の場合と同一に用いられる。
【0048】
前記正極集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等での表面処理したものを用いてもよい。
【0049】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を用いてもよい。
【0050】
前記正極活物質は、具体的に、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを用いてもよく、その具体的な例としては、下記の化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を用いてもよい。
【0051】
LiaA1-bRbD2(前記の式で、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);LiaE1-bRbO2-cDc(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、および0≦c≦0.05である);LiE2-bRbO4-cDc(前記の式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobRcDα(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcDα(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(前記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d0.5および0.001≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(前記の式で、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(前記の式で、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(前記の式で、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(前記の式で、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);およびLiFePO4。
【0052】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり、Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり、Zは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり、Tは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0053】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩とを含む。
【0054】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動できる媒質役割を果たす。
【0055】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0056】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が用いられてもよく、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が用いられてもよいことは言うまでもない。
【0057】
リチウム二次電池は用いるセパレータと電解質の種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態によって、円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによって、バルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これら電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明は制限されず、本発明は、後述する請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0059】
実施例1
100μm以下の粒度を有するSi原料をエアジェットミルを用いて、D99が10μm以下の粒度を有するように気流粉砕を実施した。粉砕されたSi粉末をエタンオールと重量比10%で混合してスラリーを製造した。
【0060】
前記のように粉砕されたスラリーを湿式分類機のタンクに移送させ、1000RPMで撹拌をしながら超音波を300W 20kHz pulse形態で30分間照射した。
【0061】
次いで、撹拌および超音波を中断させ、重い粒子が沈降するように1hr放置し、放置後に下部から投入量の10vol%を回収した。このように回収された沈殿物を再びタンクに移送させ、同一の作業を2回繰り返し、下記の表1に記載されたD1、D10、D50、D90、D99粒度を有するシリコン系負極活物質を得た。
【0062】
実施例2
湿式分類を1回実施したことを除いては、実施例1と同様な方法でシリコン系負極活物質を製造した。
【0063】
実施例3
気流粉砕時に、D99が平均20μmの粒度を有するように粉砕を実施したことを除いては、実施例1と同様な方法で負極活物質を製造した。
【0064】
比較例1
D99が10μm以下に粉砕されたシリコンを湿式分類なしに負極活物質として用いた。
【0065】
比較例2
D99が平均20μmに粉砕されたシリコンを湿式分類なしに負極活物質として用いた。
【0066】
比較例3
100μm以下の粒度を有するSi原料を別途の前処理なしに負極活物質として用いた。
【0067】
実施例4
実施例1で得られたシリコン系負極活物質に対して、大気雰囲気で、300℃で1hrの間熱処理した。
【0068】
実施例5
実施例1で得られたシリコン系負極活物質に対して、大気雰囲気で、400℃で1hrの間熱処理した。
【0069】
実施例6
実施例1で得られたシリコン系負極活物質に対して、大気雰囲気で、500℃で1hrの間熱処理した。
【0070】
実施例7
実施例1で得られたシリコン系負極活物質に対して、大気雰囲気で、600℃で1hrの間熱処理した。
【0071】
比較例4
実施例1で得られたシリコン系負極活物質に対して、大気雰囲気で、700℃で1hrの間熱処理した。
【0072】
実験例1-負極活物質の特性の評価
(1)コイン型フルセル電池製造
前記のように製造されたシリコン系負極活物質を用いてCR2032コインセルを製造した後、電気化学評価を行った。
【0073】
具体的には、PAA(polyacrylic acid)バインダー1.2gをDe-ionized water 11gと混合してthinky mixerで10分間撹拌した後、負極活物質2.4gとsuper-P導電材0.4gを定量して混合した後、追加的に10min間撹拌した。
【0074】
次いで、Cu集電体上に前記スラリーをコーティングし、乾燥した後に圧延して負極極板を製造した。前記負極のローディング量は約3mg/cm2であり、電極密度1.2~1.3g/ccであった。
【0075】
対極として用いられた正極は、super-C6を50.15gとPVdFバインダーを1.67g入れ、thinky mixerで3分間撹拌した後、正極活物質NCMを9.65gとNMPを1.5g入れ、追加的に3分を撹拌した。
【0076】
次いで、Al集電体上に前記スラリーをコーティングし、乾燥した後に圧延して正極極板を製造した。前記正極のローディング量は18mg/cm2であり、電極密度は3.5~3.6g/ccであった。
【0077】
前記負極、正極、電解液とポリプロピレンセパレータを用いて、通常の方法で2032コイン型フルセル電池を製造した。前記電解液は、1MのLiPF6をエチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(混合比EC:EMC=3:7体積%)に溶解して混合溶液を製造した後、ここにビニレンカーボネート(VC)1.5重量%とFEC10重量%を添加して用いた。
【0078】
(2)寿命特性の評価
前記1で製造されたコイン型ハーフセル電池を、常温(25℃)で10時間エイジング(aging)した後、寿命特性を評価した。
【0079】
容量評価は、2500mAh/gを基準容量とした。4.25V~2.5Vの作動電圧区間で充放電テストを行い、充放電時の電流は、初期サイクルでは、0.1Cで測定した。最初の1C容量を基準に、充放電時に0.5Cの電流を印加して100回サイクル寿命を測定した。このとき、充電cut-off currentは、0.005Cに設定した。
【0080】
前記条件で評価するとき、負極は約SOC40%水準で充放電を実施することになる。
【0081】
【0082】
表1を参照すると、シリコン原料を前処理なしに用いた比較例3の寿命特性が最も劣るものと測定された。また、湿式粉砕を通じて比較例2および3のように最大粒径を減少させると、寿命特性は多少改善されたが、比較例1のようにD99粒径を約10μmに減少させても効果は大きくなかった。そのため、湿式超音波分類を行って1μm以下の微粉を減少させると、実施例1および2のように効果的に寿命特性が向上することを確認できた。
【0083】
実施例1から得られた粉末を実施例4および5のように熱処理工程を通じて酸化処理を行うと、寿命がより向上することを確認できる。
【0084】
ただし、比較例4のように熱処理温度を700℃に高める場合、酸化度が過度に増加してむしろ寿命特性が低下することを確認できる。
【0085】
実験例2-電極品質の評価
比較例3、実施例1および実施例5によって製造された負極活物質を用いて実験例1の(1)に記載のような方法で負極極板を製造した。
【0086】
次いで、前記のように製造した負極極板の表面をカメラを用いて撮影した後、肉眼で確認した。イメージは
図2に示した。
【0087】
図2を参照すると、原料を前処理なしに用いた比較例3の負極活物質を用いて製造した負極極板が、圧延後に局部的に押される現象が最も多く観察された。
【0088】
これに対し、実施例1のように大粒のシリコン粒子を粉砕してD99粒度を10μm以下に減少させる場合、負極極板の製造時に局部的に押される現象が顕著に改善されることを確認できる。
【0089】
また、負極活物質の表面を酸化処理した実施例5の負極活物質を用いて製造した負極極板は、バインダーとの親和性が向上し、電極内の負極活物質の分散が改善されるので、電極品質がより向上することを確認できた。
【0090】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施できるということを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであって限定的ではないものと理解しなければならない。
【国際調査報告】