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特表2024-545956シリコーン耐衝撃性改良剤を作製するための一段階プロセス
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  • 特表-シリコーン耐衝撃性改良剤を作製するための一段階プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】シリコーン耐衝撃性改良剤を作製するための一段階プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 291/16 20060101AFI20241209BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08F291/16
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535256
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022052918
(87)【国際公開番号】W WO2023114344
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,675
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、プ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、モリス
【テーマコード(参考)】
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4J026AB44
4J026AC22
4J026BA27
4J026BB03
4J026DB04
4J026DB13
4J026FA07
4J026GA02
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC141
4J127BC151
4J127BD291
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF781
4J127BF78Y
4J127BG381
4J127BG38X
4J127CB141
(57)【要約】
シリコーン耐衝撃性改良剤を調製するための一段階プロセスは、反応混合物を重合させることを含み、当該反応混合物は、テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン耐衝撃性改良剤を調製するための一段階プロセスであって、
テレケリックメタクリレート官能性シリコーンと少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートとを含む反応混合物を重合させることを含む、一段階プロセス。
【請求項2】
前記テレケリックメタクリレート官能性シリコーンが、以下の式の化合物である、請求項1に記載のプロセス:
【化1】

[式中、各Rは、独立して、水素又は炭化水素基であり、nは、0~1,000であり、R’は、以下の構造を有する基である:
【化2】

(式中、各R’’は、炭化水素基であり、各R’’’は、水素又はメチルである)]。
【請求項3】
各Rが、独立して、水素又は12個以下の炭素原子を含む炭化水素基であり、各R’’が、8個以下の炭素原子を含む炭化水素基である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
各Rが、独立して、4個以下の炭素原子を含む炭化水素基である、請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
各R’’が、3個以下の炭素原子を含む炭化水素基である、請求項2~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
各Rが、メチル基であり、各R’’が、メチル基であり、各R’’’が、メチル基である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記テレケリックメタクリレート官能性シリコーンが、前記反応混合物における前記テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートの総重量の50~95重量%を構成する量で前記反応混合物中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記テレケリックメタクリレート官能性シリコーンが、前記反応混合物における前記テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートの総重量の60~90重量%を構成する量で前記反応混合物中に存在する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応混合物が、有機リンモノマー、スチレン、アクリル酸、及びメタクリル酸から選択される少なくとも1つの追加のモノマーを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1つのモノマーが、前記反応混合物における前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート及び前記少なくとも1つの追加のモノマーの総重量に基づいて0.01~10重量%を構成する量で前記反応混合物中に存在する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが、直鎖又は分岐鎖のC~C12アルキル基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、及びオクチル基からなる群から選択されるアルキル基を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレートを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応混合物を重合させることが、前記反応混合物をエマルション重合させることを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、シリコーン耐衝撃性改良剤を生成するための一段階プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンアクリルコア-シェル-ゴム(Silicone acrylic core-shell-rubber、CSR)耐衝撃性改良剤は、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)を含む種々の熱可塑性樹脂において使用されることが多い。これらの耐衝撃性改良剤は、多くの場合、グラフト化メチルメタクリレート(methyl methacrylate、MMA)シェルと共に架橋シリコーンコアを有する。これらのシリコーンアクリルCSR耐衝撃性改良剤は、典型的には、シリコーンゴム段階がシラン又はシリコーンの重合であり、シェル段階が従来のエマルション重合によって調製されるフリーラジカルプロセスである二段階重合プロセスによって調製される。
【0003】
あるいは、米国特許出願公開第2021/0317247号には、テレケリック(α,ω)メタクリレート官能性直鎖ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)の使用が開示されている。テレケリックメタクリレート官能性シリコーンは、材料の水溶解度が無視できるほどでしかないため、従来のエマルション重合によって調製することができない。したがって、テレケリックメタクリレート官能性シリコーンのメタクリレート末端基のフリーラジカル重合を介してラテックス粒子を調製するために、ミニエマルション重合を使用した。ミニエマルション重合は、ラテックスサイズの液滴(100~500nm)の直接重合を含む。米国特許出願公開第2021/0317247号によって開示されているプロセスでは、シリコーンアクリルコアシェルゴムを合成するために二段階重合プロセスが必要であった。第1の工程では、ミニエマルションによる耐衝撃性改良剤の第1のゴム段階を調製するために、テレケリックメタクリレート官能性シリコーンをブチルアクリレート(butyl acrylate、BA)モノマーで希釈しなければならなかった。第2の工程では、メチルメタクリレート(MMA)シェルを従来のエマルション重合で調製した。第1の工程においてテレケリックメタクリレート官能性シリコーンの希釈が必要になるため、二段階重合プロセスでは高いシリコーン負荷が不可能である。
【0004】
シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤を調製するための新規プロセスを開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、シリコーン耐衝撃性改良剤を調製するためのプロセスを提供する。プロセスは、反応混合物を重合することを含み、当該反応混合物は、テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明のプロセスに従って調製されたシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤の耐衝撃性能を、市販の耐衝撃性改良剤及び比較例のプロセスに従って調製されたシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、シリコーンコアアクリルシェル耐衝撃性改良剤を一段階プロセスで調製できることを見出した。
【0008】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。「ポリマー」という一般的な用語は、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」、及び「樹脂」という用語を含む。本明細書で使用される場合、「から誘導された重合単位」という用語は、生成物ポリマーが、重合反応の出発物質である構成モノマー「から誘導された重合単位」を含有する、重合技術に従って合成されるポリマー分子を指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート若しくはメタクリレート又はこれらの組み合わせのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル若しくはメタクリル又はそれらの組み合わせのいずれかを指す。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、少なくとも1つの付着した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、及びそれらの組み合わせを有することを指す。
【0009】
本明細書で使用される場合、「多段ポリマー」という用語は、多段ポリマーのコアを形成する「第1段階」又は「第1段階ポリマー」と呼ばれる第1のポリマーを形成(すなわち、重合)することによって作製されるポリマーを指す。次に、第1段階の存在下で、「第2段階」又は「第2段階ポリマーと呼ばれる第2のポリマーを形成するが、これは多段ポリマーの中間段階又は最終段階であり得る。多段ポリマーは、第2段階ポリマーの前又は後に形成され得る追加の段階を含んでいてもよい。各中間段階は、その中間段階の直前の段階の重合から生じるポリマーの存在下で形成される。各後続段階が前段階から残っている各粒子の周りに部分的又は完全なシェルを形成するかかる実施形態では、結果として生じる多段階ポリマーは、「コア/シェル」ポリマーとして既知であり、第1段階ポリマーがコアを含み、各後続段階は、先行段階上にシェルを含み、最終段階が最外シェルを形成する。したがって、第2段階ポリマーは、多段ポリマーにおけるシェルの少なくとも一部を構成する。
【0010】
シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤を調製するための以前から公知のプロセスは、まずシリコーンポリマー又はシリコーンアクリルコポリマーを調製し、続いて、アクリルシェルをシリコーンコア上に重合させる後続のステップを行う、多段階プロセスが必要であった。
【0011】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」又は「M」という用語は、ASTM D5296-11(2011)に従い、かつ移動相及び希釈液としてテトラヒドロフラン(「tetrahydrofuran、THF」)を使用して、ポリスチレン較正標準に対するアクリル酸ポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフィ(「gel permeation chromatography、GPC」)で測定したポリマーの重量平均分子量を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマーの重量」という用語は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0012】
本発明によるプロセスは、テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含む反応混合物を重合させる一段階プロセスである。理論に束縛されることを望むものではないが、アクリルポリマー、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate)、PMMA)は、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートが重合反応相において形成されるメチルメタクリレートである場合、アクリルポリマー及びシリコーンがシリコーンの末端基と少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートとの間で互いに共有結合している場合であってもシリコーンから相分離し、更に、アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートのより親水性の高い性質及びシリコーンのより疎水性の高い性質に起因して優先的にシェルを形成すると考えられる。これは、シリコーン相とPMMA相とが明確に区別される原子間力顕微鏡(atomic force microscopy、AFM)によって実験的に観察されている。
【0013】
テレケリックメタクリレート官能性シリコーンは、好ましくは式:
【0014】
【化1】

(式中、各Rは、独立して、水素又は炭化水素基であり、nは、0~1であり、全てのR’が、独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含有する有機基である)の化合物である。
【0015】
好ましいR基は、水素及び12個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、水素、及び8個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、メチル基である。好ましくは、全てのR基が互いに同じである。
【0016】
好ましい-R’基は、構造:
【0017】
【化2】

(式中、R’’は、炭化水素基、好ましくはアルキル基である)を有する。好ましくは、R’’は、8個以下の炭素原子、より好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。好ましくは、R’’は、1個以上の炭素原子、より好ましくは2個以上の炭素原子、より好ましくは3個以上の炭素原子を有する。R’’’は、水素又はメチルのいずれかであり、好ましくは、メチルである。好ましくは、全てのR’基が互いに同じである。
【0018】
テレケリックメタクリレート官能性シリコーンにおいて、nは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。テレケリックメタクリレート官能基において、nは、好ましくは800以下、より好ましくは500以下、より好ましくは、300以下である。
【0019】
シリコーンポリマーは、1つ以上のモノビニルアクリルモノマーの重合単位も含有し得る。好ましいモノビニルアクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、それらの置換アルキルエステル、及びそれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、それらの非置換アルキルエステル、及びそれらの混合物がより好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうちで、アルキル基が、18個以下の炭素原子、より好ましくは、8個以下の炭素原子、より好ましくは、6個以下の炭素原子、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有する、アルキル基を有するものが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が2個以上の炭素原子、より好ましくは4個以上の炭素原子を有するものが好ましい。
【0020】
好ましくは、テレケリックメタクリレート官能性シリコーンは、反応混合物中のテレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートの総重量の50~95重量%を構成する量で反応混合物中に存在する。例えば、テレケリック官能性シリコーンは、反応混合物中のテレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートの総重量の少なくとも60重量%又は少なくとも70重量%かつ90重量%以下又は85重量%以下の量で反応中に存在する。
【0021】
少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、直鎖又は分岐鎖C~C12アルキル基を含む。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、及びオクチル基が挙げられる。好ましくは、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレートを含む。
【0022】
少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートは、2つ以上のアルキル(メタ)アクリレートの混合物を含み得る。例えば、反応混合物は、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを含み得る。
【0023】
反応混合物は、少なくとも1つの追加のモノマーを含んでいてもよい。例えば、反応混合物は、有機リンモノマー、スチレン(例えば、スチレンスルホン酸、アクリル酸、又はメタクリル酸)から選択される少なくとも1つの追加のモノマーを含んでいてもよい。
【0024】
有機リンモノマーの例としては、以下が挙げられる:
【0025】
【化3】

式中、Rは、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、又はビニル基を含有する有機基であり、R’及びR’’は、独立して、H及び第2の有機基から選択される。第2の有機基は、飽和又は不飽和であり得る。好適な有機リンモノマーは、二水素ホスフェート官能性モノマー、例えば、アルコールの二水素ホスフェートエステルを含み、そのアルコールはまた、重合性ビニル又はオレフィン基、例えば、アリルホスフェート、ビス(ヒドロキシ-メチル)フマレート又はイタコネートのモノホスフェート又はジホスフェート、(メタ)アクリル酸エステルの誘導体、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのホスフェートも含有する。
【0026】
他の好適な有機リンモノマーは、例えば、Solvayから入手可能なメタクリレートSIPOMER(商標)PAM-100、SIPOMER(商標)PAM-200、SIPOMER(商標)PAM-400、SIPOMER(商標)PAM-600及びアクリレート、SIPOMER(商標)PAM-300などの、CH=C(R)-C(O)-O-(R’O)-P(O)(OH)(式中、R=H又は-CH、R’=アルキル、及びn=1~5)を含む。
【0027】
他の好適な有機リンモノマーは、国際公開第99/25780(A1)号に開示されているホスホネート官能性モノマーであり、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸、α-ホスホノスチレン、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸を含む。更なる好適な有機リンモノマーは、米国特許第4,733,005号に開示されている、1,2-エチレン性不飽和(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーであり、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレートを含む。
【0028】
好ましくは、有機リンモノマーは、式CH=C(R)-C(O)-O-(R’O)-P(O)(OH)の少なくとも1つの化合物を含む。より好ましくは、Rは、-CHであり、R’は、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、n=1である。
【0029】
存在する場合、少なくとも1つの追加のモノマーは、反応混合物中の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート及び少なくとも1つの追加のモノマーの総重量に基づいて0.01~10重量%を構成する量で反応混合物中に存在し得る。例えば、少なくとも1つの追加のモノマーは、反応混合物中の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート及び少なくとも1つの追加の化合物の総重量の少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%を構成する量で反応混合物中に存在し得る。少なくとも1つの追加のモノマーは、反応混合物中の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート及び少なくとも1つの追加のモノマーの総重量の8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、又は4重量%以下を構成する量で反応混合物中に存在し得る。
【0030】
反応は、架橋剤を更に含み得る。架橋剤は、任意の多官能性不飽和モノマー、すなわち、付加重合に利用可能な2つ以上の不飽和基を有する任意のモノマーであり得る。好適な二官能性モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、及びそれらの誘導体が挙げられる。三官能性の例としては、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの四官能性モノマー及び六官能性モノマー、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートも使用することができる。任意選択で、多官能性モノマーは、2つ以上の多官能性化合物の混合物を含み得る。
【0031】
架橋剤は、テレケリックメタクリレート官能性シリコーン及び少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートの総重量に基づいて0.1~10重量%の範囲の量で存在し得る。
【0032】
反応混合物は、好ましくはエマルション重合によって、より好ましくはミニエマルション重合によって重合される。ミニエマルション重合は、高圧ホモジナイザー又は超音波処理装置のいずれかを使用するラテックスサイズの液滴(例えば、100~500nmの液滴)の直接重合を含む。
【0033】
好ましくは、シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤はラテックスの形態で生成される。本明細書で使用される場合、「ラテックス」という用語は、ポリマーが水中に分散している小さなポリマー粒子の形態で存在するポリマーの物理的形態を指す。ラテックスは、例えば、50nm以上又は100nm以上の平均粒径を有し得る。ラテックスは、1,000nm以下、又は800nm以下、又は600nm以下の平均粒径を有し得る。ラテックスは、凝固又は噴霧乾燥によって粉末に分離することができる。
【0034】
好ましくは、単離ポリマーを有して残る水の大部分又は全部は、以下の操作のうちの1つ以上によって単離ポリマーから除去される:濾過(例えば、真空濾過を含む)及び/又は遠心分離。単離ポリマーは、任意選択的に、水で1回以上洗浄され得る。
【0035】
好ましくは、乾燥したシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤は、乾燥したシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤の重量に基づいて1.0重量%未満の含水量を有する。
【0036】
次いで、乾燥したシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤を、耐衝撃性改良剤及びマトリックス樹脂を含有するマトリックス樹脂組成物中に組み込むことができる。シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤とマトリックス樹脂との混合物を混合し、溶融し、そして固体製品に成形した後、その製品の耐衝撃性は、シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤と混合していないマトリックス樹脂を用いて作製した同じ固体製品よりも良好になるであろう。耐衝撃性改良剤は、固体形態、例えば、ペレット若しくは粉末又はそれらの混合物で提供され得る。マトリックス樹脂はまた、固体形態、例えば、ペレット若しくは粉末又はそれらの混合物で提供され得る。
【0037】
好適なマトリックス樹脂は、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、アクリルポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びポリアミドを含む。好ましくは、マトリックス樹脂は、少なくとも1つのポリカーボネートを含有する。好適なポリカーボネートは、例えば、ビスフェノールA(「Bisphenol A、BPA」)から誘導された重合単位のホモポリマー、及び1つ以上の他の重合単位と共にBPAの重合単位を含むコポリマーも含む。
【0038】
本発明のシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤を調製するためのプロセスは、依然として同様の衝撃性能を提供しながら、シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤を調製するために必要とされる時間及び複雑さを著しく改善することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例において詳細に説明される。
【実施例
【0040】
粒径測定
オリゴマーの粒径は、Malvern Zetasizer Nano S90粒径分析器で測定した。
【0041】
比較例-シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤の合成
二段階法を用いて比較例を調製した。工程1:5リットルのガラス製4つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、凝縮器、及び電熱マントルを取り付けた。反応器に、480.22gの脱イオン水及び0.075gのSequestreneを仕込んだ。反応器の内容物を50℃に加熱した。別の容器内で、600gのテレケリックメタクリレート化シリコーン(n=62)、196gのブチルアクリレート、4gのアリルメタクリレート、18.18gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液、及び790gの脱イオン水をブレンドし、撹拌して、モノマーエマルション混合物を形成した。次いで、Misonix(登録商標)超音波処理器を使用してモノマーエマルションをミニエマルションに更に加工した。このモノマーミニエマルションを反応器に添加し、反応器温度を50℃に調整した。次いで、20gのt-ブチルヒドロペルオキシド2.5%水溶液及び20gのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート2.5%水溶液を添加し、続いて、反応器温度を60℃に調整しながら、別の各20gのt-ブチルヒドロペルオキシド及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(両方とも2.5%水溶液)を30分間かけて同時に供給し、続いて30分間保持した。工程2:別の容器中で、4gのブチルアクリレート、196gのメチルメタクリレート、4.55gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液、及び50gの脱イオン水を用いてモノマーエマルションを調製した。このモノマーエマルションを、20gのt-ブチルヒドロペルオキシド2.5%水溶液及び20gのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート2.5%水溶液に添加し、続いて、反応器温度を60℃で保持しながら、別の各20gのt-ブチルヒドロペルオキシド及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(両方とも2.5%水溶液)を30分間かけて同時に供給し、続いて30分間保持した。次いで、反応を40℃に冷却し、濾過した。粒径は、340nmであると測定され、固形分含量は、39.6%であった。
【0042】
比較例の凝固
4リットルのビーカーに、4.8gの固体塩化カルシウム及び1162gの脱イオン水を添加した。ビーカーの内容物を500rpmで撹拌しながら80℃に加熱した。温度が80℃に達したら、80℃の442gの上記シリコーンアクリルエマルション及び133gの脱イオン水の予熱した混合物を容器にゆっくりと添加し、続いて45gの脱イオン水中に溶解させた0.9gの塩化カルシウムの溶液を添加した。次いで、混合物を95℃に加熱し、95℃で30分間保持した。保持後、混合物を冷却し、脱水し、ブフナー漏斗内で洗浄した。濾液の導電率が30μS/m未満になるまで試料を脱イオン水で洗浄し、次いで脱水した。試料を真空オーブン中で乾燥させて粉末にした。
【0043】
本発明の実施例-シリコーンアクリル耐衝撃性改良剤の合成
一段階法を用いて本発明の実施例を調製した。5リットルのガラス製4つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、凝縮器、及び電熱マントルを取り付けた。反応器に244gの脱イオン水及び0.075gのSequestreneを仕込んだ。反応器の内容物を80℃に加熱した。別の容器内で、800gのテレケリックメタクリレート化シリコーン(n=62)、4gのブチルアクリレート、196.00gのメチルメタクリレート、22.73gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液、及び995gの脱イオン水をブレンドし、撹拌して、モノマーエマルション混合物を形成した。次いで、Misonix(登録商標)超音波処理器を使用してモノマーエマルションをミニエマルションに更に加工した。得られたミニエマルションを反応器に添加し、反応器温度を40℃に調整した。次いで、80.0gのt-ブチルヒドロペルオキシド2.5%水溶液及び80.0gのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート2.5%水溶液の同時90分供給を開始した。15分後、反応器温度を65℃に調整し、次いで更に45分後に85℃に調整した。t-ブチルヒドロペルオキシド及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの90分間の供給の終わりに、反応器を85℃で30分間保持し、次いで40℃に冷却し、濾過した。最終エマルション固形分含量は40.7%であると測定され、粒径は366nmであった。
【0044】
本発明の実施例の凝固
4リットルのビーカーに、4.8gの固体塩化カルシウム及び1162gの脱イオン水を添加した。ビーカーの内容物を500rpmで撹拌しながら80℃に加熱した。内容物が80℃に達したら、80℃の430gの上記シリコーンアクリルエマルション及び152gの脱イオン水の予熱した混合物を容器にゆっくりと添加し、続いて45gの脱イオン水中に溶解させた0.9gの塩化カルシウムの溶液を添加した。次いで、混合物を95℃に加熱し、95℃で30分間保持した。保持後、混合物を冷却し、脱水し、ブフナー漏斗内で洗浄した。濾液の導電率が30μS/m未満になるまで試料を脱イオン水で洗浄し、次いで脱水した。試料を真空オーブン中で乾燥させて粉末にした。AFMイメージングにより、比較例及び本発明の実施例が同様の形態を有することが確認された。
【0045】
【表1】
【0046】
塗布試験配合物
比較例及び本発明の実施例の方法によって生成された耐衝撃性改良剤、並びにThe Dow Chemical Company製のEXL2691J、MBS CSR耐衝撃性改良剤;Kaneka製のKane Ace MR-01、シリコーン耐衝撃性改良剤;及びMitsubishi Chemical製のMetablen SX005、シリコーン耐衝撃性改良剤を含む市販の耐衝撃性改良剤を配合することによって、ポリカーボネート樹脂を作製した。図1のグラフは、本発明の一段階プロセスによって作製されたシリコーンアクリル耐衝撃性改良剤が、市販の耐衝撃性改良剤と比較して同様の耐衝撃性能を示したことを示す。
【0047】
【表2】
【0048】
負荷レベル5%の実験室で作製したSi-AIM試料を、造粒PCペレット及び上の表2中の他の成分とバッグ混合し、次いで、30mm Werner Pfleiderer二軸押出機を使用して、以下の表3に列挙した加工条件で混和した。
【0049】
【表3】
【0050】
ASTM D256に従ってノッチ付きアイゾット衝撃強度を完了した。5つの衝撃試験片を、温度制御された環境(23℃/50%RH)に少なくとも40時間置いた。試料調製が完了したら、延性/脆性遷移について理解するために、試料を23℃、0℃、-20℃、及び-30℃で試験した。
図1
【国際調査報告】