(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-11
(54)【発明の名称】増殖した細胞塊を洗浄及び仕上げするための方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20241204BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241204BHJP
A23J 1/00 20060101ALI20241204BHJP
A23J 3/00 20060101ALN20241204BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
C12N5/071
A23J1/00 A
A23J3/00 502
C12N1/00 F
C12N1/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539732
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 US2022082482
(87)【国際公開番号】W WO2023129971
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521286293
【氏名又は名称】アップサイド フーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UPSIDE FOODS, INC.
【住所又は居所原語表記】804 Heinz Avenue, Berkeley, California 94710, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー-アウフェルマン, コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】スー, スティーブン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, カレ ルキヤン
(72)【発明者】
【氏名】レオン, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ラッキーレディー, ジャヤンティ
(72)【発明者】
【氏名】リース, モーガン ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョスリン, ジェシカ
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AD36
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BB01
4B065BB20
4B065BB40
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA41
(57)【要約】
本開示は細胞培養培地を除去し、仕上げ培地で細胞を濃縮するために、増殖した細胞塊から細胞を洗浄する方法に関する。開示される方法は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させ、次いで、増殖した細胞塊を、経時的に変化する一連の洗浄緩衝液又は勾配洗浄緩衝液で収集及び洗浄することを含む。細胞培養培地は細胞増殖に有益な栄養素及び構成要素を含有するが、細胞培養培地中で増殖細胞は多くの場合、異臭、異臭、低色、低塩分/無機質組成物、及び他の欠点を有する。したがって、開示される方法は、単一又は一連の洗浄培地を使用して、増殖した細胞塊から細胞培養培地残余物を除去することを含む。増殖した細胞塊は増殖した細胞塊の感覚的側面及び栄養組成をさらに改善するために、仕上げ又は濃縮緩衝液でさらに洗浄される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養肉製品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖することと、
前記増殖した細胞塊の少なくとも一部を前記細胞培養培地から除去すること、
残りの細胞培養培地を洗い流すために、前記増殖した細胞塊を洗浄培地で洗浄することと、
栄養素を含む濃縮培地で前記増殖した細胞塊を洗い流すことと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記洗浄培地及び前記濃縮培地は、増殖させるために前記増殖した細胞塊を刺激するための増殖因子を含まない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増殖した細胞塊を、
前記増殖した細胞塊と前記洗浄培地の両方を撹拌することと、
前記増殖した細胞塊及び前記洗浄培地をポンプを用いて循環させることと、
前記増殖した細胞塊及び前記洗浄培地をガスを用いて均質化することと、によって前記洗浄培地で洗浄することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄培地で前記増殖した細胞塊を洗浄することは、前記増殖した細胞塊の上に前記洗浄培地を流すことと、前記濃縮培地の濃度を経時的に増加させることを含む中間培地を流すこととを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
閾値増殖段階を完了する前記増殖した細胞塊に基づいて、前記細胞培養培地から前記増殖した細胞塊の少なくとも一部を除去することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値増殖段階は、前記増殖した細胞塊が1ミリリットル当たり300万細胞の生存細胞密度又は1%~25%の充填細胞体積のうちの少なくとも1つに達した場合に完了する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記増殖した細胞塊を外因性調節因子に曝露することによって、前記閾値増殖段階の前記完了を刺激することを更に含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記増殖した細胞塊を洗浄することは、前記増殖した細胞塊の上に前記洗浄培地を流すことと、前記洗浄培地及び前記増殖した細胞塊の両方を撹拌することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄培地は、-5C~45Cの温度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
培養肉製品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖することと、
前記細胞培養培地から前記増殖した細胞塊を除去することと、
洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を経時的に増加させることによって、勾配洗浄培地で前記増殖した細胞塊を洗浄することと、を含む、
方法。
【請求項11】
前記濃縮培地は、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、又は脂肪のうちの少なくとも1つを含む栄養素を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞ベースの可食性食品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖することと、
前記細胞塊を第1の交換培地で洗い流すことと、
前記細胞塊を第2の交換培地で洗い流すことと、を含む、
方法。
【請求項13】
前記第1の交換培地で前記細胞塊を洗浄することは、第1の組の膜透過性溶質を前記細胞塊の細胞の細胞内空間から拡散させ、
前記第2の交換培地で前記細胞塊を洗浄することは、第2の組の膜透過性溶質を前記細胞の前記細胞内空間に拡散させる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の交換培地は、前記細胞培養培地に対して低張性である、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の交換培地が減少する溶質勾配を含み、前記第1の交換培地が、より高い濃度の溶質を有する溶液からより低い濃度の溶質を有する溶液に遷移する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞塊を横切る前記減少する溶質勾配を含む前記第1の交換培地を流すことが、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、前記細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが減少する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶質勾配の減少は、前記細胞培養培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の交換培地は、前記第1の交換培地に対して高張性である、
請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の交換培地は増加する溶質勾配を含み、前記第2の交換培地は、より低い濃度の溶質を有する溶液からより高い濃度の溶質を有する溶液に遷移する、
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記増加する溶質勾配を含む前記第2の交換培地を前記細胞塊にわたって流すことが、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、前記細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが低減される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記増加する溶質勾配が、前記第1の交換培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記増加する溶質勾配が、栄養素の濃度を増加することを含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項23】
栄養素の少なくとも一部は前記細胞塊の細胞内に拡散し、
前記栄養素の少なくとも第2の部分は、前記細胞の外部表面に接着する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の流出液が前記第1の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、前記第1の交換培地で前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項25】
第2の流出液が前記第2の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、前記第2の交換培地で前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項26】
洗浄時間の間、前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項27】
培養肉調製のための細胞塊を仕上げるための装置であって、
細胞培養培地中で前記細胞塊を増殖させるための培養タンクと、
前記細胞培養培地、洗浄培地、又は濃縮培地のうちの少なくとも1つから増殖した細胞塊を除去するための分離器と、
前記増殖した細胞塊を貯蔵し、前記増殖した細胞塊の上に前記洗浄培地又は前記濃縮培地のうちの少なくとも1つを流すための洗浄タンクと、を含む、
装置。
【請求項28】
前記分離器が、遠心分離機又はフィルタのうちの少なくとも1つを備える、
請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記増殖した細胞塊をその最適な成長温度未満に冷却するための熱交換器を更に含む、
請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記増殖した細胞塊と、前記細胞培養培地、前記洗浄培地、又は前記濃縮培地のうちの少なくとも1つとを撹拌するための撹拌器を更に備える、
請求項27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2022年12月27日に出願された「Method for Washing and Finishing a Grown Cell Mass,」と題された米国特許出願第18/146,541号の優先権を主張し、2021年12月29日に出願された「Method for Washing and Finishing a Grown Cell Mass,」と題された米国特許仮出願第63/294,703号の利点及び優先権を主張する。本出願はまた、2021年12月29日に出願された「Method for Pressurizing Cells Grown in Hydrogel to Induce Hypertrophy」と題する米国仮出願第63/294,700号の利点及び優先権を主張する。前述の出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
世界の人口が成長し続けるにつれて、消費のための細胞ベース又は培養肉製品が、動物由来の従来の肉に対する魅力的な代替物(又は補足物)として出現してきた。例えば、細胞ベースの、培養された、又は培養された肉は、人間の特定の食事の必要性に対処することができる技術を表す。細胞ベースの肉のための細胞は実験室で増殖されるので、細胞ベースの肉を調製する実験室方法は必須アミノ酸及び脂肪のプロファイルを改変することができ、ならびにビタミン、ミネラル、及び生物活性化合物中で肉を濃縮することができる。いくつかの場合において、細胞ベースの肉製品は、そのような改変及び濃縮を促進する、非ヒト動物に由来する培養された接着及び懸濁細胞の組合せから調製され得る。
【0003】
食事の必要性に対処することに加えて、細胞ベースの肉製品は、ヒト、家畜、及び環境のための従来の肉製品に関連するいくつかの欠点を軽減するのに役立つ。例えば、従来の肉の生産は、畜産及び屠殺に関連する議論の余地のある慣行を伴う。従来の肉生産に関連する他の欠点としては、食用栄養素へのカロリー投入量の低い変換、製品の微生物汚染、獣医学的及び人畜共通疾患の発生及び伝播、相対的天然資源要件、ならびに温室効果ガス排出物及び窒素廃棄物流などの結果として生じる産業汚染物質を含む。
【0004】
細胞ベースの肉製品を作製することにおける進歩にもかかわらず、細胞ベースの肉製品を培養及び処理するための既存の方法は、従来の肉の香味及び栄養組成物を模倣するための課題又は障害などのいくつかの欠点に直面する。既存の方法は、多くの場合、動物から採取された屠殺肉に特徴的でない(又はそれとは異なる)香味、芳香、又は色を有する最終的な細胞ベースの肉製品をもたらす。一例として、既存の方法は、肉細胞の風味プロファイルに悪影響を及ぼす化合物を用いて、成長培地中で肉細胞を成長させることを含み得る。増殖培地はしばしば、アルデヒド、アルコール、及びケトンを含む第一級及び第二級化合物の複合混合物に分解又は酸化し得る芳香族アミノ酸を含有する。アルデヒド、ケトン、及びアルコールは、望ましくない芳香(例えば、「ウェットドッグ」臭)又は風味、例えば、酸敗臭又は風味をもたらし得る。異なる芳香又は風味の他に、既存の方法は、時々、自然な赤又は他の食肉の色合いの一部を欠く、一貫した、ほぼ均質なピンク色を有する細胞ベースの肉製品を生成する。
【0005】
さらに、既存の方法を用いて培養された肉細胞は、多くの場合、従来の肉と比較して栄養組成物を欠いている。従来の肉は、典型的にはアミノ酸、ビタミン、及びミネラルを含む高度に消化可能なタンパク質を有する。一部には血液が栄養素を提供しないため、既存の方法は、従来の肉に存在する多くの栄養素を欠く細胞ベースの肉製品を作り出すことが多い。さらに、成長培地に浸漬された細胞ベースの肉製品はまた、屠殺された肉に特徴的ではない過度に高い浸透圧又は塩-鉱物性組成を示し得る。
【0006】
これらは、さらなる問題及び問題とともに、細胞ベースの肉製品を培養するための既存の方法に存在する。
【発明の概要】
【0007】
簡単な概要
本開示は一般に、細胞培養培地を除去し、仕上げ培地で細胞を濃縮するために、増殖した細胞塊から細胞を洗浄する方法を記載する。特に、開示された方法は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させ、次いで、増殖した細胞塊を、経時的に変化する一連の洗浄緩衝液又は勾配洗浄緩衝液で収集及び洗浄することを含む。1つのそのような洗浄緩衝液は、細胞培養培地を置換又は除去することができる。別の洗浄緩衝液は、生育細胞塊の細胞の質感及び栄養組成を改善する仕上げ緩衝液の形態をとってもよい。追加的に又は代替的に、開示された方法は、洗浄培地の濃度を減少させ、時間とともに仕上げ媒体の濃度を増加させることによって、勾配洗浄緩衝液を使用することができる。別々に、又は勾配混合物として適用されるかにかかわらず、開示された方法は、増殖した細胞塊を洗浄培地で洗浄し、増殖した細胞塊を仕上げ媒体で洗浄して、細胞培養培地残留物を除去又は希釈し、不適切な香味及び芳香を酸化し、色を改善し、及び/又は栄養素で増殖した細胞塊を濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
詳細な説明は、以下に簡単に説明される図面を参照する。
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による、洗浄培地及び濃縮培地を使用して、増殖細胞塊を洗浄及び濃縮する概要図を図示する。
【0010】
【
図2】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、細胞閾値増殖段階の完了の例示的な特性を図示する。
【0011】
【
図3】
図3は、本開示の1つ以上の実施形態による、複数洗浄法及び勾配洗浄法を図示する。
【0012】
【
図4】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態による、増殖細胞塊を洗浄及び濃縮するための様々な構成要素を含む例示的なシステムを示す。
【0013】
【
図5】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な洗浄培地組成物及び例示的な濃縮培地組成物を図示する。
【0014】
【
図6】
図6は、本開示の1つ以上の実施形態による、細胞塊の細胞上に第1の交換培地及び第2の交換培地を流すことを図示する。
【0015】
【
図7】
図7は、本開示の1つ以上の実施形態による、洗浄培地及び濃縮培地を使用して、増殖細胞塊を洗浄及び濃縮するための一連の動作を図示する。
【0016】
【
図8】
図8は、本開示の1つ以上の実施形態による、勾配洗浄培地を使用して、増殖細胞塊を洗浄及び濃縮するための一連の動作を図示する。
【0017】
【
図9】
図9は、本開示の1つ以上の実施形態による、交換培地を用いて細胞塊を洗浄するための一連の動作を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は細胞ベースの肉製品の質感、風味、及び香りを改善するために、増殖細胞塊を洗浄及び調製するための方法の1つ又は複数の実施形態を説明する。開示される方法は、細胞塊を増殖させることと、増殖細胞塊が閾値増殖段階を完了した後に、増殖細胞塊を採取することとを含む。増殖細胞塊を回収し、細胞培養培地から分離することができる。別個洗浄培地中で適用されるか、又は洗浄培地の勾配として適用されるかにかかわらず、開示される方法は、残留細胞培養培地を置換する第1の洗浄緩衝組成物で増殖細胞塊を洗浄し、次いで、増殖細胞を濃縮するために栄養素を含有する仕上げ緩衝液で増殖細胞塊を洗浄することができる。
【0019】
例示すると、開示される方法は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させることと、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去することと、洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄して残りの細胞培養培地を洗い流すことと、ヒトの消費に好ましい栄養素を含む濃縮培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。いくつかの実施態様では、別個の洗浄培地及び別個の濃縮培地を使用するのではなく、開示される方法は、洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を増加させることによって、勾配洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。
【0020】
上述のように、開示された方法は、細胞塊を増殖させることを含む。細胞は、バイオリアクターなどの増殖環境内で増殖させることができる。より具体的には、懸濁細胞及び/又は接着細胞が、細胞培養培地の存在下で増殖させることができる。以下にさらに説明するように、細胞培養培地は、細胞を増殖させるためのエネルギー源及び化合物を含む。
【0021】
細胞塊を増殖させた後、開示された方法は、閾値増殖段階を完了したときに細胞を洗浄することをさらに含む。一般に、細胞は、細胞が指数関数的な増殖を遅延又は停止したときに、閾値増殖段階を完了する。閾値増殖段階を完了した細胞は、異なる特性を有し得る。例えば、開示される方法は、細胞密度、細胞代謝、細胞培養培地内に存在する化合物、及び他要因を評価して、細胞が閾値増殖段階又は閾値増殖段階を完了し、増殖細胞塊になったかどうかを決定することを含み得る。
【0022】
上記のように、増殖細胞塊は、洗浄培地を用いて洗浄することができる。いくつかの実施形態では、開示される方法が、一連の洗浄培地を使用することを含む。別個洗浄培地中で適用されるか、又は洗浄培地の勾配として適用されるかにかかわらず、洗浄培地は例えば、洗浄培地を増殖細胞塊の上に流すもしくは噴霧すること、増殖細胞塊を洗浄培地中に浸漬すること、又は何らかの他の適切な洗浄アプローチを使用することによって、増殖細胞塊から細胞培養培地を置換又は除去することができる。
【0023】
洗浄後又は洗浄の一部として、開示される方法は、増殖細胞塊及び洗浄培地をさらに撹拌することができる。増殖細胞塊を洗浄した後又は洗浄の一部として、開示された方法はまた、濃縮培地を使用して増殖細胞塊を濃縮してもよい。一般に、濃縮培地はビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、脂肪(例えば、油又は脂肪細胞)、及び/又は細胞ベースの肉製品の品質を改善するための他の化合物を含有する。場合によっては、濃縮培地はまた、増殖細胞塊の色を追加又は変化させる。濃縮培地は、増殖細胞塊中の増殖細胞に対する最終又は仕上げ処理として作用し、洗浄された増殖細胞塊中の成分をバランスさせながら、増殖細胞の栄養価を増加させる。
【0024】
洗浄培地及び/又は濃縮培地で洗浄する場合、増殖細胞塊を、一連の媒体又は勾配洗浄培地を用いて洗浄することができる。例えば、開示された方法は、洗浄培地で細胞を洗浄することと、洗浄培地を除去することと、濃縮培地を添加することを含むことができる。他の実施形態では、開示される方法は、勾配洗浄培地を用いて細胞を洗浄することを含み、勾配洗浄培地は設定時間の間、細胞上を流れ、勾配洗浄培地の組成は時間と共に変化する。例えば、勾配洗浄培地は、洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を経時的に増加させることによって適用され得る。
【0025】
開示された方法は、未処理細胞培養物又は他の既存の及び未処理の細胞ベースの肉と比較して、いくつかの利益を提供する。洗浄培地を使用して増殖細胞塊を洗浄することによって、開示された方法は、細胞培養培地、及び屠殺された肉に特徴的でない(又は屠殺された肉とは異なる)細胞に風味又は芳香を付与する化合物を除去する。洗浄培地はまた、増殖細胞塊内のイオン及びpHバランスを調整して、濃縮培地のための増殖細胞塊を調製することができる。
【0026】
細胞ベースの肉の風味又は芳香を改善することに加えて、開示される方法はまた、既存の及び未加工の細胞ベースの肉と比較して、細胞ベースの肉製品の栄養組成物を改善する。特に、開示された方法は、細胞が細胞培養培地中で増殖され、細胞培養培地の一部又は全部が洗い流された後に、栄養素を含む濃縮培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、増殖細胞塊が、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、脂肪、及び/又は他の有益な化合物を濃縮培地から取り込む。濃縮培地の使用は、完成した細胞ベースの肉製品の栄養組成物を改善する。
【0027】
前述の議論によって示されるように、本開示は、開示される方法の特徴及び利点を説明するために様々な用語を利用する。ここで、そのような用語の意味に関してさらなる詳細が提供される。例えば、本明細書で使用される場合、用語「細胞塊」は、肉の細胞を含む塊を指す。特に、細胞塊は、集合塊に集められた培養肉の細胞を指す。以下で論じるように、細胞塊は、筋芽細胞、間葉芽細胞、筋線維芽細胞、間葉系幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、周皮細胞、脂肪細胞、上皮、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、多能性細胞、体性幹細胞、内皮細胞、又は他の同様の細胞型のうちの1つ又は複数などの異なる細胞種を含むことができる。例えば、細胞塊は、チャンバー、ハウジング、容器などの囲い内で成長する培養肉の細胞シートを含むことができる。
【0028】
関連して、「増殖細胞塊」という用語は、1つ以上の増殖細胞を含む細胞塊を指す。例えば、増殖細胞塊は、成長期間中に成長するために成長培地(例えば、細胞培養培地)によって栄養補給された細胞のグループを含む。いくつかの場合において、増殖細胞塊は、増殖期間を終えた細胞塊を含む。
【0029】
本明細書でさらに使用される場合、「細胞」という用語は、肉の個々の細胞を指す。特に、細胞は、筋芽細胞、血管管膜芽細胞、筋線維芽細胞、間葉系幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、周皮細胞、脂肪細胞、上皮、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、多能性細胞、体性幹細胞、内皮細胞、又は他の同様の細胞種のうちの1つ又は複数など、異なる細胞種を含み得る。さらに、細胞は、筋原性前駆細胞、脂肪原性前駆細胞、間葉系前駆細胞、又は他のタイプの前駆細胞を含む、異なるタイプの前駆細胞を含み得る。
【0030】
本明細書でさらに使用される場合、「細胞培養培地」又は「増殖培地」という用語は、細胞の増殖をサポートする化合物を含む液体又はゲルを指す。特に、細胞培養培地は、エネルギー源及び細胞周期を調節する化合物を含む。例えば、細胞培養培地は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、溶解ガス、血清、成長因子、ホルモン、及び付着因子を含有することができる。細胞培養培地はまた、細胞成長及び増殖の間、pH及び浸透圧を維持するのを助けることができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「洗浄培地」という用語は、細胞が増殖細胞塊に増殖した後に細胞を洗浄するための液体を指す。特に、洗浄培地は、増殖細胞塊から細胞培養培地を洗浄するために、利用され得る。例えば、洗浄培地は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、クエン酸、クエン酸/二塩基性カリウム緩衝液、又は増殖細胞塊をすすぎもしくは洗浄するための他の溶液を含むことができる。
【0032】
対照的に、「濃縮培地」という用語は、細胞が増殖細胞塊に増殖した後に細胞を濃縮するための液体を指す。特に、濃縮培地は、栄養組成物を改善するために、又はそうでなければ、消費のために増殖細胞塊の品質を改善するために、増殖細胞塊に添加され得る成分を含有する。例えば、濃縮培地は、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、脂肪、又は健康的又は栄養的な食事に重要な他の化合物などの栄養素を含むことができる。場合によっては、濃縮培地が細胞増殖に必要な栄養素を含まなくてもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「栄養素」という用語は、生存、成長、又は繁殖するために細胞又は生物によって使用される物質を指す。栄養素はまた、動物細胞又は生物が生存、成長、又は繁殖するために必要とされる物質を指し得る。例えば、栄養素は、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、抗酸化剤、又は細胞、生物、又はヒトが生存、成長、及び繁殖するために必要な細胞に添加される脂肪を含むことができる。
【0034】
本明細書で使用する場合に、用語「勾配洗浄培地」は、洗浄培地及び濃縮培地の勾配を有する液体を指す。特に、勾配洗浄培地は、洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を増加させるように変化する動的勾配を含む液体を指すことができる。例えば、勾配洗浄培地は初めて100%の洗浄培地を含み、中間時間の間に洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を増加させる液体、及び後に100%の濃縮培地を含む液体を指すことができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「培養タンク」という用語は、細胞を培養するために使用される容器を指す。特に、培養タンクは、細胞及び細胞培養培地を保持することができる環境を指す。例えば、培養タンクは、バイオリアクターシステムを含むことができる。
【0036】
本明細書でさらに使用される場合、「分離器」という用語は、物質を分離するための装置又は方法を指す。特に、分離器は細胞培養培地、洗浄培地、濃縮培地、及び他の培地を含む液体又はゲルから、増殖細胞塊を分離するための装置を指す。例えば、分離器は、沈降に使用される遠心分離機、フィルタ、篩、又は凝集剤を含むことができる。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「洗浄タンク」は、細胞を洗浄するための容器を指す。特に、洗浄タンクは、増殖細胞塊及び洗浄培地又は濃縮培地のうちの少なくとも1つを保持する容器を指す。例えば、洗浄タンクは、洗浄又は濃縮培地を追加及び除去するための1つ以上の開口部を有するタンクを含むことができる。
【0038】
本明細書でさらに使用される場合、用語「交換培地」は、細胞内及び/又は細胞外への物質の拡散を刺激する化合物を含む液体又はゲルを指す。特に、交換培地は、様々な濃度の膜透過性溶質を含むことができる。細胞が交換培地に曝露されると、膜透過性溶質は、高濃度の領域から低濃度の領域まで細胞膜を通過することができる。例えば、交換培地は、細胞の細胞内空間に拡散する高濃度の栄養素を含んでもよい。別の例では、交換培地が細胞内からの物質を細胞から排出させる低濃度の溶質を含む。
【0039】
本明細書でさらに使用される場合、「低張性」という用語は、別の溶液又は細胞中の溶質の濃度と比較して比較的低い濃度の溶質を有する溶液の特性を指す。特に、低張溶液は、別の溶液と比較してより低い濃度の膜透過性溶質を含む。いくつかの例では、低張溶液は、交換培地又は細胞培養培地内に見出されるよりも低い濃度の膜透過性溶質を含有する。例えば、第1の交換培地は、膜透過性溶質が細胞を出るように刺激する低張溶液を含むことができる。
【0040】
本明細書でさらに使用される場合、「高張性」という用語は、別の溶液又は細胞中の溶質の濃度と比較して比較的高い濃度の溶質を有する溶液の特性を指す。特に、高張溶液は、細胞培養培地又は交換培地と比較して、より高い濃度の膜透過性溶質を含む。例えば、高張交換培地は、細胞塊内の細胞の細胞内空間に入る比較的高濃度の膜透過性溶質を含むことができる。
【0041】
ここで、開示された方法の例示的な実施形態及び実装を描写する例示的な図に関連して、開示された方法に関して、さらなる詳細が提供される。例えば、
図1は1つ以上の実施形態による、洗浄培地中で細胞を洗浄し、濃縮培地中で細胞を洗浄するための、開示された方法における動作の概要を図示する。特に、
図1は、細胞塊を増殖させる動作102と、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する動作104と、洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄する動作106と、濃縮培地で増殖細胞塊を洗浄する動作108とを含む、一連の動作100を示す。
【0042】
図1に示すように、一連の動作100は、細胞塊を成長させる動作102を含む。場合によっては、動作102が細胞培養培地114a中で細胞112を増殖させることを含む。例えば、いくつかの例では、細胞112がバイオリアクター110内で増殖される。細胞112は、細胞培養培地114aに懸濁された懸濁細胞を含むことができる。加えて、又は代わりに、細胞112は、基材118に付着した接着細胞を含む。いくつかの実施形態では、動作102は、細胞が閾値成長又は閾値増殖段階を完了するまで、細胞を増殖させることを含む。
図2及び対応する段落は、1つ又は複数の実施形態による、閾値成長段階を完了した細胞の特性を詳細に示す。
【0043】
一例では、細胞塊を成長させる動作102が、バイオリアクター110を細胞及び細胞培養培地で20%の体積まで充填することを含む。例証すると、バイオリアクター110が1キロリットルタンクである場合、動作102は、200Lの細胞及び細胞培養培地を添加することを含む。開示される方法は、増殖期間の開始時に比較的高濃度の細胞(例えば、15~30%)を含むことができる。細胞を増殖させ、指数関数的な増殖に到達させる。指数関数的な増殖が達成された後、開示された方法は、バイオリアクター110をその体積の100%まで細胞培養培地で満たすことを含む。他の実施形態では、開示される方法が、バイオリアクター110を異なる体積の細胞及び細胞培養培地で充填することを含む。
【0044】
一連の動作100は、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する動作104をさらに含む。特に、動作104は、細胞培養培地114bから増殖細胞122を分離することを含む。増殖細胞122は、一緒に収集されるか、又は環境全体に分散する増殖細胞塊からの細胞を含み得る。図示されるように、開示される方法は、遠心分離機120又はフィルタ116の利用を含むことができる。例えば、動作104は、細胞培養培地114bから増殖細胞122を単離するために、遠心分離機120を使用することを含むことができる。1つ以上の実施形態において、遠心分離によって細胞培養培地から細胞塊を除去することは、細胞培養培地から懸濁細胞を分離するための好ましい方法である。懸濁細胞は、溶液中で増殖するため、追加の液体を分離するためにより多くの遠心分離を必要とすることが多い。したがって、開示される方法は、懸濁細胞である増殖細胞に基づいて、遠心分離時間又はサイクルを追加することを含み得る。同様に、凝集体の試料、又は懸濁液中で組織の部分シートとして増殖細胞は、接着細胞の試料と比較して、多くの場合、より高い割合の細胞培養培地を含む。したがって、開示される方法は、細胞が凝集体であることに基づいて、遠心分離時間又はサイクルを追加することを含み得る。
【0045】
図示のように、遠心分離機120は、連続遠心分離機又はバッチ遠心分離機を含むことができる。連続フロー遠心分離では、バッチ遠心分離の場合のように、多数の遠心分離管を充填し、デカントする必要なく、大量の物質が遠心分離される。遠心分離機を使用する場合、場合によっては、増殖細胞と細胞培養培地との混合物が、選択された動作速度で動作するローターに絶えず流入する。細胞は、細胞培養培地を細胞から運び去る流れから沈殿する。好ましい実施形態では、遠心分離機が細胞溶解及び細胞死のリスクが低い速度で操作され、それによって、細胞は細胞培養培地から分離された後、主に完全に無傷のままである。
【0046】
連続遠心分離とは対照的に、場合によっては、バッチ遠心分離が、比較的高い細胞濃度を有する細胞ペレットを形成するという利点を有し得る。例えば、バッチ遠心分離は、細胞培養培地を伴わない(又はほとんど残らない)ほぼ100%の充填細胞体積をもたらし得る。しかしながら、バッチ遠心分離は、より多くの時間を消費し得るという点で、連続遠心分離と比較して非効率的である。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する動作104が、フィルタ116を利用して、増殖細胞122を細胞培養培地114bから分離することを含むことができる。特に、フィルタ116は、細胞培養培地114bを通過させながら、増殖細胞122を保持するバリアとして作用する半透膜である。いくつかの実施形態では、開示される方法が、細胞培養培地から懸濁細胞を分離するために膜濾過を使用する。
【0048】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する動作104が、洗浄培地で細胞培養培地を希釈又は置換する動作と置き換えられる。例えば、増殖細胞塊は、細胞培養培地を希釈及び/又は置換するために、洗浄培地で単純に満たされ得る。これは、細胞培養培地と洗浄培地との分離を単一動作に組み合わせることによって、(例えば、遠心分離による)分離工程の数を有益に減少させることができる。
【0049】
フィルタに加えて、又はフィルタの実施形態として、動作104は、ふるい分け及び/又は沈殿の使用を含むことができる。ふるい分けは、ふるいの穴を通過するには大きすぎる細胞が保持されるという点で、ろ過のようなものである。開示される方法は、インライン及び/又は振とうふるいの使用を含むことができる。開示される方法は、組織及び微粒子を分離するために、篩のいくつかの層をさらに含むことができる。
【0050】
濾過に加えて、又は濾過の代わりに、動作104は、凝集又は沈降をさらに含んでもよい。凝集又は沈降は、細胞培養培地から細胞の凝集体又はクラスターを分離するための好ましい方法であり得る。凝集/沈降では、凝集剤を添加して、細胞を凝集体に集める。例えば、開示される方法は、ポリマー、多価カチオン、金属塩、又は他の化合物を添加して、増殖細胞122を凝集させることを含むことができる。細胞を凝集させた後又は凝集させている間に、開示される方法は、細胞培養培地を排出又は濾過することができる。
【0051】
1つ以上の実施形態では、開示される方法が、細胞培養培地から細胞塊を除去するための1つ以上の上述の方法を利用する。例えば、開示される方法は、凝集、遠心分離、及び/又は濾過の組合せを利用して、細胞培養培地から増殖細胞122を単離することによって、動作104を実施することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、動作104は任意であり、開示される方法は細胞培養培地から細胞塊を除去する動作を含まない。例えば、いくつかの実施形態では、増殖細胞塊が、シートとして増殖した組織又は細胞を含む。組織は、成長中に基材に付着した接着細胞を含むことができる。このような場合、増殖段階の後、細胞培養培地は、タンクから単純に排出され、基材に付着した細胞組織が比較的乾燥した形態で残され、その後、洗浄の準備が整う。したがって、開示された方法は、細胞塊を成長させる動作102から、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄する動作106に進むことができる。そのような実施形態では、開示される方法が、細胞組織が捕捉された細胞培養培地を保持するポケットを形成しないことを確実にするために、増殖細胞塊及び洗浄培地のさらなる撹拌(例えば、混合又は反転)を含み得る。
【0053】
図1に示すように、一連の動作100は、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄する動作106をさらに含む。特に、洗浄培地124は、増殖細胞122を横切って流されるか、又は噴霧される。洗浄培地124は、細胞培養培地114bの残りの媒体を増殖細胞122から置換又は除去する。洗浄培地124の例示的な組成物を、
図5に関して以下に説明する。
【0054】
いくつかの実施形態では、動作106が、洗浄培地124を増殖細胞122上に注ぎ、洗浄培地124及び増殖細胞122を撹拌することを含む。いくつかの例では、洗浄培地124及び増殖細胞122が、増殖細胞122及び洗浄培地124を保持する遠心分離機又は容器を穏やかに旋回させることによって撹拌される。いくつかの実施形態では、洗浄培地124及び増殖細胞122が、混合機構を利用することによって撹拌される。例示的な混合機構は、電動撹拌機又はインペラを含むことができる。いくつかの実施形態では、開示された方法が、細胞保持フィルタを使用して、増殖細胞122が洗浄培地124で洗浄されている間、それらを保持することを含む。
【0055】
上述のように、動作106は、様々な洗浄方法を含む。例えば、動作106は、複数洗浄法又は勾配洗浄法を含むことができる。
図3及び対応する段落は、1つ又は複数の実施形態による例示的な多重洗浄方法及び例示的な勾配洗浄法を説明する。
【0056】
図1にさらに示すように、一連の動作100は、増殖細胞塊を濃縮培地で洗浄する動作108を含む。図示のように、動作108は、増殖細胞122を濃縮培地126で洗浄することを含む。濃縮培地126は、増殖細胞122の塩分を減少させることができる。濃縮培地126は、増殖細胞122を濃縮するための最終処理としても作用し得る。増殖細胞122を濃縮するために、例えば、濃縮培地126は、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、又は脂肪などの栄養素を含むことができる。栄養素は、食用食品として増殖細胞122の栄養組成を改善する。濃縮培地126の例示的な組成物は、
図5に関して以下に記載される。
【0057】
前述のように、開示された方法は、閾値増殖段階が完了すると、増殖細胞塊を洗浄することを含む。
図2及び対応する段落は、閾値増殖段階202の完了のための例示的な特性を説明する。
図2は、細胞密度204、充填細胞体積206、タイミング208、細胞代謝210、及びタンパク質含有量212を含む様々な特性に基づいて、閾値増殖段階が完了したことを決定することを示す。加えて、又は代替的に、いくつかの実施形態では、開示される方法が、完了を誘導すること214を含む。
【0058】
図2に示すように、閾値増殖段階の完了を示す1つの特性は、細胞密度204である。
図2は、細胞がバイオリアクターに最初に注入されたときに対応する開始細胞密度216を示す。細胞が成長して増殖することにつれて、細胞密度が増加する。例えば、細胞は、標的細胞密度218に達したときに増殖期を完了したと考えることができる。いくつかの実施形態では、標的細胞密度218が、200万細胞/ミリリットル、300万細胞/ミリリットル、又はこれらの値の中間のある密度である。いくつかの実施形態では、細胞密度204の特性が、接着細胞ではなく懸濁細胞に適用される。
【0059】
閾値増殖段階の完了を示す別の特徴は、充填細胞体積(PCV)206である。一般に、PCVは、試料中の細胞の体積を指す。
図2は、開始PCV220及び標的PCV222を示す。開始PCV220は、増殖期の開始時の試料中の細胞の体積を反映する。標的PCV222は細胞が増殖し、より大きな体積を占有することを示す。いくつかの実施形態では、標的PCV222が少なくとも1%のPCVに等しい。他の実施形態では、標的PCV222が1%~25%PCVの範囲内の任意の値に等しい。いくつかの実施形態では、充填細胞体積206の特性が、接着細胞ではなく懸濁細胞を評価することに適用される。
【0060】
PCVに加えて、又はPCVの代わりに、いくつかの実施形態では、細胞が、タイミング208に基づいて閾値増殖段階を完了したと考えられる。例えば、開示された方法は、細胞が増殖期間にわたって増殖された後に、増殖された細胞を洗浄することに進むことができる。成長期間は、任意の長さの時間を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、増殖期間は6日~140日である。
【0061】
図2によってさらに示されるように、細胞はまた、細胞代謝210による閾値増殖段階の完了を示し得る。一般に、細胞が成長することにつれて、細胞は集合的に、より多くのグルコース及び酸素を消費する。指数関数的な成長の間、グルコース及び酸素消費も指数関数的に増加することが予想される。細胞が閾値増殖段階を出た後、グルコース及び酸素消費は、よりゆっくりと上昇し、それによって増殖が減速していることを示す。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法が、グルコース吸収及び/又はO
2利用を分析して、細胞が閾値増殖段階を完了したかどうかを決定することを含む。一例では、酸素消費安定化、例えば、経時的に変化していないか、又は最小限に変化している酸素消費は、細胞が採取、したがって洗浄及び仕上げの準備ができていることを示す。
【0062】
さらに、いくつかの実施形態では、開示される方法が、タンパク質含有量212に基づいて閾値増殖段階の完了を決定する。一般に、細胞培養培地及び細胞混合物中の異なるタンパク質の濃度は、増殖の遅延を示すことができる。例えば、細胞培養培地中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)含有量の増加は、細胞死を示す。特に、LDHは、細胞膜障害時に細胞培養培地中に迅速に放出される細胞質酵素である。したがって、LDH含有量の増加は、閾値増殖フェーズの完了の完了をシグナリングし得る。別の例では、ビシンコニン酸(BCA)を使用して、細胞培養培地中のタンパク質の総レベルを分析することができる。特に、BCAアッセイを利用して、細胞培養培地中のタンパク質含有量を測定することができる。タンパク質レベルのピーク及びプラトーは、細胞が閾値増殖段階を完了したことを示し得る。
【0063】
開示される方法は、閾値増殖段階の完了をさらに誘導することができる。
図2に示されるように、開示される方法は、細胞を外因性調節因子に曝露することによって、完了214を誘導することができる。外因性調節因子は、細胞の分化転換を引き起こし、又は促進して、細胞を閾値増殖段階から、筋線維及びミオシン重鎖などの成熟筋線維を形成する段階に移行させることができる。例えば、外因性調節因子は、細胞増殖を遅らせ、及び/又は分化転換を刺激する分化転換因子を含むことができる。
【0064】
外因性調節因子に加えて、又はその代わりに、別の例では、開示される方法が、細胞培養培地から細胞を除去することによって完了214を誘導することを含む。一般に、細胞が培養器から除去されると、細胞は、持続的な増殖に必要な栄養素を提供する細胞培養培地から除去されるため、増殖を停止又は遅延させる。
【0065】
前述のように、開示された方法は、残りの細胞培養培地を洗い流すために、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄することを含む。一般に、洗浄培地は、増殖細胞塊から細胞培養培地を置換又は除去する。
図3及び対応する議論は、1つ以上の実施形態による、増殖細胞塊を洗浄するための2つの異なる方法を詳述する。
図3は、複数洗浄法302及び勾配洗浄法304を示す。
【0066】
一般に、複数洗浄法302は、別個の異なる培地を使用して、増殖細胞塊を洗浄することを含む。概略として、一例では、開示される方法が細胞を増殖させること、増殖細胞塊を収集すること、細胞を冷却すること、細胞培養培地を除去すること、及び細胞培養培地のバルク希釈を提供し、浸透圧ストレスからの細胞破裂を制限するために等張食塩水を含む第1の洗浄培地を適用することを含む。第1の洗浄培地は、遠心分離され得るか、又はそうでなければ、増殖細胞塊から除去され得る。第2の濃縮培地を使用して、残留洗浄培地を除去する一方で、塩濃度も減少させる。第2の濃縮培地はさらに、遠心分離されるか、又はそうでなければ、増殖細胞塊から除去され得る。
図3に示すように、複数洗浄法302は、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す動作306と、洗浄培地を除去する動作308と、増殖細胞塊の上に濃縮培地を流す動作310とを含む。
図3は増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す1サイクルを示すが、いくつかの実施形態では開示された方法が、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す数サイクルを含む。
【0067】
複数洗浄法302は、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す動作306を含む。
図3に示すように、洗浄培地316を増殖細胞314に添加する。増殖細胞314は、遠心分離又は細胞培養培地からの濾過によって任意に分離された後の濃縮細胞を含む。いくつかの実施形態では、増殖細胞314が、1:1~1:4の細胞対洗浄培地の比で洗浄培地316で洗浄される。例えば、増殖細胞314が40Lの体積である場合、開示された方法は、洗浄培地316の160Lに40Lを添加することを含む。さらに、いくつかの実施形態では、洗浄培地316が洗浄タンク318内の増殖細胞314に添加される。洗浄タンク318は、汚染のリスクを低減するために加圧されてもよい。
【0068】
増殖細胞314に添加される洗浄培地316の量は、増殖細胞314から細胞培養培地の残余物を効率的に除去するように最適化され得る。例えば、洗浄培地316が多く添加されすぎると、処理時間が増加し、増殖細胞314を処理するのに必要な物質が増加する。洗浄培地316が少なく使用されすぎると、増殖細胞314が洗浄培地316で十分に被覆されず、残留細胞培養培地が増殖細胞314内に残存する可能性がある。
【0069】
洗浄培地316は、洗浄期間の間、増殖細胞314の上を流れるか、又はそれに曝露され得る。洗浄期間は、5分~8時間のいずれかで持続することができる。洗浄期間が長すぎる場合、及び浸透圧が高すぎる場合、増殖細胞314は破裂し得る。洗浄期間が短すぎる場合、洗浄培地316は平衡化し、必要なイオン交換を行うのに必要な時間を有さなくてもよい。
【0070】
開示される方法はまた、洗浄培地316の温度を制御することを含んでもよい。特に、洗浄培地316は、-5C~45Cであり得る。より温かい温度は、細胞膜を横切るより速い質量移動の利点を有するが、より低い温度はより良好な細胞生存に対応する。
【0071】
いくつかの実施形態では、動作306が洗浄培地316と増殖細胞314との混合物を撹拌することをさらに含む。一般に、洗浄培地316と増殖細胞314との混合物を撹拌することにより、増殖細胞314の洗浄培地316への曝露が最大化される。増加した曝露は、増殖細胞314と洗浄培地316との間の転移及び平衡化処理を増強する。これを達成するために、混合物は、洗浄タンク318内で撹拌されてもよい。細胞は、撹拌され、ポンプを介して循環され、又は空気もしくはガスを使用して均質化され得る。攪拌は、細胞を保存するための強度及び時間において制限され得る。過度に又は過度に激しい撹拌は、せん断力によって増殖細胞314を乱し、細胞損傷をもたらす可能性がある。
【0072】
図3にさらに示すように、複数洗浄法302は、洗浄培地を除去する動作308も含む。特に、開示された方法は、洗浄培地316から洗浄された増殖細胞322を分離することを含む。1つ又は複数の実施形態では、動作106が、洗浄された増殖細胞322を洗浄培地316から分離するために、増殖細胞塊を細胞培養培地から分離するために使用される方法を利用する。例えば、動作308は、遠心分離機320、濾過、ふるい分け、又は凝集/沈降を利用して、洗浄された増殖細胞322を洗浄培地316から分離することを含むことができる。
【0073】
図3にさらに示すように、複数洗浄法302は、増殖細胞塊の上に濃縮培地を流す動作310を含む。特に、開示された方法は、洗浄された増殖細胞322の上に濃縮培地324を流すことを含む。増殖細胞塊の上に濃縮培地を流す方法は、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す方法と同様である。より具体的には、洗浄手順、濃縮培地に対する細胞の比、温度、濃度、撹拌、及びタイミングは、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流す動作306に関して上述したものと同じ又は同様である。
【0074】
例示のために、濃縮培地を、増殖細胞塊の上に流し、撹拌することができる。例えば、増殖細胞塊及び濃縮培地は、撹拌され、ポンプを介して循環され、又は空気/ガスで均質化され得る。いくつかの実施形態において、増殖細胞塊は、1:1~1:4の細胞対濃縮培地の比で、濃縮培地324で覆われる。いくつかの実施形態では、濃縮培地324の温度が1C~40Cである。より具体的には、濃縮培地324が4Cの温度であってもよい。開示される方法は、洗浄された増殖細胞322を濃縮培地324に濃縮期間の間、曝露することをさらに含むことができる。濃縮期間は、洗浄期間と同じであってもよく、洗浄期間よりも長くても短くてもよい。特に、濃縮期間は、5分~8時間であり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、複数洗浄法302が、濃縮培地を除去する追加の動作をさらに含む。特に、濃縮され洗浄された増殖細胞は、過剰な濃縮培地を除去するために、濃縮培地324から分離され得る。いくつかの例では、開示される方法が、増殖細胞塊と濃縮培地324との混合物を遠心分離することを含む。加えて、又は代替的に、細胞は凝集されてもよい。
【0076】
さらに、複数洗浄法302は、増殖細胞塊を乾燥させる追加の動作を含むことができる。一般に、増殖細胞塊は例えば、細胞ベースの肉製品の質感を改善することによって、消費の準備ができた細胞ベースの肉製品への増殖細胞塊の移行を促進するために、乾燥され得る。例えば、増殖細胞塊は、従来の肉の水分含量を模倣するために、50%~80%の水分含量を有するように乾燥され得る。例えば、増殖細胞塊は、真空、噴霧、又は強制乾燥システム下で乾燥させることができる。
【0077】
複数洗浄法302の代わりに、開示された方法は、勾配洗浄法を使用して、増殖細胞塊を洗浄することができる。一般に、勾配洗浄培地を、増殖細胞塊の上に流す。勾配洗浄培地の組成は経時的に変化する。例えば、洗浄培地を、設定時間の間、増殖細胞塊の上に流し、濃縮培地に徐々に移行させることができる。
【0078】
図3は、1つ以上の実施形態による勾配洗浄法304を示す。概略として、勾配洗浄法304は、細胞を増殖させること、増殖細胞塊を収集すること、増殖細胞塊から細胞培養培地を遠心分離又は除去すること、細胞を冷却すること、及び勾配洗浄培地で細胞を洗浄することを含み得る。勾配洗浄法304は2つのタンクを利用することができ、一方は洗浄培地326を保持し、他方は濃縮培地328を保持する。2つのタンクはそれぞれ、ガウン細胞塊330を収容する洗浄タンク332に接続される。勾配洗浄培地の濃度は、洗浄培地326の100%として開始し、より多くの濃縮培地328をゆっくりと含むことができる。勾配洗浄培地は、濃縮培地328から構成される100%(又はほぼ100%)になるまで、移行し続ける。勾配洗浄培地が経時的に変化することにつれて、開示される方法は、洗浄タンク332から媒体を排出することを含むことができる。例えば、洗浄タンク332は、媒体が洗浄タンク332に流入されているのと同じ速度で媒体を排出することができる。複数洗浄法302に対する勾配洗浄法304の利点には、洗浄培地を除去する必要性を除去することによる効率の改善が含まれる。
【0079】
開示される方法は、洗浄培地326及び/又は濃縮培地328が、ガウン細胞塊330に曝露される時間を調整することを含むことができる。例えば、
図3に示されるように、勾配洗浄法304は、24時間の期間内に実行される。最初の3時間(又は5分~8時間の最適な洗浄期間内の任意の時間)において、勾配洗浄培地は、洗浄培地326から構成される100%(又はほぼ100%)の流入を特徴とする。3時間から21時間までの中間期間にわたって、勾配洗浄培地は、より高い濃度の洗浄培地326を有する流入から、より高い濃度の濃縮培地328を有する流入に徐々に移行する。最後の3時間(又は5分~8時間の最適な濃縮期間内の任意の時間)において、勾配洗浄培地流入は、濃縮培地328から構成される100%(又はほぼ100%)である。代替の実施形態では、流入が、100%未満の洗浄培地(例えば、95%洗浄培地及び5%濃縮培地の開始比)から100%未満の濃縮培地(例えば、5%洗浄培地及び95%濃縮培地の終了比)に移行する。
【0080】
勾配洗浄法304の一例では、洗浄培地326が、高濃度の塩、糖などを含有する高浸透圧溶液を含む。洗浄培地326は、ガウン細胞塊330からイオンを除去するためにクエン酸塩をさらに含むことができる。さらに、洗浄培地326は、ガウン細胞塊330のpHをさらに変化させることができる。上記で示唆したように、場合によっては、勾配洗浄法304が、塩濃度が低く、クエン酸塩がほとんど又は全くなく、ビタミンBなどの追加の栄養素を有する濃縮培地328に徐々に変化させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、開示された方法が、洗浄培地326及び濃縮培地328から、タンパク質の変性の危険性があり、かつ、粘り気のある質感をもたらす酸(クエン酸塩など)を除外する。
【0081】
図4は、1つ又は複数の実施形態による、開示された方法を実行するための例示的なシステムを示す。一般に、
図4は、増殖細胞塊を洗浄するためのシステムの一部であり得る様々な構成要素を含む。例えば、
図4は、培養タンク402、バッファータンク406、洗浄タンク408、及び様々な他の構成要素を含むシステム400を示す。開示された方法は、
図4に示されたものよりも多い又は少ない構成要素の使用を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、
図4の構成要素が異なる順序で編成される。
【0082】
図4に示すように、システム400は、培養タンク402を備える。培養タンク402は、細胞が増殖し、閾値増殖段階を完了して、増殖細胞塊になることができる環境を提供する。より具体的には、培養タンク402が、細胞増殖のための栄養素を有する細胞培養培地を含む。いくつかの実施形態では、培養タンク402がバイオリアクターシステムを含む。培養タンク402内の細胞410は、成長温度に保たれる。例えば、細胞培養培地及び細胞410は、哺乳動物細胞については40℃に、水生種についてはより低い温度に保つことができる。いくつかの実施形態では、培養タンク402はまた、撹拌器412を含む。撹拌器412は、細胞培養培地への細胞410の曝露を増加させるために、細胞を混合するか、又はそうでなければ攪拌する。
【0083】
図4にさらに示すように、増殖細胞塊及び細胞培養培地414を回収し、バッファータンク406に移すことができる。いくつかの例では、増殖細胞塊の一部が、培養タンク402から回収又は排出され、別の部分は次のバッチの成長のために培養タンク402内に残される。例えば、80%の増殖細胞塊を、洗浄のために培養タンク402から抽出することができ、これは培養タンク402中に増殖細胞塊の20%を残す(例えば、その後の増殖及び増殖段階のために)。
【0084】
上述のように、増殖細胞塊及び細胞培養培地414は、排液中及び洗浄前に増殖細胞を貯蔵するために、中間タンクとしてバッファータンク406に移される。バッファータンク406は、分離前に細胞を格納する滅菌容器である。バッファータンク406は、効率の利点を提供することができる。より具体的には、いくつかの培養タンクが同期して動作している場合、培養タンクは一定の間隔で排出される。8つのバイオリアクターが同期して動作している一例では、それらのうちの1つは典型的には2時間ごとに排出される。いくつかの実施形態では、バッファータンク406が、下流プロセスが排出スケジュールに追いつくにつれて、培養タンクから増殖細胞のための保管スペースを提供する。
【0085】
図4にさらに示すように、システム400は、熱交換器404aをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞を洗浄することの一部として、開示される方法は増殖細胞塊を冷却する。哺乳動物細胞の場合、細胞は、36C-42C~1C-20Cの成長温度から冷却される。いくつかの場合において、増殖細胞塊は、増殖細胞を死滅又は凍結させることなく、可能な限り最低の温度に冷却される。
【0086】
細胞を冷却することは、いくつかの利点を提供する。例えば、冷却細胞は、細胞内の代謝プロセスを遅らせて、溶解及び他の形態の細胞死を遅らせる。冷却された細胞はまた、より活性が低く、これは、さらなる処理が行われ得る時間量を延長する。さらに、増殖細胞塊を冷却することにより、流体粘度が増加し、細胞膜が強化され得、これにより、以下のステップにおいて、増殖細胞が、撹拌及び遠心力により良好に耐えることが可能になる。
【0087】
熱交換器404aは、増殖細胞塊を冷却する。
図4に示す例では、熱交換器404aが、増殖細胞塊と細胞培養培地414とが分離器422によって分離される前に、増殖細胞塊と細胞培養培地414との両方を冷却する。増殖細胞塊及び細胞培養培地414を一緒に冷却することは、細胞培養培地から遠心分離又はそうで無ければ分離される前に、細胞膜を強化し得る。しかしながら、増殖細胞塊及び細胞培養培地414の両方を冷却することは、増殖細胞塊のみのより少ない体積を冷却することとは対照的に、追加のエネルギーを必要とする。
【0088】
いくつかの実施形態では、熱交換器404aが分離器422によって細胞培養培地から分離された後に、増殖細胞塊を冷却する。そのような実施形態では、細胞培養培地が冷却されないので、システム400はエネルギーを節約する。しかしながら、増殖細胞塊中の細胞は分離前に冷却されないので、細胞はよりセンシティブであり得る。したがって、増殖温度で細胞培養培地から増殖細胞塊を分離することは、細胞死を防ぐために、より遅い速度での遠心分離が必要となり得る。
【0089】
図4にさらに示すように、分離器422は、(
図1の動作104に関して前述したように)増殖細胞塊426を細胞培養培地424から除去する。分離器422は、増殖細胞塊及び細胞培養培地414を重位相及び軽位相の遠心分離に分離する連続遠心分離器を含む。重位相は増殖細胞塊426を含有又は収集し、軽位相は細胞培養培地424を含有又は収集する。いくつかの実施形態では、連続遠心分離機が、細胞壁構造の完全性が遠心分離中に維持されることを確実にする、毎分回転数(RPM)又は相対遠心力(G)で操作される。過度に高いRPM又はGでは、細胞は破裂し得る。より低いRPM及びGでは、分離は不十分であり、重位相は過剰な増殖培地を含有する。
【0090】
図4にさらに示すように、増殖細胞塊426を洗浄タンク408に移すことができ、細胞培養培地424を熱交換器404bに流すことができる。熱交換器404a~404bは、エネルギー貯蔵タンク420と協働して、システム400のエネルギー効率を改善する。一般に、熱交換器404a~404bは、増殖細胞塊を冷却するために使用されるエネルギーを回収する。
【0091】
上述のように、さらに
図4に示されるように、熱交換器404aは増殖細胞塊(及びいくつかの実施形態では細胞培養培地)を成長温度(例えば、40C)から冷却温度(例えば、1C)まで冷却する。いくつかの実施態様では、冷却温度が、増殖細胞塊中の細胞のための最適成長温度未満の任意の温度を含む。熱交換器404a内の細胞を冷却することは、冷却流入418(例えば、1C)を利用し、加温流出416(例えば、36C)をもたらす。
【0092】
加熱及び冷却を容易にするために、システム400は、エネルギー貯蔵タンク420を任意に含む。特に、エネルギー貯蔵タンク420は、冷却された温度での細胞培養培地424と成長温度での増殖細胞塊との間のエネルギーの効率的な交換を促進する。より具体的には、いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵タンク420が、底部に沈む冷却された液体と、エネルギー貯蔵タンク420の頂部に上昇する加温された液体とを含む。一例では、エネルギー貯蔵タンク420が葉巻形状のエネルギー貯蔵タンクである。エネルギー貯蔵タンク420に流出入する線の異なるパターンによって示されるように、加温流出416は液体を加温し、熱交換器404bからの冷却流出部438は培養タンク402内の液体を冷却する。
【0093】
上述のように、増殖細胞塊426は、洗浄タンク408に移送される。洗浄タンク408において、システム400は増殖細胞塊426の上に洗浄培地428及び/又は濃縮培地430を流し、噴霧し、又は浸漬する。洗浄タンク408はまた、洗浄プロセス中に増殖細胞塊を撹拌するか、又はそうでなければ撹拌するための撹拌器440を含むことができる。撹拌器440は、増殖細胞塊及び洗浄培地又は濃縮培地を攪拌する。
図4は、撹拌器440を示しているが、細胞は洗浄タンク408内で撹拌されるか、ポンプを介して循環されるか、又はエア/ガスで均質化されてもよい。
【0094】
図4にさらに示されるように、開示される方法は、システム400において上述された複数洗浄法を利用することができる。特に、洗浄培地428は、洗浄タンク408内の増殖細胞塊の上を流れることができる。洗浄培地は、遠心分離機432によって、増殖細胞塊から除去される。より具体的には、洗浄培地が(i)第2の遠心分離機、又は(ii)細胞培養培地424と増殖細胞塊426とを分離するために使用される分離器422を使用して除去することができる。
【0095】
開示される方法はまた、凝集434によって、増殖細胞塊から洗浄培地を除去することを含むことができる。凝集434において、増殖細胞塊は、多価カチオン、金属塩、又はポリマーの添加によって凝集体に収集される。凝集は、高い含水量が許容される細胞ベースの肉製品にとってより望ましい場合がある。除去方法にかかわらず、洗浄培地が除去されたとき、システム400は、洗浄された細胞塊436と共に残される。
【0096】
上記のように、複数洗浄法を使用する場合、濃縮培地が、洗浄された細胞塊436に添加されるか、流されるか、又は浸漬される。いくつかの実施形態では、濃縮培地が洗浄タンク408内の洗浄された細胞塊436に添加される。他の実施形態では、濃縮培地が別個の濃縮タンク内で洗浄された細胞塊436に添加される。
【0097】
複数洗浄法に加えて、
図4は、システム400における上述の勾配洗浄法も示す。特に、洗浄タンク408は、洗浄培地428及び濃縮培地430の両方に接続される。上述のように、開示される方法は、洗浄培地428及び濃縮培地430の濃度を経時的に変化させることによって、勾配洗浄培地を流す(又は浸漬する)ことを含むことができる。勾配洗浄培地が洗浄タンク408内の増殖細胞塊の上を流れた後、細胞は、最終的な細胞ベースの肉製品に形成され得る。
【0098】
上述のように、洗浄培地及び濃縮培地は、望ましくない芳香、味覚、及び質感を除去する一方で、細胞ベースの肉製品の栄養組成も改善する。
図5は、1つ以上の実施形態による、質感、香味、芳香、及び栄養上の利益を提供するための洗浄培地及び濃縮培地の組成物の概要を提供する。
【0099】
上記のように、洗浄培地は細胞培養培地を置換/除去し、増殖細胞塊を洗浄し、及び/又は細胞溶解を減少させる。濃縮培地は、栄養素、保存剤(例えば、抗酸化剤)、香味料、芳香、着色料、及び/又はテクスチャライザーを用いて、増殖細胞塊を濃縮する。しかし、洗浄培地も濃縮培地も細胞培養培地ではない。例えば、いくつかの実施形態では、洗浄培地も濃縮培地も、細胞を増殖させる増殖因子、細胞培養培地が含み得る増殖因子を含有しない。
図5は、洗浄培地組成物502の例及び濃縮培地組成物504の例を示す。洗浄培地組成物502のこのような一例では、洗浄培地が希釈リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びクエン酸である。クエン酸は、コレステロールを有益に低下させることができる。別の例では、洗浄培地はクエン酸/二塩基性カリウム緩衝液である。等張生理食塩水で作られた洗浄培地はまた、細胞破裂を制限する浸透圧を有し、費用効率の高いバルク希釈を提供する。
【0100】
対照的に、濃縮培地組成物504の例では、濃縮培地が低塩含有量を有する低張食塩水を含む。濃縮培地はまた、増殖細胞塊によって取り込まれる化合物を含有することができる。特に、濃縮培地は、タンパク質/アミノ酸、抗酸化剤、脂肪、脂肪酸、油、及びビタミンを含有することができる。いくつかの実施形態では、濃縮培地が食用化合物を含有する。濃縮培地はまた、B-ビタミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの抗酸化剤、又はサクランボ、アルファトコフェロール、及び他の抽出物などの抗酸化特性を有する植物からの他の天然抽出物を含有することができる。これらの酸化防止剤は、乾燥プロセス中の脂肪の酸化を防止する。
【0101】
さらに、いくつかの実施形態では、増殖細胞塊を処理して、濃縮培地からの栄養素の細胞取り込みを改善する。例えば、細胞塊は、熱ショック又はエレクトロポレーションされ得、それによって、細胞壁を通る物質移動が増加される。開示された方法は続いて、熱ショック又はエレクトロポレーション後に、増殖細胞塊を濃縮培地で洗浄することができる。
【0102】
洗浄培地及び/又は濃縮培地は、細胞ベースの肉製品の感覚的側面を制御するデータを含有することができる。感覚的側面には、芳香、味覚、外観、口当たり、及び質感が含まれる。特に、洗浄培地及び/又は濃縮培地は、不適切な芳香に関連する揮発性物質の除去を容易にすることができる。例えば、多くの脂質酸化生成物は揮発性であり、屠殺された肉の特徴ではない細胞ベースの肉製品に不適切な芳香及び不適切な香味を付与するアルデヒド、ケトン、及びアルコールを含む、一次及び二次化合物の形成をもたらす。より具体的には、潜在的に望ましくない細胞培養培地成分及び分解物が、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、コリン、アンモニウムイオンなどを含み得る。特に、メチオニンは、分解されない場合、最終製品に煮物キャベツのような臭い及び風味を与えることができる。イソロイシンは、分解しないとクッキーのようなにおいや味がする。システインは、分解されない場合、腐った卵のような臭い及び風味を最終製品に付与することができる。培地中のアンモニアは、尿又は汗のような臭いを与えることができる。洗浄及び/又は濃縮培地はまた、異臭源であり得る鉄及び鉄錯体を除去することができる。
【0103】
さらに、濃縮培地中にB-ビタミン抗酸化剤を添加すると、芳香を発生させる酸化経路が最小限に抑えられる。特に、脂質過酸化は、従来の肉及び肉製品を劣化させ、肉製品に望ましくない臭い及び食感を与える。典型的には、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸が活性酸素種(ROS)による過酸化を受ける。濃縮培地中のB-ビタミンの添加はROSをクエンチし、それによって脂質の過酸化を防止する。
【0104】
上述のように、洗浄培地及び/又は濃縮培地中の添加剤は、細胞ベースの肉製品の味を改善することもできる。特に、洗浄培地は、細胞ベースの肉製品に異臭を付与する望ましくない細胞培養培地成分及び分解剤を除去する。一例では、メチオニン、イソロイシン、システイン、及びアンモニアはすべて、洗浄培地を使用して増殖細胞塊から洗浄され得る細胞培養培地の成分である。オフフレーバーは、本質的に金属であってもよく、増殖細胞中に存在する鉄の特定の種に起因し得る。金属成分は鉄を結合するか、又は本鉄種(例えば、鉄結合タンパク質)を、より好ましい香味及び/又は芳香を有する異なる鉄種と置き換える洗浄培地中の成分によって除去され得る。上述のように、洗浄培地及び濃縮培地中のB-ビタミン抗酸化剤は、不適切な香味をもたらす酸化経路を最小限にすることができる。
【0105】
洗浄培地及び/又は濃縮培地の成分はまた、最終的な細胞ベースの肉製品の外観を改善する。例えば、色は、色促進又は色抑制特性を有する構成要素によって導入され得る。そのような構成要素の例としては、ビートジュース、ニンジンジュース、他の植物ベースのジュース、加水分解物又は他のペプトン、及び他の着色剤が挙げられる。色は、鉄を添加することによって、又は洗浄及び濃縮工程を通して酸化を防止することによって、灰色化を防止するために保持され得る。さらに、色は、キレート特性を有する構成要素によって除去されてもよい。そのような構成要素の例としては、クルコン酸ナトリウム、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び他の化合物が挙げられる。
【0106】
洗浄培地及び/又は濃縮培地はまた、細胞ベースの肉製品の質感を改善する成分を含んでもよい。特に、濃縮培地は質感を改善するために、架橋剤などの酵素を含むことができる。例えば、濃縮培地は、架橋のためのトランスグルタミナーゼを含むことができる。さらに、洗浄培地及び濃縮培地は平衡濃度のNaCl塩緩衝液を含むことができ、これは、タンパク質を平衡質感のために安定化させる。
【0107】
細胞ベースの肉製品の感覚的態様を制御すること以外に、洗浄培地及び濃縮培地を使用して、浸透圧を制御することができる。一般に、細胞増殖培地は浸透圧が非常に高く(例えば、細胞はしばしば、塩分条件でよく増殖する)、洗浄培地に適切な浸透圧を選択し、濃縮培地は、様々な考慮を払って作製されなければならない。媒体が細胞よりも高い浸透圧を有する場合、媒体成分は、より迅速に細胞によって取り込まれ得る。しかしながら、細胞取り込みを増加させるために高浸透圧に依存する濃縮培地を後に利用するために、最初に洗浄培地で細胞の浸透圧を(例えば、より味の良い塩含量に)減少させることが必要であり得る。一般に、開示される方法は塩(塩化ナトリウム(NaCl)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、及び他の要素を含む)を、栄養素の取り込みを促進するために、浸透圧の標的閾値に達するように調整することを含み得る。
【0108】
洗浄培地及び濃縮培地はまた、増殖細胞塊内の化学を変化させるために使用され得る。特に、従来の肉タンパク質の等電点(pl)は、約5~5.5である傾向がある。開示された方法は、pHに基づいてplを変更すること(又はその逆)を含んで、イオン保持及び水分含有量などの増殖細胞塊の挙動を調整することを含むことができる。より具体的には、pHがplよりも低い場合、タンパク質は全体的に正の正味電荷を有し、(R-NH3+及びR-COOH)グループが豊富に存在する。pHがplよりも大きい場合、タンパク質は全体的に負の電荷を有し、(R-NH2及びCOO)グループが豊富に存在する。pHがplに等しい場合、増殖細胞塊のタンパク質は、全体的に中性の電荷を有する。
【0109】
さらに、開示される方法は、洗浄培地及び/又は濃縮培地内の塩濃度を最適化することを含むことができる。塩濃度は、最適なタンパク質安定性のために選択することができる。適切な範囲の塩濃度はタンパク質を安定化し、より望ましい肉質の質感にも寄与する。例えば、培地の塩含量は、洗浄培地及び/又は濃縮培地中のナトリウムカチオン(Na+)及び/又は塩化物アニオン(Cl-)の量を増加させることによって変更することができる。洗浄培地及び濃縮培地中の塩含有量は、最終的な細胞ベースの肉製品において所望の比率を達成するように比例させることができる。例えば、適切な塩濃度に達するための方法は、Na+又はCl-の濃度の洗浄及び/又は濃縮培地を含み、これは、従来の肉の範囲内にあるか、又は少なくともより肯定的な感覚経験をもたらす最終生成物中のNa+又はCl-値をもたらす。細胞へのNaClの吸収を最大にするために露光を増加させるために、より高い洗浄培地/濃縮培地対細胞比を使用することができる。さらに、撹拌は、吸収を増加させることができる。
【0110】
さらに、洗浄培地及び/又は濃縮培地のカリウム含量は、媒体中のカリウムカチオン(K+)の量を増加又は減少させることによって変更することができる。細胞ベースの肉製品中のNa+及びCl含量を調整するための方法と同様である。特に、洗浄培地及び濃縮培地中のカチオンは、最終生成物中の所望の比を達成するように配合される。再度、吸収を最大にするために露光を増加させるために、より高い洗浄培地/濃縮培地対細胞比又は撹拌を使用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、洗浄培地及び/又は濃縮培地が細胞種に基づいて特定される。例えば、培地は牛肉、鶏肉、アヒル、豚肉、魚類、及び他の種に対応する異なる感覚品質を維持するために、キレート剤、着色剤、香料、及び抗酸化剤を含むことができる。濃縮培地はまた、細胞ベースの肉製品の全体的な多量栄養素含有量(例えば、タンパク質、脂肪、水分、炭水化物など)及びpHを調整して、従来の肉の多量栄養素含有量及びpHを模倣することができる。
【0112】
前述のように、場合によっては、開示された方法が、一連の培地及び緩衝液を流して、増殖細胞塊の感覚的側面及び栄養組成を改善する。いくつかの実施形態では、記載される方法が細胞塊内の細胞間空間を洗浄し、栄養素を添加するために使用される。さらに、いくつかの実施態様では、開示される方法が、細胞塊の細胞内の細胞内空間における膜透過性溶質の濃度を変化させるために交換培地を使用する。1つ又は複数の実施形態によれば、
図6及び対応する段落は、細胞内の溶質を除去及び/又は添加するために交換培地を利用することを説明する。
【0113】
いくつかの例では、開示される方法が様々な濃度の溶質及び栄養素を有する交換培地を流して、個々の細胞内及び/又は細胞外へのそのような溶質及び栄養素の拡散を刺激することを含む。拡散において、粒子は、平衡に達するまで、より高い濃度の領域からより低い濃度の領域に移動する。高い粒子濃度で培地を交換すると、細胞は粒子を取り込む。細胞と比較してより低い粒子濃度を有する交換培地は、膜透過性粒子を細胞から放出させる。そのような交換培地を使用することによって、開示される方法は、細胞内の様々な溶質及び栄養素の濃度を変化させることができる。細胞内の粒子の濃度を変化させることに加えて、交換培地を使用して、細胞の表面から粒子を洗い流すか、又は細胞の表面に粒子を付着させることもできる。
【0114】
図6は、本開示の1つ又は複数の実施形態による、例示的な一連の交換培地を図示する。概略として、細胞は、細胞培養培地内で増殖される。細胞培養培地を除去し、第1の交換培地を細胞に添加する。いくつかの例では、第1の交換培地が細胞培養培地に対して低張性である。より具体的には、第1の交換培地が細胞培養培地と比較してより低い濃度の溶質を含む。第2の交換培地を細胞に添加する。第2の交換培地は、高張性であってもよく、細胞内に経時的に拡散するより高い濃度の溶質を含んでもよい。
【0115】
図6に示されるように、細胞は、細胞培養培地中で増殖される。例えば、細胞602aは、接着細胞又は懸濁液中で増殖細胞を表す。いずれの場合も、細胞602aは、細胞培養培地604と接触して成長する。前述のように、細胞培養培地604は、細胞増殖を刺激する様々な溶質又は構成要素を含む。細胞培養培地604内のいくつかの膜透過性溶質は、細胞602aに入って平衡に達する。上述のように、これらの膜透過性溶質のいくつかは細胞増殖を刺激するが、細胞の感覚的側面又は栄養にも悪影響を及ぼす。開示される方法は、細胞602a内から望ましくない膜透過性溶質を除去するステップを含んでもよい。
【0116】
図6にさらに示されるように、開示される方法は、第1の交換培地606で細胞を洗い流すことを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の交換培地606が細胞培養培地に対して低張性である。したがって、いくつかの実施態様では、第1の交換培地が細胞培養培地と比較してより低い濃度の溶質を含む。経時的に、膜透過性溶質は細胞602b内の細胞内空間から細胞602cの外部に移動し、平衡に達する。図示のように、細胞602bは、膜透過性溶質608を含む。いくつかの例では、膜透過性溶質608が細胞増殖段階中に拡散によって細胞に入った溶質を含む。膜透過性溶質608は、望ましくない濃度の望ましくない細胞培養培地成分又は細胞培養培地成分、例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、コリン、アンモニウムイオン、塩などを含み得る。
【0117】
第1の交換培地606での洗浄の間、膜透過性溶質608の少なくとも一部は、第1の交換培地606との平衡に達するために細胞を離れる。
図6に示されるように、細胞602cは、細胞602b及び細胞培養培地604に対して、より低い濃度の膜透過性溶質608を有する。いくつかの例では、第1の交換培地606が細胞に対する浸透圧ストレスを低減するための異なる成分を含む。
【0118】
いくつかの例では、第1の交換培地が細胞塊内の細胞に対する浸透圧ストレスを低減するために、減少する溶質勾配を含む。より具体的には、溶質勾配の減少が細胞培養培地604の溶質濃度と同様の溶質濃度で開始することができる。溶質濃度は、細胞の浸透圧ショックを最小限に抑えるために、経時的に減少する。溶質濃度は、目標濃度に達するまで徐々に減少する。いくつかの実施態様では、開示された方法が溶質濃度を低下させながら、一連の中間の第1の交換培地で細胞を洗浄することを含む。
【0119】
図6にさらに示されるように、開示される方法は、第2の交換培地610を利用することができる。いくつかの例では、第2の交換培地が第1の交換培地に対して高張性である。他の例では、第2の交換培地が細胞培養培地に対して高張性である。いくつかの実装形態では、第2の交換培地610が、細胞内への拡散のための栄養素又は他の溶質を含む膜透過性溶質を含む。
図6は、第2の交換培地610にさらされた細胞602dを示す。経時的に、第2の交換培地610からの栄養素612は、拡散によって細胞602eに入る。栄養素612は、膜透過性物質又は膜不透過性物質を含んでもよい。いくつかの例では、栄養素612がビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、又は脂肪を含む。さらに、いくつかの例では、栄養素612の少なくとも一部が、細胞602eの外部表面に接着する。
【0120】
いくつかの例では、浸透圧ストレスから細胞塊中の細胞を保護するために、開示される方法は増加する溶質勾配を利用することによって、第2の交換培地610で細胞塊を洗浄することを含む。特に、第2の交換培地610は溶質のより低い濃度を有する溶液から、溶質のより高い濃度を有する溶液に移行する。例えば、溶質の濃度がより低い溶液は、前の溶液(例えば、第1の交換培地606又は細胞培養培地604)の溶質濃度と同様の溶質濃度を有することができる。溶質濃度を増加させた一連の第2の交換培地を、目標の第2の溶質濃度まで添加する。いくつかの例では、開示された方法が、一連の中間の第2の交換培地で、徐々に高い溶質濃度で、細胞塊を洗浄する。
【0121】
開示される方法は細胞上の交換培地の流れをいつ停止するかを決定するために、異なる方法を利用し得る。例えば、開示された方法は、第1の交換培地(及び/又は減少する溶質勾配)を、洗浄時間の間、細胞塊にわたって流すことができる。第1の交換培地は洗浄期間後に除去され、第2の交換培地は細胞に添加される。第2の交換培地(及び/又は増加する溶質勾配)は、同じ洗浄時間の間、細胞上に流され得る。いくつかの例では、第2の交換培地が異なる第2の洗浄期間の間、細胞上に流される。
【0122】
追加的に、又は代替的に、開示された方法は、流出物組成に基づいて交換培地間を移行させることを含む。特に、流出物の組成は一般に、細胞の中又は外に通過した溶質を示す。例えば、最初に第1の交換培地に曝露された細胞は、より大量の溶質を第1の交換培地に排出することができる。この初期曝露からの流出物は、より高い濃度の溶質を有し得る。第1の交換培地は、流出液組成物が第1の交換培地の組成物と実質的に同様になるまで、細胞上に流すことができる。開示される方法は、第1の流出物が第1の交換培地の組成物と実質的に類似するまで、第1の交換培地を流すことを含んでもよい。同様に、開示された方法は第2の流出液が第2の交換培地と実質的に同様の組成を有するとき、第2の交換培地の流れを停止することができる。
【0123】
いくつかの実装形態では、開示される方法が単一の交換培地を使用することを含む。特に、交換培地は、低濃度の望ましくない細胞透過性溶質及び高濃度の栄養素の両方を含むことができる。低濃度の望ましくない細胞透過性溶質は溶質を細胞外に拡散させ、一方、高濃度の栄養素は同時に栄養素を細胞内に拡散させる。第1の交換培地及び第2の交換培地と同様に、開示される方法は、細胞培養培地と同様の組成物から標的組成物にゆっくりと移行する単一の勾配交換培地を利用し得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、開示される方法が洗浄培地及び濃縮培地を利用することに加えて、交換培地で細胞を洗浄することを含む。例えば、開示される方法は、洗浄培地、濃縮培地、第1の交換培地、及び第2の交換培地で細胞を洗浄することを含み得る。別の実施形態では、洗浄培地及び濃縮培地がそれぞれ、第1の交換培地及び第2の交換培地を含む。より具体的には、洗浄培地が細胞内から望ましくない溶質を引き出すために、低濃度の微粒子を含んでもよい。濃縮培地は、細胞に入る高濃度の膜透過性栄養素を含有する可能性がある。
【0125】
図1~6、対応する本文、及び実施例は、1つ又は複数の実施形態による、増殖細胞塊の洗浄及び濃縮に関するいくつかの異なるシステム、方法、技術、構成要素、及び/又はデバイスを提供する。上記の説明に加えて、1つ又は複数の実施形態は、特定の結果を達成するための動作を含むフローチャートに関して説明することもできる。
図7~
図8は、そのような動作のフローチャートを示す。本明細書に記載される動作は、互いに並行して、又は同じもしくは同様の動作の異なるインスタンスと並行して、繰り返され得るか、又は実行され得る。
【0126】
図7は、一連の動作700のフローチャートを示す。概略として、一連の動作700は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させる動作702と、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する動作704と、洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄する動作706と、濃縮培地で増殖細胞塊を洗浄する動作708とを含む。
【0127】
一連の動作700は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させる動作702を含む。
【0128】
図7に示すように、一連の動作700は、増殖細胞塊を細胞培養培地から除去する動作704を含む。特に、動作704は、細胞培養培地から増殖細胞塊の少なくとも一部を除去することを含む。いくつかの実施形態では、動作704が閾値増殖段階を完了する増殖細胞塊に基づいて、細胞培養培地から増殖細胞塊の少なくとも一部を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、閾値増殖段階は、増殖細胞塊が1ミリリットル当たり300万細胞の生存細胞密度又は1%~25%の充填細胞体積のうちの少なくとも1つに達したときに完了する。さらに、いくつかの実施形態では、動作704が、増殖細胞塊を外因性調節因子に曝露することによって、閾値増殖段階の完了を刺激することをさらに含む。
【0129】
一連の動作700は、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄する動作706をさらに含む。特に、動作706は、残りの細胞培養培地を洗い流すために、洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地が増殖細胞塊を刺激して増殖させるための増殖因子を含まない。さらに、いくつかの実施形態では、動作706が増殖細胞塊及び洗浄培地の両方を撹拌すること、増殖細胞塊及び洗浄培地をポンプを用いて循環させること、ならびに増殖細胞塊及び洗浄培地をガスを用いて均質化することによって、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄することをさらに含む。いくつかの実施形態では、増殖細胞塊を洗浄培地で洗浄することは、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流すことと、濃縮培地の濃度を経時的に増加させることを含む中間媒体を流すこととを含む。いくつかの実施形態では、増殖細胞塊を洗浄することは、増殖細胞塊の上に洗浄培地を流すことと、洗浄培地及び増殖細胞塊の両方を撹拌することとをさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地が-5C~45Cを含む温度である。
【0130】
図7に示す一連の動作700は、増殖細胞塊を濃縮培地で洗浄する動作708をさらに含む。特に、動作708は、栄養素を含む濃縮培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、濃縮培地が、増殖細胞塊を刺激して増殖させるための増殖因子を含まない。
【0131】
いくつかの実施形態では、一連の動作700が洗浄された増殖細胞塊を乾燥させる追加の動作を含む。
【0132】
図8は、一連の動作800を示す。概略として、一連の動作800は、培養培地中で細胞塊を増殖させる動作802と、培養培地から増殖細胞塊を除去する動作804と、勾配洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄する動作806とを含む。
【0133】
一連の動作800は、培養培地中で細胞塊を増殖させる動作802を含む。特に、動作802は、細胞培養培地中で細胞塊を増殖させることを含む。
【0134】
図8に示すように、一連の動作800は、培養培地から増殖細胞塊を除去する動作804を含む。動作804は、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去することを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去することは、遠心分離を介して細胞培養培地から増殖細胞塊を分離することを含む。
【0135】
図8にさらに示されるように、一連の動作800は、勾配洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄する動作806を含む。動作806は、経時的に洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度を増加させることによって、勾配洗浄培地で増殖細胞塊を洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、濃縮培地がビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、又は脂肪のうちの少なくとも1つを含む栄養素を含む。さらに、いくつかの実施形態では、栄養素が、タンパク質、脂肪、水分、又は炭水化物のうちの少なくとも1つを含む多量栄養素を含む。いくつかの実施形態では、濃縮培地が増殖細胞塊のpHを変更させる。
【0136】
いくつかの実施形態では、一連の動作800が、細胞培養培地から増殖細胞塊を除去する前又は後に、増殖細胞塊を冷却することをさらに含む。
【0137】
図9は、1つ又は複数の実施形態による、第1及び第2の交換培地で細胞塊を洗浄するための一連の動作900を示す。特に、一連の動作900が細胞培養培地中で細胞塊を増殖させる動作902を含む。
【0138】
図9は、第1の交換培地で細胞塊を洗浄する動作904をさらに示す。いくつかの実施形態では、細胞塊を第1の交換培地で洗い流すことにより、第1の組の膜透過性溶質が細胞塊中の細胞の細胞内空間から拡散する。いくつかの例では、第1の交換培地が細胞培養培地に対して低張性である。いくつかの実施態様では、第1の交換培地が細胞培養培地と比較してより低い濃度の膜透過性溶質を有する。さらに、いくつかの例では、第1の交換培地が減少する溶質勾配を含み、第1の交換培地はより高い濃度の溶質を有する溶液からより低い濃度の溶質を有する溶液に遷移する。加えて、いくつかの場合において、細胞塊を横切る減少する溶質勾配を含む第1の交換培地を流すことは、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが低減される。いくつかの実施態様では、溶質勾配の減少が、細胞培養培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する。
【0139】
一連の動作900は、細胞塊を第2の交換培地で洗い流す動作906を含む。いくつかの実施形態では、細胞塊を第2の交換培地で洗い流すことにより、第2の組の膜透過性溶質を細胞の細胞内空間に拡散させる。いくつかの実施形態では、第2の交換培地が第1の交換培地に対して高張性である。いくつかの例では、第2の交換培地が第1の交換培地と比較してより高い濃度の膜透過性溶質を有する。さらに、第2の交換培地は増加する溶質勾配を含むことができ、第2の交換培地は、より低い濃度の溶質を有する溶液からより高い濃度の溶質を有する溶液に遷移する。さらに、特定の実施形態では、増加する溶質勾配を含む第2の交換培地を細胞塊にわたって流すことは、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが低減される。さらに、場合によっては、溶質勾配の増加が、第1の交換培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する。特定の実施形態では、溶質勾配の増加が栄養素の濃度の増加を含む。いくつかの実施形態では、栄養素の少なくとも一部が細胞塊の細胞内に拡散し、栄養素の少なくとも第2の部分は細胞の外部表面に接着する。
【0140】
いくつかの実施形態では、一連の動作900が、第1の流出物が第1の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、細胞塊を第1の交換培地で洗い流す動作を含む。いくつかの例では、一連の動作900が、第2の流出液が第2の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、細胞塊を第2の交換培地で洗い流す動作を含む。さらに、いくつかの例では、一連の動作900が細胞塊を洗浄期間にわたって洗浄することを含む。
【0141】
図7~
図9に示す一連の動作に加えて、又はその代わりに、本開示は、追加の動作のセットを含む。いくつかの実施態様では、追加の動作セットが、培養肉製品を濃縮するための方法を含み、この方法は細胞培養培地中で細胞塊を増殖させること;増殖細胞塊を細胞培養培地から除去すること;及び、洗浄培地の濃度を低下させ、濃縮培地の濃度を経時的に増加させることによって、増殖細胞塊を勾配洗浄培地で洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、濃縮培地がビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、又は脂肪のうちの少なくとも1つを含む栄養素を含む。
【0142】
さらに、
図7~
図9に示される一連の動作に加えて、又はその代わりに、本開示は、培養肉調製のための細胞塊を仕上げるための装置を含む。いくつかの実装形態では、装置が細胞培養培地中で細胞塊を増殖させるための培養タンクと、細胞培養培地、洗浄培地、又は濃縮培地のうちの少なくとも1つから増殖細胞塊を除去するための分離器と、増殖細胞塊を貯蔵し、洗浄培地又は濃縮培地のうちの少なくとも1つを増殖細胞塊の上に流すための洗浄タンクとを備える。いくつかの実装形態では、分離器が遠心分離機又はフィルタのうちの少なくとも1つを備える。いくつかの例では、装置が増殖細胞塊をその最適な成長温度未満に冷却するための熱交換器をさらに備える。いくつかの実施形態では、装置が増殖細胞塊と、細胞培養培地、洗浄培地、又は濃縮培地のうちの少なくとも1つとを撹拌するための撹拌機をさらに含む。
【0143】
慣例に従って、図面に示される様々な特徴は、一定の縮尺で描かれていない場合がある。本開示で提示される例示は任意の特定の装置(たとえば、デバイス、システムなど)又は方法の実際の図であることを意味するものではなく、本開示の様々な実施形態を説明するために使用される理想化された表現にすぎない。したがって、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小され得る。加えて、図面のいくつかは、明確にするために簡略化され得る。したがって、図面は所与の装置(たとえば、デバイス)の構成要素のすべて、又は特定の方法のすべての動作を描写しない場合がある。
【0144】
本明細書及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は一般に、「開いた」用語として意図される(例えば、「含む」という用語は「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は「含むが、限定されない」などと解釈されるべきである)。
【0145】
加えて、導入されたクレームの特定の数が意図される場合、そのような意図は、クレームにおいて明示的に列挙され、そのような列挙がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲の記載を導入するための導入句「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」の使用を含むことができる。しかしながら、そのような語句の使用は不定冠詞「a」又は「an」による請求項の引用の導入が同じ請求項が導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)を含む場合であっても、そのような引用を含むいずれかの特定の請求項がそのような引用を1つのみ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、同じことが、請求項の引用を導入するために使用される確定冠詞の使用にも当てはまる。
【0146】
加えて、導入されたクレームの具体的な数が明示的に列挙されたとしても、当業者はそのような列挙が少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するのであろう(例えば、他の修飾語、手段少なくとも2つの列挙、又は2つ以上の列挙を伴わない、「2つの列挙」の素の列挙)。さらに、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、及びCなどのうちの1つ又は複数」に類似する慣例が使用される場合、一般に、そのような構成はAのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとが一緒に、AとCとが一緒に、BとCとが一緒に、又はA、B、及びCとが一緒になどを含むことが意図される。例えば、用語「及び/又は」の使用は、このように解釈されることが意図される。
【0147】
さらに、説明、特許請求の範囲、又は図面に関わらず、2つ以上の代替用語を提示する任意の選言語又は句は、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図するものと理解されたい。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるべきである。
【0148】
しかしながら、そのような語句の使用は不定冠詞「a」又は「an」による請求項の引用の導入が同じ請求項が導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)を含む場合であっても、そのような引用を含むいずれかの特定の請求項がそのような引用を1つのみ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、同じことが、請求項の引用を導入するために使用される確定冠詞の使用にも当てはまる。
【0149】
加えて、用語「第1」、「第2」、「第3」などの使用は、特定の順序又は数の要素を意味するために本明細書で必ずしも使用されない。一般に、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、異なる要素を一般識別子として区別するために使用される。「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語が特定の順序を意味することを示していない場合、これらの用語は、特定の順序を意味すると理解されるべきではない。さらに、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語が特定の個数の要素を意味することを示すことがないが、これらの用語は特定の個数の要素を意味すると理解されるべきではない。たとえば、第1のウィジェットは第1の側を有するものとして説明され得、第2のウィジェットは第2の側を有するものとして説明され得る。第2のウィジェットに関する用語「第2の側」の使用は、第2のウィジェットのそのような側を第1のウィジェットの「第1の側」から区別することであってもよく、第2のウィジェットが2つの側を有することを意味するものではない。
【0150】
本明細書に列挙されるすべての例及び条件付き言語は本発明及び本発明者によって当該技術分野を促進するために寄与される概念を読者が理解するのを助けるための教育的目的を意図しており、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。本開示の実施形態を詳細に説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び変更を行うことができることを理解されたい。
【0151】
本発明の思想及び基本的特徴から逸脱することなく、他の特定の形で本発明を具体化することができる。実際、記載された実施形態は、全ての点において、例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと考えられるべきである。たとえば、本明細書で説明する方法はより少ない又はより多いステップ/動作で実行され得るか、又はステップ/動作は異なる順序で実行され得る。加えて、本明細書に記載されるステップ/動作は、同じ又は同様のステップ/動作の異なるインスタンスに対して、互いに並行して、又は並行して、繰り返されるか、又は実行され得る。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入るすべての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養肉製品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖
させることと、
前記増殖した細胞塊の少なくとも一部を前記細胞培養培地から除去すること、
残りの細胞培養培地を洗い流すために、前記増殖した細胞塊を洗浄培地で洗浄することと、
栄養素を含む濃縮培地で前記増殖した細胞塊を洗
浄することと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記洗浄培地及び前記濃縮培地は、前記増殖した細胞塊を刺激
して増殖させるための増殖因子を含まない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増殖した細胞塊を、
前記増殖した細胞塊と前記洗浄培地の両方を撹拌することと、
前記増殖した細胞塊及び前記洗浄培地をポンプを用いて循環させることと、
前記増殖した細胞塊及び前記洗浄培地をガスを用いて均質化することと、によって前記洗浄培地で洗浄することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄培地で前記増殖した細胞塊を洗浄することは、前記増殖した細胞塊の上に前記洗浄培地を流すことと、前記濃縮培地の濃度を経時的に増加させることを含む中間培地を流すこととを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記増殖した細胞塊
が閾値増殖段階を完了したことに基づいて、前記細胞培養培地から前記増殖した細胞塊の少なくとも一部を除去することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値増殖段階は、前記増殖した細胞塊が1ミリリットル当たり300万細胞の生存細胞密度又は1%~25%の充填細胞体積のうちの少なくとも1つに達した場合に完了する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記増殖した細胞塊を外因性調節因子に曝露することによって、前記閾値増殖段階の前記完了を刺激することを更に含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記増殖した細胞塊を洗浄することは、前記増殖した細胞塊の上に前記洗浄培地を流すことと、前記洗浄培地及び前記増殖した細胞塊の両方を撹拌することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄培地は、-5
℃~45
℃の温度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
培養肉製品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖
させることと、
前記細胞培養培地から前記増殖した細胞塊を除去することと、
経時的に洗浄培地の濃度を減少させ、濃縮培地の濃度
を増加させることによって、勾配洗浄培地で前記増殖した細胞塊を洗浄することと、を含む、
方法。
【請求項11】
前記濃縮培地は、ビタミン、アミノ酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、又は脂肪のうちの少なくとも1つを含む栄養素を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞ベースの可食性食品を濃縮するための方法であって、
細胞培養培地中で細胞塊を増殖
させることと、
前記細胞塊を第1の交換培地で洗
浄することと、
前記細胞塊を第2の交換培地で洗
浄することと、を含む、
方法。
【請求項13】
前記第1の交換培地で前記細胞塊を洗浄することは、第1の組の膜透過性溶質を前記細胞塊の細胞の細胞内空間から拡散させ、
前記第2の交換培地で前記細胞塊を洗浄することは、第2の組の膜透過性溶質を前記細胞の前記細胞内空間に拡散させる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の交換培地は、前記細胞培養培地に対して低張性である、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の交換培地が減少する溶質勾配を含み、前記第1の交換培地が、より高い濃度の溶質を有する溶液からより低い濃度の溶質を有する溶液に遷移する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞塊
にわたって前記減少する溶質勾配を含む前記第1の交換培地を流すことが、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、前記細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが減少する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶質勾配の減少は、前記細胞培養培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の交換培地は、前記第1の交換培地に対して高張性である、
請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の交換培地は増加する溶質勾配を含み、前記第2の交換培地は、より低い濃度の溶質を有する溶液からより高い濃度の溶質を有する溶液に遷移する、
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記増加する溶質勾配を含む前記第2の交換培地を前記細胞塊にわたって流すことが、溶質濃度の漸進的変化を提供し、それによって、前記細胞塊の細胞に対する浸透圧ストレスが低減される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記増加する溶質勾配が、前記第1の交換培地の溶質濃度と実質的に同様の溶質濃度で開始する、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記増加する溶質勾配が、栄養素の濃度を増加することを含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項23】
栄養素の少なくとも一部は前記細胞塊の細胞内に拡散し、
前記栄養素の少なくとも第2の部分は、前記細胞の外部表面に接着する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の流出液が前記第1の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、前記第1の交換培地で前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項25】
第2の流出液が前記第2の交換培地と実質的に同様の組成を有するまで、前記第2の交換培地で前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項26】
洗浄時間の間、前記細胞塊を洗浄することを更に含む、
請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】