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特表2024-545809ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、及び物品を形成する方法
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  • 特表-ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、及び物品を形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、及び物品を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20241205BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20241205BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20241205BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/00 D
C22C21/00 J
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
B23K35/14 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533958
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022078582
(87)【国際公開番号】W WO2023122375
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/265,942
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロビッツ,アンドレアス ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゾンカー,ハリー アール.
(57)【要約】
ブレージングシートと、ブレージングシートの全て若しくは一部分から形成されたか又はブレージングシートの全て若しくは一部分を含む物品と、製造物品を形成する方法と、が提供される。ブレージングシートの実施形態は、コア層と、ブレージング層と、コア層とブレージング層との中間にあるインターライナ層と、を備える。コア層は、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。ブレージング層は、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレージングシートであって、
少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、前記6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む、コア層と、
前記コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含むブレージング層と、
前記コア層と前記ブレージング層との中間にあり、かつ第1のアルミニウム合金であって、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む、インターライナ層と、を備える、ブレージングシート。
【請求項2】
前記コア層の前記6XXXシリーズアルミニウム合金が、6061アルミニウム合金及び6063アルミニウム合金から選択される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項3】
前記コア層の前記6XXXシリーズアルミニウム合金が、前記6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.3~1.0のマグネシウムと、
0.2~1.0のシリコンと、
0~0.4のマンガンと、
0~0.3の銅と、
0~0.8の鉄と、
0~0.3の亜鉛と、
0~0.25のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0~0.25のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項4】
前記コア層の前記6XXXシリーズアルミニウム合金が、前記6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.55~0.9のマグネシウムと、
0.4~0.9のシリコンと、
0.05~0.2のマンガンと、
0~0.2の銅と、
0~0.2の鉄と、
0.02~0.2の亜鉛と、
0~0.25のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0.05~0.15のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項5】
前記インターライナ層の前記第1のアルミニウム合金が、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.2~1のシリコンと、
0.05~0.5のマンガンと、
0.0~1.5のマグネシウムと、
0~2.0の銅と、
0~0.8の鉄と、
0~1.0の亜鉛と、
0~0.2のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0~0.2のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項6】
前記インターライナ層の前記第1のアルミニウム合金が、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.5~0.8のシリコンと、
0.05~0.5のマンガンと、
0.5~1.5のマグネシウムと、
0.1~2.0の銅と、
0~0.2の鉄と、
0~1.0の亜鉛と、
0~0.2のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0~0.2のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項7】
前記インターライナ層の前記第1のアルミニウム合金が、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.2~1のシリコンと、
0.05~0.5のマンガンと、
0.0~1.5のマグネシウムと、
0~0.1の銅と、
0~0.8の鉄と、
0~1.0の亜鉛と、
0~0.2のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0~0.2のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項8】
前記インターライナ層の前記第1のアルミニウム合金が、前記第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
0.5~0.8のシリコンと、
0.05~0.5のマンガンと、
0.0~0.2のマグネシウムと、
0.1~2.0の銅と、
0~0.2の鉄と、
0~1.0の亜鉛と、
0~0.5のジルコニウムと、
0~0.3のクロムと、
0~0.5のビスマスと、
0~0.2のチタンと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項9】
前記インターライナ層が、少なくとも70μmの厚さを有する、請求項8に記載のブレージングシート。
【請求項10】
前記ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージングに好適な組成物を有する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項11】
前記インターライナ層が、前記コア層から前記ブレージング層への拡散を阻害する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項12】
前記ブレージング層の前記4XXXシリーズアルミニウム合金が、前記4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、
5~15のシリコンと、
0~2.0のマグネシウムと、
0~1.0の鉄と、
0~3.0の亜鉛と、
0~2.0の銅と、
0~1.0のマンガンと、
0~0.3のビスマスと、
アルミニウムと、
不純物と、を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項13】
前記ブレージングシートが、ブレージングプロセス及び時効プロセス後にASTM B557に従って評価された少なくとも70MPaの引張降伏強度を有する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項14】
前記ブレージングシートが、ブレージングプロセス及び時効プロセス後にASTM B557に従って評価された少なくとも100MPaの引張降伏強度を有する、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項15】
前記コア層、前記インターライナ層、及び前記ブレージング層が、前記ブレージングシート内へ一緒に結合される、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項16】
前記ブレージング層が、前記コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、
前記ブレージングシートが、前記コア層の前記第1の側面の反対側の前記コア層の第2の側面上に配設された第2のブレージング層を更に備え、前記第2のブレージング層が、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項17】
前記ブレージングシートが、真空ブレージングに好適な組成物を含む、請求項16に記載のブレージングシート。
【請求項18】
前記インターライナ層が、前記コア層の第1の側面上に配設された第1のインターライナ層であり、
前記ブレージングシートが、前記コア層の前記第1の側面の反対側の前記コア層の第2の側面上に配設された第2のインターライナ層を更に備え、前記第2のインターライナ層が、アルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項19】
前記インターライナ層が、前記コア層の第1の側面上に配設された第1のインターライナ層であり、前記ブレージング層が、前記第1のインターライナ層上に配設された第1のブレージング層であり、前記ブレージングシートが、
前記コア層の前記第1の側面の反対側の前記コア層の第2の側面上に配設された第2のインターライナ層を更に備え、前記第2のインターライナ層が、アルミニウム合金を含み、
第2のブレージング層が、前記第2のインターライナ層上に配設されており、前記第2のブレージング層が、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項20】
前記コア層が、前記ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚さを含み、
各インターライナ層が、前記ブレージングシートの総厚さの3%~30%の範囲の第2の厚さを含み、
各ブレージング層が、前記ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚さを含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項21】
請求項1に記載のブレージングシートの全て又は一部分を含む構造要素を含む、熱交換器。
【請求項22】
製造物品を形成するための方法であって、
第1の材料を含む第1の部分を、請求項1に記載のブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、前記第1の部分を前記第2の部分にブレージングすることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記第1の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記製造物品が、熱交換器である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレージングシートと、ブレージングシートから形成されたか又はブレージングシートを含む物品と、物品を形成する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱交換器などの様々な装置は、積み重ねられた特別に設計された金属プレートから形成され得る。プレート型熱交換器は、プレートの両側で2つの流体(例えば、液体、冷媒、又はそれらの組み合わせ)を循環させることによって機能し、流体間の熱交換を可能にする。プレート型熱交換器が許容可能な耐食性を有することを確実にするために、装置は、プレート間の接合部に沿った腐食攻撃、及びプレートを形成するために使用されるシート材料の厚さを通した腐食攻撃に抵抗するように設計され得る。プレート型熱交換器における腐食攻撃に対する耐性を増加させることは、大きな課題を提示する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示による1つの非限定的な態様は、コア層と、ブレージング層と、コア層とブレージング層との中間にあるインターライナ層と、を備える、ブレージングシートを対象とする。コア層は、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。ブレージング層は、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む。
【0004】
本開示による1つの非限定的な態様は、コア層と、ブレージング層と、コア層とブレージング層との中間にあるインターライナ層と、を備える、ブレージングシートの全て又は一部分を含む、少なくとも1つの構造要素を含む、熱交換器を対象とする。コア層は、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。ブレージング層は、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む。
【0005】
本開示による、なお更なる非限定的な態様は、物品を形成するための方法を対象とする。方法は、第1の材料を含む第1の部分を、ブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含み、ブレージングシートが、コア層、ブレージング層、及びコア層とブレージング層との中間にあるインターライナ層を含む。コア層は、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。ブレージング層は、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む。方法は、第1の部分を、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも1つを含むプロセスによって第2の部分にブレージングすることを含む。
【0006】
当然のことながら、本明細書に開示及び説明された発明は、本概要に要約される態様に限定されない。読者は、本明細書による様々な非限定的かつ非網羅的な態様の以下の詳細な説明を考慮すると、前述の詳細並びに他の詳細を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
実施例の特徴及び利点、並びにそれらを達成する様式は、以下の説明を添付図面とともに参照することによって、より明らかになり、実施例はより良好に理解されるであろう。
【0008】
図1】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0009】
図2】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0010】
図3】本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の概略側面図である。
【0011】
図4】本開示による物品を形成するための方法の非限定的な実施形態を例解するフローチャートである。
【0012】
本明細書に記載される例示は、特定の実施形態を1つ以上の形態で例解し、このような例示は、いかなる様態においても、添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な実施形態が本明細書に説明及び例解されており、開示された物品及び方法の構造、機能、及び使用の全体的な理解を提供する。本明細書に説明及び例解された様々な実施形態は、非限定的かつ非網羅的である。それ故に、本発明は、本明細書に開示の様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。様々な実施形態に関連して例解及び/又は説明された特徴及び特性は、他の実施形態の特徴及び特性と組み合わされ得る。そのような修正及び変形は、本明細書の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に明示的若しくは本質的に説明される、あるいは別様に明示的若しくは本質的に支持される任意の特徴又は特性を列挙するように修正され得る。更に、出願人は、特許請求の範囲を補正して、先行技術に存在し得る特徴又は特性を肯定的に放棄する権利を留保する。本明細書に開示及び説明される様々な実施形態は、本明細書に様々に説明される特徴及び特性を含む、それらからなる、又はそれから本質的になることができる。
【0014】
本明細書における「様々な実施形態」、「一部の実施形態」、「1つの実施形態」、「実施形態」、「非限定的な実施形態」、又は同様の句への言及は、実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、本明細書中の「様々な実施形態」、「一部の実施形態」、「1つの実施形態」、「実施形態」、「非限定的な実施形態」という句、又は同様の句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の説明される特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされ得る。したがって、一実施形態に関連して例解又は説明される特定の特徴、構造、又は特性は、全体的又は部分的に、限定されることなく、1つ以上の他の実施形態の特徴、構造、又は特性と組み合わされ得る。そのような修正及び変形は、本実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。
【0015】
本発明者らは、リサイクル可能であり、かつ好適な引張降伏強度を有するブレージングシートを提供することが望ましくあり得ることを決定した。ブレージングシートは、典型的に、使用済み若しくは廃棄されたブレージングシートから、又はブレージングシートから形成されたか若しくはそれを含む使用済み若しくは廃棄された製造物品から分離され得る場合、価値のある合金元素を含む。合金元素をブレージングシートから、又はブレージングシートを含むか若しくはそれから形成された物品から分離することは困難であり得る。本発明者らは、リサイクル性を高めるために、ブレージングシート中に存在するアルミニウム合金中のマンガン、シリコン、マグネシウム、及び銅などの、特定の合金元素の含有量を制限することが望ましい場合があることを発見した。例えば、コア層は、典型的には、ブレージングシートにおいて最も厚い層であるため、大量のマンガンを含むコア層は、ブレージングシートを4XXXシリーズアルミニウムにリサイクルするのに不適にし得る。同様に、ブレージング層におけるシリコン含有量、及びインターライナ層及び/又はコア層における亜鉛量は、リサイクル性に影響し得る。例えば、ブレージングシートに高い含有量のマンガン、シリコン、及び/又は亜鉛を有することは、新しい4XXXシリーズアルミニウム合金にスクラップとして添加され得るブレージングシートの量に影響し得、4XXXシリーズアルミニウム合金に添加される追加の材料の大部分は、純粋である必要がある。本発明者らは、新しいアルミニウム合金シートを形成するときに、スクラップとして添加され得るブレージングシートの量を増加させることが望ましいと決定した。リサイクル性を改善するためにブレージングシート内の特定の合金元素の含有量を制限する場合、それらの化学修飾を、例えば、形成性、引張降伏強度、耐食性、及びブレージング性などの、ブレージングシートにおける所望の特性を提供するために必要とされる合金添加物とバランスさせることが望ましい場合がある。
【0016】
本開示は、許容可能な又は優れた形成性、耐食性、ブレージング性、強化された強度、及び拡散耐性とともに、有利なレベルのリサイクル性を呈することができるブレージングシートを提供する。本開示によるブレージングシートは、コア層と、ブレージング層と、コア層とブレージング層との中間にあるインターライナ層と、を備えることができる。コア層は、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。ブレージング層は、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含む。インターライナ層は、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む。
【0017】
本明細書で使用される「コア層」という用語は、ブレージングシートの基材層を指す。様々な非限定的な実施形態では、「コア層」は、実質的にブレージングシートの中心に配設することができる。しかしながら、本開示によるブレージングシート内のコア層の位置は、ブレージングシートの中心に限定されない。コア層は、その両方の面上でブレージングシートの別の層で覆われる場合又は覆われない場合があり、例えば、コア層は、ブレージングシートの一方の側面上に配設され、部分的又は完全に露出させることができる。したがって、様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシートの実施形態のコア層は、ブレージングシートの他の層によって囲むことができ、少なくとも部分的に露出された少なくとも1つの側面を有することができ、又は完全に露出された少なくとも1つの側面を有することができる。
【0018】
図1を参照すると、ブレージングシート100が提供されている。ブレージングシート100は、コア層102と、ブレージング層104と、コア層102とブレージング層104との中間に配設されたインターライナ層106と、を備える。様々な非限定的な実施形態では、コア層102、インターライナ層106、及びブレージング層104は、一緒に結合されて、ブレージングシート100を形成する。ブレージングシート100は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適な組成及び厚さを有することができる。
【0019】
ブレージングシート100は、生産プロセスの一部としてブレージングに供されて、製造物品を形成することができる。例えば、ブレージングは、熱処理プロセスであり、部品及びブレージングシート100を備える物品は、ブレージングライナ104が溶融及び流れて部品の表面を湿らせ、固化して部品と好適なブレージング接合部を形成することができるように、ブレージング層104の少なくとも溶融温度の温度まで加熱される。温度は、ブレージングシート100における溶解可能な相(例えば、MgSi)を溶解するのに十分に高くすることができる。典型的には、ブレージングのために、物品は、590℃~610℃の範囲の温度に加熱される。次いで、物品は、迅速に冷却され、これは、溶解可能な相(例えば、MgSi)の形成を最小化することができる。Mg及びSiは、主に溶液中に残存することができる。
【0020】
ブレージング中、コア層102が所望の強度、構造的完全性、及び腐食性能を保持するように、コア層102が溶融しないことが望ましくあり得る。例えば、コア層102は、ブレージングシート100が供されるブレージング温度よりも高いコア層固体温度を含むことができる。例えば、コア層102は、例えば、少なくとも605℃、少なくとも610℃、又は少なくとも615℃などの、少なくとも600℃のコア層固体温度を含むことができる。
【0021】
コア層102におけるマンガン濃度を制限することは、ブレージングシート100のリサイクル性を増加させるために望ましくあり得るが、一方で、コア層102におけるマンガン含有量を低下させることはまた、例えば、粒径及び構造などの、コア層102の他の特徴に悪影響を及ぼし得る。コア層102におけるマンガン含有量を低下させることは、コア層固体温度を減少させ、及び/又はコア層102の強度を減少させ得る。マグネシウムをコア層102に添加することは、コア層102の引張降伏強度を増加させる、及び/又はコア層固体温度を低下させ得る。コア層102におけるシリコン、銅、鉄、及び亜鉛含有量はまた、コア層固体温度に影響し得る。したがって、コア層102におけるマンガン、マグネシウム、シリコン、銅、鉄、及び亜鉛含有量を調整/バランスさせて、望ましいリサイクル性を達成するが、一方で、コア層102にとって望ましい固体温度及び望ましい強度も提供することが望ましくあり得る。
【0022】
ブレージングシート100のコア層102は、例えば、6XXXシリーズアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。コア層102の6XXXシリーズアルミニウム合金は、例えば、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.4重量パーセントのマグネシウムなどの、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含むことができる。コア層102に含まれるマグネシウムは、コア層102の強度を増加させることができる。ブレージングシート100の様々な実施形態では、コア層102における6XXXシリーズアルミニウム合金は、6061アルミニウム合金又は6063アルミニウム合金とすることができる。様々な非限定的な実施形態では、コア層102は、6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.3~1.0のマグネシウムと、0.2~1.0のシリコンと、0~0.4のマンガンと、0~0.3の銅と、0~0.8の鉄と、0~0.3の亜鉛と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.25のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。特定の非限定的な実施形態では、コア層102は、6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.55~0.9のマグネシウムと、0.4~0.9のシリコンと、0.05~0.2のマンガンと、0~0.2の銅と、0~0.2の鉄と、0.02~0.2の亜鉛と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0.05~0.15のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、不純物は、合金中の元素の非意図的な添加を指す。特定の非限定的な実施形態では、存在し得る全ての不純物の合計重量は、合金の総重量に基づいて0.15重量パーセント以下である。特定の非限定的な実施形態では、各個々の不純物元素は、合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下の量で存在し得る。
【0024】
ブレージングシート100のブレージング層104は、例えば、4XXXシリーズアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104は、アルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、5~15のシリコンと、0~2.0のマグネシウムと、0~1.0の鉄と、0~3.0の亜鉛と、0~2.0の銅と、0~1.0のマンガンと、0~0.3のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、アルミニウム合金を含む。ブレージング層104は、例えば、コア層固体温度よりも少なくとも5℃低い、少なくとも10℃低い、少なくとも15℃低い、少なくとも20℃低い、少なくとも25℃低い、又は少なくとも30℃低いなどの、コア層固体温度未満であるブレージング層固体温度を呈する。ブレージング層固体温度が、コア層固体温度未満であるという事実は、ブレージングシート100を好適な温度まで加熱することがブレージング層104を溶融するが、一方で、コア層102が実質的に固体のままであることができる、ブレージングプロセスを可能にする。
【0025】
図1を参照すると、ブレージングシート100のインターライナ層106は、例えば、第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金などの、アルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.2~1.0のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0~1.5のマグネシウムと、0~2.0の銅と、0~0.8の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む。特定の非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.5~0.8のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.5~1.5のマグネシウムと、0.1~2.0の銅と、0~0.2の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む。特定の非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.2~1.0のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0~1.5のマグネシウムと、0~0.1の銅と、0~0.8の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む。様々な非限定的な実施形態では、第1のアルミニウム合金中のCu濃度は、コア層102の6XXXシリーズアルミニウム合金中のCu濃度未満であり、これは、特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシート100の耐食性を改善し得る。
【0026】
特定の非限定的な実施形態では、インターライナ層106の組成物は、真空ブレージング(例えば、フラックスレス真空ブレージング)に好適な組成物を有し得る。ブレージングシート100が、フラックスフリーブレージング(例えば、いかなるフラックスも使用しない、CAB炉内に残留Oを有する不活性雰囲気中のブレージング)に供される様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106及びコア層102からのマグネシウム拡散は、例えば、ブレージング層104上に形成された酸化物層を溶解し、及び/又はブレージングされる表面の湿潤性を促進するのに有利であり得る。例えば、マグネシウムは、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて、0.5重量パーセント超の濃度でインターライナ層106に存在し得る。特定の非限定的な実施形態では、例えば、第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて、0.55重量パーセント超のマグネシウムを含み得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106は、ブレージングシート100の耐食性を増強し得る。
【0027】
特定の非限定的な実施形態では、インターライナ層106に含まれ得る第1のアルミニウム合金は、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.5~0.8のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.0~0.2のマグネシウムと、0.1~2.0の銅と、0~0.2の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.5のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む。特定の非限定的な実施形態では、インターライナ層106の組成物は、制御された雰囲気ブレージングに好適であり得る。ブレージングプロセスにおいてブレージングシート100がフラックスとともに使用される様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106及びコア層102からのマグネシウム拡散が阻害され得る。例えば、マグネシウムは、第1のアルミニウム合金の総重量に全て基づいて、例えば、0.05重量パーセント以下などの、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて、0.1重量パーセント以下の濃度でインターライナ層106に存在し得る。
【0028】
ブレージングシート100がフラックスを利用してブレージングプロセスに供され得る様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100からのマグネシウム拡散は、フラックスと干渉し得るため、望ましくない場合がある。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100のインターライナ層106は、コア層102からブレージング層104への拡散を阻害する(例えば、マグネシウムの拡散を阻害する)ように構成されている。例えば、インターライナ層106は、液体形成前のブレージングサイクル中にインターライナ層106の再結晶を結果的にもたらして、ブレージングサイクル中にブレージングシート100の部分が液化するときに、ブレージング層104への材料の溶解を防止することができる歪みを有する不均質化材料であり得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106は、インターライナ層106が強度を増加させるために分散体を形成することができるように、インターライナ層106の総重量に基づいて少なくとも0.05重量パーセントのマンガンを含むことができる。
【0029】
ブレージングシート100内の各層の厚さは、ブレージングシート100から生産されるか、又はブレージングシート100を組み込む物品(例えば、熱交換器)の所望の構造特性に基づいて構成することができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、コア層102は、ブレージングシート100の総厚さ(すなわち、ttotal)の60%~90%の範囲内であり得る、第1の厚さtを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106は、ブレージングシート100の総厚さ(ttotal)の3%~30%の範囲内である、第2の厚さtを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ブレージング層104は、ブレージングシート100の総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、第3の厚さtを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1の厚さtは、第2の厚さtよりも大きく、また第3の厚さtよりも大きい。特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシート100の総厚さ(ttotal)は、100μm~5mmの範囲内、例えば、200μm~1mmの範囲内などである。
【0030】
ブレージングシート100がフラックスを利用するブレージングプロセスに供される様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106及びコア層102からのマグネシウム拡散が、好適な厚さのインターライナ層106によって阻害され得る。例えば、インターライナ層106の第2の厚さtは、10μm~1mm、例えば、50μm~1mm、又は100μm~1mmなどの範囲内であり得る。様々な非限定的な実施形態では、インターライナ層106の第2の厚さtは、少なくとも70μm、例えば、少なくとも80μm、少なくとも100μm、少なくとも120μm、少なくとも140μm、又は少なくとも150μmなどであり得る。
【0031】
様々な非限定的な実施形態では、本開示によるブレージングシートは、コア層、インターライナ層、及びブレージング層に加えて1つ以上の層を備え得る。例えば、図2に概略的に示された非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート200は、コア層102と、第1のインターライナ層106と、第1のブレージング層104と、第2のブレージング層204と、第2のインターライナ層206と、を備える。様々な非限定的な実施形態では、コア層102、第1のインターライナ層106、第2のインターライナ層206、第1のブレージング層104、及び第2のブレージング層204は、一緒に結合されて、ブレージングシート200を形成する。ブレージングシート200は、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方に好適であり得る。例えば、ブレージングシート200は、ブレージングシート200が、制御された雰囲気ブレージング及び/又は真空ブレージングに好適であるような組成を有する層を備えることができる。例えば、様々な非限定的な実施形態では、真空ブレージングのために、第1のインターライナ層106及び第2のインターライナ層206は、ブレージングシート200に存在し得る。
【0032】
図2に示されるように、第1のブレージング層104は、コア層102の第1の側面102a上に配設されており、第2のブレージング層204は、コア層102の第2の側面102b上に配設されている。コア層102の第2の側面102bは、コア層102の第1の側面102aの反対側に配設されている。様々な非限定的な実施形態では、第2のブレージング層204は、ブレージングシート100のブレージング層104に関して本明細書に説明されたとおりの組成で構成され得る。様々な非限定的な実施形態では、第2のブレージング層204の組成は、第1のブレージング層104の組成と同じ又は異なり得る。同様に、第2のインターライナ層206は、ブレージングシート100のインターライナ層106に関して本明細書に説明されたとおりの組成物で構成され得る。様々な非限定的な実施形態では、第2のインターライナ層206の組成は、第1のインターライナ層106の組成と同じ又は異なり得る。
【0033】
ブレージングシート200に関して、第2のインターライナ層206は、コア層102と第2のブレージング層204との中間に配設され得る。
【0034】
ブレージングシート200内の各層の厚さは、ブレージングシート200から生産されるか又はそれを組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成され得る。例えば、様々な非限定的な実施形態では、コア層102は、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の60%~90%の範囲内であり得る、第1の厚さtを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1のインターライナ層106及び第2のインターライナ層206は、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の3%~30%の範囲内である、合計厚さt+tを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1のブレージング層104及び第2のブレージング層204は、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)の3%~20%の範囲内である、合計厚さt+tを含むことができる。特定の非限定的な実施形態では、ブレージングシート200の総厚さ(ttotal)は、100μm~5mmの範囲内、例えば、200μm~1mmの範囲内などである。
【0035】
第2のインターライナ層206の第4の厚さtは、10μm~1mm、例えば、50μm~1mm、又は100μm~1mmなどの範囲内であり得る。様々な非限定的な実施形態では、第2のインターライナ層206の第4の厚さtは、少なくとも70μm、例えば、少なくとも80μm、少なくとも100μm、少なくとも120μm、少なくとも140μm、又は少なくとも150μmなどであり得る。
【0036】
図3に概略的に示される非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート300は、第2のインターライナ層206を含まないように構築され得、第2のブレージング層204は、コア層102と直接接触し得る。
【0037】
様々な非限定的な実施形態では、例えば、熱交換器などの物品は、ブレージングシート100、ブレージングシート200、ブレージングシート300、及び/又は本開示によるブレージングシートの異なる実施形態の全て又は一部分を含む1つ以上の構造要素を含むことができる。熱交換器は、例えば、オイル冷却器、バッテリー冷却システム(例えば、バッテリー冷却システム)、又は液体冷却凝縮器とすることができる。
【0038】
ブレージングシート100、200、300は、有利に高い引張降伏強度及び有利に高い形成性を有することができる。例えば、ブレージングシート100は、ASTM B557に従って評価される際に少なくとも40MPa、例えば、製作された状態で、かつブレージングプロセス及び時効プロセスの前にASTM B557に従って評価された、少なくとも50MPa又は少なくとも60MPaなどの引張降伏強度を有し、望ましい形成性を維持することができる。ブレージングプロセス後、ブレージングシート100は、ASTM B557に従って評価される際に少なくとも60MPa、例えば、製作された状態で、かつブレージングプロセス及び時効プロセスの前にASTM B557に従って評価された、少なくとも70MPa又は少なくとも80MPaなどの引張降伏強度を有することができる。ブレージングシート100は、ASTM B557に従って評価される際に少なくとも70MPa、例えば、ブレージングシート100、200、300をブレージングプロセス及び時効プロセスに供した後、ASTM B557に従って評価された、少なくとも80MPa、少なくとも100MPa、少なくとも120MPa、少なくとも150MPa、少なくとも190MPa、又は少なくとも200MPaなどの引張降伏強度を有することができる。
【0039】
時効プロセスは、溶液中の溶質が強化相析出を形成することができるように、ブレージングシート100、200、300を、原子移動を可能にする温度まで加熱することを含むことができる。典型的には、時効は、ブレージングシート100、200、300を160℃~220℃の範囲の温度まで加熱することを含むことができる。
【0040】
ブレージングシート100、200、300は、リサイクルに好適又は有利である組成物を含むことができる。例えば、ブレージングシート100、200、300は、6XXXシリーズアルミニウム合金にリサイクルするのに好適な組成物を含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、ブレージングシート100、200、300は、ブレージングシート100、200、300のコア層102における使用に好適な6XXXアルミニウム合金にリサイクルされ得る。
【0041】
図4は、例えば熱交換器などの製造物品を形成するための本開示による方法の非限定的な一実施形態のブロック図を提供する。方法の実施形態は、第1の材料を含む第1の部分を、本開示によるブレージングシートの非限定的な実施形態の全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含む。例えば、本開示による方法の非限定的な実施形態は、第1の材料を含む第1の部分を、ブレージングシート100、ブレージングシート200、ブレージングシート300、及び/又は本開示によるブレージングシートの異なる実施形態の全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることを含み得る(図4、ステップ402)。様々な非限定的な実施形態では、第1の部分を、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、第2の部分にブレージングすることができる(図4、ステップ404)。様々な実施形態では、ステップ404は、制御された雰囲気ブレージングを含み、フラックスは使用されるか、又は使用されない。例えば、第1のインターライナ層106及び/又は第2のインターライナ層206、並びにコア層102が好適な濃度のマグネシウムを含む場合、制御された雰囲気ブレージングを実施するときに、フラックスは必要とされない場合がある。しかしながら、第1のインターライナ層106及び/又は第2のインターライナ層206、並びにコア層102が好適な濃度のマグネシウムを含まない場合、制御された雰囲気ブレージングを実施するときに、フラックスが必要とされ得る。様々な非限定的な実施形態では、第1の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
【0042】
以下の番号付きの項は、本開示による様々な非限定的な実施形態及び態様を対象としている。
【0043】
項1.ブレージングシートであって、少なくとも600℃のコア層固体温度を有する6XXXシリーズアルミニウム合金であって、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づいて少なくとも0.3重量パーセントのマグネシウムを含む、6XXXシリーズアルミニウム合金を含む、コア層と、コア層固体温度未満のブレージング層固体温度を有する4XXXシリーズアルミニウム合金を含むブレージング層と、コア層とブレージング層との中間にあり、かつ第1のアルミニウム合金であって、第1のアルミニウム合金の総重量に基づいて0.5重量パーセント以下のマンガンを含む、第1のアルミニウム合金を含む、インターライナ層と、を備える、ブレージングシート。
【0044】
項2.コア層の6XXXシリーズアルミニウム合金が、6061アルミニウム合金及び6063アルミニウム合金から選択される、項1に記載のブレージングシート。
【0045】
項3.コア層の6XXXシリーズアルミニウム合金が、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.3~1.0のマグネシウムと、0.2~1.0のシリコンと、0~0.4のマンガンと、0~0.3の銅と、0~0.8の鉄と、0~0.3の亜鉛と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.25のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1及び2のいずれかに記載のブレージングシート。
【0046】
項4.コア層の6XXXシリーズアルミニウム合金が、6XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.55~0.9のマグネシウムと、0.4~0.9のシリコンと、0.05~0.2のマンガンと、0~0.2の銅と、0~0.2の鉄と、0.02~0.2の亜鉛と、0~0.25のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0.05~0.15のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~3のいずれかに記載のブレージングシート。
【0047】
項5.インターライナ層の第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.2~1のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.0~1.5のマグネシウムと、0~2.0の銅と、0~0.8の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~4のいずれかに記載のブレージングシート。
【0048】
項6.インターライナ層の第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.5~0.8のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.5~1.5のマグネシウムと、0.1~2.0の銅と、0~0.2の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~5のいずれかに記載のブレージングシート。
【0049】
項7.インターライナ層の第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.2~1のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.0~1.5のマグネシウムと、0~0.1の銅と、0~0.8の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.2のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~5のいずれかに記載のブレージングシート。
【0050】
項8.インターライナ層の第1のアルミニウム合金が、第1のアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、0.5~0.8のシリコンと、0.05~0.5のマンガンと、0.0~0.2のマグネシウムと、0.1~2.0の銅と、0~0.2の鉄と、0~1.0の亜鉛と、0~0.5のジルコニウムと、0~0.3のクロムと、0~0.5のビスマスと、0~0.2のチタンと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~5のいずれかに記載のブレージングシート。
【0051】
項9.インターライナ層が、少なくとも70μmの厚さを有する、項8に記載のブレージングシート。
【0052】
項10.ブレージングシートが、制御された雰囲気ブレージングに好適な組成物を有する、項1~5及び8~9のいずれかに記載のブレージングシート。
【0053】
項11.インターライナ層が、コア層からブレージング層への拡散を阻害する、項1~5及び8~10のいずれかに記載のブレージングシート。
【0054】
項12.ブレージング層の4XXXシリーズアルミニウム合金が、4XXXシリーズアルミニウム合金の総重量に基づく重量パーセントで、5~15のシリコンと、0~2.0のマグネシウムと、0~1.0の鉄と、0~3.0の亜鉛と、0~2.0の銅と、0~1.0のマンガンと、0~0.3のビスマスと、アルミニウムと、不純物と、を含む、項1~11のいずれかに記載のブレージングシート。
【0055】
項13.ブレージングシートが、ブレージングプロセス及び時効プロセス後にASTM B557に従って評価された少なくとも70MPaの引張降伏強度を有する、項1~12のいずれかに記載のブレージングシート。
【0056】
項14.ブレージングシートが、ブレージングプロセス及び時効プロセス後にASTM B557に従って評価された少なくとも100MPaの引張降伏強度を有する、項1~13のいずれかに記載のブレージングシート。
【0057】
項15.コア層、インターライナ層、及びブレージング層が、ブレージングシート内へ一緒に結合される、項1~14のいずれかのブレージングシート。
【0058】
項16.ブレージング層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のブレージング層であり、ブレージングシートが、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設された第2のブレージング層を更に備え、第2のブレージング層が、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む、項1~15のいずれかに記載のブレージングシート。
【0059】
項17.ブレージングシートが、真空ブレージングに好適な組成物を含む、項16に記載のブレージングシート。
【0060】
項18.インターライナ層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のインターライナ層であり、ブレージングシートが、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設された第2のインターライナ層を更に備え、第2のインターライナ層が、アルミニウム合金を含む、項1~17のいずれかに記載のブレージングシート。
【0061】
項19.インターライナ層が、コア層の第1の側面上に配設された第1のインターライナ層であり、ブレージング層が、第1のインターライナ層上に配設された第1のブレージング層であり、ブレージングシートが、コア層の第1の側面の反対側のコア層の第2の側面上に配設された第2のインターライナ層であって、第2のインターライナ層が、アルミニウム合金を含む、第2のインターライナ層と、第2のインターライナ層上に配設された第2のブレージング層であって、第2のブレージング層が、4XXXシリーズアルミニウム合金を含む、第2のブレージング層と、を更に備える、項1~18のいずれかに記載のブレージングシート。
【0062】
項20.コア層が、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第1の厚さを含み、各インターライナ層が、ブレージングシートの総厚さの3%~30%の範囲の第2の厚さを含み、各ブレージング層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第3の厚さを含む、項1~19のいずれかに記載のブレージングシート。
【0063】
項21.項1~20のいずれかのブレージングシートの全て又は一部分を含む構造要素を含む、熱交換器。
【0064】
項22.物品を形成するための方法であって、第1の材料を含む第1の部分を、項1~19のいずれかに記載のブレージングシートの全て又は一部分を含む第2の部分と接触させることと、制御された雰囲気ブレージング及び真空ブレージングのうちの少なくとも一方を含むプロセスによって、第1の部分を第2の部分にブレージングすることと、を含む、方法。
【0065】
項23.第1の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、項22に記載の方法。
【0066】
項24.物品が、熱交換器である、項22又は23のいずれかに記載の方法。
【0067】
本明細書では、別段の指示がない限り、全ての数値パラメータは、全ての場合において、「約」という用語で始まり、修飾されていると理解されるべきであり、これにおいて数値パラメータは、パラメータの数値を判定するために使用される基礎となる測定法の固有の変動特性を有する。少なくとも、及び均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、本明細書に説明される各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、及び通常の丸める方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0068】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、列挙された範囲内に包含される全ての部分範囲を含む。例えば、「1~10」の範囲には、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の(及びそれらを含む)全ての部分範囲が含まれ、つまり、1以上の最小値と10以下の最大値とを有する。また、本明細書に列挙された全ての範囲は、列挙された範囲の端の数値を含む。例えば、「1~10」の範囲は、端の数値である1及び10を含む。本明細書に列挙された任意の最大の数値制限は、そこに包含された全てのより低い数値制限を含むことが意図されていて、本明細書に列挙された任意の最小の数値制限は、そこに包含された全てのより高い数値制限を含むことが意図されている。したがって、出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含された部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を修正する権利を留保する。このような全ての範囲は、本明細書に本質的に説明されている。
【0069】
本明細書で使用される「a」、「an」、及び「the」という文法冠詞は、場合によっては「少なくとも1つ」又は「1つ以上」が明確に使用される場合であっても、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を含むことを意図する。それ故に、前述の文法の冠詞は本明細書において、特定の識別された要素のうちの1つ以上(すなわち、「少なくとも1つ」)を指すために使用される。更に、単数名詞の使用には複数形が含まれ、複数名詞の使用には単数形が含まれるが、使用の文脈によって別段の解釈が要求される場合はこの限りではない。
【0070】
当業者は、本明細書に説明される物品及び方法、並びにそれらに付随する考察が、概念的明瞭性のために実施例として使用されていて、様々な構成修正が企図されていることを認識するであろう。その結果、本明細書で使用される際、記載される具体的な実施例/実施形態及び付随する考察は、そのより一般的なクラスを表すことが意図されている。一般的に、任意の具体的な実施例の使用は、そのクラスを表すことが意図されており、具体的な構成要素、デバイス、操作/動作、及び対象を含まないことは、限定的であると捉えられるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様及び/又はその潜在的な適用例を例解する目的で様々な具体的な態様の説明を提供する一方で、変形及び修正が生じることが、当業者には理解されよう。したがって、本明細書に説明される発明(1つ又は複数)は、それらが特許請求されるのと少なくとも同程度に広範であると理解されるべきであり、本明細書に提供された特定の例解的態様によってより狭義に定義されるものではないと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】