(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】コーティングされた皮下アクセスデバイス及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61M37/00 560
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539241
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2021065323
(87)【国際公開番号】W WO2023129132
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】シュリーブ、サミュエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ジョン ジー.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA75
4C267BB06
4C267BB18
4C267BB19
4C267BB26
4C267BB33
4C267BB40
4C267CC05
4C267GG02
4C267GG05
4C267HH08
(57)【要約】
本明細書に開示される実施形態は、アクセスポート、カテーテル、およびカテーテルロックを含み、その表面上に配置されたコーティングを含む、皮下血管アクセスシステムを対象とする。コーティングは、潤滑性及び/又は親水性コーティングを含むことができる。親水性コーティングは、コーティングを溶液中に浸漬することによって活性化状態に遷移させることができる。コーティングは、感染を低減し、バイオフィルム形成を低減し、及び挿入の容易さを改善するように構成され得る。実施形態は、コーティング内に形成された、及び/又は活性化された際にコーティング内に加えられる溶液内に含まれ得る、活性成分を含む。活性成分は、感染を予防する、血栓形成を予防する、バイオフィルム形成を予防する、又はそれらの組み合わせなどを行うように構成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下血管アクセスシステムであって、
リザーバを画定する本体と、前記リザーバと流体連通しているステムと、を有するアクセスポートと、
前記アクセスポートの外面上に配置されたコーティングであって、
(i)溶液に浸漬して前記コーティングを活性化状態に遷移させ、
(ii)前記溶液から活性成分を吸収し、
(iii)皮下埋め込み後に前記活性成分を溶出するように構成された、コーティングと、を備える、皮下血管アクセスシステム。
【請求項2】
前記ステムに係合するように構成されたカテーテルを更に含み、前記コーティングは、前記カテーテルの外面上に配置される、請求項1に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項3】
前記ステムに前記カテーテルを固定するように構成されたカテーテルロックを更に含み、前記コーティングは、前記カテーテルロックの外面上に配置される、請求項2に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項4】
前記コーティングは、切開部位を通した挿入を容易にするために、前記活性化状態において潤滑性コーティングであるように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項5】
前記コーティングは、48時間の期間にわたって前記活性成分を溶出するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項6】
前記コーティングは、前記ポートの前記表面に結合されたベース層と、前記ベース層に結合された粗いポリマーマトリックスとを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項7】
前記コーティングは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、UV硬化性H-コーティング、及びポリ-N-ビニルピロリドンH-コーティングのうちの1つ以上を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項8】
前記コーティングは、100μm~500μmの厚さである、請求項1から7のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項9】
前記コーティングは、2分~10分の範囲で前記溶液から前記活性成分を吸収するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項10】
前記活性成分は、抗生物質、抗真菌剤、抗血栓剤、リファンピン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、テイコプラニン、糖ペプチドテイコプラニン、バンコマイシン、セフタジジム、及びアンホテリシンBのうちの1つ以上を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の皮下血管アクセスシステム。
【請求項11】
皮下血管アクセスアセンブリを配置する方法であって、
アクセスポート、カテーテル、及びカテーテルロックを備える血管アクセスアセンブリを提供するステップであって、前記アクセスポートは、その外面上に配置されたコーティングを含み、前記コーティングは、親水性材料を含む、ステップと、
前記アクセスポートの一部を溶液中に浸漬して、前記コーティングを活性化状態に遷移させるステップと、
前記血管アクセスアセンブリを皮下に埋め込むステップと、を含む、方法。
【請求項12】
前記浸漬するステップは、切開部位を通した前記血管アクセスアセンブリの挿入を容易にして前記血管アクセスアセンブリを皮下に配置するために、前記コーティングを前記活性化状態の潤滑性コーティングに遷移させるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液は活性成分を含み、前記溶液から前記コーティングに前記活性成分を吸収するステップと、皮下に配置されたときに前記コーティングから前記活性成分を溶出するステップと、を更に含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性成分は、抗生物質、抗真菌剤、抗血栓剤、リファンピン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、テイコプラニン、糖ペプチドテイコプラニン、バンコマイシン、セフタジジム、及びアンホテリシンBのうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングは、前記血管アクセスアセンブリの前記表面に結合されたベース層と、前記ベース層に結合された粗いポリマーマトリックスとを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、UV硬化性H-コーティング、及びポリ-N-ビニルピロリドンH-コーティングのうちの1つ以上を含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティングは、100μm~500μmの厚さである、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングは、2分間~10分間、前記溶液内に浸漬される、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた皮下アクセスデバイス及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
簡潔に要約すると、本明細書に開示される実施形態は、ポート、カテーテル、カテーテルロック、又はそれらの組み合わせを含み、その表面上に配置されたコーティングを含む、血管アクセスシステムを対象とする。コーティングは、感染を低減し、バイオフィルム形成を低減し、挿入の容易さを改善するように構成された潤滑性及び/又は親水性コーティングを含むことができる。実施形態は、コーティング内に形成された活性成分を含み、及び/又は皮下配置の前に潤滑性コーティングを活性化し、1つ以上の活性成分をコーティング内に加えるためのカスタムディップを含むことができる。活性成分は、感染を予防する、血栓形成を予防する、バイオフィルム形成を予防する、及びそれらの組み合わせなどを行うように構成することができる。
【0003】
血管アクセスシステム又は「ポート」を配置することは、概して、1つ以上の挿入部位を閉鎖する前に、血管系にアクセスすること、カテーテルを配置すること、組織ポケットを形成すること、ポートを組織ポケット内に皮下的に配置すること、及びカテーテルをポートステムに結合することを含むことができる。この手順は、組織ポケットの形成並びに/又はカテーテル及びポートの配置の間に、外傷、皮膚の伸張、又は瘢痕組織形成を含む種々の合併症の影響を受けやすい可能性がある。更に、配置手順は、配置後の感染及び関連する合併症につながる病原体の導入を受けやすい。最後に、いったん血管アクセスシステムが配置されると、皮下に配置された異物の存在は、バイオフィルム形成及び/又は血栓形成をもたらし得る。
【発明の概要】
【0004】
リザーバを画定する本体とリザーバと流体連通しているステムとを有するアクセスポートと、アクセスポートの外面上に配置され、(i)溶液に浸漬してコーティングを活性化状態に遷移させ、(ii)溶液から活性成分を吸収し、(iii)皮下埋め込み後に活性成分を溶出するように構成されたコーティングとを含む、皮下血管アクセスシステムが、本明細書にて開示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、皮下血管アクセスシステムは、ステムに係合するように構成されたカテーテルを更に含み、コーティングは、カテーテルの外面上に配置される。いくつかの実施形態では、皮下血管アクセスシステムは、ステムにカテーテルを固定するように構成されたカテーテルロックを更に含み、コーティングは、カテーテルロックの外面上に配置される。いくつかの実施形態では、コーティングは、切開部位を通した挿入を容易にするために、活性化状態において潤滑性コーティングであるように構成される。いくつかの実施形態では、コーティングは、48時間の期間にわたって活性成分を溶出するように構成される。いくつかの実施形態では、コーティングは、ポートの表面に結合されたベース層と、ベース層に結合された粗いポリマーマトリックスとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、コーティングは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、UV硬化性H-コーティング、及びポリ-N-ビニルピロリドンH-コーティングのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、100μm~500μmの厚さである。いくつかの実施形態では、コーティングは、2分~10分の範囲で溶液から活性成分を吸収するように構成される。いくつかの実施形態では、活性成分は、抗生物質、抗真菌剤、抗血栓剤、リファンピン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、テイコプラニン、糖ペプチドテイコプラニン、バンコマイシン、セフタジジム、及びアンホテリシンBのうちの1つ以上を含む。
【0007】
また、皮下血管アクセスアセンブリを配置する方法であって、アクセスポート、カテーテル、及びカテーテルロックを含む血管アクセスアセンブリを提供するステップであって、アクセスポートは、その外面上に配置されたコーティングを含み、コーティングは、親水性材料を含む、ステップと、アクセスポートの一部を溶液中に浸漬して、コーティングを活性化状態に遷移させるステップと、血管アクセスアセンブリを皮下に埋め込むステップと、を含む方法が開示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、浸漬するステップは、切開部位を通した血管アクセスアセンブリの挿入を容易にして血管アクセスアセンブリを皮下に配置するために、コーティングを活性化状態の潤滑性コーティングに遷移させるステップを更に含む。いくつかの実施形態では、溶液は活性成分を含み、本方法は、溶液からコーティングに活性成分を吸収するステップと、皮下に配置されたときにコーティングから活性成分を溶出するステップとを更に含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、活性成分は、抗生物質、抗真菌剤、抗血栓剤、リファンピン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、テイコプラニン、糖ペプチドテイコプラニン、バンコマイシン、セフタジジム、及びアンホテリシンBのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、血管アクセスアセンブリの表面に結合されたベース層と、ベース層に結合された粗いポリマーマトリックスとを含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、UV硬化性H-コーティング、及びポリ-N-ビニルピロリドンH-コーティングのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、100μm~500μmの厚さである。いくつかの実施形態では、コーティングは、2分間~10分間、溶液内に浸漬される。
【0010】
添付の図面に示されている特定の実施形態を参照して、本開示のより詳細な説明が記載される。これらの図面は本発明の典型的な実施形態のみを表しており、したがって、その範囲を制限するものであるとみなされないことが理解される。本発明の例示的な実施形態は、以下の添付の図面を用いて、追加の特徴および詳細が記載され説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本明細書に開示される実施形態による、血管アクセスシステムの斜視図を示す。
【
図1B】本明細書で開示される実施形態による、
図1Aの血管アクセスシステムの分解図を示す。
【
図2A-2C】本明細書に開示される実施形態による、血管アクセスシステム上に配置されたコーティングを活性化する例示的な方法を示す。
【
図3】本明細書に開示される実施形態による、血管アクセスシステムの表面上に配置されたコーティングの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの特定の実施形態についてより詳細に開示される前に、本明細書において開示されている特定の実施形態は、本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことが理解されるべきである。本明細書において開示されている特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、本明細書において開示されている他のいくつかの実施形態のいずれかと任意に組み合わせるまたは置き換えることができる特徴を有し得ることも理解されるべきである。
【0013】
本明細書において用いられている用語に関して、用語はいくつかの特定の実施形態を説明することを目的とするものであり、用語は本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことも理解されるべきである。序数(例えば第1、第2、第3など)は一般的に、特徴や段階のグループ内の異なる特徴や段階を区別もしくは識別するために用いられ、連続性や数値による制限を提供しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴や段階はその順序で現れる必要はなく、そのような特徴や段階を含む特定の実施形態がその3つの特徴や段階に制限される必要もない。「左」、「右」、「頂」、「底」、「前」、「後」等の表記やそれらに似た語句は便宜上用いられ、例えば、特定の決められた位置、方角、方向等を意味することは意図していない。むしろ、そのような表記は、例えば、相対的な位置、方角、方向等を反映させるために用いられる。「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が単数であることを明確に示していなければ、複数への参照を含む。
【0014】
以下の説明では、本明細書で使用される「または」および「および/または」という用語は、包括的であるか、または任意の1つもしくは任意の組合せを意味するものと解釈されるべきである。一例として、「A、BまたはC」または「A、Bおよび/またはC」は、「A、B、C、AとB、AとC、BとC、AとBとC、のいずれか」を意味する。この定義に対する例外は、要素、構成要素、機能、ステップまたは行為の組合せが何らかの形で本質的に相互に排他的である場合にのみ生じる。
【0015】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「近位の」、「近位部」、または「基端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0016】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「遠位の」、「遠位部」、または「先端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0017】
本明細書において開示される実施形態の説明を補助するために、
図1A~
図1Bに示されているように、長手方向軸が、イントロデューサ軸12の軸方向長さに実質的に平行に延びる。横方向軸は、長手方向軸に対して垂直に延び、横断方向軸は長手方向軸と横方向軸との両方に対して垂直に延びる。水平面は、縦軸および横軸によって画定される。垂直面は、水平軸に対して垂直に延びる。
【0018】
その他の意味に定義されていなければ、本明細書において用いられる全ての技術的もしくは科学的な用語は、その分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0019】
図1A~
図1Bは、例示的な皮下血管アクセスシステム(「システム」)100を示しており、概して、アクセスポート(「ポート」)110と、カテーテル130と、任意選択的に、カテーテルロック140とを含む。
図1Aは、システム100の斜視図を示し、
図1Bは、システム100の分解図を示す。ポート100は、概して、リザーバ114を画定する本体112を含むことができ、長手方向軸線に沿ってそこから延びるステム116を含む。ステム116は、リザーバ114と流体連通しているステム管腔を画定することができる。針貫通可能隔膜122は、リザーバ114の上に配置することができ、キャップ120によって適切な位置に固定することができる。隔膜122は、シリコーンゴム、又は同様の好適な材料から形成することができる。使用時に、ポート110が皮下に配置されると、隔壁122は皮膚表面に近接して配置される。ユーザは、アクセス針(図示せず)を使用して皮膚を貫通することができ、リザーバ112にアクセスするために隔膜122を貫通することができる。
【0020】
キャップ120は、圧入、締まり嵌め、又はスナップ嵌め係合で本体112に係合することができる。一実施形態では、キャップ120は、接着剤、結合、溶接、又は同様の好適な手段を使用して本体112に固定することができる。一実施形態では、キャップ120は、本体112上にオーバーモールドすることができる。一実施形態では、キャップ120及び本体112は、同じ材料から形成された単一のモノリシック部品として形成することができる。
【0021】
一実施形態では、本体112は、プラスチック、ポリマー、熱可塑性物質、金属、合金、複合材料、又はそれらの組み合わせなどを含むがこれらに限定されない、実質的に剛性又は弾性の材料から形成することができる。一実施形態では、キャップ120は、プラスチック、ポリマー、熱可塑性物質、エラストマー、ゴム、シリコーンゴム、金属、合金、複合材料、又はそれらの組み合わせなどを含むがこれらに限定されない、本体112に対してより軟質の材料から形成することができる。一実施形態では、本体112及びキャップ120は、同じ材料で形成することができ、同じ機械的特性を発揮することができる。一実施形態では、カテーテル130は、圧入、又は締まり嵌め係合のうちの1つでステム116に係合することができる。任意選択的に、カテーテル140をステム116に更に固定するために、カテーテルロック140はカテーテル130及びステム116の一方又は両方に係合することができる。
【0022】
一実施形態では、ポート110は、長手方向軸線に沿ってポート110から延び、リザーバ114の中心横断軸線を横切ってステム116の反対側に配置されたノーズ部分118を含むことができる。ノーズ部分118は、ポート110から延びる実質的に楔形のプロファイルを画定することができ、ポート110の皮下配置を容易にするように構成することができる。例えば、ポート110が皮下に付勢されると、ノーズ部分118は、組織ポケットを形成するための皮下組織の分離を容易にすることができる。一実施形態では、本体112及びキャップ120の一方又は両方は、縫合穴124を含むことができる。縫合穴は、シリコーンゴム又は同様の好適な材料で形成されたプラグ126を含むことができ、縫合穴124内への組織の内方成長を防止するように構成することができる。理解されるように、ポート110は例示的な血管アクセスデバイスであり、限定することを意図していない。したがって、剛性ステムを含み、カテーテル又は同様のコンプライアントチューブと結合されるように構成された種々のポート又はアクセスデバイスが、本発明の範囲内に入ることが想定されることが企図される。
【0023】
一実施形態では、
図2Aに示すように、システム100の外面、すなわち、カテーテル130、カテーテルロック140、ポート110、それらの部分、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上の外面は、その上に配置されたコーティング150を含むことができる。一実施形態では、コーティング150は、カテーテル130、カテーテルロック140、ポート110(すなわち、本体112、キャップ120、隔壁122など)の外面を含むシステム100の外面全体にわたって配置することができる。一実施形態では、コーティング150は、システム100の一部分上に、例えば、配置中に潤滑の増加を必要とするシステム100の1つ以上の部分(例えば、ポート110の外面、キャップ120、本体112の下面、又はそれらの組み合わせなど)の上に配置することができる。一実施形態では、コーティング150は、感染又は血栓形成を引き起こすリスクが高いシステム100の部分、例えば縫合穴124、縫合プラグ126、カテーテルロック140などに配置することができる。
【0024】
一実施形態では、コーティング150は、事前に湿らされ、システム100の表面に低減された摩擦係数を提供するように構成された潤滑性コーティングであり得る。有利なことに、潤滑性コーティングは、患者の皮膚表面の挿入部位を通してシステム100を挿入することを容易にし、伸張、外傷、及び瘢痕組織形成を低減することができる。一実施形態では、コーティング150は、不活性化状態と活性化状態との間で遷移するように構成された親水性コーティングであり得る。一実施形態では、不活性化状態は脱水状態であり得、活性化状態は水和状態であり得る。一実施形態では、不活性化状態は、閾値水和レベル未満として定義することができ、活性化状態は、閾値水和レベルを上回るとして定義することができる。一実施形態では、閾値水和レベルは、1%~99%の水和であり得る。一実施形態では、閾値水和レベルは、5%~80%の水和であり得る。一実施形態では、閾値水和レベルは、実質的に50%の水和であり得る。しかしながら、より大きい又はより小さい水和閾値が企図されることが理解されるであろう。
【0025】
一実施形態では、コーティング150は、コーティング150を溶液90中に浸漬することによって、不活性化状態から活性化状態に遷移することができる。例示的な溶液90としては、水、生理食塩水、極性溶液、又は同様の生体適合性溶液が挙げられ得る。一実施形態では、不活性化状態は、溶液90内の閾値滞留時間未満の滞留時間として定義することができ、活性化状態は、閾値滞留時間を超える滞留時間として定義することができる。一実施形態では、閾値滞留時間は、1秒~10分であり得る。しかしながら、より大きい又はより小さい滞留時間閾値が企図されることが理解されるであろう。(不活性化)親水性コーティング150が活性化コーティング160に遷移されると、コーティングは、システム100の表面に低減された摩擦係数を提供するための潤滑性コーティングを提供することができる。有利なことに、活性化親水性コーティング160は、患者の皮膚表面内の挿入部位を通してシステム100を挿入することを容易にし、伸張、外傷、及び瘢痕組織形成を低減することができる。有利なことに、不活性化コーティングは、デバイスの保存寿命又は「貯蔵寿命」を延長する脱水状態で貯蔵及び輸送することができる。
【0026】
一実施形態では、コーティング150は、製造中にコーティング内に形成された活性成分を含むことができる。例示的な活性成分としては、抗生物質、抗真菌剤、抗血栓剤、リファンピン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、テイコプラニン、糖ペプチドテイコプラニン、バンコマイシン、セフタジジム、及びアンホテリシンB、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0027】
一実施形態では、不活性化状態は、閾値濃度未満の活性成分の濃度として定義することができ、活性化状態は、閾値濃度を超える活性成分の濃度として定義することができる。一実施形態では、閾値濃度は、活性成分がゼロ濃度以上であり得る。
【0028】
一実施形態では、コーティング150は、溶液90中に浸漬することができ、活性化溶液90から水及び活性成分のうちの1つ以上を吸収して、コーティングを不活性化状態コーティング150から活性化状態コーティング160に遷移させることができる。活性化状態コーティング160は、皮下配置を容易にするために潤滑性であってもよい。更に、いったん皮下に配置されると、活性化状態コーティング160は、活性物質を周囲組織に溶出することができる。したがって、活性化状態コーティング160は、1つ以上の活性成分のリザーバとして作用することができ、いったんシステム100が皮下に配置されると、活性成分の溶出時間を延長することができる。
【0029】
例えば、血管アクセスシステム100を配置する従来の方法は、ポート110を配置する前に、活性成分を含む溶液で組織ポケットを洗浄することを含むことができる。活性成分は、感染、バイオフィルム形成、血栓形成などを予防するように構成することができる。しかしながら、溶液の有効性は、臨床医が組織ポケットの洗浄を終了した時点から、時間とともに急激に減少する。有利なことに、本明細書に開示される実施形態は、1つ以上の活性成分のためのリザーバとして作用することができるコーティング150を提供する。活性成分は、長期間にわたって周囲組織に溶出することができ、活性成分の有効性を延長する。例示的な溶出時間は、システム100の配置後48時間までであり得るが、より長い又はより短い溶出時間も企図される。
【0030】
一実施形態では、コーティング150を含むシステム100を溶液90内に配置して、コーティング150を活性化コーティング160に遷移させることができる。コーティングの活性化中に、溶液90内に溶解された1つ以上の活性成分をコーティング内に加えることができる。有利なことに、臨床医は、1つ以上の活性成分、活性成分の異なる濃度、及び/又はシステム100が溶液90内に留まる滞留時間の長さを選択することができる。したがって、臨床医は、実行される特定の手順又は患者の特定の必要性に応じて、システム100の活性成分及び溶出速度を修正することができる。理解されるように、そのようなシステムは、単一のデバイスが、製造され、輸送され、保管され、及び使用時に修正されて、種々の異なる手順及び患者に適用されることを可能にする。これは、より多用途のシステム100を提供し、異なる血管アクセスシステムの大量の在庫を製造及び保管することを防止し、関連するコストを低減することができる。同様に、コーティング150を活性化状態160に活性化するとき、臨床医は、溶液90内でのシステム100の滞留時間を修正して、手順又は患者の必要性によって必要とされるシステム100の潤滑性の程度を修正することができる。同様に、これは、過剰な在庫及び関連するコストを低減する、より多用途のシステム100を提供することができる。
【0031】
図3は、システム100の表面上に配置されたコーティング150の概略断面図を示す。一実施形態では、コーティング150は、1つ以上の層を含むことができる。一実施形態では、コーティング150は、システム100の表面に結合されたベース層152を含むことができる。コーティング150は、次いでベース層152に結合される第2の層154を更に含むことができる。一実施形態では、第2の層154は、粗いポリマーマトリックスを含むことができる。一実施形態では、粗いポリマーマトリックス層154は、水、生理食塩水、又は極性溶液、及びそれらの中に溶解された任意の活性成分(例えば、抗生物質など)を吸収するように構成された親水性材料であり得る。一実施形態では、コーティング150は、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、UV硬化性Hコーティング、及びポリ-N-ビニルピロリドンHコーティング、又は同様の親水性材料のうちの1つ以上を含むことができる。
【0032】
一実施形態では、潤滑性の程度(すなわち、摩擦係数)、又は活性成分溶出速度は、コーティングの厚さ(t)、又はコーティング150の1つ以上の層の相対的な厚さ、すなわち、ベース層152の厚さ(t1)若しくはポリマーマトリックス154の厚さ(t2)、又はそれらの組み合わせに基づいて変化させることができる。例示的なコーティング150の厚さ(t)は、100μm~500μmであり得る。
【0033】
図2A~
図2Cは、本明細書に記載されるようなコーティング150を含むシステム100の例示的な使用方法を示す。
図2Aに示すように、血管アクセスシステム100は、本明細書に記載されるように、ポート110、カテーテル130、カテーテルロック140、又はそれらの組み合わせを含んで提供され得る。コーティング150は、システム100の外面の少なくとも一部分に設けることができる。一実施形態では、コーティング150は、システム100の表面全体にわたって配置することができる。一実施形態では、
図2Aに示すように、コーティング150は、潤滑性コーティング150であってもよく、かつ/又はコーティング150内に形成された活性成分を含むことができる。
【0034】
一実施形態では、
図2B~
図2Cに示すように、コーティング150は、溶液90内に配置されたときに活性化コーティング160に遷移することができる親水性コーティング150であり得る。一実施形態では、コーティング150を活性化コーティング160に遷移させることは、脱水コーティング150を水和コーティング又は潤滑性コーティング160に遷移させることを含むことができる。一実施形態では、コーティング150を活性化コーティング160に遷移させることは、コーティング150に活性成分を加えて薬物溶出コーティング160を提供することを含むことができる。一実施形態では、活性化前のコーティング150は、その中に配置された活性成分を有することができず、溶液90内に置かれたときに加えられた1つ以上の活性成分を有することができる。一実施形態では、コーティング150は、活性化前にコーティング150内に配置された1つ以上の第1の活性成分を有することができる。活性化の間に、1つ以上の第2の活性成分を、本明細書に記載されるようにコーティングに加えることができる。
【0035】
一実施形態では、臨床医は、溶液90内の滞留時間の長さに基づいて潤滑性の程度を修正することができる。例示的な滞留時間は、2分~10分であり得るが、より長い又はより短い滞留時間も企図される。一実施形態では、臨床医は、活性成分を含む溶液90内の滞留時間の長さに基づいて薬物溶出時間を修正することができる。例示的な滞留時間は、2分~10分であり得るが、より長い又はより短い滞留時間も企図される。
【0036】
一実施形態では、臨床医は、溶液90内の活性成分の数、組み合わせ、又は相対的濃度を修正することによって、コーティング内の活性成分の数又は組み合わせを修正することができる。有利なことに、臨床医は、手順の詳細又は種々の患者要因などに基づいて、配置時点における潤滑性の程度又は活性成分の組み合わせを修正することができる。これは、種々の患者要因に適合するように修正されることができる、より多用途のシステム100を提供し、デバイス在庫及び関連するコストを低減する。有利なことに、本明細書に記載される実施形態は、システム100が、活性成分又は潤滑性の程度の種々の組み合わせを用いて配置時点で修正されることを可能にし、活性成分の組み合わせの相乗効果を通して有効性を増加させる。有利なことに、コーティングは、配置前に組織ポケット及び/又はシステム100を活性成分で洗浄することと比較して、活性成分のためのリザーバを提供することによって、薬物溶出時間の延長をもたらすことができる。例えば、システム100は、配置後に最大48時間までの溶出時間を提供することができる。
【0037】
いくつかの特定の実施形態が本明細書において開示され、特定の実施形態はある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書において提供されているコンセプトの範囲を制限することは意図されていない。追加の改良及び/または修正は当業者にとって明らかであり得て、より広い態様では、これらの改良及び/または修正も同様に包含される。したがって、本明細書において提供されているコンセプトの範囲から逸脱せずに、本明細書において開示されている特定の実施形態から逸脱してもよい。
【国際調査報告】