(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】植物の有限性を変えるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A01H 5/00 20180101AFI20241209BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20241209BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20241209BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241209BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20241209BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241209BHJP
A01H 6/54 20180101ALI20241209BHJP
A01H 6/20 20180101ALI20241209BHJP
A01H 6/00 20180101ALI20241209BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20241209BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20241209BHJP
A01H 6/60 20180101ALI20241209BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A01H5/00 A ZNA
A01H5/10
C12N5/04
C12N5/10
C12N15/29
C12N15/11 Z
A01H6/54
A01H6/20
A01H6/00
A01H6/46
A01H6/82
A01H6/60
C12N15/09 100
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527331
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 US2022079380
(87)【国際公開番号】W WO2023086765
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラウワー-トーランド,ブレント
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンウン
(72)【発明者】
【氏名】メリル,キース
(72)【発明者】
【氏名】ライマーキス,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】スレウィンスキー,トーマス・エル
(72)【発明者】
【氏名】ウーテン,ジュニア・デイヴィッド・アール
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA47
(57)【要約】
ダイズ植物におけるTFL1レベルを変化させるための組成物及び方法が提供される。TFL1遺伝子の抑制、変異誘発及び/または編集を通じて、茎先端の最終分化のタイミングに関連する遺伝子の発現を変化させるための方法及び組成物も提供される。TFL1レベルの低下、ならびに植物丈の低下及び耐倒伏性の向上などの改善された特性を含む、TFL1遺伝子の発現もしくは活性を低下させる抑制エレメントまたは変異を有する、改変された植物細胞及び植物が更に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変を欠く以外は同一である植物、植物種子、植物部位もしくは植物細胞におけるTFL1もしくはその相同体の発現または活性と比較して、TFL1もしくはその相同体の発現もしくは活性を低下させる前記改変を含む、改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項2】
前記改変は、内在性TFL1遺伝子またはその相同体の少なくとも1つの対立遺伝子に存在する、請求項1に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項3】
前記TFL1遺伝子またはその相同体は、配列番号2に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項2に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項4】
前記改変は、前記TFL1遺伝子またはその相同体の非コード領域にある、請求項2または3に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項5】
前記非コード領域は、プロモーター、イントロン、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項6】
前記改変は、前記TFL1遺伝子またはその相同体の前記プロモーターにある、請求項5に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項7】
前記植物は、マメ科植物、ワタ植物もしくはカノーラ植物であるか、または前記植物種子、前記植物部位もしくは前記植物細胞は、マメ科植物、ワタ植物、カノーラ植物、トウモロコシ植物、モロコシ植物、イネ植物、コムギ植物、オオムギ植物、トマト植物もしくはコショウの植物の植物種子、植物部位もしくは植物細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項8】
前記植物はマメ科植物であるか、または前記植物種子、前記植物部位もしくは前記植物細胞は、マメ科の植物の植物種子、植物部位もしくは植物細胞である、請求項7に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項9】
前記マメ科植物は、ダイズ植物、インゲンマメ植物、エンドウマメ植物、ヒヨコマメ植物、アルファルファ植物、ラッカセイ植物、イナゴマメ植物、レンズマメ植物、またはカンゾウ植物である、請求項8に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項10】
前記マメ科植物はダイズ植物である、請求項9に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項11】
前記TFL1遺伝子はTFL1b遺伝子である、請求項10に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項12】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位、または前記植物細胞は、前記改変に関してヘテロ接合性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項13】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位、または前記植物細胞は、前記改変に関してホモ接合性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項14】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位または前記植物細胞は、前記TFL1遺伝子の第1の対立遺伝子における第1の改変と、前記TFL1遺伝子の第2の対立遺伝子における第2の改変と、を含み、前記第1の改変及び前記第2の改変は互いに異なる、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項15】
前記改変は、欠失、挿入、置換、逆位、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項16】
前記改変は、配列番号4、67~77、79及び81からなる群から選択される配列の3’末端から約200ヌクレオチド以上に位置する、請求項15に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項17】
前記改変は欠失を含む、請求項16に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項18】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位、または植物細胞は、前記TFL1b遺伝子のプロモーターの少なくとも1つの対立遺伝子における改変を含み、前記改変は、
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1539~ヌクレオチド1568の30塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1217~ヌクレオチド1604の388塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1518~ヌクレオチド1629の112塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド951~ヌクレオチド1222の272塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1364~ヌクレオチド1407の44塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1516の150塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド754~ヌクレオチド1806の1053塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1216~ヌクレオチド1319の104塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1159~ヌクレオチド1965の807塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド760~ヌクレオチド1214の455塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド939~ヌクレオチド1028の90塩基対の欠失;
配列番号4のヌクレオチド1029~ヌクレオチド1065の配列が欠失し、逆位し、同じ位置に再挿入されている、37塩基対の逆位;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1066~ヌクレオチド1664の599塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド952~ヌクレオチド1552の601塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1677~ヌクレオチド1808の132塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1524~ヌクレオチド1558の35塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド476~ヌクレオチド1405の930塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1559の195塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド928~ヌクレオチド1560の633塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド593~ヌクレオチド1813の1221塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1556の5塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1537~ヌクレオチド1565の29塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1209~ヌクレオチド1246の38塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1600の49塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1553~ヌクレオチド1601の49塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1378の11塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1395の28塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1344~ヌクレオチド1384の41塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1219~ヌクレオチド1453の235塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1215~ヌクレオチド1227の13塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1370~ヌクレオチド1376の7塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1220~ヌクレオチド1556の337塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1216~ヌクレオチド1376の161塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1384の17塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1366~ヌクレオチド1648の283塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1370~ヌクレオチド1489の120塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1541~ヌクレオチド1615の75塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1375の9塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1551~ヌクレオチド1601の51塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1371~ヌクレオチド1377の7塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1553の186塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1378の14塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1380の16塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1594の43塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1376の10塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1682の131塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド954~ヌクレオチド1391の438塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1535~ヌクレオチド1560の26塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1534~ヌクレオチド1644の111塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド937~ヌクレオチド1599の663塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1551~ヌクレオチド1648の98塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1526~ヌクレオチド1559の34塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1528~ヌクレオチド1606の79塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1542~ヌクレオチド1602の61塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1214~ヌクレオチド1594の381塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1554の187塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1369~ヌクレオチド1477の109塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1550~ヌクレオチド1554の5塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド734~ヌクレオチド2000の1267塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1371~ヌクレオチド1560の190塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1537~ヌクレオチド1572の36塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1541~ヌクレオチド1586の46塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1556の5塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド669~ヌクレオチド1623の955塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1521~ヌクレオチド1558の38塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1369~ヌクレオチド1477の109塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1540~ヌクレオチド1554の15塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1217~ヌクレオチド1674の458塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1546~ヌクレオチド1626の81塩基対の欠失;
参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1547~ヌクレオチド1635の89塩基対の欠失;及び
これらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11~16のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項19】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位または前記植物細胞は、前記TFL1b遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の前記プロモーターにおける改変を含み、前記改変は、参照配列の配列番号4のヌクレオチド1237位~1570位の間のゲノム領域内に含まれる、請求項11~16のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項20】
前記改変は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、または少なくとも150の連続したヌクレオチドの欠失を含む、請求項19に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項21】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位または前記植物細胞は、前記欠失、前記挿入、前記置換または前記逆位以外の領域で、配列番号4に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有する、前記TFL1b遺伝子の染色体配列を含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項22】
前記植物、前記植物種子、前記植物部位または前記植物細胞は、配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127及び128からなる群から選択される、ポリヌクレオチド配列を含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項23】
前記改変は、前記改変を欠く以外は同一である植物、植物種子、植物部位もしくは植物細胞におけるTFL1タンパク質の発現レベルと比較して、前記TFL1タンパク質の発現レベルを変化させる、請求項1~22のいずれか一項に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項24】
前記改変は、前記改変を欠く以外は同一である植物、植物種子、植物部位もしくは植物細胞における前記TFL1タンパク質の発現レベルと比較して、前記TFL1タンパク質の発現レベルを低下させる、請求項23に記載の改変された植物、植物種子、植物部位、または植物細胞。
【請求項25】
前記改変は、前記改変を欠く以外は同一である植物の有限性表現型と比較して、前記植物の有限性表現型を変化させる、請求項1~24のいずれか一項に記載の改変された植物。
【請求項26】
前記改変は、前記改変を欠く以外は同一である前記有限性と比較して、前記植物の有限性を増加させる、請求項25に記載の改変された植物。
【請求項27】
植え付け後、前記改変された植物は、前記改変を欠く以外は同一である植物よりも早くその終末開花日に達する、請求項1~26のいずれか一項に記載の改変された植物。
【請求項28】
前記改変された植物は、前記改変を欠く以外は同一である植物の倒伏率と比較して、減少した前記倒伏率を示す、請求項1~27のいずれか一項に記載の改変された植物。
【請求項29】
前記改変された植物は、前記改変を欠く以外は同一である植物の収率と比較して、実質的に同じまたは増加した前記収率を示す、請求項1~28のいずれか一項に記載の改変された植物。
【請求項30】
前記改変された植物は、前記は同一である植物の感受性と比較して、真菌性病害に対して低い前記感受性を示す、請求項1~29のいずれか一項に記載の改変された植物。
【請求項31】
配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127及び128からなる群から選択される配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項32】
配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28及び29からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む、ガイドRNA。
【請求項33】
改変されたTFL1遺伝子を含む植物を生産する方法であって、前記方法は、
a)植物細胞の内在性TFL1遺伝子またはその相同体中の少なくとも1つの標的部位に改変を導入することと、
b)前記TFL1遺伝子またはその相同体に前記改変を含む工程(a)の1つ以上の植物細胞を同定及び選択することと、
c)工程(b)で選択された少なくとも1つ以上の細胞から少なくとも1つの植物を再生することと、を含む、前記方法。
【請求項34】
前記標的部位は、内因性TFL1遺伝子またはその相同体の非コード領域に位置する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記非コード領域は、プロモーター、イントロン、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記非コード領域はプロモーターである、請求項36に記載の方法。
【請求項37】
前記改変は、前記植物細胞における少なくとも1種の部位特異的ゲノム改変酵素の存在によって促進される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記部位特異的ゲノム改変酵素は、RNA誘導型ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、及びこれらの任意の組み合わせである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記部位特異的ゲノム改変酵素は、Casヌクレアーゼ、Cpf1ヌクレアーゼ、またはこれらのいずれかのバリアントを含む、RNA誘導型ヌクレアーゼである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記部位特異的ゲノム改変酵素は、前記標的部位で少なくとも1つの鎖切断を生じさせる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記改変は、置換、挿入、逆位、欠失、重複及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記改変は欠失である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記欠失は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、または少なくとも150の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
植物の有限性を増加させるための方法であって、TFL1遺伝子の内在性プロモーターの少なくとも1つの対立遺伝子を改変することを含み、その結果、TFL1タンパク質の生産が、前記改変を欠く以外は同一である植物におけるTFL1タンパク質の生産と比較して、減少する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月12日出願の米国仮特許出願第63/278,903号の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組込み
Microsoft Windows操作システムで265キロバイトと測定され、2022年11月7日に作成されたファイル名「MONS522US_ST26.xml」中に含まれる配列表は、本明細書と共に電子出願され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、農業バイオテクノロジーの分野、より具体的には、植物におけるゲノム編集のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
正確なゲノム編集技術は、遺伝子の発現及び機能の操作のための強力なツールであり、重要な農業的形質を改善する可能性がある。有限性を変え、収量を増加させ、倒伏を減らし、及び他の有益な結果を得るために、様々な作物植物の植物ゲノムを効果的かつ効率的に編集するための新規な組成物及び方法を開発することが、当技術分野において継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、改変を欠く以外は同一である植物、植物種子、植物部位もしくは植物細胞におけるTFL1もしくはその相同体の発現または活性と比較して、TFL1もしくはその相同体の発現もしくは活性を低下させる改変を含む、改変された植物、植物種子、植物部位または植物細胞が提供される。いくつかの実施形態では、改変は、内在性TFL1遺伝子またはその相同体の少なくとも1つの対立遺伝子に存在する。TFL1遺伝子は、TFL1b遺伝子であり得る。特定の実施形態では、TFL1遺伝子またはその相同体は、配列番号2に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。他の実施形態では、改変は、TFL1遺伝子またはその相同体の非コード領域内にあり、その非限定的な例としては、プロモーター、イントロン、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域及びこれらの任意の組み合わせを含む。本明細書で提供される植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、例えば、マメ科植物、ワタ植物、カノーラ植物、トウモロコシ植物、モロコシ植物、イネ植物、コムギ植物、オオムギ植物、トマト植物もしくはコショウ植物、もしくは他の作物、観賞用植物、または他の種類の植物種からのものであり得る。更なる実施形態では、マメ科植物は、ダイズ植物、インゲンマメ植物、エンドウマメ植物、ヒヨコマメ植物、アルファルファ植物、ラッカセイ植物、イナゴマメ植物、レンズマメ植物、またはカンゾウ植物である。具体的な実施形態では、マメ科植物は、ダイズ植物である。いくつかの実施形態では、植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、改変に関してヘテロ接合性であり、他の実施形態では、植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、改変に関してホモ接合性である。特定の実施形態では、植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、TFL1遺伝子の第1の対立遺伝子における第1の改変と、TFL1遺伝子の第2の対立遺伝子における第2の改変と、を含むものとして定義され、第1の改変及び第2の改変は互いに異なる。
【0006】
本明細書で提供される改変された植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、特定の実施形態では、TFL1もしくはその相同体の発現または活性を低下させる改変を含み得、改変は、欠失、挿入、置換、逆位またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、例えば、改変は、配列番号4、67~77、79及び81からなる群から選択される配列の3’末端から約100、125、150、175、200、225、250、275もしくは300ヌクレオチド、またはそれ以上に位置する。他の実施形態では、TFL1b遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子のプロモーターにおける改変は、配列番号4の参照配列のヌクレオチド1237位~1570位の間のゲノム領域内に含まれる。いくつかの実施形態では、改変は、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125または少なくとも約150の連続ヌクレオチドの欠失を含む。植物、植物種子、植物部位または植物細胞はまた、例えば、TFL1b遺伝子のプロモーターの少なくとも1つの対立遺伝子に改変を含むことができ、改変は、配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1539~ヌクレオチド1568の30塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1217~ヌクレオチド1604の388塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1518~ヌクレオチド1629の112塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド951~ヌクレオチド1222の272塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1364~ヌクレオチド1407の44塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1516の150塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド754~ヌクレオチド1806の1053塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1216~ヌクレオチド1319の104塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1159~ヌクレオチド1965の807塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド760~ヌクレオチド1214の455塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド939~ヌクレオチド1028の90塩基対の欠失;配列番号4のヌクレオチド1029~ヌクレオチド106の配列が欠失し、逆位し、同じ位置に再挿入されている、37塩基対の逆位;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1066~ヌクレオチド1664の599塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド952~ヌクレオチド1552の601塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1677~ヌクレオチド1808の132塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1524~ヌクレオチド1558の35塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド476~ヌクレオチド1405の930塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1559の195塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド928~ヌクレオチド1560の633塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド593~ヌクレオチド1813の1221塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1556の5塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1537~ヌクレオチド1565の29塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1209~ヌクレオチド1246の38塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1600の49塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1553~ヌクレオチド1601の49塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1378の11塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1395の28塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1344~ヌクレオチド1384の41塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1219~ヌクレオチド1453の235塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1215~ヌクレオチド1227の13塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1370~ヌクレオチド1376の7塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1220~ヌクレオチド1556の337塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1216~ヌクレオチド1376の161塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1384の17塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1366~ヌクレオチド1648の283塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1370~ヌクレオチド1489の120塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1541~ヌクレオチド1615の75塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1375の9塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1551~ヌクレオチド1601の51塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1371~ヌクレオチド1377の7塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1553の186塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1378の14塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1380の16塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1594の43塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1376の10塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1682の131塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド954~ヌクレオチド1391の438塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1535~ヌクレオチド1560の26塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1534~ヌクレオチド1644の111塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド937~ヌクレオチド1599の663塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1551~ヌクレオチド1648の98塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1526~ヌクレオチド1559の34塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1528~ヌクレオチド1606の79塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1542~ヌクレオチド1602の61塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1214~ヌクレオチド1594の381塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1368~ヌクレオチド1554の187塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1369~ヌクレオチド1477の109塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1550~ヌクレオチド1554の5塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド734~ヌクレオチド2000の1267塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1371~ヌクレオチド1560の190塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1537~ヌクレオチド1572の36塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1541~ヌクレオチド1586の46塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1552~ヌクレオチド1556の5塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド669~ヌクレオチド1623の955塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1521~ヌクレオチド1558の38塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1369~ヌクレオチド1477の109塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1540~ヌクレオチド1554の15塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1217~ヌクレオチド1674の458塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1546~ヌクレオチド1626までの81塩基対の欠失;配列番号4の参照配列と比較して、ヌクレオチド1547~ヌクレオチド1635の89塩基対の欠失;及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、植物、植物種子、植物部位または植物細胞は、配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127及び128からなる群から選択される、ポリヌクレオチド配列を含む。本明細書で提供される植物、植物種子、植物部位または植物細胞はまた、例えば、欠失、挿入、置換または逆位以外の領域で、配列番号4に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有する、TFL1b遺伝子の染色体配列を含むことができる。
【0007】
また、本明細書では、改変を欠く点以外は同一である植物と比較して、植物の有限性表現型を変化させる改変を含む、改変された植物またはその種子、植物部位、細胞も提供される。特定の実施形態では、改変は、改変を欠く点以外は同一である植物の有限性と比較して、植物の有限性を増大させる。いくつかの実施形態では、改変された植物は、改変を欠く点以外は同一である植物と比較して、より早く終末開花日に達し、倒伏率の低下を示し、実質的に同じもしくは増加した収量を示し、もしくは真菌性病害に対するより低い感受性を示し、またはこれらの任意の可能な組み合わせを示す。
【0008】
特定の実施形態では、配列番号30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127及び128からなる群から選択される配列を含む、ポリヌクレオチドが提供される。また、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28及び29からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む、ガイドRNAが提供される。
【0009】
更に本明細書に、改変されたTFL1遺伝子を含む植物を生産するための方法が開示され、前記方法は、a)植物細胞の内在性TFL1遺伝子またはその相同体中の少なくとも1つの標的部位に改変を導入することと、b)前記TFL1遺伝子またはその相同体に前記改変を含む工程(a)の1つ以上の植物細胞を同定及び選択することと、c)工程(b)で選択された少なくとも1つ以上の細胞から少なくとも1つの植物を再生することと、を含む。いくつかの実施形態では、標的部位は、内在性TFL1遺伝子またはその相同体の非コード領域に位置する。他の実施形態では、非コード領域は、プロモーター、イントロン、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。更なる実施形態では、非コード領域はプロモーターである。更に別の実施形態では、改変は、前記植物細胞における少なくとも1種の部位特異的ゲノム改変酵素の存在によって促進される。このような酵素の非限定的な例としては、RNA誘導型ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。RNA誘導型ヌクレアーゼの例には、Casヌクレアーゼ、Cpf1ヌクレアーゼ、またはこれらのいずれかのバリアントが含まれる。本開示に従って使用できるいくつかの部位特異的ゲノム改変酵素は、標的部位で少なくとも1つの鎖切断を生じさせる。本明細書に開示される方法は、例えば、置換、挿入、逆位、欠失、重複及びこれらの組み合わせを含む、本開示による任意の改変を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、改変は欠失であり、欠失は、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、または少なくとも150の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0010】
本明細書で提供される方法は、例えば、所望の表現型を有する植物の生産に使用できる可能性がある。そのような表現型の非限定的な例としては、終末開花日の早期化、倒伏率の低下、収量の実質的な同一または増加、真菌性病害に対する感受性の低下、及び有限性の増加、またはこれらの任意の可能な組み合わせが挙げられる。そのような表現型は、具体的な実施形態では、本開示による表現型を付与する改変を欠く点以外では同一である植物と比較した場合、植物中に存在するとして定義され得る。
【0011】
以下の図面は、本明細書の一部分を形成し、本開示の特定の態様を更に実証するために含まれる。本開示は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な記載と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによってより深く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】GmTFL1b遺伝子の転写開始部位(tis)の上流の約2kbプロモーター領域上のgRNAの相対位置を示す。
【
図2】独特で重複のないホモ接合性欠失を示す。アスタリスク(*)は、20塩基対未満の小さな欠失を示す。なお、対立遺伝子名は接頭辞「AL」を省略している。
【
図3】プロモーター編集により生成された様々なDt1対立遺伝子を含む、植物の苗条先端及び葉におけるGmTFL1b遺伝子の相対発現レベルを示す。葉組織におけるGmTFL1bの発現は、試験したすべての試料でほんのわずかであった。
【
図4】頂部の総状花序表現型を示す画像を示す。写真は、野生型植物の終末開花日から2日以内に撮影された。
【
図5】ダイズTFL1bポリペプチド配列と、BLAST検索によって同定された関連植物種からの推定相同体のポリペプチド配列と、の対比較を示す。表の右上の三角形の小数点付きの数字は、2つの配列間で重複するアラインメント位置に対するアラインメント位置の同一残基の割合を示す。左下の三角形の整数は、アラインメント位置における2つの配列間の残基のバリエーションの数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
配列の簡単な説明
配列番号1は、グリシンマックスTFL1b(GmTFL1b)遺伝子のポリヌクレオチドコード配列である。
【0014】
配列番号2は、TFL1bタンパク質のアミノ酸配列である(配列番号1によってコードされる)。
【0015】
配列番号3は、5’及び3’非翻訳領域(UTR)ならびにイントロンを含む、GmTFL1b遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0016】
配列番号4は、GmTFL1b遺伝子の転写開始部位(tis)の上流の2kbプロモーター領域のポリヌクレオチド配列である。配列番号4は、野生型ダイズ植物で配列番号3の直前にある。
【0017】
配列番号5は、Cpf1遺伝子と適合する共通の足場のポリヌクレオチド配列である。
【0018】
配列番号6は、ダリアモザイクウイルスFLTプロモーターのポリヌクレオチド配列である。
【0019】
配列番号7は、イネ用にコドン最適化されたラクノスピラ科細菌Cpf1 RNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素をコードする、ポリヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号8は、Solanum lycopersicumからの核局在化シグナルのポリヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号9は、Medicago truncatulaユビキチンプロモーターのポリヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号10は、トウモロコシ用にコドン最適化されたラクノスピラ科細菌Cpf1 RNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素をコードする、ポリヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号11は、ダイズRNAポリメラーゼIII(Pol3)プロモーターのポリヌクレオチド配列である。
【0024】
配列番号12は、ダイズ7SL_CR10プロモーターのポリヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号13~29は、GmTFL1b遺伝子のプロモーター領域の編集に使用されるガイドRNA(gRNA)内のスペーサー配列のポリヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号30~46及び82~128は、配列番号4と比較して、様々な欠失(及び、配列番号40の場合には逆位)を有するGmTFL1bプロモーターの対立遺伝子のポリヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号47は、GmTFL1b遺伝子の5’UTRのポリヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号48、49及び50は、それぞれ、GmTFL1b遺伝子の第1、第2及び第3のイントロンのポリヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号51は、GmTFL1b遺伝子の3’UTRのポリヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号52~66、78及び80は、それぞれ、Medicago truncatula(配列番号52)、Cajanus cajan(配列番号53)、Pisum sativum(配列番号54)、Arabidopsis thaliana(配列番号55)、Brassica napus(配列番号56)、Gossypium hirsutum(配列番号57)、Capsicum annuum(配列番号58)、Nicotiana tabacum(配列番号59)、Solanum tuberosum(配列番号60)、Solanum lycopersicum(配列番号61)、Zea Mays(配列番号62)、Oryza sativa(配列番号63)、Hordeum vulgare(配列番号64)、Triticum aestivum(配列番号65)、Sorghum bicolor(配列番号66)、Arachis Hypogaea(配列番号78)、及びCicer arietinum(配列番号80)に見られるTFL1bタンパク質相同体のアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号67~77、79及び81は、それぞれ、Zea mays(配列番号67)、Sorghum bicolor(配列番号68)、Oryza sativa(配列番号69)、Triticum aestivum(配列番号70)、Hordeum vulgare(配列番号71)、Solanum lycopersicum(配列番号72)、Gossypium hirsutum(配列番号73)、Capsicum annuum(配列番号74)、Brassica napus(配列番号75)、Arabidopsis thaliana(配列番号76)、Medicago truncatula(配列番号77)、Arachis hypogaea(配列番号79)、及びCicer arietinum(配列番号81)に見られるTFL1b遺伝子相同体の転写開始部位(tis)の上流の約2kbのプロモーター領域のポリヌクレオチド配列である。
【0032】
茎の生長習性は、ダイズ(Glycine max)における植物丈、開花時期及び開花期間、節の生成、根の構造などの植物の特性に直接影響を及ぼす重要な農業的形質である。植物丈は、収量の可能性及び耐倒伏性に直接影響を及ぼす可能性があるため、ダイズ及び他の作物において特に重要な農業形質である。植物丈は、苗条頂端分裂組織での栄養相から生殖相への移行のタイミングによって影響される。ダイズでは、苗条頂と枝先端の両方における生長習性及び茎先端の最終分化のタイミングは、Dt1(無限生長1)遺伝子座によって制御される。Dt1遺伝子座はまた、枝密度、茎莢密度、茎節数、莢ごとの3つの種子の数及び総種子数などの他の関連形質にも影響を及ぼす。Dt1の野生型発現は無限生長を特定し、有限生長を引き起こすdt1(有限生長1)対立遺伝子に対して不完全な優占度を有する。茎先端のDt1遺伝子座で遺伝子TERMINAL FLOWER 1b(GmTFL1b)の発現は、ダイズFLOWERING LOCUS TオルソログであるFT2aによって誘導される、最終分化から頂端分裂組織を保護する。
【0033】
例えば、商業的に栽培されているダイズ品種の大部分は、無限または有限という2つの茎の生長習性のいずれかを有するものとして分類される。無限性ダイズ植物と有限性ダイズ植物は、栄養生長期中の発育では類似しているが、生殖/開花期の茎の生長習性には大きな違いがある。無限性ダイズ品種は、茎の先端から数週間にわたって高さが伸びる植物を生産するが、同時に、植物がまだ栄養生長期にあるときに開花が茎の低い位置で始まる。対照的に、有限性ダイズ品種は、生殖相の開始時(R1相)に主茎の高さの成長を完了する植物を生産し、ほぼ同時に、その植物が生産するすべての花を生産する。その結果、有限性植物は、無限性植物の約1/2~約2/3の丈しかない。
【0034】
一般に、無限性ダイズ品種は、有限性品種と比較して、収量の可能性が高くなるが、上部がより重いため茎が倒伏しやすいという欠点がある。しかし、発育におけるその重要な役割のため、Dt1遺伝子座はダイズの栽培植物化の初期に固定され、その結果、遺伝子座の多様性が全体的に欠如した。このため、新しい有限性表現型を持つ品種を開発する取り組みが妨げられてきた。更に、ダイズ栽培における植物間競争では、柔軟性に優れた背の高い植物が有利となるため、変異誘発スクリーニングにおいてさえ、有限性の程度にばらつきがある、より短く、よりコンパクトな半有限性植物が選択される可能性は非常に低い。
【0035】
本開示は、ダイズ及び他の作物における現在の無限性生長習性と有限性生長習性との間の新規な中間表現型(半有限性)を付与する操作された対立遺伝子、ならびにそれらの生産方法を提供するという点で、当技術分野における重要な進歩を表し、これにより、主要な形質が改善され、作物の倒伏が減少し、苗及び圃場あたりの生産性が向上する。本明細書に開示される方法及び組成物は、従来の植物育種またはランダム変異誘発からは選択できない多様性を創出する機会を提供する。したがって、本明細書では、例えば、ダイズなどの作物では、これまでの市場は主に有限性及び無限性の品種のみからなっていたにもかかわらず、生産者に固有の利益を提供する半有限性植物の開発を含む、そのような利点を達成するために使用され得る、植物の有限性を改変するための方法及び組成物が提供される。
【0036】
新規な生長習性表現型を有するダイズ及び他の植物を生産するために、本開示は、特定の実施形態では、TFL1b遺伝子プロモーターの編集を介して、Dt1遺伝子座に新規対立遺伝子を作成するための方法及び組成物を提供する。例えば、TFL1b遺伝子の上流のプロモーター領域は、配列の約1.2kbを標的とする8つのガイドRNAを共発現することによって、本明細書に開示されるように改変された。30~1746bpの一連の欠失を含む編集された個体が選択され、評価された。驚くべきことに、その結果、有限性から超無限性までの範囲に分類される、明らかな有限性表現型のスペクトルを有するDt1遺伝子座における一連の対立遺伝子を表す、編集されたdt1系統を作成できることが示された。無限性背景品種の終末開花日の3週間前からほぼ1週間後までの範囲の終末開花日を付与する、対立遺伝子が生成され、最適な程度の半有限性を操作する能力が初めて可能になった。したがって、本開示は、倒伏を減少させ、それによって植物当たりの生産性を増加させることによって収量を保護する可能性のある新規の半有限性表現型を付与する、ダイズ及び他の作物における新規の操作された対立遺伝子の生産を可能にするという点で、当技術分野における重要な進歩を表す。
【0037】
I.ゲノム編集
特定の実施形態では、本開示は、部位特異的組込みまたはゲノム編集を使用する、ゲノム改変を介して作成される植物、植物部位、植物細胞及び種子を提供する。ゲノム編集を使用し、1つ以上の遺伝子の発現及び/または活性を変化させる、または植物ゲノム中の所望の位置で挿入配列もしくは導入遺伝子を組み込むなど、植物のゲノム中の所望の標的部位で1つ以上の編集(複数可)または変異(複数可)を作製することができる。植物のゲノム内の任意の部位または遺伝子座は、ゲノム編集(または、遺伝子編集)あるいは導入遺伝子、コンストラクトもしくは転写可能DNA配列の部位指向性組込みを作製するために選択され得る可能性がある。本明細書で使用する場合、ゲノム編集または部位指向性組込みのための「標的部位」とは、部位特異的ヌクレアーゼによって結合されかつ切断され、植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列の核酸骨格及び/またはその相補DNA鎖へ二本鎖切断(DSB)または一本鎖ニックが導入される、植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列の位置を指す。標的部位は、例えば、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも29、または少なくとも30の連続したヌクレオチドを含み得る。RNA誘導型ヌクレアーゼのための「標的部位」は、標的部位での二本鎖核酸(DNA)分子または染色体のいずれかの相補鎖の配列を含み得る。部位特異的ヌクレアーゼは、非コーディングガイドRNA(例えば、これらに限定されないが、本明細書で更に記載されるCRISPR RNA(crRNA)または単一ガイドRNA(sgRNA))経由などで、標的部位へ結合し得る。本明細書で提供されている非コードガイドRNAは、標的部位に相補性(例えば、標的部位で二本鎖核酸分子のいずれかの鎖または染色体に相補性)であってもよい。完全な同一性または相補性は、非コードガイドRNAが標的部位に結合するまたはハイブリッド形成するのに必要とされなくてもよいことを理解されたい。例えば、標的部位と非コードRNAとの間の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、または少なくとも8つのミスマッチ(または、それ以上)は容認されてもよい。「標的部位」はまた、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼなどの非コードRNA分子によって誘導されなくてもよい他の任意の部位特異的ヌクレアーゼによって結合されかつ切断され、ポリヌクレオチド配列及び/またはその相補性なDNA鎖にDSBまたは一本鎖ニックを導入する、植物ゲノム内のポリヌクレオチド配列の位置も指す。本明細書で使用する場合、「標的領域」または「標的化された領域」は、2つ以上の標的部位が隣接するポリヌクレオチドの配列または領域を指す。限定するものではないが、いくつかの実施形態では、標的領域は、変異、欠失、挿入または逆位が行われ得る。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドの配列または分子の標的領域を説明するために使用される場合の「隣接する」とは、標的領域を囲むポリヌクレオチドの配列または分子の2つ以上の標的部位を指し、標的領域の両側に1つの標的部位がある。
【0038】
本明細書で使用する場合、「標的ゲノム編集技術」とは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9系)、TALE(転写活性化因子様エフェクター)エンドヌクレアーゼ(TALEN)、リコンビナーゼ、またはトランスポザーゼなどの部位特異的ヌクレアーゼを使用する、植物のゲノム内の特定の位置の正確な及び/または標的化編集を可能にする(すなわち、編集がほとんどまたは完全に非無作為である)任意の方法、プロトコルまたは技術を指す。本明細書で使用する場合、「編集」または「ゲノム編集」とは、内在性植物ゲノム核酸配列の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2500、少なくとも5000、少なくとも10,000もしくは少なくとも25,000ヌクレオチドの標的変異、欠失、逆位または置換を生成することを指す。本明細書で使用する場合、「編集」または「ゲノム編集」とはまた、植物の内因性植物ゲノム内への少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10,000もしくは少なくとも25,000ヌクレオチドの標的挿入または部位指向性組込みを包含し得る。単数形の「編集(edit)」または「ゲノム編集(genomic edit)」は、1つのそのような標的変異、欠失、逆位、置換または挿入を指すが、複数形の「編集(edits)」または「ゲノム編集(genomic edits)」は、2つ以上の標的変異(複数可)、欠失(複数可)、逆位(複数可)、置換(複数可)及び/または挿入(複数可)を指し、それぞれの「編集」は、標的ゲノム編集技術を介して導入される。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、部位特異的ヌクレアーゼは、部位特異的ヌクレアーゼによって作成された二本鎖切断(DSB)またはニックの修復を介して、所望の標的部位でゲノムに所望の編集、変異または挿入を行うための鋳型として機能する、ドナー鋳型分子と共に同時送達されてもよい。いくつかの実施形態によれば、部位特異的ヌクレアーゼは、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含むDNA分子と共に同時送達されてもよい。
【0040】
本明細書で提供される部位特異的ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEエンドヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、Khandagale et al.(Plant Biotechnol Rep10:327-343,2016)及びGaj et al.(Trends Biotechnol.31(7):397-405,2013)を参照のこと。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、制限酵素(例えば、FokI)に由来し得る切断ドメイン(または、切断ドメインの半分)へ融合させた、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインからなる合成タンパク質である。DNA結合ドメインは、標準的(C2H2)または非標準的(例えば、C3HまたはC4)であってもよい。DNA結合ドメインは、標的部位に依存する1以上のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上のジンクフィンガー)を含み得るが、通常、3~4(またはそれ以上)のジンクフィンガーから構成され得る。DNA結合ドメイン中の複数のジンクフィンガーは、リンカー配列(複数可)によって分離され得る。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインの改変によって、二本鎖DNAのほぼすべての区間を切断するように設計され得る。ZFNは、標的部位DNA配列を結合するように操作されたジンクフィンガーアレイを含むDNA結合ドメインへ融合させた、非特異的DNA切断ドメイン(例えば、FokIヌクレアーゼに由来する)から構成される単量体から二量体を形成する。標的部位への部位特異的結合に寄与するジンクフィンガーαヘリックスの開始点に対して-1位、+2位、+3位及び+6位のアミノ酸は、特定の標的配列に適合するように変更する及びカスタマイズすることができる。他のアミノ酸はコンセンサス骨格を形成し、異なる配列特異性を備えたZFNを生成し得る。
【0041】
特異的標的配列を標的とし、それらへ結合するためにZFNを設計する方法及び規則は当技術分野において公知である。例えば、米国特許出願第2005/0064474号、同第2009/0117617号、及び同第2012/0142062号を参照されたい。FokIヌクレアーゼドメインはDNAを切断するために二量体化が必要であり得、そのため、C末端領域を備えた2つのZFNが切断部位の反対のDNA鎖を結合するために必要である(5~7bpで分離される)。2つのZF結合部位がパリンドロームならば、ZFN単量体は標的部位を切断することができる。ZFNは、本明細書で使用する場合、広義であり、別のZFNからの援助無しに二本鎖DNAを切断することができる単量体のZFNを包含する。ZFNという用語はまた、同じ部位でDNAを切断するために一緒に機能するように操作される、ZFNの対の一方または双方のメンバーを指すために使用されてもよい。ジンクフィンガードメインのDNA結合特異性は様々な方法のうちの1つを使用して再操作され得るので、カスタマイズされたZFNは、理論的にはほとんどあらゆる標的配列(例えば、植物ゲノム中の遺伝子でまたはその付近で)を標的とするように構築され得る。ジンクフィンガードメインを操作するための公的に利用可能な方法としては、Context-dependent Assembly(CoDA)、Oligomerized Pool Engineering(OPEN)、及びModular Assemblyが挙げられる。
【0042】
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、例えば、植物の遺伝子のゲノム遺伝子座でまたはその近傍で、事実上任意のDNA配列にも結合するように操作することができる。TALEは、33~34アミノ酸の13~28の反復単量体から構成される中央のDNA結合ドメインを有する。それぞれの単量体のアミノ酸は、12位及び13位での超可変アミノ酸残基以外は、高度に保存される。2つの可変アミノ酸は、反復可変二残基(RVD)と呼ばれる。RVDのアミノ酸対のNI、NG、HD及びNNは、優先的に、それぞれ、アデニン、チミン、シトシン及びグアニン/アデニンを認識し、RVDの調整により一続きのDNA塩基を認識することができる。アミノ酸配列とDNA認識との間のこの単純な関係性は、適切なRVDを含有する反復セグメントの組み合わせの選択によって、特異的なDNA結合ドメインを操作することを可能にした。
【0043】
TALENは、ヌクレアーゼドメインへのTALE DNA結合ドメインの融合によって生成された人工制限酵素である。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、PvuII、MutH、TevI、FokI、AlwI、MlyI、SbfI、SdaI、StsI、CleDORF、Clo051及びPept071からなる群から選択される。TALEN対のそれぞれのメンバーが標的部位に隣接するDNA部位へ結合する場合、FokI単量体は二量体化し、標的部位で二本鎖DNAの切断を引き起こす。TALENという用語は、本明細書で使用する場合、別のTALENからの援助無しに二本鎖DNAを切断することができる単量体のTALENを幅広く包含する。TALENという用語はまた、同じ部位でDNAを切断するために一緒に機能する、1対のTALENのうちの一方または両方のメンバーを指す。
【0044】
野生型のFokI切断ドメイン以外に、変異を備えたFokI切断ドメインのバリアントは、切断特異性及び切断活性を改善するように設計されている。FokIドメインは二量体として機能し、適切な向き及び間隔での、標的ゲノム中の部位のための固有のDNA結合ドメインを備えた2つのコンストラクトを必要とする。TALEN DNA結合ドメインとFokI切断ドメインの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数の両方は、高レベルの活性を達成するためのパラメータである。PvuII、MutH及びTevIの切断ドメインは、TALEによる使用のためのFokI及びFokIのバリアントの有用な代替物である。PvuIIは、TALEにカップリングされた場合に高度に特異的な切断ドメインとして機能する(Yank et al.,PLoS One 8:e82539,2013)。MutHは、DNA中の鎖に特異的ニックを導入することが可能である(Gabsalilow et al.,Nucleic Acids Research.41:e83,2013)。TevIは、DNA中の二本鎖切断を標的化された部位で導入する(Beurdeley et al.,Nature Communications 4:1762, 2013)。
【0045】
TALE結合ドメインのアミノ酸配列とDNA認識との間の関係性は、設計可能なタンパク質を可能にする。DNAWorksなどのソフトウエアプログラムを使用し、TALEコンストラクトを設計することができる。TALEコンストラクトを設計する他の方法は、当業者に公知である。Doyle et al.(Nucleic Acids Research40:W117-122,2012)、Cermakら(Nucleic Acids Research39:e82,2011)及びtale-nt.cac.cornell.edu/aboutを参照されたい。別の態様では、本明細書で提供されるTALENは、標的DSBを生成することが可能である。
【0046】
部位特異的ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼであり得る。ホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADGファミリーなどの微生物で通常同定されるメガヌクレアーゼは、高い活性及び長い認識配列(14bp超)を備え、標的DNAの部位特異的消化をもたらす、固有の酵素である。天然に存在するメガヌクレアーゼの操作されたバージョンは、通常、伸長されたDNA認識配列(例えば、14~40bp)を有する。メガヌクレアーゼのDNAの認識及び切断の機能が単一ドメイン中で絡み合うので、メガヌクレアーゼの操作はZFN及びTALENよりも困難であり得る。変異誘発及びハイスループットスクリーニングの特殊な方法を使用し、固有の配列を認識して、改善されたヌクレアーゼ活性を保持する新規のメガヌクレアーゼバリアントを生成する。
【0047】
部位特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導型ヌクレアーゼであり得る。いくつかの実施形態によれば、RNA誘導型ヌクレアーゼは、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても公知である)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、CasX、CasY、及びこれらの任意の相同体または改変バージョン、ならびにアルゴノート(アルゴノートタンパク質の非限定的例としては、Thermus thermophilusアルゴノート(TtAgo)、Pyrococcus furiosusアルゴノート(PfAgo)、Natronobacterium gregoryiアルゴノート(NgAgo)、及びこれらの任意の相同体または改変バージョンが挙げられる)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態によれば、RNA誘導型エンドヌクレアーゼはCas9またはCpf1酵素である。RNA誘導型ヌクレアーゼは、ガイドRNAの有無にかかわらずタンパク質として送達されてもよく、ガイドRNAは、RNA誘導型ヌクレアーゼ酵素と複合体を形成して、リボ核タンパク質として送達されてもよい。
【0048】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼについては、ガイドRNA分子を更に提供し、塩基対形成またはハイブリッド形成を介してエンドヌクレアーゼを植物のゲノムの標的部位に指向させ、標的部位でまたはその近傍でDSBまたはニックを生じてもよい。ガイドRNAは、gRNA核酸分子として、もしくはプロモーターに作動可能に連結されたガイドRNAをコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、コンストラクトもしくはベクターとして、植物の細胞もしくは組織に形質転換されてもよいし、または導入されてもよい。当技術分野で理解されているように、ガイドRNAは、例えば、CRISPR RNA(crRNA)、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)、またはエンドヌクレアーゼをゲノム内の特定の標的部位に誘導または指向させることができる他の任意のRNA分子を含み得る。化膿性連鎖球菌に由来するプロトタイプのCRISPR関連タンパク質であるCas9は、CRISPR RNA(crRNA)ガイドとトランス作用性CRISPR RNA(tracrRNA)という2つのRNAに自然に結合し、CRISPRリボ核タンパク質(crRNP)を構築する。「単鎖ガイドRNA」(または「sgRNA」)は、リンカー配列によってtracrRNAに共有結合したcrRNAを含むRNA分子であり、単一のRNA転写物または分子として発現され得る。ガイドRNAは、遺伝子でもしくはその付近などの植物ゲノム内の標的部位と同一または相補的なガイドまたはターゲティング配列(本明細書では「スペーサー配列」とも称される)を含む。ガイドRNAは、通常、タンパク質をコードしない非コードRNA分子である。ガイドRNAのガイド配列は、例えば、12~40のヌクレオチド長、12~30のヌクレオチド長、12~20のヌクレオチド長、12~35のヌクレオチド長、12~30のヌクレオチド長、15~30のヌクレオチド長、17~30のヌクレオチド長もしくは17~25のヌクレオチド長、または約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のヌクレオチド長などの少なくとも10のヌクレオチド長であってもよい。ガイド配列は、ゲノムの標的部位でのDNA配列の少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25もしくはそれ以上の連続するヌクレオチドに対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%もしくは100%同一であってもよいし、または相補性であってもよい。
【0049】
上述のように、ゲノム編集の標的遺伝子は、ダイズTERMINAL FLOWER1b(GmTFL1b)遺伝子を含む、抑制について本明細書に記載されるTERMINAL FLOWER1様遺伝子のいずれかであり得る。ゲノム編集によるTFL1遺伝子のノックダウンの変異に関して、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、TFL1遺伝子のプロモーター及び/またはエンハンサー配列、もしくはイントロン、5’UTR及び/または3’UTR配列などの上流または下流の配列に対して標的とされ、TFL1遺伝子の1つ以上のプロモーター及び/または調節配列を変異させ、その発現レベルに影響を及ぼすことができるか、またはその発現レベルを低下させることができる。ダイズにおけるGmTFL1b遺伝子のノックダウンに関して、ガイドRNAが使用され得、これは、配列番号3もしくは4の少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25もしくはそれ以上の連続したヌクレオチドまたはそれに相補的な配列(例えば、配列番号3もしくは4の12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25もしくはそれ以上の連続するヌクレオチドまたはそれに相補的な配列)に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%または100%同一または相補的であるガイド配列を含むが、代替スプライシング及び異なるエクソン/イントロン境界が生じる可能性もある。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列に関して「連続」という用語は、配列中に欠失またはギャップがないことを意味する。
【0050】
本明細書で使用する場合、所与の配列に関して、「相補体」、「相補的配列」及び「逆相補体」は、互換的に使用される。3つの用語はすべて、ヌクレオチド配列の逆相補的配列、すなわち、ヌクレオチドの逆の順序で所定の配列に相補的な配列を指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「アンチセンス」という用語は、特定のDNAまたはRNA配列に相補的なDNAまたはRNA配列を指す。アンチセンスRNA分子は、センスRNA鎖、配列またはmRNAと組み合わせて、配列の相補性により二重鎖を形成できる、一本鎖核酸である。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的な核酸鎖を指す。遺伝子または遺伝子座の「センス鎖」とは、遺伝子もしくは遺伝子座から転写されたRNA分子と同じ配列を有する、DNAまたはRNAの鎖である(RNAのウラシル及びDNAのチミンを除く)。
【0052】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、当技術分野で公知のように、ガイドRNAのターゲティング配列に相補的なゲノム標的部位配列の5’末端に直接隣接して上流にある、すなわち、(ガイドRNAのターゲティング配列に対して)ゲノム標的部位のセンス(+)鎖の直接下流(3’)にある、ゲノム中に存在し得る。例えば、Wu et al.(Quant Biol.2(2):59-70(2014))を参照されたい。(ガイドRNAのターゲティング配列に対して)標的部位に隣接するセンス(+)鎖上のゲノムPAM配列は、5’-NGG-3’を含み得る。しかしながら、概して、ガイドRNAの対応する配列(すなわち、ガイドRNAのターゲティング配列の直接下流(3’))は、ゲノムPAM配列に相補的でなくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、リコンビナーゼである。使用され得るリコンビナーゼの非限定的な例としては、DNA認識モチーフに付着したセリンリコンビナーゼ、DNA認識モチーフに付着したチロシンリコンビナーゼ、またはDNA認識モチーフに付着した当技術分野で公知の任意のリコンビナーゼ酵素が挙げられる。特定の実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼはリコンビナーゼまたはトランスポザーゼであり、これは、DNA結合ドメインに付着もしくは融合したDNAトランスポザーゼまたはリコンビナーゼであり得る。リコンビナーゼの非限定的例としては、本明細書で提供されるDNA認識モチーフに付着したCreリコンビナーゼ、Ginリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ及びTnp1リコンビナーゼからなる群から選択される、チロシンリコンビナーゼが挙げられる。本開示の一態様では、本明細書で提供されるCreリコンビナーゼまたはGinリコンビナーゼは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、またはCas9ヌクレアーゼへ繋留される。別の態様では、PhiC31インテグラーゼ、R4インテグラーゼ、及びTP-901インテグラーゼからなる群から選択されるセリンリコンビナーゼは、本明細書で提供されるDNA認識モチーフへ付着され得る。更に別の態様では、TALE-piggyBac及びTALE変異誘発因子からなる群から選択されるDNAトランスポゼースは、本明細書で提供されるDNA結合ドメインへ付着され得る。
【0054】
リコンビナーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ及びTALENなどの部位特異的ヌクレアーゼはRNA誘導型ではなく、代わりに、DSBもしくはニックを引き起こすためにそれらの標的部位を決定するそれらのタンパク質構造に依存するか、またはそれらはDNA結合タンパク質ドメインもしくはモチーフへ融合、繋留もしくは付着される。部位特異的ヌクレアーゼ(または、融合/付着/繋留したDNA結合ドメイン)のタンパク質構造は、部位特異的ヌクレアーゼを標的部位へ向けることができる。これらの実施形態の多くによれば、リコンビナーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ及びTALENなどの非RNA誘導型部位特異的ヌクレアーゼは、公知の方法に従って、設計、操作及び構築され得、植物の内在性遺伝子のゲノム遺伝子座でまたはその付近での標的部位を標的としてそれへ結合し、かかるゲノム遺伝子座でDSBまたはニックを作成する。非RNA誘導型部位特異的ヌクレアーゼによって作成されたDSBまたはニックは、DSBまたはニックの修復を介して遺伝子発現のノックダウンを引き起こす可能性があり、その結果、細胞修復機構により、DSBまたはニックの部位での配列の変異または挿入が生じる可能性がある。このような細胞修復機構は、ドナー鋳型分子によって誘導され得る。
【0055】
本明細書で使用する場合、組換えポリヌクレオチド、DNAもしくはRNAのドナー鋳型または配列であり得る、「ドナー分子」、「ドナー鋳型」または「ドナー鋳型分子」(まとめて「ドナー鋳型」)は、相同核酸鋳型もしくは配列(例えば、相同配列)及び/または植物細胞のゲノム中のニックもしくはDSBの修復経由の植物細胞のゲノムの中への部位指向性の標的化された挿入または組換えのための挿入配列を有する核酸分子として定義される。ドナー鋳型は、1つ以上の相同配列(複数可)及び/または標的化された組込みのための挿入配列を含む分離したDNA分子であり得るか、またはドナー鋳型は、1つ以上の他の発現カセット、遺伝子/導入遺伝子、及び/または転写可能DNA配列を更に含むDNA分子の配列部分(すなわち、ドナー鋳型領域)であり得る。例えば、「ドナー鋳型」は、導入遺伝子もしくはコンストラクトの部位指向性組込みのために、または植物のゲノム内の標的部位の中へ挿入、欠失、置換などのような変異を導入する鋳型として、使用され得る。本明細書で提供される標的化されたゲノム編集技法は、1以上、2以上、3以上、4以上もしくは5以上のドナー分子または鋳型の使用を含み得る。本明細書で提供されるドナー鋳型は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、もしくは少なくとも10の遺伝子(複数可)もしくは導入遺伝子(複数可)及び/または転写可能DNA配列(複数可)を含み得る。あるいは、ドナー鋳型は、遺伝子、導入遺伝子、または転写可能DNA配列を含まなくてもよい。
【0056】
限定するものではないが、ドナー鋳型の遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列には、例えば、殺虫剤耐性遺伝子、除草剤耐性遺伝子、窒素利用効率遺伝子、水利用効率遺伝子、収量向上遺伝子、栄養品質遺伝子、DNA結合遺伝子、選択可能なマーカー遺伝子、RNAiまたは抑制コンストラクト、部位特異的ゲノム改変酵素遺伝子、CRISPR/Cas9系の単一のガイドRNA、ジェミニウイルスベースの発現カセット、または植物ウイルス発現ベクター系が挙げられてもよい。他の実施形態によれば、ドナー鋳型の挿入配列は、タンパク質をコードする配列、または内在性遺伝子を抑制のために標的とし得る非コーディングRNA分子をコードする転写可能DNA配列を含み得る。ドナー鋳型は、コーディング配列、遺伝子、または転写可能DNA配列へ作動可能に結合されたプロモーター(構成的プロモーター、組織特異的プロモーターもしくは組織優先的プロモーター、発生ステージプロモーター、または誘導可能プロモーターなど)を含み得る。ドナー鋳型は、リーダー、エンハンサー、プロモーター、転写開始部位、5’-UTR、1以上のエクソン(複数可)、1以上のイントロン(複数可)、転写終結部位、領域または配列、3’-UTR、及び/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよく、それらはそれぞれが、非コードRNA、ガイドRNA、mRNA及び/またはタンパク質をコードするコード配列、遺伝子(または導入遺伝子)、または転写可能なDNA配列に作動可能に結合されてもよい。ドナー鋳型は、一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNAの分子、またはプラスミドであり得る。
【0057】
ドナー鋳型の「挿入配列」は、植物細胞のゲノムの中への標的化された挿入のために設計された配列であり、それは任意の好適な長さであり得る。例えば、ドナー鋳型の挿入配列は、2~50,000の間、2~10,000の間、2~5000の間、2~1000の間、2~500の間、2~250の間、2~100の間、2~50の間、2~30の間、15~50の間、15~100の間、15~500の間、15~1000の間、15~5000の間、18~30の間、18~26の間、20~26の間、20~50の間、20~100の間、20~250の間、20~500の間、20~1000の間、20~5000の間、20~10,000の間、50~250の間、50~500の間、50~1000の間、50~5000の間、50~10,000の間、100~250の間、100~500の間、100~1000の間、100~5000の間、100~10000の間、250~500の間、250~1000の間、250~5000の間、または250~10,000の間のヌクレオチドまたは塩基対の長さであり得る。ドナー鋳型は、相同組換え経由で植物のゲノム内の標的部位の中への変異または挿入配列の組込みを指向させるように少なくとも1つの相同配列または相同アーム(2つの相同アームなど)も有し、相同配列または相同アーム(複数可)は、同一もしくは相補的であるか、または、植物のゲノム内の標的部位でもしくはその付近での配列へのパーセント同一性もしくはパーセント相補性を有する。ドナー鋳型が相同アーム(複数可)及び挿入配列を含む場合に、相同アーム(複数可)は、ドナー鋳型の挿入配列に近接するかまたはそれを取り囲むだろう。それぞれの相同アームは、植物のゲノム内の標的DNA配列のうちの連続する少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2500、または少なくとも5000のヌクレオチドへ、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一または相補的である。
【0058】
部位指向性組込みのための当技術分野において公知の任意の方法が、本開示と共に使用され得る。挿入配列を備えたドナー鋳型分子の存在下において、DSBまたはニックは、ドナー鋳型と植物ゲノムの相同アーム(複数可)との間の相同組換えによって、または非相同末端結合(NHEJ)によって修復され、植物ゲノムの中への挿入配列の部位指向性組込みをもたらして、DSBまたはニックの部位で標的化された挿入事象を生成し得る。したがって、導入遺伝子、転写可能DNA配列、コンストラクトまたは配列が、ドナー鋳型の挿入配列中に所在するならば、導入遺伝子、転写可能DNA配列、コンストラクトまたは配列の部位特異的な挿入または組込みが達成され得る。
【0059】
標的遺伝子を抑制するための当技術分野で公知の任意の方法を使用して、アンチセンスRNA、二本鎖RNA(dsRNA)もしくは逆方向反復RNA配列の発現を含む本開示の実施形態に従って、または低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、トランス作用性siRNA(ta-siRNA)もしくはマイクロRNA(miRNA)の発現による共抑制もしくはRNA干渉(RNAi)を介して、TFL1遺伝子を抑制することができる。更に、TFL1遺伝子内またはその近傍のコード及び/または非コードゲノム配列または領域を標的とする、センス及び/またはアンチセンスRNA分子を使用し、遺伝子のサイレンシングを引き起こすことができる。したがって、これらの方法のいずれも、組織特異的または組織優先的な方法での内因性TFL1遺伝子の標的化された抑制に使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2009/0070898号、同第2011/0296555号、及び同第2011/0035839号を参照のこと。
【0060】
DSBまたはニックの導入を使用し、植物のゲノム中の標的化された変異を導入することもできる。このアプローチに従って、変異(欠失、挿入、逆位及び/または置換など)は、DSBまたはニックの不完全な修復を介して標的部位で導入され、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンを産生し得る。かかる変異は、ドナー鋳型分子を使用せずに、標的化された遺伝子座の不完全な修復によって生成され得る。遺伝子の「ノックアウト」は、タンパク質の非発現または非機能的タンパク質の発現をもたらす、遺伝子の内在性遺伝子座でもしくはその付近でのDSBまたはニックを誘導することによって達成され得るが、遺伝子の「ノックダウン」は、コードされたタンパク質の機能を消失させる方法で、遺伝子のコード配列に影響しない部位で不完全に修復される遺伝子の内在性遺伝子座でもしくはその付近でのDSBまたはニックを誘導することによって、類似する方法で達成され得る。例えば、内在性遺伝子座内のDSBまたはニックの部位は、遺伝子の上流または5’領域(例えば、プロモーター及び/またはエンハンサー配列)中に存在して、発現のレベルに影響を及ぼし得るか、または低減し得る。
【0061】
同様に、遺伝子のかかる標的化されたノックアウトまたはノックダウンの変異は、DSBまたはニックの修復を介して標的部位でもしくはその付近で特定のまたは所望される変異を指向させるドナー鋳型分子により生成され得る。ドナー鋳型分子は、挿入配列の有無にかかわらず、標的化されたゲノム配列に比べて1つ以上の変異(1つ以上の欠失、挿入、逆位及び/または置換など)をDSBもしくはニックの部位でまたはその付近で含む、相同配列を含み得る。例えば、遺伝子の標的化されたノックアウトまたはノックダウンの変異は、少なくとも遺伝子の一部を置換、挿入、欠失または逆位させることによって(遺伝子のコード配列にフレームシフトもしくは未成熟停止コドンを導入するか、またはプロモーター配列もしくは遺伝子の他の非コード調節エレメントの配列を破壊することによってなど)達成され得る。遺伝子の一部の欠失は、2つの標的部位でDSBまたはニックを作成し、標的部位が隣接する介在標的領域の欠失を引き起こすことによっても導入され得る。
【0062】
一態様では、本開示は、TFL1遺伝子の変異対立遺伝子を含む改変ダイズ植物、またはその植物部位を提供し、変異対立遺伝子は、内因性TFL1遺伝子のプロモーター領域の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、または少なくとも200の連続したヌクレオチドを含む少なくとも1つのゲノム改変を含む。ダイズTFL1b遺伝子のプロモーター配列は、TFL1b遺伝子の転写開始部位の上流の2kbのポリヌクレオチド配列である、配列番号4の配列を含む。ゲノム改変は、配列番号4の配列内の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、または少なくとも200の連続したヌクレオチドを含む、領域の欠失であり得る。配列番号4におけるそのような欠失には、配列番号4のヌクレオチド1539~ヌクレオチド1568、ヌクレオチド1217~ヌクレオチド1604、ヌクレオチド1518~ヌクレオチド1629、ヌクレオチド951~ヌクレオチド1222、ヌクレオチド1364~ヌクレオチド1407、ヌクレオチド1367~ヌクレオチド1516、ヌクレオチド754~ヌクレオチド1806、ヌクレオチド1216~ヌクレオチド1319、ヌクレオチド1159~ヌクレオチド1965、ヌクレオチド760~ヌクレオチド1214、ヌクレオチド939~ヌクレオチド1028、ヌクレオチド1066~ヌクレオチド1664、ヌクレオチド952~ヌクレオチド1552、ヌクレオチド1677~ヌクレオチド1808、ヌクレオチド1524~ヌクレオチド1558、ヌクレオチド476~ヌクレオチド1405、ヌクレオチド1365~ヌクレオチド1559、ヌクレオチド928~ヌクレオチド1560、またはヌクレオチド593~ヌクレオチド1813にわたる領域が含まれ得る。
【0063】
一態様では、ゲノム改変は、配列番号4の配列内の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、または少なくとも200の連続したヌクレオチドの領域の反転であり得る。そのような逆位は、除去され、逆位され、及び配列番号4の同じ位置に再挿入された配列番号4のヌクレオチド1029~ヌクレオチド1065の領域を含み得る。一態様では、TFL1遺伝子の変異対立遺伝子は、内因性TFL1遺伝子のプロモーター領域に2つ以上の改変を含み得る。ダイズTFL1b 遺伝子のそのような変異対立遺伝子の例は本明細書に開示されており、例えば、配列番号4の配列中に2つの欠失を含む対立遺伝子が含まれ、第1の欠失は配列番号4のヌクレオチド952~ヌクレオチド1552の領域にわたり、第2の欠失は配列番号4のヌクレオチド1677~ヌクレオチド1808にわたり、対立遺伝子は配列番号4の配列内に2つの欠失及び逆位を含み、第1の欠失は配列番号4のヌクレオチド939~ヌクレオチド1028の領域にわたり、第2の欠失は配列番号4のヌクレオチド1066~ヌクレオチド1664にわたり、逆位は、除去され、逆位され、及び配列番号4の同じ位置に再挿入された配列番号4のヌクレオチド1029~ヌクレオチド1065にわたる領域を含む。
【0064】
他の標的改変をプロモーター領域に行い、ダイズTFL1b遺伝子及びその相同体に新規の対立遺伝子を作成することもできる。配列番号67~77、79及び81は、それぞれ、Zea mays(配列番号67)、Sorghum bicolor(配列番号68)、Oryza sativa(配列番号69)、Triticum aestivum(配列番号70)、Hordeum vulgare(配列番号71)、Solanum lycopersicum(配列番号72)、Gossypium hirsutum(配列番号73)、Capsicum annuum(配列番号74)、Brassica napus(配列番号75)、Arabidopsis thaliana(配列番号76)、Medicago truncatula(配列番号77)、Arachis hypogaea(配列番号79)、及びCicer arietinum(配列番号81)に見られるTFL1b遺伝子相同体の転写開始部位の上流の約2kbのポリヌクレオチド配列を表す。例えば、1つ以上の改変部位は、配列番号4、67~77、79及び81の配列の3’末端から約200ヌクレオチドに、または200ヌクレオチドを超える位置に位置し得る。一態様では、配列番号4のヌクレオチド1237位~ヌクレオチド1570位にわたるDNAの領域内で1つ以上の改変を行い、ダイズTFL1b遺伝子に新規の対立遺伝子を作成することができる。
【0065】
更なる態様では、本開示は、TFL1遺伝子の変異対立遺伝子を含む改変ダイズ植物またはその植物部位を提供し、変異対立遺伝子は1つ以上のジャンクション配列を含み、ジャンクション配列はジャンクション部位で少なくとも30、少なくとも60、少なくとも100ヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、「ジャンクション」または「ジャンクション部位」とは、欠失、挿入、置換または逆位の部位におけるヌクレオチド配列間の接続点である。欠失の場合、ジャンクションは、以前に欠失に隣接していた配列の欠失部位の接続点である。例えば、本明細書に記載の参照配列の配列番号4と比較して、ヌクレオチド1539~ヌクレオチド1568の30塩基対の欠失の場合、ジャンクション部はヌクレオチド1538~ヌクレオチド1569の間にあるであろう。挿入、置換または逆位の場合、ジャンクションは、挿入、逆位または置換された配列と隣接するDNA配列の間の接続点である。挿入、置換または逆位の場合、1つのジャンクションは挿入、置換または逆位の5’末端に見出せ、別のジャンクションは挿入、置換または逆位の3’末端に見出せる。「ジャンクション配列」とは、ジャンクションにわたる任意の長さのDNA配列を指す。ジャンクション配列は、少なくとも10のヌクレオチド、少なくとも15のヌクレオチド、少なくとも20のヌクレオチド、少なくとも25のヌクレオチド、少なくとも30のヌクレオチド、少なくとも40のヌクレオチド、少なくとも50のヌクレオチド、少なくとも60のヌクレオチド、少なくとも70のヌクレオチド、少なくとも80のヌクレオチド、少なくとも90のヌクレオチド、少なくとも100のヌクレオチド、少なくとも200のヌクレオチド、少なくとも300のヌクレオチドまたはそれ以上を含む。
【0066】
II.ゲノム編集のためのコンストラクト
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、TALEエンドヌクレアーゼ(TALEN)、リコンビナーゼまたはトランスポザーゼなどの部位特異的ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えDNAコンストラクト及びベクターが提供され、コード配列は、植物発現可能なプロモーターに作動可能に結合されている。RNA誘導型エンドヌクレアーゼに関して、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えDNAコンストラクト及びベクターが更に提供され、ガイドRNAは、標的TFL1遺伝子でもしくはその近傍など植物のゲノム内の標的部位に対してパーセント同一性または相補性を有する、十分な長さのガイド配列を含む。部位特異的ヌクレアーゼまたはガイドRNAをコードする組換えDNAコンストラクト及びベクターのポリヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、組織特異的プロモーターなどの植物で発現可能なプロモーターに作動可能に結合され得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」とは、遺伝的及び機能的単位を形成し、1つ以上の配列関連RNA及び/またはポリペプチド分子をコードする、核酸配列を指す。遺伝子は一般に、遺伝子産物(例えば、ポリペプチドまたは機能的RNA)の発現を調節する適切な調節配列に作動可能に結合されたコード領域を含む。遺伝子は、これらに限定されないが、プロモーター、非翻訳領域(UTR)、エクソン、イントロン及び他の上流または下流の調節配列を含む、様々な配列エレメントを有することができる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「対立遺伝子」とは、遺伝子または特定の遺伝子座の代替核酸配列(例えば、同じ遺伝子もしくは遺伝子座の他の対立遺伝子とは異なる遺伝子または遺伝子座の核酸配列)を指す。そのような対立遺伝子は、野生型対立遺伝子と比較して、変異対立遺伝子の核酸配列に1つ以上の変異または編集が存在する場合、(i)野生型、または(ii)変異体とみなすことができる。遺伝子の変異体または編集された対立遺伝子は、野生型対立遺伝子と比較して、遺伝子の活性もしくは発現レベルが低下または消失している可能性がある。例えば、TFL1遺伝子の変異体または編集された対立遺伝子は、内在性TFL1遺伝子の上流のプロモーター領域に欠失を有する可能性がある。ダイズなどの二倍体生物の場合、第1の対立遺伝子は1つの染色体上に発生することができ、第2の対立遺伝子は第2の相同染色体の同じ遺伝子座に発生することができる。植物の一方の染色体上の遺伝子座にある一方の対立遺伝子が変異体または編集された対立遺伝子であり、植物の相同染色体上のもう一方の対応する対立遺伝子が野生型である場合、したがって、その植物は変異体または編集された対立遺伝子についてヘテロ接合性であると記載される。ただし、遺伝子座の両方の対立遺伝子が変異体または編集された対立遺伝子である場合、その植物は変異体または編集された対立遺伝子についてホモ接合性であると記載される。遺伝子座で変異体または編集された対立遺伝子がホモ接合性である植物は、ヘテロ対立遺伝子または二対立遺伝子の場合、同じ変異体もしくは編集された対立遺伝子、または異なる変異体もしくは編集された対立遺伝子を含む可能性がある。
【0069】
本明細書で使用する場合、「野生型遺伝子」または「野生型対立遺伝子」とは、特定の植物種で最も一般的な配列もしくは遺伝子型を有する遺伝子もしくは対立遺伝子、または遺伝子もしくは対立遺伝子の発現及び活性に有意な影響を及ぼさない最も一般的な配列もしくは遺伝子型と比較して、自然変異、多型もしくは他のサイレント変異のみを有する別の配列もしくは遺伝子型を指す。実際、「野生型」遺伝子または対立遺伝子には、最も一般的な配列または遺伝子型と比較して、遺伝子または対立遺伝子の正常な機能、活性、発現または表現型の結果に実質的に影響を及ぼす、変異、多型または他の種類の変異は含まれていない。
【0070】
一般に、「バリアント」という用語は、それぞれ、参照(天然)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して、そのヌクレオチドもしくはアミノ酸配列で合成または天然に作成された、いくつかの差異を有する分子を指す。これらの差異には、天然のポリヌクレオチドもしくはアミノ酸配列における置換、挿入、欠失またはそのような変化の任意の所望の組み合わせが含まれる。
【0071】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指し、通常、植物、植物部位もしくは植物細胞、組織もしくは器官などの細胞、組織、器官もしくは生物における内因性遺伝子、異種遺伝子、導入遺伝子もしくはRNA及び/またはタンパク質コード配列などのヌクレオチド配列の転写及び/または翻訳を指す。
【0072】
ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、コンストラクト、ベクターなどに関する「組換え」という用語は、人工であり、通常は天然で見出されない、及び/またはそれが通常は天然で見出されない情況で存在する、ポリヌクレオチドまたはタンパク質分子または配列を指し、ヒトの介入無しには同じ様式で天然に存在しない2つ以上のポリヌクレオチドまたはタンパク質配列の組み合わせを含む、ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、コンストラクトなどを包含し、例えば、作動可能に結合されるが、互いに対して異種の少なくとも2つのポリヌクレオチドまたはタンパク質配列を含む、ポリヌクレオチド分子、タンパク質、コンストラクトなどである。例えば、「組換え」という用語は、同じ分子(例えば、プラスミド、コンストラクト、ベクター、染色体、タンパク質など)中の2つ以上のDNAまたはタンパク質配列の任意の組み合わせであって、かかる組み合わせは人工であり、通常は天然で見出されないものを指し得る。この定義で使用する場合、「通常は天然で見出されない」という語句は、ヒトによる導入無しでは天然で見出されないことを意味する。組換えポリヌクレオチドまたはタンパク質分子、コンストラクトなどは、(i)天然では互いに接近して存在する他のポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(複数可)から分離される、及び/または(ii)天然に互いと接近していない他のポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(複数可)に隣接(または、それらと連続)する、ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(複数可)を含み得る。かかる組換えポリヌクレオチド分子、タンパク質、コンストラクトなどは、細胞の外側で、遺伝子操作された及び/または構築されたポリヌクレオチドまたはタンパク質分子、または配列も指し得る。例えば、組換えDNA分子は、任意の操作されたプラスミド、または人工プラスミド、ベクターなどを含むことができ、直線状分子または環状DNA分子を包含し得る。そのようなプラスミド、ベクターなどは、原核生物の複製開始点及び選択可能なマーカー、ならびにおそらく植物の選択可能なマーカー遺伝子などに加えて、1以上の導入遺伝子または発現カセットを含む様々な維持エレメントを含有することができる。「作動可能に結合された」という用語は、プロモーターなどが作動または機能して、少なくとも特定の細胞(複数可)、組織(複数可)、発生ステージ(複数可)、及び/または条件(複数可)において、関連する転写可能DNA配列またはコーディング配列の転写及び発現を開始する、援助する、影響する、引き起こす、及び/または促進するような、プロモーターまたは他の調節エレメントと関連する転写可能DNA配列または遺伝子のコーディング配列(または導入遺伝子)との間の機能的な結合を指す。
【0073】
本出願における「単離されたDNA分子」もしくは「単離されたポリヌクレオチド」、または等価の用語もしくは表現への言及は、DNA分子またはポリヌクレオチドが、単独で、または他の組成物と組み合わせて存在するが、その自然環境内ではないものであることを意味するように意図されている。例えば、コード配列、イントロン配列、非翻訳リーダー配列、プロモーター配列、転写終結配列などのような生物のゲノムのDNA内で天然に見出される核酸エレメントは、エレメントが生物のゲノム内にあり、エレメントが天然に見出されるゲノム内の位置にある限りは、「単離された」とはみなされない。ただし、これらのエレメントのそれぞれ及びこれらのエレメントの下位部分は、エレメントが生物のゲノム内になく、エレメントが天然に見出されるゲノム内の位置にない限り、本開示の範囲内で「単離されている」ものである。同様に、タンパク質またはそのタンパク質の天然に生じる任意のバリアントをコードするヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列が、タンパク質をコードする配列が天然に見出される生物のDNA内にない限り、単離されたヌクレオチド配列となる。天然に存在するタンパク質のアミノ酸配列をコードする合成ヌクレオチド配列は、本開示の目的において単離されているとみなされる。本開示の目的において、任意のトランスジェニックヌクレオチド配列、すなわち、植物もしくは細菌の細胞のゲノム内に挿入されるか、または染色体外ベクター内に存在するDNAのヌクレオチド配列は、それが、細胞の形質転換に使用されるプラスミドもしくは同様の構造内に存在しても、植物もしくは細菌のゲノム内に存在しても、または植物もしくは細菌に由来する組織、後代、生物学的試料、もしくは商品生産物の中に検出可能量で存在しても、単離されたヌクレオチド配列であるとみなされる。
【0074】
通常当技術分野において理解されるように、「プロモーター」という用語は概して、RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、及び/またはTATAボックスを含有し、関連する転写可能ポリヌクレオチド配列及び/または遺伝子(または、導入遺伝子)の転写及び発現を支援または増進するDNA配列を指し得る。プロモーターは、公知のもしくは天然に存在するプロモーター配列または他のプロモーター配列から合成的に産生され得るか、それらから変更され得るか、またはそれらに由来し得る。プロモーターとしては、2つ以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターも挙げることができる。本開示のプロモーターは、したがって公知のまたは本明細書で提供される他のプロモーター配列(複数可)に組成で類似するが同一ではない、プロモーター配列のバリアントまたはその断片を包含し得る。本明細書で提供されるプロモーター、またはそのバリアントもしくは断片は、「最小プロモーター」を含み得、これは、転写の基礎レベルを提供し、転写を開始するためのRNAポリメラーゼII複合体を認識し、結合するためのTATAボックスまたは同等の配列で構成される。プロモーターは、構成的、発生的、組織特異的、誘導可能など、プロモーターへ作動可能に結合された、関連するコード配列もしくは転写可能配列または遺伝子(導入遺伝子を包含する)の発現のパターンに関する様々な基準に従って分類され得る。植物のすべてまたは大部分の組織において発現を駆動するプロモーターは、「構成的」プロモーターと称される。発生の特定の期間または段階中に発現を駆動するプロモーターは、「発生」プロモーターと称される。他の植物の組織に比べて植物の特定の組織において促進された発現を駆動するプロモーターは、「組織促進的」プロモーターまたは「組織優先的」プロモーターと称される。したがって、「組織優先的」プロモーターは、植物の特異的組織(複数可)中の比較的より高いか、または選択的な発現を引き起こすが、植物の他の組織(複数可)中のより低いレベルの発現を伴う。植物の特異的組織(複数可)内で発現し、植物の他の組織中でほとんどまたはまったく発現しないプロモーターは、「組織特異的」プロモーターと称される。「誘導可能」プロモーターは、環境刺激(寒冷、渇水または光など)または他の刺激(創傷または化学物質適用など)に応答して転写を開始するプロモーターである。プロモーターは、例えば、異種、同種、キメラ、合成などのその起源の点で分類することもできる。
【0075】
本明細書で使用する場合、「植物で発現可能なプロモーター」は、植物細胞または組織において関連する転写可能DNA配列、コード配列もしくは遺伝子の転写及び発現を開始する、援助する、影響する、引き起こす、及び/または促進することができる、プロモーターを指す。
【0076】
「異種の」という用語は、関連するポリヌクレオチド配列(例えば、転写可能DNA配列またはコード配列もしくは遺伝子)に関してプロモーターまたは他の調節配列に関し、ヒトによる導入無しでは天然で、かかる関連するポリヌクレオチド配列へ作動可能に結合されない(例えば、プロモーターもしくは調節配列は、関連するポリヌクレオチド配列に比べて異なる起源を有する、及び/または、プロモーターもしくは調節配列は、プロモーターもしくは調節配列により形質転換される植物種中に天然に存在しない)、プロモーターまたは調節配列である。
【0077】
本明細書で使用する場合、「内因性遺伝子」または「内因性遺伝子座」とは、その天然の元の染色体位置にある遺伝子または遺伝子座を指す。本明細書で使用する場合、「内因性TFL1遺伝子」とは、その元の染色体位置にあるTFL1遺伝子座を指す。
【0078】
本明細書で使用する場合、タンパク質コード遺伝子との関連で、「エクソン」とは、タンパク質またはポリペプチド配列をコードする情報を含む、DNAまたはRNA分子のセグメントを指す。
【0079】
本明細書で使用する場合、遺伝子の「イントロン」とは、タンパク質またはポリペプチドをコードする情報を含まず、最初にRNA配列に転写されるが、その後成熟RNA分子からスプライシング除去される、DNAまたはRNA分子のセグメントを指す。
【0080】
本明細書で使用する場合、遺伝子の「非翻訳領域(UTR)」とは、遺伝子(または、導入遺伝子)から発現されるRNA分子または配列(例えば、mRNA分子)のセグメントを指すが、RNA分子のエクソン配列及びイントロン配列は含まれない。「非翻訳領域(UTR)」とは、RNA分子のDNAセグメント、またはそのようなUTRセグメントをコードする配列も指す。非翻訳領域は、DNAまたはRNA分子または配列のコード領域と比較して、DNAもしくはRNA分子もしくは配列の5’末端に位置するか、または3’末端に位置するかに応じて、5’-UTRまたは3’-UTRになる(すなわち、それぞれ、エクソン及びイントロン配列の上流(5’)または下流(3’))。
【0081】
本明細書で使用する場合、「転写終結配列」とは、RNAポリメラーゼ複合体から新たに合成された転写RNA分子の放出を誘発し、遺伝子または遺伝子座の転写の終了を示す、シグナルを含む核酸配列を指す。
【0082】
本明細書で使用する場合、「相同体(homolog)」または「相同体(homologues)」は、同じ生物学的機能を実行するタンパク質群のタンパク質、例えば、同じTFL1様タンパク質ファミリーに属し、本開示の改変された植物において共通の強化された形質を提供するタンパク質を意味する。相同体は、相同遺伝子によって発現される。相同遺伝子に関して、相同体には、オルソログ、例えば、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化し、同じ機能を保持しているタンパク質をコードする異なる種で発現される遺伝子が含まれるが、パラログ、すなわち、重複によって関連しているが、異なる機能を持つタンパク質をコードするように進化した遺伝子は含まれない。相同遺伝子には、天然に存在する対立遺伝子、及び人工的に作成されたバリアントが含まれる。
【0083】
2つ以上のヌクレオチドまたはタンパク質配列との関連において本明細書で使用される「同一性パーセント」、「%同一性」または「パーセント同一」という用語は、(i)2つの最適にアラインメントされた配列(ヌクレオチドまたはタンパク質)を比較ウィンドウにわたって比較し、(ii)両方の配列において同一の核酸塩基(ヌクレオチド配列の場合)またはアミノ酸残基(タンパク質の場合)が生じている位置の数を決定して、一致した位置の数を取得し、(iii)一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割り、次いで(iv)この商に100%を掛けて同一性パーセントを取得することによって算出される。「同一性パーセント」が、特定の比較ウィンドウを指定せずに参照配列に対して算出される場合、同一性パーセントは、アラインメントの領域にわたる一致した位置の数を参照配列の全長で割ることによって決定される。したがって、本出願の目的に関して、2つの配列(クエリ及びサブジェクト)が最適にアラインメントされる(それらのアラインメントにおけるギャップを許容する)場合、クエリ配列に対する「同一性パーセント」は、2つの配列間で同一の位置の数を、クエリ配列における、その長さ(または、比較ウィンドウ)にわたる位置の総数で割り、次いでそれに100%を掛けたものに等しい。配列同一性の百分率がタンパク質に関して使用される場合、同一ではない残基位置は、アミノ酸残基が類似した化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、したがって分子の機能特性を変化させない保存的アミノ酸置換によって異なっている場合が多いと認識される。配列が保存的置換において異なっている場合、配列同一性パーセントは、上方調整して、置換の保存的性質を補正してもよい。そのような保存的置換によって異なっている配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。塩基配列に対して同一性パーセントを有する配列は、塩基配列の活性を示し得る。
【0084】
遺伝暗号の縮重により、遺伝子から生成されるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることなく、遺伝子のタンパク質コード配列の少なくとも1つの塩基を異なる塩基で置換する可能性が得られる。最適にアラインメントしたとき、相同体タンパク質またはそれらの対応するヌクレオチド配列は、通常、植物細胞で発現させたとき、変化した有限性表現型を付与することに関連すると同定されたタンパク質またはその対応するヌクレオチド配列の全長にわたって、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%の同一性がある。本発明の実施形態によれば、TFL1遺伝子またはその相同体は、配列番号2に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。ダイズTFL1bタンパク質(配列番号2)の相同体の例としては、配列番号52~66、78及び80の配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
相同体は、タンパク質配列の比較により、例えば、手動で、またはコンピューターベースのツールを使用して、配列の類似性から推定される。配列の同一性パーセントを算出する配列の最適なアラインメントに関して、2つ以上のヌクレオチドまたはタンパク質配列間の配列同一性または類似性を比較するために使用することができる、様々なペアワイズまたはマルチプル配列アラインメントアルゴリズム及びプログラム、例えば、ClustalWまたはBasic Local Alignment Search Tool(登録商標)(BLAST)などが当技術分野で公知である。BLASTは、例えば、様々な生物のタンパク質配列のデータベースに対して基本生物のクエリタンパク質配列を検索し、類似の配列を見つけるために使用することもできる。生成された概要の期待値(E値)を使用し、配列の類似性のレベルを測定できる。特定の生物の最も低いE値を持つタンパク質のヒットは、必ずしもオルソログであるとは限らない、または唯一のオルソログであるとは限らないため、オルソログを同定するために有意なE値を持つヒット配列をフィルタリングするために逆クエリが使用される。逆クエリには、基本生物のタンパク質配列のデータベースに対する重要なヒットの検索が伴う。逆クエリの最良のヒットがクエリタンパク質自体またはクエリタンパク質のパラログである場合、ヒットはオルソログとして識別できる。逆クエリプロセスにより、オルソログは、すべての相同体の中でパラログから更に区別され、遺伝子の機能的同等性の推論が可能になる。
【0086】
2つのヌクレオチド配列に関して本明細書で使用する場合、「相補性パーセント(percent complementarity)」または「相補性パーセント(percent complementary)」という用語は、同一性パーセントの概念と同様であるが、クエリ配列とサブジェクト配列が直線的に配置され、ループ、ステムまたはヘアピンなどの二次折り畳み構造を伴わずに最適に塩基対形成された場合に、サブジェクト配列のヌクレオチドと最適に塩基対形成またはハイブリダイズするクエリ配列のヌクレオチドの割合を指す。このような相補性パーセントは、2本のDNA鎖、2本のRNA鎖、またはDNA鎖とRNA鎖の間であり得る。「相補性パーセント」は、(i)2つのヌクレオチド配列を線状かつ完全に展開された配置で(すなわち、折り畳みまたは二次構造なしで)比較ウィンドウにわたって最適に塩基対形成またはハイブリダイズさせ、(ii)比較ウィンドウにわたって2つの配列間で塩基対を形成する位置の数を決定して相補的位置の数を求め、(iii)相補的位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、(iv)この商に100%を掛けて2つの配列の相補性パーセントを求めることによって計算される。2つの配列の最適な塩基対形成は、水素結合によるG-C、A-T及びA-Uなどのヌクレオチド塩基の既知の対形成に基づいて決定することができる。「相補性パーセント」が、特定の比較ウィンドウを指定することなく、参照配列との関連で算出される場合、同一性パーセントは、2つの線状配列間の相補的位置を参照配列の全長で割ることによって決定される。したがって、本出願の目的に関して、2つの配列(クエリ及びサブジェクト)が最適に塩基対形成される(ミスマッチまたは非塩基対のヌクレオチドは許容されるが、折り畳みまたは二次構造はない)場合、クエリ配列に対する「同一性パーセント」は、2つの配列間で同一の位置の数を、クエリ配列における、その長さにわたる位置の総数で割り(または、比較ウィンドウにわたるクエリ配列における位置の総数で割り)、次いでそれに100%を掛けたものに等しい。
【0087】
本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドの「断片」とは、本明細書で開示されるDNA分子またはタンパク質の少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000の連続したヌクレオチド、またはそれ以上を含む配列を指す。出発プロモーター分子からそのような断片を作成する方法は、当技術分野で周知である。DNA分子またはタンパク質の断片は、それらが由来するDNA分子またはタンパク質の活性を示す場合がある。
【0088】
別の態様によれば、本開示は、植物の収量を増加させる、有限性を変更する、または倒伏を減少させるなど、表現型を変更するための方法であって、(a)(i)本明細書に記載のGmTFL1b遺伝子などのダイズTFL1遺伝子及びその相同体に対応する植物の内在性遺伝子を同定することと、(ii)標的変異誘発を介して植物細胞内の内在性遺伝子のプロモーター配列を改変し、内在性遺伝子の発現レベルを改変することと、によって植物細胞のゲノムを改変すること、及び(b)植物細胞から植物を再生または発生させることを含む、前記方法を提供する。異なる植物種に由来する様々なTFL1遺伝子及びタンパク質は、それらが類似の核酸及び/またはタンパク質配列を有し、少なくとも1つの既知のTFL1遺伝子またはタンパク質と保存されたアミノ酸及び/または構造ドメイン(複数可)を共有する場合、同定され、本開示で使用するためのTFL1相同体またはオルソログとみなされる可能性がある。
【0089】
本開示の形質転換ベクターまたはコンストラクトにおける植物選択可能マーカー導入遺伝子は、抗生物質または除草剤などの選択剤の存在により、形質転換細胞または組織の選択を補助するために使用することができ、植物選択可能マーカー導入遺伝子は、選択剤に対する耐性または抵抗性を提供する。したがって、選択剤は、R0植物における形質転換細胞または組織の割合を増加させるなど、植物選択マーカー遺伝子を発現する形質転換細胞の生存、発生、成長、増殖などに偏りまたは有利となる可能性がある。一般的に使用される植物選択マーカー遺伝子としては、抗生物質(例えば、カナマイシン及びパロモマイシン(nptII)、ハイグロマイシンB(aph IV)、ストレプトマイシンもしくはスペクチノマイシン(aadA)ならびにゲンタマイシン(aac3及びaacC4))に対する耐性もしくは抵抗性を付与するもの、または除草剤(例えば、グルホシネート(barまたはpat)、ジカンバ(DMO)及びグリホサート(proAまたはEPSPS))に対する耐性もしくは抵抗性を付与するものが挙げられる。植物をスクリーニング可能なマーカー遺伝子も使用することができ、これは、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)、または様々な発色基質が公知であるβグルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)を発現する遺伝子などの形質転換体を視覚的にスクリーニングする能力を提供する。植物形質転換はまた、形質転換外植片、組織、植物及び/または植物部位の培養、発生もしくは再生の1つ以上の工程または段階中に、選択の非存在下で行うこともできる。
【0090】
III.形質転換方法
標的ゲノム編集に必要な1つ以上の分子(例えば、ガイドRNA(複数可)及び/または部位特異的ヌクレアーゼ)をコードする組換えDNA分子またはコンストラクトで植物細胞、組織または外植片を形質転換するための方法ならびに組成物が提供される。宿主植物細胞の形質転換のための好適な方法には、DNAまたはRNAを細胞に導入することができる(例えば、組換えDNAコンストラクトが植物染色体に安定的に組み込まれる場合、または組換えDNAコンストラクトもしくはRNAが植物細胞に一過性に供給される場合)事実上、あらゆる方法が含まれ、それらは当技術分野で周知である。細胞形質転換のための2つの有効な方法は、Agrobacterium媒介またはRhizobium媒介形質転換、及び微粒子または粒子銃媒介形質転換などの細菌を介した形質転換である。微粒子銃法は、例えば、米国特許第US5,550,318号、同第5,538,880号、同第6,160,208号、及び同第6,399,861号に示される。Agrobacterium媒介形質転換法は、例えば、米国特許第5,591,616号に記載される。マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、真空浸潤、圧力、超音波処理、炭化ケイ素繊維撹拌、PEG媒介性形質転換などの植物形質転換のための他の方法も、当技術分野で公知である。
【0091】
植物材料の形質転換は、例えば、細胞をin vitroで増殖させる栄養素の混合物などの栄養培地での組織培養で実施される。レシピエント細胞の標的としては、分裂組織細胞、茎頂、胚軸、カルス、未成熟または成熟胚、ならびに小胞子及び花粉などの配偶子細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。カルスは、これらに限定されないが、未成熟または成熟胚、胚軸、苗の頂端分裂組織、小胞子などを含む組織源から開始されてもよい。形質転換核を含む細胞は、形質転換植物内で増殖する。当技術分野で公知の植物細胞の形質転換のための任意の適切な方法または技術を、本発明の方法に従って使用することができる。形質転換では、DNAは、通常、いずれか1つの形質転換実験において、わずかな割合を占める標的植物細胞に導入される。マーカー遺伝子を使用して、組換えDNA分子をそれらのゲノムに受容すること及び組み込むことにより、安定に形質転換された細胞を同定するための有効な系を提供する。
【0092】
本明細書で使用する場合、「再生」及び「再生すること」という用語は、1つ以上の培養工程を介して1つ以上の植物細胞から植物を増殖または発生させるプロセスを指す。DNA配列の挿入もしくは編集を含む形質転換または編集した細胞、組織または外植片は、当技術分野で公知の方法に従って、培養、プラグもしくは土壌中でトランスジェニック植物に成長、発達または再生され得る。したがって、本開示の特定の実施形態は、ゲノム編集から生じる改変されたゲノムDNAを有する細胞から植物を再生するための方法及びコンストラクトに関する。次に、再生された植物は、更なる植物を繁殖させるために使用できる。
【0093】
本開示の一態様によれば、再生された植物、またはその子孫植物、植物部位もしくは種子は、発生もしくは再生された植物、またはその子孫植物、植物部位もしくは種子において、編集もしくは変異による、もしくは挿入配列、導入遺伝子などの部位特異的組込みによるマーカー、形質もしくは表現型に基づいて、スクリーニングまたは選択されることができる。所与の変異、編集、形質または表現型が劣性である場合、形質または表現型を観察することができるように、最初のR0植物からの1つ以上の世代または交配(例えば、自殖)は、編集または変異のためのホモ接合の植物を生成するのに必要であり得る。子孫植物(R1種子から増殖させた植物または後続世代中の植物など)は、任意の公知の接合性アッセイを使用して(ヘテロ接合体とホモ接合体と野生型植物との間の区別を可能にする、一塩基多型(SNP)アッセイ、DNA塩基配列決定、熱増幅もしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び/またはサザンブロッティング等の使用によって)、接合性について試験され得る。
【0094】
標的編集もしくは導入遺伝子の存在に関して細胞または植物などをスクリーニングする及び/または同定する、ならびに標的編集もしくは導入遺伝子を含む細胞または植物を選択するための方法ならびに技術が提供され、これは、1つ以上の表現型もしくは形質、または細胞もしくは植物における分子マーカーもしくはポリヌクレオチドもしくはタンパク質配列の有無に基づくことができる。本明細書で使用する場合、「分子技法」とは、核酸、タンパク質もしくは脂質の使用、操作もしくは解析を伴う、分子生物学、生化学、遺伝子学、植物生物学、または生物物理学の分野で公知の任意の方法を指す。限定されないが、ゲノムにおける改変配列の存在を検出するのに有用な分子技法としては、表現型スクリーニング;TaqMan(登録商標)またはIllumina/Infinium技術によるSNP解析などの分子マーカー技術;サザンブロット;PCR;酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA);及び配列決定(例えば、サンガー、Illumina(登録商標)、454、Pac-Bio、Ion Torrent(商標))が挙げられる。一態様では、本明細書で提供される検出方法は、表現型スクリーニングを含む。別の態様では、本明細書で提供される検出方法は、SNP解析を含む。更なる態様では、本明細書で提供される検出方法は、サザンブロットを含む。更なる態様では、本明細書で提供される検出方法は、PCRを含む。一態様では、本明細書で提供される検出方法は、ELISAを含む。更なる態様では、本明細書で提供される検出方法は、核酸またはタンパク質配列を決定することを含む。限定されないが、核酸は、ハイブリダイゼーションを使用して検出することができる。核酸間のハイブリダイゼーションは、Sambrook et al.(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)において詳細に論じられている。
【0095】
核酸は、当技術分野で慣例的な技法を使用して単離することができる。例えば、核酸は、限定されないが、組換え核酸技術及び/またはPCRを含む任意の方法を使用して単離することができる。一般的なPCR技法は、例えばPCR Primer:A Laboratory Manual,Dieffenbach&Dveksler,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に記載されている。組換え核酸技法は、例えば、制限酵素消化及びライゲーションを含み、これを使用して核酸を単離することができる。単離された核酸は、単一核酸分子または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして、化学的に合成することもできる。
【0096】
検出(例えば、増幅産物、ハイブリダイゼーション複合体またはポリペプチドの)は、ハイブリダイゼーションプローブまたは抗体に付着または会合し得る、検出可能な標識を使用して達成することができる。「標識」という用語は、直接的標識及び間接的標識の使用を包含することが意図される。検出可能な標識には、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が含まれます。改変された(例えば、編集された)植物または植物細胞のスクリーニング及び選択は、分子生物学の当業者に公知の任意の方法論によって行うことができる。スクリーニング及び選択の方法論の例としては、サザン分析、ポリヌクレオチド検出のためのPCR増幅、ノーザンブロット、RNase保護、プライマー伸長、RNA転写物検出のためのRT-PCR増幅、サンガー配列決定、次世代配列決定技術(例えば、Illumina(登録商標)、PacBio(登録商標)、Ion Torrent(商標)など)、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの酵素またはリボザイム活性を検出するための酵素アッセイ、ならびにポリペプチドを検出するためのタンパク質ゲル電気泳動、ウェスタンブロット、免疫沈降、及び酵素結合イムノアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。in situハイブリダイゼーション、酵素染色、及び免疫染色などの他の技術を使用して、ポリペプチド及び/またはポリヌクレオチドの存在または発現を検出することもできる。参照した技術のすべてを実行するための方法は、当技術分野で公知である。
【0097】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸の鎖を指す。ポリペプチドは、本明細書で提供されるポリヌクレオチドによってコードされ得る。ポリペプチドの一例は、タンパク質である。本明細書で提供されるタンパク質は、本明細書で提供される核酸分子によってコードされ得る。ポリペプチドは、DEAEイオン交換、ゲル濾過、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの公知の方法によって、天然源(例えば、生体試料)から精製することができる。ポリペプチドは、例えば、発現ベクターで核酸を発現させることによって精製することもできる。更に、精製されたポリペプチドは、化学合成によって得ることができる。ポリペプチドの純度の程度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析を使用して測定することができる。
【0098】
ポリペプチドは、抗体を使用して検出することができる。抗体を使用してポリペプチドを検出するための技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光が挙げられる。本明細書で提供される抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。本明細書で提供されるポリペプチドに対して特異的な結合親和性を有する抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。本明細書で提供される抗体は、当技術分野で公知の方法を使用してマイクロタイタープレートなどの固体支持体に結合させることができる。
【0099】
組換えDNA分子またはガイドRNAを含む形質転換ベクターで形質転換され得る植物には、様々な顕花植物または被子植物が含まれ得、これらは、様々な双子葉類(dicotyledonous)(双子葉類(dicot))植物種または単子葉(monocotyledonous)(単子葉(monocot))植物種を含むものとして更に定義され得る。双子葉植物は、マメ科(マメ科植物など)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ゴマ(Sesamum spp.)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ワタ(Gossypium barbadense、Gossypium hirsutum)、サツマイモ(Ipomoea butatas)、キャッサバ(Manihot esculenta)、コーヒー(Coffea spp.)、茶(Camellia spp.)、リンゴ(Malus spp.)などの果樹、プラム、アンズ、モモ、サクランボなど、ナシ(Pyrus spp.)、イチジク(Ficus carica)などのPrunus spp.、柑橘類(Citrus spp.)、ココア(Theobroma cacao)、アボカド(Persea americana)、オリーブ(Olea europaea)、アーモンド(Prunus amygdalus)、クルミ(Juglans spp.)、イチゴ(Fragaria spp.)、スイカ(Citrullus lanatus)、コショウ(Capsicum spp.)、ビート(Beta vulgaris)、ブドウ (Vitis、Muscadinia))、トマト (Lycopersicon esculentum、Solanum lycopersicum)、キュウリ(Cucumis sativus)のメンバー、ならびにシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)及びBrassica sp.(例えば、B.napus、B.rapa、B.juncea)などのアブラナ科メンバー、特に、種子油の供給源として有用なアブラナ属種であり得る。マメ科植物(Legume)及びマメ科植物(leguminous plant)には、エンドウマメ(Pisum sativum)、アルファルファ(Medicago sativa)、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)、キマメ(Cajanus cajan)、グアル(Cyamopsis tetragonoloba)、キャロブ(Ceratonia siliqua)、フェヌグリーク(Trigonella foenum-graecum)、ダイズ(Glycine max)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ササゲ(Vigna unguiculata)、ミドリマメ(Vigna radiata)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、ソラマメ(Vicia faba)、レンズマメ(Lens culinarisまたはLens esculenta)、ラッカセイ(Arachis Hypogaea)、カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)、及びヒヨコマメ(Cicer arietinum)が含まれる。単子葉植物には、アブラヤシ(Elaeis spp.)、ココナッツ(Cocos spp.)、バナナ(Musa spp.)、ならびにトウモロコシ (Zea Mays)、オオムギ(Hordeum vulgare)、モロコシ(Sorghum bicolor)、イネ(Oryza sativa)及びコムギ(Triticum aestivum)などの穀物が含まれる。本開示が広範囲の植物種に適用され得ることを考慮すると、本開示は更に、丸莢、長角果、果実、堅果、塊茎などのマメ科植物の莢に類似した他の植物構造にも適用される。
【0100】
IV.ゲノム改変された植物
本明細書で使用する場合、植物、植物種子、植物部位、植物細胞、及び/または植物ゲノムとの関連で「改変された」とは、野生型もしくは対照植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムと比較した、1つ以上の目的の遺伝子の発現レベル及び/または内因性配列の操作された変化を含む、植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムを指す。実際、「改変された」という用語は更に、化学的変異誘発、トランスポゾンの挿入もしくは切除、もしくは他の公知の変異誘発技術によって導入された、またはゲノム編集によって導入された内因性TFL1遺伝子の発現に影響を及ぼす1つ以上の欠失を有する、植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムを指し得る。一態様では、改変された植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムは、1つ以上の導入遺伝子を含むことができる。したがって、明確にするために、改変された植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムには、野生型または対照植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムと比較して、TFL1遺伝子の改変された発現レベル、発現パターン及び/または配列を有する変異、編集及び/またはトランスジェニック植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムが含まれる。
【0101】
改変された植物、植物部位、種子などは、変異誘発、ゲノム編集もしくは部位特異的組込み、遺伝子形質転換、またはこれらの組み合わせを受けている可能性がある。そのような「改変された」植物、植物種子、植物部位及び植物細胞には、TFL1遺伝子に対する分子変化(例えば、発現レベル及び/または活性の変化)を保持する、子孫であるか、または「改変された」植物、植物種子、植物部位及び植物細胞に由来する、植物、植物種子、植物部位ならびに植物細胞が含まれる。本明細書で提供される改変された種子は、本明細書で提供される改変された植物を生じさせることができる。本明細書で提供される改変された植物、植物種子、植物部位、植物細胞または植物ゲノムは、本明細書で提供される組換えDNAコンストラクトもしくはベクター、またはゲノム編集を含み得る。「改変された植物生成物」は、本明細書で提供される改変された植物、植物部位、植物細胞もしくは植物染色体、またはその任意の一部もしくは成分から作成された任意の生成物であり得る。
【0102】
改変された植物は、それ自身または他の植物と更に交雑して、改変された植物の種子及び子孫を作成することができる。改変された植物はまた、DNA配列もしくはコンストラクトまたは編集(例えば、ゲノム欠失)を含む第1の植物と、DNA配列もしくはコンストラクトまたは編集を欠く第2の植物とを交雑することによって調製することができる。例えば、DNA配列または逆位は、形質転換または編集に適した第1の植物系統に導入され、これは、その後、第2の植物系統と交雑して、DNA配列または編集(例えば、欠失)を第2の植物系統に遺伝子移入することができる。これらの交雑の子孫を更に、より望ましい系統へと6~8世代または戻し交雑のように複数回戻し交雑し、元の親系統と実質的に同じ遺伝子型を有するがDNA配列または編集の導入のための子孫植物を作成してもよい。本明細書で提供される改変された植物、植物細胞または種子は、ハイブリッド植物、植物細胞または種子であり得る。本明細書で使用する場合、「ハイブリッド」は、子孫がそれぞれの親からの遺伝物質を含むように、異なる品種、系統、近交系または種由来の2つの植物を交雑することによって作成される。当業者であれば、より高次のハイブリッドも同様に生成できることを認識している。
【0103】
本明細書で提供される改変された植物、植物部位、植物細胞または種子は、エリート品種またはエリート系統のものであり得る。「エリート品種」または「エリート系統」とは、優れた農学的成績についての育種及び選抜から生じた品種を指す。
【0104】
本明細書で使用する場合、「対照植物」(または同様に「対照」植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノム)という用語は、改変された植物(または、改変された植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノム)との比較に使用され、TFL1遺伝子に影響を及ぼすゲノム編集(複数可)(例えば、欠失)を除き、改変された植物(または、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノム)と同一または類似の遺伝的背景(例えば、同一の親系統、ハイブリッド交雑、近交系、テスターなど)を有する、植物(または、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノム)を指す。例えば、対照植物は、改変された植物を作製するために使用された近交系と同じ近交系であってもよく、または対照植物は、改変された植物と同じ近交系親系統の雑種交雑の生成物であってもよいが、ただし、対照植物には、TFL1遺伝子に影響を及ぼすトランスジェニックイベントまたはゲノム編集(複数可)が存在しないことを除く。同様に、「非改変対照植物」とは、改変された植物と実質的に類似または本質的に同一の遺伝的背景を共有するが、改変された植物のゲノムに対する1つ以上の操作された変更(例えば、変異または編集)がない植物を指す。改変された植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムとの比較を目的として、「野生型植物」(または同様に「野生型」植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノム)とは、非トランスジェニック及び非ゲノム編集対照植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムを指す。本明細書で使用する場合、「対照」植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムはまた、分析すべき特性または形質の比較のために十分に類似しているとみなされる場合、改変された植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムに類似した(しかし、同じまたは同一ではない)遺伝的背景を有する植物、植物種子、植物部位、植物細胞及び/または植物ゲノムであり得る。
【0105】
本明細書で使用する場合、「抑制する」、「抑制」、「阻害する」、「阻害」、「阻害すること」、「ノックアウト」、「ノックダウン」及び「下方制御」という用語は、植物発育の同じ段階(複数可)での野生型もしく対照植物、細胞または組織における、そのような標的mRNA及び/またはタンパク質の発現レベルと比較して、植物発育の1つ以上の段階(複数可)での植物、植物細胞または植物組織の標的遺伝子によってコードされるmRNA及び/またはタンパク質の発現レベルの低下、低減、または排除を指す。いくつかの実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低下したTFL1遺伝子発現レベルを有する、改変された植物が提供される。更なる実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、5%~20%、5%~25%、5%~30%、5%~40%、5%~50%、5%~60%、5%~70%、5%~75%、5%~80%、5%~90%、5%~100%、75%~100%、50%~100%、50%~90%、50%~75%、25%~75%、30%~80%、または10%~75%低下したTFL1遺伝子発現レベルを有する、改変された植物が提供される。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低下したTFL1 mRNAレベルを有する、改変された植物が提供される。いくつかの実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、5%~20%、5%~25%、5%~30%、5%~40%、5%~50%、5%~60%、5%~70%、5%~75%、5%~80%、5%~90%、5%~100%、75%~100%、50%~100%、50%~90%、50%~75%、25%~75%、30%~80%、または10%~75%低下したTFL1 mRNA発現レベルを有する、改変された植物が提供される。いくつかの実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低下したTFL1タンパク質発現レベルを有する、改変された植物が提供される。いくつかの実施形態によれば、対照植物と比較して、少なくとも1つの植物組織において、5%~20%、5%~25%、5%~30%、5%~40%、5%~50%、5%~60%、5%~70%、5%~75%、5%~80%、5%~90%、5%~100%、75%~100%、50%~100%、50%~90%、50%~75%、25%~75%、30%~80%、または10%~75%低下したTFL1タンパク質発現レベルを有する、改変された植物が提供される。
【0107】
本開示は、これらに限定されないが、収量の増加、有限性の増加、終末開花日に達するまでの時間の短縮、倒伏率の低下、及び真菌性病害に対する感受性の低下を含む、改善された経済的に重要な特徴を有する植物に関する。収量に関してより具体的には、本開示は、本明細書に記載のゲノム編集または変異を含む改変された植物に関し、植物は、対照植物と比較して収量が増加している。本開示の多くの植物は、対照植物と比較して、収量の増加または収量形質成分の改善を示した。収量は、作物から得られる測定可能な経済的価値の生産物として定義できる。収量は、量及び/または品質の範囲で定義できる。例えば、ダイズ収量には、植物あたりの莢、エーカーあたりの莢、植物あたりの種子、莢あたりの種子、種子あたりの重量、莢あたりの重量、節あたりの莢、節数、及び植物あたりの節間の数が含まれ得る。収量は、例えば、器官の数及び大きさ、植物の構造(枝の数、植物バイオマスなど)、開花時期及び開花期間、穀粒の充填期間といったいくつかの要因に直接依存する可能性がある。根の構造及び発達、光合成効率、栄養素の取り込み、ストレス耐性、初期の成長力、老化の遅れ、機能的緑葉維持表現型は、収量を決定する重要な要因となり得る。したがって、上記の要因を最適化することは、作物の収量の増加に貢献できる。
【0108】
本開示の組換えDNAで形質転換された植物細胞を含む、または植物細胞に由来する改変された植物は、積み重ねられた形質で更に強化されることができ、例えば、作物植物に有益な農学的形質(除草剤及び/または害虫抵抗性形質など)を提供する、1つ以上の農学的関心の遺伝子と組み合わせた、本明細書に開示されるDNAの発現の結果として生じる増強された形質を有する改変された作物植物が挙げられる。例えば、本開示の組換えDNAコンストラクトによって付与される形質は、鱗翅目、鞘翅目、同翅目、半翅目及び他の昆虫に対する抵抗性、または栄養価の改善などの品質形質の改善を提供するために、Bacillus thuringensis由来の遺伝子を使用するなど、昆虫抵抗性を提供する形質など、農学的関心の他の形質と積み重ねることができる。昆虫/線虫/ウイルス抵抗性を付与するための分子及び方法は、米国特許第5,250,515号、同第5,880,275号、同第6,506,599号、同第5,986,175号、及び米国特許出願公開第2003/0150017A1号に開示されている。
【0109】
トランスジェニック植物耐性が証明されており、本開示の方法及び組成物が適用できる除草剤には、グリホサート、ジカンバ、グルホシネート、スルホニル尿素、ブロモキシニル、ノルフルラゾン、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ)酢酸、アリールオキシフェノキシプロピオネート、p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ阻害剤(HPPD)、及びプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ阻害剤(PPO)除草剤が挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野で公知の除草剤耐性に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子には、グリホサート耐性を付与するための米国特許第5,094,945号、同第5,627,061号、同第5,633,435号及び同第6,040,497号に開示されている5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードするポリヌクレオチド分子;グリホサート耐性を付与するための米国特許第5,463,175号に開示されているグリホサートオキシドレダクターゼ(GOX)及び米国特許出願公開第2003/0083480A1号に開示されているグリホサート-N-アセチルトランスフェラーゼ(GAT)をコードするポリヌクレオチド分子;ジカンバ耐性を付与するための米国特許出願公開第2003/0135879A1号に開示されているジカンバモノオキシゲナーゼ;ブロモキシニル耐性を付与するための米国特許第4,810,648号に開示されているブロモキシニルニトリラーゼ(Bxn)をコードするポリヌクレオチド分子;ノルフルラゾン耐性についてMisawa et al.(Plant J.4:833-840,1993)及びMisawaら(Plant J.6:481-489,1994)に記載されたフィトエン不飽和化酵素(crtI)をコードするポリヌクレオチド分子;スルホニル尿素系除草剤に対する耐性を付与するためのSathasivan et al.(Nucl.Acids Res.18:2188-2193,1990)に記載されているアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS、別名ALS)をコードするポリヌクレオチド分子;グルホシネート及びビアラホス耐性を付与するためのDeBlock et al.(EMBO J.6:2513-2519,1987)に開示されているバー遺伝子として公知のポリヌクレオチド分子;N-アミノメチルホスホン酸耐性を付与するための米国特許出願公開第2003/010609A1号に開示されているポリヌクレオチド分子;ピリジン除草剤耐性を付与するための米国特許第6,107,549号に開示されているポリヌクレオチド分子;が含まれるが、これらに限定されない。グリホサート、アトラジン、ALS阻害剤、イソキソフルトール及びグルホシネート除草剤などの複数の除草剤に対する耐性を付与するための分子ならびに方法は、米国特許第6,376,754号及び米国特許出願公開第2002/0112260号に開示されている。
【0110】
真菌性病害抵抗性を付与する遺伝エレメント、方法及び導入遺伝子も、本開示で使用することができる(米国特許第6,653,280号、同第6,573,361号、同第6,506,962号、同第6,316,407号、同第6,215,048号、同第5,516,671号、同第5,773,696号、同第6,121,436号、同第6,316,407号、同第6,506,962号)。真菌によって引き起こされるダイズ病害には、Phakopsora pachyrhizi、Phakopsora meibomiae(ダイズさび病)、Colletotrichum truncatum、Colletotrichum dematium var.truncatum、Glomerella glycines(ダイズ炭疽病)、Phytophthora sojae(Phytophthora根と茎の腐敗)、Sclerotinia sclerotiorum(Sclerotinia茎の腐敗)、Fusarium solani f.sp.glycines(突然死症候群)、Fusarium spp.(Fusarium根腐れ)、Macrophomina phaseolina(炭腐病)、Septoria glycines(褐点病)、Pythium aphanidermatum、Pythium debaryanum、Pythium irregulare、Pythium ultimum、Pythium myriotylum、Pythium torulosum(Pythium種子腐敗)、Diaporthe phaseolorum var.sojae(莢枯病)、Phomopsis longicola(茎枯病)、Phomopsis spp.(Phomopsis 種子腐敗)、Peronospora manshurica(べと病)、Rhizoctonia solani(Rhizoctonia根と茎の腐敗、Rhizoctonia葉枯病)、Phialophora gregata(落葉病)、Diaporthe Phaseolorum var.caulivora(枝枯病)、Cercospora kikuchii(紫斑病)、Alternaria sp. (褐色輪紋病)、Cercospora sojina(斑点病)、Sclerotium rolfsii(白絹病)、Arkoola nigra(黒葉枯病)、Thielaviopsis Basicola(黒根腐病)、Choanephora infundibulifera、Choanephora trispora (Choanephora葉枯病)、Leptosphaerulina trifolii(Leptosphaerulina斑点病)、Mycolleptodiscus terrestris(Mycoleptodiscus根腐れ)、Neocosmospora vasinfecta(Neocosmospora茎腐れ)、Phyllosticta sojicola(Phylosticta斑点病)、Pyrenochaeta glycines(Pyrenochaeta斑点病)、Cylindrocladium crotalariae(黒根腐病)、Dactuliochaeta glycines(赤葉枯病)、Spaceloma glycines(赤カビ病)、Stemphylium botryosum(Stemphylium葉枯病)、Corynesspora cassiicola(褐色輪紋病)、Nematospora coryli(子実汚斑病)、及びPhymatotrichumomnivorum(ワタ根腐れ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
V.定義
以下の定義は、本明細書で使用される本開示の関連の実施形態を参照して、これらの用語の意味を定義し明確にするために、及び本開示の理解において当業者を導くために提供される。特に明記しない限り、用語は、関連技術、特に分子生物学及び植物形質転換の分野における、それらの従来の意味及び用法に従って理解されるべきである。
【0112】
本開示の要素またはその実施形態(複数可)を導入するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「前記(said)」という冠詞は、1つ以上の要素が存在することを意味することが意図される。
【0113】
「及び/または」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、この用語が関連付けられている項目のいずれか1つ、項目の任意の組み合わせ、またはすべての項目を意味する。
【0114】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する」という用語は、包括的であり、列挙される要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味することが意図される。例えば、1つ以上の工程を「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つ以上の工程のみ保持することに限定されず、他の列挙されていない工程も包含し得る。同様に、1つ以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の組成物またはデバイスは、それらの1つ以上の特徴のみ保持することに限定されず、他の列挙されていない特徴も包含し得る。
【0115】
本明細書で使用する場合、「植物」には、再生または発育の任意の段階にある植物全体、外植片、植物部位、苗木、または小植物が含まれる。
【0116】
本明細書で使用する場合、「植物部位」は、分裂組織、苗条器官/構造(例えば、葉、茎または節)、根、花または花の器官/構造(例えば、苞、萼片、花弁、雄しべ、心皮、葯、及び胚珠)、種子、胚、胚乳、種皮、果実、成熟した子房、珠芽、または他の植物組織(例えば、維管束組織、表皮組織、基本組織など)もしくはその一部などの植物の任意の器官またはインタクトな組織を指すことができる。本開示の植物部位は、生育可能、生育不可能、再生可能、及び/または再生不可能であってもよい。「珠芽」には、植物全体に成長できるあらゆる植物部位が含まれる。
【0117】
「胚」は、成体植物のすべてまたは一部へと発育し得る前駆体組織(例えば、分裂組織)からなる、植物種子の一部である。「胚」は更に、植物胚の部分を包含し得る。
【0118】
「分裂組織(meristem)」または「分裂組織(meristematic tissue)」は未分化細胞または分裂組織的細胞を含み、それらは、1つ以上の種類の植物部位、組織または構造(例えば、苗条、茎、根、葉、種子などのすべてまたは一部)を産生するように分化することが可能である。
【0119】
本明細書で使用する場合、「有限性生長習性」とは、主茎が成熟した莢の房で終わった後に栄養生長が停止することを指す。有限性ダイズ品種は、主茎のすべてまたはほとんどの節が発育したときに開花し始める。それらは、通常、長さ数センチメートルであり得、多数の花が咲き得る、細長い総状花序がある。本明細書で使用する場合、「無限性生長習性」とは、生殖期間の一部を通じて葉と花が同時に発育し、末端頂点に1~3個の莢を有することを指す。無限性ダイズ品種は、その適応緯度で栽培した場合、主茎の節の約半分が発育したときに開花する。それらは短い総状花序を有し、花はほとんどなく、末端節には数個の花しかない。「半有限性」ダイズ品種も主茎の節の約半分が発達したときに開花するが、主茎の節の発育と開花は無限性品種よりも突然停止する。その総状花序は短く、頂生の花を除いてほとんど花はないが、頂生の花は植物の下方の花よりも数倍多い。
【0120】
本明細書で使用する場合、「倒伏」とは、穀物作物の植物の地面レベル近くでの茎の曲がりを指す。倒伏は1~9のスケールで評価される。一般に、スコア1は直立した植物を示す。スコア5は植物が地面に対して45度の角度で傾いていることを示し、スコア9は植物が地面に横たわっていることを示す。表4は、対照及び改変されたダイズ植物を評価するために本明細書で使用される倒伏スケールを示す。
【0121】
本明細書で使用する場合、「終末開花日」とは、均一な圃場区画内の植物の50%の主茎の末端節に1つの開いた花が存在する日を指す。
【0122】
本明細書で使用する場合、植物発育の「栄養相」は、発芽と開花の間の成長期間である。ダイズの栄養相の段階は次のとおりである:VE(出芽)、VC(子葉期)、V1(最初の三小葉の葉)、V2(2番目の三小葉の葉)、V3(3番目の三小葉の葉)、V(n)(n番目の三小葉の葉)、V6(まもなく開花)。本明細書で使用する場合、植物発育の「生殖相」は、開花から収穫の終わりまでの期間である。ダイズの生殖相の段階は次のとおりである:R1(開花開始、最初の花)、R2(満開、上部2節に花)、R3(最初の莢、上部4節に3/16インチの莢)、R4(完全な莢、上部4節に3/4インチの莢)、R5(上部4節に1/8インチの種子)、R6(上部4節に完全なサイズの種子)、R7(成熟し始め、成熟した莢が1つ)、R8(完全に成熟、植物の莢の95%が成熟した色に達している)。ダイズの栄養相及び生殖相は当業者に周知であり、これらの相を説明する数多くの出版物をワールドワイドウェブ及び他の場所で見つけることができる(例えば、North Dakota State University publication A-1174,June1999,Reviewed and Reprinted August2004)。
【0123】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で特段に指示されない限り、または文脈によって特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。任意の及びすべての実施例、または本明細書における特定の実施形態に関して提供される例示的な文言(例えば「など」)の使用は、単に本開示を例示することを意図しており、特許請求の範囲に記載されない限り、本開示の範囲に対する限定をもたらさない。
【0124】
本開示を詳細に記載してきたが、添付の請求項中で更に定義される本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに、修飾物、変動物、及び同等な実施形態が可能であることは明らかであろう。更に、以下のものを包含する本開示中のすべての実施例が、非限定的実施例として提供されることが認識されるべきである。
【実施例】
【0125】
実施例1.遺伝子編集コンストラクトの設計。
遺伝子編集を利用して有限性座位の標的変異誘発を行うことで、様々な有限性表現型を付与する対立遺伝子を作成する機会が得られ、その結果、ダイズ植物の構造及び生長習性に多様性がもたらされる。茎先端でのダイズDt1遺伝子座の優性対立遺伝子であるGmTFL1b遺伝子の特異的な内因性発現は、頂端分裂組織を最終分化から保護し、無限性をもたらす。有限性のレベルは、GmTFL1b遺伝子のプロモーター領域の改変を通じて、GmTFL1b遺伝子の発現レベルを変化させることによって調節できる。GmTFL1b遺伝子のコード配列は配列番号1として提供され、TFL1bタンパク質のアミノ酸配列は配列番号2として提供され、5’UTR及び3’UTRを含むGmTFL1b遺伝子のcDNA配列は配列番号3として提供される。
【0126】
GmTFL1b遺伝子の上流プロモーター領域を、遺伝子編集を使用する変異誘発の標的とした。植物形質転換用の4つの遺伝子編集コンストラクトは、
図1に示すように、GmTFL1b遺伝子の転写開始部位(tis)の上流にある2kbプロモーター領域(配列番号4)内の様々な位置を標的とする、複数のガイドRNA(gRNA)を使用して設計された。
【0127】
植物形質転換ベクターコンストラクトのそれぞれは、gRNAによって標的とされる複数の位置で二本鎖切断(DSB)を作成するように設計された。DSB部位間の大きなセグメントの欠失と同様に、DSB部位での小さな欠失が可能である。
【0128】
本実施例では、ゲノム編集コンストラクトはそれぞれ一般に、GmTFL1b遺伝子プロモーター領域における遺伝子編集及びDSBの生成に関連する2~3個の機能領域またはカセットを含んでいた:Cpf1タンパク質の発現、GmTFL1b遺伝子プロモーター領域を標的とする2~4個のgRNAの発現、及び任意選択で、GmTFL1b遺伝子プロモーター領域を標的とする更に4個のgRNAの発現。各gRNAユニットには、Cpf1遺伝子(配列番号:5)と適合する共通の足場、及び表1に列挙されているようにその意図された標的部位に相補的な固有のスペーサー/ターゲティング配列が含まれている。gRNAスペーサーをコードするDNA配列及び意図された標的部位は、表1に列挙されている。
【表1-1】
【表1-2】
【0129】
編集コンストラクトpM552のCpf1発現カセットは、核局在化シグナル(配列番号8)の1コピーで両側を挟まれた、イネにコドン最適化されたLachnospiraceae bacterium Cpf1 RNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素(配列番号7)をコードする配列に作動可能に結合したダリアモザイクウイルスFLTプロモーター(配列番号6)を含んだ。例えば、Gao al.,(Nature Biotechnol.35(8):789-792,2017)を参照のこと。表1に示す他の4つのコンストラクトにおけるCpf1発現カセットは、核局在化シグナル(配列番号8)の1コピーで両側を挟まれた、Lachnospiraceae bacterium Cpf1 RNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素(配列番号10)をコードするトウモロコシにコドン最適化された配列に作動可能に連結されたMedicago truncatulaユビキチンプロモーター(配列番号9)を含んでいた。
【0130】
すべてのコンストラクトに存在する1種類のgRNA発現カセットは、ダイズRNAポリメラーゼIII(Pol3)プロモーター(配列番号11)に作動可能に結合された2~4個のgRNAをコードする配列を含んでいた。表1に列挙したスペーサー配列は、GmTFL1bのプロモーター領域の代替切断部位を標的とした。pM552にのみ存在する更なる種類のgRNA発現カセットは、ダイズ7SL_CR10プロモーター(配列番号12)に作動可能に結合された別の4つのガイドRNAをコードする配列を含んでいた。表1に列挙したスペーサー配列は、GmTFL1bのプロモーター領域の代替切断部位を標的とする。
【0131】
具体的には、植物形質転換のための遺伝子編集コンストラクトは、参照配列の配列番号4のヌクレオチド1237位~ヌクレオチド1570位にわたるDNAの領域を標的とするgRNAを含むように設計される。
【0132】
実施例2.GmTFL1bのプロモーター領域における編集、及びゲノム編集された植物の接合性の確認。
近交系野生型ダイズ系統を、上記の実施例1に記載のpM552ベクターを用いたAgrobacterium媒介形質転換を介して形質転換した。形質転換された植物組織を成長させ、成熟したR0植物を作成した。1つ以上の固有のゲノム編集を有するR0植物を自家交雑し、R1植物を作成した。編集されたGmTFL1bプロモーター配列を含み、編集されたT-DNA配列を欠いている対立遺伝子に関してホモ接合性であるR1植物を自家交雑し、R2植物を作成した。
【0133】
GmTFL1bプロモーター領域に行われた編集を決定するために、アンプリコン配列決定技術を使用し、野生型配列と比較するために2kbプロモーター領域の変異配列を作成した。アンプリコン配列決定には、次世代配列決定のための対象ゲノム領域全体にわたる1つ以上の固有のPCR産物の作成が含まれる。次に、各試料からの配列データを参照配列にマッピングし、コンセンサス配列の違いを同定する。標的プロモーター領域の変異を幅広くカバーするために、長さ30~1221塩基対(bp)の範囲の固有の欠失を持つ植物が選択された。1つ以上の編集を有するR
0植物を自殖させることによって作成された個々のR
1植物を、編集の性質及び編集された変異体または対立遺伝子の接合性についてアッセイし、表2に記載する。表2に記載のすべての編集された植物は、pM552コンストラクトの形質転換ベクターを使用して作成された。表2では、「R
0事象」はR
0植物識別子であり、「対立遺伝子名」は固有の対立遺伝子の識別子であり、ヌル(WT)は編集されていない近交系ダイズ植物に対応する。「原因傷害」とは、2kbのプロモーター配列(配列番号4)の5’末端を起点とした、プロモーターの欠失セグメントの開始座標及び終了座標を示す。「R
1接合性」とは、R
1植物の接合性を、ホモ接合、ヘテロ接合、未決定(ND)、または致死(致死表現型をもたらした編集の場合)として示す。対立遺伝子AL430aは、内因性GmTFL1b遺伝子に対する3つの改変を含む:2つの欠失(配列番号4の939位で始まり、1028位で終わるセグメント、及び配列番号4の1066位で始まり、1664位で終わるセグメント)及び逆位変異(逆位され、欠失領域に再挿入された配列番号4の1065位で始まり、1029位で終わるセグメント)。
【表2】
【0134】
上記の表2のホモ接合性編集を、
図1に示されたgRNAスペーサーとアラインメントして、
図2に更に示している。
【0135】
同様に、成熟度群3.5のダイズ植物を使用し、pM205、pM206及びpM207コンストラクトの形質転換ベクターを使用して編集された植物を作成した。1つ以上の編集を有するR
0植物を自殖させることによって作成された個々のR
1植物を、編集の性質及び編集された変異体または対立遺伝子の接合性についてアッセイし、表3に記載する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0136】
同様に、成熟度群5.9のダイズ植物を使用し、pM204及びpM205コンストラクトの形質転換ベクターを使用して編集された植物を作成した。1つ以上の編集を有するR
0植物を自殖させることによって作成された個々のR
1植物を、編集の性質及び編集された変異体または対立遺伝子の接合性についてアッセイし、表4に記載する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0137】
実施例3.改変されたダイズ植物におけるGmTFL1b遺伝子の発現レベル。
GmTFL1bプロモーター変異体のホモ接合性対立遺伝子(Dt1対立遺伝子)を有するR2植物と野生型対照植物を選択し、標的遺伝子の発現の違いを評価するためのサンプリングのために制御された環境で生育させた。植物は、VC相でサンプリングされ、VC相は、出芽相の後だが、子葉と単葉が完全に広がる、V1相の前の期間として定義される。単葉の葉と頂部の組織をドライアイス上で収集し、TaqManアッセイによる遺伝子発現解析を行った。対立遺伝子エントリあたり10個の生物学的複製を測定した。
【0138】
表5及び
図3は、様々なホモ接合性Dt1対立遺伝子を有する編集されたダイズ植物のVC相での葉及び頂部の組織におけるGmTFL1b遺伝子の相対発現レベルを示す。編集された植物は、編集コンストラクトpM552を使用して作成された。
図3に示すように、葉組織におけるGmTFL1bの発現は、試験したすべての試料でほんのわずかであった。
【表5】
【0139】
プロモーターがゲノム編集によって変異したため、Dt1対立遺伝子のほとんどは、内因性プロモーターを有する野生型植物と比較して、GmTFL1bの発現レベルの低下を引き起こした。しかし、変異対立遺伝子AL398及びAL447bは、遺伝子発現レベルの増加を示した。TFL1の発現は、試験した試料のうち2つを除くすべてで大幅に減少した。
【0140】
実施例4.編集された対立遺伝子を含む、植物の終末開花日及び成熟日表現型の評価。
編集された植物の表現型を試験するために、GmTFL1bプロモーター変異体のホモ接合性対立遺伝子(Dt1対立遺伝子)を有するR2植物及び野生型対照植物を選択し、標準的な農学的手法の下で屋根付き苗床及び耕地で栽培した。
【0141】
編集されたすべての植物は、ほぼ有限性のAL430a対立遺伝子の植物であっても、野生型と同等以上の良好な出芽を示した。編集されたすべての植物は、野生型の無限性対照と同様に開花を開始した。編集された植物では着花に検出可能な変化は観察されず、Dt1遺伝子座によって制御される茎の成長習性形質が着花を制御する遺伝子と相互作用しないことを示している。
【0142】
屋根付きの苗床で観察されたように、編集されたDt1対立遺伝子を持つ植物は、ほぼ有限性表現型から野生型よりも無限な(極端な無限性)までの範囲の有限性表現型を示し、いくつかの異なる品種の半有限性挙動は、
図4に示すように、異なる終末開花日によって最初に証明された。終末開花日は、均一な圃場区画内の植物の50%の主茎の末端節に1つの開いた花が存在する日として定義される。この評価の圃場は、畝間30インチの長さ5フィートの畝2列からなり、圃場あたり約80個の種子が播種され、畝間の圃場には1.5フィートの路地があった。
【0143】
ダイズ圃場における倒伏は、評価スケールを使用してR6発育相で始まる複数の観察を通じて評価され、茎の倒伏を示す各圃場の部分が決定される。観察は、後期R
7発育相の老化まで継続する。圃場は、表6のスケールを使用して倒伏を評価される。
【表6】
【0144】
観察圃場における野生型植物及びホモ接合性の編集された対立遺伝子の植物について、終末開花日、成熟日、及び倒伏評価を決定した。終末開花日は、ここで、試験の年の1月1日からの暦日数として計算される。成熟日は、圃場内の莢の95%が成熟した莢の色に達した日として定義される。正確な成熟度が確認されなかった場合、成熟日の開始が記載された日付より早いもしくは遅いを示す「>」または「<」記号が表示される。終末開花日と成熟日は、すべての圃場が発育相に達するまで実験圃場を連続的に観察することによって決定される。発育相のスコアリングは、均一で損傷のない圃場の所定の20インチ内部区画で圃場レベル(約15個の連続した植物を含む)で実施された。測定された圃場区画の植物の50%以上が発育相にある場合、圃場は問題の発育相に達しているとみなされる。有限性の変化は、植え付けから終末開花までの日数(DOTF)で定量化できる。試験のすべての植物で同じの所定の植え付け日の耕地では、対照との差異を簡単に計算するために、終末開花日及び他の生物季節学的特徴をその年の暦日によって記録できる。耕地環境における植物の観察から、GmTFL1b遺伝子プロモーター領域の編集された対立遺伝子は、表7に示すように、野生型の無限性植物より22日早い開花日から4日遅い開花日まで、多様な終開花日をもたらした。編集された植物は、pM552編集コンストラクトを使用して作成された。
【表7】
【0145】
表7に示すように、終末開花日の変化は、対立遺伝子AL398、AL391b及びAL447bを有する植物を除き、ほとんどの編集された植物でR8成熟日の遅延を伴わなかった。これらの植物はすべて、未編集の野生型植物よりも遅い終末開花日を有し、野生型の植物よりも無限性である。
【0146】
より強い有限性またはより早い終末開花日の植物は、倒伏に対してより抵抗性のある植物を作成する構造的特徴を生み出すことが予想される。実際、表7に示すように、終末開花日が早い植物では倒伏が減少する明らかな傾向が見られる。GmTFL1b遺伝子のプロモーター領域のゲノム編集により、半有効性の様々なレベルに対応する様々な終末開花日を持つ植物が作成され、倒伏の危険性の軽減または排除につながった。倒伏は、特に背の高いエリートダイズ品種の場合、収穫価値の損失の原因となる。倒伏の減少により、ダイズの収穫価値及び収量が増加する可能性がある。倒伏の減少や立位性の向上により、樹冠を閉じた後のすべての地点で耕地へのアクセスのしやすさが改善される可能性があり、効果的な施肥及び害虫駆除などの利点がもたらされる。
【0147】
GmTFL1b遺伝子の平均相対発現レベルを表5から表7にコピーする。無限性ダイズにおける内在性GmTFL1b遺伝子は無限性形質の優性対立遺伝子であるため、GmTFL1b遺伝子の発現レベルの低下は、無限性のレベルの低下(または、有限性の増加)をもたらす。表7に示すように、平均相対発現レベルが低いほど、終末開花日がより早い、または有限性がより強いことに対応する傾向がある。この対応関係は、GmTFL1b遺伝子の発現レベルが、編集された植物の終末開花日または有限性レベルの予測因子として使用できることを示している。
【0148】
相対発現レベルの違いは、機能喪失型変異体だけでなく、無限性における機能獲得型変異体とも相関する。機能獲得型変異体は、野生型植物と比較して極端な無限性を示すと共に、GmTFL1b遺伝子のプロモーター領域のゲノム編集による高次形態対立遺伝子の作成と一致する発現の増加を示す。
【0149】
実施例5.植物あたりの莢数から導出される潜在収量推定値。
実施例4に示すように、早い終末開花日表現型を有する編集されたダイズ植物は、改良された倒伏性及び立位性の特性を有する傾向があった。しかし、終末開花日が早いと、主幹と枝が未熟のまま終わるため、収量が失われる可能性もあり、植物の生産的な節の数が、頂芽優性の早期の断定及び生殖発育への供給源の完全な献身によって達成された節効率の改善が相殺できないほどに減少する。植物の高さ(及び、おそらく総節数)を実質的に変えることなく、有限な頂端節の生産性を保持しながら、野生型よりも著しく早い終末開花日を維持できることは注目に値する。これは、半有限性形質の導入によって植物あたりの莢の収量が減少しない可能性がある一方で、依然として立位性の向上による利点を享受できることを意味する。
【0150】
植物あたりの莢数は、均一で損傷のない圃場の所定の20インチ内部区画(約15個の連続した植物を含む)の圃場レベルで決定される。R6相またはそれ以降では、各圃場の所定の区画のすべての植物が切断されて、莢が失われないように包装される。各束からの莢は体系的に計数され、記録される。エントリ(対立遺伝子)あたりの莢数は、エントリあたりの計数されたすべての植物の平均として報告される。最適な倒伏特性を示した、編集された対立遺伝子AL391a及びAL411aを含む植物(表7を参照)、ならびに野生型不定植物を、植物あたりの莢数について評価し、予備結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0151】
編集された植物は、pM552編集コンストラクトを使用して作成された。植物あたりの莢数は、誤差の範囲内で3つの植物群間で同等である。編集された半有限性植物は、莢を失うことなく、立位性が向上したことを示した。実際、編集された半有限性植物の平均莢数は、野生型の無限性植物よりも多く、半有限性の導入により、倒伏の減少による収量損失の削減と共に生産性の向上がもたらされる可能性があることが示唆されている。
【0152】
Dt1遺伝子座はダイズ栽培化の初期に固定されたため、これらの編集された対立遺伝子は無限性ダイズ生殖質に再現され得、半有限性を付与し、栽培系統に形質をもたらす可能性がある。特に収量の多い環境では、ダイズ耕地全体での立位性及び生産性の向上により、重要な価値が生み出され得る。更に、半有限性形質から生じるよりコンパクトな植物種は、狭い畝での成長及び更に高い密度での成長を促進する可能性がある。これらの集約的な農業構成の下では、コンパクトで直立した植物種により、樹冠の下の空気の流れが改善され、それによって湿度が低下し、これにより、経済的に重要な白かび病及び突然死症候群(SDS)に対する感受性の低下を含む、真菌性病害に対する感受性が低下する可能性がある。
【0153】
実施例6.TFL1相同体の遺伝子編集。
総収穫高と多様性に基づく配列比較のために、ナス科、アブラナ科及びマメ科のメンバーに加え、ワタ及び単子葉穀物を含む、農業に関連する植物種のサブセットが選択された。各種からヒットしたポリペプチド配列を最も高い同一性で同定するために、NCBIのBLASTPプログラムを使用し、ダイズTFL1b(Dt1)ポリペプチド配列をクエリ配列として、非重複配列コレクションデータベースを検索セットとして使用した。同定された配列は、CLC WorkbenchのCLUSTALタイプのアルゴリズムによってアラインメントされた(非常に正確なアラインメントのためのデフォルトのパラメータ)。対比較は表形式で提供される(
図5)。
【0154】
Zea Mays、Sorghum bicolor、Oryza sativa、Triticum aestivum、Hordeum vulgare、Solanum lycopersicum、Gossypium hirsutum、Capsicum annuum、Brassica napus、Arabidopsis thaliana、Medicago truncatula、Arachis hypogaea及びCicer arietinumに見られるTFL1b遺伝子相同体の転写開始部位(tis)の上流の2kbプロモーター領域のポリヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号67~77、79及び81として本明細書に提供される。これらの追加の植物種または他の植物種において改変された有限性表現型を有する植物を作成するために、実施例1で上述したものと同様の手順を使用することができる。
【0155】
実施例1で上述したのと同様のプロセスに従って、約10個の編集ガイドRNAを、一般的なgRNA設計制約に従って、TFL1b相同体の約2kbのプロモーター領域にわたってほぼ等間隔で設計することができる(
図1を参照)。配列番号67~77、79及び81の配列の3’末端に位置する約200のヌクレオチドの基底プロモーター領域は、プロモーターが完全に機能しなくなる可能性を最小限に抑えるために回避されることができる。gRNA設計に続いて、実施例1に記載の工程に沿った工程に従って編集コンストラクトを作成し、編集された植物を作成することができ、これを更に分子的及び表現型の特徴付けに供させて、所望のレベルの相対発現及び有限性の調節を選択することができる。
実施例7.編集されたDt1対立遺伝子を含む植物の追加の表現型特徴の評価。
【0156】
編集されたDt1対立遺伝子を含むダイズ植物の更なる表現型特徴を評価した。本実施例に記載されているすべての形質効果は、所定のエントリの無限性野生型植物(成熟度群3.5の非改変ダイズ植物)に対する平均値のΔとして報告される。
【0157】
圃場には、畝間20インチの長さ10フィートの畝4列が含まれた。圃場の各範囲には、畝間に3フィートの路地があった。圃場あたり合計288個の種子を播種した。各試験エントリは実験ごとに12圃場で複製され、野生型比較植物を含む十分な圃場を含む各試験エントリ複製セットでランダム化マッピングが行われた。以下に説明する形質指標は、耕地の各圃場について収集された。報告される得られる形質値は、12回の反復すべてについての平均値のΔ、つまり、試験平均値と比較平均値の差である。この実験計画では、P値<0.2は、統計的に有意であるとみなされる。発育相のスコアリングは、均一で損傷のない圃場の所定の20インチ内部区画で圃場レベル(約15個の連続した植物を含む)で実施された。測定された圃場区画の植物の50%以上が発育相にある場合、圃場は特定の発育相に達しているとみなされた。大規模な定量的比較のために、相の決定は、植え付けから所望の相までの日数の観点から報告される。
【0158】
完全成熟日、植物あたりの枝の数、植物の高さ、及び植物の倒伏(立位)を含む植物の発育及び形態形質は、R8発育相で評価された。完全成熟は、植え付け日から、植物の莢の95%が成熟した莢の色に達する日までの日数に基づいて決定された。植物の高さは、直線状の主茎の長さの直接測定値として記録された。植物の倒伏を、上記の実施例4に記載したように評価した。結果を以下の表9に示す。
【表9-1】
【表9-2】
【0159】
上記の実施例4の表7に示すように、AL398などの極端な無限性対立遺伝子(GmTFL1b遺伝子発現レベルの増加を示す)を有する植物は、成熟が著しく遅延すると共に終結も遅延した。しかしながら、上記の表9に示すように、AL398対立遺伝子を含む植物における終結の遅延には、適度に高い枝数、植物丈の増加、及び倒伏の増加が伴った。半有限性対立遺伝子を持つすべての植物は、無限性野生型植物より1日以上早く成熟したAL437対立遺伝子を持つ植物を除き、無限性野生型植物の1日以内に成熟した。半有限性対立遺伝子を含む植物は、無限性野生型植物と比較して、2インチ~30インチの範囲で植物丈が大幅に減少した。半有限性対立遺伝子を含む植物はより立位しており、野生型の無限性植物よりも1~4.7ポイント(10%~47%)低い倒伏評価を示した。これは、部分的には植物丈の低下によるものである。植物丈と倒伏の減少にもかかわらず、ほとんどの半有限性対立遺伝子は、無限性野生型植物と統計学的な差はないものの、植物あたり多数の枝をつけることを可能にした。対立遺伝子AL437を持つ植物のみが、枝数を大幅に減少させた。
【0160】
植物あたりの節数、植物あたりの莢数、及び節あたりの莢数を含む二次収量成分も評価した。二次収量成分は、均一で損傷のない圃場の所定の20インチ内部区画で圃場レベル(約15個の連続した植物を含む)で決定された。R8相では、各圃場の所定の区画のすべての植物が切断されて、莢が失われないように包装された。各植物の莢数及び節数を、系統的に計数して記録した。植物番号が記録され、所定の圃場の莢が主要収量成分分析のためにまとめられた。節あたりの莢数は、計数値から計算された。結果を以下の表10に示す。
【表10】
【0161】
耕地での著しい早期終末を有する半有限性対立遺伝子を保有する植物はまた、枝数の損失がなく、成熟度が1日を超えて変化することなく、耕地での立位性が大幅に向上したことを示した。これらの特徴は、半有限性対立遺伝子が生産性を低下させることなく立位性を向上させる可能性があることを示唆している。しかし、茎先端の早期終末はまた、植物の生産的な節の数が、頂芽優性の早期の断定及び生殖発育への供給源の完全な献身によって達成された節効率の改善が相殺できないほどに減少することにより、収量が失われる可能性がある。半有限性対立遺伝子を保有する植物は、対立遺伝子に応じてある程度の植物丈の減少を示すが、これらの減少は、一般に植物あたりの生産的な節の大幅な変化とは関連しない。節の保持と一致して、ほとんどの半有限性対立遺伝子は、無限性野生型植物で計数された植物あたりの莢数と同等か、それよりも有意に高い植物あたりの莢数を付与する。試験したほとんどの半有限性植物の植物あたりの莢数は、無限性野生型植物と同等~23莢多い範囲である。半有限性植物の莢数の増加は節効率の向上と関連しており、これは、節あたりの莢数が大幅に増加することによって示される。例外は、AL430a及びAL411b対立遺伝子であり、これらは、以前に表8に示したように、Dt1の早期終末及びほぼ機能喪失の程度による植物丈の極端な低下により、莢形質指標が有意にマイナスであった。
【0162】
植物あたりの種子、1000個の種子重量、及び穀物収量推定値を含む主要な収量成分も、評価された。主要な収量成分は、所定の圃場内のすべての植物から収集した莢を脱穀し、測定された植物の数で正規化することによって圃場レベルで決定された。脱穀により、種子の総重量と種子数が返される。圃場あたりの1000個の種子の重量は、種子の総重量を種子数で割り、1000を掛けることによって計算される。穀物収量推定値は、単位面積あたりの推定種子に単一種子重量を乗算し、換算係数45.375を乗算した関数であり、エーカーあたり60ポンドのブッシェルという相対比較のためだけの推定値が返される。結果を以下の表11に示す。
【表11-1】
【表11-2】
【0163】
本明細書に記載のほとんどの半有限性対立遺伝子で観察された二次収量成分は、無限性野生型植物と比較して同等であるか、または有意に正であった。これらの特性は、編集によって収量を損なうことなくダイズの立位性を大幅に改善できることを示している。正の二次収量成分を持つ対立遺伝子はまた、多くの場合、耕地で植物あたりの種子の増加を示した。これらの実験では、ほとんどの半有限性対立遺伝子で種子重量のある程度の減少が示された。しかし、種子重量の減少にもかかわらず、正の種子数を持つ半有限性対立遺伝子を保有するすべての植物は、依然としてニュートラルから正の穀物収量推定値を示した。対立遺伝子AL411b及びAL430aは、植物丈の極端な低下に起因して、莢形質指標が著しく負であることが以前に指摘されたが、植物あたりの種子数及び穀物収量推定値の減少も示した。これは、茎先端の終末の減少に対する形質の大きさの有用な限界を示している。これらの観察は、場合によっては、収量の可能性だけでなく、立位性を高めるために適切な大きさの半有限性を付与する対立遺伝子の使用の可能性を実質的に裏付けている。
【0164】
以下の地上形質を評価した:樹冠被覆率評価、植え付けからR1相(開花の始まり)までの日数、及び植え付けから終末莢(TP)までの日数。樹冠被覆率は、圃場面積のうち植物が占める割合を示す。評価は、圃場の真上から見たときに、圃場内の緑色のピクセルと非緑色のピクセルを区別する、無人航空機によって取得されたリモートRGBイメージングデータに基づいて行われる。例えば、樹冠被覆率40%は、圃場の植栽スペースの60%が空いている可能性が高いことを示す。終末期は、終末花または終末莢の形成日を観察することによって決定した。R1相及び終末莢相の期間は、すべての圃場が規定の発育相に達するまで、実験圃場を連続的に観察することによって決定した。着花は、植物の主茎のいずれかの節に開花した日付を記録することによって決定した。終末莢は、主茎の終末節に長さ3/16インチ(0.5cm)以上の莢が1つあった日付を記録することによって決定した。結果を以下の表12に示す。
【表12】
【0165】
Dt1遺伝子座に対する編集によって影響を受ける主な形質は、終了日である。Dt1遺伝子座の編集から生じる終末形質の変化のスペクトルは、植物の高さ及び立位性において比例した下流の変化をもたらす。半有限性対立遺伝子では、植え付けから終末莢までの日数が大幅に短縮され、無限性野生型植物よりも3.5日~12日の範囲で早く、着花と成熟における最小限の変化と関連している。対立遺伝子AL437を保有する植物は、無限性野生型植物から1日以内に開花を開始した。Dt1編集により、半有限性対立遺伝子に応じて、終末における様々な大きさの統計的に有意な変化が生じた。測定されたほとんどの半有限性な編集された植物の地上形質は、R1生長相における無限性野生型植物と有意な差はなかった。
【0166】
バイオマスに関連する根の乾燥重量、苗条の乾燥重量、苗条と根の比率の地下形質も、R1相で決定された。これらの形質は、均一で損傷のない圃場の所定の20インチ内部区画で圃場レベル(約15個の連続した植物を含む)で評価された。R1相では、各圃場の所定の区画のすべての植物を地面から完全に取り出し、計数し、苗条と根の部分に分け、オーブンに移すために包装した。植物試料を完全に乾燥させた後、重量を圃場ごとに記録した。根と苗条のバイオマスは、植物あたりの平均で報告された。苗条と根の比率は、各エントリの平均苗条乾燥重量を平均根乾燥重量で割ることによって計算した。結果を以下の表13に示す。
【表13】
【0167】
半有限性対立遺伝子を保有するほとんどの植物の地下バイオマス測定値及び比率は、R1生長相における無限性野生型植物と有意な差はなかった。半有限性対立遺伝子の1つであるAL437は例外であり、3つのバイオマス指標すべてに対して有意に負であり、これは、植物全体のサイズが小さく、苗条が不釣り合いに小さいことを示している。これは、表12に示すように、この対立遺伝子の樹冠被覆率が著しく小さいことから明らかである。
【0168】
全体として、これらの形質結果は、安定または向上した収量の可能性を備えた、より立位したダイズ品種の基礎となる固有の対立遺伝子を取得するための半有限性編集の有用性を示している。更に、結果は、Dt1遺伝子座の編集により、半有限性対立遺伝子だけでなく、準有限性対立遺伝子、有限性対立遺伝子、及び極端な無限性対立遺伝子も作成できることを示している。
【0169】
本開示を詳細に記載してきたが、本明細書及び添付の請求項で記載される本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに、修飾物、変動物、及び同等な実施形態が可能であることは明らかであろう。更に、本開示における実施例はすべて非限定的な例として提供されることが理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】