(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】カチオン性コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20241210BHJP
C08F 20/28 20060101ALI20241210BHJP
A61L 27/26 20060101ALN20241210BHJP
A61L 27/54 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F20/28
A61L27/26
A61L27/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522244
(86)(22)【出願日】2023-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 GB2023051533
(87)【国際公開番号】W WO2023242552
(87)【国際公開日】2023-12-21
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ジ ユアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユウェン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒョ ジャン
【テーマコード(参考)】
2H006
4C081
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
2H006BC07
4C081AB23
4C081BB06
4C081CA081
4C081CA101
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4C081CB041
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4C081CE11
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4C081EA02
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL08S
4J100AL09S
4J100AL66Q
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4J100AM21S
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4J100AQ08P
4J100BA02Q
4J100BA05S
4J100BA31R
4J100BA81Q
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA36
4J100JA33
4J100JA34
(57)【要約】
カチオン性コンタクトレンズ、及びそれを製造する方法が記載される。カチオン性コンタクトレンズは、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む。カチオン性コンタクトレンズは、未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズでありうる。コンタクトレンズは放出可能アニオン性薬剤の実質的に線形の放出が可能であり、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーは、高分子レンズ体による放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する。コンタクトレンズは、封止されたコンタクトレンズ包装中に存在しうる。封止されたコンタクトレンズ包装は、a)空洞を有するベース部材と、b)空洞中にコンタクトレンズ包装溶液と、c)存在する放出可能アニオン性薬剤とともに空洞中コンタクトレンズ包装溶液に浸漬された未装用の滅菌コンタクトレンズと、d)ベース部材による液密封止を形成するカバーとを少なくとも含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装溶液に浸漬され、包装中に封止された未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
(a)15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体と、
(b)高分子レンズ体に付着した少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤と
を含み、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートが、高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
重合性組成物が、1.0質量%~2.5質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
重合性組成物が、式Iによって表される第1のシロキサンモノマー、及び式IIによって表される第2のシロキサンモノマーを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
寸法安定性である、請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤が脂肪酸である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤が小分子である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有し、対照レンズの放出プロファイルが、対照レンズから放出可能なアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出されるバースト放出を示す、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有し、対照レンズの放出プロファイルが、コンタクトレンズから放出可能なアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出されるバースト放出を示し、放出可能アニオン性薬剤がオレイン酸である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
包装溶液が、前記少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤と同じであるか又は異なる、追加の放出可能アニオン性薬剤を含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
約25μg~約1000μgの放出可能アニオン性薬剤が、高分子レンズ体に付着している、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
約100μg~約300μgの放出可能アニオン性薬剤が、高分子レンズ体に付着しており、放出可能アニオン性薬剤がオレイン酸である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
包装が、
(a)包装溶液を保持する空洞を有するベース部材、及び
(b)ベース部材との液密封止を形成するカバー
を含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
25質量%~55質量%のシロキサンモノマーと、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートと、任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項16】
重合性組成物が、1.0質量%~2.5質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートを含む、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
重合性組成物が、式Iによって表される第1のシロキサンモノマー、及び式IIによって表される第2のシロキサンモノマーを含む、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
寸法安定性である、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法であって、a)前記重合性組成物をコンタクトレンズ型中で重合させて、高分子レンズ体を得るステップと、b)高分子レンズ体を前記コンタクトレンズ型から取り外すステップと、c)高分子レンズ体を抽出溶媒中で抽出するステップと、d)高分子レンズ体を水和液中で水和させて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、e)前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液とともに包装中に封止するステップと、e)前記包装をオートクレーブするステップとを含み、抽出溶媒、又は水和液、又は包装溶液のうちの少なくとも1種が、少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含有する、方法。
【請求項20】
抽出溶媒が前記少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.5質量%~3質量%の、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーである3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、in vitro放出アッセイにおいて試験した場合、少なくとも6μg/時の放出速度で少なくとも8時間にわたる放出可能アニオン性薬剤の実質的に線形の放出が可能であり、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートが、高分子レンズ体による放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する、コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、コンタクトレンズ、及び封止されたコンタクトレンズ包装に関し、特に、カチオン特性を有するコンタクトレンズに関し、コンタクトレンズを含有する包装、及びコンタクトレンズを製造する方法にさらに関する。カチオン特性を有する本発明のコンタクトレンズは、カチオン性コンタクトレンズと考えることができる。コンタクトレンズは、1種又は複数のコンフォート剤(comfort agent)又は放出可能なアニオン性薬剤の形態の他の有益な薬剤を制御可能に放出する能力を提供する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズの快適性を改善する主な手法のうちの1つは、レンズ材料中又は包装溶液中のいずれかに1種又は複数のコンフォート剤を導入することである。レンズが眼に置かれると、コンフォート剤が眼の表面に放出される。しかしながら、コンフォート剤はレンズ材料内部に封入され放出が制限されるか、又は所望の制御放出ではなくバースト放出を示すか、又は必要な時間(8時間以上でありうる)にわたる放出を提供しないため、コンタクトレンズ装用の経過中にコンフォート剤の制御放出を達成するのはこれまで困難であった。
したがって、コンフォート剤の制御放出又はコンフォート剤の制御放出の改善を提供するコンタクトレンズへの必要性が、当該産業において存在する。さらにまた、コンタクトレンズが提供する他の特性に大幅に影響を及ぼすことなく、そのような制御放出特性を提供することが望ましいと思われる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の特徴は、レンズ装用中にコンフォート剤を放出し、コンフォート剤のバースト放出を回避することができるコンタクトレンズを提供することである。
本発明の追加の特徴は、シリコーンヒドロゲルでありカチオン特性を有する未装用の滅菌コンタクトレンズを提供することである。
本発明のさらなる特徴は、眼に装用した場合に放出可能なコンフォート剤を含み、長時間にわたる制御放出を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
本発明の追加の特徴は、従来のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズよりも高いコンフォート剤の取込み及び放出の能力を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
本発明の追加の特徴は、コンタクトレンズを点眼剤又はコンフォート剤を含有する多目的コンタクトレンズケア溶液と接触させることによってコンフォート剤を充填又は再添加することができるコンタクトレンズを提供することである。
本発明の追加の特徴及び利点は、一部は以下の記載に示され、一部は記載から明らかであるか、又は本発明を実施することによって知ることができる。本発明の目的及び他の利点は、本記載及び添付の特許請求の範囲において特に指し示される要素及び組合せによって実現及び到達される。
【0004】
本明細書で具現化され、幅広く記載される通り、これら及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、本発明は、一部には、(i)15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.1質量%~15質量%の少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体と、(ii)少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤とを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーは、有利には、高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する。2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)及び3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMAPMA)の両方が、特に好適な非環状第3級アミンモノマーであることが見出された。
【0005】
本発明は、25質量%~55質量%のシロキサンモノマーと、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマーと、0.1質量%~10質量%の2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートと、任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにさらに関する。
【0006】
本発明は、25質量%~55質量%のシロキサンモノマーと、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートと、任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにさらに関する。そのような組成物の反応生成物であるコンタクトレンズは、特に良好な寸法安定性を有することが見出された。
【0007】
さらに、本発明は、15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.1質量%~15質量%の少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、有利には、少なくとも6μg/時の放出速度で少なくとも8時間にわたる放出可能アニオン性薬剤の実質的に線形の放出が可能である。少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーは、有利には、高分子レンズ体による放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する。
【0008】
さらに、本発明は、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法に関する。方法は、a)(本明細書に記載の通りの)重合性組成物をコンタクトレンズ型中で重合させて、高分子レンズ体を得るステップと、b)高分子レンズ体を前記コンタクトレンズ型から取り出すステップと、c)高分子レンズ体を有機溶媒中で抽出するステップと、d)高分子レンズ体を水和液中で水和させて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、e)前記水和シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液とともに包装中に封止するステップと、f)前記包装をオートクレーブするステップとを含み、有機溶媒、水和液、又は包装溶液のうちの少なくとも1種は、少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含有する。
前述の概説及び以下の詳細な記載はいずれも例示及び説明のためのものに過ぎず、特許請求される通りの本発明のさらなる説明を提供することを意図することを理解されたい。
本出願に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の特徴のいくつかを例示し、本記載と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】対照レンズと比較して、カチオン性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズから放出されたアニオン性薬剤の量をプロットしたグラフである。
【
図1B】対照レンズと比較して、カチオン性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズから放出されたアニオン性薬剤のパーセンテージをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
カチオン特性を有するコンタクトレンズ及びその製造方法が本明細書に記載される。1つ又は複数のカチオン特性を有する1つ又は複数のコンタクトレンズは、本明細書においてカチオン性コンタクトレンズと呼ぶことができる。コンタクトレンズを含む封止されたコンタクトレンズ包装もまた、本明細書に記載される。
本発明において、カチオン性コンタクトレンズは、好ましくは、コンタクトレンズ装用の経過中に1種又は複数のアニオン性薬剤、例えば、アニオン性コンフォート剤又は生理的条件下で装用中に高分子レンズ材料から解離しうる他の有益なアニオン性薬剤の制御放出を提供する。
本発明のコンタクトレンズに関して、コンタクトレンズは未装用の滅菌ヒドロゲルコンタクトレンズである。言い換えると、コンタクトレンズは使用されておらず、新しい。
【0011】
ヒドロゲルコンタクトレンズは、1種の非環状第3級アミンモノマーを含む重合性組成物の反応生成物である。
例として、ヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーを含む非シリコーンヒドロゲルの重合性組成物の反応生成物である。非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、典型的には、他のモノマーとの組合せであってもよい1種又は複数の親水性モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又はビニルアルコールの重合から形成され、シロキサン(すなわち、少なくとも1つのSi-O基を含む分子)を含有しない。
例として、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である。
さらなる例として、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーと、少なくとも1種の疎水性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である。
【0012】
一般に、「モノマー」は、同じであるか又は異なる他の重合性基含有分子と反応してポリマー又はコポリマーを形成することが可能な重合性炭素-炭素二重結合(すなわち、重合性基)を含む分子を含むか又は指しうる。モノマーという用語は、重合性プレポリマー及びマクロマーを包含し、別途示されない限り、モノマーのサイズに制約はない。モノマーは、単一の重合性炭素-炭素二重結合又は2つ以上の重合性基を含んでもよく、したがって、架橋機能を有する。
重合性組成物の反応生成物に関して、少なくとも1種のシロキサンモノマーは、1種のシロキサンモノマー又は2種若しくは3種若しくはそれよりも多いシロキサンモノマーでありうる。
本明細書で使用される場合、「シロキサンモノマー」という用語は、少なくとも1つのSi-O基及び少なくとも1つの重合性基を含有する分子である。コンタクトレンズ組成物に使用されるシロキサンモノマーは、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照されたい)。(ここ及び全体を通して言及されるすべての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。)
【0013】
いくつかの例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、又は30質量%~最大約40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、又は65質量%の総量のシロキサンモノマーを含む。例えば、少なくとも1種のシロキサンモノマーは、重合性組成物の質量に対して15質量%~約65質量%の量で存在しうる。
一般に、別途指定されない限り、本明細書で使用される場合、重合性組成物の成分の所与の質量パーセンテージ(質量%)は、重合性組成物中のすべての重合性成分(及び存在しうるあらゆる任意のポリマー又は他の成分)の総質量に対するものである。最終コンタクトレンズ製品に組み込まれない希釈剤などの成分が寄与する重合性組成物の質量は、質量%計算に含まれない。
例示的なシロキサンモノマーは、以下のFDAに承認されたシリコーンヒドロゲル材料に使用されるものである:asmofilcon A、balafilcon A、comfilcon A、delefilcon A、enfilcon A、fanfilcon A、galyfilcon A、kalifilcon A、lotrafilcon A、lotrafilcon B、narafilcon A、narafilcon B、olifilcon A、riofilcon A、samfilcon A、senofilcon A、senofilcon B、senofilcon C、somofilcon A、及びstenfilcon A。
【0014】
非イオン性親水性モノマーは、重合性組成物の質量に対して、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、又は30質量%~最大約40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、又は75質量%の量で重合性組成物の反応生成物中に存在しうる。例えば、少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーは、重合性組成物の質量に対して25質量%~約70質量%の量で存在しうる。
非イオン性親水性モノマーに関して、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーは、単一の親水性モノマーを含む、又は2種以上、例えば、2種、3種若しくは4種以上の親水性モノマーで構成された親水性モノマー成分を含むと理解することができる。
【0015】
モノマーの親水性又は疎水性は、従来技術を使用して、例えばモノマーの水溶解度に基づいて、決定することができる。本開示の目的で、親水性モノマーは、室温(例えば、約20~25℃)で水溶液に目視で溶解するモノマーである。例えば、親水性モノマーは、当業者に公知の標準的な振とうフラスコ法を使用して決定して、50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に目視で完全に溶解する(すなわち、水に≧5%溶解する)あらゆるモノマーであると理解することができる。疎水性モノマーは、本明細書で使用される場合、室温で水溶液に目視で不溶であり、分離し、水溶液中に目視で識別可能な相が存在するか、又は水溶液が濁って見え、室温で静置した後、経時的に2つの別個の相に分離するようなモノマーである。例えば、疎水性モノマーは、50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に目視で完全には溶解しないあらゆるモノマーであると理解することができる。
【0016】
本明細書に開示される重合性組成物中の親水性モノマー又は親水性モノマー成分として使用されうる非シリコン非イオン性親水性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド含有モノマー、若しくはアクリレート含有モノマー、若しくはアクリル酸含有モノマー、若しくはメタクリレート含有モノマー、若しくはメタクリル酸含有モノマー、若しくはビニル含有モノマー、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。親水性モノマー又は親水性モノマー成分は、非シリコンモノマーであると理解される。
【0017】
非イオン性親水性モノマーの例としては、これらに限定されないが、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、若しくは2-ヒドロキシエチルアクリレート、若しくは2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、若しくはエトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくは2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、若しくは2-ヒドロキシブチルアクリレート、若しくは4-ヒドロキシブチルアクリレートグリセロールメタクリレート、若しくは2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、若しくはポリエチレングリコールモノメタクリレート、若しくはメタクリル酸、若しくはアクリル酸、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0018】
非イオン性親水性モノマーは、少なくとも1種の親水性ビニルモノマーでありうる。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」は、アクリル基の一部ではないその分子構造中に存在する重合性炭素-炭素二重結合(すなわち、ビニル基)を有するあらゆるシロキサン不含(すなわち、Si-O基を含有しない)親水性モノマーであり、ビニル基の炭素-炭素二重結合は、フリーラジカル重合下で重合性メタクリレート基中に存在する炭素-炭素二重結合よりも反応性が低い。本明細書で使用される場合、「アクリル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドなどに存在する重合性基を指す。したがって、炭素-炭素二重結合は、アクリレート及びメタクリレート基中に存在し、本明細書で使用される場合、そのような重合性基はビニル基ではないと考えられる。
【0019】
重合性組成物中に提供されうる親水性ビニル含有モノマーの例としては、限定なしに、N-ビニルホルムアミド、若しくはN-ビニルアセトアミド、若しくはN-ビニル-N-エチルアセトアミド、若しくはN-ビニルイソプロピルアミド、若しくはN-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、若しくはN-ビニルピロリドン(NVP)、若しくはN-ビニルカプロラクタム、若しくはN-ビニル-N-エチルホルムアミド、若しくはN-ビニルホルムアミド、若しくはN-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、若しくはN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステル、1,4-ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、若しくはエチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、若しくはジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。一例では、親水性モノマー又は親水性モノマー成分は、VMA、NVP、又はVMA及びNVPの両方を含む。
【0020】
一例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%、又は25質量%~最大約45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、又は75質量%の親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定のクラスの成分(例えば、親水性ビニルモノマー又はシロキサンモノマーなど)の所与の質量パーセンテージは、組成物中、そのクラスに入る各成分の質量%の合計に等しい。したがって、例えば、5質量%のBVE及び25質量%のNVPを含み、他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30質量%の親水性ビニルモノマーを含むと言われる。一例では、親水性ビニルモノマーは、N-ビニルアミドモノマーである。例示的な親水性N-ビニルアミドモノマーは、VMA及びNVPである。具体例では、重合性組成物は、少なくとも25質量%(例えば、25質量%~55質量%)の少なくとも1種のビニルアミドモノマーを含む。さらなる具体例では、重合性組成物は、約25質量%~最大約75質量%(例えば、25質量%~55質量%)のVMA若しくはNVP、又はそれらの組合せを含む。
【0021】
非環状第3級アミンモノマーは、重合性組成物の総質量に対して、0.1質量%~約15質量%、例えば、1質量%~14質量%、1質量%~12質量%、1質量%~10質量%、1質量%~7質量%、1質量%~5質量%、5質量%~15質量%、6質量%~15質量%、8質量%~15質量%の量で重合性組成物の反応生成物中に存在しうる。
非環状第3級アミンモノマーは、カチオン性モノマーと考えることができる。
非環状第3級アミンモノマーに関して、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーは、単一の非環状第3級アミンモノマーを含むか、又は2種以上、例えば、2種、3種若しくは4種以上の非環状第3級アミンモノマーで構成された非環状第3級アミンモノマー成分を含むと理解することができる。
非環状第3級アミンモノマーは、モノマーは環構造を含有してもよいが、第3級アミン基の窒素は環構造の一部ではないモノマー(例えば、N-(2-アミノエチル)アミノメチルスチレン)である。「第3級アミン基」という用語は、3個の炭素原子に直接結合した窒素原子を指すと理解され、ただし、炭素原子はいずれもカルボニル基の一部ではない。
【0022】
例示的な非環状第3級アミンモノマーとしては、これらに限定されないが、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、若しくは2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、若しくは3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、若しくは3-(ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、若しくは2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、若しくは2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、若しくは3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、若しくは3-(ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、若しくはN-(2-(ジメチルアミノ)エチル)アクリルアミド、若しくはN-(2-(ジエチルアミノ)エチル)アクリルアミド、若しくはN-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)アクリルアミド、若しくはN-(3-(ジエチルアミノ)プロピル)アクリルアミド、若しくはN-(2-(ジメチルアミノ)エチル)メタクリルアミド、若しくはN-(2-(ジエチルアミノ)エチル)メタクリルアミド、若しくはN-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド、若しくはN-(3-(ジエチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド、若しくは3-(ジエチルアミノ)プロピルビニルエーテル、若しくは3-(ジメチルアミノ)プロピルビニルエーテル、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0023】
非環状第3級アミンモノマーのより具体的な例は、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレートであり、これは、重合性組成物中(重合性組成物の総質量に対して)0.1質量%~15質量%、又は1質量%~10質量%の量で存在しうる。
非環状第3級アミンモノマーの別の具体例は、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートであり、これは、重合性組成物中(重合性組成物の総質量に対して)0.5質量%~3質量%、又は1質量%~2.5質量%の量で存在しうる。3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートを含む組成物は、特に良好な寸法安定性を有するコンタクトレンズを提供することが見出された。
【0024】
本明細書に記載されるコンタクトレンズは、単一ロットからの20個のレンズの弦長(chord diameter)を測定し、「本来の」平均直径を得る保存寿命試験法によって決定して、≦±3.0%(すなわち、+又は-3パーセント以下)の平均寸法安定性分散を示すコンタクトレンズのバッチ(すなわち、ロット)からのものである場合、「寸法安定性」と考える。同時に、同じロットからのレンズの20個の未開封包装を、55℃に設定したインキュベーターに入れる。レンズは、この高温保存条件において3カ月維持されて、25℃でおよそ2年の保存寿命に近似する。3カ月の終了時、包装されたレンズを室温にし、その包装から取り出し、測定して「最終」平均直径を得る。寸法安定性分散は、式:(直径最終-直径本来/直径本来)×100によって計算される。いくつかの例では、寸法安定性分散は、≦±2.5%、又は≦±2.0%、又は≦±1.5%、又は≦±1.0%である。
【0025】
一般に、非環状第3級アミンモノマー(及び高分子レンズ体の一部)は、より低いpH及び/又は低いイオン強度の溶液、例えば8.0未満、若しくは7未満のpH、又は6以下のpH(例えば、4~6のpH)などの酸性条件で荷電部位を形成する。これらの条件において、非環状第3級アミン基はプロトン化して、レンズ材料中に正荷電部位を形成する。さらに説明される通り、これらの正荷電部位は、負荷電コンフォート剤又は他の放出可能アニオン性薬剤とイオン性錯体を形成しうる。
【0026】
有利には、1種又は複数の非環状第3級アミンモノマーは、重合性組成物に含まれて、約1.0%、若しくは2.0%、若しくは3.0%~最大約5.0%、7.0%、若しくは10.0%のカチオン含有量を有する高分子レンズ体を提供する。使用される「カチオン含有量」は、式I:
Σ(an1×bn1/cn1)×157=%カチオン含有量 (I)
(式中、an1は、下記に定義される通りの、モノマー混合物中で使用されるカチオン性モノマーn1の質量パーセンテージであり、bn1は、モノマーn1の第3級アミン基の数であり、cn1は、第3級アミン含有モノマーn1の分子量である)によって決定された値である。2種以上の第3級アミン含有モノマーが重合性組成物中で使用される場合、得られた高分子レンズ体の第3級アミンの%含有量は、各第3級アミン含有モノマー(すなわち、n1、n2など)によってもたらされたイオンの%含有量の合計である。重合性組成物中の第3級アミン含有モノマーn1の質量パーセンテージは、ヒドロゲルに組み込まれるモノマー混合物のすべての成分の質量に対するものである。言い換えると、製造工程中にヒドロゲルから除去される希釈剤などの、最終ヒドロゲル生成物に組み込まれないモノマー混合物の成分は、質量パーセントの決定に含まれない。式Iは、分子量157及び1つの第3級アミン基を有する、例示的な第3級アミン含有モノマーである2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートと比べた分子量及び電荷の差を調整する。
選択肢として、1種又は複数の疎水性モノマーは、重合性組成物の一部として存在しうる。
【0027】
好適な疎水性モノマーの例としては、これらに限定されないが、1種又は複数の非シリコン含有疎水性モノマーが挙げられる。好適な疎水性モノマーの例としては、メチルアクリレート、若しくはエチルアクリレート、若しくはプロピルアクリレート、若しくはイソプロピルアクリレート、若しくはシクロヘキシルアクリレート、若しくは2-エチルヘキシルアクリレート、若しくはメチルメタクリレート(MMA)、若しくはエチルメタクリレート、若しくはプロピルメタクリレート、若しくはブチルアクリレート、若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート、若しくは酢酸ビニル、若しくはプロピオン酸ビニル、若しくは酪酸ビニル、若しくは吉草酸ビニル、スチレン、若しくは、クロロプレン、若しくは塩化ビニル、若しくは塩化ビニリデン、若しくはアクリロニトリル、若しくは1-ブテン、若しくはブタジエン、若しくはメタクリロニトリル、若しくはビニルトルエン、若しくはビニルエチルエーテル、若しくはパーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、若しくはイソボルニルメタクリレート(IBM)、若しくはトリフルオロエチルメタクリレート、若しくはヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、若しくはテトラフルオロプロピルメタクリレート、若しくはヘキサフルオロブチルメタクリレート、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0028】
疎水性モノマーは、使用される場合、重合性組成物の総質量に対して、1質量%~約30質量%、例えば、1質量%~25質量%、1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~20質量%、3質量%~20質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、1質量%~10質量%の量で重合性組成物の反応生成物中に存在しうる。
【0029】
親水性モノマーに加えて又はその代わりに、重合性組成物は、非重合性親水性ポリマーを含んでもよく、これにより、シリコーンヒドロゲルシリコーンヒドロゲルポリマーマトリックスと相互侵入する非重合性親水性ポリマーとの相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む高分子レンズ体が得られる。この例では、非重合性親水性ポリマーはIPNポリマーと呼ばれ、これは、コンタクトレンズにおいて内部湿潤剤として作用する。これとは対照的に、重合性組成物中に存在するモノマーの重合によって形成されるシリコーンヒドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーではないと考えられる。IPNポリマーは、例えば、約50,000~約500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであってもよい。具体例では、IPNポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。他の例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドン又は他のIPNポリマーを含まないか、又は実質的に含まない。
【0030】
重合性組成物は、少なくとも1種の架橋剤をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、少なくとも2つの重合性基を有する分子である。したがって、架橋剤は、2つ以上のポリマー鎖の官能基と反応して1つのポリマーと別のポリマーを架橋することができる。シリコーンヒドロゲル重合性組成物における使用に好適な様々な架橋剤が、当分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,231,218号を参照されたい)である。好適な架橋剤の例としては、限定なしに、より低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート及びジエチレングリコールジメタクリレート;ポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート;低級アルキレンジ(メタ)アクリレート;アリルメタクリレート、ジビニルエーテル、例えば、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジビニルスルホン;ジ及びトリビニルベンゼン;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;メチレンビス(メタ)アクリルアミド;トリアリルフタレート;1,3-ビス(3-メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;ジアリルフタレート;トリアリルイソシアヌレート、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
当業者であれば認識する通り、重合性組成物は、コンタクトレンズ製剤に従来使用されている追加の重合性又は非重合性成分、例えば、重合開始剤、酸素捕捉剤、連鎖移動剤又は希釈剤などのうちの1種又は複数を含んでもよい。いくつかの例では、重合性組成物は、重合性組成物の親水性及び疎水性成分の間の相分離を防止又は最小化する量の有機希釈剤を含んでもよく、その結果、光学的に透明なレンズが得られる。コンタクトレンズ製剤に一般に使用される希釈剤としては、ヘキサノール、エタノール、及び/又は他の第1級、2級若しくは3級アルコールが挙げられる。他の例では、重合性組成物は、有機希釈剤を含まないか又は実質的に含まない(例えば、500ppm未満)。そのような例では、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基又は他の親水性基などの親水性部分を含有するシロキサンモノマーの使用により、重合性組成物中に希釈剤を含む必要がなくなりうる。重合性組成物に含まれてもよいこれら及び追加の成分の非限定例は、米国特許第8,231,218号に提供されている。
【0032】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの具体例は、25質量%~55質量%のシロキサンモノマーと、30質量%~55質量%の、NVP、VMA又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーとを含む重合性組成物に基づくものである。重合性組成物のこの具体的な実施形態から作製されたシリコーンヒドロゲル材料としては、stenfilcon A、comfilcon A、somofilcon A、fanfilcon A、及びenfilcon Aが挙げられる。さらなる例では、上記の重合性組成物は、stenfilcon Aのシロキサン、具体的には式(I)
【0033】
【化1】
(I)
によって表される構造を有する第1のシロキサン、
及び式(II)
【0034】
【化2】
(II)
によって表される構造を有する第2のシロキサンを含む。上記のベース重合性組成物は、0.1質量%~15質量%の少なくとも1種の非環状第3級アミン、例えば、1質量%~10質量%の2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、又は0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートをさらに含むようにさらに変更され、硬化されてカチオン性高分子レンズ体を提供する。
【0035】
本発明の一部として、コンタクトレンズは、高分子レンズ体及び高分子レンズ体に付着する少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。アニオン性薬剤は、カチオン性及び/若しくは疎水性相互作用によって高分子レンズ体に付着してもよく、並びに/又は高分子レンズ体のポリマーネットワークに物理的に封入されてもよい。放出可能アニオン性薬剤は、1種又は複数の(例えば、1種、2種、又はそれよりも多い)放出可能アニオン性薬剤でありうる。
選択肢として、放出可能アニオン性薬剤は、角膜などで、TRPV1受容体を遮断することが可能であり、及び/又はPPARa受容体と相互作用することが可能である。
【0036】
放出可能アニオン性薬剤の例としては、これらに限定されないが、少なくとも1種の酸が挙げられる。具体例では、アニオン性薬剤は、単一のカルボン酸基を含む。別の例では、アニオン性薬剤は、2つ以上のカルボン酸基を含む。一例では、アニオン性薬剤は、小分子(すなわち、約900ダルトン未満の分子量を有する)である。いくつかの例では、選択肢としての放出可能アニオン性薬剤はポリマーではない。選択肢として、放出可能アニオン性薬剤は二糖のポリマーではない。
放出可能アニオン性薬剤の例としては、これらに限定されないが、少なくとも1種の脂肪酸が挙げられる。放出可能アニオン性薬剤のより具体的な例は、オレイン酸である。
【0037】
放出可能アニオン性薬剤が、(例えば、低pH条件及び/又は低イオン強度条件、例えば、約7未満のpH又は約6未満のpH、に起因して)で、高分子レンズ体とのイオン相互作用により、その状態で複合体化する場合、放出可能アニオン性薬剤それ自体は、高分子レンズ材料の一部を形成するカチオン性部分又は分子とのイオン相互作用により複合体化するアニオン性薬剤又は材料である。例として、放出可能アニオン性薬剤は、脱プロトン化すると、高分子レンズ体中のプロトン化部分又は分子の少なくとも一部、例えば、高分子レンズ体中に存在するプロトン化第3級アミン基との複合体を形成しうる。高分子レンズ体とのイオン相互作用により複合体化する放出可能アニオン性薬剤は、例えば、生理的条件下で、涙液中の対イオンとのイオン相互作用により解離することによって、高分子レンズ体から放出される。放出されたアニオン性薬剤は、この時点で、一般に、塩又はエステル(例えば、オレイン酸などの少なくとも1種の酸の塩又はオレイン酸エステル)になる。
【0038】
高分子レンズ体に付着する放出可能アニオン性薬剤の量は、少なくとも25μg、例えば、約25μg~1000μg以上、又は25μg~700μg、又は25μg~650μg、又は25μg~600μg、又は25μg~550μg、又は25μg~500μg、又は25μg~450μg、又は25μg~400μg、又は25μg~350μg、又は25μg~300μg、又は25μg~250μg、又は50μg~750μg、又は75μg~750μg、又は100μg~750μg、又は125μg~700μg、又は150μg~700μg、又は175μg~700μg、又は200μg~700μgなどでありうる。一例では、放出可能アニオン性薬剤は、約25μg~約500μg、又は約100μg~約300μgの量の高分子レンズ体に付着したオレイン酸である。本明細書で使用される場合、「高分子レンズ体に付着した放出可能アニオン性薬剤の量」という語句は、下記の実施例1に記載されるイソプロピルアルコール(IPA)抽出方法などの適切な抽出方法によってコンタクトレンズから抽出されうる放出可能アニオン性薬剤の総量を指す。
【0039】
選択肢として、放出可能アニオン性薬剤は、本明細書に記載されるイオン相互作用によって高分子レンズ体全体にわたって均一に分布しうる。選択肢として、放出可能アニオン性薬剤は、不均一に分布しうる。例えば、放出可能アニオン性薬剤は、コンタクトレンズの内部部分(後部及び前部側の間に位置する領域)と比較して、コンタクトレンズの片側又はコンタクトレンズの両側(すなわち、後部及び前部側)により高い量で存在しうる。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ内に存在する放出可能アニオン性薬剤は、高分子レンズ体に共有結合しない。
高分子レンズ体及び放出可能アニオン性薬剤の間の本明細書に記載されるイオン相互作用の代わりに又はそれに加えて、放出可能アニオン性薬剤は、選択肢として、コンタクトレンズ内に包埋され、封入され、分散し、吸収され、及び/又は位置すると考えることができる。言及した通り、放出可能アニオン性薬剤は、好ましくは、放出可能アニオン性薬剤がレンズ材料又はレンズ材料の一部と複合体を形成し、これはイオン相互作用と思われることに起因して、コンタクトレンズ内及び/又はその表面に存在する。
【0040】
本発明のコンタクトレンズのさらなる例は、15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.1質量%~15質量%の少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも6μg/時の放出速度で少なくとも8時間にわたって放出可能アニオン性薬剤を放出することが可能である。本明細書における、コンタクトレンズからのアニオン性薬剤の放出の量又は持続時間への参照は、実施例2に記載されるin vitro放出アッセイにおいて試験した場合、コンタクトレンズからの放出の量及び/又は持続時間を意味することが意図される。少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーは、高分子レンズ体による放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する。
【0041】
高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する少なくとも1種の非環状第3級アミンモノマーに関して、これは、非環状第3級アミンモノマーが存在しない重合性組成物(非環状第3級アミンモノマーの量の代わりに、この量は、MMAなどの疎水性モノマーで置き換えられているが、それ以外は同じ重合性組成物)から形成された高分子レンズ体を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである「対照レンズ」を、非環状第3級アミンモノマーが存在する重合性組成物から形成された高分子レンズ体を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである「カチオン性レンズ」と比較した場合、非環状第3級アミンモノマーを含有する高分子レンズ体による取込み量は、充填溶液中、同じ濃度の放出可能アニオン性薬剤を使用する対照レンズよりも高くなると思われる。同様に、持続放出の促進により、重合性組成物中に非環状第3級アミンモノマーを含有する高分子レンズ体は、対照レンズと比較してより長い放出時間、例えば、8時間若しくは9時間を有すると思われ、及び/又は対照レンズと比較して8時間若しくは9時間の時間にわたってより線形の放出プロファイルを有すると思われる。本明細書で使用される場合、「放出プロファイル」という用語は、
図1Aに示されるように、下記の実施例2に記載される放出媒体及び放出アッセイ法を使用してレンズから放出されるアニオン性薬剤の量を、1時間、3時間、6時間、及び9時間の時点でプロットした場合の線の形状を指す。
【0042】
一例では、カチオン性コンタクトレンズは、少なくとも8時間にわたってアニオン性薬剤の実質的に線形の放出を示す。本明細書で使用される場合、アニオン性薬剤放出プロファイルの線形回帰が、1時間、3時間、6時間、及び9時間の時点(各時点でn=3)で測定した放出量による少なくとも0.90のR二乗値を有する場合に、少なくとも8時間にわたる実質的に線形の放出が示される。一例では、カチオン性コンタクトレンズは、少なくとも8時間にわたってアニオン性薬剤の実質的に線形の放出を示し、少なくとも0.90のR二乗値を有する。いくつかの例では、カチオン性コンタクトレンズは、少なくとも8時間にわたってアニオン性薬剤の実質的に線形の放出を示し、少なくとも0.90のR二乗値を有し、対照レンズは、コンタクトレンズから放出可能であるアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出されるバースト放出を示す。
【0043】
いくつかの例では、本発明のカチオン性コンタクトレンズは、少なくとも8時間、少なくとも9時間、又は少なくとも10時間の時間、例えば、8時間~16時間、又は10時間~16時間、又は12時間~16時間の時間にわたって毎時2μg~50μg(例えば、5μg~50μg、又は10μg~40μg、又は10μg~30μg)のアニオン性薬剤のアニオン性薬剤の放出を有しうる。
【0044】
本発明により、好ましくは、アニオン性薬剤のバースト放出が回避される。バースト放出(又はバースト効果)の例は、コンタクトレンズから放出可能なアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出される場合である。
したがって、本発明により、本発明のコンタクトレンズは、以下の特性:a)アニオン性薬剤の実質的に線形の放出プロファイル、b)大量のアニオン性薬剤(少なくとも50μg、若しくは少なくとも100μg、若しくは少なくとも150μg、若しくはレンズまで少なくとも200μm)をアップロードする能力、c)長時間(少なくとも8時間、例えば、8時間~16時間、若しくは9時間~16時間、若しくは10時間~16時間、若しくは8時間~12時間)にわたるアニオン性薬剤の放出、及び/又はd)あらゆるバースト放出の回避のうちの少なくとも1つ又は複数を提供することが可能である。
【0045】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズによる放出可能アニオン性薬剤の取込み又は充填は、抽出ステップ中、及び/又は水和ステップ中、及び/又は包装ステップ中に行われうる。例えば、放出可能アニオン性薬剤の取込みは、コンタクトレンズ材料が硬化された後の溶媒抽出ステップ中、並びに/又は少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤が抽出溶媒及び/若しくは水和溶液中に存在する場合の、1回若しくは複数回の水和ステップ中に行われうる。一般に、アニオン性薬剤が水溶性ではない場合、それは、エタノール又はエタノール及び水の混合物などの有機抽出溶媒に添加される。硬化後、高分子レンズ体は、アニオン性薬剤を含有する抽出溶媒中で膨潤する。抽出された高分子レンズ体が、脱イオン水などの水和溶液中に置かれると、抽出溶媒は除去され、アニオン性薬剤が水和高分子レンズ体内に残留する。一般に、アニオン性薬剤が親水性である場合、それは、水和溶液中又は最終包装溶液中に含まれ、そこからアニオン性薬剤が高分子レンズ体に溶解する。
【0046】
例えば、抽出及び水和工程で使用される抽出及び水和液は、変性エタノール、変性エタノール及び脱イオン水の50/50(体積)混合物、並びに脱イオン水からなりうる。例として、抽出及び水和工程は、変性エタノールに続いてエタノール水の50:50混合物中、少なくとも1回の抽出ステップ、続いて、脱イオン水中、少なくとも1回の水和ステップを含むことができ、各抽出及び水和ステップは、約20℃~約30℃の温度で約15分~約3時間続きうる。本発明の目的で、抽出及び/又は水和に使用されるいずれか1種若しくは複数又はすべての液体は、1種又は複数の放出可能なアニオン性薬剤をさらに含有して、高分子レンズ体への放出可能アニオン性薬剤のアップロードを達成することができる。アップロードをより効果的に達成するために、液体は、約4~約6などの7以下のpHを有するように調整されうる。
一例では、カチオン性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、対照レンズよりも少なくとも25%(質量)多い、例えば、少なくとも50%多い、又は少なくとも75%多い放出可能アニオン性薬剤を含有する。
【0047】
下記にさらに記載される通り、抽出及び水和ステップ後の未装用のコンタクトレンズは、一般に、包装溶液を含有するベース部材中に置かれ、次いで、コンタクトレンズを有するベース部材及び包装溶液は、封止され、滅菌工程(例えば、オートクレーブ)に供される。選択肢として、包装溶液は、ある量の放出可能アニオン性薬剤を含有し、この薬剤は、包装の際にコンタクトレンズにアップロードされる。好ましくは、滅菌ステップは、コンタクトレンズ中又は包装溶液中の薬剤のアップロードにも安定性にも影響を及ぼさない。
選択肢として、点眼剤及び/又は多目的コンタクトレンズケア溶液(MPS)は、放出可能アニオン性薬剤を含有しうる。この選択肢は、コンタクトレンズにさらなる放出可能アニオン性薬剤を再添加するのに特に効果的である。したがって、本発明のさらなる態様は、コンタクトレンズを、放出可能アニオン性薬剤を含有するアップロード溶液で再添加する能力である。
【0048】
放出可能アニオン性薬剤のアップロード溶液としてとして使用されるあらゆる液体は、少なくとも50ppmの放出可能アニオン性薬剤の濃度の放出可能アニオン性薬剤を含有しうる。この濃度は、少なくとも100ppm、少なくとも250ppm、少なくとも500ppm、少なくとも750ppm、少なくとも1000ppm、少なくとも1250ppm、少なくとも1500ppm、少なくとも1750ppm、又は少なくとも2000ppmのアニオン性薬剤でありうる。例えば、濃度は、アップロード溶液(又はコンタクトレンズにアニオン性薬剤をアップロードするために使用される溶液)中50ppm~2000ppm以上のアニオン性薬剤でありうる。
【0049】
いくつかの例では、いったん高分子レンズ体に付着した放出可能アニオン性薬剤は安定であり、高分子レンズ体から実質的に放出されないか、又は包装溶液中に未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含有する封止されたコンタクトレンズ包装のオートクレーブ中若しくはその包装溶液の保存中に分解しないが、レンズ装用中に放出される。したがって、オートクレーブの前又はオートクレーブの直後、若しくはその1日後、若しくはその30日後、若しくはその60日後、若しくはその120日後に、コンタクトレンズが浸漬された包装溶液は、コンタクトレンズから包装溶液中に放出された放出可能アニオン性薬剤を10ppm未満、又はコンタクトレンズから包装溶液中に放出された放出可能アニオン性薬剤を5ppm以下、若しくは1ppm未満、若しくは0ppm有する。放出可能アニオン性薬剤がオートクレーブ又は保存中にコンタクトレンズから放出されるか否かは、HPLC、LCMS又は他の好適な分析方法を使用して、包装溶液中の放出可能アニオン性薬剤の存在について試験することによって決定することができる。
【0050】
本発明により、達成されうる特徴のうちの1つは、ソフトコンタクトレンズの快適性レベルを改善することであり、これは、角膜で、TRPV1受容体を遮断するか、又はPPARa受容体と相互作用する薬剤を放出することによって角膜知覚を低減することを含む。
さらに、本発明は、本発明の封止されたコンタクトレンズ包装又は高分子レンズ体を含む未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法に関する。方法は、a)(本明細書に記載される通りの)重合性組成物をコンタクトレンズ型中で重合させて、ヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、b)ヒドロゲルコンタクトレンズをコンタクトレンズ型から取り出すステップと、c)取り出したヒドロゲルコンタクトレンズを1回又は複数回、抽出及び水和するステップと、d)前記水和シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液とともに包装中に封止するステップと、e)前記包装をオートクレーブするステップとを含む。
コンタクトレンズの形状に成形されたシリコーンヒドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマーと、少なくとも1種の第3級アミンモノマーと、任意に少なくとも1種の疎水性モノマーとを含む重合性組成物(すなわち、モノマー混合物)を硬化させることによって形成されうる。
【0051】
本発明のコンタクトレンズを製造するために、従来の方法を使用することができる。例として、重合性シリコーンヒドロゲル性組成物は、コンタクトレンズの前面を定義する凹面を有する雌型部材に分注される。コンタクトレンズの背面、すなわち角膜接触面、を定義する凸面を有する雄型部材が、雌型部材と組み合わせられて、コンタクトレンズ型アセンブリが形成され、これは、硬化条件、例えば、UV又は熱硬化条件に供され、この条件下で硬化性組成物が高分子レンズ体に形成される。雌及び雄型部材は、非極性型でも極性型でもありうる。型アセンブリは分解(すなわち、脱型)され、高分子レンズ体が型から取り出され、溶媒、例えば、エタノールなどの有機溶媒と接触して、レンズ体から未反応成分が抽出される。抽出後、レンズ体は、水又は水溶液などの水和液中で水和される。示される通り、放出可能アニオン性薬剤は、抽出ステップに使用される1種又は複数の抽出溶媒中、水和ステップに使用される1種又は複数の水和液中、又は抽出溶媒及び水和液の両方に含まれてもよい。
放出可能アニオン性薬剤が抽出溶媒中に含まれる場合、水和ステップでは溶媒を水和液に置き換え、それによって、高分子レンズ体を水和してシリコーンヒドロゲルが形成され、放出可能アニオン性薬剤(又はその一部)は、得られたシリコーンヒドロゲル内のイオン相互作用により残留しうる。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する例示的な方法は、米国特許第8,865,789号に記載されている。
【0052】
本発明におけるコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、特にソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと考えることができる。本開示のコンタクトレンズ包装中に封止されたコンタクトレンズは、どのようなレンズ装用様式のものであってもよい。レンズ装用様式とは、レンズを取り外すことなく、何日間昼夜連続して装用できるかを指す。一例では、本開示のコンタクトレンズ包装中に封止されたコンタクトレンズは、1日使い捨てレンズである。1日使い捨てレンズは、最大約12又は16時間の連続装用での単回使用が示され、単回使用後には廃棄されるべきである。別の例では、本開示のコンタクトレンズ包装中に封止されたコンタクトレンズは、毎日装用レンズである。毎日装用レンズは、起きている時間中、典型的には最大約12~16時間装用され、就寝前に取り外される。毎日装用レンズは、典型的には、非使用の時間中にレンズを清浄及び消毒するためのコンタクトレンズケア溶液を含有するコンタクトレンズケースに保存される。毎日装用レンズは典型的には、最大30日の装用後に廃棄される。なお別の例では、コンタクトレンズは、長時間装用レンズである。長時間装用レンズは、典型的には、最大6、14、又は30日間昼夜連続して装用される。
【0053】
本開示のコンタクトレンズ包装内に封止された包装溶液は、あらゆる従来のコンタクトレンズ適合溶液であってもよい。一例では、包装溶液は、緩衝剤及び/又は等張化剤の水溶液を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。別の例では、包装溶液は、追加の薬剤、例えば、1種又は複数の追加の抗菌剤、及び/又はコンフォート剤、及び/又は親水性ポリマー、及び/又は界面活性剤、及び/又はレンズが包装に貼り付くのを防止する他の添加剤を含有する。包装溶液は、約6.8又は7.0~最大約7.8又は8.0の範囲のpHを有しうる。一例では、包装溶液は、リン酸緩衝液又はホウ酸緩衝液を含む。別の例では、包装溶液は、約200~400mOsm/kg、典型的には、約270mOsm/kg~最大約310mOsm/kgの範囲の浸透圧を維持する量の、塩化ナトリウム又はソルビトールから選択される等張化剤を含む。いくつかの例では、包装溶液は、多糖(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、又は他の高分子量ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを含んでもよく、これらは、一般に、点眼液及びコンタクトレンズ包装溶液中のコンフォートポリマー又は増粘剤として使用される。
【0054】
コンタクトレンズ包装に関して、包装は、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成された空洞、並びに空洞の周りに外向きに拡がるフランジ領域を含むプラスチックベース部材などのベース部材を含む(include)か又は含み(comprise)うる。取外し可能な箔又は封止がフランジ領域に取付けられて、封止されたコンタクトレンズ包装が提供される。そのようなコンタクトレンズ包装は、一般に「ブリスターパック」と呼ばれ、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,426,993号を参照されたい)。
【0055】
封止されたコンタクトレンズ包装を製造するために、従来の製造方法を使用できることが認識される。したがって、本開示の一態様は、コンタクトレンズ包装を製造する方法であって、未装用のコンタクトレンズ及びコンタクトレンズ包装溶液をレセプタクル中に置くステップと、レセプタクルにカバーを置くステップと、カバーをレセプタクルに封止するステップとを含む、方法である。一般に、レセプタクルは、単一コンタクトレンズ、及びコンタクトレンズを完全に被覆するのに十分な量、典型的には約0.5~1.5mlの包装溶液を受け取るように構成されている。レセプタクルは、ガラス又はプラスチックなどのいずれかの好適な材料から作製されてもよい。一例では、レセプタクルは、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成された空洞、並びに空洞の周りに外向きに拡がるフランジ領域を含むプラスチックベース部材を含み、カバーは、封止されたコンタクトレンズ包装を提供するようにフランジ領域に取付けられた取外し可能な箔を含む。取外し可能な箔は、加熱封止又は糊付けなどのいずれの従来の方法によって封止されてもよい。別の例では、レセプタクルは、複数のスレッドを含むプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、ベース部材のスレッドとの嵌合のためのスレッドの適合セットを含むプラスチックキャップ部材を含み、それによって取外し可能なカバーが提供される。取外し可能な包装を提供するために、他の種類の包装も使用できることが認識される。例えば、コンタクトレンズ包装は、レセプタクルの適合する特徴と嵌合して締まり嵌めを形成する特徴を含むプラスチックカバーを含んでもよい。
【0056】
封止されたコンタクトレンズ包装を製造する方法は、未装用のコンタクトレンズを封止されたコンタクトレンズ包装をオートクレーブすることによって滅菌するステップをさらに含んでもよい。オートクレーブは一般に、封止されたコンタクトレンズ包装を少なくとも20分間、少なくとも121℃の温度に供するステップを含む。最終製品は、眼科的に許容される表面の濡れ性を有する滅菌包装シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。具体例では、本発明は、包装溶液及びコンタクトレンズを収容するための空洞を有するベース部材と、ベース部材の空洞中に未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと、ベース部材の空洞中に包装溶液とを有するコンタクトレンズ包装を提供する。
以下の実施例は、本発明のある特定の態様及び利点を例示し、これらは、それによって限定するものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
カチオン性シリコーンヒドロゲルレンズからのオレイン酸取込み
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、stenfilcon A(対照レンズ)又は約4.5質量%の2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを含有するように変性したstenfilcon A(カチオン性レンズ)の重合性組成物を使用して調製した。重合性組成物を、ポリプロピレンコンタクトレンズ型中で硬化させた。高分子レンズ体を型から取り出し、それらを、表Iに示される濃度のオレイン酸(Sigma)を含有するエタノール(EtOH)に215分間浸漬することによって抽出した。レンズをEtOHから取り出し、EtOH/水の50/50混合物中でおよそ30分間洗浄し、続いて、それぞれおよそ6分間、30分間、及び30分間で3回DI水を交換した。
【0058】
レンズをイソプロパノール(IPA)で抽出し、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)によって抽出物中のオレイン酸を測定することによって、各レンズ(n=3)中のオレイン酸(OA)の量を決定した。簡潔には、各レンズをその容器から取り出し、軽くブロットして過剰の包装溶液を除去し、10mLの100%イソプロパノール(IPA)を含有する20mLガラスバイアルに入れた。バイアルを、室温で終夜(約16時間)、300rpmでベンチトップ振とう器に置いた。stenfilcon Aの場合、レンズから実質的にすべてのオレイン酸を抽出するのに、単回の終夜抽出ステップで十分である。より疎水性であるシリコーンヒドロゲルレンズ材料は、すべてのオレイン酸を抽出するためには2回目の終夜抽出が必要な場合があり、この場合、1回目の抽出ステップからのIPAは除去し、3mLの新しいIPAに交換し、室温、300rpmで終夜振とうする。各レンズからのIPA抽出物中のオレイン酸の量を、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)によって決定する。レンズ当たりのオレイン酸充填濃度及び平均オレイン酸取込み量を表1に示す。
【0059】
【0060】
(実施例2)
カチオン性シリコーンヒドロゲルレンズからのオレイン酸放出
表2に示す組成を有する人工涙膜(ATF)をin vitro放出媒体として使用した。
【表2】
【0061】
各レンズをその容器から取り出し、振とうして過剰の包装溶液を除去した。各レンズ(n=3)を6mLガラスバイアルに移し、35℃に事前に温めた5mLのATSを各バイアルに添加した。バイアルを35℃のインキュベーターに置き、125rpmで振とうした。放出媒体を、1、3、及び7時間の時点で、4.5mLの新しいATSに交換した。各時点でのレンズ中のオレイン酸の量を、実施例1に記載されるIPA抽出法を使用して決定した。結果を表3に示し、
図1A及び
図1Bにプロットする。
【0062】
【表3】
放出プロファイルの線形回帰等式及びR二乗値を表4に提示する。
【0063】
【0064】
(実施例3)
寸法安定性のカチオン性シリコーンヒドロゲルレンズ
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMAPMA)を約1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、及び2.5質量%で含有するように変性したstenfilcon Aの重合性組成物を使用して調製した。オレイン酸が抽出溶媒に含まれなかったことを除き、実施例1に記載される方法を使用し、組成物を使用してコンタクトレンズを調製した。レンズの寸法安定性を、上記の保存寿命試験法(すなわち、55℃で3カ月間の保存による25℃で2年間の保存寿命の近似)を使用して決定した。レンズの平均弦長は、本来の平均弦長から1.0%未満変化し、DMAPMAモノマーで作製されたレンズが寸法安定性であることを示した。
【0065】
本発明は、以下の番号付きの態様/実施形態/特徴を、あらゆる順序及び/又はあらゆる組合せで含む。
1. 包装溶液に浸漬され、包装中に封止された未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
a. 15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体と、
b. 高分子レンズ体に付着した少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤と
を含み、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートが、有利には、高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する、未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0066】
2. 重合性組成物が、1.0質量%~2.5質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートを含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
3. 重合性組成物が、1.5質量%~2.0質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートを含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
4. 重合性組成物が、式Iによって表される第1のシロキサンモノマー、及び式IIによって表される第2のシロキサンモノマーを含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
5. 寸法安定性である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
【0067】
6. 少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤が脂肪酸である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
7. 少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤が小分子である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
8. 高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
9. 高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有する、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
【0068】
10. 高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有し、対照レンズの放出プロファイルが、対照レンズから放出可能なアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出されるバースト放出を示し、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
11. 高分子レンズ体による少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤の持続放出が、人工涙膜溶液中に置かれた場合、少なくとも8時間にわたって実質的に線形であり、放出プロファイルの線形回帰が、少なくとも0.90のR二乗値を有し、対照レンズの放出プロファイルが、コンタクトレンズから放出可能なアニオン性薬剤の50質量%以上が3時間以下の時間で放出されるバースト放出を示し、放出可能アニオン性薬剤がオレイン酸である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
12. 包装溶液が、前記少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤と同じであるか又は異なる、追加の放出可能アニオン性薬剤を含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
【0069】
13. 約25μg~約1000μgの放出可能アニオン性薬剤が、高分子レンズ体に付着している、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
14. 約100μg~約300μgの放出可能アニオン性薬剤が、高分子レンズ体に付着しており、放出可能アニオン性薬剤がオレイン酸である、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
15. 包装が、
c. 包装溶液を保持する空洞を有するベース部材、及び
d. ベース部材との液密封止を形成するカバー
を含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズ。
【0070】
16. 25質量%~55質量%のシロキサンモノマーと、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートと、任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマーと、任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0071】
17. いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法であって、a)前記重合性組成物をコンタクトレンズ型中で重合させて、高分子レンズ体を得るステップと、b)高分子レンズ体を前記コンタクトレンズ型から取り出すステップと、c)高分子レンズ体を抽出溶媒中で抽出するステップと、d)高分子レンズ体を水和液中で水和させて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、e)前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液とともに包装中に封止するステップと、e)前記包装をオートクレーブするステップとを含み、抽出溶媒、又は水和液、又は包装溶液のうちの少なくとも1種が、少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含有する、方法。
18. 抽出溶媒が前記少なくとも1種の放出可能アニオン性薬剤を含む、いずれかの前述又は以下の実施形態/特徴/態様の方法。
19. 15質量%~65質量%の少なくとも1種のシロキサンモノマーと、25質量%~75質量%の少なくとも1種の非イオン性親水性モノマーと、0.5質量%~3質量%の3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートとを含む重合性組成物の反応生成物である高分子レンズ体を含む未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、in vitro放出アッセイにおいて試験した場合、少なくとも6μg/時の放出速度で少なくとも8時間にわたる放出可能アニオン性薬剤の実質的に線形の放出が可能であり、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートが、有利には、高分子レンズ体による放出可能アニオン性薬剤の取込み及び/又は持続放出を促進する、未装用の滅菌シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0072】
本明細書における開示はある特定の例示される例を指し、これらの例は、例として示され、限定としては示されないことを理解されたい。前述の詳細な記載の意図は、例示的な例について論じているものの、それらの例のすべての変形例、代替例、及び等価物を、追加の特許請求の範囲よって定義される通りの本発明の趣旨及び範囲内に入りうるものとして包含すると解釈するものである。
【0073】
本明細書における「例」又は「具体例」又は「態様」又は「実施形態」又は同様の語句への参照は、(文脈に応じて)カチオン性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ又はその成分、封止されたコンタクトレンズ包装又はその成分、又はカチオン性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法の1つ又は複数の特徴を導入することを意図し、これらは、特徴の特定の組合せが互いに排他的でない限り、又は文脈がそうでないことを示さない限り、先に記載した又は続いて記載される例、態様、実施形態(すなわち、特徴)のあらゆる組合せで組み合わせることができる。さらに、本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに記述していない限り、複数の参照(例えば、少なくとも1又は複数)を含む。したがって、例えば、「コンタクトレンズ」への参照は、単一のレンズ及び同じ又は異なるレンズの2つ以上を含む。
【0074】
本開示で引用したすべての参考文献の全内容は、それらが本開示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、文及び/又は段落で示される通り、上記及び/又は下記の特許請求の範囲に記載される様々な特徴又は実施形態のあらゆる組合せを含みうる。本明細書に開示の特徴のあらゆる組合せは、本発明の一部であると考えられ、組合せ可能な特徴に関する限定は意図されない。
【0075】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者には明らかとなろう。本明細書及び例は例示としてのみ考えられ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって示されることが意図される。
【国際調査報告】