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特表2024-545885V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法
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  • 特表-V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法 図1
  • 特表-V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法 図2
  • 特表-V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法 図3
  • 特表-V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】V族元素の新規無機シリル及びポリシリル誘導体、並びにそれらの合成方法及び堆積のための使用方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/00 20060101AFI20241206BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 9/90 20060101ALN20241206BHJP
   C07F 9/68 20060101ALN20241206BHJP
【FI】
C01B33/00
C07F19/00
C07F9/90 CSP
C07F9/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536281
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022053205
(87)【国際公開番号】W WO2023121973
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,328
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】リー,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ジラール,ジャン マルク
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ペン
【テーマコード(参考)】
4G072
4H050
【Fターム(参考)】
4G072AA05
4G072AA50
4G072GG03
4G072HH03
4G072HH07
4G072HH29
4G072HH50
4G072LL03
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM02
4G072RR12
4H050AA01
4H050AA02
4H050WA19
4H050WA29
(57)【要約】
【解決手段】 V族元素含有前駆体、その合成方法、及び膜堆積におけるその使用方法が開示される。前駆体は、(SiR3-mA(Si2a+1、(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1、又はA(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1)(これらの式中、a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;m=1~3であり;n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;A=As、P、Sb、Biであり;Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)である。合成方法には、ハロ(ポリ)シランとAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との間の一段階、二段階、若しくは三段階の反応、又は2種若しくは3種のハロ(ポリ)シランとAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との混合物とのワンポット混合反応が含まれる。堆積方法には、CVD、PECVD、ALD、PEALD、流動性CVD、HW-CVD、エピタキシーなどが含まれる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
V族元素含有化合物の合成方法であって、
A(SiRを、X-Si2a+1、X-Si2b+1、及びX-Si2c+1からなる群から選択される1、2、又は3種類のハロ(ポリ)シランと連続して又は混合物として接触させること、並びに
以下の段階的な全体反応:
a)一段階反応:
A(SiR+mX-Si2a+1→(SiR3-mA(Si2a+1+mX-SiR
b)二段階反応:
A(SiR+nX-Si2a+1→(SiR3-nA(Si2a+1+nX-SiR
(SiR3-nA(Si2a+1+pX-(Si2b+1)→(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1p+pX-SiR、又は
c)三段階反応:
A(SiR+X-Si2a+1→(SiRA(Si2a+1)+X-SiR
(SiRA(Si2a+1)+X-Si2b+1→(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-SiR
(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-Si2b+1→A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1)+X-SiR
により、
或いは2種又は3種のハロ(ポリ)シランの混合物を用いたワンポット反応:
A(SiR+xX-Si2a+1+yX-Si2b+1+zX-Si2c+1→A(Si2a+1(Si2b+1(Si2c+1(SiR(3-x-y-z)+(x+y+z)X-SiR
により、A(SiRを脱ハロシリル化して、V族元素含有化合物:
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
を形成すること、
を含み、これらの式中、
X=Cl、Br、又はIであり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
x=0~3であり、y=0~3であり、z=0~3であり、x+y+z=1~3であり;
A=As、P、Sb、Biから選択されるV属元素であり;
Rが、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される、方法。
【請求項2】
アルカン若しくは芳香族若しくはハロアルキルシラン溶媒、又はそれらの混合物から選択される溶媒が添加され、A(SiRに対する前記溶媒の比率が0~99重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比が1:99~99:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
XがClである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロ(ポリ)シランが、Cl-SiH、Cl-Si、又はCl-Siである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rがメチル基(Me)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒と反応生成物を分離して前記V族元素含有化合物を単離すること;並びに
前記V族元素含有化合物を精製すること;
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記V族元素含有化合物の純度が>93%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バッチ式プロセスである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が-20℃~150℃の範囲の温度に維持される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記V族元素含有化合物が、P(SiH、P(SiR)(SiH、P(SiR(SiH)、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、As(SiH、As(SiR)(SiH、As(SiR(SiH)、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(SiR)(SiH、Sb(SiR(SiH)、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si、Sb(SIR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si3、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択され、これらの式中のRが、Me、Et、nPr、iPr、tBu、nBu、iBu、又はsBuから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
RがMeである場合に、前記V族元素含有化合物が、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、As(SiH、As(TMS)(SiH、As(TMS)(SiH)、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(TMS)(SiH、Sb(TMS)(SiH)、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si3、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(TMS)(SiH)(Si)、As(TMS)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
A=Pである場合に、前記V族元素含有化合物が、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、及びP(Si)(Siから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
下記式:
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
A=As、P、Sb、Biから選択されるV族元素であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される、V族元素含有化合物。
【請求項15】
前記V族元素含有化合物の純度が>98%である、請求項14に記載のV族元素含有化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月23日出願の米国仮特許出願第63/293,328号に、優先権の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、V族元素含有前駆体、特に下記一般式を有するV族元素含有前駆体:
(SiR3-mA(Si2a+1又は
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
A=As、P、Sb、Biであり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)、
その合成方法、及び半導体膜堆積におけるその使用方法、ハロ(ポリ)シランとAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との間の一段階、二段階、若しくは三段階の反応、又は2種若しくは3種のハロ(ポリ)シランの混合物とAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体とのワンポット混合反応を含む合成方法;並びにCVD、PECVD、ALD、PEALD、流動性CVD、HW-CVD、エピタキシーなどを含む、SiとV族元素とを含有する膜の堆積方法に関する。
【背景技術】
【0003】
V族元素を含む薄膜は、固体トランジスタ、不揮発性相変化メモリ(PCM)、太陽電池、III-V族化合物、及び光記憶材料などにおけるpドープSi又はSiGe半導体チャネル及びコンタクト層を含むさまざまな用途で使用されている。III-V族化合物半導体は、たとえばバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、レーザー、IR検出器、LED、ワイドバンドギャップ半導体、量子井戸又は量子ドット構造、太陽電池、及びモノリシックマイクロ波集積回路など、トランジスタ、オプトエレクトロニクス、及びその他の利用分野を含む多くの異なる利用分野で使用することができる。
【0004】
いくつかのIII-V族半導体は、固体電子デバイスにおける使用に魅力的な特徴(たとえば、高い熱安定性、高い電子移動度、及び低いバンドギャップ)を示す。しかしながら、III-V族半導体は、広く使用されているIV族半導体よりも合成が困難であり、またIII-V族化合物への適切なルートがないことが、IV族化合物の代替物としての受け入れの妨げになっている。
【0005】
一部のV族元素含有化合物(又はV族化合物)は、シリル及びポリシリル配位子、すなわちP(SiH、P(Si、及びAs(SiH)などを使用して製造されてきた。そのような化合物の薄膜堆積プロセスのための使用は、相互連結したIII-V-(IV)3「ビルディングブロック」を形成することによるリンドーパントとして、エピタキシャル用途のためのP(SiHについて開示されており(ref)、平均してダイヤモンドのような対称性を持つ高度に安定な結晶構造をもたらす。
【0006】
関連する先行技術には以下のものが含まれる。
【0007】
Tice et al.(Dalton Trans.,2010,39(19),4551-4558)には、P(SiHがP(SnMe+3SiHBr→(SiHP+3MeSnBrによって合成されることが開示されている。
【0008】
Amberger et al.(Angew.Chem.Int.Ed.,1962,1,52)には、(SiHPが3KPH+3SiHBr→P(SiH+2PH+3KBrによって約55%の収率で合成されることが開示されている。
【0009】
Amberger et al.(Angew.Chem.,1962,74,293)には、穏やかな条件で、(SiHAsが3KAsH+3SiHBr→As(SiH+2AsH+3KBrの反応によって約50%の収率で合成され単離されることが開示されている。
【0010】
Amberger et al.(Zeitschrift fuer Naturforschung 1963,18b 157)には、低温でエーテル中でLiSb+SiHBrを反応させ、続いて軽質分を単離してSb(SiHを77%で生成することによる、トリシリルスチビンの調製及び特性も開示されている。
【0011】
Drake et al.(J.Chem.Soc.,1969,662-665)には、適量のジボランとSi-PHを反応させながらP(Siを合成することが開示されている:3SiHSiHPH→(Bによって促進)P(Si+2PH
【0012】
Drake at al.(Inorg.Chem.,1967,6(11).1984-1986;Chem.Ind.,1962,1470)には、オゾン発生器の無声放電によるモノシランとホスフィンとの混合物の誘導分解とそれに続くトラップツートラップ蒸留による、SiHSiH-PHなどのモノシリルホスフィンの合成及び精製が開示されている。
【0013】
Drake at al.(J.Chem.Soc.A.,1968,2709)には、GeHPHの不均化による(GeHPの形成が開示されている。
【0014】
Drake et al.(J.Chem.Soc.A,1971,13,2246)には、P(SiHとLiAlHの反応により、たとえばLiAlH[P(SiH+SiBr→Si-P(SiHが生成物の1つとして得られることが開示されている。
【0015】
Drake et al.(Inorg.Nucl.Chem.Letters,1968,Vol.4,pp361-363)には、モノブロモゲルマンがトリシリルホスフィンと反応して「交換」を生じ、トリゲルミルホスフィンが形成されることが開示されている。モノブロモシランはKMH(M=P、As、Sb)と反応してモノシリル誘導体ではなくトリシリルを与え、モノヨードシランはジシリルアミンと反応してトリシリル種を与える。
【0016】
Cradock et al.(J.Chem.Soc.A.,1967,1229)には、GeHBr-(SiHPから(GeHPを形成する交換反応が開示されている。
【0017】
Wingeleth et al.(Phosphorus and Sulfur and the related Elements,1988,39,123-9)には、BX、B、及びBによって促進される、SiHPH、SiPH、SiHPH/SiPH、及びGeHPHを含むモノシリルホスフィン又はモノゲルミルホスフィンの再分配反応によるP(SiH、P(Si、P(SiH(Si)、P(GeHの形成が開示されている。
【0018】
Beagley et al.,(Chem.Commun.,1967,12,601-602)には、P(SiH及びAs(SiHの気相ピラミッド構造が開示されている。
【0019】
Yang et al.(Chem.Mater.2014,26,14,4092-4101)には、P(SiHとAl原子ビームとの間の低温反応により、Al-PSiコアを含むAl-P(SiH中間体が形成されることが開示されており、これはSi(100)格子上に堆積して整合できることが最近確認され、結果としてIV族半導体上にIII-V族材料を成長させる実用的な経路を提示した。
【0020】
Watkins et al.(J.Am.Chem.Soc.2011,133,40,16212-16218)には、Si(100)上に成長した正方晶歪みAl-PSiコアの調製、特性評価、及び理論シミュレーショが開示されている。
【0021】
Chizmeshya et al.(ECS Transactions,2012,50(9),623-634)には、<600℃で分子線エピタキシー(MBE)技術を使用してAl-PSiコアを持つ中間体を形成し、その後ダイヤモンド形状のIV族材料に組み込むための同様の用途が開示されている。同様の方法で、As(SiH前駆体を使用してAl-AsSiを堆積させることができるのみならず、As(SiH、P(SiH、及びN(SiHの混合物を使用して対応する中間体を形成し、Alと反応させることによって、P/As、As/N、P/Nのハイブリッドも堆積させることができる。この研究は、P(SiHとP(GeHとの前駆体混合物を導入することにより、Al-PSi3xGe3(1-x)の堆積にまで拡張することができる。
【0022】
Sims et al.(Chem.Mater.2015,27,8,3030-3039)には、P(SiHとAl(BHの前駆体を使用する低PCVDプロセスによって形成され、且つSiベースの固体上に成長する、Al1-xPSi(x=0.04~0.06)などのIII族材料のハイブリッドが開示されている。
【0023】
Kouvetakis et al.(Chem.Mater.2012,24,16,3219-3230)には、ガス源MBEを使用してSi基材上に(III-V)-(IV)合金を合成するためにM(SiH(M=P、As)及びAlを使用することが開示されている。適切な条件下で反応混合物にN(SiHを添加すると、新規なハイブリッド材料Al(As1-x)Si及びAl(P1-xSi5-2yが得られた。
【0024】
Romeroらの国際公開第2019066825号パンフレット/米国特許出願公開第20200168462号明細書には、対応する水素化物、及び/又はシリル化種(シリル化ホスフィン、アルシン、スチビン、及びビスマスなどを含む)を使用した、V族(N、P、As、Sb、及びBiを含む)及び/又はVI族(S、Se、及びTeを含む)材料の分解が開示されている。
【0025】
Toddらの米国特許第7029995号明細書には、リン、ヒ素、及びアンチモンがホスフィン、トリシリルホスフィン、アルシン、トリシリルアルシン、スチビン、及びシリルスチビンなどの前駆体の形態で供給される、エピタキシャル膜の形成方法が開示されている。
【0026】
Weeksらの米国特許第9099423号明細書には、ドーパントがリンを含むドープされた半導体膜及び処理が開示されている。
【0027】
Toddの米国特許第6716751号明細書には、(HSi)3-xMR、(HSi)N、及び(HSi)(これらの式中、RはH又はDであり、x=0、1、又は2であり、Mは、B、P、As、及びSbからなる群から選択される)を含むSi含有前駆体を使用してCVD及びイオン注入プロセスによって形成されたケイ素合金及びドープケイ素膜が開示されている。
【0028】
Dicksonの米国特許第4910153号明細書には、式(MXM’X4-nを有する堆積前駆体が開示されており、式中のM及びM’は異なる4A族原子であり、M及びM’のうちの少なくとも1つはケイ素であり、Xは、水素、ハロゲン、又はそれらの混合物であり、n=1~4(終点含む)である。ドーパントは式(SiXLX3-mを有し、式中、LはP、As、Sb、及びBiの群から選択される5A族原子であり、Xは、水素、ハロゲン、又はそれらの混合物であり、mは1~3(終点含む)の整数である。
【0029】
式A(SiH3-x(H又はD)を有する化合物の利用は、たとえば国際公開第2002065508号パンフレットに記載されており、特に、ジシラン又はトリシランのようなポリシランであるSi源と組み合わせて使用される場合である。この化学選択により、そのようなプロセスに使用される従来のSiH/PH/AsH化学よりも低い温度で膜を堆積することができ、したがって、ケイ素中のドーパントの溶解度値よりも高いドーパント濃度を有する膜を堆積することが可能になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
V族元素含有化合物の合成方法が開示され、この方法は、
A(SiRを、X-Si2a+1、X-Si2b+1、及びX-Si2c+1からなる群から選択される1、2、又は3種類のハロ(ポリ)シランと連続して又は混合物として接触させること、並びに
以下の段階的な全体反応:
a).一段階反応:
A(SiR+mX-Si2a+1→(SiR3-mA(Si2a+1+mX-SiR
b).二段階反応:
A(SiR+nX-Si2a+1→(SiR3-nA(Si2a+1+nX-SiR
(SiR3-nA(Si2a+1+pX-(Si2b+1)→(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1p+pX-SiR、又は
c).三段階反応:
A(SiR+X-Si2a+1→(SiRA(Si2a+1)+X-SiR
(SiRA(Si2a+1)+X-Si2b+1→(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-SiR
(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-Si2b+1→A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1)+X-SiR
により、
或いは2種又は3種のハロ(ポリ)シランの混合物を用いたワンポット反応:
A(SiR+xX-Si2a+1+yX-Si2b+1+zX-Si2c+1→A(Si2a+1(Si2b+1(Si2c+1(SiR(3-x-y-z)+(x+y+z)X-SiR
により、A(SiRを脱ハロシリル化して、V族元素含有化合物:
(SiR3-mA(Si2a+1又は
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
を形成すること、
を含み、これらの式中、
X=Cl、Br、又はIであり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
x=0~3であり、y=0~3であり、z=0~3であり、x+y+z=1~3であり;
A=As、P、Sb、Biから選択されるV属元素であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される。
【0031】
開示された方法は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ 溶媒が添加される
・ 溶媒が、アルカン若しくは芳香族溶媒、ハロアルキルシラン、又はそれらの混合物から選択される;
・ A(SiRに対する溶媒の比率が0~99重量%である;
・ アルカン又は芳香族溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロトリメチルシラン、又はそれらの混合物から選択される;
・ ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比が1:99~99:1の範囲である;
・ ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比が1:20~20:1の範囲である;
・ ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比が1:5~5:1の範囲である;
・ XがClである;
・ ハロ(ポリ)シランがクロロ(ポリ)シランである;
・ クロロ(ポリ)シランが、Cl-Si2a+1、Cl-Si2b+1、及び/又はCl-Si2a+1であり、式中、a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cである;
・ クロロ(ポリ)シランが、Cl-SiH、Cl-Si、又はCl-Siである;
・ Rがメチル基(Me)である;
・ 溶媒と反応生成物を分離してV族元素含有化合物を単離すること;並びに
V族元素含有化合物を精製すること;
をさらに含む;
・ V族元素含有化合物の純度が>90%である;
・ V族元素含有化合物の純度が>95%である;
・ V族元素含有化合物の純度が>98%である;
・ 方法がバッチ式プロセスである;
・ 反応が-20℃~150℃の範囲の温度に維持される;
・ 反応が室温から100℃の範囲の温度に維持される;
・ V族元素含有化合物がトリシリル基を含む;
・ トリシリル基が-SiH(SiH(i-トリシリル)である;
・ トリシリル基が-SiH-SiH-SiH(n-トリシリル)である;
・ V族元素含有化合物が、P(SiH、P(SiR)(SiH、P(SiR(SiH)、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、As(SiH、As(SiR)(SiH、As(SiR(SiH)、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(SiR)(SiH、Sb(SiR(SiH)、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si、Sb(SIR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si3、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ Rが、Me、Et、nPr、iPr、tBu、nBu、iBu、又はsBuから選択される;
・ R=Meである場合、V族元素含有化合物が、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、As(SiH、As(TMS)(SiH、As(TMS)(SiH)、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(TMS)(SiH、Sb(TMS)(SiH)、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si3、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(TMS)(SiH)(Si)、As(TMS)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ V族元素含有化合物が、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、及びP(Si)(Siからなる群から選択される;
・ n=2~3である場合、V族元素含有化合物が、A(Si)(SiR、A(Si)(SiR、A(Si(SiR)、A(Si(SiR)、A(Si、及びA(Si(これらの式中、Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり、Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)からなる群から選択されるが、A=Pである場合には、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外される;
・ n=3である場合、V族元素含有化合物が、A(Si2a+1(式中、a=1~6であり、Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり、Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)であるが、A=Asである場合には、a>1であり;A=Pである場合には、P(Siは除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される。
【0032】
V族元素含有化合物も開示され、V族元素含有化合物は、下記式:
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
A=As、P、Sb、Biから選択されるV族元素であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される。開示された化合物は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ V族元素含有化合物の純度が>93%である;
・ V族元素含有化合物の純度が>95%である;
・ V族元素含有化合物の純度が>98%である。
【0033】
基材上にSiとV族元素とを含有する膜を形成する方法も開示され、この方法は、
SiとV族元素とを含有する前駆体を含む膜形成組成物の蒸気に基材を曝露すること;及び
SiとV族元素とを含有する前駆体の少なくとも一部を基材上に堆積させて、蒸着法により基材上にSiとV族元素とを含有する膜を形成すること、
を含み、
SiとV族元素とを含有する前駆体は、一般式
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される。開示された方法は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ V族元素含有前駆体が、P(SiH、P(SiR)(SiH、P(SiR(SiH)、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、As(SiH、As(SiR)(SiH、As(SiR(SiH)、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(SiR)(SiH、Sb(SiR(SiH)、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si、Sb(SIR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si3、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ Rが、Me、Et、nPr、iPr、tBu、nBu、iBu、又はsBuから選択される;
・ SiとV族元素とを含有する前駆体が、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、As(TMS)(SiH、As(TMS)(SiH)、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、Sb(TMS)(SiH、Sb(TMS)(SiH)、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si3、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(TMS)(SiH)(Si)、As(TMS)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ SiとV族元素とを含有する前駆体が、P(Si、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、及びP(Si)(Siからなる群から選択される;
・ 蒸着法が、CVDプロセス、ALDプロセス、エピタキシープロセス、又はそれらの組み合わせを含む;
・ 膜形成組成物が、基材を200℃~1000℃の範囲の温度に加熱すること、SiとV族元素とを含有する前駆体をプラズマで活性化すること、又はこれらの組み合わせによって活性化される;
・ 基材を共反応剤に曝露するステップをさらに含む;
・ 共反応剤がプラズマで活性化されている;
・ 共反応剤がプラズマで活性化されていない;
・ 共反応剤が、O、O、HO、H、NO、NO、NO、Oラジカル、アルコール、シラノール、アミノアルコール、カルボン酸、パラホルムアルデヒド、又はそれらの組み合わせから選択される酸素含有ガスである;
・ 共反応剤がOである;
・ 共反応剤が、NH、N、H、N/H、HとNH、NとNH、NHとN、NO、NO、アミン、トリシリルアミン、シラザン、又はそれらの組み合わせから選択される窒素含有ガスである;
・ 共反応剤がHである;
・ 共反応剤がNである;
・ 共反応剤が、シラン及びポリシラン、アルキルシラン、ハロシラン(MCS、DCS、TCS、SiCl)、ポリハロポリシラン、ゲルマン、クロロゲルマン、ジゲルマン、ポリゲルマン、ハロゲルマン、ホスフィン、ボラン、又はハライド含有ガスから選択される少なくとも1種の二次前駆体である;
・ 共反応剤が、Ar、He、N、H、又はそれらの組み合わせから選択される希釈ガスである;
・ SiとV族元素とを含有する膜が、Pドープケイ素含有膜である;
・ 熱アニール、ファーネスアニール、ラピッドサーマルアニール、UV若しくは電子ビーム硬化、及び/又はプラズマガス曝露によって、SiとV族元素とを含有する層をアニールするステップをさらに含む;
・ 基材が粉末である;
・ 粉末が、NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、LCO(リチウムコバルト酸化物)、LFP(リチウム鉄リン酸塩)、及び他の電池カソード材料のうちの1つ以上を含む。
【0034】
また、下記式:
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するSiとV族元素とを含有する前駆体であるが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される前駆体、を含む膜を堆積するための膜形成組成物も開示される。開示された膜形成組成物は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ V族元素含有前駆体が、P(SiH、P(SiR)(SiH、P(SiR(SiH)、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、As(SiH、As(SiR)(SiH、As(SiR(SiH)、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(SiR)(SiH、Sb(SiR(SiH)、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si、Sb(SIR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si3、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ Rが、Me、Et、nPr、iPr、tBu、nBu、iBu、又はsBuから選択される;
・ R=Meである場合には、SiとV族元素とを含有する前駆体が、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、As(TMS)(SiH、As(TMS)(SiH)、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、Sb(TMS)(SiH、Sb(TMS)(SiH)、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si3、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(TMS)(SiH)(Si)、As(TMS)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siから選択される;
・ SiとV族元素とを含有する化合物の純度が>93%である;
・ SiとV族元素とを含有する化合物の純度が>95%である;
・ SiとV族元素とを含有する化合物の純度が>98%である。
【0035】
少なくとも5個のSi原子を有する式(I)、(II)、又は(III)からの開示されたSiとV族元素とを含有する前駆体を含む膜のスピンコーティングのための湿式膜形成組成物も開示される。開示された湿式膜形成組成物は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ 最も低い揮発性を有する式(I)、(II)、又は(III)からのSiとV族元素とを含有する前駆体が、アニールステップの間スピンキャスト膜中に残留し、in-situで分解するように選択される;
・ ケイ素原子を5個以上有するポリシラン又はポリシラン混合物である共反応剤をさらに含む;
・ ポリシランがシクロペンタシランである;
・ ポリシランがシクロヘキサシランである;
・ 溶媒をさらに含む;
・ スピンキャスト膜が非晶質又は多結晶のSi膜である;
・ スピンキャスト膜が非晶質及び多結晶のSi膜である;
・ スピンキャスト膜が非晶質Si膜である;
・ スピンキャスト膜が多結晶Si膜である。
【0036】
基材上にV族元素ドープエピタキシャルSi膜を形成する方法も開示され、この方法は、
基材を堆積温度付近の所定の温度に維持すること;
SiとV族元素とを含有する前駆体を含む膜形成組成物の蒸気と、共反応剤ポリシランの蒸気との混合物に基材を曝露すること;
SiとV族元素とを含有する前駆体の少なくとも一部を基材上に堆積させ、CVDプロセスにより基材上にV族元素ドープエピタキシャルSi膜を形成すること;
を含み、SiとV族元素とを含有する前駆体は、一般式
(SiR3-mA(Si2a+1
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1又は
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1
(これらの式中、
Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV属元素であり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される。開示された方法は、以下の態様の1つ以上を含みうる:
・ 混合物が、Ar、He、N、H、又はそれらの組み合わせから選択される希釈ガスを含む;
・ 共反応剤ポリシランがゲルマンである;
・ 所定の温度が200℃~1000℃の範囲である;
・ 堆積温度が200℃~1000℃の範囲である;
・ AがPである場合、V族元素ドープエピタキシャルSi膜が、PドープエピタキシャルSi膜である。
【0037】
表記法及び命名法
下記の詳細な説明及び特許請求の範囲では、当技術分野で一般に周知のいくつかの略号、記号、及び用語が利用される。定義は、典型的には、ステンレス鋼(SS)のような各略語の最初の例と共に提供される。特定の略語、記号、及び用語は、以下の説明及び特許請求の範囲を通して使用され、それには以下のものが含まれる。
【0038】
下記の詳細な説明及び特許請求の範囲では、当技術分野で一般に周知のいくつかの略号、記号、及び用語が利用される。
【0039】
本明細書で用いられる場合、不定冠詞「a」又は「an」は、1つ以上を意味する。
【0040】
本明細書で用いられる場合、本文中又は請求項中の「about(約)」又は「around(ほぼ)」又は「approximately(おおよそ)」は、明記された値の±10%を意味する。
【0041】
本明細書で用いられる場合、本文中又は請求項中の「室温」は、おおよそ20℃~おおよそ25℃を意味する。
【0042】
本明細書で用いられる場合、本文中又は請求項中の「大気圧」は、約1気圧を意味する。
【0043】
「基材」という用語は、プロセスが行われる1つ又は複数の材料を意味する。基材は、プロセスが行われる1つ又は複数の材料を有するウエハを意味しうる。基材は、半導体、光起電力、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイス製造に使用されるいずれかの好適なウエハでありうる。基材はまた、その上にすでに堆積された前の製造ステップからの異なる材料の1つ以上の層を有しうる。たとえば、ウエハは、シリコン層(たとえば、結晶性、アモルファス、多孔性のものなど)、シリコン含有層(たとえば、SiO、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(たとえば、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、又はそれらの組合せを含みうる。さらに、基材は、平面状であってもパターニングされていてもよい。基材は、有機パターニングされたフォトレジスト膜でありうる。基材は、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM、若しくはFeRamデバイス用途で誘電体材料として使用される酸化物(たとえば、ZrO系材料、HfO系材料、TiO系材料、希土類酸化物系材料、三元酸化物系材料など)の層、又は電極として使用される窒化物系膜(たとえば、TaN、TiN、NbN)を含みうる。当業者であれば、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語は、表面上に配置された、又は表面上に広げられた何らかの材料の厚さを指し、表面はトレンチ又はラインであってもよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウエハ及びその上のいずれかの関連層は、基材といわれる。
【0044】
「ウエハ」又は「パターニングされたウエハ」という用語は、基材上に膜のスタックを有し、インジウム含有膜の堆積前のステップで形成されたトポグラフィー特徴を有する少なくとも最上膜を有するウエハを意味する。
【0045】
「アスペクト比」という用語は、トレンチ(又はアパーチャー)の高さの、トレンチの幅(又はアパーチャーの直径)に対する比を意味する。
【0046】
本明細書では「膜」及び「層」という用語は互換的に用いられうることに留意されたい。膜は、層に対応しうるか又は関連付けられうるとともに、層は、膜を意味しうるものと理解される。さらに、本明細書で用いられる「膜」又は「層」という用語は、表面が全ウエハ程度に大きいものからトレンチ又はライン程度に小さいものまでにわたっていてもよい表面上に配置された又は表面全体に展延されたある厚さのなんらかの材料を意味することが、当業者であれば分かるであろう。
【0047】
本明細書では、「アパーチャー」、「ビア」、「ホール」、及び「トレンチ」という用語は、半導体構造中に形成された開口を意味するものとして互換的に用いられうることに留意されたい。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「NAND」という略号は、「Negative AND」又は「Not AND」ゲートを意味し、「2D」という略号は、平面状基材上の2次元ゲート構造を意味し、「3D」という略号は、ゲート構造が垂直方向にスタックされた3次元又は垂直ゲート構造を意味する。
【0049】
本明細書では、「堆積温度」及び「基材温度」という用語は、互換的に用いられうることに留意されたい。基材温度は、堆積温度に対応しうるか又は関連付けられうるとともに、堆積温度は、基材温度を意味しうるものと理解される。
【0050】
本明細書では、「前駆体」及び「堆積化合物」及び「堆積ガス」という用語は、前駆体が室温及び周囲圧力でガス状態であるとき、互換的に用いられうることに留意されたい。前駆体は、堆積化合物又は堆積ガスに対応しうるか又は関連付けられうるとともに、堆積化合物又は堆積ガスは、前駆体を意味しうるものと理解される。
【0051】
本明細書では元素周期表からの元素の標準的略号が用いられる。元素はこうした略号により参照されうることが理解されるべきである(たとえば、Siはケイ素を意味し、Nは窒素を意味し、Oは酸素を意味し、Cは炭素を意味し、Hは水素を意味し、Halはハロゲンを意味し、それらはF、Cl、Br、Iである)。
【0052】
Chemical Abstract Serviceにより割り当てられたユニークCAS登録番号(すなわち、「CAS」)は、開示された特定の分子を同定するために提供される。
【0053】
本明細書で使用される「炭化水素」という用語は、炭素原子と水素原子のみを含む飽和又は不飽和の官能基を指す。
【0054】
SiN及びSiOなどのケイ素含有膜が、それらの適切な化学量論を示さずに明細書及び特許請求の範囲全体に列挙されていることに留意されたい。ケイ素含有膜には、結晶質Si、ポリケイ素(p-Si若しくは多結晶Si)又は非晶質ケイ素などの純粋なケイ素(Si)層;窒化ケイ素(Si)層;酸化ケイ素(Si)層;又はその混合物が含まれる場合があり、ここで、k、l、m、及びnは、0.1~6(終点含む)の範囲である。好ましくは、窒化ケイ素は、k及びIがそれぞれ0.5~1.5の範囲であるSiである。より好ましくは、窒化ケイ素はSiである。本明細書では、以下の説明では、SiNは、Si含有層を表すために使用される場合がある。好ましくは、酸化ケイ素は、nが0.5~1.5の範囲であり、且つmが1.5~3.5の範囲であるSiである。より好ましくは、酸化ケイ素はSiOである。本明細書では、以下の記載におけるSiOは、Si含有層を表すために使用される。ケイ素含有膜は、式SiOCHを有する、Applied Materials,Inc.によるBlack Diamond II又はIII材料などの、有機ベース又は酸化ケイ素ベースの低誘電率誘電体材料などの酸化ケイ素ベースの誘電体材料であることも可能である。ケイ素含有膜は、a、b、cが0.1~6の範囲であるSiを含みうる。ケイ素含有膜は、B、C、P、As及び/又はGeなどのIII、IV、V、及びVI族のドーパントも含みうる。
【0055】
酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの堆積される膜又は層が、それらの適切な化学量論(すなわちSiO、SiO、Si)を示さずに明細書及び請求の範囲全体に記載される場合があることに留意されたい。層には、純粋(Si)層、炭化物(Si)層、窒化物(Si)層、酸化物(Si)層、又はそれらの混合物が含まれてよく、ここで、k、l、m、n、o、及びpは、1~6の範囲(終点含む)である。たとえば、酸化ケイ素は、Siであり、nは0.5~1.5の範囲であり、mは1.5~3.5の範囲である。より好ましくは、酸化ケイ素層は、SiO又はSiOである。酸化ケイ素層は、Applied Materials,Inc.によるBlack Diamond II又はIII材料などの、有機ベース又は酸化ケイ素ベースの低誘電率誘電体材料などの酸化ケイ素ベースの誘電体材料であってもよい。或いは、言及されるケイ素含有層は、純粋なシリコンであってもよい。ケイ素含有層は、B、C、P、As及び/又はGeなどのドーパントも含み得る。
【0056】
本明細書で用いられる場合、略語「Me」はメチル基を指し;略語「Et」はエチル基を指し;略語「Pr」は任意のプロピル基(すなわちn-プロピル又はイソプロピル)を指し;略語「iPr」はイソプロピル基を指し;略語「Bu」は任意のブチル基(n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル)を指し;略語「tBu」はtert-ブチル基を指し;略語「sBu」はsec-ブチル基を指し;略語「iBu」はイソブチル基を指し;略語「Ph」はフェニル基を指し;略語「Am」は任意のアミル基(イソアミル、sec-アミル、tert-アミル)を指し;略語「Cy」は環状炭化水素基(シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)を指し;略語「Ar」は芳香族炭化水素基(フェニル、キシリル、メシチルなど)を指し;TMSはトリメチルシリル-SiMe基を指す。
【0057】
本明細書では、範囲は、およその1つの特定値から及び/又はおよそのもう1つの特定値までとして表されうる。かかる範囲で表されるとき、他の一実施形態は、前記範囲内のすべての組合せと共に一方の特定値から及び/又は他方の特定値までと理解されるべきである。本明細書に列挙されるいかなる範囲もすべて、「包含的に」という用語が用いられているかどうかにかかわらず、それらの端点を包含する(すなわち、x=1~4又はxは1~4の範囲内であるは、x=1、x=4、及びx=その間のいずれかの数を含む)。
【0058】
「一実施形態」又は「ある実施形態」への本明細書での参照は、その実施形態との関連で記載された特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれうることを意味する。本明細書の各種場所での「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべてがその実施形態を参照するとは限らず、別々の又は代替の実施形態が必ずしも他の実施形態を相互に除外するものでもない。同じことが「実現」という用語にも当てはまる。
【0059】
本願で用いられる場合、「模範的」という語は、例、事例、又は例示の働きをすることを意味するものとして本明細書で用いられる。「模範的」として本明細書に記載されるいずれの態様も設計も、必ずしも他の態様や設計よりも好ましい又は有利であるとして解釈されるべきではない。むしろ、模範的という語の使用は、具体的に概念を提示することが意図される。
【0060】
そのほか、「or(又は)」という用語は、排他的「or(又は)」ではなく包含的「or(又は)」を意味することが意図される。すなわち、とくに明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、「XがA又はBを採用する」は、道理にかなった包含的並替えのいずれかを意味することが意図される。すなわち、XがAを採用する、XがBを採用する、又はXがA及びBの両方を採用する場合、「XがA又はBを採用する」は、上記事例のいずれかの下で満足される。そのほか、本願及び添付の特許請求の範囲で用いられる冠詞「a」及び「an」は、単数形を対象とすることがとくに明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、「one or more(1つ以上)」を意味するものと一般に解釈されるべきである。
【0061】
本発明の前述した及びさまざまな他の態様、特徴、及び利点、並びに本発明自体は、以下の図面と関連して検討される場合に、本発明の以降の詳細な説明を参照してより完全に理解することができる。図面は、例示のみを目的として提示されており、本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、ヘキサン中68℃で24時間反応させたP(TMS)+7MCTS(モノクロロトリシラン、すなわちSiCl)の反応混合物のGCクロマトグラムである(実施例2)。
図2図2は、90℃で44時間反応させたP(TMS)+3MCS(モノクロロシラン、すなわちSiHCl)の反応混合物のGCクロマトグラムである(実施例4)。
図3図3は、60℃で24時間反応させたAs(TMS)+6MCSの反応混合物のGCクロマトグラムである(実施例5)。
図4図4は、60℃で24時間反応させたSb(TMS)+10MCSの反応混合物のGCクロマトグラムである(実施例8)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
無機シリル及びポリシリルを含むV族元素含有前駆体を含むV族元素含有膜形成組成物、それらの合成方法、及びV族元素含有膜を堆積させるためのそれらの使用方法が開示される。
【0064】
本開示のV族元素含有前駆体は、一般式:
(SiR3-mA(Si2a+1 (I)
(SiR3-n-pA(Si2a+1(Si2b+1 (II)
A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1) (III)
(これらの式中、
Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり;
a=1~6であり;b=1~6であり;c=1~6であり;a≠b≠cであり;
m=1~3であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)
を有するが、A=Asである場合には、As(SiHは除外され;A=Pである場合には、P(SiH、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbである場合には、Sb(SiHは除外される。
【0065】
本開示のV族元素含有前駆体は、-SiH(SiH(i-トリシリル)又は-SiH-SiH-SiH(n-トリシリル)のいずれかであってよいトリシリル基を含む。
【0066】
本開示の前駆体の例としては、P(SiH、P(SiR)(SiH、P(SiR(SiH)、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、P(SiR)(Si、P(SiR(Si)、P(Si、As(SiH、As(SiR)(SiH、As(SiR(SiH)、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、As(SiR)(Si、As(SiR(Si)、As(Si、Sb(SiH、Sb(SiR)(SiH、Sb(SiR(SiH)、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si、Sb(SiR)(Si、Sb(SiR(Si)、Sb(Si3、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiR)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiR)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiR)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、又はSb(Si)(Siが挙げられ、これらの式中のRは、Me、Et、nPr、iPr、tBu、nBu、iBu、又はsBuから選択される。
【0067】
好ましくは、Rがメチル基、-CHである場合、本開示のV族元素含有前駆体は、A(Si2a+1(Si(CH3-m又はA(Si2n+1(TMS)3-m(これらの式中、a=1~6であり;mは1~3であり;Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素である)であるが、A=Asの場合にはa>1であり;A=Pの場合にはP(SiH(TMS)は除外され;A=Sbの場合にはSb(SiHは除外される。R=Meの場合、本開示の前駆体の例としては、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si3、、As(SiH、As(TMS)(SiH、As(TMS)(SiH)、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si、As(TMS)(Si、As(TMS)(Si)、As(Si3、、Sb(SiH、Sb(TMS)(SiH、Sb(TMS)(SiH)、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si、Sb(TMS)(Si、Sb(TMS)(Si)、Sb(Si3、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、P(Si)(Si、、As(TMS)(SiH)(Si)、As(TMS)(SiH)(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH(Si)、As(SiH)(Si、As(SiH)(Si)(Si)、As(SiH)(Si、As(Si(Si)、As(Si)(Si、、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(TMS)(SiH)(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(SiH)(Si)(Si)、Sb(SiH)(Si、Sb(Si(Si)、Sb(Si)(Siが挙げられる。
【0068】
好ましくは、n=2~3である場合、本開示のV族元素含有前駆体は、A(Si)(SiR、A(Si)(SiR、A(Si(SiR)、A(Si(SiR)、A(Si、及びA(Si(これらの式中、Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり、Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)からなる群から選択されるが、A=Pの場合には、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(Si、及びP(SiH(TMS)は除外される。
【0069】
好ましくは、m=3である場合、本開示のV族元素含有前駆体はA(Si2a+1(式中、a=1~6であり、Aは、P、As、Sb、又はBiから選択されるV族元素であり、Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)であるが、A=Asの場合にはn>1であり、A=Pの場合にはP(Siは除外され、A=Sbの場合にはSb(SiHは除外される。
【0070】
本開示のV族元素含有前駆体は、P(SiH、P(TMS)(SiH、P(TMS)(SiH)、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(Si、P(TMS)(Si)、P(Si、P(TMS)(SiH)(Si)、P(TMS)(SiH)(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH(Si)、P(SiH)(Si、P(SiH)(Si)(Si)、P(SiH)(Si、P(Si(Si)、又はP(Si)(Siであってよい。
【0071】
式(I)~(III)で示される本開示のV族元素含有前駆体を合成するための開示される合成方法は、以下の一般反応に従う、ハロシリル化合物又はハロポリシリル化合物(X-Si2n+1)と、A(A=As、P、Sb、又はBi)のトリス(トリアルキルシリル)誘導体であるA(SiRとの間の脱ハロシリル化(DXS)経路を含む:
A(SiR+mX-Si2a+1→A(Si2a+1(SiR3-m+mX-SiR (IV)
(式中、a=1~6であり;
m=1~3、好ましくはm=3であり;
A=As、P、Sb、Biであり;
X=Cl、Br、Iであり;
Rは、C~C10の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)。
【0072】
本開示の合成方法は、A(SiRとハロ(ポリ)シラン(X-Si2a+1)とを、任意選択的には溶媒を添加して、1~100当量対100~1当量、好ましくは1~20当量対20~1当量の範囲のハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比で接触させるステップを含み、好ましくはハロ(ポリ)シランはクロロ(ポリ)シランである。溶媒は、A(SiRとハロ(ポリ)シラン(X-Si2a+1)の両方の反応剤に対して不活性であり、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのアルカン若しくは芳香族溶媒、又はハロアルキルシラン、又はそれらの混合物から選択され、A(SiRなどの反応剤又は出発物質の0~99重量%に相当する。ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの最適な比率は、最も高い収率で目的の前駆体を得るために最適化することができる。ハロ(ポリ)シランとA(SiRの最適比は、最も高い収率で目的の前駆体に到達するように最適化することができる。反応(VI)においてa=1又は2である場合、モノクロロシラン(MCS、ClSiH)又はモノクロロジシラン(MCDS、ClSiHSiH)は、液体の直接添加又は無希釈の蒸気の凝縮のいずれかによって、無希釈で又は溶媒に溶かして、気密性のマニホールドを使用して添加することができる。次いで、反応剤の混合物が、典型的には1~168時間撹拌されることで、反応混合物が形成される。次いで、生成物は、溶媒のストリッピング及び/又は分別蒸留又は当技術分野で公知の他の適切な手段によって、反応混合物から分離することができる。その後、単離された生成物を、たとえばバッチ式又は連続式のいずれかの蒸留によって精製することで、生成物の目標純度に到達させることができる。
【0073】
ここで、ハロ(ポリ)シラン対A(SiRの比は、1:99~99:1、好ましくは1:20~20:1、より好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:5~5:1の範囲である。反応は、-20℃~150℃、好ましくは室温から100℃までの範囲の温度に維持される。合成時間は、反応温度などの反応条件に応じて、1~168時間、好ましくは12~96時間、より好ましくは24~48時間に及ぶ。
【0074】
或いは、本開示の合成方法は段階的に行うことができ、さまざまなサイズのシリル基が、二段階又は三段階反応のように逐次的に置換されてもよい。
【0075】
ハロシリル又はハロポリシリル化合物とAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との本開示の二段階反応は、以下の一般反応を有する:
A(SiR+nX-Si2a+1→(SiR3-nA(Si2a+1+nX-SiR (V)
(SiR3-nA(Si2a+1+pX-(Si2b+1)→A(Si2a+13-n-p(Si2b+1p+pX-SiR (VI)
(これらの式中、
a=1~6であり、b=1~6であり;
n=1~2であり、p=1~2であり、n+p=2~3であり;
A=As、P、Sb、Biであり;
X=Cl、Br、Iであり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)。
【0076】
ハロシリル又はハロポリシリルとAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との本開示の三段階反応は、以下の一般反応を有する:
A(SiR+X-Si2a+1→(SiRA(Si2a+1)+X-SiR (VII)
(SiRA(Si2a+1)+X-Si2b+1→(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-SiR (VIII)
(SiR)A(Si2a+1)(Si2b+1)+X-Si2b+1→A(Si2a+1)(Si2b+1)(Si2c+1)+X-SiR; (IX)
(これらの式中、
a=1~6であり、a=1~6であり、c=1~6であり;
A=As、P、Sb、Biであり;
X=Cl、Br、Iであり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)。
【0077】
或いは、本開示の合成方法は、混合物又はワンポットで行うことができ、すべての出発物質を一緒に混合した混合物中で、さまざまなサイズのシリル基を置換することができる。
【0078】
ハロシリル又はハロポリシリルとAのトリス(トリアルキルシリル)誘導体との本開示の混合反応は、以下の一般反応を有する:
A(SiR+xX-Si2a+1+yX-Si2b+1+zX-Si2c+1→A(Si2a+1(Si2b+1(Si2c+1(SiR(3-x-y-z)+(x+y+z)X-SiR (X)
(式中、
a=1~6であり、b=1~6であり、c=1~6であり;
x=0~3であり、y=0~3であり、z=0~3であり、x+y+z=1~3であり;
A=As、P、Sb、Biであり;
X=Cl、Br、Iであり;
Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)。
【0079】
一実施形態では、式(IV)~(X)で示される本開示のV族元素含有前駆体を合成するための本開示の合成方法は、クロロシリル化合物、Cl-Si2a+1、Cl-Si2b+1、及び/又はCl-Si2a+1と、Aのトリス(トリアルキルシリル)誘導体(A=As、P、Sb、又はBi)、A(SiR(Rは、C~C10の直鎖、分岐、又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基から選択される)との間の脱クロロシリル化(DCS)経路である。
【0080】
本開示の合成反応は、バッチ式で行われてもよい。この場合、A(SiRは、ハロ(ポリ)シラン(たとえばクロロ(ポリ)シラン)に添加してもよく、或いはその逆であってもよい。A(SiRへのハロ(ポリ)シランを添加は、A上の-SiR基の部分的な置換のみが望まれる場合に好ましい。
【0081】
本開示の合成反応は、各反応剤の流れが連続的に供給されて反応する連続モードで実行することができる。反応剤の接触を助けるために連続混合システムが使用されてもよい。反応は固体の副生成物を生じないと考えられるが、念のために潜在的な固体の副生成物を除去するために、合成後に濾過ステップを追加してもよい。反応が完了又は多段階変換に向かうように、反応の揮発性副生成物が連続的に除去されてもよい。これは、固体副生成物がほとんど又はまったく生成されない本開示の合成方法の固有の利点である。クロロ(ポリ)シラン反応剤をブロモ(ポリ)シランに置き換えても、大きくは逸脱しないことが理解される。入手性の理由から、クロロシランがより便利である。
【0082】
本開示の合成方法は、以下の固有の利点を有している。
・ 容易に入手可能な出発物質:既存の合成方法では、KPHやP(SnMeなどの反応剤が使用されるが、これらは商業的に入手しにくいか、又は新たに調製する必要がある。対照的に、本開示の合成方法では、高純度でバルクで市販されているP(TMS)、As(TMS)、又はSb(TMS)が出発物質として使用される。
・ クロロシランは、Brの対応物よりもはるかに入手しやすいものでもある。SiHCl(MCS)は市販品として入手可能である。たとえば、SiCl(MCDS)及びSiCl(MCTS)は、Cradock et al.(J.Chem.Soc.Dalton Trans.,1975,1624-1628)に従って合成することができる。
・ 本開示の合成方法は、1種類のポリシリル基のみを導入する場合、一段階合成とすることができる。既存の合成方法はほとんどが多段階反応であり、SiHPH、SiPH、及びLiAlH[P(SiHのようなモノ又はジシリルホスフィン、アルシンなどを一段階目で調製し、その後単離する必要がある。対照的に、本開示の合成法は、一段階且つ1つの反応器のプロセスであり、合成中に副生成物の単離を必ずしも必要としない。
・ 本開示の合成方法は、穏やかな反応条件である。出発物質が不安定なため、既存の合成方法では、反応剤の添加速度及び/又は混合物の融解速度を適切に制御しながら、低温で反応を行う必要があることがほとんどである。対照的に、本開示の合成方法は、室温から100℃までの範囲の温度など、周囲温度からわずかに高い温度までで行われる。
・ 本開示の合成方法は、副反応が少なく、収率が高い。本開示のDHS経路は、副反応が少ない結果として、比較的高い収率が得られ、その後の分離及び精製プロセスが容易になる。
・ 本開示の合成方法は、塩形成がほとんど又は全くない。これは、トリシリルアミン(TSA)骨格を持つN-ベースの類似体などの類似分子の分解を促進することが知られている。
【0083】
本開示の合成方法によって合成される本開示のV族元素含有膜形成前駆体は、CVD、PECVD、ALD、PEALD、流動性CVD、HW-CVD、エピタキシーなどによってケイ素中にV族元素ドーパントを有するSi含有膜を気相堆積するために使用することができる。
【0084】
P及びAs化合物、特にそれらの無機誘導体、たとえばAs(Si、P(Si(これらの式中、x及びyは各シリル部位で同じであっても異なっていてもよく、y=2x+1である)は、ケイ素中のドーパントとして都合よく使用することができる。一部の用途では、たとえば半導体デバイスの接触抵抗を低減するために、ケイ素中のドーパントの溶解度限界を超えてドーピングすることが強く求められる。ポリシラン及びトリシランは、約450℃未満の温度でシランよりも速い速度でケイ素(たとえばアモルファス又は結晶シリコン)を堆積させることができる。シリル配位子の代わりにポリシリル配位子を有する本開示のV族元素含有前駆体は、より低い温度での堆積及びドーパントの取り込みも促進するであろう。
【0085】
本開示のV族元素含有前駆体は、典型的にはステンレス鋼、炭素鋼、又はアルミニウムから製造された高純度容器内に供給され、この容器は、残留HOが100ppb未満になるまで予め乾燥されており、任意選択的には、その中の前駆体の経時的な分解を制限するために不動態化されていてもよい。不動態化プロセスは、通常、高純度容器をシリル化剤に曝露することを含み、この場合、シリル化剤は、目的の前駆体そのものであってよく、或いはシラン又はポリシランであってもよい。
【0086】
本開示のV族元素含有前駆体は、好ましくは、90%w/w超(すなわち、93.0%w/w~100.0%w/w)、好ましくは95%w/w超(すなわち、98.0%w/w~100.0%w/w)、より好ましくは98%w/w超(すなわち、99.0%w/w~約99.999%w/w又は99.0%w/w~100.0%w/w)の純度を有し、金属不純物がppb範囲であり、O含有不純物がppmからppm未満の範囲であり、同様の用途で使用される他の分子と一致している。不純物の合計量は、好ましくは5%w/w未満(すなわち、0.0%w/w~5.0%w/w)、好ましくは2%w/w未満(すなわち、0.0%w/w~2.0%w/w)、より好ましくは1%w/w未満(すなわち、0.0%w/w~1.0%w/w)である。本開示のV族元素含有前駆体は、再結晶、昇華、蒸留、及び/又はモレキュラーシーブなどの適切な吸着材を通す気液通過により精製することができる。
【0087】
本開示のV族元素含有前駆体は、無希釈の形態で、或いはエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカリン、デカン、ドデカンなどの適切な溶媒とのブレンドで、或いはポリシラン又はハロアルキルシラン中で供給することができる。本開示の前駆体は、溶媒中にさまざまな濃度で存在することができる。
【0088】
0℃~約150℃の範囲の容器温度における前駆体の蒸気圧が典型的には>50torr、好ましくは>300torrである場合、本開示のV族元素含有前駆体の蒸気は、キャリアガスなしでそのままプロセスチャンバーに供給することができる。
【0089】
蒸気圧が低い本開示のV族元素含有前駆体については、本開示のV族元素含有前駆体の蒸気は、バブラー、蒸気吸引、又は直接液体注入システムのいずれかでキャリアガスと共にプロセスチャンバーに供給される。キャリアガスとしては、限定されるものではないが、Ar、He、N、H、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。キャリアガスによるバブリングにより、前駆体中に存在する溶存酸素を除去することもできる。その後、キャリアガス及び前駆体は、蒸気としてプロセスチャンバーに導入される。プロセスチャンバーは、通常、大気圧未満の圧力、好ましくは0.01torr~500torrの範囲、より好ましくは1torr~100torrの範囲の圧力に保持される。
【0090】
必要であれば、本開示のV族元素含有前駆体を含有する容器は、前駆体が十分で適切な蒸気圧を有するようにしうる温度に加熱又は冷却されうる。容器は、たとえば、おおよそ0℃~おおよそ200℃の範囲内の温度に維持されうる。気化される前駆体の量を制御すべく容器の温度を公知のように調節しうることは、当業者であれば分かる。
【0091】
プロセスチャンバーは、堆積方法が行われるデバイス内のいずれかのエンクロージャーチャンバー、たとえば、限定されるものではないが、パラレルプレート型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、シングルウエハ反応器、マルチウエハ反応器、前駆体の反応及び堆積膜形成を引き起こすのに好適な条件下の他の型の堆積システムでありうる。ALD又はCVD堆積プロセスのどちらかでこれらのプロセスチャンバーのいずれかを使用しうることは、当業者であれば分かるであろう。
【0092】
プロセスチャンバーは、膜が堆積される1つ以上の基材を含む。基材は、一般に、プロセスがその上で行われる材料として定義される。基材は、半導体、光起電力、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイス製造に使用されるいずれかの好適な基材でありうる。適切な基材の例としては、シリコン、シリカ、ガラス、GaAsウエハなどのウエハが挙げられる。ウエハは、その上に堆積された前の製造ステップからの異なる材料の1つ以上の層も有しうる。たとえば、ウエハは誘電体層又は3D NAND層を含みうる。さらに、ウエハは、シリコン層(結晶質、アモルファス、多孔質など)、ケイ素酸化物層、ケイ素窒化物層、ケイ素酸窒化物層、炭素ドープケイ素酸化物(SiCOH)層、金属、金属酸化物金属窒化物層(Ti、Ru、Taなど)、及びそれらの組合せを含みうる。加えて、ウエハは、銅層、貴金属層(たとえば、白金、パラジウム、ロジウム、金)を含みうる。ウエハは、マンガン、マンガン酸化物などのバリア層を含みうる。プラスチック層も使用されうる。層は、平面状であってもパターニングされていてもよい。本開示の蒸着プロセスは、パターニングされた層が基材上に形成されるときに、層をウエハ上に直接、又はウエハ上の1つ又は複数の層上に直接堆積することができる。パターニングされた層は、3D NANDで使用されるSiOとSiNなどの2つの特定の層の交互の層であってもよい。
【0093】
基材の最終用途は本発明に限定されないが、この技術は、シリコンウエハ、ガラスウエハ及びパネル、ビーズ、粉末及びナノ粉末、モノリシック多孔質媒体、プリント回路基板、プラスチックシートなどのタイプの基材に対して特に利点が見出されうる。例示的な粉末基材としては、充電式電池技術で使用される粉末が挙げられる。非限定的な数の粉末材料としては、NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、LCO(リチウムコバルト酸化物)、LFP(リチウム鉄リン酸塩)、及び他の電池カソード材料が挙げられる。
【0094】
プロセスチャンバー内の温度及び圧力は、ALDやCVDなどの気相堆積に適した条件に保持される。言い換えると、気化された本開示のV族元素含有をチャンバー内に導入した後、チャンバー内の条件は、前駆体の少なくとも一部が基材上に堆積して層を形成するような条件である。たとえば、反応器内の圧力又は堆積圧力は、堆積パラメータごとに必要に応じて、約10-3torr~約500torr、好ましくは約10-2torr~約500torr、より好ましくは約1torr~100torrに保持することができる。同様に、反応器内の温度又は堆積温度は、室温~約1000℃、好ましくは200℃~800℃に保持することができる。当業者であれば、「前駆体の少なくとも一部が堆積される」が、前駆体の一部又は全部が基材と反応して基材に付着することを意味することを認識するであろう。
【0095】
最適な膜成長を実現するための温度は、基材ホルダーの温度を制御することによって制御することができる。基材を加熱するために使用される装置は当技術分野で公知である。基材は、十分な成長速度で所望の物理的状態及び組成を有する所望の膜を得るのに十分な温度まで加熱される。基材が加熱されうる非限定的な例示的な温度範囲には、おおよそ200℃~おおよそ800℃が含まれる。プラズマ堆積プロセスが利用される場合、堆積温度は好ましくは500℃未満である。代替的に、熱プロセスが実行される場合、堆積温度は200℃~おおよそ800℃の範囲でありうる。
【0096】
代替的に、基材は、十分な成長速度で所望の物理的状態及び組成を有する所望の堆積膜を得るのに十分な温度に加熱されうる。基材の温度は、約200℃~1000℃、好ましくは200℃~800℃、より好ましくは250℃~600℃の範囲の温度に維持することができる。
【0097】
より具体的には、本開示のV族元素含有前駆体に加えて、他の前駆体又は共反応剤、たとえば、限定されるものではないが、H、シラン、ポリシラン(Si~Si、Si及びSiについては直鎖、分岐、又は環状)、アルキルシラン(モノメチルシランなど)、ハロシラン(Cl-SiH、ClSiH、I-SiH、ClSiHSiClなど)、ポリハロポリシラン(SiCl、SiHCl、Cl-Siなど)、ゲルマン、クロロゲルマン、ジゲルマン、ポリゲルマン、ハロゲルマン、ホスフィン、ボラン(Bなど)、ジボラン、ハライド含有ガス(HCl、Cl、HBrなど);N含有ガス(NH、N、N/H、及びNH、NとNH、NHとN、NO、NO、アミン、トリシリルアミン、シラザンなど、又はそれらの組み合わせ);O含有ガス(O、O、HO、H、NO、NO、NO、Oラジカル、アルコール、シラノール、アミノアルコール、カルボン酸、パラホルムアルデヒドなど、及びそれらの組み合わせ)も、プロセスチャンバーに導入することができる。
【0098】
さらに、希釈ガスをプロセスに添加してもよく、これは、Ar、He、N、H、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0099】
さらに、共反応剤はプラズマによって処理されてもよく、前駆体又は反応剤をそのラジカル形態に分解するために、プラズマで処理される場合には、ターゲット膜の組成に応じてH、N、及びOのうちの少なくとも1つ、又は不活性ガス(He、Ar、Kr、Xe)を利用することができる。プラズマ源は、Nプラズマ、N/Heプラズマ、N/Arプラズマ、NHプラズマ、NH/Heプラズマ、NH/ARプラズマ、Heプラズマ、Arプラズマ、Hプラズマ、H/Heプラズマ、H/有機アミンプラズマ、及びそれらの混合物であってもよい。たとえば、プラズマは、約10W~約1000W、好ましくは約50W~約500Wの範囲の電力で生成することができる。プラズマは、反応器自体の中で生成させて存在させることができる。代替的に、プラズマは、一般に、反応器から離れた場所、たとえば遠隔設置されたプラズマシステム内に存在していてもよい。当業者であれば、そのようなプラズマ処理に適した方法及び装置を認識するであろう。
【0100】
たとえば、共反応剤は、反応チャンバー内でプラズマを生成する直接プラズマ反応器に導入され、プロセスチャンバー内でプラズマ処理された反応剤を生成することができる。例示的な直接プラズマ反応器としては、Trion Technologies製のTitan(商標)PECVDシステムが挙げられる。共反応剤は、プラズマ処理の前にプロセスチャンバー内に導入され保持されてもよい。或いは、プラズマ処理は、前駆体又は反応剤の導入と同時に行われてもよい。in-situプラズマは、典型的には、シャワーヘッドと基材ホルダーとの間で生成される13.56MHzのRF誘導結合プラズマである。基材及びシャワーヘッドは、陽イオン衝撃が発生するか否かに応じて電力が供給される電極であってもよい。in-situプラズマ発生器における典型的な印加電力は、約30W~約1000Wである。好ましくは、本開示の方法では約30W~約600Wの電力が使用される。より好ましくは、電力は約100W~約500Wの範囲である。in-situプラズマを使用した共反応剤の解離は、典型的には、同じ電力入力でリモートプラズマ源を使用して達成されるよりも少なく、そのため、リモートプラズマシステムほど反応剤の解離は効率的ではない。リモートプラズマシステムは、プラズマによる損傷を受けやすい基材上に膜を堆積するのに有益な場合がある。
【0101】
或いは、プラズマ処理された共反応剤は、プロセスチャンバーの外部、たとえばプロセスチャンバーに入る前に共反応剤を処理するリモートプラズマで生成することができる。
【0102】
蒸着プロセスは、特定の表面に対して選択的であっても、又は非選択的であってもよい。
【0103】
蒸着プロセスは、熱的に駆動されてもよく、或いはプラズマ活性化、光活性化、マイクロ波活性化、又は分子及び成長プロセスを活性化するための他の適切な手段によって強化されてもよい。
【0104】
本開示のV族元素含有膜形成組成物は、当業者に公知の任意の堆積方法を使用して膜を堆積するために使用することができる。好適な蒸着法の例としては、CVD及びALDが挙げられる。例示的なCVD法には、熱CVD、プラズマエンハンストCVD(PECVD)、パルスCVD(PCVD)、低圧CVD(LPCVD)、亜大気圧CVD(SACVD)大気圧CVD(APCVD)、熱線CVD(HWCVD、cat-CVDとしても知られ、熱線が堆積プロセスのエネルギー源として機能する)、ラジカル組込みCVD、及びこれらの組み合わせが含まれる。例示的なALD法には、熱ALD、プラズマエンハンストALD(PEALD)、空間ALD、熱線ALD(HWALD)、ラジカル導入ALD、及びそれらの組み合わせが含まれる。堆積方法は、好ましくは、Siと請求項に記載の化合物のドーパント元素とを含み、任意選択的にはGe及び/又は他のコドーパントも含むエピタキシャル膜又はアモルファス膜を堆積することが可能な、ホットウォール又はコールドウォール熱CVDである。
【0105】
ALDプロセスでは、チャンバー内のALD条件により、基材表面に吸着又は化学吸着した本開示のV族元素含有膜形成組成物が反応して基材上に膜を形成することができる。いくつかの実施形態では、出願人は、プラズマ処理する共反応剤が、本開示のV族元素含有膜形成組成物と反応するために必要なエネルギーを共反応剤に提供することができると考えている(PEALD)。共反応剤は、チャンバーへの導入前又は導入後にプラズマで処理することができる。
【0106】
V族元素含有前駆体及び共反応剤は、反応器に逐次的に導入することができる(ALD)。プロセスチャンバーは、V族元素含有前駆体、追加の前駆体、及び共反応剤のそれぞれの導入の合間に不活性ガスでパージすることができる。別の例は、V族元素含有前駆体と非活性化共反応物がチャンバーの温度及び圧力条件で実質的に反応しないことを条件として、共反応物をプラズマで逐次的に活性化しながら、共反応物を連続的に導入し、V族元素含有前駆体をパルスで導入することである(CWPEALD)。
【0107】
本開示のV族元素含有前駆体の各パルスは、約0.01秒~約120秒、代替的に約1秒~約80秒、代替的に約5秒~約30秒の範囲の時間継続されうる。共反応剤も、反応器内にパルス導入されてもよい。そのような実施形態では、それぞれのパルスは、約0.01秒~約120秒、代替的に約1秒~約30秒、代替的に約2秒~約20秒の範囲の時間継続されうる。別の代替形態では、気化したV族元素含有前駆体及び共反応剤は、シャワーヘッドの異なるセクターから混合なしで同時に噴霧することができ、その下で複数のウエハを保持するサセプタが回転する(空間ALD)。
【0108】
具体的なプロセスパラメータに応じて、堆積はさまざまな時間にわたって行われうる。一般に、堆積は、必要な特性を有する膜を製造するのに必要な時間継続することができる。典型的な膜厚さは、具体的な堆積プロセスに応じて、数オングストロームから数百ミクロンまで、典型的には2~100nmで変化しうる。堆積プロセスは、所望の膜を得るために必要な回数行うこともできる。
【0109】
本開示のV族元素含有前駆体及び共反応剤は、同時に(CVD)、逐次的に(ALD)、又はそれらの異なる組み合わせのいずれかで反応器に導入することができる。V族元素含有前駆体の導入と共反応剤の導入の合間に、反応器を不活性ガス(たとえば、N、Ar、Kr、Xe)でパージすることができる。或いは、共反応剤とV族元素含有前駆体とを一緒に混合して共反応剤/化合物混合物を形成し、その後、これを混合物形態で反応器に導入することができる(CVD、熱CVD、又はエピタキシー)。別の例は、共反応剤を連続的に導入し、本開示のV族元素含有前駆体をパルスで導入すること(パルスCVD)である。
【0110】
所望の膜厚は、分子単層から10μm、好ましくは1nm~500nmの範囲とすることができる。
【0111】
共反応剤に応じて、堆積プロセスは、Ge、Ga、C、B、Sn、Al、N、O、S、Se、Te、In、Zn、Cd、Hgなど、請求項に記載の前駆体中に存在する元素以外の元素を含みうる。
【0112】
本開示の堆積方法を使用して堆積される膜は、pドープSiとV族元素とを含む膜であってよい。
【0113】
本開示の堆積方法を使用して堆積される膜は、Pドープケイ素層などのV族元素ドープケイ素層であってよい。
【0114】
本開示のV族元素含有膜形成組成物は、スピンコーティング、ディップコーティング、又はスプレーコーティングを含むがこれらに限定されない、Si含有膜の液相膜堆積に使用されてもよい。この場合、本開示の化合物を含む配合物が基材上にコーティングされ、その後アニールされることで薄膜が得られる。
【0115】
本開示のV族元素含有膜形成組成物は、非晶質及び多結晶のSi膜の製造を目的とした配合物のドーピング成分として特に有用である。そのような配合物は、典型的には、5個以上のケイ素原子を有する大きなポリシラン又はポリシランの混合物(シクロペンタシラン、シクロヘキサシランなど)と溶媒とを含む。基材を配合物でコーティングした後、膜を処理することでケイ素膜が得られる。そのようなスピンコーティング用途では、選択された前駆体は、アニーリングステップ中にスピンコーティングされた膜に残留してin-situで分解するように、最も低い揮発性を有する必要がある。そのような用途のためには、典型的には、少なくとも5個のSi原子を有する前駆体群が適している。
【0116】
処理には、典型的には、加熱(200~1000℃)又は/及び光/UV曝露が含まれる。そのような配合物では、ドープされたケイ素膜を得るために、本開示のV族元素含有化合物を0.01%~50%(重量比)の割合で添加することができる。
【0117】
本開示のV族元素含有前駆体を含む配合物は、表面のコーティング後に酸化硬化を使用することにより、前述した湿式コーティング法のいずれかによってドープされた酸化ケイ素膜を製造するために使用することもできる。典型的な酸化硬化は、室温から1000℃の範囲の温度で、HO(蒸気)、O、O、H、及びそれらのプラズマのうちの少なくとも1つ(及び任意選択的には不活性ガス)を使用する。好ましくは、硬化は、室温から250℃の範囲の温度でのソフトベークと、250℃~1000℃の範囲の温度でのハードベークの二段階プロセスを含む。ハードベークステップは、酸化性ガスの有無にかかわらず行うことができる。これらの湿式コーティング用途では、完全に無機物且つ低揮発性の前駆体、好ましくはA(Si2x+1(式中、xは2以上であり、A=As又はPである)から選択される前駆体を使用することが有利である。
【実施例
【0118】
下記非限定的実施例は、本発明の実施形態をさらに例示するために提供される。しかしながら、実施例は、すべてを網羅することが意図されるものではなく、本明細書に記載の発明の範囲を限定することが意図されるものではない。
【0119】
実施例1.(TMS)P(Si)の合成
20mLバイアル中で、磁気撹拌しながら、3gのCl-Si MCTSを、ヘキサン中10重量%のP(TMS)溶液11gに添加した。反応混合物を不活性雰囲気下で室温で5日間撹拌し、その間にすべてのP(TMS)が68%の収率で大部分のP(TMS)(Si)に変換された。
【0120】
実施例2.P(Siの合成及びキャラクタリゼーション
不活性雰囲気の500mLフラスコ内の200gの無水ヘキサンに25gのP(TMS)を溶解し、続いて75gのモノクロロトリシランMCTSを磁気撹拌しながらゆっくりと添加した。反応混合物を68℃で24時間還流し、その間にすべてのP(TMS)が93%の収率でP(Siに変換された。図1は、ヘキサン中68℃で24時間反応させたP(TMS)+7MCTSの反応混合物のGCクロマトグラムである。
【0121】
実施例3.(TMS)P(SiHの合成
ヘキサン中10重量%のP(TMS)5gを60mLのステンレス鋼容器に入れた。2.6gのモノクロロシランMCSを容器内にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、密閉容器内で75℃で24時間150rpmで振とうした。その間にすべてのP(TMS)が59%の収率で大部分のP(TMS)(SiHに変換された。
【0122】
実施例4.P(SiHの合成
5.6gのP(TMS)を60mLのステンレス鋼容器に入れた。6.9gのモノクロロシランMCSを容器内にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、密閉容器内で90℃で48時間150rpmで振とうした。その間にすべてのP(TMS)が85%の収率で大部分のP(SiHに変換された。
【0123】
235gのP(TMS)を気密性の600mLのParr反応器に入れた。183gのモノクロロシランMCSを容器内にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、90℃で44時間400rpmで激しく撹拌した。その間に、すべてのP(TMS)が92%の収率で大部分のP(SiHに変換された。図2は、90℃で44時間反応させたP(TMS)+3MCSの反応混合物のGCクロマトグラムである。
【0124】
実施例5.As(Siの合成
60mLのステンレス鋼製容器の中で2gのAs(TMS)と7.5gのMCTSとの混合物を90℃で加熱し、150rpmで48時間振とうすると、75%の収率でAs(Siのみが得られる。図3は、60℃で24時間反応させたAs(TMS)+6MCSの反応混合物(実施例5)のGCクロマトグラムである。
【0125】
実施例6.As(SiH)(TMS)の合成
4.5gのAs(TMS)を60mLのステンレス鋼製容器に入れた。8.5gのモノクロロシランMCSを容器内にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、密閉容器内で90℃で24時間150rpmで振とうした。その間にAs(SiH)(TMS)の大部分が52%の収率で得られた。
【0126】
実施例7.Sb(Si)(TMS)の合成
Sb(Si)(TMS)は、2gのSb(TMS)と7gのMCTSとを室温で1日間激しく磁気撹拌しながら反応させることにより、72%の収率で合成することができる。高温(たとえば50℃又は90℃)で加熱すると分解する。
【0127】
実施例8.Sb(SiH)(TMS)の合成
2.8gのSb(TMS)を60mLのステンレス鋼製容器に入れた。9gのモノクロロシランMCSを容器内にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、密閉容器内で60℃で24時間150rpmで振とうした。その間にSb(SiH)(TMS)の大部分が23%の収率で得られた。図4は、60℃で24時間反応させたSb(TMS)+10MCSの反応混合物のGCクロマトグラムである。
【0128】
実施例9.P(Siの合成
ヘキサン中10重量%のP(TMS)溶液5gを60mLのステンレス鋼容器に入れた。2.2gのモノクロロジシランMCDSを容器に添加した。反応混合物を密閉容器内で60℃で24時間150rpmで振とうした。その間にP(Siが22%の収率で形成された。
【0129】
実施例10.P(SiHの単離
TMS-Cl溶液中の26%のP(SiHとして生成物プロファイルを含む380gの合成混合物を、グローブボックス内の500mL丸底フラスコに入れた。その後、標準的な分別蒸留を行った。55~70℃で揮発分を除去した後、蒸気相温度が115~125℃の範囲にある主カット分を周囲圧力で回収し、純度98%のP(SiH75gを得た。これは、76%の全体収率に相当する。さらなる蒸留又はより高い分離効率での蒸留により、工業用途では好ましくは99%超を達成できると見込まれる。
【0130】
仮想例1:P(SiH(Si)の合成
10gのP(TMS)(SiH(例えば実施例3で合成)をTMS-Cl中30重量%で60mLのステンレス鋼製容器に入れた。2.0gのMCTSを容器に添加した。反応混合物を密閉容器内で75℃で24時間150rpmで振とうした。その間にP(SiH(Si)が主生成物として形成された。
【0131】
仮想例2:P(SiH)(Siの合成
118gのP(TMS)を気密性の600mLのParr反応器に入れた。31gのモノクロロシランMCSを容器にクライオトラップした。反応混合物を解凍し、75℃で400rpmで24時間激しく撹拌した。その間に、すべてのP(TMS)が大部分のP(SiH)(TMS)に変換された。
【0132】
TMS-Cl中約25重量%のP(SiH)(TMS)10gを、60mLのステンレス鋼製容器に入れた。容器に2.4gのMCDSを添加した。反応混合物を密閉容器内で60℃で40時間150rpmで振とうした。その間に、主生成物としてP(SiH)(Siが形成された。
【0133】
仮想例3.前駆体P(Siを使用したPドープSi層のCVD
PドープSi層をSi(100)基材上に堆積することを試みる。P(Siの蒸気を、10sccmの流量及び約1~20torrの圧力で10~20分間堆積反応器(約500℃に加熱)に導入する。その間に500~1500Åの厚さの多結晶Pドープケイ素膜が得られる。得られたPドープケイ素膜のSEM画像を取得することができる。元素分析を行うためにエネルギー分散型X線分析(EDAX)検出器を使用することができる。Si(100)表面に堆積されたPドープケイ素膜のAFM、XRD、及びエリプソメトリー測定が行われてもよい。原子吸光(AA)、MS-GC、NMR、FT-IR、中性子放射化分析(NAA)、X線によるエネルギー分散分析(EDAX)、ラザフォード後方散乱分析(RBS)、及びX線分析などの他のさまざまな特性評価技術が、堆積膜の特性評価に使用されてもよい。
【0134】
仮想例4:前駆体P(SiH(Si)を使用した、Si(100)ウエハ上への高品質PドープSi層の熱CVD
希HF酸で予めエッチングされ、適切にコンディショニング(すすぎ及び乾燥)されたSi(100)基材を堆積チャンバーにロードし、続いて50~120slmの流量で800~1000℃でHベークを行う。次いで、基材とチャンバーを20~50torrの背圧で400~600℃で平衡にする。次いで、純粋なHガスを液体前駆体P(SiH(Si)に通して吹き込み、P(SiH(Si)/H混合物の蒸気を50~150sccmの流量で1~5分間反応器チャンバーに供給する。約30~150Åの厚さの高結晶性PドープエピタキシャルSi膜がSi(100)ウエハ上に堆積される。水素残留物が存在しないことをRBSによって確認することができる。
【0135】
仮想例5:前駆体P(SiH)(Siを使用した、高スループットでのSi(100)ウエハ上へのPドープSi膜の熱CVD
希HF酸で予めエッチングされ、適切にコンディショニング(すすぎ及び乾燥)されたSi(100)基材を堆積チャンバーにロードし、続いて50~120slmの流量で800~1000℃でHベークを行う。次いで、基材とチャンバーを50torrの背圧で550℃で平衡にする。次いで、純粋なHガスを、約75℃で平衡状態にある液体前駆体P(SiH(Si)に通して吹き込んでから室温のトリシランに吹き込んで約100℃の混合チャンバーに送り、続いてP(SiH)(Si/Si/H混合物の蒸気を約100sccmの流量で3分間反応チャンバーに導入する。約200Åの厚さの高結晶性PドープエピタキシャルSi膜がSi(100)ウエハ上に堆積される。
【0136】
本明細書に記載の主題は、ユーザー対話コンポーネントを有するコンピューティングアプリケーションのための1つ以上のコンピューティングアプリケーション特徴/操作を処理する例示的実現との関連で記載されうるが、主題は、こうした特定実施形態に限定されるものではない。むしろ、本明細書に記載の技術は、いずれかの好適な型のユーザー対話コンポーネント実行管理方法、システム、プラットフォーム、及び/又は装置に適用されうる。
【0137】
本発明の性質を説明するために本明細書に記載及び例示されているパーツの詳細、材料、ステップ、及び配置の多くの追加変更を添付の特許請求の範囲に明示される本発明の原理及び範囲内で行いうることは、当業者であれば理解されよう。そのため、本発明は、以上に与えられた実施例及び/又は添付図面の具体的実施形態に限定することが意図されるものではない。
【0138】
本発明の実施形態を示して説明してきたが、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなく、当業者であればそれらの修正を行いうる。本明細書に記載の実施形態は、単に模範的なものにすぎず、限定されるものではない。組成物及び方法の多くの変形及び修正が可能であり、且つ本発明の範囲内にある。それゆえ、保護の範囲は、本明細書に記載の実施形態に限定されるものではなく、後続の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、その範囲は、特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含むものとする。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】