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特表2024-545896オリゴマー化反応のための触媒組成物
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  • 特表-オリゴマー化反応のための触媒組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】オリゴマー化反応のための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20241206BHJP
   C07C 2/36 20060101ALI20241206BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20241206BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20241206BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 9/50 20060101ALI20241206BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241206BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
C07C2/36
C07C11/02
C07C11/08
C07C11/107
C07F9/50
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537995
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022087115
(87)【国際公開番号】W WO2023118226
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217291.0
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コロブコフ,イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】アル-ネザリ,アブドゥラジズ
(72)【発明者】
【氏名】アル-ダジャネ,マヘール・マタール
(72)【発明者】
【氏名】リッチュッリ,セバスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】アザム,シャヒド
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE25A
4G169BE25B
4G169CB47
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006BA14
4H006BA48
4H006BB11
4H006BC36
4H039CA21
4H039CF10
4H050AA03
4H050AB40
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びにデカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む溶媒混合物を含む触媒反応混合物であって、溶媒混合物が、溶媒混合物の総重量に基づいて、20重量%未満の量のデカリンを含み、任意選択的に、50重量%以下の量のパーヒドロインダンを含む、触媒反応混合物を提供する。エチレンオリゴマー化によって直鎖状アルファオレフィンを形成する方法であって、エチレンガスを反応混合物と反応器内で接触させるステップであり、反応混合物が、本開示の触媒反応混合物を含む、ステップと;少なくとも1つの直鎖状アルファオレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを含む生成物流を反応器から引き抜くステップとを含む、方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びにデカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む溶媒混合物を含む触媒反応混合物であって、前記溶媒混合物が、前記溶媒混合物の総重量に基づいて、約5~20重量%の量のデカリンを含み、任意選択的に、50重量%以下の量のパーヒドロインダンを含む、触媒反応混合物。
【請求項2】
前記デカリンが、前記溶媒混合物の総重量に基づいて、約15重量%以下、例えば約5~約15重量%又は約8~約12重量%の量で存在する、請求項1に記載の触媒反応混合物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの追加の溶媒が、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素、エーテル、非置換又はハロゲンで置換されている場合がある芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン及びそれらの組合せ、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロブタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒反応混合物。
【請求項4】
前記配位子が、構造PNP、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPNを有し、ここで、各Pが、置換ホスフィノ基であり、各Nが、置換アミノ基であり、例えば、前記配位子が、少なくとも2つの窒素原子をその骨格に有し、例えば、前記配位子が、構造(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R)を有し、ここで、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル又は任意選択的に置換されているC~C20ヒドロカルビルである場合があり、例えば、Rが、C1~C4アルキルであり、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C20アリール又はC3~C7脂肪族基であり、これは環式又は非環式、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換であってよく、R、R、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C10アルキル、例えば、C~C5アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒反応混合物。
【請求項5】
前記配位子が、構造:
【化1】
(式中、R及びRは、独立して、1つ以上のC1~C10アルキル、例えばC1~C5アルキルで任意選択的に置換されているシクロヘキシル又はフェニルであり、Rは、C1~C4アルキルである。)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒反応混合物。
【請求項6】
前記クロム化合物が、Cr(III)の有機金属錯体、例えばCr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr(III)Cl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化Cr(III)、Cr(III)-ナフテネート、Cr(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)又はそれらの組合せである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒反応混合物。
【請求項7】
アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン又はそれらの組合せを含む共触媒をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒反応混合物。
【請求項8】
エチレン及び少なくとも1つの直鎖状アルファオレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒反応混合物。
【請求項9】
エチレンオリゴマー化によって直鎖状アルファオレフィンを形成する方法であって、
i)エチレンガスを反応混合物と反応器内で接触させるステップであり、前記反応混合物が、少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びにデカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む溶媒混合物を含み、前記溶媒混合物が、前記溶媒混合物の総重量に基づいて、約5~20重量%の量のデカリンを含み、任意選択的に、50重量%以下の量のパーヒドロインダンを含む、ステップと;
ii)少なくとも1つの直鎖状アルファオレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを含む生成物流を前記反応器から引き抜くステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記デカリンが、前記溶媒混合物の総重量に基づいて、約15重量%以下、例えば約5~約15重量%又は約8~約12重量%の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの追加の溶媒が、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素、エーテル、非置換又はハロゲンで置換されている場合がある芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン及びそれらの組合せ、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロブタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記配位子が、構造PNP、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPNを有し、ここで、各Pが、置換ホスフィノ基であり、各Nが、置換アミノ基であり、例えば、前記配位子が、少なくとも2つの窒素原子をその骨格に有し、例えば、前記配位子が、構造(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R)を有し、ここで、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル又は任意選択的に置換されているC~C20ヒドロカルビルである場合があり、例えば、Rが、C1~C4アルキルであり、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C20アリール又はC3~C7脂肪族基であり、これは環式又は非環式、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換であってよく、R、R、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C10アルキル、例えば、C~C5アルキルである、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記配位子が、構造:
【化2】
(式中、R及びRは、独立して、1つ以上のC1~C10アルキル、例えばC1~C5アルキルで任意選択的に置換されているシクロヘキシル又はフェニルであり、Rは、C1~C4アルキルである。)を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記クロム化合物が、Cr(III)の有機金属錯体、例えばCr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr(III)Cl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化Cr(III)、Cr(III)-ナフテネート、Cr(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)又はそれらの組合せである、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン又はそれらの組合せを含む共触媒をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生成物流が、前記生成物流の総重量に基づいて、約0.9重量%以下のポリマー含有量を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エチレンオリゴマー化によって直鎖状アルファオレフィンを形成するための方法及びそのような方法において使用するための触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
直鎖状オレフィンは、石油化学産業において原料として有用な炭化水素の一種であり、これらの直鎖状アルファオレフィンの中でも、二重結合が鎖の末端に位置する非分岐オレフィンは、重要なサブクラスを形成している。直鎖状アルファオレフィンは、ヒドロホルミル化によって直鎖状第一級アルコールに変換されうる。ヒドロホルミル化は、アルデヒドを調製するために使用される場合もあり、アルデヒドは次いで酸化されて、潤滑剤の製造に有用な、特に炭素数が奇数の、合成脂肪酸を生成することができる。直鎖状アルファオレフィンは、直鎖状アルキルベンゼンスルホネートなどの洗剤の製造においても使用され、直鎖状アルキルベンゼンスルホネートは、ベンゼンと直鎖状オレフィンとのフリーデル・クラフツ反応とそれに続くスルホン化によって調製される。直鎖状アルファオレフィンの別の重要な使用は、エチレンとの触媒による共重合による直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造に関する。
【0003】
アルファオレフィンの調製は、エチレンのオリゴマー化に主に基づいており、これには、生成されたアルファオレフィンが偶数の炭素原子を有するという当然の結果がある。オリゴマー化方法は、様々な異なる触媒系を利用する。特定の実施形態において、触媒系は、クロム化合物並びにリン及び窒素原子をその骨格に有する配位子、例えばAl-Hazmiらに対するUS2017/0203288に記載されている触媒組成物を含む。
【0004】
あらゆるオリゴマー化方法の主な課題の1つは、望まれないポリマー形成であり、望まれないポリマー形成は、反応器内でファウリングをもたらし、これには除去するために定期的なフラッシング又は長い機械的清浄化が必要となる。触媒の活性を高めるための従来の方法は、反応温度を上げること又は方法において使用される共触媒の量を増やすことを含む。両方の方法が、より大量の標的オリゴマーをもたらすだけでなく、反応中に形成されるポリマーの量の増加ももたらす。共触媒の値段が典型的に高いため、共触媒の量を増やすと、方法も著しく高価になる。当技術分野において、ポリマー形成を著しく増加させることなく、オリゴマー化反応における触媒活性を改善させる必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0203288号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本開示の例示的実施は、エチレンオリゴマー化によって直鎖状アルファオレフィンを形成するための方法及びそのような方法において使用するための触媒組成物を対象としており、触媒は、比較的少量のデカリンを含む溶媒の混合物と組み合わされる。少量のデカリンの存在が、ポリマー形成を著しく増加させることなく又は標的オリゴマーの選択性を著しく損失させることなく、触媒活性を強めることができることが、驚くべきことに発見された。
【0007】
本開示は、限定することなく、以下の実施形態を含む。
【0008】
実施形態1:少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びにデカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む溶媒混合物を含む触媒反応混合物であって、溶媒混合物が、溶媒混合物の総重量に基づいて、20重量%未満(例えば、約5~20重量%)の量のデカリンを含み、任意選択的に、50重量%以下の量のパーヒドロインダンを含む、触媒反応混合物。
【0009】
実施形態2:デカリンが、溶媒混合物の総重量に基づいて、約15重量%以下、例えば約5~約15重量%又は約8~約12重量%の量で存在する、実施形態1に記載の触媒反応混合物。
【0010】
実施形態3:少なくとも1つの追加の溶媒が、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素、エーテル、非置換又はハロゲンで置換されている場合がある芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン及びそれらの組合せ、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロブタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の触媒反応混合物。
【0011】
実施形態4:配位子が、構造PNP、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPNを有し、ここで、各Pが、置換ホスフィノ基であり、各Nが、置換アミノ基であり、例えば、配位子が、少なくとも2つの窒素原子をその骨格に有し、例えば、配位子が、構造(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R)を有し、ここで、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル又は任意選択的に置換されているC~C20ヒドロカルビルである場合があり、例えば、Rが、C1~C4アルキルであり、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C20アリール又はC3~C7脂肪族基であり、これは環式又は非環式、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換であってよく、R、R、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C10アルキル、例えば、C~C5アルキルである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の触媒反応混合物。
【0012】
実施形態5:配位子が、構造:
【0013】
【化1】
(式中、R及びRは、独立して、1つ以上のC1~C10アルキル、例えばC1~C5アルキルで任意選択的に置換されているシクロヘキシル又はフェニルであり、Rは、C1~C4アルキルである。)を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の触媒反応混合物。
【0014】
実施形態6:クロム化合物が、Cr(III)の有機金属錯体、例えばCr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr(III)Cl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化Cr(III)、Cr(III)-ナフテネート、Cr(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)又はそれらの組合せである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の触媒反応混合物。
【0015】
実施形態7:アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン又はそれらの組合せを含む共触媒をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の触媒反応混合物。
【0016】
実施形態8:エチレン及び少なくとも1つの直鎖状アルファオレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンをさらに含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の触媒反応混合物。
【0017】
実施形態9:エチレンオリゴマー化によって直鎖状アルファオレフィンを形成する方法であって、エチレンガスを反応混合物と反応器内で接触させるステップであり、反応混合物が、少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びにデカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む溶媒混合物を含み、溶媒混合物が、溶媒混合物の総重量に基づいて、20重量%未満(例えば、約5~20重量%)の量のデカリンを含み、任意選択的に、50重量%以下の量のパーヒドロインダンを含む、ステップと;少なくとも1つの直鎖状アルファオレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを含む生成物流を反応器から引き抜くステップとを含む、方法。
【0018】
実施形態10:デカリンが、溶媒混合物の総重量に基づいて、約15重量%以下、例えば約5~約15重量%又は約8~約12重量%の量で存在する、実施形態9に記載の方法。
【0019】
実施形態11:少なくとも1つの追加の溶媒が、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素、エーテル、非置換又はハロゲンで置換されている場合がある芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン及びそれらの組合せ、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロブタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態9又は10に記載の方法。
【0020】
実施形態12:配位子が、構造PNP、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPNを有し、ここで、各Pが、置換ホスフィノ基であり、各Nが、置換アミノ基であり、例えば、配位子が、少なくとも2つの窒素原子をその骨格に有し、例えば、配位子が、構造(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R)を有し、ここで、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル又は任意選択的に置換されているC~C20ヒドロカルビルである場合があり、例えば、Rが、C1~C4アルキルであり、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C20アリール又はC3~C7脂肪族基であり、これは環式又は非環式、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換であってよく、R、R、R及びRが、それぞれ独立して選択されるC~C10アルキル、例えば、C~C5アルキルである、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
実施形態13:配位子が、構造:
【0022】
【化2】
(式中、R及びRは、独立して、1つ以上のC1~C10アルキル、例えばC1~C5アルキルで任意選択的に置換されているシクロヘキシル又はフェニルであり、Rは、C1~C4アルキルである。)を有する、実施形態9~12のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
実施形態14:クロム化合物が、Cr(III)の有機金属錯体、例えばCr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr(III)Cl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化Cr(III)、Cr(III)-ナフテネート、Cr(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)又はそれらの組合せである、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
実施形態15:アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン又はそれらの組合せを含む共触媒をさらに含む、実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
実施形態16:生成物流が、生成物流の総重量に基づいて、約0.9重量%以下のポリマー含有量を含む、実施形態9~15のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を、下記に簡潔に記載されている添付の図とともに読むことから明らかになる。本開示は、この開示に記載されている2つ、3つ、4つ又はそれ以上の特徴又は要素の任意の組合せを、そのような特徴又は要素が、本明細書に記載されている具体的な例示的実施において明示的に組み合わされているか、そうでなければ列挙されているかに関わらず、含む。本開示は、本開示の文脈が明らかに別段の指示をしない限り、本開示の任意の分離可能な特徴又は要素が、任意のその態様及び例示的実施において、組み合わせ可能であると見なされるべきであるように、全体論的に読まれることが意図されている。
【0027】
したがって、この概要は、本開示のいくつかの態様の基本的理解を提供するために、いくつかの例示的実施を要約する目的のためにだけ提供されていることが理解される。したがって、上述の例示的実施は単なる例であり、いかなる方法でも本開示の範囲又は趣旨を狭くするように解釈されるべきではないことが理解される。他の例示的実施、態様、及び利点は、例として、いくつかの記載されている例示的実施の原理を例証する添付の図と合わせられて、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0028】
このように、本開示の態様を前述の一般用語で説明してきたが、次に、添付の図について言及し、これは必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示による例示的エチレンオリゴマー化反応器の簡略概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以降で、本開示のすべての実施ではないがいくつかの実施が示されている添付図を参照して、本開示のいくつかの実施がより十分に説明される。実際、本開示の様々な実施が、多くの異なる形態で具現化される可能性があり、本明細書に記載されている実施に限定されて解釈されるべきではなく;むしろ、これらの例示的実施は、この開示が徹底的で完全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。同様の参照数字は、全体を通して同様の要素を指す。
【0031】
特に指定のない限り又は文脈から明らかでない限り、第1の、第2のなどの言及は、特定の順番を意味するものと解釈されるべきではない。別の特徴の上にあると記載された特徴は、(特に指定のない限り又は文脈から明らかでない限り)代わりに下にある場合もあり、その逆もまた然りであり;同様に、別の他の特徴の左にあると記載された特徴は、代わりに右にある場合もあり、その逆もまた然りである。また、本明細書では、定量的測定、値、幾何学的関係性などに言及する場合があるが、別段の記載がない限り、これらのすべてではなくともいずれか1つ以上は、絶対的であってもよく、起こりうる許容可能なばらつき、例えば工学上の公差などによるものを説明するために近似的であってもよい。
【0032】
本明細書に開示されているすべての範囲は、端点を含み、端点は互いに独立して組み合わせ可能である(例えば、「25重量%まで、又は、より具体的には、5重量%~20重量%まで」の範囲は、端点及び「5重量%~20重量%」の範囲のすべての中間値などを含む。)。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り又は文脈から明らかでない限り、オペランドのセットの「又は」は、「包含的又は」であり、したがって、すべてのオペランドが真であるときには偽となる「排他的又は」とは対照的に、オペランドのうち1つ以上が真である場合にのみ真である。したがって、例えば、「[A]又は[B]」は、[A]が真である場合、若しくは[B]が真である場合、又は[A]と[B]の両方が真である場合に、真である。さらに、冠詞「a」及び「an」は、特に指定のない限り又は文脈から単数形を対象とすることが明らかでない限り、「1つ以上」を意味する。
【0034】
以下は、この明細書を通して使用されている様々な用語及び語句の定義を含む。
【0035】
用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素に由来する任意の1価の基、例えば任意の脂肪族基(例えば、メチルなどのアルキル基又はシクロヘキシルなどのシクロアルキル基)又は任意のアリール基(例えば、フェニル)を指す。
【0036】
用語「脂肪族」は、直鎖、分岐鎖、又は非芳香環でともに結合した炭素及び水素を含む有機官能基又は化合物を意味する。
【0037】
用語「アルキル」は、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素を指す。アルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどを含む。
【0038】
「アリール」基又は「芳香族」基は、各環構造内に単結合及び二重結合が交互に並ぶ、置換されている又は置換されている、単環式又は多環式炭化水素、例えばフェニル基である。アリール基置換基の非限定的な例は、アルキル、置換アルキル基、直鎖状又は分岐状アルキル基、直鎖状又は分岐状不飽和炭化水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、アミン、ニトロ、アミド、ニトリル、アシル、アルキルシラン、チオール及びチオエーテル置換基を含む。アルキル基の非限定的な例は、直鎖状又は分岐状のC1~C5炭化水素を含む。不飽和炭化水素の非限定的な例は、少なくとも1つの二重結合を含むC2~C5炭化水素(例えば、ビニル)を含む。アリール基又はアルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、ニトロ(-NO)、アミド、ニトリル(-CN)、アシル、アルキルシラン、チオール及びチオエーテル置換基で置換されている場合がある。多環式基の非限定的な例は、2つ以上の共役環(例えば、縮合芳香環)及び置換共役環を含む、環系を含む。
【0039】
「シクロヘキシル」基は、置換又は非置換の、6個の炭素原子を含む環式炭化水素基である。水素で完全に飽和され、式C11を有するとき、シクロヘキシル基は、非置換シクロヘキシル基である。水素原子の少なくとも1つが別の原子又は官能基で置換されているとき、シクロヘキシル基は、置換シクロヘキシル基である。
【0040】
エチレンオリゴマー化方法
直鎖状アルファオレフィン(LAO)は、化学式C2xを有するオレフィンであり、同様の分子式を有する他のモノオレフィンと、炭化水素鎖の直線性及び第一級又はアルファ位の二重結合の位置によって区別される。直鎖状アルファオレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン並びにC20~C24、C24~C30、及びC20~C30オレフィンのより高いブレンドを含む、工業的に重要なアルファオレフィンの一種を構成する。直鎖状アルファオレフィンは、洗剤、合成潤滑剤、コポリマー、可塑剤及び多くの他の重要な製品の製造に有用な中間体である。
【0041】
直鎖状アルファオレフィンの製造のための既存の方法は、エチレンのオリゴマー化に典型的に頼るものである。例えば、直鎖状アルファオレフィンは、様々な触媒系の存在下で、エチレンの触媒的オリゴマー化によって調製されうる。
【0042】
本開示の触媒組成物は、少なくとも1つのリン原子及び少なくとも1つの窒素原子を有する骨格を有する配位子、クロム化合物、並びに共触媒を典型的に含む。
【0043】
典型的な配位子構造は、結合を介して共有結合した2つのホスフィノ基を有する有機リン化合物である。例示的配位子は、以下の骨格構造:PNP、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPNのいずれかを有する化合物であって、ここで、各Pが、置換ホスフィノ基(典型的には第二級又は第三級ホスフィノ基)であり、各Nが、置換アミノ基(典型的には第二級又は第三級アミノ基)であり、ホスフィノ基とアミノ基の両方の例示的置換基は、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル又は任意選択的に置換されているC1~C20ヒドロカルビル(例えば、任意選択的に置換されているフェニル又は任意選択的に置換されているシクロヘキシル)を含み、任意選択的な置換基は、アミノ又はC1~C20ヒドロカルビルを典型的に含む、化合物を含む。特定の実施形態において、配位子骨格構造は、少なくとも2つのN原子(例えば、PNPN、PNNP、PNPNP又はNPNPN)を含む。
【0044】
特定の実施形態において、配位子は、式I:(R)(R)N-P(R)-N(R)-P(R)-N(R)(R
の配位子などのNPNPN構造を有し、ここで、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して水素、任意選択的に置換されているアミノ、トリアルキルシリル(例えば、トリメチルシリル又はトリエチルシリル)又は任意選択的に置換されているC~C20ヒドロカルビルである場合がある。C~C20ヒドロカルビル基の例は、直鎖又は分岐状のC~C10アルキル、C~Cシクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、C~C20アリール(例えば、フェニル)及びC~C20アルキル置換C~C20アリールを含む。特定の実施形態において、R、R、R、R、R、R及びRのそれぞれは、独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル又はフェニルである。いくつかの実施形態において、Rは、メチルであり、R及びRは、それぞれ独立して選択されるC~C20アリール(例えば、フェニル)又はC~C脂肪族基(例えば、シクロヘキシル)であり、それは、環式又は非環式、直鎖状又は分岐状、置換又は非置換であってよく、R、R、R及びRは、それぞれ独立して選択されるC~C10アルキル(例えば、C~C5アルキル)である。
【0045】
上記のNPNPN式の特定の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、イソプロピル、tert-ブチル、並びにシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、置換シクロペンチル、置換シクロヘキシル及び置換シクロヘプチルを含む置換又は非置換のシクロアルキル基を含む1~10個の炭素原子を有する環式炭化水素基、置換環式炭化水素基、直鎖状炭化水素基又は分岐状炭化水素基である。他の実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して芳香族基又は置換芳香族基、例えばフェニル基、置換フェニル基、又は2つ以上の共役環を含む芳香族基である。
【0046】
式Iの配位子のサブセットは、式Iaとして下記に示されている:
【0047】
【化3】
(式中、R及びRは、独立して、1つ以上のC1~C10アルキル、例えばC1~C5アルキルで任意選択的に置換されているシクロヘキシル又はフェニルであり、Rは、C1~C4アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、又はブチル)である。)。
【0048】
下記の表1は本開示において使用するのに適した配位子の具体的な例を含む。
【0049】
【表1】
【0050】
任意選択的に、配位子は、配位子の少なくとも1つのP若しくはN原子が環系の一員である環式誘導体、又はNPNPN配位子の少なくとも1つのP若しくはN原子が環系の一員であるその任意の環式誘導体でありうる。環系は、NPNPN配位子の1つ以上の成分化合物から置換によって形成することができ、すなわち、成分化合物あたり、2つの基R~R(定義される通り)全体、2つの基R~R(定義される通り)のそれぞれから1つの原子、又は1つの基R~R(定義される通り)全体と別の基R~R(定義される通り)から1つの原子のいずれかを形式的に除去し、そのようにして形式的に作り出された原子価不飽和部位を、成分化合物あたり1つの共有結合によって連結して、所与の部位に最初に存在したのと同じ原子価を与えることによって形成することができる。
【0051】
本開示において使用する配位子は、当業者に知られている合成手法、例えばFritzらに対するUS2010/0190939;Woehlらに対するUS2016/0167033;Al-Hazmiらに対するUS2017/0203288;Al-Nezariらに対するWO2020/100007;Al-Nezariらに対するWO2020/100010;及びPeuleckeら、Dalton Trans.、2016、45、8869に記載されている合成方法によって作ることができ、これらのそれぞれを参照により本明細書に組み込む。
【0052】
クロム化合物は、有機塩、無機塩、配位錯体、又はCr(II)若しくはCr(III)の有機金属錯体である。特定の実施形態において、クロム化合物は、有機金属錯体であり、好ましくはCr(II)又はCr(III)の有機金属錯体である。クロム化合物の例は、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr(III)Cl(テトラヒドロフラン)、Cr(III)-2-エチルヘキサノエート、塩化Cr(III)、Cr(III)-ナフテネート、及びCr(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)を含む。前述のクロム化合物の少なくとも1つを含む組合せが使用されうる。
【0053】
クロム化合物の濃度は使用される特定の化合物及び所望の反応速度に応じて変動することができる。いくつかの実施形態において、クロム化合物の濃度は、約0.01~約100ミリモル/リットル(mmol/l)、約0.01~約10mmol/l、約0.01~約1mmol/l、約0.1~約100mmol/l、約0.1~約10mmol/l、約1~約10mmol/l、約1~約100mmol/lである。1つの例示的実施形態において、クロム化合物の濃度は、約0.1~約1.0mmol/lである。
【0054】
活性剤(当技術分野では共触媒としても知られている)は、典型的にアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン又は修飾メチルアルミノキサンである。異なるアルミニウム化合物の組合せが使用されうる。
【0055】
いくつかの実施形態において、活性剤は、修飾メチルアルミノキサン(「MMAO」)であり、これは、メチル配位子に加えてC以上のアルキル配位子に由来するアルキル置換基を含むメチルアルミノキサンを指し、典型的には、例えば、テトラアルキルジアルミノキサン及び/又はポリアルキルアルミノキサン試薬がMMAOの調製の間にトリメチルアルミニウムと反応した結果として得られるものである。1つの例示的MMAOは、MMAO-3A(CAS番号146905-79-5)であり、これは、修飾メチルアルミノキサン、3A型であり、Akzo Nobelから7%のアルミニウムを含むトルエン溶液として入手でき、これは、約18%のMMAO-3A濃度に相当する。
【0056】
配位子/Crのモル比は、約0.5~50、約0.5~5、約0.8~約2.0、約1.0~約5.0又は約1.0~約1.5でありうる。
【0057】
Al/Crのモル比は、約1~約1000、約10~約1000、約1~500、約10~500、約10~約300、約20~約300又は約50~約300でありうる。
【0058】
本明細書に開示されている触媒組成物は、エチレンのオリゴマー化のための方法において使用されうる。実施形態において、方法は、標的直鎖状アルファオレフィン、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンを生成するのに有効なエチレンオリゴマー化条件下、エチレンを触媒組成物と接触させることを包含する。分岐状オレフィンを含む他のオレフィンが、この反応において副生成物として生成されうることが理解される。
【0059】
エチレンのオリゴマー化は、約1~約200バール、約10~約200バール、約10~約100バール、約20~約70バール及び約10~50バールの圧力で実行されうる。特定の実施形態において、オリゴマー化は、約20~約70バールの圧力で実行される。
【0060】
エチレンのオリゴマー化は、約10~約200℃、約20~約100℃、約30~約100℃、約40~約100℃、約40~約80℃又は約40~約70℃の温度で行なうこともできる。
【0061】
オリゴマー化反応は、連続的に、半連続的に又は不連続的に実行されうる。一実施形態において、方法は、連続的であることが可能であり、平均滞留時間は10分~20時間、例えば、30分~4時間又は1~2時間であることが可能である。滞留時間は、高い選択性で所望の変換を達成するために選択されうる。
【0062】
方法は、触媒組成物と有利に非反応性である不活性な溶媒混合物を使用して溶液中で行なわれうる。溶媒混合物は、デカリン及び少なくとも1つの追加の溶媒を含む。デカリン(すなわち、ビシクロ[4.4.0]デカンとしても知られているデカヒドロナフタレン)は、2環式有機化合物であり、その構造は下記に示されている。
【0063】
【化4】
【0064】
デカリンとともに利用される追加の溶媒は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素、エーテル、非置換又はハロゲンで置換されている場合がある芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン及びそれらの組合せを含むことができるが、これらに限定されない。具体的な例は、トルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロブタン又はそれらの組合せを含む。
【0065】
デカリンを溶媒混合物の少量成分として、この開示の触媒系と組み合わせて使用すると、オリゴマーの選択性を著しく損失させることなく又はポリマー形成を著しく増加させることなく触媒活性が強まることが、驚くべきことに発見された。特に、溶媒混合物の総重量に基づいて、20重量%未満の量のデカリンを使用することが、有利である。一実施形態において、デカリンは、溶媒混合物の総重量に基づいて、約5~20重量%の量で存在する。特定の実施形態において、デカリンは、溶媒混合物の総重量に基づいて、約15重量%以下、例えば約5~約15重量%又は約8~約12重量%の量で存在する。溶媒混合物の残りは、1つ以上の追加の溶媒、例えば上記のものを含むことができる。その高い沸点のために、デカリンの使用は、蒸留による標的生成物の分離においてさらなる困難を何ら起こさない。
【0066】
特定の実施形態において、溶媒混合物は、実質的に若しくは完全にパーヒドロインダンを含まない又は比較的少量のパーヒドロインダンを含む。例えば、溶媒混合物は、パーヒドロインダン約50重量%以下、例えば約40重量%以下又は約30重量%以下又は約20重量%以下を含むと特徴付けられうる。特定の実施形態において、パーヒドロインダンの含有量は、約10重量%以下又は約5重量%以下又は約2.5重量%以下又は約1重量%以下である。パーヒドロインダン含有量の例示的な範囲は、0.0重量%~約50重量%又は約0.0重量%~約25重量%を含む。特定の実施形態において、溶媒混合物は、検出可能なパーヒドロインダンを含まない。
【0067】
特定の実施形態において、本開示の溶媒混合物の使用は、単位kgエチレン/gCr*hを使用して、1時間の反応時間の間のクロム化合物の重量あたりのエチレン消費によって決定される触媒活性を高めることができる。いくつかの実施形態において、触媒活性は、128kg/gCr*h超、例えば130kg/gCr*h超、132kg/gCr*h超、134kg/gCr*h超、136kg/gCr*h超、138kg/gCr*h超又は140kg/gCr*h超(例えば、約128~約150kg/gCr*h又は約130~約145kg/gCr*h)でありうる。
【0068】
特定の実施形態において、本開示の溶媒混合物の使用は、望まれていないポリマー形成を増加させることなくオレフィン選択性を保持しながら触媒活性を増大させる。例えば、生成物流におけるポリマー含有量は、生成物流の総重量に基づいて、約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下又は約0.4重量%以下(例えば、約0.3重量%~約0.9重量%又は約0.3重量%~約0.7重量%又は約0.3重量%~約0.5重量%)でありうる。不必要なポリマー種は、少なくとも650Daの分子量を有するポリマー種と定義され、反応器媒体中で不溶性で、ろ過される又はその他の方法で除去される必要がある種を典型的に含む。
【0069】
方法は、あらゆる反応器、例えばループ反応器、プラグフロー反応器又は気泡塔反応器において実行されうる。エチレンのオリゴマー化は、エチレンの余剰流によって冷却されうる発熱反応である。反応器の上部で出る気体は、一連の外部冷却器及び凝縮器を使用して冷却されうる。気相は、さらに冷却したあと、リサイクルされうる。
【0070】
オリゴマー化反応器を下部から出る下部流は、活性触媒及び未反応エチレンを含みうる。反応は、望まれない副反応を避けるために、苛性水相を用いた抽出によって触媒成分を有機相から除去することによって終了させることができる。苛性水相との接触は、触媒成分に対応する非反応性無機物の形成をもたらしうる。
【0071】
有機相は、触媒除去系を通過したあと、モレキュラーシーブ吸収床を通過することができ、その後、蒸留塔に供給して、溶解したエチレンを回収することができる。回収されたエチレンは、生成物が中間容器に供給されている間、エチレンリサイクルループによってリサイクルすることができ、その後、生成物は分離部に供給されうる。特定の実施形態において、反応器から生成された直鎖状アルファオレフィンは、分離手順に誘導されうる。
【0072】
気泡塔反応器
実施形態において、オリゴマー化反応は、気泡塔反応器において実行されうる。図1は、本開示において使用する例示的気泡塔反応器24を示している。エチレンは、気泡塔反応器の下部に取り付けられた気体分配系によって、供給流26を使用して反応器24に導入することができ、この気体分配系は、ガススパージャープレート(gas sparger plate)30及びガスバブラー(gas bubbler)32の一方又は両方を典型的に含む。気体分配系は、気体状のエチレンを反応器24全体に均一に分散させる。気体状エチレンは、反応器24内の液体組成物40を通って上昇し、この液体組成物40は、直鎖状アルファオレフィン及び反応副産物、本明細書に記載されている溶媒混合物及び触媒組成物を典型的に含む。例えば、触媒は、触媒注入流42を介して反応器24に入ることができる。溶媒は、溶媒注入流44を介して反応器24に入ることができる。オリゴマー化反応は、気体状のエチレンが液体組成物と相互作用するときに起こることができ、ポリマー小滴及び直鎖状アルファオレフィン小滴を含むことができる反応生成物を生成する。
【0073】
液体の重い直鎖状アルファオレフィンは、溶媒及び触媒とともに、反応器24の下部から下部排出物流34を介して引き抜かれうる。反応条件下で気体状である形成された直鎖状アルファオレフィンの一部は、内部凝縮器36を使用して反応器の上部で凝縮することができ、それぞれの蒸発熱を利用して冷却目的の還流として機能することができる。気体状のエチレン及び軽い直鎖状アルファオレフィンは、気泡塔反応器の上部で上部排出物流38を介して取り出されうる。一方又は両方の排出物流は、追加の下流処理装置、例えば凝縮器、熱交換器、蒸留塔などを使用してさらに処理されうる。
【0074】
実験
様々な溶媒組成物の存在下での触媒性能を、45℃でステンレス鋼圧力反応器において実行したエチレンオリゴマー化反応によって評価した。乾燥n-ヘプタン及びデカリンが様々な溶媒の組合せにおいて使用され、MMAO-3Aが共触媒として使用され、Cr(III)アセチルアセトネートがクロム化合物として使用された。式Iaの配位子が使用され、ここで、R及びRはフェニルであり、Rはメチルである。
【0075】
結果の要約が下記の表2に示されている。生成物分布は、GC-MS分析によって評価され、触媒活性が1時間の反応時間の間のエチレン消費に基づいて計算された。表は、1-ヘキセン(C6合計)の収率及び分離されたすべてのC6オレフィン中の1-ヘキセンの重量%を提供する。同じ情報が1-オクテンについて提供される。形成されたポリマーの量も提供される。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示されているように、少量の、例えば5~20重量%のデカリンを含む溶媒混合物を使用すると、n-ヘプタン単独の使用と比較して触媒活性を高めることができる。あるいは、上記のデータは、デカリンを添加すると、同じ触媒性能の特性を維持しながら触媒対共触媒の比率を低下させることが可能であることを示している。少量のデカリンの存在は、所望のオリゴマー、例えばC6又はC8オリゴマーの反応の選択性に有害な影響を与えず、ポリマー形成を著しく増加させることはない。実際、5~15重量%のデカリンでは、ポリマー形成は、n-ヘプタン単独と比較して抑制される。デカリンを唯一の溶媒として使用すると、n-ヘプタン単独の使用と比較して触媒活性が大きく低下し、ポリマー形成が増加した。
【0078】
操作理論に拘泥するものではないが、これらの実験結果は、反応溶媒中のエチレン溶解性が増加し、エチレンが活性化触媒により容易に利用されるようになったことで説明することができる。アルミニウムアルキル共触媒によるクロム種の活性化は、極めて反応性の高い種の形成をもたらす。エチレンが溶液中で容易に利用できない場合、そのような種は分解を受け、異なるクロム化合物が形成される。そのような化合物は、オリゴマー化活性の代わりに重合を促進する。
【0079】
しかし、多量のデカリンを反応混合物に加えると、触媒性能に有害な影響を与え、全体の触媒活性を低下させるように思われる。これは、デカリン濃度が特定のパーセントを超えたときの、反応溶媒中の活性触媒種の溶解性の減少によって説明することができる。デカリンを多く添加することによる溶媒の粘性の増加は、エチレンの物質移動制限も引き起こし、触媒活性の低下をもたらす可能性がある。
【0080】
一般に、本発明は、本明細書に開示されている任意の適切な成分を代わりに含む、それからなる又はそれから本質的になることができる。本発明は、さらに、又は代替的に、従来技術の組成物において使用されている、又はそうでなければ本発明の機能及び/又は目的の達成に必須ではない任意の成分、材料、構成要素、アジュバント又は種がないように、又は実質的に含まないように調合されうる。
【0081】
本開示の多くの改変及び他の実施が、前述の説明及び関連する図に示された教示の利益を有する、この開示が関係する技術分野の当業者に思い浮かぶ。したがって、本開示は、本明細書に開示されている特定の実施に限定されるものではなく、改変及び他の実施が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。特定の用語が本明細書で用いられているが、これらは一般的及び説明的な意味でのみ使用されており、限定目的ではない。
図1
【国際調査報告】