(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】聴覚矯正システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/12 20060101AFI20241210BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B5/12
H04R25/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527089
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 SE2022051044
(87)【国際公開番号】W WO2023086000
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169010
【氏名又は名称】メリソノ・エービー
【氏名又は名称原語表記】MELISONO AB
【住所又は居所原語表記】Kyrkogatan 17,222 22 Lund,SWEDEN
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーマー、ベルント
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038AA04
4C038AB07
(57)【要約】
提示される新規な聴覚矯正システムは、聴力損失を評価する聴覚検査のためのデバイスおよび方法と、測定データを処理し、デジタル信号処理要素に設定を提供するソフトウェアと、動的補償を実行するデジタル信号処理トポロジとを備える。この新しい聴覚検査は、等ラウドネスの印象に基づいており、標準的な聴力検査によって行われるような聴覚閾値だけでなく、いくつかの音圧レベルでの聴覚能力を測定する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴覚評価及び/又は補正のためのデバイスであって、
前記デバイスは、方法を実行するために構成されたソフトウエアユニットを備え、前記方法は、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタを伴う、デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上の動的フィルタは、入力信号および少なくとも1つのパラメータに基づいて動的に変更され、好ましくは、前記1つ以上の動的フィルタは、音圧の変化に応じて増幅を変更する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
入力音圧は、経験された音レベルが完全に補償されるように増幅される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
入力音圧は、経験された音レベルが音響フィードバックによって設定された制限内で完全に補償されるように増幅される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記方法は、
-異なる音レベルで各使用周波数で多かれ少なかれ等しい等ラウドネスを提供するためにデータを処理し補償するステップをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記データを補償するために複数の動的フィルタが伴われ、好ましくは、前記データを補償するために2から20個の動的フィルタを伴う、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記方法は、デジタル信号処理を含む、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記方法は、各フィルタ周波数について動的に変化する増幅を決定することを伴う、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
特定の中心周波数で垂直な直線を引くことによってテーブルデータが収集され、好ましくは、異なる入力音圧での特定の周波数での入力信号の増幅を用いて、経験レベルと実際のレベルとの間の偏差からテーブルデータを作成する、請求項6から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記方法は、好ましくは1つ以上のフィルタブロックを伴うことによって、増幅データおよびフィルタ中心周波数のデジタル信号処理を含む、請求項1から9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
デジタル信号処理は、1つ以上のフィルタブロックを含み、好ましくは、各フィルタブロックは、個々の周波数を処理する、請求項7から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
伴われる各動的フィルタは、200Hzから12.8kHzの範囲の中心周波数を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
最大増幅は、1つ以上の周波数に対して、好ましくは各動的フィルタの中心周波数に対して決定され、より好ましくは、隣接するフィルタ帯域からの総増幅も考慮される、請求項6から12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
最大増幅は、音響フィードバックを回避するために制限される、請求項1から13のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記1つ以上の動的フィルタは、低次、好ましくは2次の広帯域フィルタであり、前記方法は、得られた総利得の制御を確実にするために、隣接周波数フィルタブーストの補償を伴う、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
聴覚回復プロセス内で増幅される必要がある各周波数に対して動的フィルタが設けられる、請求項1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記1つ以上の動的フィルタは、特定のフィルタ周波数で動的に変化する入力信号レベルに依存して動的に変化する利得で動作する、請求項1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
1つ以上のフィルタブロックは、バンドパスフィルタ、音圧検出器、および動的フィルタを備える、請求項10から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
帯域通過フィルタは、フィルタ除去するように構成され、前記検出器は、動的フィルタ周波数における信号レベルを測定し、他の周波数に存在する音信号を抑制するように構成される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記バンドパスフィルタは、低次、好ましくは2次を有し、より好ましくは1未満のQを有する、請求項18または19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記1つ以上のフィルタブロックは、利得テーブルをさらに備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記方法は、フォン関連データをspl関連データに置き換えることを備える、請求項1から21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
複数のフィルタブロックが使用される、請求項10から22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記方法は、少なくとも複数の測定されたテストデータ点の間の適合曲線を提供することによって、得られた測定されたテストデータ点を超えてモデルを拡張することと、次いで、前記得られた適合曲線の補間を提供することと、次いで、前記補間の導関数適合曲線を提供することと、好ましくは、前記補間の比較的低い音圧レベルにおける第1の導関数適合曲線と、前記補間の比較的高い音圧レベルにおける第2の導関数適合曲線とを提供することとを伴う、請求項1から23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記方法は、少なくとも複数の測定された試験データ点の間の適合曲線の提供を可能にするために、取得された測定された試験データ点の関係の外側にある前記取得された測定された試験データ点のデータ点を除去するためのフィルタリングステップを伴う、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
聴覚矯正システムであって、
-被験者に対して異なる周波数および音圧レベルで聴覚検査を行うように構成された聴覚検査と、前記聴覚検査は、前記異なる周波数および音レベルに対する検査音レベルおよび基準音に関するデータを得るために、前記基準音および検査音を使用し、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することを伴い、
-前記得られたデータを処理し、デジタル信号処理ユニットに設定を提供するように構成されたデータ処理ユニットと、
-動的補償を実行するように構成された前記デジタル信号処理ユニットとを備え、1つ以上の動的フィルタが前記データの前記動的補償に伴われる、システム。
【請求項27】
前記デジタル信号処理ユニットは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
請求項26または27に記載の聴覚矯正システムと、補聴器ユニット、ヘッドホンまたは音響再生システムとを備えるシステム。
【請求項29】
聴覚評価および/または補正のための方法であって、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタが伴われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
第二次世界大戦の終わりまでに、レイモンド・カーハートおよびノートン・キャンフィールドは、難聴を経験していた兵士のための聴覚病院を開始した。これらの病院では、彼らは聴覚検査に使用される電子オージオメータを開発した。オージオメータ試験の結果はオージオグラムと呼ばれた。テクノロジーおよび技術的デバイスは第二次世界大戦の終わりから大幅に改善されてきたが、オージオメータの基本的機能は今日まで同じままである。
【0002】
聴力損失および補聴器のフィッティングを評価するための現在最も一般的な聴覚検査は、純音聴力検査と呼ばれ、250Hzから8000Hzまでの8つの標準周波数で両耳の聴力の閾値を個別に測定する。検査の結果はオージオグラムに表示される。オージオグラムは、試験された周波数のそれぞれにおける聴覚の閾値を示す。
【0003】
補聴器ユーザと、補聴器を使用しようとした難聴を経験した人々とのインタビューにより、パターンが出現する。多くの人は、補聴器からの音の増幅に不満を表す。ほとんどの通常の補聴器ユーザは、低から中程度の音圧を有する環境においてダイアログ明瞭度で助けられると言っているが、一般に、わずかに高い音圧レベルでは、補聴器からの音は、特に高い周波数では大きすぎ、もろく、金属的になると考えている。補聴器を試したが、それらを使用しないことを選んだ人々は、大きく、もろく、金属的な音は耐え難いと考え、改善があったとしても、このかなりの欠点がそれを上回る。より高い周波数での大きく脆い音という普遍的な欠点を受け入れるためには、通常、ユーザにはかなりの高度難聴が必要とされるように思われる。
【0004】
一般的なオージオメータ検査とオージオグラムとの関連性は、人間の聴覚機構が本質的に入力に対して線形応答を示すという仮定に依存する。ある周波数で例えば20dBだけ上昇した聴覚閾値は、その周波数での全可聴ダイナミックレンジにわたって20dBの比例減衰を与えると仮定される。これは、明らかに完全には真実ではない。なぜなら、補聴器は通常、オージオグラムにおける聴覚閾値測定によって示される聴覚の喪失を完全に補償するようにプログラムされていないからである。
【0005】
オージオグラムデータに関連した補償レベルの主題をカバーする科学論文および公表された哲学がかなりの数存在する。非常に初歩的な合計は、測定された劣化の約半分から2/3が状況に応じて補償されるべきであるという結論を提供する。
【0006】
測定された上昇した聴覚閾値と最適に適用された補償との間の明らかに弱い関係を、理想的ではないユーザ経験フィードバックと共に考慮すると、補聴器における聴力損失のために現在使用されている測定および補償が最適ではないと疑う理由があるように思われ、新しい方法論が必要とされる。
【0007】
提示される新規な聴覚矯正システムは、聴力損失を評価する聴覚検査と、測定データを処理し、デジタル信号処理要素に設定を提供するソフトウェアと、動的補償を実行するデジタル信号処理トポロジとを備える。聴覚検査は、聴覚閾値だけでなく、いくつかの音圧レベルで聴覚能力を測定し、等ラウドネスの印象に基づく。デジタル信号処理トポロジは、測定された聴力損失および瞬間的な音圧レベルに基づいて動的に変化する増幅を提供する動的要素を利用する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、聴覚評価及び/又は補正のためのデバイスに向けられ、前記デバイスは、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、被験者が検査音レベルを基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての検査音レベルおよび基準音についてのデータを取得することとを備え、
ここで、データを補償するために1つ以上の動的フィルタが伴われる。
【0009】
上記に関連して、本発明によるデバイスは、携帯電話、PC又は他のコンピュータユニット、タブレット等のソフトウェアユニットを含むのに適した任意のタイプのデバイスであってもよいことに留意されたい。さらに、パーソナルサウンドアンプ製品などのパーソナルサウンドユニットも、本発明によってそのように具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
聴覚矯正システムの詳細な説明
一般的な純音聴力検査は、各耳の聴覚閾値データを有するオージオグラムを生成する。聴力損失を評価するための試験の妥当性は、上昇した聴力閾値が、測定された上昇に対応するレベルの知覚される低下に変換されるという仮定に基づく。換言すれば、聴覚閾値が特定の周波数で20dBだけ上昇する場合、その周波数での可聴ダイナミックレンジ全体にわたって20dBだけ音の対応する知覚される減衰があるという仮定がある。
図1は、図の左側に示された250Hzから始まり、右側の8kHzまでの8つの標準周波数(250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、3kHz、4kHz、6kHz、および8kHz)での、著しい聴力損失を有する人のオージオグラムからの聴力閾値データを示す。
【0011】
新しい聴覚矯正システムは、聴覚閾値に関する情報のみを提供する純音聴力検査とは著しく異なる、広いダイナミックレンジにわたって聴力損失を評価する新規な聴覚検査を使用する。この試験は、検査音と比較した基準音の知覚した等ラウドネス(Equal Loudness?)に基づく。検査音レベルは、試験者がそれを基準音と等しい大きさであると知覚するまで調整される。典型的には、基準音と検査音とは、0.5Hzの交番周波数で交互に再生される。交番周波数は、より高い周波数にもより低い周波数にも変更できることは明らかである。実現可能な範囲は、0.1Hzから2.5Hzである。2つの比較されるトーン間の交替は、自動であってもよく、手動制御下であってもよい。
【0012】
使用される等ラウドネスレベルは、異なる周波数及び音圧におけるISO226規格のレベルに基づく。検査音および基準音は、聴力検査のような純粋な正弦波トーンであってもよく、または、所望の試験周波数帯域に帯域幅が制限された他のタイプの音であってもよい。そのような音は、一例として、震音、ノイズ、または多数の周波数を含む任意のタイプの複雑な信号から構成されることがある。試験周波数帯域に適合する適切な帯域幅を有する任意のタイプの信号を使用することができる。
【0013】
標準的な聴力検査では、周波数範囲は、8つの周知の標準的な試験周波数帯域に分割される。図に示される等ラウドネス試験結果は、100Hzから10kHzの範囲の81個の周波数を使用する。この多くの試験周波数は、もちろん、重要ではなく、試験される周波数の数は、1から提示された81までの間のいずれか、またはそれ以上であることがある。好ましくは、試験周波数の数は5から35の範囲内であるべきである。試験頻度が少ないほど、試験対象が実施するのが容易であるが、提供される情報も少なくなる、より迅速な試験がもたらされ、適切なバランスが必要である。個々の試験周波数は、純粋な正弦波トーン、または、その周波数成分のほとんどが隣接する試験周波数の間の試験周波数帯域内に含まれる複合信号のいずれかであることがある。純粋な正弦波よりも広い周波数スペクトルを有する複雑なテスト信号は、試験周波数帯域内の聴覚能力についてより多くの情報を提供することができ、より少ない試験周波数を用いたテストにおいて特に有用である。等ラウドネス試験周波数範囲は、ISO226規格でカバーされる全ての周波数、すなわち、100Hz未満から20Hzまで、および10kHz超から12.5kHzまでに拡張することができる。等ラウドネスデータが利用可能であり、20Hzから12.5kHzよりもさらに広い周波数範囲を試験することが望ましい場合、試験周波数範囲は、当然ながらさらに拡張することができる。通常の条件下では、100Hzから12.5kHzの範囲が好ましく、多くの場合、100Hzから10kHzの範囲に低減することができる。例えば、聴力検査周波数範囲を250Hzから8kHzにさらに低減することも目的にかなっている。
【0014】
等ラウドネス試験は、典型的には、10dBの音圧レベル間隔で行われ、最低試験レベルは、基準周波数での被験者の聴覚閾値のすぐ上であるべきである。任意の他の音圧レベルの粒度は、例えば5dBまたは3dBのように、より近接して間隔を置かれても、15dBまたは20dBのように、より広く間隔を置かれても、使用されることができる。通常、被験者が基準周波数で聴力損失を有さないか、または低い場合、最低試験レベルは10フォンに設定される。被験者が基準周波数で難聴を経験する場合、最低レベルを増加させることができる。等ラウドネス試験は、通常、最大音圧レベル70フォンに制限され、試験を受ける人が聴覚損傷を引き起こす可能性のある音圧を受けることを回避する。もちろん、試験中の最高音圧を制限する他の制限はないが、70フォンレベルは、ほとんどの被験者が受けるのが快適であると感じ、安全限界内にある最高レベルであるように思われる。
【0015】
等ラウドネス試験は、被験者の聴覚閾値のすぐ上、すなわち0から10dB上、好ましくは5dB未満の検査レベルで、基準周波数および最小のもう1つ高い音圧レベルで実行されるべきである。より多くの音圧試験レベルは、テスト被験者の聴覚能力のより良い評価を提供する。少なくとも2つの音圧試験レベルが必要であり、通常は、10dBの音圧レベル間隔を有する4つのレベルが良好な結果をもたらす。より多くのレベルで検査を行うと、被験者が検査を行う負担が大きくなるため、より少ない音圧レベルで検査を行うことが望ましい。10dBの音圧レベル間隔を有する3つの試験レベルは、多くの場合、妥当な結果をもたらす妥当な妥協点を構成する。必要なレベルの数は、試験間の音圧レベル間隔に依存する。間隔が小さいほど、良好なデータを生成するために多くの試験が必要であり、間隔が大きいほど、少ない試験が必要である試験の数は、もちろん、2以上の任意の数であることがある。
【0016】
まず、被験者が、検査に使用される最低レベルの基準音を聞くことができることを確認する必要がある。この目的のために、選択された基準周波数で聴覚閾値を確立する通常の聴覚テストが使用される。被験者が基準頻度で高度難聴を患っていることが分かった場合、難聴がそれほど深刻でない別の基準頻度を選択することが有益であるかもしれない。基準周波数は、検査される周波数範囲のほぼ中央に位置するべきである。なぜなら、それは、被験者にとって等ラウドネス比較をより容易にするからである。しかしながら、周波数範囲の中間における聴力損失が深刻である場合、別の周波数への基準の移動は、有用な妥協点を提供することができる。比較を容易にする別の技術は、複数の基準周波数を利用するステップアプローチである。複数の基準周波数は、試験トーンと基準トーンとの間の周波数の距離を減少させ、比較を容易にする。基本的な1つの基準トーンテストは、周波数範囲の中間に基準トーンを置くことを目的とし、ステップアプローチは、少なくとも2つの基準トーンを使用するが、任意の数であってもよく、基準トーンは、テスト中の周波数範囲にわたってほぼ均等に拡散される。段階的アプローチでは、まず、基準トーンの等ラウドネスレベルがテストされ、すべての基準トーンが、聴力損失ができるだけ小さい周波数に位置する基準トーンから始まる同じ大きさを有すると知覚されるようにする。次に、試験トーンは、テストを完了するために、1つ以上の基準トーンと比較される。
【0017】
図2は、10フォン、20フォン、および30フォンのレベルでの正常な聴覚の人の等ラウドネス試験データを示す。試験は、880Hzの基準トーンを用いて実施され、試験トーンは、100Hzから10kHzまで81ステップで変化させた。基準トーンと試験トーンは、0.5Hzで自動的に交互に切り替わる。約1.8kHzを超える周波数では、すべてのレベルでグラフにいくつかの小刻みな動きが存在する。これらのより小さな小刻みな動きは、聴力損失または聴力偏差を意味しない。これらは、個人が経験するより高い周波数でのヘッドホン応答の通常の変動と、ISO226平均大きさデータからの被験者の特定の偏差との組み合わせである。ヘッドホン応答の変動は正常であり、試験対象の外耳および外耳道とのヘッドホンの相互作用に起因して生じる。最小の聴覚閾値の増加を示す非常にわずかな偏差は、3kHzのすぐ下の10フォングラフにおける小さなピークである。10フォン、20フォン、30フォンの間の知覚レベル差は、すべて10dBであり、これは、すべての周波数でグラフ間の10dBの均等な間隔によって示される。明らかに、人間の聴覚機構が入力レベルの変化に対して本質的に線形応答を示すというオージオメータ試験の仮定および基礎は、正常な聴覚を有する人に当てはまる。しかしながら、これは、後に示されるように、聴力損失を患う人々には当てはまらない。
【0018】
図3は、聴覚閾値よりわずかに高い最低等ラウドネス試験レベルでの、同じ人の等ラウドネス試験データ(赤色のグラフ(1))と比較した、著しい聴力損失を有する人の8つの標準周波数のオージオグラムデータ(青色のグラフ(2))を示す。局所的な小さな変動は別として、等ラウドネスデータとオージオグラムデータはよく相関し、等ラウドネス試験の有効性を検証する。
【0019】
図4は、有意な高周波数聴力損失を有する人についての、レベル10フォン、20フォン、30フォン、および40フォンでの等ラウドネス試験データを明らかにする。下のトレースは、880Hzの基準周波数での被験者の聴覚閾値のすぐ上またはその値である最低の10フォンレベルを示す。グラフは、右に、1kHzのすぐ上から始まる聴覚閾値の有意な上昇を示す。図の左側に、より低い周波数で、グラフは、予想される10dBだけ間隔を空けられる。約2kHz以上から始まるより高い周波数では、間隔は10dBよりも著しく小さい。300Hzでは、10から40フォントレースは、ほぼ40dBだけ分離され、これは、音圧レベルの増加に対応する。100Hzから1kHzの間の10フォントレースのわずかな上昇は、他のトレース間よりも20フォントレースに対してわずかに小さい分離を生成する。これは、最低の10フォンレベルで影響を及ぼす聴覚閾値のわずかな上昇によって引き起こされる。20フォン以上で上昇は消え、間隔は、いくつかの小さな局所的な偏差から正確に10dB離れている。聴覚閾値の著しい上昇がある2kHzを超えるより高い周波数では、10から40フォントレースは、わずか数デシベルだけ分離される。これは、例えば3kHzで、音圧レベルが、40dBだけ増加したと被験者によって知覚されるためには、数デシベルだけ増加する必要があることを明らかにする。非常に明らかに、音圧レベルが聴覚閾値を超えると、脳は上昇した聴覚閾値を根本的に補償し始め、耳/脳はもはや線形デバイスとして挙動せず、実際にはこの場合にはそれから非常に離れている。
【0020】
これは、上昇した聴覚閾値が、聴覚閾値を見ることによってのみ評価される線形聴覚挙動の仮定に依存する現在の標準的な方法を用いてフィッティングされた補聴器によって補償される場合に、明らかに大きな問題を生じる。測定された聴覚閾値上昇の約半分から2/3までの標準的な補償では、音は、より低いレベルおよび約2kHzを超える周波数では十分に増幅されず、より高いレベルでは増幅されすぎてしまう。
【0021】
図4の被験者は、専門的に適合された補聴器を入手したが、それらを使用していない。なぜなら、それらは、より低いレベルでは音声明瞭度に役立たないと知覚され、幾分高いレベルでは、より高い周波数を増幅しすぎるからである。
図4に示される聴覚試験データは、テスト被験者からの主観的分析を明確に支持し、主観的評価および報告された問題に対する客観的な説明を提供する。
【0022】
通常、聴覚閾値が上昇した周波数におけるダイナミックレンジ圧縮は、
図4に示された場合よりも小さいが、全ての被験者は、聴覚閾値が上昇した周波数において同様の動的圧縮を示す。我々が収集した全ての測定データを見ると、音が聴覚閾値を超え、その結果、聞こえる場合、脳が、より高い音圧レベルで上昇した聴覚閾値を自動的に補償することは明らかである。脳の補償は、
図4のように非常に劇的であるか、またはより小さいが、常にかなりの程度存在する。
図5、6、および7は、同様の圧迫挙動を有するさらに3人の被験者からの等ラウドネス試験データを示す。聴力損失があるより高い周波数で測定された圧縮は、依然として非常に有意であるが、
図4ほど劇的ではない。
【0023】
図7に示された等ラウドネス試験データは、専門的に補聴器を装着し、それらを毎日装着した被験者から得られたものである。図から分かるように、人は、より高い周波数で著しい聴力損失を有し、ダイナミックレンジの通常の圧縮が存在する。等ラウドネス試験データは、約150Hzから800Hzの低周波数範囲において、50および60フォンの高レベルで、多少異常な聴力損失も明らかにしている。標準的なオージオメータ試験およびオージオグラムは、この損失を明らかにせず、また、より高い周波数での動的圧縮の程度についての情報を提供しない。
図1から3に示されるオージオグラムデータは、
図3に示される最も低いレベルの等ラウドネス試験データと同じ被験者から得られたものである。完全等ラウドネス試験データを
図7に示す。
【0024】
図8に示される等ラウドネス試験データは、
図7と同じ被験者からのものであるが、等ラウドネス試験は、被験者が専門的に適合された補聴器を装着している間に実行された。
図7から
図8のトレース間の比較は、補聴器は、約1kHzから始まって、ますます高い周波数を増幅することを明らかにする。
図7の同じトレースと比較したときの4から5kHzでの
図8の20フォントレースは、これらの周波数で約25dBの増幅を示唆する。
【0025】
1kHzを超える周波数についての緩やかな上昇レベルによって見られるように、補聴器の増幅は20フォンでは低すぎ、この場合、補償は、
図3のオージオグラムに表示された測定された聴覚閾値の増加の約半分である。等ラウドネス試験における最高音圧レベル、60フォンでの増幅は、そのレベルでのより高い周波数でのトレースの緩やかな下降傾斜によって示されるように、高すぎる。実生活で経験される適度な音圧レベルである60フォンよりも高い音圧レベルでは、下方への傾きはさらに増加し、高周波増幅は非常に高くなる。
【0026】
補聴器が被験者の聴覚を正常に回復させた場合、等ラウドネス試験データは、
図2に示す正常な聴覚を有する人からのデータのように見える。明らかに、
図2および
図8の等ラウドネス試験データは非常に異なっており、補聴器は、被験者による聴力損失経験を適切に補償することができていない。被験者は、補聴器経験に対して、他の多くの補聴器ユーザと同じフィードバック、すなわち、低レベルでの高周波数の増幅が少なすぎること、および高音圧レベルでの高周波数の増幅が過剰であることを伝える。聴力損失が大きく、音声明瞭度を回復するのに役立つが、より大きな音のより高い周波数では増幅が高すぎるため、補聴器は依然として日常的に使用されている。等ラウドネス試験データは、主観的経験を客観的に説明する。
【0027】
図9は、再び、
図7から
図8と同じ被験者からの等ラウドネス試験データであるが、聴力損失は、
図7に示される等ラウドネス試験から導出された入力データを使用して、新規な聴覚矯正システムにおけるDSP部によって動的に補償されている。
図9を
図2に示された正常な聴覚を有する人からの等ラウドネス試験データと比較すると、補正が非常に良好であり、被験者の聴覚能力が本質的に正常な聴覚に回復したことが明らかである。これは、間違いなく、
図8に示された通常の補聴器からの結果に対する大きな改善である。
【0028】
図9は、約150Hzから800Hzの間の低周波数範囲における、より高いレベル、50および60フォンでの異常な聴力損失が、新規な聴覚矯正システムによって、わずかな痕跡のみを残して、ほぼ完全に除去されたことを示す。1kHzを超える高周波数補償は、ここでは線形であり、最低の20フォンレベルは、1kHzを超えて適切に増幅され、同時に、より高いレベルでの増幅は低減され、すべてのレベルで正常な聴覚の人の結果に等しい平坦な応答をもたらす。トレースはまた、動的圧縮を除去して、約10dBだけ均等に離間される。
【0029】
新規な聴覚矯正システムを使用する経験に対する被験者の主観的反応は、例外的に肯定的であり、増幅からの悪影響なしに非常に自然な音であると報告されている。音声明瞭度は、欠点なく大幅に向上し、音の経験は、眼鏡を着用することになぞらえられ、すべてが、より可聴な詳細を伴って著しく明瞭になり、全体として、知覚可能な欠点を伴わずにはるかに良好になる。
【0030】
図9に示される等ラウドネス試験データを得るために使用される補償は、200Hzから12.8kHzの6つの動的フィルタを使用する。フィルタの中心周波数は、200Hz、800Hz、1.6kHz、3.2kHz、6.4kHz、および12.8kHzである。聴力損失を補償するために必要なフィルタの数は、個人によって異なり、1つだけから数百までの任意の数のフィルタが考えられるが、実際の用途では、1から20個の範囲のフィルタが好ましい。最も正常な補正は、1から8個のフィルタを使用して解くことができる。フィルタの中心周波数は、もちろん、必要な補正に適合するように変更することもできる。上述の中心周波数は、この特定の場合には必要とされなかった2つの欠落した400Hzの全ての倍数である。フィルタは通常ある程度重なり合い、全てのフィルタからの合成増幅を計算するときにフィルタの増幅間の相互作用を考慮する必要があるので、中心周波数の均等な広がりは必要ではないが好ましい。均等な広がりは計算を容易にする。中心周波数間の2の乗算係数は、他の任意の値に変更することができる有用かつ適切な数の一例にすぎない。
【0031】
聴覚矯正システムにおけるソフトウェアアルゴリズムは、
図7に示される等ラウドネス試験データを使用して、
図9に示される等ラウドネス試験データを達成するための補償を実行するDSP部への入力を生成する。各フィルタの中心周波数における最大増幅レベルが決定され、隣接するフィルタ帯域からの総増幅が考慮される。最大増幅はまた、目標デバイスが、音響フィードバックが発生することがある補聴器である場合に音響フィードバックを回避するためにアルゴリズムによって制限される。マイクロフォンフィードバック経路がなく、したがってフィードバックのリスクがない純粋な再生アプリケーションでは、これは必要ではない。各フィルタ周波数に対してソフトウェアアルゴリズムによって生成されたテーブルは、動的に変化する増幅を決定するためにDSP部によって使用される。
図10は、
図9の補償を達成するために使用される各フィルタに対するアルゴリズムから出力されるフィルタテーブルデータを示す。
【0032】
図10において、入力音圧レベルはX軸上にフォンで表示され、増幅はY軸上にdBで表示される。1600Hzの表データを示すグラフを見ると、0フォンでの最大増幅は20dBよりもわずかに小さいことが分かる。増幅は徐々に減少し、約70フォンで0dBに達し、すなわち増幅はない。入力音圧レベルは、各フィルタ帯域において個々に測定され、すなわち、1600Hzに純音がある場合、1600Hzにおける増幅が主に影響を受ける。0フォンでは、3200Hzのテーブルデータは、この場合、音響フィードバックを回避するように設定される最大35dBである。35dBの制限は、使用される補聴器のフィードバック特性に応じて、より高くても低くてもよいことは言うまでもない。この制限は、周波数によっても変化し得るが、この例では、全ての周波数に対して35dBに設定される。35dBという値は、フィードバックを公平にキャンセルすることができる平均的な最新の補聴器によって達成することができる妥当な値である。3200Hz増幅テーブルデータは、1600Hzテーブルよりもわずかに高いレベルで0dBであり、80フォンのすぐ下である。6400Hzおよび12800Hzのテーブルデータは、入力音圧レベルに対してより高い増幅を示すにもかかわらず、1600Hzおよび3200Hzと同様である。200Hzと800Hzのテーブルデータは、入力音圧レベルの増加に伴って振幅を徐々に減少させる代わりに、入力音圧レベルの増加に伴って増幅を増加させる点で異なる。これは、
図7に示されるより高い音圧レベルでのより低い周波数における聴力損失を補償するために必要である。
【0033】
典型的な補聴器の実施はまた、最大音圧を低減するために、出力上のDSPに適用されるリミッタを必要とする。リミッタは、再生された音圧を安全限界内に維持し、出力デバイスの動的再生範囲内に留まるようにレベルを制限することで、聴覚損傷のリスクを防止する。
【0034】
各周波数のテーブルデータは、
図7に示される等ラウドネス試験データから計算される。入力音圧は、音響フィードバックによって設定された制限内で適用可能である場合に、経験されたレベルが完全に補償されるように増幅される。本質的に、テーブルデータは、
図7の特定の中心周波数で垂直な直線を引くことによって収集され、各入力音圧レベルについて垂直線に沿って示されるような経験レベルと実際のレベルとの間の偏差からテーブルデータを作成する。測定された等ラウドネス試験データの上限レベルは制限されているので、試験の限界を超える音圧のテーブルデータは外挿されなければならない。データを外挿する1つの可能な方法は、利用可能な試験データへの多項式フィッティングによるものであり、一次多項式適合が実際の試験で使用され、良好な結果が得られている。明らかに、拡張データを外挿するための多数の方法があり、多項式適合は、有効であることが証明された単なる例である。
【0035】
しかしながら、複数の工程を含むより正確な方法が好ましい。取得された聴覚データは、多少不規則であり、上下に変動し、一例として、
図4から
図6のトレース上の小刻みな動きによって見ることができる。小刻みな動きは、部分的には測定セットアップにおける周波数偏差によるものであるが、試験におけるヒューマンエラーおよび不確実性にも関連する。これらの図の高い周波数で右に見られる動的圧縮の変化は、周波数およびレベルに依存する傾向から上下に変化する不規則な圧縮を示す。試験を何度も繰り返すと、これらの変動は均一になり、消失するが、実際にはこれは不可能である。この試験手順は、試験者にとって精神的に困難であり、しばらくすると精神的疲労が始まり、その結果、精度が低下する。正確さを取り戻すために、試験者は、かなりの休憩を必要とし、試験の多くの反復は、数日間にわたって試験期間を延長するリスクを冒し、これは、明らかに望ましくなく、かなり次善である。
【0036】
聴覚回復製品において有効な1つの方法は、精度を最大化し、利用可能なデータを最大限に利用することであり、以下に説明される。方法は、5つのステップを使用する。最初の3つのステップは、
図14のトレースを見ることによって理解することができる。トレース1は、40dBで開始して70dBで終了する各10dB増分で1つずつ、4つの生の測定データ点を接続している。第1のステップは、測定された4つの点をはるかに超えてサンプル点の数を拡張し、一般的な基礎となる傾向からの測定されたデータの変動を均一にすることである。これを数学的に行うための多くの可能な方法があり、2つの可能な解決策は、生データ点間の三次スプラインデータ補間または線形一次多項式補間を使用し、その後、新しい補間されたデータの複数次線形位相FIR平均フィルタリングを行うことである。補間は、40dBから70dBのダイナミックレンジにわたって所望の数のデータポイントを生成することができ、この場合、データポイント間に0.5dBの間隔が使用される。
図14のトレース2は、線形補間および線形位相FIRフィルタリングを使用して拡張されフィルタリングされたデータを示す。
【0037】
第2のステップは、ダイナミックレンジを最低測定レベル、40dBより下に拡張することである。この目的のために、トレース2によって表示される補間されフィルタリングされたデータの第1の部分が使用される。補間され、フィルタリングされたデータの最初の導関数に対して、直線導関数適合が行われる。次いで、直線を使用して、データを40dB未満に拡張することができる。トレース3は直線を示す。同様に、第3のステップでは、トレース2によって表示される補間されフィルタリングされたデータの最後の部分を使用して、補間されフィルタリングされたデータの終わりの導関数に対して直線導関数適合を実行する。70dBを超えるデータ点を拡張するために使用することができる、結果として得られる直線は、トレース4によって示される。
【0038】
図15は、0dBから110dBまでの全体のダイナミックレンジを示す。
図14と同様に、トレース1は測定データ点であり、トレース2は線形補間および線形位相FIRフィルタリングを使用して拡張されフィルタリングされたデータであり、トレース3は適合された下位レベル範囲の直線であり、トレース4は適合された上位レベル範囲である。
図15を見ると、トレース3がどのように使用されて40dB以下のレベル範囲を0dBまで拡張するか、またトレース4がどのように使用されて70dB以上の範囲を拡張するかが理解できる。また、測定データに対する単純な一次多項式適合、すなわち直線は、この場合には正確な結果を生じなかったことも理解されることができる。測定データは、400Hzで測定される、一般にクッキーバイト難聴と呼ばれるものを患っている人から収集される。通常の場合のように高いだけでなく、低いレベルでも増幅が少なくて済むという点で、幾分異常である。データは、いくつかの試験にわたって正確であることが検証され、そのため、測定は、驚くべきことではあるが、正しい。
【0039】
図16は、方法の最初の3つのステップからの結果の別の例を示す。データは、4つのレベルで40dBと70dBとの間で2400Hzで測定される。ここでも、トレース1は測定データ点であり、トレース2は線形補間および線形位相FIRフィルタリングを使用して拡張およびフィルタリングされたデータであり、トレース3は適合された下位レベル範囲の直線であり、トレース4は適合された上位レベル範囲である。
図17は、このデータの0dBから110dBまでの拡張されたダイナミックレンジを示す。
【0040】
図18は、本方法の第4のステップを示す。聴覚経験を回復するために必要な利得は、人間の大きさ経験に関連し、dBsplで測定される技術的音圧レベルに関連しないフォンレベルで測定される。音圧レベルは、全ての周波数において20μPaを基準とし、すなわち、20μPaの音圧は、全ての周波数において0dBsplに等しい。1dBフォンは、1kHzで1dBsplに相当すると定義されるが、このとき、相当する音圧力レベルは、周波数および音圧力レベルに応じて大きく変化する。一例として、100Hzでの20dBフォンは、約28dBsplに等しい。DSPにおいて有用な利得テーブルデータを作成するために、フォン関連データは、最初に、数学的にspl関連データに転置されなければならない。トレース1は、上述のように40dB未満及び70dB超の抽出データが追加された測定及び抽出情報に基づく0dBから110dBの全ダイナミックレンジにわたる転置利得テーブルデータを示す。テーブルデータセットは、0dBの最小利得および最大許容利得に制限される。最大利得は、通常、音響フィードバックを回避するために適切なレベルに設定されるが、この場合、最大必要増幅が約34dBにしか達しなかったので、上限を適用する必要はなかった。
【0041】
利得制限を適用した後、テーブルデータのフィルタリングが実行される。フィルタリングされたテーブルデータは、トレース2によって表示される。フィルタは、複数次線形位相FIR平均フィルタリングである。フィルタステップは、クリックノイズのような可聴アーチファクトを引き起こす可能性のある急激な利得変化を回避するために使用される。
【0042】
本方法の最後の第5のステップでは、隣接フィルタ利得寄与が管理される。後述するように、フィルタの帯域幅は非常に狭くすることはできず、その結果、フィルタ間の利得漏れが生じる。フィルタに課される厳しい時間領域要件は、隣接する周波数においてゼロdBよりも著しく大きい利得を生成するのに十分な広さのフィルタ帯域幅を要求する。例えば、2つの隣接する周波数1kHzおよび2kHzにおけるフィルタを考える。これらの周波数のそれぞれにおいて、測定された聴力損失を回復するために6dBの増幅が必要とされる。1kHzのフィルタは、+6dBの1kHzの利得を加えるように設定され、2kHzの他のフィルタは、+6dBの2kHzの利得を加えるように設定される。残念ながら、1kHzのフィルタは2kHzで+2dBの利得を生成し、2kHzのフィルタは1kHzで+2dBの利得を有する。各周波数で利得を+6dBに単に設定することは、1つのフィルタから他の隣接する周波数への利得漏れのために、1kHzと2kHzの両方で+8dBの合計利得を生成することになる。フィルタが、0.96のQと、それぞれ1kHzおよび2kHzの中心周波数とを有する通常の2次パラメトリック等化器であり、これが、今説明したように隣接周波数において+2dB利得を与える場合、約4.5dBの利得設定は、1kHzおよび2kHzにおいて所望の+6dB利得を生成する。
【0043】
図19は、左の軸に周波数、右の軸に音圧レベル、高さの軸に必要な増幅の3Dグラフを示す。高さ軸は、各周波数および音圧レベルで測定された聴力損失を回復するために必要な増幅を表示する。聴覚回復システムの音圧レベルおよび周波数に関する動的利得挙動は、図で研究することができる。図には7つの個別のブースト周波数がある。各ブーストは、
図11のフィルタブロックと、フィルタブロック内の動的フィルタとによって提供される。
図19のダイアグラムの周波数のそれぞれで利得を生成するフィルタは、上述のように、隣接するブースト周波数帯域にまたがって広がる広帯域フィルタでなければならない。したがって、隣接周波数フィルタブーストを考慮しなければならず、そうでなければ、総利得が著しく大きくなりすぎる。
【0044】
図20は、総利得を考慮に入れない、現実的で適切な帯域幅を有する隣接するフィルタからの利得の合計を示す。
図20のレベルを
図19の所望のレベルと比較すると、総増幅は、約+35dBであるべきであったいくつかのエリアにおいて+90dBを上回る、はるかに大きすぎる利得を生成することが非常に明らかになる。明らかに、利得テーブルを生成するときに隣接フィルタ利得寄与を考慮に入れることは非常に重要である。
【0045】
テーブル増幅データおよびフィルタ中心周波数は、ソフトウェアアルゴリズムからDSP部にインポートされる。DSP部は、動的に変化する増幅を提供する1つ以上のフィルタブロックを含み、それぞれは、個々の周波数範囲を処理する。
図11は、左から、レベル検出器の前の周波数範囲を制限するバンドパスフィルタと、瞬間入力音圧レベルを検出するレベル検出器と、アルゴリズムからのテーブルデータを使用し、現在の入力レベルを動的フィルタ内の利得設定に変換する利得テーブルとを含有する、例示的フィルタトポロジを示す。動的フィルタは、利得テーブルデータ入力に従ってフィルタブロックの周波数帯域内の音を増幅する。
【0046】
フィルタブロックは、当然ながら、
図11に示されるもの以外のトポロジを使用して構築されることができ、例は、多くの可能な実装のうちの1つにすぎない。
【0047】
上述の利得テーブル以外の手段を用いて、動的フィルタの音圧レベル依存利得を決定することができることは明らかである。多項式又は他の何らかのタイプの数式を代用として使用することができ、利得テーブルは単に実現可能な実施手法の一例として機能することを理解することは容易である。
図11に示される利得テーブルは、そのような場合、動的フィルタ利得を得るために使用される適用される代替方法によって置換される。
【0048】
聴覚回復プロセス内で増幅される必要がある各周波数において、動的フィルタが必要とされる。動的フィルタは、フィルタ周波数で動的に変化する入力信号レベルに依存して動的に変化する利得で動作している。動的フィルタには、多くの基本的なフィルタトポロジが考えられる。例えば、IIRトポロジ、FIRトポロジ等、またはそれらの組み合わせである。フィルタのタイプにかかわらず、フィルタ帯域幅と時間領域応答との間には常に直接的な関係がある。より狭い帯域幅を有するフィルタは、より広い帯域幅を有するフィルタと比較して、より不十分な時間領域応答を有することになる。フィルタの帯域幅が減少するにつれて、フィルタ出力に存在するリンギングが次第に多くなる。また、フィルタへの過渡入力信号後の出力応答は、より広い帯域のフィルタよりも狭い帯域幅のフィルタによって、より緩慢になり、遅延される。フィルタ次数も時間領域応答に同様の影響を与え、高次フィルタは、より良好な阻止帯域減衰または通過帯域利得をもたらすが、より不十分な時間領域挙動を示す。
【0049】
人間の聴覚は時間領域の異常に敏感であり、大きなリンギングと遅い応答時間を有するフィルタは、明らかに可聴音の劣化を引き起こす。聴覚の改善を目的とする製品およびシステムにおいては、音の劣化は明らかに許容されず、したがって、十分に広い帯域のフィルタが必要とされる。前述の1kHzおよび2kHzフィルタが、それらの各々が隣接周波数で0.1dBの利得しか与えないほど十分に狭い場合、それらは6dB利得で約5.3のQを有さなければならない。これは、入力信号ステップ後のフィルタ出力上で10msを超える大きなリンギングを引き起こす高いQであり、それは、音を聴覚的に明らかに劣化させる。
したがって、はるかに低いQ値を有するフィルタが必要とされ、1未満のQを有するフィルタははるかに良好に挙動し、唯一の重大な欠点は、隣接するフィルタ利得寄与が補償されなければならないことである。
【0050】
動的フィルタと同様に、レベル検出器の前に使用されるバンドパスフィルタの時間領域挙動は重要である。バンドパスフィルタは、動的フィルタ周波数で信号レベルを測定し、他の周波数で存在する音声信号を抑制するために必要とされる。高いQフィルタ出力は、入力信号を十分に追跡せず、検出されたレベルは、フィルタ出力リンギングおよび遅い応答のために正確ではない。したがって、バンドパスフィルタは、低次、好ましくは2次でなければならず、Qは1未満でなければならない。機能的には、バンドパスフィルタと動的フィルタが一致する帯域幅を有する場合にも利点がある。
【0051】
信号忠実度を維持しながら、標準的なビルディングブロックを使用してデジタル領域において動的フィルタを構築することは、容易ではない。遍在的に使用される無限インパルス応答、IIR、フィルタおよび有限インパルス応答、FIR、フィルタは、動的に変化するフィルタ係数に対して予測可能に良好に挙動しない。これらのフィルタのいかなる組合せもない。IIRフィルタは、選択されたDSP実装トポロジにかかわらず、乗算のために全体を通して使用される異なる遅延長および係数を有するネストされたフィードバック経路を通して動作する。例えば、共通のIIR双二次ビルディングブロックは、5つの係数と、前のサンプルサイクルからのデータを保持する4つの遅延要素とを備える。IIRフィルタへのゼロ以外の任意の入力信号は、時間とともに次第に減少する出力上のインパルス応答を生成する。テール時間は、定義上無限であるが、実際には、出力応答は、DSP計算のビット深度制限精度における誤差の丸め込み、または入力信号に存在する実際のノイズフロアのいずれかを通して、最終的にノイズフロアに落ちる。テーリング信号の長さは、選択されたフィルタ次数およびQに依存し、高次フィルタおよび高Qフィルタは、より長いテールを有する。FIRフィルタは、そのフィルタ構造内に、前のサンプルからのデータと多数の係数とを保持する同様の遅延要素を有する。このフィルタは、入れ子になったフィードバックループに依存せず、有限数の遅延要素とフィルタ長によって定義される係数とを使用する。フィルタの有限長さ、サンプル数は、また、テーリング応答を同じ有限長さのサンプルに制限する。有限のテーリング応答は有益であると思われるが、IIRと比較したFIRフィルタの重大な欠点は、それらが導入する待ち時間である。FIRフィルタは、常に、有限長のサンプル数だけ出力信号を遅延させるが、これは、フィルタが長い場合には、聴覚回復システムのようなリアルタイムアプリケーションにおいて非常に厄介なものとなる。人間は、待ち時間に敏感であり、10分の数ミリ秒でさえも、明らかに知覚可能であり、視覚的印象に関して正しい時間に発生しない音は、アプリケーションにとって許容できない、全く奇妙で混乱させる感覚をもたらす。
【0052】
入力信号がゼロになった後の任意のフィルタの出力におけるテールは、フィルタ内の遅延素子に蓄積されたエネルギーの尺度である。パラメータからフィルタ係数を計算するために使用されるフィルタモデルおよび式は、フィルタ構造が最初にゼロの定常状態にあると仮定し、入力信号がゼロになった後、異なる遅延長またはFIRフィルタの場合のフィルタ長を有する入れ子状のフィードバック経路のために、おそらく数百のサンプルを処理した後にのみ到達する。それがIIRフィルタであるか、FIRフィルタであるかにかかわらず、フィルタ内に蓄積されたエネルギーは同様であり、フィルタ内でゼロの定常状態に達するのに必要なサンプルの数は、多かれ少なかれ同じである。
【0053】
リアルタイム聴覚回復アプリケーションでは、フィルタは、常に入力信号が存在するので、フィルタ自体の中で定常状態ゼロに達することはない。フィルタパラメータの更新は、フィルタ構造内にエネルギーが存在する間に常に行われる。フィルタパラメータが時々、例えば10秒に1回更新された場合、これは大きな問題ではないが、動的フィルタは、より頻繁に、潜在的にはサンプルごとに更新されなければならない。サンプルレートから遠く離れていないレートで、またはサンプルレートに近づいているレートで係数を更新すると、著しい歪みが生じる。更新された係数はフィルタに記憶された古いデータと乗算され、その結果、記憶されたデータがフィルタ構造を通って伝播するのに要する限り、フィルタからの出力は誤ったものとなる。係数がサンプル毎に更新される場合、歪みは非常に大きくなる。
【0054】
Hal Chamberlinによって開発されたデジタル積分器カスケード技術に基づいて構築されたフィルタは、動的な用途におけるIIRおよびFIRフィルタの代替である。これらのフィルタは、歪みがはるかに少ない動的更新により適しているが、共振が導入されると、フィルタ応答はあまり正確ではない。これらのフィルタの基本的な積分器の形態は、限られたフィルタのセットしか生成することができず、Q値、すなわち共振を有する2次フィルタは、それほど正確ではない。したがって、ゲームソフトウェアなどのリアルタイムの動的アプリケーションで一般的に使用されるが、それらの特性は、聴覚回復システムではあまり理想的ではない。
【0055】
図21は、上述したフィルタ係数の動的更新によって生じる欠点を持たない代替構造を使用した、
図11に存在する動的フィルタブロックの実現可能な実装を示す。この構造は、所望のブースト周波で利得を加える固定IIRフィルタ、固定IIRブーストフィルタを使用する。このフィルタは、明らかに、別のタイプのフィルタまたはフィルタの組合せで置換されることができ、IIRフィルタは、適切な例にすぎない。フィルタの係数は、最大必要ブーストが常にフィルタによって提供されるように静的に設定される。一例として、
図18の利得テーブルは、約34dBの最大利得が必要であり、したがって、この場合、フィルタ利得は34dBに設定されることを示す。
図21の左側には、動的フィルタ構造への入力信号、オーディオ信号入力および利得テーブル入力がある。オーディオ信号入力は明らかにオーディオ入力信号であり、利得テーブル入力は動的フィルタへの利得制御入力である。利得制御入力信号は、必要とされる動的に変化する利得に応じて0と1の間で変化する。信号が1であるとき、動的フィルタは出力に最大利得を生成し、0であるとき、動的フィルタは、利得が全く適用されずにオーディオ信号を通過する。利得制御信号は、オーディオ入力信号を利得制御信号で乗算する乗算器1に供給される。利得制御信号は、また、定数値1から減算された後、乗算器2に供給される。減算後の利得制御信号は、1と0との間で変化し、すなわち、乗算器1への利得制御信号が1であるとき、乗算器2への信号は0であり、乗算器1への利得制御信号が0であるとき、乗算器2への信号は1である。乗算器1から出力されたオーディオ信号は、最大利得を適用する固定IIRブーストフィルタに供給され、固定IIRブーストフィルタからの出力は加算器、Add、に供給されて、信号と乗算器2からの出力とを合計する。乗算器1および乗算器2からのオーディオ信号出力の合計は、常に入力オーディオ信号と同じになるが、乗算器1および乗算器2から出るものの間の比は、動的フィルタへの利得制御入力信号に応じて変化する。動的フィルタへの利得制御入力信号を変更することによって、乗算器2からの未修正であるが利得制御された出力の異なる混合が、乗算器1からのブーストされた出力と共に加算される。動的フィルタへの利得制御入力信号を介して信号比を変化させることにより、動的フィルタによって与えられるブーストは、ゼロから最大ブーストまで変化させることができる。これは、全く歪みを加えることなく、2つのオーディオ信号の単純な混合の変化を通じて達成される。
【0056】
多くの場合、DSP部は、2つ以上のフィルタブロックを使用し、フィルタブロックを組み合わせる2つの明白な方法、すなわち、シリアルトポロジまたはパラレルトポロジがある。
図12は、シリアルトポロジの例を示し、
図13は、パラレルトポロジを明らかにする。当然ながら、
図12から
図13に示されるもの以外のトポロジを使用して、多くの組み合わされたフィルタブロック構成を構築することができる。
【0057】
レベルとともに増幅が増加する説明される聴覚矯正システムの例では、2つの周波数、200Hzおよび800Hzがあるが、ほとんどの場合、レベルが増加すると増幅が減少する。より高い入力レベルでの増幅のこの動的な減少は、常に音響フィードバックのリスクがある補聴器および同様の用途において明らかな利点を提供する。フィードバックがあり、フィードバック周波数におけるレベルが増加する場合、増幅は自動的に低減され、その結果、フィードバックを低減し、それを低レベルに制限する。これに対して、固定利得システムは、明らかに非常に不快であり、積極的に防止し回避する必要があるシステムからの最大出力に達するまで、フィードバックを増加させるだけである。
【0058】
現代の補聴器はすべて、さまざまな種類のフィードバック低減技術を使用している。積極的なフィードバック低減システムは、聴覚上の不規則性を生じさせて補聴器の音質を低下させるリスクがある。より積極的であればあるほど、リスクはより大きくなる。新規な聴覚矯正システムのより高いレベルでの利得の自動低減は、フィードバック低減システムにかかる負担をより少なくし、一定の利得を有するシステムにおいて必要とされるほど積極的である必要はない。
【0059】
説明された聴覚矯正システムは、補聴器に適用可能であるだけでなく、任意の音再生システムと共に使用されることができる。このようなシステムは、任意のタイプのスピーカ又はヘッドホンを使用することができる。聴覚矯正システムは、聴取者の耳における出力レベルが既知である場合、すなわち、ある音再生システム出力が、聴取者によって経験される既知の音圧レベルを生成する場合、適切に機能するであろう。聴覚矯正システムのほとんどのアプリケーションは、リアルタイムアプリケーションのために、何らかの形態のリアルタイムデジタル信号処理を利用する。しかしながら、聴覚矯正システムの補償を用いてオーディオ素材を前処理し、それによって個人的に補償されたオーディオのライブラリを作成することは完全に可能である。
【0060】
デジタル信号処理は、純粋なハードウェア実装から純粋なソフトウェア/ファームウェアまたはその2つの混合まで、多くの方法で実装されることができる。説明された例におけるDSP機能は、デジタル信号プロセッサのために書かれたコードを使用する。DSP部への入力データを生成する、説明された聴覚テストおよびアルゴリズムは、パーソナルコンピュータ上で実行されるソフトウェアで実装される。ソフトウェアは、当然ながら、電話、タブレット、または他のデバイス等の任意のコンピューティングシステム上で起動するように実装されることができる。また、新しい聴覚矯正システムのためのオージオメータに似た専用のターゲットシステム上で実施することもできる。
【0061】
システムのデジタル信号処理部分は、典型的には、リアルタイムアプリケーションにおいて、補聴器またはヘッドホン内に物理的に実装される。電話、タブレット、TVセット、ヘッドホン増幅器、又はコンピュータに実装して、一般に任意の通常のヘッドホンを使用して通話品質及び音再生を向上させることもできる。また、車内の人の一般的に固定された物理的位置により、システム出力と聴取者の耳における音圧との間の関係が予測可能である、車内の音響再生システム内に実装することもできる。
【0062】
これらの構成はすべて、例として提供されるにすぎず、多くの他の可能な実装シナリオが明らかに想定されることができる。
【0063】
発明の実施形態
以下に、本発明のいくつかの実施形態を提供し、さらに説明する。
【0064】
一実施形態によれば、前記1つ以上の動的フィルタは、入力信号および少なくとも1つのパラメータに基づいて動的に変更され、好ましくは、前記1つ以上の動的フィルタは、音圧の変化に応じて増幅を変更する。
【0065】
一実施形態によれば、入力音圧は、経験された音レベルが完全に補償されるように増幅される。
【0066】
さらに、さらに別の実施形態によれば、入力音圧は、経験された音レベルが音響フィードバックによって設定された制限内で完全に補償されるように増幅される。
【0067】
さらに、一実施形態によれば、本方法は、異なる音レベルで各使用周波数において多かれ少なかれ等ラウドネスを提供するためにデータを処理し補償するステップも備える。
【0068】
さらに別の実施形態によれば、複数の動的フィルタがデータを補償するために伴われ、より好ましくは、2から20個の動的フィルタがデータを補償するために伴われる。
【0069】
上記から理解されるように、適切には、方法はデジタル信号処理を含む。さらに、さらに別の実施形態によれば、本方法は、各フィルタ周波数について動的に変化する増幅を決定することを伴う。このステップは、測定されたデータおよび入力音圧レベルに応じて、増幅を増加および/または減少させることを伴ってもよい。
【0070】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本方法は、各フィルタ周波数に対して動的に変化する増幅を決定することを伴う。
【0071】
さらに、一実施形態によれば、テーブルデータは、特定の中心周波数で垂直な直線を引くことによって収集され、好ましくは、異なる入力音圧での特定の周波数での入力信号の増幅を用いて、経験レベルと実際のレベルとの間の偏差からテーブルデータを作成する。
【0072】
さらに、一実施形態によれば、本方法は、好ましくは1つ以上のフィルタブロックを伴うことによって、増幅データおよびフィルタ中心周波数のデジタル信号処理を含む。
【0073】
本発明によるテストは、調整される必要がある周波数/周波数範囲を識別するために使用されてもよく、フィルタは、次いで、これらを調整するために使用される。中心周波数は、固定されてもよく、または測定されたデータに基づいて調整されてもよい。
【0074】
本発明のさらに別の実施形態によれば、デジタル信号処理は、1つ以上のフィルタブロックを含み、好ましくは、各フィルタブロックは、個々の周波数を処理する。
【0075】
さらに、別の実施形態によれば、関与する各動的フィルタは、200Hzから12.8kHzの範囲の中心周波数を有する。
【0076】
さらに、一実施形態によれば、前記1つ以上の動的フィルタは、低次、好ましくは2次の広帯域フィルタであり、ここで、方法は、得られた総利得の制御を保証するために隣接周波数フィルタブーストの補償を伴う。
【0077】
さらに、もう1つの実施形態によれば、聴覚回復プロセス内で増幅される必要がある各周波数のための動的フィルタが提供される。さらに、一実施形態によれば、前記1つ以上の動的フィルタは、あるフィルタ周波数で動的に変化する入力信号レベルに依存して動的に変化する利得で動作している。
【0078】
本発明の別の実施形態によれば、最大増幅は、1つ以上の周波数に対して、好ましくは各動的フィルタの中心周波数に対して決定され、より好ましくは、隣接するフィルタ帯域からの総増幅も考慮される。
【0079】
各フィルタは、ある帯域幅を有し、異なるフィルタの帯域幅は、重複してもよい。例えば、フィルタ1が1kHzの中心周波数を有し、フィルタ2が2kHzを有する場合、これは、1kHzにおけるよりもかなり低い増幅だとしても、フィルタ1は、2kHzにおける周波数のある増幅に寄与することができる。この点に関して、本発明によれば、総増幅が必要とされるかもしれない。
【0080】
さらに、本発明のさらに別の実施形態によれば、最大増幅は、音響フィードバックを回避するように制限される。
【0081】
フィルタブロックは、本発明による異なる構成要素を備えることができる。一実施形態によれば、前記1つ以上のフィルタブロックは、バンドパスフィルタ、音圧検出器、および動的フィルタを備える。一実施形態によれば、バンドパスフィルタは、フィルタ除去するように構成され、検出器は、動的フィルタ周波数における信号レベルを測定し、他の周波数に存在する音信号を抑制するように構成される。
【0082】
さらに、別の実施形態によれば、バンドパスフィルタは、低次、好ましくは2次、より好ましくは1未満のQを有する。
【0083】
さらに、前記1つ以上のフィルタブロックは、利得テーブルを備えてもよい。利得テーブルは、音圧から利得に変換するための1つの可能な方法として実装されてもよい。しかしながら、本発明によれば、他の代替例も可能であることに留意されたい。さらに、もう1つの実施形態によれば、複数のフィルタブロックが使用される。これらは、直列または並列に、あるいはそれらの組み合わせで構成されてもよい。
【0084】
さらに、もう1つの実施形態によれば、本方法は、フォン関連データをspl関連データに転置することを備える。
【0085】
さらに、
図14-18に関連して上記に例示されたように、本発明による方法は、測定エリアの外側でスマートデータを処理するための数値的方法を伴うこともできる。これに沿って、一実施形態によれば、本方法は、少なくとも複数の測定された試験データ点間の適合曲線を提供することによって、得られた測定された試験データ点を超えてモデルを拡張することと、次いで、得られた適合曲線の補間を提供することと、次いで、補間の導関数適合曲線を提供することと、好ましくは、補間の比較的低い音圧レベルにおける第1の導関数適合曲線と、補間の比較的高い音圧レベルにおける第2の導関数適合曲線とを提供することとを伴う。さらに、もう1つの実施形態によれば、本方法は、少なくとも複数の測定された試験データ点間の適合曲線の提供を可能にするために、取得された測定された試験データ点の関係の外側にある取得された測定された試験データ点のデータ点を除去するためのフィルタリングステップを伴う。
【0086】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、聴覚矯正システムに関し、
-被験者に対して異なる周波数および音圧レベルで聴覚検査を行うように構成された聴覚検査と、前記聴覚検査は、異なる周波数および音レベルに対する検査音レベルおよび基準音に関するデータを得るために、基準音および検査音を使用し、被験者が検査音レベルを基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで検査音レベルを調整することを伴い、
-取得されたデータを処理し、デジタル信号処理ユニットに設定を提供するように構成されたデータ処理ユニットと、
-動的補償を実行するように構成されたデジタル信号処理ユニットとを備え、
ここで、データの動的補償のために1つ以上の動的フィルタが伴われる。
【0087】
本発明による聴覚矯正システムは、携帯電話、PCまたは他のコンピュータユニット、タブレットなどの任意のタイプの適切なハードウェアデバイスにおけるソフトウェアユニットとして実装されてもよいことに留意されたい。さらに、パーソナルサウンドアンプ製品などのパーソナルサウンドユニットも、本発明によってそのように具現化される。
【0088】
さらに、デジタル信号処理ユニットは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせに基づいてもよい。
【0089】
さらに、本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明による聴覚矯正システムと、補聴器ユニット、ヘッドホン、または音響再生システムとを備えるシステムが提供される。音響再生システムの一例は、ラウドスピーカである。
【0090】
さらに、本発明は、聴覚評価および/または補正のための方法に向けられ、前記方法は、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、被験者が検査音レベルを基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての検査音レベルおよび基準音についてのデータを取得することとを備え、
ここで、データを補償するために1つ以上の動的フィルタを伴う。
【0091】
さらに、本発明によるデバイスに関して上記に提示されたすべての実施形態は、本発明による聴覚評価および/または補正のための方法に関して可能な実施形態とも見なされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴覚評価及び/又は補正のためのデバイスであって、
前記デバイスは、方法を実行するために構成されたソフトウエアユニットを備え、前記方法は、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタを伴う、デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上の動的フィルタは、入力信号および少なくとも1つのパラメータに基づいて動的に変更され、好ましくは、前記1つ以上の動的フィルタは、音圧の変化に応じて増幅を変更する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
入力音圧は、経験された音レベルが完全に補償されるように増幅される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
入力音圧は、経験された音レベルが音響フィードバックによって設定された制限内で完全に補償されるように増幅される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記方法は、
-異なる音レベルで各使用周波数で多かれ少なかれ等しい等ラウドネスを提供するためにデータを処理し補償するステップをさらに備える、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記データを補償するために複数の動的フィルタが伴われ、好ましくは、前記データを補償するために2から20個の動的フィルタを伴う、請求項
1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記方法は、デジタル信号処理を含む、請求項
1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記方法は、各フィルタ周波数について動的に変化する増幅を決定することを伴う、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
特定の中心周波数で垂直な直線を引くことによってテーブルデータが収集され、好ましくは、異なる入力音圧での特定の周波数での入力信号の増幅を用いて、経験レベルと実際のレベルとの間の偏差からテーブルデータを作成する、請求項6
または7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記方法は、好ましくは1つ以上のフィルタブロックを伴うことによって、増幅データおよびフィルタ中心周波数のデジタル信号処理を含む、請求項1
または2記載のデバイス。
【請求項11】
デジタル信号処理は、1つ以上のフィルタブロックを含み、好ましくは、各フィルタブロックは、個々の周波数を処理する、請求項
7に記載のデバイス。
【請求項12】
伴われる各動的フィルタは、200Hzから12.8kHzの範囲の中心周波数を有する、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項13】
最大増幅は、1つ以上の周波数に対して、好ましくは各動的フィルタの中心周波数に対して決定され、より好ましくは、隣接するフィルタ帯域からの総増幅も考慮される、請求項6
または7に記載のデバイス。
【請求項14】
最大増幅は、音響フィードバックを回避するために制限される、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項15】
前記1つ以上の動的フィルタは、低次、好ましくは2次の広帯域フィルタであり、前記方法は、得られた総利得の制御を確実にするために、隣接周波数フィルタブーストの補償を伴う、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項16】
聴覚回復プロセス内で増幅される必要がある各周波数に対して動的フィルタが設けられる、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項17】
前記1つ以上の動的フィルタは、特定のフィルタ周波数で動的に変化する入力信号レベルに依存して動的に変化する利得で動作する、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項18】
1つ以上のフィルタブロックは、バンドパスフィルタ、音圧検出器、および動的フィルタを備える、請求項
10に記載のデバイス。
【請求項19】
帯域通過フィルタは、フィルタ除去するように構成され、前記検出器は、動的フィルタ周波数における信号レベルを測定し、他の周波数に存在する音信号を抑制するように構成される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記バンドパスフィルタは、低次、好ましくは2次を有し、より好ましくは1未満のQを有する、請求項
18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記1つ以上のフィルタブロックは、利得テーブルをさらに備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記方法は、フォン関連データをspl関連データに置き換えることを備える、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項23】
複数のフィルタブロックが使用される、請求項
10に記載のデバイス。
【請求項24】
前記方法は、少なくとも複数の測定されたテストデータ点の間の適合曲線を提供することによって、得られた測定されたテストデータ点を超えてモデルを拡張することと、次いで、前記得られた適合曲線の補間を提供することと、次いで、前記補間の導関数適合曲線を提供することと、好ましくは、前記補間の比較的低い音圧レベルにおける第1の導関数適合曲線と、前記補間の比較的高い音圧レベルにおける第2の導関数適合曲線とを提供することとを伴う、請求項1
または2に記載のデバイス。
【請求項25】
前記方法は、少なくとも複数の測定された試験データ点の間の適合曲線の提供を可能にするために、取得された測定された試験データ点の関係の外側にある前記取得された測定された試験データ点のデータ点を除去するためのフィルタリングステップを伴う、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
聴覚矯正システムであって、
-被験者に対して異なる周波数および音圧レベルで聴覚検査を行うように構成された聴覚検査と、前記聴覚検査は、前記異なる周波数および音レベルに対する検査音レベルおよび基準音に関するデータを得るために、前記基準音および検査音を使用し、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することを伴い、
-前記得られたデータを処理し、デジタル信号処理ユニットに設定を提供するように構成されたデータ処理ユニットと、
-動的補償を実行するように構成された前記デジタル信号処理ユニットとを備え、1つ以上の動的フィルタが前記データの前記動的補償に伴われる、システム。
【請求項27】
前記デジタル信号処理ユニットは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
請求項26または27に記載の聴覚矯正システムと、補聴器ユニット、ヘッドホンまたは音響再生システムとを備えるシステム。
【請求項29】
聴覚評価および/または補正のための方法であって、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタが伴われる、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
さらに、本発明によるデバイスに関して上記に提示されたすべての実施形態は、本発明による聴覚評価および/または補正のための方法に関して可能な実施形態とも見なされるべきである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 聴覚評価及び/又は補正のためのデバイスであって、
前記デバイスは、方法を実行するために構成されたソフトウエアユニットを備え、前記方法は、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタを伴う、デバイス。
[2] 前記1つ以上の動的フィルタは、入力信号および少なくとも1つのパラメータに基づいて動的に変更され、好ましくは、前記1つ以上の動的フィルタは、音圧の変化に応じて増幅を変更する、[1]に記載のデバイス。
[3] 入力音圧は、経験された音レベルが完全に補償されるように増幅される、[1]または[2]に記載のデバイス。
[4] 入力音圧は、経験された音レベルが音響フィードバックによって設定された制限内で完全に補償されるように増幅される、[3]に記載のデバイス。
[5] 前記方法は、
-異なる音レベルで各使用周波数で多かれ少なかれ等しい等ラウドネスを提供するためにデータを処理し補償するステップをさらに備える、[1]から[4]のいずれか一項に記載のデバイス。
[6] 前記データを補償するために複数の動的フィルタが伴われ、好ましくは、前記データを補償するために2から20個の動的フィルタを伴う、[1]から[5]のいずれか一項に記載のデバイス。
[7] 前記方法は、デジタル信号処理を含む、[1]から[6]のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
[8] 前記方法は、各フィルタ周波数について動的に変化する増幅を決定することを伴う、[6]または[7]に記載のデバイス。
[9] 特定の中心周波数で垂直な直線を引くことによってテーブルデータが収集され、好ましくは、異なる入力音圧での特定の周波数での入力信号の増幅を用いて、経験レベルと実際のレベルとの間の偏差からテーブルデータを作成する、[6]から[8]のいずれか一項に記載のデバイス。
[10] 前記方法は、好ましくは1つ以上のフィルタブロックを伴うことによって、増幅データおよびフィルタ中心周波数のデジタル信号処理を含む、[1]から[9]のいずれかに記載のデバイス。
[11] デジタル信号処理は、1つ以上のフィルタブロックを含み、好ましくは、各フィルタブロックは、個々の周波数を処理する、[7]から[10]のいずれか1項に記載のデバイス。
[12] 伴われる各動的フィルタは、200Hzから12.8kHzの範囲の中心周波数を有する、[1]から[11]のいずれか1項に記載のデバイス。
[13] 最大増幅は、1つ以上の周波数に対して、好ましくは各動的フィルタの中心周波数に対して決定され、より好ましくは、隣接するフィルタ帯域からの総増幅も考慮される、[6]から[12]のいずれか1項に記載のデバイス。
[14] 最大増幅は、音響フィードバックを回避するために制限される、[1]から[13]のうちのいずれか一項に記載のデバイス。
[15] 前記1つ以上の動的フィルタは、低次、好ましくは2次の広帯域フィルタであり、前記方法は、得られた総利得の制御を確実にするために、隣接周波数フィルタブーストの補償を伴う、[1]から[14]のいずれか一項に記載のデバイス。
[16] 聴覚回復プロセス内で増幅される必要がある各周波数に対して動的フィルタが設けられる、[1]から[15]のいずれか一項に記載のデバイス。
[17] 前記1つ以上の動的フィルタは、特定のフィルタ周波数で動的に変化する入力信号レベルに依存して動的に変化する利得で動作する、[1]から[16]のいずれか一項に記載のデバイス。
[18] 1つ以上のフィルタブロックは、バンドパスフィルタ、音圧検出器、および動的フィルタを備える、[10]から[17]のいずれか一項に記載のデバイス。
[19] 帯域通過フィルタは、フィルタ除去するように構成され、前記検出器は、動的フィルタ周波数における信号レベルを測定し、他の周波数に存在する音信号を抑制するように構成される、[18]に記載のデバイス。
[20] 前記バンドパスフィルタは、低次、好ましくは2次を有し、より好ましくは1未満のQを有する、[18]または[19]に記載のデバイス。
[21] 前記1つ以上のフィルタブロックは、利得テーブルをさらに備える、[20]に記載のデバイス。
[22] 前記方法は、フォン関連データをspl関連データに置き換えることを備える、[1]から[21]のいずれか一項に記載のデバイス。
[23] 複数のフィルタブロックが使用される、[10]から[22]のいずれか一項に記載のデバイス。
[24] 前記方法は、少なくとも複数の測定されたテストデータ点の間の適合曲線を提供することによって、得られた測定されたテストデータ点を超えてモデルを拡張することと、次いで、前記得られた適合曲線の補間を提供することと、次いで、前記補間の導関数適合曲線を提供することと、好ましくは、前記補間の比較的低い音圧レベルにおける第1の導関数適合曲線と、前記補間の比較的高い音圧レベルにおける第2の導関数適合曲線とを提供することとを伴う、[1]から[23]のいずれか一項に記載のデバイス。
[25] 前記方法は、少なくとも複数の測定された試験データ点の間の適合曲線の提供を可能にするために、取得された測定された試験データ点の関係の外側にある前記取得された測定された試験データ点のデータ点を除去するためのフィルタリングステップを伴う、[24]に記載のデバイス。
[26] 聴覚矯正システムであって、
-被験者に対して異なる周波数および音圧レベルで聴覚検査を行うように構成された聴覚検査と、前記聴覚検査は、前記異なる周波数および音レベルに対する検査音レベルおよび基準音に関するデータを得るために、前記基準音および検査音を使用し、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することを伴い、
-前記得られたデータを処理し、デジタル信号処理ユニットに設定を提供するように構成されたデータ処理ユニットと、
-動的補償を実行するように構成された前記デジタル信号処理ユニットとを備え、1つ以上の動的フィルタが前記データの前記動的補償に伴われる、システム。
[27] 前記デジタル信号処理ユニットは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせを備える、[26]に記載のシステム。
[28] [26]または[27]に記載の聴覚矯正システムと、補聴器ユニット、ヘッドホンまたは音響再生システムとを備えるシステム。
[29] 聴覚評価および/または補正のための方法であって、
-被験者に対して異なる周波数および異なる音レベルで聴覚検査を実施することと、前記聴覚検査は、基準音および検査音を使用することと、前記被験者が検査音レベルを前記基準音の大きさと多かれ少なかれ等しいと知覚するまで前記検査音レベルを調整することとを伴い、
-異なる音レベルでの異なる周波数についての前記検査音レベルおよび前記基準音についてのデータを取得することとを備え、
前記データを補償するために1つ以上の動的フィルタが伴われる、方法。
【国際調査報告】