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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】高効率エンジン油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20241209BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20241209BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20241209BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20241209BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241209BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241209BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M159/24
C10M135/10
C10M145/14
C10N10:04
C10N40:25
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526666
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2022060512
(87)【国際公開番号】W WO2023084360
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,296
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾之内 久成
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB41A
4H104BG06C
4H104BH03A
4H104CB08C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB07C
4H104FA02
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
本願は、改善された燃費を有利に示す、内燃エンジンのための潤滑油組成物に関する。該組成物は、主要量の潤滑粘度油、アルカリ土類金属スルホネート清浄剤、及び櫛形ポリメタクリレート粘度調整剤を含み得る。該組成物は、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードであり得、ハイブリット車両に特に有用であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンのための潤滑油組成物であって、
a)主要量の潤滑粘度油、
b)前記潤滑油組成物に1200~2200ppmの金属を提供するアルカリ土類金属スルホネート清浄剤、
c)15未満のPSSIを有する櫛形ポリメタクリレート粘度調整剤、を含み、
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードであり、
前記潤滑油組成物が、摩擦調整剤を実質的に含まない、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油組成物が、200超の粘度指数を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記組成物が、50ppm未満の摩擦調整剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記組成物が、25ppm未満の摩擦調整剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記組成物が、0ppmの摩擦調整剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記組成物が、少なくとも約1%の燃費改善率(FEI)を示す、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも約2%の燃費改善率(FEI)を示す、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑油組成物が、0W-8のSAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、0W-12のSAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記潤滑油組成物が、0W-16のSAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物が、0W-20のSAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属スルホネート清浄剤が、スルホン酸マグネシウム清浄剤、スルホン酸カルシウム清浄剤、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
内燃エンジンにおける燃費を改善するための方法であって、前記エンジンに、
a)主要量の潤滑粘度油、
b)潤滑油組成物に1200~2200ppmの金属を提供するアルカリ土類金属スルホネート清浄剤、
c)15未満のPSSIを有する櫛形ポリメタクリレート粘度調整剤、を含む、前記潤滑油組成物を注油することを含み、
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードであり、
前記潤滑油組成物が、摩擦調整剤を実質的に含まない、前記方法。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が、200超の粘度指数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、50ppm未満の摩擦調整剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、25ppm未満の摩擦調整剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、0ppmの摩擦調整剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも約1%の燃費改善率(FEI)を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、少なくとも約2%の燃費改善率(FEI)を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記潤滑油組成物が、0W-8のSAE粘度グレードである、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記潤滑油組成物が、0W-12のSAE粘度グレードである、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記潤滑油組成物が、0W-16のSAE粘度グレードである、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑油組成物が、0W-20のSAE粘度グレードである、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ土類金属スルホネート清浄剤が、スルホン酸マグネシウム清浄剤、スルホン酸カルシウム清浄剤、またはそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃エンジンのための潤滑油組成物に関し、該組成物は改善された燃費を提供する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる潤滑組成物が先行技術において試みられている。残念ながら、先行技術の潤滑油は、摩擦調整剤が添加されている場合が多く、この摩擦調整剤は、ときには車両のエンジンに有害作用を引き起こすことが発見されている。そのような有害作用には、例えば、堆積物形成の増加、シール破損の増加、及び/またはシール寿命の減少が含まれ得る。また、摩擦調整剤が、例えば、ある特定の耐摩耗添加剤とともに油中に存在する場合、摩擦調整剤は、限定された表面部位の競合において耐摩耗添加剤を少なくとも部分的に打ち負かし得る。これは、摩耗保護を必要とする少なくとも一部の表面上に耐摩耗膜が形成されないため、エンジン部品の摩耗の増加をもたらし得る。
【0003】
燃費を改善する、費用対効果が高く効率的な新たな潤滑油組成物が必要とされる。そのような潤滑油組成物が、性能に悪影響を及ぼし得る摩擦調整剤を用いる必要がなければ望ましいであろう。
【0004】
有利なことに、本願は、燃費を顕著に改善する可能性があり、顕著な量の摩擦調整剤が添加されていない、低粘度潤滑油組成物に関する。一実施形態では、本願は、改善された燃費を示す内燃エンジンのための潤滑油組成物に関し、該潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度油、潤滑油組成物に1200~2200ppmの金属を提供するアルカリ土類金属スルホネート清浄剤、及び15未満のPSSIを有する櫛形ポリメタクリレート粘度調整剤を含む。潤滑油組成物は、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のSAE粘度グレードであり得、摩擦調整剤を実質的に含まないことが可能であり、200超の粘度指数を有し得る。
【0005】
別の実施形態では、本願は、内燃エンジンにおける燃費を改善するための方法に関し、該方法は、該エンジンに前述の潤滑油組成物を注油すること、及び所望であれば、改善された燃費に向けて該エンジンを動作させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
以下の用語は、本明細書全体を通して使用され、別途指示されない限り、以下の意味を有する。
【0007】
「主要量」の潤滑粘度油という用語は、基油の量が潤滑油組成物の少なくとも40重量%である場合を指す。いくつかの実施形態では、「主要量」は、潤滑油組成物の50重量%を超える、60重量%を超える、70重量%を超える、80重量%を超える、または90重量%を超える基油の量を指す。
【0008】
以下の説明において、本明細書に開示される全ての数値は、「約」または「おおよそ」という語がそれに関連して使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、またはときには10~20パーセント変動し得る。
【0009】
「内燃エンジン」という用語は、作動流体の流動回路の構成要素である燃焼室内の酸化剤により燃料の燃焼が起こる任意のエンジンを指す。内燃エンジンは、ハイブリット車両において用いられ、慣習的な車両の内燃エンジンよりも低い温度で動作する場合が多い。
【0010】
「HOB」は、活性分に基づきTBNが250を超える高過塩基性を指し、「LOB」は、活性分に基づきTBNが100未満である低過塩基性を指す。
【0011】
「総塩基数」すなわち「TBN」という用語は、ASTM規格番号D2896または同等の手順に従って、組成物が腐食性の酸を中和し続ける能力を示す、油試料におけるアルカリ度のレベルを指す。試験は、電気伝導率の変化を測定し、結果は、mgKOH/g(1グラムの生成物を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム当量数)として表される。したがって、TBNが高いことは、生成物の過塩基性が強く、結果として、酸を中和するための塩基の予備力がより高いことを反映する。
【0012】
エンジン油用途で一般的に使用される摩擦調整剤は、グリセロールモノオレアート等の有機摩擦調整剤及びモリブデンジチオカルバメート等の無機摩擦調整剤の2つに区分され得る。多くの異なる種類の有機摩擦調整剤または無機摩擦調整剤が存在する。典型的には、有機摩擦調整剤は、0.1~1重量%の範囲で使用される一方で、無機調整剤は、100~1000ppmの金属濃度の範囲である。「実質的に含まない」という用語は、摩擦調整剤を「実質的に含まない」ということに関連して使用される場合、有機摩擦調整剤に関しては0.1重量%未満、または100ppm未満の金属濃度を意味する。
【0013】
潤滑粘度油
本明細書に開示される潤滑油組成物は一般に、少なくとも1種の潤滑粘度油を含む。当業者に既知の任意の基油を本明細書に開示される潤滑粘度油として使用することができる。潤滑油組成物を調製するために好適ないくつかの基油は、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapters 1 and 2(1996)、及びA.Sequeria,Jr.,“Lubricant Base Oil and Wax Processing,”New York,Marcel Decker,Chapter 6,(1994)、及びD.V.Brock,Lubrication Engineering,Vol.43,pages 184-5,(1987)に記載されており、同文献の全てが参照により本明細書に援用される。
【0014】
一般に、潤滑油組成物中の基油の量は、上記で定義されるような「主要量」の潤滑粘度油である。
【0015】
ある特定の実施形態では、基油は、任意の天然または合成の潤滑基油留分であるか、またはそれを含む。合成油のいくつかの非限定的な例としては、エチレン等の少なくとも1つのアルファ-オレフィンの重合から、またはフィッシャー・トロプシュ法等の一酸化炭素及び水素ガスを使用する炭化水素合成手順から調製される、ポリアルファオレフィンすなわちPAO等の油が挙げられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、基油は、100℃で約2.5センチストークス(cSt)~約20cSt、約4センチストークス(cSt)~約20cSt、または約5cSt~約16cStの動粘度を有する。本明細書に開示される基油または潤滑油組成物の動粘度は、ASTM D445(参照により本明細書に援用される)に従って測定され得る。
【0017】
他の実施形態では、基油は、ベースストックまたはベースストックのブレンドであるか、またはそれを含む。さらなる実施形態では、ベースストックは、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含むがこれらに限定されない様々な異なるプロセスを使用して製造される。いくつかの実施形態では、ベースストックは、再精製されたストックを含む。さらなる実施形態では、再精製されたストックは、製造、夾雑、または以前の使用を介して導入された物質を実質的に含まないものとする。
【0018】
いくつかの実施形態では、基油は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509,Fourteen Edition,December 1996(すなわち、API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils)(参照により本明細書に援用される)で指定されるグループI~Vのうちの1種以上におけるベースストックのうちの1種以上を含む。APIガイドラインは、ベースストックを、様々な異なるプロセスを使用して製造され得る潤滑油成分として定義する。グループI、II、及びIIIのベースストックは、鉱油であり、各々が特定の範囲の飽和物量、硫黄含量、及び粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれない他の全てのベースストックが含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、基油は、グループI、II、III、IV、V、またはそれらの組み合わせにおけるベースストックのうちの1種以上を含む。他の実施形態では、基油は、グループII、III、IV、またはそれらの組み合わせにおけるベースストックのうちの1種以上を含む。さらなる実施形態では、基油は、グループII、III、IV、またはそれらの組み合わせにおけるベースストックのうちの1種以上を含み、ここで、基油は、100℃で約2.5センチストークス(cSt)~約20cSt、約4cSt~約20cSt、または約5cSt~約16cStの動粘度を有する。
【0020】
基油は、天然潤滑粘度油、合成潤滑粘度油、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、基油には、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られるベースストック、ならびに粗物質の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出ではなく)水素化分解することによって生成される水素化分解ベースストックが含まれる。他の実施形態では、潤滑粘度基油には、天然油、例えば、動物油、植物油、鉱油(例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系タイプの溶剤処理または酸処理鉱油)、石炭またはシェールに由来する油、及びそれらの組み合わせが含まれる。動物油のいくつかの非限定的な例としては、骨油、ラノリン、魚油、ラード油、イルカ油、アザラシ油、サメ油、獣脂油、及びクジラ油が挙げられる。植物油のいくつかの非限定的な例としては、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、菜種油、トウモロコシ油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大麻油、亜麻仁油、キリ油、オイチシカ油、ホホバ油、及びメドウフォーム油が挙げられる。そのような油は、部分的にまたは完全に水素化され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、合成潤滑粘度油には、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合及び内部重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、それらの類似体及び同族体等が含まれる。他の実施形態では、合成油には、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及び末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾され得るそれらの誘導体が含まれる。さらなる実施形態では、合成油には、ジカルボン酸と様々なアルコールとのエステルが含まれる。ある特定の実施形態では、合成油には、C~C12モノカルボン酸ならびにポリオール及びポリオールエーテルから作製されたエステルが含まれる。さらなる実施形態では、合成油には、トリ-アルキルホスフェートエステル油、例えば、トリ-n-ブチルホスフェート及びトリ-イソ-ブチルホスフェートが含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、合成潤滑粘度油には、ケイ素ベースの油(ポリアルキル(polyakyl)-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、ポリアリールオキシ-シロキサン油及びシリケート油等)が含まれる。他の実施形態では、合成油には、リン含有酸の液体エステル、ポリマーテトラヒドロフラン、ポリアルファオレフィン等が含まれる。
【0023】
ワックスの水素異性化に由来する基油も、単独でまたは前述の天然及び/または合成基油と組み合わせて使用され得る。そのようなワックス異性化油は、水素異性化触媒での天然もしくは合成ワックスまたはそれらの混合物の水素異性化によって生成される。
【0024】
さらなる実施形態では、基油は、ポリ-アルファ-オレフィン(PAO)を含む。一般に、ポリ-アルファ-オレフィンは、約2~約30、約4~約20、または約6~約16個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンに由来し得る。好適なポリ-アルファ-オレフィンの非限定的な例としては、オクテン、デセン、それらの混合物等に由来するものが挙げられる。これらのポリ-アルファ-オレフィンは、100℃で約2~約15、約3~約12、または約4~約8センチストークスの粘度を有し得る。いくつかの例では、ポリ-アルファ-オレフィンは、鉱油等の他の基油と一緒に使用され得る。
【0025】
さらなる実施形態では、基油は、ポリアルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化、アセチル化等によって修飾され得るポリアルキレングリコール誘導体を含む。好適なポリアルキレングリコールの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピレングリコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリアルキレングリコール誘導体の非限定的な例としては、ポリアルキレングリコールのエーテル(例えば、ポリイソプロピレングリコールのメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのモノ及びポリカルボン酸エステル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの例では、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体は、他の基油、例えば、ポリ-アルファ-オレフィン及び鉱油と一緒に使用され得る。
【0026】
さらなる実施形態では、基油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルのうちのいずれかを含む。これらのエステルの非限定的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル等が挙げられる。
【0027】
さらなる実施形態では、基油は、フィッシャー・トロプシュ法によって調製される炭化水素を含む。フィッシャー・トロプシュ法は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して水素及び一酸化炭素を含有するガスから炭化水素を調製する。これらの炭化水素は、基油として有用なものとするためにさらなる処理を必要とし得る。例えば、炭化水素は、当業者に既知のプロセスを使用して脱ろう、水素異性化、及び/または水素化分解され得る。
【0028】
さらなる実施形態では、基油は、未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物を含む。未精製油は、さらなる精製処理をせずに天然または合成供給源から直接的に得られるものである。未精製油の非限定的な例としては、乾留手順から直接的に得られるシェール油、一次蒸留から直接的に得られる石油、及びエステル化プロセスから直接的に得られるエステル油が挙げられ、さらなる処理をせずに使用される。精製油は、未精製油に類似するが、前者は1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製プロセスによってさらに処理されている。溶剤抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出等の多くのそのような精製プロセスが当業者に知られている。再精製油は、精製油を得るために使用されるものと類似するプロセスを精製油に適用することによって得られる。そのような再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、しばしば、使用済添加剤及び油分解生成物の除去に関するプロセスによって追加的に処理される。
【0029】
アルカリ土類金属スルホネート清浄剤
潤滑油組成物は、典型的には、アルカリ土類金属スルホネート清浄剤を含む。アルカリ土類金属スルホネート清浄剤は、特に限定されるわけではないが、いくつかの実施形態は、スルホン酸マグネシウム清浄剤、スルホン酸カルシウム清浄剤、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、スルホネート清浄剤は、フェネート系清浄剤で少なくとも部分的に置換または補充され得る。
【0030】
アルカリ土類金属スルホネート及び/またはフェネート清浄剤の量及び種類は変動し得るが、典型的には、潤滑油組成物に少なくとも約1200ppm、または少なくとも約1300ppm、または少なくとも約1400ppmの金属を提供するように選択される。これに対して、アルカリ土類金属スルホネート清浄剤の量及び種類は、通常、潤滑油組成物に約2200ppm未満、または約2100ppm未満、または約2000ppm未満の金属を提供するように選択される。
【0031】
潤滑油組成物は、上述のアルカリ土類金属清浄剤に加えて第2の清浄剤を、第2の清浄剤が該組成物の向上した燃料効率に悪影響を及ぼさない限り含んでもよい。好適な金属清浄剤のいくつかの非限定的な例としては、硫化または非硫化アルキルまたはアルケニルフェネート、アルキルまたはアルケニル芳香族スルホネート、ホウ素化スルホネート、マルチ-ヒドロキシアルキルまたはアルケニル芳香族化合物の硫化または非硫化金属塩、アルキルまたはアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化または非硫化アルキルまたはアルケニルナフテナート、アルカン酸の金属塩、アルキルまたはアルケニル多酸(multiacid)の金属塩、ならびにそれらの化学的及び物理的混合物が挙げられる。好適な金属清浄剤の他の非限定的な例としては、金属スルホネート、フェネート、サリシレート、ホスホネート、チオホスホネート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。金属は、スルホネート、フェネート、サリシレート、またはホスホネート清浄剤を作製するのに好適な任意の金属であり得る。好適な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属(alkali metal)、アルカリ金属(alkaline metal)、及び遷移金属が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属は、Ca、Mg、Ba、K、Na、Li等である。
【0032】
いくつかの好適な清浄剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapter 3,pages 75-85(1996)、及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker,Chapter 4,pages 113-136(2003)に記載されており、同文献の両方が参照により本明細書に援用される。
【0033】
清浄剤は、高過塩基性スルホン酸カルシウム等の少なくとも1種の高過塩基性(活性分に基づき250を超えるTBN)スルホネート清浄剤、及びフェネート清浄剤等の少なくとも1種の非スルホネート清浄剤を含み得る。
【0034】
使用され得る追加の清浄剤には、油溶性過塩基性スルホネート、非スルホネート含有フェネート、硫化フェネート、サリキサレート、サリシレート、サリゲニン、複合清浄剤及びナフテナート清浄剤、ならびに金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムの他の油溶性ヒドロキシ安息香酸アルキルが含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウム及びマグネシウム(どちらも潤滑剤に使用される清浄剤中に存在し得る)、ならびにカルシウム及び/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。
【0035】
過塩基性金属清浄剤は、一般に、炭化水素、清浄剤の酸、例えば、スルホン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキル等、金属酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)、ならびにキシレン、メタノール、及び水等の促進剤の混合物を炭酸塩化することによって生成される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、炭酸塩化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムは二酸化炭素ガスと反応して、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は、過剰のCaOまたはCa(OH)により中和されて、スルホネートを形成する。
【0036】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、活性分に基づき100未満のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一態様では、低過塩基性塩のTBNは、約10、約20、または約30~約100であり得る。別の態様では、低過塩基性塩のTBNは、約30~約80であり得る。過塩基性清浄剤は、中程度の過塩基性、例えば、活性分に基づき約100~約250のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一態様では、中程度の過塩基性塩のTBNは、約100~約200であり得る。別の態様では、中程度の過塩基性塩のTBNは、約125~約175であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば、活性分に基づき250を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一態様では、高過塩基性塩のTBNは、活性分に基づき約250~約800であり得る。
【0037】
一態様では、清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。好適なヒドロキシ芳香族化合物には、1~4つ、好ましくは1~3つのヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。好適なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、及びクレゾール等が含まれる。
【0038】
非分散型コームポリメタクリレート
非分散型コームポリメタクリレート(コームPMA)は、粘度調整剤または粘度指数向上剤として使用され得る櫛形ポリマーである。一実施形態では、本明細書で使用されるコームPMAは、ASTM D7109(Kurt Orbahnせん断安定性)に従って15未満、または10未満、または5未満、または1未満の永久せん断安定性指数(PSSI)を有する。
【0039】
一実施形態では、非分散型コームPMAは、300,000g/mol~600,000g/mol、350,000g/mol~550,000g/mol、375,000g/mol~500,000g/mol、または390,000g/mol~460,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0040】
一実施形態では、非分散型コームPMAは、35,000g/mol~105,000g/mol、45,000g/mol~95,000g/mol、55,000g/mol~85,000g/mol、または65,000g/mol~75,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。別の実施形態では、非分散型コームPMAは、150,000g/mol~250,000g/molまたは200,000g/mol~215,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0041】
一実施形態では、非分散型コームPMAは、0.1~1.0、0.2~0.9、または0.3~0.8のせん断安定性指数(SSI)を有する。
【0042】
潤滑油組成物の非分散型コームPMAは、US2017/0298287A1及びJP2019014802に記載されるように説明され得、同文献の開示は参照により本明細書に援用される。非分散型コームPMAは、Evonikから入手可能であるViscoplex(登録商標)粘度指数向上剤3-201及び/または3-162によって提供され得る。
【0043】
一実施形態によれば、非分散型コームPMAは、樹脂主成分としてコームPMAを含む、Viscoplex(登録商標)3-201と称される化合物によって提供される。この非分散型コームPMAは、420,000g/molの重量平均分子量(Mw)、70,946g/molの数平均分子量(Mn)、及び5.92のMw/Mnを有する。この化合物は、500以上のMnを有するマクロモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する。非分散型コームPMAは、化合物の総重量に基づいて19重量%の量で存在する。
【0044】
別の実施形態によれば、非分散型コームPMAは、同じく樹脂主成分としてコームPMAを含む、Viscoplex(登録商標)3-162と称される化合物によって提供される。この非分散型コームPMAは、ASTM D7109によって測定するとき399,292g/molの重量平均分子量(Mw)、205,952g/molの数平均分子量(Mn)、1.94のMw/Mn、及び0.6の永久せん断安定性指数(PSSI)を有する。
【0045】
別の実施形態によれば、非分散型コームPMAは、化合物の組み合わせ、例えば、Viscoplex(登録商標)3-201及びViscoplex(登録商標)3-162の組み合わせによって提供される。
【0046】
非分散型コームPMAは、典型的には、潤滑油組成物の総重量に基づいて0.5重量%~25重量%、1重量%~20重量%、2重量%~18重量%、4重量%~16重量%、または5重量%~15重量%の量で存在する。
【0047】
非分散型コームPMA粘度調整剤は、線形ポリ(メタ)クリレート(PMA)、オレフィンコポリマー(OCP)、及び水素化星形ジエン(HSD)タイプの粘度指数向上剤等の他の粘度調整剤と比較して強化された性能を提供することが予想外に発見されている。線形ポリ(メタ)クリレート粘度調整剤は、一般に、異なるメタクリル酸アルキルの混合物の単純なフリーラジカル共重合によって合成される。コーム型PMAとは異なり、従来の線形PMAは、主として短鎖長のアルキル(典型的には1~50炭素)の存在、及びコームポリマーにそれらの特徴的な形状を与える長鎖アルキルマクロモノマーの欠如を特徴とする。米国特許第3,607,749号及び同第8,778,857号、ならびに欧州特許0225,598を参照されたい。オレフィンコポリマー粘度調整剤は、典型的には、エチレン及びプロピレンを含み、場合によっては、第3のモノマーとしてジエンを含有し得る。例えば、米国特許第7,402,235号及び同第5,391,617号、ならびに欧州特許0638,611を参照されたい。水素化スチレン-ジエンタイプの粘度指数向上剤は、スチレン及びブタジエンを共重合し、不飽和コポリマーを水素化することによって調製することができる。水素化スチレン-ジエンコポリマーは、線形ブロックコポリマーまたは星形であり得る。潤滑油における粘度調整剤としてのHSDコポリマーの例については、米国特許第4,116,917号、同第3,772,196号、及び同第4,788,316号を参照されたい。
【0048】
本願の潤滑油組成物の他の特性
本願の潤滑油組成物は、一般に、0W-8、0W-12、0W-16、または0W-20のいずれかのSAE粘度グレードである。
【0049】
潤滑油組成物は、一般に、約200超、または約205超、または約210超、または約220超、または約240超から約270まで、またはそれよりも高い粘度指数を有する。
【0050】
潤滑油組成物は、一般に、燃費を改善する。燃費改善率(下記に記載されるようなFEI)の程度は、特定の潤滑油組成物、用いられるエンジン、及び他の要因に応じて変動し得る。場合によっては、本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1%、または少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%から最大4%まで、またはそれよりも高い燃費改善率(FEI)を示す。
【0051】
上記の成分及び特性に一致する他の添加剤が添加されてもよい
上述の潤滑組成物の成分及び特性と一致する限り、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与し得るかまたはそれを改善し得る、少なくとも添加剤または調整剤(これ以降、「添加剤」と表記される)をさらに含んでもよい。当業者に既知の任意の添加剤が、本明細書に開示される潤滑油組成物において使用され得る。いくつかの好適な添加剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition.London,Springer,(1996)、及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker(2003)に記載されており、同文献の両方が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、添加剤は、酸化防止剤、耐摩耗剤、清浄剤、防錆剤、解乳化剤、摩擦調整剤、多機能性添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、発泡防止剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、抗ヘイズ添加剤、アイシング阻害剤、色素、マーカー、静電気消散剤、殺生物剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0052】
添加剤の特に好適な組み合わせは、上述の量のグリセロール、炭酸エチレン後処理済みビススクシンイミド等の分散剤添加剤、第一級アルコールに由来するもの等のジアルキルジチオリン酸亜鉛等の耐摩耗添加剤、ならびに少なくとも1種の高過塩基性スルホネート清浄剤(例えば、高過塩基性スルホン酸カルシウム)及び少なくとも1種の非スルホネート清浄剤(例えば、フェネート清浄剤)を含む上述したような清浄剤組成物を含む。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第一級、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせであり、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。炭酸エチレン後処理済みビススクシンイミド等の分散剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて0.1~10重量%(例えば、0.5~8、0.7~7、0.7~6、0.7~6、0.7~5、0.7~4重量%)で存在し得る。
【0053】
一般に、潤滑油組成物中の添加剤の各々の濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0054】
耐摩耗剤
任意選択で、本明細書に開示される潤滑油組成物は、1種以上の耐摩耗剤を含むことができる。耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。好適な耐摩耗剤には、以下の構造のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)等のジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が含まれ、
Zn[S-P(=S)(OR)(OR)]
式中、R及びRは、1~18(例えば、2~12)個の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリル、及び脂環式ラジカル等のラジカルを含む、同じまたは異なるヒドロカルビルラジカルであり得る。R及びR基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキルラジカルは、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の総数(すなわち、R+R)は、少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第一級、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。
【0055】
分散剤
任意選択で、本明細書に開示される潤滑油組成物は、分散剤をさらに含み得る。分散剤は、エンジン動作中の酸化からもたらされる油に不溶性である物質を懸濁させて維持し、こうして金属部品上のスラッジの凝集及び沈殿または堆積を防止する。本明細書で有用な分散剤には、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンにおける使用に際して堆積物の形成を低減するのに有効であることが知られている、窒素含有無灰(金属不含)分散剤が含まれる。好適な分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、ならびにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド、及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が含まれる。また、ポリアミン及びヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物も好適である。これらの分散剤の混合物もまた使用することができる。
【0056】
塩基性窒素含有無灰分散剤は、周知の潤滑油添加剤であり、それらの調製のための方法は、特許文献に広範に記載される。好ましい分散剤は、アルケニル置換基が好ましくは40炭素原子超の長鎖である、アルケニルスクシンイミド及びスクシンアミドである。これらの材料は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸材料を、アミン官能基を含有する分子と反応させることによって容易に作製される。好適なアミンの例は、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、及びポリオキシアルキレンポリアミン等のポリアミンである。当業者には知られているが、分散剤は、(例えば、ホウ素化剤、炭酸エチレン、または環状炭酸エステルで)後処理されてもよい。窒素含有無灰(金属不含)分散剤は塩基性であり、追加の硫酸塩灰分を導入することなく、当該分散剤が添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。分散剤は、潤滑油組成物の活性分レベルに基づいて0.1~10重量%(例えば、0.5~8、0.7~7、0.7~6、0.7~6、0.7~5、0.7~4重量%)で存在し得る。分散剤からの窒素は、完成した油中の分散剤の重量に基づいて0.0050~0.30重量%超(例えば、0.0050~0.10重量%、0.0050~0.080重量%、0.0050~0.060重量%、0.0050~0.050重量%、0.0050~0.040重量%、0.0050~0.030重量%超)で存在する。
【0057】
酸化防止剤
任意選択で、本明細書に開示される潤滑油組成物は、基油の酸化を低減または防止し得る追加の酸化防止剤をさらに含み得る。当業者に既知の任意の酸化防止剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、アミンベースの酸化防止剤(例えば、アルキルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化p-フェニレンジアミン、テトラメチル-ジアミノジフェニルアミン等)、フェノール系酸化防止剤(例えば、2-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-ジ-tert-ブチル-o-クレゾール)等)、硫黄ベースの酸化防止剤(例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、硫化フェノール系酸化防止剤等)、リンベースの酸化防止剤(例えば、ホスファイト等)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。酸化防止剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%まで変動し得る。いくつかの好適な酸化防止剤が、Leslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York.Marcel Dekker,Chapter 1,pages 1-28(2003)に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
摩擦調整剤
上述したように、本明細書に開示される潤滑油組成物は、一般に、摩擦調整剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、約50ppm未満を含むように上記で定義される。いくつかの例では、本明細書に開示される潤滑油組成物は、約25ppm未満またはさらには0ppmの摩擦調整剤を含む。本明細書に開示される潤滑油組成物から典型的に除外される摩擦調整剤は、脂肪族カルボン酸;脂肪族カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ素化エステル、アミド、金属塩等);モノ-、ジ-、またはトリ-アルキル置換リン酸またはホスホン酸;モノ-、ジ-、またはトリ-アルキル置換リン酸またはホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩等);モノ-、ジ-、またはトリ-アルキル置換アミン;モノ-またはジ-アルキル置換アミド;アルコキシル化脂肪族アミン;ホウ素化脂肪族エポキシド;脂肪族ホスファイト、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル;脂肪族イミダゾリン;C~C75、またはC~C24、またはC~C20の脂肪酸エステル、ならびにアンモニア及びアルカノールアミンからなる群から選択される窒素含有化合物の反応生成物;モリブデンジチオカルバメート(MoDTC);モリブデンジチオホスフェート(MoDTP);モリブデンアミン;モリブデンアルコレート;ならびにモリブデンアルコール-アミドである。
【0058】
流動点降下剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、潤滑油組成物の流動点を低下させ得る流動点降下剤を含むことができる。当業者に既知の任意の流動点降下剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な流動点降下剤の非限定的な例としては、ポリメタクリレート、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ジ(テトラ-パラフィンフェノール)フタレート、テトラ-パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンの縮合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィン及びフェノールの縮合物、ポリアルキルスチレン等を含む。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%まで変動し得る。いくつかの好適な流動点降下剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 187-189(1996)、及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker,Chapter 11,pages 329-354(2003)に記載されており、同文献の両方が参照により本明細書に援用される。
【0059】
解乳化剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、水または蒸気に曝露される潤滑油組成物中の油水分離を促進し得る解乳化剤を含むことができる。当業者に既知の任意の解乳化剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な解乳化剤の非限定的な例としては、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキル-ナフタレンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート等)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドのブロックコポリマー、プロピレンオキシド等)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。解乳化剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%まで変動し得る。いくつかの好適な解乳化剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition.London,Springer,Chapter 6,pages 190-193(1996)に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0060】
発泡防止剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、油における泡沫を分解し得る発泡防止剤または消泡剤を含むことができる。当業者に既知の任意の発泡防止剤または消泡剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な消泡剤の非限定的な例としては、シリコーン油またはポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシル化脂肪族酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分岐状ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、消泡剤は、グリセロールモノステアレート、ポリグリコールパルミテート、トリアルキルモノチオホスフェート、スルホン化リシンオレイン酸のエステル、ベンゾイルアセトン、サリチル酸メチル、グリセロールモノオレエート、またはグリセロールジオレエートを含む。消泡剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%まで変動し得る。いくつかの好適な消泡剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 190-193(1996)に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0061】
腐食防止剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、腐食を低減し得る腐食防止剤を含むことができる。当業者に既知の任意の腐食防止剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な腐食防止剤の非限定的な例としては、ドデシルコハク酸の半エステルまたはアミド、リン酸エステル、チオホスフェート、アルキルイミダゾリン、サルコシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%まで変動し得る。いくつかの好適な腐食防止剤が、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 193-196(1996)に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0062】
極圧剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、極圧の条件下で摺動する金属表面が焼き付くことを防止し得る極圧(EP)剤を含むことができる。当業者に既知の任意の極圧剤が潤滑油組成物において使用され得る。一般に、極圧剤は、金属と化学的に組み合わさって、高荷重下で対向金属表面における凹凸の溶着を防止する表面膜を形成し得る化合物である。好適な極圧剤の非限定的な例としては、動物性または植物性硫化脂肪または油、動物性または植物性硫化脂肪酸エステル、リンの3価または5価の酸の完全または部分エステル化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールスアルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステル及び一価不飽和オレフィンの硫化または共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、及びアルファ-オレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チア-アルデヒド、チア-ケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペン及び非環式オレフィンの共硫化ブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルのアミン塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約5重量%、約0.05重量%~約3重量%、または約0.1重量%~約1重量%まで変動し得る。いくつかの好適な極圧剤が、Leslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker,Chapter 8,pages 223-258(2003)に記載されており、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0063】
防錆剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、任意選択で、鉄系金属表面の腐食を阻害し得る防錆剤を含むことができる。当業者に既知の任意の防錆剤が潤滑油組成物において使用され得る。好適な防錆剤の非限定的な例としては、油溶性モノカルボン酸(例えば、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、セロチン酸等)、油溶性ポリカルボン酸(例えば、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等から生成されるもの)、アルケニル基が10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸(例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸等);600~3000ダルトンの範囲の分子量を有する長鎖アルファ,オメガ-ジカルボン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。防錆剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%まで変動し得る。
【0064】
好適な防錆剤の他の非限定的な例としては、非イオン性ポリオキシエチレン表面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリエチレングリコールモノオレエートが挙げられる。好適な防錆剤のさらなる非限定的な例としては、ステアリン酸及び他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0065】
多機能性添加剤
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも多機能性添加剤を含む。好適な多機能性添加剤のいくつかの非限定的な例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン-モリブデン錯体化合物、及び硫黄含有モリブデン錯体化合物が挙げられる。
【0066】
粘度調整剤
ある特定の実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも粘度調整剤を含む。好適な粘度調整剤のいくつかの非限定的な例としては、ポリメタクリレート型ポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、水和スチレン-イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散剤型の粘度調整剤が挙げられる。
【0067】
金属不活性化剤
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも金属不活性化剤を含む。好適な金属不活性化剤のいくつかの非限定的な例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、及びメルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。
【0068】
添加剤濃縮配合物
本明細書に開示される添加剤は、複数の添加剤を有する添加剤濃縮物の形態であってもよい。添加剤濃縮物は、好適な希釈剤、例えば、好適な粘度の炭化水素油を含み得る。そのような希釈剤は、天然油(例えば、鉱油)、合成油、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。鉱油のいくつかの非限定的な例としては、パラフィンベースの油、ナフテンベースの油、アスファルトベースの油、及びそれらの組み合わせが挙げられる。合成基油のいくつかの非限定的な例としては、ポリオレフィン油(特に水素化アルファ-オレフィンオリゴマー)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド、芳香族エーテル、及びカルボン酸エステル(特にジエステル油)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、希釈剤は、軽炭化水素油(天然または合成の両方)である。一般に、希釈剤油は、40℃で約13センチストークス~約35センチストークスの粘度を有し得る。
【0069】
一般に、希釈剤は、潤滑油に可溶性の添加剤を容易に可溶化し、潤滑基油ストックまたは燃料に容易に可溶となる油添加剤濃縮物を提供することが所望される。また、希釈剤は、例えば、高揮発性、高粘度、及びヘテロ原子等の不純物を含むあらゆる望ましくない特性を潤滑基油ストックに、ひいては、最終的には完成した潤滑油または燃料に導入しないことが所望される。
【0070】
本願は、不活性希釈剤及び総濃縮物に基づいて2.0重量%~90重量%、好ましくは10重量%~50重量%の本願による油溶性添加剤組成物を含む、油溶性添加剤濃縮組成物をさらに提供する。
【0071】
上述の添加剤を含む潤滑油組成物は、内燃エンジンにおける燃費を改善するための方法において用いられてもよく、該方法は、該エンジンに、添加剤を含む潤滑油組成物を注油すること、及びエンジンを動作させることを含む。
【0072】
以下の実施例は、実施形態を例示するために提供されるものであり、本願を記載される特定の実施形態に限定することは意図されない。それとは反対の指示がない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量を基準とする。全ての数値は近似値である。数値範囲が与えられる場合、定められる範囲外の実施形態が依然として本願の範囲内に入り得ることを理解されたい。各例に記載される具体的な詳細は、必要な特徴として解釈されるべきではない。
【実施例
【0073】
以下の実施例は、例示する目的のみが意図され、範囲をいかようにも限定しない。
【0074】
実施例1
SAE 0W-8潤滑油は、以下の成分を2.5cStのグループIIIの基油と一緒にブレンドすることによって調製した。
A)3.5重量%のスクシンイミド分散剤
B)410mg KOH/gのTBNを有する1700ppm(カルシウム含量を単位として)の過塩基性スルホン酸カルシウム清浄剤
C)750ppm(リン含量を単位として)の第二級ZnDTP
D)1.0重量%のフェノール系酸化防止剤
E)7.1重量%のコーム型PMA粘度調整剤
F)5ppmのケイ素ベースの発泡防止剤
実施例1の潤滑油組成物は、4.34cStのKV100、13.43のKV40、及び272の粘度指数を有していた。
【0075】
比較例1
比較例1の潤滑油は、コーム型PMA粘度調整剤を3.78重量%の線形分散型PMA粘度調整剤で置き換えたことを除いて、実施例1と同一に配合した。比較例1の潤滑油組成物は、4.80cStのKV100、17.12のKV40、及び226の粘度指数を有していた。
【0076】
比較例2
比較例2の潤滑油は、コーム型PMA粘度調整剤を5.78重量%のオレフィンコポリマー粘度調整剤で置き換えたことを除いて、実施例1と同一に配合した。また、0.40重量%の流動点降下剤も添加した。比較例2の潤滑油組成物は、4.74cStのKV100、19.65のKV40、及び171の粘度指数を有していた。
【0077】
比較例3
比較例3の潤滑油は、スルホン酸カルシウム清浄剤を、410mg KOH/gのTBNを有する等量(カルシウムに基づいて)のサリチル酸カルシウム清浄剤で置き換えたことを除いて、実施例1と同一に配合した。比較例3の潤滑油組成物は、4.37cStのKV100、13.48のKV40、及び275の粘度指数を有していた。
【0078】
比較例4
比較例4の潤滑油は、さらに70ppm(ホウ素を単位として)のホウ素化エステル摩擦調整剤を組成物中にブレンドしたことを除いて、実施例1と同一に配合した。
【0079】
比較例5
比較例5の潤滑油は、さらに660ppm(モリブデンを単位として)のMoDTCを組成物中にブレンドしたことを除いて、実施例1と同一に配合した。
【0080】
実施例2
実施例2の潤滑油は、0W-16のSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物を生成するために4cStのグループIIIの基油を代わりに使用したことを除いて、実施例1と同一に配合した。実施例2の潤滑油組成物は、6.29cStのKV100、26.02のKV40、及び208の粘度指数を有していた。
【0081】
比較例6
比較例6の潤滑油は、スルホン酸カルシウム清浄剤を、410mg KOH/gのTBNを有する等量(カルシウムに基づいて)のサリチル酸カルシウム清浄剤で置き換えたことを除いて、実施例2と同一に配合した。比較例6の潤滑油組成物は、6.32cStのKV100、25.90のKV40、及び211の粘度指数を有していた。
【0082】
Toyota 2ZR-FXE(JASO M366)における燃費試験
上記の潤滑油組成物を、ガソリンモーターエンジン(Toyota 2ZR-FXE 1.8L L-4)においてそれらの燃費性能に関して試験した。試験機器及び条件の詳細な構成は、SAE paper 2019-01-2296 Jikuya,H.,Mori,S.,Yamamori,K.,and Hirano,S.,“Development of Firing Fuel Economy Engine Dyno Test Procedure for JASO Ultra Low Viscosity Engine Oil Standard(JASO GLV-1),”SAE Technical Paper 2019-01-2296,2019に見出すことができ、同資料は参照により本明細書に援用される。試験油は、1350rpmで動作させるエンジンにおいて10時間、88℃の油温度で事前調整する。試験油の燃料消費は、4時間の期間にわたって測定し、ベースライン較正(BC)油の燃料消費に対して比較する。
【0083】
上述の試験方法で使用したBC油はJASO BC油とは異なり、BC油の粘度測定値を下記に示す。
【表1】
【0084】
候補となる油の試験に関して燃費改善率(FEI)を、下記に示される2種のBC油の平均値に対する相対的改善率(変化%)として算出する。FEI値が高いほど、燃費性能が全体的により良好であることを示す。
【数1】

TFC:全燃料消費量(kg/時)
FC:ステージiにおける燃料消費率(kg/時)
パワー:ステージiにおける実際のパワー出力(kW)
公称パワー:ステージiにおける公称パワー出力(kW)
【数2】

FEI:燃費改善率(%)
TFCBCB:候補となる試験油の前のBC油のTFC(kg/時)
TFCCAN:候補となる試験油のTFC(kg/時)
TFCBCA:候補となる試験油の後のBC油のTFC(kg/時)
【0085】
【表2】
【0086】
実施例1対比較例1及び2のFEIの結果は、コームPMAが線形分散型PMAまたはOCP粘度調整剤と比較してより良好な燃費を提供することを示す。比較例3によって示されるように、スルホネートのサリシレート清浄剤での置き換えもまた、より低い燃費値をもたらした。さらに、いずれの追加のFMの不在下でのスルホネート清浄剤及びコームPMAの組み合わせは、ホウ素ベースの摩擦調整剤を含有する比較例4より性能が優れている。FMが添加されていないコームPMA及びスルホネートの組み合わせ(実施例2対比較例6)が、より粘度の高い配合物において有効であることもまた実証された。
【0087】
本明細書に開示される実施形態に対して種々の修正が行われ得ることが理解されよう。したがって、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。例えば、動作のために上述され、実装される機能は、例示のみを目的としている。他の配置構成及び方法が、本願の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者によって実装され得る。その上、当業者は、他の修正が添付の請求項の範囲及び趣旨内にあることを想定しよう。
【国際調査報告】