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特表2024-545858ハイパースペクトルイメージングを用いた多色眼内照明を使用した眼科情報の取得
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ハイパースペクトルイメージングを用いた多色眼内照明を使用した眼科情報の取得
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/12 20060101AFI20241206BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61B3/12
A61F9/007 200C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529527
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 IB2022062157
(87)【国際公開番号】W WO2023111858
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,538
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ジョン パーク
(72)【発明者】
【氏名】アショク バートン トリパシ
(72)【発明者】
【氏名】チン シアン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB06
4C316AB16
4C316FA08
4C316FB24
4C316FY02
4C316FY10
(57)【要約】
ある特定の実施形態では、眼科情報を取得するためのシステムは、光ファイバを有する照明デバイスと、ハイパースペクトル照明源と、コントローラと、変調デバイスと、撮像デバイスと、を含む。変調デバイスは、ハイパースペクトル照明源から発生した第1の光源光を受け取るように構成されている。第1の光源光は、複数の波長を含む。変調デバイスはまた、波長のそれぞれを異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光源光を発生させ、眼球組織と接触するように第2の光源光を放射する光ファイバに、第2の光源光を伝達するように構成されている。撮像デバイスは、第1の周波数変調波長と関連付けされた第1の周波数を選択し、第1の周波数変調波長が眼球組織と接触した結果として、眼球組織から戻る光を捕捉する。コントローラは、戻り光に基づいて眼球組織のパラメータを判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
光ファイバを含む照明デバイスと、
ハイパースペクトル照明源と、
コントローラと、
前記照明デバイス、前記ハイパースペクトル照明源、及び前記コントローラのそれぞれに結合された変調デバイスであって、
前記ハイパースペクトル照明源から発生した第1の光源光であって、複数の波長を含む前記第1の光源光を受け取るように構成され、
前記第1の光源光の前記複数の波長のそれぞれを異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光源光を発生させるように構成され、且つ、
前記光ファイバであって、前記照明デバイスからの前記光ファイバ内の前記第2の光源光を放射するように構成された前記光ファイバに前記第2の光源光を伝達して、眼球組織を照明するように構成された前記変調デバイスと、
第1の撮像デバイスであって、
前記第2の光源光の前記複数の周波数変調波長のうちの第1の周波数変調波長と関連付けされた少なくとも第1の周波数を選択するように構成され、且つ、
前記第2の光源光の前記第1の周波数変調波長が、前記眼球組織と接触した結果として、前記眼球組織からの第1の戻り光を捕捉するように構成された第1の撮像デバイスと、
を含むとともに、前記コントローラが前記第1の戻り光に基づいて、前記眼球組織の1つ又は複数のパラメータを判定するように構成されているシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
対物レンズを含む第2の撮像デバイスであって、
前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記第1の周波数に基づいて前記対物レンズの焦点距離を調節するように構成され、且つ、
前記調節された焦点距離を有する前記対物レンズを通り抜ける前記第1の戻り光に基づいて前記眼球組織の拡大画像を生成するように構成された前記第2の撮像デバイスを更に含むシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記第1の戻り光が前記第2の撮像デバイスを通り抜けた後に、前記第1の撮像デバイスが前記第1の戻り光を捕捉するように構成されているシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記第1の周波数が、(i)前記第1の撮像デバイスの1つ又は複数のパラメータ、(ii)前記眼球組織の標的反射層、又は、(iii)前記第1の周波数変調波長と関連付けされた波長のうちの少なくとも1つに基づいて選択されるシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスの前記1つ又は複数のパラメータが、(i)シャッタ周波数、(ii)フレームタイム、又は、(iii)口径、のうちの少なくとも1つを含むシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスが、前記第1の戻り光を捕捉する前に、前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記選択された第1の周波数にロックオンするように更に構成されているシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスが、前記選択された第1の周波数と関連付けされたシャッタ周波数にロックオンすることによって、前記第1の周波数と関連付けされた前記選択された第1の周波数にロックオンするように構成されているシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記眼球組織の前記1つ又は複数のパラメータが、(i)厚さ、又は、(ii)粗さ、のうちの少なくとも1つを含むシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスが、
前記第2の光源光の前記複数の周波数変調波長の第2の周波数変調波長と関連付けされた少なくとも第2の周波数を選択するように更に構成され、且つ、
前記第2の光源光の前記第2の周波数変調波長が前記眼球組織と接触した結果として前記眼球組織からの第2の戻り光を捕捉するように更に構成されているシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスが、
前記第1の戻り光に基づいて、前記眼球組織の第1の画像を生成するように更に構成され、且つ、
前記第2の戻り光に基づいて、前記眼球組織の第2の画像を生成するように更に構成されているシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記コントローラが、前記第1の画像及び前記第2の画像に基づいて、前記眼球組織と関連付けされたトポグラフィ情報を生成するように構成されているシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記トポグラフィ情報が、前記第1の画像と前記第2の画像との画像オーバレイを含むシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1の撮像デバイスが、ハイパースペクトルイメージングカメラであるシステム。
【請求項14】
光学系を動作させる方法であって、
ハイパースペクトル照明源から発生した第1の光源光であって、複数の波長を含む前記第1の光源光を受け取ることと、
前記第1の光源光の前記複数の波長のそれぞれを異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光源光を発生させることと、
前記第2の光源光を照明デバイスの光ファイバに伝達し、これにより、前記光ファイバ内の前記第2の光源光が放射されて、眼球組織を照明するようにすることと、
第1の撮像デバイスを用いて、前記第2の光源光の前記複数の周波数変調波長のうちの第1の周波数変調波長と関連付けされた少なくとも第1の周波数を選択することと、
前記第1の撮像デバイスを用いて、前記第2の光源光の前記第1の周波数変調波長が前記眼球組織と接触した結果として、前記眼球組織からの第1の戻り光を捕捉することと、
前記第1の戻り光に基づいて前記眼球組織の1つ又は複数のパラメータを判定することと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記第1の周波数に基づいて、第2の撮像デバイスの対物レンズの焦点距離を調節することと、
前記第2の撮像デバイスを用いて、前記調節された焦点距離を有する前記対物レンズを通り抜ける前記第1の戻り光に基づいて、前記眼球組織の拡大画像を生成することと、
を更に含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記第1の戻り光が前記第2の撮像デバイスを通り抜けた後に、前記眼球組織からの前記第1の戻り光が、前記第1の撮像デバイスを用いて捕捉される方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記第1の周波数が、(i)前記第1の撮像デバイスの1つ又は複数のパラメータ、(ii)前記眼球組織の標的反射層、又は、(iii)前記第1の周波数変調波長と関連付けされた波長、のうちの少なくとも1つに基づいて選択される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記第1の撮像デバイスの前記1つ又は複数のパラメータが、
(i)シャッタ周波数、(ii)フレームタイム、又は、(iii)口径、のうちの少なくとも1つを含む方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、前記第1の撮像デバイスを用いて、前記第1の戻り光を捕捉する前に、前記第1の周波数変調波長と関連付けされた前記選択された第1の周波数にロックオンすることを更に含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記第1の周波数と関連付けされた前記選択された第1の周波数にロックオンすることが、前記選択された第1の周波数と関連付けされたシャッタ周波数にロックオンすることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、眼科情報の取得に関し、より具体的には、ハイパースペクトルイメージングを用いた多色眼内照明を使用して眼球に関する眼科情報を取得するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの顕微鏡手術の処置では、様々な身体組織の精密な切断及び/又は切除が必要とされる。例えば、網膜切開術、網膜切除術、自家網膜移植術、及び硝子体手術などの網膜硝子体処置では、網膜、硝子体液、牽引帯、及び膜などの眼内組織の切断、切除、剥離、層間剥離、凝固、又は他の操作が一般的に必要とされる。
【0003】
これらの眼内組織の多くは、視覚を可能にする上で非常に重要な役割を果たしている。例えば、網膜、又は眼球の後壁を裏打ちする最内側層は、外部環境からの視覚刺激を受け取り、変調し、視神経、最後には脳の視覚野に伝達する役割を担っている。構造上、網膜は、複雑で繊細な組織であり、多くのタイプの細胞が複数の細胞層に配列されている。視覚における網膜の役割及びそのもろさに起因して、網膜に対する損傷により、視力が激しく失われ、又は永久的な失明に至ることさえあり得る。そのため、網膜の切断、切除、又は他の操作は、網膜の不要な外傷を回避するために細心の注意を払って行わなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現時点では、手術中の視覚化及びデータ獲得は、依然としてある程度制限されている。例えば、既存の撮像システムには、手術中に眼球組織/構造を操作するために使用される器具(例えば、鉗子、レーザ、プローブ、等々)の使用時に、リアルタイムでの調節を可能にし得る眼球組織/構造、及び/又は治療結果のスペクトルパラメータに関連するその場で測定された情報を手術医に提供する性能が欠けている。例示的な撮像システムの1つは、眼科走査デバイスからの走査データに基づいて光コヒーレンス断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)画像を生成することができる。しかしながら、OCT画像から眼球の部位、構造、及び/又は組織を識別することは、OCT画像のある特定の内在する特性に起因する様々な課題をもたらす。例えば、OCT画像は、スペックル雑音、低信号対雑音比(SNR)、及び/又は他の画像妨害の影響を被る場合があり、これにより、眼球の様々に異なる構造又は組織のパラメータ(例えば、厚さ、粗さ、等々)識別し、判定する際の困難度が増す可能性がある。
【0005】
したがって、様々な眼球組織/構造と関連付けされた眼科情報を眼科処置中に取得するためのシステム、デバイス、及び方法を改良することが有益な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある特定の実施形態では、システムが提供される。システムは、光ファイバを含む照明デバイスと、ハイパースペクトル照明源と、コントローラと、照明デバイス、ハイパースペクトル照明源、及びコントローラのそれぞれに結合された変調デバイスと、を含む。変調デバイスは、ハイパースペクトル照明源から発生した第1の光源光を受け取るように構成されている。第1の光源光は、複数の波長を含む。変調デバイスはまた、第1の光源光の複数の波長のそれぞれを異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光源光を発生させるように構成されている。変調デバイスは、第2の光源光を光ファイバに伝達するように更に構成されている。光ファイバは、照明デバイスから光ファイバ内の第2の光源光を放射して、眼球組織を照明するように構成されている。第1の撮像デバイスは、第2の光源光の複数の周波数変調波長のうちの第1の周波数変調波長と関連付けされた少なくとも第1の周波数を選択するように構成されている。第1の撮像デバイスはまた、第2の光源光の第1の周波数変調波長が眼球組織と接触した結果として眼球組織から戻る第1の光を捕捉するように構成されている。コントローラは、第1の戻り光に基づいて眼球組織の1つ又は複数のパラメータを判定するように構成されている。
【0007】
ある特定の実施形態では、方法が提供される。方法は、ハイパースペクトル照明源から発生した第1の光源光を受け取ることを含む。第1の光源光は、複数の波長を含む。方法はまた、第1の光源光の複数の波長のそれぞれを異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光源光を発生させることを含む。方法はまた、第2の光源光を照明デバイスの光ファイバに伝達し、これにより、光ファイバ内の第2の光源光が放射されて、眼球組織を照明するようにすることを含む。方法はまた、第1の撮像デバイスを用いて、第2の光源光の複数の周波数変調波長のうちの第1の周波数変調波長と関連付けされた少なくとも第1の周波数を選択することを含む。方法はまた、第1の撮像デバイスを用いて、第2の光源光の第1の周波数変調波長が眼球組織と接触した結果として眼球組織から戻る第1の光を捕捉することを含む。方法は、第1の戻り光に基づいて眼球組織の1つ又は複数のパラメータを判定することを更に含む。
【0008】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明を、実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示すに過ぎず、したがって本発明の範囲を限定するものと考えてはならず、他の同様に有効な実施形態も可能であることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ある特定の実施形態による、眼科情報を取得するためのシステムの一例を図示する。
図2図2は、ある特定の実施形態による、眼科情報を取得するための方法のフローチャートである。
図3図3は、ある特定の実施形態による、眼球組織内への異なる照明波長の吸収の一例を図示する。
図4図4は、ある特定の実施形態による、撮像カメラの動作のタイムラインの一例を図示する。
図5A図5Aは、ある特定の実施形態による、眼科情報を取得するための順序の一例を図示する。
図5B図5Bは、ある特定の実施形態による、眼科情報を取得するための順序の一例を図示する。
図5C図5Cは、ある特定の実施形態による、眼科情報を取得するための順序の一例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にすべく、可能な場合、各図に共通する同一要素を指定するために同一の参照符号を用いた。ある1つの実施形態要素及び特徴が、更に言及することなく他の実施形態に有利に組み込まれる場合も考えられる。
【0011】
本明細書に記載の実施形態は、ハイパースペクトルイメージングを用いた多色眼内照明を使用して、手術中の眼科処置の間に患者の眼球に関する眼科情報を取得するための光学系、デバイス、及び技法を提供する。眼科情報は、治療に関連する眼球組織/構造のパラメータ、疾患状態に関連する眼球組織/構造のパラメータ、様々な眼球組織/構造のトポグラフィマップ、等々を含むことができるが、それらに限定されない。本明細書で使用する際、「情報」及び「データ」という用語は、定性的観察及び/又は定量的データを指すように、互換的に使用することができる。
【0012】
本明細書に記載の例示的な光学系は、照明源と、1つ又は複数の撮像デバイスと、を含むことができる。眼内照明器など、照明源に結合された照明デバイスを眼球のチャンバ(例えば、眼底)に挿入して、チャンバ内の眼球の特定の領域又は部位を照明することができる。例えば、照明デバイスは、照明光(本明細書では「光源光」とも呼ばれる)を、手術処置の間に網膜の所望の場所/表面上に投影することができる。
【0013】
撮像デバイスは、手術処置の間に照明光が眼球の所望の場所/表面上に投影される結果として眼球組織/構造から戻る光(本明細書では「戻り光」又は「後方への光」とも呼ばれる)を受け取るように構成することができる。例えば、第1の撮像デバイス(例えば、顕微鏡)は、眼球の所望の場所/表面の視覚化を容易にすることができる。追加的に、第2の撮像デバイス(例えば、ハイパースペクトル(イメージング)カメラなどのカメラデバイス)は、第1の撮像デバイスの視野(FOV:field-of-view)を通して眼球の所望の場所/表面の画像を捕捉することができる。
【0014】
ある特定の実施形態では、照明デバイスは、波長の範囲にわたって、様々な異なる周波数において照明光を投影することができる。例えば、光学系は、照明光の各波長を異なる周波数で変調することができ、これにより、眼球の所望の場所/表面上に投影された照明光は、異なる周波数において複数の異なる波長を含むようになっている。
【0015】
ある特定の実施形態では、第2の撮像デバイスは、複数の波長の照明光を用いて照明される眼球の標的場所/表面の画像を捕捉することができる。例えば、第2の撮像デバイスは、照明光の異なる変調周波数にロックインして、それぞれの変調周波数と関連付けされた照明光の波長において眼球の標的場所/表面の画像を捕捉することができる。このやり方で照明光の特定の変調周波数を標的にすると、捕捉した画像内の眼球の標的場所/表面のSNRを向上させることができる。
【0016】
ある特定の実施形態では、光学系は、第2の撮像デバイスによって標的にされている異なる変調周波数に基づいて、第1の撮像デバイスの焦点位置(例えば、焦点距離)を制御することができる。このやり方で第1の撮像デバイスの焦点位置を制御すると、複数の放射波長に起因して生じた色収差を低減(又は除去)することができる。
【0017】
ある特定の実施形態では、光学系は、本明細書に記載の技法を使用して捕捉された画像に基づいて、様々な眼球組織/構造と関連付けされた眼科情報を判定することができる。いくつかの場合では、眼科情報は、疾患の診断書及び/又はステージ評価において使用される眼球組織/構造の1つ又は複数のパラメータに関連させて、これにより、追加のデータポイントを提供して、診断精度を高めることができる。参照例として、本明細書に記載の光学系は、疾患及び/又は疾患のステージを示すものとなり得る様々な眼球組織/構造の摩耗、断裂、等々の量を表示し得るパラメータ(例えば、厚さ)を提供することができる。
【0018】
いくつかの場合では、眼科情報は、眼球組織/構造の1つ又は複数のパラメータに関連させることができることで、眼球組織/構造に関する追加の情報を手術医に提供することができ、これにより、手術処置の安全性及び/又は有効性を高めることができる。参照例として、内境界膜(ILM)切除、及び黄斑上膜(ERM)切除など、ある特定の眼科手術処置では、鉗子を使用する手術医は、第1の眼組織を把持し、第2の眼組織から、組織の少なくとも1つに外傷をもたらすことなく分離する(又は剥離する)ことが必要な場合がある。これらの手術処置において、本明細書に記載の光学系は、眼組織の場所、厚さ及び/又は粗さに関する正確な情報を手術医に提供することができる。ある特定の実施形態では、このような情報は、眼組織のトポグラフィマップの形で提供することができる。例えば、光学系は、複数の波長における眼球組織/構造の複数の画像を重ね合わせて、トポグラフィマップを生成することができる。
【0019】
以下の実施形態の多くは、本明細書に記載の光学系を使用して判定し得る眼球組織のパラメータの参照例として、厚さ及び粗さを使用しているが、実施形態は、このようなパラメータに限定されず、他のタイプの眼球組織/構造のパラメータを含み得ることに留意されたい。更に、本明細書で使用する際、「戻り光」という用語は、反射、散乱、蛍光、自己蛍光、ラマンスペクトル、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0020】
図1は、一実施形態による、患者の眼球と関連付けされた眼科情報を取得するためのシステム100を図示する。システム100は、光学系130と、光学系130に結合された照明デバイス108(プローブとも呼ばれる)と、を含む。光学系130は、1つ又は複数の光源104と、変調デバイス114と、コントローラ106と、撮像デバイス142と、撮像デバイス144と、を含む。
【0021】
光源104は、眼科処置の間に使用し得るレーザ光線及び/又は照明光線を生成することができる。例えば、光源104は、レーザ光線と照明光線とを交互に、順次、又は同時に生成することができる。手術医又は手術スタッフメンバーなどのユーザは、網膜硝子体手術などの眼科処置の間にレーザ光線及び/又は照明光線を放射するために、光学系130を(例えば、フットスイッチ、音声コマンド、等々を介して)制御することができる。ある特定の実施形態では、光学系130は、ポートと、光源104から、ポートを通して、照明デバイス108の内部に部分的に収容された光ファイバ152-2内に放射することができるレーザ光線及び/又は照明光線を含む。
【0022】
光学系130は、ポートから、光ファイバ152-2を介して照明デバイス108にレーザ光線及び/又は照明光線を送達する。示されているように、照明デバイス108は、ハンドピース、又はプローブ本体110を含む。照明デバイス108は、ハンドピース110の遠位端に結合された先端部140もまた含む。本明細書では、構成要素の遠位端は、患者の身体により近い端部又はレーザ光及び/若しくは照明光が照明デバイスから放射されるところを指すことに留意されたい。他方で、構成要素の近位端は、患者の身体から離れる方を向くか、又は例えば、光源に近接する端部を指す。先端部140は、先端部140の全長にわたって延びるチューブ112を含む。ある特定の実施形態では、チューブ112は、円筒状の中空管である。本明細書には示されていないが、光ファイバ152-2は、レーザ光及び/又は照明光をチューブ112の遠位端に伝達するために、チューブ112の全長にわたって延びている。
【0023】
手術中、手術医は、ハンドピース110を使用して、チューブ112を患者の眼球120内に案内する。チューブ112は、チューブ112の近位端が眼球120の外部に配置されるように、眼球120の中に一部分のみが挿入される。光源104は、光線150を生成し、この光線は、チューブ112によって、網膜表面122など、眼球120の所望の場所/表面に向けられる(又は投影される)。ある特定の実施形態では、照明デバイス108は、眼内照明デバイスである。
【0024】
光源104は、レーザ源(コヒーレント光源)、及び/又は照明源(インコヒーレント光源)を含むことができる。ある特定の実施形態では、照明源は、LEDベースの照明器を含む。ある特定の実施形態では、照明源は、広帯域光源又はハイパースペクトル光源を含む。ハイパースペクトル光は、例えば、赤外線光及び紫外線光を含む可視スペクトルを超える光を指す場合がある。ある特定の実施形態では、光源104は、コンソール(図示せず)と一体化されている。いくつかの他の実施形態では、光源104は、スタンドアロン型の光源である。
【0025】
変調デバイス114は、概して、光源104から受け取った照明光の周波数変調を実行するように構成されている。図1に示されている実施形態では、変調デバイス114は、光ファイバ152-1を介して光源104に光学的に結合され、光ファイバ152-2を介して照明デバイス108に光学的に結合されている。ある特定の他の実施形態では、変調デバイス114及び光源104は、他の構成を通して一緒に結合させることができる。ある特定の実施形態では、変調デバイス14は、光源104から放射された照明光の各波長を異なる周波数で変調する。すなわち、変調デバイス114は、光ファイバ152-1を介して照明光の1つ又は複数の波長を受け取り、光ファイバ152-2を介して照明光の1つ又は複数の周波数変調波長を出力する。ある特定のこのような実施形態では、先端部140から網膜表面122上に向けられた光線150は、光ファイバ152-2を介しての照明光の1つ又は複数の周波数変調波長を含むことができる。
【0026】
光ファイバ152-1、151-2はともに、光源104から照明デバイス108にレーザ光及び/又は照明光を伝達することが可能である。ある特定の実施形態では、光ファイバ152のある特定の部分は、ケーブルの内部に配置することができる。例えば、照明デバイス108の外部に位置する光ファイバ152-2の一部分は、外側スリーブ内に配置することができ、一方、外側スリーブのないファイバだけが、照明デバイス108の内部に配置される。ある特定の実施形態では、変調デバイス114は、電気光学変調器である。変調デバイス114の動作は、コントローラ106を介して制御することができる。これについて以下でより詳細に説明する。
【0027】
システム100は、光源光を伝達するために光ファイバ152を使用し、戻り光を伝達するために空きスペースを使用する。例えば、光線150は、先端部140から眼球内部の組織/構造(例えば、網膜表面122)上に向けられ、戻り光(例えば、眼球内部の組織/構造から反射された光の少なくとも一部分)は、撮像デバイス142及び撮像デバイス144によって収集される。撮像デバイス142(例えば、顕微鏡)は、概して、眼球内部の組織/構造を大きくして見ることができるように構成されている。例えば、撮像デバイス142は、眼球内部の組織/構造の拡大画像(例えば、デジタル画像)を生成することができ、観察者(例えば、手術医)が組織/構造をより近くで見ることができるようにする。ある特定の実施形態では、撮像デバイス142の焦点位置(例えば、焦点距離)は、照明光の放射波長の変調周波数のうちの1つ又は複数に基づいて補償される。例えば、焦点位置は、反射照明光の複数の波長に起因して生じた色収差を低減する(又は除去する)ために、(例えば、コントローラ106によって)調節することができる。
【0028】
撮像デバイス144(例えば、ハイパースペクトルカメラ)は、概して、戻り光に基づいて眼球(例えば、網膜表面122)の内部の標的組織/構造の画像を生成する(例えば、捕捉する)ように構成されている。ある特定の実施形態では、撮像デバイス144は、照明光(例えば、光線150)の放射波長の特定の変調周波数を選択し、選択された変調周波数にロックオンするように構成されている。選択された変調周波数にロックオンした後に、撮像デバイス144は、選択された変調周波数と関連付けされた照明光の波長において標的組織/構造の画像を捕捉することができる。撮像デバイス144への入力は、撮像デバイス142によって提供される。
【0029】
ある特定の実施形態では、撮像デバイス144の動作及び撮像デバイス142の動作は、(例えば、コントローラ106を介して)同期させることができる。例えば、コントローラ106は、撮像デバイス142をトリガして、撮像デバイス142によってロックオンされた変調周波数と関連付けされた焦点距離に、その焦点位置を調節することができる。焦点位置が調節されたら、コントローラ106は、撮像デバイス144をトリガして、撮像デバイス142のFOVを通して眼球内部の標的組織/構造の画像を捕捉することができる。
【0030】
ある特定の実施形態では、撮像デバイス142及び撮像デバイス144は、1つ又は複数の異なる波長の異なる変調周波数にわたって時間ベースのスペクトル掃引を実行することができる。これらの実施形態では、スペクトル掃引は、撮像デバイス144のシャッタ周波数に基づくことができる。
【0031】
図1は、光学系130の参照例を図示しており、他の実施形態では、光学系130は、異なる構成を有する場合があることに留意されたい。例えば、図1は光学系130内にある撮像デバイス142、144、及び光源104を描いているが、いくつかの実施形態では、撮像デバイス142、144、及び/又は光源104は光学系130とは別個のものである場合がある。参照例として、光源104は、手術コンソール内に含まれている場合があり、撮像デバイス142、144は、デジタル顕微鏡の一部である場合がある。更に、図1は、別個のデバイスとして撮像デバイス142、144を描いているが、いくつかの実施形態では、撮像デバイス142、144の動作は、単一のデバイス(図1では光受信器132として描かれている)によって実装される場合があることに留意されたい。例えば、ある特定の実施形態では、光受信器132は、光学部品(例えば、対物レンズ)と、画像を出力するデジタルカメラと、を含むデジタル顕微鏡である。
【0032】
ディスプレイ136は、コントローラ106と、撮像デバイス144及び142と、に結合されている。ディスプレイ136は、照明デバイス108、及び撮像デバイス142、144を使用して取得された眼科情報を含む、眼球120と関連付けされた眼科情報を手術医に表示することが可能である。図示されている実施形態では、ディスプレイ136は、撮像デバイス144、及び光学系130とは別個のものである。いくつかの他の実施形態では、ディスプレイ136は、撮像デバイス144又は光学系130と一体化されたものである。ある特定の実施形態では、ディスプレイ136は、拡張現実ディスプレイを含む。ある特定の実施形態では、ディスプレイ136は、仮想現実ディスプレイを含む。ある特定の実施形態では、ディスプレイ136は、手術医に奥行き情報を提供する3次元ディスプレイを含む。ある特定の実施形態では、ディスプレイ136は、撮像デバイス144によって捕捉された画像を受け取り、観察のためにこの画像を提示する。ある特定の実施形態では、ディスプレイ136は、コントローラ106から情報を受け取り、観察のためにこの情報を提示する。このような情報は、例えば、撮像デバイス144によって捕捉された画像に基づいてコントローラ106によって生成されたトポグラフィ情報を含むことができる。
【0033】
プログラム可能なコンピュータなどのコントローラ106は、概して、本明細書に記載の1つ又は複数の動作を実行して、眼球120と関連付けされた眼科情報を生成(又は取得)し、表示するように構成されている。コントローラ106は、光源104、撮像デバイス142、144、変調デバイス114、及びディスプレイ136のうちの1つ又は複数に結合されている。例えば、コントローラ106は、光源104、撮像デバイス142、144、変調デバイス114、及び/又はディスプレイ136を直接制御するか、又はそれらと関連付けされた他のコントローラを間接的に制御して、光学系130の動作を制御することができる。動作中、コントローラ106は、光学系130の動作を調整するために、それぞれの構成要素からのデータ獲得及びフィードバックを可能にすることができる。
【0034】
コントローラ106は、プログラム可能な中央処理装置(CPU)170を含むが、これは、メモリ172(例えば、不揮発性メモリ)及びサポート回路174を用いて動作可能である。サポート回路174は、通常、CPU170に結合され、光学系130の様々な構成要素に結合されたキャッシュ、クロック回路、入力/出力サブシステム、電源など、及びそれらの組み合わせを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、CPU170は、様々なモニタリングシステムの構成要素及びサブプロセッサを制御するためのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)など、産業用の設定で使用される任意の形式の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つである。メモリ172は、CPU170に結合されており、典型的には、揮発性又は不揮発性メモリを含む容易に入手可能なメモリのうちの1つ又は複数である。例えば、メモリ172は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスクドライブ、ハードディスク、又は任意の他の形式のローカル若しくはリモートのデジタルストレージとすることができる。
【0036】
本明細書では、メモリ172は、CPU170によって実行されると、光学系130の動作を促進する命令を格納する。メモリ172内の命令は、本開示の方法を実装するプログラムなどのプログラム製品(例えば、ミドルウェアアプリケーション、装置のソフトウェアアプリケーション、等々)の形式をしている。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている光学系は、眼科情報(例えば、厚さ、粗さ、等々といったような、眼球組織/構造と関連付けされたパラメータ)を判定することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている光学系は、光学系の1つ又は複数の構成要素(例えば、撮像デバイス142、144)を使用して捕捉された画像に基づいて、眼科情報(例えば、トポグラフィ情報)を生成することができる。本明細書に開示されている方法は、提供されている光学系の実施形態のうちの1つ又は複数を使用して行うことができ、したがって、光学系130は、以下の例では説明目的でのみ記載されていることに留意されたい。
【0037】
図2は、一実施形態による、眼科情報を取得するための方法200のフローチャートである。方法200は、システム(例えば、システム100)の1つ又は複数の構成要素によって実行することができる。
【0038】
方法200は、ブロック202から始められる。このブロックでは、システムは、複数の波長を有する第1の光線を生成する。例えば、光源104は、複数の異なる波長を有する第1の光線(例えば、照明光)を生成し、出力することができる。言及したように、ある特定の実施形態では、光源104は、広帯域光源である。ある特定の実施形態では、光源104は、ハイパースペクトル光源である。これらの実施形態では、第1の光線は、可視光線スペクトル内(例えば、およそ380から750ナノメートル(nm))の波長、近赤外線スペクトル内(例えば、およそ800から2,500nm)の波長、及び/又は中赤外線スペクトル(例えば、およそ0.8から1000nm)内の波長を含むことができる。
【0039】
ある特定の実施形態では、第1の光線の波長は、観察及び/又は相互作用されている眼球組織/構造に基づくことができる。例えば、照明光の異なる波長は、特定の波長に応じて、眼球組織/構造への浸透(又は吸収)が異なる場合がある。例えば、およそ400から500nmの間の波長であれば、網膜の表層、神経線維層及び内境界膜、並びに蛍光網膜成分(例えば、黄斑内の帯黄色フィルタとして機能する光受容体色素のカロテノイド、外節では蓄積され、網膜色素上皮(RPE:retinal pigment epithelium)では濃縮するリポフスチン)を観察できる場合がある。およそ500から700nmの間の波長であれば、網膜血管層を観察し、動脈と静脈(酸素化血液と脱酸素化血液)とを区別できる場合がある。ここでは、ヘモグロビンスペクトルのシグネチャが、定性的酸素飽和度マップ及び定量的酸素飽和度マップの両方を提供することができる。このデータは、糖尿病などの全身性疾患による網膜虚血、又は局所的な網膜の動脈及び血管閉塞による網膜虚血のいずれかをモニタリングするために使用することができる。およそ600nmを超える波長であれば、主要な網膜色素であるメラニンを観察できる場合がある。これらの波長における画像は、下にあるRPEなど、この色素を含んでいる網膜構造の視覚化を強化することができる。およそ732から865nmの間の波長であれば、最深網膜及び表層の脈絡膜血管系(CV)の酸素化に関する情報を提供できる場合がある。およそ955から1213nmの間の波長であれば、脈絡膜及び強膜、RPEの先天性肥大、脈絡膜破裂、並びに黒色腫を観察できる場合がある。いくつかの場合には、脂質(又は晶洞の成分)は、近赤外線スペクトルで水の吸収を超える吸収ピークを示す場合があり、したがって、より長い波長で撮影された画像は、加齢黄斑変性症の研究では適切な可能性がある。追加的又は代替的に、ある特定の実施形態では、第1の光の波長は、撮像デバイス144(例えば、ハイパースペクトルカメラ)のスペクトル感度に基づくことができる。例えば、撮像デバイス144は、λ>λである場合に、λからλの間の波長(λ)を検出することができると仮定すると、第1の光線の波長は、λからλの間にあり得る。
【0040】
ブロック204では、システムは、第1の光線の各波長を異なる周波数で変調して、複数の周波数変調波長を有する第2の光線を生成する。例えば、変調デバイス114は、光源104から出力された第1の光線を受け取ることができ、周波数変調波長を有する第2の光線を出力することができる。第1の光線の各波長λは、異なる変調周波数fに設定して、どの波長が照明されているのかをシステムが認識できるようにすることができる。これによって、次に撮像デバイス144は、関心のある特定の波長を標的にすることができ、これにより、捕捉した画像内の標的眼球組織/構造のSNRが向上される。
【0041】
ある特定の実施形態では、異なる波長を変調するために使用される周波数の設定は、撮像デバイス144(例えば、ハイパースペクトルカメラ)の1つ又は複数のパラメータに基づくことができる。例えば、周波数の設定は、撮像デバイス144のシャッタ速度(又は露光時間)に基づいて選択することができる。例示的な一実施形態では、照明変調周波数は、フレーム率がシャッタ時間に基づく撮像デバイス144のフレーム率よりも大きい場合がある。いくつかの実施形態では、光源104のターンオン時間は、撮像デバイス144のフレーム時間よりも短い場合がある。
【0042】
ブロック206では、システムは、眼球に挿入される照明デバイス(例えば、照明デバイス108)に結合された光ファイバ(例えば、光ファイバ152)を介して、(複数の周波数変調波長を有する)第2の光線を眼球(例えば、眼球120)の標的部位(例えば、網膜表面122)上に投影する。ある特定の実施形態では、照明デバイスは、第2の光線の複数の周波数変調波長を同時に投影する眼内照明器とすることができる。ある特定の実施形態では、照明デバイスは、複数の周波数変調波長を順次(例えば、時間の各インスタンスに1つの波長を)投影する眼内照明器とすることができる。
【0043】
ブロック206の後、ブロック208、210、212及び214における動作は、各変調周波数について実行される。ブロック208では、システムは、第1の撮像デバイス(例えば、撮像デバイス144)を使用して変調周波数を選択し、この周波数にロックオンする。ある特定の実施形態では、周波数の選択は、撮像デバイス144の口径に基づくことができる(例えば、撮像デバイス144の口径は、撮像デバイス144のシャッタ速度に反比例し、その逆も当てはまる)。ある特定の実施形態では、周波数の選択は、標的眼球組織/構造のスペクトルパラメータに基づくことができる。例えば、上記で言及したように、波長が異なると、特定の眼球組織/構造への浸透のレベルが異なる場合がある。
【0044】
図3に示されているように、例えば、異なる波長の光の周波数変調波長は、複数の層の例1~7を含む組織320への吸収量、及び組織320からの反射量が異なる場合がある。ある特定の実施形態では、組織320が、網膜などの視覚の(又は眼球の)組織であると仮定すると、層の例1は眼球の神経層及び血管を含むことができ、層の例2は眼球の光受容体を含むことができ、層の例3はRPEを含むことができ、層の例4はブルック膜(Bruch’s membrane)を含むことができ、層の例5は外網膜のコラーゲン層を含むことができ、層の例6は脈絡膜を含むことができ、層の例7は強膜を含むことができる。眼球の内網膜領域は、層の例1、2を含むことができ、眼球の外網膜領域は、層の例3~7を含むことができる。ここでは、特に、照明光(例えば、「青色」照明光)のλ(f)は、波長が比較的短く、内網膜領域の中に吸収され、内網膜領域から「R」として反射される。一方、照明光(例えば、「赤色」照明光)のλ(f)は、波長が比較的長く、外網膜領域の中に吸収され、外網膜領域から「R」として反射される。したがって、既知の変調周波数にロックすることによって、システムは、標的眼球組織/構造の特定の反射層を観察するために選択することができる。
【0045】
ある特定の実施形態では、第1の撮像デバイスは、変調周波数と関連付けされたシャッタ周波数にロックオンすることによって、照明の選択(又は指定)された周波数変調波長にロックオンすることができる。例えば、照明の異なる波長を変調するために使用される各変調周波数は、対応する(又は関連付けされた)シャッタ周波数を有することができる。これらの実施形態では、第1の撮像デバイスは、それぞれのシャッタ周波数にロックすることによって関心のある異なる変調周波数にロックオンして、時間系列ベースのスペクトル掃引を実行することができる。
【0046】
例えば、図4のタイムライン400に示されているように、第1の量のシャッタ時間(例えば、i秒のシャッタ時間、又はX個のフレーム)の間に、第1の撮像デバイスは、シャッタ周波数(fs1)にロックオンすることによって、照明の第1の波長(λ)と関連付けされた変調周波数(f)にロックオンすることができ、後続の第2の量のシャッタ時間の間に、第1の撮像デバイスは、シャッタ周波数(fs2)にロックオンすることによって、照明の第2の波長(λ)と関連付けされた変調周波数(f)にロックオンすることができ、後続の第3の量のシャッタ時間の間に、第1の撮像デバイスは、シャッタ周波数(fs3)にロックオンすることによって、照明の第3の波長(λ)と関連付けされた変調周波数(f)にロックオンすることができる、などという具合である。
【0047】
図2に戻って参照すると、ブロック210では、システムは、変調周波数に基づいて、第2の撮像デバイス(例えば、撮像デバイス142)の対物レンズの焦点距離を調節する。ある特定の実施形態では、第2の撮像デバイスは、複数の異なる焦点距離にわたって掃引するように構成することができ、各焦点距離は、異なる変調周波数と関連付けされている。第2の撮像デバイスは、対物レンズの焦点距離を調節して、照明光の複数の波長に起因して生じ得る色収差を低減させることができる。
【0048】
ブロック212では、システムは、標的部位から反射された第2の光線を、(例えば、撮像デバイス144を使用して)捕捉する。捕捉される反射された第2の光線は、変調周波数と関連付けされた波長を含み、その他の変調周波数と関連付けされた波長を含まない場合がある。ブロック214では、システムは、(例えば、撮像デバイス144を使用して)捕捉された第2の光線に基づいて、標的部位の画像を生成する。
【0049】
照明の周波数変調波長ごとにそれぞれ画像が捕捉された後、システムは、その画像に基づいて眼科情報を判定する(ブロック216)。ある特定の実施形態では、眼科情報は、標的部位の1つ又は複数のパラメータを含むことができる。例えば、システムは、標的部位(例えば、黄斑上膜)の厚さ及び/又は粗さを判定することができる。ある特定の実施形態では、撮像デバイス142が、2つの焦点距離FL(λ)及びFL(λ)にわたって掃引すると仮定すると、眼球組織/構造の厚さ(TT)は、A*(FL(λ)-FL(λ))とほぼ等しくなる場合がある。なおこの場合、FLは撮像デバイス142の焦点距離であり、Aは変換係数である。いくつかの場合には、λは、最も低い関心のある波長とすることができ、λは、最も高い関心のある波長とすることができる。ある特定の実施形態では、眼科情報により、スペクトル吸収画像に基づいた疾病検出ができるようになる可能性がある。
【0050】
ある特定の実施形態では、システムは、画像に基づいて、標的部位のトポグラフィ情報(例えば、トポグラフィマップ)を生成することができる。例えば、(例えば、コントローラ106を介して)システムは、(異なる波長に対応する)各画像を重ね合わせて、複数の波長を有する画像オーバレイを生成することができる。この生成された画像オーバレイは、眼球内の標的部位のトポグラフィマップとして使用することができる。
【0051】
ブロック218では、システムは、眼科情報を伝達する。例えば、眼科情報は、眼科処置を行う手術医がリアルタイムで観察するためにディスプレイ(例えば、ディスプレイ136)に伝達することができる。その後、方法200は終了することができる。
【0052】
図5A図5Cは、一実施形態による、眼科情報を取得するための順序の一例を図示する。図5Aに示されているように、照明光は、照明デバイス108を介して眼球120内の組織510の上に投影される。組織510は、図3に示されている組織320に類似したものとすることができる。ここでは、照明光は、2つの周波数変調波長λ(f)と、λ(f)と、を含む。すなわち、照明光のλはfで変調され、照明光のλはfで変調される。
【0053】
図5Bに示されているように、投影された照明光は、空きスペースを通って組織510から反射され、撮像デバイス142、144によって捕捉される。ここでは、撮像デバイス144は、変調周波数f及びfにわたって掃引することができ、それぞれの変調周波数と関連付けされた波長(λ、λ)を有する組織510のそれぞれの画像を捕捉することができる。同時に、撮像デバイス142は、異なる焦点距離にわたって掃引(Z2(λ(f))とZ1(λ(f))の間の△Z)することができ、撮像デバイス144によって標的にされる変調周波数に基づいて、その対物鏡の焦点距離を調節することができる。
【0054】
図5Cに示されているように、組織510の捕捉した画像546-1及び546-nを重ね合わせて、組織510のトポグラフィ情報を表示する画像オーバレイを生成することができる。
【0055】
要約すると、本開示の実施形態により、ハイパースペクトルイメージングを用いた眼内照明に基づいて、光学系を使用して眼科処置の間に眼科情報の獲得が可能になる。本明細書に記載の光学系及び/又は方法は、手術処置の安全性及び/又は有効性を高め、且つ/又は追加のデータポイントを提供して、診断精度を高めるのに特に有利である。
【0056】
本明細書で使用する際、項目のリスト「の少なくとも1つ」を指す語句は、単一の部材を含む、それらの項目の任意の組み合わせを指す。例として、「a、b、又はcの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、及びa-b-c、並びに複数の同じ要素との任意の組み合わせ(例えば、a-a、a-a-a、a-a-b、a-a-c、a-b-b、a c c、b-b、b-b-b、b-b-c、c-c、並びにc-c-c又は任意の他の順序のa、b、及びc)を網羅することが意図される。
【0057】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な実施形態を実践できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正形態は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言に一致する全範囲が認められるべきである。
【0058】
請求項内で要素を単数形で言及していても、特に明記しない限り、「1つ且つ唯一」ではなく、「1つ又は複数」を意味することを意図する。具体的に別段の定めがない限り、「いくつかの(some)」という用語は、1つ又は複数を指す。当業者に知られている又は後に知られることになる、本開示全体を通して説明した様々な態様の要素に対する全ての構造的及び機能的等価物は、本明細書に参照により明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。その上、本明細書に開示したものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているか否かにかかわらず公衆に献呈されることが意図されるものではない。請求項のいかなる要素も、要素が語句「~のための手段」を用いて明示的に記載されない限り又は方法クレームの場合、要素は、語句「~のためのステップ」を用いて記載されない限り、米国特許法第112条(f)の規定に基づいて解釈されない。本明細書では、「例示的」という語は、「例、実例又は図示の役割を果たす」という意味で使用される。本明細書で「例示的」として記載される任意の態様は、必ずしも他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】