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特表2024-545893異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地
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  • 特表-異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/04 20060101AFI20241206BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20241206BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20241206BHJP
【FI】
D01F6/04 B
D03D15/283
D03D15/37
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537463
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2022020674
(87)【国際公開番号】W WO2023121164
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182731
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,シノ
【テーマコード(参考)】
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB55
4L035BB89
4L035BB91
4L035DD02
4L035EE20
4L035HH01
4L035HH04
4L048AA15
4L048AA37
4L048AA38
4L048AB07
4L048AC09
4L048CA00
4L048CA07
4L048DA03
(57)【要約】
本発明は、異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関し、より詳しくは、冷感性および吸汗速乾能を有する生地の製造が可能な、異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関する。本発明によるポリエチレン原糸は、長手方向に垂直な断面を基準として、中心体と、前記中心体から突出した2個以上の突起とを含むフィラメントを含み、結晶化度が56~85%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に垂直な断面を基準として、
中心体と、前記中心体から突出した2個以上の突起とを含むフィラメントを含み、
結晶化度が56~85%であるポリエチレン原糸。
【請求項2】
前記フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、前記中心体において前記中心体が形成する内接円の第1半径(R1)と、前記中心体と突起とが形成する外接円の第2半径(R2)は、下記式を満足する、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
[式]
1.2≦R2/R1≦5.0
【請求項3】
前記原糸は、ASTM D1238により、190℃、2.16kgで測定される溶融指数(melt index:MI、@190℃)が1~25g/10minである、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項4】
前記原糸は、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)が5~30である、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項5】
前記原糸は、ASTM D2256で測定される強度が5~10g/dである、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の原糸を含む機能性生地。
【請求項7】
前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで測定された接触冷感(Q-max)が0.1~0.5W/cm2である、請求項6に記載の機能性生地。
【請求項8】
前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで測定された熱流速(heat flux)が95~150W/m2である、請求項6に記載の機能性生地。
【請求項9】
前記生地は、KS K0642 8.26のB法バイレック法による水分吸収速度が80~160mm/10minである、請求項6に記載の機能性生地。
【請求項10】
前記生地は、KS K0642 8.25のA法による水分乾燥速度が20~50mm/10minである、請求項6に記載の機能性生地。
【請求項11】
請求項6に記載の機能性生地から製造された吸汗速乾製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関し、より詳しくは、冷感性および吸汗速乾能を有する生地の製造が可能な、異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、繊維業界では、高付加価値を有する差別化素材の開発の一環として繊維をなす重合体の改善だけでなく、原糸の断面の差別化などを研究している。そのうち、原糸の断面の差別化は、投資時間および費用との対比での繊維物性の改良の面で効果が大きいことから研究が活発に進められている。
【0003】
一方、最近、生活水準が向上し、健康な自己管理のために、年齢を問わず全世代で多様なスポーツ活動をしている。このため、スポーツウェアの需要が増えるにつれて、多様なスポーツウェアの開発が活発に行われているのが現状である。特に、軽量性と、通気性といった機能性とを結合して、軽いトレッキングからアクティブなスポーツ活動まで幅広く活用できるスポーツウェア用繊維素材の開発が切実に要求されている。
【0004】
そこで、大韓民国登録特許公報第10-1808459号の「吸汗速乾性および耐摩耗性に優れたポリエステル異形断面糸およびその製造方法」および大韓民国公開特許公報第10-2011-0076122号の「優れた吸汗速乾性およびストレッチ特性を有するポリブチレンテレフタレート異形断面繊維」が開示されている。このような異形断面繊維(糸)は、原糸をなすフィラメントの断面を異形化して、フィラメント束からなる原糸内の空隙を形成し、フィラメントの間に形成された微細空隙による毛細管現象(微細空隙を通して吸収速度を速くし、水の拡散表面を大きくすること)により水分を吸収し排出するようにした。つまり、原糸内の毛細管現象を利用して、汗の吸収と発散を速くする機能、つまり、吸汗速乾能を付与した。
【0005】
しかし、従来の異形断面糸は、綿糸に比べて水分吸収率が良くなく、異形断面糸から製造された製品(生地)を着用した使用者が排出する汗または呼気を十分に吸収できないという短所がある。また、従来の異形断面糸から製造された製品は、水分吸収率が低いことによって、外部に排出される水分も小さくて、実質的に着用者が快適性を感じにくいという問題点がある。
【0006】
また、従来の異形断面糸から製造された製品は、外部に排出できなかった水分によって、人体の活動時、織物と皮膚との摩擦係数を増加させて、皮膚から熱を発生させうる。さらに、従来の異形断面糸は、ほとんどがポリエステル糸で、上述のように、既存のポリエチレン繊維に比べて冷感性がない。そこで、着用者がむしろさらなる熱感を感じ、多量の汗をさらに排出することによって、むしろ不快感を生じうるという短所がある。
【0007】
このため、迅速に多量の水分を吸収および排出し、冷感性を有する新たな繊維素材の開発がさらに必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冷感性および吸汗速乾能を有する生地の製造が可能な異形断面ポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるポリエチレン原糸は、長手方向に垂直な断面を基準として、中心体と、前記中心体から突出した2個以上の突起とを含むフィラメントを含み、結晶化度が56~85%である。
【0010】
本発明の一実施例によるポリエチレン原糸において、前記フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、前記中心体において前記中心体が形成する内接円の第1半径(R1)と、前記中心体と突起とが形成する外接円の第2半径(R2)は、下記の式を満足することができる。
【0011】
[式]
1.2≦R2/R1≦5.0
【0012】
本発明の一実施例によるポリエチレン原糸において、前記原糸は、ASTM D1238により、190℃、2.16kgで測定される溶融指数(melt index:MI、@190℃)が1~25g/10minであってもよい。
【0013】
本発明の一実施例によるポリエチレン原糸において、前記原糸は、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)が5~30であってもよい。
【0014】
本発明の一実施例によるポリエチレン原糸において、前記原糸は、ASTM D2256で測定される強度が5~10g/dであってもよい。
【0015】
本発明による機能性生地は、上述したポリエチレン原糸を含む。
【0016】
本発明の一実施例による機能性生地において、前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱板(T-box)を接触させて測定される接触冷感(Q-max)が0.1~0.5W/cm2であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例による機能性生地において、前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで測定された熱流速(heat flux)が95~150W/m2であってもよい。
【0018】
本発明の一実施例による機能性生地において、前記生地は、KS K0642 8.26のB法バイレック法による水分吸収速度が80~160mm/10minであってもよい。
【0019】
本発明の一実施例による機能性生地において、前記生地は、KS K0642 8.25のA法による水分乾燥速度が20~50mm/10minであってもよい。
【0020】
本発明による吸汗速乾製品は、上述した機能性生地から製造されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明による異形断面ポリエチレン原糸は、水分が迅速に移動および排出することができ、優れた熱伝導度を有することによって、吸汗速乾および冷感性を同時に有する生地の製造が可能である。
【0022】
また、本発明による機能性生地は、優れた熱伝導度および吸汗速乾能を有するポリエチレン原糸を含むことによって、冷感性および吸汗速乾能を有し、汗や、湿気および呼気などによって発生する水分を迅速に排出し、熱を外部に放出可能で、ジメジメ感と熱感を減少させることによって、使用者に快適感を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例による異形断面ポリエチレン原糸のフィラメントの断面図である。
図2】本発明の第2実施例による異形断面ポリエチレン原糸のフィラメントの断面図である。
図3】生地の接触冷感を測定する装置を概略的に示す模式図である。
図4】生地の熱流速を測定するサーマルマネキン実験を示す写真である。
図5図1に示された異形断面ポリエチレン原糸のフィラメントの断面を拡大して示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される技術用語および科学用語において、他に定義がなければ、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨をぼやけさせうる公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0025】
また、本明細書で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むと意図することができる。
【0026】
さらに、本明細書において特別な言及なしに使用された単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義されない限り、全体組成物中のいずれか1つの成分が組成物中に占める重量%を意味する。
【0027】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅で論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の、すべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生する可能性がある、数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0028】
本明細書の用語、「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型(open-ended)記載であり、追加的に列挙されていない要素、材料または工程を排除しない。
【0029】
吸汗速乾は、汗、湿気および口気などのような水分を迅速に吸収し乾燥させることを意味するもので、スポーツウェア、作業服およびマスクなど人体に快適性を付与するために多様な分野で要求されている。
【0030】
従来は、原糸をなすフィラメントの断面を異形化して、フィラメント束からなる原糸内に空隙を形成し、フィラメントの間に形成された微細空隙による毛細管現象により原糸に吸汗速乾能を付与した。しかし、従来の異形断面糸は、綿糸に比べて水分吸収率が良くなく、異形断面糸から製造された製品(生地)を着用した使用者が排出する汗または口気を十分に吸収できないという短所がある。また、従来の異形断面糸から製造された製品は、水分吸収率が低いことによって、外部に排出される水分も小さくて、実質的に着用者が快適性を感じにくいという問題点がある。
【0031】
また、従来の異形断面糸から製造された製品は、外部に排出できなかった水分によって、人体の活動時、織物と皮膚との摩擦係数を増加させて皮膚から熱を発生させることがある。さらに、従来の異形断面糸はほとんどがポリエステル糸で、上述のように、既存のポリエチレン繊維に比べて冷感性がない。このため、従来の異形断面糸から製造された製品を着用した使用者がむしろさらなる熱感を感じ、多量の汗をさらに排出することによって、むしろ不快感を生じうるという短所がある。
【0032】
そこで、本出願人は、非常に優れた吸汗速乾能および冷感性を同時に有することができる高付加価値の原糸を開発すべく、長期間にわたって突っ込んだ研究を行った結果、特定の形状を有する異形断面ポリエチレン原糸が優れた吸汗速乾能を有し、ポリエチレン特有の冷感性を提供して、使用者の着用時、非常に優れた快適感を提供できる製品の製造を可能にすることを見出して、これに関する研究をさらに重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0033】
本発明のポリエチレン原糸は、長手方向に垂直な断面を基準として、中心体と、前記中心体から突出した2個以上の突起とを含むフィラメントを含むもので、結晶化度は56~85%、具体的には60~85%、さらに具体的には65~75%であってもよい。
【0034】
このようなポリエチレン原糸は、特定の異形断面を有する複数のフィラメントが束で具備された構造で、フィラメントの断面構造によって、原糸内のフィラメントの間に微細空隙が形成されることによって、微細空隙による毛細管現象により水分の吸収および排出が円滑に行われる。それだけでなく、ポリエチレン特有の優れた熱伝導度を有することによって、吸汗速乾および冷感性を同時に有する生地の製造が可能である。
【0035】
図1は、本発明の一実施例によるポリエチレン原糸のフィラメントが示されている。
【0036】
図1を参照すれば、ポリエチレン原糸は、長手方向に垂直な断面を基準として、中心体と、前記中心体から突出した2個以上の突起とを含むフィラメントを含むもので、上述のように、このような断面が異形化されたフィラメントを含むことによって、原糸内のフィラメントの間に微細空隙が形成される。
【0037】
本発明の一態様において、ポリエチレン原糸をなすフィラメントは非多孔質で、フィラメント間の間隔によってのみポリエチレン原糸に空隙が形成される。つまり、フィラメントの間に微細空隙によりポリエチレン原糸の空隙率が形成される。詳しくは、ポリエチレン原糸の長手方向に垂直な方向に、原糸の外形に沿って測定される原糸の断面を基準としてフィラメントの占める面積は50~99%、具体的には60~90%であってもよいし、これを除いた面積は、原糸に空隙が形成された面積で、原糸の断面空隙率であってもよい。このようにフィラメントの間に形成される微細空隙により空隙率が高く形成されたポリエチレン原糸は、ポリエチレン特有の冷感性を高く維持すると同時に、水分の速い吸収および乾燥が可能になる。
【0038】
具体的には、中心体は、フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、三角形、四角形、五角形などの多角形、楕円形または円形など多様な断面形状を有することができるが、好ましくは、図1に示されているように、円形または円形に近い断面形状を有し、平均半径長さを形成することができる。この時、フィラメントの長手方向に垂直な断面において、中心体のなす半径は、フィラメントの内接円を意味する。
【0039】
あるいは、図2に示されているように、中心体は、フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、楕円形であってもよい。この時、フィラメントの長手方向に垂直な断面において、中心体のなす半径は、フィラメントの内接円を意味するが、内接円が楕円形であることによって、楕円形の短半径および長半径から選択されるいずれか1つであってもよい。好ましくは、長半径を意味することができる。
【0040】
突起は、フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、中心体から突出して形成されるもので、突起を含むフィラメントは、長手方向に垂直な断面が異形化された形状を有する。このようなフィラメントを含む原糸は、フィラメント間の微細空隙が形成されて、毛細管現象による水分の吸収できる流路、つまり、マイクロチャネル(微細空隙)が形成される。このため、原糸は、マイクロチャネルによって水分を吸収および排出可能で、優れた吸汗速乾能を有することができる。
【0041】
突起は、中心体から突出した形状であれば限定されないが、端部がラウンド状に緩やかに突出したものであってもよい。突起は、毛細管現象により水分が吸収できる程度に原糸内のフィラメントを離隔させることができる大きさ、つまり、中心体から突出する長さが限定されない。
【0042】
ただし、前記原糸、またはフィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、前記中心体において前記中心体が形成する内接円の第1半径(R1)と、前記中心体と突起とが形成する外接円の第2半径(R2)は、下記の式を満足することが、毛細管現象による水分吸収力において有利である。
【0043】
[式]
1.2≦R2/R1≦5.0
【0044】
さらに具体的には、上記式中、1.2≦R2/R1≦3.5または1.3≦R2/R1≦3であってもよい。前記範囲で、ポリエチレンが疎水性であるにもかかわらず、強い毛細管力により原糸の水分吸収が円滑に起こることができる。
【0045】
また、フィラメントの長手方向に垂直な断面において、中心体が形成するフィラメントの内接円の円周に対して、1つの突起の占める長さの比は10%以上、具体的には20~50%であってもよい。ここで、突起の占める長さは、内接円の円周において、突起の両端部と、内接円とのそれぞれの接点を結ぶ弧の長さを意味する。具体的には、図1において、
を意味することができる。
【0046】
突起は、2個以上、具体的には2個~5個が備えられる。好ましくは、中心体が円形であるとき、3個備えられて、長手方向に垂直なフィラメントの断面が3葉形に形成されることが、内接円および外接円の長さ調節によるマイクロチャネルの大きさ調節が容易である。
【0047】
あるいは、中心体が楕円形の時、4個が備えられて、長手方向に垂直なフィラメントの断面が4葉形に形成されることが、マイクロチャネルの大きさの調節において有利である。
【0048】
突起は、中心体の円周方向に沿って、互いに同一の間隙で配列されうるが、これに限定されない。一例として、図1に示されているように、突起が3個備えられるとき、中心体の円周方向に沿って互いに同一間隔で配列されうるが、これとは異なり、突起が2個備えられるとき、中心体のいずれか一方の側に偏向して突起が位置することができる。
【0049】
あるいは、図2に示されているように、突起が4個備えられるとき、楕円形の中心体を基準として、一対の突起が互いに対称に配列される。
【0050】
上述のように、複数の突起が中心体に突出して形成されることによって、突起が形成された中心体の一表面の全体の面積に対して突起の占める面積比は60%以上、具体的には80~100%であることが好ましい。このとき、100%は、中心体の一表面の全体の面積に対して、突起が連続的に形成されたことを意味する。具体的には、図1に示されているように、隣接した突起の端部が、互いに接するように位置して、フィラメントの長手方向に垂直な断面を基準として、前記フィラメントの断面形状が、フィラメントの周方向に沿って波形であってもよい。
【0051】
このようなポリエチレン原糸は、上述のように、異形化された断面を有する複数のフィラメントが束をなすもので、長手方向に垂直な断面を基準として、前記フィラメントの占める面積が70~99%、さらに詳しくは80~95%であってもよい。フィラメントの占める面積以外の面積は、微細空隙の占める面積を意味することができ、マイクロチャネルが形成する面積を意味することができる。前記範囲で、マイクロチャネルによる十分な水分吸収および排出能を有することができる。
【0052】
ポリエチレン原糸は、複数のフィラメントを含むことができる。原糸は、微細空隙を形成できるフィラメントの個数であれば限定されない。一例として、ポリエチレン原糸は、1~3デニールの纎度をそれぞれ有する40~500本のフィラメントを含むことができ、100~1,000デニールの総纎度を有することができる。
【0053】
また、ポリエチレン原糸は、密度が0.90~0.99g/cm3、または0.93~0.97g/cm3であってもよい。さらに、ポリエチレン原糸は、紡糸による結晶化度が56~85%、具体的には60~85%、さらに具体的には65~75%であってもよく、前記ポリエチレン原糸の中心から外角まで均一な結晶化度を示すことができる。前記ポリエチレン原糸の結晶化度は、X線回折分析器を用いた結晶性分析時、未結晶の大きさとともに導出される。結晶化度が前記範囲を満足する範囲で高密度ポリエチレン(HDPE)の共有結合により連結された分子鎖方向に「フォノン(phonon)」という格子振動(lattice vibration)により、熱が迅速に拡散および発散し、汗および呼気などの水分排出機能が向上して、冷感性に優れた生地を提供することができる。特に、一実施例によるポリエチレン原糸は、中が満たされていて、中の空いた原糸よりも、単位体積あたりの結晶化度が高く、実質的に同一の太さの原糸の場合、結晶部分をより多く含有できるという点で、本発明において目的とする優れた冷感性を有する生地を製造することができる。
【0054】
これとともに、ポリエチレン原糸は、ASTM D1238にしたがい、190℃、2.16kgで測定される溶融指数(melt index:MI、@190℃)が、1~25g/10min、具体的には3~15g/10min、さらに具体的には5~10g/10minであってもよいが、これに限定されない。ただし、前記範囲で比較的優れた強度を有することができる。
【0055】
また、ポリエチレン原糸の多分散指数は、5~30、具体的には10~20であってもよい。ここで、ASTM D2256により測定される強度は5~10g/d、具体的には6~9g/d、さらに具体的には7~8g/dであってもよい。前記範囲で、高い熱伝導度を有すると同時に、製織性に有利な適切な剛軟度を有することができる。
【0056】
以下、図1を参照して、本発明の一態様によるポリエチレン原糸の製造方法を具体的に説明する。本発明のポリエチレン原糸は、PDI、強度および伸び率など、前記物性の範囲を満足するものであれば、その製造方法に制限されるわけではなく、以下、一態様を説明する。
【0057】
まず、チップ(chip)形態のポリエチレンを、エクストルーダ(extruder)100に投入して溶融させることによって、ポリエチレン溶融物を得る。
【0058】
溶融したポリエチレンが前記エクストルーダ100内のスクリュー(図示せず)によって口金200により運搬され、前記口金200に形成された複数のホールを通して押出される。前記口金200のホールの個数は、製造される原糸のDPF(Denier Per Filament)および纎度により決定できる。例えば、75デニールの総纎度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は、20~75個のホールを有することができ、450デニールの総纎度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は、90~450個、好ましくは100~400個のホールを有することができる。
【0059】
前記エクストルーダ100内での溶融工程および口金200による押出工程は、ポリエチレンチップの溶融指数により変更適用可能であるが、具体的には、例えば、150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃で行われることが好ましい。つまり、エクストルーダ100および口金200が150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃に維持されることが好ましい。
【0060】
前記紡糸温度が150℃未満の場合、低い紡糸温度によってポリエチレンの均一な溶融が行われないので、紡糸が困難になる。これに対し、紡糸温度が315℃超過の場合、ポリエチレンの熱分解が引き起こされて、所望の強度を発現できないのでありうる。
【0061】
溶融したポリエチレンが、異形断面用口金200のホールから吐出されるに伴い、紡糸温度と室温との間の差によって、ポリエチレンの固化が開始され、半固化状態のフィラメント11が形成される。本明細書では、半固化状態のフィラメントはもちろんのこと、完全固化したフィラメントをも総称して「フィラメント」とする。
【0062】
複数の前記フィラメント11は、冷却部(または「quenching zone」)300で冷却されることによって完全固化する。前記フィラメント11の冷却は、空冷方式で行われる。
【0063】
前記冷却部300での前記フィラメント11の冷却は、0.2~1m/secの風速の冷却風を利用して、15~40℃に冷却されるように行われることが好ましい。前記冷却温度が15℃未満であれば、過冷却により伸度が不足して延伸過程で糸切れが発生しうるのであって、前記冷却温度が40℃超過であれば、固化不均一によってフィラメント11間の纎度偏差が大きくなり、延伸過程で糸切れが発生しうる。
【0064】
また、冷却部での冷却時に多段冷却を行うことによって、より均一に結晶化されるようにし、これによって湿気および汗の排出をより円滑にし、冷感性に優れた原糸を製造することができる。さらに具体的には、前記冷却部は、2個以上の区間に分けられる。例えば、3個の冷却区間からなる場合、第1冷却部から第3冷却部へいくほど温度が次第に低くなるように設計されることが好ましい。具体的には、例えば、第1冷却部は40~80℃に設定され、第2冷却部は30~50℃に設定され、第3冷却部は15~30℃に設定されうる。
【0065】
また、第1冷却部で風速を最も高く設定することによって、表面が、より滑らかな繊維を製造することができる。具体的には、第1冷却部は0.8~1m/sec、第2冷却部は0.4~0.6m/secおよび第3冷却部は0.2~0.5m/secの風速の冷却風を利用するものであってもよいし、このような条件に調節することによって、結晶化度が、より高く、表面が、より滑らかな原糸を製造することができる。
【0066】
次に、集束器400で、前記冷却および完全固化したフィラメント11を集束させて、マルチフィラメント10を形成させる。
【0067】
図1に示されているように、本発明のポリエチレン原糸は、直接紡糸延伸(DSD)工程により製造できる。つまり、前記マルチフィラメント10が複数のゴデットローラ部GR1...GRnを含む多段延伸部500に直接伝達されて、2~20剛軟度、好ましくは3~15倍の総延伸比で多段延伸された後、ワインダ600に巻取られる。また、多段延伸時の最後の延伸区間では、1~5%の収縮延伸(弛緩)を付与することによって、耐久性が、より優れた原糸を提供することができる。
【0068】
代案的に、前記マルチフィラメント10を未延伸糸として一旦巻取った後、前記未延伸糸を延伸することによって、本発明のポリエチレン原糸が製造されてもよい。つまり、本発明のポリエチレン原糸は、ポリエチレンを溶融紡糸して未延伸糸を一旦製造した後、前記未延伸糸を延伸するという2段階の工程により製造されてもよい。
【0069】
延伸工程で適用される総延伸比が2未満であれば、最終的に得られるポリエチレン原糸が56%以上、60%以上の結晶化度を有することができず、前記原糸で製造される生地上に羽毛(ピリング)が誘発される危険がある。
【0070】
これに対し、前記総延伸比が15倍超過であれば、糸切れが発生する可能性があり、最終的に得られるポリエチレン原糸の強度が適さず、前記ポリエチレン原糸の製織性が良くないだけでなく、これを用いて製造された生地が過度にごわついて使用者が不便さを感じることがある。
【0071】
本発明の溶融紡糸の紡糸速度を決定する第1ゴデットローラ部GR1の線速度が決定されれば、前記多段延伸部500で2~20、好ましくは3~15の総延伸比が前記マルチフィラメント10に適用できるように、残りのゴデットローラ部の線速度が適切に決定される。
【0072】
本発明の一実施例によれば、前記多段延伸部500のゴデットローラ部GR1...GRnの温度を40~140℃の範囲で適切に設定することによって、前記多段延伸部500によりポリエチレン原糸の熱固定(heat-setting)が行われる。具体的には、例えば、前記多段延伸部は、3個以上、具体的には3~5個の延伸区間からなるものであってもよい。また、各延伸区間は、いくつかのゴデットローラ部からなるものであってもよい。
【0073】
具体的には、例えば、前記多段延伸部は、4個の延伸区間からなり、第1延伸区間~第3延伸区間で総延伸比7~15倍に延伸後、第4延伸区間で1~3%収縮延伸(弛緩)を行うものであってもよい。前記総延伸比は、延伸をする前の繊維に比べて、第1延伸区間から第3延伸区間を経た繊維の最終延伸比を意味する。
【0074】
さらに具体的には、第1延伸区間は、40~130℃で行われ、総延伸比が2~5倍であってもよい。第2延伸区間は、前記第1延伸区間に比べて高い温度で行われ、具体的には100~150℃で行われ、総延伸比が5~8倍となるように延伸するものであってもよい。第3延伸区間は、100~150℃で行われ、総延伸比が7~15倍となるように延伸するものであってもよい。第4延伸区間は、前記第2延伸区間と同一または低い温度で行われ、具体的には80~140℃で行われ、1~3%収縮延伸(弛緩)を行うものであってもよい。
【0075】
多段延伸部500により、前記マルチフィラメント10の多段延伸と熱固定とが同時に行われ、多段延伸されたマルチフィラメント10がワインダ600に巻取られることによって、本発明のポリエチレン原糸が完成する。
【0076】
本発明による機能性生地は、上述したポリエチレン原糸を含むもので、優れた熱伝導度および吸汗速乾能を有するポリエチレン原糸を含むことによって、冷感性および吸汗速乾能を有し、汗や、湿気および呼気などによって発生する水分を迅速に排出することができる。このような生地で製造された製品を使用者が着用する時、迅速に水分と熱を外部に放出可能であって、ジメジメ感と熱感を減少させることによって、使用者に快適感を提供することができる。
【0077】
本発明による機能性生地は、前記説明されたポリエチレン原糸を単独で使用するものであってもよいし、他の機能性をさらに付与するために異種の原糸をさらに含んでもよいが、より優れた冷感性および吸汗速乾能を同時に有することができるという観点からは、前記ポリエチレン原糸を単独で使用することが好ましい。
【0078】
具体的には、機能性生地は、20±2℃、65±2%R.Hで測定された接触冷感が0.1~0.5W/cm2、さらに具体的には0.15~0.3W/cm2であってもよい。また、機能性生地は、20±2℃、65±2%R.Hで測定された熱流速(heat flux)が95~150W/m2、具体的には100~120W/m2であってもよい。このような冷感を有する機能性生地は、後に製品に製造または加工されて使用者に着用される時、高温環境下で、使用者が快適感を感じられる優れた冷感を提供することができる。
【0079】
また、機能性生地は、KS K0642 8.26のB法バイレック法による水分吸収速度が80~160mm/10min、具体的には100~130mm/10minであってもよい。このような機能性生地は、同一の条件で、水分吸収速度が50mm/10min前後の綿糸よりも高い水分吸収速度を有するもので、非常に優れた水分吸収能を有する。
【0080】
さらに、機能性生地は、KS K0642 8.25のA法による水分乾燥速度が、20~50mm/10min、具体的には30~40mm/10minと、比較的速い水分乾燥速度で、水分の排出が円滑に起こりうる。このように、速い水分吸収速度および水分乾燥速度を示す機能性生地は、汗、湿気および呼気などの水分を、迅速に吸収して排出できる吸汗速乾能が非常に優れている。
【0081】
機能性生地は、150~800g/m2の単位面積あたりの重量(つまり、面密度)を有する織物または編物であってもよい。生地の面密度が150g/m2未満であれば、生地の稠密性が不足し、生地内に多くの空隙が存在するが、このような空隙は生地の冷感性を低下させる。これに対し、生地の面密度が800g/m2超過であれば、過度に密な生地構造によって生地がごわつき、使用者が感じる触感に問題が発生し、高い重量によって使用上の問題点が誘発される。
【0082】
このような生地は、吸汗速乾能および冷感性が同時に要求される吸汗速乾製品に加工される。製品は、従来の繊維製品はすべて可能であるが、好ましくは、人体に冷感性および吸汗速乾能を付与するための夏服、スポーツウェア、マスクおよび作業服であってもよい。
【0083】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されたが、これは本発明の、より全般的な理解のために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0084】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属する。
【0085】
[原糸の物性の測定]
<1.重量平均分子量(Mw)(g/mol)および多分散指数(PDI)>
ポリエチレン原糸を下記の溶媒に完全に溶解した後、次のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて前記ポリエチレン原糸の重量平均分子量(Mw)および多分散指数(Mw/Mn:PDI)をそれぞれ求めた。
【0086】
-分析機器:Tosoh社のHLC-8321 GPC/HT
-カラム:PLgel guard(7.5×50mm)+2×PLgel mixed-B(7.5×300mm)
-カラム温度:160℃
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB)+0.04wt.%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(0.1%CaCl2での乾燥後;after drying with 0.1%CaCl2
-インジェクタ―、検出器(Injector、Detector)の温度:160℃
-検出器(Detector):RI Detector
-流速:1.0ml/min
-注入量:300μl
-試料濃度:1.5mg/mL
-標準試料:ポリスチレン
【0087】
<2.強度(g/d)>
ASTM D2256方法により、インストロン社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験機を用いて、ポリエチレン原糸の変形-応力曲線を得た。サンプルの長さは250mmであり、引張速度は300mm/minであり、初期ロード(load)は0.05g/dに設定した。破断点での応力と伸張から強度(g/d)を求めた。それぞれの原糸ごとに5回測定後、その平均値を算出した。
【0088】
<3.結晶化度>
XRD機器(X線回析装置;X-ray Diffractometer)[製造会社:PANalytical社、モデル名:EMPYREAN]を用いて、ポリエチレン原糸の結晶化度を測定した。具体的には、ポリエチレン原糸を切断して2.5cmの長さを有するサンプルを準備し、前記サンプルをサンプルホルダに固定させた後、下記の条件下で測定を実施した。
【0089】
-光源(X-ray Source):Cu-Kα radiation
-電力(Power):45KV×25mA
-モード:連続スキャンモード
-スキャン角度範囲:10~40°
-スキャン速度:0.1°/sec
【0090】
<4.溶融指数>
ASTM D1238により、190℃、2.16kgで測定した。
【0091】
[生地の物性の測定]
<1.接触冷感>
韓国衣類試験研究院に依頼して、KES-F7(Thermo Labo II)装置を用いて、試験環境20±2℃、65±2%R.Hで測定した。
【0092】
具体的には、20cm×20cmサイズの生地サンプルを準備した後、20±2℃の温度および65±2%のRHの条件下で24時間放置した。次に、20±2℃の温度および65±2%のRHのテスト環境で、KES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co.,LTD.)装置を用いて、生地の接触冷感(Qmax)を測定した。具体的には、図3に示されているように、20℃に維持されるベースプレート(「Water-Box」とも称される)21上に、前記生地サンプル23を載せ、30℃に加熱されたT-Box22a(接触面積:3cm×3cm)を前記生地サンプル23上に1秒間だけ載せた。つまり、一面がベースプレート21と接触している前記生地サンプル23における他面をT-Box22aに瞬間的に接触させた。前記T-Box22aによって前記生地サンプル23に加えられた接触圧力は6gf/cm2であった。次に、前記装置に連結されたモニタ(図示せず)に表示されたQmax値を記録した。このようなテストを10回繰り返し、Qmax値の算術平均を算出した。
【0093】
<2.熱流速(heat flux)>
サーマルマネキン(Thermal Manikin)を人工気候室内に位置させた後、試験環境20±2℃、65±2%R.Hで測定した。
【0094】
具体的には、図4に示されているように、20±2℃、65±2%R.Hの人工気候室の中央に男性サーマルマネキンを位置させた。次に、サーマルマネキンの温度を33.7℃に設定した後、電源を供給してサーマルマネキンを加温させた。
【0095】
以後、男性95sizeの上着サンプルを準備した後、加温されたサーマルマネキンに着衣させ、1分間隔で30分間サーマルマネキンの表面温度およびサーマルマネキンの温度維持のための電力値により、単位時間(1min)の単位面積1m2あたりに消費された熱エネルギー量である熱流速(heat flux、W/m2)を測定した。
【0096】
<3.水分吸収速度>
KS K0642 8.26のB法(バイレック法)により、生地の水分吸収速度を測定した。
【0097】
具体的には、20cm×2.5cmサイズの同一の生地サンプル5個を準備した後、20±2℃の蒸留水が入っている容器の水面にサンプルの一端が当たるようにして一定の高さに水平棒で固定させた。10分経過後、毛細管現象により水が上昇する高さを測定して、その平均値で表示した。
【0098】
<4.水分乾燥速度>
KS K0642 8.25のA法により、生地の水分乾燥速度を測定した。
【0099】
具体的には、4cm×4cmのサイズの試験片3個を準備した後、20±2℃の蒸留水に広げた状態で浸漬させて十分に水分を試験片に吸収させた。この後、蒸留水から取り出して水滴がそれ以上落ちない時、乾燥時間測定装置に装着して、20±2℃、65±2%R.H条件下の試験室内で放置させた。自然乾燥して恒量になるまでの時間を測定した。
【0100】
[実施例1]
<ポリエチレン原糸の製造>
200本のフィラメントを含み、総纎度が150デニールのポリエチレン原糸を製造した。
【0101】
まず、ポリエチレンチップをエクストルーダ100に投入して溶融させた。溶融したポリエチレンは200個のホールを有する口金200により押出された。口金温度は270℃であった。この時、口金のノズルは「Y」形であった。
【0102】
口金200のノズルホールから吐出されながら形成されたフィラメント11は、第1冷却部では0.9m/secの風速の冷却風によって50℃に冷却し、第2冷却部では0.5m/secの風速の冷却風によって35℃に冷却し、第3冷却部で0.4m/secの風速の冷却風によって25℃に最終冷却された。冷却された後、集束器によってマルチフィラメント糸に集束された。
【0103】
次に、前記マルチフィラメント糸は延伸部500に移動した。前記延伸部は4個の区間からなる多段延伸部からなり、具体的には、第1延伸区間は最大延伸温度80℃で総延伸比3倍に延伸され、第2延伸区間は最大延伸温度120℃で総延伸比7倍に延伸され、第3延伸区間は最大延伸温度130℃で総延伸比10倍に延伸され、第4延伸区間は最大延伸温度120℃で第3延伸区間に比べて2%収縮延伸(弛緩)されるようにして、延伸および熱固定された。
【0104】
次に、前記延伸されたマルチフィラメント糸はワインダ600に巻取られた。巻取張力は0.8g/dであった。
【0105】
製造された原糸の断面の光学顕微鏡写真を図5に示し、製造された原糸の物性を測定して下記表1に示した。
【0106】
<機能性生地の製造>
前記製造されたポリエチレン原糸を製織して、面密度500g/m2の機能性生地を製造した。製造された機能性生地の物性を測定して下記表3に示した。
【0107】
[実施例2~5]
下記表1のように原糸条件を変更したことを除けば、実施例1と同様に生地を製造した。また、実施例1と同様に製造された生地の物性を測定して下記表3に示した。
【0108】
[実施例6]
実施例1において、口金ノズルについて「>-<」形ノズルを用いたことを除き、実施例1と同様に原糸および生地を製造した。また、製造された原糸および生地の物性を測定して下記表1および表3に示した。
【0109】
[比較例1]
実施例1において、口金ノズルについて円形ノズルを使用したことを除けば、実施例1と同様に原糸および生地を製造した。原糸の物性を下記表2に示し、また、実施例1と同様に製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0110】
[比較例2]
実施例1と同一の断面形状および大きさを有するポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を準備した後、実施例1と同様に生地を製造した。原糸の物性を下記表2に示し、実施例1と同様に製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0111】
[比較例3]
実施例1と同一の断面形状および大きさを有し、吸収用添加剤として二酸化チタン(TiO2)が添加されたポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を準備した後、実施例1と同様に生地を製造した。原糸の物性を下記表2に示し、実施例1と同様に製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0112】
[比較例4]
実施例1において、結晶化度が下記表2を満足するように、ポリエチレン原糸の延伸工程を多段延伸から単一延伸に変えたことを除き、実施例1と同様に原糸を製造し、製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0113】
[比較例5]
実施例1において、結晶化度が下記表2を満足するように、ポリエチレン原糸の冷却工程を多段冷却から単一冷却(0.5m/secの風速の冷却風によって25℃に冷却)に変えたことを除き、実施例1と同様に原糸を製造し、製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
前記表1~表4を参照すれば、本発明の実施例による原糸から製造された生地は、高い接触冷感を有すると同時に、優れた吸汗速乾能を有することを確認することができた。これによって、実施例による原糸から製造された生地は、使用者に顕著に優れた冷感性を提供することができる。
【0119】
これに対し、比較例1による生地の場合、接触冷感は実施例と類似の数値を示したが、水分吸収速度および水分乾燥速度が低くて水分を迅速に除去できず、使用者に感じられる冷感性は低下するということが明らかになった。
【0120】
比較例2~3の場合、接触冷感および熱流速、そして水分吸収および乾燥速度がすべて低くて、冷感性製品および吸汗速乾能を有する製品としての活用の可能性が非常に低いことを確認することができた。
【0121】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されたが、これは本発明の、より全般的な理解のために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0122】
したがって、本発明の思想は説明された実施例に限って定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものは本発明の思想の範疇に属する。
【符号の説明】
【0123】
1:フィラメント、10:中心体
10a:内接円、30:突起
30a:外接円
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】