(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20241204BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20241204BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L25/02
C08L53/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539040
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2022021231
(87)【国際公開番号】W WO2023128496
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191620
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘリ
(72)【発明者】
【氏名】バン,キュンハ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サンヒュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC032
4J002BC042
4J002BP013
4J002CH071
4J002DE066
4J002FD016
4J002FD026
4J002FD056
4J002FD066
4J002FD076
4J002FD136
4J002FD166
4J002FD176
4J002FD186
4J002FD206
4J002GN00
(57)【要約】
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂70~95重量%;および(B)ポリスチレン(PS)系樹脂5~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して(C)平均粒径が0.05~0.15μmのスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)1~5重量部、および(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)0.1~2重量部を含む熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂70~95重量%;および
(B)ポリスチレン(PS)系樹脂5~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して
(C)平均粒径が0.05~0.15μmのスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)1~5重量部、および
(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)0.1~2重量部を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリエチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、30℃のクロロホルム溶媒で測定した時の固有粘度が0.2~0.8dl/gである、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合して製造され、前記スチレン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、およびクロロスチレンから選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000~200,000g/molである、請求項1~4のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、軟質部含有量が30~50重量%である、請求項1~5のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、顔料、染料から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項の熱可塑性樹脂組成物から製造される、成形品。
【請求項9】
1/8inchの厚さでASTMD256規格に従って測定したアイゾット(Izod)衝撃強度が2.5kgf・cm/cm以上である、請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
ASTMD523に従って反射角20°で測定した光沢度が110GU以上である、請求項8または9に記載の成形品。
【請求項11】
1cm
2当り、0.1mm
2以上の面積のピンホール数が10個以下である、請求項8~10のいずれか一つに記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(Polyphenylene ether、PPE)樹脂は、耐熱度および機械的強度が優れ、加工時の製品のサイズ安定性に優れた特性を有する。しかし、ポリフェニレンエーテル樹脂は流動性が低く、ポリフェニレンエーテル樹脂単独では加工が難しく、通常、常用性、成形性および流動性に優れたポリスチレン系樹脂とブレンド(Blend)して自動車部品などに幅広く使用されている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン(Polystyrene、PS)系ブレンド樹脂は、使用される用途に応じて要求される耐衝撃性/耐熱性などによりポリフェニレンエーテル樹脂およびポリスチレン系樹脂の比率を調節して多様に活用することができ、衝撃補強剤としてスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用して耐衝撃性などを補完することができる。特に、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系ブレンド樹脂は、耐熱度が高い素材の中でも比重が低く、外観および金属蒸着力が優れているため、自動車ライティング(Lighting)用ベゼル(Bezel)、リフレクター(Reflector)など、外観特性が重要な用途にも適用が可能である。
【0004】
ただし、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系ブレンド樹脂成形品に金属を蒸着する時、前記ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系ブレンド樹脂に含むことができるSEBSのような衝撃補強剤が互いに凝集して成形品表面にピンホール(pin-hole)を発生させ、外観が低下するという問題がある。
【0005】
したがって、優れた耐衝撃性およびサイズ安定性を維持しながら、高外観実現が可能な熱可塑性樹脂組成物の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐衝撃性およびサイズ安定性に優れ、外観に優れた熱可塑性樹脂組成物、およびこれから製造される成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂70~95重量%;および(B)ポリスチレン(PS)系樹脂5~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)平均粒径が0.05~0.15μmのスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)1~5重量部、および(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)0.1~2重量部を含む熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0008】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリエチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0009】
前記(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、30℃のクロロホルム溶媒で測定した時の固有粘度が0.2~0.8dl/gであることができる。
【0010】
前記(B)ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合して製造され、前記スチレン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、およびクロロスチレンから選択される1種以上であることができる。
【0011】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000~200,000g/molであってもよい。
【0012】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、軟質部(Soft segment)含有量が30~50重量%であることができる。
【0013】
前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、顔料、染料から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含むことができる。
【0014】
一方、他の実現例によれば、前述した熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品が提供される。
【0015】
前記成形品は、1/8inchの厚さでASTM D256規格に従って測定したアイゾット(Izod)衝撃強度が2.5kgf・cm/cm以上であることができる。
【0016】
前記成形品は、ASTM D523に従って反射角20°で測定した光沢度(Gloss)が110GU以上であることができる。
【0017】
前記成形品は、1cm2当たり、0.1mm2以上の面積のピンホール数が10個以下であることができる。
【発明の効果】
【0018】
耐衝撃性およびサイズ安定性が優れ、外観特性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実現例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲によって定義されるにすぎない。
【0020】
本明細書で特に言及しない限り、「共重合」とは、ブロック共重合、ランダム共重合、グラフト共重合を意味し、「共重合体」とはブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体を意味する。
【0021】
本明細書で特に言及しない限り、ブロック共重合体の平均粒径とは体積平均直径であり、動的光散乱(Dynamic light scattering)分析装備を利用して測定したZ-平均粒径を意味する。
【0022】
本明細書で特に言及しない限り、重量平均分子量は、粉体試料を適切な溶媒に溶解した後、Agilent Technologies社の1200seriesゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)を利用して測定(標準時料はShodex社ポリスチレンを使用)したものである。
【0023】
一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂70~95重量%および(B)ポリスチレン(PS)系樹脂5~30重量%を含む基礎樹脂100重量部に対して(C)平均粒径が0.05~0.15μmのスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)1~5重量部、および(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)0.1~2重量部を含む。
【0024】
以下、前記熱可塑性樹脂組成物に含むことができる各成分について具体的に説明する。
【0025】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテルポリマーまたはポリフェニレンエーテルポリマーに反応性モノマーが反応した変性ポリフェニレンエーテルポリマーを含む樹脂であり、前記ポリマーのうち2種以上を混合して使用することもできる。
【0026】
前記ポリフェニレンエーテルポリマーは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体またはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体から選択される単独または2種以上のポリフェニレンエーテルポリマーを含むことができる。
【0027】
例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルまたはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレン)エーテルの共重合体を用いることができ、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルを使用することができる。
【0028】
前記反応性モノマーは、不飽和カルボン酸またはその無水物基などを含む化合物または反応して不飽和カルボン酸またはその無水物基で変成されるものであり、本発明の一実施例によるポリフェニレンエーテルポリマーと反応して変性されたポリフェニレンエーテルポリマーを形成させる役割を果たす。
【0029】
前記反応性モノマーは、クエン酸、クエン酸無水物、マレイン酸無水物、マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0030】
一実施形態によるポリフェニレンエーテル樹脂の重合度は特に制限されないが、30℃のクロロホルム溶媒で測定した時の固有粘度が0.2~0.8dl/gであることが好ましく、0.3~0.6dl/gであることがより好ましい。
【0031】
前記範囲の固有粘度を有する場合に耐熱性および機械的強度が優れ、加工が容易である。
【0032】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、基礎樹脂100重量%に対して、70~95重量%、例えば、70~90重量%、例えば、70~80重量%含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性およびサイズ安定性に優れることができる。
【0033】
(B)ポリスチレン系樹脂
一実施形態において、(B)ポリスチレン系樹脂は、熱可塑性樹脂組成物に流動性を付与することができる。
【0034】
前記(B)ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合して製造することができ、前記スチレン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、およびクロロスチレンから選択される1種以上であることができる。
【0035】
一実施形態で、前記(B)ポリスチレン系樹脂において、互いに異なる種類のスチレン系モノマーが共重合される場合、互いに異なる種類のスチレン系モノマーは、1:99~99:1の重量比で共重合することができる。
【0036】
一実施形態で、前記(B)ポリスチレン系樹脂は、前記基礎樹脂100重量%に対して、5~30重量%、例えば、10~30重量%、例えば、20~30重量%に含むことができる。前記範囲で、これを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性が優れることができる。
【0037】
(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および外観特性を向上させることができる。
【0038】
従来、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系ブレンド樹脂にスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)などの衝撃補強剤を含ませて耐衝撃性を向上させたが、金属蒸着時に衝撃補強剤が互いに凝集して成形品表面にピンホール(pin-hole)を発生させ、外観が劣化するという問題があった。
【0039】
本発明では、前記スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)の代わりにスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)を使用し、前述した問題を解消した。
【0040】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、平均粒径が0.05~0.15μmであることができ、例えば、0.05~0.10μm、例えば0.05~0.08μmであることができる。前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、前記平均粒径範囲の比較的に小さいサイズを有するため、熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品の光沢度を向上させることができる。
【0041】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000~200,000g/molであることができる。
【0042】
前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、軟質部(Soft segment)含有量が30~50重量%であってもよく、例えば、35~50重量%、例えば35~45重量%であってもよい。前記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の外観特性が良好である。
【0043】
一実施形態で、前記(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、基礎樹脂100重量部に対して1~5重量部、例えば、1~3重量部含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造される成形品の外観特性が特に良好である。
【0044】
(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド
一実施形態で、(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を向上させ、外観特性も向上させることができる。
【0045】
一実施形態で、前記(D)DOPOは、基礎樹脂100重量部に対して0.1~2重量部、例えば、0.1~1.5重量部、例えば、0.1~1.0重量部、例えば、0.5~1.0重量部含むことができる。前記範囲でこれを含む熱可塑性樹脂組成物およびこれから製造された成形品は、優れた耐熱性および外観特性を示すことができる。
【0046】
(E)その他の添加剤
一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、前記成分(A)~(D)の他に、加工または使用過程でその他の諸般物性を優秀に維持することができる条件下で、各物性間の均衡を合わせるため、あるいは前記熱可塑性樹脂組成物の最終用途に応じて必要な1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0047】
具体的に、前記添加剤としては、難燃剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、顔料、染料などが使用でき、これらは単独で、あるいは2種以上の組み合わせで使用できる。
【0048】
これら添加剤は、熱可塑性樹脂組成物の物性を阻害しない範囲内で適切に含むことができ、具体的には、前記基礎樹脂100重量部に対して20重量部以下で含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物を製造する公知の方法により製造することができる。
【0050】
例えば、本発明による熱可塑性樹脂組成物は、本発明の構成成分と他の添加剤を混合した後、押出機内で溶融混練する方法によってペレットの形で製造することができる。
【0051】
本発明の一実施形態による成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物から製造することができる。
【0052】
前記成形品は、1/8inchの厚さでASTM D256規格に従って測定したアイゾット(Izod)衝撃強度が2.5kgf・cm/cm以上であることができる。
【0053】
前記成形品は、1/4inchの厚さでASTM D256規格に従って測定したアイゾット(Izod)衝撃強度が2.5kgf・cm/cm以上であることができる。
【0054】
前記成形品は、ASTM D523に従って反射角20°で測定した光沢度(Gloss)が110GU(gloss unit)以上であることができる。
【0055】
前記成形品は、1cm2当たり、0.1mm2以上の面積のピンホール数が10個以下であることができる。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0057】
実施例および比較例1~5
下記表1に記載された成分を通常のミキサー(mixer)で混合し、L/D=29、Φ=45mmの二軸押出機を利用して、バレル(barrel)温度約230℃で押出し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0058】
製造されたペレットは、射出成形する前に約80℃の除湿乾燥機で約4時間乾燥した後、6oz射出成形機を利用してシリンダー(cylinder)温度約230℃、金型温度約60℃に設定し、物性および外観評価用試片を製造した。測定された物性は下記表2に示す。
【0059】
【0060】
表1において、(A)および(B)成分は重量%に表し、(C)、(C1)、(C2)、(C3)、および(D)成分は、(A)および(B)成分、つまり、基礎樹脂100重量部に対する重量部で表した。
【0061】
(A)ポリフェニレンエーテル樹脂
China National Bluestar社のポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルを使用した。
【0062】
(B)ポリスチレン系樹脂
Kuraray社のポリスチレン(PS)樹脂を使用した。
【0063】
(C)スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体
平均粒径が約0.08μmであり、軟質部含有量が約35重量%のKuraray社のスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)を使用した。
【0064】
(C1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体
平均粒径が約0.29μmであり、軟質部含有量が約68重量%のKraton Corp.社のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用した。
【0065】
(C2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体
平均粒径が約0.24μmであり、軟質部含有量が約67重量%のKraton Corp.社のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用した。
【0066】
(C3)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体
平均粒径が約0.26μmであり、軟質部含有量が約88重量%のKraton Corp.社のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用した。
【0067】
(D)9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド
Shouguang Puer Chemical社の9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)を使用した。
【0068】
評価
実施例、そして比較例1~5について、下記評価方法で耐衝撃性、光沢性および外観特性評価をそれぞれ行い、下記表2に記載した。
【0069】
1.耐衝撃性(単位:J/m)
厚さ1/8inchおよび1/4inch試片それぞれについて、ASTM D256規格により常温(23℃)でノッチ付き(notched)アイゾット(Izod)衝撃強度を測定した。
【0070】
2.光沢度(単位:GU)
ASTMD523に基づき、BYK社Gloss meterを利用して、反射角20°で光沢度を測定した。
【0071】
3.外観特性
光学顕微鏡を利用して、10cmX10cmx0.3cmの試片表面の単位(面積1cm2)当たり発生した0.1mm2以上の面積のピンホール数を数え、外観特性を評価した。ピンホール数が少ないほど外観特性に優れていると評価した。
【0072】
【0073】
前記表1乃至2の結果から、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体、およびDOPOをそれぞれ前述した範囲に含む熱可塑性樹脂組成物とこれから製造される成形品は、耐衝撃性に優れ、光沢性および外観特性も優れていることを確認できた。
【0074】
以上、本発明を先に記載したように好ましい実施例を通じて説明したが、本発明はこれに限定されず、以下に記載する特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない限り、様々な修正及び変形が可能であることを、本発明が属する技術分野に従事する者は容易に理解するであろう。
【国際調査報告】