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特表2024-545939誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法
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  • 特表-誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法 図1A
  • 特表-誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法 図1B
  • 特表-誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法 図2
  • 特表-誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法 図3
  • 特表-誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】誘電体フィラー用の組成物、チップ埋め込みプリント回路基板、及びプリント回路基板にチップを埋め込む方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20241209BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241209BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H05K1/18 R
H05K1/03 610S
H01L23/12 F
H05K1/03 610R
H05K1/03 610L
H05K1/03 610J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525644
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022041866
(87)【国際公開番号】W WO2023075918
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】17/515,870
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】524012185
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】アーミエント,クレイグ,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ピロ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ルース,アンドリュー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ランポート,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ラナシンハ,オシャダ
(72)【発明者】
【氏名】アレイアス,クリストファー アール.
(72)【発明者】
【氏名】クンチョ,クリストファー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】アキュルツル,アルキム
(72)【発明者】
【氏名】キングスリー,エドワード、ディー.
【テーマコード(参考)】
5E336
【Fターム(参考)】
5E336AA08
5E336CC52
5E336CC53
5E336DD37
5E336DD39
5E336EE07
5E336GG30
(57)【要約】
チップ埋め込みプリント回路基板100は、プリント回路基板におけるキャビティ110と、プリント回路基板のキャビティにおけるチップ104と、プリント回路基板においてチップを封止するためのキャビティにおけるギャップ内のチキソトロピック誘電体フィラー106と、を含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ埋め込みプリント回路基板であって、
プリント回路基板におけるキャビティと、
前記プリント回路基板の前記キャビティにおけるチップと、
前記プリント回路基板において前記チップを封止するための前記キャビティにおけるギャップ内のチキソトロピック誘電体フィラーと、を備える、チップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項2】
前記チキソトロピック誘電体フィラーは、アスペクト比が約2:1~約30:1の複数の粒子を含む、請求項1に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項3】
前記アスペクト比が約2:1~約30:1の複数の粒子は、窒化ホウ素粒子である、請求項2に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項4】
前記チキソトロピック誘電体フィラーは、1つまたは複数の光開始剤、光増感剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項5】
前記1つまたは複数の光開始剤は、紫外線を吸収する光開始剤である、請求項4に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項6】
前記1つまたは複数の光開始剤は、280~320ナノメートル、320~400ナノメートル、またはそれらの組み合わせの波長範囲を有する光を吸収する、請求項4に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項7】
前記チキソトロピック誘電体フィラーは架橋エポキシアクリレートポリマーを含む、請求項1に記載のチップ埋め込みプリント回路基板。
【請求項8】
誘電体フィラーを作製するための組成物であって、
約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子と、
アクリレートオリゴマーと、
約280~約320ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、
約320~約400ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、を含む、組成物。
【請求項9】
前記約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子は窒化ホウ素粒子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
光増感剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
エポキシトリアクリレート架橋剤オリゴマーをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記アクリレートオリゴマーはエポキシアクリレートオリゴマーである、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子は、約5~約20重量%の量で前記組成物に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子は、約10~約15重量%の量で前記組成物にある、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
プリント回路基板にチップを埋め込む方法であって、
前記プリント回路基板にキャビティを形成することと、
前記プリント回路基板における前記キャビティに前記チップを設置することと、
前記プリント回路基板の前記キャビティにおいて前記チップを封止するために前記キャビティにおけるギャップにチキソトロピック誘電体フィラーを配置することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記チキソトロピック誘電体フィラーは、約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子は窒化ホウ素粒子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記チキソトロピック誘電体フィラーは、1つまたは複数の光開始剤、光増感剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の光開始剤は、紫外線を吸収する光開始剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数の光開始剤は、280~320ナノメートル、320~400ナノメートル、またはそれらの組み合わせの波長範囲を有する光を吸収する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月1日に出願された米国特許出願第17/515870号の利益を主張するものであり、この内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、複合紫外線硬化型複合材料に関し、より具体的には、紫外線硬化型直接書き込み半導体用途のためのナノ複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のプリント回路基板には、最下部配線層の表面に電子部品またはチップが実装されている。チップの上には絶縁層及び最上部配線層が積層され、配線層とチップとの間の電気的接続のためにビアホールが形成される。
【0004】
電子機器の高機能化と小型化への要求に応えて、最近の技術傾向は電子部品の高密度化及び小型化に向かっている。このため、電子部品を高密度に実装できるプリント回路基板の小型化への要求が高まっている。それ故に、配線層間、または異なる層上に形成された配線と電気部品とをビアホールを介して電気的に接続する多層回路基板の開発が進められている。多層回路基板は、電子部品を相互に接続する配線を削減し、高密度に配線することでプリント回路基板の表面積を増大させ、優れた電気的特性をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
1つまたは複数の実施形態によれば、チップ埋め込みプリント回路基板は、プリント回路基板におけるキャビティと、プリント回路基板のキャビティにおけるチップと、プリント回路基板においてチップを封止するためのキャビティにおけるギャップ内のチキソトロピック誘電体フィラーと、を含む。
【0006】
他の実施形態によれば、誘電体フィラーを作製するための組成物は、約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子と、アクリレートオリゴマーと、約280~約320ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、約320~約400ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、を含む。
【0007】
さらに、他の実施形態によれば、プリント回路基板にチップを埋め込む方法は、プリント回路基板にキャビティを形成することと、プリント回路基板におけるキャビティにチップを設置することと、プリント回路基板のキャビティにおいてチップを封止するためにキャビティにおけるギャップにチキソトロピック誘電体フィラーを配置することと、を含む。
【0008】
さらなる特徴及び利点が、本開示の技術を通して実現される。本開示の他の実施形態及び態様が、本明細書で詳細に説明され、特許請求される開示の一部とみなされる。利点及び特徴を伴う本開示をより良く理解するためには、説明及び図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示をより完全に理解するために、ここで、添付の図面及び詳細な説明に関連して以下の簡単な説明を参照する。ここでは、同様の参照記号は同様の部分を表す。
【0010】
図1A】チップ埋め込みプリント回路基板の上面図である。
図1B図1Aの側断面図である。
図2】ギャップフィラーを使用してチップをプリント回路基板に埋め込む方法の側断面図である。
図3】窒化ホウ素を含む場合及び含まない場合のギャップフィラーの痕跡の画像を示す図である。
図4】窒化ホウ素を含む材料及び含まない材料の粘度(センチポアズ(cps))の関数として、剪断速度(s-1)で表した動的粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、従来のプリント回路基板は、表面にはんだで実装された積層チップを、その上下の配線層を接続する金属充填ビアと共に有する。しかしながら、このようなビアホールの作成は処理ステップが複雑である。
【0012】
従って、本明細書では、ビア配線を排除し、それによって処理コスト及びデバイスの複雑さを低減する、プリント回路基板にチップを埋め込む方法について説明する。プリント回路基板にキャビティが形成され、チップがキャビティに配置され、チップと回路基板との間のキャビティにおけるギャップを埋めて、印刷可能なガスケット材料で封止された埋め込みダイを提供するために、直接書き込みのUV硬化型複合誘電体インクが提供される。インターポーザはキャビティ上に配置されて、チップへの電気的接続を提供する。この複合誘電体材料/インクは、チキソトロピー剪断減粘効果を使用した理想的なギャップ充填能力、熱放散を促進する優れた熱伝導性、及び、印刷システムでのZ高さのレーザ検出を可能にする不透明性を提供するように設計されている。
【0013】
図1Aはチップ埋め込みプリント回路基板100の上面図である。図1B図1Aの側断面図である。チップ埋め込みプリント回路基板100は、プリント回路基板である基板102を含む。プリント回路基板である基板102は、導電層(銅など)及び絶縁層の積層構造である。プリント回路基板は、片面(例えば、1つの銅層)、両面(1つの基板層の両側に2つの銅層)、または多層(絶縁体の層と交互になった銅の外層及び内層)にすることができる。
【0014】
チップ104を基板102に埋め込むために、キャビティ110が基板102に形成される。キャビティ110は、基板102を形成する材料に応じた処理方法によって形成される。キャビティ110は、例えば、エッチング、プレス加工、穴あけ加工、レーザ加工、またはそれらの組み合わせによって形成される。形成されたキャビティ110は、埋め込まれるチップ104よりも大きい長さ112及び幅114の寸法(図1A)を有する。いくつかの実施形態では、キャビティ110の高さ116(または厚さ、図1B)は、チップ104の高さ(または厚さ)と実質的に同じであるため、埋め込まれたチップ104の表面は、基板102の表面と実質的に同一平面になる。さらに、他の実施形態では、キャビティ110の高さ116(または厚さ)は、チップ104の高さ(または厚さ)より小さく、ギャップフィラー106は、チップ104までの増分として機能するように配置または積層される。基板102にキャビティ110を形成した後、チップ104がキャビティ110に挿入される。チップ104は、ダイまたは電子部品とも呼ばれる。チップ104は、抵抗器またはコンデンサである。
【0015】
チップ埋め込み回路基板100は、基板102においてチップ104を封止するガスケットを形成するために、キャビティ110におけるギャップ内にギャップフィラー106を含む。フィラー106はチキソトロピック誘電体材料である。ギャップフィラー106は、高アスペクト比を有する複数の無機粒子である不活性無機フィラーを含む。低粘度の液体中では粒子のアスペクト比が高いため、剪断が適用されると流れの方向に整列し、剪断減粘効果が生じる。この剪断減粘により、滑らかで高解像度のプリントがもたらされる。ギャップフィラー106の無機粒子は、熱伝導性があり、不透明であり、紫外線を吸収しないため、紫外線による硬化を妨げない。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によれば、高アスペクト比粒子は六方晶窒化ホウ素粒子である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比粒子は、約2:1~約30:1のアスペクト比を有する。他の実施形態では、高アスペクト比粒子は、約10:1~約20:1のアスペクト比を有する。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によれば、高アスペクト比粒子は、約0.5~約1.2マイクロメートルの平均直径を有する。他の実施形態では、高アスペクト比粒子は、約0.8~約1.0マイクロメートルの平均直径を有する。
【0018】
1つまたは複数の実施形態では、高アスペクト比粒子は、ギャップフィラー106組成物中に約5~約20重量%の量で含まれる。他の実施形態では、高アスペクト比粒子は、ギャップフィラー106組成物中に約10~約15重量%の量で含まれる。
【0019】
ギャップフィラー106はポリマーマトリックスをさらに含む。1つまたは複数の実施形態において、ポリマーマトリックスのポリマーは架橋ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスのポリマーは、アクリレートポリマー、架橋アクリレートポリマー、または架橋エポキシアクリレートポリマーである。ポリマーマトリックスのポリマーの他の非限定的な例としては、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、ポリマーマトリックスは、粘度が低く開始が迅速である第1のオリゴマーと、弾性率及び熱安定性を高めるためにマトリックスに架橋を導入する架橋剤である第2のオリゴマーとを含む、少なくとも2つのオリゴマーの組み合わせから形成される。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、エポキシアクリレートオリゴマーとエポキシトリアクリレート架橋剤オリゴマーとの組み合わせから形成され、3つの不飽和部位の結果として強力な三次元ポリマーネットワークを作り出す。低粘度オリゴマーは、いくつかの実施形態では、約50~約1000センチポアズ(cps)の粘度を有する。他の実施形態では、低粘度オリゴマーは、約200~600センチポアズの粘度を有する。
【0021】
1つまたは複数の実施形態では、ギャップフィラー106は、第1の低粘度オリゴマーと第2の架橋性オリゴマーとの組み合わせから形成される。実施形態では、第1のオリゴマーはエポキシアクリレートであり、第2のオリゴマーはエポキシトリアクリレートである。第1の低粘度オリゴマーは、実施形態では、ギャップフィラー106中に約50~約95重量%の量で含まれる。さらに、他の実施形態では、低粘度オリゴマーはギャップフィラー106中に約60~約85重量%の量で含まれる。
【0022】
ギャップフィラー106は、1つまたは複数の光開始剤、光増感剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。光開始剤は紫外線エネルギーを吸収してフリーラジカルを生じさせ、これがモノマー及び/またはオリゴマーと反応して重合及び硬化を開始する。光開始剤は、水銀ランプまたは発光ダイオードランプなどの紫外線源からの紫外線を使用することによって、ギャップフィラー106を硬化させることができる。紫外線が照射されると、タイプI光開始剤が劈開してフリーラジカルを生成する。紫外線が照射されると、タイプII光開始剤は共開始剤(アミン相乗剤)から水素を引き抜いてラジカルを生成する。
【0023】
1つまたは複数の実施形態では、ギャップフィラー106は、紫外線(200~450ナノメートルの波長)、例えば、280~320ナノメートル、320~400ナノメートル、またはそれらの組み合わせの波長範囲を有する光を吸収する1つまたは複数の光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、長波長紫外線吸収度(320~400ナノメートル)を有するタイプ1光開始剤の組み合わせは、中波長紫外線吸収度(280~320ナノメートル)を有するタイプ1光開始剤と組み合わされる。適した光開始剤の非限定的な例としては、フェニルビス(2,4,6,7-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、4-ベンゾイル-4’メチルジフェニルスルフィド、ベンジルジメチルケタール)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
実施形態では、ギャップフィラー106は、1つまたは複数の光開始剤に加えて光増感剤をさらに含む。光増感剤は紫外線を吸収し、かつそのエネルギーを別の分子、とりわけ光開始剤に伝達してラジカルを生成し、ポリマーの重合を開始する。1つまたは複数の実施形態では、光増感剤は紫外線を吸収する。いくつかの実施形態では、光増感剤は、約320~約400ナノメートルの波長の紫外線を吸収する。光増感剤の非限定的な例としては、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、ギャップフィラー106を作製するための組成物は、約2:1~約30:1のアスペクト比を有する複数の粒子と、アクリレートオリゴマーと、約280~約320ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、約320~約400ナノメートルの波長の光を吸収する光開始剤と、を含む。実施形態において、組成物は、アクリレート架橋剤、光増感剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。ギャップフィラー組成物は、凝集が見えなくなるまで超音波処理及び/または撹拌される。ギャップフィラーは、基板上に配置または印刷され、その後、ギャップフィラーを紫外線源からの紫外線に露光することによって硬化される。
【0026】
チップ埋め込みプリント回路基板100は、チップ104と基板102との間に電気的接続を提供するために、ギャップフィラー106上に印刷された複数のインターポーザ108をさらに含む。インターポーザ108は、例えば銀を含む。
【0027】
図2は、プリント回路基板202にチップ204を埋め込む方法を示す側断面図である。この方法は、プリント回路基板202にキャビティ210を形成することと、プリント回路基板202におけるキャビティ内にチップ204を設置することと、を含む。この方法は、プリント回路基板202のキャビティにおいてチップ204を封止するために、キャビティ210におけるギャップにチキソトロピック誘電体フィラー206を配置することをさらに含む。この方法は、ギャップフィラー206上にインターポーザ208を形成して、チップ204とプリント回路基板202との間に電気的接続を提供することをさらに含む。
【0028】
チキソトロピック誘電体インクは、いくつかの実施形態ではシリンジ220によってチップ204の周囲のギャップに注入される。チキソトロピック誘電体フィラー206をキャビティ210に配置するには、任意の方法を使用することができる。フィラー206のチキソトロピー特性は、剪断減粘が時間に依存することを意味する。フィラー206は、静的条件下または低剪断下では厚いまたは粘性があるが、剪断応力が加わると粘性が低くなり、流動するようになる。いくつかの実施形態では、5s-1の剪断速度におけるフィラー206の粘度は、50s-1の剪断速度におけるフィラー206の粘度よりも大きい。1つまたは複数の実施形態によれば、フィラー206は、5s-1の剪断速度で約10,000~約50,000cpsの粘度を有し、50s-1の剪断速度で約1,000~約10,000cpsの粘度を有する。他の実施形態によれば、フィラー206は、5s-1の剪断速度で約15,000~約30,000cpsの粘度を有し、50s-1の剪断速度で約2,500~約7,500cpsの粘度を有する。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によれば、フィラー206は、0s-1の剪断速度で約25,000~約50,000cpsの粘度を有する。他の実施形態によれば、フィラー206は、0s-1の剪断速度で約30,000~約45,000cpsの粘度を有する。
【0030】
フィラー206の動的粘度により、フィラー206は、剪断応力を受けてチップとプリント回路基板との間のギャップに流れ込み、滑らかな表面を提供することができるため、プリント回路基板にチップを埋め込むのに理想的な電子ギャップフィラーとなる。高アスペクト比の粒子(例えば、窒化ホウ素)を多く含むことにより、フィラーに強力なチキソトロピー効果がもたらされる。高アスペクト比粒子の比較的高い濃度は、熱伝導性及びレーザ検出にも役立ち、これは柔軟なガスケット用途にとって魅力的な特性である。
【0031】
チキソトロピー剪断減粘効果により、シリンジから押し出すために剪断が加えられるとフィラーの粘度が低下し、次いで、剪断が除去されると高粘度に戻り、高解像度の滑らかなパターンが残る。対照的に、市販の電子フィラーの表面は、粘度が高くて表面に印刷できない粗い仕上がりになるため、または、粘度が低く、剪断減粘が最小限で接合部の側壁が毛細管で濡れたり、デバイスの底部のギャップでの損失ももたらされるため、好ましくない。
【0032】
上記のギャップ充填用途に加えて、本明細書に記載されるフィラーの動的粘性は、任意のギャップ充填電子用途、または傾斜面または上昇面を提供するために誘電体材料が必要とされる他の電子用途を含む、他の電子用途にも適したものとなる。
【実施例
【0033】
比較例1:市販の接着剤
市販されている2つの材料を、チップとプリント回路基板との間のキャビティにおけるギャップを充填するための好ましい特性について分析した。Norland Electronic Adhesive 121(NEA 121)は、メルカプトエステル/ベンゾフェノン組成物であり、精密製品の仮付け、充填、封止、絶縁保護コーティング、及び不正開封防止用の接着剤である。Creative Materials 119-48(CM 119-48)は、スクリーン印刷可能な柔軟なUV硬化誘電体コーティングである。プリント回路基板にキャビティを形成し、そのキャビティにチップを挿入した。NEA 121及びCM 119-48をチップとプリント回路基板との間のギャップに堆積し、チップを封止して埋め込みプリント回路基板を形成する能力を評価した。
【0034】
NEA 121は粘度が低すぎて(~300cps)、示された剪断減粘が最小限であったことで、接合部の側で毛細管の好ましくない濡れが生じ、デバイスの底部におけるギャップを介して材料の損失が生じた。CM 119-48には逆の問題があり、好ましくない高粘度(~150,000cps)が示され、そのため材料の形状が維持され、粗い表面仕上げが残った。粗い表面仕上げにより、表面にシルバーを印刷するのは困難であった。NEA 121及びCM 119-48は両方共好ましくない熱伝導率を示し、デバイスからの熱伝達が減少した。NEA 121もCM 119-48も不透明ではないため、表面トポロジのマッピングに使用される検出システムの能力が低下することになる。
【0035】
実施例2:インク配合
以下の表1は、本明細書に記載されるように、プリント回路基板にチップを埋め込むための示された好ましい特性を有する複合インクの例を示す。

【表1】
【0036】
オリゴマー、窒化ホウ素、光開始剤、及び増感剤を、アルミニウム箔で覆われたガラス瓶に加えた。この瓶を10秒間のオンオフサイクルで2時間プローブ超音波処理した。プローブ周囲の凝集について試料を30分ごとにチェックした。凝集が観察された場合は、凝集が崩れるまで混合物を手で混合し、プローブを再投与した。最終混合物には目に見える凝集があるべきではない。
【0037】
実施例3:動的粘度の特性評価
好ましい粘度について、窒化ホウ素を含む複合インク配合物及び窒化ホウ素を含まない複合インク配合物を分析した。上記の表1の15.50%の窒化ホウ素を含むインク配合物#1を、窒化ホウ素を含まない配合物(98.5% CN131、0.5%、フェニルビス(2,4,6,7-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、0.5% 2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、0.5% イソプロピルチオキサントン)と比較した。図3に示すように、シリンジを使用してインクのラインを堆積した。窒化ホウ素を含まないと(左)、インクラインはより短く(492~567マイクロメートル)、幅は広くなり(384~576マイクロメートル)、15.5%の窒化ホウ素を含むと(右)、インクラインはより長くなり(885~1020マイクロメートル)、より薄くなる(211~221マイクロメートル)。インクは両方共同じ印刷手順を使用して印刷された。この動作は、印刷解像度に対する窒化ホウ素の影響を示している。15.5%の窒化ホウ素を含有するインクでは、窒化ホウ素を含有しないインクと比較して、意図した形状をより高い精度で印刷することができた。
【0038】
図4は、インクの粘度(cps)を剪断速度(s-1)の関数として示すグラフである。窒化ホウ素を含まないインクの粘度は、試験した全ての剪断速度で215cpsである。15.5%の窒化ホウ素を含むインクの粘度は、5s-1の剪断速度で18,181cpsまでであって、剪断速度50s-1の粘度は3,996.67cpsまでであったため、チキソトロピー挙動を示した。チキソトロピックインデックス(5s及び50s-1の2つの異なる剪断速度における粘度の比)は4.55であった。
【0039】
以下の特許請求の範囲における全てのミーンズまたはステッププラスファンクション要素の対応する構造、材料、行為、及び均等物は、具体的に特許請求された他の特許請求される要素と組み合わせて機能を実施するための任意の構造、材料、または行為を含むことが意図されている。本開示の説明を、例示及び説明を目的として提示してきたが、網羅的であることも、詳述した形態で本開示に限定されることも意図されていない。多くの修正及び変形が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。実施形態の選択及び説明は、本開示の原理及び実際の応用を最良に説明するために、及び他の当業者が、意図した特定の使用に適した様々な修正と共に様々な実施形態を理解できるようにするために行った。
【0040】
好ましい実施形態について説明してきたが、当業者であれば、現在及び将来の両方において、以下の特許請求の範囲内にある様々な改善及び強化を行い得ることを理解されたい。これらの特許請求項は、最初に説明した開示に対する適切な保護を維持するものと解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】