(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】船舶用サーマルシステム、船舶に組み込まれた船舶用サーマルシステム、船舶用サーマルシステムを備える船舶、サーマルシステムの制御方法、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20241206BHJP
B63J 2/12 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B63H21/38 A
B63J2/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541032
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 DK2023050004
(87)【国際公開番号】W WO2023131384
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524232509
【氏名又は名称】フレーセ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス フリーマン ウォルフ ニールセン
(57)【要約】
船舶用のサーマルシステムは、サーマル液回路(10)と;サーマル液回路(10)内でサーマル液を循環させるポンプシステム(11)と;複数のサーマルコンシューマ(20)であって、サーマル液回路(10)において並列に配列され、それぞれの圧力非依存制御弁(PICV)(30)と直列に配置される、複数のサーマルコンシューマ(20)と;ポンプシステム(11)を制御する制御装置(12)とを備える。差圧センサ(13)が、上記圧力非依存制御弁の臨界的であるもの(30.1a)にかかる差圧を示す差圧を検知するように適合され、上記差圧センサ(13)からの信号は、ポンプシステムを制御するための基礎として制御装置(12)によって使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用のサーマルシステムであって、
サーマル液回路(10)と;
前記サーマル液回路(10)内でサーマル液を循環させるポンプシステム(11)と;
複数のサーマルコンシューマ(20)であって、前記サーマル液回路(10)内に並列に配置され、それぞれの圧力非依存制御弁(PICVs)(30)と直列に配置される、複数のサーマルコンシューマ(20)と;
前記ポンプシステム(11)を制御するための制御装置(12)とを備える、船舶用のサーマルシステムにおいて、
前記圧力非依存制御弁のうち臨界的であるもの(30.1a)にかかる差圧を示す差圧を検知するように適合された差圧センサ(13)を特徴とし、前記差圧センサ(13)からの信号が、前記ポンプシステムを制御するための基礎として前記制御装置(12)によって使用されることを特徴とする、サーマルシステム。
【請求項2】
サーマル液が水、好ましくは淡水である、請求項1に記載のサーマルシステム。
【請求項3】
複数のサーマルコンシューマ(20.1、20.2、20.3、20.3a)のそれぞれは、圧力非依存制御弁(30.1、30.1a、30.2、30.3)と直列に配置され、サーマル液の総流量は、前記圧力非依存制御弁(30.1、30.1a、30.2、30.3)によって制御され、バランスされる、請求項1又は2に記載のサーマルシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの第1のサーマルコンシューマ(20.1)が、制御可能な圧力非依存制御弁(30.1、30.1a)と直列に配置され、好ましくは、圧力センサ及び/又は温度センサ(20.11)が、前記制御可能な圧力非依存制御弁(30.1、30.1a)を制御するための制御信号を提供するため前記第1のサーマルコンシューマ(201)に取り付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項5】
第2のサーマルコンシューマ(20.2)が、さらなる小サーマルコンシューマ(20.2a、20.2b)であって、並列及び/又は直列に配置され、それぞれの第2の圧力非依存制御弁(30.2)と共有的に直列に配置される、さらなる小サーマルコンシューマ(20.2a、20.2b)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項6】
さらなる差圧センサ(13、13a)が、それぞれの圧力非依存制御弁にかかる差圧を示すそれぞれの差圧を検知するように適合して提供され、好ましくは、前記ポンプシステムを制御するための前記制御装置は、前記それぞれの圧力非依存制御弁に要求される差圧に最も近い指示差圧を、前記ポンプシステムを制御するための基礎として使用するように適合される、請求項1~5のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項7】
中央サーマルユニット(40)と;
前記中央サーマルユニット(40)を通過する、前記サーマル液回路(10)のブランチ(10.1)と;
前記中央サーマルユニット(40)を迂回する、前記サーマル液回路(10)のバイパス(10.2)と;
前記ブランチ(10.1)を通る流量及び前記バイパス(10.2)を通る流量を制御する三方弁(10.3)と;
前記ブランチ(10.1)および前記バイパス(10.2)から下流の流れ温度を測定する温度センサ(10.4)と;
前記温度センサ(10.4)からの信号に応じて前記三方弁(10.3)を制御するためのコントローラ(10.5)とをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項8】
中央サーマルユニット(40)であって;
前記中央サーマルユニット(40)は、一次側(40.1a)及び二次側(40.1b)を備える熱交換器(40.1)を備え、前記一次側(40.1a)は、前記サーマルシステムの前記サーマル液回路(10)の一部であり、前記中央サーマルユニット(40)における前記二次側(40.1b)は、熱交換器ポンプシステム(40.2)によって第2のサーマル液を供給される、中央サーマルユニット(40)と;
前記中央サーマルユニット(40)を通過する、前記サーマル液回路(10)のブランチ(10.1)と;
前記中央サーマルユニット(40)を迂回する、前記サーマル液回路(10)のバイパス(10.2)と;
前記ブランチ(10.1)を通る流量及び前記バイパス(10.2)を通る流量を制御する三方弁(10.3)と;
前記ブランチ(10.1)および前記バイパス(10.2)から下流の流れ温度を測定する温度センサ(10.4)と;
前記温度センサ(10.4)からの信号に応じて前記熱交換器ポンプシステム(40.2)を制御するためのコントローラ(12)とをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項9】
前記コントローラ(12)は、また、少なくとも前記温度センサ(10.4)からの信号に応じて前記三方弁(10.3)を制御するように適合される、請求項8に記載のサーマルシステム。
【請求項10】
前記サーマルシステムは、冷却システムである、請求項1~9のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項11】
前記サーマルシステムは、船舶に組み込まれる、請求項1~10のいずれか一項に記載のサーマルシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のサーマルシステムを備える、船舶。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のサーマルシステムを制御する方法であって、
前記ポンプシステム(11)により、前記サーマル液回路(10)内でサーマル液を循環させることと;
前記差圧センサ(13)から、前記圧力非依存制御弁のうち臨界的であるもの(30.1a)にかかる差圧を示す信号を取得することと;
前記差圧センサ(13)から、所望の範囲内の値の信号を得るように、前記ポンプシステム(11)の動力を調整することとを含む、方法。
【請求項14】
前記サーマルシステムは、複数のそれぞれの圧力非依存制御弁(30)にかかる差圧を示すそれぞれの差圧を検知するように適合されたさらなる差圧センサ(13、13a)を備え、前記方法は、前記差圧センサのそれぞれに対して、それぞれの前記差圧センサから提供される信号の必要最小値を決定することと、それぞれの前記必要最小値に対して最低値の信号を提供する前記差圧センサのうちの1つの信号に依存して、前記ポンプシステムの動力を調節することとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの第1のサーマルコンシューマ(20.1)が、制御可能な圧力非依存制御弁(30.1、30.1a)と直列に配置され、圧力センサ及び/又は温度センサ(20.11)が前記第1のサーマルコンシューマ(201)に取り付けられ、前記方法は、前記圧力センサ及び/又は前記温度センサ(20.11)から制御信号を取得することと、前記圧力センサ及び/又は前記温度センサ(20.11)からの前記制御信号に依存して前記制御可能な圧力非依存制御弁(30.1、30.1a)を調節することと、を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記サーマルシステムは、
中央サーマルユニット(40)と;
前記中央サーマルユニット(40)を通過する、前記サーマル液回路(10)のブランチ(10.1)と;
前記中央サーマルユニット(40)を迂回する、前記サーマル液回路(10)のバイパス(10.2)と;
前記ブランチ(10.1)を通る流量及び前記バイパス(10.2)を通る流量を制御する三方弁(10.3)と;
前記ブランチ(10.1)および前記バイパス(10.2)から下流の流れ温度を測定する温度センサ(10.4)とを備え、
前記方法は、前記温度センサ(10.4)からの温度信号を取得することと、前記温度センサ(10.4)からの前記温度信号に応じて前記三方弁(10.3)を制御することとを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記サーマルシステムは、
中央サーマルユニット(40)であって;
前記中央サーマルユニット(40)は、一次側(40.1a)及び二次側(40.1b)を備える熱交換器(40.1)を備え、前記一次側(40.1a)は、前記サーマルシステムの前記サーマル液回路(10)の一部であり、前記中央サーマルユニット(40)における前記二次側(40.1b)は、熱交換器ポンプシステム(40.2)によって第2のサーマル液を供給される、中央サーマルユニット(40)と;
前記中央サーマルユニット(40)を通過する、前記サーマル液回路(10)のブランチ(10.1)と;
前記中央サーマルユニット(40)を迂回する、前記サーマル液回路(10)のバイパス(10.2)と;
前記ブランチ(10.1)を通る流量及び前記バイパス(10.2)を通る流量を制御する三方弁(10.3)と;
前記ブランチ(10.1)および前記バイパス(10.2)から下流の流れ温度を測定する温度センサ(10.4)と;
前記方法は、前記温度センサ(10.4)からの温度信号を取得することと、前記温度センサ(10.4)からの前記温度信号に応じて前記熱交換器ポンプシステム(40.2)を制御することとを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載のサーマルシステムのための制御装置(10.5、12)であって、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合される、制御装置(10.5、12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマル液回路と;サーマル液回路内でサーマル液を循環させるポンプシステムと;複数のサーマルコンシューマであって、前記サーマル液回路内に並列に配置され、それぞれの圧力非依存制御弁(PICVs)と直列に配置される、複数のサーマルコンシューマと;前記ポンプシステムを制御する制御装置とを備える船舶用のサーマルシステムに関する。本発明はさらに、サーマルシステムを備える船舶、サーマルシステムの制御方法、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の大きさの船舶では、上記技術の冷却システムなどのサーマルシステムが、多数の冷却コンシューマに冷却を提供するために使用される。
【0003】
冷却が本発明の主目的であるが、本発明は船舶のセントラルヒーティングにも使用できることに留意すべきである。
【0004】
したがって、本明細書において「サーマル(thermal)」という用語は、「冷却」または「加熱」のいずれかとして理解することができる。
【0005】
多くの場合において、船舶の電力生産の約20%がポンプの駆動に使用されていることを考慮すると、ポンプのエネルギの需要を削減することは、船舶の運航において大幅なエネルギ節約をもたらす可能性がある。
【0006】
サーマルシステム、特に冷却システムは、ポンプを使用して、例えば、冷却が必要な、すなわちサーマル又は冷却コンシューマがある船の広範囲に分枝し得る液体回路内で、サーマル液、特に冷却液体を循環させる。
【0007】
説明を簡単にするため、以下では冷却について言及する。
【0008】
冷却コンシューマには、エンジン及びその他の機械装置、エアコンなどが含まれる。
【0009】
ある状況下では、様々なコンシューマの冷却需要は比較的一定であるが、他の状況下では、例えばエンジンが部分的な負荷のみで運転されている場合など、冷却需要が通常より低くなることがある。
【0010】
導入で述べられた種類のサーマル又は冷却システムにおいて、所与のコンシューマを通して循環されるサーマル又は冷却液の量は、PICVすなわち圧力非依存制御弁(Pressure Independent Control Valve)によって制御される。このような弁は当技術分野で知られており、一般に差圧レギュレータとして知られる圧力吸収部または機構を備えており、この差圧レギュレータは、弁に加えられる差圧の一部を吸収し、それにより弁の別の部分は、差圧の残余に依存する、弁を通る少なくとも略所望の流量を供給することができ、上記残余は、弁の圧力吸収部によって調整される。したがって、残余の圧力は、弁の圧力吸収部によって一定に保たれる。
【0011】
PICVを通過する流量を適切に調整するために、PICVに一定の差圧を加える必要がある。
【0012】
したがって、先行技術のサーマルまたは冷却システムにおいて、ポンプシステムは、サーマルまたは冷却システムの全箇所で十分な差圧が得られる水準で運転される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、多くの場合、このように供給された差圧の大部分はシステム内のPIVCによって吸収されるため、サーマル又は冷却システムの全箇所に十分な差圧を確保するためにポンプシステムを既定の高レベルで運転することは、大量のエネルギ損失を伴う。
【0014】
本発明の目的は、そのようなエネルギ損失を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様では、目的は、圧力非依存制御弁のうち臨界的であるものにかかる差圧をを示す差圧を検知するように適合された差圧センサを特徴とし、当該差圧センサからの信号がポンプシステムの制御の基礎として制御装置により使用されることを特徴とする、導入で述べた種類のサーマルシステムにおいて、達成される。
【0016】
複数の圧力非依存制御弁(PICVs)に関しての「臨界的」という用語は、ポンプエネルギーが低すぎる水準まで低下した場合に差圧が低くなりすぎる危険が予想されるサーマルシステムまたは冷却システムのPICV、を意味するものと理解されるべきである。
【0017】
「要素(例えば弁)にかかる差圧」、「要素(例えば弁)に適用される差圧」などの表現は、上記要素の(直上の)上流側の圧力と上記要素の(直下の)下流側の圧力との差を意味するものと理解されるべきである。
【0018】
所与のサーマル又は冷却システムにおいていずれのPICVを臨界的PICVと見なすかを選択する際、所与のPICVの差圧の需要が別のPICVの差圧の需要とは異なり得ることを考慮すべきであることは理解されたい。
【0019】
差圧センサによって検知又は測定される差圧は、サーマルコンシューマと、それに取り付けられたPICVとにかかる差圧を合わせたものであってもよい。このような場合、測定される差圧はPICVにかかる差圧を示すものである。すなわち、サーマルクライアントの流動抵抗が少なくとも推定値で既知である場合、測定される差圧、及びサーマルコンシューマの流動抵抗の既知又は推定値に基づき、当該PICVにかかる差圧は、指示差圧として算出され得るか、概算され得るからである。
【0020】
「ポンプシステム」という用語に関して、ポンプシステムは、当技術分野で知られているように、単一のポンプで構成されていてもよいし、並列または直列に作動する、より多くのポンプで構成されていてもよいことに留意されたい。
【0021】
一実施形態では、サーマル液は水、好ましくは淡水である。ここで「淡水」とは、船舶が通常航行する塩分を含んだ水とは対照的であるものと理解されたい。したがって、「淡水」という用語は、通常、サーマル又は冷却システムの循環液に添加される腐食防止剤などの添加剤を排除するものとして理解されるべきではない。
【0022】
一実施形態では、サーマルコンシューマのそれぞれは、圧力非依存制御弁と直列に配置され、それによりサーマル液の総流量は、圧力非依存制御弁によって制御され、バランスされる。これにより、システムの全箇所でサーマルまたは冷却液の優れた流量制御が可能になる。
【0023】
一実施形態では、少なくとも1つの第1のサーマルコンシューマが、制御可能な圧力非依存制御弁と直列に配置され、好ましくは、圧力及び/又は温度センサが上記第1のサーマルコンシューマに取り付けられ、制御可能な圧力非依存制御弁を制御するための制御信号を提供する。制御可能な圧力非依存制御弁は、当技術分野において公知であり、制御要素によってその位置が制御される弁体を備えてもよく、制御要素それ自体は、例えば温度センサからの入力を受信することができ、それにより制御要素はPICVを通る流量、すなわちPICVに取り付けられたサーマル又は冷却コンシューマを通る流量を調節するために弁体の位置を調節し、それにより、センサによって検出される温度は、実質的に一定に又は所与のスキームに応じて保持され得る。また、制御要素は圧力センサからの入力を受信することも可能であり、又はPICVが外部信号、例えばモーターからの例えば運転信号や、冷却若しくは加熱を必要とする個々のコンシューマからの別の外部信号によって制御されることも可能である。
【0024】
温度に基づく制御可能なPICVの制御は、特定の温度の代替または補足として、温度差に基づいて行うことができる。したがって、例えばそれぞれのコンシューマをまたぐ温度差が、制御可能なPICVを制御するための温度差信号を提供するために測定され得る、制御のための温度測定値は、特定の温度又は温度差のいずれにせよ、厳密な意味でのサーマル液から取得されてもよいし、サーマル液回路のサーマル液が第一側を流れている熱交換器の、第二側の流体から取得されても良い。
【0025】
特定の温度又は温度差のいずれにせよ、温度に基づいてPICVを制御することは、例えば運転信号に基づいて制御することと組み合わせることができる。そのような場合では、それぞれのコンシューマとしての、例えばエンジンなどの機器の1つの始動時に、温度信号の受信に先立って運転信号を受信するときにPICVを完全に開くように調節することが可能である。これにより、機器の始動時の急速な熱の発生に対する冷却/サーマル液からの温度測定の応答が遅いために冷却が少なすぎることによる機器のトリップを回避することができる。
【0026】
一実施形態では、第2のサーマルコンシューマは、さらなる小(minor)サーマルコンシューマであって、並列又は直列に配置され、それぞれの第2の圧力非依存制御弁と共有的に直列に配置される、さらなる小サーマルコンシューマを備える。これにより、サーマルシステム内のPICVの数を、全てのコンシューマが独自のPICVに取り付けられているシステムと比較して減少させることができる。
【0027】
一実施形態では、さらなる差圧センサが、それぞれの圧力非依存制御弁の差圧を示すそれぞれの差圧を検知するように適合して提供される。特に、各PICVがそれぞれの差圧センサを備えているか、または差圧センサが取り付けられていることが予見される。これは、例えば、どのPICVが臨界的PICVであるかを決定することが困難または不可能なサーマルシステムにおいて適切である場合がある。これは、例えば、あるサーマルコンシューマが時々停止され、実質的にサーマルシステム(のアクティブな部分)から除去されるサーマルシステムにおける場合である。そのような実施形態では、ポンプシステムを制御するための制御装置は、ポンプシステムを制御するための基礎として、それぞれの圧力非依存制御弁に要求される差圧に最も近い指示差圧を使用するように適合されてもよい。したがって、制御装置は、差圧が測定され、計算され、又は指示される複数のPICV(PICVs)の差圧要求のの情報を有し、これらのPICVsのそれぞれに対して、差圧要求と、それぞれのPICVの測定、計算、指示差圧とを比較して、測定、計算又は指示差圧と、差圧要求との差が、どのPICVで最小か決定し、そして、そのPICVにかかる差圧を、ポンプシステムを制御するための基礎として使用することが望ましい。
【0028】
圧力測定は、内蔵のPT-プラグを介して、または恒久的に取り付けられた圧力(差)センサなどを介してPICVに組み込むことができる。このような圧力センサからの出力信号は、個別に制御装置に転送されてもよく、PICVのアクチュエータに組み込まれ、そこから制御装置に転送されてもよい。この点で、通信ネットワーク(MODBUS(登録商標)など)を使用することができる。このように、PICV及び/又はそれぞれのアクチュエータは、ポンプレートを制御するネットワークを構成することができる。
【0029】
一実施形態において、サーマルシステムは、中央サーマルユニットと;中央サーマルユニットを通過するサーマル液回路のブランチと;中央サーマルユニットを迂回するサーマル液回路のバイパスと、上記ブランチを通過する流量及び上記バイパスを通過する流量を制御する三方弁と;上記ブランチ及び上記バイパスから下流の流れ温度を測定する温度センサと;温度センサからの信号に応じて上記三方弁を制御するコントローラとをさらに備える。中央サーマルユニットは、サーマルシステムが冷却システムであるか加熱システムであるかに応じて、より低温またはより高温のサーマル液を供給することができ、三方弁によって、中央サーマルユニットからの液はサーマル液回路を流れるサーマル液に混合され、サーマル液回路における所望の流れ温度を得ることができる。
【0030】
別の実施形態では、サーマルシステムは、中央サーマルユニットであって、中央サーマルユニットは、一次側及び二次側を備える熱交換器を備え、一次側は、サーマルシステムのサーマル液回路の一部であり、中央サーマルユニットの二次側は、熱交換器ポンプシステムによって第2のサーマル液が供給される、中央サーマルユニットと;中央サーマルユニットを通過する、サーマル液回路のブランチと;中央サーマルユニットを迂回する、サーマル液回路のバイパスと;上記ブランチを通る流量及び上記バイパスを通る流量を制御する三方弁と;上記ブランチ及び上記バイパスから下流の流れ温度を測定する温度センサと;温度センサからの信号に応答して上記熱交換器のポンプシステムを制御するコントローラとをさらに備える。この実施形態では中央サーマルユニットは、サーマルシステムが冷却システムか加熱システムかに応じて、より低温又はより高温のサーマル液を提供することができ、熱交換器のポンプシステムに供給されるエネルギを調節し、ひいては熱交換器のポンプシステムの運転レベルを調節することで熱交換器における伝達される熱量を調節することができ、それにより、サーマル液回路における所望の流れ温度に近づくように、サーマル液回路における流れ温度を調節することができる。
【0031】
さらなる実施形態では、コントローラは、少なくとも温度センサからの信号に応じて上記三方弁を制御するように適合される。これにより、例えば、中央サーマルユニットが伝達できる最小量に対して、サーマル液回路に導入される冷却又は加熱の量を減少させることが可能である。
【0032】
第2の態様では、本発明によるサーマルシステムを備える船舶によって、目的が達成される。
【0033】
第3の態様では、上記で概説された本発明によるサーマルシステムを制御する方法により、発明が得られ、当該発明は、ポンプシステムによりサーマル液回路内でサーマル液を循環させること;差圧センサから圧力非依存制御弁のうち臨界的であるものにかかる差圧を示す信号を取得すること;差圧センサから所望の範囲内の値の信号を取得するようにポンプシステムの動力を調節することを含む。この結果、エネルギ損失を減らすことができる。
【0034】
一実施形態では、サーマルシステムは、それぞれの圧力非依存制御弁にかかる差圧を示すそれぞれの差圧を検知するように適合されたさらなる差圧センサを備え、上記方法は、差圧センサのそれぞれに対して、それぞれの差圧センサによって提供される信号の必要最小値を決定することと、それぞれの必要最小値に対する最低値の信号を提供する差圧センサの1つの信号に応じて、ポンプシステムの動力を調節することを含む。そのような実施形態では、ポンプシステムを制御する制御デバイスは、それぞれの圧力非依存制御弁の要求差圧に最も近い指示差圧をポンプシステムを制御する基礎として使用するように適合され得る。したがって、制御装置は、差圧が測定、計算、又は指示される複数のPICVの、差圧要求の情報を有し、これらの複数のPICVのそれぞれに対して、差圧要求と、それぞれのPICVの測定、計算、指示差圧とを比較して測定、計算、又は指示差圧と、差圧要求との差が、どのPICVで最小かを決定し、そして、そのPICVにかかる差圧を、ポンプシステムを制御するための基礎として使用することが望ましい。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1つの第1のサーマルコンシューマは、制御可能な圧力非依存制御弁と直列に配置され、圧力及び/又は温度センサは、上記第1のサーマルコンシューマに取り付けられ、上記方法は、圧力及び/又は温度センサからの制御信号を取得することと、上記圧力及び/又は温度センサからの上記制御信号に依存して上記制御可能な圧力非依存制御弁を調節することとを含む。そのような実施形態では、センサによって検知される上記温度は、実質的に一定に又は所与のスキームに応じて保持され得る。
【0036】
一実施形態では、サーマルシステムは、中央サーマルユニットと;中央サーマルユニットを通過する、サーマル液回路のブランチと;中央サーマルユニットを迂回する、サーマル液回路のバイパスと;上記ブランチを通る流量及び上記バイパスを通る流量を制御する三方弁と;上記ブランチ及び上記バイパスから下流の流れ温度を測定する温度センサとを備え、上記方法は、上記温度センサからの温度信号を取得することと、温度センサからの温度信号に応じて上記三方弁を制御することとを含む。中央サーマルユニットは、サーマルシステムが冷却システムか加熱システムかに応じて、より低温又は高温のサーマル液を供給することができ、三方弁によって中央サーマルユニットからの液は、サーマル液回路を流れるサーマル液に混合され、サーマル液回路において所望の流れ温度を得ることができる。
【0037】
一実施形態では、サーマルシステムは、中央サーマルユニットであって;上記中央サーマルユニットは、一次側及び二次側を備える熱交換器を備え、一次側は、サーマルシステムのサーマル液回路の一部であり、中央サーマルユニットの二次側は、熱交換器のポンプシステムによって第2のサーマル液を供給される、中央サーマルユニットと;中央サーマルユニットを通過する、サーマル液回路のブランチと;中央サーマルユニットを迂回する、サーマル液回路のバイパスと;上記ブランチを通る流量及び上記バイパスを通る流量を制御する三方弁と;上記ブランチ及び上記バイパスから下流の流れ温度を測定する温度センサとを備え、上記方法は、上記温度センサからの温度信号を取得することと、上記温度センサからの上記温度信号に応じて熱交換器を制御することとを含む。この実施形態では、中央サーマルユニットは、サーマルシステムが冷却システムか加熱システムかに応じて、より低温又はより高温のサーマル液を供給することができ、熱交換器のポンプシステムに供給されるエネルギを調節し、それにより熱交換器のポンプシステムの運転レベルを調節することにより、熱交換器における伝達される熱量を調節し、それにより、上記サーマル液回路の流れ温度が、上記サーマル液回路において所望の流れ温度に近づくように調節され得る。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、サーマルシステムの制御装置を含み、制御装置は、上述の方法を実行するように適合される。
【0039】
本発明の一態様を参照して説明した実施形態および利点は、特に断らない限り、他の態様にも適用される。
【0040】
以下では、以下の概略図を参照した実施形態の例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明による冷却システムの構成図である。
【
図1a】
図1aは、本発明による冷却システムの代替実施形態を示す図である。
【
図2】
図2は、圧力/流量様式におけるPICVの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、船舶に組み込まれるサーマルシステム、特に冷却システムを示す。
【0043】
システムは、冷却液回路10と;本実施例では単一のポンプ記号によって表される、冷却液回路10内で冷却液を循環させるためのポンプシステム11と;複数の冷却コンシューマ20であって、上記冷却コンシューマ20は、上記冷却液回路10内に並列に配置され、上記冷却コンシューマ20は、それぞれの圧力非依存制御弁(PICVs)30と直列に配置される、冷却コンシューマ20と;ポンプシステム11を制御するための制御装置12とを備える。
【0044】
システムは、圧力非依存制御弁30のうち臨界的であるもの30.1aにかかる差圧を示す差圧を検知するように適合された差圧センサ13を備える。
【0045】
冷却液回路10内で循環する冷却液は、本実施形態では、通常の防錆剤等を添加した淡水である。
【0046】
本実施形態では、冷却コンシューマ20のそれぞれは、圧力非依存制御弁30と直列に配置され、それにより冷却液の総流量は、圧力非依存制御弁30によって制御され、バランスされる。
【0047】
一群の第1の冷却コンシューマ20.1は、制御可能な第1の圧力非依存制御弁30.1と直列にそれぞれ配置されている。制御可能な第1の圧力非依存制御弁30.1を制御するための制御信号を供給する圧力センサ及び/又は温度センサ20.11が、各第1の冷却コンシューマ20.1にそれぞれ取り付けられている。
【0048】
本実施形態では、第2の冷却コンシューマ20.2は、さらなる(本例においては2つ示されている)小冷却コンシューマ20.2aであって、上記小冷却コンシューマが、それぞれの圧力非依存制御弁30.2と、共有的に直列に配置されるように、並列に配置される、さらなる小冷却コンシューマ20.2aを備える。
【0049】
本実施形態では、第3の圧力非依存制御弁30.3とそれぞれ直列である、一群の第3の冷却コンシューマ20.3が、低い冷却水温に対する需要が少ない第4の冷却コンシューマ20.3aと共有的に直列に配置されている。したがって、第4の冷却コンシューマ20.3aを通る流量は、第3の冷却コンシューマ20.3を通る合流の総量となる。
【0050】
冷却システムは、中央冷却ユニット40をさらに備える。
【0051】
冷却液回路のブランチ10.1が、中央冷却ユニット40を通過しており、冷却液回路10のバイパス10.2が、中央冷却ユニット40を迂回している。三方弁10.3が、ブランチ10.1を通る流量及びバイパス10.2を通る流量を制御している。温度センサ10.4が、ブランチ10.1およびバイパス10.2から下流の温度を測定している。コントローラ10.5が、温度センサ10.4からの信号に応答して三方弁10.3を制御するために設けられている。
【0052】
中央冷却ユニット40は、冷却液回路10内を循環する冷却液と比較して、特に三方弁10.3に入る冷却液と比較してより低温の冷却液を供給し、三方弁10.3によって、中央冷却ユニット40からのより低温の冷却液が、冷却液回路10内を流れる冷却液に混合されることで、冷却液回路10における所望の流れ温度を温度センサ10.4での測定で取得することができる。
【0053】
中央冷却ユニット40は、一次側40.1a及び二次側を備える熱交換器40.1を備える。一次側40.1aは、冷却システムの冷却液回路10の一部である。中央冷却ユニット40の二次側40.1bは、熱交換器ポンプシステム40.2により第2のサーマル液が供給されている。第2のサーマル液は、図示の実施形態では、船舶が航行している周囲の海水から海水取入口40.3を通して取り込まれた海水であり、熱交換器ポンプシステム40.2によって熱交換器40.1の二次側40.1bを通して循環され、海水排出口40.4を通して周囲の海水に排出される。
【0054】
一実施形態では、コントローラ、例えば制御装置12は、温度センサ10.4からの信号に応じて、熱交換ポンプシステム40.2を制御するように適合されている。
【0055】
そのような実施形態では、中央冷却ユニット40は、三方弁10.3を調節して、バイパス10.2を遮断して熱交換器40.1に全ての水を通すことにより、冷却液回路で循環する水の全量を冷却することができる。熱交換器ポンプシステム40.2に供給されるエネルギを調節し、それにより熱交換器ポンプシステム40.2の運転レベルを調節することによって、熱交換器内で伝達される熱量を調節し、それによって、所望の流れ温度に近似させるように、温度センサ10.4で示されるサーマル液回路の流れ温度を調節することができる。
【0056】
さらに、そのような実施形態では、制御装置12は、少なくとも温度センサ10.4からの信号に応じて、三方弁10.3も制御するか、またはコントローラ10.5を作動させるように適合することができる。これにより、例えば、中央サーマルユニット40が伝達可能な最小量に対して、サーマル液回路10に導入される冷却量を減少させることが可能となる。
【0057】
上に示したように、冷却コンシューマ20はそれぞれ圧力非依存制御弁30と直列に配置され、それによって冷却液回路10内の冷却液の流量は圧力非依存制御弁30によって制御され、バランスされる。
【0058】
圧力非依存制御弁30は、それぞれの圧力非依存制御弁30に意図される流量の制御のために一定の最小差圧をそれぞれ必要とする。この差圧は、ポンプシステム11により、冷却液回路10全体に供給される。
【0059】
ポンプシステム11に供給される動力を、冷却液回路10の全箇所の十分な差圧を確保する最低限度に減らすため、臨界的圧力非依存制御弁30.1aに加えられる差圧の指示が差圧センサ13により得られ、ポンプシステム11は、臨界的圧力非依存制御弁30.1aに加えられる差圧の上記指示に従って制御装置12により調節される。これにより、ポンプシステムが既定の動力で常時稼働するシステムと比べて、かなりのエネルギ節約を達成できる。
【0060】
図1aでは、代替実施形態が示されており、差圧センサ13aによって例示されるように、さらなる差圧センサが、それぞれの圧力非依存制御弁30にかかる差圧を示すそれぞれの差圧を検知するように適合されて提供され、ポンプシステム11を制御するための制御装置12は、ポンプシステムを制御するための基礎として、それぞれの圧力非依存制御弁に要求される差圧に最も近い指示差圧を使用するように適合されている。特に、各圧力非依存制御弁30は、それぞれの差圧センサを備えるか、又は差圧センサが取り付けられていることが予見される。
【0061】
図2は、冷却液回路10において、それぞれの圧力非依存制御弁30によって略一定の流量がどのように供給されるかを示す(すべての圧力非依存制御弁30が同じ流量を供給することを意図されていると仮定する)。P
minは、臨界的圧力非依存制御弁30.1aによって必要とされる最小差圧を示す。ポンプシステム11は、差圧センサ13が示す圧力P
cを臨界圧力非依存制御弁30.1aに提供する速さで運転するように調整される。冷却液回路10内の一般的な圧力損失のため、最低差圧は臨界圧力非依存制御弁30.1aの近傍に存在し、冷却液回路10の残りの部分全体では、
図2にP
systで示されるように、より高い差圧が存在する。当業者には周知のように、それぞれの圧力非依存制御弁30の差圧レギュレータは、
図2に示されるような所望の流量を提供するために、それぞれの圧力非依存制御弁30で余分な圧力を吸収する。
【国際調査報告】