(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】細胞由来微小粒子送達システムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20241209BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241209BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P25/00
A61K47/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526742
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 US2022048686
(87)【国際公開番号】W WO2023081196
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512226882
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ デラウェア
(74)【代理人】
【識別番号】110002480
【氏名又は名称】弁理士法人IPアシスト
(72)【発明者】
【氏名】グレッグホーン・ジェイソン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ドンザンティ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ズラコウスキ・ライアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB12
4C076EE41
4C076EE57
4C076FF68
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA16
4C087MA17
4C087NA13
4C087ZA02
(57)【要約】
本発明は、コアとコアを囲む膜とを含み、膜が細胞膜成分を含む、微小粒子に関する。微小粒子を輸送するための方法が提供される。輸送方法は、微小粒子を内皮に投与することであって、それによって微小粒子が内皮に結合すること;および微小粒子を、内皮を横断して移動させることを含む。また、微小粒子を調製するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を輸送するための方法であって、微小粒子がコアとコアを囲む膜とを含み、膜が細胞膜成分を含み、方法が、
(a)微小粒子を内皮に投与することであって、それによって微小粒子が内皮に結合すること、および
(b)微小粒子を、内皮を横断して移動させること
を含む、前記方法。
【請求項2】
内皮が脳またはリンパ節内にある、請求項1の方法。
【請求項3】
内皮が対象内にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
膜が標的化部分をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
標的化部分が、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含む、請求項4の方法。
【請求項6】
内皮を横断して微小粒子を移動させた後、微小粒子を標的部位に移動させることをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
内皮がリンパ節内にあり、標的部位がリンパ節内の小葉である、請求項6の方法。
【請求項8】
内皮が脳内にあり、標的部位が脳実質または脳脊髄液(CSF)内にある、請求項6の方法。
【請求項9】
内皮および標的部位が腫瘍内にある、請求項6の方法。
【請求項10】
コアが活性薬剤を含み、標的部位で活性薬剤を放出することをさらに含む、請求項6~9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
微小粒子によって標的部位から分子を封鎖することをさらに含む、請求項6~10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
標的部位で生物学的応答を引き起こすことをさらに含む、請求項6~11のいずれか一項の方法。
【請求項13】
生物学的応答が、免疫相互作用、がん治療、ワクチン応答、および免疫療法よりなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
コアとコアを囲む膜とを含み、膜が細胞膜成分を含む、微小粒子。
【請求項15】
膜が合成の膜成分をさらに含む、請求項14の微小粒子。
【請求項16】
膜が透過処理細胞からのものである、請求項14または15の微小粒子。
【請求項17】
透過処理細胞が、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものである、請求項16の微小粒子。
【請求項18】
透過処理細胞が、透過処理白血球である、請求項16または17の微小粒子。
【請求項19】
膜が標的化部分をさらに含む、請求項14~18のいずれか一項の微小粒子。
【請求項20】
標的化部分が、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含む、請求項19の微小粒子。
【請求項21】
コアが、細胞質、液体、ポリマー、細胞外マトリクスタンパク質、またはそれらの組み合わせを含む、請求項14~20のいずれか一項の微小粒子。
【請求項22】
コアが活性薬剤を含む、請求項14~21のいずれか一項の微小粒子。
【請求項23】
活性薬剤が、生物学的分子、化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22の微小粒子。
【請求項24】
活性薬剤が、ナノ粒子、リポソーム、ウイルス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22または23の微小粒子。
【請求項25】
活性薬剤が、治療薬、イメージング剤、封鎖剤、予防薬、診断薬、予後診断薬、添加剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22~24のいずれか一項の微小粒子。
【請求項26】
コアが白血球から調製される、請求項14~25のいずれか一項の微小粒子。
【請求項27】
微小粒子が免疫原性でない、請求項14~26のいずれか一項の微小粒子。
【請求項28】
コアを膜と混合することを含む、微小粒子を調製するための方法であって、膜が細胞膜成分を含む、前記方法。
【請求項29】
膜が合成の膜成分をさらに含む、請求項28の方法。
【請求項30】
膜が透過処理白血球の細胞膜であり、方法が透過処理白血球内にコアを添加することをさらに含む、請求項28または29の方法。
【請求項31】
コアを膜で包むことをさらに含む、請求項28または29の方法。
【請求項32】
膜が透過処理白血球からの透過処理白血球膜である、請求項31の方法。
【請求項33】
透過処理白血球が、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものである、請求項30または32の方法。
【請求項34】
透過処理白血球が、透過処理リンパ球である、請求項30、32または33の方法。
【請求項35】
膜が標的化部分をさらに含む、請求項28~34のいずれか一項の方法。
【請求項36】
標的化部分が、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含む、請求項36の方法。
【請求項37】
コアに活性薬剤を負荷することをさらに含む、請求項28~36のいずれか一項の方法。
【請求項38】
透過処理白血球からコアを調製することをさらに含む、請求項28~37のいずれか一項の方法。
【請求項39】
透過処理白血球が、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものである、請求項38の方法。
【請求項40】
透過処理白血球が、透過処理リンパ球である、請求項38または30の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月3日に出願された米国仮出願第63/275,027号の優先権を主張するものであり、その内容はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本発明は、概して、内皮バリアを横断するための送達システムとして有用な細胞由来微小粒子、ならびにその使用および調製に関する。
【背景技術】
【0003】
身体の多くの部分への標的化薬剤送達、特に、選択的かつ制限的な内皮のために中枢神経系(CNS)およびリンパ節(LN)への送達は、依然として中心的な課題である。内皮は、循環血液およびリンパ液を体内組織から隔てる組織である。そうであるから、循環血流やリンパ液から移動する全ての液体、分子、高分子および細胞は、内皮バリアを横断しなければならない。腫瘍や他の病的増殖で起こる血管内皮の調節異常は、液体、分子およびナノサイズの凝集体(またはナノ粒子)、ならびに細胞の受動的輸送を可能にする。一方、病態の非存在下では、正常な内皮は、異なった組織および異なった血管タイプにおいて局所的なバリア特性を有する選択的バリアとして作用する。例えば、身体のいくつかの部分では、内皮は、例えば骨髄などにおける大きな開窓(フェネストレーション)、または例えば筋肉などの組織における毛細血管ネットワークを有しており、もともと「漏れやすい(leaky)」。このアーキテクチャは、液体、分子およびナノサイズの凝集体(またはナノ粒子)の受動的輸送を可能にし、また、ポドサイト形成や循環細胞からの能動的プロセスで記録されているように、開いた毛細血管開窓を通じた細胞の能動的圧搾を可能にする。中枢神経系(CNS)の血液脳関門(BBB)やリンパ節(LN)の高内皮細静脈(HEV)といった体内の他の部位にも、大半の低分子薬のこれらの部位への受動的輸送を厳しく制限するという同様の特徴がある。従来、循環細胞は内皮を通って能動的に血管外遊出することによってこれらの内皮バリアを通過することができるというのがドグマであり、内皮を通じた細胞圧搾として文献に古典的に描写されている。内皮を通過する細胞輸送のメカニズムはいくつか知られているが、これらのメカニズムに関する記述は、血管外遊出細胞からの能動的なプロセスに依存している。
【0004】
様々な活性薬剤(active agent)を、内皮バリアを横断して、例えば脳およびリンパ節内の標的部位に輸送するための有効な送達システムへのニーズは依然として残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、内皮を横断する能力を有する非自然発生的な微小粒子を発見した。本発明は、活性薬剤を、内皮バリアを横断して、例えば脳およびリンパ節内の標的部位に送達するための微小粒子に関する。
【0006】
微小粒子が提供される。微小粒子は、コアとコアを囲む膜とを含み、膜は細胞膜成分を含む。
【0007】
膜は、合成の膜成分をさらに含み得る。
【0008】
膜は、透過処理された細胞(透過処理細胞)からのものであり得る。透過処理細胞は、凍結透過処理(cryopermeabilization)、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。透過処理細胞は、透過処理された白血球(透過処理白血球)であり得る。
【0009】
膜は、標的化部分をさらに含み得る。標的化部分は、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体(ion channel linked receptor)、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含み得る。
【0010】
コアは、細胞質、液体、ポリマー、細胞外マトリクスタンパク質、またはそれらの組み合わせを含み得る。コアは、活性薬剤を含み得る。活性薬剤は、生物学的分子、化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、ナノ粒子、リポソーム、ウイルス、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、治療薬、イメージング剤、封鎖剤(sequestering agent)、予防薬、診断薬、予後診断薬、添加剤(excipient)、またはそれらの組み合わせを含み得る。コアは、白血球から調製され得る。
【0011】
微小粒子は、免疫原性でないものであり得る。
【0012】
微小粒子を輸送するための方法が提供される。微小粒子は、微小粒子は、コアとコアを囲む膜とを含み、膜は細胞膜成分を含む。輸送方法は、微小粒子を内皮に投与することであって、それによって微小粒子が内皮に結合すること;および微小粒子を、内皮を横断して移動させることを含む。内皮は、脳またはリンパ節内にあり得る。内皮は、対象内にあり得る。
【0013】
輸送方法によると、膜は、標的化部分をさらに含み得る。標的化部分は、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含み得る。
【0014】
輸送方法は、内皮を横断して微小粒子を移動させた後、微小粒子を標的部位に移動させることをさらに含み得る。内皮はリンパ節内にあり得て、標的部位はリンパ節内の小葉(lobule)であり得る。内皮は脳内にあり得て、標的部位は脳実質または脳脊髄液(CSF)内にあり得る。内皮および標的部位は、腫瘍内にあり得る。
【0015】
コアは、活性薬剤を含み得て、輸送方法は、標的部位で活性薬剤を放出することをさらに含み得る。
【0016】
輸送方法は、微小粒子によって標的部位から分子を封鎖(sequester)することをさらに含み得る。
【0017】
輸送方法は、標的部位で生物学的応答を引き起こすことをさらに含み得る。生物学的応答は、免疫相互作用、がん治療、ワクチン応答、および免疫療法よりなる群から選択され得る。
【0018】
微小粒子を調製するための方法がさらに提供される。調製方法は、コアを膜と混合することを含み、膜は細胞膜成分を含む。膜は、合成の膜成分をさらに含み得る。
【0019】
膜は、透過処理白血球の細胞膜であり得て、調製方法は、透過処理白血球内にコアを添加することをさらに含み得る。透過処理白血球は、透過処理されたリンパ球(透過処理リンパ球)であり得る。
【0020】
調製は、コアを膜で包むことをさらに含み得る。膜は、例えば、透過処理白血球から分離された細胞膜であり得る。透過処理白血球は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。透過処理白血球は、透過処理リンパ球であり得る。
【0021】
調製方法によると、膜は、標的化部分をさらに含み得る。標的化部分は、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片、またはそれらの結合ドメインを含み得る。
【0022】
調製方法は、コアに活性薬剤を負荷することをさらに含み得る。
【0023】
調製方法は、透過処理白血球からコアを調製することをさらに含み得る。透過処理白血球は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。透過処理白血球は、透過処理リンパ球であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明がどのように作用するかの概略図を示す。
【
図2】
図2は、HEV横断面のシリアルブロックフェイスSEM画像を示し、リンパ球の経細胞輸送(transcellular transport)を可能にするHEV細胞の再構成を示す。
【
図3】
図3は、MPとして透過処理細胞を製造するための可能な概略的方法を示す。
【
図4】
図4は、異なる凍結速度および凍結保護剤濃度における細胞死を比較したlive/dead生存性染色を示す。左下隅の数字は細胞死を示す。
【
図5】
図5は、DNAseを添加しないMPの再懸濁液(-DNAse)では凝集が見られず、DNAseを添加したもの(+DNAse)では凝集が見られたことを示す。
【
図6】
図6は、明視野顕微鏡下(左パネル)、蛍光顕微鏡下(中央パネル)、およびマージした画像(右パネル)での、生きたコントロールJurkat細胞(上パネル)および透過処理されたCSTL Jurkat細胞(MP)(下パネル)の画像を示す。
【
図7】
図7は、(A)生細胞、(B)スピン前MP、および(C)スピン後MPのフローサイトメトリーを示し、細胞の透過処理(MP)が生細胞と比較した細胞サイズの違いを引き起こすことを示す。
【
図8】
図8は、様々なスピン速度の異なる遠心条件下でのCSTL(MP)の回収率を示す。
【
図9】
図9A~Bは、異なる速度でのスピン後の(A)直径および(B)円形度の変化を示す。
【
図10】
図10A~Bは、300×gで5分間の連続スピン後の(A)直径および(B)円形度の変化を示す。
【
図11】
図11A~Bは、異なる温度での2時間のインキュベーション後の(A)直径および(B)円形度の変化を示す。
【
図12】
図12A~Dは、安定性およびビークル破壊試験のための血流のマイクロ流体モデルを示す(A)。血管模倣体を一定回数通過させた後のMP数(B)、直径(C)および円形度(D)の変化。
【
図13】
図13A~Cは、(A)70kDa FITC-デキストラン、(B)ラルテグラビルおよび(C)シスプラチンによる負荷後のMPを用いて生成された放出プロファイルを示し、薬剤負荷における幅広い可能性を示している。
【
図14】
図14は、無処置(コントロール)、または無負荷MP、遊離シスプラチン、もしくは遊離シスプラチンと等価用量のシスプラチン負荷MP(シスプラチン-MP)でin vitro処理したトリプルネガティブ乳がん細胞(4T1-luc2)の画像である。
【
図15】
図15は、アルギン酸塩MP(Alginate MP)および細胞模倣膜で包まれたアルギン酸塩MP(cmMP)の画像であり、それぞれコアがCy5で標識されている。
【
図16】
図16は、アルギン酸塩MPの画像、T細胞由来形質膜(TcPM)の画像、および細胞模倣膜で包まれたアルギン酸塩MP(cmMP)の画像であり、それぞれ形質膜が可視化のためにDiDで標識されている。
【
図17】
図17は、AF647 Gydrazideで標識したアルギン酸塩MPハイドロゲルコア(Alginate core)の画像、BODIPY TMRC
5 Malemideで標識したT細胞由来細胞膜(TcPM)の画像、およびAlginate careとTcPM(cmMP)のマージ画像を示す。
【
図18】
図18は、アルギン酸塩MP中の受動的に負荷されたフルオレセインアミンの放出曲線を示す。
【
図19】
図19は、色素のみのコントロールと比較して小葉内にCFSE標識MPが強く取り込まれているマウスLNのビブラトーム切片を示す。ファロイジンの対比染色は、MPとHEV細胞との明確な相互作用、および小葉の血管系外での存在を示す。
【
図20】
図20は、MPコントロール注射(上パネル)およびMPのLNホーミング能力を検証するFAB+MP注射(下パネル)の図(左パネル)および画像(右パネル)を示す。
【
図21】
図21は、脳採取のための実験デザイン概略図を示す。
【
図22】
図22A~Fは、それぞれリンパ節(A)または脳(D)における活性化T細胞または休止期T細胞からのコントロールMP;それぞれリンパ節(LN)(B)または脳(E)における休止期T細胞または活性化T細胞からの標的化MP;およびリンパ節(C)または脳(F)における血管対比染色の画像を示す。活性化T細胞からのMPは、(A)LNには非効率的に移動するが、(E)脳には効率的に移動する。休止期T細胞からのMPは、(B)LNには効率よく移動するが、(D)脳には非効率的に移動する。血管対比染色は、脳とLNの両方で組織へのMPの血管外遊出を確認している(CおよびE)。屠殺の4時間前にNHS Cy5.5標識MPを投与した。
【
図24】
図24は、MPの体内分布のPK/PDモデルを示す。
【
図25】
図25は、血漿およびリンパ節におけるMPおよび低分子薬の予測濃度を経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、内皮バリアを横断する送達システムとしての細胞由来微小粒子(MP)を提供する。本発明は、例えば脳およびリンパ節内の標的部位での血管外遊出を介した、内皮バリアである内皮を横断する循環生細胞(例えば、白血球)の輸送の際に、内皮中の内皮細胞が、内皮細胞頂部表面へのネイティブ細胞のドッキング後に、内皮バリアを横断して循環生細胞をシャトル輸送するという、本発明者らの驚くべき発見に基づく。特に、本発明者らは、意外なことに、循環生細胞のドッキングとそれに続く経内皮細胞輸送(trans-endothelial cellular transport)(血管外遊出(extravasation)または血管外漏出(diapedesis))は内皮によって能動的に制御されるが、この輸送は循環生細胞にとってはその細胞膜の組成によって規定される受動的なプロセスであることを発見した。このことは、死滅したT細胞が、高内皮細静脈(HEV)頂部表面に結合し、リンパ節小葉に血管外遊出する、または脳実質に侵入する能力を有するという知見から証明される。T細胞や他の特殊なリンパ球が日常的に内皮バリアを横断して移動することから、本発明者らはさらに、白血球(例えばリンパ球)などの細胞の細胞膜に由来する膜で包まれたコアを持つ細胞模倣微小粒子が、内皮を横断する能力を有することを発見した。このような機能特性は、膜の組成とコアのサイズによって規定される。ナノ粒子は細胞内に取り込まれて細胞内に保持されるが、本発明の微小粒子は内皮を横断して輸送される。
【0026】
本発明者らは、内皮とのドッキングと相互作用、およびそれに続く、内皮を横断した、例えば組織実質への輸送を可能にするための、細胞由来の膜を有するMPを開発した(
図1)。異なる膜組成、例えば、異なる細胞タイプから分離された膜、細胞タイプの膜混合物、または改変された分離細胞膜は、MPが望ましい組織の制限的内皮バリア上の別個の部位に結合し、制限的内皮バリアを横断して、ペイロード(例えば、封鎖剤)としても知られる活性薬剤を、薬剤デポとして局所に送達することを可能にする。加えて、膜組成は、標的部位の生細胞との直接的な相互作用を可能にし、応答を誘導する。これらのMPは、対象(例えば、ヒトまたは非ヒト)の血流中またはリンパ液を通じて全身的に循環し、身体中の組織に移動して、標的(例えば、治療)部位に薬剤を局所的に送達/封鎖し得る。
【0027】
本明細書で用いられる用語「微小粒子(MP)」とは、サイズが約0.1~1,000μm、0.1~900μm、0.1~800μm、0.1~700μm、0.1~600μm、0.1~500μm、0.1~400μm、0.1~300μm、0.1~200μm、0.1~100μm、0.1~50μm、0.1~10μm、0.1~1μm、0.5~1,000μm、0.5~900μm、0.5~800μm、0.5~700μm、0.5~600μm、0.5~500μm、0.5~400μm、0.5~300μm、0.5~200μm、0.5~100μm、0.6~1,000μm、0.6~900μm、0.6~800μm、0.6~700μm、0.6~600μm、0.6~500μm、0.6~400μm、0.6~300μm、0.6~200μm、0.6~100μm、0.7~1,000μm、0.7~900μm、0.7~800μm、0.7~700μm、0.7~600μm、0.7~500μm、0.7~400μm、0.7~300μm、0.7~200μm、0.7~100μm、0.8~1,000μm、0.8~900μm、0.8~800μm、0.8~700μm、0.8~600μm、0.8~500μm、0.8~400μm、0.8~300μm、0.8~200μm、0.8~100μm、0.9~1,000μm、0.9~900μm、0.9~800μm、0.9~700μm、0.9~600μm、0.9~500μm、0.9~400μm、0.9~300μm、0.9~200μm、0.9~100μm、1~1,000μm、1~900μm、1~800μm、1~700μm、1~600μm、1~500μm、1~400μm、1~300μm、1~200μm、1~100μm、100~1,000μm、100~900μm、100~800μm、100~700μm、100~600μm、100~500μm、100~400μm、100~300μm、100~200μm、500~1,000μm、500~900μm、500~800μm、500~700μm、500~600μm、750~1,000μm、750~900μmまたは750~800μmの範囲にある物質を指す。例えば、MPは、サイズが0.8~500μmであり得る。
【0028】
本明細書で用いられる用語「血管外遊出」とは、細胞バリアを通じた微小粒子(MP)の輸送を指す。
【0029】
用語「細胞バリア」および「組織バリア」は、本明細書で交換可能に用いられ、対象内の2つの生物学的空間を隔てる1または複数の細胞の層を指す。例えば、細胞バリアは、内皮バリアであり得る。
【0030】
用語「内皮バリア」および「内皮」は、本明細書で交換可能に用いられ、対象内の2つの区画を隔てる1または複数の内皮細胞の層を指す。例えば、内皮バリアは、血管をリンパ節小葉と隔て得る。
【0031】
本明細書で用いられる用語「対象」とは、哺乳類、例えば、霊長類またはヒトを指す。対象は、ヒトまたは非ヒトであり得る。対象は、疾患または病態に罹患している、または罹患しやすいものであり得る。
【0032】
本明細書で用いられる用語「膜」とは、単層、二層または多層を含む脂質ベースのシェルを指す。膜は、リン脂質二重層を含み得る。膜は、厚さが約0.1~200nm、0.1~150nm、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~1nm、0.5~200nm、0.5~150nm、0.5~100nm、0.5~50nm、0.5~20nm、0.5~10nm、0.5~1nm、1~200nm、1~150nm、1~100nm、1~50nm、1~20nm、1~10nm、0.1~1nm、5~200nm、5~150nm、5~100nm、5~50nm、5~20nmまたは5~10nmであり得る。
【0033】
本明細書で用いられる用語「細胞」とは、対象からの任意の細胞を指す。細胞は、MPによって細胞バリアが横断される対象と同一の、または同属もしくは同種の対象からのものであり得る。細胞は、血液細胞(例えば、赤血球細胞(RBC)、白血球細胞(WBC)、または血小板)であり得る。細胞は、免疫細胞であり得る。免疫細胞は、リンパ系前駆細胞、およびその前駆細胞から分化した全ての細胞(全てのT細胞、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、形質細胞、ならびにこれらの細胞の全てのサブセットおよびサブタイプを含む)よりなる群から選択され得る。免疫細胞は、骨髄芽球前駆細胞、およびその前駆細胞から分化した全ての細胞(顆粒球(好酸球、好塩基球、好中球、およびマスト細胞)、骨髄由来サプレッサー細胞、ならびに樹状細胞(形質細胞および従来の細胞型)、単球、およびマクロファージを含む抗原提示細胞(APC)を含む)よりなる群から選択され得る。免疫細胞は、自然リンパ球系細胞(innate lymphoid cell)、組織常在性免疫細胞(例えば、ミクログリア細胞)、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、および脱落膜マクロファージ、脱落膜ナチュラルキラー細胞から選択され得る。細胞は、胎盤細胞にあり得る。胎盤細胞は、栄養膜細胞、胎盤線維芽細胞、および胎盤内皮細胞、絨毛外栄養膜細胞、および巨細胞よりなる群から選択され得る。細胞は、腫瘍細胞またはがん細胞であり得る。細胞は、上皮細胞、内皮細胞、または神経細胞であり得る。細胞は、非最終分化細胞、例えば、幹細胞(例えば、造血幹細胞、骨髄幹細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、または神経幹細胞)であり得る。細胞は、生きていても死んでいてもよい。細胞は、対象から分離された後、または透過処理前にin vitroで生きたまま薬理学的に処理された後、例えば透過処理または凍結透過処理によって改変されたものであり得る。
【0034】
用語「生きた細胞」または「生細胞」は、本明細書で交換可能に用いられ、代謝、転写、翻訳、またはタンパク質合成における生物学的活性を持つ細胞を指す。
【0035】
本明細書で用いられる用語「死細胞」とは、代謝、転写、翻訳、またはタンパク質合成における生物学的活性を持たない細胞を指す。
【0036】
本明細書で用いられる用語「細胞膜成分」は、改変されたまたは改変されていない細胞のネイティブな細胞膜中の1または複数の構成成分を指す。細胞膜成分は、ネイティブな細胞膜中の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、ネイティブな細胞膜中の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を包含し得る。細胞膜成分は、ネイティブな細胞膜中の受容体を包含し得て、この受容体は、特定のタイプの細胞との、または特定の組織中の細胞との結合活性を持つ。細胞膜成分は、集合して、ネイティブな細胞膜中の構造に類似した構造(例えば、リン脂質二重層)を取り得る。集合は、自己集合であり得る。
【0037】
本明細書で用いられる用語「ネイティブな細胞膜」とは、細胞の自然発生の細胞膜を指す。ネイティブな細胞膜は、構成成分、例えば脂質、タンパク質(例えば、糖タンパク質)、およびそれらの組み合わせを包含する。
【0038】
本明細書で用いられる用語「細胞由来膜」とは、改変された、または成分が付加されたネイティブな細胞膜の細胞膜成分を含む膜を指す。付加的な成分は、細胞膜成分と異なるものである。細胞由来膜は、ネイティブな細胞膜中の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、ネイティブな細胞膜中の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を包含し得る。細胞膜成分は、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を持つ受容体を包含し得る。細胞由来膜は、改変された細胞膜成分、または改変されたもしくは改変されていない細胞膜成分と付加的な成分との混合物の自己集合によって形成され得る。細胞由来膜は、ネイティブな細胞膜中の構造に類似した構造(例えば、リン脂質二重層)を含み得る。細胞由来膜は、生物学的活性、例えば、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を持ち得て、その活性は、例えば、ネイティブな細胞膜のそれと約80~120%同一であり得る。
【0039】
本明細書で用いられる用語「キメラ膜」とは、付加的な成分が、付加的なネイティブ細胞膜の付加的な細胞膜成分、細胞内膜、例えば細胞外小胞、エクソソーム、分泌小胞、シナプス小胞、小胞体(ER)、ゴルジ体、ミトコンドリア、液胞または核の細胞膜など、細菌の膜、ウイルスの膜、またはそれらの組み合わせである細胞由来膜を指す。細胞膜成分および付加的な細胞膜成分は、同じ組織または異なる組織における同じタイプまたは異なるタイプの細胞の、同じネイティブな細胞膜または異なるネイティブな細胞膜の構成成分(例えば、受容体)を包含し得る。細胞膜成分と付加的な細胞膜成分との重量比は、キメラ膜の物理的および/または生物学的特性、例えば、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を調節するために調整され得る。キメラ膜は、細胞膜成分と付加的な細胞膜成分との混合物の自己集合によって形成され得る。赤血球の細胞膜は、キメラ膜の作製のために用いられ得る。
【0040】
本明細書で用いられる用語「合成の膜」とは、付加的な成分が合成の膜成分である細胞由来膜を指す。合成の膜成分は、生体適合性であり得る。合成の膜成分は、生分解性であり得る。合成の膜成分は、化学的、組換え的、またはその両方によって製造され得る。合成の膜は、細胞膜成分と合成の膜成分との混合物の自己集合によって形成され得る。合成の膜は、望ましい物理的および/または生物学的特性、例えば、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を持ち得る。
【0041】
本明細書で用いられる用語「標的化部分」とは、微小粒子が、あるタイプの細胞または組織に対して、別のものよりも優先的に移動することを可能にする任意の剤を指す。標的化部分は、生物学的分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)、化合物またはそれらの組み合わせであり得る。
【0042】
用語「細胞サイトゾル」および「細胞質」は、本明細書で交換可能に用いられ、細胞内部のマトリクスを指す。
【0043】
本明細書で用いられる用語「封鎖剤」とは、因子が微小粒子に結合するように、水素結合、静電相互作用、イオン結合または共有結合を介して因子を結合する能力を有する任意の分子を指す。因子は、対象内の生物学的分子または構造であり得る。
【0044】
本明細書で用いられる用語「免疫原性」とは、対象に導入されたときに免疫応答を引き起こす任意の因子を指す。
【0045】
本発明は、微小粒子(MP)を提供する。MPは、自然発生ではない。MPは、コアとコアを囲む膜とを含む。膜は、細胞膜成分を含む。本発明のMPは、内皮を横断する能力を有し得て、内皮は、組織(例えば、脳またはリンパ節)内にあり得る。組織は、対象(例えば、ヒト)内にあり得る。
【0046】
MP膜は、単一細胞またはその部分のネイティブな細胞膜からなるものであり得る。細胞膜成分は、ネイティブな細胞膜中の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、ネイティブな細胞膜中の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を含み得る。ネイティブな細胞膜は、改変せずに得られたものであり得る。細胞は、白血球であり得る。白血球は、リンパ球であり得る。リンパ球は、Tリンパ球であり得る。ネイティブな細胞膜は、白血球、リンパ球またはTリンパ球からのものであり得る。
【0047】
MP膜は、ネイティブな細胞膜からの膜である細胞由来膜であり得る。細胞由来膜は、改変された単一細胞またはその部分のネイティブな細胞膜からなるものであり得る。細胞由来膜は、改変されたまたは改変されていない単一細胞またはその部分のネイティブな細胞膜と、細胞成分ではない付加的な成分を含み得る。細胞由来膜は、ネイティブな細胞膜中の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、ネイティブな細胞膜中の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を包含し得る。細胞膜成分は、ネイティブな細胞膜中の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、ネイティブな細胞膜中の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を含み得る。細胞由来膜は、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を持つ受容体を包含し得る。細胞由来膜は、付加的な成分が付加的な細胞膜成分であるキメラ膜、または付加的な成分が合成の膜成分である合成の膜であり得る。合成の膜成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、フィンゴミエリン(pphingomyelin)、ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム塩、ホスファチジン酸、リオスリン脂質(lyosphospholipid)、酸化リン脂質、ステロール、タンパク質、糖タンパク質、受容体およびトランスポーターを含み得る。
【0048】
一実施形態において、MP膜は、透過処理細胞からのものである。透過処理細胞は、透過処理された白血球、リンパ球またはTリンパ球であり得る。細胞由来膜は、透過処理細胞またはその部分の細胞膜を含み得る。透過処理細胞は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。
【0049】
透過処理細胞膜は、透過処理細胞を調製するために用いられる対応する細胞のネイティブな細胞膜の構成成分のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、対応する細胞のネイティブな細胞膜の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を含み得る。細胞由来膜中の細胞膜成分は、例えば、体積比で、対応する細胞のネイティブな細胞膜の構成成分の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を含む。
【0050】
MP膜は、細胞膜成分が自己集合したものであり得て、付加的な成分を含んでもよい。MP膜は、細胞膜成分と付加的な成分とを混合することによって調製され得る。MP膜の組成は、MPの物理的および/または生物学的特性を調節するために調整され得る。MP膜は、ネイティブな細胞膜中の構造に類似した構造(例えば、リン脂質二重層)を含み得る。MP膜は、生物学的活性、例えば、特定のタイプの細胞への、または特定の組織中の細胞への結合活性を持ち得て、その活性は、ネイティブな細胞膜のそれと類似または同一である。
【0051】
MPにおいて、細胞膜成分は、膜の総量、例えば体積ベースで約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%存在し得る。
【0052】
MPにおいて、膜は、標的化部分をさらに含み得る。標的化部分は、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質(例えば、toll様受容体(TLRS)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、主要組織適合複合体(MHC)分子)、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片(例えば、ナノボディ)、またはこれらの部分の任意の結合ドメインを含み得る。標的化部分は、膜の外表面上にあり得る。標的化部分は、ネイティブな細胞膜の構成成分であり得る。標的化部分は、特定のタイプの細胞との、または特定の組織中の細胞との、特異的な結合アフィニティを持ち得る。標的化部分は、脳の内皮との特異的な結合アフィニティを持ち得て、このような標的部分の例としては、CCR7、CXCR3、L-セレクチン、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL1)、VLA-4、LFA-1、CCR6が挙げられる。標的化部分は、リンパ節の内皮との特異的な結合アフィニティを持ち得て、このような標的部分の例としては、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体7(CCR7)、インテグリンα4β1(VLA-4)、リゾホスファチジン酸受容体(LPA2、LPA5、LPA6)が挙げられる。
【0053】
MP膜が単一細胞またはその部分のネイティブな細胞膜からなる場合、標的化部分は、ネイティブな細胞膜の構成成分であり得る。細胞膜成分は、標的化部分を含み得る。
【0054】
MP膜がネイティブな細胞膜からの細胞由来膜である場合、標的化部分は、ネイティブな細胞膜の構成成分であり得る。細胞膜成分は、標的化部分を含み得る。
【0055】
MPにおいて、コアは、液体、固体またはそれらの組み合わせの形態であり得る。コアは、生体適合性であり得る。コアは、生分解性であり得る。コアは、細胞質を含み得て、細胞質は、ネイティブ、または改変されたものであり得る。細胞質は、そのネイティブな細胞膜がMP膜中にある細胞、またはそれからの細胞由来膜がMP膜中にある細胞と同じ細胞または同じタイプの細胞のものであり得る。
【0056】
液体コアは、水溶液、油またはそれらの組み合わせを含み得る。液体は、液体粘度を調節してペイロードの負荷とMPからの放出を制御するため、粘度調整剤、例えばデキストランおよびヒアルロン酸などをドープされ得る。液体コアは、複数の水溶液、複数の油溶液、または水溶液と油溶液の両方を含有し得る。MP内の複数の液相は、例えば、非混和性相の交互の層が配向したコア-(マルチ-)シェル配置の構造を取り得て、および/または一方の非混和性液体が他方の内部に存在する多くの分離相を有する二重エマルションとして存在し得る。
【0057】
コアは、ポリマーを含み得て、ポリマーは、天然または合成であり得る。コアは、細胞外マトリクスタンパク質を含み得て、細胞外マトリクスタンパク質は、精製されていても、組換え体であっても、脱細胞化されていてもよい。ポリマーのコアは、合成ポリマー、例えばPEG、PLGA、およびそれらの組み合わせなど、天然ポリマー、例えばアルギン酸塩およびコラーゲンなど、ならびに/または組織もしくは細胞株から分離された可溶性細胞外マトリクス(ECM)タンパク質(例えば、マトリゲル)を含み得る。ECMタンパク質は、様々な哺乳動物種、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウマ、ランパイン(lampine)、および齧歯類からの組織中に見出されるECMタンパク質中に見出される、またはこれらのECMタンパク質に由来する、分泌タンパク質、精製タンパク質または組換えタンパク質であり得る。
【0058】
MPにおいて、コアは、サイズが約0.1~1,000μm、0.1~900μm、0.1~800μm、0.1~700μm、0.1~600μm、0.1~500μm、0.1~400μm、0.1~300μm、0.1~200μm、0.1~100μm、0.1~50μm、0.1~10μm、0.1~1μm、0.5~1,000μm、0.5~900μm、0.5~800μm、0.5~700μm、0.5~600μm、0.5~500μm、0.5~400μm、0.5~300μm、0.5~200μm、0.5~100μm、0.6~1,000μm、0.6~900μm、0.6~800μm、0.6~700μm、0.6~600μm、0.6~500μm、0.6~400μm、0.6~300μm、0.6~200μm、0.6~100μm、0.7~1,000μm、0.7~900μm、0.7~800μm、0.7~700μm、0.7~600μm、0.7~500μm、0.7~400μm、0.7~300μm、0.7~200μm、0.7~100μm、0.8~1,000μm、0.8~900μm、0.8~800μm、0.8~700μm、0.8~600μm、0.8~500μm、0.8~400μm、0.8~300μm、0.8~200μm、0.8~100μm、0.9~1,000μm、0.9~900μm、0.9~800μm、0.9~700μm、0.9~600μm、0.9~500μm、0.9~400μm、0.9~300μm、0.9~200μm、0.9~100μm、1~1,000μm、1~900μm、1~800μm、1~700μm、1~600μm、1~500μm、1~400μm、1~300μm、1~200μm、1~100μm、100~1,000μm、100~900μm、100~800μm、100~700μm、100~600μm、100~500μm、100~400μm、100~300μm、100~200μm、500~1,000μm、500~900μm、500~800μm、500~700μm、500~600μm、750~1,000μm、750~900μmまたは750~800μmの範囲にあり得る。例えば、MPは、サイズが0.8~500μmであり得る。
【0059】
コアは、活性薬剤を含み得て、活性薬剤はペイロードとしても知られる。活性薬剤は、生物学的分子、化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、ナノ粒子(例えば、金属粒子、ポリマー粒子、デンドリマー粒子、または無機粒子)、リポソーム、ウイルス、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、生物学的活性、例えば、治療効果を持ち得る。活性薬剤は、治療薬、イメージング剤、封鎖剤、予防薬、診断薬、予後診断薬、添加剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0060】
コアは、細胞から調製され得る。このようなコアは、細胞の細胞質のいくつかまたは全てを、例えば、体積比で、例えば、細胞の細胞質の約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%を含み得る。細胞は、白血球(例えば、リンパ球)であり得る。
【0061】
MPは生体適合性であり、生分解性であり得る。MPは、免疫原性でないものであり得る。
【0062】
本発明の各MPについて、MPを輸送するための方法が提供される。輸送方法は、MPを内皮に投与することであって、それによって微小粒子が内皮に結合することを含む。輸送方法は、微小粒子を、内皮を横断して移動させることをさらに含む。
【0063】
輸送方法によると、MPはコアとコアを囲む膜とを含み、膜は細胞膜成分を含む。膜は、付加的な成分をさらに含み得る。膜は、ネイティブな細胞膜からなるものであり得る。膜は、細胞由来膜を含み得る。細胞由来膜は、キメラ膜または合成の膜であり得る。膜は、標的化部分を含み得る。標的化部分は、インテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリン様接着分子、アドレシン、ケモカイン受容体、ケモカインリガンド、成長因子受容体、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質(例えば、toll様受容体(TLRS)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、主要組織適合複合体(MHC)分子)、イオンチャネル連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、酵素連結型受容体、抗体もしくはその断片(例えば、ナノボディ)、またはこれらの部分の任意の結合ドメインを含み得る。内皮は、対象内にあり得る。対象は、ヒトまたは非ヒトであり得る。MPは、対象に静脈内投与され得る。
【0064】
輸送方法は、内皮を横断してMPを移動させた後、MPを標的部位に移動させることをさらに含み得る。標的部位は、組織または器官中の部位であり、そこにMPが移動する。このような組織または器官の内皮は、MPと相互作用して、内皮を横断してMPを移動させる固有の受容体プロファイルを持ち得る。固有の内皮プロファイルは、疾患のために対象の体内の領域によって変化し得る。標的部位は、内皮の他方の側にある組織にあり得る。標的部位は、リンパ節(LN)小葉、脳実質、組織間質または組織実質にあり得る。標的部位は、リンパ節(LN)、中枢神経系(CNS)、腸関連リンパ組織、精巣(teste)、肺、腫瘍部位(例えば、腫瘍関連マクロファージ(TAMS)または腫瘍関連リンパ球(TAL))、または炎症部位にあり得る。
【0065】
輸送方法によると、MPは、血流またはリンパ液から内皮を横断して周囲の間質または組織へと循環され得る。内皮は、脳またはリンパ節にあり得る。例えば、内皮はリンパ節にあり得て、標的部位はリンパ節の小葉であり得る。内皮は脳にあり得て、標的部位は脳実質または脳脊髄液(CSF)にあり得る。内皮および標的部位はいずれも腫瘍にあり得る。
【0066】
コアは、活性薬剤を含み得て、輸送方法は、標的部位で活性薬剤を放出することをさらに含み得る。活性薬剤は、生物学的分子、化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、ナノ粒子(例えば、金属粒子、ポリマー粒子、デンドリマー粒子、または無機粒子)、リポソーム、ウイルス、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、生物学的活性、例えば、治療効果を持ち得る。活性薬剤は、治療薬、イメージング剤、封鎖剤、予防薬、診断薬、予後診断薬、添加剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0067】
輸送方法は、MP粒子によって標的部位から分子を封鎖することをさらに含み得る。MPは、封鎖剤を含み得る。封鎖剤は、コア、膜または両方の中にあり得る。
【0068】
輸送方法は、標的部位で生物学的応答を引き起こすことをさらに含み得る。生物学的応答は内皮で開始され得て、内皮を横断してMPを移動させることを包含し得る。生物学的応答は、内皮の他方の側にある組織または間質または実質中で開始され得る。生物学的応答は、免疫相互作用、がん治療、ワクチン応答、および免疫療法よりなる群から選択され得る。
【0069】
本発明の各MPについて、MPを調製するための方法が提供される。調製方法は、コアを膜と混合することを含む。膜は、細胞膜成分を含む。調製されたMPは、コアとコアを囲む膜とを含み、膜は、細胞膜成分を含む。調製方法は、細胞膜成分をコアと混合することをさらに含み得る。細胞膜成分は、膜の総量、例えば体積ベースで約0.1~100%、0.1~90%、0.1~80%、0.1~70%、0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~10%、0.1~1%、1~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、1~10%、10~100%、10~90%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、50~100%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~100%、60~90%、60~80%、60~70%、70~100%、70~90%、70~80%、80~100%、80~90%または90~100%、1~90%、1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%または1~10%存在し得る。
【0070】
膜は、付加的な成分をさらに含み得て、調製は、細胞膜成分、コアおよび付加的な成分を混合することをさらに含み得る。膜は、キメラ膜であり得て、ここで付加的な成分は付加的な細胞膜成分である。膜は合成の膜であり得て、ここで付加的な成分は合成の膜成分である。
【0071】
一実施形態において、膜は透過処理細胞の細胞膜であり、調製方法は透過処理細胞にコアを添加することを含む。透過処理細胞は、透過処理された白血球、リンパ球またはTリンパ球であり得る。透過処理細胞は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。
【0072】
別の実施形態において、膜は透過処理白血球の細胞膜であり、調製方法は、注射して、または濃度勾配を用いて、透過処理白血球に材料を拡散させることをさらに含む。材料はさらに、化学的または光活性化法を用いてゾル-ゲル転移を起こすように操作され得る。
【0073】
なお別の実施形態において、調製方法は、コアを膜で包むことをさらに含む。膜は、透過処理細胞の細胞膜であり得る。透過処理細胞は、透過処理された白血球、リンパ球またはTリンパ球であり得る。透過処理細胞は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。
【0074】
調製方法は、コアに活性薬剤を負荷することをさらに含み得る。活性薬剤は、生物学的分子、化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、ナノ粒子(例えば、金属粒子、ポリマー粒子、デンドリマー粒子、または無機粒子)、リポソーム、ウイルス、またはそれらの組み合わせを含み得る。活性薬剤は、生物学的活性、例えば、治療効果を持ち得る。活性薬剤は、治療薬、イメージング剤、封鎖剤、予防薬、診断薬、予後診断薬、添加剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0075】
調製方法は、透過処理細胞からコアを調製することをさらに含み得る。透過処理細胞は、透過処理された白血球、リンパ球またはTリンパ球であり得る。透過処理細胞は、凍結透過処理、界面活性剤、または化学的透過処理溶液に供されたものであり得る。
【0076】
本明細書で、例えば量、パーセンテージなどの測定可能な値に言及する際に用いられる用語「約」は、規定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、なおより好ましくは±1%、一層より好ましくは±0.1%の変動を、このような変動が適切であるように包含することを意味する。
【実施例】
【0077】
実施例1.リンパ節の高内皮細静脈を通じたT細胞の輸送
内皮バリアを横断する細胞移動のメカニズムを決定するために、マウスリンパ節を採取し、ビブラトームで200μmに切片化し、0.1Mカコジル酸Naバッファー中2mM CaCl
2を含む2%パラホルムアルデヒド、2%グルタルアルデヒドを用いて固定した。コントラストのために2%四酸化オスミウムを試料に添加する多段階プロセスの後、試料をDurcupan樹脂ブロックに包埋し、シリアルブロックフェイス走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)を用いてイメージングする。SBF-SEMイメージングでは、試料をマウントして連続的に切片化し、10nmのZステップでイメージングした。この収集された画像スタックを、小葉へのT細胞横断相互作用について分析したところ、内皮によるT細胞の明確な飲み込みが示された(
図2)。
【0078】
実施例2.薬剤放出のためのMPとしての透過処理された死細胞の作成
MP(ここではCSTLと呼ぶ)は、死滅Tリンパ球(または任意の他の細胞株)から製造することができる。これらのCSTLには、可視化のために任意の色素を拡散により負荷したり、ヒドロゲルを充填したり、任意の他のペイロード(例えば、薬剤)を負荷したりすることができる。CSTLは、多くの器官における標的化取り込みのためにマウスまたはヒト個体に静脈内送達することができ、内皮バリアを横断することができる。
【0079】
図3に示されるように、標的化受容体を有する細胞膜を持つ新たに分離した培養細胞(生細胞)を、細胞骨格安定化バッファー(CSK)で処理することで、標的化受容体を有する保存された細胞膜を持つ、透過処理された死細胞を製造することができる。例えば、分離後、試料を、25mLの温かい0.01% Tween 20添加リン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)ですすぎ、直ちに改変された氷冷細胞骨格安定化バッファー(CSK)(DI H
2O中10mM HEPES、0.5% Triton X-100、300mMスクロース、3mM MgCl
2、および50mM NaCl)に1分間浸漬した。試料をCSKから取り出し、直ちに氷冷したPBS-T中4%パラホルムアルデヒドに浸し、37℃の水浴に10分間置いた。その後、試料を25mLの温PBS-Tですすいだ。凍結透過処理のため、新たに分離した培養細胞を1x10
7mL
-1の細胞密度で5%DMSO含有PBSを含むバイアルに再懸濁し、細胞バイアルを使用前に液体窒素(LN
2)に12時間浸した。あるいは、新たに分離した培養細胞を1%DMSO含有PBSを含むバイアルに再懸濁し、細胞バイアルを使用前に-80℃で12~18時間凍結した。
【0080】
初代細胞に対する透過処理の影響を試験するため、様々な凍結温度(-20、-80、LN
2)と凍結保護剤濃度(DMSO 0.1~10%)を用いて、Live/Dead生存性染色とトリパンブルー透過性試験を用いることで細胞死を評価した(
図4)。5%DMSO中でLN
2中12時間の凍結は、最も至適な安定性で>99%の細胞死をもたらした。原理的には、細胞膜を透過処理して、おおよその直径、円形度、および形態を維持することで規定される細胞の全体的構造を維持しつつ死滅を引き起こすあらゆる方法は、これらの方法と互換性がある。加えて、例えばアルギン酸塩などのハイドロゲル・プレポリマーは、透過処理された細胞中に拡散し、溶媒交換後、CaCl
2を浴に加えることでゾル-ゲル転移を起こし、内部のハイドロゲルコアを形成することができる。
【0081】
安定性およびプロセス試験:
DNAse濃度(0.1~25μg/ml)、温度(4~37℃)、および遠心分離スピンの繰り返し(2~3回)を評価した。ビークルへの影響は、蛍光顕微鏡観察、ヘマサイトメーター、およびフローサイトメトリーを用いて測定した。DNAseの添加は、MPの再懸濁を成功させるために必須であった(
図5)。処理後、細胞は個々の形態と構造を維持する一方、細胞は生細胞と比較して光学的および蛍光的特性が変化した(
図6)。最後に、フローサイトメトリーデータ(
図7)をイメージングの詳細を組み合わせると、生細胞は透過処理プロセスを通じて変化および/または改変されるが、個々のMPとしてはインタクトなままであることが明らかにされる。これらの細胞は、この状態で用いることができ、またはコア(例えば、油、粘性水溶液、および/または、その後に熱的、化学的もしくは光化学的方法によってゾル-ゲル転移を起こすように誘導されるハイドロゲル溶液)を充填することができる。
【0082】
遠心分離および流動下での安定性の評価:
MP安定性に関するこれらのMPの取り扱いと回収率を試験するため、様々な遠心速度(例えば、100~1000×gで10秒~10分間)を試験した。遠心分離実験に示されるように、300~500×gの間の遠心分離速度で2~3分間では、MPの保持が最大となり(
図8)、直径および円形度の変化が最小となった(
図9)。500×gで3分間の繰り返し(最大3回の連続スピン)では、サイズや円形度の変化は観察されなかった(
図10)。これに続いて、異なる温度で2時間保存したMPの直径および円形度を測定し、MPのばらつき/安定性を最小にする冷蔵または室温保存条件を決定した(
図11)。最後に、ビークル破壊に対する流体の流れの影響を、37℃で、ロッカーまたはマイクロ流体血管模倣体によって、0.52mL/分で試験した(
図12)。流動下でのMPの試験後、0.61メーターの血管模倣体を30回通過すると、約40%のMP数減少が観察された(
図8)。
【0083】
MPの保存:
透過処理細胞からMPを作成し、それらを様々な期間保存することで実験を行った。MPは、MPの構造および機能を著しく劣化させることなく、LN2中で6週間まで保存し、使用のために解凍することができる。透過処理されたMPのこの長期保存可能性は、トランスレーショナルな能力(translational capabilities)を可能にする。
【0084】
MP薬剤負荷:
MPを様々な濃度(0.05~0.5mg/ml)のシスプラチンと37℃で1時間インキュベートし、薬剤を受動的に取り込ませた。インキュベーション後、試料の半分を遠心分離し、ペレットをRIPAバッファー中に再懸濁した。このペレット画分を質量分析(MS)で分析し、MPあたりの理論的な薬剤最大負荷量を決定した。試料の残りを遠心分離し、新しいPBS中に再懸濁した。この試料をトランスウェルインサートの上部に添加し、t=0、0.5、1、2、4、8、12、および24時間後に採取した底部溶液についてICP-MSを行い、縦断的な放出動態試験を行った。ラルテグラビルとFITC-デキストランを用いて、MSまたは蛍光測定による同様の試験を実施した。これらの試験で示されたように、透過処理細胞MPは、合成薬剤キャリアシステムと同様の予測可能な放出動態で、多くのペイロードの放出に成功した。例えばシスプラチンおよびラルテグラビルなどの低分子の場合、薬剤のおよそ80~90%が4時間後に放出される(
図13)。例えば70kDa FITC-デキストランなどのより大きな分子の場合、放出動態は遅くなり、8時間後には全積荷のおよそ35%が放出される。
【0085】
放出薬剤の有効性のin vitro検証:
先に論じたような放出プロファイルを用いて、4T1-luc2細胞をシスプラチン負荷MPで処理し、遊離の薬剤処理と比較した。対応する遊離薬剤用量を算出するため、シスプラチンの累積放出量を4時間後に測定し、細胞に添加した。付加的なコントロールには、無負荷のMPと未処理の細胞が含まれる。遊離シスプラチンおよび無負荷のMPは、4時間後にコントロールと比較してほとんど、ないし全く細胞死を導かなかった(
図14)。シスプラチン負荷MPは、形態の変化や明瞭な細胞剥離領域によってわかるように、著しい細胞死を導いた。これらの実験で示されたように、高レベルのペイロードを局所的に放出することで、疾患細胞の処置効率に顕著な向上をもたらし得る。
【0086】
実施例3.膜で包んだTリンパ球由来アルギン酸ナトリウムMPの作製
膜で包んだアルギン酸塩微小粒子(MP)を作成するための一般的アプローチ:
細胞模倣微小粒子(cmMP)としても知られる、生体膜で覆われた微小粒子(MP)を合成する調製方法は、独立して製造され、続いてTリンパ球から分離された膜で包まれたハイドロゲル「コア」からなる。ミクロンサイズのアルギン酸ナトリウムハイドロゲルは、ハイドロゲルのサイズを細かく制御しながら高い単分散性を達成するため、フローフォーカシング構成を用いたマイクロ流体液滴発生装置を用いて作製した。アルギン酸ナトリウムは2価カチオンの存在下で架橋し、ゾル-ゲル転移を起こす。単分散の液状アルギン酸液滴を、毎秒数千から数万の速度で、単一マイクロ流体デバイス内で、分散相(アルギン酸ナトリウムおよびCa-EDTA)に対する連続相(油)の流速を調節することによって製造した。油相に0.2%酢酸を添加し、ゾル-ゲル転移を可能にした。その後のアルギン酸塩ハイドロゲルマイクロスフェア「コア」は溶媒交換され、油相を除去した(
図15)。別途、Tリンパ球の膜抽出を、標準的手法を用いて、物理的ホモジナイズを伴った浸透圧に基づくマイルドな低張細胞溶解液と、その後の分画遠心分離および超遠心分離のステップによって達成し、濃縮された分離形質膜を得た。精製された膜とアルギン酸塩コアを混合し、所望のMPサイズに応じて孔径8μmから20μmのポリカーボネート膜を通して共押出した。包まれたMPは、続いて、DLS、ゼータサイザー、およびフローサイトメトリーを用いて、サイズ(単分散性)、ゼータ電位、および具体的な膜タンパク質組成を特性評価した(
図16)。
【0087】
重要なことは、このプラットフォームは、簡単な化学によって容易に適応できるということである。in vitroおよびin vivo実験におけるMPの可視化のため、アルギン酸ナトリウムは、カルボジイミド架橋を介して異なる蛍光色素、例えばFITC、TRITC、およびDAPIなどと共有結合している。同様に、MP膜の可視化は、生体反応性色素、例えばCy5.5 NHSエステルおよびBODIPY TMR C
5マレイミド
85などとの、または膜色素、例えばDiDおよびDiOなどとの共有結合によって達成される(
図16および17)。抗体などの高分子からなる薬剤ペイロードの場合、治療薬は、ハイドロゲルコアを形成させる前にアルギン酸ナトリウム溶液と混合した。拡散性の低分子の場合、MPは、投与または試験の前に、完全に飽和するまで薬剤溶液に浸した。
【0088】
持続性放出製剤を可能にするための放出動態とMP分解の調節:
低分子の蛍光体、テノフォビルジソプロキシルフマル酸塩およびダルナビルといったHIV抗レトロウイルス薬(ARV)、金ナノ粒子、ならびに抗体を用いて、2つの別個のクラスの典型的治療化合物(ペイロード)のin vitroでの放出動態を定量化した。低分子(蛍光体およびARV)の場合、MPをペイロードの溶液中に飽和するまで浸した。高分子(抗体および80nm金ナノ粒子(NP))の場合、MPコアを形成させる前に、ペイロードをアルギン酸塩溶液に添加した。MPアルギン酸塩コアの重量パーセントを変更して、薬剤放出動態を定量化した。MPを水中のトランスウェルの上部リザーバーに入れ、底部の区画をインキュベーターロッカー中で経時的にサンプリングした。予想されたように、膜に包まれたMPからの放出動態は、質量分率が高いほど放出半減期が長くなる、予想された放出動態に従うものである(
図18)。
【0089】
MP膜および製剤は、ペイロードの負荷および放出を設計するために、独立して変化させることができる。ステロール濃度は、リポソームおよび膜の安定性と薬剤放出に影響することが知られており、濃度が高くなると安定性が増し、放出動態が遅くなる。精製された膜にステロールを添加することができる。同様に、MPコア製剤は、結果として生じる孔径を調節するための多数の標準的アプローチを用いることによって、例えば、アルギン酸ナトリウムの質量分率を変化させること、および結果として得られるハイドロゲルコア内の架橋の程度を変えることによって、変化させることができる。加えて、上記のようにMPコアを作成し、CaCl2浴中で二次的な架橋手法を実行することによって、単一のMP「コア」内にコアシェル組織を形成させるために、半径に沿った孔径の空間勾配を誘導することができる。このコア表面からコア内への二次的な拡散性架橋の波は、放出動態を複数の相へと形を変えることを可能にし、特に、ペイロードの初期放出の遅延を可能にする。MPコア内に空隙率が減少した複数の「シェル」を作成するために、連続的な架橋手法を用いることができる。これらの改良は、第一相および第二相の放出動態を遅延させるために用いることができ、これらは、PKモデル解析によると、現在の製剤の性能と比較して、薬剤ペイロードのオフターゲット喪失を減少させ、標的組織における薬剤の放出を延長する上で最も影響が大きいパラメータである。
【0090】
結論:
アルギン酸塩コアの物理化学的特性、例えば架橋度やアルギン酸塩の重量分率などは、アルギン酸塩の孔径および分解を支配し、ひいては製剤の重要な特性、例えば積荷の負荷効率および放出動態に影響を及ぼす。低分子薬の場合、アルギン酸塩コアはスポンジとして機能し、ペイロードは拡散様のプロセスを通じて溶出する。我々のデータは、このメカニズムが数週間オーダーのペイロード溶出半減期を可能にすることを示している。より大きな分子、例えば抗体などの場合、ペイロードはコアのハイドロゲルマトリクス内に捕捉され、コアが崩壊するにつれて1ヶ月以上にわたって長期放出を起こし得る。コアに化学的に結合したより小さい分子も、このような長期放出動態を持ち得る。我々のデータは、MPの解離速度およびその組み込まれたペイロードの溶出速度の両方が、調節可能なコアの材料特性であり得ることを示している。したがって、粒子を、以下に詳述するいくつかのアプローチを用いて最適化し、長期間にわたって標的組織への薬剤の持続性放出を達成することができる。
【0091】
実施例4.マウスリンパ節におけるMPの輸送と組織局在化
マウスモデルにおけるMP注射およびLNホーミング:
CD1マウスの脾臓からTリンパ球を市販のキットによって分離した。細胞を凍結によって透過処理した。組織中での可視化のためにMPを標識するため、MPを4℃で解凍し、1×PBS中で78μM NHS Cy5.5と20分間インキュベートした。この色素は、凍結透過処理後の細胞中に残存するアミノ基を標識する。CD-1マウスに1.5x106の用量の細胞を静脈内注射し、別個の時点(t=0、1、2、4、8、16、および24時間)で安楽死させた。循環中に残存するCSTLを定量化するため、各時点で心臓内穿刺により血液試料を採取した。上腕LN、鼠径LN、および膝窩LNを分離し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定し、ビブラトーム切片作製のために6%アガロースゲルに包埋した。次いで、200μm切片をイメージングし、CSTLの取り込みを評価する。
【0092】
内皮バリアを横断することによる組織中でのMP集積のための特異的プロセスを膜組成が制御することの検証:
MPの標的化および取り込みが特異的であることを検証するため、L-セレクチン抗体遮断を用いて機能的なLN血管外遊出を確認した。L-セレクチンはTリンパ球の膜上に発現する糖タンパク質であり、高内皮細静脈(HEV)上での最初の係留およびローリングに関与する。したがって、この相互作用の遮断は、小葉への血管外遊出を阻止することが期待される。実験群では、マウスに0.4mg/kgのL-セレクチン抗体とMPを注射した。コントロール群では、マウスはMPのみを受けた。細胞注射後2時間でマウスを安楽死させた。先に記載したようにビブラトーム切片を調製する。両切片におけるCSTLの取り込みは、小葉の進入を数えることによって比較される。
【0093】
LN標的化の結論:
実験から、透過処理T細胞MPの送達が、リンパ節小葉を標的化して侵入するための実行可能なアプローチであったことは明らかである。MPは血流に耐え、リンパ節内のHEVに結合することができた(
図19)。Tリンパ球の経内皮移動は能動的なプロセスと考えられており、リンパ球の運動能力を支持する証拠もあるが、他の白血球-内皮細胞相互作用も、生物学的バリアを横断する可能性のある様式として作用する可能性がある。加えて、最近の研究では、一過性のリンパ球移動抑制のためのHEV内腔の一時的保持部位である「HEVポケット」が同定された。この相互作用は、リンパ管を通じて出ていくこととのバランスを取るために、リンパ球が入ってくる速度を制御することができる。さらに、L-セレクチンの機能的抗体遮断は生きたT細胞と同様に組織へのMPの血管外遊出を阻止したことから(
図20)、このプロセスは膜組成に特異的である。バリアを横断したリンパ球の通過においてHEV内皮細胞が主要な役割を果たしていることは明らかであり、したがって、リンパ節へのMPの侵入におけるそれらの役割は最も重要であり得る。全体として、透過処理T細胞MPは、薬剤を負荷され、放出し、リンパ節小葉に侵入する能力を持っており、LN標的化薬剤送達のための強力なツールを提供する。
【0094】
実施例5.マウス脳におけるMPの輸送と組織局在化
血液脳関門を横断するMPと脳実質への侵入:
身体の薬理学的部位に治療薬の積荷を送達するためにMPを利用することは、革新的で未開拓の薬物送達システムである。脳は、興味深い標的部位を提供する。細胞介在性薬剤送達ビークルの脳内および血液脳関門(BBB)を横断した分布を追跡するために、マウスモデルを用いた。標識した同系の移植生細胞を用いて実験を行い、設計した同系のMPと比較した(
図21)。
【0095】
生きたTリンパ球注射剤の調製:
生きたT細胞を含有する注射剤は、実験開始直前に調製した。健康なCD1マウスから脾臓を摘出した。脾臓は機械的および酵素的に消化した。赤血球細胞を含まない細胞懸濁液が得られたら、磁気抗体結合ビーズシステムを用いて、Tリンパ球を他の脾臓細胞から分離した。純粋なTリンパ球を蛍光CSFE溶液とインキュベートした。この細胞懸濁液を別の健康なマウスの側尾静脈に静脈内注射した。
【0096】
MP注射剤の調製:
MP注射剤を調製するために、先に記載したようにマウス脾臓から生きたT細胞を得た。脳を標的とする表現型を有するMPを製造するため、分離したT細胞プールを、凍結透過処理の前にin vitroで活性化した。全般的な活性化を誘導するために、分離した細胞を25ng/mlの酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)および1μg/mlのイオノマイシンと6時間インキュベートし、T細胞膜受容体複合体を回避して、下流の膜受容体の変化を誘導した。凍結傷害後、これらのMPを解凍し、投与のために先に記載したようにCy5で標識した。
【0097】
脳のイメージング:
異なる時点(4時間、6時間、8時間)の後、IACUCガイドラインに従ってマウスを屠殺した。脳を洗浄した後、0.1% Triton X-100を添加した4% PFA中、4℃で8~12時間固定した。組織試料を6%アガロースゲルに包埋し、ビブラトームを用いて300ミクロン厚の切片を切り出した。組織を4℃で12時間、ロッカー上でブロッキングした後、4℃で48時間、ロッカー上で、ラットPECAM1およびラットEndomucinとインキュベートし、血管系の内皮細胞を標識した。一次抗体の後、1×PBSで5分間ずつ3回洗浄し、ヤギ抗ラットAlexa Fluor 488で標識した。
【0098】
結論:
生きたT細胞、未処理のMP、および活性化MPの投与にしたがって、MP膜の表現型が組織標的化に重要な役割を果たしていることは明らかである(
図21)。CNS組織に入るためにT細胞の活性化は重要なステップであるという意義深い証拠がある。MPを作成する前に膜組成を変化させるために活性化カクテルを用いて生細胞をin vitroで「プログラミング」することは、標的化MPを製造するための実行可能な戦略として実証されている。細胞サイズの増大、細胞の伸長、および細胞間凝集の増加といった細胞の表現型の変化は、MP産生前に観察された。動物への投与および共焦点顕微鏡イメージングから、活性化MPが、LN取り込みが減少し、脳取り込みが大幅に増加するように標的化プロファイルに完全な変化をもたらすことは明らかである。最後に、リンパ節におけるように、血管の対比染色は、血管からのMPの脱出と脳実質への輸送を示す。
【0099】
実施例6:MPの初期PK/PDモデリング
微小粒子は生きたT細胞と同様の動態を持っており、血液から標的組織に取り込まれ、血液中の平均滞留時間は1時間、平均組織滞留時間はおよそ24時間である。一方、生きたT細胞とは異なり、微小粒子は通常、組織から出ることができない。MPは組織に入ると、組織内にとどまる。我々は、膜は3~5日かけて粒子から解離し、ハイドロゲルコアはおよそ30日かけて緩徐に崩壊して、それらのペイロードを組織内に放出し続けると想定している。我々の低分子蛍光体の研究は、より高密度のゲル製剤ほど第2相の1/2寿命が長くなるという、コアからの2相放出動態を示した(
図23)。第1相の放出動態は、1/2寿命が1時間オーダーで、第2相の放出動態は、1/2寿命がおよそ4日である。我々は、全ての薬剤がコアから放出された後、消耗した粒子が崩壊するまでのおよそ30日間、組織内に留まるという条件をシミュレートした。これらの動態は、PK/PDモデル(
図24)に取り込まれ、粒子および送達された薬剤の予測濃度が
図25に示される。これらの結果は、この粒子が数週間にわたりペイロードの組織特異的な持続性放出を達成することができるものであることを示す。
【0100】
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【国際調査報告】