(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ニードルコークスの生産プロセス
(51)【国際特許分類】
C10B 53/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
C10B53/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537514
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2022062863
(87)【国際公開番号】W WO2023126863
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202221000234
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511269587
【氏名又は名称】リライアンス、インダストリーズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】ビシュット、ハレンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】ダス、アシット クマール
(72)【発明者】
【氏名】マンダル、シュクマール
(72)【発明者】
【氏名】ヤダヴ、アシュワニ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ウパディヤヤ、アルペシュ
(72)【発明者】
【氏名】アラヤ、プリヤンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ソラチヤ、ミトゥル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジェラ、プラヴィンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジャカサニヤ、ラケシュ
(72)【発明者】
【氏名】サンヤル、ニベディタ
(72)【発明者】
【氏名】モーダ、シャンティラル モハンラル
(72)【発明者】
【氏名】バラチャンドラン、ヴィジャイ シャンカル
(57)【要約】
【課題】発明の要約
ニードルコークスの生産プロセス
本発明はディレードコーカープラントにおけるニードルコークスの生産プロセスに関する。本発明のプロセスにより取得されるニードルコークスは熱膨張係数 (CTE) が1.2 x 10-6/℃未満である。本発明のプロセスによって良質なコークスの生産に投入する第一の原材料と第二の原材料の水素処理工程が解消される。本発明のプロセスは、ディレードコーカー コークスドラム内のCTEと硫黄分が低いニードルコークスの生産を最大化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルコークスの生産プロセスであって、前記のプロセスは以下のステップから構成される:
(i) 所定量の第一の原材料と第二の原材料を前記の分留装置内で混合しながら分留装置を加熱して第一所定温度の混合物を取得し、
(ii) 前記の混合物をディレードコーカーファーネスに移し、前記のファーネスを第二の所定温度まで加熱して加熱後のコーカー 原材料を取得し、
(iii) 前記の加熱後コーカー原材料を第三所定温度と所定圧力のコークスドラムに移し、前記の第三所定温度と前記の所定圧力に第一所定期間だけ維持してコークスと蒸留物を取得し、
(iv) 前記の蒸留物が前記のコークスドラムの上部から出て前記の分留装置に向かわせるようにして、前記のコークスを分離し、前記のコークスドラム内に分離後コークスを取得し、
(v) 前記のコークスドラム内で前記の分離後コークスを過熱蒸気で第二の所定期間処理して処理後のコークスを取得し、
(vi) 前記処理後コークスを水で冷却して前記のニードルコークスを取得する。
【請求項2】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第一の原材料は第一の清澄スラリー油(CSO-1)、第二の清澄スラリー油(CSO-2)、真空ガスオイル(VGO)からなるグループの中から選択される少なくもと一つのものである。
【請求項3】
請求項2に請求するプロセスであって、ここに、前記の第二の清澄スラリー油(CSO-2)と前記の真空ガスオイル(VGO)の質量比は4:1から10:1の範囲である。
【請求項4】
請求項2に請求するプロセスであって、ここに、前記の第二の清澄スラリー油(CSO-2)と前記の真空ガスオイル(VGO)の質量比は5.3:1である。
【請求項5】
請求項2に請求するプロセスであって、ここに、第二の清澄スラリー油(CSO-2)と記の真空ガスオイル(VGO)の質量比は9:1である。
【請求項6】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第一の清澄スラリー油(CSO-1)は以下の項目を有することを特徴とする。
・ 混合物の総質量中、硫黄分の範囲0.8質量%から1.5質量%
・ 混合物の総質量中、コンラドソン残留炭素(CCR)が3質量%から8質量%の範囲
・ 混合物の総質量のうち灰分が0.01質量%から0.15質量%の範囲、
・ 密度範囲0.5 g/cc~1.5 g/cc;
・ アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満であり、
・ 沸点範囲190℃から700℃
【請求項7】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第二清澄スラリー油(CSO-2)は以下の項目を有することを特徴とする。
・ 混合物の総質量中、硫黄分の範囲0.2質量%から0.8質量%
・ 混合物の総質量中、コンラドソン残留炭素(CCR)が8質量%から15質量%の範囲
・ 混合物の総質量中で灰分が0.01 %から to 0.1質量%の範囲であり
・ 密度範囲0.5 g/cc~1.5 g/cc;
・ アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満であり、
・ 沸点範囲245℃から690℃
【請求項8】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の真空ガスオイル (VGO)は以下の項目が特徴である。
・ 混合物の総質量中、硫黄分の範囲0.08質量%から0.15質量%
・ コンラドソン残留炭素(CCR)の範囲が混合物の総質量のうち0.05質量%から0.5質量%
・ 混合物の総質量中で灰分が0から0.15質量%の範囲であり
・ 密度範囲0.5 g/cc~1.5 g/cc;
・ アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満であり、
・ 沸点範囲280℃から600℃
【請求項9】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、前記の第一原材料は水素処理された、または一部が水素処理された、あるいは未水素処理品である。
【請求項10】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、前記の第一原材料と前記の第二原材料は水素処理されていない。
【請求項11】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第二の原材料は重質コーカーオイルガス(HCGO)、重質コーカー蒸留物、重質炭化水素流から選択する重質再利用材料流である。
【請求項12】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第二原材料は沸点が300℃から600℃の範囲である。
【請求項13】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、前記の所定量の前記の第二原材料は第一原材料の合計質量のうち25質量%から40質量%を占める。
【請求項14】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の所定量の前記の第二の原材料が第一の原材料の合計質量のうち30質量%である。
【請求項15】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の所定量の前記の第二の原材料が第一の原材料の合計質量のうち25質量%である。
【請求項16】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第一の原材料と前記の第二の原材料が150℃から250℃の温度範囲まで加熱されてから、ステップ(i)で前記分留装置内で混合する。
【請求項17】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第一の所定温度の範囲は300℃から400℃である。
【請求項18】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第一の所定温度の範囲は325℃から350℃である。
【請求項19】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第二の所定温度の範囲は400℃から600℃である。
【請求項20】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第二の所定温度の範囲は480℃から515℃である。
【請求項21】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第三の所定温度は400℃から600℃の範囲であり、前記の所定圧力が2 kg/cm
2(g)から10 kg/cm
2(g)の範囲であり、前記の第一の所定期間が15時間から50時間の範囲である。
【請求項22】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の第三の所定温度が425℃から500℃の範囲で, 前記の所定圧力が2.5 kg/cm
2(g)から6 kg/cm
2(g)の範囲であり、前記の第一の所定期間は18時間から36時間の範囲である。
【請求項23】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記の過熱蒸気は温度範囲が300℃から500℃、圧力範囲が2.5 kg/cm
2(g)から10 kg/cm
2(g)、前記の第二の所定期間が1時間から30時間の範囲である。
【請求項24】
請求項1に請求するプロセスであって、ここに、 前記のニードルコークスは熱膨張係数 (CTE)が未満1.2 x 10
-6/℃である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はニードルコークスの生産プロセスに関する。
【0002】
用語の定義
本発明で使用される以下の用語は全般的に次の定義の意味を持つものとして意図されており、文脈上異なることを意味する場合を除く。
水素処理は原油留分の水素処理を行ういくつもの異なるプロセスを指す。これらのプロセスは「水素化精製」および「水素化変換」という2つの副分類にグループ化される。「水素化精製」には、水素化脱硫、水素添加窒化処理、水素化脱酸素、水素化脱金属その他同種の処理工程が含まれる。「水素化変換」では、水素化、水素化脱芳香族化、異性化、水素化分解、および同種の処理に関する。
ニードルコークスは、黒鉛電極製造用に適した素材となるその結晶構造が重宝されている特殊な等級の石油コークスを指す。
熱膨張係数 (CTE)は、温度の変化に伴う材料の膨張または収縮の尺度である。
コンラドソン残留炭素(CCR)とは、「コンカーボン」や「CCR」として一般に知られている実験室での試験法であって石油からコークスが形成される傾向性の指標となっている。数量的にはこの試験により石油の蒸発および熱分解後に残る炭素質残留物の量を測定する。
過熱蒸気は、温度測定を行う絶対圧での気化点を超える温度に達した蒸気を指す。
ディレードコーカーファーネスとはそのプロセスが残留油分原材料を炉内で熱分解する温度まで加熱する方式のコーカーを指す。
コーカーまたはコーカーユニットとは、真空蒸留塔から得る残留油を低分子量の炭化水素ガス、ナフサ、重質ガスオイル、石油コークスに変換する石油精製処理ユニットを指す。
【背景技術】
【0003】
発明技術の背景
下記の背景情報は本発明に関するものであって、必ずしも先行技術に関するものであるとは限らない。
その針状の結晶構造にその名が由来するニードルコークスはアーク電炉要黒鉛電極の製造に使用される最高度の価値を有する石油コークスである。鉄鋼メーカーのほぼ全社が鉄鋼生産用に電気アーク炉(EAF)へ切り替えているため、EAF用黒鉛電極製造のための高品位ニードルコークスの需要も高まっている。ニードルコークスはリチウムイオン電池のアノード用合成球状黒鉛の製造にも使用される。
黒鉛電極は高温雰囲気等の過酷な条件下で使用される。このため、熱膨張係数(CTE)が低いことが望まれる。低熱膨張係数により電極は電気炉での鉄鋼生産中に生ずる電極の摩耗を軽減し、鉄鋼生産費を削減し得る。従って、ニードルコークスの熱膨張係数(CTE) の微調整が望ましい。
【0004】
ニードルコークスの生産は芸術であると同時に科学でもある。ニードルコークスの生産に使用されるディレードコーカーユニットは一部がバッチ方式、一部が連続工程で操業される。ニードルコークスの生産プロセスにおいて、炉と分留装置は連続モードで操業されるが、コークスドラムはバッチモードで操業される。コークスをコークスドラムに充填する度に、ドラムはコークスを取出すためオフラインにされ、ディレードコーカーユニットでのコーキングサイクルのために第二のコークスドラムがオンラインにされる。望ましい物性がそろっている原材料を使用しても、コークスドラムで高品位のニードルコークスを生産することは困難であり、コークスドラムで生産されるコークスの留分しか高品位ニードルコークスの品質を満たさない。
良質なニードルコークスの生産に必要な原材料の要件は硫黄や窒素、アスファルテン、無機不純物が極めて少ないことである。水素処理等従来方式ではコーキングドラムに投入される原材料内の硫黄、窒素、ポリ芳香族を削減しうる。水素処理プロセスには水素化脱硫、水素添加窒化処理、水素化脱芳香族を含む。
従来式工程はニードルコークの歩留まり最大化のためにニードルコークスのディレードコーキング処理中に生産される重質炭化水素留分の再利用を最大化することを含む。重質留分コーカー蒸留物の広範囲での再利用およびこの再利用蒸留物の新品原材料との混合は既知である。しかし、この再利用には温度315℃から400℃、圧力350 psiから2000 psi、液空間速度(LHSV)が0.2から3で蒸留物留分の触媒を介する水素処理が必要となる。未処理蒸留物はニードルコークスの品質に影響する。重質留分の再利用分が増加するにともない、ニードルコークスの品質に影響することは周知である。
【0005】
また、酸化クロム、酸化鉄、フッ化カルシウムの微細粉末やこの主の化合物等の無機添加剤をコークス原材料に添加して、成果物であるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)を下げることができる。しかし、こうした無機添加物の添加により0.3 wt.%灰分が最大限度であるニードルコークスの灰分が増加する。
従って、ニードルコークスの従来式製造プロセスには新品の原材料または再利用可能蒸留物の水素処理/水素化が必要である。このため、本工程のCAPEX/OPEXが増加し、高圧高温下で操業可能な商業化装置が必要となる。重質石油留分の水素処理は過大の多い工程である。水素処理のもう一つの不利な点として、水素処理工程では軽質成分の生成が原因の原材料の大量の損失は止むを得ない点がある。さらに、水素処理において使用される触媒は、水素処理後の流れの中の重質成分が触媒を疲労させ汚染するため、頻繁に交換または再生が必要となる。
従って、上述した不利な点を回避するか、少なくとも有用な代替方法を提供すべき、ニードルコークスの生産プロセス開発の必要性が認識される。
【0006】
発明の目的
本発明の目的の一部は少なくとも1つの実施例を本明細書において取り上げることでじゅうぶんであるが、以下のものである。
先行技術の持つ一つまたは複数の課題を改善するかまたは少なくとも有用な代替手段を提供することが本発明の目的である。
本発明の目的は、ニードルコークスの生産プロセスを提供することである。
本発明のもう一つの目的は、水素処理をしないニードルコークスの生産プロセスを提供することである。
本発明のさらに一つの目的は、硫黄分とCTEがともに低いニードルコークスの生産プロセスを提供することである。
本発明のさらに一つの目的は、ニードルコークスの簡素かつ効率がよいまた費用効果的な生産プロセスを提供することである。
本発明のその他の目的と優位性は、本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない次の悦明によってさらに明らかとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の要約
本発明はニードルコークスの生産プロセスに関する。本プロセスは所定量の第一の原材料と第二の原材料を分留装置内で混合し、同日に分留装置を加熱して第一所定温度とした混合物を取得することから成る。この混合物はディレードコーカーファーネスに投入され、このファーネスが第二の所定温度に加熱されて、加熱されたコーカー原材料を得る。加熱されたコーカー原材料を所定圧力および第三の所定温度でコークスドラムに投入し、第一の所定期間、第三の所定温度とその所定圧力に維持してコークスと蒸留物を得る。蒸留物がコークスドラム上部から分留装置へ出て行くようにしてコークスを分離し、コークスドラム内で別個のコークスを取得する。コークスドラム内で分離されたコークスを過熱蒸気で第二の所定期間処理して処理済みコークスを取得する。処理済みコークスを水で冷却するとニードルコークスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明を付帯図面を用いて説明する。図面は以下の通りである:
【
図1】
図1は本発明によるニードルコークス生産プロセスのフローチャートを図解したものである。
【
図2】
図2は、水素処理されていない第二の原材料のニードルコークス内の硫黄分に及ぶ効果を示すグラフ図解したものであり、ここに、ニードルコークスは本発明に従う第一の清澄スラリー油(CSO-1)を使用して生産される。
【
図3】
図3は水素処理されていない第二の原材料のニードルコークス熱膨張係数 (CTE)に及ぶ効果を示すグラフを図解したものであり、ここに、ニードルコークスは本発明に従う第一の清澄スラリー油(CSO-1)を使用して生産される。
【
図4】
図4は水素処理されていない第二の原材料のニードルコークスのCTE <1.2 x 10
-6/℃に及ぶ効果を示すグラフを図解したものであり、ここに、ニードルコークスは、本発明に従う第一の清澄スラリー油(CSO-1)を使用して生産される。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態を付帯図面を参照しつつ以下に説明する。
ここに記載の実施形態をもってこの分野の技能者であれば本発明の範囲を完全かつ余すところなく把握することができる。個別コンポーネントに関連していくつもの詳細を記載して本発明の実施形態を完全に把握しうる。この分野の技能を有する者であれば、実施形態に記載の明細をもって本発明の範囲を制限するものと解釈することはできないことは明白である。実施形態によっては周知の工程や周知の装置構造、周知の技法を詳細に説明していない。
【0010】
本発明において、記載されている用語は特定のの実施例を説明するためにのみ使用しており、その用語をもって本発明の範囲を限定するものととらえてはならない。本発明において使用する名詞は文脈上単数扱いとすべき場合を除き、複数の事物も同時に含むものとする。「から構成される」、「を含む」や「をもって構成する」「から成る」といった用語はそれ以外のものも含む可能性を含む遷移的語句であって、このため本明細書に記載する機能や特長、整数、手順、操作、要素、モジュール、ユニットあるいはコンポーネントの存在を規定するものであるが、それ以外の機能や整数、手順、操作、要素、コンポーネント、コンポーネントのグループの存在や追加を排除するものではない。本発明の方法と工程に開示されている特定の手順の順序は、説明あるいは図解されている性能が必ずしも必須の要素であるとは限らないものと解釈すべきものである。また、追加あるいは代替の手順も使用しうるものと把握すべきものである。
【0011】
本明細書において使用する「または」という用語は関連する一覧要素の1つまたは複数の任意の組み合わせを含む。
第一、第二、第三等の用語は、一つの要素あるいはコンポーネント、地域、レイヤーあるいはセクションを他のコンポーネントや地域、レイヤーあるいはセクションと区別するためにのみ使用しうるものであるため、これらを本発明の範囲を制限するものと解釈することはできない。第一、第二、第三等の用語は、本発明において明確に示されていない限り、特定の順列あるいは順番を含意するものではない。
その針状の結晶構造にその名が由来するニードルコークスはアーク電炉要黒鉛電極の製造に使用される最高度の価値を有する石油コークスである。鉄鋼メーカーのほぼ全社が鉄鋼生産用に電気アーク炉(EAF)へ切り替えているため、EAF用黒鉛電極製造のための高品位ニードルコークスの需要も高まっている。ニードルコークスはリチウムイオン電池のアノード用合成球状黒鉛の製造にも使用される。
【0012】
黒鉛電極は高温雰囲気等の過酷な条件下で使用される。このため、熱膨張係数(CTE)が低いことが望まれる。低熱膨張係数により電極は電気炉での鉄鋼生産中に生ずる電極の摩耗を軽減し、鉄鋼生産費を削減し得る。従って、ニードルコークスの熱膨張係数(CTE) の微調整が望ましい。
ニードルコークスの生産は芸術であると同時に科学でもある。ニードルコークスの生産に使用されるディレードコーカーユニットは一部がバッチ方式、一部が連続工程で操業される。ニードルコークスの生産プロセスにおいて、炉と分留装置は連続モードで操業されるが、コークスドラムはバッチモードで操業される。コークスをコークスドラムに充填する度に、ドラムはコークスを取出すためオフラインにされ、ディレードコーカーユニットでのコーキングサイクルのために第二のコークスドラムがオンラインにされる。望ましい物性がそろっている原材料を使用しても、コークスドラムで高品位のニードルコークスを生産することは困難であり、コークスドラムで生産されるコークスの留分しか高品位ニードルコークスの品質を満たさない。
【0013】
良質なニードルコークスの生産に必要な原材料は硫黄分が微量しかなく、窒素やアスファルテン、無機不純物が僅かしか含まれないことが必要条件である。水素処理等従来方式ではコーキングドラムに投入される原材料内の硫黄、窒素、ポリ芳香族を削減しうる。水素処理プロセスには水素化脱硫、水素添加窒化処理、水素化脱芳香族を含む。
従来式工程はニードルコークの歩留まり最大化のためにニードルコークスのディレードコーキング処理中に生産される重質炭化水素留分の再利用を最大化することを含む。重質留分コーカー蒸留物の広範囲での再利用およびこの再利用蒸留物の新品原材料との混合は既知である。しかし、この再利用には温度315℃から400℃、圧力350 psiから2000 psi、液空間速度(LHSV)が0.2から3で蒸留物留分の触媒を介する水素処理が必要となる。未処理蒸留物はニードルコークスの品質に影響する。重質留分の再利用分が増加するにともない、ニードルコークスの品質に影響することは周知である。
【0014】
また、酸化クロム、酸化鉄、フッ化カルシウムの微細粉末やこの主の化合物等の無機添加剤をコークス原材料に添加して、成果物であるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)を下げることができる。但し、無機添加物の追加によりニードルコークスの灰分が増加するか、その限度が0.3 wt%灰分となっている。
従って、ニードルコークスの従来式製造プロセスには新品の原材料または再利用可能蒸留物の水素処理/水素化が必要である。このため、本工程のCAPEX/OPEXが増加し、高圧高温下で操業可能な商業化装置が必要となる。重質石油留分の水素処理は過大の多い工程である。水素処理のもう一つの不利な点として、水素処理工程では軽質成分の生成が原因の原材料の大量の損失は止むを得ない点がある。さらに、水素処理において使用される触媒は、水素処理後の流れの中の重質成分が触媒を疲労させ汚染するため、頻繁に交換または再生が必要となる。
【0015】
ある側面においては、本発明はニードルコークスの生産プロセスを提供します。同プロセスは以下のステップから成る:
(i) 所定量の第一の原材料と第二の原材料を分留装置内で混合しながら分留装置を加熱して第一の所定温度である混合物を取得し、
(ii) この混合物をディレードコーカーファーネスに投入し、炉を第二の所定温度まで加熱して加熱されたコーカー材料を得る
(iii) 加熱されたコーカー原材料を所定圧力および第三の所定温度でコークスドラムに投入し、第一の所定期間、所定圧力で第三の所定温度に維持してコークスと蒸留物を得る。
(iv) 蒸留物がコークスドラムの最上部から出て分留装置に入るようにコークスを分離するとコークスドラム内に分離後のコークスが得られる
(v) コークスドラム内の分離後コークスを過熱蒸気で第二の所定期間処理して処理後のコークスを取得し
(vi) 処理後コークスを水で冷却してニードルコークスを得る。
【0016】
本プロセスの詳細を以下に記す:
所定量の第一の原材料と第二の原材料を分留装置内で混合しながら分留装置を加熱して第一の所定温度である混合物を得る。
本発明に従い、第一の原材料は、第一の清澄スラリー油(CSO-1)、第二の清澄スラリー油(CSO-2)、真空ガスオイル (VGO)からなるグループの中から選択される少なくもと一つのものである。ある実施例において、第一の原材料は第一の清澄スラリー油(CSO-1)である。もう一つのある実施例において、第一の原材料は第二の清澄スラリー油(CSO-2)である。さらにもう一つの実施例において、第一の原材料は第二の清澄スラリー油(CSO-2)と真空ガスオイル(VGO)の混合物である。
本発明に従い、第二の清澄スラリー油(CSO-2)と真空ガスオイル (VGO)の質量比は4:1から10:1の範囲である。ある実施例において、第二の清澄スラリー油(CSO-2)と真空ガスオイル (VGO)の質量比は9:1である。もう一つのある実施例において、第二の清澄スラリー油(CSO-2)と真空ガスオイル (VGO)の質量比は5.3:1である。
本発明に従い、第一の清澄スラリー油(CSO-1)は、混合物の総質量のうち硫黄分は0.8質量%から1.5質量%の範囲、混合物の総質量のうちコンラドソン残留炭素(CCR)は3質量%から8質量%の範囲、混合物の総質量のうち灰分が0.01質量%から0.15質量%の範囲、密度範囲が0.5 g/ccから1.5 g/ccさらに、アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満、沸点範囲が190℃から700℃であることを特徴とする。
【0017】
ある実施例において、第一の清澄スラリー油(CSO-1)は混合物の総質量のうち硫黄分1.26質量%、混合物の総質量のうちCCRが6.6質量%、混合物の総質量のうち灰分0.08%、密度1.063 g/cc、混合物の総質量のうちアスファルテン成分が5質量%未満、また、沸点は197℃から700℃の範囲であることを特徴とする。
本発明に従い、第二の清澄スラリー油(CSO-2)は、混合物の総質量のうち硫黄分は0.2質量%から0.8質量%の範囲、混合物の総質量のうちコンラドソン残留炭素(CCR)は8質量%から15質量%の範囲、灰分が混合物の総質量のうち0.01質量%から0.1質量%の範囲、密度範囲が0.5 g/ccから1.5 g/ccさらに、アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満で沸点範囲が245℃から690℃であることを特徴とする。
ある実施例において、第一の清澄スラリー油(CSO-2)は混合物の総質量のうち硫黄分0.57質量%、混合物の総質量のうちCCRが10.3質量%、混合物の総質量のうち灰分0.05%、密度1.084 g/cc、混合物の総質量のうちアスファルテン成分が5質量%未満、また、沸点は250℃から683℃の範囲であることを特徴とする。
【0018】
本発明に従い、清澄スラリー油(CSO)は流動接触分解(FCC)の底から取得される。
本発明に従い、真空ガスオイル(VGO)は、混合物の総質量のうち硫黄分は0.08質量%から0.15質量%の範囲、混合物の総質量のうちコンラドソン残留炭素(CCR)は0.05質量%から0.5質量%の範囲、灰分が混合物の総質量のうち0質量%から0.15質量%の範囲、密度範囲が0.5 g/ccから1.5 g/ccさらに、アスファルテン成分が混合物の総質量のうち5質量%未満で沸点範囲が280℃から600℃であることを特徴とする。
ある実施例において、真空ガスオイル(VGO)は混合物の総質量のうち硫黄分0.12質量%、混合物の総質量のうちCCRが0.1質量%、混合物の総質量のうち灰分0%、密度0.906 g/cc、混合物の総質量のうちアスファルテン成分が5質量%未満、また、沸点は284℃から594℃の範囲であることを特徴とする。
本発明に従い、真空ガスオイル(VGO)はVGO水素処理プロセス(VGOHT)から取得される。
本発明に従い、第一の原材料は水素処理されるまたは水素処理される部分と水素処理されない部分とする。
【0019】
本発明に従い、第二の原材料は、重質コーカーオイルガス(HCGO)、重質コーカー 蒸留物、重質炭化水素流から選択される重質再利用材料流である。この例示的実施形態において、第二の原材料は重質コーカーオイルガス(HCGO)である。この例示的実施形態において、重質コーカー蒸留物中に第二の原材料がある。
本発明に従い、第二の原材料は沸点の範囲が300℃から600℃である。
本発明に従い、第一の原材料と第二の原材料を水素処理しない。本発明の前記実施形態に従い、第一の原材料すなわち 清澄スラリー油(CSO-1)、清澄 スラリー油(CSO-2)、第二の原材料すなわち重質コーカーガスオイル(HCGO)は水素処理されない。
本発明に従い、所定量の第二の原材料は第一の原材料の合計質量のうち25質量%から40質量%の範囲である。ある実施例において、所定量の第二の原材料は第一の原材料の合計質量のうち30質量%ある。ある実施例において、所定量の第二の原材料は第一の原材料の合計質量のうち25質量%ある。ある実施例において、所定量の第二の原材料は第一の原材料の合計質量のうち50質量%ある。ある実施例において、所定量の第二の原材料は第一の原材料の合計質量のうち43質量%ある。
【0020】
本発明に従い、第一の原材料と第二の原材料は150℃から250℃までの範囲の温度に加熱されてから、ステップ(i)での分留装置内で攪拌される。
本発明に従い、第一の所定温度は300℃から400℃の範囲である。ある実施形態において、第一の所定温度は325℃から350℃の範囲である。この例示的実施形態において、第一の所定温度は330℃である。
本発明に従い、第二の原材料の量は第一の原材料の硫黄分に反比例する、すなわち、第一の原材料内の硫黄分が少ない程、第一の原材料と混合可能な再利用可能流(第二の原材料)の量は増える。
同様に、第二の原材料の量は第一の原材料の密度に反比例する、すなわち、第一の原材料の密度が低い程、第一の原材料と混合可能な再利用可能流(第二の原材料)の量は増える。
【0021】
この混合物はディレードコーカーファーネスに投入され、このファーネスが第二の所定温度に加熱されて、加熱されたコーカー原材料を得る。
本発明に従い、第二の所定温度は400℃から600℃の範囲である。ある実施形態において、第二の所定温度は480℃から515℃の範囲である。この例示的実施形態において、第二の所定温度は498℃である。
加熱されたコーカー原材料を所定圧力および第三の所定温度でコークスドラムに投入し、第一の所定期間、第三の所定温度とその所定圧力に維持してコークスと蒸留物を得る。
本発明に従い、第三の所定温度は400℃から600℃の範囲である。ある実施形態において、第三の所定温度は425℃から500℃の範囲である。ある実施例において、第三の所定温度は440℃である。もう一つのある実施例において、第三の所定温度は485 ℃である。
【0022】
ファーネスからコークスドラムへの移動中損失があるため、第三の所定温度は第二の所定温度より10℃から20℃低くなることがある。
本発明に従い、所定の圧力は2 kg/cm2(g)から10 kg/cm2(g)範囲である。ある実施形態において、所定の圧力範囲は、2.5 kg/cm2(g)から 6 kg/cm2(g)である。ある実施例において、所定圧力は3 kg/cm2(g)である。もう一つの実施例において、所定圧力は3.5 kg/cm2(g)である。
本発明に従い、第一の所定期間は15時間から50時間の範囲である。ある実施形態において、第一の所定期間は18時間から36時間の範囲である。ある実施例において、第一の所定期間は24時間である。もう一つのある実施例において、第一の所定期間は20.5時間である。さらにもう一つの実施例において、第一の所定期間は30時間である。
蒸留物がコークスドラム上部から分留装置へ出て行くようにしてコークスを分離し、コークスドラム内で別個のコークスを取得する。
【0023】
本発明に従い、コークスドラムに分離後コース酢を70%まで充填する。
コークスドラム内で分離されたコークスを過熱蒸気で第二の所定期間処理して処理済みコークスを取得する。
本発明に従い、過熱蒸気の温度範囲は300℃から500℃である。この実施例において、過熱蒸気は温度が485℃である。
本発明に従い、過熱蒸気の圧力範囲は2.5 kg/cm2(g)から10 kg/cm2(g)である。ある実施例において、過熱蒸気の圧力は3 kg/cm2(g)である。もう一つのある実施例において、過熱蒸気の圧力は3.5 kg/cm2(g)である。
本発明に従い、第一の所定期間は1時間から30時間の範囲である。ある実施例において、第二の所定期間を4時間とする。もう一つのある実施例において、第二の所定期間は24時間である。
処理済みコークスを水で冷却するとニードルコークスが得られる。
【0024】
ある実施形態において、コークスドラム内で処理済みコークスを水で冷却する。次に、コークスを高圧ウォータージェットを用いてコークス切削工具で切断する。ニードルコークスをコークス品質に基づいて分画する。次にニードルコークス別の指定サイロに貯蔵する。
ニードルコークスの歩留まりはコーキング室/ドラムに投入される混合物のCCRに依存する、すなわち、混合物のCCRが高いほど、ニードルコークスの歩留まりが高い。蒸留物を水素処理すると蒸留物のだけではなく投入されるこの混合物のCCRも低下する。従って、良質なニードルコークスを生産しうるにもかかわらず蒸留物を水素処理すると、歩留まりは下がる。
本発明のプロセスは重質コーカー 蒸留物の水素処理が不要な硫黄分とCTEが低いニードルコークスを生産する。従って、本発明のプロセスによって重質コーカー蒸留物の水素処理が解消され、このため、CAPEX/OPEXが削減される。
本発明のプロセスは効率がよく費用効果が高い。
本発明によるニードルコークスの硫黄分とCTEともに低い。
【0025】
第一の原材料の一定パーセンテージを超える程に水素処理されていない重質コーカー 蒸留物(第二の原材料)の再利用量が増えると、コークスドラム内の良質なニードルコークスの量が減り、このため水素処理されていない第一の原材料と水素処理されていない第二の原材料の最適な再利用率が存在し、ここに、良質なニードなこと示しため別に探させてルコークスの最大硬質量はコークスドラム内に取得可能となる。
本発明によるニードルコークスは硫黄分< 0.5質量%、灰分< 0.2質量%, 熱膨張係数 (CTE) < 1.2 x 10-6/oC、実密度が2.13g/ccを超える高品質の石油コークスである。
【0026】
本発明に従い、第一の原材料は、目標量の水素処理されていないCSOと水素処理済みVGOを混合して、硫黄、灰分、芳香族成分の仕様投入原材料に合致するように調製する。分留装置の高温のコーカー製品を第一の原材料と交換して分留装置の底へ流す。所定量の第二の原材料(高温重質コーカーガスオイル(HCGO))を分留装置の底部で第一の原材料と混合して加熱し、温度範囲が325℃から350℃の混合物を得る。この混合物はディレードコーカーファーネスに投入され、480℃から515℃の範囲に加熱されてから、3~6 kg/cm2(g)のコークスドラム上部圧力で操業中のコークスドラム底部へ送られる。コークスドラム内の十分な滞留時間(20時間から36時間)置き、コーカー原材料をニードルコークスと蒸留物に変換させる。コークスドラム上部から得たコークス蒸留物を分留装置に送る。第1コークスドラムにコークスが充填されると、原材料を第2コークスドラムに切り替える。充填されたコークスドラムに過熱蒸気を通す。コークスドラムを水で冷却する。高圧ウォータージェットを用いて、コークスをコークス切削工具で切断する。ニードルコークスをコークス品質に基づいて分画する。ニードルコークスは指定サイロに貯蔵される。
【0027】
実施形態に関する前記の説明は解説のために行ったものであって、本発明の範囲をこの説明の範囲のみに限定することを意図していない。特定実施例の個々の構成要素は概してその特定の実施形態に限定されるものではなく、相互に入れ替え可能である。こうした亜種を本発明とは異なるものと見なすことはできず、全てのこのような亜種は本発明の範囲に含むものと見なされる。
本発明を以下の限定されることのない実施形態によってさら説明する。但し、以下の例は説明のためにのみ既述されており、本発明の範囲を限定するものとは解釈されてはならない。以下の実験は大規模化して工業/商業規模に拡大することを目指して試験を行うことができ、得られる結果は工業規模まで外挿することができる。
【0028】
実験の詳細:
ディレードコーカープラント内での本発明に従うニードルコークスの生産プロセス
例:
日量1バレルの生産能力を持つコーカーパイロットプラントを使用して実験研究を実施した。コーカーパイロットプラントは原材料容器と原材料ポンプ、再循環ポンプ、電気炉、コークスドラム、分留装置、製品容器からなる。実験に使用した原材料の物性および実験条件をそれぞれ表1と表2に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
第一の原材料水素処理されていない新品原材料(CSO-1)から生産される ニードルコークスの比較:
表2から以下の事実が読み取れる:(i) 例1において、水素処理されていない重質コーカー留分(第二の原材料)をリサイクルせず、(ii) 例2においては、水素処理されていない重質コーカー留分(第二の原材料)の30.2%をリサイクルし、(iii) 例3において、第一の原材料から水素処理されていない重質コーカー留分(第二の原材料)の51.2%をリサイクルした。
原材料/混合物および水素処理されていない新品原材料 (CSO-1)から生産されたニードルコークスの品質を比較してそれぞれ表3と表4に示す。
【0032】
【0033】
表3からわかることとして、異なる処理能力比((新品原材料 + 再利用)/新品原材料)で生成される水素処理されていない再利用材料流の品質は相当大きく変化している。水素処理されていない重質コーカー蒸留物流の再利用材料(第二の原材料)が増加するに伴い、重質コーカー蒸留生成物の密度と硫黄分は増加し、従って、混合流の硫黄分と密度が増加し、ニードルコークスの数量と品質ともに劣化している。表4でも同じことが観察される。
【0034】
【0035】
表4からわかることは、再利用品(第二の原材料)の量を0% (例1)から30% (例2)に増やすと、ニードルコークスのCTEが減少し、硫黄分が増加した(
図2と3参照)。再利用品を30%から50%に増加させると、CTEと硫黄分ともに増加した。従って、コークス品質は30%から50%まで再利用率を増やすと劣化した。
【0036】
表5はCSO-1での異なる処理能力比においてゾーン別ニードルコークスの品質を図解したものである。
【0037】
【0038】
表5からわかることとして、水素処理されていない再利用材料流(例2の第二原材料)のうち30%再利用分の場合、同一操業条件において、コークス床の100%(全量)はCTEが<1.2 x 10
-6/℃となっていた(
図4参照)。一方、水素処理されていない再利用材料流の再利用分が30%を超えてさらに増加すると、CTEが<1.2 x 10
-6/℃を呈示するコークス床の量が60%へ減少した。
【0039】
第一の原材料から生産されるニードルコークスの比較:VGOと混合するCSO-2:
表2から以下のことが読み取れる:(i) 例4では、再利用無しで第一の原材料(CSO-2)のみとし、(ii) 例5では第一の原材料(CSO-2)は新品原材料基材のうち43.1%を再利用した第二の原材料 (重質コーカー蒸留物) 、(iii) 例6では、再利用せず混合した第一の原材料(すなわち、 84.2% CSO-2と15.8% VGO)、(iv) 例7では、混合した第一の原材料(すなわち 90% CSO-2と10% VGO)は24.6%が第一の原材料からリサイクルされた第二の原材料(重質コーカー 蒸留物)である。
【0040】
表6はCSO-2とVGOを含むコークスドラム全体のニードルコークスの品質を図解したものである。
【0041】
【0042】
再利用無しのCSO-2のみ処理(例4)と比較して、43%が水素処理されていない(例5)場合はCTEと硫黄分がともに高いニードルコークスを得た。
CSO-2とVGO (例6)の混合物の場合、硫黄分は例4よりおおきく減少したにもかかわらず、コークス床全体のうちCTE全量は微々たる部分しか改善されていないことが観察された。24%が水素処理されていない再利用品(例7)でこれにCSO-2とVGOを第一の原材料として使用した場合、CTEの大幅な改善が観測され、硫黄分も例4よりは若干低かった。従って、高歩留まりで良質のニードルを取得するには、水素処理されていない再利用材料流(第二の原材料)の最適量が必要であった。
【0043】
表7はCSO-2とVGOの異なる処理能力比における ゾーン別ニードルコークス品質を図解したものである。
【0044】
【0045】
表7からわかることは、CSO-2 (第一原材料)のうち水素処理されていない再利用材料流(第二の原材料)を使用すると、CTEが1.2 x 10-6/℃を呈示したコークスは生成されていないことである。CSO-2に再利用後生産されたコークス品質は下がった。
再利用無しにてCSO-2をVGOと5.3:1の比率で混合し(例6)た場合、再利用無しの新品CSO-2と比較した場合、生産される良質なニードルコークスの品質は改善された(例4)。さらに、CSO-2をVGOと9:1の比で混合し、重質コーカー 蒸留物 (第二の原材料)の25%と混合した場合(例7)、同じ操業条件において100%のコークス床はCTEが1.2 x 10-6/oC未満を呈した。
以上のようにして得られたニードルコークスをさらにか焼してか焼後のニードルコークスを生産すると、これを黒鉛電極用素材として使用することが可能となる。
【0046】
技術進歩
上記に説明された本発明には、以下のことを達成したニードルコークスの生産プロセスに限ることなく以下を含む数項目の技術的優位性がある。
・良質コークスの生産には新品原材料と再利用材料流の水素処理工程が解消される。
・ディレードコーカー コークスドラム内でのCTEと硫黄分がともに低いニードルコークスの生産が最大化される。
・水素処理されていない重質コーカー蒸留物留分の固有再利用量を得て、これがニードルコークスの品質と量に影響する。
・主原材料およびコーカー処理からまたは無機添加物をコーカー原材料に投入せずに生成される再利用可能な重質炭化水素留分の高価な水素化を使用せずに良質なニードルコークスの量を最大化し、
・簡素かつ効率がよく、費用効果がよい。
【0047】
本発明の実施例ならびに様々な特長および優位性の詳細を限定することのない実施例を参照することによって以下に説明する。確立している既存のコンポーネントならびに処理技術についての説明は省略し、本発明の実施例についての理解を不要に困難にしないようにした。本発明に使用されている例は単に本発明の実施例を実用化可能にする方法の理解を容易にし、この分野の技能を持つ者が本発明の実施例を実施することを可能にすることのみを目的としている。従って、例によって本発明の実施例の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
前記の具体的実施形態に関する記述は、本発明の実施形態が持つ一般的性質を十分明らかにしているので、現状の知識を適用することにより、前記の一般的概念から乖離することなく、前記の具体的実施形態を異なる用途のために変更または適合することができ、従って、適合/変更は本発明の実施形態と同等の物としての意味、およびその範囲で、理解されることが意図されるべきであり、意図されている。本明細書に使用されている句節の用法や用語は説明目的のためであって限定するために使用されてはいない。従って、本明細書に記載された実施例は優先的実施例に基いて説明されていると同時に、同分野の技能を有する者は本明細書に記載された実施例が本明細書で説明された実施例の意図および範囲で変更しても実践可能であることが認められる。
【0048】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことことなくこれらを含むことを含意している。
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。
本明細書に含まれている文書、行為、素材、デバイス、商品または同類のものについての議論は本発明開示のための文脈を成す目的のためにのみ含まれている。任意のまたはすべての以上の事項が既知の発明技術の基礎の一部を構成するまたは本出願優先日以前に任意の場所に存在していた本発明関連分野における共有されている一般的知識であるという是認と解釈されてはならない。
【0049】
異なる物理的パラメータ、変数、寸法や数量を表す数値は概数であって、パラメータ、変数、寸法や数量に代入された数値より高い/低い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に異なる記載がなされている場合はこの限りではない。
優先実施形態の異なる構成要素及び構成要素の部分を相当強調してきたが、多くの実施形態が可能であって、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの変更も可能である。本発明または優先実施形態ならびにその他の実施形態の特質を修正できることは本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明的事項が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。
【国際調査報告】