(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】アクスルハウジングのための改良された支持構造
(51)【国際特許分類】
B60B 35/16 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B60B35/16 D
B60B35/16 B
B60B35/16 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538384
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022052612
(87)【国際公開番号】W WO2023121906
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524237515
【氏名又は名称】マグナ パワートレイン オブ アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】ストランド,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ショウ,ライアン
(57)【要約】
アクスルアセンブリは、中空のアクスルチューブを収容する収容穴が形成されたキャリアハウジングを有する。アクスルシャフトは、アクスルチューブを通ってアウトボード側端部まで延び、ホイールハブに固定される。ホイールハブは、アクスルチューブの周囲に延び、アクスルチューブに対して回転可能である。アクスルチューブは、締まり嵌めで収容穴内に取り付けられる。収容穴は、二重リング構造の内側リングによって形成される。二重リング構造の内側リングと外側リングの間には、複数のリブが半径方向に延びている。二重リング構造では、アクスルチューブへの下向きのシャシ荷重に応じて、ホイールの端部において上向きへの反力が生じ、一重リング構造に比べて曲げ荷重によって生じる応力集中が低減されている。キャリアハウジングとアクスルチューブは異なる材料であり、溶接することなく固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスルのための支持構造であって、
キャリアハウジングと、
前記キャリアハウジングのアウトボード側端部に形成された収容穴であって、
中空のアクスルチューブのインボード側端部を収容するように構成された収容穴と、
前記キャリアハウジングの二重リングハウジング構造であって、
前記収容穴を形成し、且つ、半径方向内側リングおよび半径方向外側リングを有する二重リングハウジング構造と、
を備え、
前記半径方向内側リングは、前記中空のアクスルチューブを締まり嵌めで受けるように構成されており、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記キャリアハウジングにかかる応力を低減する、
支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記半径方向内側リングおよび前記半径方向外側リングは、インボード方向に厚くなるテーパ状の厚みを有する、
支持構造。
【請求項3】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、周方向に互いに離れて配置された複数の内側リブを有し、
前記複数の内側リブは、前記半径方向内側リングと前記半径方向外側リングとの間に半径方向に延在する、
支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記半径方向内側リングおよび前記半径方向外側リングはそれぞれ、中心長手方向軸線の周りに延在する閉ループを形成する、
支持構造。
【請求項5】
請求項3に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、セントラルハウジングのアウトボード側の面に接続するよう構成されたインボード側半径方向フランジを含む、
支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、周方向に互いに離れて配置された複数の外側リブを含み、
前記複数の外側リブは、前記半径方向外側リングと前記インボード側半径方向フランジとの間に延在する、
支持構造。
【請求項7】
請求項6に記載の支持構造であって、
前記複数の内側リブと前記複数の外側リブとは半径方向に位置合わせされている、
支持構造。
【請求項8】
請求項3に記載の支持構造であって、
前記複数の内側リブは、前記内側リングと前記外側リングとの間に複数の空間を形成している、
支持構造。
【請求項9】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記内側リングと前記外側リングは、前記収容穴の基部のインボード側の位置で互いに結合されている、
支持構造。
【請求項10】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記外側リングは、前記二重リング構造の長手方向の所与の位置において、前記内側リングに比べ、半径方向の厚みが薄い、
支持構造。
【請求項11】
車両用のアクスルアセンブリであって、
キャリアハウジングであって、そのアウトボード側端部に収容穴が形成されているキャリアハウジングと、
前記収容穴に収容されるインボード側端部を有する中空のアクスルチューブと、
前記キャリアハウジングの二重リングハウジング構造であって、前記収容穴を形成し、且つ、半径方向内側リングおよび半径方向外側リングを有する、二重リングハウジング構造と、
を備え、
前記中空のアクスルチューブは、締まり嵌めで、前記半径方向内側リングに収容され且つ固定され、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記キャリアハウジングにかかる応力を低減する、
アクスルアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記アクスルチューブは、前記半径方向内側リングの内径より大きな直径を有する、
アクスルアセンブリ。
【請求項13】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記内側リングは、前記外側リングより厚みが大きい、
アクスルアセンブリ。
【請求項14】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記内側リングと前記外側リングとの間に半径方向に延在する複数の内側リブを更に備え、
前記複数の内側リブは、前記内側リングと前記外側リングとの間に複数の空間を形成している、
アクスルアセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載のアクスルアセンブリであって、
前記外側リングと前記キャリアハウジングのインボード側端部に配設された半径方向フランジとの間において、前記外側リングから半径方向外方に延在している複数の外側リブを更に備える、
アクスルアセンブリ。
【請求項16】
請求項15に記載のアクスルアセンブリであって、
前記複数の内側リブと前記複数の外側リブとは面状に位置合わせされている、
アクスルアセンブリ。
【請求項17】
請求項1に記載のアクスルアセンブリであって、
前記中空のアクスルチューブに接続されたスプリングマウントを更に備え、
前記スプリングマウントは下向きのシャシ荷重を受ける、
アクスルアセンブリ。
【請求項18】
請求項17に記載のアクスルアセンブリであって、
前記中空のアクスルチューブを通って延在し、且つ前記中空のアクスルチューブに対して回転可能な、アクスルシャフトと、
前記アクスルシャフトに、アウトボード側端部において、固定されたホイールハブと、
を更に備え、
前記ホイールハブは前記中空のアクスルチューブの周囲に延在し、且つ、
径方向において前記ホイールハブと前記中空のアクスルチューブとの間に配設された複数のベアリングを介して、前記中空のアクスルチューブ上に支持され、
前記ホイールハブは、前記中空のアクスルチューブおよび前記キャリアハウジングに対して、前記アクスルシャフトと共に回転する、
アクスルアセンブリ。
【請求項19】
請求項18に記載のアクスルアセンブリであって、
前記ホイールハブに取り付けられたホイールにより、前記下向きへのシャシ荷重に応じて、前記アクスルチューブの前記アウトボード側端部において上向きへの反力が生じ、これにより前記締まり嵌めにおいて曲げ荷重が生じ、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記締まり嵌めにおける応力集中がより小さい、
アクスルアセンブリ。
【請求項20】
請求項20に記載のアクスルアセンブリであって、
前記キャリアハウジングおよび前記アクスルチューブは異なる金属製であり、溶接することなく、前記締まり嵌めによって確実に固定される、
アクスルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連する出願への相互参照>
本出願は、2021年12月22日に出願された米国仮特許出願第63/292,741号に基づく利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、主にアクスルハウジング及びアクスルチューブの支持構造に関する。
【背景技術】
【0003】
本節の記載は、本開示に関連する背景情報を提供するものにすぎず、先行技術を構成しうるものではない。
【0004】
自動車産業においては以前からソールズベリー(Salisbury)型のアクスルが使用されている。この種のアクスルハウジングでは、一般に、鋳鉄製のキャリアハウジングの一対の穴の各々に鋼製のアクスルチューブが圧入されている。各アクスルチューブは、当該キャリアハウジングに形成された半径方向に延在する各穴を通じて、キャリアにプラグ溶接されている。キャリアハウジングには、2つの主要応力源からの応力に耐えられる強度が求められる。第1の応力源は、接線方向応力および半径方向応力である。接線方向応力および半径方向応力は、アクスルチューブがキャリアハウジングに圧入されるときの、アクスルチューブとキャリアハウジングとの間の締まり嵌めに起因するものである。第2の応力源は、曲げモーメントおよびそれに伴う曲げ応力である。曲げモーメントおよびそれに伴う曲げ応力は、キャリアハウジングとチューブとの界面で、スプリングマウントおよびホイールにかかるサスペンション荷重によって発生する比較的大きな応力である。
【0005】
より最近では、車両の軽量化とそれに伴う燃料効率の向上とを求める顧客の要求に応じて、鋳鉄の代わりに、アルミニウム鋳物または他の非鉄合金がアクスルキャリアの製造に使用されている。アルミニウム鋳物製のアクスルキャリアを使用すると、鋳鉄製キャリアハウジングのプラグ溶接法を使用できないので、鋼製チューブの取り付け時に課題が生じる。アルミニウム製アクスルキャリアの高負荷試験時、キャリアハウジングのアウトボード側端部には、比較的大きな合成応力場があるため、破断起点位置があることが知られている。材料が軽量の場合、応力や撓みが大きく強度や疲労寿命の悪化につながる。この問題はより高強度の材料により解決可能だが、重量が重くなり、費用がかかることになる。その他の従来技術では、機能性を向上させ得る領域に強化用部材を取り付け、アクスルチューブとキャリアハウジングとの間の界面を取り囲むことが知られている。しかし、そのような強化用部材は、複雑であり、費用がかかる。したがって、従来の鋳鉄製アクスルキャリアに匹敵する強度を有しながら、従来のものより軽量化された、新規かつ改良されたアクスルキャリアハウジングの設計の研究が、自動車設計技術者により続けられている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、円筒状の中空チューブを収容するように構成されたキャリアハウジングを有する、改良された支持構造を提供することを目的とする。チューブの挿入された箇所を取り囲む、キャリアの一部分は、応力を低減するように改良されたハウジング構成を含む。
【0007】
アクスルハウジングは、応力を低減して撓みを制限するよう、アクスルチューブ挿入穴の周囲に周方向に配置された複数のリブ構造によって相互接続された二重リング構造を含んでもよい。アクスルハウジングとアクスルチューブとの間は、二重リング支持構造によって改良された締まり嵌めであってもよい。
【0008】
キャリアハウジングに関する本発明の一態様においては、同心円状に配置された二重リング構造がアクスルチューブ挿入穴の周囲に周方向に配置された複数のリブ構造によって相互接続されており、この二重リング構造を使用して、軽量材製キャリアと鋼製チューブとを使用しつつ、高負荷時の撓みを制限し、ひいては応力を許容可能なレベルまで低減する。
【0009】
本開示の一態様は、二重リングとハウジングリブとが一体化された設計を使用して、曲げ荷重および曲げ応力をハウジング全体に分散させることができて、局所的応力レベルが、軽量の鋳造材料を使用可能になる程度まで下がった状態に維持される。
【0010】
本開示の一態様は、二重リングとハウジングリブとが一体化された設計を使用して、挿入穴とキャリアハウジングの取り付けフランジの間の撓みを制限する。
【0011】
本開示の一態様は、チューブとキャリアハウジングとの間に改良された干渉界面があり、これにより2つの異なる金属の溶接または接着が不要となる。
【0012】
本発明の一態様は、最適化された軽量の支持構造を使用することで、構成要素を追加することなく、キャリアハウジングの強度を向上させることができる。
【0013】
本発明の上記および他の諸特徴および諸利点は、以下の詳細な説明および添付の図面に関連付けて検討されると、より容易に理解されるであろう。
【0014】
本明細書に記載の図面は、選択された実施形態を例示する目的のみに使用され、本開示の範囲を限定するものではない。本開示に関連する発明の概念は、以下の説明を添付の図面と組み合わせて参照することで、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】複数の荷重点および関連する構成要素を示す、アクスルチューブおよびキャリア端部の断面図である。
【
図2】二重リング構造を有するキャリアハウジングの断面図であり、取り付けられたアクスルチューブを含めた図である。
【
図3】二重リング構造を有するキャリアハウジングの等角図である。
【
図4】従来の一重リング構造を有するキャリアハウジングのFEA応力解析である。
【
図5】本開示の二重リング構造を有するキャリアハウジングのFEA応力解析である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照して例示的実施形態をより詳細に説明する。これらの例示的実施形態は、本開示が完全になるように、および特許請求の範囲によって最終的に規定される範囲を当業者に十分に伝えられるように記載されていること認識されたい。
本開示の複数の実施形態を理解できるよう、具体的な構成要素、装置、および方法の例など、具体的な詳細を多数記載している。特定の具体的詳細を採用する必要はないこと、複数の例示的実施形態は多くの異なる形態で具体化され得ること、および本開示または特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきでないこと、は当業者には明らかであろう。一部の例示的実施形態において、十分に理解されているプロセス、十分に理解されている装置構造、および十分に理解されている技術は、詳細に記載されていない。
【0017】
図1を参照すると、アクスルアセンブリ10全体の一部分が図示されており、アクスルアセンブリ10の複数の構成要素の全体的配置および、走行中にアクスルアセンブリ10にかかる車両荷重を説明するものである。アクスルアセンブリ10のおよそ半分が図示されているが、図示される複数の構成要素および配置を反転させてもう半分と合わせると、1つの完全なアクスルアセンブリ10になる。アクスルアセンブリ10はソールズベリー型の構造であり、アセンブリのインボード側端部18にあるキャリアハウジング16の収容穴14に、一対のアクスルチューブ12が挿入されている(
図1の右側)。アクスルチューブ12を軟鋼製にしてもよく、同時にキャリアハウジング16を鋳造可能なアルミニウム製にしてもよい。これにより、アクスルアセンブリ10が軽量化される。本開示は材料の種類を限定するものではないが、このような異なる金属を使用する場合は、このような構成を実現するために、新しいアプローチが必要になる。例えば、応力の低減、およびキャリアハウジング16とチューブ12との接合方法として鋼/鋳鉄設計に使用されてきた従来のプラグ溶接とは異なる方法の開発などが必要になる。
【0018】
引き続き
図1を参照すると、アセンブリのアウトボード側端部20には、ホイールハブ24のアウトボード側に対向するフランジ22に車両のホイールが取り付けられる。この「フルフローティング」ホイール端部構成において、ホイールハブ24は、ベアリング26を介して、チューブ12によって直接支持される。アクスルシャフト30は、インボード側端部18からアウトボード側端部20まで、チューブ12を貫通する。アクスルシャフト30は、キャリアハウジング16内のディファレンシャルまたはギアトレーン(不図示)からのアクスル出力をホイールハブ24(アウトボード側端部においてアクスルシャフト30にボルト止めされている)と、取り付けられている車両ホイールとに伝達する。アクスルシャフト30は、位置32において、ホイールハブ24に接続されている。車両ホイール(不図示)は、ホイールハブ24に取り付けられる。ホイールハブ24のインボード側の直近には、ブレーキシステムの構成要素の取り付けに使用されるブラケット32が位置している。更にインボード側には、スプリングマウント34がアクスルチューブ12の上に取り付けられている。スプリングマウント34は、板ばねまたはコイルばね(不図示)を介して、車両のシャシフレームを支持する。シャシからの荷重は、シャシ荷重40と称され、スプリングマウント34を介してアクスルチューブ12にかかり、アクスルチューブ12からホイールハブ24を介して車両の支持ホイールに伝達される。アクスルアセンブリ10の不図示の半分側にも、同様のシャシ荷重40がかかるとみなす。スプリングマウント34から更にインボード側には、ストップパッド36がチューブ12の上面に取り付けられている。ストップパッド36は、バンプストッパ装置の面として、サスペンションのトラベル量を制限する。時には、車両の走行中、可撓性/弾性バンプストッパを介してシャシとストップパッド36が接触するほどサスペンションが圧縮することがある。衝撃を受け止めるショックマウント38が、チューブ12に沿ってストップパッド36にほぼ位置合わせされ、アクスルチューブ12の底部に固定されている。ショックマウント38は、スプリングの振動を減衰させ、アクスルアセンブリ10を安定させるために使用される。これら別の界面には、シャシからチューブ12へさらなる荷重、ひいては応力が発生する。しかし、収容穴14の界面を取り囲むキャリアハウジング16に影響を与える主な負荷は、シャシ荷重40と合成的なホイール荷重42(図示の、アウトボード側端部におけるシャシ荷重40とは逆方向の荷重)であり、アクスルチューブ12とキャリアハウジング16との間は締まり嵌めとなっている。
【0019】
車両の走行中、特に悪路を移動中、または重い積載物の運搬時、上述のように、2箇所(車両の各側)において、荷重がスプリングマウント34を介して鉛直方向下向きにアクスルアセンブリ10にかかる。アクスルアセンブリ10の各アウトボード側端部にあるホイールハブ24は、各ホイールからの合成的なホイール荷重42をかける。これらの荷重がアクスルチューブ12沿いの異なる位置にかかるので、アクスルアセンブリ10に曲げ応力が生じる。これは、実質的に上向きの荷重42がアウトボード側端部20を上方に変位させる一方で、シャシ荷重40は下方向に加わるためである。アクスルアセンブリ10は、粗面または窪みへの衝突による衝撃により、非常に大きな曲げ応力がかかる可能性がある。これにより、チューブ12が挿入されている箇所を取り囲む領域において、キャリアハウジング16への応力が大きくなる。
【0020】
図2を参照すると、キャリアハウジング16のチューブ挿入領域のより詳細な図が示されている。
図2に示されている断面図は、車両の反対側であり、アウトボード側端部(不図示)が右側に、インボード側端部が左側に示されている。
図2では、チューブ12が左側に挿入されている。本開示の目的のために、アクスルアセンブリ10全体は、以下のハウジング構成を備える。一対のキャリアハウジング16(
図2には一方のみを図示)の間に、セントラルハウジング50が配置されている。キャリアハウジング16は、複数の締結具52によってセントラルハウジング50に固定され、強固に接続されている。キャリアハウジング16は、テーパ形状であり、各端部に複数の開口部を有する。第1インボード側端部54は、より大きな開口部を有し、セントラルハウジング50の面58に接合されるボルトフランジ56によって定められている。フランジ56は、複数の締結具52を収容するための、周方向に配置された複数の開口51(
図3)を有する。このような配置により、キャリアハウジング16とセントラルハウジング50とは強固に接続されている。キャリアハウジング16は収容穴14にアクスルチューブ12を収容するが、このキャリアハウジング16の反対側端部(
図2の右側)には、収容穴14を取り囲む二重リング補強構造70が設けられている。アクスルチューブ12と収容穴14との間(特にアクスルチューブ12と二重リング補強構造70の内側リングとの間)の接合部は、締まり嵌めまたは圧入嵌め構成となっている。
【0021】
本開示の一態様によると、キャリアハウジング16の材料はダイカストアルミニウムであり、アクスルチューブ12は鋼製であるので、このような異なる金属の溶接が不要な締まり嵌めが好適である。締まり嵌めは、接合部内の一定の応力および摩擦により維持される。アクスルアセンブリ10は極端に高い周囲温度および動作温度、ならびに上記のような曲げ荷重を受けることになるので、さまざまな走行条件下で界面が変化しないことが望ましい。界面の変化が起こると、接合部の締まり嵌めが維持できなくなる。アルミニウムと鋼とでは熱膨張係数が極めて異なるので、キャリアハウジング16の収容穴14とアクスルチューブ12の外径60との間に有効な締まり嵌めがもたらされる。このような締まり嵌めにより、穴14からアクスルチューブ12が離脱することや、穴14内でアクスルチューブ12が回転することが防止されたり、制限されたりする。あらゆる走行条件下で構成要素同士がしっかりと接続された締まり嵌めを実現するために、アクスルチューブ12の外径60は、キャリアハウジング16の収容穴14の直径より大きくなっている。これら構成要素同士が接合されると、アクスルチューブ12の外径60から穴14に力がかかり、キャリアハウジング16に応力が伝わる。これらの応力は半径および接線応力であり、収容穴14の内径62の近くに最も集中する。穴14を半径方向外側で直接取り囲むリング構造が、締まり嵌めによる力に耐えられるほど十分に構造的に強力でない場合、アクスルチューブ12からの半径方向外向きの力によって収容穴14が歪んで収容穴14の直径が大きくなることもある。従来の鋳鉄製キャリアハウジング16においては、鋳鉄製材料は高強度であるため、また、キャリアハウジング16へのアクスルチューブ12のプラグ溶接が可能であるため、収容穴14の周囲の領域は簡単な一重リング構造となっている。このような一重リング構造をアルミニウムダイカスト製キャリアハウジング16と併用可能であるかどうかを解析したところ、歪みを防止するためにリング厚を増した場合でも、提案の二重リング構造70に比べ、複数の欠点が見つかった。アルミニウムダイカスト製の一重リング構造の一欠点として、厚みが増した一重リングの重量の増加が挙げられた。一重リングを使用すると、収容穴14の長さに沿った締まり嵌めのばらつきも大きくなり、これにより、締まり嵌めの力のみによって、リング構造内で応力の集中や力の不均一な分散が生じた。
【0022】
引き続き
図2を参照すると、キャリアハウジング16の二重リング構造70は、収容穴14を取り囲んでいる。二重リング構造70は、内側リング72と外側リング74とを含む。これらのリングは何れも連続形状であり、収容穴14を周方向に完全に取り囲んでいる。換言すると、各リングの、構造70の長手方向軸線を垂直に切った断面は、構造70の長さに沿った何れの点においても閉ループとなっている。内側リング72および外側リング74の断面(
図2に示されているように長手方向に平行)は可変であり、収容穴14の領域において、アウトボード側の面78からフランジ56に向けて厚み76が大きくなっている。アウトボード側の面78で測定すると、内側リング72のリング厚76aは、半径方向外側74のリング厚76bより厚い。二重リング構造70においては、応力を増加させずに、外側リング74のリング厚76bを僅かに薄くできることが分かった。一連のリブ80は、互いに等間隔で配置され、ある態様においては、内側リング72と外側リング74とを相互接続している。これらのリブ80により、中実材料の充填を必要とせずに内側リングと外側リングとが構造的に接続され、費用削減および軽量化が可能となる。内側リング72および外側リング74はテーパ状のまま各リング厚76が大きくなり、最終的に、収容穴14の終端位置のインボード側で合体し、一体化されたリング構造82となる。両リングの断面厚76を収容穴14の長さに沿って変化させ、内側リング72と外側リング74とをリブ80によって結合することで、シャシ荷重40による曲げと締まり嵌めとによって生じる力からの応力分散がより均一になる。このような二重リング構造70の使用によって、締まり嵌めの力による収容穴14の内径62の撓み、特にアウトボード側の面78側の撓みも低減された。また、内側リング72と、外側リング74、および複数の接合リブ80を組み合わせて使用することによって、接線および半径応力を分散させるレベルを改良された方法で均衡化する。このようにして撓みをなくすと、圧入領域における応力が安定し、小さくなり、接合部内の摩擦効果と組み合わされて、アクスルチューブ12とキャリアハウジング16との間の適正な接続が保証される。キャリアハウジング16の曲げ応力を更に低減するために、一連の三角形リブ90は、半径方向外側リング74をインボード側のフランジ56に構造的に接続している。リブ90は、リブ80に周方向に且つ面状に位置合わせされており、シャシ荷重40および合成的なホイール荷重42によるフランジ56に対する収容穴14の撓みおよび剛性を改善する。二重リング構造70、リブ80、およびリブ90の使用によって、曲げ荷重および応力をキャリアハウジング16全体に分散させて局所的な応力レベルを十分に下げることができるので、キャリアハウジング16に軽量の鋳造可能材料を使用することができる。
【0023】
次に
図3を参照すると、内側リング72と外側リング74、並びにその間に周方向に配置された複数のリブ80を備えた二重リング構造70が明確に示されている。リブ80が両リング同士を接続していない領域には、ポケット92が形成されている。ポケット92は、アウトボード側の面78から、内側リング72と外側リング74とが互いに近付いて一体化されたリング82を形成する位置まで延在している(
図2参照)。この図では、リブ90とリブ80との周方向且つ面状の位置合わせもより良好に見える。リブ80およびリブ90は、収容穴14の中心長手方向軸線から半径方向に延在する同じ平面に形成されている。また、キャリアハウジング16をセントラルハウジング50に接続する複数の締結具52を受け入れるための、複数の開口または貫通孔51も見える。
【0024】
ここで、
図4および
図5を参照して両図を比較する。これらの図は、有限要素応力解析(FEA:finite element stress analysis)のプロットであり、
図4は従来の一重リング構造を有するアクスルアセンブリ10のプロットを示し、
図5は二重リング構造70を有するアクスルアセンブリのプロットを示している。両アクスルアセンブリ10は、セントラルハウジング50と、その各側に取り付けられた一対のキャリアハウジング16とを含む。解析には、シャシ荷重40の5倍に相当する衝撃荷重を使用した。シャシ荷重40はスプリングマウント34の位置にかかり、合成的なホイール荷重42はベアリング26を介してホイールハブ24にかかった。この解析においては、上記のようにキャリアハウジング16に挿入された一対のアクスルチューブ12を考慮した。このような力は、アクスルアセンブリ10に曲げモーメントを生じさせ、理論上のフォンミーゼス応力が計算され、各図に示されるように高応力領域がプロットされる。フォンミーゼス応力のこのようなプロットを使用して、材料の撓みまたは割れを判定できる。両図には、ダイカストアルミニウム材料の懸念事項である高応力領域を、「X」と規定した領域で示す。「X」内の色の濃い領域は最大応力を表している。なお、
図4の一重リング構成に比べ、
図5の二重リング構造70の構成では、高応力の領域が大幅に縮小している。
図5の二重リングの実施形態においては、高応力領域Xの大きさが縮小している。加えて、
図5においては、収容穴14に沿って、高応力領域全体の面積が特に縮小しているので、接合領域内に発生する撓みが減少し、締まり嵌めが確実に維持されることになる。
図5では、収容穴14の領域にいくつかの高応力領域が依然として見られるが、これらの領域は局所的であり、
図4に比べ、絶対レベルはより低い。また、リブ90の領域でも、応力が著しく小さくなっている。その理由は、二重リング構造70とリブ90との組み合わせによって収容穴14がボルトフランジ56に対して確実に垂直に維持されるため、撓みが最小になるからである。したがって、上記の設計改良点により、別途接合方法(溶接など)または構成要素は必要なく、ダイカストアルミニウム製キャリアハウジング16に鋼製アクスルチューブ14を成功裏に一体化し且つ接合して機能させることができる。色を濃くされておらず高応力領域であることを示さない領域は、全てが同じ応力レベルを有する訳ではなく、高応力と見做されるレベル未満の領域であることを理解されるであろう。FEAプロットは、異なる応力レベルの勾配および高応力と低応力との間の応力遷移を含む。
図4および
図5は、従来の一重リング構造に比べて減少した高応力領域を示すものであるが、実際の応力レベルは実際の型および実際の荷重に依存すること、および応力レベルは、FEAモデルの図に比べ、僅かに変化しうることを理解されるであろう。何れにせよ、
図4および
図5に示されている実施済みFEA解析は、従来の一重リング構造に対する二重リング構造70の諸利点を立証している。
【0025】
各実施形態の上記説明は、例証および説明のためになされたものである。上記説明は、網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。特定の一実施形態の個々の要素または特徴は、通常、その特定の実施形態に限定されず、場合によっては、互換可能であり、具体的に図示または記述されていなくても、選択された一実施形態において使用可能である。同一のものを、様々な方法で変更可能である。このような変形例は、本開示からの逸脱とは見なされず、このようなあらゆる修正は本開示の範囲内に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスルのための支持構造であって、
キャリアハウジングと、
前記キャリアハウジングのアウトボード側端部に形成された収容穴であって、
中空のアクスルチューブのインボード側端部を収容するように構成された収容穴と、
前記キャリアハウジングの二重リングハウジング構造であって、
前記収容穴を形成し、且つ、半径方向内側リングおよび半径方向外側リングを有する二重リングハウジング構造と、
を備え、
前記半径方向内側リングは、前記中空のアクスルチューブを締まり嵌めで受けるように構成されており、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記キャリアハウジングにかかる応力を低減する、
支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記半径方向内側リングおよび前記半径方向外側リングは、インボード方向に厚くなるテーパ状の厚みを有する、
支持構造。
【請求項3】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、周方向に互いに離れて配置された複数の内側リブを有し、
前記複数の内側リブは、前記半径方向内側リングと前記半径方向外側リングとの間に半径方向に延在する、
支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記半径方向内側リングおよび前記半径方向外側リングはそれぞれ、中心長手方向軸線の周りに延在する閉ループを形成する、
支持構造。
【請求項5】
請求項3に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、セントラルハウジングのアウトボード側の面に接続するよう構成されたインボード側半径方向フランジを含む、
支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の支持構造であって、
前記キャリアハウジングは、周方向に互いに離れて配置された複数の外側リブを含み、
前記複数の外側リブは、前記半径方向外側リングと前記インボード側半径方向フランジとの間に延在する、
支持構造。
【請求項7】
請求項6に記載の支持構造であって、
前記複数の内側リブと前記複数の外側リブとは半径方向に位置合わせされている、
支持構造。
【請求項8】
請求項3に記載の支持構造であって、
前記複数の内側リブは、前記内側リングと前記外側リングとの間に複数の空間を形成している、
支持構造。
【請求項9】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記内側リングと前記外側リングは、前記収容穴の基部のインボード側の位置で互いに結合されている、
支持構造。
【請求項10】
請求項1に記載の支持構造であって、
前記外側リングは、前記二重リング構造の長手方向の所与の位置において、前記内側リングに比べ、半径方向の厚みが薄い、
支持構造。
【請求項11】
車両用のアクスルアセンブリであって、
キャリアハウジングであって、そのアウトボード側端部に収容穴が形成されているキャリアハウジングと、
前記収容穴に収容されるインボード側端部を有する中空のアクスルチューブと、
前記キャリアハウジングの二重リングハウジング構造であって、前記収容穴を形成し、且つ、半径方向内側リングおよび半径方向外側リングを有する、二重リングハウジング構造と、
を備え、
前記中空のアクスルチューブは、締まり嵌めで、前記半径方向内側リングに収容され且つ固定され、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記キャリアハウジングにかかる応力を低減する、
アクスルアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記アクスルチューブは、前記半径方向内側リングの内径より大きな直径を有する、
アクスルアセンブリ。
【請求項13】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記内側リングは、前記外側リングより厚みが大きい、
アクスルアセンブリ。
【請求項14】
請求項11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記内側リングと前記外側リングとの間に半径方向に延在する複数の内側リブを更に備え、
前記複数の内側リブは、前記内側リングと前記外側リングとの間に複数の空間を形成している、
アクスルアセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載のアクスルアセンブリであって、
前記外側リングと前記キャリアハウジングのインボード側端部に配設された半径方向フランジとの間において、前記外側リングから半径方向外方に延在している複数の外側リブを更に備える、
アクスルアセンブリ。
【請求項16】
請求項15に記載のアクスルアセンブリであって、
前記複数の内側リブと前記複数の外側リブとは面状に位置合わせされている、
アクスルアセンブリ。
【請求項17】
請求項
11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記中空のアクスルチューブに接続されたスプリングマウントを更に備え、
前記スプリングマウントは下向きのシャシ荷重を受ける、
アクスルアセンブリ。
【請求項18】
請求項17に記載のアクスルアセンブリであって、
前記中空のアクスルチューブを通って延在し、且つ前記中空のアクスルチューブに対して回転可能な、アクスルシャフトと、
前記アクスルシャフトに、アウトボード側端部において、固定されたホイールハブと、
を更に備え、
前記ホイールハブは前記中空のアクスルチューブの周囲に延在し、且つ、
径方向において前記ホイールハブと前記中空のアクスルチューブとの間に配設された複数のベアリングを介して、前記中空のアクスルチューブ上に支持され、
前記ホイールハブは、前記中空のアクスルチューブおよび前記キャリアハウジングに対して、前記アクスルシャフトと共に回転する、
アクスルアセンブリ。
【請求項19】
請求項18に記載のアクスルアセンブリであって、
前記ホイールハブに取り付けられたホイールにより、前記下向きへのシャシ荷重に応じて、前記アクスルチューブの前記アウトボード側端部において上向きへの反力が生じ、これにより前記締まり嵌めにおいて曲げ荷重が生じ、
前記二重リング構造は、一重リング構造に比べ、前記締まり嵌めにおける応力集中がより小さい、
アクスルアセンブリ。
【請求項20】
請求項
11に記載のアクスルアセンブリであって、
前記キャリアハウジングおよび前記アクスルチューブは異なる金属製であり、溶接することなく、前記締まり嵌めによって確実に固定される、
アクスルアセンブリ。
【国際調査報告】