(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】改善されたPd分布を有するアルケニルカルボン酸エステルを製造するためのシェル触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 31/28 20060101AFI20241209BHJP
B01J 35/53 20240101ALI20241209BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241209BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20241209BHJP
C07C 67/055 20060101ALI20241209BHJP
C07C 69/15 20060101ALI20241209BHJP
C07C 69/01 20060101ALN20241209BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
B01J31/28 Z
B01J35/53
B01J37/02 101C
B01J37/02 101D
B01J37/18
C07C67/055
C07C69/15
C07C69/01
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536160
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022085192
(87)【国際公開番号】W WO2023117496
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】ボブカ・ローマン
(72)【発明者】
【氏名】メストル・ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】シェック・ペーター
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA12
4G169BA02B
4G169BA27A
4G169BA27B
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4G169BB02B
4G169BC01A
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4G169BC06B
4G169BC33A
4G169BC33B
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4G169BC72B
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4H006AA02
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4H006BA05
4H006BA25
4H006BA55
4H006BA56
4H006BA60
4H006BA81
4H006BE30
4H006KA13
4H006KC12
4H039CA66
4H039CC40
(57)【要約】
本発明は、改善されたPd分布を特徴とするPd及びAuを含むシェル触媒に関する。本発明はまた、当該触媒を製造するための二つの製造方法、及び、当該触媒を使用した酢酸ビニルモノマーの製造方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル触媒中のパラジウムの濃度プロファイルを有し、当該濃度プロファイルは、非対称ガウス分布に一致し、パラジウム濃度の最大値は、触媒成形体の幾何学的巨視的表面から0~40マイクロメートルの範囲内にあり、パラジウムはシェル厚さ30~200μmの領域に存在し、濃度分布の半値幅が10~70μmであり、かつ、半値幅の左側の値の半値幅の右側の値に対する比が、0.05~0.55であることを特徴とする、Pd及びAuを含むシェル触媒。
【請求項2】
Pd濃度の最大値は、シェル触媒の表面から5~40マイクロメートル、好ましくは5~35マイクロメートル、特に好ましくは5~30マイクロメートルの範囲にある、請求項1に記載のシェル触媒。
【請求項3】
Pdを含むシェルは、30~200マイクロメートル、好ましくは40~180マイクロメートル、特に好ましくは50~160マイクロメートル、最も好ましくは60~140マイクロメートルの厚さを有する、、請求項1または2に記載のシェル触媒。
【請求項4】
アルカリ金属酢酸塩、好ましくは酢酸カリウムをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のシェル触媒。
【請求項5】
Pdは、0.2重量%~2.0重量%の範囲、好ましくは0.4重量%~1.75重量%の範囲、特に好ましくは0.7重量%~1.5重量%の範囲であり、Auの割合は、0.1重量%~1.2重量%の範囲、好ましくは0.2重量%~1.0重量%の範囲、最も好ましくは0.3重量%~0.8重量%の範囲であり、いずれの場合も還元及び乾燥減量後の触媒成形体の総重量に基づく、請求項1~4のいずれかに記載のシェル触媒。
【請求項6】
(a)触媒担体床を再循環動作させる工程、ここで当該床を、再循環動作させる前または後に、60℃~120℃の温度に加熱する;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的に又は同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃、好ましくは7℃~25℃、最も好ましくは10℃~20℃低く、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃、好ましくは7℃~25℃、最も好ましくは10℃~20℃低い、
を含む、請求項1~5のいずれかに記載のPd及びAuを含むシェル触媒の製造方法。
【請求項7】
工程(b)の後に、工程(b)で得られた触媒担体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、当該前駆体化合物の金属成分を元素金属に還元する工程(c)を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
塗布温度、又は、連続塗布の場合は工程(b)における最初の塗布温度は、55℃~115℃の範囲、好ましくは55℃~110℃の範囲、より好ましくは60℃~100℃の範囲、特に好ましくは65℃~90℃の範囲である、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(b)において、第一の工程において、溶解Au含有前駆体化合物を塗布し、第二の工程において、溶解Pd含有前駆体化合物を塗布する、請求項6~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布前に、好ましくは工程(a)の前に、酢酸塩を触媒担体に塗布する、請求項6~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
(a)触媒担体床を再循環動作させて、55℃~110℃の範囲の温度で、当該床をスプレーによる噴霧水と接触させる工程;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的にまたは同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は工程(a)と同じであり、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)と同じである、
を含む、請求項1~5のいずれかに記載のPd及びAuを含むシェル触媒の製造方法。
【請求項12】
工程(b)の後に、工程(b)で得られた触媒担体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、当該前駆体化合物の金属成分を元素金属に還元する工程(c)を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程(b)において、第一の工程において、溶解Au含有前駆体化合物を塗布し、第二の工程において、溶解Pd含有前駆体化合物を塗布する、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布前に、好ましくは工程(a)の前に、酢酸塩を触媒担体に塗布する、請求項11~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれかに記載のシェル触媒を用いた、アルケニルカルボン酸エステル、特にVAM又はアリルアセテートモノマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pdの分布が改善されていることを特徴とするPd及びAuを含むシェル触媒に関する。本発明はまた、この触媒を製造するための2つの方法、及びこの触媒を使用した酢酸ビニルモノマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シェル触媒は、様々な触媒プロセスにおいて長年使用されてきた。それらは、触媒活性種が触媒担体全体にわたって分布されるのではなく、触媒担体の中心の周りのシェル領域においてのみ分布されるという特徴を有する。
【0003】
1つの適用分野は、エチレン、酢酸及び酸素の反応による酢酸ビニルモノマー(VAM)の製造である。触媒活性種としてPd及びAu化合物を含有し、様々な促進剤を含有することもできるシェル触媒が、ここで広く使用されている。
【0004】
したがって、特許文献1(WO2008/145388A1)は、触媒活性種の適用が触媒担体の流動床の噴霧含浸によって行われる、Pd含有シェル触媒及びAuを含むシェル触媒の製造を記載している。得られる触媒活性種のシェル様領域は、触媒活性種のほぼ一定の分布を有する。
【0005】
特許文献2(WO2005/065821A1)においては、触媒担体の細孔構造は、触媒活性種を含有する溶液の吸収によって担持される。あるいは、触媒活性種とバインダー材料との混合物を触媒担体の表面に塗布する。触媒活性種の分布は、不利となる。なぜなら、担体の内部に深く広がるか、またはこの塗布されたシェルの比較的広い領域にわたって分布が非常に均一である外層となるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/145388A1
【特許文献2】WO2005/065821A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善されたPd濃度を特徴とするPd及びAuを含むシェル触媒は、依然触媒効果の改善のために求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、Pd及びAuを含むシェル触媒によって達成され、当該シェル触媒中のパラジウムの濃度プロファイルは、非対称ガウス分布に一致し、パラジウム濃度の最大値は、触媒成形体の幾何学的表面から0~40マイクロメートルの範囲内にあり、パラジウムはシェル厚さ30~200μmの領域に存在し、濃度分布の半値幅が10~70μmであり、かつ、ガウス分布の非対称性は、半値幅の左側の値の半値幅の右側の値に対する比が、0.05~0.55であることを特徴とする。
【0009】
本発明はさらに、本発明に係るシェル触媒を製造するための第1の製造方法を提供する。当該第1の製造方法は、以下の工程を含む:
(a)触媒担体床を再循環動作させて、再循環動作中に当該床を60℃~120℃の温度に加熱する工程;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的に又は同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃、好ましくは7℃~25℃、最も好ましくは10℃~20℃低く、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃、好ましくは7℃~25℃、最も好ましくは10℃~20℃低い。
【0010】
本発明に係る触媒は、本発明による第2の製造方法によっても製造可能である。第2の製造方法は、以下の工程を含む:
(a)触媒担体床を再循環動作させて、55℃~110℃の範囲の温度で、当該床をスプレーによる噴霧水と接触させる工程;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的にまたは同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は工程(a)と同じであり、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)と同じである。
【発明の効果】
【0011】
驚くべきことに、本発明による方法は、個々の触媒成形体の内部におけるPd分布が改善されたシェル触媒を製造することが可能であって、Pd濃度分布は非対称ガウス分布の形であって、Pd濃度の最大値は、触媒成形体の表面から0~40マイクロメートルの範囲内にあり、パラジウムはシェル厚さ30~200μmの領域に存在し、濃度分布の半値幅が10~70μmであり、かつ、ガウス分布の非対称性は、半値幅の左側の値の半値幅の右側の値に対する比が0.05~0.55であることを特徴とすることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例の触媒1について、Pd濃度の実験データ点、及び、x
surfaceの測定後、幾何学的表面の開始点を定めたのと同じ測定方法によって定めたシグモイド関数のプロットを示す。
【
図2】
図2は、実施例において、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒1の曲線のプロットを示す。
【
図3】
図3は、実施例において、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒2の曲線のプロットを示す。
【
図4】
図4は、実施例において、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒3の曲線のプロットを示す。
【
図5】
図5は、実施例において、適切な適合関数を用いて得られた触媒1、2及び3の曲線を示す。
【
図6】
図6は、実施例において、酢酸ビニルモノマーを得るための酢酸、エチレン及び酸素の反応における、触媒1及び2の異なる空間時間収率での選択率、及び、それらの傾向線のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、シェル触媒は、Pd及びAuを含む触媒成形体であって、Pd化合物及びAu化合物は、触媒活性種として担体の外側領域に存在し、いわゆるシェルを形成し、触媒成形体の内部は、実質的にPd化合物及びAu化合物を含まないことを意味する。当該シェルは、通常は、触媒成形体の浅い領域において高濃度の触媒活性種を示す。
【0014】
本発明による当該二つの方法に関して、シェル触媒は、工程(b)の後、触媒成形体の形態であって、これに先立って、触媒担体が関与する。
【0015】
当該シェル触媒中のPd濃度の最大値は、それぞれの場合において、触媒成形体の幾何学的表面から、0~40マイクロメートル、好ましくは5~40マイクロメートル、好ましくは5~35マイクロメートル、特に好ましくは5~30マイクロメートルの範囲内にある。
【0016】
当該シェル触媒は、厚さが30~200マイクロメートル、好ましくは40~180マイクロメートル、特に好ましくは50~160マイクロメートル、最も好ましくは60~140マイクロメートルである、Pdを含むシェルを含む。
【0017】
一実施態様では、当該シェル触媒は、Pd濃度プロファイルの半値幅を45~65μmの範囲に有する。一実施態様では、当該シェル触媒は、非対称性ガウス分布においてPd濃度プロファイルを有し半値幅の左側の値の半値幅の右側の値に対する比が0.05~0.55の範囲、好ましくは、0.05~0.45の範囲、そして特に好ましくは、0.05~0.35の範囲である。
【0018】
触媒担体床を再循環動作させるのは、通常は、適切な流動床装置を用いて行われる。このような装置は、GlattGmbH(ビンゼン、ドイツ)、Aeromatic-FielderAG(ビューデンドルフスイス)、FluidAirInc(オーロラ、イリノイ米国)、HuettlinGmbH(シュタイネンドイツ)、UmangPharmatechLtd.(マハラシュートラインド)及びRomacoPharmatechnikGmbH(カルルスルーエ、ドイツ)によって販売されている。本発明によるプロセスを実施するのに特に好ましい流動床装置は、RomacoPharmatechnikGmbHによりInnojet(登録商標)Ventilus又はInnojet(登録商標)AirCoaterの商品名で市販されている。これらの装置は、動かないように設置・固定された容器底部を備えた円筒形容器を含み、その中央にスプレーノズルが取り付けられている。当該底部は、段階的に重ね合わせて取り付けられた円形羽根板から構成される。プロセスエアーは、水平に、且つ、容器壁面に向かう外側への円周方向への流動成分を伴って、個々の羽根板の間を、容器内へと流れる。
【0019】
これは、成形触媒担体が最初に容器壁面の方向へ外方へと運ばれる、いわゆるスライディング空気層を形成するものである。外側の容器壁面上では、前記触媒担体を上方へ向ける垂直方向に向けられたプロセスエアーが設けられる。当該触媒担体は、上端に到達すると、基部の中心に対する接線方向の経路上を戻り、その過程でノズルのスプレーミストを通過する。当該スプレーミストを通過した後、上記動作が再び始まる。上記プロセスエアーの管理は、触媒担体の実質的に均質なトロイダル形流動床的な再循環動作の基礎をもたらす。
【0020】
本発明による製造方法では、再循環する成形体が楕円形又はトロイダル形の経路を移動する流動床を作り出すことが好ましい。従来技術では、床の粒子が完全に自由に移動可能になる状態(流動床)へ移行する点を最小流動化点と呼び、伴う流体速度を最小流動化速度と呼ぶ。
【0021】
本発明による製造方法において、好ましくは、流体速度は、最小流動化速度の4倍まで、好ましくは最小流動化速度の3倍まで、より好ましくは最小流動化速度の2倍までである。
【0022】
本発明による製造方法では、触媒担体が楕円形またはトロイダル形の経路、好ましくはトロイダル形の経路に沿って流動床内で再循環する。本発明によれば、「楕円形再循環」は、流動床における触媒担体が、垂直面において、第一及び第二の軸のサイズが異なる楕円形の経路上を移動することを意味する。「トロイダル形再循環」の場合、流動床における触媒担体は、垂直面において第一及び第二の軸のサイズが異なる楕円形の経路上を、水平面において半径のサイズが異なる円形経路上を移動する。
【0023】
平均して、「楕円形再循環」の場合、触媒担体は垂直面において楕円形経路上を移動し、「トロイダル形再循環」の場合、トロイダル形経路上を移動する、すなわち、触媒担体は、垂直楕円断面を有するトーラスの表面に沿ってらせん状に移動する。
【0024】
一実施形態では、Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布前に、酢酸塩を触媒担体に塗布する。これは、好ましくは、酢酸塩を含む溶液を用いて行われる。当該溶液を製造するために使用される溶媒は、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水である。使用される酢酸塩は、典型的には、アルカリ金属酢酸塩、好ましくは酢酸カリウムである。
【0025】
酢酸塩を含む溶液の塗布は、従来技術において公知の任意の方法、例えば湿式化学含浸、細孔充填法(初期湿潤)、及び任意のタイプのスプレー含浸によって行うことができる。
【0026】
酢酸塩の塗布は、好ましくは、本発明による製造方法の工程a)の前に実施される。
【0027】
酢酸塩がアルカリ金属酢酸塩の形である場合、アルカリ金属の添加量は、酢酸塩アニオンに対する適切な化学量論比にある。
【0028】
酢酸塩含有溶液の塗布後、大気中、希薄空気中または不活性ガス中で、70℃~120℃、より好ましくは80℃~110℃、最も好ましくは90℃~100℃の温度範囲で乾燥を行うことが好ましい。当該酢酸塩含有担体の乾燥時間は、好ましくは10~100分、より好ましくは30~60分の範囲である。
【0029】
当該酢酸塩含有担体の乾燥は、従来の乾燥装置内でも、コーティング装置内でも実施することができる。乾燥をコーティング装置内で実施する場合、担体がその中で定常状態にあるように、すなわち、それらが動作するように行われることが好ましい。移動床または流動床装置を使用する場合、担体は、好ましくは、乾燥中、移動床または流動床内において動作しない。
【0030】
工程(b)において、溶解Pd前駆体化合物及び溶解Au前駆体化合物を、再循環動作する触媒担体床に塗布する。
【0031】
好ましいPd前駆体化合物の例は、水溶性Pd塩である。特に好ましいのは、Pd(NH3)4(HCO3)2、Pd(NH3)4(HPO4)、シュウ酸アンモニウムPd、シュウ酸Pd、Pd(シュウ酸K2)2、Pd(II)トリフルオロ酢酸塩、Pd(NH3)4(OH)2、Pd(NO3)2、H2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH3)2、Pd(NH3)4(NO3)2、H2Pd(NO2)4、Na2Pd(NO2)4、Pd(OAc)2及び新たに沈殿したPd(OH)NO2からなる群から選択されるPd前駆物質化合物である。
【0032】
新たに沈殿したPd(OH)2が使用される場合、好ましくは以下のように製造される:A0.1重量%~40重量%の水溶液は、好ましくは、テトラクロロパラジウムから製造される。次いで、好ましくは、褐色の固形物、すなわちPd(OH)2が沈殿するまで、塩基をこの当該水溶液に添加する。触媒担体に塗布する溶液を製造するために、新たに沈殿したPd(OH)2を単離し、洗浄し、そしてアルカリ水溶液に溶解する。
【0033】
当該化合物Pd(NH3)4(OH)2は、好ましくは、次のように製造される:前駆体化合物、例えば、Na2PdCl4は上記のように、水酸化カリウムで沈殿し、水酸化パラジウムおよび沈殿物を得て、ろ過及び洗浄後、アンモニア水に溶解して、Pd(NH3)4(OH)2を得る。
【0034】
本発明による製造方法は、亜硝酸Pd化合物を使用することもできる。好ましい亜硝酸Pd前駆体化合物は、例えば、Pd(OAc)2をNaNO2またはKNO2溶液に溶解することによって得られる。
【0035】
好ましいAu前駆体化合物の例は、水溶性Au塩である。本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、Au前駆物質化合物は、KAuO2、NaAuO2、CsAuO2、NMe4AuO2、KAuCl4、(NH4)AuCl4、HAuCl4、KAu(NO2)4、NaAu(NO2)4、CsAu(NO2)4、KAu(OAc)3(OH)、NaAu(OAc)3(OH)、CsAu(OAc)3(OH)、HAu(NO3)4及びAu(OAc)3からなる群から選択される。金の酸性溶液から酸化物/水酸化物を沈殿させ、沈殿物を洗浄・単離し、酢酸やKOH中にそれを溶かして、都度新たなAu(OAc)3やKAuO2を作るのが良い。
【0036】
本発明の明細書において、溶解Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物は、溶媒中、好ましくは水、水性塩基または水性酸中に、溶解した形態で存在する化合物であると解する。
【0037】
本発明の明細書において、塩は、それらが水、水性塩基または水性酸に十分に可溶性である場合、水溶性として記載される。
【0038】
Pd前駆体化合物及びAu前駆体化合物は、触媒毒を含まないように選択されることが好ましい。貴金属化合物の塗布後、触媒成形体は、単に乾燥されることが好ましく、好ましくは、塗布が行われたのと同じ流動床コーティング装置において乾燥される。当該前駆体化合物は、特に好ましくは、実質的に塩化物を含まない。
【0039】
実質的に塩化物を含まないとは、化合物の分子式が塩化物を含有しないことを意味するものであるが、これは化合物が、例えば、製造の結果として不可避の塩化物不純物を含有する可能性を排除するものではない。実質的に塩化物を含まないPd及びAu前駆体化合物中の塩化物の含有量は、前駆体化合物中のPd及びAuの重量%当たり最大で125ppmである。
【0040】
Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布は、溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物の順次、すなわち連続的、又は同時の、再循環動作する触媒担体床上へのスプレー塗布によって実施される。
【0041】
この塗布は、Pd含有前駆体化合物溶液及びAu含有前駆体化合物溶液を、同時に塗布することによって行うことができる。また、Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の溶液の塗布によっても行うことができる。
【0042】
また、順次塗布することによって行ってもよく、最初の第一の工程においてPd含有前駆体化合物溶液を、第二の工程においてAu含有前駆体化合物溶液を用いて行う、又は、第一の工程においてAu含有前駆体化合物溶液を、第二の工程においてPd含有前駆体化合物溶液を用いて行う。
【0043】
一実施形態では、順次塗布する場合、第二の工程で塗布される溶液は、Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の両方を含む。
【0044】
シェル触媒がシェル中に、一種又は複数の活性金属及び促進金属を含むなど、複数の異なる触媒活性種を含む場合、触媒担体成形体に、本発明による方法を必要回数施しても良い。
【0045】
あるいは、本発明による製造方法は、所望の異なる触媒活性種又はその前駆体を含む混合溶液を用いて行うこともできる。さらに、本発明による製造方法において、触媒活性種又はその前駆体の各溶液を同時に触媒担体へ噴霧することができる。
【0046】
本発明による製造方法で使用されるプロセスガスは、典型的には空気である。さらなる実施形態において、不活性ガス、例えば、窒素、メタン、短鎖飽和炭化水素、希ガス、好ましくはヘリウム、ネオンもしくはアルゴン、又はハロゲン化炭化水素を使用することが可能であり、又はこれらの二つ以上の混合物を使用することも可能である。
【0047】
本発明による第1の製造方法の工程(a)及び工程b)における触媒担体の加熱は、形成される貴金属シェルの幅を制御することを可能にする。なぜなら、Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の組み合わせて塗布する場合には、温度に依存して、工程b)において塗布される少なくとも1種の溶液、好ましくは水溶液のより速い蒸発が起こるため、又は、Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の連続塗布の場合には、工程b)において最初に塗布される溶液、好ましくは水溶液のより速い蒸発が起こるため、貴金属の担体内部への拡散が抑えられるからである。
【0048】
例えば、比較的高温では、比較的乾燥速度は高く、触媒担体に接触している溶液はすぐに乾燥し、その結果、触媒担体に塗布された溶液は担体中に深く浸透しない。したがって、比較的高温では、比較的薄く活性種が多く含まれるシェルを得ることが可能である。
【0049】
驚くべきことに、本発明による第1の製造方法において、工程(a)における触媒担体の加熱を、塗布温度よりも、又は、順次塗布する場合は工程(b)における最初の塗布の温度よりも、5℃~30℃、好ましくは7℃~25℃、最も好ましくは10℃~20℃高くすることは、Pdの分布を有利に制御することが可能であることが見出され、Pd濃度の最大値が触媒成形体の表面から0~40マイクロメートルの範囲内にあり、パラジウムはシェル厚さ30~200μmの領域に存在し、濃度分布の半値幅が10~70μmである。
【0050】
工程(a)/(b)で設定される触媒担体の温度は、排気温度/床温度を測定し、任意で追加制御を行うことによって制御される。
【0051】
工程(a)において設定される温度は、60℃~120℃、好ましくは65℃~110℃、特に好ましくは70℃~100℃の範囲である。
【0052】
塗布温度、又は、連続塗布の場合は工程(b)において設定される最初の塗布温度は、55℃~115℃の範囲、好ましくは55℃~110℃の範囲、より好ましくは60℃~100℃の範囲、特に好ましくは65℃~90℃の範囲である。
【0053】
順次塗布する場合、二度目の塗布は、最初の塗布と同じ温度で実施することができる。一実施形態では、2度目の塗布の間の温度は、最初の塗布の間よりも5℃~30℃、好ましくは5℃~20℃、最も好ましくは5℃~10℃高い。
【0054】
本発明による第2の製造方法の工程(a)における水の噴霧は、形成される貴金属シェルの幅が同程度になるよう制御することができる。なぜなら、触媒担体との接触中に水が蒸発し、その結果、コーティング装置の温度制御によって再補正される触媒担体の一時的な温度低下をもたらし、続いて行う金属含有水溶液の塗布は、所望の温度で行うことができる。従って、工程(b)において塗布される水溶液をより速く蒸発させることができ、又は、連続塗布の場合、最初に塗布される溶液をより速く蒸発させることができ、担体内部への貴金属の拡散を低減することができる。
【0055】
例えば、比較的高温では、比較的乾燥速度は高く、触媒担体に接触している溶液はすぐに乾燥し、その結果、触媒担体に塗布された溶液は担体中に深く浸透しない。したがって、比較的高温では、比較的薄く活性種が多く含まれるシェルを得ることが可能である。
【0056】
工程(a)/(b)で設定される触媒担体の温度は、排気温度/床温度を測定し、任意で追加制御を行うことによって制御される。
【0057】
工程(a)において設定される温度は、55℃~110℃、好ましくは60℃~100℃、特に好ましくは65℃~90℃の範囲である。
【0058】
塗布温度、又は、連続塗布の場合は工程(b)において設定される最初の塗布温度は、工程(a)と同じであり、55℃~110℃、好ましくは60℃~100℃、特に好ましくは65℃~90℃の範囲である。
【0059】
順次塗布する場合、二度目の塗布は、最初の塗布と同じ温度で行うことができる。一実施形態では、2度目の塗布の間の温度は、5℃~30℃、好ましくは5℃~20℃、最も好ましくは5℃~10℃高い。
【0060】
本発明による製造方法では、溶液をスプレーした触媒担体の乾燥は、好ましくはプロセスガスを用いて連続的に実施される。
【0061】
本発明による製造方法の一実施形態において、触媒担体は、工程(b)の後に、触媒担体上に触媒活性種又はその前駆体を固定する固定工程に供される。適切な手段としては、貴金属化合物を担持した触媒担体に苛性アルカリ液をスプレーする、又は、触媒担体を苛性アルカリ液含有溶液に浸漬することが挙げられる。
【0062】
続いて、触媒担体から過剰な苛性アルカリ液を除去する水処理を行う。この工程は、塗布されたPd又は任意のAuの前駆体化合物が、特にVAMの製造において、対応するPdまたはAu塩化物のような触媒毒として作用する成分を含む時に、特に適している。
【0063】
好ましい実施形態において、工程(b)の後に得られた触媒担体を、300℃~600℃の範囲の温度で、特に1時間~6時間、熱処理して、前駆体化合物を対応する水酸化物化合物/酸化物に変換する。さらなる実施形態において、工程(b)の後に得られる触媒担体を、80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の範囲の温度で乾燥させる。
【0064】
さらなる実施形態において、工程(b)の後に得られた触媒担体を、固定工程に供さず、80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の範囲の温度で乾燥させる。
【0065】
工程(b)の後、かつ、工程(c)における還元前に、300℃~600℃の範囲の乾燥も熱処理も行わないことが特に好ましい。
【0066】
一実施形態では、工程(b)の後に、工程(c)を行い、工程(c)は、工程(b)の後に得られた触媒成形体を、非酸化雰囲気中で、熱処理して、前駆体化合物の金属成分を元素金属へと還元することを含む。
【0067】
工程(c)における還元は、流動床コーティング装置自体において、又は別個の還元反応器において実施することができる。還元を流動床コーティング装置中で実施する場合、典型的には、2体積%~5体積%の水素と窒素との混合物を用いて、70℃~150℃の範囲の温度で、例えば30分~5時間にわたって行う。
【0068】
別個の還元反応器中で実施される場合、典型的には、窒素中2体積%~5体積%の水素の混合物、例えば、フォーミングガスを用いて、好ましくは70~500℃の範囲の温度で、30分~5時間にわたって行う。
【0069】
好適なさらなる還元剤としては、エチレン、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール及び炭化水素が挙げられ、ここで還元剤はまた、不活性ガス、例えば、二酸化炭素、窒素またはアルゴンで希釈してもよい。不活性ガスで希釈した還元剤を用いることが好ましい。水素と窒素又はアルゴンとの混合物を使用することが好ましく、水素含有量は1体積%~15体積%であることが好ましい。
【0070】
さらなる実施形態では、純粋な窒素雰囲気中での貴金属の還元を、130℃~200℃の範囲、好ましくは140℃~170℃の範囲の温度で行うことができる。
【0071】
さらなる実施形態において、貴金属の還元は、液相中で、好ましくは還元剤であるヒドラジン、ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸、H2O2、次亜リン酸または次亜リン酸ナトリウムを用いて行うこともできる。
【0072】
本発明による製造方法で使用される触媒担体は、様々な形状、例えば錠剤、円筒、リング、不規則なペレット又は球体である。触媒担体は、好ましくは球状である。その幾何学的形状は、再循環動作において担体の軸を中心とした画一的な回転を可能とし、したがって、触媒活性種溶液を触媒担体に均一に含浸させることができる。本発明の製造方法で使用される触媒担体は、粉末状材料ではない。
【0073】
球状触媒担体は、1~10mm、好ましくは3~9mm、特に好ましくは3~8mmの範囲の算術直径を有する。本出願の明細書において、用語「球状」は、極から極への軸に沿った直径が、対応する赤道軸に沿った直径よりも小さい楕円体を含むと解する。極から極への軸に沿った直径と赤道軸に沿った直径との比は、0.9~1.0の範囲である。これらの概ね球状体の算術直径は、極から極への直径を用いて決定される。
【0074】
触媒担体は、典型的には、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ゼオライト、層状ケイ酸塩またはそれらの混合物の群からの化合物を含む。触媒担体は、Si-Al混合酸化物、特に層状ケイ酸塩の形のSi-Al混合酸化物、好ましくは焼成酸処理ベントナイトの形の層状ケイ酸塩を含むことがが好ましい。
【0075】
これらの化合物又は混合物の割合は、典型的には、強熱減量後の触媒担体の重量に基づいて、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である。特に好ましい実施形態において、触媒担体は、焼成酸処理ベントナイトを、強熱減量後の触媒担体の重量に基づいて、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の割合で含む。
【0076】
文献中では“フィロシリケート”と同義語としても用いられる用語“天然層状ケイ酸塩”は、SiO4の4面体であり、天然原料から由来する、非処理または処理されたケイ酸塩鉱物を意味し、一般式[Si2O5]2-の層において、SiO4四面体が相互結合する。
【0077】
これらの四面体層は、いわゆる八面体層と交互に並んでおり、カチオン、特にAlとMgは、OHまたはOに八面体状に取り囲まれている。例えば、二層フィロシリケートと三層フィロシリケートとは、区別されている。本発明の明細書において、好ましい層状ケイ酸塩は、粘土鉱物、特にカオリナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、マイカ、バーミキュライト及びスメクタイトが挙げられ、スメクタイト及び特にモンモリロナイトが特に好ましい。「層状ケイ酸塩」という用語の定義は、例えば、「LehrbuchderanorganischenChemie」、HollemannWiberg,deGruyter,deedition,2007(ISBN978-3-11-017770-1)、または「フィロシリケート」という用語の下の「RoemppLexikonChemie」第10版、GeorgThiemeVerlagにおいて見られる。
【0078】
使用する前に、担体材料である天然フィロシリケートへの典型的な処理は、例えば、酸による処理及び/又は焼成が挙げられる。本発明において、天然の、特に好ましい層状ケイ酸塩は、ベントナイトである。ベントナイトは、厳密な意味では、天然の層状ケイ酸塩ではなく、むしろ層状ケイ酸塩を含有する粘土鉱物を主とする混合物である。
【0079】
天然層状ケイ酸塩がベントナイトである場合、天然層状ケイ酸塩は、焼成酸処理ベントナイトの形で、またはその成分として触媒担体中に存在するものと解する。
【0080】
成形体の形態で、天然層状ケイ酸塩をベースとする、特に酸処理焼成ベントナイトをベースとする触媒担体は、例えば、次のように製造することができる。酸処理(未焼成)ベントナイト及び水含有混合物を、当業者によく知られている装置、例えば押出機または錠剤プレスを使用して圧縮により成形し、成形体を得て、続いて未硬化の成形体を焼成して安定した成形体を得る。
【0081】
触媒担体の比表面積は、特に、使用される(未加工の)ベントナイトの品質、使用されるベントナイトの酸処理プロセス、すなわち、例えばベントナイトの性質及び量、及び使用される無機酸の濃度、酸処理期間及び温度、そして、プレス圧力、焼成時間、温度及び焼成雰囲気に依存する。
【0082】
酸処理ベントナイトは、ベントナイトを強酸、例えば硫酸、リン酸又は塩酸で処理することによって得ることができる。本発明の明細書においても適用されるベントナイトという用語の定義は、Roempp,Lexikon Chemie,10th edn.,Georg Thieme Verlagにおいて明記されている。本発明において、特に好ましいベントナイトは、主材料としてモンモリロナイトを含有する天然アルミニウム含有層状ケイ酸塩である。ベントナイトは、通常、酸処理後に水で洗浄し、乾燥させ、粉砕される。
【0083】
触媒担体のBET表面積は、10~600m2/g、好ましくは20~400m2/g、特に好ましくは80~170m2/gである。BET表面積は、DIN66132に従って、窒素吸着による1点法によって決定される。
【0084】
一実施形態では、前駆体化合物でコーティングしない触媒担体の全細孔容積は、DIN66133(Hgポロシメトリー)に従って測定して、少なくとも0.1ml/g、好ましくは少なくとも0.18ml/g、より好ましくは少なくとも0.4ml/gである。さらなる実施形態では、全細孔容積は、0.1ml/g~0.8ml/gの範囲、好ましくは0.18ml/g~0.6ml/gの範囲、特に好ましくは0.35~0.55ml/gの範囲である。
【0085】
本発明の製造方法で使用される触媒担体は、少なくとも20N、好ましくは少なくとも30m、特に好ましくは少なくとも40N、最も好ましくは少なくとも50Nの硬度を有する。
【0086】
本発明に係る触媒におけるPdの割合は、乾燥減量後の貴金属を含む還元された触媒成形体の重量に基づいて、0.2重量%~2.0重量%の範囲、好ましくは0.4重量%~1.75重量%の範囲、特に好ましくは0.7重量%~1.5重量%の範囲である。
【0087】
本発明に係る触媒におけるAuの割合は、還元後かつ乾燥減量後の触媒成形体の総重量に基づいて、0.1重量%~1.2重量%の範囲、好ましくは0.2重量%~1.0重量%の範囲、最も好ましくは0.3重量%~0.8重量%の範囲である。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明に係る触媒成形体のAu/Pd原子比は、0.01~1.2の範囲、好ましくは0.05~1.0の範囲、より好ましくは0.1~0.8の範囲、特に好ましくは0.15~0.6の範囲である。
【0089】
本発明のシェル触媒は、好ましくは促進剤としてアルカリ金属化合物、好ましくはカリウム、ナトリウム、セシウムまたはルビジウムの化合物、特に好ましくはカリウム化合物を含有する。好適かつ特に好ましいカリウム化合物は、酢酸カリウムKOAc、炭酸カリウムK2CO3、炭酸水素カリウムKHCO3及び水酸化カリウムKOHを含み、好ましくは酢酸カリウムKOAcを含む。
【0090】
当該カリウム化合物は、金属成分のPd及びAu金属への還元の前又は後のいずれかに、触媒担体/触媒成形体に塗布できる。
【0091】
好ましい実施形態において、当該カリウム化合物は、貴金属化合物の塗布前に、特に好ましくは工程(a)の前に塗布される。
【0092】
この場合には、前駆体化合物の塗布、固定又は還元のような後続の工程において、熱処理は、カリウム化合物がその酸化物に分解されないか又はわずかしか分解されない場合にのみ行われるよう、注意しなければならない。なぜなら、カリウム酸化物はVAM反応の反応条件下では、わずかにしか酢酸カリウムに変換されないからである。
【0093】
触媒担体/触媒成形体は、200℃未満の温度にのみ曝露されることが好ましい。
【0094】
本発明に係る触媒成形体が、アルカリ金属酢酸塩、好ましくは酢酸カリウムを含む場合、触媒床におけるアルカリ金属酢酸塩の量は、0.1~0.7mol/l、好ましくは0.3~0.5mol/lである。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明の触媒成形体は、アルカリ金属/Pd原子比は1~16の範囲、より好ましくは2~13の範囲、特に好ましくは3~10の範囲である。好ましくは、アルカリ金属/Pd原子比が低いほど、触媒成形体の表面積は小さくなる。
【0096】
低い細孔拡散制限を考慮すると、本発明に係るPd/Au触媒のさらに好ましい実施形態において、触媒成形体は、8~50nm、好ましくは10~35nm、好ましくは11~30nmの平均細孔直径を有することができる。
【0097】
触媒成形体の酸性度は、本発明による触媒の活性に有利な効果を有することができる。本発明による触媒のさらに好ましい実施形態において、触媒成形体は、1~150μval/gの範囲、好ましくは5~130μval/gの範囲、特に好ましくは10~100μval/gの範囲の酸性度を有する。
【0098】
触媒成形体の酸性度は次のように測定する。1gの微粉砕触媒成形体を100mlの水(pHブランク値を有する)と混合し、撹拌しながら15分間抽出する。
【0099】
続いて、当混合物を、0.01nのNaOH溶液で少なくともpH7.0まで滴定する。滴定は、最初に1mlのNaOH溶液を抽出物に滴加し(1滴/秒)、次いで2分間待機し、pHを読み取り、さらに1mlのNaOHを滴加するなどの工程を含む。使用する水のブランク値を決定し、それに応じて酸性度計算を補正する。
【0100】
次いで、滴定曲線(pHに対し0.01ml NaOH)をプロットし、pH7での滴定曲線の交点を決定する。モル当量は、10-6equiv/gの担体において計算され、pH7での交点のNaOH消費から得られる。
【0101】
【0102】
シェル触媒は、好ましくは球状または実質的に球状である。球体は、1~10mm、好ましくは3~9mm、特に好ましくは3~8mmの範囲の直径を有する。
【0103】
本発明に係るPd/Au触媒の活性を高めるために、触媒成形体に、Zr、Hf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、Y及びFeからなる群から選択される金属の少なくとも1種の酸化物を、好ましくはZrO2,HfO2またはFe2O3をドープすることができる。触媒成形体の当該ドープ酸化物の割合は、触媒成形体の重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、好ましくは1.0重量%~18重量%、好ましくは4重量%~16重量%であることが好ましい。
【0104】
本発明に係る触媒成形体のさらに好ましい実施形態では、触媒成形体の吸水率は、吸水による重量増加として計算して、40%~75%、好ましくは50%~70%である。
【0105】
当吸水性は、10gの触媒成形体に脱イオン水を30分間、試料から気泡もはや出なくなるまで含浸させることによって決定される。次いで、過剰の水を排出し、含浸した試料を綿布で軽く拭いて乾かし、試料から付着水分を除去する。次いで、含水触媒成形体を秤量し、次式に従って吸収率を計算する。
(最終重量(g)-初期重量(g))×10=吸水容量(%)
【0106】
シェル触媒のBET表面積は、10~600m2/g、好ましくは20~400m2/g、特に好ましくは80~170m2/gである。BET表面積は、DIN66132に従って、窒素吸着による1点法によって決定される。
【0107】
一実施形態では、前駆体化合物でコーティングしないシェル触媒の全細孔容積は、DIN66133(Hgポロシメトリー)に従って測定して、少なくとも0.1ml/g、好ましくは少なくとも0.18ml/g、より好ましくは少なくとも0.4ml/gである。さらなる実施形態では、全細孔容積は、0.1ml/g~0.8ml/gの範囲、好ましくは0.18ml/g~0.6ml/gの範囲、特に好ましくは0.35~0.55ml/gの範囲である。
【0108】
シェル触媒は、少なくとも20N、好ましくは少なくとも30m、特に好ましくは少なくとも40N、最も好ましくは少なくとも50Nの硬度を有する。
【0109】
本発明に係る触媒成形体のさらに好ましい実施形態では、触媒成形体の全細孔容積の少なくとも80%が、好ましくは少なくとも85%が、好ましくは少なくとも90%が、メソ細孔およびマクロ細孔により形成されていてもよい。
【0110】
これは、特に比較的厚みのあるシェルの場合に、拡散制限から生じる本発明に係る触媒成形体の活性が低下することを防止する。マイクロ細孔、メソ細孔およびマクロ細孔という用語は、それぞれ、2nm未満の直径、2~50nmの範囲の直径、及び50nmを超える直径を有する細孔を意味すると解する。
【0111】
本発明はさらに、本発明に係るシェル触媒を用いたアルケニルカルボン酸エステル、特にVAM又はアリルアセテートモノマーの製造方法に関する。VAMの製造方法は、酢酸、エチレン及び酸素又は酸素含有ガスを、本発明に係る触媒成形体に通過させて行うことができる。
【0112】
これは、一般に、酢酸、エチレン及び酸素又は酸素含有ガスを含有するガスを、100℃~200℃の範囲、好ましくは120℃~200℃の範囲の温度で、1~25バールの範囲、好ましくは1~20バールの範囲の圧力で、本発明に係る触媒成形体に通過させて行い、ここで、未転化反応物を再循環させることができる。
【0113】
酸素濃度は、有利には10体積%未満に保たれる。しかしながら、窒素または二酸化炭素などの不活性ガスによる希釈も有利であり得る。二酸化炭素は、希釈に特に適しており、VAM合成の過程で少量形成され、循環ガス中に蓄積するためである。
【0114】
得られた酢酸ビニルを、例えばUS5,066,365Aに記載されている適切な方法を用いて単離する。同等のプロセスは、酢酸アリルについても公開されている。このような酢酸ビニルの製造方法において、例えば酢酸カリウムKOAcなどの触媒中に存在し得る促進剤を後添加することで、当該製造方法において触媒使用中に失われた促進剤を再供給することができることも知られている。
【0115】
これはアルケニルカルボン酸エステルの製造方法の進行中に行うこともでき、その結果、促進剤の酢酸化合物は、当製造方法に供給される酢酸及び/又は当製造方法に供給される酢酸カリウムと混合される、又は別々に計量供給される。
【0116】
ここで、複数の実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、これらは何ら限定するものではない。
【0117】
図1は、実施例の触媒1について、Pd濃度の実験データ点、及び、x
surfaceの測定後、幾何学的表面の開始点を定めたのと同じ測定方法によって定めたシグモイド関数のプロットを示す。
【0118】
図2は、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒1の曲線のプロットを示す。
【0119】
図3は、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒2の曲線のプロットを示す。
【0120】
図4は、Pd濃度の実験データ点及び適切な適合関数を用いて得られた触媒3の曲線のプロットを示す。
【0121】
図5は、適切な適合関数を用いて得られた触媒1、2及び3の曲線を示す。
【0122】
図6は、酢酸ビニルモノマーを得るための酢酸、エチレン及び酸素の反応における、触媒1及び2の異なる空間時間収率での選択率、及び、それらの傾向線のプロットを示す。
【実施例】
【0123】
測定方法
細孔容積:細孔容積は、1~2000バールの圧力範囲で、DIN66133に従って水銀ポロシメトリー方法によって測定した。
BET表面積:BET表面積は、DIN66135に従って測定した。マイクロ細孔容積及びマイクロ細孔表面積を測定するために、液体窒素の温度(77K)における窒素の吸着等温線を、MicromeriticsASAP2020M機器を用いて測定した。
【0124】
担体中の元素分布:触媒成形体中のPd及びAuの分布は、担体を半分にして球状の触媒成形体の断面を作ることによって決定した。これにより、電子顕微鏡を用いて、EDX分光法(energydispersiveX-raydiffraction)としても知られるEDX分光法(EnergyDispersiveX-ray)を用いて、金属の空間分布を決定することが可能になった。Pdを感知する測定ヘッドを、試料上横断させて、触媒成形体の外表面から中央に向かう線に沿ってそのそれぞれの分布を決定することを可能にした。
【0125】
測定は、BrukerXFlash4010検出器を有するQuantaxEDXユニットに連結されたLEO1530電子顕微鏡を用いて行った。測定条件は以下の通りであった。
加速電圧(EHT):20kV
開口部:120μm
使用距離:約16mm(SEM-EDX形状に最適)
SEM検出器:SE2
倍率:低(例:55x)
測定時間:10~15分
【0126】
測定の開始点は、試料の外縁から少なくとも80μmに設定し、そこから球状体の中心に向かって測定を行った。測定線の長さは1600μmであった。
【0127】
様々な触媒形状の測定は、一般に、測定の開始点が試料の幾何学的表面の開始点から少なくとも80μmに設定され、そこから試料ヘッドが試料の元の幾何学的表面へ向かって垂直に移動し、さらに試料上を移動するように実施される。
【0128】
これにより、Pdのシェル厚さを決定することが可能になった。シェル厚さの内側端部は、強度(intensity)が最初に制動輻射の合計よりも小さく、その標準偏差の3倍の値を有する点として定めた。
【0129】
測定された触媒成形体の幾何学的表面の開始は、様々な点xにおける測定線に沿った触媒成形体の内側及び外側の制動放射の強度(intensity)に次の関数を当てはめることによって決定された。
【0130】
【0131】
rateは、変曲点における勾配の尺度であり、baseは触媒成形体の外側の制動輻射の強度Iに相当し、maxは、触媒成形体の内側の貴金属を含まない領域、すなわち貴金属シェル領域外における制動放射の強度Iに相当する。
【0132】
このシグモイド関数の変曲点x0は、シェルの外端を決め、その後の測定線に沿った貴金属の濃度分布を定めるために、x0値を測定値xから差し引き、すべての一連の測定が外側面の点xsurface=0μmから始まるようにした。
【0133】
図1は、実施例の触媒1について、測定した強度(intensity)、及び、x
surfaceの測定後、幾何学的表面の開始を定めたのと同じ方法によって定めたシグモイド関数のグラフを示す。
【0134】
これは、十分な数の触媒成形体を個々に測定し、それらの外表面を定めることを確実にする。
【0135】
線に沿ったパラジウム貴金属の濃度分布は、個々の測定値からx点における強度の算術平均を計算し、得られた測定値から、下記のガウス関数を用いて貴金属の濃度分布のフィッティングを行うことによって決定した。
【0136】
【0137】
xmax=ピーク最大値の位置
A=ピーク高さを決定
max=濃度分布の非対称性を決定
rate=濃度分布の非対称性を決定
【0138】
Pd濃度分布の半値幅の各値は、次のようにも求められる。ここでは、半値幅は、最大強度の半値の測定線に沿った二点の差である。半値幅の左側の値は、したがって、測定線上最大強度の半分の値を有する最初の点と最大強度値を有する点との間の差であって、半値幅の右側の値は、最大強度値を有する点と、測定線上最大強度の半分の値を有する二番目の点との間の差である。
【0139】
元素濃度の測定:元素の濃度は、銅キュペレーションによるドキマスティック分解(dokimastic digestion)とその後のICP-AES分析によって求め、120°Cで2時間乾燥した後の触媒成形体に基づいて計算した。
【0140】
硬度の測定:触媒成形体の硬度は、Dr.SchleunigerPharmatronAG8Mタブレット硬度試験機を用いた、99個の触媒成形体の平均値とした。測定前に触媒成形体を130℃で2時間乾燥させた。機器の設定は以下の通りであった。
硬度:N
触媒成形体までの距離:5.00mm
遅延時間:0.80秒
フィードタイプ:6D
速度:0.60mm/秒
【0141】
以下の実施例は本発明を説明するためのものである。
【0142】
実施例1:触媒1
100gのベントナイト含有触媒担体KA-160(Clariantから入手可能)を秤量し、細孔充填法(滴下湿潤法:incipient wetness)に従って、39.3gの2モルKOAc溶液と18.1gの脱イオン水の混合物に含浸させた。
【0143】
流動床乾燥機において90℃で35分間静置乾燥した後、当該混合物を室温まで冷却し、コーティング装置InnojetIAC025に移した。プロセスガスを使用して、KOAc含浸担体を流動床動作させた。次いで、36.8gの脱イオン水を、4g/分のスプレー速度で、当該触媒担体上にスプレーした。プロセスエアーは、温度制御し70℃とした。
【0144】
続いて、7.0gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)を脱イオン水で希釈して、50gのコーティング溶液とし、第1のコーティング工程において、4g/分のスプレー速度及び70℃のプロセスエアー温度で、コーティング装置内にて、触媒担体に塗布した。
【0145】
続いて、第2のコーティング工程において、2.7gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)及び38.9gの水酸化テトラアミンパラジウム溶液(3.4重量%Pd)を脱イオン水で希釈して、80gのコーティング溶液とし、4g/分のスプレー速度及び70℃のプロセスエアー温度で、触媒担体に塗布した。
【0146】
当該触媒担体を、流動床内に保持した。流動床乾燥機内(90℃/35分)でさらに静置乾燥した後、当該触媒成形体を、管状炉内において、フォーミングガス(N2中2%H2)を用いて、100℃で45分間静的還元した。
【0147】
当該触媒成形体の元素分析により、割合は次の通りであった
Pd:1.3重量%
Au:0.46重量%
【0148】
貴金属分布は、BrukerAXS社製のエネルギー分散分光計を備えた走査型電子顕微鏡LEO1530を用いて測定した。シェルの厚みにわたって貴金属濃度を測定するために、触媒成形体を切断し、アルミニウム試料ホルダーに接着し、続いて炭素蒸着した。
【0149】
使用した検出器は、マンガンK-アルファ線に対して125eVのエネルギー分解能を有する窒素を含まないシリコンドリフトチャンバ検出器、XFlash(登録商標)410、であった。測定には以下のパラメータを用いた。
【0150】
スキャン解像度:500ドット
データ点間隔:1.8μm
倍率:200倍
ビーム電圧:20kV
ビーム電流:20nA
入力パルス速度:50000パルス/秒
ラインスキャンの測定時間:200秒
【0151】
上記のように製造されたシェル触媒の10個の球状体のシェル厚さを測定した。
【0152】
Pd濃度の最大値はシェル触媒の幾何学的表面より23マイクロメートル下であった。Pdのシェル厚さは130マイクロメートルであり、Auのシェル厚さは93マイクロメートルであった。
【0153】
Pdの半値幅は、60マイクロメートルであって、半値幅の左側の値は、16マイクロメートルであって、半値幅の右側の値は、44マイクロメートルであった。半値幅の左側の値の、半値幅の右側の値に対する比は、0.37であった。Pd濃度曲線は、
図2に示す。
【0154】
実施例2:触媒2
100gのベントナイト含有触媒担体材料KA-160(Clariantから入手可能)を秤量し、細孔充填法(初期湿潤度)に従って、39.3gの2モルKOAc溶液及び18.1gの脱イオン水の混合物を含浸させた。流動床乾燥機中で90℃で35分間静的乾燥した後、混合物を室温に冷却し、コーティング装置InnojetIAC025に移した。
【0155】
プロセスガスを使用して、KOAc含浸担体を流動床動作させた。プロセスエアーを90℃の温度に温度制御し、金酸セシウム水溶液のスプレー塗布を開始する前に2分間保持した。7.0gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)を脱イオン水で希釈して、50gのコーティング溶液を作り、第1のコーティング工程において、コーティング装置中にて、当該溶液を4g/分の噴霧速度で触媒担体に塗布し、スプレー操作の開始により、プロセスエアーの温度を90℃から15℃下げ、プロセスエアーをさらに積極的に70℃に下げ、次いでこの温度に維持した。
【0156】
続いて、第2のコーティング工程において、2.4gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)及び38.9gの水酸化テトラアミンパラジウム溶液(3.4重量%Pd)の混合物を、脱イオン水で希釈して80gのコーティング溶液を得て、4g/分の噴霧速度及び70℃のプロセスエアー温度で触媒担体に塗布した。
【0157】
当該触媒担体を、流動床内に保持した。流動床乾燥機内(90℃/35分)でさらに静置乾燥した後、当該触媒成形体を、管状炉内において、フォーミングガス(N2中2%H2)を用いて、100℃で45分間静的還元した。
【0158】
触媒成形体の元素分析は、以下の割合を示した。
Pd: 1.3重量%
Au: 0.43重量%
【0159】
貴金属分布を、実施例1と同様に測定した。Pd濃度の最大値は、シェル触媒の幾何学的巨視的表面より30マイクロメートル下であった。Pdのシェル厚は、129マイクロメートルであった。Pdの半値幅は、50マイクロメートルであった。半値幅の左側の値は、16マイクロメートルであって、半値幅の右側の値は34マイクロメートルであった。半値幅の左側の値の、半値幅の右側の値に対する比は、0.45であった。Pd濃度曲線は、
図3に示す。
【0160】
比較例1:触媒3
100gのベントナイト含有担体材料KA-160(Clariantから入手可能)を秤量し、細孔充填法(初期湿潤度)に従って、39.3gの2モルKOAc溶液及び18.1gの脱イオン水の混合物を含浸させた。
【0161】
流動床乾燥機において90℃で35分間静置乾燥した後、当該混合物を室温まで冷却し、コーティング装置InnojetIAC025に移した。プロセスガスを使用して、KOAc含浸担体を流動床動作させ、70℃に加熱し、2分間維持した後、ラウリン酸セシウム水溶液をスプレー塗布した。
【0162】
当該スプレー塗布は、7.0gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)を脱イオン水で希釈して50gのコーティング溶液を得て、当該溶液を、第1のコーティング工程において、コーティング装置中で4g/分の噴霧速度で触媒担体に塗布した。プロセスエアーの温度は15℃低下したが、71℃まで上昇させて当温度を維持した。
【0163】
続いて、第2のコーティング工程において、2.4gの金酸セシウム水溶液(4.7重量%Au)及び38.9gの水酸化テトラアミンパラジウム溶液(3.4重量%Pd)の混合物を脱イオン水で希釈して、80gのコーティング溶液を得て、4g/分のスプレー速度及び70℃のプロセスエアー温度で触媒担体に塗布した。
【0164】
触媒担体は、流動床中に保持され続ける。流動床乾燥機(90°C/35分)中でのさらなる静的乾燥の後、触媒を、管状炉内において、フォーミングガス(N2中2%H2)を用いて、100℃で45分間静的還元した。
【0165】
触媒の元素分析は、以下の割合を示した。
Pd: 1.3重量%
Au: 0.43重量%
【0166】
貴金属分布の測定は実施例1と同様に行った。Pd濃度の最大値はシェル触媒の表面の43マイクロメートル下であった。Pdのシェル厚は、183マイクロメートルであった。Pdの半値幅は、73マイクロメートルであった。半値幅の左側の値は、27マイクロメートルであって、半値幅の右側の値は46マイクロメートルであった。半値幅の左側の値の、半値幅の右側の値に対する比は、0.60であった。Pd濃度曲線は、
図4に示す。
【0167】
実施例3:反応器試験
触媒1、2及び3について、酢酸ビニルモノマー合成における活性、選択率及び収率に関する試験結果
【0168】
触媒試験のために、それぞれ2.9gの触媒を、5.7ml容積の反応器に充填し、次いで不活性ガス下で138℃に加熱した。この温度で、不活性ガス流を、酢酸、エチレン及び酸素流に置き換え、反応器を通過させた。一定の間隔で、反応器の下流で、排出流のサンプルを取り出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0169】
138℃で24時間の反応時間後、反応器温度を140℃に上昇させ、さらに12時間維持した。その後、さらに142℃、144℃、146℃に昇温させ、最終的には140℃へ戻した。それぞれの反応時間はそれぞれ12時間であり、圧力は5~6bargであった。使用した成分は、エチレン45%、O26%、CO20.9%、メタン9%、酢酸15.5%、残りN2であった。
【0170】
表1及び
図6は、O
2転化率に応じて、触媒1、2及び3の選択率/活性を示す。本発明に従って製造された触媒1及び2は、明らかに比較触媒3よりもはるかに高い活性、選択率(同じ活性レベルで)及び収率を有する。これは、空間時間収率に応じたVAMの選択率のプロットを示す
図6においても明らかである。
【0171】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル触媒中のパラジウムの濃度プロファイルを有し、当該濃度プロファイルは、非対称ガウス分布に一致し、パラジウム濃度の最大値は、触媒成形体の幾何学的巨視的表面から0~40マイクロメートルの範囲内にあり、パラジウムはシェル厚さ30~200μmの領域に存在し、濃度分布の半値幅が10~70μmであり、かつ、半値幅の左側の値の半値幅の右側の値に対する比が、0.05~0.55であることを特徴とする、Pd及びAuを含むシェル触媒。
【請求項2】
Pd濃度の最大値は、シェル触媒の表面から5~40マイクロメートルの範囲にある、請求項1に記載のシェル触媒。
【請求項3】
Pdを含むシェルは、30~200マイクロメートルの厚さを有する、、請求項1または2に記載のシェル触媒。
【請求項4】
アルカリ金属酢酸塩をさらに含む、請求項1に記載のシェル触媒。
【請求項5】
Pdは、0.2重量%~2.0重量%の範囲であり、Auの割合は、0.1重量%~1.2重量%の範囲であり、いずれの場合も還元及び乾燥減量後の触媒成形体の総重量に基づく、請求項1に記載のシェル触媒。
【請求項6】
(a)触媒担体床を再循環動作させる工程、ここで当該床を、再循環動作させる前または後に、60℃~120℃の温度に加熱する;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的に又は同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃、低く、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)における温度よりも5℃~30℃低い、
を含む、請求項1に記載のPd及びAuを含むシェル触媒の製造方法。
【請求項7】
工程(b)の後に、工程(b)で得られた触媒担体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、当該前駆体化合物の金属成分を元素金属に還元する工程(c)を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
塗布温度、又は、連続塗布の場合は工程(b)における最初の塗布温度は、55℃~115℃の範囲である、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(b)において、第一の工程において、溶解Au含有前駆体化合物を塗布し、第二の工程において、溶解Pd含有前駆体化合物を塗布する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布前に、酢酸塩を触媒担体に塗布する、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
(a)触媒担体床を再循環動作させて、55℃~110℃の範囲の温度で、当該床をスプレーによる噴霧水と接触させる工程;
(b)溶解Pd含有前駆体化合物及び溶解Au含有前駆体化合物を、連続的にまたは同時に、再循環動作する当該触媒担体床へ、スプレーで塗布する工程、ここで、同時に塗布する場合は、温度は工程(a)と同じであり、連続的に塗布する場合は、最初の塗布の温度は、工程(a)と同じである、
を含む、請求項1に記載のPd及びAuを含むシェル触媒の製造方法。
【請求項12】
工程(b)の後に、工程(b)で得られた触媒担体を非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、当該前駆体化合物の金属成分を元素金属に還元する工程(c)を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程(b)において、第一の工程において、溶解Au含有前駆体化合物を塗布し、第二の工程において、溶解Pd含有前駆体化合物を塗布する、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
Pd含有前駆体化合物及びAu含有前駆体化合物の塗布前に、酢酸塩を触媒担体に塗布する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のシェル触媒を用いた、アルケニルカルボン酸エステルの製造方法。
【国際調査報告】