(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ガラス組成物、結晶化ガラス及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C03C 3/097 20060101AFI20241206BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20241206BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20241206BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241206BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241206BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20241206BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20241206BHJP
C03B 18/02 20060101ALI20241206BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20241206BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20241206BHJP
C03B 27/012 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C3/083
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
C03C10/12
C03C10/04
C03B18/02
C03B17/06
C03C21/00 101
C03B27/012
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024540041
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022139075
(87)【国際公開番号】W WO2023125015
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111682724.5
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111681556.8
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111682722.6
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247570
【氏名又は名称】湖南旗濱新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUNAN KIBING NEW MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Dongfu Industrial Park,Economic Development Zone,Liling City Hunan Province 412200 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】徐 興軍
(72)【発明者】
【氏名】陶 武剛
(72)【発明者】
【氏名】楊 成鋼
【テーマコード(参考)】
4G015
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G015CB01
4G015EA02
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB01
4G062CC09
4G062DA07
4G062DB03
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD03
4G062DE01
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4G062EA04
4G062EB02
4G062EC01
4G062ED01
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EG01
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4G062FK01
4G062FL01
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4G062GA10
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4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
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4G062KK01
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4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN29
4G062NN33
4G062QQ06
4G062QQ09
(57)【要約】
【要約】
本願は、ガラス組成物、結晶化ガラス及びその製造方法と使用を開示し、前記ガラス組成物は、質量%で、71.5~74.5%のSiO
2、6.2~8.7%のAl
2O
3、1.7~3%のP
2O
5、10~12.5%のLi
2O、0.1~2%のNa
2O、及び3~5%のZrO
2を含む。本願の技術案において、ガラス組成物中の成分SiO
2、Al
2O
3、P
2O
5、Li
2O、Na
2O及びZrO
2を特定の比重で組み合わせ、結晶化ガラス結晶化プロセス及び強化プロセスと結合することにより、b値及びヘーズを顕著に低下させ、強化性能に優れた結晶化ガラスを得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
71.5~74.5%のSiO
2、
6.2~8.7%のAl
2O
3、
1.7~3%のP
2O
5、
10~12.5%のLi
2O、
0.1~2%のNa
2O、及び
3~5%のZrO
2を含む、ガラス組成物。
【請求項2】
0.1~1.7%のB
2O
3及び/又は0.1~1.5%のCaOをさらに含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
-1.1≦W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)≦6.7である、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
0.19≦[W(Li
2O)-W(Al
2O
3)]/[W(P
2O
5)+W(ZrO
2)]≦0.98である、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項5】
0.06≦[W(ZrO
2)-3×W(B
2O
3)]/W(P
2O
5)≦1.57である、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項6】
質量%で、
72~74%のSiO
2、
7.5~8.4%のAl
2O
3、
2~2.8%のP
2O
5、
0.3~0.8%のB
2O
3、
10.5~11.8%のLi
2O、
0.5~1.3%のNa
2O、及び
3.4~4.7%のZrO
2を含む、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項7】
0.6≦W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)≦5.4であり、
0.28≦[W(Li
2O)-W(Al
2O
3)]/[W(P
2O
5)+W(ZrO
2)]≦0.8であり、
0.5≦[W(ZrO
2)-3×W(B
2O
3)]/W(P
2O
5)≦1.36である、請求項6に記載のガラス組成物。
【請求項8】
2.9≦W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)≦5.2であり、
0.26≦[W(Li
2O)-W(Al
2O
3)]/[W(P
2O
5)+W(ZrO
2)]≦0.85であり、
1.17≦W(ZrO
2)/W(P
2O
5)≦2.61であり、
2.5≦[W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)]/W(Na
2O)≦5.8である、請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項9】
2≦[W(ZrO
2)-W(CaO)]/[W(P
2O
5)-W(B
2O
3)]≦3.22である、ことを特徴とする請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項10】
2.06≦[W(ZrO
2)-W(CaO)]/[W(P
2O
5)-W(B
2O
3)]≦2.31である、ことを特徴とする請求項3に記載のガラス組成物。
【請求項11】
2.3≦W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)≦10.3であり、
0.27≦[W(Li
2O)-W(Al
2O
3)]/[W(P
2O
5)+W(ZrO
2)]≦0.87である、ことを特徴とする請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項の記載のガラス組成物を含む、結晶化ガラス。
【請求項13】
前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである、請求項12に記載の結晶化ガラス。
【請求項14】
前記結晶化ガラスは、結晶相Li
2Si
2O
5及び結晶相LiAlSi
4O
10を含有する、請求項12に記載の結晶化ガラス。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項の記載のガラス組成物を秤量するステップS10と、
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得るステップS20と、
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得るステップS30と、を含む、結晶化ガラスの製造方法。
【請求項16】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップは、
前記ベースガラスを室温から20~60minで530~570℃に昇温させ、核形成処理を3h以上行うことと、
5~30minで680~720℃に昇温させ、結晶化処理を3h以上行うことと、
室温まで冷却して、前記結晶化ガラスを得ることと、を含む、請求項15に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項17】
ステップS30は、
前記ベースガラスを室温から20~60minで510~540℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで580~610℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで650~680℃に昇温させ、結晶化処理を3~8h行うことと、
室温まで冷却して、結晶化ガラスを得ることと、を含む、請求項15に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項18】
ステップS30の後、さらに、
前記結晶化ガラスを前処理した後、イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化された結晶化ガラスを得るステップS40を含み、
ここで、前記イオン交換浴は、質量%で、20~40%のNaNO
3及び60~80%のKNO
3を含み、及び/又は、
前記塩浴強化温度は420~500℃であり、及び/又は、
前記塩浴強化時間は3~8hである、請求項15に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項19】
ステップS20において、前記成形方法には、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形が含まれる、請求項15に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項20】
請求項12、13又は14のいずれか1項に記載の結晶化ガラスを含む、電子表示端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月31日に出願された、出願番号が202111682724.5である中国特許出願、2021年12月31日に出願された、出願番号が202111681556.8である中国特許出願、2021年12月31日に出願された、出願番号が202111682722.6である中国特許出願の優先権を主張し、その内容のすべては、援用により本願に取り込まれる。
【0002】
技術分野
本願は、ガラス製造技術の分野に関し、特に、ガラス組成物、結晶化ガラス及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
表示技術の発展に伴い、ガラスは、一般的に表示デバイスの保護に使用されている。市販の電子製品保護用のカバーガラスは、一般的に、いずれも高アルミナケイ酸塩ガラスに属し、高アルミナは、イオン交換後の応力強度及び応力層深さの向上に有利であるが、ガラスの耐落下性能が悪い。電子製品の破壊の70%が不用意な落下によるものであることを示す研究もある。
【0004】
ガラスレシピに核形成剤を導入したり、レシピ中の酸化物の配合比率構成を調整したりして、後続の熱処理プロセスで結晶化ガラスと呼ばれる結晶相を1種以上形成する。ガラスの高透過性を有するだけでなく、セラミックの高強度性も有するため、ガラスの平均硬度、破壊靭性等の性能を向上させることができる。結晶化ガラスにおける微結晶相は、微小亀裂の伝播経路を妨げることができ、ガラスの耐擦傷、耐衝撃及び耐落下等の性能の全体的な向上に有利である。
【0005】
結晶化ガラスの性能は、結晶相とガラス相との割合、結晶粒のサイズ等によって決定される。結晶化ガラスの製造過程において、ガラス組成の凝集、結晶相の界面形態、結晶粒の外観形態等の要因により、現在製造される透明結晶化ガラスは、b値が大きく、ヘーズが高く、巨視的には透過光が黄色味を帯びるように表れ、結晶化ガラスの透過率及び使用性能に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の主な目的は、従来の結晶化ガラスのb値が大きく、ヘーズが高いという問題を解決するために、ガラス組成物、結晶化ガラス及びその製造方法と使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記の目的を達成するために、質量%で、
71.5~74.5%のSiO2、
6.2~8.7%のAl2O3、
1.7~3%のP2O5、
10~12.5%のLi2O、
0.1~2%のNa2O、及び
3~5%のZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0008】
一実施例では、0.1~1.7%のB2O3及び/又は0.1~1.5%のCaOをさらに含む。
【0009】
一実施例では、-1.1≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦6.7である。
【0010】
一実施例では、0.19≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.98である。
【0011】
一実施例では、0.06≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.57である。
【0012】
一実施例では、質量%で、
72~74%のSiO2、
7.5~8.4%のAl2O3、
2~2.8%のP2O5、
0.3~0.8%のB2O3、
10.5~11.8%のLi2O、
0.5~1.3%のNa2O、及び
3.4~4.7%のZrO2を含む。
【0013】
一実施例では、0.6≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.4であり、
0.28≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.8であり、
0.5≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.36である。
【0014】
一実施例では、質量%で、
72.5~73.5%のSiO2、
7.7~8%のAl2O3、
2.1~2.5%のP2O5、
0.5~0.7%のB2O3、
11~11.5%のLi2O、
0.7~1.1%のNa2O、及び
3.8~4.4%のZrO2を含む。
【0015】
一実施例では、2.5≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦4.3であり、
0.43≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.64であり、
0.81≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.16である。
【0016】
本願は、質量%で、72~74.3%のSiO2、7~8.5%のAl2O3、1.8~3%のP2O5、10.2~12.5%のLi2O、0.5~2%のNa2O及び3.5~4.7%のZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0017】
一実施例では、2.9≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.2であり、
0.26≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.85であり、
1.17≦W(ZrO2)/W(P2O5)≦2.61であり、
2.5≦[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]/W(Na2O)≦5.8である。
【0018】
一実施例では、質量%で、
72.8~73.9%のSiO2、7.4~8%のAl2O3、2.1~2.6%のP2O5、10.7~11.7%のLi2O、0.9~1.4%のNa2O及び3.9~4.4%のZrO2を含む。
【0019】
一実施例では、4.5≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.2であり、
0.42≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.66であり、
1.5≦W(ZrO2)/W(P2O5)≦2.1であり、
3.57≦[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]/W(Na2O)≦5である。
【0020】
本願は、質量%で、
71.5~74%のSiO2、6.2~8.5%のAl2O3、1.7~2.6%のP2O5、0.1~1.7%のB2O3、10~12%のLi2O、0.1~2%のNa2O、0.1~1.5%のCaO及び3~5%のZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0021】
一実施例では、酸化物を基準として、質量%で、
72~73.5%のSiO2、6.8~8.2%のAl2O3、2~2.4%のP2O5、0.4~1.1%のB2O3、10.8~11.7%のLi2O、0.4~1.7%のNa2O、0.3~1%のCaO及び3.3~4.4%のZrO2を含む。
【0022】
一実施例では、2≦[W(ZrO2)-W(CaO)]/[W(P2O5)-W(B2O3)]≦3.22である。
【0023】
一実施例では、2.06≦[W(ZrO2)-W(CaO)]/[W(P2O5)-W(B2O3)]≦2.31である。
【0024】
一実施例では、2.3≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦10.3であり、
0.27≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.87である。
【0025】
一実施例では、2.7≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦7.8であり、
0.46≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.77である。
【0026】
本願は、上記のようなガラス組成物を含む結晶化ガラスをさらに提供する。
【0027】
一実施例では、前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである。
【0028】
本願は、上記のガラス組成物を含む結晶化ガラスをさらに提供し、前記結晶化ガラスは結晶相Li2Si2O5及び結晶相LiAlSi4O10を含有する。
【0029】
一実施例では、0.91≦W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)≦1.06である。
【0030】
一実施例では、0.97≦W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)≦1.03である。
【0031】
一実施例では、10.44≦M≦12.54であり、
ここで、M=1.3×[W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)]×{0.86×[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]+1.83×[(W(Li2O)-W(Al2O3))/(W(P2O5)+W(ZrO2))]+1.67×[W(ZrO2)/W(P2O5)]+0.25×[(W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O))/W(Na2O)]}である。
【0032】
一実施例では、11.85≦M≦12.54である。
【0033】
本願は、上記のようなガラス組成物を含む結晶化ガラスを提供する。
【0034】
一実施例では、前記結晶化ガラスの結晶相は、主に、二ケイ酸リチウム及びペタライトであり、前記結晶化ガラスの結晶相の合計含有量は60%~90%であり、前記二ケイ酸リチウムの含有量は>30%であり、前記ペタライトの含有量は>30%である。
本願は、結晶化ガラスの製造方法をさらに提供し、当該方法は、
上記のようなガラス組成物を秤量するステップS10と、
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得るステップS20と、
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得るステップS30と、を含む。
【0035】
一実施例では、ステップS30は、
前記ベースガラスを室温から20~60minで510~540℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで580~610℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで650~680℃に昇温させ、結晶化処理を3~8h行うことと、
室温まで冷却して、結晶化ガラスを得ることと、を含む。
【0036】
一実施例では、前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップは、
前記ベースガラスを室温から20~60minで530~570℃に昇温させ、核形成処理を3h以上行うことと、
5~30minで680~720℃に昇温させ、結晶化処理を3h以上行うことと、
室温まで冷却して、前記結晶化ガラスを得ることと、を含む。
【0037】
一実施例では、ステップS30の後、さらに、
前記結晶化ガラスを前処理した後、イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化結晶化ガラスを得るステップS40を含み、
ここで、前記イオン交換浴は、質量%で、20~40%のNaNO3及び60~80%のKNO3を含み、及び/又は、
前記塩浴強化温度は420~500℃であり、及び/又は、
前記塩浴強化時間は3~8hである。
【0038】
一実施例では、ステップS20において、前記成形方法には、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形が含まれる。
【0039】
本願は、上記のような結晶化ガラスを含む電子表示端末をさらに提供する。
【発明の効果】
【0040】
本願の技術案では、ガラス組成物中の成分SiO2、Al2O3、P2O5、Li2O、Na2O及びZrO2を特定の比重で組み合わせ、結晶化ガラス結晶化プロセス及び強化プロセスと結合することにより、b値及びヘーズを顕著に低下させ、強化性能に優れた結晶化ガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本願の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に使用する必要のある図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の説明における図面は本願のいくつかの実施例にすぎず、当業者は、創造的な労働をしない前提で、これらの図面に基づいて他の関連する図面を得ることができる。
【0042】
【
図1】本願にて提供された結晶化ガラスの製造方法の一実施例の概略フローチャートである。
【
図2】本願にて提供された結晶化ガラスの製造方法の別の実施例の概略フローチャートである。
【
図3】本願においてMと結晶化ガラスの破壊靭性KICとの線形関係図である。
【0043】
図面を参照しながら、実施例と合わせて、本願の目的の実現、機能の特徴及び利点についてさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例における技術案を明確で、完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。
【0045】
なお、実施例に具体的な条件が明示されていないものは、通常の条件又は製造者の推奨条件にしたがって行う。使用される試薬や計器のうち、メーカーが明記されていないものは、いずれも市販品として入手可能な通常のものである。また、本明細書全体を通じて「及び/又は」の意味には3つの並列する解決手段が含まれ、「A及び/又はB」を例とすると、A技術案、又はB技術案、又はAとBが同時に満足される技術案が含まれる。また、各実施例間の技術案は互いに組み合わせることができるが、当業者によって実現できることを基礎としなければならず、技術案の組合せが互いに矛盾したり実現できなくなったりなる場合、このような技術案の組合せは存在しないと考えられるべきであり、本願で主張する保護範囲内にも含まれない。本願の実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0046】
表示技術の発展に伴い、ガラスは、一般的に表示デバイスの保護に使用されている。市販の電子製品保護用のカバーガラスは、一般的に、いずれも高アルミナケイ酸塩ガラスに属し、高アルミナは、イオン交換後の応力強度及び応力層深さの向上に有利であるが、ガラスの耐落下の性能が悪い。電子製品の破壊の70%が不用意な落下によるものであることを示す研究もある。
【0047】
ガラスレシピに核形成剤を導入したり、レシピ中の酸化物の配合比率構成を調整したりして、後続の熱処理プロセスで結晶相を1種又は多数種形成するものは、結晶化ガラスと呼ばれる。ガラスの高透過性を有するだけでなく、セラミックの高強度性も有するため、ガラスの平均硬度、破壊靭性等の性能を向上させることができる。結晶化ガラスにおける微結晶相は、微小亀裂の伝播経路を妨げることができ、ガラスの耐擦傷、耐衝撃及び耐落下等の性能の全体的な向上に有利である。
【0048】
結晶化ガラスの性能は、結晶相とガラス相との割合、結晶粒のサイズ等によって決定される。結晶化ガラスの製造過程に、ガラス組成の凝集、結晶相の界面形態、結晶粒の外観形態等の要因により、現在製造された透明結晶化ガラスは、b値が大きく、ヘーズが高く、巨視的には透過光が黄色味を帯びるように表れ、結晶化ガラスの透過率及び使用性能に影響を与える。
【0049】
これに鑑みて、本願は、ガラス組成物を提供し、当該ガラス組成物で製造される結晶化ガラスにより、現在の透明結晶化ガラスのb値が大きく、ヘーズが高いという問題を効果的に解決することができる。
【0050】
本願の実施例では、質量%で、71.5~74.5%のSiO2、6.2~8.7%のAl2O3、1.7~3%のP2O5、10~12.5%のLi2O、0.1~2%のNa2O、及び3~5%ZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0051】
別の実施例では、当該ガラス組成物は、質量%で、0.1~1.7%のB2O3及び/又は0.1~1.5%のCaOをさらに含む。
【0052】
本願の実施例では、質量%で、71.5~74.5%のSiO2、7.3~8.7%のAl2O3、1.7~3%のP2O5、0.1~1%のB2O3、10.2~12%のLi2O、
0.4~1.5%のNa2O、及び3.1~5%のZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0053】
本願の実施例では、酸化物を基準として、質量%で、71.5~74%のSiO2、6.2~8.5%のAl2O3、1.7~2.6%のP2O5、0.1~1.7%のB2O3、10~12%のLi2O、0.1~2%のNa2O、0.1~1.5%のCaO及び3~5%のZrO2を含むガラス組成物を提供する。
【0054】
本願は、ガラス組成物を提供し、当該ガラス組成物で製造される結晶化ガラスにより、b値が大きく、ヘーズが高いという問題、及び化学的強化の過程に発生する結晶体含有量の低下、双晶相のインターロッキング構造の破壊の問題を効果的に解決できる。
【0055】
前記ガラス組成物は、質量%で、72~74.3%のSiO2、7~8.5%のAl2O3、1.8~3%のP2O5、10.2~12.5%のLi2O、0.5~2%のNa2O及び3.5~4.7%のZrO2を含む。
【0056】
まず、なお、本願の望ましい結晶化ガラス結晶相のペタライト分子式はLiAlSi4O10で、二ケイ酸リチウム分子式はLi2Si2O5である。各成分の質量%を計算する際に、ガラス組成物中のSiO2、Al2O3、P2O5、B2O3、Li2O、Na2O及びZrO2の質量の合計を基準とするか、又は、ガラス組成物中のSiO2、Al2O3、P2O5、Li2O、Na2O及びZrO2の質量の合計を基準とする。
【0057】
本願のガラス組成物にガラス骨格の成分を構成するSiO2を導入し、SiO2は、ガラス網目構造の主体として、優れた化学的安定性、機械的特性及び成形性能をベースガラス及び結晶化ガラスに付与することができる。ガラスの微結晶化過程において、Li2Si2O5及びLiAlSi4O10結晶相を形成するために、SiO2由来を提供し、ガラスの微結晶化過程において、SiO2が高すぎると、ガラスの微結晶化過程での石英及び石英固溶体の発生を促進する。そのため、総合的に考えると、SiO2含有量は71.5wt%~74.5wt%を選択するか、又はSiO2含有量は72wt%~74.3wt%を選択するか、又はSiO2含有量は71.5wt%~74wt%を選択する。
【0058】
本願のガラス組成物に網目中間体酸化物に属するAl2O3を導入する。非架橋酸素はAlとアルミニウム酸素四面体を形成し、これの体積は珪素酸素四面体の体積よりも大きく、ガラス構造により大きな隙間を生成し、イオン交換に有利であり、それにより、化学的強化の効果がより良く、ガラスの機械的特性を向上させる。しかし、Al2O3は、非常に高融点の酸化物に属し、ガラスの高温粘度を急速に高めることができ、これによりガラスの清澄と均質化の難しさが大きくなり、ガラス中の気泡欠陥の濃度が大幅に増加し、Al2O3の含有量が高すぎると、ガラスの微結晶化温度を顕著に高め、ベースガラスの結晶化能力を抑制することができ、二ケイ酸リチウムを形成し難く、結晶化過程でのガラスLiAlSi4O10の過剰な形成を促進し、さらには、ベースガラスにLiAlSi2O6結晶相を形成し、それにより、ガラスの透過率が低下する。そのため、総合的に考慮すると、Al2O3含有量は7.3wt%~8.7wt%を選択するか、又はAl2O3含有量は6.2wt%~8.5wt%を選択するか、又はAl2O3含有量は7wt%~8.5wt%を選択する。
【0059】
本願のガラス組成物にP2O5を導入し、P2O5は、二ケイ酸リチウム結晶の晶析を促進する傾向がよりある。P5+イオンは、非常に大きい電界強度を有し、酸素を奪う能力が強く、リン酸素網目構造が強固になる傾向がある。P5+イオンはSi4+イオンより電界強度が大きいため、P5+イオンは、容易にアルカリ金属イオンと結合して網目から分離して、結晶核を形成し、それにより、ベースガラスの相分離を促進し、核生成の活性エネルギーを低下させ、ガラスの結晶化に有利である。Li2OとP2O5とが反応してLi3PO4結晶相を形成し、それにより、ガラス中のLi2OとSiO2との反応を誘導してLi2SiO3を形成し、最終的にLi2Si2O5結晶相を形成し、さらに、P2O5は、ガラス網目構造が疎な状態を呈し、網目空隙が大きくなるように、[PO4]四面体で互いに網目に連結され、ガラス中のNa+イオンと溶融塩中のK+イオンとの相互拡散に有利であり、ガラス強化プロセス中のイオン強化に対して促進の役割を果たし、高い圧縮応力層の取得に重要な役割を果たす。しかし、P2O5含有量が高すぎると、結晶化過程にメタケイ酸リチウムの析出を促進することにより、ガラス相が過度に少なくなって、Li2Si2O5結晶相を十分に形成できず、石英相の析出を促進するため、高透過の結晶化ガラスを取得するのが困難になる。そのため、総合的に考慮すると、P2O5含有量は1.7wt%~3wt%を選択するか、又はP2O5含有量は1.8wt%~3wt%を選択するか、又はP2O5含有量は1.7wt%~2.6wt%を選択する。
【0060】
本願のガラス組成物にB2O3を導入し、B2O3の添加により、ガラスの溶融性を改善し且つ融点を低下させることができるとともに、ガラス表面の耐擦傷性を改善するのに役立つ。本願の研究から、B2O3は、緻密な[BO4]形態で結晶化ガラス構造中に存在し、二ケイ酸リチウムの核生成時(>580℃)に引き起こされるペタライトの成長に起因して結晶化ガラスのヘーズが大きくなるという問題を効果的に抑制し、一方では、アルカリ金属イオンの結晶化ガラスにおける移動が制限され、結晶化ガラスの結晶形構造を安定化させることを見出した。そのため、総合的に考慮すると、B2O3含有量は0.1wt%~1.7wt%を選択するか、又はB2O3含有量は0.1wt%~1wt%を選択する。
【0061】
本願のガラス組成物に網目外体酸化物に属するLi2Oを導入し、ガラスの粘度を低下させ、ガラスの溶融及び清澄を促進する。Li+は、化学的強化処理過程における主な交換イオンである。Li+イオンは、半径が小さく、Li+を含有するガラスのイオン交換速度がより速いことにより、ガラスに短時間でより厚い強化層ができる。Li+イオンと溶融液中のNa+イオンとが交換され、且つ、その速度がNa+とK+イオンとの交換速度より速い。高いLi2O濃度により、ベース微結晶化過程におけるLi3PO4の形成が促進されることは、結晶化過程における二ケイ酸リチウム結晶相及びペタライト結晶相の形成に役立ち、微結晶化ガラスを実現して深い深さを有するイオン強化層深さを取得するために、化学的強化過程でNa+と相互強化して、結晶化ガラス表面の亀裂を減少させるLi+がガラスに十分に存在しなければならず、結晶化ガラスの機械的強度作用を提供する。しかし、Li2Oが高すぎると、ガラスの粘度が低すぎ、化学的に安定したガラス組成の取得が難しくなり、またイオン強化過程における圧縮応力値が低くなりすぎ、且つ原料コストが増加する。そのため、総合的に考慮すると、Li2O含有量は10.2wt%~12wt%を選択するか、又はLi2O含有量は10.2wt%~12.5wt%を選択するか、又はLi2O含有量は10wt%~12wt%を選択する。
【0062】
本願のガラス組成物にNa2Oを導入すると、ベースガラスの粘度を顕著に低下させ、ベースガラスの溶融及び清澄を促進するとともに、ガラスの結晶化温度を低下させる。硝酸カリウム溶融塩中のK+イオンによる結晶化ガラスの強化を促進することにより、ガラス表面に高圧縮応力を発生して、ガラスの強度を向上させ、ガラスにNa+が十分に多く存在しなければならない。そのため、総合的に考慮すると、Na2O含有量は0.1wt%~2wt%を選択するか、又はNa2O含有量は0.4wt%~1.5wt%を選択するか、又はNa2O含有量は0.5wt%~2wt%を選択する。
【0063】
本願のガラス組成物にZrO2を導入する。一方では、ジルコニウムイオンのポテンシャルエネルギーが大きく、ガラス網目構造を強化することができ、ZrO2は、ペタライト結晶の晶析を促進する傾向がよりあり、他方では、ZrO2は、結晶化過程において結晶粒のサイズを小さくすることに役立ち、それにより、ガラスの透過率を向上させるとともに、ガラスの化学的安定性を急速に向上させることができる。次に、ガラスの破壊靭性及び耐曲げ強度を向上させ、ジルコニア自体の結晶相転移により応力誘導を発生して、結晶化後の破壊靭性を向上させることができる。ZrO2含有量が高すぎると、ガラスにZrO2未溶融物が存在し、それにより、ガラスが均一に晶析することができない。そのため、総合的に考慮すると、ZrO2含有量は3wt%~5wt%を選択するか、又はZrO2含有量は3.1wt%~5wt%を選択するか、又はZrO2含有量は3.5wt%~4.7wt%を選択する。
【0064】
本願の技術案では、ガラス組成物中の成分SiO2、Al2O3、P2O5、B2O3、Li2O、Na2O及びZrO2を特定の比重で組み合わせ、結晶化ガラス結晶化プロセス及び強化プロセスと結合することにより、b値及びヘーズを顕著に低下させ、強化性能に優れた結晶化ガラスを得ることができる。
【0065】
また、本願のガラス組成物にCaOを導入し、ガラスの化学的安定性及び機械的強度を向上させることができる。CaOは、ガラス構造中で酸性のAl2O3とより容易に結合するため、ホウ素の配位状態に影響を与え、また、CaOはNa2Oよりアルカリ性が大きいため、[AlO4]四面体が持つ負の電荷を補償でき、結晶化ガラス中の結晶相構造を安定化させる。しかし、CaO含有量が高いと、耐失透性の低下が引き起こされる。そのため、総合的に考慮すると、CaO含有量は0.1wt%~1.5wt%を選択する。
【0066】
本願にて提供される技術案において、ガラス組成物中の成分SiO2、Al2O3、P2O5、B2O3、Li2O、Na2O、CaO及びZrO2を特定の比重で組み合わせ、結晶化ガラス結晶化プロセス及び強化プロセスと結合することにより、化学的強化過程に発生する結晶体含有量の低下、双晶相のインターロッキング構造の破壊という状況を顕著に改善して、強化性能に優れた結晶化ガラスを得ることができる。
【0067】
一実施例では、ガラス組成物中の成分には、SiO2、Al2O3、P2O5、Li2O、Na2O及びZrO2が含まれ、前記ガラス組成物の各成分間は、2.9≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.2を満たす。A=W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)と表記し、Wは、すべての酸化物成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表し、且つ、A値は、当該式で算出した質量%の分子値である。A値が低いと、SiO2は全部結晶相に入り、これに対して、Al2O3又はLi2Oは過剰であり、A値が高すぎると、Al2O3又はLi2Oが全部結晶相に入り、残りのSiO2はガラス相中の網目骨格構造として存在し、結晶化ガラスの全結晶相含有量が低い。このように、A値を上記の範囲内に制御することにより、Al2O3又はLi2Oの過剰を回避し、結晶化ガラスの全結晶相含有量を効果的に向上させる。好ましくは、4.5≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.2である。
【0068】
前記ガラス組成物の各成分間は、0.26≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.85を満たす。B=[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]と表記し、Wは、すべての酸化物成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表す。B値が低すぎると、β-石英等の望ましくない結晶相が生じやすく、且つペタライト結晶相の形成割合が多く、結晶粒が成長しやすいことにより、微結晶の割合は、半透明ないし失透に至る。B値が高すぎると、結晶化ガラスにおけるガラス相の割合が大きくなり、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させることができない。このように、B値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させ、結晶化ガラスの微結晶の割合が半透明ないし失透に至ることを回避する。好ましくは、0.42≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.66である。
【0069】
前記ガラス組成物の各成分間は、1.17≦W(ZrO2)/W(P2O5)≦2.61を満たす。C1=W(ZrO2)/W(P2O5)と表記し、Wは、すべての酸化物成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表す。C1値を上記の範囲内に制御することにより、液-液表面の活性エネルギーを低下させて相分離させ、低い温度で核生成及び晶析ができる。さらに、液相の結晶化及び不安定な分解による相界面の発達が実現され、核生成の活性エネルギー又はエネルギー障壁を低下させ、核生成温度及び晶析温度を低下させる。2種類の結晶相は、ケイ素源及びリチウム源を奪い合い、即ち、相手の結晶相によって既に形成された結晶相構造を破壊して、自分の結晶相を形成するために使用し、形成されたペタライト及び二ケイ酸リチウムの結晶相量は、(W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)=0.91~1.06、詳細は後述する)に近く、結晶体サイズは、均一で、<100nmであり、光学的可視性の基本要件を満たす。C1値が高すぎたり低すぎたりすると、単一結晶相が多くなり、且つ成長しやすく、微結晶の可視光透過率が低下し、ヘーズが大きくなる。好ましくは、1.5≦W(ZrO2)/W(P2O5)≦2.1である。
【0070】
前記ガラス組成物の各成分間は、2.5≦[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]/W(Na2O)≦5.8を満たす。D=[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]/W(Na2O)と表記し、Wは、すべての酸化物成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表す。D値を上記の範囲内に制御することにより、ガラス結晶構造を安定化させること、特に、強化過程において、リチウムイオンの移動を抑制することに役立つ。結晶化ガラスペタライトと二ケイ酸リチウムとで形成されたインターロッキング構造をさらに維持し、結晶化ガラスの性能を向上させる。D値が高すぎると、結晶化ガラスの化学強化イオンは交換し難く、D値が低すぎると、結晶化ガラスペタライトと二ケイ酸リチウムとで形成されたインターロッキング構造を維持することができず、化学的強化過程において微結晶構造が破壊される。好ましくは、3.57≦[W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)]/W(Na2O)≦5である。
【0071】
一実施例では、ガラス組成物の各成分が、SiO272.8~73.9%、Al2O37.4~8%、P2O52.1~2.6%、Li2O10.7~11.7%、Na2O0.9~1.4%及びZrO23.9~4.4%の条件を満たすことが好ましい。これにより、ガラス組成物から得られる結晶化ガラスの性能がさらに最適化される。
【0072】
一実施例では、ガラス組成物中の成分には、SiO2、Al2O3、P2O5、B2O3、Li2O、Na2O及びZrO2が含まれ、前記結晶化ガラスの各成分間は、-1.1≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦6.7を満たす。A=W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)と表記し、Wは、すべての成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表し、A値は、当該式で算出された質量%の分子値である。A値が低いと、SiO2は全部結晶相に入り、これに対して、Al2O3又はLi2Oは過剰であり、ペタライト結晶相の形成割合が多く、結晶粒が成長しやすいことにより、微結晶の割合が半透明ないし失透に至る。A値が高すぎると、Al2O3又はLi2Oは全部結晶相に入り、残りのSiO2はガラス相中の網目骨格構造として存在し、結晶化ガラスの全結晶相含有量が低い。このように、A値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの微結晶の割合が半透明ないし失透に至ることを回避し、結晶化ガラスの全結晶相含有量を効果的に向上させる。
【0073】
前記結晶化ガラスの各成分間は、0.19≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.98を満たす。B=[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]と表記し、Wは、すべての成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表す。B値が低すぎると、結晶化ガラスにおけるガラス相の割合が大きくなり、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させることができない。B値が高すぎると、β-石英等の望ましくない結晶相が生じやすく、且つペタライト結晶相の形成割合が多く、結晶粒が成長しやすいことにより、微結晶の割合が半透明ないし失透に至る。このように、B値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させ、結晶化ガラスの微結晶の割合が半透明ないし失透に至ることを回避する。
【0074】
前記結晶化ガラスの各成分間は、0.06≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.57を満たす。C2=[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)と表記し、Wは、すべての成分の質量の合計に対する当該成分の質量%を表す。C2値を上記の範囲内に制御することにより、液-液表面の活性エネルギーを低下させて相分離させ、低い温度で核生成及び晶析ができる。液相の結晶化及び不安定な分解による相界面の発達が実現され、核生成の活性エネルギー又はエネルギー障壁を低下させ、核生成温度及び晶析温度を低下させる。2種類の結晶相は、ケイ素源及びリチウム源を奪い合い、即ち、相手の結晶相によって既に形成された結晶相構造を破壊して、自分の結晶相を形成するために使用し、形成されたペタライトと二ケイ酸リチウムとの結晶相量が近く、結晶体サイズは、均一で、<100nmであり、光学的可視性の基本要件を満たす。C2値が高すぎても低すぎても、単一結晶相が多くなり、且つ成長しやすいことになり、微結晶の可視光透過率が低下し、ヘーズが大きくなる。
【0075】
一実施例では、ガラス組成物の各成分が、72~74%のSiO2、7.5~8.4%のAl2O3、2~2.8%のP2O5、0.3~0.8%のB2O3、10.5~11.8%のLi2O、0.5~1.3%のNa2O、3.4~4.7%のZrO2の条件を満たすことが好ましい。これにより、ガラス組成物から得られる結晶化ガラスの性能がさらに最適化される。
【0076】
当該ガラス組成物の各成分配合比率について、前記結晶化ガラスの各成分間が0.6≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦5.4、0.28≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.8、0.5≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.36を満たすことがより好ましい。
【0077】
一実施例では、ガラス組成物の各成分は、72.5~73.5%のSiO2、7.7~8%のAl2O3、2.1~2.5%のP2O5、0.5~0.7%のB2O3、11~11.5%のLi2O、0.7~1.1%のNa2O、3.8~4.4%のZrO2の条件を満たす。これにより、ガラス組成物から得られる結晶化ガラスの性能がより優れたものとなる。
【0078】
当該ガラス組成物の各成分の配合比率について、前記結晶化ガラスの各成分間が2.5≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦4.3、0.43≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.64、0.81≦[W(ZrO2)-3×W(B2O3)]/W(P2O5)≦1.16を満たすことがより好ましい。
【0079】
一実施例では、ガラス組成物の各成分が72~73.5%のSiO2、6.8~8.2%のAl2O3、2~2.4%のP2O5、0.4~1.1%のB2O3、10.8~11.7%のLi2O、0.4~1.7%のNa2O、0.3~1%のCaO及び3.3~4.4%のZrO2の条件を満たすことが好ましい。これにより、ガラス組成物から得られる結晶化ガラスの性能がさらに最適化される。
【0080】
一実施例では、ガラス組成物中の成分には、SiO2、Al2O3、P2O5、B2O3、Li2O、Na2O、CaO及びZrO2が含まれ、前記ガラス組成物の各成分間は、2.3≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦10.3を満たす。A=W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)と表記し、Wは、当該成分の質量%を表し、A値は、当該式で算出された質量%の分子値である。A値が低いと、SiO2は全部結晶相に入り、これに対して、Al2O3又はLi2Oが過剰であり、ペタライト結晶相の形成割合が多く、結晶粒が成長しやすいことにより、微結晶の割合が半透明ないし失透に至る。A値が高すぎると、Al2O3又はLi2Oが全部結晶相に入り、残りのSiO2はガラス相中の網目骨格構造として存在し、結晶化ガラスの全結晶相含有量が低い。このように、A値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの微結晶の割合が半透明ないし失透に至ることを回避し、結晶化ガラスの全結晶相含有量を効果的に向上させる。一実施例では、2.7≦W(SiO2)-6×W(Al2O3)-2×W(Li2O)≦7.8が好ましい。
【0081】
前記ガラス組成物の各成分間は、0.27≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.87を満たす。B=[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]と表記し、Wは、当該成分の質量%を表す。B値が低すぎると、結晶化ガラスにおけるガラス相の割合が大きくなり、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させることができない。B値が高すぎると、β-石英等の望ましくない結晶相が生じやすく、且つペタライト結晶相の形成割合が多く、結晶粒が成長しやすいことにより、微結晶の割合が半透明ないし失透に至る。このように、B値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの性能の優位性を十分に発揮させ、結晶化ガラスの微結晶の割合が半透明ないし失透に至ることを回避する。一実施例では、0.46≦[W(Li2O)-W(Al2O3)]/[W(P2O5)+W(ZrO2)]≦0.77が好ましい。
【0082】
前記ガラス組成物の各成分間は、2≦[W(ZrO2)-W(CaO)]/[W(P2O5)-W(B2O3)]≦3.22を満たす。C3=[W(ZrO2)-W(CaO)]/[W(P2O5)-W(B2O3)]と表記し、Wは、当該成分の質量%を表す。C3値を上記の範囲内に制御することにより、一方では、液-液表面の活性エネルギーを低下させて相分離させ、低い温度で核生成及び晶析ができ、形成されたペタライトと二ケイ酸リチウムとの結晶相量が近く、結晶体サイズは、均一で、<100nmであり、光学的可視性の基本要件を満たす。他方では、ガラス結晶構造を安定化させ、特に、化学的強化過程において、リチウムイオンの移動を抑制し、化学的強化後の結晶化ガラスの結晶体含有量を改善する。また、C3値が高すぎたり低すぎたりすると、微結晶可視光透過率、b値及びヘーズに影響を与える。一実施例では、2.06≦[W(ZrO2)-W(CaO)]/[W(P2O5)-W(B2O3)]≦2.31が好ましい。
【0083】
本願の実施例では、上記のようなガラス組成物を含む結晶化ガラスをさらに提供する。前記結晶化ガラスは、上記のガラス組成物の全部の技術的特徴を含むため、上記のガラス組成物による全部の技術的効果を備え、ここでは逐一説明しない。
【0084】
一実施例では、前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである。結晶化ガラスの板厚が薄いほど、結晶化ガラスをより軽量化することができる。
【0085】
一実施例では、前記結晶化ガラスの結晶相は、主に、二ケイ酸リチウム及びペタライトであり、前記結晶化ガラスの結晶相の合計含有量は60%~90%であり、前記二ケイ酸リチウムの含有量>30%であり、前記ペタライトの含有量>30%である。結晶化ガラスの強化性能がよりよくなるように、二ケイ酸リチウム及びペタライトが当該範囲内にあることを保証することにより、結晶化ガラスの結晶相含有量を大きくし、且つ2つの結晶相の割合のバランスをよくする。
【0086】
一実施例では、前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである。結晶化ガラスの板厚が薄いほど、結晶化ガラスをより軽量化することができる。
【0087】
本願の実施例では、上記のようなガラス組成物を含む結晶化ガラスをさらに提供し、前記結晶化ガラスに結晶相Li2Si2O5及び結晶相LiAlSi4O10を含有し、前記結晶化ガラスは、上記のガラス組成物の全部の技術的特徴を含むため、上記のガラス組成物による全部の技術的効果を備え、ここでは逐一説明しない。
【0088】
前記結晶化ガラスは、0.91≦W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)≦1.06を満たす必要もある。E=W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)と表記し、Wは、当該結晶相の結晶化ガラスに対する質量%を表す。E値を上記の範囲内に制御することにより、形成されたペタライトと二ケイ酸リチウムとの結晶相量が近いことを保証し、結晶化ガラスの性能をさらに向上させる。0.97≦W(Li2Si2O5)/W(LiAlSi4O10)≦1.03がさらに好ましい。
【0089】
前記結晶化ガラスは、10.44≦M≦12.54を満たす必要もあり、ここで、M=1.3×[W(Li
2Si
2O
5)/W(LiAlSi
4O
10)]×{0.86×[W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O)]+1.83×[(W(Li
2O)-W(Al
2O
3))/(W(P
2O
5)+W(ZrO
2))]+1.67×[W(ZrO
2)/W(P
2O
5)]+0.25×[(W(SiO
2)-6×W(Al
2O
3)-2×W(Li
2O))/W(Na
2O)]}である。つまり、M=1.3×E×(0.86×A+1.83×B+1.67×C+0.25×D)であり、研究から、Mは結晶化ガラスの破壊靭性KICと線形関係にあり、
図3に示すように、この線形関係に基づいて、M値を上記の範囲内に制御することにより、結晶化ガラスの破壊靭性を向上させるのに役立つことを見出した。11.85≦M≦12.54がさらに好ましい。
【0090】
一実施例では、前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである。結晶化ガラスの板厚が薄いほど、結晶化ガラスをより軽量化することができる。
【0091】
さらに、本願は、上記の結晶化ガラスを製造するための結晶化ガラスの製造方法をさらに提供し、
図1に示すように、ステップS10~ステップS30を含む。
【0092】
S10において、上記のようなガラス組成物を秤量する。
【0093】
S20において、前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得る。
【0094】
具体的には、ステップS20において、前記成形方法には、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形が含まれる。清澄、均質化、アニール及び切断等の他のプロセスは、ガラス技術の分野における一般的な工程であり、ここでは、ここでの詳細な説明は省略するが、上記のプロセスを得た後、得られるベースガラスの厚さは、0.3~1.5mmである。
【0095】
S30において、前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る。
【0096】
具体的には、ステップS30には、前記ベースガラスを室温から20~60minで510~540℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3~8h行うこと、5~30minで580~610℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3~8h行うこと、5~30minで650~680℃に昇温させ、結晶化処理を3~8h行うこと、及び室温まで冷却して、結晶化ガラスを得ることが含まれる。
【0097】
一実施例では、
図2に示すように、ステップS30の後、さらに、
前記結晶化ガラスを前処理した後、イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化結晶化ガラスを得るステップS40を含む。ここで、前記イオン交換浴は、質量%で20~40%のNaNO
3及び60~80%のKNO
3を含み、前記塩浴強化温度は420~500℃であり、前記塩浴強化時間は3~8hである。
【0098】
結晶化ガラスにおける結晶体含有量が高いため、ガラス相と結晶相との間に構造的な差が存在し、構造的空洞が形成され、>40wt%NaNO3を含有する溶融塩を採用する場合、イオン交換の際に短時間内にNa+/Li+が深いイオン深さまで達することができるが、Na+が微結晶相とガラス相の空洞内に凝集しやすく、圧縮応力を形成し難い。ガラス相中のNa+/Li+の交換が速すぎると、時間になると、ガラス相と微結晶相との差がさらに大きくなり、b値の増加を引き起こしやすい。
【0099】
上記の強化制度を採用すると、結晶相中のNa+/Li+の交換速度を遅くすることができ、微結晶相とガラス相の空洞内へのNa+の凝集を減少するのに有利であり、圧縮応力を効果的に形成し、ガラス相及び交換速度を低下させ、ガラス相と結晶相との差を減少させることができ、ガラスのb値をさらに低下させる。
【0100】
なお、ステップS40において、前記前処理のステップには、具体的には、前記結晶化ガラスを300~330℃において5~20min保温することが含まれる。上記のガラスに前処理する技術分野での一般的な手段については、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
本願は、上記の結晶化ガラスを含む電子表示端末をさらに提供し、当該結晶化ガラスの具体的な特徴は、上記の実施例を参照でき、本電子表示端末には、上記の全ての実施例の全ての技術案が採用されているため、少なくとも上記の実施例の技術案によるすべての有益な効果を有し、ここでは逐一説明しない。ここで、結晶化ガラスは、電子表示端末の防護ガラス又は保護部材として用いられるか、又は、結晶化ガラスは、スマート端末の防護ガラスとして用いられるか、又は、結晶化ガラスは、太陽電池の防護ガラスとして用いられる。
【実施例】
【0102】
以下、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本願の技術案についてさらに詳細に説明し、以下の実施例は本願を解釈するためのものにすぎず、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【0103】
(実施例)
(1)ガラス組成物を秤量し、質量%で、SiO272%、Al2O37%、P2O53%、Li2O12.5%、Na2O2%及びZrO23.5%を含む。
【0104】
(2)前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得た。
【0105】
(3)前記ベースガラスを室温から20minで530℃に昇温させ、核形成処理を3h行い、30minで680℃に昇温させ、結晶化処理を3h行い、室温まで冷却して、結晶化ガラスを得た。
【0106】
(4)質量%で40%のNaNO3及び60%のKNO3を含むイオン交換浴を提供し、前記結晶化ガラスを前処理した後、前記イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化結晶化ガラスを得、前記塩浴強化温度は420℃であり、前記塩浴強化時間は3hであった。
【0107】
表I1及び表I2に示す各実施例のガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例A1の製造方法を参照して、他の実施例A2から実施例A14までの結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0108】
表I3に示す比較例A1からA5までのガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例A1の製造方法を参照して、比較例A1からA5までの結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0109】
実施例A8及び実施例A14のガラス組成物で実施例A1中の製造方法のステップ(1)~(3)を行って、結晶化ガラスを製造し、製造時の具体的なプロセスパラメータは表I4を参照されたい。
【0110】
実施例A8及び実施例A14のガラス組成物で実施例A1中の製造方法のステップ(1)~(4)を行って、化学強化結晶化ガラスを製造し、製造のステップ(4)の具体的なプロセスパラメータは表I5を参照し、残りのステップ(1)~(3)は、実施例A1のものと一致した。
【0111】
(試験例)
テスト方法及びテスト機器は、下記のとおりである。
【0112】
X線回折分析器で主結晶相をテストした。
【0113】
走査型電子顕微鏡で結晶外観形態を観測した。
【0114】
Datacolor650超高精度デスクトップ型分光光度測色計で色b値のテストを行った。
【0115】
分光光度計で基準ISO13468-1:1996に準拠して可視光透過率テストを行った。
【0116】
ガラスのヘーズをASTMD1003-92テストによって測定した。
【0117】
ASTM E-1820に準拠してガラス破壊靭性KICを測定し、単位は、MPa・m1/2である。
【0118】
機械全体サンドペーパーの落下性能は、携帯電話制御落下試験機によって測定され、具体的なテスト条件は、180メッシュのサンドペーパー、195gの合計重量、60cmの基部高さ、5cmずつ増加、1高さごとに1回、破砕するまでである。
【0119】
試験例のテスト方法及びテスト機器にしたがって、実施例B1~B14で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、比較例A1~A5で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、表I4のプロセスパラメータにしたがって製造された結晶化ガラス、表I5のプロセスパラメータにしたがって製造された化学強化結晶化ガラスの性能をそれぞれテストし、対応するテーブルにそれぞれ記入した。
【0120】
上記のテスト方式及びテスト機器は、当業界分野でガラスの関連性能の評価に一般的に使用される方式であり、本願の技術案及び技術的効果を特徴づけるか又は評価する手段の1つにすぎず、他のテスト方式及びテスト機器を採用してもよく、最終結果に影響を与えないことを理解されたい。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
ここで、核形成処理及び結晶化処理における時間は、昇温にかかった時間を表し、温度は昇温目標温度を表し、時間は処理時間を表す。
【0126】
【0127】
表I1、表I2、表I4及び表I5に示す各実施例の結晶化ガラスの性能のテスト結果から分かるように、本願の技術案を用いた実施例A1~A14では、熱処理後に得られた結晶化ガラスは、結晶相二ケイ酸リチウムLi2Si2O5>30%、結晶相ペタライトLiAlSi4O10>30%であり、結晶化ガラス中の全結晶相>68%であった。前記結晶化ガラスは、0.7mm透過率>91%、ヘーズ<0.17、b値<0.4であった。前記結晶化ガラス結晶粒の平均結晶体サイズは<100nmであった。前記結晶化ガラスは、破壊靭性KIC>1.1MPa・m1/2、耐落下高さ>200cmであった。
【0128】
表I3から分かるように、比較例A1では、SiO2=71.5%、A=0.5、D=0.42であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、Li2Si2O5/LiAlSi4O10=0.81、結晶体サイズ>100nmであり、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、化学強化後の機械的特性が悪かった。
【0129】
比較例A2では、A=8、D=6.67であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、Li2Si2O5/LiAlSi4O10=0.6であり、化学強化後の機械的特性が悪かった。
【0130】
比較例A3では、Li2O=10%、B=0.2であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、Li2Si2O5/LiAlSi4O10=0.74、結晶体サイズ>100nmであり、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、化学強化後の機械的特性が悪かった。
【0131】
比較例A4では、P2O5=1.7%、A=2.1、C1=2.82、D=2.33であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、Li2Si2O5/LiAlSi4O10=0.55、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、化学強化後の機械的特性が悪かった。
【0132】
比較例A5では、P2O5=3.8%、A=2.7、C1=0.97、D=2.45であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、Li2Si2O5/LiAlSi4O10=1.7、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、化学強化後の機械的特性が悪かった。
【0133】
本願の実施例における化学強化結晶化ガラスの破壊靭性KIC値(1.012~1.78MPa・m1/2)は、比較例における化学強化結晶化ガラスの破壊靭性KIC値(0.43~0.72MPa・m1/2)に比べ、より高く、化学的強化過程において、本願の実施例の結晶化ガラスに発生する結晶体含有量低下、双晶相のインターロッキング構造の破壊の状況が顕著に改善されたことを説明し、本願の実施例における結晶化ガラスのb値及びヘーズが、比較例における結晶化ガラスの高いb値及び高いヘーズに比べ、より低いことが明らかであり、本願の実施例の結晶化ガラスによりb値及びヘーズの低下が実現されたことを説明する。最終的に、得られた化学強化結晶化ガラスは、強化性能に優れる。
【0134】
(実施例)
(1)ガラス組成物を秤量し、質量%で、SiO271.5%、Al2O38.7%、P2O53%、B2O30.1%、Li2O10.2%、Na2O1.5%及びZrO25%を含み、A=-1.1、B=0.19、C2=1.57であった。
【0135】
(2)前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得た。
【0136】
(3)前記ベースガラスを室温から20minで510℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3h行い、5minで580℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3h行い、30minで650℃に昇温させ、結晶化処理を3h行い、室温まで冷却して、結晶化ガラスを得た。
【0137】
(4)前記結晶化ガラスを前処理した後、イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化結晶化ガラスを得、前記イオン交換浴は、質量%で、20%のNaNO3及び80%のKNO3を含み、前記塩浴強化温度は420℃で、前記塩浴強化時間は3hであった。
【0138】
表II1及び表II2に示す各実施例のガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例B1の製造方法を参照して、他の実施例B2~実施例B15の結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0139】
表II3に示す比較例B1~B7のガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例B1の製造方法を参照して、比較例B1~B7の結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0140】
実施例B1及びB9のガラス組成物で、実施例B1における製造方法のステップ(1)~(3)を行って、結晶化ガラスを製造し、製造時の具体的なプロセスパラメータは、表II4を参照されたい。
【0141】
(試験例)
テスト方法及びテスト機器は、下記のとおりである。
【0142】
X線回折分析器で主結晶相をテストした。
【0143】
走査型電子顕微鏡で結晶外観形態を観測した。
【0144】
Datacolor650超高精度デスクトップ型分光光度測色計で色b値のテストを行った。
【0145】
分光光度計で基準ISO13468-1:1996に準拠して可視光透過率テストを行った。
【0146】
ガラスのヘーズをASTMD1003-92テストによって測定した。
【0147】
機械全体サンドペーパーの落下性能は、携帯電話制御落下試験機によって測定され、具体的なテスト条件は、180メッシュのサンドペーパー、195gの合計重量、60cmの基部高さ、及び5cmずつ増加、1高さごとに1回、破砕するまでである。
【0148】
試験例のテスト方法及びテスト機器にしたがって、実施例B1~B15で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、比較例B1~B7で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、表II4のプロセスパラメータにしたがって製造された結晶化ガラスの性能をそれぞれテストし、対応するテーブルにそれぞれ記入した。
【0149】
上記のテスト方式及びテスト機器は、当業界分野でガラスの関連性能の評価に一般的に使用される方式であり、本願の技術案及び技術的効果を特徴づけるか又は評価する手段の1つにすぎず、他のテスト方式及びテスト機器を採用してもよく、最終結果に影響を与えないことを理解されたい。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
ここで、1回目の核形成処理、2回目の核形成処理及び結晶化処理における時間は、昇温にかかった時間を表し、温度は昇温目標温度を表し、時間は処理時間を表す。
【0155】
表II1、表II2及び表II4に示す各実施例のガラス性能のテスト結果から分かるように、本願の技術案を用いた実施例B1~B15では、結晶化ガラスにおいて、二ケイ酸リチウムLi2Si2O5が30%~45%を占め、ペタライトLiAlSi4O10が30%~45%を占め、全結晶相が結晶化ガラスの60%~90%を占め、結晶体サイズは均一であり、平均結晶体サイズは<100nmである。0.7mmの結晶化ガラスは560nmの波長の処で、透過率>91%、ヘーズ<0.17、b値<0.5であり、耐落下高さ>200cmである。
【0156】
表II3から分かるように、比較例1では、B2O3=0%、C2=1.58であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きかった。
【0157】
比較例B2では、B2O3=1.1%であったが、C2=-0.22であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、耐落下の性能が悪かった。
【0158】
比較例B3では、Al2O3=9.5%、A=-4.8、B=0.08であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、耐落下の性能が悪かった。
【0159】
比較例B4では、SiO2=74.7%、A=12.1であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が悪かった。
【0160】
比較例B5では、Li2O=13%、B=1.08であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きかった。
【0161】
比較例B6では、Al2O3=9%、B=-0.06であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が悪かった。
【0162】
比較例B7では、ガラス成分が本願の要求内にあるが、C2=1.91であり、本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きかった。
【0163】
本願の実施例の結晶化ガラスのb値は、比較例の結晶化ガラスのb値及びヘーズに比べ、顕著に小さくなり、ヘーズが顕著に低下し、本願の実施例により、現在製造される透明結晶化ガラスのb値が大きく、ヘーズが高いという問題を効果的に解決でき、得られた結晶化ガラスが強化性能に優れることを説明する。
【0164】
(実施例)
(1)ガラス組成物を秤量し、質量%で、SiO271.5%、Al2O36.2%、P2O51.7%、B2O30.1%、Li2O12%、Na2O2%、CaO1.5%及びZrO25%を含み、A=10.3、B=0.87、C3=2.19であった。
【0165】
(2)前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得た。
【0166】
(3)前記ベースガラスを室温から20minで510℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3h行い、5minで580℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3h行い、30minで650℃に昇温させ、結晶化処理を3h行い、室温まで冷却して、結晶化ガラスを得た。
【0167】
(4)前記結晶化ガラスを前処理した後、イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学強化結晶化ガラスを得、前記イオン交換浴は、質量%で、40%のNaNO3及び60%のKNO3を含み、前記塩浴強化温度は500℃であり、前記塩浴強化時間は8hであった。
【0168】
表III1及び表III2に示す各実施例のガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例C1の製造方法を参照して、他の実施例C2~実施例C16の結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0169】
表III3に示す比較例C1~C6のガラス組成物成分配合比率にしたがって原材料を秤量し、実施例C1の製造方法を参照して、比較例C1~C6の結晶化ガラス、化学強化結晶化ガラスをそれぞれ製造した。
【0170】
実施例C1及びC8のガラス組成物で実施例C1における製造方法のステップ(1)~(3)を行って、結晶化ガラスを製造し、製造時の具体的なプロセスパラメータは表III4を参照されたい。
【0171】
実施例C1及びC8のガラス組成物で実施例C1における製造方法のステップ(1)~(4)を行って、化学強化結晶化ガラスを製造し、製造時のステップ(4)の具体的なプロセスパラメータは、表III5を参照し、残りのステップ(1)~(3)は、実施例C1と一致した。
【0172】
(試験例)
テスト方法及びテスト機器は、下記のとおりである。
【0173】
X線回折分析器で主結晶相をテストした。
【0174】
走査型電子顕微鏡で結晶外観形態を観測した。
【0175】
Datacolor650超高精度デスクトップ型分光光度測色計で色b値のテストを行った。
【0176】
分光光度計で基準ISO13468-1:1996に準拠して可視光透過率テストを行った。
【0177】
ガラスのヘーズをASTMD1003-92テストによって測定した。
【0178】
機械全体サンドペーパーの落下性能は、携帯電話制御落下試験機によって測定され、具体的なテスト条件は、180メッシュのサンドペーパー、195gの合計重量、60cmの基部高さ、及び5cmずつ増加、1高さごとに1回、破砕するまでである。
【0179】
試験例のテスト方法及びテスト機器にしたがって、実施例C1~C16で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、比較例C1~C6で得た結晶化ガラス及び化学強化結晶化ガラス、表III4のプロセスパラメータにしたがって製造された結晶化ガラス、表III5のプロセスパラメータにしたがって製造された化学強化結晶化ガラスの性能をそれぞれテストし、対応するテーブルにそれぞれ記入した。
【0180】
上記のテスト方式及びテスト機器は、当業界分野でガラスの関連性能の評価に一般的に使用される方式であり、本願の技術案及び技術的効果を特徴づけるか又は評価する手段の1つにすぎず、他のテスト方式及びテスト機器を採用してもよく、最終結果に影響を与えないことを理解されたい。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
ここで、1回目の核形成処理、2回目の核形成処理及び結晶化処理における時間は、昇温にかかった時間を表し、温度は昇温目標温度を表し、時間は処理時間を表す。
【0186】
【0187】
表III1、表III2、表III4及び表III5に示す各実施例のガラス性能のテスト結果から分かるように、本願の技術案を用いた実施例C1~C16では、化学強化結晶化ガラスは、二ケイ酸リチウムLi2Si2O5>30%、ペタライトLiAlSi4O10>30%であり、結晶化ガラスの結晶相の合計含有量及び化学強化結晶化ガラスの結晶相合計含有量は、両方とも60%~90%であり、結晶化ガラス内の結晶粒の平均結晶体サイズは<100nmであり、結晶化ガラス0.7mm可視光透過率>91%、耐落下高さ>200cmであった。
【0188】
表III3から分かるように、比較例C1では、Al2O3=9%、A=-4、C3=1であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラスは、微結晶相含有量が少なく、結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きかった。
【0189】
比較例C2では、Al2O3=5.5%、A=18.5、C3=1.2であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス中の微結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が比較的悪かった。
【0190】
比較例C3では、Li2O=12.5%、B=1.04、C3=1.1であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きかった。
【0191】
比較例C4では、Li2O=9%、B=0.15、C3=1.22であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、結晶化ガラスは、強化された後、結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が比較的悪かった。
【0192】
比較例C5では、CaO=1.6%、ZrO2=2.6%、C3=0.43であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、結晶化ガラスは、強化された後、結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が比較的悪かった。
【0193】
比較例C6では、B2O3=0、C3=1.64であった。本願のガラス組成物の要件に合致せず、熱処理結晶化ガラス結晶体サイズ>100nmであり、且つ、透過率が低く、b値が大きすぎで、ヘーズが大きく、結晶化ガラスは、強化された後、結晶相含有量が少なく、耐落下の性能が比較的悪かった。
【0194】
本願の実施例における化学強化結晶化ガラスの、結晶化ガラスの結晶相の合計含有量に対する減少量は、比較例における化学強化結晶化ガラスの、結晶化ガラスの結晶相の合計含有量に対する減少量に比べ、より少なく、化学的強化過程において、本願の実施例の結晶化ガラスに発生する結晶体含有量低下、双晶相のcの破壊の状況が顕著に改善され、得られた化学強化結晶化ガラスが強化性能に優れることを説明する。
【0195】
以上は本願の好ましい実施例にすぎず、本願の特許範囲を限定するものではなく、当業者にとって、本願は様々な変更及び変化が可能である。本願の精神と原則内で、行われたいかなる修正、均等置換、改善などは、いずれも本願の特許保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
72~74.3%のSiO
2
、7~8.5%のAl
2
O
3
、1.8~3%のP
2
O
5
、10.2~12.5%のLi
2
O、0.5~2%のNa
2
O、及び3.5~4.7%のZrO
2
を含み、
2.9≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦5.2、
0.26≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.85、
1.17≦W(ZrO
2
)/W(P
2
O
5
)≦2.61、
2.5≦[W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)]/W(Na
2
O)≦5.8である、ガラス組成物。
【請求項2】
質量%で、
72.8~73.9%のSiO
2
、7.4~8%のAl
2
O
3
、2.1~2.6%のP
2
O
5
、10.7~11.7%のLi
2
O、0.9~1.4%のNa
2
O、及び3.9~4.4%のZrO
2
を含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
4.5≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦5.2、
0.42≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.66、
1.5≦W(ZrO
2
)/W(P
2
O
5
)≦2.1、
3.57≦[W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)]/W(Na
2
O)≦5である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
結晶化ガラスであって、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス組成物を含み、前記結晶化ガラスは、結晶相Li
2
Si
2
O
5
及び結晶相LiAlSi
4
O
10
を含有する、結晶化ガラス。
【請求項5】
0.91≦W(Li
2
Si
2
O
5
)/W(LiAlSi
4
O
10
)≦1.06である、請求項4に記載の結晶化ガラス。
【請求項6】
0.97≦W(Li
2
Si
2
O
5
)/W(LiAlSi
4
O
10
)≦1.03である、請求項5に記載の結晶化ガラス。
【請求項7】
10.44≦M≦12.54、
ここで、M=1.3×[W(Li
2
Si
2
O
5
)/W(LiAlSi
4
O
10
)]×{0.86×[W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)]+1.83×[(W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
))/(W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
))]+1.67×[W(ZrO
2
)/W(P
2
O
5
)]+0.25×[(W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O))/W(Na
2
O)]}である、請求項5に記載の結晶化ガラス。
【請求項8】
11.85≦M≦12.54である、請求項7に記載の結晶化ガラス。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス組成物を秤量するステップと、
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得るステップと、
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得るステップと、を含む、結晶化ガラスの製造方法。
【請求項10】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップは、
前記ベースガラスを室温から20~60minで530~570℃に昇温させ、核形成処理を3h以上行うことと、
5~30minで680~720℃に昇温させ、結晶化処理を3h以上行うことと、
室温まで冷却して、前記結晶化ガラスを得ることと、を含む、請求項9に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項11】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップの後、前記製造方法は、さらに、
イオン交換浴を提供するステップであって、前記イオン交換浴は、質量%で、20~40%のNaNO
3
及び60~80%のKNO
3
を含むステップと、
前記結晶化ガラスを前処理した後に前記イオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学的に強化された結晶化ガラスを得るステップであって、前記塩浴強化温度は420~500℃であり、前記塩浴強化時間は3~8hであるステップと、を含む、請求項9に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得る前記ステップでは、前記成形方法は、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形を含む、請求項9に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項13】
質量%で、
72~74%のSiO
2
、7.5~8.4%のAl
2
O
3
、2~2.8%のP
2
O
5
、0.3~0.8%のB
2
O
3
、10.5~11.8%のLi
2
O、0.5~1.3%のNa
2
O、3.4~4.7%のZrO
2
を含む、ガラス組成物。
【請求項14】
-1.1≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦6.7である、請求項13に記載のガラス組成物。
【請求項15】
0.19≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.98である、請求項13に記載のガラス組成物。
【請求項16】
0.06≦[W(ZrO
2
)-3×W(B
2
O
3
)]/W(P
2
O
5
)≦1.57である、請求項13に記載のガラス組成物。
【請求項17】
0.6≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦5.4、
0.28≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.8、
0.5≦[W(ZrO
2
)-3×W(B
2
O
3
)]/W(P
2
O
5
)≦1.36である、請求項16に記載のガラス組成物。
【請求項18】
質量%で、
72.5~73.5%のSiO
2
、7.7~8%のAl
2
O
3
、2.1~2.5%のP
2
O
5
、0.5~0.7%のB
2
O
3
、11~11.5%のLi
2
O、0.7~1.1%のNa
2
O、3.8~4.4%のZrO
2
を含む、請求項13に記載のガラス組成物。
【請求項19】
2.5≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦4.3、
0.43≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.64、
0.81≦[W(ZrO
2
)-3×W(B
2
O
3
)]/W(P
2
O
5
)≦1.16である、請求項18に記載のガラス組成物。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、結晶化ガラス。
【請求項21】
前記結晶化ガラスの厚さは0.3~1.5mmである、請求項20に記載の結晶化ガラス。
【請求項22】
請求項13~19のいずれか1項に記載のガラス組成物を秤量するステップと、
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得るステップと、
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得るステップと、を含む、結晶化ガラスの製造方法。
【請求項23】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップは、
前記ベースガラスを室温から20~60minで510~540℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで580~610℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで650~680℃に昇温させ、結晶化処理を3~8h行うことと、
室温まで冷却して、結晶化ガラスを得ることと、を含む、請求項22に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項24】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップの後、前記製造方法は、さらに、
前記結晶化ガラスを前処理した後にイオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学的に強化された結晶化ガラスを得るステップを含み、
ここで、前記イオン交換浴は、質量%で、20~40%のNaNO
3
及び60~80%のKNO
3
を含み、及び/又は、
前記塩浴強化温度は420~500℃であり、及び/又は、
前記塩浴強化時間は3~8hである、請求項22に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項25】
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得る前記ステップでは、前記成形方法は、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形を含む、請求項22に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項26】
酸化物を基準として、質量%で、
71.5~74%のSiO
2
、6.2~8.5%のAl
2
O
3
、1.7~2.6%のP
2
O
5
、0.1~1.7%のB
2
O
3
、10~12%のLi
2
O、0.1~2%のNa
2
O、0.1~1.5%のCaO、及び3~5%のZrO
2
を含む、ガラス組成物。
【請求項27】
酸化物を基準として、質量%で、
72~73.5%のSiO
2
、6.8~8.2%のAl
2
O
3
、2~2.4%のP
2
O
5
、0.4~1.1%のB
2
O
3
、10.8~11.7%のLi
2
O、0.4~1.7%のNa
2
O、0.3~1%のCaO及び3.3~4.4%のZrO
2
を含む、請求項26に記載のガラス組成物。
【請求項28】
2≦[W(ZrO
2
)-W(CaO)]/[W(P
2
O
5
)-W(B
2
O
3
)]≦3.22である、請求項26に記載のガラス組成物。
【請求項29】
2.06≦[W(ZrO
2
)-W(CaO)]/[W(P
2
O
5
)-W(B
2
O
3
)]≦2.31である、請求項28に記載のガラス組成物。
【請求項30】
2.3≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦10.3、
0.27≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.87である、請求項26に記載のガラス組成物。
【請求項31】
2.7≦W(SiO
2
)-6×W(Al
2
O
3
)-2×W(Li
2
O)≦7.8、
0.46≦[W(Li
2
O)-W(Al
2
O
3
)]/[W(P
2
O
5
)+W(ZrO
2
)]≦0.77である、請求項30に記載のガラス組成物。
【請求項32】
請求項26~31のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、結晶化ガラス。
【請求項33】
前記結晶化ガラスの結晶相は、主に、二ケイ酸リチウム及びペタライトであり、前記結晶化ガラスの結晶相の総含有量は60%~90%であり、前記二ケイ酸リチウムの含有量は>30%であり、前記ペタライトの含有量は>30%である、請求項32に記載の結晶化ガラス。
【請求項34】
請求項26~31のいずれか1項に記載のガラス組成物を秤量するステップと、
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得るステップと、
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得るステップと、
前記結晶化ガラスを前処理した後にイオン交換浴に入れて塩浴を行い、化学的に強化された結晶化ガラスを得るステップと、を含む、結晶化ガラスの製造方法。
【請求項35】
前記イオン交換浴は、質量%で、20~40%のNaNO
3
及び60~80%のKNO
3
を含み、前記塩浴強化温度は420~500℃であり、前記塩浴強化時間は3~8hである、請求項34に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項36】
前記ベースガラスを熱処理して、結晶化ガラスを得る前記ステップは、
前記ベースガラスを室温から20~60minで510~540℃に昇温させ、1回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで580~610℃に昇温させ、2回目の核形成処理を3~8h行うことと、
5~30minで650~680℃に昇温させ、結晶化処理を3~8h行うことと、
室温まで冷却して、結晶化ガラスを得ることと、を含む、請求項34に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項37】
前記ガラス組成物を混合してから溶融し、その後清澄、均質化、成形、アニールを行い、最後に切断してベースガラスを得る前記ステップでは、前記成形方法は、フロート成形、オーバーフロー成形、カレンダー成形又はスロットダウンドロー成形を含む、請求項34に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【国際調査報告】