(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電気自動車充電ステーションにおける故障電流検出用の電気回路
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20241206BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241206BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20241206BHJP
【FI】
G01R15/18 B
G01R31/52
B60L53/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549573
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081177
(87)【国際公開番号】W WO2023083831
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524173475
【氏名又は名称】イーノヴェイツ エンフェー
【氏名又は名称原語表記】eNovates NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスポール,スティーン
【テーマコード(参考)】
2G014
2G025
5H125
【Fターム(参考)】
2G014AA16
2G014AA19
2G014AB35
2G014AB49
2G025AB14
2G025AC01
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BE02
5H125CD04
5H125EE61
5H125FF14
(57)【要約】
電気自動車充電ステーションの故障電流を検出するための電気回路。電気回路は、ブリント基板に沿って電気自動車を充電および/または放電するための充電電流を流すための少なくとも2つの導電性トラックを備えるブリント基板を備える。電気回路は、少なくとも2つの導電性トラックの故障電流を検出するためのフラックスゲート電流センサであって、フラックスゲート電流センサは、磁気コアの貫通孔を通過する少なくとも2つの導電性トラックの周囲に配置された貫通孔を有する磁気コアを備える、フラックスゲート電流センサをさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車充電ステーションの故障電流を検出するための電気回路(100)であって、
ブリント基板(110)であって、前記ブリント基板に沿って前記電気自動車を充電および/または放電するための充電電流を流すための少なくとも2つの導電性トラック(111)を備える、ブリント基板(110)と、
前記少なくとも2つの導電性トラックの故障電流を検出するためのフラックスゲート電流センサ(120)であって、前記フラックスゲート電流センサ(120)は、前記少なくとも2つの導電性トラックの周囲に配置された貫通孔(122)を有する磁気コア(121)を備え、前記少なくとも2つの導電性トラックは、前記磁気コアの前記貫通孔を通過する、フラックスゲート電流センサ(120)と
を備え、
前記貫通孔の断面は、前記ブリント基板(110)と前記磁気コア(121)との間の距離が、前記磁気コアの内側限界に沿って実質的に等しくなるように形作られている、電気回路(100)。
【請求項2】
前記貫通孔の断面は、実質的に楕円形、スタジアム形、または長方形に形作られていることを特徴とする請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記磁気コア(121)は、前記貫通孔(122)の周囲に配置された単一片の連続磁性材料を備える、請求項1または2に記載の電気回路。
【請求項4】
前記ブリント基板(110)の一部分は、前記フラックスゲート電流センサが前記ブリント基板の前記一部分の上にわたって指定された位置まで移動できるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項5】
前記フラックスゲート電流センサは、前記磁気コアを応力から保護するように構成された、前記磁気コア(121)の少なくとも一部を囲む保護ハウジング(123)をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項6】
前記フラックスゲート電流センサ(120)およびブリント基板(110)は、前記フラックスゲート電流センサを前記ブリント基板に取り付けるための少なくとも1つの取り付け手段(124、125)を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項7】
前記フラックスゲート電流センサは、前記磁気コア(121)の周囲に巻かれた少なくとも2つの励磁巻線(127、128)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項8】
前記少なくとも2つの励磁巻線(127、128)は、交互に配置される、請求項7に記載の電気回路。
【請求項9】
前記フラックスゲート電流センサは、前記少なくとも2つの導電性トラック内の電流によって生成される磁場を前記磁気コア内に実質的に均一に分布させるように構成された、前記磁気コア(121)および前記少なくとも2つの励磁巻線(127、128)を部分的に囲む磁気シールド(126)をさらに備える、請求項7または8に記載の電気回路。
【請求項10】
前記フラックスゲート電流センサは、前記少なくとも2つの励磁巻線(127、128)のうちの1つを逆極性で実質的に等しい大きさの励磁電圧で交互に駆動するように構成された駆動回路をさらに備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項11】
前記駆動回路は、前記少なくとも2つの導電性トラック内の故障電流の存在に基づいて出力信号を生成するようにさらに構成される、請求項10に記載の電気回路。
【請求項12】
前記駆動回路は、前記ブリント基板上にさらに集積される、請求項10または11に記載の電気回路。
【請求項13】
前記少なくとも2つの導電性トラック(111)内の前記故障電流を検出すると、前記少なくとも2つの導電性トラック(111)内の前記充電電流を遮断するように構成されたスイッチ(140)をさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の故障電流を検出するための電気回路(100)を備える電気自動車充電ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気自動車充電ステーションにおける故障電流を検出するための電気回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
残留電流デバイス(RCD)は、漏れ電流(すなわち、故障電流)が検出されたときに電気回路を遮断するように設計された保護デバイスである。RCDの動作は、電気回路の活線の流出電流と中性線の帰還電流との間のバランスを測定することに依存している。
【0003】
さらに、典型的なRCDは、磁場の存在を検出するために、変圧器の原理に依存している。平衡電気回路では、電源ラインの各々の導体によって生成される磁場は、電流の和がゼロになると互いに打ち消し合う。しかしながら、故障電流が存在する場合、供給ライン内のすべての電流のベクトル和は、ゼロにはならず、供給ラインの周囲に検出可能な磁場が発生する。
【0004】
安全上の理由から、RCDは、電気自動車(EV)充電ステーションにも設置され、潜在的な安全上の問題および物的損害から使用者を保護する。タイプAのRCDは、AC故障を検出できるが、DC成分による故障電流の検出能力は限られている。さらに、特定の閾値電流(例えば、6mA)を超えるDC成分を含む故障電流は、タイプAのRCDの機能を損なう可能性がある。EVの充電では、ACで充電する場合でも高調波またはDC残留電流が誘発される可能性があるため、タイプAのRCDを使用するEV充電ステーションでは、残留直流電流検出デバイス(RDC-DD)の追加が必須となる場合がある。
【0005】
このようなRDC-DDは、特定の最小閾値電流(例えば、6mA)を超えるDC障害を検出するように設計されており、タイプAのRCDが損傷する前に回路を遮断することができる。あるいはまた、AC障害とDC障害の両方を検出するタイプBのRCDを使用することもできる。しかしながら、これは、RDC-DDと組み合わせたタイプAのRCDと比較して、かなり高価になる可能性がある。
【0006】
典型的なRDC-DDソリューションは、専用のタイプAのRCDと共に充電ステーションのハウジング内部に設置される。あるいはまた、RCDは、充電ステーションに電力を供給する配電盤内部に設置することもできる。現在のRDC-DDソリューションの問題は、充電ステーションに設置するために必要な配線が膨大であることである。配電盤からの電力導体は、少なくとも充電ステーションコントローラー、RDC-DD、およびEV充電ソケットに接続する必要がある。この配線は、訓練を受けた専門家が現場で行う必要があるため、設置コストが大幅に高くなる可能性がある。もう1つの課題は、現在のRDC-DDソリューションが限定された分解能、精度、直線性と、大きなノイズを有する可能性があることである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、とりわけ、電気自動車充電ステーション内の配線を削減する故障電流を検出するための電気回路を提供することによって、上記の課題および問題を少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、電気自動車充電ステーションにおける故障電流を検出するための電気回路によって達成される。電気回路は、ブリント基板に沿って電気自動車を充電および/または放電するための充電電流を流すための少なくとも2つの導電性トラックを備えるブリント基板を備える。電気回路は、少なくとも2つの導電性トラックの故障電流を検出するためのフラックスゲート電流センサであって、フラックスゲート電流センサは、磁気コアの貫通孔を通過する少なくとも2つの導電性トラックの周囲に配置された貫通孔を有する磁気コアを備える、フラックスゲート電流センサをさらに備える。
【0009】
言い換えれば、フラックスゲート電流センサは、ブリント基板上に設けられた導電性トラックの周囲に配置される。本出願の文脈において、「故障電流」という用語は、少なくとも2つの導電性トラックを介した、ある閾値を超える意図されないおよび/または制御されない電流の流れ(例えば、残留電流、漏れ電流、または短絡電流)を指す。
【0010】
少なくとも2つの導電性トラックは、例えばブリント基板内またはブリント基板の表面上に含まれる導電性材料のストリップとして、電気自動車充電ステーションのブリント基板上またはブリント基板内に設けられる。電荷は、充電電流の形態で少なくとも2つの導電性トラックに沿って流すことができる。充電電流は、電気自動車充電ステーションに接続された電気自動車に供給することができる。そして、充電電流は、電気自動車を充電するために導電性トラックに沿って流れる。充電電流は、電力源(例えば、地域の送電網、電力網、太陽電池パネル設備、またはエネルギー貯蔵システム)によって電気自動車充電ステーションに供給される交流(AC)または直流(DC)であり得る。充電電流はまた、逆方向に(すなわち、電気自動車から電力源に向かって)流れ、それによって少なくとも2つの導電性トラックに沿って電気自動車を放電することもできる。ブリント基板は、電気自動車充電ステーションの動作に関連する1つまたは複数の機能を制御する(例えば、充電プロセスを監視および/または制御する)ようにさらに構成することもできるが、その必要はない。
【0011】
少なくとも2つの導電性トラックに加えて、当該少なくとも2つの導電性トラック内の故障電流を検出するために、フラックスゲート電流センサがブリント基板上に統合される。さらに、フラックスゲート電流センサは、貫通孔を備えた磁気コアを含む。貫通孔の断面は、好ましくは、実質的に楕円形、スタジアム形、または長方形として形作ることができる。そして、フラックスゲート電流センサは、磁気コアが少なくとも2つの導電性トラックの周囲に配置されるようにブリント基板上に配置される。言い換えれば、少なくとも2つの導電性トラックは、磁気コアの貫通孔を通過する。したがって、フラックスゲート電流センサ(特に、磁気コア)は、当該少なくとも2つの導電性トラックを含むブリント基板表面の一部の周囲に配置することもできる。貫通孔の断面は、ブリント基板と磁気コアとの間の距離が、磁気コアの内側限界に沿って実質的に等しくなるように形作られている。これにより、磁気コアが故障電流による磁場の変化を検出するために少なくとも2つの導電性トラックの十分近くに配置されるため、故障電流を検出する信頼性を低下させることなく、少なくとも2つの導電性トラックの周囲に配置されたフラックスゲート電流センサによって故障電流の存在を検出することができる。これには、回路を実質的にコンパクトにすることができるため、充電ステーションに設置するときに限られた体積しか占めないという利点がある。
【0012】
フラックスゲート電流センサは、少なくとも2つの導電性トラックに沿って(すなわち、磁気コアの貫通孔を通って)流れる故障電流を、当該故障電流による磁気コア内の磁場バイアスに基づいて検出するように構成されている。フラックスゲート電流センサをブリント基板に統合することで、少なくとも2つの導電性トラックをブリント基板上またはブリント基板内に統合できるようになる。したがって、追加の配線または接続なしで、少なくとも2つの導電性トラックで故障電流を検出できる。したがって、利点は、電気自動車充電ステーション内部の配線接続の数を減らすことができることである。さらなる利点は、電気自動車充電ステーションの信頼性と安全性が、主電流経路の配線内の接合部(例えば、はんだ付け接続およびネジ止め接続)の数を減らすことによって向上できることである。そこで、接合部は一般的に、欠陥、過熱、および火災が発生する可能性がある箇所である。さらなる利点は、電気自動車充電ステーションの設置コストを削減できることである。さらなる利点は、フラックスゲート電流センサは、比較的高い直線性、高精度、高感度、低ドリフト、低ノイズを備えているため、故障電流をより確実に検出できることである。
【0013】
一実施形態によれば、磁気コアは、貫通孔の周囲に配置された単一片の連続磁性材料を備えることができる。言い換えれば、磁性材料の端部が結合して、貫通孔の周囲に配置された無限ループを形成することができる。磁性材料は、好ましくは、例えば約1.26E-02H/m~約1.88H/m(好ましくは、約1.26E-01H/m)の実質的に高い透磁率を有する材料(特に、強磁性材料)とすることができる。さらなる利点は、単一片の連続磁性材料内の磁場が、少なくとも2つの導電性トラック内の電流によって生成される磁力線を実質的に含むことができるため、故障電流をより正確に検出できることである。
【0014】
一実施形態によれば、ブリント基板の一部分は、フラックスゲート電流センサがブリント基板の一部分の上にわたって指定された位置まで移動できるように構成することができる。ブリント基板の一部分は、例えば、当該一部分がフラックスゲート電流センサの貫通孔を通過できるように十分に幅が狭く、それによってフラックスゲート電流センサを指定された位置に配置することができる。これにより、電気回路の組み立ておよび/または製造中に磁気コアにかかる機械的な力を低減することができる。さらなる利点は、磁気コアの特性(特に、透磁率)が組み立てまたは製造中の機械的な力によって変化しないため、フラックスゲート電流センサの動作の信頼性がより高くなることである。
【0015】
一実施形態によれば、フラックスゲート電流センサは、磁気コアを応力から保護するように構成された、磁気コアの少なくとも一部を囲む保護ハウジングをさらに備えることができる。保護ハウジングは、磁気コアの外面、内面、および/または少なくとも1つの側面を覆うことができる。保護ハウジングは、機械的応力(例えば、圧縮、伸長、または曲げ)から封入された磁気コアを保護するために、実質的に剛性の高い材料で作ることができる。保護ハウジングは、エネルギー吸収材料(例えば、ゴムまたは発泡体)で作られた充填材をさらに含んでもよい。保護ハウジングはさらに、磁気コアを熱応力から保護するように構成する(例えば、断熱材料で作られた、および/または断熱層によって作られた保護ハウジングとする)こともできる。さらなる利点は、周囲温度の変化などの圧力によって磁気コアの特性(特に、透磁率)が変化しないため、フラックスゲート電流センサの動作の信頼性がより高くなることである。さらなる利点は、保護ハウジングが、囲まれた少なくとも2つの導電性トラックから磁気コアを電気的に絶縁できるため、フラックスゲート電流センサをブリント基板上に実質的にコンパクトに統合できることである。
【0016】
一実施形態によれば、フラックスゲート電流センサおよびブリント基板は、フラックスゲート電流センサをブリント基板に取り付けるための少なくとも1つの取り付け手段を備えることができる。したがって、フラックスゲート電流センサは、ブリント基板に(特に、指定された位置に)取り付けることができる。フラックスゲート電流センサの少なくとも1つの取り付け手段は、好ましくは、保護ハウジング内に(例えば、当該保護ハウジングの両端に、当該保護ハウジングの内面上に、および/または当該保護ハウジングから延びる取り付け脚部に沿って)含まれ得る。ブリント基板は、フラックスゲート電流センサの少なくとも1つの取り付け手段を受け入れるように構成された、少なくとも1つの対応する取り付け手段を備えることができる。取り付け手段により、磁気コアの位置が導体に対して固定され、故障電流の効率的で再現性のある測定が可能になる。
【0017】
一実施形態によれば、フラックスゲート電流センサは、磁気コアの周囲に巻かれた少なくとも2つの励磁巻線をさらに備えることができる。言い換えれば、少なくとも2つの励磁巻線は、磁気コアの周囲にコイルを形成することができる。好ましくは、少なくとも2つの励磁巻線は、少なくとも2つの巻線が規則的なパターンで互いに連続するように交互に配置される。少なくとも2つの励磁巻線は、磁気コアが飽和状態になるように、または飽和状態から外れるように駆動されるように、励磁信号(例えば、電圧信号または電流信号)を流すように構成することができる。
【0018】
一実施形態によれば、フラックスゲート電流センサは、少なくとも2つの導電性トラック内の電流によって生成される磁場を磁気コア内に実質的に均一に分布させるように構成された、磁気コアおよび少なくとも2つの励磁巻線を部分的に囲む磁気シールドをさらに備えることができる。磁気シールドは、磁気コアの外面、内面、および/または少なくとも1つの側面の周囲に配置することができる。磁気コアを部分的に囲むことにより、磁気短絡が防止される。そうすることで、少なくとも2つの導電性トラック内の流出充電電流および帰還充電電流によって生成された、磁気コア内の検出された磁場は、特に当該少なくとも2つの導電性トラックがフラックスゲート電流センサの貫通孔内に実質的に非対称に分布している場合、故障電流が存在しない場合には、実質的にゼロになり得る。また、磁気シールドは、ブリント基板上および/または電気自動車充電ステーション内に含まれる他の電気的構成要素の磁気干渉を低減することができる。
【0019】
一実施形態によれば、フラックスゲート電流センサは、少なくとも2つの励磁巻線のうちの1つを、逆極性で実質的に等しい大きさの励磁電圧で交互に駆動するように構成された駆動回路をさらに備えることができる。駆動回路は、例えば、とりわけ、少なくとも2つの励磁巻線内で励磁信号を生成し、応答信号を測定することによって、フラックスゲート電流センサを動作させるように構成された複数の電子的構成要素を含むことができる。励磁信号は、好ましくは、方形波電圧信号とすることができる。励磁電圧は、第1の励磁巻線に印加され、それによって磁気コアを飽和状態に駆動することができる。飽和点に達すると、励磁電圧を第1励磁巻線から第2励磁巻線に切り替えることができる。第2の励磁巻線は、好ましくは、第1の励磁巻線に対して平行かつ逆極性で駆動回路に接続する(すなわち、第1の励磁巻線に対して逆平行に接続する)ことができる。したがって、フラックスゲート電流センサは、実質的に対称な励磁信号によって駆動することができ、これによってフラックスゲート電流センサの測定誤差を低減することができる。
【0020】
一実施形態によれば、駆動回路は、少なくとも2つの導電性トラック内の故障電流の存在に基づいて出力信号を生成するようにさらに構成される。駆動回路は、例えば、フラックスゲート電流センサが少なくとも2つの導電性トラックを通って流れる故障電流を検出した場合に出力信号を生成することができる。出力信号は、さらに保護手段をトリガーする(例えば、充電電流を遮断する)ことができる。これらの保護手段は、電気回路によって実行することもできるが、実行する必要はない。
【0021】
一実施形態によれば、駆動回路は、ブリント基板上にさらに集積される。したがって、駆動回路の電子的構成要素は、ブリント基板に含まれる導電性トラックによってフラックスゲート電流センサに電気的に相互接続および/または接続することができる。
【0022】
一実施形態によれば、電気回路は、少なくとも2つの導電性トラック内の故障電流を検出すると、少なくとも2つの導電性トラック内の充電電流を遮断するように構成されたスイッチをさらに備えることができる。スイッチは、電気的に操作されるスイッチ(例えば、リレーまたは回路遮断器)とすることができる。スイッチは、駆動回路から受信した出力信号に基づいて充電電流を遮断することができる。
【0023】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様に係る故障電流を検出するための電気回路を備える電気自動車充電ステーションに関するものである。このような電気自動車充電ステーションは、上述の利点のうちの1つまたは複数を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一態様に係る電気回路を備える電気自動車充電ステーションの概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の電気自動車充電ステーションにおける故障電流を検出するための電気回路の好ましい一実施形態の斜視図を示す。
【
図3A】
図3Aは、
図2の電気回路に含まれるフラックスゲート電流センサの好ましい一実施形態の斜視図を示す。
【
図3B】
図3Bは、
図2の電気回路に含まれるフラックスゲート電流センサの好ましい一実施形態の断面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、フラックスゲート電流センサを駆動することができる時間変化する励磁電圧と、その結果として生じる時間変化する電流応答を示す。
【
図4B】
図4Bは、磁気コアの磁束密度Bを周囲の磁場強度Hに関係付ける磁気ヒステリシスループの一例を示す。
【
図4C】
図4Cは、故障電流がある場合とない場合の励磁電圧のデューティサイクルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、電力源110および電気自動車140に接続された、例示的一実施形態に係る電気自動車充電ステーション130の概略
図100を示す。充電ステーションとも呼ばれる電気自動車充電ステーション130は、電力源110からのエネルギーによって電気自動車140を充電する装置である。代替的または補足的に、充電ステーションは、電気自動車140に蓄えられたエネルギーを電力源110に放電することができる。電気自動車140は、エネルギー貯蔵システム(例えば、バッテリー)を有する自動車である。電気自動車は、例えば、バッテリー駆動の電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電気バス、電気トラック、または電気バイクであり得る。電気自動車140は、自動車140と充電ステーション130との間の電気接続を通じて充電することができる。このような接続は、充電ケーブル131または集電装置(
図1には図示せず)によって確立され、それによってコンダクティブ充電が提供される。あるいはまた、電気自動車140は、無線で、すなわちインダクティブ充電(
図1には図示せず)を通じて充電されてもよい。
【0026】
充電電流は、電力源110(例えば、地域の送電網、電力網、太陽電池パネル設備、またはエネルギー貯蔵システム)によって充電ステーション130に供給され得る。充電電流は、交流(AC)または直流(DC)であり得る。充電電流は、電力源110から電気自動車140までの経路に沿ってACとDCとの間で少なくとも1回変換することもできるが、変換される必要はない。充電電流はまた、逆方向(すなわち、電気自動車140から電力源110)に流れ、それによって電気自動車を放電することもできる。車両から電力網へのシステムまたは車両から家庭へのシステムは、充電電流が両方向に流れることができる例である。
【0027】
電力源110は、配電盤120(すなわち、供給電流を補助回路に分割し、同時にそれらの回路に保護手段を提供できるシステム)に接続することができる。配電盤は、充電ステーション130に接続された補助回路121を含むことができる。配電盤120は、充電ステーション130に電力供給する補助回路を保護するために、残留電流デバイス(例えば、タイプA残留電流デバイス)をさらに含むことができる。あるいはまた、残留電流デバイスが充電ステーション130に含まれていてもよい。
【0028】
充電ステーション130は、電気回路200であって、故障電流を検出し、充電ステーションの動作を制御するための電気回路200を含む。電気回路200は、ブリント基板210に沿って充電電流を流すための少なくとも2つの導電性トラック211、212を含むブリント基板210を備える。電気回路200は、例えば、配電盤120および電気自動車140との電気的接触を確立および維持するために、1つまたは複数のコネクタ213、214を備えることができる。第1のコネクタ213は、電気回路200の少なくとも2つの導電性トラック211、212を配電盤120の補助回路121に接続するように構成することができる。第2のコネクタ214は、例えば充電ケーブル131のプラグ133を受け入れるように構成されたソケット132を介して、電気回路200の少なくとも2つの導電性トラック211、212を電気自動車140に接続するように構成することができる。
【0029】
電気回路200は、少なくとも2つの導電性トラック211、212内の故障電流を検出するためのフラックスゲート電流センサ220をさらに備える。特に、電気回路200は、残留電流デバイスの機能を妨げる可能性のある故障電流(例えば、特定の閾値電流を超えるDC成分を含む故障電流)を検出するように構成することができる。このような故障電流を検出すると、電気回路200は、例えば充電電流を遮断する、保護手段を作動させることができる。これらの保護手段は、電気回路200によって実行されることもできるが、実行される必要はない。あるいはまた、保護手段は、充電ステーション130に含まれる他の構成要素、配電盤120に含まれる構成要素、または電気自動車140によって実行することもできる。
【0030】
ブリント基板210は、故障電流を検出するための電気回路200を含むことに限定されない場合がある。ブリント基板210は、例えば、とりわけ、充電プロセスの監視および/または制御、RFIDカードの読み取りまたはスキャン、支払いの手配、メッセージの表示、または充電ステーションの動作に関連する任意の他の機能を行うように構成された構成要素をさらに備えてもよい。あるいはまた、充電ステーション130は、充電ステーション130の動作のための構成要素を備える1つまたは複数の追加のブリント基板を含んでもよい。
【0031】
図2は、電気自動車充電ステーションにおける故障電流を検出するための電気回路200の好ましい一実施形態の斜視図を示す。「故障電流」とは、少なくとも2つの導電性トラックを流れる特定の閾値を超える、任意の意図しないおよび/または制御されない電流(例えば、残留電流、漏れ電流、または短絡電流)の流れを指す。故障電流は、例えば、とりわけ、短絡、意図しない電流遮断、地絡、または三相システムにおける1つまたは複数の相間の短絡から発生する可能性がある。
【0032】
少なくとも2つの導電性トラック211、212は、電気回路200のブリント基板210に含まれる。導電性トラック211、212は、例えば、ブリント基板210の絶縁表面上に堆積された、銅などの導電性材料のストリップであってもよい。あるいはまた、導電性トラック211、212は、ブリント基板210内(例えば、多層ブリント基板の2つの絶縁層の間)に配置されてもよい。したがって、電荷(すなわち、充電電流)は、これらの少なくとも2つの導電性トラック211、212に沿って(すなわち、ブリント基板210に沿って)流れることができる。ブリント基板は、好ましくは、電流のタイプ(すなわち、ACまたはDC)、および電気システムのタイプ(例えば、単相、三相、または中性線付きの三相)に応じて、2つより多い(特に、3つまたは4つの)導電性トラック211、212を含むことができる。
【0033】
導電性トラック211、212内の故障電流を検出するために、電気回路200は、フラックスゲート電流センサ220を備える。フラックスゲート電流センサ220は、好ましくは、自励発振フラックスゲート電流センサ、特に開ループ自励発振フラックスゲート電流センサとすることができる。フラックスゲート電流センサ220は、磁性材料で作られた磁気コアを含む。磁性材料は、好ましくは、例えば約1.26E-02H/m~約1.88H/m(好ましくは、約1.26E-01H/m)の実質的に高い透磁率を有する材料(特に、強磁性材料)とすることができる。磁性材料の磁化は、好ましくは、比較的低い飽和磁束(すなわち、ヒステリシスループの飽和点に対応する磁束)を伴う磁気ヒステリシスによって特徴付けることができる。好ましくは、磁気コアは、連続した磁性材料の単一片を備えることができる。言い換えれば、磁性材料の端部が結合して無限ループを形成することができる。この場合、磁気コアは、磁気コアを形成するために組み立てが必要な磁性材料の別個の部品を備えない。そうすることで、磁気コア材料に空隙が存在しないため、磁気コアの透磁率を向上させることができる。したがって、磁気コア内の磁場は、導電性トラック211、212内の電流によって生成される磁力線をより多く含むことができる。あるいはまた、磁気コアは、磁気コアを形成するために組み立てが必要な磁性材料の別個の部品を備えることもできる。
【0034】
磁気コアは、貫通孔をさらに備え、その周囲に磁性材料が配置される。磁気コアは、導電性トラック211、212の周囲にさらに配置される(すなわち、導電性トラックは、磁気コアの貫通孔を通過する)。高電力用途では(例えば、電気自動車を充電および放電する場合)、導電性トラック211、212は、大電流に対応するために実質的に幅が広くなり得る。導電性トラック211、212は、ブリント基板上に互いに並んで(例えば、平行に)一体化することができるので、導電性トラック211、212は、ブリント基板上の実質的に広いまたは大きな面積を占めることができる。この目的のために、ブリント基板230とフラックスゲート電流センサ220の磁気コアとの間の距離が、磁気コアの内側限界に沿って実質的に等しくなるように、貫通孔の断面は、好ましくは、実質的に、楕円形、スタジアム形、または長方形として形作ることができる。言い換えれば、フラックスゲート電流センサ220の内面は、フラックスゲート電流センサ220によって囲まれたブリント基板230の部分から実質的に等距離に配置される。これにより、磁気コアが故障電流による磁場の変化を確実に検出するために導電性トラック211、212に十分近くに配置されるため、故障電流の検出の信頼性を低下させることなく、導電性トラック211、212の周囲に配置されたフラックスゲート電流センサ220によって故障電流の存在を検出することが可能になる。これには、例えば円形または四角形として形作られた貫通穴に比べて、回路をよりコンパクトにでき、したがって充電ステーション内で占める空間が少なくなるというさらなる利点がある。
【0035】
したがって、フラックスゲート電流センサ220は、導電性トラック211、212が磁気コアの貫通孔を通過する(すなわち、磁気コアが導電性トラック211、212の周囲に配置される)ように、ブリント基板上に統合することができる。導電性トラック211、212がブリント基板210に含まれるため、フラックスゲート電流センサ220(特に、磁気コア)も、ブリント基板210の表面の一部(特に、導電性トラック211、212が含まれる表面の一部)の周囲に配置することができる。
【0036】
フラックスゲート電流センサ220は、応力(すなわち、磁気コアの単位面積に作用する力)から磁気コアを保護するように構成された、磁気コアの少なくとも一部を囲う、保護ハウジング223をさらに備えることができる。保護ハウジング223は、磁気コアの外面、内面、または少なくとも1つの側面を覆うことができる。磁気コアの外面および内面は、それぞれ、磁気コアの中心線に背を向ける、および磁気コアの中心線を向く磁気コアの表面を指す。磁気コアの側面とは、磁気コアの外面および内面に対して実質的に直交する横方向の表面を指す。
【0037】
磁気コアを機械的応力(例えば、圧縮、伸長、または曲げ)から保護するために、保護ハウジング223は、実質的に硬い材料(すなわち、実質的に曲がったり、強制的に形状を変形させることができない材料)から作ることができる。代替的にまたは補足的に、保護ハウジング223は、例えばゴムまたは発泡体などのエネルギー吸収材料(すなわち、弾性的に変形して機械的応力の少なくとも一部を吸収できる材料)を含むことができる。このエネルギー吸収材料は、例えば、保護ハウジング223内に、ハウジングの外層と磁気コアとの間の追加の内層として含まれてもよい。あるいはまた、保護ハウジング223の密閉容積に例えば充填材を充填して、それによって磁気コア全体を密閉してもよい。機械的応力に加えて、保護ハウジング223は、例えば断熱材料で作られた層または充填材を含むことによって、熱応力から磁気コアを保護することができる。
【0038】
ブリント基板210は、一部分230であって、フラックスゲート電流センサ220がその部分の上にわたって指定された位置まで移動できるように構成された一部分230をさらに備えることができる。したがって、一部分230は、フラックスゲート電流センサ220が一部分230に沿って指定された位置に向かって実質的に自由に移動できるように構成することができる。指定された位置は、フラックスゲート電流センサ220が導電性トラック211、212内の故障電流を検出できるブリント基板210上の位置を指す。フラックスゲート電流センサ220をこの位置に移動させるために、一部分230を磁気コアの貫通孔の形状および寸法に従って形作ることができる。ブリント基板の一部分230は、例えば、フラックスゲート電流センサ220の貫通孔を通過できるように十分に幅が狭く、それによってフラックスゲート電流センサを指定された位置に配置することができる。こうして、ブリント基板210は、磁気コアが連続磁性材料の単一片を備える場合でも、フラックスゲート電流センサ220を受け入れることができる。フラックスゲート電流センサ220の実質的に自由な移動を可能にすることによって、電気回路の製造または組み立て中にフラックスゲート電流センサにかかる機械的な力を低減することができる。フラックスゲート電流センサにかかる機械的な力は、磁気コアの機械的および/または磁気的特性を変化させ、それによってフラックスゲート電流センサ220の性能に影響を与える可能性があるため、望ましくない場合がある。
【0039】
フラックスゲート電流センサ220は、ブリント基板210に(特に、指定された位置に)さらに取り付けることができる。この目的のために、フラックスゲート電流センサ220およびブリント基板210は、少なくとも1つの取り付け手段を備えることができる。フラックスゲート電流センサ220の少なくとも1つの取り付け手段は、好ましくは、保護ハウジング223内に(例えば、当該保護ハウジングの両端に、当該保護ハウジングの内面上に、および/または保護ハウジング223から延びる取り付け脚部224、225に沿って)含まれ得る。取り付け手段は、例えば、とりわけ、リテーナ、ネジ、ボルト、リベット、グロメット、プラグ、ピン、スナップファスナー、スナップフィット、または当業者に知られている他の任意の取り付け手段とすることができる。ブリント基板210は、フラックスゲート電流センサ220の取り付け手段を受け入れるように構成された、少なくとも1つの対応する取り付け手段を備えることができる。取り付け手段は、ブリント基板210への取り外し可能な接続または永久的な接続をさらに提供することができる。
【0040】
電気回路200は、故障電流(特に、残留電流デバイスの機能を妨げる可能性のある故障電流(例えば、特定の閾値電流を超えるDC成分を含む故障電流))の検出時に、導電性トラック211、212内の電流を遮断するように構成されたスイッチ240をさらに備えることができる。好ましくは、スイッチは、調整可能な閾値電流(例えば、6mA)を超える故障電流によってトリガーすることができる。。スイッチ240は、例えばリレー、回路遮断器、または当業者に知られている他の任意のスイッチなどの電気的に動作するスイッチとすることができる。スイッチ240は、好ましくは、ブリント基板210上に含まれる(すなわち、一体化される)ことができる。あるいはまた、スイッチ240は、充電ステーション内の別の場所(すなわち、ブリント基板210に含まれない場所)に設けられてもよい。スイッチ240は、故障電流の検出時にフラックスゲート電流センサ220から受信した信号によって制御することができる。
【0041】
図2はブリント基板210のすべての構成要素を示しているわけではないことを理解すべきである。ブリント基板210は、充電ステーションの動作を制御するため、ブリント基板210を他の構成要素に接続するため、フラックスゲートセンサの正確かつ安全な動作をテストするため、および/または故障電流を検出するために、複数の電子的構成要素をさらに含むことができる。このような電子的構成要素には、例えば、とりわけ、抵抗器、コネクタ、トランジスタ、コンデンサ、制御ユニット、比較器、マルチバイブレータ、演算増幅器、スイッチ、電圧源、または電流源が含まれ得る。これには、充電ステーション内のブリント基板の数を制限できるというさらなる利点がある。
【0042】
図3Aおよび
図3Bは、フラックスゲート電流センサの好ましい一実施形態の斜視図および断面図をそれぞれ示す。保護ハウジング223によって囲まれることに加えて、磁気コア221はさらに、磁気シールド226によって部分的に囲まれてもよい。磁気シールド226は、磁気シールド226が磁気コア221の全側面を囲んでいない限り、磁気コア221の外面、内面、少なくとも1つの側面、またはそれらの任意の組み合わせの周囲に配置することができる。磁気シールド226は、導電性トラックを流れる電流によって生成される磁場を磁気コア221内に実質的に均一に分布させることができる。したがって、特に導電性トラックがフラックスゲート電流センサ220の貫通孔222内に非対称に分布している場合、故障電流が存在しない場合に、磁気コア221内の検出された磁場は実質的にゼロになる可能性がある。言い換えれば、磁気シールド226は、故障電流が存在しない場合、磁気コア221内で検出された磁場を無効にするのに役立つことができる。検出された磁場は、磁気コアによって見られる正味の磁場を指す。故障電流が存在しない場合、検出された磁場は、磁気コア221の貫通孔222を通って少なくとも2つの導電性トラック内を実質的に反対方向に流れる実質的に等しい大きさの少なくとも1つの流出充電電流および帰還充電電流によって生成され得る。また、磁気シールド221は、ブリント基板上または電気自動車充電ステーション内に含まれる他の電気的構成要素の磁気干渉を低減することができる。
【0043】
フラックスゲート電流センサ220は、磁気コア221の周囲に巻かれた少なくとも2つの励磁巻線227、228を備えることができる。言い換えれば、励磁巻線227、228は、磁気コア221の周囲に巻かれるコイルを形成することができる。好ましくは、少なくとも2つの励磁巻線227、228は、規則的なパターンで互いに追従し、連続するように交互に配置される。励磁巻線227、228は、励磁信号を流すように構成された、例えば絶縁された銅線などの導電体とすることができる。励磁信号は、磁気コアを飽和状態になるように、または飽和状態から外れるように駆動する任意の信号(例えば、電流信号または電圧信号)とすることができる。好ましくは、磁気シールド226は、磁気コア221を囲むことに加えて、これらの励磁巻線227、228を囲むことができる。
【0044】
励磁巻線227、228はさらに、例えばコネクタ229を介して、駆動回路に接続されてもよい。駆動回路は、例えば、とりわけ、比較器、マルチバイブレータ、演算増幅器、スイッチ、電圧源、または電流源などの複数の電子的構成要素を含むことができる。好ましくは、駆動回路は、ブリント基板上に統合することができる。言い換えれば、駆動回路の電子的構成要素は、コネクタ229を介して励磁巻線227、228に接続されることに加えて、ブリント基板上の導電性トラックによって電気的に相互接続することができる。駆動回路は、例えば、とりわけ、励磁信号を生成して応答信号を測定することによって、フラックスゲート電流センサ220を動作させるように構成することができる。好ましくは、励磁信号は、励磁電圧とすることができ、応答信号は、印加された励磁電圧の結果として励磁巻線227、228を通って流れる電流とすることができる。
【0045】
図4Aは、そのような時間変化する励磁電圧401と、その結果として生じる時間変化する電流応答402の一例を示す。駆動回路の電子的構成要素によって生成される励磁電圧401は、好ましくは、方形波信号とすることができる。言い換えれば、励磁電圧401は、所定の最小403と最大404の値の間で、実質的に一定の周波数で、かつ最小403と最大404の電圧で実質的に等しい持続時間(すなわち、デューティサイクル405)で切り替わることができる。最小403と最大404の電圧は、好ましくは、実質的に等しい大きさで反対の極性(例えば、それぞれ-3.5Vと3.5V)とすることができる。したがって、フラックスゲート電流センサは、実質的に対称な励磁電圧401によって駆動することができ、これによりフラックスゲート電流センサの測定誤差を低減することができる。
【0046】
このような実質的に対称な励磁電圧を確実な方法で得るために、励磁巻線は、駆動回路に平行かつ極性を逆にして(すなわち、逆平行に)接続することができる。したがって、駆動回路は、同じ電圧(例えば、3.5V)を第1の励磁巻線と第2の励磁巻線に交互に印加することができ、励磁巻線の逆平行接続により電圧の極性を反転できる。言い換えれば、最小403および最大404の電圧をそれぞれ第1および第2の励磁巻線に印加し、それによってフラックスゲート電流センサの磁気コアを実質的に対称な方形電圧波にさらすことができる。
【0047】
印加された励磁電圧401は、励磁巻線を通って流れる時間変化する電流応答402を生じ得る。この電流応答402は、駆動回路によって(例えば、シャントまたは高精度抵抗器によって)測定することができる。コアは磁気ヒステリシスによって特徴付けられ得るため、応答電流402は、磁気コアを飽和状態に駆動することができる。
図4Bは、磁気コア内の磁束密度Bを周囲の磁場強度Hに関係付ける磁気ヒステリシスループ410の一例を示す。磁束密度Bは、磁気コア材料内の実際の磁場の尺度を指し、単位断面積あたりの磁力線または磁束の集中として考えられる。磁場強度Hは、導体内(例えば、導電性トラックまたは励磁巻線内)を流れる近くの電流によって生成される磁場の尺度を指す。磁気ヒステリシスループは、正の飽和点411と負の飽和点412によってさらに特徴付けられ得る。このような飽和点411、412では、磁場強度Hの変化は、もはや磁束密度Bの実質的な変化をもたらさない。言い換えれば、飽和点411、412は、磁気コアが磁力線で飽和する点として理解することができる。
【0048】
例えば、正の励磁電圧401が第1の励磁巻線に印加されると、その結果として生じる電流402は、磁場を生成することができる。結果として生じる磁場強度Hの変化は、ヒステリシスループ410に従って、磁気コア内の磁束密度Bを変化させることになる。次に、磁気コア内の変化する磁束密度Bは、例えば、逆起電力、励磁巻線の変化するインピーダンス、励磁巻線の変化するインダクタンスによって、応答電流402に影響を与える可能性がある。1つのデューティサイクル405中に、電流応答402は、例えば最大値まで変化し、それによって磁気コアを正の飽和点411まで駆動する(413)ことができる。飽和に達すると、励磁巻線のインピーダンスとインダクタンスが大幅に低下し、その結果、電流スパイク406が発生する可能性がある。駆動回路は、電流スパイク406を検出し、電流スパイク406の検出時に、励磁電圧401を第1の巻線と逆平行の第2の励磁巻線に切り替えるように構成することができる。したがって、励磁電圧401の極性は、実質的に瞬時に反転することができ、次のデューティサイクルを開始することができる。これにより、電流応答402が最大値から最小値に減少し、したがって磁気コアが正の飽和点411から負の飽和点412に駆動される(414)。負の飽和点412に達すると、別の電流スパイクが駆動回路によって検出され、その後、励磁電圧401を第1の励磁巻線に切り替えて戻すことができる。
【0049】
故障電流が存在しない場合、電気回路の導電性トラックを通って流れる、流出充電電流と帰還充電電流は、実質的に等しい大きさになり得る。したがって、各々の導電性トラックによって生成される磁場は、互いに打ち消し合う。したがって、応答電流402は、実質的に対称となる可能性があり、励磁電圧401は、実質的に等しい持続時間の一定の周波数で所定の最小403と最大404の値の間で切り替わることができる。言い換えれば、
図4Cに示されるように、最大404または最小404の励磁電圧401のデューティサイクル405は、故障電流が存在しない場合には実質的に対称(すなわち、50%)となり得る。
【0050】
電気回路の導電性トラックに故障電流が流れると、磁気コアに磁場バイアスがかかる可能性がある。磁場バイアスは、磁気ヒステリシスループ410を相殺し、それにより実質的に非対称な応答電流402および励磁電圧401がもたらされ得る。言い換えれば、最大404または最小404の励磁電圧401のデューティサイクル421は、実質的に非対称である(すなわち、50%よりも高いか、または低い)可能性がある。対称デューティサイクル405からのオフセット422(すなわち、50%からのオフセット)は、故障電流の大きさに関係する可能性がある。言い換えれば、フラックスゲート電流センサは、故障電流が存在しない場合の対称デューティサイクル405と比較して、故障電流が存在する場合の励磁電圧デューティサイクル421のオフセット422に基づいて故障電流を検出し、測定することができる。
【0051】
駆動回路は、デューティサイクルのオフセット442を決定し、これにより、導電性トラック内の故障電流の存在を検出するように構成することができる。駆動回路はさらに、導電性トラック内の故障電流の存在に基づいて出力信号を生成するように構成することができる。駆動回路は、例えば、残留電流デバイスの機能を妨げる可能性がある故障電流(例えば、特定の閾値電流を超えるDC成分を含む故障電流)を検出すると、出力信号を生成することができる。好ましくは、このような出力信号をトリガーする閾値電流は、駆動回路によって調整され得る。出力信号はさらに、充電電流の遮断などの保護手段をトリガーしてもよい。この目的のために、出力信号は、好ましくは、充電電流を遮断できるように、電気回路の統合スイッチに伝達され得る。代替的または補足的に、出力信号は、充電ステーションに含まれる他の構成要素、配電盤に含まれる構成要素、または電気自動車に伝達されてもよい。
【0052】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明は、前述の例示的な実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明は、その範囲を逸脱することなく様々な変更および修正を加えて具体化できることは当業者には明らかであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきであり、本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の意味および均等性の範囲内にあるすべての変更は、特許請求の範囲に含まれるものとする。言い換えれば、基礎となる基本原理の範囲内にあり、その必須の属性が本特許出願で特許請求されるあらゆる修正、変形、または均等物を網羅することが考えられる。さらに、本特許出願の読者は、「備える(comprising)」または「備える(comprise)」という言葉は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つの(a)」または「1つの(an)」という言葉は、複数を排除するものではなく、コンピュータシステム、プロセッサ、または別の統合ユニットなどの単一の要素は、特許請求の範囲に記載されたいくつかの手段の機能を果たすことができることを理解するであろう。請求項内のいかなる符号も、該当するそれぞれの請求項を限定するものとして解釈されるものではない。「第1」、「第2」、「第3」、「a」、「b」、「c」などの用語は、説明または特許請求の範囲で使用される場合、類似の要素またはステップを区別するために導入されたものであり、必ずしも連続的または時系列的な順序を説明するものではない。同様に、「上部」、「下部」、「上」、「下」などの用語は、説明の目的で導入されており、必ずしも相対的な位置を示すものではない。このように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本発明の実施形態は、本発明に従って、他の順序、または上で説明または図示したものとは異なる方向で動作可能であることを理解すべきである。
【0053】
本出願で使用される場合、「回路」という用語は、(a)ハードウェアのみの回路実装(例えば、アナログおよび/またはデジタル回路のみでの実装)、および(b)ハードウェア回路とソフトウェアの組み合わせ、例えば(該当する場合):(i)アナログおよび/またはデジタルハードウェア回路(複数可)とソフトウェア/ファームウェアの組み合わせ、および(ii)(デジタル信号プロセッサ(複数可)を含む)ソフトウェアを有するハードウェアプロセッサ(複数可)の任意の部分、および(c)動作のためにソフトウェア(例えば、ファームウェア)を必要とするが、ソフトウェアが動作に必要ないときには存在しない場合があるハードウェア回路(複数可)および/またはプロセッサ(複数可)(例えば、マイクロプロセッサ(複数可)またはマイクロプロセッサ(複数可)の一部)のうちの1つ、または複数、またはすべてを指す可能性がある。回路のこの定義は、任意の請求項を含む、本出願におけるこの用語のすべての使用に適用される。さらなる一例として、本出願で使用される場合、回路という用語は、単なるハードウェア回路またはプロセッサ(または複数のプロセッサ)、またはハードウェア回路またはプロセッサの一部、およびそれ(または、それら)に付随するソフトウェアおよび/またはファームウェアの実装も網羅する。
【国際調査報告】