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特表2024-545907樹脂組成物及びその製造方法、並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその製造方法、並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/20 20060101AFI20241206BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241206BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20241206BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20241206BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08L61/20
C08K3/013
C08L45/00
C08L79/04
C08L101/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538761
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2022143422
(87)【国際公開番号】W WO2023125817
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111675924.8
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521550460
【氏名又は名称】グァンドン ヒンノ-テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ウェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】シァオ ハオ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00Z
4J002BH02X
4J002CC28W
4J002CH07Z
4J002CM02Y
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DF016
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002EW157
4J002FD016
4J002FD137
4J002GF00
(57)【要約】
本発明は、樹脂組成物その製造方法、及び使用に関する。前記樹脂組成物は、質量部で、原料成分として、炭化水素樹脂プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、無機フィラー10~60部及び難燃剤10~20部を含み、前記炭化水素樹脂プレポリマーは、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との予備重合により製造される。本発明は、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を用いて炭化水素樹脂プレポリマーを製造し、さらにビスマレイミド樹脂及びその他の成分と合理的な配合比率で樹脂組成物を製造することにより、炭化水素樹脂とビスマレイミド樹脂との相溶性を向上させ、該樹脂組成物を回路基板の基材とすることにより、材料の誘電損失及び誘電率を効果的に低減するとともに、高い剥離強度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量部で、原料成分として、
炭化水素樹脂プレポリマー10~30部、
ビスマレイミド樹脂50~100部、
シアネートエステル樹脂30~80部、
機能性樹脂5~30部、
無機フィラー10~60部、及び
難燃剤10~20部を含み、
前記炭化水素樹脂プレポリマーは、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との予備重合により製造される、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記アリルベンゾオキサジンは、下記構造からなる群より選ばれる1種又は複数種であり、
【化1】
【化2】
及び
【化3】
~Rは、それぞれ独立して、-CH-、-C(CH-、-S(=O)-及び-O-からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭化水素樹脂は、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、及びブタジエン-アクリル酸コポリマーからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との質量比は、100:(10~50)である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭化水素樹脂プレポリマーの製造方法は、
前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を混合し、100~130℃の条件下で1~3時間加熱して、前記炭化水素樹脂プレポリマーを製造するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド類構造が含まれる有機化合物から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド類構造は、N-フェニルマレイミド基、N-(2-メチルフェニル)マレイミド基、N-(4-メチルフェニル)マレイミド基、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド基、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン基、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン基、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ポリフェニルメタンビスマレイミド基及びビフェニル構造含有マレイミド基からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土及びカオリンからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記難燃剤は、ノンハロゲン難燃剤から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、質量部で、助剤1~5部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記原料成分を混合して、前記樹脂組成物を製造するステップを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
積層板の製造における請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料の技術分野に関し、特に樹脂組成物及びその製造方法、並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業の急速な発展に伴い、電子製品は、小型化、高機能化及び高安全性の方向に発展し、これにより、電子部品は、より高い信号伝播速度及び伝送効率を有することが求められ、回路基板の基材に対してもより高い要求が出されている。回路基板の基材に対して、一方では、高い耐熱性、耐剥離性及び優れた機械的特性を有することが要求され、他方では、より低い吸水率、誘電率及び誘電損失値を有することが要求される。
【0003】
従来の回路基板の基材は、通常、ジアミン変性又はアリル変性のビスマレイミド樹脂を用いて製造されるが、このようなビスマレイミド樹脂材料は、硬化温度が高く、吸水率が大きく、誘電率及び損失値が高いなどの欠陥があり、5G通信電子製品の分野における適用が制限される。したがって、どのように誘電損失及び誘電率をさらに低減するかは、ビスマレイミド樹脂材料の変性に対する重要な研究方向の1つとなっている。
【0004】
炭化水素樹脂は、優れた誘電特性を有し、5G通信電子製品の分野に広く適用されているが、炭化水素樹脂は、その柔軟性、非極性炭素鎖構造により、硬化後の製品に剛性が不足し、強度が低く、耐熱性が低く、ガラス転移温度が低く、剥離強度が低いなどの問題があり、その使用が制限されている。
【0005】
研究により、成分として炭化水素樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、開始剤、無機フィラー、難燃剤及び溶媒を含み、高いガラス転移温度を有し、優れた耐熱性を有する樹脂組成物が提供されたが、該組成物中の炭化水素樹脂の極性が低いため、極性の高いビスマレイミド樹脂との相溶性が低く、材料の剥離強度が低く、剥離強度と誘電特性を両立できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づいて、本発明は、誘電損失及び誘電率が低く、かつ良好な剥離強度を兼ね備える樹脂組成物及びその製造方法、並びに使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的な技術的手段は、以下のとおりである。
【0008】
本発明の第1態様は、質量部で、原料成分として、
炭化水素樹脂プレポリマー10~30部、
ビスマレイミド樹脂50~100部、
シアネートエステル樹脂30~80部、
機能性樹脂5~30部、
無機フィラー10~60部、及び
難燃剤10~20部を含み、
前記炭化水素樹脂プレポリマーは、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との予備重合により製造される、樹脂組成物を提供する。
【0009】
一実施例において、前記アリルベンゾオキサジンは、下記構造からなる群より選ばれる1種又は複数種であり、
【化1】
【化2】
及び
【化3】
~Rは、それぞれ独立して、-CH-、-C(CH-、-S(=O)-及び-O-からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0010】
一実施例において、前記炭化水素樹脂は、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、及びブタジエン-アクリル酸コポリマーからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0011】
一実施例において、前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との質量比は、100:(10~50)である。
【0012】
一実施例において、前記炭化水素樹脂プレポリマーの製造方法は、前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を混合し、100~130℃の条件下で1~3時間加熱して、前記炭化水素樹脂プレポリマーを製造するステップを含む。
【0013】
一実施例において、前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド類構造が含まれる有機化合物から選ばれる。
【0014】
一実施例において、前記マレイミド類構造は、N-フェニルマレイミド基、N-(2-メチルフェニル)マレイミド基、N-(4-メチルフェニル)マレイミド基、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド基、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン基、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン基、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ポリフェニルメタンビスマレイミド基及びビフェニル構造含有マレイミド基からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0015】
一実施例において、前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0016】
一実施例において、前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0017】
一実施例において、前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土及びカオリンからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0018】
一実施例において、前記難燃剤は、ノンハロゲン難燃剤から選ばれる。
【0019】
一実施例において、前記樹脂組成物は、質量部で、助剤1~5部をさらに含む。
【0020】
一実施例において、前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0021】
本発明の第2態様は、前記原料成分を混合して、前記樹脂組成物を製造するステップを含む、上記樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の第3態様は、積層板の製造における上記樹脂組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0024】
本発明は、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を用いて炭化水素樹脂プレポリマーを製造し、さらにビスマレイミド樹脂及びその他の成分と合理的な配合比率で樹脂組成物を製造し、アリルベンゾオキサジンを用いて予備重合する手段により、炭化水素樹脂とビスマレイミド樹脂との相溶性を向上させ、さらに材料の剥離強度及び誘電特性を向上させ、該樹脂組成物を回路基板の基材とすることにより、材料の誘電損失及び誘電率を効果的に低減するとともに、高い剥離強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の理解を容易にするために、以下、実施例を参照しながら本発明をより全面的に説明する。以下、本発明の好ましい実施例を示している。しかし、本発明は、多くの異なる形式で実現することができ、本明細書に記載の実施例に限定されるものではない。逆に、これらの実施例を提供する目的は、本発明の開示内容に対する理解をより完全かつ全面的にすることである。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の説明において本明細書で用いられる用語は、具体的な実施例を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0027】
本明細書で使用される用語「及び/又は」、「又は/及び」、「並びに/若しくは」の選択範囲は、2つ以上の関連する列挙された項目のうちのいずれか1つの項目を含み、関連する列挙された項目の任意かつ全ての組み合わせをさらに含み、前記任意かつ全ての組み合わせは、任意の2つの関連する列挙された項目、任意のより多くの関連する列挙された項目、又は全ての関連する列挙された項目の組み合わせを含む。
【0028】
本発明において、「第1態様」、「第2態様」、「第3態様」などの用語は説明するためにのみ用いられており、相対的な重要性や量を示したり暗示したりするものとして理解されるべきではなく、示された技術的特徴の重要性や量を暗黙的に示すものとして理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、及び「第3」などは、非網羅的な列挙説明の目的のみを果たし、数量に対するクローズド型限定を構成しないことを理解されたい。
【0029】
本発明において、オープン形式で記載された技術的特徴には、リストされた特徴からなるクローズド型技術案もリストされた特徴を含むオープン型技術案も含まれる。
【0030】
本発明において、数値区間について、特に断らない限り、上記数値区間内で連続すると見なされ、その範囲の最小値と最大値、及び最小値と最大値との間の各値を含む。また、範囲が整数を示す場合、その範囲の最小値と最大値との間の各整数が含まれる。また、特徴や特性を説明する範囲が複数ある場合には、それらを組み合わせてもよい。換言すれば、特に断らない限り、本明細書に開示される範囲は全て、その中に包摂されるありとあらゆるサブ範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0031】
本発明における温度パラメータは、特に断らない限り、恒温処理であってもよく、一定の温度区間内で処理してもよい。前記恒温処理は、機器制御の精度範囲内で温度が変動することを許容する。
【0032】
本発明は、質量部で、原料成分として、
炭化水素樹脂プレポリマー10~30部、
ビスマレイミド樹脂50~100部、
シアネートエステル樹脂30~80部、
機能性樹脂5~30部、
無機フィラー10~60部、及び
難燃剤10~20部を含み、
前記炭化水素樹脂プレポリマーは、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との予備重合により製造される、樹脂組成物を提供する。
【0033】
本発明は、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を用いて炭化水素樹脂プレポリマーを製造し、予備重合の手段により、炭化水素樹脂と、他の極性の高い樹脂、例えば、ビスマレイミド樹脂との相溶性を向上させ、さらに、他の成分と合理的な配合比率で製造された樹脂組成物を回路基板の基材とすることにより、材料の誘電損失及び誘電率を効果的に低減するとともに、高い剥離強度を有する。
【0034】
本発明において、炭化水素樹脂は、優れた誘電特性を有し、そのソフトセグメントは、ビスマレイミド樹脂の脆性を大幅に改善し、ビスマレイミド樹脂は、そのガラス転移温度及び高温弾性率を向上させることができ、アリルベンゾオキサジンを用いて予備重合する手段により、両者の相溶性を向上させ、製造された樹脂組成物を回路基板の基材とする場合の耐熱性及び機械的特性の向上に有利である。
【0035】
一例において、アリルベンゾオキサジンは、下記構造からなる群より選ばれる1種又は複数種であり、
【化4】
【化5】
及び
【化6】
~Rは、それぞれ独立して、-CH-、-C(CH-、-S(=O)-及び-O-からなる群より選ばれる1種又は複数種である。さらに、R~Rは、それぞれ独立して、-CH-、-C(CH-、-S(=O)-又は-O-である。
【0036】
一例において、炭化水素樹脂は、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、及びブタジエン-アクリル酸コポリマーからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0037】
一例において、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との質量比は、100:(10~50)である。さらに、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との質量比は、100:10、100:15、100:20、100:25、100:30、100:35、100:40、100:45、100:50を含むが、これらに限定されない。
【0038】
一例において、炭化水素樹脂プレポリマーの製造方法は、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を混合し、100~130℃の条件下で1~3時間加熱して、炭化水素樹脂プレポリマーを製造するステップを含む。さらに、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂とを混合した後の加熱温度は、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃を含むが、これらに限定されず、加熱時間は、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明において、ビスマレイミド樹脂は、特に限定されず、分子構造中に2つ以上のマレイミド類構造が含まれる有機化合物であってもよい。さらに、マレイミド類構造は、N-フェニルマレイミド基、N-(2-メチルフェニル)マレイミド基、N-(4-メチルフェニル)マレイミド基、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド基、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン基、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン基、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ポリフェニルメタンビスマレイミド基及びビフェニル構造含有マレイミド基からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0040】
一例において、シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0041】
一例において、機能性樹脂は、エポキシ樹脂及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0042】
一例において、無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土及びカオリンからなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0043】
一例において、難燃剤は、ノンハロゲン難燃剤である。さらに、難燃剤は、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤を含むが、これらに限定されない。なお、リン含有難燃剤は、リン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノール樹脂、ホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物などであってもよく、ケイ素含有難燃剤は、シリコーンポリマーなどであってもよい。
【0044】
一例において、前記樹脂組成物は、質量部で、助剤1~5部をさらに含む。
【0045】
一例において、助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる1種又は複数種である。
【0046】
なお、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤は、本分野の通常の硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤から選ばれてもよい。さらに、硬化促進剤は、イミダゾール系硬化剤、有機金属塩系硬化剤、過酸化物系硬化剤から選ばれるが、これらに限定されず、強化剤は、ゴム、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂から選ばれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明は、原料成分を混合して、樹脂組成物を製造するステップを含む、上記樹脂組成物の製造方法をさらに提供する。
【0048】
なお、上記樹脂組成物を製造する際に、製造過程における原料成分の溶解及び混合に有利な有機溶媒を添加してもよく、有機溶媒は、本分野の通常の有機溶媒から選ばれる。さらに、有機溶媒は、1種の有機溶媒であってもよく、2種以上の有機溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0049】
本発明は、積層板の製造における上記樹脂組成物の使用をさらに提供する。
【0050】
本発明は、まず、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を用いて炭化水素樹脂プレポリマーを製造し、さらにビスマレイミド樹脂及びその他の成分と合理的な配合比率で樹脂組成物を製造し、該樹脂組成物で製造された積層板は、より低い誘電損失及び誘電率を有するとともに、良好な剥離強度を有する。また、該樹脂組成物で製造された積層板は、優れた耐熱性及び機械的特性を有する。
【実施例
【0051】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。下記実施例で使用される原料、試薬などは、特に説明しない限り、いずれも市販製品から購入可能である。
【0052】
本発明における実施例及び比較例で使用される原料は、以下のとおりである。
【0053】
ビスマレイミド樹脂とは、洪湖双馬場製、BMI-01であり、その構造は、以下のとおりである。
【化7】
【0054】
シアネートエステル樹脂とは、ロンザグループ製、BA-3000Sであり、
ホスファゼン化合物とは、大塚化学株式会社製、SPB100であり、
エポキシ樹脂とは、日本化薬株式会社製、XD1000であり、
ポリフェニレンエーテルとは、サウジ基礎産業公社製、SA9000であり、
ポリブタジエンとは、日本曹達株式会社製、B-1000であり、
硬化促進剤とは、DCPであり、
シリカとは、アドマテックス製、SO-C2である。
【0055】
1.炭化水素樹脂プレポリマー1の製造
アリルベンゾオキサジン100部とポリブタジエン20部を三口フラスコに入れ、適量のトルエンとブタノンの混合溶媒を添加した後、オイルバスで120℃に加熱し、同時に2.5時間撹拌し続けて炭化水素樹脂プレポリマー1を得た。アリルベンゾオキサジンは、成都科宜会社から購入し、型番がCB6900である。
【0056】
2.炭化水素樹脂プレポリマー2の製造
アリルベンゾオキサジン100部とポリブタジエン70部を三口フラスコに入れ、適量のトルエンとブタノンの混合溶媒を添加した後、オイルバスで120℃に加熱し、同時に2.5時間撹拌し続けて炭化水素樹脂プレポリマー2を得た。アリルベンゾオキサジンは、コーロン社から購入し、型番がKZH-5031MP70である。
【0057】
3.炭化水素樹脂プレポリマー3の製造
アリルベンゾオキサジン100部と、ブタジエン-スチレンコポリマー20部を三口フラスコに入れ、適量の有機溶媒を添加した後、オイルバスで120℃に加熱し、同時に2.5時間撹拌し続けて炭化水素樹脂プレポリマー3を得た。アリルベンゾオキサジンは、成都科宜会社から購入し、型番がCB6900である。
【0058】
4.プリプレグの製造
下記表1に示す原料成分及び配合比率で各実施例及び比較例のエマルジョン液(即ち、樹脂組成物)を調製し、その後、2116ガラスクロスを用いてそれぞれエマルジョン液に浸漬し、オーブンで160℃*3minベーキングした後、エマルジョン含有量が55%のプリプレグを得た。
【0059】
【表1】
【0060】
5.積層板の製造
各実施例、比較例で製造された10枚のプリプレグをそれぞれ積層して、各実施例及び比較例に対応する積層体を得て、積層体の上下両面にそれぞれ1枚の厚さが18μmの電解銅箔を被覆し、温度・圧力がプログラム制御可能な真空プレス機に入れ、真空状態で、30kgf/cm2の圧力で、180℃*1時間+220℃*2時間+240℃*2時間のプログラムに従って熱プレス硬化させた後、厚さ1.0mmの銅箔張積層板を得た。
【0061】
6.性能試験
実施例1~4及び比較例1~4で製造された銅箔張積層板に対して性能試験を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
★が多いほど、相溶性が高い。☆が多いほど、耐衝撃性能が高い。
【0064】
試験方法は、以下のとおりである。
(1)相溶性について、樹脂を常温環境下に放置し、静置して物質析出の有無を目測で観察した。
(2)ガラス転移温度(Tg)/貯蔵弾性率について、IPC-TM650 2.4.25Dに準拠して試験した。
(3)剥離強度について、試験方法は、IPC-TM-650 2.4.8に準拠して試験した。
(4)スズめっき耐熱性について、IPC-TM650 2.4.6に準拠して試験した。
(5)PCTについて、IPC-TM650 2.6.23に準拠して試験した。
(6)曲げ弾性率について、IPC-TM650 2.4.4に準拠して試験した。
(7)難燃レベルについて、IPC-TM650 2.3.10に準拠して試験した。
(8)落錘衝撃試験について、落錘衝撃試験機で試験した。
(9)誘電特性試験について、IPC-TM650 2.5.5.2に準拠して試験した。
【0065】
上述した実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができる。簡潔に説明するために、上述した実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明していないが、これらの組み合わせは全て本明細書に記載された範囲に属すると考えられるべきである。
【0066】
以上は具体的な実施例を参照しながら本発明のいくつかの態様を説明しているが、本発明の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対して各種の変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び修正も本発明の範囲に属する。よって、本発明の特許の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に依るものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量部で、原料成分として、
炭化水素樹脂プレポリマー10~30部、
ビスマレイミド樹脂50~100部、
シアネートエステル樹脂30~80部、
機能性樹脂5~30部、
無機フィラー10~60部、及び
難燃剤10~20部を含み、
前記炭化水素樹脂プレポリマーは、アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との予備重合により製造される、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記アリルベンゾオキサジンは、下記構造からなる群より選ばれる1種又は複数種であり、
【化1】
【化2】
及び
【化3】
~Rは、それぞれ独立して、-CH-、-C(CH-、-S(=O)-及び-O-からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭化水素樹脂は、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、ブタジエン-スチレンコポリマー、及びブタジエン-アクリル酸コポリマーからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂との質量比は、100:(10~50)である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭化水素樹脂プレポリマーの製造方法は、
前記アリルベンゾオキサジンと炭化水素樹脂を混合し、100~130℃の条件下で1~3時間加熱して、前記炭化水素樹脂プレポリマーを製造するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド類構造が含まれる有機化合物から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド類構造は、N-フェニルマレイミド基、N-(2-メチルフェニル)マレイミド基、N-(4-メチルフェニル)マレイミド基、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド基、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン基、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン基、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ポリフェニルメタンビスマレイミド基及びビフェニル構造含有マレイミド基からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土及びカオリンからなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記難燃剤は、ノンハロゲン難燃剤から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、質量部で、助剤1~5部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記原料成分を混合して、前記樹脂組成物を製造するステップを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
積層板の製造における請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物の使用。
【国際調査報告】