IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

特表2024-545900香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法
<>
  • 特表-香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法 図1
  • 特表-香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20241206BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241206BHJP
【FI】
A23L27/10 B
A23L27/00 D
A23L27/10 C
A23L27/10 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538175
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022021464
(87)【国際公開番号】W WO2023128588
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191601
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン オク
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョル チン
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB09
4B047LG03
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG15
4B047LG21
4B047LG38
4B047LG42
4B047LG45
4B047LG46
4B047LG54
4B047LG55
4B047LG56
4B047LG59
4B047LP01
4B047LP02
4B047LP04
4B047LP05
4B047LP20
(57)【要約】
本出願は、鰹節を低温減圧抽出してカツオ抽出物を製造する方法に関し、低温減圧抽出により製造した、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物に関し、前記カツオ抽出物及び調味成分を混合、殺菌する加工ステップを含む、マグロエキスの製造方法に関し、かつマグロエキスに関する。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鰹節を低温減圧抽出するステップを含み、
前記低温減圧抽出は、45~55℃の温度条件、150~250mbarの圧力条件で、35分~50分間行うものである、カツオ抽出物製造方法。
【請求項2】
前記カツオ抽出物は、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したものである、請求項1に記載のカツオ抽出物製造方法。
【請求項3】
低温減圧抽出により製造した、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物。
【請求項4】
前記カツオ抽出物は、香味成分であるフェノール(Phenol)又は2,6-ジメトキシ(2,6-dimethoxy)を含む、請求項3に記載のカツオ抽出物。
【請求項5】
前記香味成分のうち、フェノール成分の含有量は10000~20000ppm/Lであり、2,6-ジメトキシの含有量は1100~2000ppm/Lである、請求項4に記載のカツオ抽出物。
【請求項6】
前記カツオ抽出物は、旨味アミノ酸であるアスパラギン酸(Aspartic acid)又はグルタミン酸(Glutamic acid)を含む、請求項3に記載のカツオ抽出物。
【請求項7】
前記旨味アミノ酸であるアスパラギン酸の含有量は24~40mg/Lであり、グルタミン酸の含有量は33~50mg/Lである、請求項6に記載のカツオ抽出物。
【請求項8】
前記カツオ抽出物は、異臭化合物である2-ブタノン(2-butanone)、2-エチルピリジン(2-ethylpyridine)、2,6-ジメチルピラジン(2,6-dimethylpyrazine)及びオイゲノール(eugenol)から選択される少なくとも1つが減少したものである、請求項3に記載のカツオ抽出物。
【請求項9】
前記カツオ抽出物は、苦味アミノ酸であるバリン(Valine)、イソロイシン(Isoleucine)又はロイシン(Leucine)から選択される少なくとも1つが減少したものである、請求項3に記載のカツオ抽出物。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造したカツオ抽出物及び調味成分を混合及び殺菌する加工ステップを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスの製造方法。
【請求項11】
前記調味成分は、コンブ、ショウガ及びニンニクから選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のマグロエキスの製造方法。
【請求項12】
低温減圧により抽出したカツオ抽出物と、コンブ、ショウガ、ニンニク、精製塩及びオリゴ糖から選択される少なくとも1つとを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、鰹節を低温減圧抽出してカツオ抽出物を製造する方法に関し、低温減圧抽出により製造した、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物に関し、前記カツオ抽出物及び調味成分を混合、殺菌する加工ステップを含む、マグロエキスの製造方法に関し、かつマグロエキスに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法に関し、具体的には、鰹節を低温減圧抽出することにより、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物に関する。
【0003】
鰹節抽出物を製造する際に用いる従来の熱水抽出法は、鰹節の味成分ができるだけ多く溶出するように高い温度で長時間抽出する条件で行われており、鰹節の主要香味だけでなく、苦味、生臭み、異臭、しつこさまで抽出されるという問題があった(特許文献1)。
【0004】
また、熱水で製造したカツオ抽出物を用いて調味素材を製造する際には、苦味や異臭などをマスキングするために化学的添加物(MSG、IMP、GMPなど)を用いるほかなく、旨味が強い調味素材にせざるを得ないという問題があった。
【0005】
よって、本発明者らは、このような技術的困難性を解決するために、カツオ抽出物の抽出方法を変えて製造した結果、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物の製造が可能になることを確認し、本出願を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1788616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、鰹節を低温減圧抽出してカツオ抽出物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本出願は、低温減圧抽出により製造した、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本出願は、低温減圧抽出したカツオ抽出物及び調味成分を混合及び殺菌する加工ステップを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
本出願のさらに他の目的は、低温減圧により抽出したカツオ抽出物を含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスに関する。
【発明の効果】
【0012】
本出願の低温減圧抽出により製造したカツオ抽出物は、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加し、官能特性に優れるという効果を奏する。また、従来の熱水抽出法に比べて、苦味、生臭み、異臭を減少させることができるので、それらをマスキングするための化学的添加物を用いることなく、ソース組成物を製造することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鰹節、乾燥コンブを含有するカツオ抽出物の製造工程図である。
図2】マグロエキスの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0015】
さらに、本明細書全体にわたって多くの論文及び特許文献が参照されており、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体が本明細書に参照として組み込まれており、それにより本出願の属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0016】
本出願の一態様は、鰹節を低温減圧抽出してカツオ抽出物を製造する方法を提供する。
【0017】
本出願における「カツオ抽出物」とは、鰹節から、すなわちカツオを加工したスライス干し(slice)やフレイク(flake)などのカツオ加工品から抽出した抽出液を意味する。
【0018】
前記鰹節とは、カツオを燻煙、乾燥させた食材料、又はカツオを蒸してから燻製、発酵及び乾燥させた食材料を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0019】
市販されている鰹節のいかなるものでもよく、製造方法に特に制限はない。
【0020】
本出願における「抽出物(extract)」とは、目的とする物質を様々な溶媒に浸漬し、次いで常温、低温又は加温状態で所定時間抽出して得られた液状成分、前記液状成分から溶媒を除去して得られた固形分などの結果物を意味する。それだけでなく、前記結果物に加えて、前記結果物の希釈液、濃縮液、粗精製物、精製物などが全て含まれるものと包括的に解釈される。
【0021】
本出願における前記抽出物とは、カツオ抽出物を意味する。前記カツオ抽出物は、水や様々な有機溶媒などで抽出して得られる。ここで、用いられる溶媒としては、カツオ抽出物が得られるものであればいかなるものでもよく、具体的には水、極性溶媒又は非極性溶媒が挙げられ、より具体的には水、炭素数1~6の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、それらの混合溶媒が挙げられ、水であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、前記抽出物を得る方法としては、カツオ抽出物が得られるものであればいかなるものでもよいが、具体的には前記鰹節を前記溶媒に浸漬し、常温で抽出する冷浸抽出法、40~100℃に加熱して抽出する加熱抽出法、超音波を加えて抽出する超音波抽出法、還流冷却器を用いる還流抽出法などの方法が挙げられる。
【0023】
本出願の一具体例として、前記カツオ抽出物は、低温減圧抽出法により製造したものであってもよい。
【0024】
本出願の一具体例として、前記低温減圧抽出の温度条件は45~55℃の温度条件であってもよく、減圧条件は150~250mbarの圧力条件であってもよく、より具体的には200mbarであってもよく、時間条件は35分~50分間抽出するものであってもよい。
【0025】
本出願の一実施例においては、熱水抽出法に比べて、前記低温減圧抽出法を用いると、異臭関連成分である2-ブタノン(2-butanone)、2-エチルピリジン(2-ethylpyridine)、2,6-ジメチルピラジン(2,6-dimethylpyrazine)及びオイゲノール(eugenol)が減少し、苦味関連アミノ酸成分であるバリン、イソロイシン、ロイシンが減少することが確認されたので、低温減圧抽出によりカツオ抽出物の異臭及び苦味が低減し、香味、味及び旨味に優れた効果を奏し、カツオ抽出物の製造に適することが確認された。
【0026】
また、本出願の他の実施例においては、減圧条件下で、各温度、各時間におけるカツオ抽出物の香味成分及び官能特性を比較し、最適な温度及び時間条件を確認した。
【0027】
具体的には、減圧条件(150~250mbar)下で、45~55℃の温度条件で抽出したカツオ抽出物において、香味成分が維持されると共に旨味が増加することが確認され、官能評価結果も優れることが確認された。
【0028】
また、減圧低温条件下で、35分~50分の時間条件で抽出したカツオ抽出物において、旨味の呈味成分が増加し、官能評価結果も香味、味、旨味が増加し、苦味が減少し、最適時間条件であることが確認された。
【0029】
本出願の一具体例として、前記カツオ抽出物には、抽出後の濃縮、濾過、分画、乾燥、粉砕などの通常の追加工程により作製された濃縮物、濾物、分画物、乾燥物、粉砕物などが含まれる。ここで、前記「濃縮物」とは、化学物質から溶媒などを除去して主要固体成分の濃度を上昇させた物質を意味し、前記「濾物」とは、液体と固体が混合した物質を粒径差により分離する方法で得られた物質を意味し、前記「分画物」とは、様々な構成成分を含む混合物から特定成分又は特定グループを分離する分画方法で得られた結果物を意味し、前記「乾燥物」とは、少量の水を含有する物質から水を除去する方法で得られた結果物を意味し、前記「粉砕物」とは、固体粒子に力を加え、細かく砕くか、切り崩して小さな粒子にする方法で得られた結果物を意味する。ここで、前記濃縮物、濾物、分画物、乾燥物、粉砕物などは、当該結果物が得られる通常の方法で得られ、特に限定されるものではない。
【0030】
本出願の他の態様は、低温減圧抽出により製造した、異臭及び苦味が減少し、香味及び旨味が増加したカツオ抽出物を提供する。
【0031】
本出願の前記カツオ抽出物は、香味成分であるフェノール(Phenol)又は2,6-ジメトキシ(2,6-dimethoxy)を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記香味成分のうち、フェノール成分の含有量は、10000~20000ppm/L、15000~20000ppm/L、17000~19500ppm/L、18000~19000ppm/Lであるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記香味成分のうち、2,6-ジメトキシの含有量は、1100~2000ppm/L、1200~18000ppm/L、1300~16000ppm/Lであるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本出願の前記カツオ抽出物は、旨味アミノ酸であるアスパラギン酸(Aspartic acid)又はグルタミン酸(Glutamic acid)を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記旨味アミノ酸であるアスパラギン酸の含有量は、24~40mg/L、28~35mg/L、30~34mg/Lであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記旨味アミノ酸であるグルタミン酸の含有量は、33~50mg/L、35~45mg/L、39~43mg/Lであるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本出願の前記カツオ抽出物は、異臭化合物及び苦味アミノ酸が減少したものであってもよい。
【0038】
前記異臭化合物は、2-ブタノン(2-butanone)、2-エチルピリジン(2-ethylpyridine)、2,6-ジメチルピラジン(2,6-dimethylpyrazine)及びオイゲノール(eugenol)から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記苦味アミノ酸は、バリン(Valine)、イソロイシン(Isoleucine)又はロイシン(Leucine)から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、本出願の低温減圧抽出法により製造したカツオ抽出物を含むマグロエキスは、香味成分が維持されるものであり、前記香味成分は、フェノール(Phenol)又は2,6-ジメトキシ(2,6-dimethoxy)であるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本出願のさらに他の態様は、前記低温減圧抽出法により製造したカツオ抽出物及び調味成分を混合及び殺菌する加工ステップを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスの製造方法を提供する。
【0042】
前記「マグロエキス」は、カツオ抽出物を含むソース組成物に関するものであり、前記混合又は殺菌する加工ステップは、当該技術分野で一般に用いられる混合方法又は殺菌方法のあらゆるものが用いられ、前記製造方法によりカツオ抽出物を含むマグロエキスを製造できるものであればいかなるものでもよく、特に限定されるものではない。
【0043】
本出願のさらに他の態様は、低温減圧により抽出したカツオ抽出物と、調味成分、精製塩及びオリゴ糖から選択される少なくとも1つとを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスを提供する。
【0044】
本出願の一具体例として、低温減圧により抽出したカツオ抽出物と、コンブ、ショウガ、ニンニク、精製塩及びオリゴ糖から選択される少なくとも1つとを含む、香味及び旨味が増加したマグロエキスであってもよい。
【0045】
本出願における「調味成分」とは、MSG、IMP、GMPなどの化学的添加物を除いて、カツオ抽出物を用いた調味ソースに含まれるものであればいかなるものでもよい。
【0046】
本出願の一具体例として、前記調味成分は、コンブ、ショウガ及びニンニクから選択されるいずれかであってもよく、それらの抽出物又は濃縮液であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本出願の一具体例として、前記調味成分は、マグロエキスの総重量に対して、0.5~5重量%、1~3重量%、1.2~2.6重量%であるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本出願の一具体例として、前記調味成分のコンブ:ショウガ:ニンニクは、0.5~3:0.05~1.5:0.05~1.5であるが、これに限定されるものではない。
【0049】
上記範囲で調味成分を含むマグロエキスを製造することにより、官能的に優れたマグロエキスを製造することができる。
【0050】
本出願のマグロエキスは、発酵抽出物、リンゴ抽出物、精製塩及びオリゴ糖から選択される少なくとも1つを含むが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記オリゴ糖は、フルクトース、ガラクトース、グルコースなどの糖が結合したものであって、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などであるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、前記マグロエキスは、マグロ熟成液又はカツオエキスをさらに含むが、これに限定されるものではない。
【0053】
本出願において、一具体例として、前記マグロエキスは、マグロエキスの総重量に対して、カツオ抽出物を50~70重量%、55~65重量%又は57~63重量%の含有量で含み、発酵抽出物(TasteNrich, TNR)を1~5重量%又は2~3重量%の含有量で含み、リンゴ抽出物を0.1~3重量%又は0.5~1.5重量%の含有量で含み、精製塩を10~20重量%、15~19重量%又は17~18.5重量%の含有量で含み、イソマルトオリゴ糖を5~10重量%又は7~9重量%の含有量で含むが、これに限定されるものではない。前記発酵抽出物は、微生物の発酵過程で生成された発酵産物であって、核酸類、アミノ酸類、有機酸類及び糖類から選択される少なくとも1つの成分を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0054】
また、前記マグロエキスは、マグロエキスの総重量に対して、マグロ熟成液、マグロ煮熟液又はカツオエキスを0.1~5重量%又は1~3重量%の含有量でさらに含むが、これに限定されるものではない。
【0055】
上記範囲で含むマグロエキスを製造することにより、官能的に優れたマグロエキスを製造することができる。
【0056】
本出願の前述したように低温減圧抽出したカツオ抽出物は、異臭関連成分が減少し、苦味関連アミノ酸が減少するか、旨味関連アミノ酸が増加し、香味成分が維持されることにより、官能特性に優れた効果を奏することが本出願の一実施例において確認された。
【0057】
また、前記低温減圧抽出法によるカツオ抽出物を含むと、従来の熱水抽出法によるカツオ抽出物に比べて、苦味、生臭み、異臭を減少させることができるので、それらをマスキングするための化学的添加物を用いることなく、調味素材を製造できるという利点がある。
【0058】
本出願のさらに他の態様は、前述したように低温減圧抽出したカツオ抽出物を含む食品組成物を提供する。
【0059】
本出願における「食品」は、ソース類、レトルト食品、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類をはじめとする乳製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、機能性食品、健康食品などの通常の意味の食品であればいかなるものでもよい。
【0060】
本出願の食品は、当該技術分野で通常用いられる方法により製造することができ、当該技術分野で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。
【0061】
また、前記食品組成物は、食品として認められる剤形であればいかなるものでもよい。
【0062】
本出願のさらに他の態様は、食品組成物を製造するための低温減圧抽出法により製造したカツオ抽出物の用途を提供する。
【0063】
本出願の一具体例として、前記食品組成物は、ソース類であり、マグロエキスであるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
ここで用いられる用語については前述した通りである。
【実施例
【0065】
以下、実施例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示する好ましい実施形態にすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的事項は、本出願の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。
【実施例1】
【0066】
マグロエキスの製造方法
次の方法によりカツオ抽出物及びそれを含むマグロエキスを製造した。実験に用いた材料のうち、鰹節、乾燥コンブ、精製塩、イソマルトオリゴ糖、ショウガエキス、ニンニクエキス、発酵抽出物(TasteNrich, TNR)は市販の商品を用い、マグロ熟成液は業者(ハニービー)から供給されたものを実験に用いた。
【0067】
実施例1-1.カツオ抽出物の製造
本出願の低温減圧条件でカツオ抽出物を製造するために、鰹節(5%)、乾燥コンブ(0.5%)を低温(60℃以下)、減圧条件(150~250mbar)で抽出(30~50分)及び濾過してカツオ抽出物を製造し、カツオに最適な抽出条件を実験例により確認した。
【0068】
実験例1.カツオ抽出物の製造における最適抽出方法の確認
鰹節の異臭及び苦味が低減するカツオ抽出物の最適抽出条件を確認するために、従来の熱水抽出法と本出願の低温減圧抽出法を比較した。
【0069】
具体的には、カツオ抽出物を製造すべく、鰹節、コンブを水に入れ、抽出時の最適条件を調べるために、蒸発量のない低温(60℃以下)、減圧(150~250mbar)条件である減圧抽出と、従来常用されている条件である熱水抽出(90℃)の比較実験を設定した。
【0070】
具体的には、減圧条件(200mbar)、50℃で60分間の抽出、及び従来の抽出方式である熱水条件、90℃で60分間の抽出を行い、カツオ抽出物を製造した。
【0071】
前述したように得られた抽出物を濾過し、その後主要香味成分、呈味成分、官能的嗜好性を分析した結果、低温減圧抽出したカツオ抽出物は、主要香味成分のうちの異臭関連成分(2-butanone,2-ethylpyridine,2,6-dimethylpyrazine,eugenol)と、呈味成分のうちの苦味関連成分(Val,Ile,Leu)が減少することが確認され、官能検査において、低温減圧抽出工程により抽出したカツオ抽出物は、カツオの香味、味、旨味項目で優れた効果を奏することが確認された。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、熱水抽出法に比べて、低温減圧抽出法を用いると、異臭関連成分である2-butanone、2-ethylpyridine、2,6-dimethylpyrazine、eugenolが減少し、苦味関連アミノ酸成分であるVal、Ile、Leuが減少することが確認された。
【0074】
よって、本出願の低温減圧抽出によりカツオ抽出物の異臭及び苦味が低減し、香味、味及び旨味に優れるという効果が確認され、カツオ抽出物の製造に適することが確認された。
【0075】
また、熱水抽出法と、低温減圧抽出法を用いた場合の香味化合物の含有量を比較すると次のようになる。
【0076】
【表2】
【0077】
すなわち、前記化合物のうち、低温減圧抽出で減少した2-butanone、2-ethylpyridine、2,6-dimethylpyrazine、eugenolは、鰹節の香味特性以外に、草の香り、ケミカル臭、ウッディ香りがする化合物であるので、低温減圧抽出過程に異臭減少効果があることが確認された。
【0078】
また、低温減圧抽出で増加したphenol類化合物である2-methylphenol、3-methylphenol、guaiacol(2-methoxyphenol)は、鰹節の香味特性であるroasted-fishのdescriptionを有するので、低温減圧抽出における香味増強効果が確認された。
【0079】
実験例2.カツオ抽出物の製造における最適抽出温度の確認
減圧抽出によるカツオ抽出物の製造時の各温度条件における主要香味及び旨味強化効果を調べるために、減圧条件を同一にし、温度条件を変えた(30℃,40℃,50℃,60℃)比較実験を設定した。
【0080】
カツオ抽出物は、減圧抽出条件(200mbar)、各温度(30℃,40℃,50℃,60℃)で60分間抽出及び濾過し、その後主要香味成分、呈味成分を分析した。
【0081】
香味成分の分析は、サンプルの香り成分を抽出(solid phase microextraction: SPME)し、その後GC-MS(Gas Chromatography-Mass Spectrometry)により化合物を同定し、その定性分析により確認した。
【0082】
また、官能検査は、専門研究員10名を対象に官能評価を行った。
【0083】
その結果、表3に示すように、50℃で抽出したカツオ抽出物において、カツオの主要香味成分(Phenol,2,6-dimethoxy)のパターンが損失なく維持され、呈味成分は、50℃、60℃の温度において、旨味関連アミノ酸(Asp,Glu)の含有量が増加することが確認された。
【0084】
官能検査の結果、30℃で抽出したものにおいて、官能検査数値が最も低く、香味成分も高くないことが確認された。
【0085】
また、40℃で抽出したものにおいて、官能検査の結果、酸味が発生し、60℃で抽出したカツオ抽出物において、風味は強いが、生臭みが発生したので、50℃で抽出したカツオ抽出物がカツオの風味や旨味などに最も優れると評価された。
【0086】
【表3】
【0087】
これらの結果から、減圧低温である50℃の温度において、カツオ抽出物の香味が維持されると共に、旨味が増加することが確認され、官能評価結果も優れることが確認された。
【0088】
実験例3.カツオ抽出物の製造における最適時間条件の確認
減圧抽出によるカツオ抽出物の製造時の各時間条件における主要香味増強及び苦味低減効果を調べるために、減圧低温(200mbar,50℃)条件で各抽出時間(30分,40分,60分)の効果の比較実験を設定した。
【0089】
カツオ抽出物は、減圧(200mbar)、抽出温度50℃で、それぞれ30分、40分、60分間抽出及び濾過し、その後呈味成分及び官能評価を分析した。
【0090】
その結果、60分間抽出したカツオ抽出物において、旨味関連アミノ酸(Asp,Glu)の含有量が最も高かったが、苦味関連成分も増加することが確認された。また、30分間抽出したものにおいて、呈味成分の含有量が最も低く、官能検査数値も低かった。
【0091】
それに対して、40分間抽出したカツオ抽出物において、異臭及び旨味成分の面で低減することが確認され、官能的特性の評価もカツオの香味、味、旨味などに優れることが確認された。
【0092】
【表4】
【0093】
これらの結果から、減圧低温条件で40分間抽出したカツオ抽出物において、旨味、呈味成分が増加し、官能評価結果も香味、味、旨味が増加し、苦味が減少したので、最適時間条件であることが確認された。
【0094】
実施例1-2.マグロエキスの製造
実施例1-1で製造したカツオ抽出物(60%)とコンブエキス(1%)、ショウガエキス(0.3%)、ニンニクエキス(0.3%)などの天然調味成分を混合して殺菌(90度,10分)する加工ステップを経てマグロエキスを製造した。
【0095】
実験例4.マグロエキスの製造における原副材料の最適配合比の確認
前述したように低温減圧抽出したカツオ抽出物と調味成分を混合して殺菌する加工ステップを経てマグロエキスを製造した。
【0096】
前記加工ステップのカツオ抽出物と原副材料の最適配合比を求めるために、調味成分(コンブエキス,ショウガエキス,ニンニクエキス)、精製塩、イソマルトオリゴ糖などの原料を各含有量で添加して製造例1~4に加工し、その後官能特性を比較した。
【0097】
【表5】
【0098】
表5に示すように、製造例1~4のうち、製造例2において、全般的な官能評価点数が最も高く、カツオの香味、旨味に優れ、生臭み、苦味が最も少ないことが確認された。
【0099】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
【国際調査報告】