(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】水耕栽培されたセルロース性材料において活性酸素種を用いて酵素濃度および乾物を増加させるためのプロセス
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241206BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20241206BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20241206BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241206BHJP
A01C 1/00 20060101ALI20241206BHJP
A01C 1/08 20060101ALI20241206BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20241206BHJP
【FI】
A01G7/00 604Z
A01P21/00
A01N59/00 A
A01P3/00
A01C1/00 A
A01C1/08
A01G31/00 612
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024530558
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2021060577
(87)【国際公開番号】W WO2023096631
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521362379
【氏名又は名称】ハイドログリーン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス,ショーン
【テーマコード(参考)】
2B051
2B314
4H011
【Fターム(参考)】
2B051AB01
2B051BA01
2B051BA04
2B051BA09
2B051BB20
2B314MA02
2B314MA30
2B314MA47
2B314PD01
2B314PD58
4H011AA01
4H011AA03
4H011AB03
4H011BB18
4H011DD03
(57)【要約】
水耕栽培されたセルロース性材料における活性酸素種の使用を通じて酵素活性および植物乾物を増加させるための外部活性酸素種散布システムおよび方法。外部活性酸素種散布システムは、芽生え期中に液体散布器を用いて第1の濃度で活性酸素種によって複数の種子を消毒する。活性酸素種は、ジベレリン酸発現を増加させる。液体散布器は、植物乾物を増加させるために、植物発達期中に第2の濃度で活性酸素種を散布する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾物および酵素活性を増加させるための活性酸素種の外部散布のための方法であって、
少なくとも1種の活性酸素種を用いて複数の種子を消毒するステップであって、該活性酸素種が、有害細菌、かび、または真菌のうちの少なくとも1種を死滅させるために構成されるステップ;
芽生え期中に第1の濃度で栽培表面上の該複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップであって、該少なくとも1種の活性酸素種がジベレリン酸発現を増加させるステップ;
該複数の種子を発芽させるステップ;および
該発芽した複数の種子が成熟するまで、植物発達期にわたって第2の濃度で該発芽した複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の活性酸素種が過酸化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の濃度が1000ppm~3000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記芽生え期中に前記少なくとも1種の活性酸素種によって前記複数の種子の少なくとも1つの種皮を弱めるステップであって、該種皮を弱めるステップが、水がより速い速度で該種皮に浸透することを可能にするステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布によってアブシジン酸発現を減少させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芽生え期中の前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布のステップが、前記複数の種子の複数の細胞組織からの加水分解酵素の放出を支持する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記芽生え期中の前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布のステップが、脱リグニン経路を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
植物乾物を増加させるための外部活性酸素種散布システムであって、
フレーム構造によって動作可能に支持され、かつ該フレーム構造の長さおよび幅にわたって配置される栽培表面であって、複数の種子を収納するように構成される、栽培表面;
該フレーム構造に動作可能に接続され、かつ少なくとも1種の活性酸素種を収納するように構成される、活性酸素種源;および
該栽培表面上に収納される該複数の種子に対して該活性酸素種源から該少なくとも1種の活性酸素種を放出するための、該栽培表面に隣接して該フレーム構造に動作可能に固定された1つ以上の液体散布器であって、該少なくとも1種の活性酸素種を異なる濃度で放出するように構成される、1つ以上の液体散布器
を含み、
該少なくとも1種の活性酸素種が、該栽培表面上の該複数の種子の発芽を促進する、上記外部活性酸素種散布システム。
【請求項9】
前記栽培表面が、該栽培表面の上の前記複数の種子を水耕栽培するための上面を含む、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項10】
前記液体散布器が、前記栽培表面の幅および該栽培表面の長さに均一に沿って前記少なくとも1種の活性酸素種を均一に分配するように構成される複数の液体分配器を含む、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項11】
前記少なくとも1種の活性酸素種が、前記液体散布器から放出される前に水と組み合わせられる、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項12】
前記液体散布器が、前記少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって第1の濃度で、および第2の時間にわたって第2の濃度で放出する、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項13】
前記液体散布器が、前記少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって放出するように構成され、かつ該液体散布器が、該少なくとも1種の活性酸素種(reactive species)の放出を第2の時間にわたって停止するように構成される、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項14】
前記フレーム構造に動作可能に接続される種子洗浄器であって、前記栽培表面上に前記複数の種子を置く前に該複数の種子から破片を除去するように構成される、種子洗浄器
をさらに含む、請求項8に記載の外部活性酸素種散布システム。
【請求項15】
活性酸素種の外部散布によって複数の植物の乾物を増加させるための方法であって、
栽培表面上に複数の種子を置くステップであって、該栽培表面は、該栽培表面の上の該複数の種子を水耕栽培するための上面を含む、ステップ;
液体散布器によって少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって第1の濃度で該栽培表面上へと導入するステップ;
該液体散布器により導入された複数の活性酸素種のうちの第1の活性酸素種によって、該複数の種子を消毒するステップ;
該栽培表面上の該複数の種子を発芽させるステップ;および
第2の時間にわたって第2の濃度で該液体散布器により複数の活性酸素種のうちの第2の活性酸素種を放出するステップ
を含む、上記方法。
【請求項16】
前記第1の活性酸素種が、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、硝酸、ペルオキシルラジカル、アルキルペルオキシル、ヒドロペルオキシル、ペルオキシ亜硝酸アニオン、酸素、スーパーオキシドアニオン、または過酸化物のうちの少なくとも1種を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の活性酸素種が、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、硝酸、ペルオキシルラジカル、アルキルペルオキシル、ヒドロペルオキシル、ペルオキシ亜硝酸アニオン、酸素、スーパーオキシドアニオン、または過酸化物のうちの少なくとも1種を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の濃度が200ppm~3000ppmの範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の濃度が50ppm~200ppmの範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の時間が18時間~24時間の範囲である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水耕的に発芽させた種子において酵素活性を増大させかつ乾物を増加させるための活性酸素種の使用に関する。過酸化水素などの活性酸素種は、実生の発芽パーセンテージを高めるために用いられてきた。より詳細には、しかし排他的でなく、本発明は、水耕栽培されたセルロース性材料において活性酸素種を用いて酵素濃度を上昇させるためのプロセスおよび組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
被子植物での発芽および実生発達は、一般的に、2種類のアンタゴニスト植物ホルモンであるジベレリンおよびアブシジン酸により制御される。ジベレリンの放出は、休眠の中断、細胞分裂、および加水分解酵素の放出を支持し、一方で、アブシジン酸の放出は、種子休眠を維持し、加水分解酵素の放出を阻害し、かつ細胞分裂を低減させた。活性酸素種が導入される場合にジベレリンの酸化的作用様式がin vivoで模倣され;アリューロン層および他の植物細胞組織からの加水分解酵素の放出を支持する。加えて、活性酸素種が存在しない場合の木化反応とは対照的に、活性酸素種が存在する場合には、ペルオキシダーゼなどのリグニン分解酵素は、脱リグニン経路に好都合である。リグニンは一般的に高等植物での最も複雑かつ不消化性の繊維複合体であると考えられるので、リグニン分解酵素加水分解により促進される脱リグニンは、改善された繊維消化率を支持する。したがって、乾物および酵素活性を増加させるための水耕環境での活性酸素種の散布(application)が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本開示の主な目的、特徴、または利点は、最先端の技術を上回って改善することである。
本開示のさらなる目的、特徴、または利点は、水耕栽培された植物の乾物を増加させることである。
本開示のまたさらなる目的、特徴、または利点は、水耕栽培された植物の酵素活性を増大させることである。
【0004】
別の目的、特徴、または利点は、植物または種子に対して活性酸素種(ROS)を外部から導入することによりアブシジン酸活性を低下させることである。
また別の目的、特徴、または利点は、植物または種子に対してROSを外部から導入することによりジベレリン活性を増大させることである。
【0005】
本開示のこれらおよび/または他の目的、特徴、または利点のうちの1種以上が、後続の本明細書および特許請求の範囲から明らかになるであろう。単一の態様がそれぞれおよび全部の目的、特徴、または利点を提供する必要はない。異なる態様は、異なる目的、特徴、または利点を有し得る。したがって、本開示は、本明細書中で述べられるいずれかの目的、特徴、または利点に対してまたはそれにより限定されるべきではない。
【0006】
本開示の一態様では、乾物および酵素活性を増加させるためのROSの外部散布のための方法が開示される。方法は、少なくとも1種のROSを用いて複数の種子を消毒するステップを含むことができ、ROSは、有害細菌、かび、または真菌のうちの少なくとも1種を死滅させるために構成される。方法はまた、芽生え期中に栽培表面上の複数の種子に対して少なくとも1種のROSを第1の濃度で外部から散布するステップも含むことができ、少なくとも1種のROSは、ジベレリン酸発現を増加させる。方法はまた、複数の種子を発芽させるステップおよび発芽した複数の種子が成熟するまで植物発達期にわたって発芽した複数の種子に対して少なくとも1種のROSを第2の濃度で外部から散布するステップも含むことができる。
【0007】
本開示の別の態様では、外部ROS散布システムが開示される。システムは、フレーム構造によって動作可能に支持され、かつフレーム構造の長さおよび幅にわたって配置される栽培表面を含むことができる。栽培表面は、複数の種子を収納するように構成することができる。システムはまた、フレーム構造に動作可能に接続されたROS源も含むことができる。ROS源は、少なくとも1種のROSを収納することができる。システムは、栽培表面上に収納される複数の種子に対してROS源から少なくとも1種のROSを放出するための、栽培表面に隣接してフレーム構造に動作可能に固定された1つ以上の液体散布器をさらに含むことができる。1つ以上の液体散布器は、少なくとも1種の活性酸素種を異なる濃度で放出することができる。少なくとも1種の活性酸素種は、栽培表面上の複数の種子の発芽を促進する。
【0008】
本開示の別の態様では、ROSの外部散布により複数の植物の乾物を増加させるための方法が開示される。方法は、栽培表面上に複数の種子を置くステップを含むことができ、栽培表面は、栽培表面の上の複数の種子を水耕栽培するための上面を含むことができる。方法は、液体散布器によって少なくとも1種のROSを第1の時間にわたって第1の濃度で栽培表面上へと導入するステップをさらに含むことができる。方法は、液体散布器により導入された複数の活性酸素種のうちの第1のROSによって、複数の種子を消毒するステップ、および栽培表面上の複数の種子を発芽させるステップをさらに含むことができる。最後に、方法は、液体散布器により複数の活性酸素種のうちの第2の活性酸素種を第2の時間にわたって第2の濃度で放出するステップを含むことができる。
本開示の例示的実施形態について、参照により本明細書に組み込まれている添付の図面を参照して、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の例示的な態様によるROS散布システムの図示である。
【
図2】本開示の例示的な態様による植物ホルモンとのROS相互作用を図示するフローチャートである。
【
図3】本開示の例示的な態様による植物ホルモン間の相互作用の図示である。
【
図4】本開示の例示的な態様によるリグニンとROSとの間の化学反応の図示である。
【
図5】本開示の例示的な態様による、異なる過酸化水素濃度および塩分処理に対するオオムギの発芽パーセンテージを示す図である。
【
図6】本開示の例示的な態様による植物ホルモンと乾物との間の相互作用の図示である。
【
図7】本開示の例示的な態様によるROS散布システムの種子洗浄器の斜視図である。
【
図8】本開示の例示的な態様によるROS散布システムの保持容器の一部分の側面斜視図である。
【
図9】そのROS灌水システムを図示するROS散布システムの一部分の別の側面斜視図である。
【
図10】その別のROS灌水システムを示す水耕栽培機の一部分の側面斜視図である。
【
図11】
図10のROS灌水システムをさらに示す水耕栽培機の一部分の端面斜視図である。
【
図12】その別のROS灌水システムを示す水耕栽培機の一部分の側面斜視図である。
【
図13】本開示の例示的な態様によるROS散布システムによるROS散布の方法を図示するフローチャートである。
【
図14】本開示の例示的な態様によるROS散布システムによるROS散布の方法を図示する別のフローチャートである。
【
図15】本開示の例示的な態様によるROS散布システムによるROS散布の方法を図示する別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
水耕環境では、種子は、高さ、追加の栄養素、灌水、照明などに応じて、およそ5から7日間で十分に成長した状態まで水耕栽培することができる。ROSの外部散布は、高等植物内での植物ホルモンバランスに影響を及ぼし、ジベレリン合成に好都合にすることができる。発芽中の植物ホルモンバランスに影響を及ぼすことを通じて、酵素活性、貯蔵栄養素の可動化、および乾物蓄積が好都合に増加する。
【0011】
図1および
図8~12に示される外部ROS散布システム10は、複数の垂直部材12および複数の水平部材14を含むことができ、これらの部材は、1つ以上の保持容器58を有する直立型種子栽培台16を形成するように、取り外し可能に相互接続される。本開示の一部の態様では、ROS散布システム10は、1つ以上の種子栽培台および1つ以上の保持容器58を有することができる。各垂直部材12は、高さ調整可能な脚部20において下部で終端するように構成することができる。各脚部20は、種子栽培台16の1つの垂直部材12の別の垂直部材(number)12に対する相対垂直位置または高さを変化させるように調整することができる。水平部材14は、1つ以上の長手方向部材24に取り外し可能に相互接続された1つ以上の横方向部材を含むように構成することができる。1対の垂直部材12が、横方向部材22によって横方向に分離され、それによって種子栽培台16の幅または奥行を画定することができる。長手方向部材24は、1つ以上のコネクタ26によって、横方向部材22に取り外し可能に相互接続することができる。ROS散布システムは、保持容器58中に収納された複数の種子に対して少なくとも1種のROSを散布するように構成することができる。
【0012】
水耕環境でのROSの散布を通して、ジベレリンの酸化的作用様式がin vivoで模倣され、アリューロン層および他の植物細胞組織からの加水分解酵素の放出を支持する。加えて、ROSが存在しない場合の木化反応とは対照的に、ROSが存在する場合には、ペルオキシダーゼなどのリグニン分解酵素は、脱リグニン経路に好都合である。リグニンは一般的に高等植物での最も複雑かつ不消化性の繊維複合体であると考えられるので、リグニン分解酵素加水分解により促進される脱リグニンは、改善された繊維消化率を支持する。外部ROSは、水耕栽培されたセルロース性材料の乾物の量を増加させ、かつ酵素活性を最大化する。高等植物では、発芽プロセス中の酵素放出は、通常、胚からのジベレリン酸(GA)の放出により制御される。光合成に先立って、GA放出速度は、幼植物の代謝要求と正に相関する。より大きな代謝要求は、ジベレリン酸の放出速度の増加を伝える。植物または種子へのROSの外部散布を提供するシステムおよび方法を用いることにより、低酸素条件は制限され、細胞呼吸の効率が最大化される。リグニンペルオキシダーゼは、エネルギー的に、木化ではなくむしろリグニン分解性経路に対して好都合である。
【0013】
用語「乾物」とは、水を除外するすべての植物材料を意味する。動物飼料または植物組織中の栄養素またはミネラル含有量は、乾物基準または材料中の総乾物の割合に対して表わすことができる。植物または種子とは、植物界または顕花植物、穀物、マメ科穀類、イネ科植物、根菜作物および塊茎作物、野菜作物、果実植物、菽穀類、薬用作物、香料作物、飲料植物、糖およびデンプン、香辛料、油脂植物、繊維作物、ラテックス作物、食用作物、飼料作物、プランテーション作物もしくは牧草作物をはじめとする被子植物由来のいずれかの植物を意味し得る。
【0014】
穀物としては、イネ(Oryza sativa)、コムギ(コムギ属(Triticum))、トウモロコシ(Zea mays)、ライムギ(Secale cereale)、エンバク(Avena sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、モロコシ(Sorghum bicolor)、トウジンビエ(Pennisetum glacucum)、シコクビエ(Eleusine coracana)、ヒエ(Echinochloa frumentacea)、アワ(Setaria italica)、スズメノコビエ(Paspalum scrobiculatum)、キビ(Panicum millaceum)が挙げられる。
【0015】
菽穀類としては、ケツルアズキ(black gram、kalai、またはurd)(ビグナ・ムンゴ変種ラジアツス(Vigna mungo var, radiatus))、ガラスマメ(Lathyrus sativus)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)、ササゲ(Vigna sinensis)、リョクトウ(Vigna radiatus)、ホースグラム(Macrotyloma uniflorum)、レンズマメ(Lens esculenta)、モスビーン(Phaseolus aconitifolia)、エンドウマメ(Pisum sativum)、キマメ(Cajanas cajan、Cajanus indicus)、フィリペサラ(philipesara)(ファセオルス・トリロブス(Phaseolus trilobus))、ダイズ(Glycine max)が挙げられる。
【0016】
油糧種子としては、クロガラシ(Brassica nigra)、トウゴマ(Ricinus communis)、ココナツ(Cocus nucifera)、ラッカセイ(Arachis hypgaea)、カラシナ(Brassica juncea)、トリア(toria)(ナプス(Napus))、ニガー(Guizotia abyssinica)、アマニ(Linum usitatissumun)、ベニバナ(Carthamus tinctorious)、ゴマ(Seasmum indicum)、ヒマワリ(Helianthus annus)、シロガラシ(Brassica alba)、アブラヤシ(Elaeis guniensis)が挙げられる。繊維作物としては、クロタラリア(Crotalaria juncea)、コウマ(ツナソ属(Corchorus))、ワタ(ワタ属(Gossypium))、メスタ(mesta)(フヨウ属(Hibiscus))、またはタバコ(タバコ属(Nicotiana))が挙げられる。
【0017】
糖およびデンプン作物としては、バレイショ(Solanum tberosum)、サツマイモ(Ipomea batatus)、キャッサバ(Manihunt esculenta)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ビート(Beta vulgaris)が挙げられる。香辛料としては、コショウ(Piper nigrum)、キンマ(Piper betle)、ショウズク(Elettaria cardamomum)、ニンニク(Allium sativum)、ショウガ(Zingiber officinale)、タマネギ(Allium cepa)、トウガラシもしくはチリ(Capsicum annum)、またはウコン(Curcuma longa)が挙げられる。牧草としては、ブッフェルグラスもしくはアニャン(anjan)(センチルス・シリアリス(Cenchrus ciliaris))、シマスズメノヒエ(Paspalum dilatatum)、ディナナスグラス(dinanath grass)(チカラシバ属(Pennisetum))、ギニアグラス(guniea grass)(Panicum maximum)、マーベルグラス(ヒメオニササガヤ(Dicanthium annulatum))、ネピアグラスもしくはエレファントグラス(Pennisetum purpureum)、パンゴラグラス(Digitaria decumbens)、パラグラス(Brachiaria mutica)、スーダングラス(Sorghum sudanense)、テオシント(Echlaena mexicana)、またはブルーパニックグラス(Panicum antidotale)が挙げられる。牧草マメ科作物としては、ベルシームまたはエジプトクローバー(Trifolium alexandrinum)、セントロセマ(セントロセマ・プベセンス(Centrosema pubescens))、グアーマメまたはクラスタマメ(Cyamopsis tetragonoloba)、アルファルファまたはルーサン(Medicago sativa)、サイラトロ(sirato)(Macroptlium atropurpureum)、ベルベットビーン(velvet bean)(ムクナ・コチンチネンシス(Mucuna cochinchinensis))が挙げられる。
【0018】
プランテーション作物としては、バナナ(Musa paradisiaca)、アレカヤシ(Areca catechu)、クズウコン(Maranta arundinacea)、カカオ(Theobroma cacao)、ココヤシ(cocos nucifera)、コーヒー(Coffea arabica)、チャ(Camellia theasinesis)が挙げられる。野菜作物としては、トウガン(Beniacasa cerifera)、ニガウリ(Momordica charantia)、ユウガオ(Lagenaria leucantha)、ナス(Solanum melongena)、ソラマメ(Vicia faba)、キャベツ(アブラナ属(Brassica))、ニンジン(Daucus carota)、カリフラワー(アブラナ属)、サトイモ(Colocasia esulenta)、キュウリ(Cucumis sativus)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、タロイモもしくは食用アルム(コロカシア・アンチクオルム(Colocasia antiquorum))、ゾウコンニャクもしくはヤムイモ(Amorphophallus campanulatus)、サヤマメ(インゲンマメ(Phaseolus vlugaris))、コールラビ(アブラナ属)、ヤムイモ(ヤマノイモ属(Dioscorea))、レタス(Lactuca sativa)、マスクメロン(Cucumis melo)、食用カラスウリ(pointed gourd)もしくはパルワル(Trchosanthes diora)、カボチャ(カボチャ属(Cucrbita))、ダイコン(Raphanus sativus)、オクラ(bhendi)(Abelmoschus esculentus)、トカドヘチマ(Luffa acutangular)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、ヘビウリ(Trichosanthes anguina)、トマト(Lycoperscium esculentus)、カブ(アブラナ属)、またはスイカ(Citrullus vulgaris)が挙げられる。
【0019】
薬用作物としては、アロエ(Aloe vera)、アシュワガンダ(ashwagnatha)(Withania somnifera)、ベラドンナ(Atropa belladonna)、ビショップボウフウ(アンミ・ビスナガ(Ammi visnaga))、ブリンガラージ(アメリカタカサブロウ(Eclipta alba))、キナ(キナノキ属種(Cinchona sp.))、コレウス(coleus)(コレウス・フォルスコリ(Coleus forskholli))、ヤマノイモ(ヤマノイモ属)、グロリオサ(Gloriosa superba)、トコン(ipecae)(Cephaelis ipecauanha)、ヒハツ(Poper longum)、サクラソウ(オエノテラ・ラマレキアナ(Oenothera lamarekiana))、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)、サルパガンダ(Rauvalfia serpentine)、センナ(Cassia angustifolia)、ショウブ(Acorus calamus)、またはバレリアン(valeriana)(バレリアナ・ワリチイ(Valeriana wallaichii))が挙げられる。
【0020】
香料作物としては、アンブレット(ambrette)(リュウキュウトロロアオイ(Abelmoschus moschatus))、セロリ(Apium graveolens)、シトロネラ(Cymbopogon winterianus)、ゼラニウム(Pelargonium graveolens)、ジャスミン(Jasminum grantiflorum)、ベチバー(khus)(Vetiveria zizanoids)、ラベンダー(ラベンダー属種(Lavendula sp.))、レモングラス(Cymbopogon flexuosus)、ミント、パルマローザ(cymbopogon martini)、パチョリ(Pogostemon cablin)、サンダルウッド(Santalum album)、ホーリーバジル(Ocimum sanctum)、またはチューベローズ(Polianthus tuberosa)が挙げられる。食用作物はヒト消費のために収穫され、飼料作物は家畜消費のために収穫される。牧草作物としては、動物が直接的に給餌されるかまたは裁断して家畜に給餌されることができる作物が挙げられる。
【0021】
ROSは、種皮、病原体、または細胞内の分子などの他の分子と容易に反応し得る、酸素を含有する不安定分子のタイプである。ROSは、O2の電子受容性に起因して形成されることができる。ROSは、正常な植物の成長を調節する重要なシグナル伝達分子およびストレスに対する応答などの機能で重要な役割を有する。ROSは、光保護および異なるタイプのストレスに対する植物または種子の抵抗性に関与する。しかしながら、多過ぎるROSは、それが酸化させる場合にDNA、RNA、または他の分子に対する損傷を引き起こし、一部の場合には細胞機能を妨げ得る。酸素毒性は、制御されない生成および抗酸化物質によるROSの非効率的な除去の両方から起こり得る。UV曝露、熱曝露、渇水、塩分、低温、病原体からの防御、栄養素欠乏または他のタイプの環境ストレス因子などの環境ストレスの期間に、ROSレベルは天然に増加し得る。ROSとしては、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシルラジカル(OH)、次亜塩素酸(HOCL)、硝酸(NO)、アルキルペルオキシルおよびヒドロペルオキシルの両方をはじめとするペルオキシルラジカル(ROO、RはHであり得る)、ペルオキシ亜硝酸アニオン(ONOO-)、酸素(O2)、スーパーオキシドアニオン(O2
-)、過酸化物(O2
-2)が挙げられる。H2O2は、やや反応性であり、相対的に長い半減期を有し、これにより、元の放出部位または生成部位から幾分かの距離を拡散することが可能になる。
【0022】
植物中での内部ROS生成は、葉緑体、ミトコンドリアおよびペルオキシソームで主に見出されるが、小胞体、細胞膜、細胞壁およびアポプラストでも見出され得る。葉緑体光化学系であるPSIおよびPSIIは、内部ROS生成の主要な供給源である。非生物的ストレス因子は、メーラー反応またはフェントン反応を通してROSの形成を引き起こし、その後にO・-
2をH2O2へと変換する。ミトコンドリアでは、ROSは、正常条件で生成されるが、生成は、非生物的ストレス条件により大きく増大される。ペルオキシソームは、その酸化的代謝に起因するROS生成の主要部位である。ストレスの多い条件では、水の利用可能性が低くかつ気孔が閉じたままである場合、増加した光呼吸が、グリコール酸形成につながる。グリコール酸は、ペルオキシソーム中のグリコール酸オキシダーゼにより酸化されて、H2O2を放出し、これにより光呼吸中のH2O2の主要な製造因子となる。有害環境条件にある期間には、アブシジン酸(ABA)と組み合わせられたストレスシグナルは、アポプラストをH2O2生成に対する顕著な部位とし、気孔閉鎖を誘導する。細胞膜は、植物細胞の生存に必要な情報を提供する。小胞体の電子伝達系は、局所ROSを生成する。
【0023】
外部ROSとは、植物または種子により内部で生成されないROSである。外部ROSは、散布器により植物もしくは植物の種子に対して外部から散布するか、または植物栽培表面もしくは土壌を通して導入することができる。外部ROSは、H2O2などの単一のタイプのROS、またはH2O2およびO2
-2などの複数のタイプのROSを含むことができる。
【0024】
植物、種子、または細胞内での内部および外部ROSの蓄積は、様々な細胞応答につながる。植物応答は、ROS用量依存的であり得る。ROSは、生命に必要なホルモンバランスを可能にする。ROSは、植物シグナル伝達因子として機能することができ、生体膜を通過することができ、かつ酵素を不活性化または活性化する場合がある。したがって、植物に導入されるROSの量の制御が必要であり得る。ROSは、ABAを酸化してABAを不活性にすることができる。ROSは、
図2に示される通り、GAを活性化することによりそれを行なうことができる。
【0025】
ROSは、種子または細胞壁の外部化学と相互作用することができる。一部の種子は、ろう状の外膜を有し、これは発芽を妨げるかまたは種子へと水が侵入することを妨げる、化学物質または物理的障壁を含み得る。ろう状の外層を有する種子としては、コムギ、オオムギ、およびライムギなどの穀物が挙げられる。一部の態様では、ROSのO2成分は、細胞壁または種皮の外層と反応して、細胞壁またはろう状外層を弱めるか、緩めるかまたは気泡を生じさせ、それにより細胞壁を軟化させる。ROSは、種皮または細胞壁をこじ開ける場合さえある。ROSはまた、多糖分解を媒介し、かつカルシウムチャネルおよびマイトジェン活性化型タンパク質キナーゼを活性化し、細胞壁を拡大しかつ緩めて、細胞壁中の弱点を引き起こすことにより、細胞壁を破壊することもできる。外部ROSは、種子の環境に導入されて種皮中に弱いスポットをつくり出し、それにより水がより迅速に種子に侵入することを可能にすることができる。これは、種子が発芽し始めるのを助ける場合がある。外部ROSによる弱いスポットの生成は、種子が種子内で追加の内部ROSを放出させ、これが細胞壁または種皮の内部と相互作用して、壁をさらに弱らせる。ROSの非存在下では、細胞壁は強くなり、休眠が継続される場合がある。
【0026】
ROSの外部導入は、種子の発芽を活性化し、休眠を終了させることができる。
図2に示される通り、種子発芽中のROS作用は、ABA、GA、およびエチレン(ET)などの種子休眠または種子発芽を調節した植物ホルモン同士の間の相互作用に基づく。ABAは、ROS消去酵素活性の促進により、種子発芽に対するROS媒介作用を阻害する。
図3に示される通り、ABAとGAとの比率は、種子休眠を調節する。高いABA/GA比は休眠に好都合である一方で、低いABA/GA比は種子発芽をもたらす。高いABA/GA比は、土壌もしくは栽培表面への、または直接的に種子もしくは植物上への追加の外部ROSの制御された導入により無効にすることができる。ROSは種子または植物により吸収される。GAはまた、酵素をダウンレギュレーションすることにより、ROS消去酵素を無効にすることもできる。ROSはまた、同様にABAを酸化することもでき、これによりGAに対するABAの量を減少させる。一部の場合には、ROSは、ABAシグナル伝達またはABA異化の抑制ではなくむしろ、GAシグナル伝達および合成を活性化することにより、種子休眠を解除することができる。GA合成は、種子中での追加のROS生成を誘導することができる。続いて、ROSは引き続いてシグナル分子として機能し、ABAシグナル伝達に拮抗する。外部ROSは、種子の内部ROS含有量を増加させ、追加のGAを合成もしくは活性化するかまたはより多くのABAシグナルを抑制することができる。ROSの外部散布は、ABAレベルを低下させ、かつGA濃度を増加させ、これが種子発芽を引き起こす。しかしながら、ROSの量または濃度は、モニタリングする必要がある場合がある。一定の限界を超えると、ROSは、低過ぎて発芽を可能にするか、または高過ぎて胚生存率に影響を及ぼし、したがって発芽を防止もしくは遅延させるかのいずれかである。このことは、発芽に関する「酸化ウインドウ」をつくり出し、これは増加したROSレベルの特定の境界内での上首尾な実生発達を制限する。
【0027】
発芽中、GAはアリューロン層へと移行する。GAが種子のアリューロン層と相互作用する場合に、α-アミラーゼ合成が引き起こされ、それによりα-アミラーゼを含む加水分解酵素が放出または合成される。アリューロンは、デンプン質の内胚乳の周囲に局在する。1,3;1,4-β-グルカナーゼ(β-グルカナーゼ)、α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼなどの加水分解酵素が放出されて、細胞壁多糖、プロテアーゼ、貯蔵タンパク質、および発芽に対して必須であり、根成長を駆動する糖を提供するデンプン質エネルギー貯蔵の分解を触媒する。β-グルカナーゼは、優勢な細胞壁多糖である1,3;1,4-β-グルカンを加水分解することができる。α-アミラーゼは、内部アミロースおよびアミロペクチン残基を切断する。β-アミラーゼエキソヒドロラーゼは、デンプン分子からマルトースおよびグルコースを遊離させる。外部ROSの導入によるABAの抑制がない場合、ABAは加水分解酵素の転写を阻害し、発芽を妨げる。
【0028】
好気条件下の水分が与えられた種子では、ROS生成および外部ROS散布は、葉緑体、ミトコンドリア、グリオキシソーム、ペルオキシソーム、および原形質膜中での増加した代謝に相関する。種子吸水中、異なる細胞内構造中でのROSおよびそれらの標的分子のコンパートメント化は、様々な遺伝子の発現を調節する。水は、ROSが輸送されるかまたはより長い距離を移動することを可能にする一方で、乾燥種子中では、ROS生成は種子吸水中の標的付近でなければならない。
図6に示される通り、種子または植物に水分が与えられる場合、外部ROSは、細胞、種子、または植物の外側から、細胞、種子、または植物の内部へと容易に移行することができ、それにより酵素活性および乾物が増加する。
図5は、異なるH
2O
2濃度および塩分処理に対するオオムギの発芽パーセンテージを図示する。1000分の1での塩分濃度として表わされた塩分処理。
図5中に示される値は、周囲の推定値を図示する、95パーセント信頼区間を伴う固定効果線形モデル推定で表わされる。ROSの散布を通じて、低減された茎伸長および発芽を含めたABAの阻害的影響は低減される。
【0029】
ストレス中には、細胞壁に局在するリポキシゲナーゼが、多価不飽和脂肪酸(PUFA)のヒドロペルオキシド化を引き起こし、これをROSの活性な供給源とする。病原体の攻撃中、リグニン前駆体は、ROS媒介経路を介して過剰な架橋を受け、リグニンを用いて細胞壁を補強する。リグニンは、特に維管束および支持組織:木部仮道管、道管要素および厚膜細胞中の、セルロース材料、ヘミセルロース、およびペクチン成分間の細胞壁中の空間を埋める。外部ROSが種子または植物へと散布される場合、外部ROSは、種子もしくは植物を消毒するか、または病原体のうちの一部もしくは全部を死滅させることができる。これにより、リグニン前駆体の、植物の発芽または成長を妨げる架橋および細胞壁の強化が停止される。
【0030】
用語「セルロース性材料」とは、セルロースを含有するいずれかの材料を意味する。バイオマスの一次細胞壁中の優勢な多糖はセルロースであり、2番目に最も豊富なものはヘミセルロースであり、3番目はペクチンである。細胞が成長を止めた後に生成される二次細胞壁もまた多糖を含有し、ヘミセルロースに共有的に架橋されたポリマー性リグニンにより強化される。セルロースは、無水セロビオースのホモポリマーであり、したがって直鎖β-(1-4)-D-グルカンである一方、ヘミセルロースは、あるスペクトルの置換基を含む複雑な分岐構造中にキシラン、キシログルカン、アラビノキシラン、およびマンナンなどの様々な化合物を含む。一般的に多形性であるが、セルロースは、植物組織中で平行なグルカン鎖の不溶性結晶性マトリックスとして主に見出される。ヘミセルロースは、通常、セルロースならびに他のヘミセルロースに水素結合し、細胞壁マトリックスの安定化を助ける。
【0031】
図4に示される通り、リグニン解重合は、細胞外ROSまたは外部ROSの存在下で細胞外オキシダーゼおよびペルオキシダーゼにより触媒される一電子酸化反応によって主に達成することができる。ヒドロキシルラジカルはリグニン構造を攻撃し、全細胞、酵素、または他の化学物質による加水分解に対するアクセスポイントをつくり出す。ROSの外部散布は、追加のROSがリグニン構造を攻撃することを可能にし、これによりリグニン分解酵素、ヘミセルロース分解酵素またはヘミセルロース、セルロース分解酵素またはセルラーゼ、およびエンドグルカナーゼによるリグニン、セルロースおよびヘミセルロースの加水分解に対する追加のアクセスポイントをつくり出す。
【0032】
リグニン分解酵素は、リグニンポリマーの構造を加水分解する酵素である。リグニンを分解することができる酵素としては、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼおよびフェルロイルエステラーゼ、ならびにリグニンポリマーを解重合するかまたはそれ以外の様式で分解することが公知である当技術分野で記載された他の酵素が挙げられる。ヘミセルロース糖(特にアラビノース)とリグニンとの間で形成される結合を加水分解することが可能な酵素もまた含められる。ヘミセルロース分解酵素またはヘミセルラーゼは、ヘミセルロース材料を加水分解する1種以上の酵素である。エンドグルカナーゼは、セルロース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースなど)、リケニン中の1,4-β-D-グリコシド結合、穀物β-D-グルカンまたはキシログルカンなどの混合型β-1,3-グルカン、およびセルロース性成分を含有する他の植物材料中のβ-1,4-結合のエンド型加水分解を触媒するエンド-1,4-(1,3:1,4)-β-D-グルカン4-グルカノヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.4)である。セルロース分解酵素またはセルラーゼとは、セルロース性材料を加水分解する1種以上の酵素を意味する。そのような酵素としては、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β-グルコシダーゼ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
ROSは、植物子房の果皮を酸化することができる。果皮は、植物子房の熟成しかつ様々に改質された壁である。果皮は、外側の外果皮、中央の中果皮、および内側の内果皮を有し、これは子房壁から発達する植物果実の壁である。外部ROSは、果実熟成および花の発達をはじめとする植物器官発達中にレドックスシグナル伝達を惹起することができる。ROS生成とROS除去との間の不均衡である酸化的ストレスは、糖が律速因子となり熟成を開始させる際に、熟成中の増加した呼吸速度に起因してミトコンドリア中で起こり、レドックス状態に影響を及ぼす。外部ROSは、不均衡を増大させ、植物が熟成することを可能にすることができる。酸化的ストレスはまた、果実熟成の開始時の葉緑体から有色体への移行中に色素体でも起こる。
【0034】
図8~12に示される通り、芽生え期の開始時に、種子、種子が植えられるであろう栽培材料、種子ベルト、水耕栽培機、または受け皿系などの栽培材料を収納するための栽培表面18を消毒するために、種子の環境へとROSを導入することができる。栽培表面18は、栽培表面の上の複数の種子を水耕栽培するための上面を含むことができる。ROSは、種子中に存在する良好な細菌が消毒プロセス中に破壊されることを妨げながら、種子、栽培材料または栽培表面上で成長する有害細菌、かびまたは真菌を死滅させる。ROSを用いて有害細菌、かび、または真菌を死滅させることにより、有益または有用な細菌が栽培材料中または種子上で成長することができる。栽培表面18の材料は、酸化的環境の維持を助けるために設計することができる。例えば、栽培表面18の底部または側部は、疎水性、透過性、または半透過性であり得る。本開示の一部の態様では、栽培表面18は、芽生え期に先立ってROSにより消毒することができる。種子はまた、
図7に示される通り、栽培表面におかれる前、または栽培表面に置かれるときに、種子洗浄器30中で消毒するために、洗浄するかまたはROSに曝露することもできる。
【0035】
多くの場合、生またはバルク種子は、破片および他の汚染物質を含み、種子洗浄器30は、種子を栽培表面18またはフレーム構造12へ運搬する前に、破片および汚染物質を種子から除去することができる。種子洗浄器30は、種子入口34、種子放出口36を有しかつ種子入口34と種子放出口36との間に配置される分離器ハウジング32を含むことができ、羽根42の直径を有する導管40内に垂直に配置された1つ以上のオーガ38を含むことができる。羽根42は、好ましくは不連続であり、それによって断続的に隔置された羽根の区間同士の間に、種子、破片、および汚染物質が1つの高さ位置の羽根から次の高さ位置の羽根へと自由落下するための間隙を残すことができる。真空管路44が、種子入口34またはその付近に動作可能に接続され、反対側の端部で真空源に接続されることができる。種子は、種子入口34を通って種子洗浄器30内へ導入され、羽根42を降下して、各オーガ38上の羽根42の間隙同士の間を自由落下することができる。破片および汚染物質は、真空管路44内へ吸い込まれることができ、種子は、破片および汚染物質のない状態で種子放出口を通って降下することができ、破片および汚染物質は、ゴミ容器内へ吸引される。洗浄された種子は、種子放出口36を出て、栽培表面18上に運搬されるかまたは置かれることができる。場合により、種子は、種子も吸引しなければ吸引することができないほど大きい破片を含む場合がある。種子放出口36の出口には、種子洗浄器30を通過する際に吸引されないほど大きい破片を選別するために、スクリーン(図示せず)を動作可能に配置することができる。ROS散布器を用いて種子洗浄器内の種子を消毒するために、1つ以上の配管要素を動作可能に構成することができる。種子洗浄器30内の種子にUV光を照射して種子上の細菌を死滅させるために、1つ以上のUV照明要素を動作可能に構成することができる。種子洗浄器30によって種子を洗浄し、UV光を種子に照射するプロセス、および種子洗浄器30の一般的な動作は、コントローラ、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。
【0036】
各栽培表面18は、各栽培表面18の上に配置された種子に灌水するように各栽培表面18の上に動作可能に構成された液体散布器46A、46B、および/または46Cを含むことができる。栽培表面18の寸法は、必要な所望の植物生産量を収納するか、またはROS散布の網羅範囲のために構成することができる。液体散布器46Aは、栽培表面18の少なくとも1つの縦方向の縁に隣接して構成することができる。液体散布器46Aはまた、栽培表面18の少なくとも1つの横方向の縁に隣接して動作可能に構成することもできる。好ましくは、液体散布器46Aは、栽培表面18の縦方向の縁に隣接して構成され、それによって栽培表面18および栽培表面18の上に配置された種子にドリップフラッド灌水を提供することができる。液体散布器46Aは、ROSガイド48と、ROS出口52を有するROS分配器50A、50B、50Cとを含むことができ、ROS出口52は、概して山(より高い)および谷(より低い)部分を提供する鋸歯状または波状の外形などの概して起伏のある外形を有している。液体散布器46Aは、ROS収集器58または配管されたROS源56などのROS源56からのROSを運ぶように構成されたROS管路54を含むことができる。ROSは、1つ以上の開口を通ってROS管路54を出ることができ、ROS管路54を出るときにROSガイド48およびROS分配器50Aによって捕捉することができる。ROS管路54内の1つ以上の開口は、設定された時間枠にわたって既知のまたは定量化可能な量のROSをROSガイド48内へ断続的に滴らせるROSドリッパとして構成することができる。1つ以上の開口は、ROS管路54の長さに沿って断続的に構成することができるか、またはROS管路54の長さに沿ってグループごとに分散させることができる。ROS管路54内の1つ以上の開口は、ROSを栽培表面18へ等しく分散させて液体を栽培表面18へとゆっくりと滴らせるように動作可能に構成することができる。栽培表面のドリップまたはフラッド灌水は、種子を浸すためのROS 62の層を提供し、制御された均一な分配による流れで、栽培表面18上の種子に液体を提供することができる。ROS分配器50Aは、液体がROS管路54を出るときに液体を収集するように適合されたROSガイド48を有して構成することができる。収集されたROSは、ROS分配器50Aによって均一に分散され、ROS出口52を介してROS分配器50Aを出て栽培表面18上に落ちることができる。
【0037】
少なくとも1つの態様によれば、ROS分配器50Aから出たROSは、栽培表面18の上で、栽培表面18の上の種子塊の下および/またはその間を進むことができる。液体散布器46の他の構成も本明細書中で企図される。例えば、一態様では、ROSは、ROS管路54を通って液体散布器46に入り、複数の開口を通ってROS管路54を出ることができる。ROS管路54からのROSは、まとまって小さい液溜りを形成し、ROS分配器50Aの長さにわたって液体の均衡な分配をもたらすことができる。この小さい液溜りが満杯になったとき、ROSは、ROS出口52の歯同士の間など、ROS出口52から溢れ出ることができる。このようにして、ROSは、栽培表面の全長にわたってかつ全幅にわたって等しく分散(distributed)することができる。ROS出口52から出たROSは、栽培表面18上へ滴り落ちることができ、栽培表面18上の種子の塊の下を流れて種子を浸すかまたは種子と接触することができる。栽培表面18上の種子の根系は、毛細管作用と共に、種子を通してROSを持ち上げて、すべての種子および/または植物に水を与えることができる。
【0038】
液体散布器46Bを、各栽培表面18の上に配置することができる。液体散布器46Bは、ROS源56に動作可能に配管されたROS管路54内に動作可能に構成された複数のROS分配器50Bを含むことができる。ROS分配器50Bは、各栽培表面18の上に配置された種子に噴霧灌水するための単一または2重帯の噴霧ヘッド/先端部などの噴霧ヘッドを含むことができる。一態様では、複数のROS管路54を、各栽培表面18の上に隔置された配列で配置することができる。各ROS管路54は、保持容器の長さを横断することができ、ROS源56に接続するように配管することができる。他のROS管路54は、栽培表面18の幅を横断するように構成することができる。ROSは、各栽培表面18の上の種子に噴霧灌水するように、各ROS分配器50Bから放出することができる。別の態様では、各ROS管路54は、各栽培表面18の上の種子の表面積全体に及ぶように、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、またはそれ以上の移動半径にわたって、前後に振動させることができる。2重角度の噴霧ヘッドをROS分配器50Bに使用する場合、各ROS管路54の振動行程を低減させることができ、それによって液体散布器46Bの摩擦および摩耗および引き裂けを低減させることができる。種子または植物にROSを散布するプロセスは、コントローラ、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。駆動機構66は、各管路を移動半径にわたって振動または回転させるように、各ROS管路54に動作可能に接続することができる。液体散布器46は、制御システムによって動作させられる1つ以上のコントローラを使用して、手動または自動で動作させることができる。
【0039】
液体散布器46は、栽培表面18から破片、汚染物質、かび、真菌、細菌、および他の異物/不要物質を取り除くように構成することができる。液体散布器46はまた、種子が種子分注器から栽培表面18上へ放出されるとき、消毒剤またはROSによって種子に灌水するために使用することもできる。時間遅延を使用して、新鮮な水の散布または灌水を施す前にROSが所望の時間にわたって種子上に留まることを可能にすることができる。液体散布器46Dを使用して栽培表面18に洗浄、スケール除去、および消毒を施すプロセスは、コントローラ、グラフィカルユーザインターフェース、および/または遠隔制御装置によって自動化することができる。
【0040】
液体散布器46は、栽培表面18への種まきの直後に、種子をROSで濡らすように動作させることができる。成長の初期、中期、および後期の段階の種子に、液体散布器46を使用してROSによって灌水することができる。液体散布器46A~Dは、同時に、断続的に、交互に、また互いに独立して動作させることができる。種子成長の初期段階中には、芽生えおよび発芽を促すために、種子を最もよく濡らすように、両方の液体散布器46A~Bが動作させられる。成長の後期段階中には、液体散布器46Aを使用して、液体散布器46Bより多く灌水することができる。別法として、種子栽培物の浸潤の度合いに応じて、液体散布器46Bを使用して、液体散布器46Aより多く灌水することができる。液体散布器46Cは、栽培表面18への種まきおよび第2の方向への栽培表面18の移動中に、栽培表面18の上に分注された種子に噴霧して種子をROSで濡らすように動作させることができる。液体散布器46A~Dに提供されるROSは、消毒剤および/または栄養素などの添加物を含むことができる。液体散布器46A~Dから分注されるROSには、健康な植物の成長を促し、かつ/または収穫された種子における所望の栄養素の存在を増大させるために、一般に知られている植物栄養素などの栄養素を加えることができる。液体散布器46C~Dはまた、種子ベルト、栽培表面18、または栽培表面68の上の巻取りまたは繰出しの前および/または後に、栽培表面18を衛生化するためにも使用することができる。
【0041】
各ROS分配器50A~Dによって使用されるROSなどの1つ以上の消毒剤を含むことによって、液体分配器46A~Dおよびその様々な構成要素を、外部ROS散布システム10の他の構成要素と共に衛生化することができる。例えば、ROSガイド48、ROS管路54、ROS出口52、排水溝60、ROS収集器58、栽培表面18、ROS分配器50A~C、および栽培システムの他の構成要素。別の態様では、種まきおよび収穫の前、途中、または後に、液体散布器46A~Dを使用して、栽培表面18を洗浄および衛生化することができる。灌水および裁断のためのROSを運ぶか、または1つ以上の保持容器からの灌水もしくは裁断流出水を受け取る栽培システムのいずれかの構成要素を消毒または衛生化するように、別個の液体分配器またはマニホルドを構成することができる。
【0042】
図13に示される通り、ROSの散布の一態様では、ROSを、複数の種子を消毒するために散布することができる(ステップ200)。次に、複数の種子を、芽生え期中に栽培表面上に置くことができる(ステップ202)。本開示の一部の態様では、種子は、栽培表面上に置いた後に消毒することができる。次に、少なくとも1種のROSを、芽生え期中に栽培表面上の複数の種子に散布することができる(ステップ204)。外部ROSは常に散布することができるか、または散布器は設定された時間枠もしくは定量化可能な量でROSを散布することができる。例えば、液体散布器は、1分間などの第1の時間にわたってROSを散布することができ、続いて、液体散布器は、4分間などの第2の時間にわたってROSの散布を停止することができるか、または5分毎に1分間のROS散布である。次に、複数の種子を発芽させることができる(ステップ206)。次に、ROSを、植物発達期中に発芽した複数の種子に散布することができる(ステップ208)。最後に、発芽した複数の種子を成熟させることができる(ステップ210)。ROSは、芽生え期および植物発達期の両方の間に特定の濃度で散布することができる。
【0043】
図14に示される通り、ROSの散布の別の態様では、ROSを、複数の種子を消毒するために散布することができる(ステップ300)。次に、複数の種子を、芽生え期中に栽培表面上に置くことができる(ステップ302)。本開示の一部の態様では、種子は、栽培表面上に置いた後に消毒することができる。芽生え時に、ROSを、1000~3000ppmの範囲の濃度などの第1の濃度で散布することができる(ステップ304)。次に、芽生え期を終了させることができる(ステップ306)。芽生え期は、18~24時間続く場合がある。しかしながら、芽生え期が18~24時間よりも短いかまたは長い場合がある。芽生え中の水分レベルは10~60パーセントの範囲であり得るが、しかしながら、水分レベルは、より高いかまたは低いことができる。芽生え期が終了した後、ROSを、植物成熟までの植物発達全体を通じて、50~200ppmなどの第2の濃度比率で散布することができる(ステップ308)。芽生え期中のより高い比率が、細菌汚染および真菌胞子、果皮酸化をはじめとする種皮上に存在する生物学的汚染物質の不活性化、および初期過酸化水素取り込みを促進する場合がある。より高い比率のROS散布は、種皮中に弱いスポットをつくり出し、種子が水取り込みを増加させることを可能にし、種子による外部ROSの取り込みはGAの生成を増加させ、かつABAの量またはABAシグナル伝達を減少させる。種子の環境ストレスの減少およびGAの増加は、種子が発芽を開始することを可能にする。最後に、種子または複数の種子は成熟し、収穫できるようになる(ステップ310)。
【0044】
代謝活性の開始後には、より低い比率が必要とされる場合がある。発達全体での低減された比率は、アブシジン酸酸化の継続を支持し、それにより、植物発達全体を通したジベレリンの放出を増大させる。長期間にわたるより低い比率は、低減された持続時間にわたる高い比率の値を模倣すると考えられる。植物が成長するにつれ、根系は、毛細管作用を提供し、外部ROSの分配を助ける。過酸化水素の非存在は、植物生成物の発達全体のより低い出来高、より低い飼料価値、およびより低い品質をもたらし得る。本開示の一部の態様では、ROSは、浸漬期中に第1の濃度で散布することができる。浸漬期は、10分間または15分間にわたって続く場合がある。延長された浸漬期にわたるより低い比率は、低減された持続時間にわたる高い比率の値を有し得る。例えば、種子を、浸漬期中に10分間の持続時間にわたって200/300ppmのROSに曝露することができる。浸漬期の後、ROSの散布を、発達全体を通して50~200ppmであり得る維持比率に切り替えることができる。
【0045】
散布プロセス中、ROSを、液体濃縮物として液体散布器46により散布することができる。散布としては、フラッド灌水、ドリップ灌水、噴霧灌水、地下灌水、またはROSが種子もしくは植物に達することを可能にするいずれかの他の灌水法が挙げられる。液体散布器46は、設定された時間枠でまたは定量化可能な量でROSを散布することができる。例えば、液体散布器46は、1分間などの第1の時間にわたってROSを散布することができ、続いて、液体散布器46は、4分間などの第2の時間にわたってROSの散布を停止することができるか、または5分毎に1分間のROS散布である。サイクルを、発達期または芽生え期が終了するまで継続することができる。別の例では、ROSは、2時間毎に1分間にわたって散布することができる。液体散布器46は、制御された均一な分配による流れを提供することができ、ROSが種子の最大数に達することを可能にする。過剰なROSは、外部ROS散布システム10によって捕捉、再循環、および再使用されることができる。栽培表面18が出口または斜面を有する場合、斜面は、保持容器を通って出るように、ROSの均一な分配を補助し得る。一部の態様では、液体散布器46は、さらなる散布を必要とする保持容器内の領域、種子の一部分、または植物の一部分へのROSの分配を導くことができる。液体散布器46はまた、振動して、栽培表面18のより大きな面積または栽培表面18もしくは苗床の長さおよび幅全体に及ぶこともできる。
【0046】
ROSは、栽培システムに供給されている他の液体とは別個に散布することができる。ROSは、液体散布器46による分配に先立って、水、アルカリ溶液、または肥料などの別の液体と混合することができる。液体散布器は、それぞれが1つ以上のタイプの液体の分配を担う、液体分配のための複数のノズルを有することができる。例えば、ROSノズルおよび水ノズルは合流するノズルであり得、ROSおよび水は基材に対して同時に放出することができる。
【0047】
乾物を増加させるためのROSの散布の別の態様では、複数の種子を栽培表面上に置くことができる(ステップ400)。次に、複数の活性酸素種のうちの第1の活性酸素種を、第1の時間にわたって第1の濃度で栽培表面上へと液体散布器により導入することができる(ステップ402)。次に、複数の種子を、液体散布器によって導入される複数の活性酸素種のうちの第1の活性酸素種により消毒することができる(ステップ404)。本開示の一部の態様では、種子を、栽培表面上に置いた後に消毒することができる。次に、複数の種子を、栽培表面上で発芽させることができる(ステップ406)。次に、複数の活性酸素種のうちの第2の活性酸素種を、第2の時間にわたって第2の濃度で液体散布器により放出することができる(ステップ408)。一部の態様では、植物発達の異なる段階中に、または乾物を増加させるために植物もしくは種子が追加のROSを必要とすることが決定される場合、異なる濃度のROSを用いることができる。最後に、植物を成熟させ、収穫できるようにすることができる(ステップ410)。
【0048】
本開示は、本明細書中に記載される特定の態様に限定されるものではない。特に、本開示では、水耕栽培システム中でのROSを用いる酵素活性および乾物の増加について、多数の変形例が企図される。上記の説明は、例示および説明を目的として提示されている。網羅的な一覧であること、または開示される厳密な形態に本開示のうちのいずれかを限定することを意図したものではない。他の代替形態または例示的な態様が、本開示に包含されると見なされることが企図される。本説明は、本開示の態様、プロセス、または方法の単なる例である。任意の他の修正、置換え、および/または追加を加えることができ、これらは本開示の意図した精神および範囲内であることが理解される。
【符号の説明】
【0049】
10 外部ROS散布システム
12 垂直部材
14 水平部材
16 種子栽培台
18 栽培表面
20 脚部
22 横方向部材
24 長手方向部材
26 コネクタ
30 種子洗浄器
32 分離器ハウジング
34 種子入口
36 種子放出口
38 オーガ
40 導管
42 羽根
44 真空管路
46A~D 液体散布器
48 ROSガイド
50A~C ROS分配器
52 ROS出口
54 ROS管路
56 ROS源
58 保持容器、ROS収集器
60 排水溝
62 ROS
66 駆動機構
68 栽培表面
74 種子
【手続補正書】
【提出日】2024-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾物および酵素活性を増加させるための活性酸素種の外部散布のための方法であって、
少なくとも1種の活性酸素種を用いて複数の種子を消毒するステップであって、該活性酸素種が、有害細菌、かび、または真菌のうちの少なくとも1種を死滅させるために構成されるステップ;
芽生え期中に第1の濃度で栽培表面上の該複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップであって、該少なくとも1種の活性酸素種がジベレリン酸発現を増加させるステップ;
該複数の種子を発芽させるステップ;および
該発芽した複数の種子が成熟するまで、植物発達期にわたって第2の濃度で該発芽した複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップ
を含む、上記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
本開示は、本明細書中に記載される特定の態様に限定されるものではない。特に、本開示では、水耕栽培システム中でのROSを用いる酵素活性および乾物の増加について、多数の変形例が企図される。上記の説明は、例示および説明を目的として提示されている。網羅的な一覧であること、または開示される厳密な形態に本開示のうちのいずれかを限定することを意図したものではない。他の代替形態または例示的な態様が、本開示に包含されると見なされることが企図される。本説明は、本開示の態様、プロセス、または方法の単なる例である。任意の他の修正、置換え、および/または追加を加えることができ、これらは本開示の意図した精神および範囲内であることが理解される。
本開示は、以下を提供する。
1. 乾物および酵素活性を増加させるための活性酸素種の外部散布のための方法であって、
少なくとも1種の活性酸素種を用いて複数の種子を消毒するステップであって、該活性酸素種が、有害細菌、かび、または真菌のうちの少なくとも1種を死滅させるために構成されるステップ;
芽生え期中に第1の濃度で栽培表面上の該複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップであって、該少なくとも1種の活性酸素種がジベレリン酸発現を増加させるステップ;
該複数の種子を発芽させるステップ;および
該発芽した複数の種子が成熟するまで、植物発達期にわたって第2の濃度で該発芽した複数の種子に対して該少なくとも1種の活性酸素種を外部から散布するステップ
を含む、上記方法。
2. 前記少なくとも1種の活性酸素種が過酸化水素を含む、上記1に記載の方法。
3. 前記第1の濃度が1000ppm~3000ppmである、上記1に記載の方法。
4. 前記芽生え期中に前記少なくとも1種の活性酸素種によって前記複数の種子の少なくとも1つの種皮を弱めるステップであって、該種皮を弱めるステップが、水がより速い速度で該種皮に浸透することを可能にするステップ
をさらに含む、上記1に記載の方法。
5. 前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布によってアブシジン酸発現を減少させるステップ
をさらに含む、上記1に記載の方法。
6. 前記芽生え期中の前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布のステップが、前記複数の種子の複数の細胞組織からの加水分解酵素の放出を支持する、上記1に記載の方法。
7. 前記芽生え期中の前記少なくとも1種の活性酸素種の外部散布のステップが、脱リグニン経路を促進する、上記1に記載の方法。
8. 植物乾物を増加させるための外部活性酸素種散布システムであって、
フレーム構造によって動作可能に支持され、かつ該フレーム構造の長さおよび幅にわたって配置される栽培表面であって、複数の種子を収納するように構成される、栽培表面;
該フレーム構造に動作可能に接続され、かつ少なくとも1種の活性酸素種を収納するように構成される、活性酸素種源;および
該栽培表面上に収納される該複数の種子に対して該活性酸素種源から該少なくとも1種の活性酸素種を放出するための、該栽培表面に隣接して該フレーム構造に動作可能に固定された1つ以上の液体散布器であって、該少なくとも1種の活性酸素種を異なる濃度で放出するように構成される、1つ以上の液体散布器
を含み、
該少なくとも1種の活性酸素種が、該栽培表面上の該複数の種子の発芽を促進する、上記外部活性酸素種散布システム。
9. 前記栽培表面が、該栽培表面の上の前記複数の種子を水耕栽培するための上面を含む、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
10. 前記液体散布器が、前記栽培表面の幅および該栽培表面の長さに均一に沿って前記少なくとも1種の活性酸素種を均一に分配するように構成される複数の液体分配器を含む、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
11. 前記少なくとも1種の活性酸素種が、前記液体散布器から放出される前に水と組み合わせられる、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
12. 前記液体散布器が、前記少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって第1の濃度で、および第2の時間にわたって第2の濃度で放出する、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
13. 前記液体散布器が、前記少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって放出するように構成され、かつ該液体散布器が、該少なくとも1種の活性酸素種(reactive species)の放出を第2の時間にわたって停止するように構成される、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
14. 前記フレーム構造に動作可能に接続される種子洗浄器であって、前記栽培表面上に前記複数の種子を置く前に該複数の種子から破片を除去するように構成される、種子洗浄器をさらに含む、上記8に記載の外部活性酸素種散布システム。
15. 活性酸素種の外部散布によって複数の植物の乾物を増加させるための方法であって、
栽培表面上に複数の種子を置くステップであって、該栽培表面は、該栽培表面の上の該複数の種子を水耕栽培するための上面を含む、ステップ;
液体散布器によって少なくとも1種の活性酸素種を第1の時間にわたって第1の濃度で該栽培表面上へと導入するステップ;
該液体散布器により導入された複数の活性酸素種のうちの第1の活性酸素種によって、該複数の種子を消毒するステップ;
該栽培表面上の該複数の種子を発芽させるステップ;および
第2の時間にわたって第2の濃度で該液体散布器により複数の活性酸素種のうちの第2の活性酸素種を放出するステップ
を含む、上記方法。
16. 前記第1の活性酸素種が、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、硝酸、ペルオキシルラジカル、アルキルペルオキシル、ヒドロペルオキシル、ペルオキシ亜硝酸アニオン、酸素、スーパーオキシドアニオン、または過酸化物のうちの少なくとも1種を含む、上記15に記載の方法。
17. 前記第2の活性酸素種が、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、硝酸、ペルオキシルラジカル、アルキルペルオキシル、ヒドロペルオキシル、ペルオキシ亜硝酸アニオン、酸素、スーパーオキシドアニオン、または過酸化物のうちの少なくとも1種を含む、上記15に記載の方法。
18. 前記第1の濃度が200ppm~3000ppmの範囲である、上記15に記載の方法。
19. 前記第2の濃度が50ppm~200ppmの範囲である、上記15に記載の方法。
20. 前記第1の時間が18時間~24時間の範囲である、上記15に記載の方法。
【国際調査報告】