(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】熱絶縁された凝縮器室を備えた屋外用の空気対空気ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/031 20190101AFI20241206BHJP
F24F 1/029 20190101ALI20241206BHJP
【FI】
F24F1/031
F24F1/029
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540595
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 NO2022050327
(87)【国際公開番号】W WO2023132751
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524249622
【氏名又は名称】セットコー ヴァルメ アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クレメッセン トーマス
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BA04
3L050BA05
(57)【要約】
セルフ設置型のヒートポンプ装置であって、該ヒートポンプ装置は、適切な冷却媒体を備えた閉鎖型のヒートポンプ回路に設置された凝縮器(6)における加熱のため、ファン(2)を用いて外壁(10)にある適切な開口部における二路式流路(4)を通って屋外に導かれた屋内の空気流を加熱するための、熱絶縁された屋外用の凝縮器室(5)を備え、圧縮器(9)、関連するファン(3)を備えた蒸発器(7)、凝縮器(6)、およびチョークバルブ(8)で構成され、加熱された空気は、二路式流路(4)の第2の部分内を建物内に戻るよう導かれ、室内通気口(1)によって空気流の取り込みから分離される、ヒートポンプ装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフ設置型のヒートポンプ装置であって、
該ヒートポンプ装置は、ファン(2)を用いて外壁(10)にある1つまたは複数の適切な開口部における二路式流路(4)を通って屋外に導かれた屋内の空気流を加熱するための凝縮器(6)を備えた、熱絶縁された屋外用の凝縮器室(5)を備え、
前記凝縮器(6)は、適切な冷却媒体を備えた閉鎖型のヒートポンプ回路に設置され、
該ヒートポンプ回路はさらに、圧縮器(9)、関連するファン(3)を備えた蒸発器(7)、凝縮器(6)、およびチョークバルブ(8)を備え、加熱された空気は、前記二路式流路(4)の第2の部分内を建物内に戻るよう導かれ、室内通気口(1)によって前記空気流の取り込みから分離される、ヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記二路式流路(4)は熱絶縁されており、冷気の流れと暖気の流れとの間の熱伝達が少なくなるように設計されている、請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記室内通気口(1)は、冷気の流れと暖気の流れとを分離するように設計されている、請求項1または請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記圧縮器(9)は、前記凝縮器室(5)の中に設置される、先行する請求項のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記圧縮器(9)は、前記凝縮器室(5)の外部に設置される、請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱絶縁されたハウジング/チャンバ内に屋外設置された凝縮器ユニットと、凝縮器での加熱のために空気を既存の通気口を通して建物外に導き、その後暖気を建物内に導くための関連コンポーネントと、を備えた屋外用のヒートポンプ装置、およびその設置に関する。
【0002】
ヒートポンプは、圧縮器、凝縮器、減圧弁、および蒸発器で構成される既知の装置であり、これらは低温の場所から高温の場所に熱エネルギーを移送するために用いられる。これは、適切な冷却媒体を圧縮し、続いて、冷却媒体を冷却して周囲に熱を放出する凝縮器を通過するよう導くことによって実現される。冷却媒体は凝縮して液体状態に変化する。続いて、この液体はチョークバルブを通って流出し、圧力が除去されて冷却媒体の沸点が下がることとなり、それにより冷却媒体は周囲から熱エネルギーを奪って蒸発器内で蒸発する。冷却媒体が蒸発して気体状態になると、新たなサイクルで圧縮器に入る。この方法は通常、投入電力の約3~5倍に相当する熱エネルギーを供給する。
【0003】
既知のソリューションの不利な点は、凝縮器ユニットを建物内に設置しなければならないことである。このため通常、冷却装置設置業者による設置を必要とする大きく厄介なコンポーネントとなり、その業者はシステムに対する圧力試験やガスの充填を行わなくてはならない。
【0004】
本発明の目的は、従来技術の不利な点の少なくとも1つを除去または改善すること、または少なくとも従来技術に代わる有用な代替手段を提供することである。
【0005】
この目的は、以下の説明およびそれに続く特許請求の範囲に記載された特徴によって達成される。
【0006】
本発明は、独立請求項によって定義される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態を定義する。
【0007】
本発明は、具体的には請求項1に記載のヒートポンプ装置に関する。
【0008】
このヒートポンプ装置自体は、既存かつ既知の技術を利用可能であり、認定された冷却装置設置業者または電気技師を必要としない、設置が簡単な完全なユニットとして顧客に提供され得る。これは、今日の消費者がどのようにして冷蔵庫や冷凍庫のような電化製品を購入して自身で設置しているかに例えられ得る。ヒートポンプはその全体を建物の外部に設置可能であり、空気は既存の通気口を介して建物の外に導かれ、その空気を加熱する凝縮器を通過し、その後、異なる流路に分かれた同じ通気口を介して建物の中に導かれる。別の実施形態では、空気の流入と流出とは、2つの異なる流路内を導かれ得る。
【0009】
本発明は、以下の4つの異なる部分を備えるものとして説明され得る。
a)冷気の流れと暖気の流れとを分離する室内通気口
b)流出する冷気と流入する暖気とを分離する、熱絶縁されたパイプ/流路。
c)建物の既存の屋外通気口からの、または気密性と防水性とを備えたダクトが確保される新たな通気口ソリューションからの、移行部。
d)凝縮器および関連するファンのための熱絶縁された「ハウジング」と、空気を効率よく凝縮器を通過させるよう導くための複数の流路と、を備えたヒートポンプユニット。圧縮器、減圧弁、および蒸発器は、同一ユニット内に設置されるが、蒸発器および関連するファンは、凝縮器の熱絶縁された「ハウジング」の外部に設置され得る。
【0010】
本発明は、ヒートポンプ回路全体が屋外に設置され、完全なユニットとして供給されるという点で、既存のヒートポンプソリューションとは一線を画している。建物からの空気は、既存または新規の通気口を通って屋外に導かれ、ヒートポンプにおいて加熱され、続いて、好ましくは同じ通気口を通って、屋内に戻るよう導かれる。電源は、屋内から通気口を通って屋外に供給される。そのため、このソリューションは、ほとんどの住宅および外壁に隣接する部屋において、良好に適合することとなる。
【0011】
本発明は、ヒートポンプの凝縮器ユニットのための、熱絶縁された屋外の「ハウジング」、ならびに関連コンポーネントを備えたこのヒートポンプシステムの配置とみなされ得る。本発明の目的は、ヒートポンプソリューションの購入および設置にかかる価格を低下させることである。エネルギー価格の高騰を考えると、入力電力の約3~5倍に相当する熱エネルギーを受け取るため、ヒートポンプは暖房費を削減する手っ取り早い方法である。しかし、現在のソリューションは高価であり、認定された設置業者による設置を必要とする。
【0012】
本発明により、購入価格が低下するとともにユーザがヒートポンプを自身で設置できるようになるため、ヒートポンプ技術はより多くの人々に利用可能なものとなる。本発明はまた、地方や冷却装置設置業者のいない場所における、ヒートポンプの設置を平易にする。本発明は、既存のヒートポンプ技術に基づいており、液相かつ低圧の冷却媒体が蒸発器を通過して周囲からエネルギーを吸収し、液体は気体状態に移行する。その後、気体は圧縮器において加圧された後、凝縮器を通過し、そこで気体は液体に凝縮されて熱を放出する。凝縮器の下流で、液体は圧力を下げるバルブを通過し、その後このプロセスが再び最初から始まる。ヒートポンプ技術については、その理論は既知であると推定されるため、本明細書ではこれ以上詳述しない。
【0013】
本発明によれば、屋外の熱絶縁された凝縮器室が使用されるとともに、ヒートポンプシステムの設置が平易になる。この発明により、ヒートポンプ技術は、より多くの人々に、また、標準的なヒートポンプの設置業者を見つけるのが困難であり得る場所においても、利用可能となる。そして、市場に出回っているものより大幅に低い価格となるため、小さな部屋への設置であっても経済的に有利となる。
【0014】
ヒートポンプユニットは、建物の外部に設置するための完全なシステムとして提供されるため、凝縮器は屋内に、蒸発器は屋外に設置される従来型のヒートポンプソリューションに比べてコンポーネント間の距離が短くなり、そのためガスの必要量も少なくなる。熱交換器からの凝縮水は、ユニット上の低い箇所で排出される。
【0015】
外壁にある既存の通気口を利用することにより、ヒートポンプを設置するために壁に穴を開ける必要はなくなる。外部の通気口は、金属薄板をサイズに合わせて切断して移行部を取り付けることで適合させてもよく、または、提供されている通気口ソリューションでその全体を置き換えてもよい。これにより、気密性と防水性とを備えたダクトが確保される。
【0016】
電源は、通気口/外壁の穴を通って外部に出て圧縮器およびファンへと繋がるコードを介して、屋内から取得し得る。この電源コードには、既存のコンセントに差し込むためのプラグが完備している。
【0017】
もう1つの利点は、冷気の流れと暖気の流れとを互いから分離させるよう導く新たな通気口が、ヒートポンプ用の現在の室内ソリューションに比べて寸法が小さいため、屋内において必要なスペースが少なくて済むことである。
【0018】
要するに、結果として、ヒートポンプを導入する際の家庭でのコストが大幅に削減されることになる。通常の戸建て住宅では、建物内の熱分布をより良好にするために、このようなヒートポンプユニットを複数設置することも選択肢の1つとなり得る。この新たなユニットは、外壁に隣接していて通気口のある部屋に設置されているほとんどのパネルヒータに取って代わる可能性があり、また、以前には従来型のヒートポンプソリューションの設置が経済的に妥当ではなかった、ワンルームマンションや小規模マンションでは、非常に有意義なものとなろう。
【0019】
以下において好適な実施形態の一例について説明し、添付図面においてそれを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るヒートポンプシステムを概略的に示す。
【
図2A】本発明に係るヒートポンプシステムにて使用される室内通気口を、正面からの斜視図として示す。
【
図2B】本発明に係るヒートポンプシステムにて使用される室内通気口を、裏面からの斜視図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本ヒートポンプシステムは、空気用の回路と、冷却媒体用の別個の回路とを備える。それらについて、以下に説明する。
【0022】
ここでは、空気の回路について説明する。冷気は、室内通気口1の下部に引き込まれ、断熱流路4の下半分を通過して凝縮器室5に入り込むように、ファン2を用いて凝縮器室5に吹き出される。その空気は続いて凝縮器6を通過するよう導かれ、加熱され、流路4の上部内を室内通気口1の上部に戻るよう導かれ、室内に吹き入れられる。室内通気口は、暖気の流れと冷気の流れとを分離するように設計されている。室内通気口は、圧力損失が最小限に設計されていることが好ましく、通気口におけるどの箇所の断面も、空気を凝縮器室5に出入りさせるよう導く空気流路4の断面より小さくないことが好ましい。標準的な分割型の空気対空気ヒートポンプと比べた場合の、このような室内通気口1の利点は、室内通気口1はファン2も凝縮器6も備えておらず、そのため非常にコンパクトに設計され得ることである。図示した実施形態では、通気口1は、外壁10の室内側に対向するように位置するカバー14を有して設計されている。下側の開口部および上側の開口部は、それぞれ入口12および出口13を構成する。有利な実施形態では、
図2Bに示すように、室内通気口1は、空気の入口12に粉塵/粒子フィルタを、ならびに通気口1を出る空気流を調整するためのダンパー(図示せず)を備え得る。
【0023】
高温高圧の冷却媒体は、圧縮器9から流出して凝縮器6に流入し、続いて凝縮器室5内の空気流によって冷却され、その結果、冷却媒体はエネルギーを放出し、凝縮して液相に移行する。その後、冷却媒体は減圧弁8を通過し、それにより、冷えた冷却媒体は蒸発器7に入る前に圧力が低下する。蒸発器7においては、冷却媒体よりも温度が高い外気が冷却媒体を加熱し、その結果、液体が蒸発して気体になる。ファン3は、外気を蒸発器7の表面に送る。蒸発器7を出た気体は、続いて圧縮器9に入り、このような回路が再び最初から始まる。図示した実施形態では、電源コード11が、ヒートポンプ装置から、二路式流路4の下部を通って、屋内のソケットまで配線されている。他の実施形態では、電源コードは上部の流路もしくは外壁にある他のダクトを通るように、または屋外のソケットまで、配線され得る。
【0024】
本発明は、ファン2が冷気を建物から吹き出して、熱絶縁された凝縮器室5の中に吹き入れることによって機能し、凝縮器室5には、圧縮器9、凝縮器6、減圧弁8、および蒸発器7で構成されるヒートポンプ回路に関連する凝縮器ユニット6が設置されている。空気は凝縮器6を通過する際に加熱され、加熱された空気は建物内に戻るよう導かれる。
【0025】
ヒートポンプ回路はまた、このユニットの動作温度に適合した適切な冷却媒体が充填されている必要がある。一部の実施形態では、冷却媒体のタイプはR290(プロパン)またはR32(ジフルオロメタン)であり得る。
【0026】
通気口ユニット1は、その内部において、冷気の取り込みとは異なる方向に暖気を導くように設計されている。
【0027】
外壁10の穴に設置されているパイプ部/流路4は、暖気から冷気への熱伝達を最小限に抑えながら暖気と冷気との分離を維持するように設計されている。パイプ部/流路4は、通気口の標準的な寸法に適合するように構成されているが、新たな穴に適合させた他の寸法にて設けられてもよい。一部の実施形態では、二路式流路4および/または凝縮器室5は、真空セル断熱材(約0.007W/(m*K))、Armaflex(登録商標)0.033W/(m*K)、ポリスチレン(発泡スチロール)0.026~0.04W/(m*K)、または相当する断熱性能を有する他の適した材料によって、断熱され得る。
【0028】
パイプ部4または凝縮器室5には、凝縮器室5を通る空気循環をもたらすファン2が設置されることとなる。
【0029】
凝縮器室5は、周囲への熱損失を最小限に抑えるために断熱されており、主としてメンテナンスの必要性が最小限に抑えられる材料で作られている。凝縮器室5は、凝縮器から空気への良好な熱伝達が確保され、暖気が効率的に建物に戻るよう導かれる、設計およびサイズになっている。圧縮器9は、凝縮器室5の内部に設置してもよいし、外部に設置してもよい。凝縮器室5内に設置した場合、圧縮器から周囲への熱損失は排除され得るが、騒音のため外部に設置するのが適切な場合もある。
【0030】
ヒートポンプ回路における残りのコンポーネントは、凝縮器室5の側方または凝縮器室5の上方もしくは下方のいずれにも設置され得る。ただし、それらのコンポーネントは、冷却媒体を充填する必要がないように、また、設置中にパイプ類および機器に損傷を与えることがないように、凝縮器室5と同じユニットに予め設置しておく必要があるだろう。様々な建物の正面外観に適合するように、ヒートポンプを両方の実施形態で製造することも有意義となり得る。
【0031】
ヒートポンプ回路を逆周りに運転させて、暑い日に建物の冷却を実現することも有意義となり得る。
【国際調査報告】