(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】シクロペプチドガラス及びシクロペプチドを含有する医薬組成物ガラス
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20241206BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241206BHJP
A01N 43/90 20060101ALI20241206BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241206BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241206BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241206BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241206BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20241206BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20241206BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20241206BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241206BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241206BHJP
A61K 38/14 20060101ALI20241206BHJP
C07K 11/02 20060101ALI20241206BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61K38/12
A01P3/00
A01N43/90 106
A01N43/90 102
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P3/08
A61K38/13
A61K9/00
A61K47/42
A61K47/18
A61K38/14
C07K11/02 ZNA
C07K14/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521259
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129065
(87)【国際公開番号】W WO2023077447
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524131143
【氏名又は名称】中国科学院過程工程研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シュエハイ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ルイルイ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、チェンキアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076BB01
4C076BB31
4C076BB32
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD51
4C076EE41
4C076FF33
4C076FF34
4C076GG01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA14
4C084BA15
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4C084BA17
4C084BA18
4C084BA24
4C084BA25
4C084DA43
4C084DA44
4C084MA34
4C084MA52
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA11
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4H011AA01
4H011BB09
4H011BB10
4H011DA13
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA30
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、シクロペプチドガラス、及びシクロペプチドを含有する医薬組成物ガラスを開示する。本発明のシクロペプチドガラスは、薬物の効果及び薬物アジュバントの機能の両方を発揮することができ、結晶及び従来の医薬剤形やアジュバントに比べ、薬物の溶出速度を効果的に速め、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることができ、抗腫瘍、抗ウイルス・抗菌、血糖コントロール、免疫調節、神経調節などの薬物送達及び徐放の分野において広く適用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペプチドに基づくガラスであって、
前記シクロペプチドは、構造式1で示されるシクロペプチド及びその塩であり、1種又は2種以上の組み合わせであり、
前記シクロペプチドは、好ましくは、生物学的活性及び/又は薬理学的活性を有し、さらに好ましくは、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、血糖調節、免疫調節活性を有する、ことを特徴とするシクロペプチドに基づくガラス。
【化1】
(ただし、A
1~A
nは、独立して、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン(Met)、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、セレンシステイン、及びピロリジンから選択され、
R
1~R
nは、独立して、H又は他の修飾可能な基から選択され、修飾可能な基は、独立して、メチル、アルキル、リン酸、アセチル、ホルミル、脂肪酸、ベンゾイル、アミド、エステル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルから選択され、
n≧2、好ましくは、2≦n≦15であり、A
1~A
nはアミノ酸により縮合して連結される。)
【請求項2】
前記抗菌・抗ウイルスシクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表1-1】
【表1-2】
前記抗腫瘍シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表2-1】
【表2-2】
前記免疫調節シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表3】
前記血糖調節シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表4】
前記心血管及び血液関連シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表5】
前記他の活性シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表6】
請求項1に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項3】
前記シクロペプチドは、水難溶性シクロペプチドであり、水難溶性シクロペプチドのペプチド鎖骨格が修飾された水溶性シクロペプチド誘導体も含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスを含有する医薬組成物であって、
前記医薬組成物はガラス形態であり、シクロペプチドのみで製造されるか、又は医薬アジュバント及び/又は医薬活性成分をさらに含有する、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシクロペプチドガラスを製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理するステップ(2)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
昇温温度とは、融点温度(T
m)±50~250Kの温度を指し、好ましくは、T
mよりも50~100K高く、
保温時間は、0min~30h、好ましくは、15~30minであり、
焼鈍温度とは、ガラス転移温度(T
g)±50~150Kの温度を指し、好ましくは、T
gよりも50~100K低く、
焼鈍処理時間は、30min~2h、好ましくは、30min~1hであり、
T
m及びT
gは、熱重量分析及び示差走査熱量測定法によって測定され、昇温及び降温速度は2~50Kmin
-1である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチドを他の医薬活性成分と混合して、ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御してボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理し、ガラスを得るステップ(2)と、
任意に、ステップ(2)で得られたガラスと医薬アジュバントの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項4に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
ステップ(1)の粉末を不活性ガス雰囲気で昇温し、所定時間保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m)±50~250Kの温度、好ましくは、T
mよりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
他の医薬活性成分を良溶媒及び共溶媒に入れて完全に溶解するステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた医薬活性成分溶液を、ステップ(1)の溶融状態のシクロペプチドと均一に混合するステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた混合物をステップ(2)で設定された温度に置き、溶媒を減圧下で回転蒸発させるステップ(5)と、
ステップ(5)で得られた混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g)±50~150Kの温度、好ましくは、T
gよりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(6)と、
任意に、ステップ(2)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項4に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチド及び他の医薬活性成分を一括して良溶媒及び共溶媒に入れて、完全に溶解するステップ(1)と、
ステップ(1)で得た混合溶液を不活性ガス雰囲気で昇温し、溶媒を減圧下で回転蒸発させた後、保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m)±50~250Kの温度、好ましくは、T
mよりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
ステップ(5)で得た混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g)±50~150Kの温度、好ましくは、T
gよりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(6)と、
任意に、ステップ(2)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記組成物のガラス形態の医薬組成物は、さらに経口剤、パッチ剤、皮下包埋剤、ステント材料及びマイクロニードルデバイスに製造される、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、シクロペプチド薬物の新規な剤形及び新規なアジュバントに関し、特に、シクロペプチドガラス、及びシクロペプチド医薬組成物ガラスに関する。また、難溶性薬物の関連技術を効果的に利用して、難溶性シクロペプチド薬物をガラス状に変換し、ガラス薬物を形成する製造方法に関する。このシクロペプチドガラスは、抗腫瘍、抗ウイルス・抗菌、血糖コントロール、免疫調節、神経調節などの薬物送達分野、特に薬物徐放治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
シクロペプチドは、複数のアミノ酸がペプチド結合により縮合環化されたもので、その構造には一定の配座拘束作用がある。シクロペプチドは、特異的なトポロジー構造のため、化学的分解、熱的分解、及び生分解に対して極めて安定である。シクロペプチドに大量の水素結合受容体とドナーが存在し、水素結合は薬物と受容体の相互作用の主要な方式の1つであり、そのため、シクロペプチドは、一定の生物学的活性や薬理学的活性を持つのがよくあり、医薬化学における重要なファーマコフォアになる。さらに、シクロペプチドは、制限された配座によって、線状ペプチドよりも優れた特異性及び標的親和性を示すため、抗腫瘍、抗ウイルス、抗菌、抗老化、免疫調節、記憶力増強、血糖調節などの幅広い生物学的活性や薬理学的活性を示す。
【0003】
しかし、シクロペプチド分子は、顕著な剛性構造と非常に強い水素結合形成能により、水溶性が悪く、結晶化しやすく、バイオアベイラビリティが低いという欠陥が存在し、その薬用活性に深刻な影響を与える。現在、国内外の研究者は、上記の欠点を改善するために、シクロペプチドに対する直接化学修飾変性(例えばN-メチル化修飾)又はナノキャリア(例えば脂質やミセル)による封入などのいくつかの策略を含む、多種の製剤学的手段を採用している。しかし、複雑な合成プロセス、潜在的な毒性やシクロペプチドの低担持量などの問題は依然として避けられない。
【0004】
ガラス状は、熱力学的により安定な結晶に比べて、シクロペプチド分子の生物学的活性や薬理学的活性を保持する準安定状態の非晶質構造である。ガラス状シクロペプチド薬物は、結晶性シクロペプチド薬物と比べ、高い表面自由エネルギーと高い分散度を示し、シクロペプチドの溶出速度とバイオアベイラビリティを効果的に向上させることができる。
【0005】
特に、本発明のシクロペプチドガラスは、従来の医薬アジュバントの代わりとして、分散、可溶化、接着、制御放出などの機能を達成できる。特に、ヒスタミンによって引き起こされる重篤なアレルギー反応を効果的に回避するために、ヒマシ油類の医薬アジュバントの代替品として使用できる。
【0006】
シクロペプチドガラス、特に生物学的・薬理学的活性や徐放機能を備えた医薬組成物をベースとしたガラス、及び難溶性シクロペプチドをガラス状に変換する方法については、これまで公開された報告は存在しない。
【0007】
意外なことに、本発明は、シクロペプチド及びその誘導体を、特定の製造プロセスにより、シクロペプチドガラス、及びシクロペプチド医薬組成物ガラスに加工することができることを見出した。また、本発明は、難溶性シクロペプチド薬物をガラス状に変換する方法を見出し、シクロペプチド薬物の溶出速度及びバイオアベイラビリティを効果的に向上させる。
【0008】
本発明は、この発見に基づいて成されたものである。本発明で見出されたシクロペプチドガラスは、活性薬物や医薬アジュバントとして、抗腫瘍、抗ウイルス・抗菌、血糖コントロール、免疫調節、神経調節などの薬物送達や徐放の分野に幅広く応用されるこが期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、シクロペプチドガラス、及びシクロペプチド医薬組成物ガラス、並びに、難溶性シクロペプチドをガラス状に変換する方法を提供することである。本発明では、前記ガラスとは、ガラス転移現象を呈する非晶質固体を意味し、前記ガラス状とは、ガラス様の特性を保持する無秩序な組織構造を意味し、X線回折検出においては結晶形構造がなく、かつ、決定されたガラス転移温度を有する。すなわち、本発明は、難溶性シクロペプチドのインビトロでの溶出速度及び溶解度を効果的に向上させ、難溶性シクロペプチド薬物のバイオアベイラビリティを向上させる、難溶性シクロペプチドを結晶状からガラス状に転移させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様では、シクロペプチドに基づくガラスであって、前記シクロペプチドは、構造式1で示されるシクロペプチド及び/又はその塩であり、前記シクロペプチドは、1種又は2種以上の組み合わせである、ことを特徴とする。
【化1】
(前記A
1~A
nは、独立して、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン(Met)、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、セレンシステイン、及びピロリジンから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
R
1~R
nは、独立して、H又は他の修飾可能な基から選択され、修飾可能な基は、好ましくは、メチル、アルキル、リン酸、アセチル、ホルミル、脂肪酸、ベンゾイル、アミド、エステル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルであり、
n≧2、好ましくは、2≦n≦15であり、A
1~A
nはアミノ酸により縮合して連結される。)
【0011】
好ましくは、前記シクロペプチドは、生物学的活性及び/又は薬理学的活性を有し、より好ましくは、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、血糖調節、免疫調節活性を有し、抗菌・抗ウイルスシクロペプチドは、下記構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【0012】
【0013】
【0014】
抗腫瘍シクロペプチドは、下記の構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【0015】
【0016】
【0017】
免疫調節シクロペプチドは、下記の構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【表3】
【0018】
血糖調節シクロペプチドは、下記の構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【表4】
【0019】
心血管及び血液関連シクロペプチドは、下記の構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【表5】
【0020】
他の活性シクロペプチドは、下記の構造及び類似の構造を含むが、これらに限定されない。
【表6】
【0021】
好ましくは、前記シクロペプチド誘導体は、上記のシクロペプチド分子構造とは骨格が類似した分子、異性体及びその塩である。
【0022】
好ましくは、前記シクロペプチドは、水溶性が悪いシクロペプチドであり、前記水溶性が悪いとは、常温・常圧下でシクロペプチドの純水での最大溶解濃度が5wt%以下であることを意味する。
【0023】
第2態様では、シクロペプチドに基づくガラスであって、シクロペプチド及びその塩のみで製造されるか、又は、ガラスには他の医薬アジュバント及び/又は医薬活性成分も加えられることを特徴とする。
【0024】
この医薬組成物ガラスは、シクロペプチド又はシクロペプチド誘導体、他の医薬活性成分又はその医薬的に許容される塩、医薬アジュバントのうちの1種又は複数種の成分からなり、好ましくは、少なくとも1種の活性シクロペプチドを含有し、
医薬活性成分は、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、血糖調節、免疫調節、抗精神病などの効果を有する非シクロペプチド類薬物分子のうちの1種又は2種以上の混合物を含み、好ましくは、抗菌・抗ウイルス薬は、ペニシリン、セファレキシン、アミカシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、メトロニダゾール、アマンタジン、アシクロビル、ジドブジン、リバビリンであり、抗腫瘍薬は、シスプラチン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、エトポシド、デキサメタゾン、フルオロウラシル、シクロホスファミドであり、血糖調節薬は、メトホルミン、レパグリニド、ナテグリニド、インスリンであり、免疫調節薬は、チモペンチン、トリプテリジウム配糖体、トリプトリド、タクロリムス、インターフェロン、クレスチンであり、抗精神病薬は、クロルプロマジン、ハロペリドール、リスペリドン、パリペリドン、ジプラシドンであり、
医薬アジュバントは、充填剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤及び他のものを含み、好ましくは、充填剤は、デンプン、乳糖、マンニトールであり、湿潤剤・結合剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースであり、崩壊剤はカルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリウムであり、滑沢剤は、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、硬化植物油であり、他のものは、ドデシル硫酸ナトリウムであり、
シクロペプチドの質量比が、1~100%、好ましくは、1%~50%であり、
他の医薬活性成分の質量比が、1~20%、好ましくは、1~10%であり、
医薬アジュバントの質量比が、0~50%、好ましくは、0~5%、より好ましくは、0%であり、すなわち、シクロペプチドガラスは、従来の医薬アジュバントを完全に置換する。
【0025】
第3態様では、シクロペプチドに基づくガラスであって、医薬アジュバントとして、従来の医薬アジュバントを完全に又は部分的に置換することができることを特徴とする。
【0026】
第4態様では、難溶性シクロペプチドをガラス状に変換し、シクロペプチドガラス薬物又はシクロペプチドガラスアジュバントを製造する方法であって、主に、
ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、1種又は複数種の難溶性シクロペプチドを十分にボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によって、具体的には、十分に粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理し、シクロペプチドガラス薬物又はシクロペプチドガラスアジュバントを得るステップ(2)と、を含み、
昇温温度とは、融点温度(Tm)±50~250Kの温度を指し、好ましくは、Tmよりも50~100K高く、
保温時間は、0min~30h、好ましくは、15~30minであり、
焼鈍温度とは、ガラス転移温度(Tg)±50~150Kの温度を指し、好ましくは、Tgよりも50~100K低く、
焼鈍処理時間は、30min~2h、好ましくは、30min~1hであり、
Tm及びTgは、熱重量分析及び示差走査熱量測定法によって測定され、昇温及び降温速度は、2~50Kmin-1である、ことを特徴とする。
【0027】
第5態様では、難溶性シクロペプチド医薬組成物ガラスの製造方法であって、主に、
難溶性シクロペプチド及び他の医薬活性成分を混合した後、ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃にして、十分にボールミーリングするステップ(1)と、
第4態様のステップ(2)と同様にするステップ(2)と、
ステップ(2)で得たガラス及び医薬アジュバントの両方を用いて、打錠、湿式造粒、流動層造粒、コーティング、スプレー造粒、プログラムキャスティング、3Dプリントのうちの1種又は2種以上の組み合わせによって医薬組成物を製造するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする。
【0028】
或いは、以下の製造方法であって、主に、
難溶性シクロペプチド及び他の医薬活性成分を混合した後、ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、十分にボールミーリングするステップ(1)と、
ステップ(1)の粉末を不活性ガス雰囲気で昇温し、所定時間保温して処理し、昇温温度を融点温度(Tm)±50~250Kの温度、好ましくは、Tmよりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
他の医薬活性成分を良溶媒及び共溶媒に入れて完全に溶解するステップであって、前記良溶媒は、好ましくは、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチルであり、共溶媒は、好ましくは、安息香酸ナトリウム、ジメチルアセトアミド、尿素、トゥイーンのうちの1種又は2種以上の混合物である、ステップ(3)と、
ステップ(3)で得た医薬活性成分溶液及びステップ(1)の溶融状態のシクロペプチドを均一に混合するステップ(4)と、
ステップ(4)で得た混合物をステップ(2)で設定された温度に置き、溶媒を減圧下で回転蒸発させるステップ(5)と、
ステップ(5)で得た混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(Tg)±50~150Kの温度、好ましくは、Tgよりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(6)と、
ステップ(6)で得たガラス及び医薬アジュバントの両方を用いて、打錠、湿式造粒、流動層造粒、コーティング、スプレー造粒、プログラムキャスティング、3Dプリントのうちの1種又は2種以上の組み合わせによって医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする。
【0029】
あるいは、以下の製造方法であって、主に、
難溶性シクロペプチド及び他の医薬活性成分を一括して良溶媒及び共溶媒に入れて完全に溶解するステップであって、前記良溶媒は、好ましくは、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチルであり、共溶媒は、好ましくは、安息香酸ナトリウム、ジメチルアセトアミド、尿素、トゥイーンのうちの1種又は2種以上の混合物である、ステップ(1)と、
ステップ(1)で得た混合溶液を不活性ガス雰囲気で昇温し、溶媒を減圧下で回転蒸発させた後、保温して処理し、昇温温度を融点温度(Tm)±50~250Kの温度、好ましくは、Tmよりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
ステップ(2)で得た混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(Tg)±50~150Kの温度、好ましくは、Tgよりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(3)と、
ステップ(3)で得たガラス及び医薬アジュバントの両方を用いて、打錠、湿式造粒、流動層造粒、コーティング、スプレー造粒、プログラムキャスティング、3Dプリントのうちの1種又は2種以上の組み合わせによって医薬組成物を製造するステップ(4)と、を含む、ことを特徴とする。
【0030】
第6態様では、第1態様~第5態様に記載のシクロペプチドガラス薬物、シクロペプチドガラスアジュバント、シクロペプチド医薬組成物ガラス及び製造方法によれば、前記ガラス医薬剤形は、経口剤、パッチ剤、皮下包埋剤、ステント材料、及びマイクロニードルデバイスであってもよい。
【0031】
第7態様では、第6態様に記載の医薬剤形よれば、係るプロセスは、打錠、乾式造粒、高せん断湿式造粒、流動層造粒、カプセル充填、マイクロカプセル包埋、コーティング、噴霧乾燥、噴霧凝固、フォトリソグラフィー、プログラムキャスティング、マイクロニードルアレイ、3Dプリンティングのうちの1種又は2種以上である。
【0032】
第8態様では、本発明のシクロペプチドガラス、及びシクロペプチド医薬組成物ガラス、及びシクロペプチド薬物ガラス状剤形は、下記の利点及び有益な効果を有する。
(1)薬物の効果及び薬物アジュバントの機能の両方を発揮することができる。
(2)薬物の溶出速度を効果的に速め、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることができ、薬物の副作用を低減させる。
(3)良好な生体適合性及び生分解性を有する。
(4)熱的・化学的安定性が高い。
【0033】
第9態様では、本発明のシクロペプチドガラス、及びシクロペプチド医薬組成物ガラス、及びシクロペプチド薬物ガラス状剤形は、抗腫瘍、抗ウイルス・抗菌、血糖コントロール、免疫調節、神経調節などの薬物送達分野、特に薬物徐放治療に有用である。
【発明の効果】
【0034】
本発明のシクロペプチドガラスの原料には、シクロペプチド、特に、生物学的活性・薬理活性を有するシクロペプチド又はその薬学的に許容される誘導体及びその塩のうちの任意の1種又は複数種の組み合わせが含まれ、これらは、一般には、水溶性が悪く、結晶しやすく、バイオアベイラビリティが低い。本発明は、難溶性シクロペプチド薬物をガラス状に変換する方法を新規的に提案し、難溶性シクロペプチドをガラスに製造する方法、及び難溶性シクロペプチド及び他の活性薬物成分の両方を用いてガラスを製造する方法を含む。本発明は、難溶性薬物をガラス状に変換し、薬物ガラス状剤形を形成し、難溶性活性シクロペプチド及び薬物徐放を実現する方法を提供する。得られたシクロペプチドガラスは、生体適合性が高く、生分解性を持ち、熱的・化学的安定性が高く、さらに、噴霧乾燥、固体分散、積層造形などの技術によって、成経口剤、パッチ剤、皮下包埋剤、ステント材料やマイクロニードルデバイスに製造されてもよい。得られたシクロペプチドガラスは、薬物の効果及び薬物アジュバントの機能を発揮することができ、結晶及び従来の医薬剤形又はアジュバントと比べ、シクロペプチドガラスは、薬物の溶出速度を効果的に速め、薬物のバイオアベイラビリティを向上させることができ、抗腫瘍、抗ウイルス・抗菌、血糖コントロール、免疫調節、神経調節などの薬物送達及び徐放の分野において広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例1で製造されたCsAガラスの室温での実物図(a)、及びキャスティングプロセスによって得られたCsAガラスの実物図(b)であり、シクロペプチドガラスの加工性が実証された。
【
図2】実施例1で製造されたCsAガラスの核磁気共鳴水素スペクトルであり、CsA原料と比べて、ピークには明らかな変化が認められず、シクロペプチド原料分子は、加熱熔融及び焼鈍処理を経た後にも、化学成分が変化しないことを明らかにした。
【
図3】実施例1で製造されたCsAガラスの示差走査熱量測定(DSC)図であり、CsAガラスのガラス状構造が実証され、CsAガラスのガラス転移温度はT
g=100.4Kである。
【
図4】実施例1で製造されたCsAガラスのX線回折(XRD)パターンであり、CsAガラスが非晶質構造であることが実証された。
【
図5】実施例1で製造されたCsAガラスの安定性のテスト結果であり、CsAガラスの高安定性が実証された。
【
図6】実施例1で製造されたCsAガラスの薬物徐放曲線であり、薬物の徐放が可能であることが実証された。
【
図7】実施例1で製造されたCsAガラスを経口投与したマウスの免疫関連指標である。
【
図8】実施例2のCFP及び腫瘍化学療法薬PTXに基づく医薬組成物ガラスのXRDスペクトルであり、この医薬組成物ガラスは非晶質構造である。
【
図9】実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルの人工胃液(中国薬局方に記載の方法に従って製造)での分解であり、医薬組成物ガラスカプセルの分解性が実証された。
【
図10】実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを胃内投与したマウスのインビボでの経時薬物-時間曲線である。
【
図11】実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを経口投与した実験マウスの腫瘍抑制曲線であり、医薬組成物ガラスカプセルの抗腫瘍効果が実証された。
【
図12】実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを経口投与した実験マウスの体重変化曲線であり、高いバイオセキュリティが実証された。
【
図13】実施例2で製造されたガラス医薬組成物カプセルを経口投与した実験マウスの器官係数の変化であり、高いバイオセキュリティが実証された。
【
図14】実施例3の医薬組成物ガラスの熔融画像及びXRDデータであり、結晶からガラス状に転化したことが実証された。
【
図15】実施例3で製造された医薬組成物ガラスの生体適合性のテスト結果であり、高い生体適合性が実証された。
【
図16】実施例3で製造された医薬組成物ガラスコーティングの細菌成長の抑制曲線である。
【
図17】実施例3で製造された医薬組成物ガラス錠剤の大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する阻害効果である。
【
図18】実施例3で製造されたガラス医薬組成物包埋剤の皮下包埋後の経時分解曲線である。
【
図19】実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤による特発性II型糖尿病マウスの血糖のコントロール曲線であり、マウスの血糖を効果的にコントロールできることが実証された。
【
図20】実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤を特発性II型糖尿病マウスに胃内投与した場合のマウスの体重の経時変化曲線であり、マウスの体重を効果的にコントロールできることが実証された。
【
図21】実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤を特発性II型糖尿病マウスに胃内投与してから30日後、グルコース濃度2.5g kg
-1の高濃度グルコースを経口投与した場合の耐性であり、マウスの足底血の血糖濃度を測定することによって曲線をプロットし、実験群マウスには、耐糖能がより高いことが実証された。
【
図22】実施例5で製造されたCPY-CFP-CLPシクロペプチド混合ガラスのDSC曲線であり、単一及び混合ガラスのガラス転移温度が得られ、複数種のシクロペプチドを混合下場合は、単一シクロペプチドの結晶化の傾向を効果的に抑制できることが分かった。
【
図23】実施例5で製造されたシクロペプチド混合ガラス及びCLP結晶のCLP分子放出曲線であり、シクロペプチド混合ガラスが、CLP活性シクロペプチドの溶出速度を速めることが分かった。
【
図24】実施例5で製造された医薬組成物ガラスのXRDパターンであり、医薬組成物ガラスは非晶質である。
【
図25】オープンフィールド実験におけるマウスの自発活動能力及び不安様行動を統計したデータである。その結果、正常マウスと比べて、早期社会隔離マウスは、中心領域の活動距離が明らかに減少したが、ガラスマイクロニードルパッチで治療した後には顕著な改善が認められた。
【
図26】迷路実験において5min以内のマウスのオープンアーム及びクローズドアームへの進入回数及び2アームでの滞在時間である。その結果、正常マウスと比べて、早期社会隔離マウスは、オープンアームへの進入回数が顕著に減少し、また、オープンアームでの滞在時間が短くなったが、ガラスマイクロニードルパッチで治療した後には顕著な改善が認められた。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施例によって本発明の技術案を詳細に説明するが、本発明が保護する内容は以下に限定されるものではない。
【0037】
実施例1
シクロスポリンA(CsA)に基づくシクロペプチドガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)CsA粉末をボールミルに入れて均一に粉砕し、ボールミルを25℃に維持した後、坩堝に移した。
(2)ステップ(1)においてCsA粉末を容れた坩堝をN2雰囲気で加熱装置に置いた。
(3)ステップ(2)の装置を加熱し、すなわち、10Kmin-1の昇温速度で坩堝を室温から573.15Kの温度に昇温し、この温度で20min保温した。
(4)ステップ(3)の装置を降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で坩堝を273.15Kに降温し、焼鈍炉内で30min保温し、ガラスを焼鈍処理し、CsAガラスを得た。
【0038】
図1は、実施例1で製造されたCsAガラスの室温での実物図(a)、及びキャスティングプロセスによって得られたCsAガラスの実物図(b)であり、シクロペプチドガラスの加工性が実証された。
【0039】
図2は、実施例1で製造されたCsAガラスの核磁気共鳴水素スペクトルであり、CsA原料と比べて、ピークには明らかな変化が認められず、シクロペプチド原料分子は、加熱熔融及び焼鈍処理を経た後にも、化学成分が変化しないことを明らかにした。
【0040】
図3は、実施例1で製造されたCsAガラスのDSC図であり、CsAガラスのガラス状構造が実証され、CsAガラスのガラス転移温度はT
g=100.4Kである。
【0041】
図4は、実施例1で製造されたCsAガラスのX線回折(XRD)パターンであり、CsAガラスが非晶質構造であることが実証された。
【0042】
図5は、実施例1で製造されたCsAガラスの安定性のテスト結果であり、CsAガラスの高安定性が実証された。
【0043】
図6は、実施例1で製造されたCsAガラスの薬物徐放曲線であり、薬物の徐放が可能であることが実証された。具体的には、CsAガラスの初期質量は20±1mgであり、徐放性溶媒は10mLリン酸塩緩衝液(0.01M、pH=6.8)であり、撹拌速度は100rmin
-1であり、溶出度試験機及び高速液体クロマトグラフィーによって溶出したCsAを検出し、薬物徐放曲線をプロットする。
【0044】
図7は、実施例1で製造されたCsAガラスを経口投与したマウスの免疫関連指標である。具体的には、健康な雄昆明マウス(体重20±1g、4~5週齢)を2群に8匹ずつランダムに分け、通常の食餌を与えた。実験群のマウスには40mg kg
-1の用量を1日おきに計5回胃内投与し、対照群のマウスには同質量の生理食塩水を1日おきに胃内投与した。最後の経口投与の翌日にマウスを安楽死させ、対応する指標を検出した。マウスを解剖して胸腺と脾臓を摘出し、表面の血液をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で洗い流し、濾紙で水分を吸い取った後、電子天秤で重量を計量し、器官の重量(mg)をマウスの総重量(g)で割って器官重量指数を計算した。マウスの末梢血を採取し、CD3
+(PE-Cy5)モノクローナル抗体、CD4
+(PE)モノクローナル抗体、CD8
+(APC)モノクローナル抗体と混合して、均一に振盪させ、暗所でインキュベートし、細胞溶解後、遠心分離し、フローサイトメータで分析した。
【0045】
実施例2
フェニルアラニン-プロリンシクロジペプチド(CFP)及びパクリタキセル(PTX)に基づく医薬組成物ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)CFP粉末をボールミルに入れて粉砕し、均一に混合し、ボールミルを37℃に維持した後、容器に移した。
(2)ステップ(1)の容器を加熱し、すなわち、20Kmin-1の昇温速度で容器を室温から473.15K温度に昇温し、この温度で30min保温した。
(3)ステップ(2)の容器を降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で容器を333.15K温度に降温した。
(4)PTX粉末をボールミルに入れて均一に粉砕し、ボールミルを37℃に維持した後、エタノールを加えて完全に溶解し、CFPとPTXとのモル比を25:1とした。
(5)ステップ(4)の溶液をステップ(3)の容器内に滴下し、容器を減圧ロータリーエバポレータに入れて、温度を333.15Kに維持して、溶媒を除去した。
(6)ステップ(5)の装置を降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で容器を315.15Kに降温し、焼鈍炉内で30min保温し、CFP及び腫瘍化学療法薬PTXに基づく医薬組成物ガラスを得、上記のガラスをHFIP有機溶液に完全に溶解し、高速液体クロマトグラフィーによってPTXの濃度を定量化し、計算した結果、PTXの担持量は3.5±0.2%であった。
(7)噴霧乾燥及びカプセル充填の製造プロセスによって、シクロペプチドガラス経口剤形を製造した。
【0046】
図8は、実施例2のCFP及び腫瘍化学療法薬PTXに基づく医薬組成物ガラスのXRDスペクトルであり、本発明の医薬組成物が非晶質構造であることが実証された。
【0047】
図9は、実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルの人工胃液(中国薬局方に記載の製造方法に従って)での分解であり、医薬組成物ガラスカプセルの分解性が実証された。医薬組成物ガラスカプセルの製造ステップは、医薬組成物ガラスをホモジナイザーで粉砕して粉末にし、上記の粉末をゼラチンカプセルシェルに詰めることである。
【0048】
図10は、実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを胃内投与したマウスのインビボでの経時薬物-時間曲線である。具体的には、マウスを8mg kg
-1の用量で胃内投与した後、経時的に眼窩から採血することでマウスの末梢血を採取し、細胞を溶解し溶媒で溶出し、高速液体クロマトグラフィーによって濾過後の溶液を検出し、血液中のPTXの含有量を算出し、薬物-時間曲線をプロットした。
【0049】
図11は、実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを経口投与した実験マウスの腫瘍抑制曲線であり、医薬組成物ガラスカプセルの抗腫瘍効果が実証された。具体的には、健康なBALB/cヌードマウス(体重15±1g、4~6週齢)を2群にランダムに8匹ずつ分け、4T1細胞を腋窩皮下に接種して、乳癌4T1マウス移植腫瘍モデルを樹立した。マウスの腫瘍が80±10mm
3の体積まで成長した後、マウスを薬物で治療した。実験群のマウスには8mg kg
-1 の用量で1日おきに計5回胃内投与し、対照群のマウスには同質量のPBSを1日おきに胃内投与した。ノギスを使用してマウスの腫瘍体積の変化を毎日測定し、記録した。マウスの腫瘍体積は式V=ab
2/2により計算され、ここで、aは腫瘍の長辺の長さ、bは短辺の長さである。
図12は、実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを経口投与した実験マウスの体重変化曲線であり、高いバイオセキュリティが実証された。
図13は、実施例2で製造された医薬組成物ガラスカプセルを経口投与した実験マウスの器官係数の変化であり、高いバイオセキュリティが実証された。具体的には、マウスの重要器官(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓を含む)を35日目に解剖して取得し、表面の血液をPBSで流し、濾紙で水分を吸い取った後、電子天秤で計量し、器官重量(mg)をマウスの総重量(g)で割って器官係数を算出した。
【0050】
実施例3
バンコマイシン、グラミシジンS、及びペニシリンに基づく医薬組成物ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)バンコマイシン、グラミシジンS、及びペニシリンをボールミルに入れて粉砕し、均一に混合し、ボールミルを37℃に維持した後、容器に移し、これらの3つの質量比を2:2:1とした。
(2)ステップ(1)の混合粉末にヘキサフルオロイソプロパノールとエタノールとの混合有機溶媒を加え、完全に溶解するまで撹拌した。
(3)ステップ(2)で得た混合溶液を減圧ロータリーエバポレータに入れて、50Kmin-1の昇温速度で室温から443.15K温度に昇温し、この温度で30min保温して処理し、有機溶媒を除去した。
(4)ステップ(3)の装置を降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で243.15K温度に降温し、この温度で20min保温した。
(5)ステップ(4)で得た生成物に、デンプン1.5部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1部、ポリエチレングリコール2.5部及び硬化植物油6.5部を含む医薬アジュバントを合計92.5質量%で加えた。
(6)ステップ(5)で得た医薬組成物を均質化し、打錠と真空噴霧乾燥を組み合わせた技術によって、ガラス医薬組成物包埋剤を製造した。
【0051】
図14は、実施例3の医薬組成物ガラスの熔融画像及びXRDデータであり、結晶からガラス状に転化したことが実証された。
【0052】
図15は、実施例3で製造された医薬組成物ガラスの生体適合性のテスト結果であり、高い生体適合性が実証された。具体的には、上記ガラスをコーターで直径60mm、厚さ0.2mmの細胞培養皿コーティングに加工し、細胞培養(線維芽細胞3T3)に使用した。48hインキュベート後、MTT法を使用して細胞の生存率をテストした。
【0053】
図16は、実施例3で製造された医薬組成物ガラスコーティングの細菌成長の抑制曲線である。具体的には、上記医薬組成物ガラスを1cm×1cm×0.1cmの錠剤に加工し、細菌培養皿の中央に貼り付け、計算の結果、薬物の総濃度は10μg/皿であった。液体培地において大腸菌及び黄色ブドウ球菌を均一に混合した後、細菌培養皿に滴下し、37℃で振とうしてインキュベートし、OD値法により細菌培養皿内の細菌濃度を経時的に測定した。
【0054】
図17は、実施例3で製造された医薬組成物ガラス錠剤の大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する阻害効果である。具体的には、上記医薬組成物ガラスを直径5mm、厚さ0.2mmの錠剤に加工し、寒天培養皿上にオックスフォードカップ(直径6mm)を置き、この錠剤をオックスフォードカップに入れ、寒天と密着させた。大腸菌および黄色ブドウ球菌をPBSで均一に混合した後、培養皿内に塗布し、37℃のインキュベータに入れて培養し、24h後に、阻害円の生成の有無を観察し、医薬組成物ガラスの阻害効果を判定した。
【0055】
図18は、実施例3で製造された医薬組成物ガラス包埋剤の皮下包埋後の経時分解曲線である。具体的には、健康な雄昆明マウス(体重20±1g、4~5週齢)を2群にランダムに15匹ずつ分けた。実験群のマウスの背中に外科的に1cmの窓を開け、医薬組成物ガラス30±2.5gを皮下に埋め込み、縫合した。マウスを経時的に採取し、医薬組成物ガラスを取り出し、残りの質量を秤量し、分解曲線をプロットした。
【0056】
図19は、実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤による特発性II型糖尿病マウスの血糖のコントロール曲線であり、マウスの血糖を効果的にコントロールできることが実証された。具体的には、購入した特発性II型糖尿病モデルマウス(雄、8週齢)を2群に6匹ずつ分けた。実験群のマウスには4mg kg
-1の用量で医薬組成物を毎日胃内投与し、対照群のマウスには同質量の生理食塩水を胃内投与し、テスト周期を30日とした。マウスの尾血を毎日採取し、血糖検査器を用いてマウスの空腹時血糖値を測定した。横軸を時間、縦軸を実験マウスの空腹時血糖値として曲線をプロットした。
【0057】
図20は、実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤を特発性II型糖尿病マウスに胃内投与した場合のマウスの体重の経時変化曲線であり、マウスの体重を効果的にコントロールできることが実証された。
【0058】
図21は、実施例4で製造された医薬組成物ガラス錠剤を特発性II型糖尿病マウスに胃内投与してから30日後、グルコース濃度2.5g kg
-1の高濃度グルコースを経口投与した場合の耐性であり、マウスの足底血の血糖濃度を測定することによって曲線をプロットし、実験群マウスには、耐糖能がより高いことが実証された。
【0059】
図22は、実施例5で製造されたCPY-CFP-CLPシクロペプチド混合ガラスのDSC曲線であり、単一及び混合ガラスのガラス転移温度が得られ、複数種のシクロペプチドを混合下場合は、単一シクロペプチドの結晶化の傾向を効果的に抑制できることが分かった。
【0060】
図23は、実施例5で製造されたシクロペプチド混合ガラス及びCLP結晶のCLP分子放出曲線であり、シクロペプチド混合ガラスが、CLP活性シクロペプチドの溶出速度を速めることが分かった。具体的には、シクロペプチド混合ガラスの初期質量を15±1mg、徐放性溶媒を10mL PBS(0.01M,pH=6.8)、撹拌速度を100rmin
-1とし、溶出度試験器および高速液体クロマトグラフにより溶出したCLPを検出し、シクロペプチド混合ガラスの徐放曲線をプロットした。対照として、同質量のCLP結晶を上記の徐放溶液に入れて撹拌してインキュベートし、CLPの徐放溶液中の濃度を検出した。
【0061】
図24は、実施例5で製造された医薬組成物ガラスのXRDパターンであり、医薬組成物ガラスは非晶質である。
【0062】
図25は、実施例6で製造された医薬組成物ガラスを小動物オープンフィールド実験に用いたときの、マウスの自発活動能力及び不安様行動を統計したデータである。その結果、正常マウスと比べて、早期社会隔離マウスは、中心領域の活動距離が明らかに減少したが、ガラスマイクロニードルパッチで治療した後には顕著な改善が認められた。具体的には、C57BL/6早期社会隔離マウス(8週齢、雄)を平均6匹ずつ2群に分けた。一方の群は特別な処理をせず、もう一方の群のマウスは背中を脱毛した後にガラスマイクロニードルパッチを貼り付けた。C57BL/6群は正常マウス6匹を飼育し、空白対照群とした。基準に従い、黒色のオープンフィールド装置(45cm×5cm×45cm)を用意し、マウスをオープンフィールドに置き、マウスの自発活動行動を追跡し記録した。縦座標はマウスがオープンフィールドで1h運動したときの中心領域の活動距離の統計値である。
【0063】
図26は、実施例6で製造された医薬組成物ガラスをマウス迷路実験に用いたときの、5min以内のマウスのオープンアーム及びクローズドアームへの進入回数及び2アームでの滞在時間である。その結果、正常マウスと比べて、早期社会隔離マウスは、オープンアームへの進入回数が顕著に減少し、また、オープンアームでの滞在時間が短くなったが、ガラスマイクロニードルパッチで治療した後には顕著な改善が認められた。具体的には、基準に従い、アーム幅5cm、アーム長さ35cm、クローズドアーム高さ15cm、中央プラットフォーム5cm×5cm、地面からの迷路の高さ約40~55cmの迷路装置を用意した。マウスをプラットフォームの中央に置き、マウスのオープンアーム及びクローズアームへの進入回数及び2アームでの滞在時間を記録し、不安指標を評価した。
【0064】
実施例4
ヒスチジン-プロリンシクロジペプチド及びセクリチドに基づく医薬組成物ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)ヒスチジン-プロリンシクロジペプチド及びセクリチドをボールミルに入れて粉砕し、均一に混合し、ボールミルを25℃に維持した後、容器に移し、これらの両方の質量比を10:1とした。
(2)ステップ(1)の混合粉末にジクロロメタン溶媒を加え、完全に溶解するまで撹拌した。
(3)ステップ(2)で得た混合溶液を減圧ロータリーエバポレータに入れ、10Kmin-1の昇温速度で室温から535.15K温度に昇温し、この温度で30min保温して処理し、有機溶媒を除去した。
(4)ステップ(3)の装置を降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で283.15K温度に降温し、この温度で1h保温し、ヒスチジン-プロリンシクロジペプチド及びセクリチドに基づく医薬組成物ガラスを得た。
(5)ステップ(4)で得た医薬組成物ガラスを均質化した後、打錠及びプログラムキャスティングによって錠剤を製造し、経口投与及び血糖コントロールに用いた。
【0065】
実施例5
プロリン-チロシンシクロジペプチド(CPY)、フェニルアラニン-プロリンシクロジペプチド(CFP)、及びロイシン-プロリンシクロジペプチド(CLP)に基づく混合ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)CPY、CFP、CLP粉末を等モル比で秤量し、それぞれヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して、単一シクロペプチド溶液を形成した。
(2)ステップ(1)で得た混合溶液を減圧ロータリーエバポレータに入れ、10Kmin-1の昇温速度で室温から473.15Kに昇温し、この温度で30min保温して処理し、有機溶媒を除去した。
(3)ステップ(2)の装置で降温し、すなわち、10Kmin-1の降温速度で243.15K温度に降温し、この温度で30min保温し、CPY-CFP-CLPシクロペプチド混合ガラスを得た。
【0066】
実施例6
トリプトファン-トリプトファンシクロジペプチド(CWW)及びリスペリドンに基づく医薬組成物ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)CWW、リスペリドン粉末を等モル比で秤量し、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール及びメタノールに溶解して、単分散溶液を形成した。
(2)ステップ(1)で得た混合溶液を減圧ロータリーエバポレータに入れ、10Kmin-1の昇温速度で室温から573.15Kに昇温し、この温度で30min保温して処理し、有機溶媒を除去した。
(3)ステップ(2)の装置を降温し、すなわち、50Kmin-1の降温速度で283.15K温度に降温し、この温度で30min保温し、CWW及びパリペリドンに基づくガラス医薬組成物を得た。
(4)3Dプリントプロセス及びキャスティングプロセスによって、ステップ(3)で得たガラス医薬組成物を、サイズ0.8×0.8cmのマイクロニードルパッチに加工し、薬物経皮送達に用いた。C57BL/6の早期社会隔離マウスモデルを作成し、リスペリドン用量5mg kg-1の皮下マイクロニードルパッチで治療し、14日後、マウスの統合失調症様行動を評価した。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペプチドに基づくガラスであって、
前記シクロペプチドは、構造式1で示されるシクロペプチド及びその塩であり、1種又は2種以上の組み合わせ
である、ことを特徴とするシクロペプチドに基づくガラス。
【化1】
(ただし、A
1~A
nは、独立して、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン(Met)、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、セレンシステイン、及びピロリジンから選択され、
R
1~R
nは、独立して、H又は他の修飾可能な基から選択され、修飾可能な基は、独立して、メチル、アルキル、リン酸、アセチル、ホルミル、脂肪酸、ベンゾイル、アミド、エステル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルから選択され、
n≧2であり、A
1~A
nはアミノ酸により縮合して連結される。)
【請求項2】
2≦n≦15である、ことを特徴とする請求項1に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項3】
前記シクロペプチドは、生物学的活性及び/又は薬理学的活性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項4】
前記シクロペプチドは、抗菌・抗ウイルス活性、抗腫瘍活性、免疫調節活性、血糖調節活性、心血管及び血液関連活性、又は他の活性を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項5】
抗菌・抗ウイルス活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表1-1】
【表1-2】
抗腫瘍活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表2-1】
【表2-2】
免疫調節活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表3】
血糖調節活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表4】
心血管及び血液関連活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表5】
他の活性を有する前記シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表6】
請求項4に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項6】
前記シクロペプチドは、水難溶性シクロペプチドであり、水難溶性シクロペプチドのペプチド鎖骨格が修飾された水溶性シクロペプチド誘導体も含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスを含有する医薬組成物であって、
前記医薬組成物はガラス形態であり、シクロペプチドのみで製造されるか、又は医薬アジュバント及び/又は医薬活性成分をさらに含有する、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシクロペプチドガラスを製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を
0~50℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理するステップ(2)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
昇温温度とは、融点温度(T
m)±50~250Kの温度
を指し、
保温時間は、
0min~30hであり、
焼鈍温度とは、ガラス転移温度(T
g)±50~150Kの温度
を指し、
焼鈍処理時間は、
30min~2hであり、
T
m及びT
gは、熱重量分析及び示差走査熱量測定法によって測定され、昇温及び降温速度は2~50Kmin
-1である、ことを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチドを他の医薬活性成分と混合して、ボールミーリング中の原料の温度を
0~50℃に制御してボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理し、ガラスを得るステップ(2)と、
任意に、ステップ(2)で得られたガラスと医薬アジュバントの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を
0~50℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
ステップ(1)の粉末を不活性ガス雰囲気で昇温し、所定時間保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m)±
50~250Kの温度とし、保温時間を
0min~30hとするステップ(2)と、
他の医薬活性成分を良溶媒及び共溶媒に入れて完全に溶解するステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた医薬活性成分溶液を、ステップ(1)の溶融状態のシクロペプチドと均一に混合するステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた混合物をステップ(2)で設定された温度に置き、溶媒を減圧下で回転蒸発させるステップ(5)と、
ステップ(5)で得られた混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g)±
50~150Kの温度とし、焼鈍処理時間を
30min~2hとするステップ(6)と、
任意に、ステップ(2)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチド及び他の医薬活性成分を一括して良溶媒及び共溶媒に入れて、完全に溶解するステップ(1)と、
ステップ(1)で得た混合溶液を不活性ガス雰囲気で昇温し、溶媒を減圧下で回転蒸発させた後、保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m)±
50~250Kの温度とし、保温時間を
0min~30hとするステップ(2)と、
ステップ
(2)で得た混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g)±
50~150Kの温度とし、焼鈍処理時間を
30min~2hとするステップ
(3)と、
任意に、ステップ
(3)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ
(4)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記組成物のガラス形態の医薬組成物は、さらに経口剤、パッチ剤、皮下包埋剤、ステント材料及びマイクロニードルデバイスに製造される、
請求項7に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
実施例6
トリプトファン-トリプトファンシクロジペプチド(CWW)及びリスペリドンに基づく医薬組成物ガラスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)CWW、リスペリドン粉末を等モル比で秤量し、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール及びメタノールに溶解して、単分散溶液を形成した。
(2)ステップ(1)で得た混合溶液を減圧ロータリーエバポレータに入れ、10Kmin
-1の昇温速度で室温から573.15Kに昇温し、この温度で30min保温して処理し、有機溶媒を除去した。
(3)ステップ(2)の装置を降温し、すなわち、50Kmin
-1の降温速度で283.15K温度に降温し、この温度で30min保温し、CWW及びパリペリドンに基づくガラス医薬組成物を得た。
(4)3Dプリントプロセス及びキャスティングプロセスによって、ステップ(3)で得たガラス医薬組成物を、サイズ0.8×0.8cmのマイクロニードルパッチに加工し、薬物経皮送達に用いた。C57BL/6の早期社会隔離マウスモデルを作成し、リスペリドン用量5mg kg
-1の皮下マイクロニードルパッチで治療し、14日後、マウスの統合失調症様行動を評価した。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
シクロペプチドに基づくガラスであって、
前記シクロペプチドは、構造式1で示されるシクロペプチド及びその塩であり、1種又は2種以上の組み合わせであり、
前記シクロペプチドは、好ましくは、生物学的活性及び/又は薬理学的活性を有し、さらに好ましくは、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、血糖調節、免疫調節活性を有する、ことを特徴とするシクロペプチドに基づくガラス。
【化2】
(
ただし、A
1
~A
n
は、独立して、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン(Met)、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、セレンシステイン、及びピロリジンから選択され、
R
1
~R
n
は、独立して、H又は他の修飾可能な基から選択され、修飾可能な基は、独立して、メチル、アルキル、リン酸、アセチル、ホルミル、脂肪酸、ベンゾイル、アミド、エステル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルから選択され、
n≧2、好ましくは、2≦n≦15であり、A
1
~A
n
はアミノ酸により縮合して連結される。)
[2]
前記抗菌・抗ウイルスシクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表7-1】
【表7-2】
前記抗腫瘍シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表8-1】
【表8-2】
前記免疫調節シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表9】
前記血糖調節シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表10】
前記心血管及び血液関連シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表11】
前記他の活性シクロペプチドは、以下のシクロペプチドから選択される1種又は複数種の組み合わせであり、
【表12】
[1]に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
[1]
前記シクロペプチドは、水難溶性シクロペプチドであり、水難溶性シクロペプチドのペプチド鎖骨格が修飾された水溶性シクロペプチド誘導体も含む、ことを特徴とする[1]に記載のシクロペプチドに基づくガラス。
[4]
[1]~[3]のいずれか1つに記載のガラスを含有する医薬組成物であって、
前記医薬組成物はガラス形態であり、シクロペプチドのみで製造されるか、又は医薬アジュバント及び/又は医薬活性成分をさらに含有する、ことを特徴とする医薬組成物。
[5]
[1]~[3]のいずれか1つに記載のシクロペプチドガラスを製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理するステップ(2)と、を含む、ことを特徴とする方法。
[6]
昇温温度とは、融点温度(T
m
)±50~250Kの温度を指し、好ましくは、T
m
よりも50~100K高く、
保温時間は、0min~30h、好ましくは、15~30minであり、
焼鈍温度とは、ガラス転移温度(T
g
)±50~150Kの温度を指し、好ましくは、T
g
よりも50~100K低く、
焼鈍処理時間は、30min~2h、好ましくは、30min~1hであり、
T
m
及びT
g
は、熱重量分析及び示差走査熱量測定法によって測定され、昇温及び降温速度は2~50Kmin
-1
である、ことを特徴とする[5]に記載の方法。
[7]
[4]に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチドを他の医薬活性成分と混合して、ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御してボールミーリングするステップ(1)と、
「昇温-焼入れ」方法によってシクロペプチドガラスを製造し、粉砕したシクロペプチド原料を不活性ガス雰囲気で融点温度の近くに昇温し、所定時間保温して処理した後、焼鈍炉に移して焼鈍処理し、ガラスを得るステップ(2)と、
任意に、ステップ(2)で得られたガラスと医薬アジュバントの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする方法。
[8]
[4]に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
ボールミーリング中の原料の温度を0~50℃、好ましくは、10~30℃に制御して、1種又は複数種のシクロペプチドをボールミーリングするステップ(1)と、
ステップ(1)の粉末を不活性ガス雰囲気で昇温し、所定時間保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m
)±50~250Kの温度、好ましくは、T
m
よりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
他の医薬活性成分を良溶媒及び共溶媒に入れて完全に溶解するステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた医薬活性成分溶液を、ステップ(1)の溶融状態のシクロペプチドと均一に混合するステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた混合物をステップ(2)で設定された温度に置き、溶媒を減圧下で回転蒸発させるステップ(5)と、
ステップ(5)で得られた混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g
)±50~150Kの温度、好ましくは、T
g
よりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(6)と、
任意に、ステップ(2)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする方法。
[9]
[4]に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
シクロペプチド及び他の医薬活性成分を一括して良溶媒及び共溶媒に入れて、完全に溶解するステップ(1)と、
ステップ(1)で得た混合溶液を不活性ガス雰囲気で昇温し、溶媒を減圧下で回転蒸発させた後、保温して処理し、昇温温度を融点温度(T
m
)±50~250Kの温度、好ましくは、T
m
よりも50~100K高くし、保温時間を0min~30h、好ましくは、15~30minとするステップ(2)と、
ステップ(5)で得た混合物を焼鈍炉に移して焼鈍処理し、焼鈍温度をガラス転移温度(T
g
)±50~150Kの温度、好ましくは、T
g
よりも50~100K低くし、焼鈍処理時間を30min~2h、好ましくは、30min~1hとするステップ(6)と、
任意に、ステップ(2)で得たガラスと医薬アジュバントとの両方を用いて医薬組成物を製造するステップ(7)と、を含む、ことを特徴とする方法。
[10]
前記組成物のガラス形態の医薬組成物は、さらに経口剤、パッチ剤、皮下包埋剤、ステント材料及びマイクロニードルデバイスに製造される、[4]に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】