(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-16
(54)【発明の名称】空間トランスクリプトーム解析用のバイオチップ、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241209BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20241209BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241209BHJP
【FI】
C12N15/09 200
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537913
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2022142132
(87)【国際公開番号】W WO2023116938
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111601551.X
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210728404.7
(32)【優先日】2022-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524394106
【氏名又は名称】セリジェント・バイオテクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】趙海峰
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、生物試料の核酸情報を解析するためのチップ、前記チップの製造方法を提供する。前記チップは、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報の解析に適用される。本発明は、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報を解析する方法をさらに提供する。本発明の方法及び装置は、組織試料の細胞における核酸の発現情報(空間オミクス情報を含む)を効果的に得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のステップ1からステップ5を含む、アレイを有するバイオチップの製造方法であって、
ステップ1:チップを提供し、
ステップ2:チップ表面リンカー核酸をチップ表面に固定し、
ステップ3:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第1群のバーコード核酸をチップ表面に加え、前記チップ表面リンカー核酸と第1バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、第1方向の複数本の第1バーコードストリップを形成し、前記第1群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第1バーコード核酸を含み、各本の第1バーコードストリップには、1種の第1バーコード核酸が固定され、かつ各条の第1バーコードストリップに固定される第1バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ4:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第2群のバーコード核酸を、第2方向に沿ってチップ表面に加え、複数本の第2バーコードストリップを形成し、前記第2群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第2バーコード核酸を含み、各本の第2バーコードストリップは、1種の第2バーコード核酸を有し、かつ各本の第2バーコードストリップ上の第2バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ5:第1バーコード核酸と第2バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差したチップ表面における位置で第2バーコード核酸と第1バーコード核酸とを結合させ、プローブを形成し、前記プローブの位置は、アレイのフィーチャーを構成し、各フィーチャーは、位置特異的なバーコード配列のプローブを有する、方法。
【請求項2】
平行に設けられた複数のマイクロ流路を有するマイクロ流路装置により、前記第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸をチップ表面に輸送して固定し、前記マイクロ流路のチップ表面と接触する面は、溶液又は溶液中の核酸が通過可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ流路装置の各マイクロ流路に、異なるバーコード配列を有する第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸を加え、好ましくは、前記第1群のバーコード核酸における各第1バーコード核酸のバーコード断片の配列及び前記第2群のバーコード核酸における各第2バーコード核酸のバーコード断片の配列は、指定のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、3'端に、生物試料中の目的核酸を識別、結合するためのプローブ断片(例えば、mRNA又はcDNAを識別、結合する断片、例えばpoly-T配列)及び第2バーコード断片を含み、任意に、前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、固有分子識別子(UMI)をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チップ表面リンカー核酸の3'端は、第1一本鎖結合核酸により第1バーコード核酸に結合する結合断片を有し、前記第1バーコード核酸の5'端は、前記第1一本鎖結合核酸により前記チップ表面リンカー核酸に結合する結合断片を有し、前記チップ表面リンカー核酸の3'端の結合断片及び前記第1バーコード核酸の5'端の結合断片は、それぞれ前記第1一本鎖結合核酸の両端の配列と逆相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1バーコード核酸の3'端は、第2一本鎖結合核酸により第2バーコード核酸に結合した第1結合断片を有し、前記第2バーコード核酸の5'端は、前記第2一本鎖結合核酸により第1バーコード核酸に結合した第2結合断片を有し、前記第1結合断片及び第2結合断片は、それぞれ前記第2一本鎖結合核酸の両端の配列と逆相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ2において、前記チップ表面リンカー核酸は、化学結合による連結によりチップ表面に固定され、前記化学結合は、例えば、アミノ基-アルデヒド基反応による基の連結及び共有結合架橋から選択されるいずれか1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
製造されたチップのフィーチャーでのプローブ密度は、約10
3-10
5個/μm
2である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
製造されたチップのフィーチャーが有するプローブの均一性偏差は、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは6%未満である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
製造されたチップのフィーチャーのサイズ均一性偏差は、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
生物試料の核酸情報を分析するためのチップであって、
前記チップの表面は、アレイを形成するプローブを有し、前記プローブアレイは、互いに直交する行と列を含み、前記アレイにおける各フィーチャーのプローブは、それぞれ異なるバーコード配列を有し、前記プローブは、第1バーコードと第2バーコードを含み、前記プローブアレイの各行のプローブは、同じ第1バーコードを有し、各列のプローブは、同じ第2バーコードを有し、各行のプローブが有する第1バーコードは、互いに異なり、各列のプローブが有する第2バーコードは、互いに異なり、好ましくは、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、その表面全体にチップ表面リンカー核酸を有する、チップ。
【請求項12】
前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端から3'端まで前記チップ表面リンカー核酸、第1バーコード、第2バーコード、及び生物試料における目的核酸を識別、結合するための捕捉断片を含む、請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
製造されたチップのフィーチャーでのプローブ密度は、約10
3-10
5個/μm
2である、請求項11に記載のチップ。
【請求項14】
製造されたチップのフィーチャーが有するプローブの均一性偏差は、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは6%未満である、請求項11に記載のチップ。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により製造される、請求項11から14のいずれか1項に記載のチップ。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載のアレイを有するチップを用いて生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報を解析する方法であって、
前記方法は、前記チップのアレイを組織試料に接触し、アレイにおけるプローブが組織における細胞の核酸、特にmRNAを識別、結合するステップを含む、方法。
【請求項17】
組織における核酸を細胞から放出して前記チップにおけるプローブに接触するステップをさらに含み、好ましくは、前記組織が固定及び包埋された組織である場合、前記組織を透過化することにより核酸を細胞から放出し、
任意に、逆転写反応を行うステップをさらに含み、
任意に、前記cDNA分子を増幅するステップをさらに含み、
任意に、増幅して得られた核酸に対してライブラリ構築/シーケンシングを行うステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生物試料は、被験体に由来する組織試料、例えば、手術で切除した組織試料であり、好ましくは、顕微切片法により加工して得られた組織薄切片である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組織薄切片に対して形態学的解析及び/又は組織学的解析を行うステップをさらに含み、前記組織学的解析は、H&E染色、IHC染色、ISH染色及びFISH染色により行われる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月24日に提出された中国出願第202111601551.X号(発明の名称:空間トランスクリプトーム解析用のバイオチップの製造方法及びその使用)及び2022年6月25日に提出された中国出願202210728404.7(発明の名称:空間トランスクリプトーム解析用のバイオチップの製造方法及びその使用)の優先権を主張し、その内容全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物学及び医療機器分野に関する。具体的には、本発明は、生物試料の細胞の核酸情報を分析するためのチップを製造する方法に関する。前記チップは、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報の分析に適用される。
【背景技術】
【0003】
生物組織の細胞組織と発現パターンの分析は、生物医学の研究と診断学のマイルストーンである。細胞組織学は、さまざまな染色技術を使用して、免疫組織化学及びin situハイブリダイゼーションによる遺伝子発現でタンパク質分布を研究することが可能になった。
【0004】
新しい研究では、組織に関する空間情報を保存しながら、組織内のトランスクリプトーム及び/又はゲノムの変異を特徴付けることができることが期待されている。
【0005】
従来技術において、チップを用いて生物試料の細胞の核酸情報を解析しており、ガラスシートなどの基板上に生物試料の核酸を識別、結合するプローブを形成する方法並びにこれらのプローブを含むチップ製品が提供されている。
【0006】
当該技術分野では、生物試料の細胞の核酸情報を解析するためのチップの大規模生産においてチップ基板上に目的DNA又はRNA分子に結合可能なプローブをより便利で効率的に形成し、品質がより良いチップを取得し、生産率がより安定した製造プロセス及び製品を得る必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、生物組織試料の細胞の核酸情報、特に、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報の分析に適したバイオチップを大規模製造する方法を提供する。
具体的には、本発明によれば、アレイを有するバイオチップを製造するための改良方法が提供される。この方法は、下記のステップを含む。
ステップ1:チップを提供し、
ステップ2:チップ表面リンカー核酸を前記チップ表面、例えば、チップの表面全体に固定し、
ステップ3:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第1群のバーコード核酸をチップ表面に加え、前記チップ表面リンカー核酸と第1バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、第1方向の複数本の第1バーコードストリップを形成し、前記第1群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第1バーコード核酸を含み、各本の第1バーコードストリップには、1種の第1バーコード核酸が固定され、かつ各条の第1バーコードストリップに固定される第1バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ4:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第2群のバーコード核酸を、第2方向に沿ってチップ表面に加え、複数本の第2バーコードストリップを形成し、前記第2群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第2バーコード核酸を含み、各本の第2バーコードストリップは、1種の第2バーコード核酸を有し、かつ各本の第2バーコードストリップ上の第2バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ5:第1バーコード核酸と第2バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差したチップ表面における位置で第2バーコード核酸と第1バーコード核酸とを結合させ、プローブを形成し、前記プローブの位置(即ち、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差した位置)は、アレイのフィーチャーを構成し、各フィーチャーは、配列が互いに異なるプローブを有する。
【0008】
本発明の一態様では、前記方法において、平行に設けられた複数のマイクロ流路を有するマイクロ流路装置により、前記第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸をチップ表面に輸送して固定し、前記マイクロ流路のチップ表面と接触する面は、溶液又は溶液中の核酸が通過可能である。
【0009】
本発明の一態様では、前記方法において、前記マイクロ流路装置の各本のマイクロ流路に異なるバーコード配列を含む第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸を加える。
【0010】
本発明の一態様では、前記チップ表面リンカー核酸は、化学結合による連結によりチップ表面に固定されてもよい。化学結合による連結は、例えば、アミノ基-アルデヒド基反応などによる基の連結及び共有結合架橋から選択されるいずれか1種である。チップの表面は、表面化学反応によりアミノ、アルデヒド、エポキシ、イソチオシアネート、メルカプト、シリルなどの活性化基などにより被覆されてもよい。前記チップ表面リンカー核酸は、チップ表面に結合した一端(通常、5'端)が、被覆される活性化基と化学結合を形成する基を有する。
【0011】
本発明の別の態様では、前記チップ表面リンカー核酸は、疎水作用、静電気引力などの物理的吸着の方式によりチップ表面に固定されてもよい。例えば、チップ表面に対してポリリジン(poly-L-lysine,PLL)修飾又は界面活性剤処理などを行うことができる。
【0012】
本発明の別の態様では、前記チップ表面リンカー核酸の3'端は、第1バーコード核酸に結合する結合断片を有する。本発明の一実施形態において、前記チップ表面リンカー核酸の結合断片は、第1一本鎖結合核酸を介して前記第1バーコード核酸に結合される。前記第1バーコード核酸の5'端は、前記第1一本鎖結合核酸を介して前記チップ表面リンカー核酸に結合するための結合断片を有する。前記チップ表面リンカー核酸の3'端の結合断片及び第1バーコード核酸の5'端の結合断片は、それぞれ前記第1一本鎖結合核酸の両端の配列と逆相補的である。
【0013】
本発明の別の態様では、前記チップ表面リンカー核酸は、約10-50個のヌクレオチド、好ましくは30個未満のヌクレオチド、例えば、25個未満のヌクレオチドを有する。
【0014】
本発明の一態様では、前記方法において、前記第1群のバーコード核酸における第1バーコード核酸は、第1バーコード断片を含む。本発明の別の態様では、前記第1群のバーコード核酸における第1バーコード核酸の5'端は、前記チップ表面リンカー核酸に結合するための結合断片を有し、3'端は、第2バーコード核酸に結合するための第1結合断片を有する。
【0015】
本発明の一態様では、前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、3'端に、生物試料中の目的核酸を識別、結合するための捕捉断片(例えば、mRNA又はcDNAを識別、結合する断片、例えばpoly-T配列)及び第2バーコード断片を含む。
【0016】
本発明の一態様では、前記方法において、前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、固有分子識別子(UMI)をさらに有する。
【0017】
本発明の一態様では、前記方法において、前記第1バーコード核酸の3'端は、第2一本鎖結合核酸により第2バーコード核酸に結合するための第1結合断片を有し、前記第2バーコード核酸の5'端は、前記第2一本鎖結合核酸により第1バーコード核酸に結合するための第2結合断片を有し、前記第1結合断片及び第2結合断片は、それぞれ前記第2一本鎖リンカー(Linker)核酸の両端の配列と逆相補的である。
【0018】
本発明の一態様では、前記方法のステップ5に形成されたプローブは、3'端にある生物試料中の目的核酸を識別、結合するための捕捉断片、任意の固有分子識別子(UMI)、第2バーコード断片及び第1バーコード断片、並びに5'端にあるチップ表面リンカー核酸断片を含む。本発明の別の態様では、前記チップ表面リンカー核酸断片の5'端は、増幅反応のためのプライマー断片を有する。
【0019】
本発明の一態様では、前記方法において、前記第1群のバーコード核酸における各種の第1バーコード核酸の第1バーコード断片の配列は、指定のものであり、及び/又は前記第2群のバーコード核酸における各種の第2バーコード核酸のバーコード断片の配列は、指定のものである。
【0020】
本発明の一態様では、前記方法において、前記プローブの第1バーコード断片及び第2バーコード断片の配列は、指定のものである。
【0021】
本発明の一態様では、前記方法のステップ2において、前記チップ表面リンカー核酸を約0.1-100uM/L、例えば、約1-20uM/Lの濃度でチップの表面に加える。
【0022】
本発明の一態様では、前記方法のステップ3において、流路内の核酸濃度は約0.1-100uM、例えば、約1-20uMである。
【0023】
本発明の一態様では、前記方法のステップ4において、流路内の核酸濃度は約0.1-100uM、例えば、約1-20uMである。
【0024】
本発明の一態様では、前記方法において、ステップ3及びステップ4では、前記平行に設けられたマイクロ流路の各マイクロ流路の幅は、約2-200μm、好ましくは約5-50μm、最も好ましくは約5-25μm、例えば約5μm、10μm又は50μmである。
【0025】
本発明の一態様では、前記方法において、ステップ3及びステップ4では、前記平行に設けられたマイクロ流路は、隣接するマイクロ流路間の距離が約5-400μm、好ましくは約10-100μm、最も好ましくは約10-50μm、例えば約20μm、50μm又は100μmである。
【0026】
本発明の一態様では、前記方法で製造されたチップのフィーチャーでのプローブ密度は、約103-105個/μm2である。
【0027】
本発明の一態様では、前記方法で製造されたチップのフィーチャーが有するプローブの均一性偏差は20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは6%未満である。
【0028】
本発明の一態様では、前記方法で製造されたチップのフィーチャーのサイズの均一性偏差は10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満である。
【0029】
本発明は、生物試料の核酸情報を分析するためのチップをさらに提供する。本発明の一態様では、前記分析生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、上記の方法により製造される。本発明の一態様では、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップの表面は、アレイを形成するプローブを有する。前記プローブアレイは、互いに直交する行と列を含む。前記アレイにおけるプローブは、それぞれ異なるバーコード配列を有し、前記プローブの空間位置を示すことができる。本発明の一態様では、前記プローブは、第1バーコード及び第2バーコードを含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイの各行のプローブは、同じ第1バーコードを有し、各列のプローブは、同じ第2バーコードを有する。各行のプローブが有する第1バーコードは、互いに異なり、各列のプローブが有する第2バーコードは、互いに異なる。本発明の一態様では、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、その表面全体にチップ表面リンカー核酸を有する。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの5'端は、前記チップ表面リンカー核酸である。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端から3'端まで前記チップ表面リンカー核酸、第1バーコード、第2バーコード、生物試料中の目的核酸を識別、結合するための捕捉断片を含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端にある増幅反応用のプライマー断片を含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブは、固有分子識別子(UMI)をさらに含む。
【0030】
本発明の一態様では、前記チップのフィーチャーでのプローブ密度は、約103-105個/μm2である。本発明の一態様では、前記チップのフィーチャーにあるプローブの均一性偏差は20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは6%未満である。本発明の一態様では、前記チップのフィーチャーのサイズの均一性偏差は10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満である。
【0031】
本発明で提供される前記チップ又は本発明で提供される前記方法により製造されたチップは、組織試料、特に組織薄切片に対して細胞内分子の分析(核酸及びタンパク質の分析)を行うことに適用され、例えば、PCR、質量分析法、次世代シーケンシング、又はELISAにより分析して発現及び空間情報を得ることができる。
【0032】
本発明によれば、アレイを有するチップを用いて生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報を解析する方法が提供される。前記方法は、前記チップのアレイを組織試料と接触させ、アレイ上のプローブは組織中の細胞の核酸、特に、mRNAを識別、結合することを含む。本発明の一態様では、組織中の細胞の核酸は組織から離れてチップ上のプローブと結合する。本発明の別の態様では、前記組織が固定及び包埋された組織である場合、前記組織を透過化することにより核酸を細胞から放出する。
【0033】
本発明の別の態様では、前記方法は、逆転写反応を行うことをさらに含む。
【0034】
本発明の別の態様では、前記方法は、組織/細胞を収集した後、cDNAを分離精製し、例えば、組織とチップとを分離した後、1つの容器内で組織/細胞を分割し、核酸を分離精製することをさらに含む。
【0035】
本発明の別の態様では、前記方法は、前記cDNA分子を増幅することをさらに含む。
【0036】
本発明の別の態様では、前記方法は、増幅して得られた核酸に対してライブラリ構築/シーケンシングを行うことをさらに含む。
【0037】
本発明の一態様では、前記生物試料は、被験体に由来する組織試料、例えば、手術で切除した組織試料であり、好ましくは、顕微切片法により加工して得られた組織薄切片である。本発明の一態様では、前記組織試料は、固定及び包埋され(例えばパラフィンに包埋される)、支持物、例えば、ガラスシートに付着される。本発明の一態様では、固定された組織中の細胞の核酸は、透過化処理された後に組織から離れてチップ上のプローブに結合する。
【0038】
本発明の一態様では、前記組織薄切片に対して形態学的解析及び/又は組織学的解析を行うことができ、この組織学的解析は、H&E染色、IHC染色、ISH染色及びFISH染色により行われる。
【0039】
本発明の一態様では、1種又は複数種の生物分子に対する分析は、PCR、質量分析法、次世代シーケンシング又はELISAにより行われる。
【0040】
本発明の一態様では、被験体は、動物、家畜、ペット、ヒト被験体から選択される。
【0041】
本発明の一態様では、分析物は、さらに、非ヒト細胞、ヒト細胞、非天然タンパク質、核酸、小分子、染料、ウイルス、細菌、寄生虫、原生動物又は化学物質のうちの1種又は複数種を含む。小分子は、ハプテン、ペプチドタグ、プロテインタグ、蛍光タグ、核酸タグ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0042】
本発明の一態様では、前記チップは、試料におけるマーカーの定量及び/又は定性データの分析に適用できる。このマーカーは、DNA、タンパク質、RNA、脂質、細胞小器官、代謝産物、又は細胞を含む。このマーカーは、ゲノム多型、薬理ゲノミクス一塩基多型(SNP)、ゲノムSNP、体細胞多型、並びにタンパク質、脂質及び/又は細胞小器官の差次的発現を含む。前記マーカーは、一塩基位置;遺伝子内領域または遺伝子間領域;エクソン、イントロン、またはそれらの断片;コード領域または非コード領域;プロモーター、エンハンサー、5'未翻訳領域(5'UTR)、3'未翻訳領域(3'UTR)又はその断片;cDNA又は断片;SNP;体細胞変異及び/又は生殖系列変異;点突異または単一変異;欠失変異;インフレーム欠失、遺伝子内欠失、全遺伝子欠失;挿入変異;遺伝子内挿入;逆位変異;染色体内逆位、連鎖変異、連鎖挿入変異;反転変異;タンデム重複;染色体内タンデム重複;転座;染色体転座、非相互転座;再編成;ゲノム再編成;1つ又は複数のイントロンまたはその断片の再編成;再編成されたイントロン;5'-、3'-UTR又はそれらの組み合わせを含む。単一細胞シーケンシング、単核シーケンシング、フローサイトメトリー、免疫組織化学的染色、ヘマトキシリン及びエオシン染色、全ゲノムシーケンシング、高スループットシーケンシング、質量分析法、DNAマイクロアレイ、又はそれらの組み合わせによりこのマーカーを測定することができる。
【0043】
本発明のチップは、組織試料の分析に適用できる。この組織試料は、1種又は複数種の前がん細胞又は悪性細胞、固形腫瘍、軟部組織腫瘍または転移巣由来の細胞、手術断端由来の組織又は細胞、組織学的正常組織、1種又は複数種の循環腫瘍細胞(CTC)、正常隣接組織(NAT)、腫瘍に罹患しているか又は腫瘍に罹患するリスクがある同一被験体由来の血液試料、FFPE試料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の実施例又は従来技術における技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に紹介する。明らかなように、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例だけである。
【0045】
【
図1】本発明で提供されるチップの製造方法の手順のフローチャートである。
【
図2】本発明の方法で使用される平行に設けられた複数のマイクロ流路を有する設備の例示的な実施形態の一つである。
【
図3】本発明で提供されるバイオチップのプローブアレイ蛍光信号の観察図である。
【
図4】プローブ蛍光信号に基づいて本発明で提供されるバイオチップのアレイを測定する図である。
図4A及び
図4Bは、それぞれアレイのサイズ及び蛍光強度に対する測定結果を示す。
【
図5】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行った組織HE染色図である。
【
図6】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織の核酸を処理、分析する過程の品質検査分析図である。
【
図7A】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行うことにより検出可能な遺伝子数の図である。
【
図7B】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行うことにより検出可能なUMI数の図である。
【
図7C】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行うことにより実際に検出された遺伝子数及び捕捉された転写物(UMI)数の分布図である。
【
図8】本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行った遺伝子クラスター解析結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施例の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的手段を明確で完全に説明する。明らかなように、以下の実施例は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的努力なしで得た全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0047】
実施例1
本発明は、生物試料の細胞の核酸情報を分析するのに適したバイオチップの製造方法を提供する。より具体的には、本発明は、アレイを有するバイオチップの製造方法を提供する。本発明の一態様では、本発明で提供されるチップは、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報の分析に適している。
【0048】
図1は、本発明で提供されるアレイを有するバイオチップを製造する例示的な方法のフローチャートである。
【0049】
図1に示すように、前記方法は、主に以下のステップを含む。
ステップ1:チップ(又は「基板」と呼ばれる)を提供する。次のステップでチップ表面リンカー核酸をチップ表面に固定するために、チップの表面を、表面化学反応によりアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、イソチオシアネート基、メルカプト基、シリル基などの活性化基などにより被覆することができる。
ステップ2:チップ表面リンカー核酸をチップ表面、例えば、チップ表面全体に固定する。前記チップ表面リンカー核酸は、3'端に第1バーコード核酸に結合するための結合断片があり、5'端に後の増幅反応に使用されるプライマー断片があってもよい。
ステップ3:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第1群のバーコード核酸をチップ表面に加え、前記チップ表面リンカー核酸と第1バーコード核酸とが結合反応する条件下で、第1方向の複数本の第1バーコードストリップを形成し、前記第1群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第1バーコード核酸を含み、各本の第1バーコードストリップには、1種の第1バーコード核酸が固定され、かつ各条の第1バーコードストリップに固定される第1バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する。
【0050】
図2は、平行に設けられた複数のマイクロ流路により複数のバーコード核酸をそれぞれチップ表面に加え、チップ表面上のチップ表面リンカー核酸と結合反応してチップ表面に固定する例示的な実施形態を示す。
図2における左図の下方は、チップである。
図2における左図の中央は、平行に設けられた複数のマイクロ流路(マイクロ流路1からマイクロ流路n)を有するマイクロ流路装置を示し、マイクロ流路のチップ表面と接触する面、即ち、図示されるマイクロ流路の底部は、溶液又は溶液中の核酸が通過(透過)できるものである。例えば、前記マイクロ流路のチップ表面と接触する面には、マイクロ流路壁が存在しない。このマイクロ流路装置を第1方向に沿ってチップ表面に被覆し、その後、マイクロ流路内に所定の溶液、例えば、バーコード核酸を含む溶液を導入する。
図2の左図の上方は、溶液の導入を協力するための例示的な装置、例えば、マイクロ流路の出口に設けられる負圧を使用した真空吸引装置を示す。
図2における右図は、各マイクロ流路に、入口を通して異なるバーコード配列を含むバーコード核酸(図面におけるバーコード核酸1-n)を導入することを示す。本発明の別の態様では、前記各マイクロ流路に導入されるバーコード核酸のバーコード配列は、既知又は所定のヌクレオチド配列を有する。
【0051】
図1に示すように、前記第1バーコード核酸の5'端は、1つの一本鎖結合核酸(第1リンカー)を介して前記チップ表面リンカー核酸に結合するための結合断片を有する。前記チップ表面リンカー核酸の3'端の結合断片及び第1バーコード核酸の5'端の結合断片は、それぞれ第1リンカーの両端の配列と逆相補的である。
【0052】
ステップ4:ステップ3におけるマイクロ流路を取り外し、別の平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第2群のバーコード核酸を、第2方向(通常第1方向に垂直である)に沿ってチップ表面上における第1方向を有する前記複数の第1バーコードストリップに加え、複数本の第2バーコードストリップを形成し、前記第2群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第2バーコード核酸を含み、各本の第2バーコードストリップは、1種の第2バーコード核酸を有し、かつ各本の第2バーコードストリップ上の第2バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する。
【0053】
図示される例示的な第2バーコード核酸は、3'端にある、mRNAを識別、結合するpoly-T配列、固有分子識別子(UMI)及び第2バーコード断片を含む。
【0054】
図示される例において、第1バーコード核酸の3'端は、1つの一本鎖結合核酸(第2リンカー)を介して第2バーコード核酸に結合するための第1結合断片を有し、前記第2バーコード核酸の5'端は、前記第2リンカーを介して第1バーコード核酸に結合するための第2結合断片を有し、前記第1結合断片及び第2結合断片は、それぞれ前記第2リンカー核酸の両端の配列と逆相補的である。第1バーコード核酸と第2バーコード核酸とが結合反応を発生可能な条件下で、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差したチップ表面において第2バーコード核酸と第1バーコード核酸とを結合してプローブを形成する。
【0055】
ステップ5:ステップ4におけるマイクロ流路を取り外し、表面にプローブアレイを有するバイオチップを得る。前記プローブアレイ上の各フィーチャーは、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差した位置に対応する。各フィーチャーは、1種のプローブ分子を有し、第1バーコード配列及び第2バーコード配列を含む。各フィーチャーが有するプローブ分子に含まれる第1バーコード配列と第2バーコード配列の組み合わせは、互いに異なる。本発明の一態様では、前記各マイクロ流路に導入されるバーコード核酸の第1バーコード配列及び第2バーコード配列は、既知又は所定のものであるため、各フィーチャーが有するプローブ分子に含まれる第1バーコード配列、第2バーコード配列及びその組み合わせも既知である。これによって、各フィーチャーが具するプローブ分子の第1バーコード配列及び第2バーコード配列に基づいてチップ表面のアレイにおける空間位置を確定することができる。
【0056】
ステップ1において基板であるチップは、通常、固体基板を指し、その上で化学、生物、生物物理又は生物化学的のプロセスを実施することができる。チップは、チップ上に発生する化学、生物、生物物理又は生物化学的プロセスに有利するために、通路及びウェル、電極素子、電磁素子などのマイクロ構造又はマイクロスケール構造を有してもよい。チップ表面は、平坦又は不平坦であってもよい。表面が不平坦なチップは、表面に構築された通路又はウェルを含んでもよい。
【0057】
チップは、任意の適切な材料で作成することができる。チップ材料の例示的なタイプは、ガラス、改質ガラス、機能性ガラス、無機ガラス、マイクロスフェア(不活性粒子及び/又は磁性粒子を含む)、プラスチック、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、セラミックス、樹脂、シリカ、シリカ系材料、カーボン、ファイバー又はファイバー束、上記以外の様々なポリマー、及びマルチウェルマイクロタイタープレートを含む。例示的なプラスチックの具体的なタイプは、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレンとその他の材料の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン及びTeflonTMを含む。例示的なシリカ系材料の具体的なタイプは、シリコン及び変性シリコンの様々な形式を含む。当業者に知られている様々な方法により、目的生体高分子の付着のためにチップ表面を修飾することができる。
【0058】
本発明において、製造された前記チップ表面のアレイは、プローブ(又は捕捉プローブと呼ばれる)を有する。プローブとは、目的核酸、例えば、組織サンプルからの核酸の一本鎖ヌクレオチド分子を遺伝子特異的又は標的特異的に識別及び結合するものを指し、特異的なヌクレオチド配列を有し、即ち、標的核酸のヌクレオチド配列に選択的にアニールすることができ、通常、相補的なヌクレオチド配列である。組織試料中の分析物の例は、ゲノムDNA、メチル化DNA、特定のメチル化DNA配列、メッセンジャーRNA(mRNA)、ポリA mRNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスRNA、マイクロRNA、in situ合成されたPCR産物、RNA/DNAハイブリッド、脂質、炭水化物、タンパク質を含む。捕捉プローブは、遺伝子特異的捕捉プローブであってもよく、資料中の特異的標的mRNA又はcDNAとハイブリッド化する。
【0059】
本発明において、前記プローブは、バーコード配列を有し、後のハイスループットの次世代シーケンシング(NGS)又は合成によるシーケンシング(SBS)の分析の応用、例えば、ハイスループットのシーケンシング分析に使用される。これらのシーケンシングにおいて、バーコード配列を用いてシーケンシングにより得られた核酸配列の核酸源をマークして同定する。バーコード分子は、生物粒子(例えば、細胞)に由来する核酸分子(例えば、RNA分子)をバーコード化してシーケンシングライブラリを生成し、その後、前記シーケンシングライブラリをシーケンシングして複数のシーケンシングリード長を産生する。複数のシーケンシングリード長のうちの一部又は全部は、バーコード配列を含む。これらのシーケンシング応用において、通常、対象中のバーコード化オーバーラップ断片が細胞ゲノムの特定の部分又は全部の少なくとも1Xカバー率、少なくとも2X、少なくとも3X、少なくとも4X、少なくとも5X、少なくとも10X、少なくとも20X、少なくとも40X又はそれ以上のカバー率を構成するまで細胞核酸を増幅する。バーコード化断片が産生されると、それらを適切なシーケンシングシステム(例えば、Illuminaシステム)上で直接シーケンシングすることができる。複数の配列上の同じバーコードの存在は、この配列の由来に関する情報を提供することができる。
【0060】
本発明において、製造されたプローブには、2つのバーコード配列が含まれる。2つのバーコード配列は、チップ表面のアレイにおけるプローブの位置を特定(それぞれX座標及びY座標の位置を特定)するのに役立つため、位置タグの作用も有する。プローブ上のバーコード配列は、チップ上のアレイにおけるフィーチャー(feature)に対応することができ、それが識別する組織における細胞(単一の細胞を含む)のこの組織試料における位置を示すこともできる。核酸タグに結合可能な他の分子の例には、抗体、抗原結合ドメイン、タンパク質、ペプチド、受容体、ハプテンなどが含まれる。
【0061】
本発明において、前記プローブは、1つ又は複数の固有分子識別子(UMI)をさらに含む。固有分子識別子は、連続した核酸断片又は2つ若しくは複数の不連続な核酸断片であり、それらは、特定の分析物、又は特定の分析物に結合する捕捉プローブのマーカー若しくは識別子として機能する。UMIは、基本的に生物試料中の分析物の核酸分子とハイブリッド化しない核酸配列である。UMIは、捕捉プローブの配列内に含まれる約6から約20又はそれ以上のヌクレオチドであってもよい。
【0062】
本態様の方法のステップ2において、チップ表面リンカー核酸とチップとの固定は、当該技術分野における様々な既知方法により行うことができる。核酸の固定とは、共有結合又は非共有結合によりチップに直接又は間接付着することをいう。本発明の一態様では、固定とは、核酸増幅及び/又はシーケンシングを必要とする反応においてチップに静止又は付着することを指す。本発明における1つの発明において、固定は、チップに静止又は付着する核酸が後の核酸増幅及び/又はシーケンシングなどの反応において所定の条件下でチップ表面から脱離できることを指してもよい。例示的な非共有結合は、非特異的な相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用など)又は特異的な相互作用(例えば、親和相互作用、受容体-リガンド相互作用、抗体-エピトープ相互作用、アビジン-ビオチン(Biotin)相互作用、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用、レクチン-炭水化物の相互作用な)を含むが、これらに限定されない。チップ表面リンカー核酸は、例えば、疎水作用、静電気引力などの物理的吸着の方式によりチップ表面に固定されてもよい。
【0063】
本態様の方法のステップ3及び4において、チップ表面リンカー核酸と第1バーコード核酸との接続、及び第1バーコード核酸と第2バーコード核酸との接続は、当該技術分野における様々な既知方法により行うことができる。例えば、それぞれが別の一本鎖核酸断片(リンカー核酸)の異なる末端の配列に相補的であることにより、結合反応が可能な条件下で3つの核酸断片(第1バーコード核酸、第2バーコード核酸及びリンカー核酸)の組み合わせを形成した後、結合の目的を達成することができる。
【0064】
本発明の一態様では、チップ表面リンカー核酸は、5'端に後の増幅反応に使用されるプライマー断片(例えば、既知のシーケンシング方法に使用される汎用プライマー配列)を有する。
【0065】
本発明の一態様では、前記チップ表面リンカー核酸は5'端にチップ表面に結合するための基又は配列を有する。例えば、チップ表面がアルデヒドで修飾され、チップ表面リンカー核酸は、5'端にアミノ基を有する。本発明の別の態様では、前記チップ表面リンカー核酸は、チップ上で修飾する因子と特異的な相互作用を形成する配位子を有する。例えば、前記因子及び配位子は、それぞれ抗体-エピトープ、アビジン-ビオチン、ストレプトアビジン-ビオチン、レクチン-炭水化物である。
【0066】
本発明の一態様では、前記第1バーコード核酸包括第1バーコード断片。
【0067】
本発明の一態様では、前記第2バーコード核酸は、第2バーコード断片を含む。本発明の一態様では、前記第2バーコード核酸は、3'端に生物試料中の目的を識別、結合するための捕捉断片、例えばmRNA又はcDNAを識別、結合するための断片、例えば、mRNAを識別するためのpoly-T配列を有する。
【0068】
本発明の一態様では、前記第1バーコード核酸の3'端は、第2バーコード核酸に結合するための第1結合断片を有する。本発明の別の態様では、前記第2バーコード核酸の5'端は、第1バーコード核酸に結合するための第2結合断片を有する。本発明の別の態様では、前記第1結合断片及び第2結合断片は、それぞれリンカー核酸の一端と相補的であり、結合可能な条件下(例えば、T4リガーゼ(Ligase)などの存在下)で、第1結合断片及び第2結合断片は、リンカー核酸と組み合わせて、第1バーコード核酸と第2バーコード核酸との結合を達成する。
【0069】
本発明で提供される方法により製造されたチップは、組織試料、特に、組織薄切片に対して細胞内分子(核酸及びタンパク質を含む)を分析するのに適用できる。例えば、PCR、質量分析法、新一代シーケンシング、又はELISAにより分析してその発現及び空間情報を得ることができる。
【0070】
本発明のチップを使用する際に、組織切片をアレイと接触させることを含む。アレイ上のプローブは、組織中の細胞の核酸、特に、mRNAを識別、結合することができる。次の分析は、逆転写及び増幅などを含み、ハイスループットの次世代シーケンシング(NGS)又は合成によるシーケンシング(SBS)により分析することができる。
【0071】
本発明で提供されるプローブアレイを有するチップの製造方法によれば、同一の基板上で複数の同じコード領域のアレイを有するチップの並行合成を実現することができる。
図3に示すように、必要に応じて、チップ基板の第1方向及び第2方向に複数群の同じの第1バーコードストリップ及び第2バーコードストリップを形成することができる。これによって、対応するフィーチャーに同じの第1バーコード及び第2バーコード配列で定義されるプローブを有する複数のチップが得られる。
【0072】
WO/2022/135598には、アレイを有するバイオチップの製造方法が開示されている。この方法において、第1群のバーコード核酸を、平行に設けられた複数のマイクロ流路装置により光学エポキシで修飾されたガラスシートに直接固定する。実験室及び大規模工業生産の環境下で、本発明者らは、マイクロ流路により核酸分子を修飾されたチップに結合してみたときに、マイクロ流路の特殊な流体力学特性のため、流路内に発生する核酸とチップ表面の修飾基との反応の条件(反応温度、反応物濃度及び環境湿度、圧力などを含む)に対して極めて高い要求を有することを見出した。反応過程において、反応条件が変動すると、核酸とチップ表面の修飾基との反応結果に大きい影響を与え、製品に重大な品質管理上の欠陥を引き起こす場合がある。例えば、チップ上の大面積でプローブ信号が弱くなり、さらにチップ「plaque」(チップにプローブ信号がない)が出るなどの欠陥。
【0073】
本発明者は、本発明で提供される改良された製造プロセスにおいて、前記第1群のバーコード核酸の核酸をチップ表面に固定する際に、前記第1群のバーコード核酸の核酸とチップ表面(チップ表面全体又は位置が第1群のバーコードと同じのチップ表面部分を含む)に固定された核酸(即ち、本明細書におけるチップ表面リンカー核酸又はチップ表面リンカー)とを核酸と核酸の結合反応(例えば、核酸リガーゼ及び前記2つの核酸を結合させる核酸リンカー断片)により結合させることによって、第1群のバーコード核酸のチップへの固定効率が顕著に改善され、チップにおける各プローブアレイのフィーチャー上のプローブの密度が顕著に増加し、均一性が顕著に改善されることを予想外に見出した。この理論にとらわれずに、本発明者は、核酸と核酸との結合反応の効率及び安定性が核酸とチップ表面の他の固定方式(例えば、共有結合など)よりも強いことで、プローブ上の各核酸断片の長さが小さくなり、各断片の結合効率が向上するためであると考えている。また、前記チップ表面リンカー核酸又はチップ表面リンカーの長さは、比較的短くてもよい。この場合、化学結合による連結などの方式によりチップに固定する効率がより高く、結合数もより多くなる。これは、製造されたチップのプローブフィーチャーのサイズ均一性、プローブフィーチャーが有するプローブ量及びプローブ量の均一性(製造されたチップにおいて、蛍光顕微鏡及びカメラによってプローブに担持された蛍光シグナルの強度を検出する。応用においては、組織や細胞などのサンプル中の核酸のトランスダクター数や遺伝子数などを識別するように具現化される)の改善に明らかに有利である。
【0074】
本発明は、生物試料の核酸情報を分析するためのチップをさらに提供する。本発明の一態様では、前記分析生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、上記の方法により製造される。本発明の一態様では、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップの表面は、アレイが形成されたプローブを有する。前記プローブアレイは、直行した行と列を含む。前記アレイにおけるプローブは、それぞれ異なるバーコード配列を有し、前記プローブの空間位置を示すことができる。本発明の一態様では、前記プローブは、第1バーコード及び第2バーコードを含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイの各行のプローブは、同じ第1バーコードを有し、各列のプローブは、同じ第2バーコードを有する。各行のプローブが有する第1バーコードは、互いに異なり、各列のプローブが有する第2バーコードは、互いに異なる。本発明の一態様では、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、その表面全体にチップ表面リンカー核酸を有する。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの5'端は、前記チップ表面リンカー核酸である。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端から3'端まで前記チップ表面リンカー核酸、第1バーコード、第2バーコード、生物試料中の目的核酸を識別、結合するための捕捉断片を含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端にある増幅反応用のプライマー断片を含む。本発明の別の態様では、前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、固有分子識別子(UMI)をさらに含む。
【0075】
本発明で提供される方法により製造されたチップは、組織試料、特に組織薄切片に対して細胞内分子の分析(核酸及びタンパク質の分析)を行うことに適用され、例えば、PCR、質量分析法、次世代シーケンシング、又はELISAにより分析して発現及び空間情報を得ることができる。
【0076】
本発明は、生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報の分析方法をさらに提供する。前記方法は、前記アレイを組織試料と接触させることを含む。本発明に適した「組織試料」は、被験体から取得し、固定し、切片して平面である表面に取り付けた組織を含む。組織試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料、新鮮な組織試料、又は凍結組織試料などであってもよい。本発明の方法は、組織試料の染色の前後に行うことができる。例えば、ヘマトキシリン・エオシン染色後、本明細書で提供される方法により組織試料に対して空間分析を行うことができる。方法は、試料の組織学的分析(例えば、ヘマトキシリン・エオシン染色を使用)の後、組織を空間分析することを含む。組織切片をホルマリンで固定してパラフィンで包埋(FFPE)することは、通常、被験体から取得した組織をホルムアルデヒド(例えば、リン酸緩衝生理食塩水中の3%-5%ホルムアルデヒド)又はBouin溶液中で固定し、パラフィンに包埋し、薄切片にスライスした後、平坦な表面に取り付けること(例えば、顕微鏡スライドガラスでの生検)を含む。本発明の方法では、組織切片をチップ上のプローブアレイと接触させる。アレイ上のプローブは、組織中の細胞の核酸、特に、mRNAを識別、結合することができる。次の分析は、逆転写及び増幅などを含み、ハイスループットの次世代シーケンシング(NGS)又は合成によるシーケンシング(SBS)により分析することができる。
【0077】
「シーケンシング」とは、通常、1種又は複数種のポリヌクレオチド中のヌクレオチド塩基配列を確定する方法及び技術を指す。ポリヌクレオチドは、例えば、核酸分子、例えばデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)(その変形又は誘導体(例えば、一本鎖DNA)を含む)であってもよい。シーケンシングは、Illumina、Pacific Biosciences、Oxford Nanopore或Life Technologiesのシーケンシングシステム(これらに限定されない)などの現在利用可能な様々なシステムにより実行することができる。或いは、核酸増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、デジタルPCR、定量PCR、又はリアルタイムPCR)又は等温増幅によりシーケンシングを実行することができる。このようなシステムは、被験体(例えば、ヒト)の遺伝情報に対応する複数の生の遺伝データを提供することができる。例えば、被験体から提供されるサンプルは、システムにより産生される。いくつかの実施例において、このようなシステムは、シーケンシングリード長(本明細書において、「リード長」とも呼ばれる)を提供する。リード長は、シーケンシングされた核酸分子の配列に対応する一連の核酸塩基を含んでもよい。いくつかの場合、本明細書で提供されるシステム及び方法は、プロテオーム情報と一緒に使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、組織切片(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片)中の核酸はアレイに転移され、捕捉プローブとハイブリッド化することによりアレイ上に捕捉される。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、汎用の捕捉プローブであってもよく、例えば、核酸シーケンシングライブラリにおけるアダプター領域、又はmRNAのポリA尾部とハイブリッド化する。いくつかの実施形態において、捕捉プローブは、遺伝子特異性捕捉プローブであってもよく、例えば、試料中の特異的に標的とするmRNA又はcDNAとハイブリッド化する。
【0079】
いくつかの実施形態において、組織切片(例えば、FFPE切片)中の核酸をアレイに移し、汎用のアダプターオリゴヌクレオチドの一本鎖に結合することによりアレイに捕捉する。他の実施形態において、チップ上の核酸を組織切片(例えば、FFPE切片)に移してもよい。当該技術分野の既知方法により、チップに結合したプローブを、溶液中で脱落した後にそれと接触する組織上の細胞に入らせることができる。例えば、核酸プローブとチップとの結合箇所に光分解性リンカーなどを加えるか、又はpH感受性リンカーにより核酸プローブをチップに結合した後、溶液のpH値を変化させることで核酸プローブをチップから分離させる。
【0080】
本発明のチップ及びその使用については、各フィーチャーが有するプローブ分子の第1バーコード配列及び第2バーコード配列に基づいてチップ表面のアレイにおける空間位置を知ることができ、これにより、核酸分子が位置する細胞の前記組織における位置情報を知ることもできる。
【0081】
本発明の一態様では、前記方法は、前記組織薄切片に対して形態学的解析及び/又は組織学的解析を行うことをさらに含む。この組織学的解析は、H&E染色、IHC染色、ISH染色及びFISH染色により行われる。
【0082】
本発明の一態様では、前記方法において、組織試料における1種又は複数種の生物分子を分析することができ、例えば、PCR、質量分析法、次世代シーケンシング又はELISAにより行うことができる。
【0083】
本発明の一態様では、前記方法において、組織試料は、動物、家畜、ペット、ヒト被験体に由来する。
【0084】
本発明の一態様では、前記方法において、前記生物分子は、非ヒト細胞、ヒト細胞、非天然タンパク質、核酸、小分子、染料、ウイルス、細菌、寄生虫、原生動物又は化学物質のうちの1種又は複数種を含む。
【0085】
本発明の一態様では、前記方法において、小分子は、ハプテン、ペプチドタグ、プロテインタグ、蛍光タグ、核酸タグ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0086】
本発明の一態様では、前記方法において、前記分析は、マーカーの定量及び/又は定性データを生成することを含む。
【0087】
本発明の一態様では、前記方法において、前記マーカーは、DNA、タンパク質、RNA、脂質、細胞小器官、代謝産物、又は細胞を含む。
【0088】
本発明の一態様では、前記方法において、前記マーカーは、ゲノム多型、薬理ゲノミクス一塩基多型(SNP)、ゲノムSNP、体細胞多型、並びにタンパク質、脂質及び/又は細胞小器官の差次的発現を含む。
【0089】
本発明の一態様では、正常な健康組織又は細胞と比較して、がん組織又はがん細胞において、このマーカーは、改変アミノ酸配列をコードする改変ヌクレオチド配列、染色体転座、染色体内逆位、コピー数の変化、発現レベルの変化、タンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、又はメチル化状態の変化を含む。
【0090】
本発明の一態様では、前記方法において、単一細胞シーケンシング、単核シーケンシング、フローサイトメトリー、免疫組織化学的染色、ヘマトキシリン及びエオシン染色、全ゲノムシーケンシング、高スループットシーケンシング、質量分析法、DNAマイクロアレイ、又はそれらの組み合わせにより前記マーカーを測定する。
【0091】
本発明の一態様では、前記方法は、前記組織薄切片に対して形態学的解析及び/又は組織学的解析を行うことをさらに含む。この組織学的解析は、H&E染色、IHC染色、ISH染色及びFISH染色により行われる。
【0092】
本発明の一態様では、前記方法において、1種又は複数種の生物分子に対する分析は、PCR、質量分析法、次世代シーケンシング又はELISAにより行われる。
【0093】
実施例2:チップの製造
図5は、本発明で提供されるバイオチップの製造方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【0094】
まず、ガラスシートをチップ基板とし、表面化学反応により、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、イソチオシアネート基、メルカプト基、シラン基などの活性化基などでチップの表面を修飾した。
【0095】
本実施例において、購入された光学エポキシ修飾ガラスシート(Nexterion(登録商標) SlideE)をチップ基板とした。
【0096】
5'端がアミノ基で修飾された、下記の配列を有する汎用チップ表面リンカー核酸を1本合成した。下線付きのT塩基は、FITC修飾である。
5'アミノ-CTACACGACGCTCTTCCGATC-3'
【0097】
5'端がリン酸化修飾された、下記の配列を有する第1群のバーコード核酸を100本合成した。
5'リン酸化-CTCTTTCCCTAC12345678 ACGACGCTCTTC-3'
「12345678」は、8つのヌクレオチドを有するバーコード断片を示し、前記8つのヌクレオチドの配列は、既知(指定)のものである。前記100本の第1群のバーコード核酸の前記バーコード断片(第1バーコードと呼ばれる)の配列は、互いに異なり、かつ各本の第1群のバーコード核酸の第1バーコードの配列は、既知(指定)のものである。下線付きのT塩基は、FITC修飾である。本実施例において、バーコード断片を蛍光修飾及び生産検出する蛍光信号を用いてチップ合成におけるバーコード断片を加える各ステップに対して観察又は生産品質管理を行った。他の実施形態において、バーコード断片を蛍光修飾しなくてもよい。
【0098】
下記の配列を有する第2群のバーコード核酸を100本合成した。
5'リン酸化-GAGTGATTGCTTGTGACGCCTT87654321NNNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN-3'
「87654321」は、8つのヌクレオチドを有するバーコード断片を示し、前記8つのヌクレオチドの配列は、既知(指定)のものである。前記100本の第2群のバーコード核酸のバーコード断片(第2バーコードと呼ばれる)の配列は、互いに異なり、かつ各本の第2群のバーコード核酸の第2バーコードの配列は、既知(指定)のものである。下線付きのT塩基は、Cy3修飾である。
【0099】
下記の配列を有する第1リンカー核酸を1本合成した。
5'-AGGGAAAGAGAGATCGGAAG-3'
【0100】
下記の配列を有する第2リンカー核酸を1本合成した。
5'-GCAATCACTCGAAGAGCGT-3'
【0101】
細胞培養キャビティとガラスシートとを貼り合わせ、フレームでキャビティとガラスシートとを圧接して密封性を向上させた。ピペットを用いてキャビティ内に10-20uMの汎用チップ表面リンカー核酸(300mMリン酸ナトリウム緩衝液pH8.5に溶解する)を加え、キャビティの底面を満遍なくカバーした後、ガラスシートをサーモミキサーコンフォートに置き、40℃、800rpmで振盪して均一に反応させ、3時間反応させた。反応終了後、修飾されたガラスシートを順に0.1%のTriton X-100、1mMのHCl、100mMのKClで洗浄し、その後、0.1MのTris(pH9.0)、50mMエタノールアミン、0.1%のSDSを用いて50℃でブロックした。ブロック終了後、脱イオン水で基板を1分間洗浄した後、窒素ガスを基板に吹き付けて乾燥させた。蛍光顕微鏡で汎用核酸のFITC蛍光信号を観察し、完全に反応したこと及び表面修飾効果を確定した。
【0102】
ソフトリソグラフィプロセスによりポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて
図2に示される平行に設けられた複数のマイクロ流路を含む装置を作製した。マイクロ流路の底部は開口した。
【0103】
マイクロ流路の装置は、約50-500本の平行に設けられたマイクロ流路を含む。前記平行に設けられたマイクロ流路の各マイクロ流路の幅は、約2-200μm、好ましくは約5-50μm、最も好ましくは約5-25μm、例えば約5μm、10μm又は50μmである。隣接するマイクロ流路間の距離は、約5-400μm、好ましくは約10-100μm、最も好ましくは約10-50μm、例えば約20μm、50μm又は100μmである。
【0104】
前記PDMSマイクロ流路装置とガラスシートとを貼り合わせ、流路の密閉を実現した。挟持ツールを用いて流路の頂部と基板であるガラスシートとを圧接して密封性を向上させた。マイクロ流路の一端は、溶液入口であり、他端は、インターフェースにより真空吸引装置に結合した。
【0105】
マイクロ流路装置とガラスシートとを貼り合わせた後、流路内に緩衝液を導入して流路内のガスを排出した。その後、流路内に10-20uMの第1群のバーコード核酸を加え、各流路に第1バーコード核酸(それぞれの流路の第1バーコード核酸は、他の流路の第1バーコード核酸と異なるバーコード配列を有する)、第1リンカー核酸及びT4リガーゼを導入した。流路を満たした後、37℃で30分間静置して反応させた。反応終了後、脱イオン水で基板を1分間洗い流し、その後、窒素ガスを基板に吹き付けて乾燥させた。蛍光顕微鏡で第1バーコード核酸のFITC蛍光信号を観察し、完全に反応したこと、第1群のバーコード核酸及び汎用チップ表面リンカー核酸が、流路が被覆した箇所でのチップとの結合反応を実現し、第1群のバーコードストリップが形成されたことを確定した。
【0106】
もう1つのPDMSマイクロ流路装置を、1番目のPDMSマイクロ流路装置の流路と直交する方向に沿ってガラスシートと貼り合わせた。流路内に緩衝液を導入して流路内のガスを排出した後、10-20uMの第2群のバーコード核酸を導入した。各流路に1種の第2バーコード核酸(各流路の第2バーコード核酸は、他の流路の第2バーコード核酸と異なるバーコード配列を有する)、第2リンカー核酸及びT4リガーゼを導入した。流路が満たされた後、37℃で30分間静置して反応させた。
【0107】
結合反応が終了した後、1×PBS緩衝液を導入して、超純水で流路を洗浄した。その後、流路と取り外し、脱イオン水で基板を1分間洗浄し、その後、窒素ガスを基板に吹き付けて乾燥させた。蛍光顕微鏡用いて第2バーコード核酸のCy3蛍光信号を観察し、完全に反応したこと、及び第2バーコード核酸と第1群のバーコード核酸との流路フィーチャーでの結合反応が達成され、バーコードアレイが形成されたことを確定し、これによって、チップの製造が完成した。
【0108】
製造されたチップを真空パッケージし、室温又は4℃の冷蔵庫で遮光保存した。製造されたチップ上の蛍光信号を測定することにより、各バーコード核酸の結合反応の効率及び製造されたチップのプローブの強度(密度)と均一性を評価した。
【0109】
図3は、得られたチップにおいて第2群のバーコード核酸に運ばれたCy3で修飾された蛍光信号を検出した図を例示的に示す。蛍光顕微鏡(オリンパスIX53)及びCCDカメラ(オリンパスDP74)により撮影及び測定した。
【0110】
図4A及び
図4Bは、実施例2に記載の方法によりそれぞれ幅50μm、25μm及び10μmのマイクロ流路を用いて製造されたチップ(即ち、チップ上のプローブアレイのサイズがそれぞれ50μmx50μm、25μm x 25μm及び10μmx10μmである)のプローブの検出結果を示す。蛍光顕微鏡(オリンパスIX53)及びCCDカメラ(オリンパスDP74)により撮影及び測定された画像を分析し、ImageJにより蛍光強度値及び境界を抽出し、アレイ強度の均一性及びアレイの実際の幅を計算した。
【0111】
図4A及び
図4Bは、それぞれアレイのサイズ及び蛍光強度に対する測定結果を示す。
図4Aの結果から分かるように、本発明で製造されたチップ上の各プローブアレイは、サイズ均一性偏差がそれぞれ0.6%(50μm)、1.2%(25μm)及び1.3%(10μm)未満であった。
図4Bの結果から分かるように、プローブ修飾の均一性偏差はそれぞれ5.5 %(50μm)、3.4%(25μm)及び3.9%(10μm)未満であった。 つまり、本発明で製造されたチップは、極めて高いアレイサイズ均一性及び各アレイ上の修飾プローブの均一性を有する。
【0112】
脱イオン水:組織試料の作製と染色
(一)組織OCT包埋
新鮮なマウス脳組織サンプルを取り、直ちに事前に冷却したPBS溶液又は生理食塩水で組織表面を洗浄して残留物を除去し、その後、清潔な吸水紙で液体を吸い取った。組織を包埋槽に置き、組織が完全に被覆されるまでOCT包埋剤を添加した。組織の周囲に気泡がないことを確認した後、包埋槽を氷上に置き、OCTが完全に凍結するまで静置した。
【0113】
(二)凍結切片
凍結切片機の温度について、箱体温度:-20℃、サンプルヘッド温度:-10℃に設定した。切片前に凍結組織及び基板を-20℃凍結切片機の箱体に入れて30分間以上平衡した後、凍結切片機の箱体中において厚さ10μmで凍結切片を行った。
【0114】
(三)組織固定、HE染色
作製された組織切片を実施例2で製造されたバーコードアレイ修飾基板に貼り付け、その後、37℃で1分間インキュベートした。組織が貼り付けられた基板を事前に冷却したメタノール中に完全に浸漬し、-20℃で30分間固定した。固定後に、基板を取り出し、裏面の液体を拭き取り、組織切片に500μlのイソプロパノールを滴下し、室温で1分間インキュベートした。1分間後、イソプロパノールを除去し、その後、室温で5-10分間乾燥させた。
【0115】
1mlヘマトキシリンを加え、それを基板上の組織切片に均一に被覆させ、室温で7分間インキュベートした。ヘマトキシリン試薬を除去し、基板をRNaseフリー水中に浸漬して洗浄し、乾燥させた。1ml青色化液を加えて室温で2分間インキュベートした。青色化液を除去し、基板をRNaseフリー水に浸漬して洗浄した後、基板の裏面の液体を拭き取った。1mlエオシン混合物を加えて室温で1分間インキュベートした。
【0116】
エオシンを除去し、基板をRNaseフリー水に浸漬して洗浄し、組織が不透明になるまで乾燥させた。37℃でガラスシートを5分間インキュベートした後、明視野イメージングを行った。
【0117】
【0118】
(四)組織透過化
それぞれの組織切片が対応するキャビティの内部に位置するように、治具キャビティを製造された組織チップに取り付けた。キャビティに70ulの透過化酵素(0.1NのHClで希釈した0.1%ペプシン)を加え、37℃で組織を透過化し、透過化酵素を除去した後、0.1×SSCで洗浄した。
【0119】
(五)チップ品質検査
実施例2で製造されたチップを、それぞれ6か月及び12か月保存した後に-20℃冷蔵庫から取り出し、そこに前記ステップ(三)で組織固定、HE染色及び(四)組織透過化された反応溶液を加え、前記反応条件で処理した後、実施例2に記載の方法によりチップのプローブの強度(密度)及び均一性を検査した。
【0120】
実施例4:チップにより組織試料切片に対して逆転写反応を行った。
脱イオン水で洗浄されたキャビティに70μl逆転写混合液を加えた。逆転写混合液は、1x第一鎖緩衝液、5mMのDTT、500μMのdNTP、0.19μg/μlのBSA、1%DMSO、2.5μMのテンプレートスイッチオリゴ、20U/μlのSuperscriptIII及び2U/μlのRNase阻害剤を含む。
【0121】
テンプレートスイッチオリゴの配列:
5'ビオチン-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATrGrGrG-3'
テンプレートスイッチオリゴにおいて、最後から1、2及び3番目の塩基はリボグアノシンで修飾された。
【0122】
テープでキャビティを密封した後、温度制御ボードに置き、50℃に調整して逆転写を行い、16時間反応させた。
【0123】
逆転写終了後、キャビティ中の逆転写混合液を吸い出して捨てた。キャビティに70μl、0.08MのKOHを加え、室温で5分間インキュベートした後、100ulのRNaseフリー水を加えて1回洗浄した。
【0124】
洗浄後のキャビティにcDNA第二鎖合成反応溶液を加えた。第二鎖合成反応溶液は、1x第一鎖緩衝液、10U Klenow Exo-、2.5μMの第二鎖プライマーを含む。テープでキャビティを密封した後、温度制御ボードに置き、約37℃に調整してcDNA第二鎖合成を行い、1時間反応させた。
【0125】
第二鎖プライマーの配列:
5'-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACAT-3'
【0126】
反応終了後、キャビティ内の第二鎖合成反応溶液を吸い出して除去した。その後、100ulのRNaseフリー水を加えて1回洗浄した。キャビティに35μl、0.08MのKOHを加え、室温で10分間インキュベートした。いくつかの新しい1.5ml遠沈管を用意し、そこに10μlのTris(1M,pH7.0)を加えた。キャビティ中の35μl試料を対応するTris含有遠沈管内に移し、均一に混合してcDNAの第二鎖を作製した。
【0127】
cDNA増幅
新しい1.5ml遠沈管を取って氷上に置き、PCR増幅反応液を調製した。PCR反応液は、1×Kapa HiFi Hotstart ReadyMix、0.8μMのcDNAフォワードプライマー、0.8μMのcDNAリバースプライマー、35μlのcDNAテンプレートを含み、総体積は100μlである。以下のスキームに従ってcDNA増幅を行った
【表1】
cDNAフォワードプライマーの配列:
5'-CTACACGACGCTCTTCCGATC-3'
cDNAリバースプライマーの配列:
5'-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAG-3'
【0128】
増幅終了後、0.6×AMpure XP Beadsを用いて増幅産物を精製した。精製産物をライブラリ構築及びシーケンシングに使用した。
【0129】
実施例5:ライブラリ構築及びシーケンシング
断片化、末端修復、A追加
新しいPCRチューブを氷上に置き、断片化反応液を調製した。ここで、断片化反応液は、5μlのFEA Buffer V2、前のステップで精製された10μlのDNA、25μlのddH2O、10μlのFEA Enzyme Mix V2を含み、総体積が50μlであった。ピペットを用いて均一にピペッティング又は振盪し、短時間遠心分離し、反応液をチューブの底部に収集した。PCRチューブをPCR装置に置き、以下のプロセスを行った。
【0130】
【0131】
これによって、DNAを断片化すると同時に断片化DNAの末端充填を行い、5'端をリン酸化し、3'端にdAテールを追加することが実現された。
【0132】
アダプター結合
新しいPCRチューブを氷上に置き、アダプター結合反応液を調製した。ここで、アダプター結合反応液は、25μlのRapid Ligation Buffer V2、前のステップで精製された50μl の断片化DNA、15μlのddH2O、5μlのRapid DNA Ligase V2、5μlアダプター(10pM)を含み、総体積が100μlであった。ピペットを用いて均一にピペッティング又は振盪し、短時間遠心分離し、反応液をチューブの底部に収集した。PCRチューブをPCR装置に置き、以下のプロセスを行った。
【0133】
【0134】
アダプター配列は、
5'リン酸化-GATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCA*C-3'
5'-GCTCTTCCGATC*T-3'
である。
アダプター配列において、最後から1番目の塩基はチオ修飾された。
結合反応終了後、0.6×XP SPRIselect Beadsを用いて結合産物を精製した。
【0135】
ライブラリ増幅
新しいPCRチューブを氷上に置き、ライブラリ増幅反応液を調製した。ここで、ライブラリ増幅反応液は、25μlのVAHTS HiFi Amplification Mix、前のステップで精製された20μlのアダプター結合DNA、5μlのIndex PCR Primer Mix(10pMそれぞれ)を含み、総体積が50μlであった。ピペットを用いて均一にピペッティング又は振盪し、短時間遠心分離し、反応液をチューブの底部に収集した。PCRチューブをPCR装置に置き、以下のプロセスを行った。
【0136】
【0137】
ここで、Index PCR Primerの配列は、
i5 index primer:5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC-[i5 index]-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTC-3'
i7 index primer:5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT-[i7 index]-GTGACTGGAGTTCAGACGTGT-3'
である。
【0138】
増幅反応終了後、0.9×AMpure XP Beadsを用いて増幅産物を精製した。
【0139】
ライブラリの品質検査
構築されたライブラリに対して、それぞれQubit及びAgilent Bioanalyzer High Sensitivity chipを用いて濃度及び長さ分布を検出した。
図6に示すように、Qubitによって測定されたライブラリ濃度は20ng/μl以上であった。長さ分布検出については、1μl ライブラリサンプルを取り、機器及びキットの説明書に従って操作して断片分布検出した。測定されたライブラリ断片は、200-600bpの間に分布した。
【0140】
シーケンシング
illumina NovaSeq 6000を用いてライブラリに対してPE150シーケンシングを行った。
データ処理と分析
a)umitools(version:1.1.2)などのデータ処理ソフトウェアによりRead1におけるUMI及びBarcodeを抽出する。
b)STAR(version: 2.5.3a)などのデータ処理ソフトウェアによりread2をマウス参照ゲノムMouse reference,mm10 (GENCODE vM23/Ensembl 98)にアライメントする。
featureCounts(Version2.0.3)assign gene。
c)umitools(version:1.1.2)などのデータ処理ソフトウェアにより発現行列を生成する。
d)Adobe illustratorによりBarcode分析とHE画像とを比較する。
【0141】
マウスの嗅球のトランスクリプトーム解析結果を
図7に示す。
図7Aは、本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行うことにより検出可能な遺伝子数の図を示す。
図7Bは、本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行うことにより検出可能なUMI数の図を示す。
図7Cは、本発明で提供されるバイオチップによりマウスの脳組織に対して空間トランスクリプトーム解析を行って実際に検出された遺伝子数と捕捉転写物(UMI)の数の分布図である。
得られたデータに対して教師なしクラスター分析を行った結果を
図8に示す。
【0142】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を制限するものではない。本発明の思想及び原則内になされる全ての修正、同等置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のステップ1からステップ5を含む、アレイを有するバイオチップの製造方法であって、
ステップ1:チップを提供し、
ステップ2:チップ表面リンカー核酸をチップ表面に固定し、
ステップ3:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第1群のバーコード核酸をチップ表面に加え、前記チップ表面リンカー核酸と第1バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、第1方向の複数本の第1バーコードストリップを形成し、前記第1群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第1バーコード核酸を含み、各本の第1バーコードストリップには、1種の第1バーコード核酸が固定され、かつ各条の第1バーコードストリップに固定される第1バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ4:平行に設けられた複数のマイクロ流路により、第2群のバーコード核酸を、第2方向に沿ってチップ表面に加え、複数本の第2バーコードストリップを形成し、前記第2群のバーコード核酸は、異なるバーコード配列を有する複数種の第2バーコード核酸を含み、各本の第2バーコードストリップは、1種の第2バーコード核酸を有し、かつ各本の第2バーコードストリップ上の第2バーコード核酸は、異なるバーコード配列を有し、
ステップ5:第1バーコード核酸と第2バーコード核酸とが結合反応を発生する条件下で、前記複数本の第1バーコードストリップと前記複数本の第2バーコードストリップとが交差したチップ表面における位置で第2バーコード核酸と第1バーコード核酸とを結合させ、プローブを形成し、前記プローブの位置は、アレイのフィーチャーを構成し、各フィーチャーは、位置特異的なバーコード配列のプローブを有する、方法。
【請求項2】
平行に設けられた複数のマイクロ流路を有するマイクロ流路装置により、前記第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸をチップ表面に輸送して固定し、前記マイクロ流路のチップ表面と接触する面は、溶液又は溶液中の核酸が通過可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ流路装置の各マイクロ流路に、異なるバーコード配列を有する第1群のバーコード核酸又は第2群のバーコード核酸を加え
、前記第1群のバーコード核酸における各第1バーコード核酸のバーコード断片の配列及び前記第2群のバーコード核酸における各第2バーコード核酸のバーコード断片の配列は、指定のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、3'端に、生物試料中の目的核酸を識別、結合するためのプローブ断片
及び第2バーコード断片を含
む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2群のバーコード核酸における第2バーコード核酸は、固有分子識別子(UMI)をさらに有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記チップ表面リンカー核酸の3'端は、第1一本鎖結合核酸により第1バーコード核酸に結合する結合断片を有し、前記第1バーコード核酸の5'端は、前記第1一本鎖結合核酸により前記チップ表面リンカー核酸に結合する結合断片を有し、前記チップ表面リンカー核酸の3'端の結合断片及び前記第1バーコード核酸の5'端の結合断片は、それぞれ前記第1一本鎖結合核酸の両端の配列と逆相補的であ
り、
前記第1バーコード核酸の3'端は、第2一本鎖結合核酸により第2バーコード核酸に結合した第1結合断片を有し、前記第2バーコード核酸の5'端は、前記第2一本鎖結合核酸により第1バーコード核酸に結合した第2結合断片を有し、前記第1結合断片及び第2結合断片は、それぞれ前記第2一本鎖結合核酸の両端の配列と逆相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ2において、前記チップ表面リンカー核酸は、化学結合による連結によりチップ表面に固定され
る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
製造されたチップのフィーチャーでのプローブ密度は、約10
3-10
5個/μm
2である、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
製造されたチップのフィーチャーが有するプローブの均一性偏差は
、10%未満である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
製造されたチップのフィーチャーのサイズ均一性偏差は、10%未満
である、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
生物試料の核酸情報を分析するためのチップであって、
前記チップの表面は、アレイを形成するプローブを有し、前記プローブアレイは、互いに直交する行と列を含み、前記アレイにおける各フィーチャーのプローブは、それぞれ異なるバーコード配列を有し、前記プローブは、第1バーコードと第2バーコードを含み、前記プローブアレイの各行のプローブは、同じ第1バーコードを有し、各列のプローブは、同じ第2バーコードを有し、各行のプローブが有する第1バーコードは、互いに異なり、各列のプローブが有する第2バーコードは、互いに異なり
、前記生物試料の核酸情報を分析するためのチップは、その表面全体にチップ表面リンカー核酸を有する、チップ。
【請求項12】
前記プローブアレイにおける各プローブの配列は、5'端から3'端まで前記チップ表面リンカー核酸、第1バーコード、第2バーコード、及び生物試料における目的核酸を識別、結合するための捕捉断片を含む、請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
製造されたチップのフィーチャーでのプローブ密度は、約10
3-10
5個/μm
2である、請求項11に記載のチップ。
【請求項14】
製造されたチップのフィーチャーが有するプローブの均一性偏差は
、10%未満である、請求項11に記載のチップ。
【請求項15】
請求項
1に記載の方法により製造される、請求項
11に記載のチップ。
【請求項16】
請求項
11に記載のアレイを有するチップを用いて生物組織試料の空間トランスクリプトーム情報を解析する方法であって、
前記方法は、前記チップのアレイを組織試料に接触し、アレイにおけるプローブが組織における細胞の核酸
を識別、結合するステップを含む、方法。
【請求項17】
組織における核酸を細胞から放出して前記チップにおけるプローブに接触するステップをさらに含
む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組織が固定及び包埋された組織であり、前記組織を透過化することにより核酸を細胞から放出する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
逆転写反応を行うステップと、
cDNA分子を増幅するステップと、
増幅して得られた核酸に対してライブラリ構築/シーケンシングを行うステップと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記生物試料は、被験体に由来す
る組織薄切片であ
り、
前記方法は、前記組織薄切片に対して形態学的解析及び/又は組織学的解析を行うステップをさらに含み、前記組織学的解析は、H&E染色、IHC染色、ISH染色及びFISH染色により行われる、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】