(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】1-(N-(キノリン-2-イル)-(フェニルアミノ)-1-デオキシ-ベータ-D-グルコピラヌロン酸誘導体の調製の方法
(51)【国際特許分類】
C07H 15/26 20060101AFI20241209BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20241209BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20241209BHJP
A61P 1/04 20060101ALN20241209BHJP
A61P 31/12 20060101ALN20241209BHJP
A61P 31/18 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
C07H15/26
A61K31/706
A61P29/00
A61P1/04
A61P31/12
A61P31/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537814
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022086874
(87)【国際公開番号】W WO2023118061
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515048803
【氏名又は名称】アビバックス
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】モージェ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ドニ,ジェローム
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA14
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057JJ55
4C086AA01
4C086AA04
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA68
4C086ZB11
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、下記の式(I)の粗化合物を精製する方法であって、
【化1】
ここで、該方法は、式(I)の粗化合物を単離する工程を含み、該単離する工程は、(i) 式(I)の粗化合物をメタノールで可溶化する工程、そして、水を用いて析出する工程、及び、(ii) 30℃以下の温度で乾燥する工程を含むところの上記方法に関する。式(I)の化合物を調製する為の製造方法は更に本出願において提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の粗化合物を精製する方法であって、
【化1】
ここで、
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、-CN、ヒドロキシル、(C
1~C
3)フルオロアルキル、(C
1~C
3)フルオロアルコキシ、(C
3~C
6)シクロアルキル、-NO
2、-NR
1R
2、(C
1~C
4)アルコキシ、フェノキシ、-NR
1-SO
2-NR
1R
2、-NR
1-SO
2-R
1、-NR
1-C(=O)-R
1、-NR
1-C(=O)-NR
1R
2、-SO
2-NR
1R
2、-SO
3H、-O-SO
2-OR
3、-O-P(=O)-(OR
3)(OR
4)、-O-CH
2-COOR
3又は(C
1~C
3)アルキルを表し、ここで、前記アルキルは、ヒドロキシル基、下記の式(IIa)の基又は下記の式(IIIa)の基によって、一置換又は二置換されていてもよい
【化2】
【化3】
R
1及びR
2の各々は独立して、水素原子又は(C
1~C
3)アルキルであり;
R
3及びR
4の各々は独立して、水素原子、Li+、Na+、K+、N+(Ra)
4又はベンジルであり;
各R’は独立して、水素原子、(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン原子、-NO
2、-NR
1R
2、モルホリニル、モルホリノ、N-メチルピペラジニル、(C
1~C
3)フルオロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、-O-P(=O)-(OR
3)(OR
4)、-CN、下記の式(IIa)の基、又は下記の式(IIIa)の基であり、
【化4】
【化5】
Aは、共有結合、酸素原子又はNHであり;
Bは、共有結合又はNHであり;
mは、1、2、3、4又は5であり;
pは1、2又は3であり;
Ra及びRbの各々は独立して、水素原子、(C
1~C
5)アルキル、又は(C
3~C
6)シクロアルキルであり、又は、
Ra及びRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和5員又は6員複素環を形成し、ここで、前記複素環は、1以上のRaによって置換されていてもよく、但し、R’が(IIa)基又は(IIIa)基である場合において、他のR’基が前記(IIa)基又は前記(IIIa)基と異なる場合にのみ、n’が2又は3であってもよく;並びに、
nは1、2又は3であり;
n’は1、2又は3である、
ここで、該方法は、式(I)の粗化合物の単離工程を含み、該単離工程は、
(i) 式(I)の粗化合物をメタノールで可溶化する工程、そして、水を用いて析出する工程、及び、
(ii) 30℃以下の温度で乾燥する工程
を含む、
前記方法。
【請求項2】
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は-CN基、ヒドロキシル基、-COOR
1基、(C
1~C
3)フルオロアルキル基、(C
1~C
3)フルオロアルコキシ基、-NO
2基、-NR
1R
2基、(C
1~C
4)アルコキシ基、フェノキシ基及び(C
1~C
3)アルキル基の中から選択される基を表し、ここで、前記アルキルは、ヒドロキシル基によって一置換されていてもよく、
R
1及びR
2は独立して、水素原子又は(C
1~C
3)アルキル基であり、
nは1、2又は3であり、
n’は1又は2であり、並びに、
各R’は独立して、水素原子、又は(C
1~C
3)アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、-COOR
1基、-NO
2基、-NR
1R
2基、モルホリニル基若しくはモルホリノ基、N-メチルピペラジニル基、(C
1~C
3)フルオロアルキル基、(C
1~C
4)アルコキシ基及び-CN基の中から選択される基を表す、
請求項1に記載の、式(I)の粗化合物を精製する方法。
【請求項3】
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は(C
1~C
3)フルオロアルキル基、(C
1~C
3)フルオロアルコキシ基、-NR
1R
2基、(C
1~C
4)アルコキシ基、フェノキシ基及び(C
1~C
3)アルキル基の中から選択される基を表し、ここで、前記アルキルは、ヒドロキシル基によって一置換されていてもよく、
R
1及びR
2は独立して、(C
1~C
3)アルキル基であり、
nは、1、2又は3、好ましくは1又は2、更により好ましくは1であり、
n’は、1又は2、好ましくは1、であり、並びに、
各R’は独立して、水素原子、又は(C
1~C
3)アルキル基、ハロゲン原子、-NR
1R
2基、(C
1~C
3)フルオロアルキル基及び(C
1~C
4)アルコキシ基の中から選択される基を表す、
請求項1又は2に記載の、式(I)の粗化合物を精製する方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が下記の式(1)の化合物である、
【化6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の、式(I)の粗化合物を精製する方法。
【請求項5】
シリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製、特には、塩化メチレン、メタノール又はそれらの混合物を用いて溶出されるシリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製、が行われ、該精製の前に、シリカゲルの前処理が行われてもよい、請求項1~4のいずれか1項に記載の、式(I)の粗化合物を精製する方法。
【請求項6】
室温で、芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特には水酸化リチウム、を用いて、下記の式(IV)の化合物を脱保護して、式(I)の化合物を得る工程が先に行われる、
【化7】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は(C
1~C
4)アルキル基を表す、
請求項1~5のいずれか1項に記載の精製する方法。
【請求項7】
式(IV)の化合物が下記の化合物(4)である、
【化8】
請求項6に記載の精製する方法。
【請求項8】
前記脱保護する工程の前に、式(III)の化合物を溶液中に分割導入することを伴って、CdCO
3の存在下、芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレンから選択される溶媒中で、特にはトルエン中で、下記の式(II)の化合物を下記の式(III)の化合物と反応させて、下記の式(IV)の化合物を得る工程が行われる、
【化9】
【化10】
【化11】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は、(C
1~C
4)アルキル基、特にはメチル基、を表す、
請求項6又は7に記載の精製する方法。
【請求項9】
式(II)の化合物が下記の化合物(2)であり、及び式(III)の化合物が下記の化合物(3)である、
【化12】
【化13】
請求項8に記載の精製する方法。
【請求項10】
式(III)の化合物を溶液中に分割導入することが、式(III)の化合物を溶液中に独立した2回の添加をすることを含み、ここで、第1の導入が、式(II)の化合物に対する式(III)の化合物のモル比が0.6~1の範囲、特には0.7~0.9の範囲、で行われ、及び第2の導入が、式(II)の化合物に対する式(III)の化合物のモル比が0.6~1の範囲、特には0.7~0.9の範囲、で行われ、ここで、式(II)の化合物に対するモル比の合計が1.2~2、特には1.4~1.8、である、
請求項9に記載の精製する方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項において定義された式(I)の化合物を調製するための製造方法であって、
工程1として、下記の式(III)の化合物を溶液中に分割導入することを伴って、CdCO
3の存在下、芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレン、から選択される溶媒中で、特にはトルエン中で、式(II)の化合物が下記の式(III)の化合物と反応して、下記の式(IV)の化合物を得ること、
【化14】
【化15】
【化16】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は(C
1~C
4)アルキル基を表す、
引き続き、
工程2として、室温で、過酸化水素の不存在下、且つ芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特には水酸化リチウム、を用いて、下記の式(IV)の化合物が脱保護されて、式(I)の化合物を得ること
を含む、前記製造方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に定義された式(I)の粗化合物を調製する為の方法であって、医薬的に許容される賦形剤と共に、前記式(I)の化合物を含む医薬組成物を調製する工程を更に含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1-(N-(キノリン-2-イル)-(フェニルアミノ)-1-デオキシ-β-D-グルコピラヌロン酸誘導体(本明細書において、「キノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体」と命名される)を精製する為の新規な方法、特には、1-(N-(8-クロロ-キノリン-2-イル)-(4-トリフルオロメトキシ-フェニルアミノ)-1-デオキシ-β-D-グルコピラヌロン酸を精製する為の新規な方法、が本明細書において提供される。該提供される方法は、より特には工業的規模に適している。キノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体、特には1-(N-(8-クロロ-キノリン-2-イル)-(4-トリフルオロメトキシ-フェニルアミノ)-1-デオキシ-β-D-グルコピラヌロン酸、の調製の為の改良された方法、工業的実施の為により適合した方法、が本明細書においてまた提供される。
【背景技術】
【0002】
国際公開第WO2016/135052号は、キノリン-2-イル-フェニルアミングルクロニド誘導体の調製及び使用を記載している。上記グルクロニド誘導体は、クロロ-N-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]キノリン-2-アミン(ABX464とも名付けられている)のN-グルクロニド代謝物である。上記化合物は、ウイルス感染又はレトロウイルス感染及びウイルス関連状態、特にはAIDS又はAIDS関連状態又はヒト免疫不全ウイルス(HIV:Human Immunodeficiency virus)の処置又は予防において有用であるとして開示されている。国際公開第WO2020/127843号において、様々な炎症性疾病の処置において有用であることとして更に開示されている。
【0003】
ABX464は、中庸度から重度の潰瘍性大腸炎(UC:ulcerative colitis)の処置における臨床試験中の薬剤候補である。
【0004】
グルクロニド誘導体の合成経路は国際公開第WO2016/135052号において開示されており、下記に示す合成経路に従っている。
【化1】
ここで、上記化合物(4)はまた、新規な中間体化合物として開示されている。
【0005】
化合物(2)と化合物(3)との反応は、ケーニッヒ・クノール(Koenigs-Knorr)合成に従って行われうる。その後、化合物(4)が脱保護されて化合物(1)が得られうる。
【0006】
しかしながら、国際公開第WO2016/135052号において開示されているような精製工程、すなわち、粗化合物(1)の酢酸エチルを用いた抽出、次いで固体抽出物を得る為の乾燥までの濃縮は、工業的規模に適合していない。事実、上記抽出後に乾燥濃縮を実施することは望ましくなく、工業的規模で固体抽出物を扱うことは実現不可能でさえある。言い換えれば、本発明者等は、スケールアップによって精製の問題が発生したと述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、工業的規模の生産に適合した後に、本明細書において定義される式(I)のキノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体の精製方法を提供する必要性がある。改善された純度を呈し、及び特には残留溶媒量に関してICHレベルの要件を尊重する、式(I)のキノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体を提供する更なる必要性がある。許容される収率で工業的実施に適合した後に、本明細書において定義される式(I)のキノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体を調製する為の製造方法を提供する為の別の更なる必要性がある。
【0008】
工業的規模の制約に関連する国際公開第WO2016/135052号に関する他の利点は、本明細書において後に詳述される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、特には本明細書において後に定義されている化合物(IV)の脱保護工程の後に得られる、本明細書において後に定義されている式(I)の粗キノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体を精製する為の特定の条件を驚くべきことに見出した。本発明者等は特には、固体抽出物からでなく溶液相から出発して式(I)の上記誘導体を精製する為の手段を開発した。
【0010】
本発明は加えて、工業的規模の大量生産の観点から改良された、本明細書において後に定義されている式(I)のキノリニル-2-イル-フェニルアラミングルクロニド誘導体を調製する方法を提供することが意図されている。本発明者等は特には、下記の説明においてより明らかになるように、様々な観点を簡略化し、それにより、特許請求される方法は世界的に工業的規模に完全に適合される。
【0011】
従って、下記の式(I)の粗化合物を精製する方法が本明細書において提供される:
【化2】
ここで、
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、-CN、ヒドロキシル、(C
1~C
3)フルオロアルキル、(C
1~C
3)フルオロアルコキシ、(C
3~C
6)シクロアルキル、-NO
2、-NR
1R
2、(C
1~C
4)アルコキシ、フェノキシ、-NR
1-SO
2-NR
1R
2、-NR
1-SO
2-R
1、-NR
1-C(=O)-R
1、-NR
1-C(=O)-NR
1R
2、-SO
2-NR
1R
2、-SO
3H、-O-SO
2-OR
3、-O-P(=O)-(OR
3)(OR
4)、-O-CH
2-COOR
3又は(C
1~C
3)アルキルを表し、ここで、前記アルキルは、ヒドロキシル基、下記の式(IIa)の基又は下記の式(IIIa)の基によって、一置換又は二置換されていてもよい
【化3】
【化4】
R
1及びR
2の各々は独立して、水素原子又は(C
1~C
3)アルキルであり;
R
3及びR
4の各々は独立して、水素原子、Li+、Na+、K+、N+(Ra)
4又はベンジルであり;
各R’は独立して、水素原子、(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン原子、-NO
2、-NR
1R
2、モルホリニル、モルホリノ、N-メチルピペラジニル、(C
1~C
3)フルオロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、-O-P(=O)-(OR
3)(OR
4)、-CN、下記の式(IIa)の基、又は下記の式(IIIa)の基であり、
【化5】
【化6】
Aは、共有結合、酸素原子又はNHであり;
Bは、共有結合又はNHであり;
mは、1、2、3、4又は5であり;
pは1、2又は3であり;
Ra及びRbの各々は独立して、水素原子、(C
1~C
5)アルキル、又は(C
3~C
6)シクロアルキルであり、又は、
Ra及びRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和5員又は6員複素環を形成し、ここで、前記複素環は、1以上のRaによって置換されていてもよく、但し、R’が(IIa)基又は(IIIa)基である場合において、他のR’基が前記(IIa)基又は前記(IIIa)基と異なる場合にのみ、n’が2又は3であってもよく;並びに、
nは1、2又は3であり;
n’は1、2又は3である、
ここで、該方法は、式(I)の粗化合物の単離工程を含み、該単離工程は、
(i) 式(I)の粗化合物をメタノールで可溶化する工程、そして、水を用いて析出する工程、及び、
(ii) 30℃以下の温度で乾燥する工程
を含む。
【0012】
より特には、下記の式(1)の化合物を精製する方法が本明細書において提供される。
【化7】
【0013】
上記で定義された式(I)の化合物を製造する為の方法であって、
工程1として、下記の式(III)の化合物を溶液中に分割導入(fractional introduction)することを伴って、CdCO
3の存在下、芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレン、から選択される溶媒中で、特にはトルエン中で、式(II)の化合物が下記の式(III)の化合物と反応されて、下記の式(IV)の化合物を得ること、
【化8】
【化9】
【化10】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は(C
1~C
4)アルキル基を表す、
引き続き、
工程2として、室温で、過酸化水素の不存在下、且つ芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特には水酸化リチウム、を用いて、下記の式(IV)の化合物が脱保護されて、式(I)の化合物を得ること
を含むところの上記方法が本明細書において更に提供される。
【0014】
本明細書において、語「周囲温度」又は「室温」は、15℃~30℃、より特には18℃~25℃、の範囲の温度を云う。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において後に詳述されているように、所望の生成物の単離は析出を通じて達成されるが、該析出の前に、シリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製工程が行われてもよく、前記精製工程それ自体の前に、任意的にシリカゲルの前処理が行われてもよい。
【0016】
1つの実施態様に従うと、R、n、R’及びn’は下記の意味を有する:
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は-CN基、ヒドロキシル基、-COOR1基、(C1~C3)フルオロアルキル基、(C1~C3)フルオロアルコキシ基、-NO2基、-NR1R2基、(C1~C4)アルコキシ基、フェノキシ基及び(C1~C3)アルキル基の中から選択される基を表し、ここで、上記アルキルは、ヒドロキシル基によって一置換されていてもよく、
R1及びR2は独立して、水素原子又は(C1~C3)アルキル基であり、
nは1、2又は3であり、
n’は1又は2であり、並びに、
各R’は独立して、水素原子、又は(C1~C3)アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、-COOR1基、-NO2基、-NR1R2基、モルホリニル基若しくはモルホリノ基、N-メチルピペラジニル基、(C1~C3)フルオロアルキル基、(C1~C4)アルコキシ基及び-CN基の中から選択される基を表す。
【0017】
別の実施態様に従うと、R、n、R’及びn’は下記の意味を有する:
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は(C1~C3)フルオロアルキル基、(C1~C3)フルオロアルコキシ基、-NR1R2基、(C1~C4)アルコキシ基、フェノキシ基及び(C1~C3)アルキル基の中から選択される基を表し、ここで、上記アルキルは、ヒドロキシル基によって一置換されていてもよく、
R1及びR2は独立して、(C1~C3)アルキル基であり、
nは、1、2又は3、好ましくは1又は2、更により好ましくは1であり、
n’は、1又は2、好ましくは1、であり、並びに、
各R’は独立して、水素原子、又は(C1~C3)アルキル基、ハロゲン原子、-NR1R2基、(C1~C3)フルオロアルキル基及び(C1~C4)アルコキシ基の中から選択される基を表す。
【0018】
別の実施態様に従うと、式(I)の化合物は、下記の式(1)の化合物である、
【化11】
【0019】
本発明の文脈において、各語は下記の意味を有する。
【0020】
「ハロゲン原子」は、塩素原子、フッ素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味すると理解され、特には塩素原子、フッ素原子又は臭素原子を示す。
【0021】
本明細書において使用される場合に、「(C1~Cx)アルキル」は夫々、C1~Cxの一級、二級又は三級の飽和炭化水素を云う。例は、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、ブチル及びペンチルであるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書において使用される場合に、「(C3~C6)シクロアルキル」は夫々、環状飽和炭化水素を云う。例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルであるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において使用される場合に、「(C1~C4)アルコキシ」は夫々、O-(C1~C4)アルキル部分を云い、ここで、アルキルは上記で定義されているとおりである。例は、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ及びブトキシであるが、これらに限定されない。
【0024】
「フルオロアルキル基」及び「フルオロアルコキシ基」は夫々、上記で定義されたアルキル基及びアルコキシ基を云い、ここで、上記基は少なくとも1つのフッ素原子によって置換されている。例は、パーフルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル又はパーフルオロプロピル、である。
【0025】
本明細書において使用される場合に、「飽和5員又は6員複素環」は夫々、少なくとも1つのヘテロ原子を含む飽和環を云う。例は、モルホリン、ピペラジン、チオモルホリン、ピペリジン及びピロリジンであるが、これらに限定されない。
【0026】
精製方法/工程
【0027】
国際公開第WO2016/135052号において開示されている精製工程は、反応混合物をクエンチした後に、粗化合物(1)を酢酸エチルで抽出し、次に、酸性化し、続いて、酢酸エチルで抽出する工程、そして、硫酸ナトリウム上で乾燥させる工程、最後に、溶媒を除去した後に得られた固体抽出物をシリカカラムで精製する工程からなる。
【0028】
本発明者等は、特には工業的規模での固体乾燥抽出物の実施には大きな困難が伴う故に、この手順は工業的規模に適合しなかったと述べている。
【0029】
従って、本発明者等は、固体濃縮物の代わりに溶液又は懸濁物を取り扱い、製薬業界の一般的な基準、すなわち欧州医薬品庁(European Medicines Agency)のICH残留溶媒要件、に従って、上記化合物(1)の許容可能な純度要件並びに残留溶媒の許容可能なレベルを遵守することを可能にする単離工程を開発した。従って、本発明者等は、これらの期待に応えることを可能にする為に、特定の温度で特定の溶媒析出系を見出し、ここで、該特定の溶媒析出システムの前に、シリカゲルカラムを用いた精製工程が行われてもよく、該精製工程の前に任意的に、シリカゲル前処理が行われてもよい。
【0030】
特定の実施態様に従うと、該乾燥工程は20~30℃の温度範囲で行われうる。
【0031】
それ故に、式(I)の粗化合物、特に粗化合物(1)、特に本明細書で後に定義されている化合物(IV)の脱保護工程の後に得られる反応混合物は、メタノールで希釈されることができ、冷水上で添加した後に、褐色の固体析出物が得られうる。
【0032】
本明細書の下記の実施例2において明らかなように、析出の為に前記特定の溶媒系を使用し、そして、30℃以下の温度で乾燥させることによって、残留溶媒の許容量の点で有意な改善が得られた。
【0033】
本明細書の下記の実施例2において更に明らかなように、トルエン、塩化メチレン、メタノール及びテトラヒドロフランの残留量は、ICHレベル要件に適合して得られうる。すなわち、メタノールについてのICHレベル要件は、所望の化合物の総量に対して3000ppm未満である。同様に、テトラヒドロフランについてのICHレベル要件は、所望の化合物の総量に対して720ppmである。同様に、トルエンについてのICHレベル要件は、所望の化合物の総量に対して890ppmである。同様に、塩化メチレンについてのICHレベル要件は、所望の化合物の総量に対して600ppmである。
【0034】
1つの観点に従うと、上記で定義されている式(I)の粗化合物を精製する工程が本明細書において提供され、ここで、該精製する工程の前に、シリカゲルカラムを用いた精製工程が行われ、該精製工程の前に任意的に、シリカゲル前処理が行われる。
【0035】
従って、先に開示された精製方法が本明細書において提供され、ここで、該精製方法の前に、シリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製、特には塩化メチレン、メタノール又はそれらの混合物で溶出されるシリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製が行われ、該シリカゲルクロマトグラフィーカラムでの精製の前に、任意的にシリカゲルの前処理が行われてもよい。
【0036】
シリカゲルによる任意の前処理の間に、上記で定義されている式(I)の化合物がシリカゲル上に吸着される。上記の任意の精製の前段階により、式(I)の化合物を得る為のシリカゲルカラムの運転回数を多くすることを避けることができる。上記のシリカゲルの前処理はまた、式(II)、特には式(2)、の未反応化合物を収集することを可能にするという利点を提示し、それにより、式(I)、特に式(1)、の誘導体を調製する為の更なる製造バッチの為に再利用されうる。
【0037】
シリカゲルは、塩化メチレン、テトラヒドロフラン又はそれらの組み合わせから選択される溶媒で1回目に洗浄されてもよい。これらの最初の一連の洗浄の回数は、1~3で変わりうる。次に、該生成物は、THFのみ又はメタノールのみを用いる第二の一連の洗浄で脱離されうる。これらの第二の一連の洗浄の洗浄回数は、1~3で変わりうる。
【0038】
シリカゲルクロマトグラフィー工程に関しては、シリカゲルカラムは特には、順相、特にはシリカゲル「Chromatorex GS60-20/45」、から選択されうる。溶出は、塩化メチレン/メタノール混合物で行われうる。
【0039】
本発明に従う精製の更なる方法を実施することにより、化合物(1)の全収率は10%~20%、特には11%~17%、に達することができた。
【0040】
全体として、上記された精製工程により、良好な品質特性、すなわち高純度、を示し、及びまた許容可能なレベルの残留溶媒を示すところの、式(I)の化合物を得ることができる。
【0041】
本発明者等が式(I)の最終化合物、特に式(1)の最終化合物、中に検出した不純物の中で、式(II)の出発化合物、並びに下記の式(V)を有するメチルエステルが挙げられうる。
【化12】
ここで、化合物(1)の場合には下記の化合物(5)である。
【化13】
【0042】
本発明に従って得られる式(I)の化合物、特には化合物(1)、は典型的には、90~97%、特には92~96%、更により特には93~96%、の範囲の純度を呈し、0.3~2.1%の範囲の式(II)の化合物、特には化合物(2)、の量、及び1.9~2.3%の範囲の式(V)の不純物、特には不純物(5)、の量を有する。
【0043】
本発明に従って得られる式(I)の化合物、特には化合物(1)、は典型的には、750ppm未満のメタノール、420ppm未満の塩化メチレン、360ppm未満のテトラヒドロフラン及び445ppm未満のトルエンの残留含量を示しうる。
【0044】
式(I)の化合物の調製の方法
【0045】
1つの実施態様に従うと、精製の本発明の工程は、式(IV)の化合物の脱保護工程の後に実行されうる。
【化14】
ここで、R、R’、n、n’及びR”は上記で定義された通りであり、詳細は本明細書の下記の工程2において説明されている。
【0046】
式(IV)の化合物は、ケーニッヒ・クノール(Koenigs-Knorr)合成に従って、下記の式(II)の化合物を下記の式(III)の化合物と反応させることによって調製されてもよく、詳細は本明細書の下記の工程1において説明されている。
【化15】
【化16】
ここで、R”は、上記で定義されたとおりである。
【0047】
本明細書において提供される式(I)の粗化合物の精製の前に、本明細書において後に定義されている工程1及び工程2を実施する、上記で定義される式(I)の化合物を調製する為の改良された方法が更に提供される。
【0048】
クロロ-N-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]キノリン-2-アミングルクロニドを5g未満の量で得る為の国際公開第WO2016/135052号に開示された製造方法は、スケールアップが想定される限り適用されることができない。
【0049】
工程1
【0050】
本明細書において後に詳述されているように、工程1は、国際公開第WO2016/135052号において開示されているカップリング工程は、溶液中の式(III)の化合物の導入及び分割導入によって主に異なる。
【0051】
更なる改良が更に実施されてもよい。例えば、化合物(III)を導入する前の12時間の還流段階が抑制されうる。更に、シリカゲルクロマトグラフィーでの精製工程が回避されてもよい。加えて、該得られた粗生成物(IV)、特には化合物(4)、は、粘稠な乾燥抽出物としてワークアップする(worked-up)のではなく、溶媒、例えばTHF、中で溶液中に維持されてもよい。最後に、生産性を高める為に溶媒量が減らされてもよい。
【0052】
上記で定義された式(II)の化合物の式(IV)の化合物への変換率はかなり低い。例えば、国際公開第WO2016/135052号の再試験により、反応の5日後でも残存化合物(2)の約50%が与えられることができた。その上、化合物(3)が分解する可能性があり、それにより反応全体の収率に強く影響することが述べられている。
【0053】
本発明に従って、工程1は、芳香族溶媒から選択される溶媒中、例えばトルエン又はキシレン中、より特にはトルエン中、で、CdCO3の存在下、式(II)の化合物を、上記で定義された式(III)の化合物と反応させることによって実施されうる。
【0054】
ここに、式(IV)の化合物を調製する為の改良された方法が本明細書において提供され、ここで、式(III)の化合物は、トルエンの存在下、式(II)の化合物に対して1.2~3、特には1.4~2.5、更により特には1.5~1.7、の範囲のモル比で、式(II)の化合物に対して10~30、特には10~20、より特には10~15、の範囲の体積比で反応される。
【0055】
反応は還流温度、すなわち111℃、で行われうる。
【0056】
溶媒の量を減らすことにより、転化率が上げられることができた。
【0057】
その上、本発明者等は、溶液中に式(III)の化合物を分割導入することにより、反応転化率を向上させることができたことを述べている。
【0058】
従って、特定の実施態様に従うと、工程1は、溶液中の式(III)の化合物、特には化合物(3)、の、分割導入、特には2回に分けての分割導入、で行われうる。上記特定の実施態様に更に従うと、第1の導入は、式(II)の化合物に対する式(III)の化合物、特には化合物(2)に対する化合物(3)、のモル比が0.6~1の範囲、特には0.7~0.9の範囲、で実行され得、及び第2の導入は、式(II)の化合物に対する式(III)の化合物、特には化合物(2)に対する化合物(3)、のモル比が0.6~1の範囲、特には0.7~0.9の範囲、で実行され得、ここで、式(II)の化合物に対するモル比の合計が1.2~2、特には1.4~1.8、である。
【0059】
工程1は、10~120時間、特には20~80時間、更により特には30~50時間、行われうる。
【0060】
該製造方法のこの段階での収率は定量的である。
【0061】
実施例1.1は、上記工程1をより具体的に示している。
【0062】
工程2
【0063】
本明細書の下記においてより詳細に説明されているよう、工程2は、主に過酸化水素の除去によって、国際公開第WO2016/135052号において開示されている脱保護工程と異なる。上記の除去は、方法の安全性の点で有利点をもたらす。
【0064】
更なる改良が更に行われてもよい。例えば、本発明の工程2は、チオ硫酸ナトリウムを使用する必要がもはやない。最後に、溶媒量、例えばTHF及び水、の量が減らされうる。メタノールと水との混合物による析出による単離を用いた単離工程及びワークアップの改良は、シリカゲル上での任意の前処理工程の実施と同様に、既に上述されている。
【0065】
国際公開第WO2016/135052号において明らかなように、化合物(4)は、水酸化リチウム一水和物の懸濁物中で過酸化水素の存在下、第2の工程で反応させた。本発明者等は、過酸化水素の存在は、実際にはこの脱保護工程に必須でないと述べている。
【0066】
上記で定義した式(I)の化合物を上記で定義された式(IV)の化合物から調製する為の改良された方法が本明細書において提供され、ここで、式(IV)の化合物は、芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、室温で、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特に水酸化リチウム、と反応される。
【0067】
該溶媒は、式(IV)の化合物に対して、5~30、特には5~15、より特には5~7、
の範囲の体積比で実施されうる。
【0068】
製造工程のこの段階での収率、すなわちシリカゲルでの上述された前処理、シリカゲルカラムでの精製と析出工程とを含む精製工程後の収率、は、10%~20%、特には12%~17%、である。
【0069】
実施例1.2は、上記工程2をより具体的に示している。
【0070】
従って、本発明に従う精製工程が本明細書において更に提供され、ここで、該精製工程の前に、室温で、芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特には水酸化リチウム、を用いて、下記の式(IV)の化合物を脱保護する工程が先に行われて、式(I)の化合物を得る。
【化17】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は(C1~C4)アルキル基を表す。
【0071】
1つの変形に従うと、R”はメチル基である。
【0072】
他の変形に従うと、上記請求項に記載の精製方法であって、式(IV)の化合物が下記の化合物(4)である。
【化18】
【0073】
本発明に従う精製方法が本明細書において更に提供され、ここで、上記脱保護工程の前に、式(III)の化合物を溶液中に分割導入することを伴って、CdCO
3の存在下、芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレンから選択される溶媒中で、特にはトルエン中で、下記の式(II)の化合物を下記の式(III)の化合物と反応させて、下記の式(IV)の化合物を得る工程が行われる。
【化19】
【化20】
【化21】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は、(C
1~C
4)アルキル基、特にはメチル基、を表す。
【0074】
1つの変形に従うと、式(II)の化合物は下記の化合物(2)であり、及び式(III)の化合物が下記の化合物(3)である。
【化22】
【化23】
【0075】
上述された工程1及び工程2を実施する工程を含む化合物(1)の新規な調製方法が本明細書においてまた提供され、より特には、上記の式(I)の化合物を調製する為の製造法であって、
工程1として、下記の式(III)の化合物を溶液中に分割導入することを伴って、CdCO
3の存在下、芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレン、から選択される溶媒中で、特にはトルエン中で、式(II)の化合物が下記の式(III)の化合物と反応して、下記の式(IV)の化合物を得ること、
【化24】
【化25】
【化26】
ここで、R、R’、n及びn’は、請求項1~4のいずれか1項において定義されている通りであり、並びに、各R”は(C
1~C
4)アルキル基を表す、
引き続き、
工程2として、室温で、過酸化水素の不存在下、且つ芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)から選択される溶媒、特にはテトラヒドロフラン、の存在下、水酸化リチウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、特には水酸化リチウム、を用いて、下記の式(IV)の化合物が脱保護されて、式(I)の化合物を得ること
を含む製造方法が本明細書においてまた提供される。
【0076】
上記で定義された式(I)の化合物、特には上記で定義された化合物(1)を調製する為の方法であって、医薬的に許容される賦形剤と共に、そのような式(I)の化合物、特には化合物(1)、を含む、医薬組成物を調製する工程を更に含むところの上記方法が本明細書において更に提供される。
【0077】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通じて、語「を含む」は、特に断りのない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解されるべきである。
【0078】
表現「...~...」及び「...~...の範囲」は、特に断りのない限り、限度値が含まれることを意味するものとして理解されるべきである。
【0079】
以下において、本発明は、下記の実施例を参照してより詳細に説明されている。これらの実施例は、本発明を説明する為に提供されるものであり、本発明の範囲及び精神を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0080】
実施例
【0081】
略語の一覧
・塩化メチレン:DCM,
・テトラヒドロフラン:THF
【0082】
実施例1:粗化合物(1)を調製する為の製造方法
【0083】
1.1 工程1
【0084】
1.1.1 化合物(3)の固体の分割導入(比較例)により
【0085】
上記で定義された化合物(2)(20.0g)が炭酸カドミウム(6.0g,0.6当量)及びトルエン(580mL,29容量)と混合された。結果として得られた混合物が1時間共沸乾燥され、その後、上記で定義された化合物(3)(38.0g,1.6当量)を28時間かけて4回に分けて還流混合物上に加えられた。混合物が還流で更に46時間加熱し、その後、室温まで冷却され、ろ過され、そして、塩化メチレンで洗浄された。濾過物が一緒にされ、そして、乾燥するまで濃縮され、その後、DCMで希釈され、水で3回洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、乾燥するまで濃縮され、そして、THFで希釈され、その後、工程2に供された。
【0086】
化合物(4)が、定量的収率で単離され、そして、43%のHPLC純度であった(53%の残りの化合物(2))。
【0087】
1.1.2 溶液中の化合物(3)の分割導入及び希釈度の減少(本発明)
【0088】
上記化合物(2)(65.0kg)は、炭酸カドミウム(52.7kg,1.6当量)及びトルエン(325L,5容量)と混合された。結果として得られた混合物が共沸乾燥の為に還流まで加熱され、トルエン(318.5L,2.5容量)中の化合物(3)(61.1kg,0.8当量)の溶液をこの温度で8時間掛けて加えられた。トルエン(160L,2.5容量)の部分蒸留が行われ、そして、還流が夜間(10時間)維持された。トルエン(318.5L,2.5容量)中の化合物(3)(61.1kg,0.8当量)の溶液の第2の部分が8.5時間掛けて還流で加えられた。トルエン(160L,2.5容量)の部分蒸留が行われ、そして、還流が24時間維持された。次に、反応混合物が室温まで冷やされ、ろ過され、そして、塩化メチレンで濯がれた。濾過物が一緒にされ、そして、炭酸水素ナトリウム水性溶液(65Lの水中5.2kg)で洗浄され、続いて水(65L)で洗浄された。結果として得られた有機層が濃縮乾固され、そして、残渣がTHF(130L)で希釈され、その後、工程2に供された。
【0089】
化合物(4)が定量的収量(126kg)で単離され、そして、48%のHPLC純度であった。
【0090】
従って、化合物(3)の分割導入により、化合物(4)をまた定量的収率で、及びわずかに改善された純度で与えることができることが本明細書において確認された。
【0091】
1.2 工程2
【0092】
工程1から結果として得られた上記化合物(4)のTHF溶液(310kgの溶液,126kgの化合物(4))がテトラヒドロフラン(449kg)で希釈された。水酸化リチウム一水和物(80.6kg)の水(327L)溶液が20℃で化合物(4)溶液に加えられ、20℃で2時間撹拌された。水性層が捨てられ、そして、有機層が濃縮され、水(252L)及び塩化メチレン(670kg)で希釈され、塩酸でpH1まで酸性化された。有機層が分離され、そして水性層がDCM(335kg)で抽出された。有機層が一緒にされ、水(252L)で洗浄された。シリカゲル(90.8kg)が有機層に加えられ、そして、混合物が20℃で30分間撹拌され、濾過され、そして、シリカゲルパッドが塩化メチレン(168kg)で洗浄され、そして、DCM(160kg)とTHF(6.2L)との混合物で2回洗浄された。未反応化合物(2)の更なる価値化の為に、これら3回の洗浄が行われた。次に、シリカゲルパッドが112kg及び2x56kgのTHFで連続的に洗浄された。結果として得られた溶液が真空下で濃縮され、そして、残渣がDCM(67kg)とTHF(1.3L)との混合物で希釈された。結果として得られた溶液が、溶離液としてのDCM/メタノール混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製された。収集された画分が集められ、真空下で濃縮され、そして、化合物(1)の推定量に関して1容量のメタノール(15L)で希釈された。
【0093】
実施例2:粗化合物(1)の精製の方法
【0094】
2.1. メタノール/水系、及び30℃での乾燥(本発明)により
【0095】
実施例1において製造された粗化合物(1)の析出が下記の通りに行われる。
【0096】
次に、実施例1からの1容量のメタノール(15L)で希釈された上記粗化合物(1)(15kg)が、20容量の脱塩水(300L)に0/5℃で1時間掛けて加えられ、そして、0.5容量のメタノールで洗浄された。懸濁物が濾過され、そして、ケーキが脱塩水(15L)で洗浄された。湿った生成物が30℃で、トレーオーブン中、含水量と残留溶媒が規格を満たすまで乾燥された。得られた生成物は褐色固体であり、95%の収率(14.35kg)であった。
【0097】
本プロトコールに従って得られた化合物(1)が、95.3%のHPLC純度を有し、並びに0.8%の化合物(2)及び2.0%のメチルエステル不純物(5)を含んでいた。含水率は3.5%であり、及び残留溶媒は下記の通りであった:メタノール<750ppm、DCM<150ppm、THF<180ppm及びトルエン<223ppm。
【0098】
本発明に従って行われた精製工程では、工業的規模に完全に準拠しており、欧州医薬品庁(European Medicines Agency)のICH残留溶媒要件を満たした非晶質固体形態で化合物(1)を与えることが観察された。
【0099】
2.2. メタノール/水系、及び50℃での乾燥(比較例)により
【0100】
上記された実施例2.1のように分割された部分が、30℃で100時間、及び50℃で11時間乾燥された。
【0101】
得られた生成物は褐色の固体であり、93.4%のHPLC純度を有し、並びに2.1%の化合物(2)及び2.1%のメチルエステル不純物(5)を含んでいた。
【0102】
含水率は3.2%であり、並びに残留溶媒は下記の通りであった:メタノール738ppm、DCM<300ppm、THF<360ppm及びトルエン<445ppm。
【0103】
本発明外の方法(すなわち、30℃超の温度)に従って行われる精製工程は、はるかに望ましくない分解をもたらすことが観察されている。
【0104】
2.3.DCM/ヘプタン系(比較例)により
【0105】
実施例1において製造された粗化合物(1)の析出が下記の通りに行われた。
【0106】
上記粗化合物(1)が4容量のDCMと0.6容量のTHFで可溶化されて(1.4g)、溶液を得る。上記溶液が20~25℃で、1時間45分掛けて10容量のヘプタン(0.5容量のIPAを含む)に加えられ、そして次に、0.5容量のDCMで濯がれる。次に、混合物が室温で2時間30分撹拌される。次に、液状懸濁物液のろ過が行われ、4*0.5容量のヘプタンで洗浄され、そして、0.856gの湿った褐色の生成物を与える。
【0107】
上記生成物が、真空下、20℃で16.5時間、そして、50℃で4日間乾燥される。得られた生成物は褐色の固体であり、77%の収率であった。
【0108】
単離された化合物(1)は、89.4%のHPLC純度(1.8%のメチルエステル不純物(5)及び4.6%の化合物(2))を有し、下記の残留溶媒量を有する:メタノール=782ppm、THF=6157ppm、トルエン=59ppm及びヘプタン=64000ppm。
【0109】
本発明外の方法(すなわち、別の溶媒系を用いる)に従って実施された精製工では、本発明に適合する条件下と比較して、低い収率であり且つ低い純度を有する化合物(1)が得られることが観察された。その上、欧州医薬品庁のICH残留溶媒要件が満たされていない。
【国際調査報告】