(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】経口投与のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241210BHJP
C07K 7/04 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/525 20060101ALI20241210BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/505 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/555 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/62 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/655 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20241210BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/17 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/18 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241210BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241210BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241210BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241210BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241210BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241210BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241210BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K7/04 ZNA
C07K14/475
C07K14/525
C07K16/00
C07K14/505
C07K14/435
C07K14/555
C07K14/54
C07K14/62
C07K14/655
C07K14/605
C12N9/14
C12N15/12
C12N15/17
C12N15/18
C12N15/19
C12N15/24
C12N15/55
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
A61K35/12
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/02
A61K47/64
A61P7/06
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574593
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-02
(86)【国際出願番号】 US2022081277
(87)【国際公開番号】W WO2023108126
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519160901
【氏名又は名称】イマジン ファーマ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】タイ、ゴック
(72)【発明者】
【氏名】ポレット、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG08
4B064AG13
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4H045AA10
4H045BA10
4H045BA41
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4H045DA13
4H045DA15
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4H045DA30
4H045DA35
4H045DA37
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 治療用ポリペプチドおよびタンパク質ベースの治療薬を、胃腸内膜を横切って標的送達するための組成物および方法が開示される。一態様において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、(a)第1のポリペプチドであって、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記第1のポリペプチドと、および(b)第2のポリペプチドであって、前記第2のポリペプチドが前記第1のポリペプチドに対して異種である、前記第2のポリペプチドと、を含む、ポリペプチド構築物である。一態様において、前記異種ポリペプチドは治療用ポリペプチドである。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド構築物であって、
(a)第1のポリペプチドであって、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記第1のポリペプチドと、および
(b)第2のポリペプチドであって、前記第2のポリペプチドが前記第1のポリペプチドに対して異種ポリペプチドである、前記第2のポリペプチドと、
を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項2】
請求項1記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1または21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項6】
請求項1~3または5のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1または21と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項7】
請求項1~3、5または6のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1または21を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドはリンカーを介して結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドは、共有結合、またはイオン結合、または非共有結合を介して結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項10】
請求項9記載のポリペプチド構築物において、
(a)前記第2のポリペプチドのN末端が前記第1のポリペプチドのC末端に結合しており、または
(b)前記第1のポリペプチドのN末端が前記第2のポリペプチドのC末端に結合している、
ポリペプチド構築物。
【請求項11】
請求項9または10記載のポリペプチド構築物において、前記共有結合はアミド結合である、ポリペプチド構築物。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドは、ポリペプチドリンカーを介して結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項13】
請求項12記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチドリンカーは可撓性リンカーである、ポリペプチド構築物。
【請求項14】
請求項13記載のポリペプチド構築物において、前記可撓性リンカーは、グリシンおよび/またはセリンから選択される複数のアミノ酸を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項15】
請求項12記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチドリンカーは剛性リンカーである、ポリペプチド構築物。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドは、クリックケミストリーを介して結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物はさらに、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチドを含む、ポリペプチド構築物。
【請求項18】
請求項17記載のポリペプチド構築物において、前記第3のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項19】
請求項17または18記載のポリペプチド構築物において、前記第3のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第3のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第3のポリペプチドは、イオン結合を介して前記第1または前記第2のポリペプチドに結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項22】
請求項17~20のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第3のポリペプチドは、共有結合を介して前記第1または前記第2のポリペプチドに結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項23】
請求項22記載のポリペプチド構築物において、
(a)前記第2のポリペプチドのN末端は前記第1のポリペプチドのC末端と結合しており、および
(b)前記第2のポリペプチドのC末端は前記第3のポリペプチドのN末端と結合している、
ポリペプチド構築物。
【請求項24】
請求項22または23記載のポリペプチド構築物において、前記共有結合はアミド結合である、ポリペプチド構築物。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、第3のポリペプチドは、ポリペプチドリンカーを介して前記第1または前記第2のポリペプチドと結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項26】
請求項25記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチドリンカーは可撓性リンカーである、ポリペプチド構築物。
【請求項27】
請求項26記載のポリペプチド構築物において、前記可撓性リンカーは複数のグリシンおよびセリンを含む、ポリペプチド構築物。
【請求項28】
請求項25記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチドリンカーは剛性リンカーである、ポリペプチド構築物。
【請求項29】
請求項22~24のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、第3のポリペプチドは、クリックケミストリーを介して前記第1または前記第2のポリペプチドに結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記第2のポリペプチドは治療用タンパク質であるか、または治療用タンパク質を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項31】
請求項30記載のポリペプチド構築物において、前記治療用タンパク質は、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、成長因子、腫瘍壊死因子、血栓溶解剤、酵素、抗体、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、人工タンパク質足場である、ポリペプチド構築物。
【請求項32】
請求項31記載のポリペプチド構築物において、前記ホルモンはエリスロポエチンである、ポリペプチド構築物。
【請求項33】
請求項32記載のポリペプチド構築物において、前記エリスロポエチンは、エポエチンαまたはペグ化エポエチンである、ポリペプチド構築物。
【請求項34】
請求項31記載のポリペプチド構築物において、前記ホルモンはグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アゴニストである、ポリペプチド構築物。
【請求項35】
請求項34記載のポリペプチド構築物において、前記GLP-1アゴニストは、セマグルチド、エキセナチド、リラグルチドである、ポリペプチド構築物。
【請求項36】
請求項31記載のポリペプチド構築物において、前記ホルモンはインスリンである、ポリペプチド構築物。
【請求項37】
請求項36記載のポリペプチド構築物において、前記インスリンは、インスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インスリングルリシン、インスリンデテミル、デグルデックインスリン、またはグラルギンインスリンである、ポリペプチド構築物。
【請求項38】
請求項30記載のポリペプチド構築物において、前記治療用タンパク質は、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体、グルカゴン、ガルスルファーゼ、ネシリチド、またはタリグルセラーゼαである、ポリペプチド構築物。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号41、44~52のいずれか一つと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項40】
請求項39記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号41、44~52のいずれか一つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項41】
請求項39または40記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号41、44~52のいずれか一つと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項42】
請求項39~40のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号41、44~52のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、細胞毒素、蛍光標識、および画像化剤の1つまたはそれ以上と結合している、ポリペプチド構築物。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物において、前記ポリペプチド構築物は、1つまたはそれ以上のアミノ酸修飾を含む、ポリペプチド構築物。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物をコードする核酸。
【請求項46】
請求項45に記載の核酸を含むベクター。
【請求項47】
請求項45に記載の核酸を含む単離された細胞。
【請求項48】
請求項1~44のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物を発現するための、請求項47に記載の単離された細胞の使用。
【請求項49】
請求項48記載の使用において、さらに前記ポリペプチド構築物を単離することを含む、使用。
【請求項50】
ポリペプチド構築物を作成する方法であって、前記方法は、
(a)請求項45記載の核酸を含む細胞を提供する工程と、
(b)前記細胞において前記ポリペプチド構築物を発現させる工程と、および
(c)任意選択で、前記ポリペプチド構築物を実質的に精製する工程と、
を含む、方法。
【請求項51】
請求項48もしくは請求項49記載の使用、または請求項50記載の方法によって、得ることができるまたは得られたポリペプチド構築物。
【請求項52】
請求項1~44または51のいずれか一つに記載の前記ポリペプチド構築物および任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項53】
請求項52記載の医薬組成物において、前記医薬組成物はさらに添加剤、安定化剤、透過性増強剤、プロテアーゼ阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、医薬組成物。
【請求項54】
請求項52または53記載の医薬組成物において、前記医薬組成物は経口投与用に製剤化される、医薬組成物。
【請求項55】
医薬品として使用するための、請求項1~44または51のいずれか一つに記載のポリペプチド構築物、または請求項52~54のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項56】
ポリペプチド構築物を、それを必要とする対象の胃腸管から前記対象の循環系に輸送する方法であって、前記方法は、前記対象に、請求項1~44もしくは51のいずれか一つに記載の前記ポリペプチド構築物または請求項52~54のいずれか一つに記載の医薬組成物を経口投与する工程を含む、方法。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記対象はヒトである、方法。
【請求項58】
請求項56または57記載の方法において、前記第2のポリペプチドは、前記循環系への輸送後に前記ポリペプチド構築物の残部から分離される、方法。
【請求項59】
請求項58記載の方法において、前記第2のポリペプチドは、A、GA、RGA、GRGA、またはそれらの組み合わせから選択されるN末端またはC末端付加物を含む、方法。
【請求項60】
それを必要とする対象における貧血を治療する方法であって、前記方法は、請求項32もしくは33記載の前記ポリペプチド構築物を前記対象に投与する工程、または前記ポリペプチド構築物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項61】
それを必要とする対象における貧血を治療する方法であって、前記方法は、配列ID番号41を含むポリペプチド構築物を前記対象に投与する工程、または前記ポリペプチド構築物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項62】
それを必要とする対象における糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、請求項34もしくは36記載の前記ポリペプチド構築物を前記対象に投与する工程、または前記ポリペプチド構築物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項63】
それを必要とする対象における糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、配列ID番号42~50を含むポリペプチド構築物を前記対象に投与する工程、または前記ポリペプチド構築物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項64】
医薬組成物であって、(a)対象の胃腸管を通して前記対象の循環系に治療用ポリペプチドを輸送する手段と、および(b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項65】
請求項64記載の医薬組成物において、前記手段は、配列ID番号1~40に係るペプチドを前記治療用ポリペプチドに結合させることを含む、医薬組成物。
【請求項66】
請求項64または65記載の医薬組成物において、前記治療用ポリペプチドは、前記治療用ポリペプチドが前記循環系に送達される時に、配列ID1~40に係る前記ペプチドから全体的に(または部分的に)切断される、医薬組成物。
【請求項67】
請求項64~66のいずれか一つに記載の医薬組成物において、前記治療用ポリペプチドは、前記胃腸管を横切って輸送された後に前記循環系に存在し、A、GA、RGA、GRGA、またはそれらの組み合わせから選択される配列ID1~40に係る前記ポリペプチド由来のN末端またはC末端付加物を含む、医薬組成物。
【請求項68】
医薬品として使用するための、請求項64~67のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項69】
ポリペプチド構築物であって、リンカーによって異種ポリペプチドに結合されたポリペプチドを含み、前記リンカーは、前記ポリペプチド上のアルキル修飾ペプチドと前記異種ポリペプチド上のアジド修飾ペプチドとの間に形成されたアミド結合である、ポリペプチド構築物。
【請求項70】
前記ポリペプチド構築物であって、前記ポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月11日に出願された米国仮特許出願第63/288,579号の利益を主張するものであり、当該出願の開示内容はこの参照により本願明細書に全体的に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、小分子または低分子量の薬物は経口投与することが慣例となっている。一方で、ペプチドやタンパク質のような他の薬物は、多くの場合不安定であり、分子量が大きく、および/または極性があり、生体膜の透過性が悪いため、経口投与では有意な治療効果を得ることができない。このような分子量の大きい薬物が経口投与された場合、多くの薬物は胃腸管でタンパク質分解を受けるので、体液中への移行が困難である。このため、治療用のポリペプチドおよびタンパク質は、注射または点滴による投与が主流となっているが、これらは経口投与に比べて著しく利便性が劣り、費用や負担が大きい。
【0003】
胃および腸のタンパク質分解酵素は、生物製剤およびポリペプチドベースの治療薬を分解し、血流に吸収される前に不活化させる。胃のプロテアーゼ(通常、酸性pHを有する)によるタンパク質分解を生き延びたポリペプチドは、小腸のプロテアーゼおよび膵臓から分泌される酵素(通常、中性~塩基性pHを有する)による作用も受ける。ポリペプチドの経口投与が特別に困難であることは、ポリペプチドの比較的大きな分子サイズおよびポリペプチドが運ぶ電荷分布に起因する。この比較的大きな分子サイズおよび電荷分布により、ポリペプチドが腸壁の粘液に浸透したり、血液に移行したりすることが難しくなっている。
【0004】
治療用ポリペプチドの経口投与には、a)胃および腸でのタンパク質分解酵素によるポリペプチドの分解、b)吸収の悪さ、すなわちポリペプチドの腸管底側への輸送しにくさや血中への放出しにくさ、という2つの主な課題がある。経口投与の有効性を改善すること、すなわち経口の生物製剤およびポリペプチドベースの薬剤の生物学的利用能を向上させることは、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示されるのは、胃腸内膜を超えて治療用ポリペプチドおよびタンパク質ベースの治療薬を標的送達するための組成物および方法である。
【0006】
一つの側面において、提供されるのは、ポリペプチド構築物であって、(a)第1のポリペプチドであって、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記第1のポリペプチドと、および(b)第2のポリペプチドであって、前記第2のポリペプチドが前記第1のポリペプチドに対して異種ポリペプチドである、前記第2のポリペプチドと、を含む、ポリペプチド構築物である。一つの局面において、前記異種ポリペプチドは治療用ポリペプチドである。
【0007】
別の態様において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0008】
別の態様において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の態様において、前記第1のポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0009】
別の態様において、対象への経口投与後に前記胃腸内膜を横切って標的送達するための医薬組成物は、配列ID1~40の1つまたはそれ以上と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物の治療有効量を含み、前記ポリペプチドは異種ポリペプチドに連結されている。
【0010】
別の態様において、対象への前記組成物の経口投与後に前記胃腸内膜を横切って標的送達するための前記組成物は、薬学的に許容される添加剤、賦形剤、安定化剤、透過性増強剤、またはプロテアーゼ阻害剤のうちの1つまたはそれ以上をさらに含む。
【0011】
別の態様において、本明細書で開示されるのは、対象の前記胃腸内膜を横切る異種ポリペプチドの標的送達に適したポリペプチド構築物である。
【0012】
別の態様において、標的送達システムが構成され、異種ポリペプチドと、対象の前記胃腸内膜を横切って前記異種ポリペプチドを輸送するための手段とを含み、前記異種ポリペプチドが治療用ポリペプチドであり、輸送するための前記手段が、配列ID1~40によるポリペプチドに対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを提供することと、前記ポリペプチドを前記異種ポリペプチドに結合させることと、を含む。
【0013】
別の態様において、ポリペプチド構築物は、リンカーによって異種ポリペプチドに結合されたポリペプチドを含み、前記リンカーは、前記ポリペプチド上のアルキル修飾ペプチドと前記異種ポリペプチド上のアジド修飾ペプチドとの間に形成されたアミド結合である。
【0014】
開示された標的薬物送達のための組成物および方法のモジュール化された性質は、ポリペプチドベースの治療薬の経口製剤のための有利な手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】(a)第1のポリペプチドであって、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド(図中では「ペプチドトランスポーター」と表記)、および(b)第2のポリペプチド(図中では「治療用(タンパク質)」と表記)であって、前記第2のポリペプチドは前記第1のポリペプチドと異種である治療用ポリペプチドであって、対象への経口投与後、前記胃腸内膜を通過して前記血流に入ることで送達される、第2のポリペプチド、を含むポリペプチド構築物を含む組成物を送達するための標的薬物送達システムの概要を示す。活発なエンドサイトーシス過程を通して、前記ポリペプチド構築物は前記頂端細胞壁に吸収され、移動し、前記基底壁を通って出て、そこで前記第1のポリペプチドは前記血液中のトロンビンによって自然に切断されることにより、前記治療用ポリペプチドは前記血流中に送達される。
【
図1B】ポリペプチド構築物を含む薬物送達システムであって、(a)第1のポリペプチドであって、配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記第1のポリペプチドと、および(b)第2のポリペプチドであって、前記第2のポリペプチドは前記第1のポリペプチドと異種である、前記第2のポリペプチドと、を含む、薬物送達システムの概要を示す。一実施形態において、配列ID1~40に係る前記ペプチドは、前記治療用ポリペプチドのN末端またはC末端で結合される。前記治療用ポリペプチドは、生物学的薬剤、ペプチドベースの薬剤、または経口投与には適さない高分子薬剤であっても良い。開示された前記薬物送達方法は、IV/SQに限定された薬物送達をPOによる送達に変換する手段を提供する。
図1Bに示すのは、治療用ポリペプチドを含むポリペプチド構築物の代表例であり、例えば、エリスロポエチン(PT-EPO)、GLP-1、GLP-1アゴニスト(PT-GA-1、PT-GA2)、およびオクトレオチド(PT-OCT)であって、そのほかの治療用タンパク質は表2に示されている。
【
図1C】標的送達ポリペプチド構築物および標的送達システムであって、ポリペプチドは、生物学的薬剤のような治療用ポリペプチドに結合し、結合は、ポリペプチドとタンパク質とのライゲーションを介して行われる、標的送達ポリペプチド構築物および標的送達システムの概要を示す。(注:
図1Bおよび1Cに示された構築物は縮尺通りに描かれていない)。
【
図2】Caco-2細胞モデルにおける蛍光アッセイによって決定される、配列ID番号1~40に係る配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、および異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物のin vivoでの取り込みを示す。(実施例1参照)Caco-2細胞を、ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物の存在下で培養し、蛍光アッセイを用いて分析し、ポリペプチド構築物の細胞への取り込みの割合を決定する。ポリペプチド構築物は左から右に、BSA(ウシ血清アルブミン)、エロスルファーゼα、第VIII因子、g-CSF、ベラタセプト、グルカルピダーゼ、エリスロポエチン(EPO)、および第IX因子に結合した配列ID番号1に係るポリペプチドを含むポリペプチド構築物である。いくつかのペプチド構築物は、切断ポリペプチドを含む様々なペプチド構築物を含め、Caco-2細胞による取り込みについて試験された。グラフには示していないが、切断ポリペプチド(20アミノ酸長まで短く、配列ID1~20に係るポリペプチドで代表される)は、対照と比較して、Caco-2細胞による異種ポリペプチドの取り込みを促進することが確認された。
【
図3】ヒトエリスロポエチンの経口投与形態の標的送達方法を試験するための、スプラーグドーリーラットを用いたin vivo動物試験の概要を示す。スプラーグドーリーラット(n=8)に、配列ID番号41のポリペプチド構築物(図中では「PT-EPO」と表記)を含む組成物を投与した。前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号1に係るポリペプチドおよび配列ID番号43に係る異種ポリペプチドを含むものであった。PBS中に2.5mg/kg、1mg/kg、および0.25mg/kgの濃度のPT-EPOを含む組成物を、経口(per os)(PO)投与した。PBS中に0.5mg/kgの濃度のPT-EPOを含む組成物を、生物学的利用能のための別個の対照/参考として、静脈内(IV)投与した。0分、5分、15分、30分、および60分、ならびに2時間、4時間、8時間、および24時間を含む投与後の時間間隔で、処理した動物(POおよびIV)から採血を行った。サンプルは、対象動物の血流中のヒトエリスロポエチンの有無を評価するために試験された。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、エリスロポエチンを経口投与するための標的送達方法の取り込みおよび生物学的利用能を示す(実施例2~5参照)。
図4A.配列ID41のポリペプチド構築物(PT-EPO)を含む組成物を、POおよびIVで、3用量投与した。血清は、投与後、0分、5分、15分、30分、および60分、ならびに2時間、4時間、8時間、および24時間を含む、24時間にわたって様々な時点で採取された。投与された全ての用量において、配列ID56に係るポリペプチド(N末端にグリシンおよびアラニンを有するヒトエリスロポエチン)が、処理されたラットの血清中で検出された。
図4B.ウェスタンブロットを用いて、他の血清タンパク質からN末端にグリシンおよびアラニンを有するヒトエリスロポエチンを分離した。このバンドの塩基配列を決定し、ヒトエリスロポエチンの全長配列に対応するアミノ酸配列であることを確認したが、さらに2つのアミノ酸残基(「GA」)が残っていた。このデータから、配列ID41のポリペプチド構築物が経口投与された時に胃腸(GI)の腸関門を通過し、配列ID56のポリペプチドが血流に取り込まれたことが確認された。
【
図5】配列ID41のポリペプチド構築物を含む組成物の経口および静脈内投与後のラットの血清中の配列ID57のポリペプチドの存在を示す。このデータは、組成物の投与後、ポリペプチド構築物が切断され、2つのポリペプチド断片:配列ID番号56および配列ID番号57に係るポリペプチドを生じることを示している。
【
図6】胃腸関門を通過するエリスロポエチンの標的送達のための、配列ID41によるポリペプチドを含んでなる組成物の有効性を試験するための動物モデル研究の概要を示す。スプラーグドーリーラット(n=8)に、配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物を含む組成物を600μg(毎日POで)投与した(実施例3を参照)。対応する対照群(n=8)には、溶媒対照(10mMマルトースを含むPBS溶液)をPOで投与した。血液サンプルを0日目、14日目、および28日目に採取し、ヒトエリスロポエチンの存在について試験した。ヘモグロビンレベルも測定した。
【
図7】配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物を含む組成物を(毎日POで)投与したスプラーグドーリーラット(n=8)において、ヒトエリスロポエチンが検出されることを示しており、この組成物が腸関門を通過し、動物の血流にエリスロポエチンを送達できることを示している。
【
図8】スプラーグドーリーラットへの経口投与(毎日POで600μg)後の、配列ID41に係るポリペプチド構築物を含む組成物の治療効果を示す。処理された動物の平均ヘモグロビンレベルは、経口投与後、経時的に増加した(週単位で測定)。
【
図9】配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物を含む組成物の経口投与後の、第2の動物(イヌ)モデルにおける治療効果を示す(実施例5参照)。配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチドを含む組成物の経口投与後、対象イヌ(ビーグル)において、ヘモグロビンおよびヘマトクリットレベルが増加した。投与量は、1mg/kg、5mg/kg、50mg/kg、125mg/kgであり、それぞれPBSに溶解し、単回投与としてPOで投与した。
【
図10】配列ID41に係るポリペプチド構築物を含む組成物のPO単回投与後の、赤血球数、ヘモグロビンレベル、およびヘマトクリットレベルの集計データを示しており、対照と比較している(実施例5参照)。
【
図11】配列ID1と配列同一性を有するポリペプチドを含み、配列ID番号55~56と配列同一性を有する1つまたはそれ以上の異種ポリペプチドに結合したポリペプチド構築物の、Caco-2細胞モデルにおける取り込みを示す。異種ポリペプチドはGLP-1アゴニストを含む(実施例6参照)。図において、例示的なポリペプチド構築物は、配列ID番号55(エキセナチド類似体)に係るポリペプチドを含む異種ポリペプチドに結合した配列ID1に係るポリペプチドを含むポリペプチド構築物(「PT-GA1」と称され、配列ID番号42と配列同一性を有するポリペプチド構築物に対応する)、配列ID番号56(セマグルチド/リラグルチド類似体)に係るポリペプチドを含む異種ポリペプチドに結合した配列ID1に係るポリペプチドを含むポリペプチド構築物(「PT-GA2」と称され、配列ID番号44と配列同一性を有するポリペプチド構築物に対応する)を含み、PT-GA2と称されるセマグルチド/リラグルチド類似体に結合した配列ID1に係るポリペプチドを含むポリペプチド構築物は、PT-GA2として参照される(そして配列ID46に係るポリペプチド構築物に対応する)。
【
図12】配列ID42または44に係るポリペプチド構築物を含む組成物のin vivoにおける治療効果を、組成物の経口投与後の血糖値の低下によって示したものである(投与量はPBS中で600μg)。
【
図13】修飾リジン残基(Lys(N3)、ポリペプチドを第2の異種ポリペプチドにライゲーションおよび結合するためのリガンド)を含む修飾部分をC末端に有する、配列ID21と配列同一性を有するポリペプチドの概要を示す。
【
図14】配列ID21~40と配列同一性を有するポリペプチドにライゲーション(結合)するためのオクトレオチド類似体(修飾体としてのペンチノイル-オクトレオチド)を含む異種ポリペプチドを表す化学式の概要を示す(実施例7参照)。
【
図15】
図15A~15Dは、クリックケミストリーを介して、異種ポリペプチドにライゲーションされた配列ID21に係るポリペプチドを含むポリペプチド構築物(「PT-OCT」と命名)を含む式の概要を示す。ここで、異種ポリペプチドは、配列ID53に係るオクタペプチド(オクトレオチド類似体)である(そして、
図14に従って修飾されている)。
【
図16】アルキン修飾ペプチドおよびアジド修飾ペプチドを用いたクリックケミストリー反応の概要を示す(実施例7および
図15参照)。
【
図17】配列ID番号41、49、および50に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物のin vitroの取り込みを示す。Caco-2細胞を、配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物(図中ではPT-EPOと表記)、配列ID49に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物(図中ではPT-OCT「融合」と表記)、および配列ID50に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物(PT-OCT「連結」と表記)をそれぞれ5μg/mLの濃度で含む組成物で2時間処理した。蛍光アッセイに基づき、30%以上の構築物がCaco-2細胞に取り込まれたことが確認された。これは、胃腸管を通過する組成物の能力を示している。横並びの比較はまた、従来の発現ベクターや他の組換え法によるポリペプチド構築物の生成方法とともに、本明細書に開示したようなポリペプチド構築物の生成方法としてのクリックケミストリーライゲーションの使用も検証している。
【
図18】配列ID50に係る配列同一性を有するポリペプチドを含むペプチド構築物(図中では「PT-OCT」と表記)、およびトロンビンによる切断後の同じ構築物(図中では「PT-OCT(切片)」として表記)の治療効果を示す。各ポリペプチド構築物(全長および「切片」)は、(対照と比較して)グルコース刺激膵島細胞による相対的グルコース分泌の減少を引き起こす。このようにグルコース刺激膵島細胞のインスリン分泌を阻害するポリペプチド構築物の能力を確認した。
【
図19】配列ID50に対応する配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物(PT-OCTとして表記)がin vitroでCaco-2細胞に取り込まれ、配列ID50に対応する配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物を含む組成物が、ラットに投与(PO)された場合に治療用ポリペプチドの標的送達をもたらすことを示す(未処理細胞および配列ID41に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物で処理された細胞が対照として使用された)。in vivo研究のために、ウィスターラット(n=2)に、配列ID50に対応する配列同一性を有するポリペプチド構築物を含む組成物を600μg/動物(PBS中)の濃度で投与(PO)した。投与してから0時間、3時間、および5時間後に動物から血液サンプルを採取した。サンプルを分析したところ、配列ID53に係るポリペプチド断片のレベルが上昇していた。したがって、ペプチド構築物を含む組成物を経口投与すると、胃腸関門を越えて異種ポリペプチドが標的送達されることが確認された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
タンパク質やペプチド、その他の高分子を含む特定の治療薬を経口投与することは、さまざまな理由から極めて困難である。よって、注射または親水性経路投与が、特定の治療薬の唯一の投与経路として実施されている。消化器系は本質的に、吸収前に分子を分解するようにできている。生物製剤およびペプチドベースの薬剤の低い生物学的利用能は、依然として活発な研究分野である。本開示は、部分特異的薬物送達のための有望な手段を提供し、および生物製剤の経口生物学的利用能を1%未満から50%以上に改善し、以前は経口投与に適さないか、または製剤化されていなかった治療薬を特異的に送達することを可能にする。
【0017】
本開示は、経口経路によるポリペプチドベースの治療薬の標的送達を達成するために、以下の主な利点の1つまたはそれ以上を提供する:a)胃および腸において治療薬を分解するタンパク質分解活性を妨げる、b)生物学的活性を保持するプロテアーゼ耐性の治療用ポリペプチド類似体を提供する、c)「遮蔽分子」として作用するポリペプチドとの結合により治療薬またはポリペプチドを安定化する、および/またはd)腸の上皮膜を介した受動的な治療薬またはポリペプチドの輸送(拡散)を改善する。
【0018】
本開示は、経口送達のためのポリペプチドベースの治療薬を製剤化するための組成物および方法を提供する。ポリペプチドベースの治療薬は経口経路による投与が困難であるが、低分子薬物よりもいくつかの利点を有する。第一に、タンパク質は多くの場合、単純な化学化合物では模倣できないような非常に特異的で複雑な一連の機能を果たしている。第二に、タンパク質の作用は非常に特異的であるため、タンパク質治療薬が正常な生物学的工程を阻害し、副作用を引き起こす可能性が低いことが多い。第三に、治療薬として使用されるタンパク質の多くは体内で自然に生成されるため、これらの薬剤は耐性が高く、免疫反応を引き起こす可能性が低いことが多い。第四に、遺伝子に変異や欠失がある疾患の場合、タンパク質治療薬は、ほとんどの遺伝性疾患では現在利用できない遺伝子治療を必要とせず、効果的な代替治療を提供することができる。第五に、タンパク質治療薬の臨床開発およびFDA承認に要する時間は、低分子医薬品の時間よりも早い。
【0019】
比較的少数のタンパク質治療薬は、豚および仔豚の膵臓からの膵酵素や、プールされたヒト血漿からのα-1-プロテイナーゼ阻害剤のように、本来の供給源から精製されるが、現在ではほとんどが組換えDNA技術によって生産され、広範な生物から精製されている。組換えタンパク質の生産系には、細菌、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞、および遺伝子組み換え動物や植物等がある。どの系を選択するかは、生産コストや、生物学的活性に必要なタンパク質の修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、タンパク質分解切断)によって決まる。例えば、細菌はグリコシル化反応を行わないし、上記の他の生物学的系はそれぞれ異なるタイプまたはパターンのグリコシル化を生じる。タンパク質のグリコシル化パターンは、体内における組換えタンパク質の活性、半減期、および免疫原性に劇的な影響を与えることがある。例えば、赤血球産生に重要な成長因子である天然エリスロポエチン(下記参照)の半減期は、タンパク質の糖鎖付加を増加させることによって長くすることができる。ダルベポエチン-aはエリスロポエチン類似体であり、N-結合型糖鎖付加反応の基質となる2つのアミノ酸を追加で含むように設計されている。チャイニーズハムスター卵巣細胞で発現させると、この類似体は3本ではなく5本のN-結合型糖鎖で合成される。この修飾により、ダルベポエチンの半減期はエリスロポエチンの3倍長くなる。
【0020】
組換えで生産されたタンパク質には、非組換えタンパク質と比較して、さらにいくつかの利点がある。第一に、正確なヒト遺伝子を転写し翻訳することで、タンパク質の特異的活性が高くなり、免疫学的拒絶反応の可能性が低くなる。第二に、組換えタンパク質は多くの場合、より効率的かつ安価に生産され、潜在的に無限の量で生産される。その顕著な例の一つが、ゴーシェ病のタンパク質ベースの治療である。ゴーシェ病は、β-グルコセレブロシダーゼ(グルコシルセラミダーゼとしても知られる)という酵素の欠損によって引き起こされる脂質代謝の慢性先天性疾患で、肝臓や脾臓の肥大化、皮膚の色素沈着の増加、および痛みを伴う骨病変を特徴とする。当初、ヒト胎盤から精製されたβ-グルコセレブロシダーゼがこの疾患の治療に使用されていたが、これには患者1人当たり年間5万個の胎盤からタンパク質を精製する必要があり、精製タンパク質の利用可能量には明らかに現実的な限界があった。その後、β-グルコセレブロシダーゼの組換え体が開発され、導入された。この組替え体は、この病気の患者をより多く治療するのに十分な量が入手できるだけでなく、ヒト胎盤からタンパク質を精製することに伴う伝染性疾患(例えば、ウイルスやプリオン)のリスクを排除することができる。このことはまた、非組み換えタンパク質に対する組み換えタンパク質の第三の利点、すなわち動物やヒトの病気への暴露を減らすということも示している。
【0021】
第四の利点は、組換え技術によって、機能または特異性を向上させるためにタンパク質を修飾したり、特定の遺伝子変異体を選択したりできることである。ここでも、組換えβ-グルコセレブロシダーゼが興味深い例を示している。このタンパク質を組換えで作ると、アミノ酸のアルギニンをヒスチジンに変えることで、タンパク質にマンノース残基を付加することができる。このマンノースは、マクロファージおよび他の多くの細胞タイプのエンドサイトーシス糖鎖受容体によって認識され、酵素がより効率的にこれらの細胞に入り込み、病的な量まで蓄積した細胞内脂質を切断することを可能にし、その結果、治療成績が向上する。最後に、組換え技術により、後述するように、新規の機能または活性を提供するタンパク質の生産が可能になる。
【0022】
異種ポリペプチド、タンパク質、およびペプチド、ならびに他の高分子治療薬を含む特定の治療タンパク質の送達は、注射または非経口投与に限定されてきた。したがって、本明細書において提供されるのは、胃腸内膜を通過する治療薬の標的送達のための組成物および方法である。実施形態において、開示された組成物および方法は、経口投与に適していない、または経口投与用に製剤化されていないと以前は考えられていた治療薬であっても、ポリペプチドおよびタンパク質の経口生物学的利用能を1%未満から50%以上に改善する。
【0023】
定義
以下の用語は、異なる実施形態を説明するために本開示において使用される。これらの用語は、説明の目的のみに使用され、本明細書で特許請求される対象のいかなる側面についても範囲を限定することを意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用される「活性剤(active agent)」は、治療効果をもたらす活性を有する生物学的、化学的、または分子的成分を指す。
【0025】
本明細書で使用される「組成物(composition)」または「製剤(formulation)」は、経口または非経口経路で投与するための水溶液、固形剤、半固形剤、またはエアロゾル等の特定の形態における活性剤を(互換的に)指す。必要に応じて、製剤は、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または1つまたはそれ以上の添加剤を含む。本明細書に開示される製剤は、本明細書に記載される活性剤と組み合わせて、他の既知の活性剤を含有しても良い。
【0026】
本明細書で使用される「融合タンパク質(fusion protein)」という用語は、2つまたはそれ以上の異なるタンパク質、および/またはペプチド、および/またはポリペプチドの全部または一部を含む、合成、半合成、または組換えのタンパク質分子を指す。例えば、本明細書で提供されるのは、互いに結合したポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、融合タンパク質はin vitroで合成される。いくつかの実施形態において、融合タンパク質が構成する2つまたはそれ以上の異なるポリペプチドおよび/またはペプチドは、別々に産生され、その後共有結合される。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は組換えタンパク質として発現される。
【0027】
本明細書で使用されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列は、2つの配列が自然界で関連していない場合、それが操作可能に結合している別の配列に対して「異種(heterologous)」である。このような結合は必ずしも共有結合ではない。例えば、本明細書で提供されるのは、ポリペプチドおよび異種ポリペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質または組換えタンパク質であり、ここで、ポリペプチドおよび異種ポリペプチド/タンパク質は、自然界において関連していない。また例えば、本明細書で提供されるのは、ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物である。
【0028】
本明細書で使用される「リンカー(linker)」という用語は、ポリペプチドと異種ポリペプチドとの間の切断可能または非切断可能な結合を指す。リンカーは、当業者に認識されるように、多くの形態をとる。リンカーは、2つのポリペプチド間の結合であって良く、具体的には、2つのアミノ酸の原子間の結合から生じるか、または1つまたはそれ以上のアミノ酸に対する修飾もしくは官能基の原子間に形成される結合であっても良い。
【0029】
本明細書で使用される「ペプチドトランスポーター(peptide transporter)」または「PT(PT)」は、配列ID番号1~40に係る配列同一性を有するポリペプチドを指すために使用される専門語である。
【0030】
本明細書で使用される「ポリペプチド(polypeptide)」は、ペプチド結合を介して結合された、直列配列の3またはそれ以上のアミノ酸のポリマーのことである。「ポリペプチド」という用語には、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質類似体、オリゴペプチド等が含まれる。「ポリペプチド」という用語は、核酸によってコードされるか、組換え技術によって産生されるか、適切な供給源から単離されるか、または合成されるポリペプチドを意図する。「ポリペプチド」という用語はさらに、化学的に修飾されたアミノ酸、または他の分子、官能基、ライゲーションリガンド、もしくは標識リガンドと共有結合または非共有結合したアミノ酸を含む、上記で定義されたポリペプチドを意図する。
【0031】
本明細書で使用される「ポリペプチド構築物(polypeptide construct)」という用語は、2つまたはそれ以上の異なるタンパク質および/またはポリペプチドの全部または一部を含む合成、半合成、または組換え単一分子を指す。例えば、本明細書で提供されるのは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むポリペプチド構築物であり、第2のポリペプチドは第1のポリペプチドに対して異種である。第1のポリペプチドに対して異種である第2のポリペプチドは、本明細書において「異種ポリペプチド(heterologous polypeptide)」とも呼ばれる。いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物はin vitroで合成される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物が構成する2つまたはそれ以上の異なるタンパク質および/またはポリペプチドは、別々に産生され、その後結合する。
【0032】
本明細書で使用される「配列ID(SEQ ID)」または「配列ID番号(SEQ ID NO)」は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド断片、またはその類似体を(互換的に)指し、およびその修飾体も含み、表1に列挙した番号に従って、番号で指定したアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をする。
【0033】
本明細書で使用される「配列同一性(sequence identity)」という用語は、2つの核酸分子、ポリペプチド、またはアミノ酸間の同一性を指し、配列間の同一性または類似性で表される。配列同一性は、同一性のパーセンテージで測ることができ、パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。同一性のパーセンテージは配列の全長にわたって計算される。アミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法で整列させると比較的高い配列同一性を持つ。この相同性は、より近縁な種(例えばヒトとマウスの配列)に由来するオルソロガスタンパク質と、より遠縁な種(例えばヒトと線虫の配列)に由来するオルソロガスタンパク質とを比較した場合により顕著である。比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野でよく知られている。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが下記に記載されている:Smith&Waterman;Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson&Lipman,Proc.Nat.Acad Sci.USA 85:2444,1988;Higgins&Sharp,Gene,73:23744,1988;Higgins&Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Carpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90,1988;Huang et al.Computer Appls.in the Biosciences 8,155-65,1992;and Pearson et al.,Meth Mol.Bio.24:307-31,1994。Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990は、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。配列同一性のレベルは、以下を用いて決定することができる:GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Research 12:387,1984),BLASTP,BLASTN,FASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990),およびALIGNプログラム(version2.0)。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムも類似性を決定するために使用できる。BLASTプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual,Altschul,et al.,NCBI NLM NIH,Bethesda,Md.20894;BLAST2.0 at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/)。アミノ酸残基は、翻訳後に修飾されるか、または他の官能性もしくは非官能性の分子基で結合もしくは修飾されることがある。当然、そのような修飾アミノ酸残基は、アミノ酸配列に含まれ、本明細書に記載される組成物の範囲内に含まれる。例えば、本明細書に記載の特定のポリペプチドと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有し、好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。配列の比較において、上記の方法は、種々の置換、欠失、および他の修飾を考慮する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列ID番号1~50のいずれか一つと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の保存的アミノ酸置換を有する配列を含む。本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitutions)」および「保存的修飾(conservative modifications)」という用語は、アミノ酸配列を含む本明細書で開示されるタンパク質の機能および/または活性に有意な影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指す。このような保存的修飾には、アミノ酸置換、付加、および欠失が含まれる。修飾は、部分特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発のような、当該分野で公知の標準的な技術によって、本開示のタンパク質に導入することができる。アミノ酸は、電荷および極性等の物理化学的性質に従ってグループに分類することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を同じグループ内のアミノ酸で置換するものである。例えば、アミノ酸は電荷によって分類することができる:正電荷のアミノ酸にはリジン、アルギニン、ヒスチジンが含まれ、負電荷のアミノ酸にはアスパラギン酸、グルタミン酸が含まれ、中性電荷のアミノ酸にはアラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが含まれる。さらに、アミノ酸は極性によって分類することができる:極性アミノ酸には、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、アスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リジン(塩基性極性)、セリン、スレオニン、およびチロシンが含まれる。非極性アミノ酸には、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、およびバリンが含まれる。
【0034】
本明細書で使用される「対象(subject)」または「個体(individual)」または「動物(animal)」または「患者(patient)」または「哺乳動物(mammal)」は、治療が求められる、または診断、予後、もしくは療法が望まれる対象、特に哺乳動物の対象、例えばヒトを指す。
【0035】
本明細書で使用される「治療用ポリペプチド(therapeutic polypeptide)」は、例えば研究者や臨床医が求めている組織、系、動物、もしくはヒトの生物学的または医学的応答を引き出すために対象に投与することができる、一連の整然としたアミノ酸、タンパク質、および/またはポリペプチドベースの医薬剤を指す。治療用ポリペプチドは、2以上の生物学的または医学的応答を引き起こすことができる。治療用ポリペプチドは、治療目的、すなわち対象における障害の治療のために使用することができる。治療用ポリペプチドは治療目的に使用することができるが、前記ポリペプチドはin vitro研究にも使用することができるので、本開示はそのような使用に限定されないことに留意すべきである。治療用ポリペプチドの例示的な、しかし網羅的ではない例を表2に示すが、これは本開示の範囲または特許請求の範囲の解釈を限定することを意図するものではない。
【0036】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」という用語、および本明細書で使用される他の文法的等価物は、疾患または病態の症状の緩和、軽減または改善、さらなる症状の予防、症状の根本的な代謝原因の改善または予防、疾患または病態の抑制、例えば、疾患または病態の発症の阻止、疾患または病態の緩和、疾患または病態の退縮、疾患または病態によって引き起こされる状態の緩和、疾患または病態の症状の停止、および予防を含む。これらの用語はさらに、治療的利益および/または予防的利益の達成を含む。治療的利益とは、治療される基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療的利益は、患者が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、患者に改善が観察されるような、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つまたはそれ以上の根絶または改善によって達成される。予防的利益のために、本組成物は、特定の障害を発症する危険性のある患者、または診断がなされていなくても1つまたはそれ以上の生理学的症状を報告する患者に投与することができる。
【0037】
本明細書で使用される「治療有効量(therapeutically effective amount)」または「有効量(effective amount)」は、対象に1回または反復投与した場合に、対象において臨床関連エンドポイントを達成することができる生物学的に活性な薬剤/治療用ポリペプチドの量である。このような効果は、有益であるために絶対的である必要はない。組成物の適切な用量は、経口、注射、または点滴等の投与経路に依存し、治療される対象ならびに治療される状態の重篤度に依存する。アロメトリックスケーリング(allometric scaling)のようなスケーリング法を用いて、本明細書に開示されるような、成人への組成物の投与のための適切かつ例示的な用量範囲を予測することが可能である。用量スケーリングは経験的アプローチであり、当該技術分野において十分に特徴付けられ、理解されている。このアプローチは、種間の解剖学的、生理学的、および生化学的工程に関するいくつかの独特な特性が存在し、そして薬物動態学/生理学的時間における起こり得る差異が、そのようなものとして、スケーリングによって説明されると仮定する。治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。
【0038】
本明細書で使用される「ベクター(vector)」は、好ましくは適切な宿主中で自己複製する核酸分子であって、挿入された核酸分子を宿主細胞内および/または宿主細胞間に伝達する。この用語は、主に細胞内へのDNAまたはRNAの挿入のために機能するベクター、主にDNAまたはRNAの複製のために機能するベクターの複製物、およびDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを含む。また、上記の機能のうち2以上を提供するベクターも含む。「発現ベクター(expression vector)」は、適切な宿主細胞に導入されると転写され、ポリペプチド(単数または複数)に翻訳されるポリヌクレオチドである。「発現系(expression system)」とは、通常、所望の発現産物を得るために機能する発現ベクターで構成される適切な宿主細胞を意味する。
【0039】
本明細書で開示されるのは、表1に同定および記載されている配列ID番号1~59に対応する配列同一性を有するポリペプチド、ポリペプチド断片、異種ポリペプチド、およびそれから形成されるポリペプチド構築物である。
【表1】
【0040】
以下の式に係るポリペプチドを含む組成物が開示される:
Xaa01Xaa02Xaa03Xaa04Xaa05 Xaa06Xaa07Xaa08Xaa09Xaa10
Xaa11Xaa12Xaa13Xaa14Xaa15 Xaa16Xaa17Xaa18Xaa19Xaa20
Xaa21Xaa22Xaa23Xaa24Xaa25 Xaa26Xaa27Xaa28Xaa29Xaa30
Xaa31Xaa32Xaa33Xaa34Xaa35 Xaa36Xaa37Xaa38Xaa39Xaa40
Xaa41Xaa42Xaa43Xaa44Xaa45 Xaa46Xaa47Xaa48Xaa49Xaa50
ここで、
Xaa01=M,A,V,I,L
Xaa02=A,G,S
Xaa03=D,E
Xaa04=D,E
Xaa05=A,G,S
Xaa06=G,A,S
Xaa07=A,G,S
Xaa08=A,G,S
Xaa09=G,A,S
Xaa10=G,A,S
Xaa11=P
Xaa12=G,A,S
Xaa13=G,A,S
Xaa14=P
Xaa15=G,A,S
Xaa16=G,A,S
Xaa17=P
Xaa18=G,A,S
Xaa19=M,A,V,I,L
Xaa20=M,T,I,G,A,S
Xaa21=N,G,A,Q
Xaa22=N,Q,R,K
Xaa23=R,K,G,A,S
Xaa24=G,A,S
Xaa25=G,A,F,Y,W,H
Xaa26=F,Y,W,R,K
Xaa27=R,K,G,A,S
Xaa28=G,A,S
Xaa29=G,A,F,Y,W,H
Xaa30=F,Y,W,G,A,S
Xaa31=G,A,S
Xaa32=S,T,G,A
Xaa33=G,A,I,V,L,M
Xaa34=R,K
Xaa35=G,A,S
Xaa36=R,K
Xaa37=G,A,S
Xaa38=R,K
Xaa39=G,A,S
Xaa40=R,K
Xaa41=G,A,S
Xaa42=R,K
Xaa43=G,A,S
Xaa44=R,K
Xaa45=G,A,S
Xaa46=R,K
Xaa47=G,A,S
Xaa48=R,K
Xaa49=G,A,S
Xaa50=A,G,S,K
である。
【0041】
以下の式のポリペプチドを含む化合物が開示される:
H-Met-Ala-Asp-Asp-Ala5-Gly-Ala-Ala-Gly-Gly10-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly15-Gly-Pro-Gly-Met-Gly20-Asn-Arg-Gly-Gly-Phe25-Arg-Gly-Gly-Phe-Gly30-Ser-Gly-Ile-Arg-Gly35-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg40-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly45-Arg-Gly-Arg-Gly-Lys(N3)50-OH
ここで、前記ポリペプチドは、リジン末端残基を介して、異種ポリペプチドに結合することが可能であり、前記化合物は、対象に投与された時に、前記異種ポリペプチドの標的送達を提供する。
【0042】
本明細書において開示されるのは、ポリペプチドへのライゲーションのために修飾された配列ID52に係る異種ポリペプチドであって、プロピノ酸-D-Phe-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr-オールを含み、前記修飾された異種ポリペプチドは、ポリペプチドへの結合のために設計され、前記ポリペプチドは、Lys(N3)50-OHを含む修飾されたリジン残基を含む末端で修飾される、異種ポリペプチドである。
【0043】
本明細書において開示されるのは、H-Met-Ala-Asp-Asp-Ala-Gly-Ala-Ala-Gly-Gly-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly-Met-Gly-Asn-Arg-Gly-Gly-Phe-Arg-Gly-Gly-Phe-Gly-Ser-Gly-Ile-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Nle(トリアゾール-プロピオニル-D-Phe-Cys-Phe-D-Tru-Lys-Thr-Cys-Thr-オール)-OHを含む式を含む化合物であって、前記化合物は、経口経路により対象に投与された場合に、前記ポリペプチドの標的送達を提供する。
【0044】
本明細書において開示されるのは、対象に経口経路で投与する場合に、胃腸内膜を横切って異種ポリペプチドを送達するのに適したポリペプチド構築物であって、前記ペプチド構築物は、前記異種ポリペプチドに結合したポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、配列ID1~40に係るペプチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドであり、前記異種ポリペプチドは治療用ポリペプチドであり、前記ポリペプチドはリンカーによって前記異種ポリペプチドに結合される。
【0045】
前記ポリペプチドおよび異種ポリペプチドは、共有結合および/またはイオン結合を介して、直接的または間接的に結合される。一態様において、前記ポリペプチド構築物はポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む。実施形態において、前記ポリペプチドと前記異種ポリペプチドはイオン結合によって結合される。イオン結合とは、反対に荷電したイオン間の静電引力から生じる結合をいう。実施形態において、ポリペプチドおよび異種ポリペプチドは共有結合によって結合される。共有結合とは、2つの原子間の1対以上の電子の相互共有を指す。一態様において、前記ポリペプチドおよび前記異種ポリペプチドはアミド結合またはペプチド結合で結合される。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、前記異種ポリペプチドのN末端に結合される。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、前記異種ポリペプチドのC末端に結合される。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドのC末端は、前記異種ポリペプチドのN末端に結合される。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドのN末端は、前記異種ポリペプチドのC末端に結合される。いくつかの実施形態において、前記異種ポリペプチドのN末端は、前記ポリペプチドのN末端に結合される。いくつかの実施形態において、前記異種ポリペプチドのC末端は、前記ポリペプチドのC末端に結合される。「結合される(linked)」という用語は、前記ポリペプチドと前記異種ポリペプチドとが互いに直接結合されることを必ずしも必要としない。実施形態において、前記ポリペプチドおよび前記異種ポリペプチドは、切断可能または非切断可能な付加的部分等のリンカーを介して結合される。
【0047】
前記ポリペプチド構築物は、2つまたはそれ以上のポリペプチドおよび1つの異種ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド構築物は、少なくとも以下の構成要素を指示された方向で含む:ポリペプチド-異種ポリペプチド-ポリペプチド。いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、少なくとも以下の構成要素を指示された方向で含む:ポリペプチド-ポリペプチド-異種ポリペプチド。いくつかの実施形態において、ポリペプチド構築物は、少なくとも以下の構成要素を指示された方向で含む:異種ポリペプチド-ポリペプチド-ポリペプチド。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、リンカーを介して前記異種ポリペプチドに結合される。実施形態において、前記リンカーは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10アミノ酸長のポリペプチドリンカーである。実施形態において、前記ポリペプチドリンカーは1~20アミノ酸長である。前記リンカーは、天然および非天然に存在するアミノ酸を含んでも良い。前記ポリペプチドと前記異種ポリペプチドとを結合させる前記リンカーは、可撓性部分および/または剛性部分を含んでも良い。実施形態において、前記リンカーは可撓性リンカーである。実施形態において、前記リンカーは、剛性リンカーである。実施形態において、前記リンカーは、1つもしくはそれ以上の、または複数の、グリシンおよびセリンを含むポリペプチドリンカーである。一実施形態において、前記リンカーは切断可能なリンカーである。一実施形態において、前記リンカーは、単数のリジンまたは複数のリジン残基である。一実施形態において、前記リンカーは非切断可能なリンカーである。一実施形態において、前記リンカーはらせん状リンカーである。一実施形態において、前記リンカーは、非らせん状リンカーである。一実施形態において、前記リンカーは、ビオチン-ストレプトアビジン等の強力な非共有結合性相互作用である。一実施形態において、前記リンカーは、ポリペプチド上のアルキル修飾ペプチドと異種ポリペプチド上のアジド修飾ペプチドとの間に形成されるアミド結合である。
【0049】
一実施形態において、前記ポリペプチド構築物を構成する成分の一部または全部は、例えば組換え発現または化学合成によって別々に産生され、その後結合される。実施形態において、前記ポリペプチド構築物を構成する成分の一部または全部、あるいは前記ポリペプチド構築物全体は、組換え宿主細胞で産生されるか、または組換え核酸から合成される。「組換え宿主細胞(recombinant host cell)」とは、組換え核酸を含む宿主細胞のことである。本明細書で使用する「組換え核酸(recombinant nucleic acid)」という用語は、天然に存在する環境から除去された核酸、または天然に存在する時にその核酸に隣接または近接する核酸の全部または一部と関連しない核酸、または自然界では結合されていない核酸に操作可能に結合されている核酸、または自然界に存在しない核酸、または自然界でその核酸に存在しない修飾を含む核酸(例えば、人為的に導入された挿入、欠失、点突然変異等)、または異種部分で染色体に組み込まれた核酸を指す。この用語には、クローン化されたDNA単離物、および化学的に合成されたヌクレオチド類似体を含む核酸が含まれる。
【0050】
バクテリアのような原核細胞ならびに、酵母および哺乳動物細胞培養系を含むがこれらに限定されない真核細胞系において、ポリペプチド構築物を効率的に合成するための様々な発現ベクターが開発されてきた。ベクターは、染色体、非染色体、および合成DNA配列のセグメントを含むことができる。また、本明細書に開示されたポリペプチド構築物を発現させるための発現ベクターを含む細胞も提供される。発現ベクターは通常、エピソームとして、または宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主生物中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞を検出できるように選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、またはネオマイシン耐性)を含む(例えば、Itakuraらの米国特許第4,704,362号を参照)。
【0051】
本明細書に開示されたポリペプチド構築物の発現は、原核細胞でも真核細胞でも起こる可能性がある。好適な宿主としては、in vivoもしくはin situの酵母、昆虫、真菌、鳥類、および哺乳動物細胞を含む細菌または真核宿主、あるいは、哺乳動物、昆虫、鳥類、もしくは酵母由来の宿主細胞が含まれる。哺乳動物細胞または組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、げっ歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、またはネコ由来であっても良いが、他のいかなる哺乳動物細胞を使用しても良い。
【0052】
大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドのクローニングに特に有用な原核生物宿主の一つである。他の好適な微生物宿主としては、枯草菌等の桿菌、サルモネラ菌、セラチア菌、シュードモナス属等の腸内細菌が含まれる。
【0053】
酵母のような他の微生物も発現に有用である。サッカロマイセス(Saccharomyces)およびピキア(Pichia)は例示的な酵母宿主であり、発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製起点、終結配列等を所望により有する適当なベクターを伴う。典型的なプロモーターとしては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖系酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターとしては、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロムC、ならびにメタノール、マルトース、およびガラクトースの利用を担う酵素由来のプロモーター等が含まれる。
【0054】
さらに、例えば、酵母ユビキチンヒドロラーゼ系を用いることにより、ユビキチン-膜貫通ポリペプチド融合タンパク質のin vivo合成が達成できる。このようにして生産された融合タンパク質は、in vivoで処理されるか、あるいはin vitroで精製および処理され、指定されたアミノ末端配列を有するポリペプチド構築物の合成を可能にする。さらに、酵母(または細菌)の直接発現における開始コドン由来のメチオニン残基の保持に関連する問題を回避できる可能性がある。Sabin et al.,7 Bio/Technol.705(1989);Miller et al.,7 Bio/Technol.698(1989).酵母をグルコースに富む培地で培養した時に、解糖系酵素が大量に産生される。この解糖系酵素をコードする活性発現遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントを組み込んだ一連の酵母遺伝子発現系のいずれかを、ポリペプチド構築物に利用することができる。既知の解糖系遺伝子はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供することができる。例えば、ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子のプロモーターおよび終結シグナルを利用することができる。
【0055】
昆虫におけるポリペプチド構築物の生産は、例えば、当業者に公知の方法により、膜貫通ポリペプチドを発現するように操作されたバキュロウイルスを昆虫宿主に感染させることにより達成することができる。
【0056】
微生物に加えて、哺乳動物の組織培養もまた、ポリペプチド構築物の発現および産生に使用される。これらの細胞用の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー等の発現制御配列を含むことができ(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49(1986))、ならびにリボソーム結合部分、RNAスプライス部分、ポリアデニル化部分、および転写終結配列のような必要なプロセシング情報部分を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。Co et al.,J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0057】
目的のポリペプチド構築物をコードする配列を含むベクターは、細胞宿主のタイプによって異なる周知の方法によって宿主細胞に導入することができる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般的に原核細胞に利用されるが、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、バイオリスティックス、またはウイルスベースのトランスフェクションは他の細胞宿主に利用される。(一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual[Cold Spring Harbor Press,第2版,1989年]を参照)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレンの使用、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションが含まれる(一般に、Sambrook et al.,前出参照)。遺伝子組み換え動物を生産するためには、受精卵に導入遺伝子をマイクロインジェクションするか、または胚性幹細胞のゲノムに組み込み、その細胞の核を有核卵子に移植する。
【0058】
本明細書において提供されるのは、本明細書において開示されるポリペプチド構築物を産生する方法であり、前記方法は、本明細書においてポリペプチド構築物を発現する細胞を提供する工程と、および前記ポリペプチド構築物を単離する工程とを含む。
【0059】
本明細書において提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチド構築物を産生する方法であって、前記方法は、配列ID21~40に係るポリペプチドを提供する工程と、および前記ポリペプチドを異種ポリペプチドにライゲーションする工程とを含み、ライゲーションは、ポリペプチドの末端の修飾アミノ酸残基を利用する化学反応(クリックケミストリー等)によって行われる方法である。
【0060】
一実施形態において、前記ポリペプチド構築物を構成する成分の一部または全部を化学的ライゲーションによって結合させる。クリックケミストリーは1つの例示的なライゲーション方法であり、クリックケミストリーによって分子を結合するための様々な方法は当技術分野でよく知られている。「クリックケミストリー(Click Chemistry)」とは、スクリプス研究所(the Scripps Research Institute)の研究者らによって導入された用語で、小さな単位を結合させることによって、迅速かつ確実に物質を生成するように調整された化学を称する。「クリックケミストリー(click chemistry)」という用語は、非常に効率的で、範囲が広く、立体特異的な反応に適用される。生成物の単離は容易で、反応は安価な試薬で簡単に行え、水等の穏和な溶媒で実施できる。Huisgen1,3-双極子付加環化は、おそらく最も広く研究されているクリック反応である。この反応の変種である銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC)もまた、クリックケミストリーのコンセプトによく合致しており、今日まで最も人気のあるクリック反応の原型のひとつである。
【0061】
古典的なクリックケミストリー法は通常、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)-リンカー-マレイミド等のヘテロ二官能性架橋剤、あるいは同様の2段階工程に依存している。アミノ反応性NHSおよびチオール反応性マレイミドを利用して、タンパク質を固体支持体に結合させる。他の方法としては、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)クリック反応およびOaAEP1(C247A)ベースの酵素ライゲーションを組み合わせる方法がある。これらの方法は当技術分野でよく知られており、当業者であれば本開示を適用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド、前記異種ポリペプチドの一方または両方、および/または前記ポリペプチド構築物は、1つまたはそれ以上のアミノ酸に対する化学修飾、および/または機能的部分の付加もしくは結合を含む。このようなアミノ酸修飾としては、これに限定されるものではないが、リン酸化、メチル化(例えば、リジンのメチル化[モノ、ジ、またはトリメチル化]、およびアルギニンのメチル化[モノ、非対称ジメチル化、または対称ジメチル化])、アセチル化、ユビキチン化、ミリストイル化、パルミトイル化、イソプレニル化、プレニル化、アシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、酸化、硫酸化、セレノイル化、SUMO化、シトルリン化、脱アミド化、カルバミル化、ADPリボシル化、ユビキチン化、ニトロシル化、リジンクロトニル化、ホルミル化、プロピオニルリジン化、ブチリルリジン化、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド構築物は1つまたはそれ以上の脂質で共有結合的に修飾され、この脂質は、これに限定されるものではないが、脂肪酸、コレステロール、イソプレノイド、リン脂質、およびジアシルグリセリル脂質を含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド構築物は機能的部分に結合され、この機能的部分は、これに限定されるものではないが、診断部分、または検出可能な部分、ライゲーションもしくは精製に有用な部分、または標的部分を含む。前記機能的部分への結合は、前記ポリペプチド構築物の末端の一つであっても良いし、そうでなくても良い。部分は二以上の機能を有していても良い。一実施形態において、修飾は、第1のポリペプチドの末端上のアルキル修飾ペプチドおよび第2の(異種)ポリペプチド上のアジド修飾ペプチドを含み、これらは、前記ポリペプチド構築物を生成するために、前記第1のポリペプチド上の修飾ペプチドと前記第2のポリペプチド上の修飾ペプチドとの間のアミド結合の形成を促進する。
【0063】
精製に有用な部分の例としては、これに限定されるものではないが、アルブミン結合タンパク質(ABP)、アルカリホスファターゼ(AP)、AU1エピトープ、AU5エピトープ、バクテリオファージT7エピトープ(T7-タグ)、バクテリオファージV5エピトープ(V5-タグ)、ビオチンカルボキシキャリアタンパク質(BCCP)、ブルータングウイルスタグ(B-タグ)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、セルロース結合ドメイン(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、コリン結合ドメイン(CBD)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、E2エピトープ、FLAGエピトープ、ガラクトース結合タンパク質(GBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Glu-Glu(EE-タグ)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)、Haloタグ(登録商標)、ヒスチジンアフィニティタグ(HAT)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、HSVエピトープ、ケトステロイドイソメラーゼ(KSI)、KT3エピトープ、LacZ、ルシフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、Mycエピトープ、NusA、PDZドメイン、PDZリガンド、ポリアルギニン(Arg-タグ)、ポリアスパラギン酸(Asp-タグ)、ポリシステイン(Cys-タグ)、ポリヒスチジン(His-タグ)、ポリフェニルアラニン(Phe-タグ)、Profinity eXact、プロテインC、S1-タグ、S-タグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)、ブドウ球菌プロテインA(プロテインA)、ブドウ球菌プロテインG(プロテインG)、ストレプトタグ、ストレプトアビジン、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)、タンデムアフィニティー精製(TAP)、T7エピトープ、チオレドキシン(Trx)、TrpE、ユビキチン、ユニバーサル、およびVSV-Gを含む。
【0064】
検出可能な部分の例としては、これに限定されるものではないが、蛍光部分または標識、画像化剤、放射性同位体部分、放射線不透過性部分等、例えば、ビオチン、フルオロフォア、クロモフォア、スピン共鳴プローブ、または放射性標識等の検出可能な標識を含む。フルオロフォアの非限定的な例としては、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、ローダミン等)および他の発光分子(例えば、ルミナール)を含む。フルオロフォアは、基質(例えば、ダンシルプローブ)との結合により構造変化を起こす修飾タンパク質中の1つまたはそれ以上の残基の近くに位置する場合、その蛍光が変化するような環境感受性であっても良い。放射性標識の非限定的な例としては、1つまたはそれ以上の低感度核(13C、15N、2H、125I、123I、99Tc、43K、52Fe、67Ga、68Ga、111In等)を有する原子を含む低分子を含む。その他の有用な部分は当技術分野で知られている。
【0065】
本明細書において提供されるのは、ポリペプチド構築物であって、(a)配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、および(b)異種ポリペプチドと、を含むポリペプチド構築物である。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、配列ID番号1~40のいずれか一つを含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、配列ID番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、配列ID番号1を含む。実施形態において、前記ポリペプチドは、N末端またはC末端リジンを含む。また、本明細書中に開示される前記ポリペプチド配列のいずれかと比較して、1つまたはそれ以上の切断、内部欠失、内部挿入、置換、または修飾を含むポリペプチドも意図される。例えば、当業者は、前記ポリペプチドの安定性を変化させるために、または前記ポリペプチドの製造の容易さもしくはコストを増加させるために、本明細書中に開示されるポリペプチド配列を切断することを望むかもしれない。切断ポリペプチド(50~30アミノ酸、および30~20アミノ酸)を試験し、配列ID番号1に係るポリペプチドの切断は、異種ポリペプチドの標的送達のための配列ID番号1に係るポリペプチド(全長)の特性を表すことが示された。
【0066】
本明細書において提供されるのは、ポリペプチド構築物であって、(a)修飾末端リジンを含むポリペプチドと、および(b)異種ポリペプチドと、を含み、前記異種ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドと前記ポリペプチドの修飾末端リジンとの間に形成されるアミド結合を介して前記ポリペプチドに結合されている、ポリペプチド構築物である。
【0067】
本明細書において提供されるのは、ポリペプチド構築物であって、(a)ポリペプチドと、および(b)異種ポリペプチドと、を含み、前記異種ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、ポリペプチド構築物である。治療用ポリペプチドは治療目的に使用しても良いが、前記ポリペプチドはin vitro研究に使用しても良いので、本開示は治療目的の使用に限定されないことに留意すべきである。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記治療用ポリペプチドは、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、成長因子、腫瘍壊死因子、血栓溶解剤、酵素、抗体、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、人工タンパク質足場である。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記ホルモンはエリスロポエチンである。いくつかの実施形態において、ホルモンはヒトエリスロポエチンである。一実施形態において、前記ホルモンはエポエチンである。エリスロポエチンの非限定的な例としては、Epogen(登録商標)(エポエチン-α)、Procit(登録商標)(エポエチンα-epbx)、およびRetacrit(登録商標)(エポエチンα-epbx)、ならびにペグ化エポエチンを含む。いくつかの実施形態において、ホルモンは、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)またはGLP-1アゴニストである。GLP-1アゴニストの非限定的な例としては、Exendin4、セマグルチド(これらに限定されないが、Wegovy(登録商標)およびOzempic(登録商標)を含む)、リラグルチド(これらに限定されないが、Victoza(登録商標)を含む)、エキセナチド(これらに限定されないがByetta(登録商標)およびBydureon(登録商標)を含む)等を含む。いくつかの実施形態において、ホルモンはインスリンである。いくつかの実施形態において、インスリンは、インスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インスリングルリシン、インスリンデテミル、デグルデクインスリン、およびグラルギンインスリンである。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記治療用ポリペプチドは、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体、グルカゴン、ガルスルファーゼ、ネシリチド、またはタリグルセラーゼαである。ソマトスタチンの非限定的な例としては、これに限定されるものではないが、Sandostatin(登録商標)LAR Depot(酢酸オクトレオチド)、MYCAPSSA(登録商標)(オクトレオチド)を含む。なお、Mycapassaはオクトレオチドを胃から血流に移行させるために一過性透過促進剤(TPE[登録商標])を使用する。TPE(登録商標)はオクトレオチドの油性懸濁液で、多くの賦形剤を含んでおり、経細胞的擾乱から生じる腸管上皮タイトジャンクションの開口により、上皮バリアの完全性を一過的に変化させることができる。透過促進剤(PE)が、バイスタンダー病原体(bystander pathogens)、リポ多糖およびその断片、または敗血症、炎症、ならびに自己免疫疾患と関連する可能性のある外毒素および内毒素を伴うペイロード(payloads)の共吸収を可能にするのに十分な、不可逆的な上皮の損傷およびタイトジャンクションの開通を引き起こすかどうかは疑問である。ほとんどのPEは、程度の差こそあれ、膜の障害を引き起こすようであるが、急速に可逆的であり、病原体の共吸収に関する全体的な証拠は一般的に欠けている。しかし、慢性治療のための反復投与レジメン中に、腸管上皮の損傷-修復サイクルが持続するかどうかは不明である。配列ID番号1~40に係るペプチドはPEとして作用するのではなく、タンパク質を腸管細胞に取り込ませ、反対側を通って血液に逆輸出させることで、PEに関連するすべての問題を回避する。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記治療用ポリペプチドは、表1または表2に開示されているようなポリペプチド、またはその変異体である。「変異体(variant)」とは、親ポリペプチドと比較して1つまたはそれ以上の変化を含むポリペプチドを指し、これに限定されるものではないが、アミノ酸の付加、置換、挿入、欠失、または翻訳後修飾を含む。ここで、変異体は親ポリペプチドの治療活性の少なくとも10%を保持する。また、本明細書に開示されるいずれかの異種ポリペプチドのバイオシミラーバージョンである異種ポリペプチドも提供される。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記異種ポリペプチドは哺乳動物ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、前記異種ポリペプチドはヒトポリペプチドである。
【0073】
いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、配列ID番号41~50のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物である。いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、配列ID番号41~50のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物である。
【0074】
いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、(a)配列ID番号1~40、58、59のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、(b)異種ポリペプチドと、および任意選択で、(c)配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドと、を含むポリペプチド構築物である。いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、(a)配列ID番号1~40、58、または59のいずれか一つを含む第1のポリペプチドと、(b)異種ポリペプチドと、および任意選択で、(c)配列ID番号1~40、58、または59のいずれか一つを含む第2のポリペプチドと、を含むポリペプチド構築物である。
【0075】
いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、(a)配列ID番号1~40、58、および59のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、(b)配列ID番号41~50のいずれか一つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む異種ポリペプチドと、および任意選択で、(c)配列ID番号1~40のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドと、を含むポリペプチド構築物である。いくつかの実施形態において、提供されるのはポリペプチド構築物であって、(a)配列ID番号1~40、58、59のいずれか一つを含む第1のポリペプチドと、(b)異種ポリペプチドと、を含むポリペプチド構築物である。
【表2】
【0076】
また、本明細書において提供されるのは、本明細書で開示されるポリペプチド構築物をコードする核酸を含む、核酸、ゲノム、およびベクターである。本明細書で使用される「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、リボヌクレオチドまたはデソキシリボヌクレオチドのいずれかである。したがって、この用語は、これに限定されるものではないが、一本鎖、二本鎖、もしくは多本鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリン塩基およびピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む。
【0077】
本明細書において提供されるのは、核酸であって、(i)プロモーターと、および(ii)本明細書において開示されるポリペプチド構築物をコードする導入遺伝子と、を含み、前記導入遺伝子が前記プロモーターに操作可能に結合される核酸である。本明細書中で使用される「操作可能に結合(operably linked)」とは、導入遺伝子と連続する発現制御配列、および導入遺伝子の発現を制御するためにトランスまたは離れた位置で作用する発現制御配列の両方を指す。発現制御配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列、スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルのような効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(例えば、Kozakコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を高める配列、ならびに所望によりタンパク質のプロセシングおよび/または分泌を高める配列が含まれる。
【0078】
一態様において、提供されるのは細胞であって、本明細書に開示されるポリペプチド構築物をコードする導入遺伝子を含む細胞である。提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチド構築物を作製する方法であり、前記方法は、(i)本明細書に開示されるIL-ポリペプチド構築物をコードする導入遺伝子を含む細胞を提供する工程と、および(ii)細胞中でポリペプチド構築物を発現させる工程と、を含む。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド構築物は、前記細胞から実質的に精製される。いくつかの実施形態において、提供されるのは細胞であって、本明細書に開示されるポリペプチド構築物をコードする導入遺伝子を含み、前記細胞は前記ポリペプチド構築物を分泌する細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である。本明細書において提供されるのは、単離された細胞である。
【0079】
本明細書において提供されるのは、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化された、本明細書において開示されるポリペプチド構築物を含む医薬組成物である。前記活性剤および賦形剤(単数または複数)は、当該分野で公知の方法に従って組成物および剤形に製剤化される。本明細書に開示される前記医薬組成物は、経口投与に適合したものを含め、固体または液体の形態で特別に製剤化される。
【0080】
本明細書に開示されるポリペプチド構築物を含む治療用組成物は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されても良い。前記賦形剤は、薬学的に許容される材料、組成物、または溶媒、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、担体、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくは亜鉛、またはステリン酸)、対象への投与のために治療化合物を運搬または輸送するのに関与する溶媒またはカプセル化材料、増量剤、塩、界面活性剤、および/または保存剤であっても良い。薬学的に許容される賦形剤として機能できる材料の例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖類、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース等のセルロースならびにその誘導体、ゼラチン、タルク、ワックス、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油等の油類、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール等のポリオール類、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル類、寒天、緩衝剤、水、等張食塩水、pH緩衝液、その他医薬製剤に使用される非毒性の適合物質を含む。
【0081】
増量剤は、医薬製剤に質量を付加し、凍結乾燥形態における製剤の物理的構造に寄与する化合物である。本開示による好適な増量剤としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール、およびソルビトールを含む。
【0082】
界面活性剤の使用は、再構成されたタンパク質の凝集を減少させ、および/または再構成された製剤中の微粒子の形成を減少させることができる。界面活性剤の添加量は、再構成されたタンパク質の凝集を減少させ、再構成後の微粒子の形成を最小化するような量である。本開示による適切な界面活性剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-サルコシン、リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル-、またはジナトリウムメチルオレイル-タウレート、およびポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ならびにエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニック、PF68等)を含む。
【0083】
防腐剤は、本明細書に開示される製剤において使用される。本明細書に開示する製剤において使用するために適した防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ヘキサメトニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩化物の混合物)、およびベンゼトニウム塩化物を含む。他のタイプの防腐剤としては、フェノール、ブチル、およびベンジルアルコール等の芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールを含む。他の適切な賦形剤は、標準的な医薬教科書、例えば、"Remington’s Pharmaceutical Sciences",The Science and Practice of Pharmacy,19th Ed.Mack Publishing Company,Easton,Pa.,(1995)に記載されている。
【0084】
実施形態において、医薬組成物は、経口投与のためのポリペプチド構築物を含み、前記組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、または水溶液の形態を含む、固体、半固体、ゲル、または液体の形態であっても良い。
【0085】
本明細書において提供されるのは、異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物を、それを必要とする対象の胃腸から前記対象の循環系に輸送する方法であって、前記方法は、本明細書に開示されるポリペプチド構築物または本明細書に開示されるポリペプチド構築物を含む医薬組成物を、前記対象に経口投与する工程を含む。本明細書において提供されるのは、それを必要とする対象の胃腸から前記対象の循環系に前記ポリペプチド構築物を輸送する方法において使用するための、異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物であって、前記方法は、本明細書において開示されるポリペプチド構築物または本明細書において開示されるポリペプチド構築物を含む医薬組成物を、前記対象に経口投与する工程を含む。実施形態において、前記対象は哺乳動物である。実施形態において、前記対象はヒトである。
【0086】
実施形態においては、ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む前記ポリペプチド構築物は、腸の先端細胞壁に吸収され、基底壁を通って循環系に移動し、排出される。前記循環系には、心臓、血管(動脈、静脈、毛細血管を含む)、および血液が含まれる。実施形態において、前記ポリペプチド構築物は胃壁によって吸収される。実施形態において、前記異種ポリペプチドは、異種ポリペプチドが循環系に位置すると、ポリペプチド構築物の残部から分離される。一実施形態において、前記ポリペプチド構築物の残部から分離された後、前記異種ポリペプチドは、前記ポリペプチド構築物の残部から誘導されたN末端またはC末端付加物を含む。実施形態において、前記N末端またはC末端付加物は、A、GA、RGA、GRGA、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0087】
本明細書において提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチド構築物を治療有効量で対象に投与する方法である。
【0088】
開示されるのは、対象の胃腸内膜を横切って前記対象の循環系に治療用ポリペプチドを転流させる方法であって、異種ポリペプチドに結合された配列ID1~40から選択される配列同一性を有するポリペプチドを含む第1のポリペプチドを含むポリペプチド構築物を含む医薬組成物を摂取する工程を含み、前記異種ポリペプチドは治療用ポリペプチドであって、前記対象がヒトであって、前記治療用ポリペプチドが前記循環系に入る前(または入った時点)に、前記治療用ポリペプチドが前記第1のポリペプチドから全体的に(または部分的に)切断され、さらに、前記循環系に存在する前記治療用ポリペプチドが、任意選択で、A、GA、RGA、GRGA、またはそれらの組み合わせから選択される前記第1のポリペプチド由来のN末端付加物またはC末端付加物を含む方法である。
【0089】
本明細書において提供されるのは、それを必要とする対象において貧血を治療する方法であって、前記方法は、エリスロポエチンを含むポリペプチド構築物を前記対象に投与する工程を含む、方法である。本明細書において提供されるのは、エリスロポエチンを含むポリペプチド構築物である。本明細書において提供されるのは、貧血を治療するための医薬の製造における、エリスロポエチンを含むポリペプチド構築物の使用である。実施形態において、前記エリスロポエチンは、エポエチンαまたはペグ化エポエチンである。実施形態において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号41を含む。
【0090】
本明細書において提供されるのは、それを必要とする対象において糖尿病を治療する方法であって、前記方法は、配列ID番号1~40に係る配列同一性を有するポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含むポリペプチド構築物を含む組成物を前記対象に投与する工程を含み、前記異種ポリペプチドは、リラグルチド、セマグルチド、オクトレオチド、GLP-1、インスリン、またはそれらの変異体もしくは類似体からなる群から選択される、方法である。本明細書において提供されるのは、糖尿病を治療するための医薬の製造における、リラグルチド、セマグルチド、オクトレオチド、GLP-1、インスリンのうちの1つを含む前記ポリペプチド構築物の使用である。実施形態において、前記ポリペプチド構築物は、配列ID番号42~50を含む。
【0091】
本明細書で提供される前記ポリペプチド構築物は、経口投与することができる。実施形態において、ポリペプチド構築物は、1日に1回、2回、3回、4回、5回、6回投与される。前記ポリペプチド構築物は、1日おき、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、8週間に1回(もしくは2ヶ月に1回)、12週間に1回(もしくは3ヶ月に1回)、または24週間に1回(6ヶ月に1回)投与される。前記ポリペプチド構築物は、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間、またはそれ以上の期間にわたって投与される。
【0092】
本明細書に開示される前記ポリペプチド構築物の有効量、または場合により治療有効量は、当該分野で公知の方法によって決定することができる。例えば、本明細書に開示されるポリペプチドの適切な用量は、投与経路に依存し、かつ治療される対象ならびに治療される状態の重篤度に依存する。アロメトリックスケーリングのようなスケーリング法を用いて、本明細書に開示されるような組成物の成人への投与のための適切かつ例示的な用量範囲を予測することが可能である。用量スケーリングは経験的アプローチであり、当該技術分野において十分に特徴付けられ、理解されている。このアプローチは、種間の解剖学的、生理学的、および生化学的工程に関するいくつかの独特な特性が存在し、薬物動態学/生理学的時間において起こり得る差異が、そのようなものとして、スケーリングによって説明されると仮定する。
【0093】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ポリペプチド構築物を含む組成物であり、さらに追加の治療剤を含む。このような追加の薬剤としては、これに限定されるものではないが、抗細菌剤、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、抗炎症剤、抗癌剤、抗神経変性剤、および抗感染剤を含む。このような併用療法に使用される薬剤は、前述の分類の1つまたはそれ以上に該当する。前記ポリペプチド構築物および前記追加の治療薬の投与は、同時であっても連続であっても良い。前記ポリペプチド構築物および前記追加の治療薬の投与は、別々であっても混合物であっても良い。
【0094】
本開示のより良い理解を促進するために、以下の具体的な実施例を示す。以下の実施例は、本開示の全範囲を限定または定義するために読まれるべきではなく、実施例は、例示のために提供されるものであり、本明細書で特許請求される対象に関して限定するために提供されるものではない。
【実施例1】
【0095】
治療用ポリペプチドの標的送達を促進するための、配列ID1~40に従って同定される配列を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドの有効性を評価するために、治療用ポリペプチドを含む異種ポリペプチドに結合した配列ID1~40に係るポリペプチドを含む一連のペプチド結合体を構築した。ポリペプチド結合体は、治療用ポリペプチドの取り込みおよび生物活性を評価するために、Caco-2細胞を用いてin vitroで研究することができる。
【0096】
ヒト上皮細胞株Caco-2(Sigma Aldrichから入手可能)は、腸管上皮バリアのモデルとして広く用いられている。もともと結腸癌に由来するこの細胞株の最も有利な特性の一つは、小腸に見られるような刷子縁層を有する吸収性腸細胞に典型的な多くの性質を持つ単層細胞に自発的に分化する能力である。in vivoでの腸の立体的条件を模倣するために、Caco-2細胞は透過性フィルター挿入体(Becton Dickenson、Corning、Costar等から入手可能)上で培養することができる。フィルター支持体上でのCaco-2細胞の培養により、細胞の形態学的および機能的分化が向上する。極性化Caco-2の単層が、ヒトにおける経口摂取後の薬物およびその他の化合物の吸収に関する研究のための信頼できる相関物であることは、よく知られている。いくつかの研究では、Caco-2の透過係数をヒトにおける吸収データと比較し、特に化合物が受動的な小細胞輸送メカニズムによって輸送される場合に、高い相関性を見出している(Lea T.Caco-2 Cell Line.In:Verhoeckx K,Cotter P,Lopez-Exposito I,et al.,editors.The Impact of Food Bioactives on Health:in vitro and ex vivo models[Internet].Cham(CH):Springer;2015.Chapter10.下記で入手可能:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK500149/doi:10.1007/978-3-319-16104-4_10)。
【0097】
様々なポリペプチド構築物をAlexa Fluor(商標)ラベルキット(ThermoFisher社製)を用いて標識化し、蛍光標識ポリペプチド構築物を作製した。Caco-2細胞を12ウェルプレートに播種し、2~10ug/mLの濃度で標識ポリペプチドとともに4時間培養した。培養後、プレートをTecan Infinite M Nano+で読み取り、PBSで数回穏やかに洗浄した後、新しい培地を与え、プレートを再度読み取った。ディッシュに残った蛍光の%は、細胞に最初に加えた量と比較したポリペプチド構築物の相対的な取り込み量を表す(
図2参照)。ポリペプチド構築物のCaco-2細胞による取り込みは、構築物が胃腸内膜を通過する治療用ポリペプチドのための適切な送達剤であることを示唆し、配列ID番号1~40に係るポリペプチドは、それが結合されている治療用ペプチドを腸から血流に輸送するための「シャトル(shuttle)」として作用する。したがって、Caco-2細胞モデルアッセイは、経口投与製剤としての適性を確認するための、さまざまなポリペプチド治療薬のスクリーニングツールである。
【実施例2】
【0098】
ヒトエリスロポエチン(Epo)は、4つの糖鎖が結合した165アミノ酸残基の一本鎖を含む30.4kDaの糖タンパク質ホルモンである。Epoは、骨髄における赤血球産生のフィードバック制御における重要な要素である。エポエチンは、ヒトエリスロポエチンの遺伝子組換え型(166アミノ酸残基の鎖を含む)で、(他の治療法の中でも)貧血の治療において前駆細胞から赤血球への分化を促進するために使用される。エポエチンαはEpogen(登録商標)のブランド名で販売されており、体内での赤血球産生を助ける合成タンパク質で、主に貧血の治療に使用される。(多くの高分子治療薬と同様に、)Epogen(登録商標)は腸で吸収されないため、静脈内投与しなければならない。このような特性から、ヒトエリスロポエチンは、本明細書に開示した方法を用いた経口製剤組成物の試験分子として有用であった(
図3参照)。ヒトエリスロポエチン(「Epo」)配列のアミノ末端に結合された配列ID1に係る配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物が構築された。この結合により、配列ID41に対応するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むキメラタンパク質が得られた。
【0099】
配列ID41に係るポリペプチドは、配列ID1の上流の(ヒト)エリスロポエチン配列をpBluescript細菌発現ベクター(Sigma Aldrich)に挿入することによりクローニングした。この細菌構築培養物を標準培養条件下で増殖させ、配列ID41に係るポリペプチドを発現させた。配列ID41に係るポリペプチドを含む細菌スラリーを遠心分離し、培養物1リットル当たり25mlのカラム緩衝液(CB)に再懸濁した。細菌細胞は凍結融解によって溶解され、次いで20ゲージの針に通された。溶解した細胞を遠心分離し、上清を25mlの粗抽出液に対して125mlの冷CBを加えて希釈した。希釈した粗抽出液を、ヒトエリスロポエチンに対する抗体を含むプロテインAマイクロビーズカラムに加え、12カラム容量のCBで洗浄し、洗浄後、溶出緩衝液で溶出した。配列ID41に係る単離されたポリペプチドの量はビシンコニン酸アッセイ(BSA)アッセイにより決定し、タンパク質の量はELISAにより測定し、純度は溶出液中のタンパク質対配列ID41タンパク質の比で評価した。
【0100】
8匹の12週齢の雄性ウィスターラットに、配列ID41に係るポリペプチドを含む組成物(200μLのPBS中に400μg)をPO投与するか、または対照(200μLのPBSのみ)をPO投与した。投与は1日1回、4週間にわたってPO投与した。0日、14日、および28日目に、すべての投与ラットから尾静脈経由で採血した(
図7参照)。
【0101】
投与2週間後、配列ID56に係るポリペプチドの断片が、8匹の動物のうち7匹の血液中に検出され(0.8~23ng/mLの範囲)、4週目にはすべての動物で検出された(1.2~22ng/mL)。このことは、ポリペプチド構築物が胃腸の内膜を通過でき、経口投与後に治療薬が胃腸(GI)管から血流に移行できることを示している。
【0102】
配列ID41に係るポリペプチド構築物を含む組成物が経口投与後に生物学的に活性であるかどうかを評価するために、投与後に動物のヘモグロブリンレベルを測定した。投与2週間後、平均ヘモグロブリンレベルは8.79gm/dl~9.211gm/dlに増加したが、対照はそれぞれ8.87gm/dlおよび8.84gm/dlで比較的一定であった。投与終了時(4週間)には、対照群は8.96gm/dlの平均値で9を下回ったままであったが、対照群は9.64gm/dlまでさらに上昇した。したがって、配列ID41に係るアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物を含む組成物は、経口投与された場合、GI管の胃腸内膜を通過して動物の血流に入るだけでなく、血流への取り込み後も生物学的および治療学的に活性を維持した。
【実施例3】
【0103】
4匹のスプラーグドーリーラットに、配列ID41に係るポリペプチドを含む組成物を600μgの用量で投与し、次いで、投与後4時間(n=2)および6時間(n=2)で失血死させた(
図6参照)。その後、動物から採取した血液を処理し、ほとんどの血液タンパク質を除去し、ウェスタンブロットでサイズ選別した後、PAGEでペプチドを除去した。電気泳動ゲルから15~25kDA間のバンドを切り出し、塩基配列を決定した。得られた血清由来ペプチドの配列は、配列ID56に係るポリペプチド(エリスロポエチン配列[配列ID51]に対応)で、アミノ末端に2つのアミノ酸(GA)が付加されていることが判明した。これは、投与後、配列ID1の50アミノ酸のうち48アミノ酸が配列ID41から切断されたことを示している(
図4B参照)。
【0104】
生物学的利用能を評価するために、10匹のスプラーグドーリーラットに配列ID41に係るポリペプチドを含む組成物を、強制経口投与により、2.5mg/kg(n=5)または1mg/kg(n=5)の濃度で投与した。投与後、0、5、15、30、60分、および2、4、8、24時間の時点で各動物から採血した。血中における配列ID41に係るポリペプチドまたはその断片を含む組成物の量を測定し、0.5mg/kgの用量で静脈内注射により同様の組成物を投与した動物の値と比較した(n=5)。生物学的利用能(F)とは、投与された薬物のうち、全身循環に到達する割合(%)のことである。数学的には、生物学的利用能は、血管外製剤の血漿中薬物濃度曲線下面積対時間(AUC)と血管内製剤のAUCを比較した比率に等しい。AUCを利用するのは、AUCが全身循環に入った用量に比例するからである。
【0105】
薬物の絶対的生物学的利用能を決定するために、静脈内投与(iv)および血管外投与(非静脈内投与、すなわち経口投与)後の薬物の血漿中薬物濃度対時間プロットを決定した。絶対的生物学的利用能は、投与量を補正した非静脈投与時の曲線下面積(AUC)を静脈投与時のAUCで割ったものである。したがって、静脈内投与された薬物の絶対的生物学的利用能は100%(f=1)であるが、他の経路で投与された薬物の絶対的生物学的利用能は通常1未満である。
【0106】
この濃度対時間プロット/AUCモデルに従って、配列ID41に係るアミノ酸配列同一性を含むポリペプチド構築物の平均F値は0.18、範囲は0.062~0.32であることが判明した。達した最大(またはピーク)血清濃度(Cmax)は、平均Cmaxが202.6mIUnits/mlであり、平均tmax(最大濃度に達するまでの時間)が180分であった。配列ID41に係るポリペプチドを含む組成物の経口投与を受けたすべての動物は、血清Epogen(登録商標)の治療レベルに相当するレベルを達成した。
【実施例4】
【0107】
スプラーグドーリーラットに、配列ID41を含む組成物をPO投与(投与量2.5mg/kg n=5,1mg/kg n=5,0.25mg/kg n=5)し、およびまたIV投与(投与量0.5mg/kg n=5)し、投与後0,5,15,30,60分、および2,4,8,24時間の時点で採血し、ペプチドの全身レベルをPO投与動物とIV投与動物とで比較した。PO投与動物において、配列ID42に係るペプチドは、投与後30分という早い段階で血中に検出され、4~6時間の間にピークレベルがあり、F値は0.3であり、および150~240mIU/mLの間の循環レベルが投与後24時間持続した(
図4A参照)。
【0108】
配列ID1を含むポリペプチドまたはその断片が、血流に取り込まれる際に配列ID41を含むペプチド構築物から切断されるという仮説を検証するために、投与後の血中における50-aaPT配列を検出するELISAアッセイを実施した。Epoの検出で見られたように、配列ID番号57に係るポリペプチドは、投与後30分という早さで検出され、レベルは4時間でピークに達した。しかしながら、Epoレベルとは異なり、配列ID番号57に係るポリペプチドの濃度は、投与後8時間以内に40%未満に減少し、24時間以内に検出不可能となり、ポリペプチドの切断および分解が確認された(
図5参照)。
【0109】
配列ID番号41に係るアミノ酸配列同一性を含むポリペプチド構築物(「PT-EPO」と称する)を含む組成物の有効性を決定するために、スプラーグドーリーラット(n=8)にPT-EPOを2mg/kgで28日間、毎日(PO)投与した。0日目、14日、および28日目に採血し、Epoおよびヘモグロビン濃度を測定した。PT-EPO投与の2週間後、動物の血清中に平均10.1125pg/mLのEpoが検出され、このレベルは28日目までに11.425pg/mLまで上昇した(
図7参照)。PT-EPO投与はまた、ヘモグロビンレベルの有意な上昇にも関連し、投与開始時の16.35ng/mLから、14日目には17.1375ng/mL、28日目には17.9375ng/mLとなったが(p<0.05)、一方で対照動物は有意な変化を示さなかった(
図8参照)。
【実施例5】
【0110】
イヌ動物モデル(ビーグル)における14日間の安全性試験において、配列ID41に係る配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物(PT-EPO)を含む経口投与組成物の生物学的利用能を評価した。動物に、PT-EPOを含む組成物を、0、5、50、および125mg/kgの1日用量で、14日間連続して投与(PO)した。試験終了後、動物の病理学的分析を行ったところ、PT-EPOは主要臓器機能に悪影響を及ぼさないことが判明した。安全性試験においても、イヌに毎日、14日間、高用量(125mg/kg)のPT-EPOを投与しても有害な影響がないことが示された。さらに、PT-EPOを含む組成物を14日間投与(PO)した後、投与された動物は、対照と比較して、赤血球(6.74×10
6細胞/ul対7.26×10
6細胞/ul)、ヘモグロビン(15.85g/dl対17.125g/dl)およびヘマトクリット(46.8%対49.65%)のレベルが増加した。以上より、ポリペプチド構築物を含む経口投与組成物の生物学的利用能が確認された(
図9および
図10参照)。
【実施例6】
【0111】
エキセナチドおよびリラグルチドのようなGLP-1アゴニストは、経口投与治療薬として製剤化するための望ましい候補である。配列ID1~40に係るポリペプチドをポリペプチド構築物としてGLP-1アゴニストに結合した場合、経口投与後、胃から血液へのGLP-1アゴニストの輸送が促進されるかどうかを試験することにした。エキセナチドおよびリラグルチドのアミノ酸配列を使用して、配列ID番号1に係るアミノ酸配列を含むポリペプチドの後方(下流)の配列をクローニングし、発現ベクター系を使用して、配列ID番号42,44に係るアミノ酸配列を含むペプチド構築物(図ではそれぞれ「PT-GA1」および「PT-GA2」と呼ぶ)を作製した。また、リラグルチド配列のカルボキシ末端とアミノ末端の両方に配列ID番号1に係るポリペプチドを挟んだリラグルチド配列を含む配列ID番号46に係るポリペプチド構築物(「PT-GA2B」)も作製した。このポリペプチド構築物をCaco-2取り込みアッセイ(実施例1)で試験したところ、PT-GA1は28.7%、PT-GA2は31.4%、PT-GA2Bは29.4%であった。(
図11参照)in vivoでの有効性および生物学的利用能を試験するために、スプラーグドーリーラットに、PT-GA1、PT-GA2、またはPT-GA2Bから選択されるポリペプチド構築物を含む組成物600ugを投与(PO)し、投与後0、4、および6時間に採血し、血糖値を測定した。投与後、PT-GA1投与動物の血中グルコースレベルは、0時間で107mg/dLから4時間で118mg/dLになり、投与後6時間で87.5mg/dLに低下したが、PT-GA2およびPT-GA2Bは、それぞれ98mg/dL、126,111mg/dL、および102mg/dL、105mg/dL、104mg/dLであった(
図12参照)。
【実施例7】
【0112】
本明細書に開示されるペプチド構築物を生成するための代替戦略には、化学合成およびライゲーションが含まれる。一例において、修飾末端残基を有する配列ID21~40に係るポリペプチドは、修飾末端残基を有する異種ポリペプチドに化学的にライゲーションされる。例えば、ポリペプチドの末端リジンはアルキル修飾ペプチドであっても良く、および、異種ポリペプチドの末端残基はアジド修飾ペプチドであっても良く、ここでアルキル修飾ペプチドはアジド修飾ペプチドと反応して、ポリペプチドと異種ポリペプチドとの間にアミド結合を生成する(
図16参照)。
【0113】
図13に示す一実施形態において、配列ID1~20に係るペプチドの末端アミノ酸は、修飾リジン残基を含み、Lys(N3)=Fmoc-L-Lys(N3)-OHである。一つの例示的な式において、配列ID21に係る修飾ペプチドは、
H-Met-Ala-Asp-Asp-Ala
5-Gly-Ala-Ala-Gly-Gly
10-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly
15-Gly-Pro-Gly-Met-Gly
20-Asn-Arg-Gly-Gly-Phe
25-Arg-Gly-Gly-Phe-Gly
30-Ser-Gly-Ile-Arg-Gly
35-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg
40-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly
45-Arg-Gly-Arg-Gly-Lys(N3)
50-OHに係る式を含み、前記ポリペプチドは、前記リジン末端残基を介して、治療用ポリペプチドを含む異種ポリペプチドに結合され、前記異種ポリペプチドは、式:プロピノ酸-D-Phe-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr-olに係る修飾ポリペプチドである。
【0114】
一実施形態において、銅(I)触媒アルキンアジド1,3-双極子付加環化反応(CuAAC)または「クリック」反応が、配列ID21~40に係るペプチドを異種ポリペプチドに結合するために利用される。銅触媒によるクリック反応は、様々な溶媒、広いpHおよび温度範囲、ならびに異なる銅源、追加のリガンドまたは還元剤の有無等、様々な反応条件下で行うことができる汎用性の高い反応である。この反応は選択性が高く、他の官能基の存在下でも行うことができる。CuAAC反応の1,4-二置換トリアゾール生成物は、アミド結合のための同配体に適している。
【0115】
一例において、異種ポリペプチドは、
図14に示すオクタペプチドであり、天然のソマトスタチンの薬理学的効果を模倣し(Sondostatin(登録商標)のブランド名で販売されているOctreotideに類似)、配列ID21~40(修飾体)に係るポリペプチドにライゲーションして、配列ID50に係るポリペプチド構築物(本明細書では「PT-OCT」または「PT-OCTクリック」と称する)を生成する。
図15A~15Dに示されている。
【0116】
ライゲーションにより生成される化合物は、式:H-Met-Ala-Asp-Asp-Ala-Gly-Ala-Ala-Gly-Gly-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly-Gly-Pro-Gly-Met-Gly-Asn-Arg-Gly-Gly-Phe-Arg-Gly-Gly-Phe-Gly-Ser-Gly-Ile-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Arg-Gly-Nle(トリアゾール-プロピオニル-D-Phe-Cys-Phe-D-Tru-Lys-Thr-Cys-Thr-ol)-OHを含む。
【0117】
以下の特徴を有する化合物:
外観:白~オフホワイト色の粉末。
同一性:質量分析M.W.(平均)=5822.5±lamu、(M+4H)4+/4=1456.9/(M+4H)5+/5=1165.7。逆重畳後:M.W.=5823.6amu。
純度:RP-HPLC 90%。
正味ペプチド含量(NPC)(窒素分析):83.5%。
含水率(Karl Fischer USP<921>5.2%、および
全質量バランス(NPC+対イオン(酢酸塩)):90~105%/97%。
【0118】
クリックケミストリーのようなライゲーション法によって生成されたポリペプチド構築物は、本明細書に記載のin vitro法を用いて試験することもでき、これには、胃腸関門を介したポリペプチド構築物の取り込みを模倣する、Caco-2細胞へのポリペプチド構築物の取り込みにアクセスするためのCaco-2取り込みアッセイが含まれる(実施例1参照)。
【0119】
また、配列ID番号49に係るアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物(本明細書に開示される発現ベクター法を利用しており、「PT-OCT融合」と称する)、配列ID番号50に係るアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物(化学的「クリック」ライゲーション法を利用しており、「PT-OCTクリック」と称する)を作製し、両者をin vivoおよびin vitroで並べて比較した。PT-OCT融合構築物およびPT-OCTクリック構築物は、in vitro(Caco-2細胞)において取り込みを引き起こすのに有効であることが示された。一例において、Caco-2細胞に投与されたポリペプチド構築物(PT-OCT融合およびPT-OCTクリック)の約38%がCaco-2細胞に取り込まれた(参考としてPT-EPOによる取り込みも実施された
図17を参照)。
【0120】
配列ID番号49または50に係るアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチド構築物が、投与(PO)後に生物学的に活性であるかどうかを決定するために、グルコース刺激膵島からのインスリン分泌を阻害するPCT-OCTの能力を試験した。25個のヒト膵島(IIDP承認膵島センターから調達されたドナー膵島由来)をトリプリケートで、100μlのCMRL膵島培地(MediaTech等から入手可能)を含む96ウェルプレート中に播種した。膵島を、100μl(50%)血清(血清は膵臓ドナーから採取)、100μl(50%)血清+PT-OCT、またはトロンビンに45分間暴露してポリペプチド構築物の治療用オクタペプチドからポリペプチド配列を切断した100μl(50%)血清+PT-OCTのいずれかで前培養した。前培養の後、培地および血清を除去し、16.7mMのグルコースを含むKREB緩衝液に置き換え、さらに30分間培養し、その時点でKREB緩衝液を回収した。上清のインスリン濃度は、市販のELISAキット(Abcam等から入手可能)を用いて測定した。両方のポリペプチド構築物(PT-OCTおよびPCT-OCT「切片」)は、グルコース刺激膵島のインスリン分泌を阻害する能力を示し、全長のPT-OCTを含むポリペプチド構築物は、インスリン分泌を46%減少させ、一方、トロンビンにより切断されたPCT-OCT「切片」を含むポリペプチド構築物は、グルコース刺激膵島におけるインスリンの発現を61%以上阻害した。(
図18および
図19参照)。
【0121】
前述の実施例は、添付の図ならびに表1および表2によって補足される。実施例および図の一部は、配列番号以外の本開示の組成物および構築物について言及しており、その命名法は表1に記載されている。
【0122】
配列ID1~40に係るポリペプチドは、標的薬物送達に安全かつ有効であることが示されている。一般に、医薬製剤におけるペプチドの使用は、タンパク質分解酵素によって速やかに切断され、肝臓および腎臓によって血液循環から速やかに排出されると考えられている。これらの薬力学的特性は、さまざまな修飾および安定化アプローチによって調節することができる(Vlieghe et al.,2010)。ペプチドを安定化させる最もよく知られた概念のひとつに、脂肪酸をペプチドに取り込む脂質化がある(Zhang and Bulaj,2012)。本明細書に開示されるポリペプチド構築物の脂質化もまた、本開示によって想定される。脂肪酸は血清アルブミンに結合し、血液中でのプロテアーゼによるタンパク質分解切断を防ぎ、それによって循環時間を延長する(Frokjaer and Otzen,2005)。2型糖尿病および肥満の治療に用いられる長時間作用型グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストであるリラグルチド(Victoza[登録商標])(Guryanov et al., 2016)およびセマグルチド(Ozempic[登録商標])(Marso et al.,2016)は、このアプローチの例である。ペプチドは免疫原性が低く、無毒の代謝物を産生するため、一般に安全であると考えられている(Ahrens et al.,2012)。
【0123】
前述の情報は、理解を明瞭にする目的で、本明細書で開示される態様を図示および例として強調しているが、本明細書で特許請求される対象の範囲内で、特定の変更および修正を実施できることは明らかだろう。当業者には、上述した態様および様々な実施形態のいずれかに関連して記載された特徴が、異なる実施形態間で交換可能に適用できることは明らかだろう。
【0124】
上述した態様および実施形態は、本明細書で特許請求される対象の様々な特徴を説明するための例である。本明細書に開示された全ての刊行物および特許出願は、本開示および特許請求の範囲の対象が属する当業者のレベルを示すものである。
【0125】
数値にはある程度の実験誤差が伴うことが理解されるだろう。したがって、数値誤差の前に「約(about)」(または「約(approximately)」)という修飾語を記すことは、記した数値に関連する可能性のある実験誤差を取り入れることを意味する。実験的に得られた数値の前に「約(about)」(または「約(approximately)」)という表現が付されていないからといって、その数値がある程度の実験誤差を伴わないことを意味するものではない。
【0126】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という用語ならびにそれらの変形は、「含むが、これらに限定されない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、または工程を除外することを意図しない(および除外しない)。本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、単数形は複数形を包含する。不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数形と同様に複数形を意図していると理解される。
【0127】
特定の態様、実施形態、もしくは実施例に関連して記載される特徴、特性、化合物、化学部分、または基は、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載される他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示されたすべての特徴、および/またはそのように開示された任意の方法もしくは過程のすべての工程は、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で特許請求される対象は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本明細書で特許請求される対象は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示される特徴の新規な1つまたは任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示される任意の方法または過程の工程の新規な1つまたは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0128】
すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別的に参照により組み込まれるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】