(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】重水減速を伴う中性子源および熱中性子イメージングへの適用
(51)【国際特許分類】
G21G 4/02 20060101AFI20241210BHJP
G01N 23/05 20060101ALI20241210BHJP
G01T 3/00 20060101ALI20241210BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G21G4/02
G01N23/05
G01T3/00 G
G21K1/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518887
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021081894
(87)【国際公開番号】W WO2023088543
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510165507
【氏名又は名称】フォトニス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・デュアルト・ピント
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA04
2G001AA13
2G001BA11
2G001CA04
2G001DA09
2G001HA13
2G001LA02
2G001SA03
2G188BB09
2G188CC41
2G188DD31
(57)【要約】
本発明は、詳細には、熱中性子イメージング用の熱中性子を発生させるためのデバイスであって、
中性子発生装置(2)と、
中性子減速材(4)と、
減速材からの出口にある熱中性子反射体(6)と
を備える、デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱中性子イメージング用の熱中性子を発生させるためのデバイスであって、
高速中性子を生成するための中性子発生装置(2)と、
高速中性子から熱中性子を発生させるための中性子減速材(4)と、
前記減速材からの出口にある熱中性子反射体(6)と
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記減速材は、重水を含む、請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項3】
前記減速材は、20mm~80mmの厚さを有する、請求項1または2に記載の中性子発生装置。
【請求項4】
前記反射体は、重水を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項5】
前記反射体は、2cm~10cm厚さを有する、請求項4に記載の中性子発生装置。
【請求項6】
前記減速材および前記反射体はどちらも同じ材料で作られる、請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項7】
前記減速材および前記反射体はどちらもHDPEで作られるか、またはHDPEを含む、請求項6に記載の中性子発生装置。
【請求項8】
前記減速材と前記反射体はどちらも重水で作られるか、または重水を含む、請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項9】
少なくとも1つのシールド(8、8’、10)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項10】
前記減速材(4)からの前記出口にX線フィルタ(14)をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項11】
前記フィルタ(14)は、熱中性子の伝播軸(D)に沿って測定された2mm~10mmの厚さであり、鉛またはビスマスで作られる、請求項10に記載の中性子発生装置。
【請求項12】
直径が0.5cm~7cmであるピンホール(12)出口をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項13】
10
6s
-1cm
-2~10
9s
-1cm
-2の出力熱中性子束を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項14】
10
7s
-1cm
-2~10
8s
-1cm
-2の出力熱中性子束を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の中性子発生装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の中性子発生装置と、
熱中性子の検出器(20)とを備える、熱中性子イメージングシステム。
【請求項16】
前記検出器は、マイクロチャネルプレート(MCP)を備える、請求項15に記載のイメージングシステム。
【請求項17】
前記検出器によって形成される画像を撮像するカメラ(30)をさらに備える、請求項15または16に記載のイメージングシステム。
【請求項18】
材料のサンプル(50)を撮像するためのイメージングプロセスであって、
請求項1から14のいずれか一項に記載の中性子発生装置と検出器(20)との間に前記サンプル(50)を位置決めすることと、
10
6s
-1cm
-2~10
9s
-1cm
-2の中性子束を有する熱中性子のビームを発生させることと、
前記サンプルを通って移動する熱中性子束を前記中性子検出器(20)を用いて検出することと、
イメージング手段(30)を用いて前記サンプルの画像を形成することと
を含む、イメージングプロセス。
【請求項19】
前記サンプル(50)は、異なる熱中性子減衰係数を有する材料の混合物または組合せを含む、請求項18に記載のイメージングプロセス。
【請求項20】
前記サンプルは、鋼および/または鉄と、ホウ素、リチウム、炭素、プラスチック、金、コバルト、テフロン、アルミニウムのうちの少なくとも1つとの混合物または組合せを含む、請求項19に記載のイメージングプロセス。
【請求項21】
前記サンプルは、セラミック材料および/または金属、たとえば鋼もしくは鉄で作られるかあるいはセラミック材料および/または金属、たとえば鋼もしくは鉄を含む部片に埋め込まれるかまたは含まれる水もしくは潤滑油もしくは水素もしくは含水素物質のような流体を含むエンジンの少なくとも一部を備える、請求項18または19に記載のイメージングプロセス。
【請求項22】
セラミック材料および/もしくは金属で作られるかまたはセラミック材料および/もしくは金属を含む前記部片は、エンジン、たとえば、航空機エンジンもしくは自動車エンジンの少なくとも一部、あるいは航空機翼もしくは航空機機体、または航空宇宙デバイスもしくはビークルの少なくとも一部である、請求項21に記載のイメージングプロセス。
【請求項23】
前記サンプルは、バッテリにおけるLiおよびCdのうちの少なくとも一方を含む、請求項18または19に記載のイメージングプロセス。
【請求項24】
材料中にLi、B、Cd、およびGdのうちの少なくとも1つを含む前記サンプルは、熱中性子減衰係数が50cm
-1未満、または30cm
-1未満、または10cm
-1未満である、請求項18または19に記載のイメージングプロセス。
【請求項25】
前記サンプルは、熱中性子減衰係数が0.5cm
-1未満または0.2cm
-1未満である材料、たとえば、アルミニウムまたは半導体材料中に、熱中性子減衰係数が1cm
-1よりも高い材料を少なくとも含む、請求項18または19に記載のイメージングプロセス。
【請求項26】
前記中性子源の出口と前記検出器の入口との間の距離Lと前記中性子源出口の直径Dとの比は、10~500に含まれる、請求項18から25のいずれか一項に記載のイメージングプロセス。
【請求項27】
前記中性子源の出口と前記検出器の入口との間の距離Lと前記中性子源出口の直径Dとの比は、20~200に含まれる、請求項18から25のいずれか一項に記載のイメージングプロセス。
【請求項28】
前記サンプルは、少なくとも1つの隙間もしくは亀裂またはセラミック残留物もしくは材料または多孔度を含み、前記イメージングは、造影剤、たとえば、液体に溶解させたGdを前記サンプルの前記材料に注入することを含む、請求項18から27のいずれか一項に記載のイメージングプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱中性子イメージング用途のための熱中性子源に関する。本発明はまた、熱中性子イメージングシステムおよび熱中性子イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子イメージングが知られているが、中性子イメージングは、粒子加速器のような大型施設の使用を伴う。
【0003】
可搬中性子源が知られており、中性子発生装置と減速材4とを備え、減速材4は通常、HDPEで作られる。
【0004】
既存の可搬中性子源は、熱中性子イメージングを実行するのに十分な熱中性子束を提供しない。通常、中性子源は、強度(1秒(s-1)で生成される中性子の数)に関して評価されるが、中性子イメージングによって必要とされる中性子束(1秒(s-1)および1表面単位(s-1cm-2)で生成される中性子の数)に関しては評価されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、強度問題および解像度問題の両方について、高熱中性子束/s/cm2を生成する熱中性子イメージング用の新しい熱中性子源または熱中性子発生装置が必要である。
【0006】
別の態様によれば、本発明は、複合材料、たとえば、炭素材料とセラミック材料の両方を含む材料、より一般的には、通常、X線イメージングのような既知のイメージング技法によって区別されない材料を撮像するためのイメージング技法に関する。
【0007】
異なる材料、特に、同様のX線減衰係数を有し、通常のイメージング技法、特にX線イメージングによって区別できない材料間に十分なコントラストをもたらす新しいイメージングプロセスも必要である。たとえば、自動車のエンジンまたは航空機のエンジンなど、セラミックまたは金属で作られた環境に含まれるかまたは埋め込まれた、水素、またはたとえば水のような水素含有化合物を含む物体またはデバイスの画像を提供できるデバイスまたは方法はない。たとえば、シールまたはガスケットが十分密であるかまたは水密であるかどうかを検出するため、および/または漏れを検出するために、セラミックまたは金属で作られた部片内部の潤滑油を撮像するためのデバイスも方法もない。そのようなシールまたはガスケットを含む部品または物体または1つの材料の通常の調査技法は、前記部品または物体または部片を開放するかまたは取り外すことを含む。そのような部品または物体または部片を開放するかまたは取り外す必要なしに撮像するためのデバイスまたは方法を有することは非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1に、熱中性子イメージング用の中性子発生装置に関し、中性子発生装置は、
中性子発生装置と、
中性子減速材と、
減速材からの出口にある中性子反射体と
を備える。
【0009】
発生装置は、基本的に高速の中性子を発生させ、減速材は中性子を減速させ、したがって、熱中性子を発生させる。中性子反射体は、デバイスのビーム軸に向かって中性子を反射するためのものであり、前記中性子は、前記ビーム軸に揃わない方向または調査される目標もしくはサンプル材料に向かって伝播しない方向に減速材から離れる。
【0010】
前記減速材と前記反射体はどちらも同じ材料で作られ得、同じ部片において組み合わされ得る。
【0011】
一実施形態では、前記減速材および/または前記反射体は、HDPEを含むか、またはHDPEで作られ得る。
【0012】
より好ましい実施形態では、前記減速材および/または前記反射体は、重水を含んでもよく、または重水で作られ得る。
【0013】
減速材は、たとえば、厚さが20mmまたは25mm~70mmまたは80mmに含まれる。重水で作られた減速材は、HDPEで作られた減速材よりも通常薄く、たとえば、重水減速材は、厚さが約40mm、または30mm~50mmに含まれ得、一方、HDPE減速材は、厚さが約60mm、または50mm~70mmに含まれ得る。
【0014】
好ましくは、反射体は、厚さが2cm~10cmである。
【0015】
本発明による中性子発生装置は、発生装置の周りの領域または少なくともその領域の一部をガンマ線および/またはX線から遮蔽するための少なくとも1つのシールドをさらに備えることができる。
【0016】
本発明による中性子発生装置は、前記中性子反射体からの出口に位置するX線フィルタを備えることができ、このフィルタは、たとえば、2mm~10mmの厚さを有することができ、鉛またはビスマスで作ることができる。
【0017】
好ましくは、本発明による中性子発生装置は、熱中性子の出力中性子束が106s-1cm-2~109s-1cm-2または107s-1cm-2~108s-1cm-2である。そのような中性子束範囲は、特にマイクロチャネルプレートを備える検出器が実装される場合、かなり短い曝露時間を可能にする。
【0018】
本発明はまた、熱中性子イメージングシステムであって、
上記および/または本出願において開示される、本発明による中性子発生装置と、
好ましくはマイクロチャネルプレート(MCP)を備える熱中性子の検出器とを備え、MCPは、このイメージング用途では特に効率的であるので好ましい。
【0019】
本発明によるイメージングシステムは、前記検出器によって形成された画像を撮像するカメラをさらに備えることができる。
【0020】
本発明はまた、本発明による熱中性子イメージングシステムを実装することを含む、材料のサンプルを撮像するためのイメージングプロセスに関する。
【0021】
本発明はまた、材料のサンプルを撮像するためのイメージングプロセスに関し、イメージングプロセスは、
上記で開示され、および/または本出願における、本発明による中性子発生装置と、たとえば、マイクロチャネルプレートを備えるタイプの検出器との間に前記サンプルを位置決めすることと、
たとえば、出力中性子束が106s-1cm-2~109s-1cm-2である熱中性子を発生させることと、
前記サンプルを通って移動する熱中性子の中性子束を中性子検出器を用いて検出することと、
前記検出器によって提供される信号に基づいて、イメージング手段を用いて前記サンプルの画像を形成することと
を含む。
【0022】
本発明によるイメージングプロセスでは、前記サンプルは、異なる熱中性子減衰係数を有する材料の混合物または組合せを備えることができる。たとえば、サンプルは、鋼および/または鉄と、ホウ素、リチウム、炭素、プラスチック、金、コバルト、テフロン(登録商標)、アルミニウムのうちの少なくとも1つとの混合物または組合せを含むことができる。本出願では、材料の他の組合せが開示される。
【0023】
本発明は特に、材料の異なる組合せの撮像に特に適しており、特にセラミックまたは金属および流体で作られた任意の部片は、たとえば、水または油または潤滑油または任意の液体を前記部片中に含む。流体は、水素または含水素物質(たとえば、PTFE、または有機材料、または油、またはグリース、または潤滑油など)であることができるか、あるいは水素または含水素物質を含むことができる。セラミックまたは金属で作られた前記部片は、前記材料中のイオンを調査するために、たとえば、
管、または自動車のエンジンもしくは航空機のエンジンなどのエンジン、あるいは車両の任意の他の部分、たとえば、航空機翼もしくは航空機機体、または航空宇宙デバイスもしくはビークルのうちの少なくとも一部、
タービンの少なくとも一部、
あるいはエネルギー貯蔵物質、たとえば、バッテリの少なくとも一部とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による中性子発生装置を示す図である。
【
図2】本発明の一態様による組み合わされた減速材および反射体を備える本発明による中性子発生装置を示す図である。
【
図3】HDPE減速材(反射体なし)についての中性子束に対する、反射体厚さに応じた相対熱中性子束を与える曲線を示す図である。
【
図4】減速材と反射体の両方に使用される異なる材料を用いて得られる相対熱中性子束を示す図である。
【
図5】本発明による中性子発生装置と、検出器と、イメージング手段とを備えるイメージングシステムを示す図である。
【
図6B】CPU冷却デバイスの熱中性子画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
イメージングデバイスについての本発明による熱中性子源または発生装置1の一例が
図1に示されている。
【0026】
熱中性子源または発生装置1は、中性子を発生させるための中性子発生装置2を備え、中性子の大部分は高速中性子であり、中性子は、次いで、減速材4によって熱運動化される。
【0027】
より正確に言えば、中性子発生装置2は、重水源または重水素-トリチウム源からイオンを生成するためにイオン発生装置、たとえば、マイクロ波発生装置を備える。発生装置は、たとえばチタンまたはチタン合金で作られた標的22に向かってイオンを加速するために加速部分をさらに有する。そのような発生装置は、原子炉内で起こる反応である核分裂からではなく、核融合反応から中性子ビームを生成する。
【0028】
本発明は、イメージングを実施するためのものであり、中性子源1によって生成される熱中性子(1eVを下回り、たとえば、約25meVのエネルギーを有する)のビームは、好ましくは減速材の出口において106s-1cm-2または107s-1cm-2~108s-1cm-2または109s-1cm-2である中性子束を有する。できるだけ多くの熱中性子を収集するために。減速材の出口に反射体6が位置しており、それによって、検出器の方向に移動することも、または方向D(ビーム軸)に沿って移動することもない熱中性子が、場合によっては、検出器を向いた方向Dに散乱させられ得るかまたは反射され得る。いくつかの高エネルギー中性子はまた、熱運動化されずに標的から逃げることがあり、反射体6によって熱運動化され得るが、反射体の必須の効果は熱中性子に対する効果である。
【0029】
減速材および反射体は、同じ材料、たとえば、HDPEまたは重水で作られ得る。
【0030】
反射体6は、たとえば、リングの形状を有することができ、減速材からの出口41に揃えられた中央穴61を備える。反射体6は、サンプルに向かう中性子のビーム軸Dに沿って、材料に応じて2cmまたは3cm~10cmまたは15cmに含まれる延長部を有する。
【0031】
中性子は、標的22から生成され、次いで減速材4によって減速され、それによって、基本的に熱中性子を生成する。熱中性子は減速材から漏れ出して反射体6に入る。熱中性子束は、ビーム軸Dの方向に移動し、したがって、反射体と相互作用しないが、方向Dに移動しない熱中性子の一部は、反射体6によって反射されるかまたは散乱させられ、次いで方向Dに移動する。以下に
図3に関連して説明するように、反射体6に起因する中性子束の増加は、顕著なものになり得る。
【0032】
発生装置は、たとえば、場合によっては数%、たとえば5%のホウ素を含む高密度ポリエチレン(HDPE)で作られたシールド8、8’に収容され得る。反射体6の少なくとも一部は、シールド8の少なくとも一部に作られた開口81内および/または減速材の一部に作られた開口83内に位置決めされ得る。
【0033】
ガンマ放射を停止するためのさらなるシールド10を追加することが可能であり、このさらなるシールドは、鉛で作られ得る。シールド10は、反射体の穴61に揃えられた穴101を備える。
【0034】
反射体から下流側、たとえば、反射体の出口とさらなるシールド10との間にピンホール12が位置決めされ得る。ピンホール12は、反射体の穴61に揃えられる。ピンホール12の直径は、たとえば、1cm~5cmに含まれる。ピンホールは、好ましくは反射体の前面63にわたって延びる1つの材料に作られ(たとえば、
図1のピンホールの延長部12’を参照されたい)、それによって、前記前面63から中性子が漏れ出すことはなく、したがって、調査されるサンプル材料に向かって移動する中性子は、ビーム軸Dに沿ってピンホールの穴を通って移動するか、またはビーム軸Dに近い方向に沿ってピンホールの穴を通って移動する。ピンホール12は、サンプルに向けられていない熱中性子またはサンプルに向けられているが、穴61の出口を通って反射体から漏れ出ない中性子を吸収することができる。ピンホール12は、たとえば、ホウ素で作ることができる。
【0035】
X線を停止させるためにフィルタ14が使用され得、フィルタ14は、ビスマスまたは鉛で作られ得る。フィルタ14は、厚さが数mmであり、さらなるシールド10に接触してデバイスの出口に位置することができる。
【0036】
図1では、反射体6および減速材4は異なる部片である。
図2に示されている、本発明による中性子源1’の別の実施形態では、反射体6が減速材4と組み合わされ、どちらも同じ材料で作られている。
【0037】
すでに上記で説明したように、サンプルに向かう中性子のビーム軸Dに沿った反射体の延長部は、数cmであり、2cmまたは3cm~10cmまたは15cmに含まれる。
【0038】
図3は、シミュレーションによって得られ、様々な構成(減速材と反射体がどちらもHDPEで作られた構成、減速材と反射体がどちらも重水で作られた構成、減速材がHDPEで作られ、反射体が重水で作られた構成)について反射体厚さに従って検出器入口において測定された相対熱中性子束(s
-1cm
-2単位)を与える曲線を示す。中性子束は、HDPE減速材を用いて反射体を用いずに得られる中性子束に対するものである。これらの曲線は、反射体6が中性子束に有意に寄与し、3cmまたは5cm~7cmまたは10cmに含まれる、反射体の長さl(発生装置のビーム軸に沿って測定される)について最適な範囲があることを示す。10cmまたは15cmを上回ると、反射体の効率が低下する。異なる曲線は、類似した一般的形状を有するが、どちらも重水で作られた減速材と反射体の組合せは通常、HDPE減速材とHDPE反射体の組合せよりも短い最適範囲を有する(最適厚さ範囲は2cm~8cm)。これらの曲線から理解できるように、反射体は、出力中性子束を少なくとも30%~70%改善し、重水反射体は、より高い改善率、たとえば、40%~80%をもたらす。どちらも重水で作られた減速材と反射体の組合せは特に効率的である。
【0039】
本発明は、たとえば、金属とホウ素またはリチウムまたはプラスチックとの組合せを含む複合部品の非破壊イメージングに特によく適している。たとえば、ステンレス鋼および鉄(Fe)は、熱中性子減衰係数が約1cm-1であり、減衰係数は、
ホウ素については約99cm-1であり、
プラスチック(ポリエチレン、PE)については6~7cm-1であり、
金については約6.3cm-1であり、
コバルトについては約3.9cm-1であり、
銅(Cu)については約1cm-1である。
【0040】
これらおよび他の材料の熱中性子減衰係数を以下のtable I(表1)に示す。
【0041】
【0042】
炭素繊維は、熱中性子減衰係数が約0.5cm-1であり、テフロン、SiC、Al2O3は、係数が約0.4cm-1であり、これらの材料のうちのいずれかに埋め込まれた水素または含水素物質を熱中性子画像上に見ることができる。
【0043】
アルミニウム(Al)は、熱中性子減衰係数が非常に低く約0.1cm-1であり、これは、鋼もしくは鉄もしくはCuもしくは炭素繊維、またはプラスチック、もしくはホウ素、もしくはCo、もしくはAu、もしくはLiの熱中性子減衰係数よりもずっと小さく、熱中性子イメージングによってAlとこれらの材料のいずれかとの大きな対比が可能となる。
【0044】
上記の表は、Li、B、CdおよびGdのうちの少なくとも1つを含む材料が、熱中性子イメージングについて特に興味深い材料であり得ることを示す。LiおよびCdは、たとえば、バッテリに見受けられ、したがって、持続可能な技術のための研究に関連する。Gdは、溶解させて造影剤として使用してセラミック材料における欠陥を強調することができ、別の用途では、Gdは、接着剤と他の材料との対比を際立たせるために接着剤と混合されるかまたは接着剤中に混入され得る。前記接着剤で接着された2つの部品、たとえば、2つの金属部品の組立て品質は、特にGdが接着剤に付加される場合、本発明による中性子イメージングによって検査され得る。
【0045】
すでに説明したように、本発明は特に、セラミックまたは金属部品内、たとえば、エンジンもしくは弁、または航空機もしくは車両(自動車、トラック)もしくは機械の部品、またはエアバッグ内の流体または液体、たとえば、油もしくは潤滑油もしくは水など、またはプラスチック(PE)もしくは有機材料、または水素もしくは含水素物質を含む材料、たとえばゴムなどの、材料または化合物を撮像または視覚化するように適応される。
【0046】
本発明はまた、特に、
タービンブレードのような、たとえば鋳造による部片を製造した後の残留物、たとえば、有機またはセラミック材料、
たとえば、エアバッグまたは金属もしくはセラミック部片のような、部片または部品内部の1つまたは複数のゴムリングの有無または位置を撮像または視覚化するように適応される。
【0047】
より一般的には、本発明はまた、特に、熱中性子減衰係数が0.5cm-1未満または0.2cm-1未満である材料、たとえば、アルミニウムまたは半導体材料、特にシリコン(Si)中に、熱中性子減衰係数が1cm-1よりも高い少なくとも1つの材料、たとえば、水またはPEまたはCoまたはAu、もしくはB、もしくはNi、もしくはFeを含むサンプルを撮像または視覚化するように適応される。
【0048】
図4は、(D軸に沿って測定された)減速材厚さに応じた、減速材4に使用される異なる材料(重水(曲線I)、ポリエチレン(曲線II)、軽水(曲線III))についてのシミュレーションによって得られた熱中性子束を示す。減速材の厚さ(2~6cm、最適な範囲は、HDPEの場合は5cm~7cmであり、軽水の場合は6cm~8cmである)が小さいほど重水の効率が高くなることは明らかである。
【0049】
本発明によるイメージングデバイス用の検出器は、最も好ましくはマイクロチャネルプレート(MCP)検出器である。MCP検出器は、良好な解像度および合理的な曝露時間(たとえば、熱中性子束に応じて1時間~5分)の両方であるサンプルを撮像することを可能にする。MCPは、たとえばFR2925218に開示されている。MCPは、特に非常に高い検出効率を有し、それによって、本発明による発生装置によって生成される、原子炉と比較してより低い中性子束に非常にうまく適応される。
【0050】
図5は、本発明による中性子発生装置、およびマイクロチャネルプレート(MCP)検出器20を示し、MCP検出器20は、カメラ30および場合によってはレンズ40と組み合わされ得る。
【0051】
サンプル50は、中性子発生装置と検出器20との間に概略的に表されている。熱中性子のビーム52は、中性子源によって発生させられ、ビーム軸Dに沿ってサンプル50まで伝播する。
【0052】
ピンホール12または熱中性子源1、1’の出口と検出器の入射面との間の距離Lは、たとえば、0.5m~2mまたは3mとすることができる。システムの解像度は、ピンホールの直径Dにわたるこの距離Lの比によって限定され、たとえば、20~500に含まれ、たとえば、100~200に含まれる。同じ距離Lの場合、直径Dが短いほど解像度が向上するが、中性子源は原子炉と比較して中性子束が限定され、したがって、直径Dが小さいほど中性子束が限定される。原子炉が熱中性子イメージングを実施するように実装されるとき、原子炉によって非常に高い強度または中性子束が発生するので、比L/Dは、約1000とすることができる。
【0053】
検出器に対する入射中性子束は、(1/L)に比例し、距離Lが長いほど入射中性子束が小さくなる。したがって、検出器の入射面上に十分な中性子束を有するために、距離Lは長すぎないようにすべきである。
【0054】
上述のように、20~200に含まれる比L/Dは、本発明に有利な妥協策である。
【0055】
図6Aは、CPU冷却ブロック70を示し、
図6Bは、図に見ることができる水72および気泡74を含む同じブロックの熱中性子画像(熱中性子束は約10
7s
-1cm
-2である)を示す。冷却ブロックは、アルミニウムで作られ、中性子を遮断または停止する内部冷却流体とは逆に、中性子に対する透過度が特に高い。
【0056】
図7は、中性子に対する透過度が非常に高く、ペン内部のインクの存在を視覚化することを可能にする金属で作られたペンの熱中性子画像を示す。これは、たとえばエンジン内のチューブまたはダクトのような金属部片内の水または潤滑油のような流体または液体の撮像の実現可能性を示す。
【0057】
本発明は特に、
金属部品内の、たとえば、プラスチックまたはセラミックで作られた、挿入物の撮像、
あるいは材料の隙間または含有物の検出、
あるいは材料、たとえば、金属部片、または土壌、または多孔材料内の水の浸透の検出、
あるいはたとえば、航空機部品、たとえば、航空機翼もしくは航空機機体、または航空宇宙デバイスもしくはビークルの部品内の金属部片、特にアルミニウム部片の腐食の検出、
あるいはたとえば、タービンブレード内の金属部片、またはたとえば、航空機部品、たとえば、航空機翼もしくは航空機機体、または航空宇宙デバイスもしくはビークルの部品内のアルミニウム部片に作られたチャネル内のセラミック残留物の検出、
あるいは積層造形によって作られた部品または部片の多孔度または内部構造の試験、
あるいはエネルギー貯蔵物質内、たとえば、バッテリ内または電極内もしくは電極の周りにおけるイオンまたはイオン輸送の位置の特定、
あるいは多孔質材、たとえば、土壌または石(考古学)における流体の移動または位置の特定、
あるいは管、たとえば、熱管における二相液体の特定、
あるいは材料における炭素またはCO2の隔離またはバイオ隔離の特定、
にうまく適応される。
【0058】
任意の材料における隙間もしくは亀裂、またはセラミック残留物もしくは材料、または多孔度を撮像する際に、部片またはサンプルの異なる部分間の差を強調するために、造影剤、たとえば、液体に溶解させたGdが使用され得る。
【符号の説明】
【0059】
1、1’ 熱中性子源または発生装置
2 中性子発生装置
4 減速材
6 反射体
8、8’ シールド
10 シールド
12 ピンホール
12’ 延長部
14 フィルタ
20 マイクロチャネルプレート(MCP)検出器、中性子検出器
22 標的
30 カメラ、イメージング手段
40 レンズ
41 出口
50 サンプル
52 ビーム
61 中央穴
63 前面
70 CPU冷却ブロック
72 水
74 気泡
81 開口
83 開口
101 穴
【国際調査報告】