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特表2024-545868SBCCのためのLNGエクセルギー最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】SBCCのためのLNGエクセルギー最適化
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/50 20170101AFI20241206BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241206BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241206BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C01B32/50
B63H21/38 B
B01D53/62 ZAB
F25J1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532919
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 NL2022050690
(87)【国際公開番号】W WO2023101550
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211667.7
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤスパー・アレクサンダー・ロス
(72)【発明者】
【氏名】アール・ローレンス・フィンセント・フーテール
【テーマコード(参考)】
4D002
4D047
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002DA31
4D002EA05
4D002EA07
4D047AA10
4D047AB00
4D047BA06
4D047BB00
4D047CA07
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC40
(57)【要約】
本発明は、液化天然ガス(LNG)エクセルギー回収部を含む炭素捕捉および液化システムを対象とする。本発明は、より詳細には、二酸化炭素(CO)含有ガスからの、より具体的には海上輸送手段からの排気ガスからの、COガスを液化するためのそのようなシステムを対象とする。本発明は、さらに、エクセルギー回収部を使用してエクセルギーを回収するための方法と、システムを含む海上輸送手段と、二酸化炭素ガスの液化のためのそのようなシステムの使用とを対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CO濃厚ガス流(101)を使用中に供給するように適応されたCO捕捉システム(100)と、
(b)液化CO流(201)を供給するために前記CO濃厚ガス流(101)の少なくとも一部を使用中に液化するように適応されたCO液化部(200)と、
(c)液化天然ガス(LNG)からエクセルギーを回収するためのLNGエクセルギー回収部(300)とを含み、前記LNGエクセルギー回収部は、
LNGを使用中に収容するように適応されたLNGタンク(2)であって、LNG流(301)に対するLNG流出口(21)を含む、LNGタンク(2)と、
加圧LNG流(302)を取得するために前記LNG流(301)を使用中に加圧するように適応された加圧器部(3)であって、LNG流入口(31)と加圧LNG流出口(32)とを含む、加圧器部(3)と、
加圧天然ガス(NG)流(401)を取得するために前記加圧LNG流(302)を使用中に気化させるように適応された気化器部(4)であって、加圧LNG流入口(41)と加圧NG流出口(42)とを含む、気化器部(4)と、
減圧NG流(501)を取得するために前記加圧NG流(401)を使用中に減圧するように適応されたタービン部(5)であって、加圧NG流入口(51)と減圧NG流出口(52)とを含む、タービン部(5)とを含み、
前記LNG流出口(21)は前記LNG流入口(31)に流体接続され、前記加圧LNG流出口(32)は前記加圧LNG入口(41)に流体接続され、前記加圧NG出口(42)は前記加圧NG入口(51)に流体接続され、
前記CO液化部(200)は、使用中、熱が前記加圧LNG流(302)から前記CO濃厚ガス流に伝達され得るように、前記気化器部(4)に熱接続される、炭素捕捉および液化システム(1)。
【請求項2】
前記LNGエクセルギー回収部は、加熱NG流(701)を使用中に供給するための熱交換部(7)をさらに含み、前記熱交換部は減圧NG入口(71)と加熱NG出口(72)とを含み、前記減圧NG入口(71)は前記減圧NG出口(52)に流体接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱交換部(7)は、使用中、熱が前記減圧NG流(501)から前記CO濃厚ガス流(101)に伝達され得るように、前記CO液化部(200)に熱的に接続される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、熱伝達流体(HTF)を使用中に導くように適応された1つまたは複数のHTF回路(8、9)をさらに含み、前記HTF回路は、前記気化器部(4)と前記CO液化部(200)との間および/または前記熱交換部(7)と前記CO液化部(200)との間に前記熱接続の少なくとも一部を設ける、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記加圧器部(3)は、前記LNG流を5バールと40バールとの間、望ましくは6バールと30バールとの間、より望ましくは7バールと20バールとの間の圧力に使用中に加圧するように適応される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記気化器部(4)は、前記加圧天然ガス流を-70℃と-10℃との間、望ましくは-65℃と-15℃との間、最も望ましくは-60℃と-20℃との間の温度に使用中に調整するように適応される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記タービン部は、使用中に電気を生成するように適応され、前記タービン部は、前記加圧器部および/または前記CO捕捉システムに電気的に接続される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエクセルギー回収部(300)内のLNGからエクセルギーを回収するための方法であって、
前記LNGタンク(2)にLNGを供給するステップと、
加圧LNG流(302)を取得するためにLNG流(301)を前記加圧器部(3)に導くステップと、
加圧NG流(401)を取得するために前記加圧LNG流(302)を前記気化器部(4)に導くステップと、
減圧NG流(501)を取得するために前記加圧NG流(401)を前記タービン部(5)に導くステップと、
随意に、加熱NG流(701)を取得するために前記減圧NG流(501)を熱交換部(7)に導くステップとを含み、
CO濃厚ガス流(101)および前記加圧LNG流(302)の熱を交換するステップをさらに含む、方法。
【請求項9】
前記方法は、前記CO濃厚ガス流(101)の熱を前記減圧NG流(501)と交換するステップをさらに含み、望ましくは、前記CO濃厚ガス流の熱を前記加圧LNG流(302)および/または前記減圧NG流(501)と前記交換するステップは、HTFを用いて遂行され、望ましくは、前記HTFはアンモニアである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記減圧NG流(501)の温度が、-140℃と-50℃との間、望ましくは-140℃と-70℃との間、最も望ましくは-140℃と-100℃との間である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記加圧LNG流(302)の圧力が、5バールと40バールとの間、望ましくは6バールと30バールとの間、より望ましくは7バールと20バールとの間である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CO濃厚ガス流(101)は、海上輸送手段からの、少なくとも部分的に浄化されたLNG排気ガスから取得され、前記排気ガスの全量の少なくとも70%、望ましくは少なくとも80%、より望ましくは少なくとも90%、最も望ましくは少なくとも99%が、少なくとも部分的に浄化される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(1)を含む、海上輸送手段。
【請求項14】
CO含有ガスからCO液体を取得するためにCOガスを液化するための、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスエクセルギー回収部を含む炭素捕捉および液化システムを対象とする。本発明は、より詳細には、二酸化炭素(CO)含有ガスからの、より具体的には海上輸送手段からの排気ガスからの、COガスを液化するためのそのようなシステムを対象とする。本発明は、さらに、エクセルギー回収部を使用してエクセルギーを回収するための方法と、システムを含む海上輸送手段と、二酸化炭素ガスの液化のためのそのようなシステムの使用とを対象とする。
【背景技術】
【0002】
CO排出量は、とりわけ、化石燃料を燃焼する産業プロセスに起因して過去数十年間に顕著に増加した。量の増加は、気候変動の主要因のうちの1つであると見なされている。海事部門は、世界中のCO排出のうちの約3%を占める。それゆえ、国際海事機関(IMO: International Maritime Organization)は、海事部門による排出を、1990年と比較して2050年までに少なくとも50%に最小化しなければならないという温室ガス削減目標を設定した。これらの目標を達成するために、様々な解決策が提案されている。そのような解決策は、とりわけ、燃料、速度を変更すること、または向かい風を最小化するために異なる帆を使用することを含む。
【0003】
石油ベース燃料または重油燃料に対する有望な代替品として見られる燃料の1つのタイプは、LNGである。今日では、燃料源としてLNGを使用する、約200隻の大型船舶が存在する。この数字は、今後数年にわたって増加することが予期される。しかしながら、二酸化炭素は、依然として、LNGからの排気ガスの中の一成分である。一般的に、そのような排気ガスは、3~5%のCOを含み、残りの成分は、水、窒素、酸素、およびいくつかの微量不純物を含む。
【0004】
LNGは、メタンを主に(すなわち、90%以上)含む液体混合物である。他の構成物質は、窒素、プロパン、およびエタンを含み得る。LNGは、一般的に、大気圧(約1バール)において約-162℃において貯蔵される。
【0005】
船舶からの二酸化炭素の排出をさらに削減するための解決策は、捕捉された二酸化炭素ガスの液化のためのLNGからのエクセルギー回収と一体化された、排気ガスからの二酸化炭素ガスを捕捉するための船舶ベースの炭素捕捉(SBCC: ship-based carbon capture)を使用することである。これは、たとえば、Rosら(GHGT-15、2021年3月15~18日、UAE、アブダビ、およびRosら、国際温室効果ガス制御ジャーナル、第114巻、2022年、103575)により記載されており、Rosらはさらに、SBCCは短期間の二酸化炭素排出の削減に大きな役割を果たすことができたことを記載している。SBCCは、LNG燃料船にCO捕捉と、液化と、液化COの船上貯蔵とを実装することを必然的に伴う。たとえば、船舶は、船舶からの排気ガスからCOを吸収し、続いてCO濃厚ガスを生成することを可能にするCO捕捉システムを含み得る。次いで、CO濃厚ガスの中の二酸化炭素が液化され、船上に貯蔵され得る。LNGエクセルギーは、LNGの気化によって熱として回収され得、その熱は、次に、COガスを液化するために使用され得る。言い換えれば、そのようなシステムは、CO捕捉においてLNGからのエクセルギー回収を利用することができる。本明細書では、エクセルギーは、システムがその環境と自然に熱力学的に平衡になることによってシステムから取得され得る有用な仕事の量を記述するために使用される用語である。大気温度と比較して非常に低いLNGの温度(約-162℃対約20℃)に起因して、エクセルギー回収の可能性は非常に高い。
【0006】
US2010/0251763では、天然ガス輸送および処理のための装置および方法が記述されている。しかしながら、この装置は、CO捕捉システムを含まない。CN106016968では、COを液化するための方法が記述されている。
【0007】
前述のRosらの公表文献に記載されているシステムの欠点は、LNGの気化によって取得される熱は、排気ガスの中に存在するCOの約60~80%しか液化できないことである。CO捕捉システムは、一般に、煙道ガスの中のCOの約90%以上を捕捉することができるので、CO捕捉効率は、したがって、LNGの気化エネルギー利用可能性に限定される。捕捉効率をさらに増加させるために、追加の冷凍機器が追加のエネルギーを供給するために設置され得るが、これは、一般的に、非常に資本集約的であり、システムの運用コストを増加させる。
【0008】
LNGのためのエクセルギー回収システムは、CN103075250、WO2020180015、およびDoroszらにより(エントロピー、2018年、20、59)の中でも記述されている。これらのシステムでは、追加の電気が生成され、それは、これらのシステムの背後の主たる動作原理である。しかしながら、LNGを気化させるために必要な熱は、蒸気の冷却水の形でシステムに追加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US2010/0251763
【特許文献2】CN106016968
【特許文献3】CN103075250
【特許文献4】WO2020180015
【特許文献5】US1783901
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Rosら、GHGT-15、15~18ページ、2021年3月、UAE、アブダビ
【非特許文献2】Rosら、国際温室効果ガス制御ジャーナル、第114巻、2022年、103575
【非特許文献3】Doroszら、エントロピー、2018年、20、59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らの目的は、増加された全体的CO捕捉効率を可能にするLNGからのエクセルギー回収に基づくシステム、望ましくは海上システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、この目的は、LNGからのエクセルギー回収を改善することによって驚異的に達成され得ることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるシステムの望ましい実施形態を示す図である。
図2】熱交換部を含む本発明によるシステムの望ましい実施形態を示す図である。
図3】Aspen Plus(登録商標)ソフトウェアにおいて実行された原理実験の理論的証明の結果を示す図である。
図4】理論的に計算された純発電量を示す図である。
図5】理論的に計算された純熱需要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様では、本発明は、
(a)CO濃厚ガス流(101)を使用中に供給するように適応されたCO捕捉システム(100)と、
(b)液化CO流(201)を供給するためにCO濃厚ガス流(101)の少なくとも一部を使用中に液化するように適応されたCO液化部(200)と、
(c)液化天然ガス(LNG)からエクセルギーを回収するための液化天然ガスLNGエクセルギー回収部(300)と
を含む炭素捕捉および液化システム(1)を対象とする。
【0015】
LNGエクセルギー回収システムは、LNGを使用中に収容するように適応されたLNGタンク(2)を含む。燃料タンクは、LNG流がLNGエクセルギー回収システムの後の部分と流体接続することができるように、LNG流(301)に対するLNG流出口(21)を含む。適切な燃料タンクが市販されており、一般的に、大気圧(約1バール)かまたは約2もしくは3バールなどのより高い圧力において、-162℃など、-170℃と-155℃との間の温度においてLNGを貯蔵するように適応される。
【0016】
エクセルギー回収部は、加圧LNG流(302)を取得するためにLNG流(301)を使用中に加圧するように適応された加圧器部(3)をさらに含む。加圧器部は、LNG流入口(31)と加圧LNG流出口(32)とを含む。典型的な実施形態では、加圧器部(3)は、LNG流を5バールと40バールとの間、望ましくは6バールと30バールとの間、より望ましくは7バールと20バールとの間の圧力に使用中に加圧するように適応される。加圧器は、一般的に、流体ポンプである。
【0017】
さらに、エクセルギー回収部は、加圧天然ガス(NG)流(401)を取得するために加圧LNG流(302)を使用中に気化させるように適応された気化器部(4)を含み、気化器部は、加圧LNG流入口(41)と加圧NG流出口(42)とを含む。気化部は、LNGからエクセルギーの少なくとも一部を回収するために1つまたは複数の気化デバイスを含み得る。気化器部内で使用される気化器デバイスのタイプは、特に限定されない。適切な気化器デバイスは、たとえば、周囲環境を熱源として使用する。適切な気化器デバイスの特定のタイプは、プレート式熱交換器ならびにシェルアンドチューブ熱交換器を含み得る。望ましくは、気化器部(4)は、加圧天然ガス流を-70℃と-10℃との間、望ましくは-65℃と-15℃との間、より望ましくは-60℃と-20℃との間の温度に使用中に調整するように適応される。この温度は、一般的に、CO濃厚ガス流の圧力に依存する。なぜならば、加圧LNG流は、使用中に、加圧NG流を取得するためにCO濃厚ガス流と熱を交換するからであり、かつより高い圧力においてCOを液化することは、より低い圧力においてCOを液化するよりも冷たくならないからである(下記参照)。
【0018】
エクセルギー回収部は、減圧NG流(501)を取得するために加圧NG流(401)を使用中に減圧するように適応されたタービン部(5)をさらに含む。NG流を減圧することは、たとえば、システムの他の部分において利用され得る電気を生成するという望ましい結果を与え得ることが判明した。その上、本発明者らは、有利には、NG流を減圧することで、存在することが望ましいシステムのさらなる部分(すなわち、熱交換部)において追加のエクセルギー回収が可能になることを発見した。このさらなる部分は、タービン部の減圧NG流出口(52)を介してタービン部に接続され得る。
【0019】
タービンは、加圧NG流入口(51)を介して加圧NGを供給され得る。上記の本明細書で説明されるように、タービン部は、最も望ましくは、それを使用する間に電気を生成するように適応される。有利には、使用中にタービンから取得され得る電気は、使用中に加圧器部において消費される電気より多い。生成された電気は、システムの他の部分において、たとえば、CO捕捉システム(100)、CO液化部(200)、および/または加圧器部(3)において使用され得る。その結果、タービン部は、CO捕捉システム(100)、CO液化部(200)、および/または加圧器部(3)に電気的に接続され得る。これらの電気的接続は、実際には、様々な部分を電力供給網に接続することによって遂行され得ることが諒解されよう。
【0020】
したがって、上記から、LNG流出口(21)はLNG流入口(31)に流体接続され、加圧LNG流出口(32)は加圧LNG入口(41)に流体接続され、加圧NG出口(42)は加圧NG入口(51)に流体接続される。
【0021】
本発明のシステムでは、CO液化部(200)は、使用中、熱(すなわち、負の熱、低温(cold)とも呼ばれる)が加圧LNG流(302)からCO濃厚ガス流(101)に伝達され得るように、気化部(4)に熱接続される。この熱伝達は、CO濃厚ガス流の温度の低下を促進し、一般に、冷却されたまたはさらには液化されたCO流(201)を取得するために、CO濃厚ガス流の少なくとも一部の液化をさらに促進することができる。
【0022】
CO捕捉システム(100)は、特に限定されない。システムは、一般的に市販されている従来の二酸化炭素捕捉システムに基づき得る。そのような市販のCO捕捉システムの背後にある原理は、とりわけ、US1783901に記述されている。US1783901は、一般的に、二酸化炭素を含むガスを、アミンベースの溶剤などのアルカリ溶剤を含む吸収体に供給することを含む。COは、溶剤によって吸収され得、吸収体から退出可能なCO希薄ガスを残す。CO濃厚液体流(すなわち、吸収されたCOを有する溶剤)は、次いで一般的に、再生器に供給され、溶剤は再生されて、ガス状のCOが、溶剤から二酸化炭素を脱着することによって放出される。したがって、これが、CO濃厚ガス流を供給する。CO濃厚ガス流は、少なくとも2バールの圧力など、高い(すなわち、周囲圧力より高い)圧力において供給され得る。その結果、一般的に、CO捕捉システム(100)は、使用中にCO含有ガスからCOを吸収してCO濃厚液体分率(liquid fraction)を供給する吸収体部を含む。さらに、CO捕捉システムは、一般的に、使用中にCO濃厚留分からCO濃厚ガス流(101)を供給する再生器部を含む。CO濃厚ガス流は、さらに、とりわけCO液化部において処理され得る。
【0023】
本発明者らは、CO捕捉システムに供給され得る二酸化炭素含有ガスが、輸送手段から得られ得ることに気付いた。望ましくは、二酸化炭素含有ガスは、海上輸送手段からの排気ガスである。その主燃料がLNGである限り、任意の海上輸送手段で十分である。それらの例には、クルーズ船、起重機船、浚渫船、および貨物船を含むことができる。これらは、一般的に、船上において本発明によるシステムを支援するのに十分な大きさである。それゆえ、本発明は、炭素捕捉および液化のためのシステムを含む海上輸送手段も対象とする。炭素捕捉および液化システムが、浮遊デバイス上に設けられ得ることが諒解されよう。炭素捕捉および液化システムの構成要素は、海上で利用可能な制限された空間を活用するために、効率的に組み合わされて統合され得る。その結果、本発明による炭素捕捉および液化システムは、望ましくは、海上システムであり、有利には、海上アプリケーションのためのものである。
【0024】
COガスを液化するために必要な負の熱(すなわち、低温)の量は、ガスが加圧される圧力に依存する。たとえば、20バールにおけるCOを液化するには、実質的に、7バールにおけるCOを液化するよりも少ない低温を要する。それゆえ、CO濃厚ガス流の中のすべてのCOを液化するためにLNGから回収されるのに必要なエクセルギーの量は、液化されたCOの所望の最終圧力に依存する。本発明の典型的な実施形態では、COが、気化部のみによるエクセルギー回収が十分ではない圧力において液化される。それらの実施形態では、追加のエクセルギーが、望ましくは、タービン部から取得された減圧NG流から回収される。有利には、タービン内でNG流を減圧することは、NG流の温度の低下、たとえば、以下でより詳細に説明するように、-140℃と-50℃との間の温度につながる。温度におけるこの低下は、負の熱(すなわち、低温)の形でNGから回収可能な追加のエクセルギーを可能にする。したがって、この低温をCO濃厚ガス流に伝達することは、この流れの液化をさらに促進し得る。その結果、エクセルギー回収部は、望ましくは、加熱NG流(701)を使用中に供給するために、図2に示されるような熱交換部(7)も含む。熱交換部は、減圧NG入口(71)と加熱NG出口(72)とを含む。減圧NG入口は、減圧NG出口(52)に流体接続される。熱交換器のタイプは、特に限定されない。適切な熱交換器は、シェルおよびチューブ熱交換器とプレートフレーム熱交換器とを含む。
【0025】
熱交換部(7)は、CO液化部(200)に熱接続され得る。この熱接続は、熱が、CO濃厚ガス流から減圧NG流(501)に伝達されることを可能にする。このようにして、CO濃厚ガス流の少なくとも一部が冷却され得、望ましくは、液体CO流(201)を取得するために液化され得る。
【0026】
システムは、図1および図2に示されるように、NG流入口(61)を介してエンジン部に導かれるNGを使用中に消費するように適応されたエンジン部(6)をさらに含み得る。
【0027】
本明細書で説明されるシステムおよび部分の各々は、それぞれのシステムおよび部分の機能を一緒に実現することができる1つまたは複数のユニット、デバイス、構成要素などを含み得ることが諒解されよう。その上、システムおよび部分の各々は、前記タスクを遂行することを支援するために、弁、流体ポンプ、パイプ、船舶などの1つまたは複数のユニット、デバイス、構成要素を含み得る。特に、液化部は、COの液化を作動させるために、1つまたは複数の個別のユニットを含み得る。加えて、部分は、一般にCOの液化に必要なCO濃厚ガス流の圧力を増加させることを可能にする1つまたは複数の圧縮器ユニットを含むことができる。CO濃厚ガスは、いくつかの実施形態では、高い圧力においてCO捕捉システムから取得され得るので、1つまたは複数の圧縮器ユニットの必要性が制限され得る。気化部および/または熱交換部は、それぞれ、CO液化部の1つまたは複数のユニットに個別に熱的に接続され得る。LNG流および/またはNG流のCOガス流との熱交換は、熱伝達流体(HTF)の支援があってもなくても達成され得る。望ましくは、熱接続は、HTFによって少なくとも部分的に設けられる。適切なHTFは、アンモニア(NH)または水/グリコール混合物を含む。望ましくは、HTFはアンモニアである。なぜならば、アンモニアは一般的に最適な熱伝達を可能にし、かつアンモニアはLNG流および/またはNG流の低い温度において液体であり得る(そして固体でない)からである。図2に示されるように、システムは、その結果、望ましくは、HTFを使用中に導くように適応された1つまたは複数の熱伝達流体回路(8、9)を含む。HTF回路は、望ましくは、気化器部(4)とCO液化部との間、および/または熱交換部(7)とCO液化部との間に熱接続の少なくとも一部を設ける。それゆえ、HTFは、CO濃厚ガス流から加圧LNG流および/または減圧NG流に熱を伝達することができる中間熱媒体としての役目を果たし得る。
【0028】
本発明のさらなる態様は、エクセルギー回収部(300)を用いてLNGエクセルギーを回収するための方法を対象とする。このエクセルギー回収システムは、本明細書で説明された炭素捕捉および液化システム(1)の一部であり得るか、またはエクセルギー回収システムは、別の用地で取得されるCOガス流の液化に有用な熱を供給するために、独立して設けられ得る。たとえば、1つまたは複数の炭素捕捉設備および1つまたは複数のLNG燃焼エンジンが、広大な(地上の)工業用地などの(地上の)領域の中で独立して作動され得るか、または独立して設置され得る。そのような場合には、LNG燃焼エンジンの前にエクセルギー回収部を設置して、LNGエクセルギーを独立して回収し、回収されたエクセルギーを使用して異なる場所でCOを液化すること、またはCOガスを異なる場所からCO液化部に結合されたエクセルギー回収部に導くことが可能である。
【0029】
その結果、本発明の方法は、エクセルギー回収システム(300)を設けるステップ、および
- LNGタンク(2)にLNGを供給するステップと、
- 加圧LNG流(302)を取得するためにLNG流(301)を加圧器部(3)に導くステップと、
- 加圧NG流(401)を取得するために加圧LNG流(302)を気化器部(4)に導くステップと、
- 減圧NG流(501)を取得するために加圧NG流(401)をタービン部(5)に導くステップと、
- 随意に、加熱NG流(701)を取得するために減圧NG流(501)を熱交換部(7)に導くステップと
を含む。方法は、CO濃厚ガス流(101)の熱を加圧LNG流(302)と交換するステップをさらに含む。
【0030】
LNGタンクに供給されたLNGは、一般的に、約2バールなど、5バール未満の圧力と、約-162℃など、-165℃と-160℃との間の温度とを有する。加圧部では、LNG流の圧力は、望ましくは、5バールと40バールとの間の圧力まで高められる。一般的に高圧が望ましい。なぜならば、高圧は、より高いタービン部の効率に寄与し得るからである。加えて、より高い圧力は、一般的に、タービン部の後で取得される減圧NGガス流のより低い温度をもたらし、それは、続いて、より高いエクセルギー回収をもたらし得る。なぜならば、減圧NG流と環境との間の温度差は、減圧NG流のより低い温度に対してより大きいからである。このエクセルギーは、たとえば、オプションの熱交換部を使用することによってCO液化のために使用され得る。その結果、圧力は、6バールと30バールとの間、より望ましくは7バールと20バールとの間など、7バール以上の圧力に調整されることが望ましい。少なくとも8バールの圧力が、CO液化の観点から、海上輸送手段からの排気ガスなど、LNG排気ガスからのCOの100%までを捕捉して液化するのに十分なエクセルギー回収をもたらすことが発見された。方法は、その結果、海上アプリケーションに対して特に適切である。
【0031】
加えて、高圧流は、より多くの電気がタービン内で生成されることを可能にする。たとえば、約8バールの圧力を有する加圧NG流をタービン部を通して流すことで、CO捕捉および液化システムが存在する場合、そのシステムに必要な電気の約25%を供給することができる。それゆえ、有利には、本発明は、二酸化炭素の環境への排出を最小化するばかりでなく、追加の電気を供給するためにも使用され得る。望ましい圧力は、圧力を達成するために必要な電気、およびタービン部の効率からの最終利益など、いくつかの要因を平衡させることによって決定され得ることに留意されたい。たとえば、加圧器部内に加圧LNG流を供給するのに必要な電気は、高圧に対して十分であり得る一方で、タービン部の効率は、この必要な電気を平衡させるのに十分ではない。
【0032】
加圧LNG流は、加圧NG流(401)が取得されるように温度を高めるために、加圧器部から気化器部(4)に導かれる。加圧LNG流は、約-162℃など、-165℃と-160℃との間の温度を有し得る。加圧NG流の温度は、-70℃と-10℃との間、望ましくは-65℃と-15℃との間、最も望ましくは-60℃と-20℃との間であり得る。上記で詳述したように、温度は、一般的に、CO濃厚ガス流の圧力および従って液化温度に依存する。温度は、加圧NG流の高圧と共に、タービン効率の最適化を可能にする。
【0033】
加圧NG流(401)が、圧力を低下させて減圧NG流(501)を取得するためにタービン部(5)に導かれる。所与の体積内のガスの圧力を低下させることは、ガスの膨張と、それに付随してガスの温度低下とをもたらす。減圧NG流の温度に応じて、減圧NG流は、エンジンもしくは燃焼反応器内で直接使用されてもよく、または減圧NG流は、最初にオプションの熱交換部(7)に導かれてもよい。たとえば、温度が約0℃である場合、減圧NGガス流は、直接エンジン部に導かれ得る。
【0034】
減圧NG流(501)の温度が十分に低い場合、この流れの熱を熱交換部(7)内のCO濃厚ガス流(101)と交換することによって、追加のエクセルギーが熱交換部(7)内で回収され得る。たとえば、減圧NG流の温度が-140℃と-50℃との間、望ましくは-140℃と-70℃との間、最も望ましくは-140℃と-100℃との間の温度を有する場合、エクセルギーは、依然として効率的に回収され得る。熱交換は、所望のアプリケーション(たとえば、エンジン部)に適切な温度を有する加熱NG流(701)をもたらす。
【0035】
望ましくは、CO濃厚ガス流の熱を加圧LNG流および/または減圧NG流と交換することは、望ましくはアンモニアを含むHTFを用いて遂行される。HTFとしてアンモニアを使用することは、アプリケーションに直接使用するには低すぎることがある温度を有する加熱NG流(701)をもたらす可能性がある。温度は、約-20℃など、-23℃と-18℃との間であり得る。その結果、1つまたは複数の追加の熱交換ユニットが、熱交換部内に存在し得る。
【0036】
減圧または加熱NG流がエンジン部に導かれる場合、排気ガスが生み出される。排気ガスは、一般的に、少なくとも200℃または少なくとも350℃など、100℃より高い温度を有する。排気ガスからの熱も、熱交換器によって抽出され得る。排気ガスからのエネルギーは、たとえば、CO捕捉システム内で使用され得る。熱交換器の後、排気ガスは、約135℃の温度を有し得る。
【0037】
望ましくは、方法は、海上で、望ましくは、浮遊デバイス上で、または海上輸送手段の上で遂行される。その結果、CO濃厚ガス流(101)は、望ましくは、少なくとも部分的に浄化された、海上輸送手段からのLNG排気ガスから取得される。たとえば、LNG排気ガスは、上記の本明細書で説明されたように、炭素捕捉および液化システム(1)のCO捕捉システム内で少なくとも部分的に浄化され得る。一般的に、排気ガスの全量の少なくとも70%、望ましくは少なくとも80%、より望ましくは少なくとも90%、最も望ましくは少なくとも99%が、少なくとも部分的に浄化される。好ましくは、排気ガスのほぼすべてがCO捕捉システムに導かれて、環境への排出を最小化する。
【0038】
本発明によるシステムおよび/または方法を用いて、環境へのCO排出は、十分な量を削減され得る。追加のボーナスとして、CO捕捉システムなど、様々なアプリケーションに使用され得る追加の電気も供給される。
【0039】
明解で簡潔に説明するために、本明細書では、特徴は、同じまたは別々の実施形態の一部として説明されるが、本発明の範囲は、説明される特徴の全部または一部の組合せを有する実施形態を含み得ることが諒解されよう。
【0040】
本発明は、さらに、以下の非限定的な例によって説明され得る。
【実施例1】
【0041】
概念実証
インシリコ(in silico)実験における原理実証が、Aspen Plus(登録商標)ソフトウェアにおいて行われた。その結果が、図3に示される。
【0042】
三角形は比較例を表し、タービン部および熱交換部は存在しない。図示のように、CO捕捉および液化のためにLNGによって供給される電気を表す下方の三角形は、0%である。CO液化のためにLNGによって供給される熱を表す上方の三角形は、約80%である。
【0043】
それらの結果は、さらに、本発明によるシステムに対して、8バール以上の圧力において、ガス中に存在するCOの100%が、LNG内の利用可能な(負の)熱を用いて液化され得ることを示す。CO捕捉システムに必要な電気の約25%が、同じく供給される。
【実施例2】
【0044】
純発電量
インシリコ実験が、1kg/sのLNG流を用いて遂行された。本明細書では、純発電量(すなわち、加圧器部に必要な電気をタービン部により生成される電気から差し引いたもの)が、ポンプ出口圧力(すなわち、加圧LNG流の圧力)に基づいて決定された。それらの結果が、20バールまでの圧力に対して図4に示される。図示のように、ポンプ出口圧力の上昇につれて、純発電量が増加する。
【実施例3】
【0045】
純熱需要
インシリコ実験が、1kg/sのLNG流を用いて遂行された。純熱需要(すなわち、気化器部に対する熱需要と熱交換部に対する熱需要とを加えたもの)が、ポンプ出口圧力に基づいて決定された。本明細書では、熱需要は、LNGから放出される負の熱を説明するために使用される。それらの結果が、20バールまでの圧力に対して図5に示される。ポンプ出口圧力が増加するにつれて、より高い純熱需要がもたらされる。
【符号の説明】
【0046】
1 炭素捕捉および液化システム
2 LNGタンク
3 加圧器部
4 気化器部
5 タービン部
6 エンジン部
7 熱交換部
8 熱伝達流体回路
9 熱伝達流体回路
21 LNG流出口
31 LNG流入口
32 加圧LNG流出口
41 加圧LNG流入口
42 加圧NG流出口
51 加圧NG流入口
52 減圧NG流出口
61 NG流入口
71 減圧NG入口
72 加熱NG出口
100 CO捕捉システム
101 CO濃厚ガス流
200 CO液化部
201 液化CO
300 液化天然ガス(LNG)エクセルギー回収部
301 LNG流
302 加圧LNG流
401 加圧天然ガス(NG)流
501 減圧NG流
501a 減圧NG流
701 加熱NG流
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】