(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】粒子状材料
(51)【国際特許分類】
B01J 2/00 20060101AFI20241206BHJP
C22C 5/06 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B01J2/00 B
C22C5/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522712
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2022070324
(87)【国際公開番号】W WO2023094038
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324010105
【氏名又は名称】ヘレウス プレシャス メタルズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】メザチンチャ,アナルシア
(72)【発明者】
【氏名】ゴック,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コフジェニック,ミレーナ
【テーマコード(参考)】
4G004
【Fターム(参考)】
4G004BA00
(57)【要約】
【解決手段】 単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる15重量%~50重量%の粒子Xと、粒子X上に少なくとも部分的に配置された50重量%~85重量%の固体Yとから構成される粒子状材料Zであって、固体Yが、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、粒子状材料Z。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる15重量%~50重量%の粒子Xと、前記粒子X上に少なくとも部分的に配置された50重量%~85重量%の固体Yとから構成される粒子状材料Zであって、前記固体Yが、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、粒子状材料Z。
【請求項2】
50~85の範囲の明度L*を有する色を有する、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項3】
前記固体Yが粒子として形成されている、請求項1又は2に記載の粒子状材料Z。
【請求項4】
前記粒子Xが、1重量部~2,000重量部の銀:1重量部のルテニウムの範囲にある銀:ルテニウム重量比において、0.1重量%~50重量%の範囲にある銀+ルテニウム重量割合を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状材料Z。
【請求項5】
前記担体材料Tが、水で膨潤可能であるか、又はヒドロゲルを形成することができる、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状材料Z。
【請求項6】
前記担体材料Tが、ガラス、窒化物、高融点酸化物、ケイ酸塩、プラスチック材料、変性又は未変性の天然由来ポリマー、炭素基材、及び木材からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状材料Z。
【請求項7】
前記担体材料Tが、二酸化ケイ素、二酸化チタン、又はセルロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状材料Z。
【請求項8】
前記担体材料Tが、前記固体Yと同じであるか又は異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子状材料Z。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子状材料Zを調製する方法であって、単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xを、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又はチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドと、前記少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全な加水分解に少なくとも十分な量の水の存在下で接触させる、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のC1~C4アルコキシドが、チタンテトラアルコキシドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水が、大気水分として、粒子Xの水分含有量として、及び/又は液体形態で提供される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記完全な加水分解の後に得られた生成物を、固液分離、洗浄、乾燥、及び粉砕からなる群から選択される1つ以上の更なる処理ステップに供する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子Xを、前記少なくとも1種のアルコキシドと直接接触させるか、又は最初に水で均一に湿らせるか、又は最初に水及び水希釈性有機溶媒の水性媒体中に懸濁させる、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の、又は請求項9~13のいずれか一項に記載の方法に従って調製された粒子状材料Zの、抗菌性にされる材料又は物体の抗菌処理のための添加剤としての、使用。
【請求項15】
前記抗菌性にされる材料又は物体が、50~90の範囲の明度L*を有する有彩色又は無彩色を有する、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に粒子上に配置された固体を有する、単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料から構成される粒子状材料(粉末)に関する。固体は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明はまた、粒子状材料を調製する方法、及びその使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
国際公開第2021/084140(A2)号は、多くの異なる材料の抗菌処理のための添加剤として使用することができ、単体銀及び単体ルテニウムを備えることができる粒子状担体材料を開示している。この材料は、対応する低い明度L*(例えば、35~45の範囲)を有する暗色又は黒色を特徴とする。暗色は、軽い材料及び物体の抗菌処理の有用性を制限し得る。
【0003】
米国特許第5,985,466号明細書は、その表面上に金属酸化物膜を有する粉末を開示しており、金属酸化物膜は、増加した屈折率を有し、したがって、高い反射率及び明るい色を有する。粉末は、少なくとも1つの金属酸化物層を含む多層膜をその表面上に有する基体粒子を含む。粉末を調製する方法は、金属アルコキシドの溶液中に基体粒子を分散させ、金属アルコキシドを加水分解して金属酸化物を得、基体粒子の表面に金属酸化物の膜を析出させ、これらのステップを2回以上行って多層金属酸化物膜を形成し、少なくとも最後のステップで熱処理を行うことを含む。多層金属酸化物膜は、これにより、多層膜の干渉色を変化させるために、及び粉末に明るい色を付与するために、多層金属酸化物膜が適切な構成材料の組み合わせ及び適切な膜厚を有するように調整される。
【0004】
本明細書及び特許請求の範囲において引用される明度L*は、CIEL*a*b*色空間(DIN EN ISO/CIE 11664-4:2020-03)におけるL*であり、d/8°の測定ジオメトリにおいて分光光度的に決定される。粉末材料の分光光度測定は、使用される分光光度計の測定ヘッド上に置かれたガラス容器の平らなガラス底を通して、1cmの充填高さで無色のガラス容器に充填された材料試料に対して行うことができる。
【0005】
以下に説明する本発明は、抗菌添加剤として使用することができ、比較的明るい色、特に国際公開第2021/084140(A2)号に開示されている材料よりも明るい色を有する粒子状材料を提供することによって、前述の色又は明度の問題を解決する。その明るい色のために、本発明による粒子状材料は、比較的明るい色を有する材料及び物体の抗菌設計にも適している。
【0006】
本発明は、単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる15重量%~50重量%の粒子Xと、粒子X上に少なくとも部分的に配置された50重量%~85重量%の固体Yとから構成される粒子状材料Zであって、固体Yが、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、粒子状材料Zに関する。成分Xと成分Yとの重量%は、合計で100重量%になる。本発明による範囲内のX:Y重量比の選択は、本発明による粒子状材料Zの色又は明度L*の実質的かつ標的化された影響を可能にする。本発明による粒子状材料Zは、例えば50~85の範囲の明度L*を有する色、例えば灰色を有する。粒子状材料Z中の銀+ルテニウムの割合は、例えば、0.015重量%~25重量%の範囲であり得る。
【0007】
固体Yは、本発明による粒子状材料Zの50重量%~85重量%を構成し、本発明による粒子状材料Zの粒子X上に少なくとも部分的に配置され、すなわち、固体Yの50重量%~85重量%の特定の割合は、固体Yが上に配置された粒子X及び任意選択で固体Yが上に配置されていない粒子Xに加えて、遊離固体Yとして「遊離」して存在することができる。したがって、走査型電子顕微鏡を使用して見た場合、本発明による粒子状材料Zは、固体Yがその上に配置された粒子Xと遊離固体Yとの混合物を実質的に含むか、又はそれらからなる。固体Yの総量中の遊離固体Yの割合は、例えば、10重量%~100重量%未満の範囲、例えば10重量%~90重量%の範囲であり得る。
【0008】
固体Yは、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、又はそれらの組み合わせ、特に二酸化チタンが好ましい。固体Yは粒子形態を有し、すなわち、遊離固体Yと、粒子X上に配置された固体Yとの両方が、粒子として形成されている。換言すれば、固体Yは層状ではなく、それは、閉じた層という意味でいかなる層又はコーティングも形成しない。したがって、しかし換言すれば、粒子Xは、単層又は多層コーティングを有さず、特に、その1つ又は複数の層が固体Yを含む又は固体Yからなる単層又は多層コーティングを有しない。
【0009】
粒子X上に配置された固体Yは、粒子Xに付着し、例えば洗浄又は振盪によって粒子Xから容易に分離することができない。粒子X上への固体Yの付着は本質的に実質的に物理的であるが、化学結合の可能な形成を排除することはできない。
【0010】
粒子Xは、単体銀及び単体ルテニウムを備えた、水不溶性の担体材料Tからなる粒子からなる。単体銀及び単体ルテニウムを備えていることは、銀及びルテニウムが、担体材料Tのタイプに応じて、担体材料粒子の内面(細孔及び/若しくはキャビティ内)、並びに/又は外面に存在することができ、それによって、例えば、連続若しくは不連続層、及び/又は小さな銀若しくはルテニウム粒子を形成することができることを意味する。銀及びルテニウムは、担体材料粒子の表面に付着し、付着は本質的に実質的に物理的であるが、化学結合の可能な形成を排除することはできない。銀及びルテニウムは合金化されておらず、むしろランダムに分布している。その表面上の銀及びルテニウムが、単体金属銀以外の他の銀種、及び単体金属ルテニウム以外の他のルテニウム種、例えば対応する酸化物及び/又はハロゲン化物及び/又は硫化物も含み得ることは、当業者には明らかである。単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xは、特に、1重量部~2,000重量部の銀:1重量部のルテニウムの範囲にある銀:ルテニウム重量比において、0.1重量%~50重量%の範囲にある銀+ルテニウムの重量割合を有し得る。
【0011】
粒子Xの水不溶性担体材料Tが凝集の固体状態で存在するという事実は、当業者には明らかである。
【0012】
担体材料粒子Tは、多種多様な粒子の形状を有することができる。例えば、それらは不規則な形状であってもよく、又はそれらは規定された形状を有してもよい。それらは、例えば、球状、楕円状、小板状、又は棒状であり得る。担体材料粒子Tは、多孔質であってもよく、及び/又はキャビティを有していてもよく、又はこれらのいずれでもなくてもよい。それらは、滑らかな、又は粗い、又は構造化された外面を有することができる。担体材料粒子は、例えば0.4μm~100μmの範囲の平均粒径(d50)を有することができる。担体材料粒子Tの絶対粒径は、一般に0.1μm未満であり、一般に1,000μmを超えない。
【0013】
本明細書で使用される用語「平均粒径」は、レーザー回折によって決定することができる平均粒径(d50)を意味する。レーザー回折測定は、対応する粒径測定装置、例えばMalvern Instruments製のMastersizer 3000を使用して行うことができる。
【0014】
水不溶性粒子状担体材料Tは、粒子間で、及び場合により粒子内で、例えば粒子表面の細孔内及び/又はくぼみ内にも、多かれ少なかれ大きな吸水能力を有する。水不溶性粒子状担体材料Tは、水で膨潤可能であってもよく、又は更にはヒドロゲルの形成が可能であってもよい。それは、水によって攻撃されず、溶解されず、又は担体材料Tとしてのその特性が損なわれない。水不溶性の実際の担体材料T自体は、好ましくは非撥水性材料である。それは、好ましくは親水性であるが、記載したように、いずれの場合においても水不溶性である。実際の担体材料Tは、無機又は有機の物質又は材料から選択される、各々の場合において粒子の形態、例えば粉末である材料であってもよい。誤解を避けるために、担体材料Tは、銀を含まずルテニウムを含まない物質、又は銀を含まずルテニウムを含まない材料である。担体材料Tは、磁性でも磁化可能でもないことが好ましく、それはカルボニル鉄ではない。タイプTの担体材料の例としては、ガラス;窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素;高融点酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、例えばシリカ又は石英としての二酸化ケイ素;ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト;プラスチック材料、例えば(メタ)アクリルホモ及びコポリマー並びにポリアミド;変性又は未変性の天然由来ポリマー、例えば多糖類及び多糖類誘導体、特にセルロース及びセルロース誘導体;炭素基材、特に多孔質炭素基材;並びに木材が挙げられる。粒子Xの水不溶性担体材料Tは、固体Yと同じであっても異なっていてもよい。二酸化ケイ素、二酸化チタン、及びセルロースが好ましい担体材料Tであり、セルロースの場合、特に、例えば10μm~1,000μmの範囲の繊維長を有する線状セルロース繊維の形態である。
【0015】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xは、自由流動性(非凝集性)粉末である。自由流動性粉末の自由流動性は、以下に述べる回転粉末分析法によって調べることができる。
【0016】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xは、例えば、国際公開第2021/084140(A2)号に開示されているような種類の材料などであってもよい。国際公開第2021/084140(A2)号はまた、単体銀及び単体ルテニウムを備えたタイプXの粒子状担体材料を調製する方法を開示している。簡潔にするために、この点に関して、この材料とこの調製方法との両方に関して、国際公開第2021/084140(A2)号、2頁、6行目~13頁、17行目の開示が明示的に参照される。
【0017】
本発明による粒子状材料Zは、単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xを、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム及び/又はチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドと、少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全な加水分解に少なくとも十分な量の水の存在下で接触させることによって製造することができる。この点において、本発明は、そのような調製方法にも関する。
【0018】
上述したように、本発明による粒子状材料Zは、粒子Xの存在下でのアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全加水分解によって調製することができ、すなわち、本発明による粒子状材料Zの調製方法は、粒子Xの存在下でのアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全加水分解を含む。換言すれば、本発明による粒子状材料Zを調製する方法は、粒子Xを、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドと、この少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全な加水分解に少なくとも十分な量の水の存在下で接触させることを含む。アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのC1~C4アルコキシドは、アルミニウムトリアルコキシドAl(OCnH2n+1)3、マグネシウムジアルコキシドMg(OCnH2n+1)2、カルシウムジアルコキシドCa(OCnH2n+1)2、ケイ素テトラアルコキシドSi(OCnH2n+1)4、亜鉛ジアルコキシドZn(OCnH2n+1)2、ジルコニウムテトラアルコキシドZr(OCnH2n+1)4、及び/又は好ましくはチタンテトラアルコキシドTi(OCnH2n+1)4であり、それぞれの場合にn=1、2、3又は4であり、好ましくは3である。n=3の好ましい場合、イソプロポキシド、特にTTIPとも呼ばれるチタンテトライソプロポキシドTi[OCH(CH3)2]4を用いて作業することが特に好ましい。TTIPは、好ましくは単独で使用される。加水分解は定量的に進行するので、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシド、並びに粒子Xに関して、化学量論的考察に従って定量的選択を行うことは、本発明による粒子状材料Zの調製を担当する当業者にとって簡単である。この完全な加水分解に関して、当業者は、加水分解されるマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛のC1~C4アルコキシド1モル当たり少なくとも1モルの水、加水分解されるアルミニウムのC1~C4アルコキシド1モル当たり少なくとも1.5モルの水、及びケイ素、ジルコニウム、又はチタンのC1~C4アルコキシド1モル当たり少なくとも2モルの水を選択するであろう。以下に説明するように、水は、大気水分として、粒子Xの水分含有量として、及び/又は液体形態で、少なくともこの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全な加水分解に少なくとも十分であるが、一般にこの加水分解反応に対して超化学量論的な量的割合である水の量で提供することができる。
【0019】
簡潔にするために、「アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又は好ましくはチタンのC1~C4アルコキシド」という表現は、以下では単に「アルコキシド」とも呼ばれる。
【0020】
本発明によれば、粒子Xは、少なくとも完全な加水分解に十分な量の水の存在下で、少なくとも1種のアルコキシドと接触させることができる。アルコキシドは加水分解されて、対応するC1~C4アルコールと、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される対応する固体Yとを形成する。これにより、固体Yは粒子Xに比例的に付着することができる。その結果、本発明による粒子状材料Zがプロセス生成物として形成される。加水分解後、得られた生成物は、必要であれば、1つ以上の更なるプロセスステップに供され得る。このようなプロセスステップの例としては、特に、固液分離、洗浄、乾燥、及び粉砕が挙げられる。
【0021】
本発明による方法、特にこの加水分解は、例えば、0℃~80℃、好ましくは20℃~40℃の温度範囲で行うことができる。
【0022】
本発明による方法の第1の実施形態では、粒子Xを少なくとも1種のアルコキシドと直接接触させることができる。本発明による方法のこの第1の実施形態では、粒子Xは、乾燥若しくは無水であってもよく、又は、例えば、残留水分の形態で、例えば0重量%超~40重量%の範囲の水の含水量を有してもよい。少なくとも1種のアルコキシドは、希釈せずに、又は水希釈性有機溶媒で希釈して、例えば、水希釈性有機溶媒中の溶液として使用することができる。そのような調製物又は溶液は、例えば、20重量%~100重量%未満、好ましくは50重量%~70重量%の範囲の少なくとも1種のアルコキシドの重量割合を有することができる。好適な水希釈性有機溶媒の例は、特にC1~C3アルコール、特にエタノールである。以下において、「任意選択で希釈された少なくとも1種のアルコキシド」は、簡潔にするために、更に短い形態の「少なくとも1種のアルコキシド」とも呼ばれる。
【0023】
本発明による方法の第1の実施形態では、水自体はいずれの時点でも添加されず、加水分解は、大気水分及び粒子X中に存在する任意の水分の影響下で起こり得る。大気水分は、当然、一般的な大気水分であってよく、又は所望の値に人工的に設定されてもよく、空気の進入は、所望であれば、意図的な空気供給によって強制的に成されてもよい。
【0024】
本発明による方法の第1の実施形態では、水分を有していてもよい粒子Xと、任意選択で希釈された少なくとも1種のアルコキシドとを互いに接触させて、パルプ状、ペースト状、若しくはドウ状の塊、懸濁液、又は好ましくは自由流動性含浸粒子状材料を形成する。任意選択で希釈された少なくとも1種のアルコキシドは、ここで含浸剤を構成する。粒子Xは、少なくとも1種のアルコキシドに添加することができ、又はその逆も可能である。少なくとも1種のアルコキシドは、好ましくは、予め供給された粒子Xに添加される。添加が終了した後、更なるプロセスステップが実施される前に、例えば0.5時間~3時間の範囲の時間を反応混合物に便宜上更に与えることができる。このようにして、加水分解反応の完全性及び反応混合物の均質化を確実にすることができる。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も行われる。適切な混合方法の例は、混合材料の性質に依存し、したがって、例えば、振盪、撹拌、及び/又は混練を含むことができる。自由流動性含浸粒子状材料の形態の混合材料の好ましい場合において、当業者に公知の連続的又は非連続的に操作する粉末混合方法、例えば、ドラムミキサー、タンブルミキサー、圧力なしで操作され、撹拌装置を有する圧力フィルター、又は真空フリー状態で操作され、加熱なしの真空混合乾燥機における混合が適切である。本明細書で使用される表現「自由流動性含浸粒子状材料」は、各々が1つ以上の粒子Xを含み得る含浸された粒又はフレークの形態の材料を表す。自由流動性含浸粒子状材料は、液体、液体分散液、又は懸濁液ではなく、むしろ、それは、自由流動性粉末の形態の自由流動性材料である。その自由流動性、又は一般に自由流動性粉末の自由流動性は、回転粉末分析によって調べることができる。この目的のために、円筒形の測定ドラムを所定の体積の自由流動性含浸粒子状材料で充填することができる。測定ドラムは所定の直径及び所定の深さを有する。測定ドラムは、所定の一定速度で水平に配向された円筒軸の周りを回転する。円筒形の測定ドラム内に充填された自由流動性含浸粒子状材料を共に封入する円筒の2つの端面のうちの1つは透明である。測定開始前に、測定ドラムを60秒間回転させる。実際の測定では、その後、回転中に、自由流動性含浸粒子状材料の画像を、測定ドラムの回転軸に沿って、例えば5画像/秒~15画像/秒の高フレームレートを有するカメラを使用して撮影する。カメラのパラメータは、材料-空気の界面において可能な限り高いコントラストが得られるように選択され得る。測定ドラムの回転中、自由流動性含浸粒子状材料は、重力に抗して特定の高さまで運ばれ、その後、ドラムの下部に落下する。落下は滑り落ちるよう(不連続)に生じ、雪崩とも呼ばれる。測定は、統計的に適切な数の雪崩、例えば200回~400回の雪崩の滑り落ちが記録されたときに終了する。続いて、自由流動性含浸粒子状材料のカメラ画像をデジタル画像解析によって評価する。回転粉末分析の間、いわゆる雪崩角並びに2つの雪崩の間の時間(「雪崩時間」)を、自由流動性に特徴的なパラメータとして決定することができる。雪崩角は、雪崩が発生する材料表面の角度であり、したがって、自由流動性粒子状材料の堆積の、この堆積が雪崩のように崩壊する前の高さの尺度を表す。2つの雪崩の間の時間間隔は、2つの雪崩の発生の間に経過した時間に相当する。この回転粉末分析を実施し、雪崩角及び2つの雪崩の間の時間間隔を決定するための適切なツールは、PS Prozesstechnik GmbH(Neuhausenstrasse 36、CH-4057 Basel)製のRevolution Powder Analyzerである。装置に同封された操作説明書及び推奨に従うことが推奨される。測定は通常、室温又は20℃で行われる。この場合、自由流動性含浸粒子状材料は、例えば40度~90度の範囲の雪崩角を有することができ、これは、この装置を毎分0.5回転で使用し、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有するシリンダを使用して、材料の100mL試験量に基づいて決定される。2つの雪崩の間の時間は、例えば2秒~5秒の範囲であり得、自由流動性含浸粒子状材料の自由流動性の特徴を構成し得る。
【0025】
本発明による方法の第1の実施形態では、粒子Xは、同じ方法で実施される多段階で少なくとも1種のアルコキシドと接触させることができ、すなわち、少なくとも1種のアルコキシドは、複数の部分で粒子Xの総量と接触させることができ、乾燥プロセスは、各場合において個々の段階の間で実施される。
【0026】
本発明による方法の第2の実施形態は、自由流動性粉末を構成する粒子が、それらが無水であるか又は含水率を有するかにかかわらず、粒子X’を得るために、最初に水で均一に湿らされるか又は更に水で湿らされるという点で第1の実施形態と異なる。したがって、粒子X’は、含水量又はより高い含水量のために粒子Xとは異なる。本発明による方法の第2の実施形態における更なる手順は、本発明による方法の第1の実施形態における手順に対応する。加湿の間、粒子X’の所望の含水量は、例えば1重量%~50重量%の範囲に設定することができる。それによって、それぞれの場合において混合物を形成するために、粒子Xを水に添加することができ、又はその逆も可能である。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も行われる。適切な混合プロセスの例は、混合される材料の性質に基づいており、したがって、例えば、振盪、撹拌、及び/又は混練を含むことができ、水で湿らせた自由流動性粒子状材料の形態の混合材料の好ましい場合において、当業者に公知の連続的又は不連続的に動作する粉末混合方法、例えば、本発明による方法の第1の実施形態において上述したものが適切である。好ましくは、水は、任意選択で水分を含有する予め供給された粒子Xに添加される。添加が終了した後、湿潤混合材料を少なくとも1種のアルコキシドと接触させる前に、例えば1時間までの範囲の時間を湿潤混合材料に更に便宜上与えてもよい。このようにして、混合材料の均質化又は均一な加湿を確実に行うことができ、換言すれば、このようにして、結果として生じる粒子X’内の水の均一な分布が、それらが少なくとも1種のアルコキシドとその後に接触させられる前に確実にされ得る。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も行われる。
【0027】
粒子X’の自由流動性は、上述の回転粉末分析によって調べることができ、粒子X’は、Revolution Powder Analyzerを毎分0.5回転で使用し、35mmの内部深さ及び100mmの内径を有するシリンダを使用して、100mLの試験量に基づいて決定される、例えば40度~90度の範囲の雪崩角を有することができ、2つの雪崩の間の時間は、例えば、2秒~5秒の範囲であり得る。
【0028】
本発明による方法の第2の実施形態では、粒子X’と少なくとも1種の任意選択で希釈されたアルコキシドとを互いに接触させて、パルプ状、ペースト状、又はドウ状の塊、懸濁液、又は好ましくは自由流動性含浸粒子状材料を形成する。少なくとも1種のアルコキシドは、含浸剤を構成する。粒子X’は、少なくとも1種のアルコキシドに添加することができ、又はその逆も可能である。少なくとも1種のアルコキシドは、好ましくは、予め供給された粒子Xに添加される。添加が終了した後、更なるプロセスステップが実施される前に、例えば0.5時間~3時間の範囲の時間を反応混合物に更に便宜上与えてもよい。このようにして、加水分解反応の完全性及び反応混合物の均質化を確実にすることができる。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も行われる。適切な混合プロセスの例は、混合される材料の性質に基づいており、したがって、例えば、振盪、撹拌、及び/又は混練を含むことができ、自由流動性粒子状材料の形態の混合材料の好ましい場合には、当業者に公知の連続的又は不連続的に動作する粉末混合方法、例えば、本発明による方法の第1の実施形態に関して既に述べた手順が適している。
【0029】
本発明による方法の第3の実施形態では、任意選択で水分を含有する粒子Xが、最初に、水及び水希釈性有機溶媒の水性媒体中に懸濁される。懸濁液は、例えば、50重量%~95重量%の水性媒体及び5重量%~50重量%の粒子Xからなっていてよく、重量百分率は合計で100重量%になる。水性媒体は、例えば、0重量%超~95重量%の水と、5重量%~100重量%未満の水希釈性有機溶媒とからなっていてよく、重量百分率は合計で100重量%になる。好適な水希釈性有機溶媒の例は、特にC1~C3アルコール、特にエタノールである。
【0030】
次いで、懸濁液と少なくとも1種の任意選択で希釈されたアルコキシドとを互いに接触させる。懸濁液を、少なくとも1種の任意選択で希釈されたアルコキシドに添加することができ、又はその逆も可能である。少なくとも1種の任意選択で希釈されたアルコキシドは、好ましくは、予め供給された懸濁液に添加される。添加は、連続的又は不連続的に行うことができる。添加が終了した後、更なるプロセスステップが実施される前に、例えば0.5時間~3時間の範囲の時間を反応混合物に更に便宜上与えてもよい。このようにして、加水分解反応の完全性及び反応混合物の均質化を確実にすることができる。概して、混合は、添加中、及びまた添加後も、例えば振盪及び/又は撹拌によって行われる。
【0031】
本発明による方法の第1及び第3の実施形態は、好ましい実施形態である。
【0032】
既に述べたように、加水分解後、得られたプロセス生成物は、必要に応じて、1つ以上の更なるプロセスステップに供され得る。このようなプロセスステップの例としては、特に、固液分離、洗浄、乾燥、及び粉砕が挙げられる。そのような更なるプロセスステップは、第2及び第3の実施形態の場合に行われるが、一般に、第1の実施形態の場合にも行われる。したがって、本発明による方法の第1の実施形態において、それは、連続的な乾燥及び粉砕が行われる場合、一般に好都合である。第2及び第3の実施形態では、洗浄及び固液分離が便宜上交互に実施され、次いで乾燥及び粉砕が順次実施される。
【0033】
固液分離は、当業者に公知の方法、例えば、デカンテーション、圧搾、濾過、吸引濾過、遠心分離、又は同様の操作方法を使用して行うことができ、液体(加水分解により形成されたC1~C4アルコール、水、水希釈性溶媒)を、加水分解の過程で形成又は洗浄された粒子状材料Zから少なくとも大部分分離することができる。その結果、まだ液体を含有する湿った粒子状材料Zが得られる。
【0034】
洗浄は、便宜上水で行われる。このプロセスでは、水溶性成分、例えば加水分解中に形成されたC1~C4アルコール及び/又は水希釈性有機溶媒を除去することができる。
【0035】
乾燥は、特別な手段なしに空気中の周囲条件下で行われてよく、又は減圧及び/若しくは熱の供給によって補助されてもよい。適切な乾燥温度は、例えば、50℃~150℃の範囲である。乾燥後、乾燥温度よりも高い温度での焼き戻しなどの更なる熱処理は必要ない。このような熱処理は、一般にかつ好ましくは行われない。
【0036】
粉砕は、例えば、乳鉢又は砕くこと(例えば、ロータービーターミルを使用する)によって行うことができる。
【0037】
本発明による方法は、生産規模において拡張可能であり、本発明による粒子状材料Zは、効率的に、例えば5トンまでの量のバッチサイズで製造することができる。
【0038】
本発明による粒子状材料Zは、国際公開第2021/084140(A2)号から抗菌添加剤として知られている材料に匹敵する抗菌活性を有する。したがって、本発明は、本発明による粒子状材料Zの、金属表面、コーティング剤、プラスター、成形ベース、プラスチックフィルム、プラスチック部品又はプラスチック繊維の形態のプラスチック材料、合成樹脂製品、イオン交換樹脂、シリコーン製品、セルロース系製品、発泡体、織物、化粧品、衛生用品、及び多くの他の物品の、抗菌処理のための添加剤としての、使用にも関する。それによって、セルロース系製品は、例えば、紙製品、板紙、木材繊維製品、及び酢酸セルロースからなる群から選択することができ、プラスチック材料は、例えば、ABSプラスチック材料、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリ乳酸、PU(ポリウレタン)、ポリ(メタ)アクリレート、PC(ポリカーボネート)、ポリシロキサン、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、それらのハイブリッドポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。原則として、抗菌性にされる材料又は物体の色は、この場合任意である。しかしながら、特に、抗菌性にされる材料又は物体は、明るい色を有するもの、例えば、50~90の範囲の明度L*を有する有彩色又は無彩色を有するものであり得る。それによって、抗菌性にされる材料又は抗菌性にされる物体に適合された色又は明度を有する本発明による粒子状材料Zを選択することが可能である。無色又は暗色の抗菌活性添加剤と組み合わせて本発明による粒子状材料Zを使用することも可能であり、例えば、本発明による粒子状材料Zを、単体銀及び単体ルテニウムを備えた抗菌活性粒子状担体材料(例えば、国際公開第2021/084140(A2)号から公知のもの)と組み合わせて使用することが可能である。
【実施例】
【0039】
参考例1(国際公開第2021/084140(A2)号の実施形態3に従った単体銀及び単体ルテニウムを備えたセルロース粉末の調製):
75.6g(445mmol)の硝酸銀固体、及び13.94gのニトロシル硝酸ルテニウム溶液(ルテニウム含有量19.0重量%、26.2mmolのRu)を416.8gの脱イオン水に溶解し、このようにして得られた前駆体水溶液を211.2gのセルロース粉末(Rettenmaier und Sohne GmbH&Co KG製のVitacel(登録商標)L-600)と均一に混合して、オレンジ色の自由流動性粒子状材料を形成した。pHが13.9のヒドラジン水溶液705mL[4.19g(131mmol)のヒドラジン、及び32重量%水酸化ナトリウム溶液81.81g(654.51mmolのNaOH)、残りは水]を、室温で、撹拌しながら30mL/分の計量添加速度で計量添加した。時間の経過と共に、撹拌がますます容易になる黒色の均質なパルプが形成された。計量供給が終了した後、窒素放出がもはや観察されなくなるまで、撹拌を30分間続けた。次いで、材料を吸引によって濾し取り、合計1,000mLの水で洗浄し、105℃/300mbarの乾燥キャビネット内で15重量%の残留含水量まで乾燥させた。最終生成物の銀含有量18.9重量%及びルテニウム含有量1.0重量%(残留水分0重量%に対して)を、ICP-OESによって決定した。
【0040】
最終生成物をメノウ乳鉢で粉砕し、このようにして得られた粉末は、人間の目には黒色に見えた。無色のスナップキャップバイアルに1cmの充填高さまで充填した後、分光光度計(ColorLite sph900分光計)を使用して、分光光度計の測定ヘッド上に配置されたスナップキャップバイアルのガラス底部を通してd/8°の測定ジオメトリで44のL*値を決定した。
【0041】
発明例2(Zタイプ粒子状材料の調製):
15重量%の残留水分を含有する参考例1からの黒色粉末50gを、最初に、周囲雰囲気と接触するように6Lフラスコ中に供給し、970mLのエタノールと35mLの脱イオン水との混合物中に懸濁させた。533.85gのTTIPを400mLのエタノールに溶解し、5mL/分の速度で撹拌懸濁液に添加し、次いで更に2時間撹拌した。次いで、得られた混合物を濾過し、得られた明灰色固体を7Lの脱イオン水で洗浄し、105℃で24時間(300mbar)乾燥させ、次いでメノウ乳鉢を用いて粉砕した。最終生成物の銀含有量4.3重量%及びルテニウム含有量0.2重量%(残留水分0重量%に対して)を、ICP-OESによって決定した。このようにして得られた粉末は、人間の目には明るい灰色に見えた。無色のスナップキャップバイアルに1cmの充填高さまで充填した後、分光光度計(ColorLite sph900分光計)を使用して、分光光度計の測定ヘッド上に配置されたスナップキャップバイアルのガラス底部を通してd/8°の測定ジオメトリで65のL*値を決定した。
【0042】
発明例3(Zタイプ粒子状材料の調製):
15重量%の残留水分を含有する参考例1からの黒色粉末50gを、105℃/300mbarで乾燥させた。得られた乾燥粉末をまず、周囲雰囲気と接触するように6Lフラスコに供給し、例2と同様に更に処理した。最終生成物の銀含有量4.3重量%及びルテニウム含有量0.2重量%(残留水分0重量%に対して)を、ICP-OESによって決定した。このようにして得られた粉末は、人間の目には明るい灰色に見えた。無色のスナップキャップバイアルに1cmの充填高さまで充填した後、分光光度計(ColorLite sph900分光計)を使用して、分光光度計の測定ヘッド上に配置されたスナップキャップバイアルのガラス底部を通してd/8°の測定ジオメトリで65のL*値を決定した。
【0043】
発明例4(Zタイプ粒子状材料の調製):
15重量%の残留水分を含有する参考例1からの黒色粉末10gを、撹拌しながら6.84gのTTIPと滴下混合した。空気を入れながら混合物を10分間撹拌した後、セラミックボウルに移し、105℃/300mbarで乾燥させた。得られた粉末をメノウ乳鉢を用いて粉砕した。この一連のステップを9回繰り返し、すなわち、68.4gのTTIPを全体として添加した。最終生成物の銀含有量6.5重量%及びルテニウム含有量0.3重量%(残留水分0重量%に対して)を、ICP-OESによって決定した。このようにして得られた粉末は、人間の目には明るい灰色に見えた。無色のスナップキャップバイアルに1cmの充填高さまで充填した後、分光光度計(ColorLite sph900分光計)を使用して、分光光度計の測定ヘッド上に置かれたスナップキャップバイアルのガラス底を通してd/8°の測定ジオメトリで56のL*値を決定した。
【0044】
発明例5(Zタイプ粒子状材料の調製):
15重量%の残留水分を含有する参考例1からの黒色粉末10gを、105℃/300mbarで乾燥させた。得られた乾燥粉末を例4と同じ方法で更に処理した。最終生成物の銀含有量6.5重量%及びルテニウム含有量0.3重量%(残留水分0重量%に対して)を、ICP-OESによって決定した。このようにして得られた粉末は、人間の目には明るい灰色に見えた。無色のスナップキャップバイアルに1cmの充填高さまで充填した後、分光光度計(ColorLite sph900分光計)を使用して、分光光度計の測定ヘッド上に置かれたスナップキャップバイアルのガラス底を通してd/8°の測定ジオメトリで、56のL*値を決定した。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる15重量%~50重量%の粒子Xと、前記粒子X上に少なくとも部分的に配置された50重量%~85重量%の固体Yとから構成される粒子状材料Zであって、前記固体Yが、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、粒子状材料Z。
【請求項2】
50~85の範囲の明度L*を有する色を有する、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項3】
前記固体Yが粒子として形成されている、請求項1又は2に記載の粒子状材料Z。
【請求項4】
前記粒子Xが、1重量部~2,000重量部の銀:1重量部のルテニウムの範囲にある銀:ルテニウム重量比において、0.1重量%~50重量%の範囲にある銀+ルテニウム重量割合を有する、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項5】
前記担体材料Tが、水で膨潤可能であるか、又はヒドロゲルを形成することができる、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項6】
前記担体材料Tが、ガラス、窒化物、高融点酸化物、ケイ酸塩、プラスチック材料、変性又は未変性の天然由来ポリマー、炭素基材、及び木材からなる群から選択される、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項7】
前記担体材料Tが、二酸化ケイ素、二酸化チタン、又はセルロースである、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項8】
前記担体材料Tが、前記固体Yと同じであるか又は異なる、請求項1に記載の粒子状材料Z。
【請求項9】
請求項1に記載の粒子状材料Zを調製する方法であって、単体銀及び単体ルテニウムを備えた水不溶性担体材料Tからなる粒子Xを、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又はチタンのうちの少なくとも1種のC1~C4アルコキシドと、前記少なくとも1種のC1~C4アルコキシドの完全な加水分解に少なくとも十分な量の水の存在下で接触させる、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のC1~C4アルコキシドが、チタンテトラアルコキシドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水が、大気水分として、粒子Xの水分含有量として、及び/又は液体形態で提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記完全な加水分解の後に得られた生成物を、固液分離、洗浄、乾燥、及び粉砕からなる群から選択される1つ以上の更なる処理ステップに供する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子Xを、前記少なくとも1種のアルコキシドと直接接触させるか、又は最初に水で均一に湿らせるか、又は最初に水及び水希釈性有機溶媒の水性媒体中に懸濁させる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の、又は請求項9に記載の方法に従って調製された粒子状材料Zの、抗菌性にされる材料又は物体の抗菌処理のための添加剤としての、使用。
【請求項15】
前記抗菌性にされる材料又は物体が、50~90の範囲の明度L*を有する有彩色又は無彩色を有する、請求項14に記載の使用。
【国際調査報告】