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▶ フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.の特許一覧

特表2024-546010物体を分配するための取扱装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】物体を分配するための取扱装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/342 20060101AFI20241210BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   C12M 1/10 20060101ALI20241210BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B07C5/342
C12M1/00
C12M1/10
C12M1/26
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527283
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022080961
(87)【国際公開番号】W WO2023083740
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021212603.0
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】スタンフェゥト バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クリンガー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】トーマ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フィーザー サイモン
(72)【発明者】
【氏名】グラエヴェ マリオ
【テーマコード(参考)】
3F079
4B029
【Fターム(参考)】
3F079AB00
3F079CA31
3F079CA41
3F079CB25
3F079CB28
3F079CC03
3F079DA03
4B029AA27
4B029BB11
4B029DB19
4B029DG06
4B029GA03
4B029GB05
(57)【要約】
本発明は、物体を取り扱う取扱装置に関し、当該取扱装置は、回転可能な有孔板を備え、有孔板の孔で物体が移送され得る。本発明はさらに、物体をマイクロタイタープレートに分配する方法に関し、本発明に係る取扱装置を用いて、物体が移動され、マイクロタイタープレートに分配される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を取り扱うための取扱装置であって、
前記物体及び液体を含有する懸濁液を受けるための槽と、
有孔板とを備え、前記有孔板は、有孔板の回転軸を中心に回転可能であり、かつ、その周縁部に、前記有孔板を貫通する複数の貫通孔を有し、
ここで、前記有孔板は、前記複数の貫通孔の一部が前記槽内に配置されるように、前記槽内に部分的に突出しており、
さらに、前記槽内に配置された少なくとも複数の貫通孔の後方に配置されるバリアを備え、
ここで、前記バリアは、前記物体が、前記槽内に配置された前記貫通孔から前記バリアの方向に流出することを防止するが、前記液体が、前記バリアの方向において、前記槽内に配置された前記複数の貫通孔の少なくとも一部を通過することを可能にするように、形成されており、
さらに液体移送装置を備え、前記液体移送装置は、前記バリアによる前記液体の通過を可能にする、前記槽内に配置された複数の貫通孔を介して、前記液体を能動的に送るように構成される、
取扱装置。
【請求項2】
前記取扱装置は、流出領域を有し、前記流出領域は、液体が前記槽から前記複数の貫通孔の少なくとも一部と前記バリアを通って前記流出領域へ流れるように、前記槽に対向する前記有孔板及び前記バリアの側に位置しており、
前記液体移送装置は、液体管を有し、前記液体管は、前記流出領域から前記液体管を介して前記液体を吸引できるように、前記流出領域に接続され、
前記液体管はさらに、前記液体が前記液体管を通って前記槽へ移動できるように、前記槽に接続され、
前記液体管は、好ましくは、チューブを備え、又はチューブである、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項3】
前記液体移送装置はさらに、回転可能な圧縮板を有し、前記圧縮板は、その周縁部に圧縮部を有しており、
前記圧縮板は、前記圧縮板が回転すると、前記圧縮部が前記液体管を通過し、それによって前記液体管を圧縮するように、構成される、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項4】
前記槽、前記有孔板、前記流出領域及び前記液体管は、第1のモジュールの一部であり、
前記圧縮板は、第2のモジュールの一部であり、
前記第1のモジュール及び前記第2のモジュールは、全体として、互いに接続可能であり、互いに分離可能である、
先行する2つの請求項のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項5】
前記バリアは、バリア板を備え、または、バリア板であり、
前記バリア板は、前記有孔板に対して平行に配置され、かつ、前記有孔板からの距離が、前記貫通孔の直径よりも小さく、
前記バリア板は、細長い穴を有し、前記細長い穴は、前記バリア板を貫通し、かつ、前記有孔板の回転軸から或る距離で前記有孔板の端部に平行に延在し、前記或る距離は、前記有孔板の回転軸からの前記貫通孔の距離と異なる、
先行する複数の請求項のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項6】
前記流出領域は、溝であり、前記溝は、前記バリア板の前記細長い穴に沿って延在し、かつ、前記細長い穴に開口し、
前記細長い穴及び前記溝の長さは、同じであることが好ましい、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項7】
前記有孔板は、意図された通りに使用された場合、前記槽内の前記液体の液面より上で測定したときに、前記液面に対して、90°よりも大きい角度で傾斜し、好ましくは120°以上の角度で傾斜し、及び/又は、180°未満の角度で傾斜し、好ましくは150°以下の角度で傾斜し、特に好ましくは135°で傾斜する、
先行する複数の請求項に記載の取扱装置。
【請求項8】
検出装置をさらに備え、前記検出装置は、前記有孔板の孔に存在する物体の少なくとも1つの性質を検出するために使用され得るように、前記有孔板の縁部に配置される、
先行する複数の請求項のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項9】
前記検出装置は、前記有孔板の前記縁部の周りに係合し、かつ、光学ユニットを有し、前記光学ユニットにより、前記孔に存在する前記物体の少なくとも1つの性質が、前記有孔板の両側から検出可能である、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項10】
前記光学ユニットは、第1のミラー及び/又はプリズムと第2のミラー及び/又はプリズムを備え、
前記第1のミラー及び/又はプリズムと第2のミラー及び/又はプリズムは、前記孔に対して互いに向かい合うように配置され、前記有孔板に対して45°傾斜し、また、前記孔に対向する前記ミラー及び/又はプリズムの反射面の間で測定された場合に、互いに90°の角度で配置され、
前記光学ユニットは、第3のミラー及び/又はプリズムをさらに備え、
前記第3のミラー及び/又はプリズムは、前記有孔板が延在する平面と交差し、好ましくはこの平面に対して45°傾斜し、かつ、光ビームのビーム経路に配置され、前記光ビームは、前記孔を通過して、前記第1のミラー若しくはプリズム又は前記第2のミラー若しくはプリズムによって反射され、
前記光学ユニットは、前記第3のミラー又は第3のプリズムの方を向いた視野方向を有するカメラをさらに有し、また、前記孔から開始して前記第1のミラー又はプリズム及び第2のミラー又はプリズムと、前記第3のミラー又は第3のプリズムを経由する光のビーム経路に配置され、
前記カメラの視野方向は、前記有孔板の延在する平面に対して90°の角度であることが好ましい、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項11】
少なくとも1つのスクレーパーリップを備え、前記スクレーパーリップは、前記有孔板の回転軸からの距離範囲において前記有孔板に配置され、前記貫通孔が設けられ、
前記スクレーパーリップは、前記有孔板の回転方向において前記検出装置の前方に配置される、
請求項7~10のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項12】
1つ又は2つの透明板を備え、
前記1つ又は2つの透明板は、前記貫通孔内に存在する物体の少なくとも1つの特性が前記検出装置によって検出され得る領域において、少なくとも一方側又は両側から前記貫通孔を塞ぐ、
請求項8~11のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項13】
少なくとも1つの圧縮空気ノズルをさらに備え、
前記圧縮空気ノズルは、前記貫通孔が設けられた前記有孔板の回転軸から或る距離で、前記有孔板に向けられ、好ましくは、前記バリアから離れて対向する前記有孔板の側に配置される、
先行する複数の請求項のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項14】
前記貫通孔は、マイクロタイタープレートの穴の直径以下の直径を有しており、
さらに、マイクロタイタープレートのための支持部を備え、
前記支持部は、前記圧縮空気ノズルがマイクロタイタープレートの方に向けられるように、前記有孔板に対して前記圧縮空気ノズルの反対側に配置され、
前記支持部により、前記穴を有する表面を有する前記マイクロタイタープレートは、前記有孔板に対して平行に保持され、また、前記穴を有する前記表面に対して平行な方向に動かすことができる、
先行する複数の請求項のいずれか1項に記載の取扱装置。
【請求項15】
位置決め装置を備え、前記位置決め装置により、前記支持部は、挿入位置から設置位置に動かすことができ、
前記設置位置では、前記穴を備えた前記表面を有する前記マイクロタイタープレートは、前記有孔板に対して平行に保持され得る、
先行する1つの請求項に記載の取扱装置。
【請求項16】
マイクロタイタープレートに物体を分配する方法であって、
請求項15に記載の取扱装置を用いて、前記槽内に配置された前記複数の貫通孔の少なくとも一部を介して前記物体の懸濁液を移動させることによって、前記有孔板の前記貫通孔内の前記物体を移動させることにより、前記物体が、前記懸濁液から除去され、
前記貫通孔内に存在する前記物体は、前記貫通孔を前記検出装置に対して回転させることによって移動され、
前記貫通孔内の前記物体の少なくとも1つの特性が、前記検出装置を用いて検出され、
検出された前記特性の値に応じて、前記圧縮空気ノズルによって生成された空気流により、前記物体が、マイクロタイタープレート内に移動され、又は、マイクロタイタープレート内に分配されない、
方法。
【請求項17】
前記マイクロタイタープレート内に移動されない物体は、別の位置において他の圧縮空気ノズルによって生成された空気流により、前記有孔板の対応する貫通孔から除去され、好ましくは、別の容器へ送られる、
先行する1の請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を取り扱うための取扱装置に関し、この取扱装置は、回転可能な有孔板を備え、その孔を物体が移動することができる。本発明はさらに、物体をマイクロタイタープレートに分配するための方法に関し、この方法では、物体が移動され、本発明に係る取扱装置によってマイクロタイタープレートに分配される。
【0002】
オルガノイド、スフェロイド、魚卵又はカエル卵等の巨視的な生物は、多くの生物学的なプロセスにおいて重要な役割を果たしている。しかしながら、生物の試料の調製は困難であり、これらは、専門家によって顕微鏡を用いて分類され、マイクロタイタープレートに配置されなければならない。96個のウェルを有するマイクロタイタープレートを充填するには、訓練された研究所の職員が約12分を要する。単調な作業のために、エラー率が増加する。このプロセスを自動化するためには、まず、画像測定技術を用いて、検査対象の生物を分析して分類する必要がある。形態が非常に異なることがあるため、検出された微生物が次のプロセスに使用できるか否かについて、アルゴリズムに基づいた選別決定を行う必要がある。
【0003】
しかしながら、生物学的な試験では、単なる分類では十分ではない。多くの場合、微生物は分離された形態で存在する必要がある。実験室の環境では、マイクロタイタープレート(MTP)が、分離されたサンプルを保管及び取り扱うための絶対的な基準として確立されている。これは、例えば、約12×8cmのプラスチック製のプレートであり、その中に様々な数の窪み(ウェル)が形成され、そこに微生物が保管される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの微生物の自動化された分離の問題は、これらの微生物の非常に敏感な形態である。したがって、強い剪断力等の外的な影響は、損傷を引き起こし、その結果、サンプルが拒絶される可能性があるため、避けるべきである。さらに、チューブを用いたシステムにおける移送は、閉塞の形成を引き起こし、その結果、より高い処理能力を有するシステムの詰まりを引き起こし、それにより、ダクト又はチューブシステム内の微生物の蓄積が増加する可能性があるため、大きな課題がある。
【0005】
もう1つの重要な側面は、このようなシステムの洗浄性である。実験室の環境では、しばしば無菌状態が優先されるため、部品は、洗浄し易くなければならない。さらに、異なる生物を、同じ概念を用いて分類して分離する必要があるため、製品に接触する全ての部品は、容易にアクセス及び取り外し可能であることも重要である。
【0006】
肉眼による生物の選別装置が既に多く存在する。そのほとんどは、選別専用であり、分離用ではない。
【0007】
米国特許第8940541号及び米国特許出願公開第2021072142号では、魚卵が、回転部品によって分離され、ダクト/チューブに供給される。チューブの端部は、マイクロタイタープレート上を2次元的に移動し、魚卵が、個々のウェルに分離される。微生物がダクト/チューブに結合すると、高濃度の閉塞が形成され、チューブが詰まり、プロセスが中断される可能性がある。ダクト及びチューブシステムは、限られた範囲でしか洗浄できないため、ホースシステム全体を交換しなければならない可能性がある。
【0008】
米国特許第3613884号及び米国特許第3746166号では、例えば、魚卵は、回転式の有孔板によって受精卵又は未受精卵に分類され、圧縮空気パルスによって2つの異なる容器に移送される。しかしながら、このプロセスでは、有孔板の孔を確実に埋めるためには、密度が非常に高い魚卵が必要である。そうでなければ、プロセスは非常に遅くなるであろう。
【0009】
本発明の目的は、物体を分配するための取扱装置及び方法を提供することであり、これを用いて、液体中に低濃度で存在する物体も取り扱われ、検査され、分配され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の取扱装置及び請求項16に記載の分配方法によって実現される。それぞれの従属請求項は、請求項1に記載の取扱装置及び請求項16に記載の方法の有利な展開を特定する。
【0011】
本発明は、物体を取り扱うための取扱装置に関する。この場合、物体は、液体中に存在する。物体と液体の混合物は、本明細書では懸濁液と称される。物体は、例えば、固体及び/又はゼラチン状とし得る。特に、物体は、任意で魚卵とし得る。
【0012】
本発明に係る取扱装置は、物体を含む懸濁液を受けるための槽を有する。槽は、ここでは、液体又は懸濁液が収容される穴又は窪みを有する装置であると理解されることが好ましい。槽は、有利には、頂部が開口していてもよい。以下では、用語「下向き」は、槽の穴又は窪みが延在する方向を指す。取扱装置が意図された通りに使用される場合、「下向き」は、重力が作用する方向である。
【0013】
本発明に係る取扱装置は、軸を中心に回転可能な有孔板を有し、この軸は、ここでは有孔板の回転軸と称される。有孔板は、円形であることが好ましい。
【0014】
有孔板は、その周縁部に複数の貫通孔を有し、これらの貫通孔は、有孔板を貫通する。全ての貫通孔は、有孔板の回転軸から同じ距離を有することが好ましい。貫通孔の貫通方向は、有孔板の平行な板面に対して垂直であることが好ましい。有利には、貫通孔は円筒形であり、貫通孔の円筒軸は、有孔板の平行な板面に垂直である。貫通孔は、有孔板を貫通し、すなわち、貫通孔はそれぞれ、有孔板の双方の板面に開口を有する。
【0015】
本発明によれば、有孔板は、有孔板が槽の中に部分的に突出して、複数の貫通孔の一部が槽の中に配置されるように、構成される。したがって、有孔板は、上側開口と交差するのが有利であり、これは、穴又は窪みの縁部によって形成される。したがって、意図した通りに槽が懸濁液で満たされた場合、有孔板の一部は、懸濁液の中に有利に位置し、有孔板の別の部分は、懸濁液の外側に位置する。
【0016】
本発明に係る取扱装置はさらに、バリアを備え、バリアは、槽の中に位置する少なくとも貫通孔の背後に配置される。ここでは、物体が貫通孔を介してバリアの方向に漏れるのを防止する一方、液体が槽の中に位置する複数の貫通孔の少なくとも一部を介してバリアの方向に通過できるように、バリアが形成される。例えば、バリアは、有孔板と平行に配置され、かつ、この板を貫通する細長い穴を有する1つの板として、形成され得る。細長い穴は、貫通孔に沿って延在し得る。細長い穴は、有孔板の縁部に平行に延在し、かつ、貫通孔と有孔板の回転軸との距離と異なる、有孔板の回転軸との距離を有することが、有利である。有孔板からのバリアの距離は、貫通孔の直径よりも小さいことが有利である。特に、有孔板からのバリアの距離は、懸濁液中の物体よりも小さいことが有利である。しかしながら、液体の通過を可能にすべく、有孔板からのバリアの距離は、0よりも大きくなければならない。
【0017】
バリア板及び有孔板は、サイズの異なる物体を取り扱うために、交換できることが有利である。大きな物体について、貫通孔の直径及び/又は貫通孔の深さ、すなわち、有孔板の厚さが調整され得る。バリア板の厚さを、有孔板の厚さの増加分小さくすることは、バリア板及び有孔板が通る溝を拡張する必要がないため、好ましい。
【0018】
本発明に係る取扱装置はさらに、液体移送装置を備え、液体移送装置は、槽内に位置し、かつ、バリアによる液体の通過を可能にする貫通孔を介して、液体を能動的に送るように構成される。ここで、能動的な液体移送は、圧力差が、例えば、アクチュエータによって能動的に生成され、この圧力差を補うために、液体が移動するプロセスとして理解されることが好ましい。能動的な液体移送は、任意でポンピングとして称され得る。したがって、液体移送装置は、ポンプとし得る。
【0019】
液体が貫通孔を通って能動的に移動するという事実は、現在懸濁液中に存在する、可能な限り多くの貫通孔が、概して液体中の物体の濃度に依らずに、物体で満たされることを保証する。これにより、懸濁液中の物体の濃度が低くても、充填プロセスが非常に迅速化される。
【0020】
本発明の有利な実施形態では、取扱装置は、有孔板の一方側に設けられた流出領域と、槽から離れて対向するバリアとを有し得る。流出領域及び槽は、穴又は窪みの一部とみなすことができる。液体移送装置は、液体を、槽から貫通孔を介して流出領域に移送するように構成することが有利である。
【0021】
有利な実施形態では、流出領域は、バリア板の細長い穴に沿って延在し、かつ、細長い穴に開口する溝とすることができ、細長い穴及び溝の長さは同じであることが好ましい。したがって、バリア板の細長い穴により、バリア板の方向に流出領域を続けることができる。
【0022】
特に有利な実施形態では、液体移送装置は、液体管を有することができ、当該液体管は、液体が液体管を通って流出領域から吸引されるように、流出領域に接続される。例えば、液体管は、開口を介して、流出領域に開口し得る。液体管はさらに、液体が液体管を通って槽に移動できるように、槽に接続され得る。この目的のために、液体管は、開口を介して槽に開口することが有利である。しかしながら、原理的には、液体管が、穴又は窪みの上方で終了し、液体管から流出した液体が、穴又は窪みに流入することも可能である。特に有利には、液体管は、チューブを備えることができ、又は、チューブでもよい。
【0023】
本発明の有利な実施形態では、液体移送装置は、その周縁部に沿った圧縮部を有する回転可能な圧縮板を有してもよい。ここでは、圧縮板は、回転すると、圧縮部が液体管を通って移動し、それによって液体管を圧縮するように、構成され得る。それは、液体管が、少なくとも圧縮部が移動する領域に、圧縮可能なチューブを有する場合に、特に有利である。液体管は、液体管が完全に閉じられるまで、圧縮部によって圧縮されることが好ましい。
【0024】
圧縮板は、その周縁部に沿った圧縮部を備える。これは、圧縮板の半径が、圧縮板の回転軸に垂直な平面において変化し、液体管も、圧縮部によって圧縮される領域に配置されることを意味する。最も単純な場合では、圧縮部は、隣りの領域と比べて圧縮板が半径方向の範囲が大きい圧縮板の領域とし得る。
【0025】
有利な実施形態では、圧縮板は、互いに平行な2つの円形板で形成され、その間に圧縮部が、当該平行な板の端部に沿って配置される。平行な板の端部は、互いに平行であることが好ましい。圧縮部は、例えば、円筒形の部品とすることができ、その円筒軸が、平行な板に対して垂直であり、また、平行な板の端部に沿って、好ましくは等距離に配置することができる。圧縮部は、平行な板の端部の後方にオフセットしていてもよい。この場合、圧縮板の半径は、圧縮部と交差する平面においてのみ異なる。しかしながら、圧縮板は、すなわち、平行な板が存在する平面も有しており、この平面では半径は異ならない。
【0026】
圧縮板は、駆動装置、例えば、電気モータによって駆動され、その回転軸を中心に回転することが有利である。
【0027】
本発明の有利な実施形態では、取扱装置は、2つのモジュールを有することができる。第1のモジュールは、槽と、有孔板と、流出領域と、液体管とを含むことができ、第2のモジュールは、圧縮板を含むことができる。次に、これらのモジュールは、全体として、互いに接続でき、かつ、互いに分離できることが有利である。これは、2つのモジュールの全ての部品が、単一のプロセスステップで、互いに同時に、意図された位置に配置されることを意味する。さらに任意で、これらのモジュールを互いに固定する他のステップが続いてもよい。モジュールの設計は、槽及び有孔板を互いに容易に分離でき、それらを、僅かな労力で、洗浄及び/又は加圧滅菌処理できることを意味する。
【0028】
液体管が、槽と同じモジュールの一部であり、一方、圧縮板が、他のモジュールの一部であることが有利である。これにより、槽が挿入されたときに、液体管と圧縮板との間の所望の接触が自動的に行われる。したがって、通常の煩雑なホースの挿入は不要である。さらに、液体管は、例えば、ホースであれば、容易に交換することができる。
【0029】
有孔板は、意図したように使用される場合、槽内の液体又は懸濁液の液面に対して、90°よりも大きい角度、好ましくは120°以上の角度、及び/又は、180°未満の角度、好ましくは150°以下の角度で傾斜していることが有利である。液面より上の角度が測定される。したがって、液面及び有孔板は、液体の外側で鈍角を形成することが好ましい。任意で、前記角度は、液面の代わりに、穴又は窪みの上側開口に関連させることもできる。この関連は、穴又は窪みが、少なくとも開口に隣りの領域において、この開口の方向に単調に増加する場合に、特に有用である。
【0030】
有利な実施形態では、取扱装置は、検出装置を備えることができる。検出装置は、有孔板の貫通孔内に存在する物体の少なくとも1つの特性を検出するために使用できるように、有孔板の端部に配置できる。この場合、検出装置は、検査装置とも呼ばれる。
【0031】
検出装置は、有孔板の縁部の周りに係合することが有利であり、また、光学ユニットを有しており、これを用いて、貫通孔内に存在する物体の少なくとも1つの特性が、有孔板の片側又は両側から、検出され得る。このようにして、物体を片側又は両側から検査することができる。検出装置の測定結果は、例えば、評価装置に供給でき、評価装置は、アルゴリズムを用いて、検出された物体が所望の特性を有するか否か、すなわち、例えば、それが他の試験に適しているか否かを決定することができる。例えば、使用できない物体は、事前の選別プロセスにおいて不良品の容器に移され得る。評価によって1以上の所望の特性を有することが示された物体は、対象の容器、例えば、マイクロタイタープレート、ペトリ皿等に移すことができる。対象の容器は、支持部によって保持されることができ、支持部を用いて、対象の容器は、有孔板に対して平行に移動可能である。
【0032】
有利な実施形態では、光学ユニットは、第1のミラー及び第2のミラーを有することができ、これらは、貫通孔に対して、互いに向かい合うように配置される。ここでは、第1のミラー及び第2のミラーは、貫通孔の通過軸で交差し得る。第1のミラーは、有孔板に対して+45°傾斜していてもよく、第2のミラーは、有孔板に対して-45°傾斜していてもよい。光学ユニットはさらに、有孔板が延在する平面と交差する第3のミラーを有することが有利である。第3のミラーは、この平面に対して、プラス45°又はマイナス45°傾斜していることが有利であり、この場合も、前記平面と第3のミラーの反射面との間で測定が行われる。そして、第3のミラーは、光線のビーム経路に配置され、この光線は、長手軸の方向に貫通孔を通過し、第1のミラー又は第2のミラーによって反射される。
【0033】
有利な発展において、検出装置は、照明装置を有することができ、これを用いて、1以上の波長の光が生成され、貫通孔内に存在する物体に照射される。特に、蛍光による画像検出を可能にするために、照明装置を用いて、1以上の励起波長が生成できることが有利である。この目的のために、励起波長は、物体の蛍光材料に適合され得る。照明装置は、説明した複数のミラーの1つの位置に配置されることが有利である。このようにして、対応する貫通孔内の物体は、一方の側から検出装置によって観察される一方、他方の側から照明され得る。これにより、透過光による(画像)検出が可能になる。
【0034】
光学ユニットはさらに、第3のミラーの方を向く視野方向を有するカメラを備えることができる。そして、貫通孔から放射され、第1のミラー又は第2のミラーによって反射され、次いで、第3のミラーによって反射される光のビーム経路内にカメラが配置され、この光は、第3のミラーによってカメラ内に反射される。カメラの視野方向は、有孔板の平面に対して垂直であることが有利である。上述したミラー及びカメラの配置は、カメラ内に、反対側からの物体の視野の重なりを作り出す。このようにして、貫通孔内の物体は、両側から同時にカメラで観察され得る。
【0035】
有利な実施形態では、カメラは、上述のように、物体が励起されて蛍光を発するときに蛍光において生成される波長のみを通過させるフィルタシステムを有してもよい。
【0036】
取扱装置は、有孔板の回転軸からの距離範囲において、貫通孔が設けられた有孔板に配置されるスクレーパーリップを備えることが有利であり、スクレーパーリップは、有孔板の回転方向において、検出装置の前方に配置される。スクレーパーリップは、有孔板の両側に配置されることが有利である。それぞれのスクレーパーリップは、有孔板の回転軸に対する半径方向に対して、0より大きい角度であることが有利であり、これにより、有孔板が回転するときに、有孔板上の液体が有孔板の縁部に移動する。これらのスクレーパーリップは、液体が検出装置に入らないことを確実にする。スクレーパーリップは、ゴム製のリップであることが有利である。
【0037】
有利な実施形態では、取扱装置は、有孔板の片側又は両側において、少なくとも検出装置の領域に、透明板、例えば、ガラス板又はアクリルガラス板を有することができ、この透明板は、この領域の貫通孔を覆い、また、貫通孔を閉じるように有孔板に直接接している。このような板は、この2つの板が有孔板に対して互いに向かい合うように、有孔板の両側に配置されることが有利である。1つ又は2つの板は、板を介して物体が検出されるように、配置されることが有利である。したがって、検出装置は、1つ又は2つの板にまっすぐに向けることができる。ここで、有孔板が、これらの板の間を移動するように、1つ又は2つの板は、検出装置に対して固定される。このような板は、貫通孔内において、これらの板の間に、又は板と物体との間に、画定された液体膜を形成する。これにより、液体膜が、例えば、メニスカス形成に起因する検出の歪みを作るのを防止する。
【0038】
本発明の有利な実施形態では、取扱装置はさらに、圧縮空気ノズルを備えることができ、圧縮空気ノズルは、貫通孔が設けられた有孔板の回転軸からの距離で有孔板に向けられ、好ましくは、バリアから離れて対向する有孔板の側に配置される。圧縮空気ノズルが有孔板に向けられるという事実は、圧縮空気ノズルから出た空気ジェットが、有孔板に当たることを意味する。ノズルの開口は、ノズルに対向する対応する貫通孔の開口及び/又は有孔板の表面に平行であることが有利である。ノズルの出口方向は、ノズルに対向する対応する貫通孔及び/若しくは有孔板の表面に垂直であることが有利であり、並びに/又は、対応する孔がノズル開口の正面に位置するときは、対応する孔の貫通孔方向と同軸であることが有利である。
【0039】
本発明の有利な実施形態では、取扱装置は、マイクロタイタープレートのための支持部を有することができ、この支持部は、圧縮空気ノズルの有孔板の反対側に配置され、圧縮空気ノズルが、マイクロタイタープレートに向けられる。したがって、有孔板は、圧縮空気ノズルとマイクロタイタープレートとの間に配置される。マイクロタイタープレートは、通常、マイクロタイタープレートの表面に開口する多数の穴を有する。この構成では、圧縮空気ノズルからの圧縮された空気を用いて、貫通孔の1つから、圧縮空気ノズルと、対応する穴との間に位置するマイクロタイタープレートの穴に、物体を移動させることができる。貫通孔の直径は、マイクロタイタープレートの穴の直径よりも小さいは等しいことが好ましい(通常、全ての穴は、同じ直径を有する)。貫通孔の直径は、必然的に物体の直径よりも大きいことが有利である。
【0040】
マイクロタイタープレートは、穴を有する表面、換言すると、穴が形成された各表面が、有孔板に対して平行になるように、支持部によって保持可能であることが好ましい。さらに、マイクロタイタープレートは、支持部を用いて、穴を有するマイクロタイタープレートの表面に平行な方向及び/又は有孔板に平行な方向に動かすことができることが好ましい。このようにして、支持部を用いて、異なる穴がノズルの開口に対向するように、マイクロタイタープレートを動かすことができる。
【0041】
本発明の有利な実施形態では、取扱装置はまた、位置決め装置を有することができ、当該位置決め装置を用いて、支持部が、挿入位置から設置位置へ動かすことができる。設置位置では、穴を備えた表面を有するマイクロタイタープレートは、有孔板に対して平行に保持され得る。支持部は、位置決め装置により、挿入位置と設置位置との間を前後に移動し得ることが有利である。ここでは、この移動の経路は、位置決め装置によって予め決定され得る。ホルダーに保持されたマイクロタイタープレートは、支持部が経路に沿って移動するときに、回転することが有利である。したがって、穴を有するマイクロタイタープレートの表面と、有孔板又は液面との間の角度は、経路に沿って変化し得る。
【0042】
挿入位置では、マイクロタイタープレートは、穴を有する表面が水平に整列するように、すなわち、槽内の液面に平行に整列するように、保持されることが有利である。設置位置では、マイクロタイタープレートは、穴を有する表面が有孔板に対して平行に整列して、物体が貫通孔からマイクロタイタープレートの穴内に満たされるように、保持され得る。
【0043】
特に有利な実施形態では、マイクロタイタープレートはまた、支持部と共に、設置位置において、有孔板と平行に動かすことができる。このような位置の変更は、例えば、位置決め装置自体を用いて行うこともできる。
【0044】
本発明はさらに、マイクロタイタープレートに物体を分配する方法に関する。ここでは、上述したように形成された取扱装置、具体的には、検出装置及びマイクロタイタープレートに対向する圧縮空気ノズルを備えた取扱装置が用いられる。物体は、取扱装置を用いて、物体が懸濁されている液体から除去される。これは、現在液体内にある貫通孔を介して、液体を能動的に移動させることによって実現される。これにより、物体が貫通孔内に移動する。次いで、有孔板を回転させることにより、物体が検出装置に移動する。次いで、検出装置は、物体の少なくとも1つの特性を検出する。そして、物体は、有孔板によって、圧縮空気ノズルまでさらに移動され、検出された特性の値に応じて、マイクロタイタープレート内に移動され、又はマイクロタイタープレート内に移動されない。これにより、検出された特性に基づいて、物体を選別することができる。
【0045】
マイクロタイタープレートは、物体が或る穴に移送されると、別の空の穴がノズルに対向するように、移動することが有利である。このようにして、穴は、次々に物体で満たされる。物体に関するプロセスが行われる場合、以下のようになる。初めに、物体が、液体によって貫通孔の1つに移動する。次に、有孔板を回転させることにより、物体が検出装置に移動する。検出装置は、物体の少なくとも1つの特性を検出し、それに基づいて、物体が分類される。有孔板をさらに回転させると、物体が、検出装置から圧縮空気ノズルに移動する。物体が特定の目標特性を有する場合、圧縮空気ノズルは、物体が圧縮空気ノズルを通過する時点で、空気を噴射する。このようにして、物体は、マイクロタイタープレートの穴内に移動する。物体が特定の特性を有しない場合、他のノズルを設けもよく、当該ノズルは、物体が当該他のノズルを通過すると直ちに、通路の開口から物体を除去する。この他のノズルはまた、この目的のために、空気を噴射することができる。物体を別の容器、例えば、ファルコンチューブに移すことが有利である。
【0046】
有利には、物体は、魚卵等の巨視的な生物でもよい。有孔板は、好ましくはガラス板とすることができ、又は、ガラスを備えることができ、これは、物体の照度を改善する。
【0047】
マイクロタイタープレートにおいて、巨視的な生物等の物体を自動的に保管することは、先行技術と比較して非常に有利な利点を有する。
-本発明は、自動的に移動可能なマイクロタイタープレート又は他の試料容器内に、巨視的な生物を優しく配置することを可能にする。
-プレートからマイクロタイタープレートへ生物を直接かつ迅速に移動することにより、このシステムが高い処理能力に適したものになる。
-マイクロタイタープレートの有利な45°の傾斜は、特に、穴を上流の培地で満たすことを可能にする。
-圧縮空気パルスは、生物のサイズに応じて個別に調整することができる。
-このシステムは、生物が詰まることによってシステムが詰まる可能性のある狭いダクト構造やチューブを含まない。
-さらに、このシステムの2つの主要な部品は、非常に容易に分解して洗浄することができ、これにより、殺菌作業を容易にする一方、異なる生物の交換を容易にする。
-異なるプレートを使用することにより、サイズの異なる生物が分類され、分離される。
-光学検出ユニットは、生物の前面と背面を画像に記録し、分析することができる。
-洗浄可能な槽はまた、ポンプハウジングとして機能するため、ポンプホースのクランプ及び交換が、非常に容易である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
以下、いくつかの図を用いて、本発明を例示によって説明する。複数の実施形態に示す特徴はまた、特定の実施形態に依存せずに実現することができ、また、複数の実施形態において組み合わせることができる。同様の参照符号は、同様の特徴又は対応する特徴を示す。図において:
図1】本発明に係る取扱装置の斜視図を示す。
図2】本発明に係る取扱装置の背面図を示す。
図3】本発明に係る取扱装置の断面図を示す。
図4図3の詳細を示す。
図5】本発明に係る取扱装置の側面図を示す。
図6】圧縮空気ノズルとマイクロタイタープレートの構成の詳細を示す。
図7】検出装置の一例を示す。
図8】支持部が設置位置にあるときの位置決め装置の側面図を示す。
図9】支持部が設置位置と挿入位置との間に位置するときの位置決め装置の側面図を示す。
図10】支持部が挿入位置に位置するときの位置決め装置の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明に係る取扱装置の斜視図を示す。取扱装置は、物体を含有する懸濁液の受け入れを開始する槽2を備える。取扱装置はさらに、有孔板の回転軸を中心に回転可能な円形の有孔板1を備える。ここでは、有孔板の回転軸は、数学的な意味での軸であり、有孔板1の中心に垂直に位置する。有孔板1は、その周縁部に多数の貫通孔3を有し、当該貫通孔は、有孔板1を貫通する。有孔板1は、例えば、ガラス板とし得る。
【0050】
有孔板1は、貫通孔3の一部が槽2内に位置するように、槽2内に部分的に突出している。図に示す例では、槽2は、その頂部が円形のセグメント状の開口で画定されており、その端部が1つの平面に位置する。この例では、有孔板は、この平面と交差する。ここでは、有孔板1は、この平面に対して45°の角度で配置される。取扱装置が、意図された通りに使用される場合、液面は、この平面に対して実質的に平行に延在する。これは、意図された通りに使用される場合、有孔板1は、液面に対して、同様に45°の角度になることを意味する。ここでは、この角度の正確な値は重要ではない。しかしながら、液面と有孔板1との角度が鈍角である場合、貫通孔3から物体が落下するのを防止し、また、有孔板1から液体が漏れるのを防止するため、有利である。しかしながら、貫通孔3には毛細管力によって物体が保持されることが多いため、傾斜位置は任意である。
【0051】
貫通孔3は全て、有孔板の回転軸からの距離が同じであり、隣りの貫通孔3からの距離も同じである。また、全ての貫通孔3は、有孔板1の端部からの距離も同じである。図に示す例では、有孔板1の端部が、槽2の領域内の槽2の内壁に配置されるため、貫通孔3は、有孔板1の端部からの距離よりも、槽2の内壁からの距離の方が短い。これにより、槽2内の懸濁液の充填レベルが低い場合でも、貫通孔3を物体で満たすことができる。
【0052】
さらに、本発明に係る取扱装置は、液体移送装置4を備え、当該液体移送装置は、槽内に配置された貫通孔3、換言すると、以下に示す例では、円形のセグメント状の開口を介して、槽内の液体を能動的に送るように構成される。図に示す例では、液体移送装置4は、圧縮板6を有しており、当該圧縮板は、その周縁部に圧縮部7を含む。図に示す例では、圧縮板6は、7個の圧縮部7を有しており、これらは、ここでは、圧縮板6の周縁部に沿って、等間隔に配置される。ここでは、圧縮部7は、2つの円形の環状部品によって保持される。
【0053】
また、液体移送装置4は、液体管を有しており、その一部が、2つの開口5a,5bの間で、圧縮板6を越えて延在する。圧縮板6は、開口5a,5bの間において液体管が通る領域で、圧縮部7と係合している。これにより、圧縮部7が液体管を圧縮する。圧縮板6は、回転軸を中心に回転可能であり、この回転軸は、圧縮部7が配置された平面に対して、中心として垂直である。この回転により、圧縮部7が液体管を次々に移動し、液体管内に蠕動による液体の移送が生じる。図に示す例では、開口5a及び5bは、液体管の図示されていない部分を介して、槽2の内部に接続されている。図1の斜視図では、特に、開口5aが、液体管の一部によって接続部8aに接続される。したがって、開口5bは、図2に示す他の接続部8bによって槽2の内部に接続される。
【0054】
液体移送装置4は、液体を循環させることができる。このようにして、槽2内の液体レベルを一定に保ったまま、貫通孔3内に物体15を移動させることができる。
【0055】
液体管は、全体的又は部分的に圧縮性チューブで形成することが有利である。
【0056】
図1に示す取扱装置はさらに、検出装置8を備え、当該検出装置は、有孔板1の貫通孔3内に存在する物体の少なくとも1つの特性の検出に用いられるように、有孔板1の端部に配置される。ここでは、検出装置8は、有孔板1の端部の周りに係合する。
【0057】
また、取扱装置はさらに、マイクロタイタープレート10のための支持部9を有する。支持部9は、穴が形成されたその表面が有孔板1の表面と平行になるように、マイクロタイタープレート10を保持する。マイクロタイタープレート10は、この表面に平行な方向に、支持部9と共に動かすことができる。
【0058】
また、取扱装置はさらに、圧縮空気ノズル11を有しており、当該圧縮空気ノズルは、有孔板1の貫通孔3に向けられ、また、マイクロタイタープレート10の反対側に配置される。噴射された空気を生成することができ、圧縮空気ノズル11は、空気を噴射することができ、これは、貫通孔3内に存在する物体を、マイクロタイタープレート10の穴内に分配するために使用され得る。
【0059】
図1に示す図では、有孔板1が、取扱装置の動作中に時計回りに回転し、その結果、物体が最初に槽2の貫通孔3内に導入され、次いで、検出装置8に移送される。物体の1以上の特性が、検出装置8において検出され得る。そして、有孔板1がさらに回転することにより、所望の特性を有する物体が、圧縮空気ノズル11へ移動され、当該圧縮空気ノズルにより、噴射された空気を用いて、マイクロタイタープレート10の穴内に分配される。ノズル11によって空気が噴射されるべき時間は、検出時間と有孔板1の角速度を用いて、容易に算出できる。
【0060】
図1に示す例では、取扱装置はさらに、圧縮空気ノズル12を有しており、当該圧縮空気ノズルは、検出装置8と圧縮空気ノズル11との間において、有孔板1の周囲に沿って配置される。この圧縮空気ノズル12を用いて、所望の特性を有しない物体が、圧縮空気ノズル11及びマイクロタイタープレート10に到達する前に貫通孔3から、当該物体を除去することができる。
【0061】
図2は、図1に示す取扱装置の背面を示す。槽2の後壁は、バリア13の構成を可視化するために透明である。ここでは、バリア13は、有孔板1に平行に配置され、かつ、有孔板1からの距離が貫通孔3の直径よりも小さい、バリア板13として形成される。バリア13はさらに、細長い穴14を有し、当該細長い穴は、バリア板13を貫通し、有孔板1の端部に平行に延在する。有孔板の回転軸からの細長い穴14の距離は、有孔板の回転軸からの貫通孔3の距離と異なる。図に示す例では、有孔板の回転軸からの細長い穴14の距離の方が、有孔板の回転軸からの貫通孔3の距離よりも僅かに小さい。
【0062】
図2に示すバリア13は、槽2に配置された貫通孔3の後方に配置され、また、物体が貫通孔3からバリア13の方向に漏れるのを防止するが、液体が、槽2に配置された貫通孔3の少なくとも一部をバリア13の方向に通過するように、形成されている。液体を通過させるために、有孔板1からのバリア板13の距離は、0よりも大きくすることができる。
【0063】
バリア13及び有孔板1は、槽2と流出領域41を分離する。液体移送装置は、液体を、槽2から貫通孔3及び細長い穴14を介して、流出領域41に能動的に移送する。液体管は、流出領域41に接続され、液体が流出領域41から吸い出される。液体管の他方の端部も、接続部8aを介して槽2に接続され、液体が液体管を介して槽2に移動できる。
【0064】
図3及び図4は、図1に示す本発明に係る取扱装置の複数の貫通孔3のうちの1つの領域における断面を示す。図4は、図3のAで示す詳細図を示す。
【0065】
この図は、有孔板1の端部が、槽2の壁16の凹部に突出し、槽2を画定していることを示す。これは、貫通孔3が槽2の壁16の近くに位置することを意味する。物体15は、重力によって下方に移動して、一方では槽2の内壁16によって画定され、かつ、他方では有孔板1によって画定される領域に集まる。液体の能動的な移動は、物体15を貫通孔3に吸引する。貫通孔3は、物体15の1つのみの空間が存在するような大きさであることが有利である。
【0066】
バリア13は、ここでは1つの板13として形成され、有孔板1の一方側で、槽2から離れて対向するように配置される。図2に示すように、バリア13は、貫通孔3とは、有孔板の回転軸からの距離が異なる細長い穴14を有する。有孔板1、及び槽2から離れて対向するバリア13の側には、流出領域41が形成され、ここでは、当該流出領域は、細長い穴14によって画定され、かつ、当該細長い穴を貫通する溝として形成される。
【0067】
有孔板1の厚さとバリア板13の厚さは、特に、取り扱い対象の物体15の大きさに合わせることが有利である。より大きな直径の物体を取り扱うために、有孔板1及びバリア板13を厚くし、また、より大きな貫通孔3をそれらに形成してもよい。
【0068】
図5及び図6は、本発明に係る取扱装置の一例の側面図を示しており、この図では、マイクロタイタープレート10の反対側の圧縮空気ノズル11の配置が見える。ここでは、図6は、図5のBで示す詳細図を示している。
【0069】
圧縮空気ノズル11は、有孔板1に対して、マイクロタイタープレート10の反対側に配置される。ここでは、圧縮空気ノズル11の放出方向は、有孔板1に向いており、その結果、圧縮空気ノズル11からマイクロタイタープレート10の方向に空気が噴射される。圧縮空気ノズル11から空気が放出される方向は、1本の直線として続き、この直線は初めに、貫通孔3から一定の距離で有孔板1を通り、次いで、マイクロタイタープレート10を通る。圧縮空気ノズル11は、複数の貫通孔3の1つが上記直線上に位置するときに、常に正確に空気を噴射するように制御可能であり、物体15が、マイクロタイタープレート10の穴16に配置、すなわち、挿入される。支持部9は、物体15が配置される穴16が上記直線上に位置するように、マイクロタイタープレート10の位置の変更を可能にする。ちょうど1つの物体15が、穴16に配置されることが有利である。そして、次の物体のために、有孔板がさらに回転され、別の穴16が上記直線上に位置するように、マイクロタイタープレート10の位置が変更される。
【0070】
図7は、光学的な検出装置としての検出装置8の例示的な実施形態を示す。この場合の検出装置8は、第1のミラー19aを有し、当該第1のミラーは、有孔板1が延在する平面に対し、ミラー19aの反射面と前記平面との間を測定した場合に、45°傾斜している。ここでは、この反射面は、有孔板の回転軸から離れて対向する。検出装置8はさらに、第2のミラー19bを有し、当該第2のミラーは、有孔板1が延在する面に対し、マイナス45°傾斜しており、この反射面も同様に、有孔板の回転軸から離れて対向する。したがって、第1のミラー19a及び第2のミラー19bの反射面は、互いに90°の角度で配置される。検出装置8はさらに、第3のミラー19cを有し、当該第3のミラーは、有孔板1が延在する面と交差する。第3のミラー19cは、この面に対してマイナス135°傾斜しており、その反射面が、第2のミラー19bの反射面と対向し、当該反射面と平行になる。全てのミラー19a、19b及び19cは、有孔板の回転軸に対して、同じ半径方向にある。有孔板1の複数の貫通孔3のうちの1つから出射する光のビーム経路18が、図7に破線で示されている。貫通孔3から第1のミラー19aの方向に出射した光は、第1のミラー19aの反射面に45°の角度で入射し、それによって第3のミラー19cに反射される。図に示す例では、第1のミラー19aと第3のミラー19cとの間のビーム経路18は、有孔板1が延在する平面に平行に走っている。貫通孔3から第2のミラー19bの方向に出射した光は、第2のミラー19bの反射面に入射し、それによって、同様に第3のミラー19cの方向に反射される。図に示す例では、第2のミラー19bと第3のミラー19cとの間のビーム経路18も、有孔板1が延在する平面に平行に走っている。
【0071】
ここで、第3のミラー19cは、カメラ17の方向へ、第1のミラー19aから来る光だけではなく、第2のミラー19bから来る光を反射し、このカメラの視野方向は、図に示す例では、有孔板1が延在する平面に対して垂直である。このようにして、有孔板1の両側からの貫通孔3内の物体15の光景が、カメラ17に重なる。したがって、物体15は、一度に両側から検査することができる。
【0072】
ここに示す例では、所望の特性を有しない物体15を除去するための任意の圧縮空気ノズル12が、検出装置に構造的に組み合わされる。このような構成は、勿論、必ずしも必要ではない。
【0073】
説明した取扱装置は、特に有利なモジュール設計を有することができ、有孔板1、槽2及び液体管が或るモジュールに属する一方、液体移送装置4が別のモジュールに属する。このようにして、有孔板及び槽2は、例えば、生物学的な衛生規則を遵守するために、容易に交換して洗浄することができる。説明したバリア13は、有孔板1がその一部であるモジュールの一部とし得る。
【0074】
本発明に係る装置は、魚卵等の巨視的な生物を選別するのに特に適している。
【0075】
図8、9及び10は、この取扱装置の有利な実施形態の位置決め装置の側面図を示す。位置決め装置を用いて、支持部9を、挿入位置から設置位置に移動させることができる。位置決め装置は、挿入位置と設置位置との間の経路上に位置する任意の位置において、支持部9を前後に移動させることができる。取扱装置は、ハウジング31によって囲まれることが有利であり、当該ハウジング内では、マイクロタイタープレート10をハウジング31内に導入するための挿入口32を有する。図8図9及び図10は、異なる位置における支持部を示しており、支持部9は、位置決め装置により、その位置に動かすことができる。
【0076】
図8は、位置決め装置の側面図を示し、この図では、支持部9が設置位置にある。設置位置では、マイクロタイタープレート10は、穴を有するマイクロタイタープレート10の表面が有孔板1に平行に整列するように、保持可能である。このようにして、物体は、設置位置において、有孔板の貫通孔からマイクロタイタープレート10の穴内に充填できる。
【0077】
特に有利な実施形態では、マイクロタイタープレート10及び支持部9はまた、設置位置において、有孔板1に対して平行に動かすことができる。このような位置の変更は、例えば、位置決め装置自体を用いて行うことができる。代替的に、マイクロタイタープレート10が有孔板に対して平行に移動できるように、設置位置において支持部9を移動可能な追加の装置を設置してもよい。
【0078】
図9は、位置決め装置の側面図を示しており、この図では、支持部9が、設置位置と挿入位置との間の経路上の位置にある。支持部9が設置位置にある図8と比較すると、支持部9が、この経路に沿って回転できることは明らかである。したがって、穴を有するマイクロタイタープレート10の表面と有孔板の間の角度は、経路に従って様々である。
【0079】
図10は、位置決め装置の側面図を示しており、ここでは、支持部9が挿入位置にある。挿入位置では、マイクロタイタープレート10は、穴を有するマイクロタイタープレート10の表面が水平になるように、任意に保持可能である。図に示す取扱装置の例示的な実施形態では、マイクロタイタープレート10はさらに、マイクロタイタープレート10が挿入口32を介してハウジング31から突出するように、ホルダー9によって挿入位置に保持可能である。これにより、マイクロタイタープレート10を取扱装置に導入することが容易になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】