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特表2024-545965バッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】バッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/145 20210101AFI20241209BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/128 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 50/119 20210101ALN20241209BHJP
【FI】
H01M50/145
H01M50/107
H01M50/128
H01M50/133
H01M50/121
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/6567
H01M50/119
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537555
(86)(22)【出願日】2023-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2023016094
(87)【国際公開番号】W WO2024085625
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0134064
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヨン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ブム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユン・クム
【テーマコード(参考)】
5H011
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011BB03
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD09
5H011DD18
5H031AA09
5H031EE01
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA31
5H040AS07
5H040AT01
5H040AY10
5H040LL01
5H040LL10
(57)【要約】
本発明は、バッテリーセル、その製造方法、およびこれを含むバッテリーモジュールに関し、本発明の一態様に係るバッテリーセルは、電極組立体、前記電極組立体を収容するケース、前記ケースの外面に形成されためっき層、前記めっき層の一部領域が除去されて形成されたスクラッチ領域、および前記スクラッチ領域を囲むように設けられ、前記めっき層よりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を含む多孔質コーティング層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体と、
前記電極組立体を収容するケースと、
前記ケースの外面に形成されためっき層と、
前記めっき層の一部領域が除去されて形成されたスクラッチ領域と、
前記スクラッチ領域を囲むように設けられ、前記めっき層よりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を含む多孔性コーティング層と、
を含む、バッテリーセル。
【請求項2】
前記スクラッチ領域は、
前記めっき層の一部領域が除去された複数の非めっき部と、
隣接する2つの非めっき部間に前記めっき層が残存するめっき部と、
を含む、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項3】
多孔性コーティング層は、少なくとも一部領域が前記非めっき部を介して前記ケースの外面に接触するように設けられている、請求項2に記載のバッテリーセル。
【請求項4】
前記多孔性コーティング層は、前記めっき層を囲んだ領域の厚さが前記スクラッチ領域を囲んだ領域の厚さよりも小さい、請求項2に記載のバッテリーセル。
【請求項5】
前記多孔性コーティング層は、前記犠牲金属が前記スクラッチ領域上に噴射されることによって形成されている、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項6】
前記めっき層は、ニッケルめっき層であり、
前記犠牲金属は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム合金、マグネシウム合金、および亜鉛合金からなる群から選択された一つ以上である、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項7】
前記スクラッチ領域は、レーザーによって前記めっき層がスクラッチ処理されることによって設けられている、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項8】
高分子フィルムを含み、前記多孔性コーティング層を囲む防水シートをさらに含む、請求項1に記載のバッテリーセル。
【請求項9】
複数の、請求項1に記載のバッテリーセルと、
複数のバッテリーセルが離隔して配置され、複数のバッテリーセル間に冷却水が流動可能に設けられたセルフレームと、
セルフレーム内部に冷却水を供給するための冷却水供給部と、
を含み、
前記冷却水供給部は、絶縁処理されていない冷却水を供給するように設けられている、バッテリーモジュール。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリーセルの製造方法であって、
前記ケースの外面に設けられためっき層に前記スクラッチ領域を形成するステップ(a)と、
溶融した犠牲金属を圧縮空気と共に前記スクラッチ領域に噴射することにより、前記スクラッチ領域を覆う多孔性コーティング層を形成するステップ(b)と、
を含む、バッテリーセルの製造方法。
【請求項11】
前記スクラッチ領域は、
前記めっき層の一部領域が除去された複数の非めっき部と、
隣接する2つの非めっき部間に前記めっき層が残存するめっき部と、
を含むように形成され、
前記多孔性コーティング層は、少なくとも一部領域が前記非めっき部を介して前記ケースの外面に接触するように形成される、請求項10に記載のバッテリーセルの製造方法。
【請求項12】
前記圧縮空気は、12000psi~16000psiの範囲の圧力で噴射される、請求項10に記載のバッテリーセルの製造方法。
【請求項13】
前記圧縮空気は、2000m/s~2200m/sの範囲の速度で噴射される、請求項10に記載のバッテリーセルの製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(a)において、前記スクラッチ領域は、前記めっき層がレーザーによって除去されることによって形成される、請求項10に記載のバッテリーセルの製造方法。
【請求項15】
前記多孔性コーティング層が外部に露出されないように、防水フィルムを前記ケースに熱収縮させるステップをさらに含む、請求項10に記載のバッテリーセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセルのケースよりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を用いて、バッテリーセルの耐腐食性を向上させることができるバッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュールに関する。
【0002】
本出願は、2022年10月18日付の韓国特許出願第10-2022-0134064号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
環境にやさしい車両に使用されるバッテリーは、高出力が要求されるので、大量の熱を発生させ、バッテリーの性能および寿命を向上させるためには、バッテリーから発生する熱を効率的に排出させて、バッテリーが過熱するのを予防することが非常に重要である。
【0004】
従来、バッテリーの熱を放出するための冷却システムとして、直接空冷方式、間接水冷方式、または直接水冷方式などが知られている。
【0005】
直接水冷方式は、バッテリーセルを冷却水に直接含浸させて、バッテリーセルの熱が冷却水に直接排出される方式である。
【0006】
図1は、従来のバッテリーモジュール10の概略的な構成図である。
【0007】
図1を参照すると、直接水冷方式のバッテリーモジュール10は、セルフレーム11と複数のバッテリーセル12とで構成される。複数のバッテリーセル12は、セルフレーム11において、離隔して配置される。前記セルフレーム11は、内部に冷却水が流動可能に設けられる。
【0008】
一般に、バッテリーセル12は、内部電極を収容する外装ケースがニッケルめっきされた鉄で製作される。これにより、バッテリーセル12が冷却水に直接含浸される場合、外装ケースの材料の性質により腐食に対して脆弱となる。また、外装ケースが極性を有しており、電気的絶縁性も脆弱であるという問題点がある。
【0009】
従来の直接水冷方式のバッテリーモジュール10には、バッテリーセル12の腐食を防止するために、絶縁油または特殊冷却水N(例えば、3M社のNOVEC(登録商標))が使用されている。
【0010】
ただし、絶縁油は、火災に脆弱であるという問題点があり、3M社のNOVEC(登録商標)のような特殊冷却水は、無極性であり、耐腐食性を有する点でバッテリーセルの冷却水として優れるが、高価であるので、バッテリーモジュールの製造単価を上昇させるという問題があった。
【0011】
また、従来のようにバッテリーセル12の腐食を防止するために、バッテリーセル12の外装ケースに防錆液を塗布する場合、防錆液を保持するために不織布などを用いてバッテリーセル12の外装ケースを包む後処理工程が要求される。
【0012】
また、バッテリーセル12の外装ケースに防錆液を塗布しても、表面張力によって防錆剤がバッテリーセルの外装ケースから流れ落ち、防錆剤が外装ケースに均等に塗布されないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、バッテリーセルのケースよりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を用いて、バッテリーセルの耐腐食性を向上させることができるバッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュールを提供することを一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係るバッテリーセルは、電極組立体、前記電極組立体を収容するケース、前記ケースの外面に形成されためっき層、前記めっき層の一部領域が除去されて形成されたスクラッチ領域、および前記スクラッチ領域を囲むように設けられ、前記めっき層よりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を含む多孔性コーティング層を含む。
【0015】
また、前記スクラッチ領域は、前記めっき層の一部領域が除去された複数の非めっき部と、隣接する2つの非めっき部間にめっき層が残存するめっき部とを含むことができる。
【0016】
また、前記多孔性コーティング層は、少なくとも一部領域が前記スクラッチ領域内に挿入されることにより、前記非めっき部を介してケースの外面に接触するように設けられ得る。
【0017】
また、前記多孔性コーティング層は、前記めっき層を囲んだ領域の厚さが前記スクラッチ領域を囲んだ領域の厚さよりも小さくてもよい。
【0018】
また、前記多孔性コーティング層は、前記犠牲金属が前記スクラッチ領域上に噴射されることによって形成され得る。
【0019】
また、前記めっき層は、ニッケルめっき層であってもよく、前記犠牲金属は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム合金、マグネシウム合金、および亜鉛合金からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0020】
また、前記スクラッチ領域は、レーザーによって前記めっき層がスクラッチ処理されることによって設けられ得る。
【0021】
また、前記バッテリーセルは、高分子フィルムを含み、前記多孔性コーティング層を囲む防水シートをさらに含むことができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係るバッテリーモジュールは、複数のバッテリーセル、複数のバッテリーセルが離隔して配置され、複数のバッテリーセル間に冷却水が流動可能に設けられたセルフレーム、およびセルフレームの内部に冷却水を供給するための冷却水供給部を含む。
【0023】
また、前記冷却水供給部は、絶縁処理されていない冷却水を供給するように設けられる。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法は、ケースの外面に設けられためっき層にスクラッチ領域を形成するステップ(a)および溶融した犠牲金属を圧縮空気と共に前記スクラッチ領域に噴射することにより、前記スクラッチ領域を覆う多孔性コーティング層を形成するステップ(b)を含む。
【0025】
また、前記スクラッチ領域は、前記めっき層の一部領域が除去された複数の非めっき部と、隣接する2つの非めっき部間にめっき層が残存するめっき部とを含むように形成され得る。
【0026】
また、前記多孔性コーティング層は、少なくとも一部領域が前記非めっき部を介してケースの外面に接触するように形成され得る。
【0027】
また、前記圧縮空気は、12000psi~16000psiの範囲の圧力で噴射され得る。
【0028】
また、前記圧縮空気は、2000m/s~2200m/sの範囲の速度で噴射され得る。
【0029】
また、前記ステップ(a)において、前記スクラッチ領域は、前記めっき層がレーザーによって除去されることによって形成され得る。
【0030】
また、前記バッテリーセルの製造方法は、ステップ(b)の後に、前記多孔性コーティング層が外部に露出されないように防水フィルムをケースに熱収縮させるステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明の少なくとも一態様に係るバッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュールは、次のような効果を有する。
【0032】
ケースのめっき層にスクラッチ領域を設け、多孔性コーティング層がスクラッチ領域を覆うようにすることにより、前記スクラッチ領域を介して多孔性コーティング層とめっき層とが除去されたケースの外面間の電子の移動を円滑にすることができ、これにより、ケースの耐腐食性を向上させることができる。
【0033】
また、ケースよりもイオン化傾向が大きい犠牲金属がケースよりも水分と先にイオン化反応して酸化されるので、ケースの耐腐食性を向上させることができる。
【0034】
また、溶融した犠牲金属が高圧の圧縮空気と共にケースに噴射させることにより前記スクラッチ領域を覆う多孔性コーティング層を形成することができ、多孔性コーティング層とケースとの間の結合力を増大させて、ケースの耐久性を向上させることができる。
【0035】
また、前記多孔性コーティング層が溶射コーティング方式で形成されることによって微細多孔構造を有することができ、これにより水分および空気に接触する接触面積を増大させることができる。
【0036】
また、スクラッチ領域を介してケースと多孔性コーティング層との間の電子の移動を円滑にして、ケースと多孔性コーティング層との間の電気的連結の安定性を図ることができる。
【0037】
また、バッテリーセルの耐腐食性を向上させることにより、絶縁処理された高価の特殊冷却水ではなく、絶縁処理されていない低価の一般冷却水を使用して、直接水冷方式を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来のバッテリーモジュールの概略的な構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る直接水冷用バッテリーモジュールの構成図を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの断面図を概略的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの断面図を概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの断面図を概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図である。
図11】バッテリーセルの製造方法に使用される溶射コーティング装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態に係るバッテリーセル(以下、「直接水冷用バッテリーセル」とも言う)、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュール(以下、「バッテリーモジュール」とも言う)について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
また、図面符号にかかわらず同一または対応する構成要素については同一または類似の参照番号を付し、これに対する重複説明は省略するようにし、説明の便宜のために示された各構成部材の大きさおよび形状は誇張または縮小されることがある。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態に係る直接水冷用バッテリーモジュール100の構成図を概略的に示す図であり、図3図5は、本発明の一実施形態に係るバッテリーセル120の断面図を概略的に示す図である。
【0042】
具体的には、図3は、スクラッチ領域が設けられた状態のケースを示し、図4は、多孔性コーティング層が形成された状態のケースを示し、図5は、多孔性コーティング層を覆う防水シートが設けられた状態のケースを示す。
【0043】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る直接水冷用バッテリーモジュール100は、セルフレーム110、少なくとも一つの直接水冷用バッテリーセル120、および一般的な冷却水Wを含む。
【0044】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るバッテリーモジュール100は、複数のバッテリーセル120、複数のバッテリーセル120を収容するセルフレーム110、および冷却水供給部160を含む。
【0045】
具体的には、前記バッテリーモジュール100は、複数のバッテリーセル100、複数のバッテリーセル120が離隔して配置され、複数のバッテリーセル120間に冷却水Wが流動可能に設けられたセルフレーム110、およびセルフレーム110の内部に冷却水Wを供給するための冷却水供給部160を含む。
【0046】
前記バッテリーモジュール100は、冷却水Wを通じてバッテリーセル120を直接冷却させる直接水冷構造を有することができる。
【0047】
図2を参照すると、前記セルフレーム110は、内部に所定の空間部を有し、前記空間部内で冷却水Wが流動可能な構造で設けられる。前記冷却水Wは、セルフレーム110の内部空間部に供給された後、セルフレーム110の外部に排出され得る。このために、バッテリーモジュール100は、セルフレーム110の外部に冷却水Wを排出させるための冷却水排出部を含むことができる。また、前記冷却水供給部160は、冷却水貯蔵槽およびポンプを含むことができる。また、前記冷却水供給部160は、絶縁処理されていない冷却水Wを供給するように設けられ得る。前記冷却水Wは、車両で一般的に使用される冷却水であり得る。
【0048】
図3図5を参照すると、本発明の一実施形態に係るバッテリーセル120は、電極組立体127、ケース121、めっき層122、めっき層122上に設けられたスクラッチ領域S、およびスクラッチ領域Sを囲む多孔性コーティング層123を含む。
【0049】
また、前記バッテリーセル120は、高分子フィルムを含み、前記多孔性コーティング層123を囲むように設けられた防水シート125を含むことができる。
【0050】
前記バッテリーセル120は、電極組立体127、前記電極組立体127を収容するケース121、前記ケース121の外面に形成されためっき層122、前記めっき層122の一部領域が除去されて形成されたスクラッチ領域S、および前記スクラッチ領域Sを囲むように設けられ、前記めっき層122よりも金属のイオン化傾向が大きい犠牲金属を含む多孔性コーティング層123を含む。
【0051】
図2を参照すると、直接水冷用バッテリーセル100が冷却水Wに含浸されるとき、水分は、多孔性コーティング層123に伝達され得る。このとき、多孔性コーティング層123の犠牲金属は、水分に対する金属のイオン化反応が、ケース121の水分に対する金属イオン化反応よりも大きいため、ケース121の耐腐食性を向上させることができる。
【0052】
また、直接水冷用バッテリーセル120が冷却水Wに含浸されるとき、直接水冷用バッテリーセル120は、ケース121と多孔性コーティング層123との間の金属のイオン化反応の差により、冷却水Wの水分が多孔性コーティング層の犠牲金属とイオン化反応し、その結果、ケース121の金属イオン化反応が抑制されて、ケース121の腐食を防止することができる。
【0053】
前記電極組立体127は、ケース121内に収納され、正極、負極、および前記正極と負極との間に配置された分離膜を含む。前記電極と分離膜は、一体化された電極組立体127を構成することができる。例えば、前記電極組立体127は、シート状の正極と負極とをその間に分離膜を介在した状態で巻き取ったゼリーロール型電極組立体、複数の正極と負極とを分離膜を介在した状態で順に積層したスタック型電極組立体または所定単位の正極と負極とを分離膜を介在した状態で積層した単位セルを分離フィルム上に位置した状態で順に巻き取ったスタック/フォルディング型電極組立体であり得る。
【0054】
また、前記ケース121は、前記電極組立体127を収容し、外部の衝撃からバッテリーセル120を保護する役割を果たす。前記ケース121は、円筒状、ポーチ状、または角状であってもよく、例えば、前記ケース121は、円筒状であってもよい。特に、前記電極組立体127は、巻き取られたゼリーロール型電極組立体であり、ケース121は、円筒状ケースであってもよく、前記直接水冷用バッテリーセル120は、円筒状バッテリーセルであってもよい。
【0055】
また、ケース121は、金属材質で形成され得、前記ケース121は、スチール(steel)またはステンレススチール(stainless steel)からなる群から選択された一つ以上で形成され得る。
【0056】
また、前記ケース121の表面は、ニッケル(Ni)めっき処理され得る。すなわち、前記めっき層121は、ニッケルめっき層を含むことができる。
【0057】
一方、前記ニッケルめっき層は、変色が少なく防錆力に優れ、耐腐食性および耐摩耗性に優れる。しかし、ニッケルめっき層は、材料の特性により、冷却水に含浸される時に腐食することがあり、腐食が進むにつれて極性が生じて絶縁性が低下する。
【0058】
一方、めっき層121上に多孔性コーティング層123が設けられると、めっき層121は、多孔性コーティング層123とケース121との間の電子の移動を妨げる要因となり得る。
【0059】
前記めっき層122にスクラッチ領域Sを形成した後、スクラッチ領域Sに多孔性コーティング層123を結合させることにより、多孔性コーティング層123とケース121との間の電子移動が円滑に行われ得る。
【0060】
また、前記スクラッチ領域Sは、めっき層121の厚さ方向に沿ってめっき層121の一部領域が除去されて形成され得、前記スクラッチ領域Sは、めっき層121の厚さ方向に沿ってめっき層121の一部領域および前記一部領域と対向するケースの外面まで形成され得る。
【0061】
図3を参照すると、前記スクラッチ領域Sは、前記めっき層122の一部領域が除去された複数の非めっき部122bと、隣接する2つの非めっき部122b間にめっき層が残存するめっき部122aとを含むことができる。また、前記非めっき部122bとは、当該領域にめっき層が存在せず、ケース121の外面が外部に露出された領域を意味することができる。また、前記スクラッチ領域Sは、めっき層122の一部領域に形成され得る。
【0062】
前記スクラッチ領域Sは、所定のパターンに応じてケース121のめっき層122が一部除去された領域である。また、前記スクラッチ領域Sは、レーザーにより前記めっき層122がスクラッチ処理されることによって設けられ得る。これとは異なり、前記スクラッチ領域Sは、前記めっき層122がエッチング処理されることによって設けられ得る。
【0063】
図4を参照すると、前記多孔性コーティング層123は、めっき層122およびスクラッチ領域Sを囲み、少なくとも一部領域がスクラッチ領域S内に挿入される。
【0064】
また、前記多孔性コーティング層123は、少なくとも一部領域が前記スクラッチ領域S内に挿入されることにより、前記非めっき部121bを介してケース121の外面に接触するように設けられ得る。
【0065】
また、前記多孔性コーティング層123は、めっき層122を囲んだ領域とスクラッチ領域Sを囲んだ領域の厚さtとが異なってもよい。前記多孔性コーティング層123は、めっき層122を囲んだ領域の厚さがスクラッチ領域Sを囲んだ領域の厚さよりも小さくてもよい。
【0066】
前記多孔性コーティング層123は、ケース121よりもイオン化傾向が大きい犠牲金属材質で形成される。前記犠牲金属は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム合金、マグネシウム合金、亜鉛合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0067】
前記犠牲金属のイオン化傾向は、ケース121の材質であるスチールまたはステンレススチールのイオン化傾向よりも大きいため、冷却水Wの水分は、ケース121とイオン化反応する前に多孔性コーティング層123の犠牲金属とイオン化反応する。
【0068】
また、前記多孔性コーティング層123は、前記犠牲金属が前記スクラッチ領域S上に噴射されることによって形成され得る。
【0069】
一例として、前記多孔性コーティング層123は、溶射コーティング方式でケース121の外面にコーティングされ得る。前記多孔性コーティング層123は、溶融した犠牲金属が圧縮空気と共にケース121に噴射されることによって多孔構造を有することができる。前記多孔性コーティング層123の気孔のサイズは、1μm~10μmであり得る。
【0070】
また、犠牲金属で形成された多孔性コーティング層123は、多孔構造を有することにより、水分および空気と接触面積が増える効果を有し、ケースよりもイオン化傾向が大きい犠牲金属が先に水分と反応する。
【0071】
図5を参照すると、前記防水シート125は、多孔性コーティング層123が外部に露出されないように、ケース121の外面を囲む。前記防水シート125は、高分子フィルムを含むことができる。前記高分子フィルムでケースを囲んだ状態で、前記高分子フィルムを熱収縮させることにより、防水シート125をケース121に熱圧着させることができる。
【0072】
熱収縮可能な高分子フィルムは、ポリ塩化ビニルPVC(Polyvinylchloride)、ポリプロピレンPP(polypropylene)、またはポリエチレンテレフタレートPET(polyethylene terephthalate)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0073】
図2を参照すると、前記バッテリーモジュール100は、セルフレーム110の内部に設けられ、前記バッテリーセル120の上端部および下端部をそれぞれ覆うように設けられた防水層130、140を含むことができる。前記防水層130、140は、ケース121に水分が浸透することを防止し、バッテリーセル120をセルフレーム110に固定させる機能を果たす。
【0074】
前記ケース121の上端部に上部防水層130が設けられ得、前記ケース121の下端部に下部防水層140が設けられ得る。また、複数のバッテリーセル120は、上端部側と下端部側とがそれぞれ防水層130、140を介してセルフレーム110の内面に一体に固定され得る。
【0075】
また、防水層130、140は、防水接着剤またはポッティングレジン(porring resin)を含むことができ、前記ポッティングレジンは、シリコン系レジン、ウレタン系レジン、またはエポキシ系レジンのうちいずれか一つであり得る。
【0076】
図6図10は、本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法を説明するための図であり、図11は、バッテリーセルの製造方法に使用される溶射コーティング装置を示す概略図である。また、図7は、図6の(b)の線a-aに沿って切り取った状態の断面図であり、図9は、図6の(d)の線b-bに沿って切り取った状態の断面図である。
【0077】
前述したように、前記多孔性コーティング層123は、溶射コーティング方式でケース121の外面にコーティングされ得る。
【0078】
また、本発明の一実施形態に係るバッテリーセルの製造方法は、ケースの外面に設けられためっき層にスクラッチ領域を形成するステップ(a)および溶融した犠牲金属を圧縮空気と共に前記スクラッチ領域に噴射することにより、前記スクラッチ領域を覆う多孔性コーティング層を形成するステップ(b)を含む。
【0079】
また、前記スクラッチ領域Sは、前記めっき層122の一部領域が除去された複数の非めっき部と、隣接する2つの非めっき部間にめっき層が残存するめっき部とを含むように形成され得る。
【0080】
また、前記多孔性コーティング層123は、少なくとも一部領域が前記非めっき部を介してケース121の外面に接触するように形成され得る。
【0081】
図6および図7を参照すると、金属材質を有する板材Pが準備される。前記板材Pは、スチールまたはステンレススチールからなる群から選択された一つ以上で形成され得る。前記板材Pは、ケース121に加工され、前記板材Pの一面(ケースの外面)には、めっき層122が形成される。
【0082】
前記めっき層122は、めっき物質(例えば、ニッケル)が板材Pの一面にめっき処理されたものである。
【0083】
図6(a)を参照すると、一つの板材Pは、複数の単位領域A1~A4に区画される。ここで、それぞれの単位領域A1~A4は、それぞれケース121に加工される単位板材を構成する。すなわち、それぞれの単位領域は、ケース121に製作可能なサイズを有する。本実施形態では、説明の便宜上、板材Pに仮想に区画されたそれぞれの単位領域について、第1単位領域A1、第2単位領域A2、第3単位領域A3、及び第4単位領域A4に区分して指称する。
【0084】
図6の(c)および(d)を参照すると、それぞれの単位領域は、切断ラインLcに沿って切断されることにより、単位板材Pに分割され、図6の(e)を参照すると、それぞれの単位板材P1は、円筒状に加工され、それぞれケース121に製作され得る。
【0085】
図6の(b)を参照すると、それぞれの単位領域A1~A4には、スクラッチ領域S1~S4がそれぞれ設けられる。
【0086】
前記スクラッチ領域S1~S4は、所定のスクラッチパターンLs(図8参照)に応じてケース121のめっき層122が化学的にエッチング処理されるか、レーザーによってめっき層122がスクラッチされた領域である。スクラッチ領域Sでは、ケース121の外面(非めっき部)は、外部に露出されるように設けられる。
【0087】
また、スクラッチ領域Sは、各単位領域A1~A4ごとに設けられる。本文書では、各単位領域A1~A4のスクラッチ領域Sを第1スクラッチ領域S1、第2スクラッチ領域S2、第3スクラッチ領域S3、及び第4スクラッチ領域S4に区分して指称する。
【0088】
ここで、第1スクラッチ領域S1は、第1単位領域A1でめっき層122が損傷された領域であり、第2スクラッチ領域S2は、第2単位領域A2でめっき層122が損傷された領域である。
【0089】
また、第3スクラッチ領域S3は、第3単位領域A3でめっき層122が損傷された領域であり、第4スクラッチ領域S4は、第4単位領域A4でめっき層122が損傷された領域である。
【0090】
また、第1スクラッチ領域S1ないし第4スクラッチ領域S4は、板材Pの同一平面上に設けられ、互いに離隔して配置され得る。
【0091】
また、それぞれのスクラッチ領域S1~S4は、それぞれの単位領域A1~A4よりも小さい面積を有することができる。
【0092】
図8を参照すると、単位板材P1は、スクラッチパターンLsを有し得、前記スクラッチパターンは、定格子パターン(図8(a)参照)、斜線格子パターン(図8(b)参照)、波型パターン(図8(c)参照)、横一の字型パターン(図8(d)参照)、または縦一の字型パターン(図8(e)参照)のうちいずれか一つであり得る。
【0093】
このようなスクラッチパターンに応じて、前記スクラッチ領域Sは、前記めっき層122の一部領域が除去された複数の非めっき部と、隣接する2つの非めっき部間にめっき層が残存するめっき部とを含むことができる。
【0094】
それぞれの単位板材P1内のスクラッチ領域Sは、単位板材P1の枠領域Eによって囲まれて設けられ得、単位板材P1の一面の全領域に設けられ得る。前記枠領域Eは、めっき層122のうち非めっき部が外部に露出されず、めっき部のみが外部に露出された領域である。
【0095】
図9および図11を参照すると、溶射コーティング装置200は、溶融した犠牲金属Mを圧縮空気Acと共に、スクラッチ領域Sが設けられた板材Pの一面に噴射する。図10を参照すると、前記犠牲金属Mは、スクラッチ領域S1を囲む多孔性コーティング層123を形成する。
【0096】
図11を参照すると、溶射コーティング装置200は、金属噴射部210、空気噴射部220、ガイド部240、および加熱部250を含む。
【0097】
前記ガイド部240は、犠牲金属ワイヤ231を金属噴射部210に供給し、犠牲金属ワイヤ231が金属噴射部210に進入する進入経路に設けられる。前記ガイド部240は、一対のガイドロール241、242を含むことができる。一対のガイドロール241、242は、互いに反対方向に回転しながら、犠牲金属ワイヤ231を金属噴射部210の通路211に進入させ、犠牲金属ワイヤ231の移動を案内する。
【0098】
前記金属噴射部210は、加熱部250に電気的に連結される。加熱部250は、金属噴射部210に電圧を印加する。
【0099】
また、金属噴射部210には、犠牲金属ワイヤ231が通過する通路211が設けられる。前記犠牲金属ワイヤ231は、加熱された金属噴射部210を通過しながら溶融される。
【0100】
また、犠牲金属の種類に応じて、金属噴射部210の加熱温度は、変更し得る。例えば、アルミニウム(Al)の溶融温度は、約660℃であり、マグネシウム(Mg)の溶融温度は、約650℃である。
【0101】
前記空気噴射部220は、圧縮空気Acを噴射する。空気噴射部220は、金属噴射部210の内部に設けられ得る。前記空気噴射部220は、空気噴射部220の排出口の中心軸が金属噴射部210の排出口の中心軸と同軸上に位置するように、金属噴射部210内に配置され得る。
【0102】
また、圧縮空気Acは、溶融した犠牲金属Mと共に溶射コーティング装置200から噴射される。前記圧縮空気Acは、12,000psi~16,000psiの範囲の圧力で噴射され得、前記圧縮空気Acは、2,000m/s~2,200m/sの範囲の速度で噴射され得る。
【0103】
溶融した犠牲金属Mは、金属噴射部210の通路211に沿って流動して金属噴射部210の外部に排出され、空気噴射部220から排出された圧縮空気Acによって板材Pに噴射される。
【0104】
溶融した犠牲金属Mは、圧縮空気Acと共にスクラッチ領域Sに噴射されて、スクラッチ領域Sの非めっき部が外部に露出されないように板材Pにめっきされる。
【0105】
図9を参照すると、溶射コーティング装置200は、第1スクラッチ領域S1に溶融した犠牲金属Mを噴射することができ、この過程は第2単位領域A2~第4単位領域A4ごとに行われ得る。
【0106】
前記多孔性コーティング層123は、溶融した犠牲金属Mが高圧の圧縮空気Acと共にケース121の外面に噴射されることによって形成される。これにより、多孔性コーティング層123とケース121との結合力が増大され得る。すなわち、高圧の圧縮空気Acと共に溶融した犠牲金属Mの粒子がケース121の外面に噴射されることにより、多孔性コーティング層123が形成され得る。
【0107】
このような過程により、図6(c)に示すように、一つの板材Pには、第1スクラッチ領域S1~第4スクラッチ領域S4をそれぞれ覆う複数の多孔性コーティング層123がそれぞれ設けられ得る。
【0108】
一つの板材Pは、切断ラインLcに沿って、それぞれの単位領域A1~A4ごとに切断されることにより、複数の単位板材P1を構成する。多孔性コーティング層123が設けられた単位板材P1は、円筒状に加工されて、円筒状ケース121に製作される。
【0109】
このような方法で、大量のケース121の製造工程を簡略化することができる。
【0110】
溶射コーティング方式を通じて、前記多孔性コーティング層123は、微細多孔構造を有することができ、水分および空気に接触する犠牲金属の接触面積を増大させることができる。
【0111】
上述した本発明の望ましい実施形態は、例示の目的のために開示されたものであり、本発明に対する通常の知識を有する当業者であれば、本発明の思想と範囲内で多様な修正、変更、付加が可能であり、このような修正、変更、および付加は、下記の特許請求の範囲に属するものと見なすべきである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の一実施形態に係るバッテリーセル、その製造方法、およびこれを含む直接水冷用バッテリーモジュールによれば、ケースよりもイオン化傾向が大きい犠牲金属がケースよりも水分と先にイオン化反応して酸化されるので、ケースの耐腐食性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0113】
100 直接水冷用バッテリーモジュール(バッテリーモジュール)
110 セルフレーム
120 直接水冷用バッテリーセル(バッテリーセル)
121 ケース
122 めっき層
123 多孔性コーティング層
127 電極組立体
160 冷却水供給部
S スクラッチ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図6(e)】
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図8(d)】
図8(e)】
図9
図10
図11
【国際調査報告】