(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】多層構造のポリイミドフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20241206BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241206BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241206BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241206BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B7/025
B32B7/022
H05K1/03 610N
H05K1/03 670
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531184
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2022018621
(87)【国際公開番号】W WO2023096348
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163035
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】バック,ソン ユル
(72)【発明者】
【氏名】リー,キル ナム
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミン サン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01D
4F100AB33
4F100AB33D
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4J043ZA43
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4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、コア層の少なくとも1つの外側面に形成された少なくとも1層のスキン層を含み、誘電損失率が0.003以下であり、接着力が1,000gf/cm以上である多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層の少なくとも1つの外側面に形成された少なくとも1層のスキン層を含み、
誘電損失率が0.003以下であり、接着力が1,000gf/cm以上である、
多層ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層を含む3層構造からなる、
請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記多層ポリイミドフィルムの全体厚さが10μm以上100μm以下であり、
前記コア層の厚さが前記多層ポリイミドフィルムの全体厚さの70%以上95%以下であり、
前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層の厚さの合計が前記多層ポリイミドフィルムの全体厚さの5%以上30%以下である、
請求項2に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記コア層は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)およびピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)を含む二無水物酸成分と、
パラフェニレンジアミン(PPD)およびm-トリジン(m-tolidine)を含むジアミン成分とを含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる、
請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記スキン層は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドおよびピロメリティックジアンハイドライドを含む二無水物酸成分と、
パラフェニレンジアミン、m-トリジンおよびオキシジアニリン(ODA)を含むジアミン成分とを含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる、
請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が50モル%以上70モル%以下であり、前記ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が30モル%以上50モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%を基準として、前記パラフェニレンジアミンの含有量が60モル%以上80モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が20モル%以上40モル%以下である、
請求項4に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記コア層は、2以上のブロックを含むブロック共重合体を含む、
請求項4に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項8】
前記ブロック共重合体は、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、50モル%以上60モル%以下の前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドを含む第1ブロックを含み、
前記ポリイミドフィルムのジアミン成分の総含有量100モル%を基準として、30モル%以上40モル%以下の前記m-トリジンを含む第2ブロックを含む、
請求項7に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項9】
前記二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が30モル%以上50モル%以下であり、前記ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が50モル%以上70モル%以下であり、
前記ジアミン成分の総含有量100モル%を基準として、前記パラフェニレンジアミンの含有量が5モル%以上25モル%以下であり、m-トリジンの含有量が60モル%以上80モル%以下であり、前記オキシジアニリンの含有量が5モル%以上25モル%以下である、
請求項5に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項10】
前記多層ポリイミドフィルムは、共押出およびコーティングからなるグループより選択されたいずれか1以上により製造される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多層ポリイミドフィルムと、電気伝導性の金属箔とを含む、
フレキシブル金属箔積層板。
【請求項12】
請求項11に記載のフレキシブル金属箔積層板を含む、
電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電および接着特性に優れた多層ポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide、PI)は、剛直な芳香族主鎖とともに化学的安定性が非常に優れたイミド環をベースとして、有機材料の中でも最高水準の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性、耐候性を有する高分子材料である。
それだけでなく、絶縁特性、低い誘電率のような優れた電気的特性により、微小電子分野、光学分野などに至るまで、高機能性高分子材料として注目されている。
微小電子分野を、例えば、電子製品の軽量化、小型化により、集積度が高くて柔軟な薄型回路基板が活発に開発されており、このような薄型回路基板は、優れた耐熱性、耐低温性および絶縁特性を有しながらも、屈曲が容易なポリイミドフィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が多く活用される傾向にある。このような薄型回路基板を、広義でフレキシブル金属箔積層板とも称し、その例として、金属箔に薄い銅板を用いる時、狭義でフレキシブル銅箔積層板(Flexible Copper Clad Laminate;FCCL)とも称したりする。その他にも、ポリイミドを薄型回路基板の保護フィルム、絶縁フィルムなどとして活用したりする。
【0003】
フレキシブル金属箔積層板の製造方法としては、例えば、(i)金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を流延(cast)、または塗布した後、イミド化するキャスティング法、(ii)スパッタリングまたはメッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、および(iii)熱可塑性ポリイミドによりポリイミドフィルムと金属箔とを熱と圧力で接合させるラミネート法、が挙げられる。
このうち、ラミネート法は、適用可能な金属箔の厚さ範囲がキャスティング法よりも広く、装置費用がメタライジング法よりも安価という点で利点がある。ラミネートを行う装置としては、ロール状の材料を投入しながら連続的にラミネートするロールラミネート装置、またはダブルベルトプレス装置などが用いられている。前記のうち、生産性の観点からみると、熱ロールラミネート装置を用いた熱ロールラミネート法をより好ましく使用することができる。
ただし、ラミネートの場合、前述のように、ポリイミドフィルムと金属箔との接着に熱可塑性樹脂を用いるため、この熱可塑性樹脂の熱融着性を発現させるために、300℃以上、場合によっては、ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)に迫るかそれ以上である400℃以上の熱をポリイミドフィルムに加える必要がある。
【0004】
一般的に、ポリイミドフィルムのような粘弾性体の貯蔵弾性率の値は、常温での値に比べてガラス転移温度を超える温度領域で著しく減少することが知られている。
すなわち、高温を要求するラミネートを行う時、高温でのポリイミドフィルムの貯蔵弾性率が大きく低下し、低い貯蔵弾性率下ではポリイミドフィルムが緩んでラミネート終了後にポリイミドフィルムが平坦な形状に存在しない可能性が高い。言い換えれば、ラミネートの場合、ポリイミドフィルムの寸法変化が相対的に不安定であるといえる。
もう一つ注目すべきは、ラミネートを行う時の温度に比べてポリイミドフィルムのガラス転移温度が著しく低い場合である。具体的には、ラミネートを行う温度でポリイミドフィルムの粘性が相対的に高い状態であるので、相対的に大きな寸法変化が伴い、これによって、ラミネート後、ポリイミドフィルムの外観品質が低下する恐れがある。
したがって、以上の問題を解決して、工程性を大きく改善できる技術の必要性が高いのが現状である。
【0005】
一方、最近、電子機器に多様な機能が内在するにつれ、前記電子機器に速い演算速度と通信速度が要求されており、これを満たすために、10GHz以上の高周波でも誘電損失率が低くて高速通信伝送が可能な薄型回路基板が開発されている。
高周波高速通信を実現するためには、高周波でも電気絶縁性を維持できる高いインピーダンス(impedance)を有する絶縁体が必要である。
インピーダンスは、絶縁体に形成される周波数および誘電定数(dielectric constant;Dk)と反比例の関係であることから、高周波でも絶縁性を維持するためには誘電定数ができるだけ低くなければならない。
しかし、通常のポリイミドの場合、誘電定数が3.4~3.6程度と高周波通信で十分な絶縁性を維持できる程度に優れた水準ではなく、例えば、10GHz以上の高周波通信が行われる薄型回路基板で絶縁性を部分的にまたは全体的に失う可能性が存在する。
【0006】
また、絶縁体の誘電定数が低いほど、薄型回路基板で不望の浮遊容量(stray capacitance)とノイズの発生を減少させることが可能で、通信遅延の原因を相当部分解消できることが知られていることから、ポリイミドの誘電定数をできるだけ低くすることは、薄型回路基板の性能に何より重要な要因として認識されているのが現状である。
もう一つ注目すべきは、10GHz以上の高周波通信の場合、必然的にポリイミドによる誘電損失(dielectric dissipation)が発生するという点である。
誘電損失率(dielectric dissipation factor;Df)は、薄型回路基板の電気エネルギーの浪費程度を意味し、通信速度を決定する信号伝達遅延に密接に関係していて、ポリイミドの誘電損失率をできるだけ低くすることも、薄型回路基板の性能に重要な要因として認識されている。
したがって、誘電損失率が相対的に低いながらも、接着力が高くて安定的な回路の実現が可能なポリイミドフィルムおよびその効果的な製造方法の開発が必要なのが現状である。
以上の背景技術に記載された事項は発明の背景に対する理解のためのものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2012-0133807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様による目的は、接着力に優れ、誘電損失率が相対的に低い多層ポリイミドフィルムおよびその効果的な製造方法を提供することであり、具体的には、二無水物酸の種類、ジアミンの種類、これらの配合比を決定し、また、互いに異なる組成のポリイミド樹脂を多層で構成することに起因して、優れた接着力を有しながら高周波でも低い誘電損失値を有するポリイミドフィルムを提供することである。
本発明の他の態様による目的は、接着力に優れ、誘電損失率が相対的に低い多層ポリイミドフィルムを含み、高い周波数で高速伝送および高速通信に効果的なフレキシブル銅箔積層板を提供することである。
このため、本発明は、その具体的な実施例を提供することを実質的な目的とする。
しかし、本発明が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための、本発明の一態様は、コア層の少なくとも1つの外側面に形成された少なくとも1層のスキン層を含み、
誘電損失率が0.003以下であり、接着力が1,000gf/cm以上である、
多層ポリイミドフィルムを提供する。
本発明の他の態様は、前記多層ポリイミドフィルムと、電気伝導性の金属箔とを含む、
フレキシブル金属箔積層板を提供する。
本発明のさらに他の態様は、前記フレキシブル金属箔積層板を含む、
電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、二無水物酸およびジアミン成分の組成比、反応比などが調整されたポリイミドフィルムを提供することにより、低誘電および接着特性がすべて優れたポリイミドフィルムを提供する。
本発明の他の態様による目的は、接着力に優れ、誘電損失率が相対的に低い多層ポリイミドフィルムを含み、高い周波数で高速伝送および高速通信に効果的なフレキシブル銅箔積層板を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0012】
本明細書において、「二無水物酸」は、その前駆体または誘導体を含むことが意図されるが、これらは技術的には二無水物酸でないかも知れないが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミック酸を形成するはずであり、このポリアミック酸は再度ポリイミドに変換される。
本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体または誘導体を含むことが意図されるが、これらは技術的にはジアミンでないかも知れないが、それにもかかわらず、ジアンハイドライドと反応してポリアミック酸を形成するはずであり、このポリアミック酸は再度ポリイミドに変換される。
本明細書において、量、濃度、または他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられる場合、範囲が別途に開示されるかに関係なく、任意の一対の任意の上方範囲の限界値または好ましい値、および任意の下方範囲の限界値または好ましい値で形成されたすべての範囲を具体的に開示すると理解されなければならない。
数値の範囲が本明細書で言及される場合、他に記述されなければ、その範囲はその終点およびその範囲内のすべての整数と分数を含むことが意図される。本発明の範疇は、範囲を定義する時に言及される特定の値に限定されないことが意図される。
本発明の一実施形態による多層ポリイミドフィルムは、コア層の少なくとも1つの外側面に形成された少なくとも1層のスキン層を含み、誘電損失率が0.003以下であり、
接着力が1,000gf/cm以上であってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層を含む3層構造からなる。
前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層の二無水物酸およびジアミン成分とその組成比は、同一または異なっていてもよい。
また、前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層の厚さは、同一または異なっていてもよい。
【0014】
一実施形態において、前記3層構造のポリイミドフィルムの全体厚さが10μm以上100μm以下であり、前記コア層の厚さが前記多層ポリイミドフィルムの全体厚さの70%以上95%以下であり、前記コア層の一外側面および前記外側面の反対面にそれぞれ形成された前記スキン層の厚さの合計が前記多層ポリイミドフィルムの全体厚さの5%以上30%以下であってもよい。
例えば、前記コア層の厚さが35μm以上45μm以下であり、前記1層のスキン層の厚さが2.5μm以上7.5μm以下であってもよい。
前記コア層および/またはスキン層の厚さが前記範囲を上回るか、下回ると、前記多層ポリイミドフィルムの誘電損失率が高くなって低誘電特性が低下したり、接着力が低下することがある。
【0015】
一実施形態において、前記コア層は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)およびピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)およびm-トリジン(m-tolidine)を含むジアミン成分とを含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる。また、前記スキン層は、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド、およびピロメリティックジアンハイドライドを含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン、m-トリジンおよびオキシジアニリン(ODA)を含むジアミン成分とを含むポリアミック酸溶液をイミド化反応させて得られる。
一実施形態において、前記コア層では、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が50モル%以上70モル%以下であり、前記ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が30モル%以上50モル%以下であり、前記ジアミン成分の総含有量100モル%を基準として、前記パラフェニレンジアミンの含有量が60モル%以上80モル%以下であり、前記m-トリジンの含有量が20モル%以上40モル%以下であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記コア層は、2以上のブロックを含むブロック共重合体を含むことができる。
前記コア層のブロック共重合体は、前記ポリイミドフィルムの二無水物酸成分の総含有量100モル%を基準として50モル%以上60モル%以下の前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドを含む第1ブロックを含み、前記ポリイミドフィルムのジアミン成分の総含有量100モル%を基準として30モル%以上40モル%以下の前記m-トリジンを含む第2ブロックを含むことができる。
前記第1ブロックは、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドとパラフェニレンジアミンとをイミド化反応させて得ることができ、前記第2ブロックは、m-トリジンとピロメリティックジアンハイドライドとをイミド化反応させて得ることができる。また、前記第1ブロックのビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド全部がパラフェニレンジアミンとイミド化され、前記第2ブロックのm-トリジン全部がピロメリティックジアンハイドライドとイミド化されてもよい。
【0017】
一実施形態において、前記スキン層では、前記二無水物酸成分の総含有量100モル%を
基準として、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が30モル%以上50モル%以下であり、前記ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が50モル%以上70モル%以下であり、前記ジアミン成分の総含有量100モル%を基準として、前記パラフェニレンジアミンの含有量が5モル%以上25モル%以下であり、m-トリジンの含有量が60モル%以上80モル%以下であり、前記オキシジアニリンの含有量が5モル%以上25モル%以下であってもよい。
本発明のパラフェニレンジアミンは、剛直なモノマーとしてパラフェニレンジアミンの含有量が増加するにつれ、合成されるポリイミドはさらなる線状の構造を有し、ポリイミドの機械的特性の向上に寄与する。
また、m-トリジンは、特に、疎水性を呈するメチル基を有していて、ポリイミドフィルムの水分に対する寸法安定性に関連する低吸湿特性に寄与する。
【0018】
本発明のビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドに由来するポリイミド鎖は、電荷移動錯体(CTC:Charge transfer complex)と名付けられた構造、すなわち、電子供与体(electron donnor)と電子受容体(electron acceptor)とが互いに近接して置する規則的な直線構造を有し、分子間相互作用(intermolecular interaction)が強化される。
このような構造は水分との水素結合を防止する効果があるので、吸湿率を低下させるのに影響を与えて、水分に対する寸法安定性に影響を与えるポリイミドフィルムの吸湿性を低下させる効果を極大化することができる。
また、ピロメリティックジアンハイドライドは、相対的に剛直な構造を有する二無水物酸成分で、ポリイミドフィルムに適切な弾性を付与できるという点で好ましい。
ポリイミドフィルムが優れた寸法安定性を有するためには、二無水物酸の含有量比が重要である。例えば、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量比が減少するほど、前記CTC構造による低い吸湿率を期待しにくくなり、水分に対する寸法安定性も低下する。
【0019】
また、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドは、芳香族部分に相当するベンゼン環を2個含むのに対し、ピロメリティックジアンハイドライドは、芳香族部分に相当するベンゼン環を1個含む。
二無水物酸成分においてピロメリティックジアンハイドライドの含有量の増加は、同一の分子量を基準とした時、分子内のイミド基が増加すると理解することができ、これはポリイミド高分子鎖に前記ピロメリティックジアンハイドライドに由来するイミド基の比率がビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドに由来するイミド基に比べて相対的に増加すると理解することができる。
すなわち、ピロメリティックジアンハイドライドの含有量の増加は、ポリイミドフィルム全体に対しても、イミド基の相対的増加と見られ、これによって低い吸湿率による水分に対する高い寸法安定性は期待しにくくなる。
逆に、ピロメリティックジアンハイドライドの含有量比が減少すれば、相対的に剛直な構造の成分が減少して、ポリイミドフィルムの弾性が所望の水準以下に低下することがある。
【0020】
このような理由により、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が前記範囲を上回るか、ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が前記範囲を下回る場合、ポリイミドフィルムの寸法安定性が低下することがある。
逆に、前記ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライドの含有量が前記範囲を下回るか、ピロメリティックジアンハイドライドの含有量が前記範囲を上回る場合にも、ポリイミドフィルムの寸法安定性に悪影響を及ぼすことがある。
【0021】
本発明において、ポリアミック酸の製造は、例えば、
(1)ジアミン成分の全量を溶媒中に入れて、その後、二無水物酸成分をジアミン成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(2)二無水物酸成分の全量を溶媒中に入れて、その後、ジアミン成分を二無水物酸成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン成分中の一部の成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して二無水物酸成分中の一部の成分を約95~105モル%の比率で混合した後、残りのジアミン成分を添加し、これに連続して残りの二無水物酸成分を添加して、ジアミン成分および二無水物酸成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(4)二無水物酸成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物中の一部の成分を95~105モル%の比率で混合した後、他の二無水物酸成分を添加し、続いて残りのジアミン成分を添加して、ジアミン成分および二無水物酸成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(5)溶媒中において一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分とをいずれか1つが過剰となるように反応させて、第1組成物を形成し、他の溶媒中において一部のジアミン成分と一部の二無水物酸成分とをいずれか1つが過剰となるように反応させて、第2組成物を形成した後、第1、第2組成物を混合し、重合を完了する方法であって、この時、第1組成物を形成する時、ジアミン成分が過剰の場合、第2組成物では二無水物酸成分を過剰にし、第1組成物で二無水物酸成分が過剰の場合、第2組成物ではジアミン成分を過剰にして、第1、第2組成物を混合し、これらの反応に使用される全体のジアミン成分と二無水物酸成分とが実質的に等モルとなるようにして重合する方法、などが挙げられる。
【0022】
本発明では、前記のようなポリアミック酸の重合方法をランダム(random)重合方式と定義することができ、前記のような過程で製造された本発明のポリアミック酸から製造されたポリイミドフィルムは、寸法安定性および耐化学性を高める本発明の効果を極大化させるという面で好ましく適用可能である。
ただし、前記重合方法は、先に説明した高分子鎖内の繰り返し単位の長さが相対的に短く製造されるので、二無水物酸成分に由来するポリイミド鎖が有するそれぞれの優れた特性を発揮するには限界がありうる。したがって、本発明において特に好ましく利用可能なポリアミック酸の重合方法は、ブロック重合方式である。
一方、ポリアミック酸を合成するための溶媒は特に限定されるものではなく、ポリアミック酸を溶解させる溶媒であればいかなる溶媒も使用可能であるが、アミド系溶媒であることが好ましい。
【0023】
具体的には、前記有機溶媒は、有機極性溶媒であってもよく、詳しくは、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよいし、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)からなる群より選択された1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、単独でまたは2種以上組み合わせて使用可能である。
一つの例において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく使用できる。
【0024】
また、ポリアミック酸の製造工程では、摺動性、熱伝導性、コロナ耐性、ループ硬さなどのフィルムの様々な特性を改善する目的で、充填材を添加してもよい。添加される充填材は特に限定されるものではないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
充填材の粒径は特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定すれば良い。一般的には、平均粒径が0.05~100μm、好まし
くは0.1~75μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~25μmである。
粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると、表面性を大きく損傷させたり、機械的特性が大きく低下する場合がある。
【0025】
また、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性や充填材の粒径などによって決定すれば良い。一般的に、充填材の添加量は、ポリイミド100重量部に対して、0.01~100重量部、好ましくは0.01~90重量部、さらに好ましくは0.02~80重量部である。
充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が現れにくく、この範囲を上回ると、フィルムの機械的特性が大きく損傷する可能性がある。充填材の添加方法は特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法を用いてもよい。
本発明の製造方法において、ポリイミドフィルムは、熱イミド化法および化学的イミド化法により製造される。
【0026】
また、熱イミド化法および化学的イミド化法が並行される複合イミド化法により製造されてもよい。
前記熱イミド化法とは、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥機などの熱源でイミド化反応を誘導する方法である。
前記熱イミド化法は、前記ゲルフィルムを100~600℃の範囲の可変的な温度で熱処理してゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができ、詳しくは、200~500℃、さらに詳しくは、300~500℃で熱処理してゲルフィルムに存在するアミック酸基をイミド化することができる。
【0027】
ただし、ゲルフィルムを形成する過程でもアミック酸中の一部(約0.1モル%~10モル%)がイミド化され、このために、50℃~200℃の範囲の可変的な温度でポリアミック酸組成物を乾燥することができ、これも前記熱イミド化法の範疇に含まれる。
化学的イミド化法の場合、当業界における公知の方法により、脱水剤およびイミド化剤を用いて、ポリイミドフィルムを製造することができる。
複合イミド化法の一例として、ポリアミック酸溶液に脱水剤およびイミド化剤を投入した後、80~200℃、好ましくは100~180℃で加熱して、部分的に硬化および乾燥した後に、200~400℃で5~400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0028】
一方、これまで説明した本発明の多層ポリイミドフィルムは、共押出またはコーティングのいずれか1つ以上の方式を用いて製造できる。
共押出方式は、ポリアミック酸溶液またはこれをイミド化して製造したポリイミド樹脂を貯留槽に充填した後、共押出ダイを用いてキャスティングベルト上に多層押出した後、硬化して多層構造のポリイミドフィルムを製造する方式で、生産性が高く、界面間の異なる種類のポリイミド樹脂が混和されて高い界面接着信頼性を確保することができる。
例えば、本発明の多層ポリイミドフィルムの製造方法は、第1ポリアミック酸溶液または第1ポリアミック酸溶液をイミド化して製造される第1ポリイミド樹脂である第1溶液を第1貯留槽に充填する第1充填ステップと、第2ポリアミック酸溶液または第2ポリアミック酸溶液をイミド化して製造される第2ポリイミド樹脂である第2溶液を第2貯留槽に充填する第2充填ステップと、第1貯留槽に連結された第1流路、第2貯留槽にそれぞれ連結された第2流路および第3流路が内部にそれぞれ形成された共押出ダイを介して第1溶液および第2溶液を共押出する共押出ステップと、共押出されて出た第1溶液および第2溶液を硬化する硬化ステップとを含んで行われる。
【0029】
第1ポリアミック酸溶液は、コア層を形成するためのものであり、ビフェニルテトラカル
ボキシリックジアンハイドライド(BPDA)およびピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)を含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)およびm-トリジン(m-tolidine)を含むジアミン成分とを重合して製造されることが好ましい。
第2ポリアミック酸溶液は、スキン層を形成するためのものであり、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド、およびピロメリティックジアンハイドライドを含む二無水物酸成分と、パラフェニレンジアミン、m-トリジンおよびオキシジアニリン(ODA)を含むジアミン成分とを重合して製造されることが好ましい。
一方、第1溶液として前記第1ポリアミック酸溶液を使用し、第2溶液として前記第2ポリアミック酸溶液を使用する場合、硬化ステップの前に共押出されて出た第1溶液および第2溶液をイミド化するイミド化ステップをさらに含んで行われることが好ましい。
本発明は、上述した多層ポリイミドフィルムと、電気伝導性の金属箔とを含むフレキシブル金属箔積層板を提供する。
【0030】
使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器または電気機器の用途に本発明のフレキシブル金属箔積層板を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む金属箔であってもよい。
一般的なフレキシブル金属箔積層板では、圧延銅箔、電解銅箔という銅箔が多く使用され、本発明においても好ましく使用可能である。また、これら金属箔の表面には防錆層、耐熱層または接着層が塗布されていてもよい。
本発明において、前記金属箔の厚さについては特に限定されるものではなく、その用途によって十分な機能を発揮できる厚さであれば良い。
本発明によるフレキシブル金属箔積層板は、前記多層ポリイミドフィルムの少なくとも一面に金属箔がラミネートされた構造であってもよい。
【実施例】
【0031】
以下、発明の具体的な製造例および実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような製造例および実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が限定されるものではない。
【0032】
製造例:多層ポリイミドフィルムの製造
ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ピロメリティックジアンハイドライド(PMDA)、パラフェニレンジアミン(PPD)およびm-トリジン(m-tolidine、MTD)をブロック共重合反応させて、コア層の製造に使用される第1ポリアミック酸溶液を製造した。
ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド、ピロメリティックジアンハイドライド、パラフェニレンジアミン、m-トリジンおよびオキシジアニリン(ODA)を重合反応させて、スキン層の製造に使用される第2ポリアミック酸溶液を製造した。
コア層およびスキン層の成分および組成比を下記表1に示した。
【表1】
【0033】
共押出方式により、前記製造した第1ポリアミック酸溶液および第2ポリアミック酸溶液を共押出し、イミド化した後、硬化させることにより、コア層を中心にコア層の一外側面
および前記外側面の反対面にそれぞれスキン層が形成された3層ポリイミドフィルムを製造した。
ただし、ここで、コア層は、第1ポリアミック酸溶液を共押出して製造し、スキン層は、第2ポリアミック酸溶液を共押出して製造した。
前記ポリアミック酸の製造時、溶媒は、一般的に、アミド系溶媒として非プロトン性極性溶媒(Aprotic solvent)、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0034】
前記二無水物酸とジアミン成分の投入形態は、粉末、塊および溶液形態で投入することができ、反応初期には粉末形態で投入して反応を進行させた後、以後には、重合粘度調整のために溶液形態で投入することが好ましい。
得られたポリアミック酸溶液は、イミド化触媒および脱水剤と混合されて支持体に塗布される。
使用される触媒の例としては、3級アミン類(例えば、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなど)があり、脱水剤の例としては、無水酸があるが、これに限定されない。
【0035】
実施例および比較例
前記製造例により3層ポリイミドフィルムを製造しながら、コア層とスキン層の厚さを下記表2に示しているように調整して、実施例1~3および比較例1~8の多層ポリイミドフィルムを製造した。
ただし、比較例1および8は、単一層ポリイミドフィルムに相当する。
【表2】
*前記表2のスキン層の厚さは、コア層の一外側面および前記外側面の反対面に形成されたスキン層全体の厚さに相当する。すなわち、2つのスキン層の厚さ全体に相当する。2つのスキン層は、同一の厚さに形成された。したがって、例えば、実施例2の多層(3層)ポリイミドフィルムの1層のスキン層の厚さは5μmである。
製造されたポリイミドフィルムの誘電損失率(Df)および接着力を測定して、下記表3に示した。
誘電損失率(Df)および接着力の測定方法は下記の通りである。
【0036】
(1)誘電損失率(Df)の測定
誘電損失率(Df)は、試料を130℃のオーブンで30分乾燥し、23℃相対湿度50%の環境で24h放置した後、キーサイト(Keysight)社のネットワーク分析器
とQWED社のSPDR共振器を用いて10GHzでの誘電損失率を測定した。
【0037】
(2)接着力の測定
接着力は、ポリイミドフィルムの両面にイノフレックス(Innoflex、1mil、Epoxy type、Innox製品)を置き、1oz銅箔を両面に位置させ、保護用PIを置き、180℃に昇温した後に、1時間30MPaの圧力で熱圧着した。フィルムを15mmの幅に切断して裁断した後に、180゜剥離試験(Peel test)を実施した。
【表3】
測定結果、実施例1~3の多層(3層)ポリイミドフィルムは、誘電損失率が0.003以下であり、接着力が1,000gf/cm以上である特性を示した。
【0038】
これに対し、実施例1~3の多層ポリイミドフィルムのコア層に相当し、厚さが50μmでかつ単一層である比較例1は、接着力が非常に低かった。
また、実施例1~3の多層ポリイミドフィルムに比べてコア層および/またはスキン層の厚さが厚かったり薄い比較例2~7は、誘電損失率が高くなって低誘電特性が低下した。一方、実施例1~3の多層ポリイミドフィルムのスキン層に相当し、厚さが50μmでかつ単一層である比較例8も、誘電損失率が高くなって低誘電特性が低下した。
したがって、本願の適切な範囲内で製造された実施例1~3の多層ポリイミドフィルムは、低誘電および接着特性がすべて優れていたが、本願の適切な範囲を超える場合、本願の多層ポリイミドフィルムの低誘電および接着特性をすべて満足させにくいことを確認することができた。
すなわち、優れた低誘電および接着特性を有しながらも、応用分野に適用可能な多様な条件をすべて満足させる多層ポリイミドフィルムは、本願の適切な範囲内で製造された多層ポリイミドフィルムであることを確認することができた。
【0039】
本発明である多層ポリイミドフィルムおよび多層ポリイミドフィルムの製造方法の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者が本発明を容易に実施できるようにする好ましい実施例に過ぎず、上述した実施例に限定されるものではないので、これによって本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真の技術的な保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められなければならない。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形および変更が
可能であることが当業者にとって明らかであり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、二無水物酸およびジアミン成分の組成比、反応比などが調整されたポリイミドフィルムを提供することにより、低誘電および接着特性がすべて優れたポリイミドフィルムを提供する。
本発明の他の態様による目的は、接着力に優れ、誘電損失率が相対的に低い多層ポリイミドフィルムを含み、高い周波数で高速伝送および高速通信に効果的なフレキシブル銅箔積層板を提供することである。
【国際調査報告】