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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】無線電力伝送
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20241210BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527304
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022082098
(87)【国際公開番号】W WO2023104456
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213092.6
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】スターリング アントニウス アドリアーン マリア
(72)【発明者】
【氏名】アガフォノフ アレクセイ
(57)【要約】
電力送信機101は、負荷変調による通信のために電力受信機105によっても使用される誘導電力伝送信号を介して電力受信機105に電力を供給する。電力受信機105は、第1または第2通信モードに従ってシンボルを送信するように構成された送信機509を備え、第1のモードはシーケンスのセットからのチップシーケンスによってデータシンボルを変調し、第2通信モードは変調しない。電力受信機105は、セットからのチップシーケンスを使用して、電力伝送信号変動を要求するデータシンボルを送信することができる。検出器515は、変動が生じたかどうかを検出することができ、生じた場合、選択器513が第1通信モードを選択し、そうでなければ第2通信モードを選択する。このアプローチはデータが電力送信機から送信されることを必要とせずに、適切な通信モードの選択を可能にする。このアプローチは改善された後方互換性を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁的な電力伝送信号を介して電力送信機から無線で電力を受信する電力受信機であって、
前記電力伝送信号から電力を抽出するように構成された受信機コイルを有する入力回路と、
前記電力伝送信号を負荷変調することによりデータシンボルのセットを前記電力送信機に送信するように構成された送信機であって、データシーケンスの各データシンボルが、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスにより変調され、チップシーケンスの前記第1のセットのチップシーケンスが異なるデータシンボル値にリンクされ、データシンボルの前記セットが、前記電力伝送信号の所与の変動の要求を含む、送信機と、
前記電力伝送信号の前記所与の変動を検出するために前記電力伝送信号を監視するように構成された検出器と、
前記所与の変動が検出された場合に、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、前記所与の変動が検出されなかった場合に、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するように構成された選択器であって、前記第1通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスにより変調されることを含み、前記第2通信モードは、チップシーケンスの前記第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによりデータシンボルを変調することを含まない、選択器とを有し、
前記送信機が、前記選択された通信モードを使用して電力伝送フェイズの間に前記電力送信機にデータシンボルを送信するように構成される、電力受信機。
【請求項2】
前記第2通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの第2のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスにより変調されることを含み、チップシーケンスの前記第2のセットのチップシーケンスが異なるデータシンボル値にリンクされる、請求項1に記載の電力受信機。
【請求項3】
チップシーケンスの前記第1のセットの各チップシーケンスが第1の長さを有し、チップシーケンスの前記第2のセットの各チップシーケンスが前記第1の長さと異なる第2の長さを有する、
請求項2に記載の電力受信機。
【請求項4】
前記所与の変動が、前記電力伝送信号の電力レベルおよび前記電力伝送信号の周波数のうちの少なくとも1つの変動である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項5】
データシンボルの前記セットが、前記電力伝送信号に対する少なくとも1つの電力レベル変更要求を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項6】
データシンボルの前記セットが、少なくとも1つの電力制御ループ誤差メッセージを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項7】
前記送信機が、前記第2通信モードを用いてデータシンボルの更なるセットを送信するように構成され、データシンボルの前記更なるセットが、前記電力伝送信号の異なる変動を要求し、前記異なる変動は、前記所与の変動とは異なる変動であり、前記検出器が、前記電力伝送信号の変化が前記異なる変動により近く一致するか、それとも前記電力伝送信号の変化が前記異なる変動と前記所与の変動との組み合わせにより近く一致するかに応じて、前記所与の変動を検出するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項8】
前記送信機が、電力伝送フェイズ中にデータシンボルの前記セットを送信するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項9】
前記電力伝送信号の前記所与の変動に対する前記要求が電力伝送の終了の要求であり、前記選択器が、前記電力伝送信号の終了が検出された場合に、後続の電力伝送フェイズのために前記第1通信モードを選択するように構成される、請求項8に記載の電力受信機。
【請求項10】
前記送信機が、前記電力送信機からの検出電力伝送信号の検出に応じてデータシンボルの前記セットを送信するように構成され、前記所与の変動が前記検出電力伝送信号の変動である、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項11】
前記送信機が、前記第1通信モードを用いて通信パラメータの第1の値でデータシンボルのテストセットを送信し、データシンボルの前記テストセットが、前記電力伝送信号の第2の所与の変動に対する要求を含み、前記選択器が、前記電力伝送信号の変動が前記第2の所与の変動に一致する場合には前記通信パラメータを第1の値に設定し、一致しない場合には前記通信パラメータを他の値に設定するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力受信機。
【請求項12】
電磁的な電力伝送信号を介して電力受信機に電力を無線で供給する電力送信機であって、
出力回路に印加される駆動信号に応じて前記電力伝送信号を生成するように構成された送信機コイルを有する当該出力回路と、
前記駆動信号を生成するように構成されたドライバと、
前記電力伝送信号の負荷変動を検出するための負荷検出器と、
チップシーケンスのセットのチップシーケンスと前記電力伝送信号の負荷変動との間の閾値を超える相関に応じて、有効に受信されたデータシンボルを検出するための検出器であって、チップシーケンスの前記セットのチップシーケンスが異なるデータシンボル値にリンクされる、検出器と、
前記有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて前記電力伝送信号に変動を適用するように構成されるアダプタと、
前記有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、前記有効に受信されたデータシンボルが検出されない場合には、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するように構成された選択器であって、前記第1通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記セットと前記電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて受信されることを含み、前記第2通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記セットと前記電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて受信されることを含まない、選択器と、
前記選択された通信モードに従って前記電力伝送信号から受信される負荷変調データシンボルを決定するように構成される負荷変調受信機と、
を有する、電力送信機。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の電力受信機と請求項12に記載の電力送信機とを有する無線電力伝送システム。
【請求項14】
電磁的な電力伝送信号を介して電力送信機から電力を無線で受信するための電力受信機の動作方法であって、
受信機コイルを有する入力回路が前記電力伝送信号から電力を抽出するステップと、
前記電力伝送信号を負荷変調することにより前記電力送信機にデータシンボルのセットを送信するステップであって、データシーケンスの各データシンボルは、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスにより変調され、チップシーケンスの前記第1のセットのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされ、データシンボルの前記セットは、前記電力伝送信号の所与の変動に対する要求を含む、ステップと、
前記電力伝送信号を監視して、前記電力伝送信号の前記所与の変動を検出するステップと、
前記所与の変動が検出された場合に選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、前記所与の変動が検出されない場合に選択された通信モードとして第2通信モードを選択するステップであって、前記第1通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスで変調されることを含み、前記第2通信モードは、データシンボルがチップシーケンスの前記第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスで変調されることを含まない、ステップと、
前記選択された通信モードを使用して電力伝送フェイズ中に前記電力送信機にデータシンボルを送信するステップと、を有する方法。
【請求項15】
電磁的な電力伝送信号を介して電力受信機に電力を無線で供給する電力送信機の動作方法であって、
送信機コイルが当該送信機コイルに印加される駆動信号に応じて前記電力伝送信号を生成するステップと、
前記駆動信号を生成するステップと、
前記電力伝送信号に対する負荷変動を検出するステップと、
チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスと前記電力伝送信号の負荷変動との間の閾値を超える相関に応じて有効に受信されたデータシンボルを検出するステップであって、チップシーケンスの前記第1のセットのチップシーケンスが異なるデータシンボル値にリンクされる、ステップと、
前記有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて前記電力伝送信号に変動を適用するステップと、
前記有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、前記有効に受信されたデータシンボルが検出されない場合には、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するステップであって、前記第1通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記セットと前記電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて受信されることを含み、前記第2通信モードは、各データシンボルがチップシーケンスの前記セットと前記電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて受信されることを含まない、ステップと、
前記選択された通信モードに従って前記電力伝送信号から受信される負荷変調データシンボルを決定するステップと、を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線電力伝送に関し、特に、限定はしないが、Qi無線電力伝送規格などのシステムのための電力伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のほとんどの電気製品は外部電源から電力を供給するために、専用の電気接点を必要とする。しかしながら、これは、非実用的である傾向があり、ユーザが物理的にコネクタを挿入するか、さもなければ物理的な電気的接触を確立することを必要とする。典型的には、電力要件も大きく異なり、現在のところ、ほとんどの装置には専用の電源が提供されており、その結果、典型的なユーザは、各電源が特定の装置専用である多数の異なる電源を有することになる。しかし、内蔵バッテリの使用は使用中に電源への有線接続の必要性を回避することができるが、これはバッテリの再充電(または交換)を必要とするため、部分的な解決策を提供するに過ぎない。また、バッテリを使用することは、装置の重量および潜在的なコストおよびサイズを実質的に増大させ得る。
【0003】
著しく改善されたユーザ体験を提供するために、電力が電力送信装置内の送信機コイルから、個々の装置内の受信機コイルに誘導伝送される無線電源を使用することが提案される。
【0004】
磁気誘導を介した電力伝送はよく知られた概念であり、大部分は、一次送信機インダクタ/コイルと二次受信機コイルとの間の密結合を有する変圧器に適用される。一次送信機コイルと二次受信機コイルを二つの装置間で分離することにより、これらの間の無線電力伝送が疎結合変圧器の原理に基づいて可能になる。
【0005】
このような構成は、有線または物理的な電気接続を行う必要なく、装置への無線電力伝送を可能にする。実際、外部から再充電または電力を供給するために、単に、送信機コイルに隣接してまたはその上に装置を配置することができる。例えば、電力送信機は、電力を供給するために装置を単に配置することができる水平面を有するように構成されることができる。
【0006】
さらに、そのような無線電力伝送構成は、電力送信機がある範囲の電力受信装置と共に使用されることができるように有利に設計されることができる。特に、Qi規格として知られる無線電力伝送アプローチが定義され、現在さらに開発されている。このアプローチは、Qi規格を満たす電力送信機装置が同じ製造業者からのものである必要も、互いに専用である必要もなく、Qi規格を満たす電力受信機装置と共に使用されることを可能にする。Qi規格は、特定の電力受信装置に動作を適合させることを可能にするためのいくつかの機能をさらに含んでいる(例えば、特定の電力ドレインに依存する)。
【0007】
Qi規格は無線電力コンソーシアムによって開発されており、その情報は例えば、そのウェブサイトhttp://www.wirelesspowerconsortium.com/index.htmlで見つけることができ、特に、定義された規格書を見つけることができる。
【0008】
効率的な無線電力伝送をサポートするために、Qiベースのシステムのような無線電力伝送システムは、電力送信機と電力受信機との間の実質的な通信を利用する。当初、Qiは電力伝送信号の負荷変調を用いた電力受信機から電力送信機への通信のみをサポートした。したがって、初期のQi装置は、電力受信機から電力送信機への一方向通信のみをサポートする。
【0009】
しかしながら、規格の開発は双方向通信を導入し、多くの機能が電力受信機と電力送信機の間の通信交換によってサポートされている。多くのシステムにおいて、電力送信機から電力受信機への通信は、電力伝送信号を変調することによって達成される。
【0010】
いくつかのシステムでは、例えば、BluetoothまたはNFC(近距離無線通信)ベースの通信など、別個の専用通信機能を使用することが提案されている。しかしながら、そのようなアプローチは、多くのシナリオにおいて効率的な動作を提供する傾向がある一方で、専用の複雑な通信回路を必要とすること、および電力送信機が実際に電力を供給されている電力受信機と通信していることの確信度が潜在的に低いことを含む、いくつかの欠点にも関連付けられる。また、例えばQiベースの装置との後方互換性は、別個の通信に基づくより新しい装置にとって問題となり得る。
【0011】
しかしながら、電力受信機に電力を伝送する電力伝送信号の負荷変調を使用して通信することは、いくつかの関連する欠点を有する傾向がある。例えば、負荷変調は、装置の信号へのノイズと放射電磁ノイズの両方を含む、いくつかの電気ノイズを導入する傾向がある。負荷変調は、他の装置への電磁干渉を増加させる場合があり、十分なまたは最適な電磁両立性を維持することは、困難であることが分かっている。
【0012】
また、実際に、負荷変調が駆動信号および電力伝送信号への望ましくないスプリアス振動を導入する可能性があることも分かっている。別の欠点は、電力伝送信号の負荷変調が音響ノイズをもたらす可能性があることである。そのようなノイズは負荷変調によって引き起こされる電磁界に対する変動の機械的要素への影響から生じる可能性があり、具体的には、それは機械的要素を動かし、振動させて、潜在的な音響ノイズを生成する可能性がある。
【0013】
場合によっては、例えば、Qi規格の初期バージョンで使用される負荷変調通信は完全な信頼性を有さないことがあり、場合によってはいくつかのビット誤りが発生することがある。例えば、高レベルの雑音はビット誤りをもたらす可能性があり、および/または、負荷変調から生じる電気雑音または音響ノイズの増加をもたらす可能性がある変調深度の増加を必要とする可能性がある。
【0014】
異なる通信アプローチに変更することが何らかの方法で望まれるかもしれないが、既存の設計およびアプローチに必要な後方互換性を維持するか、または変更の量を低減することは、これを困難な見込みとすることが多い主要な課題である。
【0015】
技術規格または規格を開発し続けることに伴う特定の問題は、規格の異なるバージョンに従った多くの異なる装置が同時に配備されるシステムをもたらす可能性があることである。そのような異なる装置は、一緒に動作することができなければならないことが典型的に要求される。例えば、Qi規格の開発は、規格の異なるバージョンに準拠する多くの配備された電力送信機および電力受信機をもたらし、これらの全てが互いに相互作用することを必要とする。特定の困難な問題は、異なるバージョンの装置が効率的かつ確実に通信できることが要求される/望まれる通信に関する。実際、完全な双方向通信をサポートする新しい装置が、単方向通信のみをサポートするように開発されたレガシー装置と効率的に相互作用することができることも必要とされる。また、機器同士が相互に連携することが求められるだけでなく、より複雑な装置が、相補的な装置がサポートする最適な動作および通信を選択するように効率的かつ確実に動作を適応させるすることができることが望ましい。したがって、電力伝送が2つの装置間で開始されるときに装置が直面する課題は、装置の特定の能力に基づいて最適なインターワークを確立するために相互作用することである。そのような適応は、特に、装置のうちの1つが単方向通信のみが可能であり、それによって、ネゴシエーションプロトコルおよびアルゴリズムが利用されることを防止する場合に、困難である。
【0016】
したがって、改善されたアプローチが有利であり、特に、柔軟性の向上、コストの低減、複雑性の低減、電力伝送動作の改善、信頼性の向上、通信エラーの低減、後方互換性の改善、電磁的互換性の改善、電気的および/もしくは音響的ノイズの低減、通信の改善、後方互換性の改善、異なる装置の異なる能力および機能への適応の促進および/もしくは改善、ならびに/または、性能の改善を可能にするアプローチが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、好ましくは上記の欠点の1つ以上を単独でまたは任意の組み合わせで軽減、低減または排除しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一側面によれば、電磁電力伝送信号を介して電力送信機から電力を無線で受信するための電力受信機が提供され、当該電力受信機は、電力伝送信号から電力を抽出するように構成された受信コイルを含む入力回路と、電力伝送信号を負荷変調することによりデータシンボルのセットを電力送信機に送信するように構成された送信機であって、 データシーケンスの各データシンボルは、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって変調され、 第1のチップシーケンスのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされ、 データシンボルのセットは電力伝送信号の所与の変動に対する要求を含む、送信機と、電力伝送信号を監視して電力伝送信号の所定の変動を検出するように構成された検出器と、所定の変動が検出された場合、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、所定の変動が検出されなかった場合、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するように構成された選択器であって、第1通信モードは、各データシンボルが、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって変調されることを含み、第2通信モードは、任意のデータシンボルが、チップシーケンスの第1のセットのうちの任意のチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって変調されることを含まない、選択器とを有し、送信機は、選択された通信モードを使用して電力伝送フェイズ中にデータシンボルを電力送信機に送信するように構成される。
【0019】
本発明は多くの実施形態において改善された性能を可能にすることができ、特に多くの実施形態において、電力受信機と電力送信機との間の改善された通信を可能にすることができる。それは、多くの実施形態において改善された電力伝送を可能にすることができる。
【0020】
このアプローチは、改善された通信を可能にすることができ、多くの実施形態において、異なるパラメータと動作特性との間の改善されたトレードオフを可能にすることができる。このアプローチは、例えば、信頼性の高い通信を可能にしつつ、低減された変調深度が使用されることを可能にすることができる。このアプローチは電気ノイズおよび/または電磁干渉を低減し、改善された電磁両立性を可能にすることができる。このアプローチは、多くの場合、音響ノイズを低減または防止することができる。
【0021】
このアプローチは、多くのシナリオにおいて、計算リソース要件、データ検出精度、ビット誤り率、データレートなどを含む様々なパラメータ間の改善されたトレードオフを可能にすることができる。
【0022】
このアプローチは、多くのシステムにおいて有利な後方互換性を可能にすることができ、多くの実施形態において、既存のシステムへの容易な展開を可能にすることができる。このアプローチは、異なる装置能力への改善されたインターワーキングおよび適応を可能にすることができる。このアプローチは、例えば、レガシー装置との改善されたインターワーキングを可能にし、それによって、強化された機能の導入を容易にすることができる。
【0023】
このアプローチは、多くのシナリオにおいて、電力送信機から電力受信機へのデータ通信、または電力送信機から電力受信機への通信チャネルの存在さえ必要とせずに、またはそれに依存せずに、改善された動作および適応を可能にすることができる。
【0024】
このアプローチは、例えば、Qi規格によって使用されるアプローチのような既存のアプローチの比較的容易な修正を可能にすることができる。具体的には、このアプローチは、電力送信機から電力受信機への通信を全く含まないQi規格のベースライン電力プロファイル(BPP)に従って動作する装置を含むQi規格システムなどのシステムにおける通信の強化を可能にすることができる。
【0025】
チップシーケンスは、変調負荷値のシーケンス/パターンであり得る。これらの変調負荷値の各々は、チップ持続時間内で一定であり得る。異なるデータシンボルのためのチップシーケンスは、変調負荷値の異なるシーケンス/パターンを有する。
【0026】
多くの実施形態では、チップシーケンスの長さは15チップ以上、256チップを以下である。
【0027】
データシンボルのセットは、1つまたは複数のデータシンボルを含むことができる。データシンボルは、いくつかの実施形態ではビットであることができる。第1および/または第2通信モードの選択は、他のパラメータを考慮することができる。例えば、所定の変動が検出された場合に、複数の可能な通信モードから第1通信モードが選択されることができる。同様に、所与の変動が検出されない場合に、異なる複数の可能な通信モードから第2通信モードが選択されることができる。可能な通信モードからの選択は、電力伝送信号の変動以外の他のパラメータに応じることができる。
【0028】
所与の変動は、多くの実施形態において、予め定められた変動であることができる。
【0029】
本発明のオプションの特徴によれば、第2通信モードは、チップシーケンスの第2のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって変調される各データシンボルを含む。
【0030】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。
【0031】
本発明のオプションの特徴によれば、チップシーケンスの第2のセットのうちのチップシーケンスは、異なるデータシンボル値にリンクされ、チップシーケンスの第1のセットの各チップシーケンスは第1の長さを有し、チップシーケンスの第2のセットの各チップシーケンスは第1の長さとは異なる第2の長さを有する。
【0032】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。
【0033】
このアプローチは、適切な通信モードおよび変調アプローチの効率的な選択および適応を可能にすることができる。
【0034】
第2の長さは第1の長さよりも短く、多くの場合、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、または64倍以上短い場合がある。
【0035】
本発明のオプションの特徴によれば、所与の変動は、電力伝送信号の電力レベルおよび電力伝送信号の周波数のうちの少なくとも1つの変動である。
【0036】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能及び//又は動作を提供することができる。
【0037】
本発明のオプションの特徴によれば、データシンボルのセットは、電力伝送信号に対する少なくとも1つの電力レベル変更要求を含む。
【0038】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。それは、多くの実装形態において、チップシーケンスベースの通信を実装するために必要とされる複雑さおよび/または変更を低減することができる。それはさらに、典型的には、所与の変動が存在するか否かの容易なおよび/またはより正確な決定を可能にすることができる。
【0039】
本発明のオプションの特徴によれば、データシンボルのセットは、少なくとも1つの電力制御ループ誤差メッセージを含む。
【0040】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。それは、多くの実施形態において、このアプローチを実施するために必要とされる複雑さおよび/または変更を低減することができる。それはさらに、典型的には、所与の変動が存在するか否かの容易なおよび/またはより正確な決定を可能にすることができる。
【0041】
本発明のオプションの特徴によれば、送信機は、第2通信モードを使用してデータシンボルの更なるセットを送信するように構成され、データシンボルのさらなるセットは電力伝送信号の異なる変動を要求し、異なる変動は所与の変動とは異なる変動であり、検出器は、電力伝送信号の変動が異なる変動により近く一致するかどうか、または電力伝送信号の変動が異なる変動と所与の変動との組合せにより近く一致するかどうかに応じて、所与の変動を検出するように構成される。
【0042】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。異なる変動は、具体的には、所与の変動と反対の変動であることができる。
【0043】
本発明のオプションの特徴によれば、送信機は、電力伝送フェイズ中にデータシンボルのセットを送信するように構成される。
【0044】
これは、多くのシナリオおよび実施形態において、改善された性能および/または動作を提供することができる。
【0045】
本発明の任意の特徴によれば、電力伝送信号の期待される変動の要求は、電力伝送の終了の要求であり、選択器は、電力伝送フェイズの終了が検出された場合、後続の電力伝送フェイズのために第1通信モードを選択するように構成される。
【0046】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。それは、多くの場合、典型的には、既存の動作およびメッセージを利用しながら、効率的かつ/または容易に変動を検出することを提供することができる。
【0047】
本発明のオプションの特徴によれば、送信機は、電力送信機からの検出電力伝送信号を検出することに応じてデータシンボルのセットを送信するように構成され、期待される変動は検出電力伝送信号の変動である。
【0048】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。検出電力伝達信号は、具体的にはping信号であってもよい。
【0049】
本発明のオプションの特徴によれば、電力受信機は、送信機が第1通信モードを使用して、通信パラメータのための第1の値を用いてデータシンボルのテストセットを送信することをさらに含み、データシンボルのテストセットは電力伝送信号の第2の所与の変動の要求を含み、選択器は、電力伝送信号の変動が第2の所与の変動と一致する場合、通信パラメータを第1の値に設定し、一致しない場合、通信パラメータを異なる値に設定するように構成される。
【0050】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。このアプローチは、電力送信機から電力受信機への通信を必要とすることなく、通信パラメータの効率的な適応を可能にすることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、通信パラメータは、チップシーケンス長および負荷変調深度のうちの少なくとも1つである。
【0052】
これは、多くのシナリオにおいて、改善された性能および/あるいは動作を提供し、ならびに/または実施および/あるいは配備を容易にすることができる。
【0053】
本発明の別の態様によれば、 電磁電力伝送信号を介して電力受信機に無線で電力を供給するための電力送信機が提供され、当該電力送信機は、 出力回路に印加される駆動信号に応じて電力伝送信号を生成するように構成された送信機コイルを含む当該出力回路と、 駆動信号を生成するように構成されたドライバと、 電力伝送信号の負荷変動を検出する負荷検出器と、 チップシーケンスのセットのうちのチップシーケンスと電力伝送信号の負荷変動との相関が閾値を超えたことに応じて、有効に受信されたデータシンボルを検出するための検出器であって、 チップシーケンスのセットのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされている、検出器と、 有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて電力伝送信号に変動を適用するように構成されたアダプタと、有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、それ以外の場合に、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するように構成された選択器であって、 第1通信モードは、チップシーケンスのセットと前記電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて各データシンボルが受信されることを含み、第2通信モードは、チップシーケンスのセットと電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて各データシンボルが受信されることを含まない、選択器と、選択された通信モードに従って電力受信機から受信された負荷変調データシンボルを決定するように構成された負荷変調受信機とを有する。
【0054】
本発明の別の態様によれば、電磁電力伝送信号を介して電力送信機から電力を無線で受信するための電力受信機の動作方法が提供され、当該方法は、入力回路が電力伝送信号から電力を抽出する受信機コイルを含むステップと、電力伝送信号を負荷変調することによりデータシンボルのセットを電力送信機に送信するステップであって、 データシーケンスの各データシンボルは、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって変調され、 チップシーケンスの第1のセットのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされ、 データシンボルのセットが電力伝送信号の所与の変動の要求を含む、ステップと、電力伝送信号を監視して、電力伝送信号の所定の変動を検出するステップと、 所定の変動が検出された場合、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、所定の変動が検出されなかった場合、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するステップであって、 第1通信モードは、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって各データシンボルが変調されることを含み、 第2通信モードは、チップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによってデータシンボルが変調されることを含まない、ステップと、選択された通信モードを使用して電力伝送フェイズ中にデータシンボルを電力送信機に送信するステップとを有する。
【0055】
本発明の別の態様によれば、電磁電力伝送信号を介して電力受信機に無線で電力を供給するための電力送信機の動作方法が提供され、 当該方法は、送信機コイルが、当該送信機コイルに印加される駆動信号に応じて電力伝送信号を生成するステップと、駆動信号を生成するステップと、電力伝送信号の負荷変動を検出するステップと、チップシーケンスのセットのうちのチップシーケンスと電力伝送信号の負荷変動との間の相関が閾値を超えたことに応じて、有効に受信されたデータシンボルを検出するステップであって、 チップシーケンスのセットのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされているステップと、有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて、電力伝送信号に変動を適用するステップと、有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて、選択された通信モードとして第1通信モードを選択し、それ以外の場合、選択された通信モードとして第2通信モードを選択するステップであって、 第1通信モードは、チップシーケンスのセットと電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて各データシンボルが受信されることを含み、第2通信モードは、チップシーケンスのセットと電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて各データシンボルが受信されることを含まない、ステップと、選択された通信モードに従って、電力受信機から受信した負荷変調データシンボルを決定するステップとを有する。
【0056】
第1の態様に関して提供されるコメントは、必要な変更を加えて、他の態様にも適用されることが理解されよう。
【0057】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の実施形態は、単なる例として、図面を参照して説明される。
図1】本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの要素の一例を示す図。
図2】本発明のいくつかの実施形態による電力送信器の要素の一例を示す図。
図3】電力送信機のためのハーフブリッジインバータの例を示す図。
図4】電力送信機のためのフルブリッジインバータの例を示す図。
図5】本発明のいくつかの実施形態による電力受信機の要素の一例を示す図。
図6】チップシーケンスの一例を示す図。
図7】本発明のいくつかの実施形態による通信交換の例を示す図。
図8】本発明のいくつかの実施形態による通信交換の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の説明は、Qi 規格書から知られているような電力伝送アプローチを利用する高電力無線電力伝送システムに適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てる。しかしながら、本発明は、この用途に限定されず、多くの他の無線電力伝送システムに適用されてもよいことが理解されるであろう。
【0060】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの一例を示す。電力伝送システムは、送信機コイル/インダクタ103を含む(またはそれに結合される)電力送信機101を含む。システムは、受信機コイル/インダクタ107を含む(またはそれに結合される)電力受信機105をさらに備える。
【0061】
システムは、電力送信機101から電力受信機105に電力を誘導的に伝送することができる誘導電磁電力伝送信号を提供する。具体的には、電力送信機101が電磁信号を生成し、これは送信機コイルまたはインダクタ103によって磁束として伝搬される。電力伝送信号は、典型的には、約20kHz~約500kHzの間の周波数を有することができ、多くの実用的なシステムでは、約120~150kHzであることができる。送信機コイル103及び受電コイル107は緩く結合されており、従って、受電コイル107は、電力送信機101からの電力伝送信号(の少なくとも一部)をピックアップする。したがって、電力は、送信機コイル103から受電コイル107への無線誘導結合を介して、電力送信機101から電力受信機105に伝送される。電力伝送信号という用語は主に、送信機コイル103と受電コイル107との間の誘導信号/磁界(磁束信号)を指すために使用されるが、同等なものとして、それは送信機コイル103に供給されるか、または受電コイル107によって取り出される電気信号を指すものとしても考えられ、使用されることができることが理解されるであろう。
【0062】
実施例では、電力受信機105は、具体的には受信機コイル107を介して電力を受信する電力受信機である。しかしながら、他の実施形態では、電力受信機105は、金属加熱素子のような金属素子を含んでもよく、この場合、電力伝送信号は素子の直接加熱をもたらす渦電流を直接誘導する。
【0063】
以下では、電力送信機101および電力受信機105の動作を、概してQi規格(本明細書で説明される(または必然的である)修正や拡張を除く)による実施形態を具体的に参照して説明する。
多くの無線電力伝送システムは、送信機コイル103が共振回路の一部であり、典型的には受信機コイル107も共振回路の一部である共振電力伝送を利用する。多くの実施形態では、共振回路は直列共振回路であり得、したがって、送信機コイル103および受信機コイル107は対応する共振キャパシタと直列に結合されることができる。共振回路の使用は、より効率的な電力伝送を提供する傾向がある。
通常、無線電力伝送システムは、システムを適切な動作点に向けて導くために、電力制御ループを使用する。この電力制御ループは、電力送信機から電力受信機に伝送される電力の量を変化させる。受信された電力(または電圧または電流)を測定することができ、設定電力値により、誤差信号を生成することができる。電力受信機は、この誤差信号を電力送信機の電力制御機能に送り、この静的誤差を、理想的にはゼロに低減する。
【0064】
図2は、図1の電力送信機101の要素をより詳細に示す。
【0065】
電力送信機101は電力送信機コイル103に供給される駆動信号を生成することができるドライバ201を含み、電力送信機コイル103は引き換えに電磁電力伝送信号を生成し、それによって電力受信機105への電力伝送を提供する。送信機コイル103は、送信機コイル103とキャパシタ203とを含む出力共振回路の一部である。この例では、出力共振回路は直列共振回路であるが、他の実施形態では出力共振回路は並列共振回路であることができることが理解されよう。複数のインダクタおよび/またはキャパシタを使用するものを含む任意の適切な共振回路が使用されることができることが理解されるであろう。
【0066】
ドライバ201は出力共振回路に、したがって送信機コイル103に供給される電流および電圧を生成する。ドライバ201は、典型的には直流電圧から交流信号を生成するインバータの形の駆動回路である。ドライバ201の出力は、通常、スイッチブリッジのスイッチの適切なスイッチングによって駆動信号を生成するスイッチブリッジである。図3は、ハーフブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1およびS2は、同時に閉じることがないように制御される。交互に、S2が開いている間にS1が閉じられ、S1が開いている間にS2が閉じられる。スイッチは、所望の周波数で開閉され、それによって、出力において交流信号を生成される。典型的には、インバータの出力は、共振キャパシタを介して送信機インダクタに接続される。図4は、フルブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1およびS2は、同時に閉じることがないように制御される。スイッチS3およびS4は、同時に閉じることがないように制御される。交互に、S2とS3が開いている間はスイッチS1とS4が閉じ、S1とS4が開いている間はスイッチS2とS3が閉じ、それによって出力に方形波信号が生成される。スイッチは、所望の周波数で開閉される。
【0067】
電力送信機101は、所望の動作原理に従って電力送信機101の動作を制御するように構成される電力送信機コントローラ205をさらに有する。具体的には、電力送信機101がQi規格に従って電力制御を実行するために必要な機能の多くを含むことができる。
【0068】
電力送信機コントローラ205は特に、ドライバ201による駆動信号の生成を制御するように構成され、特に、駆動信号の電力レベル、従って、生成される電力伝送信号のレベルを制御することができる。電力送信機コントローラ205は、電力伝送フェイズ中に電力受信機105から受信された電力制御メッセージに応じて電力伝送信号の電力レベルを制御する電力ループコントローラを備える。
【0069】
図5は、電力受信機105のいくつかの例示的な要素を示す。
この例では、受信機コイル107は、受信機コイル107と共に入力共振回路を形成するキャパシタ503を介して電力受信機コントローラ501に結合される。したがって、電力伝送は、共振回路間の共振電力伝送であり得る。他の実施形態では、電力受信機および電力送信機のうちの1つのみが電力伝送のために共振回路を利用することができるか、あるいはいずれも利用しない。
【0070】
電力受信機コントローラ501は、スイッチ507を介して受信機コイル107を負荷505に結合する。電力受信機コントローラ501は、受信機コイル107によって抽出された電力を負荷505に適した供給に変換する電力制御経路を含む。いくつかの実施形態では、電力受信機コントローラ501は、入力共振回路をスイッチ507または負荷505に単に接続する直接電力経路を提供することができ、すなわち、電力受信機コントローラ501の電力経路は単に2つのワイヤによって実装されることができる。他の実施形態では、電力経路は、直流電圧を供給するために、例えば整流器、および、場合によっては平滑キャパシタを含むことができる。さらに他の実施形態では、電力経路は、例えば、電圧制御回路、インピーダンス整合回路、電流制御回路などのより複雑な機能を含むことができる。同様に、スイッチ507はいくつかの実施形態でのみ存在してもよく、いくつかの実施形態では負荷505が入力共振回路に恒久的に結合されることができることが理解されよう。
【0071】
さらに、電力受信機コントローラ501は電力伝送を実行するために必要とされる様々な電力受信機コントローラ機能、特に、Qi規格に従って電力伝送を実行するために必要とされる機能を含むことができる。
【0072】
電力受信機105は、電力送信機101にデータを送信するように構成される。そのようなデータは、特に、当業者に知られているように、電力伝送中に電力伝送信号の電力レベルを制御するためのフィードバック電力ループを実施するために使用される電力制御ループ誤差メッセージを含むことができる。電力受信機は、多くの実施形態では、当業者に知られているように、異なる目的を果たす様々な異なるメッセージを送信することが可能である。例えば、Qi規格で規定されているような様々な異なるメッセージが送信されることができる。メッセージは、1つまたは複数のデータビット/シンボルを含むことができる。
【0073】
電力受信機は、負荷変調を使用して電力送信機にメッセージを送信するように構成される。
【0074】
当業者にはよく知られているように、負荷変調のために、電力伝送信号の負荷の変化が電力受信機によって導入されることができ、ここで、この変化は送信されるべきデータ値に従う。そして、これらの変化は電力受信機からのデータを復号するために、電力送信機によって検出されることができる。
【0075】
負荷変調は、電力受信機が、例えばQi無線電力規格に従って、制御メッセージまたは他のデータを電力送信機に通信するための方法として使用されることができる。
【0076】
典型的には、負荷変調を実行する2つの主な方法があり、すなわち、入力回路の抵抗負荷/電力抽出を直接変更すること、および/または、例えば、入力回路の無効負荷を変更することによって、入力回路の共振を離調すること(典型的には送信されるべきデータに沿ってキャパシタをイン/アウトすること)のいずれかである。電力伝送信号を負荷変調するために、電力受信機によって同様のアプローチが使用されることができる。
【0077】
それに対応して、電力送信機において、Qi規格システムについて知られているものなどの検出アプローチが、負荷変動を検出するために使用されることができる。例えば、駆動信号の電力レベルまたは電流振幅の直接測定が負荷の指標として使用されることができ、したがって、当業者に知られるように、電力受信機によって導入される負荷変調変動が使用されることができる。
【0078】
電力受信機105は、電力伝送信号を負荷変調することによってデータを電力送信機101に送信するように構成されたデータ送信機509を備える。例えば、データ送信機509は、電力受信機コントローラ501または共振キャパシタ503と並列に配置され、それによって共振周波数および電力伝送信号の負荷を変化させることができる通信コンデンサをスイッチイン/スイッチアウトするように構成されることができる。
【0079】
データ送信機509は、電力受信機コントローラ501に結合されることができ、電力送信機への送信のために電力受信機コントローラ501からデータを受信するように構成されることができる。
【0080】
例えば、データ送信機509は、電力受信機コントローラ501から電力誤差制御データを受信し、負荷変調を使用して、対応する電力誤差制御メッセージを電力送信機101に送信することができる。動作中、システムは、典型的には、電力伝送信号が適切な動作パラメータ/特性を達成し、電力伝送が適切な動作点で動作するように、駆動信号を制御するように構成される。そうするために、電力送信機は、電力受信機から受信される電力制御誤差メッセージに応じて電力伝送信号/駆動信号の電力特性が制御される電力制御ループを使用して駆動信号のパラメータを制御するように構成される。
【0081】
一定の、典型的には頻繁な間隔で、電力受信機は、電力送信機に電力制御誤差メッセージを送信する。いくつかの実施形態では、(相対誤差メッセージではなく)所望の絶対電力レベルを示す直接電力設定値変更メッセージが送信されることができる。電力受信機105は、そのような電力制御ループをサポートするための機能を備え、例えば、電力受信機コントローラ501は、負荷に供給される負荷信号の電力または電圧を連続的に監視し、これが所望の値を上回るかまたは下回るかどうかを検出することができる。それは、一定の間隔で、電力伝送信号の電力レベルが増加または減少されることを要求する電力制御誤差メッセージを生成することができ、この電力制御誤差メッセージを電力送信機に送信することができる。そのような誤差制御メッセージ、ならびに他のメッセージは、負荷変調によって送信されることができる。
【0082】
データ送信機509は、異なる負荷変調送信モードに対応する異なるモードを使用して電力送信機にデータを送信するように構成される。
【0083】
第1通信モードでは、データ送信機509は、チップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって電力伝送信号を負荷変調することによってデータシンボルを送信するように構成される。チップシーケンスは、チップシーケンスの第1のセットから選択され、この例では、データ送信機509は、チップシーケンスの第1のセットが記憶されたチップシーケンス記憶部511に結合される。典型的には、チップシーケンスのセットは、各々の可能なデータシンボル値に対するチップシーケンスを含む。例えば、バイナリ通信が使用される場合には、チップシーケンスの第1のセットは、2つのチップシーケンスのみを含むことができる。チップシーケンス記憶部511は、任意の適切な形態でチップシーケンスを記憶することができ、可能なデータシンボルごとに完全なシーケンスを記憶する必要がないことが理解されよう。例えば、1つまたは複数のチップシーケンスは、別のチップシーケンスとの関係によって表されることができる。例えば、バイナリ通信の場合、チップシーケンス記憶部511は、バイナリデータ値のうちの一方に対応する単一のチップシーケンスのみを記憶することができる。他方のバイナリデータ値のためのチップシーケンスは、記憶されたビットシーケンスの逆として与えられ得るのと同じ記憶されたビットシーケンスによって表されることができる。したがって、多くの場合、チップシーケンスの第1のセットは、データシンボルのペアのために相補的な逆チップシーケンスを利用し、したがって、典型的には使用されるチップシーケンスの半分のみがチップシーケンス記憶部511に明示的に記憶され、残りのチップシーケンスはこれらの逆として自動的かつ暗黙的に記憶される。
【0084】
第1のセット中のチップシーケンスは、典型的には同じ長さである。
【0085】
負荷変調は、多くのシステムやアプリケーションにおいて有利な動作を提供することができ、電力を伝送する目的で電力伝送信号が生成される電力伝送システムに適した信頼性のある複雑性が低い動作を提供する傾向がある。通信キャリアとしての電力伝送信号の再利用は、典型的には、複雑さを低減し、必要な回路を少なくし、それによってコストを低減することができる。Qi規格は、元々、バイナリデータ値間の容易な区別を可能にする変調シンボル形状での負荷変調を使用することによって、電力受信機から電力送信機への単方向通信を用いて実装された。
【0086】
しかしながら、例えばQiシステムで使用される負荷変調は、いくつかの関連する欠点も有する場合がある。そのような欠点は、例えば、電磁的互換性、通信品質(ビット誤り率)、および可聴ノイズなどの問題に関連することができる。
【0087】
負荷変調は、電磁スペクトル内に追加の成分を生成し、追加の電磁干渉および電気ノイズを引き起こす可能性がある。また、多くの場合、負荷変調によって引き起こされる電磁場の変化は、可聴ノイズをもたらす機械的な力および動きを引き起こす場合があることが分かっている。また、強い負荷変調は、無線電力システムにおけるエネルギーバランスを乱し、通信キャリアスペクトル内のスプリアス発振をもたらす可能性があることが分かっている。スプリアス発振が存在する場合、無線電力送信機が信号を適切に復調することができないことが多く、したがって、安全な動作を維持するために電力供給を中断しなければならない。
【0088】
この問題は、より高い電力伝送レベルに対して悪化する傾向がある。実際、電力伝送信号の電力レベルが増加するにつれて、負荷変調のための負荷変化も同様に増加することが典型的に必要とされる。典型的には、負荷変調は、電力伝送信号の電力レベル、すなわち最大電力レベルの適切な割合であることが必要とされる。例えば、負荷変調によって引き起こされる負荷変調は、電力受信機の一般的な負荷の例えば約1%以上の大きさを有することが要求される場合がある(すなわち、負荷変調によって引き起こされる受信機コイルの負荷変動は、受信機コイル107の総負荷の1%以上であることが要求されるだろう)。Qiは、元々、5W程度未満の低い電力アプリケーションのために導入された。そのような低い電力レベルでは、負荷変調の欠点の影響は、比較的扱いやすいか、またはそれ程重要ではない。しかしながら、Qiの最大電力レベルは現在、15Wの最大値まで増加されており、45Wの最大レベルまでこれをさらに増加させるための作業が進行中である。しかしながら、このような電力レベルでは、上述の欠点が顕著になる傾向があり、これらはQi規格の更なる発展に大きな障害となる可能性がある。
【0089】
図1図2および図5のシステムは、第1通信モードに従って、多くの状況において、負荷変調に関連する問題のうちの1つまたは複数に対処することができるアプローチを利用することができる。第1通信モードでは負荷変調が用いられ、各シンボルは複数のチップを含むチップシーケンスによって表され、典型的には15~127個のチップを含むシーケンスによって表される。したがって、各シンボルまたはビットに従って負荷を単に変動させるのではなく、データ送信機509は、一連の負荷変化および変動によって所与のシンボル(典型的にはビット)を送信するように構成され、ここで、その変化および変動はシンボルごとに異なる。具体的には、チップシーケンスはシンボルごとに定義されることができ、所与のシンボルを送信するとき、データ送信機509は、その特定のシンボルのためのチップシーケンスを読み出し、そのシンボルのためのチップシーケンスに従って電力伝送信号を負荷変調することに進むことができる。
【0090】
電力送信機が第1通信モードをサポートすることができるとき、電力送信機は、シーケンス全体を考慮することによって負荷変調を検出することができ、具体的には、電力送信機は、受信されたシンボルを、検出された負荷変動パターンがそのシンボルのチップシーケンスパターンと最も密接に一致するシンボルとして決定しようとすることができる。
【0091】
そのようなアプローチは特に、変調深さ、すなわち負荷変動の大きさが大幅に低減されることを可能にし、これは、例えば、電磁雑音および干渉を低減し、音響雑音を低減し、スプリアス振動を低減することができる。それはまた、多くの実施形態において、改善された信号対雑音比をもたらし、例えば、しばしばより低いビット誤り率を有する、大幅に改善された、より信頼できる通信をもたらすることができる。したがって、全体的に改善された電力伝送を達成することができる。
【0092】
多くの実施形態では、2つのデータシンボル値のみが可能であるバイナリ通信が使用されることができる(「0」ビット値または「1」ビット値に対応する)。そのような場合、一方のビット値が所与のチップシーケンスによって表されることができ、他方のビット値は逆のビットシーケンス、すなわち、各チップ値を反対の値に変更することから生じるビットシーケンスに関連付けられることができる。したがって、2つのビットシーケンスは典型的には相補的であり、一方が他方に-1を乗算することによって生じる(チップ値は+1および-1によって表される)。
【0093】
そのような場合の特定の利点は、単一の相関を使用してビット値間を区別することができるので復調が特に容易であることであるが、これは相関の大きさがチップシーケンスに対して同じであるが、相関値の符号が反対であるからである。
【0094】
以下の説明はそのようなバイナリ通信に焦点を当てるが、本発明はバイナリ通信のみに限定されないことが理解されよう。
【0095】
そして、データ送信機509は、典型的には電力受信機コントローラ501から、電力送信機に送信されるべきデータシンボルを受信するように構成されることができ、対応するチップシーケンスを決定して、このチップシーケンスによって電力伝送信号を負荷変調するように進むことができる。典型的には、データシンボルはバイナリであるが、場合によってはより高次の変調シンボルが使用されてもよい(すなわち、3つ以上の可能な値を有する)。場合によっては、そのようなより高次のデータシンボルは、受信されたデータビットの組合せに対応することができる。例えば、2ビットは、単一の四元データシンボルに結合されることができる。そのような組み合わせは、それらのデータビットが関連しあうときと、例えば完全に独立しているときとの両方で可能であり得る。
【0096】
この例では、データ送信機509は特に、それぞれのデータシンボルのための異なるチップシーケンスが記憶されるチップシーケンス記憶部511に結合される。チップシーケンス記憶部511は、各々の基準チップシーケンスが特定のデータシンボル値にリンクされる基準チップシーケンスのセットを記憶することができる。負荷データ送信機509は、送信のためのデータシンボルを受信したことに応じて、チップシーケンス記憶部511から対応するチップシーケンスを読み出すことに進むことができる。したがって、データ送信機509は特に、第1通信モードで使用されるチップシーケンスの第1のセットからチップシーケンスをチップ記憶部511から読み出すことができる。
【0097】
図6は、2つの可能なチップシーケンスの一部の例を示す。各チップシーケンスは一連のチップを含み、各チップは、変調レベルのセットから選択される一定の変調負荷レベルを有する。典型的には、変調レベルのセットは2つであり、変調負荷レベルが2つの可能なレベルの間で切り替わり得るバイナリチップシーケンスに対応する。したがって、シンボル時間は複数のチップ間隔に分割され、各チップ間隔の変調負荷レベルは変調負荷レベルの所定のセットから選択され、チップの変調負荷レベルシーケンスはそれぞれのチップシーケンスに対して異なる。典型的には、各シーケンスが少なくとも10個のチップを含み、多くの場合、大幅に多くのチップを含む。多くの実施形態では、各々のチップシーケンスが2N -1の長さを有することができ、ここで、Nは典型的には4以上の整数である。
【0098】
より長いチップシーケンスは改善された雑音抑圧などを提供することができるが、所与のチップレートについてシンボル時間が増加することなるのでデータレートが低下することにもなるだろう。チップシーケンス長の増加はまた、特に、より長いシーケンスとの相関が、多数の計算を本質的に必要とする場合がある受信機において、複雑さおよびリソース需要を増加させる。典型的な適切な値はN=5であり、これは31チップのチップ長である。
【0099】
記憶されたチップシーケンスの各々が1つのシンボルに割り当てられる。したがって、電力送信機に送信される必要があり得る各々の可能なデータシンボル値は、リンクされた/関連付けられたチップシーケンスを有することができる。例えば、2つのデータシンボルのみが考えられる場合、すなわち、バイナリ通信が実装される場合、チップシーケンスのセットは、2つのチップシーケンスのみを含むことができる。この場合、チップシーケンスは、前述のように互いに逆であることができ、具体的には、一方が他方の-1の乗算から生じることができる。
【0100】
チップシーケンスの第1のセットは、所与のデータシンボルに対して2つ以上のチップシーケンスを含むことが可能であり、すなわち、複数のシーケンスが同じデータシンボルにリンクされることが可能である(例えば、異なる長さを有するチップシーケンス)。しかしながら、典型的には、各チップシーケンスが1つのデータシンボルにリンクされ、1つのデータシンボルはチップシーケンスの第1のセットのうちの1つのチップシーケンスのみにリンクされる。
【0101】
2つの逆のチップシーケンスが使用されるこのようなバイナリアプローチは、2つの起こりうるバイナリ値が、同じチップシーケンスによって変調されるが、データシンボルが反対のデータ値(例えば、+1および-1)を有すると考えることと等価であることが理解されよう。
【0102】
電力受信機がデータシンボルを送信しようとするとき、その値は、電力受信機コントローラ501からデータ送信機509に供給され、次いで、対応するチップシーケンスがチップシーケンス記憶部511から読み出される。バイナリの場合、このチップシーケンスは、共通の記憶されたチップシーケンスとシンボル値とを乗算することによって生成されることができる。
【0103】
次いで、決定されたチップシーケンスは、電力伝送信号上で適切なチップシーケンスを変調するために、入力回路のための切り替え可能な負荷を制御するように構成されたデータ送信機509に供給される。この例では、データ送信機509は、チップシーケンスのチップに従って変調負荷をスイッチインおよびスイッチアウト(オン/オフ)するように構成されることができ、すなわち、負荷がチップシーケンスの変調負荷値に従って変更されることができる。典型的には、データ送信機509は、例えば、電力受信機コントローラ501または共振キャパシタ503と並列に配置された通信コンデンサをスイッチイン/スイッチアウトするように構成されることができ、それによって、共振周波数および電力伝送信号の負荷を変化させることができる。
【0104】
したがって、この例では、各シンボル(典型的にはビット)時間間隔が複数(例えば、31個)のチップ間隔に分割され、変調負荷は各チップ間隔内で一定であり、変調負荷はデータシンボルごとに異なるパターンに従ってチップ間隔間で変動する(変化するか、または変化しない)。
【0105】
第1通信モードに従って負荷変調を受信するために、電力送信機は、チップシーケンスベースの通信をサポートするために必要な機能を有さなければならない。図2は、第1通信モードに従って送信された図5の電力受信機105からのデータを受信することができる電力送信機の例である。
【0106】
図2の電力送信機101は、電力伝送信号の負荷変動を検出するように構成された負荷検出器209を備え、具体的には電力伝送信号および/または駆動信号の負荷変動シーケンスを決定することができる。したがって、負荷変動シーケンスは、データが送信されているとき、受信されたチップシーケンスに対応することができる。例えば、駆動信号の負荷値(例えば、電流および/または電力)が、メッセージが電力受信機から受信される(ことが予定される)時間中に、チップ間隔に対応する時間間隔で測定およびサンプリングされることができる。場合によっては、その値は正規化および量子化されることができ、例えば、バイナリチップシーケンスが使用される場合、負荷検出器は、例えば、高い負荷と低い負荷を表す二値シーケンスを生成することができる。したがって、負荷変調の受信されたチップシーケンスが、出力回路の信号のサンプリングから生成される。
【0107】
負荷検出器209は、それが(変調負荷値のチップシーケンスに対応する)受信された負荷変動を提供する負荷変調受信器207に結合される。負荷変調受信機は、電力受信機によって記憶されて使用されるチップシーケンスに特に対応する基準チップシーケンスのセットを記憶する。したがって、負荷変調受信機207は、チップシーケンスの第1のセットのチップシーケンスを記憶し、電力受信機および電力送信機は、データシンボルとリンクされたチップシーケンスのローカルレプリカを記憶している。電力送信機101は、電力受信機によって使用されるチップシーケンスのローカル表現を備える。電力受信機および電力送信機は、基準チップシーケンスとデータシンボルとの間の対応するリンクを記憶している。
【0108】
この例では、負荷変調受信機207は、単一のデータシンボルチップシーケンス、すなわち、バイナリデータシンボルを変調するために使用されるデータシンボルチップシーケンスのみを記憶することができる(したがって、単一の記憶されたデータシンボルチップシーケンスは一方のバイナリデータ値を表すチップシーケンスと等しく、逆の(典型的には符号が反転した)チップシーケンスが他方のバイナリデータ値を表す)。
【0109】
負荷変調受信機207は、(チップシーケンスの第1のセットのうちの)記憶されたデータシンボルチップシーケンスと電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて、電力受信機から受信された負荷変調データシンボルを決定するように構成される。具体的には、いくつかの実施形態では、負荷変調受信機207は、負荷検出器209によって提供される決定された負荷変動シーケンスを、チップシーケンスの第1のセットの全ての記憶されたデータシンボルチップシーケンスと相関させて、それぞれについての相関値を決定することができる。いくつかのシーケンスが互いに逆である記載されたバイナリケースのようなケースでは、1つの相関のみが実行されることができ、相関値の符号が2つの可能なチップシーケンスとの相関を反映する。
【0110】
したがって、負荷変調受信機207は、受信機負荷変動シーケンスを(1つまたは複数の)基準チップシーケンスと相関させて、これらがどれだけ密接に一致するかを示す相関値を決定することができる。
【0111】
そして、負荷変調受信機207は、関連する相関値が所与の閾値を超えるように十分に高いチップシーケンスにリンクされたデータシンボルとして、データシンボルを決定することができる。閾値は、多くの実施形態では、適応閾値であることができ、例えば、閾値は、他のシンボルとの相関値に依存して設定されることができる。具体的な例として、閾値は、次に高い相関値の値として設定され(例えば、最小閾値が適用される)、その結果、データシンボルは相関値が最も高い(例えば、最小閾値を超える)データシンボルとして選択される。
【0112】
したがって、第1通信モードで動作するとき、電力受信機は、データシンボルごとに比較的長いチップシーケンスを用いて負荷変調を使用してデータを電力送信機に送信することができ、適切な能力を有する電力送信機は、この通信を受信するように構成されることができる。このアプローチは、多くの実施形態において、大幅に改善された通信および動作を提供することができる。特に、大幅に改善された通信性能および信頼性、特に、シンボル信号対雑音比が、大幅に増加されることができる。これは、変調深さ、具体的には電力伝送信号レベル/電力伝送レベルに対する変調負荷変動が大幅に低減されることを可能にすることができる。実際、多くの場合、変調深さは、10倍、100倍またはそれ以上に低減されることができる。これは、負荷変調を使用することの欠点の多くを低減および軽減することができ、例えば、電磁干渉を低減し、電気雑音を低減し、機械雑音を低減し、スプリアス振動を防止または軽減することができる。
【0113】
例えば、(最大2kBps通信レートの)Qiで使用されるビットレートに対応するチップレートを使用して、信号対雑音比の改善は、シーケンス長に対応する量だけ増加されることができる。例えば、63または127のビット長を使用することは、同じビット誤り率を維持しながら、対応する量だけ、シンボルエネルギー対雑音比を増加させることができ、変調深さが、対応して、63または127倍だけ低減されることを可能にする。
【0114】
そのようなアプローチの欠点は、有効な通信レートが低下される可能性があることである。例えば、63または127のシーケンス長を使用すると、有効なボーレートがそれぞれ30.7または15.7 bpsに低下する可能性がある。これに対処するために、チップ時間間隔持続時間を短縮することができる。この短縮は、所望の通信レートとビット誤り性能との間の適切なトレードオフであり、特定のアプリケーションおよび実装のために選択されることができる。チップレートを増加させることで、負荷変調の必要な帯域幅および周波数スペクトルが対応して増加し、潜在的には大幅に増加する。しかしながら、無線電力伝送システムにおける通信は、典型的には、帯域幅が制限されないか、または通信の帯域幅に敏感ではなく、したがって、そのような追加の帯域幅は典型的には他の機能または性能に影響を及ぼすことなく利用可能であり得ることが、現在のアプローチの特定の利点である。
【0115】
多くの実施形態では、システムは、負荷変調通信を電力伝送信号/駆動信号に同期させるように構成されることができる。
【0116】
多くの実施形態では、データ送信機509は、具体的には第1のチップシーケンスの負荷変調を電力伝送信号に同期させるように構成されることができる。電力伝送信号は、典型的には、10kHz~500kHzの範囲の動作周波数を有し、Qiについては、多くの場合、約100kHzである。データ送信機509は、同期されるべきチップ時間間隔を、電力伝送信号の振動および周期に同期させることができる。例えば、多くの実施形態では、データ送信機509が、電力伝送信号周期の倍数であるチップ持続時間/時間間隔を使用することができる。したがって、各チップは、電力伝送信号の期間の倍数である持続時間を有することができ、すなわち、チップ間隔の持続時間はN*Tとすることができ、Nは整数であり、Tは、電力伝送信号/駆動信号の期間の持続時間である。
【0117】
多くの実施形態では、データ送信機509は、チップ間隔の持続時間を電力伝送信号の周期の持続時間に同期させるだけでなく、チップの開始および/または停止タイミングを電力伝送信号のタイミングに合わせることもできる。具体的には、チップ間の遷移時間は、電力伝送信号のゼロ交差で、または、例えば、電力伝送信号のゼロ交差に対する固定オフセットで、発生するように同期されることができる。同期は、電力伝送信号によって受信機コイル107内に誘導される信号のタイミングに基づき得ることが理解されよう。
【0118】
同様に、データ送信機509は、(整合フィルタリングが適用された後に可能である)電力伝送信号の負荷のサンプルから受信チップシーケンスを生成するように構成されることができる。
【0119】
負荷検出器209は、具体的には駆動信号の電流および/または電力、駆動信号の電流と電圧との間の相対位相、送信機コイル103を通る電流など、電力伝送信号に対応する出力回路の信号をサンプリングすることができる。そして、負荷変調受信機207は、これらのサンプリング時間の負荷値に対応するようにチップシーケンスを生成することができ、サンプリングされた変調負荷値の形の受信されたチップシーケンスを基準値と相関させることによって相関値を決定することに進むことができる。
【0120】
いくつかのアプローチでは、相関は硬判定値に基づくことができ、すなわち、硬判定受信チップ値とチップ値との直接的な比較が使用されることができることが理解されよう。いくつかの実施形態では、判定は例えば軟判定変調負荷/チップ値に基づき得る。例えば、バイナリ伝送アプローチの場合、基準チップシーケンスは、2つの値のみが可能なバイナリシーケンスであってもよい。しかしながら、受信されたチップシーケンスは、測定された変調負荷値を直接示す値などの軟判定値によって表されることができる。
【0121】
多くの実施形態では負荷検出器209がサンプリングを電力伝送信号に同期させるように構成され、具体的にはこれはそれを駆動信号に同期させることによって達成されることができる。
【0122】
多くの実施形態では、同期は、例えば1つのサンプルが(おそらく整合フィルタリング後に)チップごとに行われるようなサンプリングであってもよい。特に、チップレートが電力伝送信号の周期のN倍に等しい場合、サンプリングは、N回ごとに1回同期されることができる。したがって、多くの実施形態では、同期は、サンプリングレートが負荷変調のチップ周波数に等しいようにすることができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、サンプリングは、いくつかのサンプルがより高い周波数で生成され、次いで、所与のサンプルレートにデシメートされる2段階プロセスであり得る。例えば、電力伝送信号の周期の10倍のチップ持続時間の場合、サンプラは、周期ごとに1つのサンプルをとることができる。そして、平均化フィルタは、最後の10個のサンプルを加算することができ、すなわち、それは、(等しい重みで)10個の最新のサンプルを合計する正方形ウィンドウFIRフィルタとすることができる。そしてサンプリングの出力は、このフィルタのサンプリングされた出力であり、具体的には10期間ごとの出力であり、フィルタが単一のチップ内の10期間の合計であることと一致する。したがって、同期された瞬間におけるサンプリングは、フィルタの出力における適切に同期されたデシメーションによって効果的に達成されることができる。
【0124】
他の実施形態では、出力回路のアナログ信号の単一サンプリングのみが、チップごとに実行される。そのような状況では、サンプリングのタイミングは、各サンプルについて、シンボル持続時間の中心で生じるように同期されることができる。
【0125】
したがって、多くの実施形態では、駆動信号および電力伝送信号の動作周波数は、出力回路の信号のサンプリングのサンプリングレートの整数倍および/または負荷変調のチップ周波数の整数倍であり得る。倍数は同じであってもよく、具体的には1であってもよい。実際、多くの実施形態では、効率的な通信およびより高いデータレートを可能にするために、整数倍は有利には比較的低い。多くの実施形態において、整数は、有利には1、3、5、10または20を超えない。
【0126】
負荷変調の電力伝送信号への同期は、多くの実際の実施において、電力送信機が実行しなければならないサンプリング量の低減を可能にするので、チップレートおよび/またはビットレートの増加を可能にすることができる。チップ周波数が電力伝送信号周波数と同じである極端な場合、電力受信機は、電力伝送信号のサイクル毎にチップシーケンスに従って負荷を変化させることができる。あるいは、電力受信機は、電力信号のNサイクルごとにチップシーケンスに従って負荷を変更し、チップ周波数を係数Nだけ低減することができる。
【0127】
同期変調は、これが同期サンプリング技法を適用することを可能にし、検出された信号をそのステップ後変調シーケンスに相関させることによって、電力送信機側での変調検出を容易にする。このアプローチは典型的には効率的な通信を達成しながら、大幅に実装を容易にすることができる。
【0128】
チップシーケンスの長さは、個々の実施形態の特定の選好および要件に合わせて選択されることができ、通信信頼性と性能(例えば、ビットレート)、データレート、帯域幅、変調深さ、および関連する欠点などとの間の適切な妥協を提供するように、選択されることができる。ほとんどの実施形態では、8チップ以上および/または128チップ以下の長さが、特にQiシステムなどの無線電力伝送システムに好適かつ有利な性能を提供する。
【0129】
多くの実施形態では、チップシーケンスの第1のセットが2つのチップシーケンスのみを含むことができる。そのような例では、各シンボルは、シンボル値に応じて一方または他方のチップシーケンスによって表されることができ、したがって、各シンボルはバイナリシンボル(ビット)であり、通信はバイナリ通信であることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、チップシーケンスの第1のセットは3つ以上のチップシーケンスを含むことができ、3つ以上の異なるシンボル値が可能である。例えば、いくつかの実施形態では、チップシーケンスの第1のセットは、例えば、チップシーケンスによって通信される各シンボルについて3つの異なるシンボル値を可能にする3つのチップシーケンスを含むことができる。他の実施形態では、より多くのシーケンスが含まれることができ、各チップシーケンス/データシンボルがより多くのデータ値を表すことを可能にし、それによって有効ビットレートを増加させる。そのようなアプローチは、特に、チップシーケンス間の相関値のより大きな差異が実現可能である、より長いチップシーケンスに適している。
【0131】
例えば、31ビットのチップ長の場合、2147483648個の異なるシーケンスが可能であり、システムは、高い自己相関および低い相互相関を有するこれらのうちの2つのシーケンスを選択することができる。典型的には、これらのシーケンスは、自己相関が非常に高いシーケンスと、相互相関が最も低い(-1と1の二値を使って正規化された相互相関が-1)バイナリ逆チップシーケンスとして選択されることができる。そして、これらの2つのシーケンスは、負荷変調受信機207によって実行される相関が、受信されている2つの起こりうるチップシーケンスに対して大幅に異なる相関値を生成するので、高い信頼性を可能にするバイナリ通信のために使用されることができる。
【0132】
使用される特定のシーケンスおよびパターンは、個々の実施形態の選好および要件に依存することができる。典型的には、シーケンスが良好な相関特性を提供するように選択され、具体的には、チップシーケンスのセットが高い自己相関値および低い相互相関値を有するシーケンスからなるように選択される。多くの実施形態では、チップシーケンスは、最大長シーケンスとして選択されることができる。例えば、多くの実施形態において、チップシーケンスは、多項式から生成される最大長シーケンスとして選択されることができ、多項式の次数は、所望の/選択された変調深度と所望の通信速度に従って電力受信機によって選択される。具体的には、直接シーケンススペクトラム拡散通信および符号分割多元接続システムのために開発され、その中で使用される擬似雑音シーケンスが、説明されたアプローチにも適している傾向がある。
【0133】
前述のように、シーケンスのセットは、鏡像または反転チップシーケンスを含むことができ、すなわち、所与のバイナリチップシーケンスについて、チップシーケンスのセットは、全てのチップが相補的な値を有するチップシーケンスも含むことができる。例えば、負荷値が1および-1によって表される場合、チップシーケンスのセットは、各チップシーケンスについて、-1による乗算から生じるチップシーケンスも含み得る(1および0の値によって表されるチップシーケンスについてのすべてのチップについて0と1との間のスワップに等しい)。実際、いくつかの実施形態では、チップシーケンスのセットは、チップシーケンスおよびその反転のチップシーケンスのみを含んでもよい。そのような実施形態では、チップシーケンスと反転チップシーケンスとのペアを表すために、単一の表現のみを記憶する必要があることが理解されよう。
【0134】
そのようなアプローチは多くのアプリケーションに特に適しており、良好なパフォーマンスおよび低い複雑性をもたらすることができる。例えば、受信されたチップシーケンスと基準チップシーケンスとの間の単一の相関は、基準チップシーケンスと逆チップシーケンスとの両方に対して相関値を提供することができる。実際、ノイズが存在しない場合、基準チップシーケンスのうちの1つに対する相関値は+1であり、逆の基準チップシーケンスに対する相関値は-1である。したがって、2つのシンボル値/シーケンスに適用可能な単一の相関値を決定することができ、2つのシンボル間の選択をするために直接使用されることができる。
【0135】
反転基準チップシーケンスを使用するアプローチは、バイナリデータシンボルと単一の基準チップシーケンスとの乗算に等しいと考えることができることが理解されよう(バイナリ値を表すために1および-1の値を使用する)。
【0136】
具体例として、システムは、第1通信モードで動作するとき、以下のアプローチを採用することができる:
1.電力受信機は負荷変調の深さを大幅に低減し、その結果、スプリアス振動が発生せず、電気的および音響的ノイズが低減される。
2.電力受信機は急峻な自己相関関数を有する直接(例えば、擬似ランダム)チップシーケンスとして個々のビットを符号化する。
3.電力受信機は電力伝送信号と同期して(例えば、電力信号サイクルごとの遷移または複数の電力信号サイクルごとの遷移)負荷を操作する(典型的には負荷を変更するか、または共振回路を離調する)。
4.電力送信機は、例えば、電力伝送信号に同期したサンプリング時間(例えば、電力信号サイクル当たり1サンプル、電力信号サイクル当たり複数サンプル、または複数の電力信号サイクル当たり1サンプル)で電力送信機コイル電圧またはコイル電流を測定することによって、負荷変化を測定する。
5.電力送信機は、デジタル化されたサンプルを、データがそれによって変調されたチップシーケンスと相関させることによって、データを復号する。
6.チップシーケンスおよびシンボルごとの電力信号サイクルの数は、事前に電力受信機および電力送信機によって知られ得る。
【0137】
記載されたアプローチの利点は、多くのシナリオにおいて改善された後方互換性を提供し、多くの電力伝送システムに対して比較的わずかな修正しか必要としないことである。例えば、Qi電力伝送システムは負荷変調を既に使用しており、上述のアプローチをサポートするために、比較的わずかな修正しか必要とされないだろう。
【0138】
しかしながら、困難な問題は、説明された第1通信モードが優れた性能を提供することができる一方で、電力受信機および電力送信機の両方が通信アプローチをサポートすることができることを必要とすることである。しかしながら、多くのシステムでは、第1通信モードのような高度な通信アプローチをサポートすることができない可能性がある、潜在的に電力送信機と電力受信機の両方の大量のレガシー装置が存在する可能性がある。例えば、多くのQi電力送信機は、そのようなチップシーケンスベースの通信を含まない規格の以前のバージョンに従って展開され、したがって、電力受信機は電力送信機と通信するために、そのような通信に基づく通信モードを使用することができない可能性がある。同様に、チップシーケンス変調に基づく負荷変調メッセージを受信することができる電力送信機は、チップシーケンス通信を使用することができないレガシー電力受信機と通信することが要求される場合がある。
【0139】
そのような問題に対処するために、電力送信機および/または電力受信機は、例えばレガシー装置のような他のタイプの装置と通信するための機能を備えることができる。したがって、第1通信モードに従って通信するための機能に加えて、電力送信機および/または電力受信機はさらに、特にレガシー通信モードである第2通信モードに従って通信するための機能を備えることができる。
【0140】
しかしながら、そのような第2のレガシー通信モードが存在し、それによって、チップシーケンス通信が可能な電力送信機および/または電力受信機がこの機能を有さないレガシー装置と通信することを可能にすることができる場合であっても、個々のシナリオにおける装置の動作をどのように適応させるかには、かなりの課題が存在する。これは、いくつかのレガシー装置が潜在的に一方向でのみ通信することができるQiなどのシステムにおいて特に困難であり得る。
【0141】
例えば、Qi規格のBAP(Baseline Power Profile:ベースラインパワープロファイル)では、無線電力受信機から無線電力送信機への通信のみが行われる。これは、通信を適応させることをかなり困難にするだろう。実際に、通信のそのような一方向性の性質を考慮すると、Qi規格の拡張電力プロファイル(EPP)において使用される双方向通信の利用可能性によって典型的に実現可能であるように、どの通信フォーマットを使用するかを決定するために無線電力送信機および無線電力受信機にネゴシエートさせることは不可能である。しかしながら、より高度でより良好な性能のチップシーケンス変調アプローチを効率的に導入するために、装置がこの能力を有しない相補的装置と相互作用することができることも必要とされ、特に、Qi装置については、Qi規格のBPPを満たす相補的装置と相互作用することができることが望ましい。
【0142】
図5の電力受信機は、チップシーケンスベースの通信をサポートする一方で、それが対話する電力送信機の能力に応じて通信モードを適応させるための機能を提供するように構成される。これは、多くの実施形態において、電力送信機からの明示的な通信を必要とせず、具体的には電力送信機から電力受信機への通信チャネルが確立されることなく、適応を可能にすることができる。このアプローチは、例えば、チップシーケンスベースの通信がQiシステムに導入されることを可能にする一方で、特にBPPと互換性のあるレガシー装置のようなレガシー装置とのインタラクションおよび相互運用をサポートし、可能にすることができる。以下の説明はそのような実装に焦点を当てるが、このアプローチまたはコンセプトはこの特定のシナリオに限定されないことが理解されよう。
【0143】
このアプローチでは、データ送信機509が第1通信モードに従って通信することが可能であることに加えて、第2通信モードに従って通信することも可能である。第1通信モードとは対照的に、第2通信モードは、データシンボルを電力伝送信号上で変調するためにチップシーケンスの第1のセットのうちのチップシーケンスを使用しない。
【0144】
したがって、第2通信モードは異なるアプローチを使用することができ、第1通信モードに従って起こりうるデータシンボルにリンクされるチップシーケンスを使用しない。むしろ、異なるアプローチ/規格を使用して電力伝送信号上にデータシンボルを負荷変調する第2通信モードが使用される。第2通信モードは、具体的には、後方互換性があり、第1通信モードをサポートしないレガシー機器によってサポートされるモードであることができる。したがって、第2通信モードは、具体的にはレガシー通信モードであることができる。
【0145】
具体例では、第2通信モードはQi規格のBPPに従った通信モードであってもよい。したがって、第2通信モードは、Qi規格によって規定されるようにバイフェイズ符号化を使用してデータビットを電力伝送信号上に負荷変調することによって、バイナリデータシンボルを電力送信機に送信するデータ送信機509を含み得る。したがって、各データシンボルは、第2通信モードにおいて、差動マンチェスタ符号化(DM)を使用して送信されることができる。
【0146】
したがって、第2通信モードと第1通信モードとは異なり、このアプローチは、電力受信機が、電力送信機の能力、およびこれが第1通信モードを使用してチップシーケンス通信をサポートすることができるかどうかに適応するための動的かつ自動的なアプローチを可能にすることができる。そうでない場合、電力受信機は、第2通信モード、例えばレガシー通信モードを使用し続ける。
【0147】
第2通信モードは、いくつかの実施形態ではチップシーケンスベースの通信を使用することもできるが、第1通信モードで使用されるものとは異なるチップシーケンスを使用する。しかしながら、多くの実施形態では、第2通信モードはチップシーケンスベースの通信でない場合があり、すなわち、いくつかの実施形態では第2通信モードは非チップシーケンスベースの通信を採用することができる。例えば、多くの実施形態において、2つのバイナリデータシンボルは、第2通信モードにおいて、2つの変調負荷値にリンクされることができる。例えば、一方の二進値については変調キャパシタが受信機コイル107に接続され、他方の二進値については変調キャパシタが切断される。したがって、変調負荷は、データシンボル時間全体にわたって一定であり、変調負荷変化は、各データシンボルの間、またはシンボル持続時間内に生じない。したがって、そのようなシナリオでは、電力受信機は、いかなるチップシーケンスベースの通信もサポートせず従来の負荷変調のみをサポートする電力送信機に適応することができる。しかしながら、電力送信機がチップシーケンスベースの通信をサポートする場合、電力受信機は、この変調アプローチを使用するように適応する。
【0148】
いくつかの実施形態では、第2通信モードは、電力送信機から電力受信機への通信をサポートせず、電力受信機から電力送信機への通信のみをサポートする。
【0149】
電力受信機は、第1通信モードと第2通信モードとを使用することを選択するように構成される。具体的には、電力伝送動作のために、電力受信機は、第1通信モードを使用するか、または第2通信モードを使用するかを選択する。典型的には、この選択が電力伝送動作ごとに1回行われてもよいが、いくつかの実施形態では、電力伝送ごとに1回よりも多くてもよいこと、または例えば、同じ選択がいくつかの電力伝送動作のために使用されてもよいことが理解されよう。
【0150】
第1通信モードと第2通信モードとの間で選択するために、電力受信機105は、通信モードの間で選択し、選択された通信モードを使用してデータシンボルを通信するようにデータ送信機509を制御するように構成された選択器513を備える。例えば、選択器513は、第1通信モードまたは第2通信モードを、電力伝送動作の初期化の一部として、または例えば、電力伝送フェイズの最初に選択することができ、選択された通信モードが電力伝送動作の残りの部分の間に使用される。
【0151】
通信モードの選択は、電力受信機が最初に1つまたは複数のデータシンボルのセットを電力送信機に送信するアプローチに基づくことができ、送信されたデータシンボルのセットは、電力送信機が電力伝送信号に変動を適用するための要求を含む。
【0152】
電力伝送によって印加されるべき電力伝送信号の変動は、例えば、対応する変動を駆動信号に印加することによって課されることができる、電力伝送信号の周波数、位相またはレベルの変動であることができる。変動は、相対的または絶対的な変動であってもよい。
【0153】
したがって、電力受信機は、所与の/期待される変動を電力伝送信号に適用するように電力送信機に要求するデータシンボルのセットを送信することができる。例えば、電力アップ又は電力ダウン要求が電力送信機に送信されることができ、対応する所与の変動は電力伝送信号の電力レベルの増加又は減少にそれぞれ対応する。
【0154】
データシンボルのセットは、以下では簡潔にするために、要求データシンボルまたはビットとも呼ばれ、負荷変調を使用して送信され、各データシンボルは、チップシーケンスの第1のセットから選択されたチップシーケンスを使用して負荷変調によって送信される。具体的には、要求データシンボルは、第1通信モードを使用して送信されることができる。
【0155】
電力受信機105は、電力受信機コントローラ501および選択器513に結合された検出器515をさらに備える。検出器515は、電力伝送信号を監視して、電磁信号の期待される変動が発生するか否かを検出するように構成される。
【0156】
例えば、電力受信機コントローラ501は、電力伝送信号の電力レベルの情報を検出器515に提供することができる。例えば、電力受信機コントローラ501は、電力制御ループをサポートするために、負荷に供給される電力を連続的に監視することができる。測定された負荷の電力レベルは電力伝送信号電力レベルに対応し、電力受信機コントローラ501は、検出器515に測定された電力レベルを提供することができる。検出器515は、例えば、要求データシンボルのコピーを受信することによって、または多くの場合には検出器515に記憶されることができる予め定められた変動である期待される変動によって、要求データシンボルに応じて期待される所与の変動をさらに認識することができる。次いで、検出器515は、測定された電力レベルを期待される変動と比較して、データシンボル要求が電力送信機によって反応された場合、電力伝送信号が期待通りに変動するかどうかを検出するように構成されることができる。
【0157】
次いで、検出器515は、検出動作の結果を選択器513に提供することができ、具体的には、期待される変動が検出されたかどうかを示すことができる。
【0158】
検出器515は、個々の実施形態の詳細に依存する任意の適切な一致基準を適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、電力レベルが例えば所与の量だけ、および/または所与の時間の間、増加(または減少)されるかどうかが検出されることができる。他の実施形態では、例えば、電力レベルが期待される変動を反映するパターンに対応するかどうかが検出されることができる。
【0159】
検出器515は、選択器513に結合され、期待される変動が検出されたか否かの情報を提供する。選択器513は、期待される変動が検出されるか否かに応じて、第1通信モードと第2通信モードとの間で選択するように構成される。具体的には、期待される変動が検出されたと判定された場合、選択器513は第1通信モードを選択し、期待される変動が検出されない場合、選択器513は第2通信モードを選択することができる。そして選択器513は、例えば典型的には電力伝送フェイズの残りの間、選択された通信モードを使用するようにデータ送信機509を制御することができる。そして、通信モードの選択に続いて、電力受信機、具体的にはデータ送信機509は、選択された通信モードを使用している間、データシンボルを電力送信機に送信するように進む。
【0160】
図2の電力送信機は、第1通信モードをサポートすることができる電力送信機である。それはさらに、第2通信モードをサポートすることができ、したがって、電力受信機105と通信することができ、具体的には、チップシーケンスの第1のセットを使用するチップシーケンスベースの通信アプローチと、これらのシーケンスを使用しないレガシー通信との両方に従って、電力受信機からデータを受信することができる。
【0161】
したがって、負荷変調受信機207は、(少なくとも)2つの異なる通信モードで動作することができ、それらのうちの一方はチップシーケンス変調を使用し、他方は典型的にはレガシー通信アプローチを使用する。
【0162】
電力送信機101は、チップシーケンスの第1のセットからのシーケンスを使用する負荷変調によって、任意の有効なデータシンボルが送電信号上で受信されるかどうかを検出するように構成されたシーケンス変調検出器211をさらに備える。シーケンス変調検出器211は、負荷検出器209に結合され、これから電力伝送信号負荷変動の情報を受信する。
【0163】
シーケンス変調検出器211は、チップシーケンスの第1のセットのうちの1つの、複数の、典型的には全てのチップシーケンスと電力伝送信号の負荷変動との間の相関に応じて、有効なデータシンボルが受信されるかどうかを検出するように構成される。具体的には、相関が所与の閾値を超えることが検出された場合、対応するデータシンボルが受信されたと見なされることができる。
【0164】
多くの実施形態では、シーケンス変調検出器211および負荷変調受信器207は機能を共有することができ、特に、シーケンス変調検出器211は負荷変調受信器207の適切な要素によって、具体的には第1通信モードに従ってデータを受信するためにも使用される負荷変調受信器207の機能によって実装されることができることが理解されよう。実際、必須ではないが、シーケンス変調検出器211の検出は、多くの実施形態では、第1通信モードに従って電力受信機からデータシンボルを受信しようとする負荷変調受信機207に直接対応することができる。実際、多くの実施形態では、検出およびシーケンス変調検出器211は、負荷変調受信器207の固有のおよび暗黙の(埋め込まれた)機能であってもよく、具体的には、負荷変調受信器207の実装は、第1通信モードに従って受信されたいくつかのデータシンボルが電力伝送信号に変化をもたらす場合、本質的にシーケンス変調検出器211の実装であってもよい。
【0165】
シーケンス変調検出器211は、有効に受信されたデータシンボルの検出に応じて電力伝送信号に変動を適用するように構成されたアダプタ213に結合される。アダプタ213は、具体的には、受信されたデータシンボルに応じて電力受信機を修正するようにドライバを制御するよう電力受信機コントローラ501を制御するように構成されることができる。具体的には、受信されたデータシンボルは前述のように要求データシンボルであることができ、アダプタ213は、要求データシンボルによって要求されたように電力伝送信号に変動を適用するように電力受信機コントローラ501およびドライバ201を制御するように構成されることができる。
【0166】
例えば、いくつかの実施形態では、検出されたデータシンボルは、特に電力制御誤差メッセージなどの電力変更要求であることができる。電力送信機は、電力変更要求/制御誤差を反映するように、電力伝送信号の電力レベルを適応させることができる。したがって、アダプタ213は、いくつかの実施形態では、電力変更回路の一部であることができ、具体的には電力制御ループ機能の一部であることができる。
【0167】
電力送信機は、第1通信モードと第2通信モードとの間で選択し、選択された通信モードを使用するように負荷変調受信機207を制御するように構成された電力送信機通信選択器215をさらに備える。
【0168】
そして、第1通信モードにあるとき、負荷変調受信機207は、電力伝送信号の負荷変動をチップシーケンスの第1のセットのシーケンスと相関させ、相関に応じて受信されたデータシンボルを決定することによって、負荷変調データシンボルを受信する。
【0169】
しかしながら、第2通信モードにあるとき、負荷変調受信機207は、チップシーケンスの第1のセットと相関させず、(具体的にはレガシー通信モードである場合がある)異なる通信モードに従ってデータを受信しようとする。特定の例では、負荷変調受信機207は、Qi規格の元の通信アプローチに従って変調されたデータシンボルを受信する。
【0170】
通信モードの選択は、データシンボルがシーケンス変調検出器211によって検出されるかどうかに依存する。具体的には、電力送信機通信選択器215がデフォルトとして第2通信モードを選択するように構成される。具体的には、例えば電力伝送の終了の一環として、電力伝送に関与しないとき、電力送信機通信選択器215は通信モードを第2通信モードに設定することができる。したがって、電力送信機は、レガシー通信モードに従って送信するように設定されることができる。しかしながら、検出がチップシーケンスの第1のセットのシーケンスによって変調されたデータシンボルの検出が受信されたことを示す場合、電力送信機通信選択器215は、第1通信モードを使用するように負荷変調受信機207を切り替えることができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、電力送信機101、具体的には負荷変調受信器207は、電力受信機からデータを受信するとき、第1通信モードおよび第2通信モードで同時に動作するように構成されることができることが理解されよう。
【0172】
したがって、図5の電力受信機105および図1の電力送信機101は共に、第1通信モードに従ってチップシーケンス通信を使用して通信することが可能である。さらに、電力送信機101および電力受信機105は、第2通信モードを使用するように通信を適応させることができる。電力受信機105は、チップシーケンスの第1のセットを使用してデータシンボルを送信することができ、これに続いて電力伝送信号における期待される変化が検出された場合、電力受信機105は第1通信モードを選択し、この通信モードに進む。同様に、電力送信機101は、チップシーケンスの第1のセットを使用してデータシンボルを受信したことに応じて、第1通信モードに切り替えるように構成される。さらに、期待される変動を電力伝送信号に導入する。
【0173】
このようにして、電力受信機105および電力送信機101は、第1通信モードが実行可能な通信モードであることを確立して、この通信モードを使用するように切り替えるように相互動作するように構成される。
【0174】
したがって、図5および図2の電力受信機105および電力送信機101はそれぞれ、より高度な第1通信モードを採用するように相互動作するように構成され、それによって、これにより提供される利点を可能にする。さらに、電力受信機105および電力送信機101は、両方とも(典型的には)レガシー通信モードに従って個別に通信することが可能である。例えば、電力送信機101が(図5の電力受信機ではなく)レガシー電力受信機と共に使用される場合、電力送信機は、この電力受信機からデータを受信するように構成され、したがって、レガシー電力受信機による電力伝送動作をサポートすることができる。同様に、電力受信機105は、レガシー電力送信機と相互作用してデータを送信することができ、これとのレガシー電力伝送動作をセットアップすることに進むことができる。
【0175】
さらに、装置は、適切な通信モードを自動的に適応させて選択することができる。電力送信機および電力受信機の両方が第1通信モードを使用して通信することができる状況では、それらは両方とも、この通信を選択し、使用するように適応することができる。そうでない場合、第2通信モードが選択される。例えば、電力送信機および電力受信機は、第2通信モードを使用して電力伝送動作を初期化し、そして、要求データシンボルが首尾よく受信され、期待される電力伝送信号変動をもたらす場合、第1通信モードに切り替えるように構成されることができる。したがって、装置は適切な通信モードを使用するように自動的に適応することができ、具体的には、実現可能ときに、好ましい第1通信モードを使用するように自動的に切り替えることができる。さらにこれは、電力送信機から電力受信機へのいかなるデータ送信または通信チャネルも必要とせずに達成されることができる。
【0176】
したがって、このアプローチは、無線電力送信機から無線電力受信機への通信チャネルに持たないという制限を克服することができ、さらに、電力受信機が電力送信機にチップシーケンスで変調されたデータパケット/シンボルのセットを送信し、後者が期待される/所定の挙動を示すかどうかを検出することに基づいて、チップシーケンスベースの通信方式を後方互換性のある態様で導入することができる。
【0177】
電力受信機は、具体的には、多くの実施形態では、チップシーケンス変調データパケットを後方互換性データパケットと混合させることができ、すなわち、具体的には、第1通信モードに従って送信されるデータシンボルと、第2通信モードに従って送信されるシンボルとを混合させることができる。データパケットは、適切な規格、具体的にはシステムのいくつかの装置によって使用される可能性があるレガシー規格の全てのタイミングおよびコンテンツ要件を満たすように送信されることができる。例えば、それらは、レガシーまたはオリジナルのQi規格の要件を満たすことができる。レガシー電力送信機はチップシーケンス変調データパケットを検出せず、むしろ、これらはチャネル上のノイズとして見なされ、したがって、それらは電力送信機によって無視される。しかしながら、この電力送信機は、レガシー変調を使用して送信されたデータメッセージを受信する。したがって、レガシー電力送信機は、レガシー通信モードを使用するデータパケットのみが送信されたかのように反応する。対照的に、チップシーケンス変調可能な電力送信機は、チップシーケンスで変調されたデータパケットを検出することもでき、電力伝送信号を修正することによってこれらに応答する。電力伝送信号に対するこれらの変化は、電力受信機によって検出されることができ、レガシーデータパケットのみが受信された場合に生じる変化と区別されることができる。このようにして、このアプローチは、電力送信機がチップシーケンス変調可能な電力送信機であるかどうか、または電力送信機がこれをサポートしないレガシー電力送信機であるかどうかを電力受信機が決定することを可能にする。
【0178】
このアプローチは、多くのシナリオにおいて、電力送信機から電力受信機へのいかなる通信チャネルも必要とせずに、レガシー通信アプローチの使用からチップシーケンスベースの通信の使用への移行を容易にする後方互換性のあるアプローチを提供することができる。
【0179】
前述のように、要求データシンボルは、多くの実施形態では、電力伝送信号の電力レベルの変化に対する少なくとも1つの要求を含むことができる。電力送信機101は、この要求を受信したことに応じて、要求されたように電力レベルを変更することに進むことができる。当業者に知られているように、この変更は例えば、駆動信号の電力レベル(電流および/もしくは電圧)または周波数(共振結合の場合、これは電力伝送信号の電力レベルも変化させる)を変化させ、それによって、有効電磁界強度/電力伝送を増加させることによるものである。
【0180】
多くの実施形態では、要求データシンボルは、電力伝送フェイズの一部として送信される。例えば、電力受信機は、第2通信モードのみを使用する、すなわち具体的には、多くの実施形態においてはレガシー通信モードを使用する、電力伝送を初期化するための規格化されたステップに進むことができる。実際、第2通信モードを使用して電力伝送を開始することができ、ある時点(典型的には電力伝送を開始した直後)において、電力受信機は第1通信モードを使用して要求データシンボルを送信することができる。要求データシンボルは電力レベルの変更を要求することができ、そして電力受信機がこれらの変更を検出する場合、通信は、潜在的に全てのデータ伝送のために第1通信モードに切り替えられることができる。
【0181】
多くの実施形態において、要求データシンボルは特に、1つ以上の電力制御ループ誤差メッセージを含む/有する/構成することができる。したがって、電力受信機は、電力伝送フェイズ中に、電力制御ループをサポートするために、電力送信機に電力制御ループ誤差メッセージを送信することができる。電力受信機は、例えば、第2通信モードを使用してこれらの(具体的には、電力アップまたは電力ダウン要求であることができる)誤差メッセージの送信を開始することができる。しかしながら、ある時点で、電力受信機は、第1通信モードを使用して、これらの誤差メッセージのうちの1つ、複数または全てを送信するように切り替わることができる。これが依然として誤差メッセージに従って電力伝送信号の電力レベルが制御され、適応される結果となる場合、電力受信機は、(電力伝送の間)永続的に第1通信モードに切り替わる。そうでない場合、将来の誤差制御メッセージのために、第2通信モードに戻ることができる。
【0182】
特定の例として、電力受信機は、従来の/レガシー通信(第2通信モード)を使用して電力伝送フェイズに進み、次いで、電力送信機がチップシーケンスベースの通信(第1通信モード)をサポートするかどうかをテストすることを開始することができる。図7は、そのような例を示すことができる。図7において、白背景文字は第2通信モードによる通信を示し、黒背景文字は、第1通信モードによる通信を示す。
【0183】
そのような例では、無線電力受信機は、ゼロの値を含む従来の制御誤差データパケット(CE/0)と、非ゼロ値を含むチップシーケンス制御誤差データパケット(CE/x)とを送信することができる。レガシー無線電力送信機は従来のデータパケットのみを受信し、したがって、伝送される電力を一定のレベルに保つ。しかしながら、チップシーケンス通信をサポートする強化された電力送信機は、チップシーケンスデータパケットも受信することができ、したがって、(ゼロでない値のために)電力レベルを増加させる。したがって、無線電力受信機は、電力伝送信号の電力レベルの変化に応じて、レガシー無線電力送信機と新しい無線電力送信機とを区別することができる。
【0184】
したがって、上記の例のようないくつかの実施形態では、電力受信機は、第1通信モードおよび第2通信モードの両方に従って要求データシンボルを送信するように構成されることができ、すなわち、データシンボルの第1のセットは第1通信モードに従って送信され、データシンボルの第2のセットは第2通信モードに従って送信されることができる。2つのデータセットは、(第2通信モードに従って送信される)第2のセットのデータシンボルのみが受信される場合の電力伝送信号の変動が、両方のデータセットが受信される場合の結果である変動とは異なるようなデータセットであることができる。したがって、電力受信機は、電力伝送信号の測定された変動が受信されている両方のデータセットから生じる変動と一致するかどうかを決定し、一致する場合、第1通信モードに切り替えることができる。代わりに、電力伝送信号の変動がデータシンボルの第2のセットの要求のみのものにより厳密に一致する場合、電力受信機は、第2通信モードのみを使用するように切り替わることができる。
【0185】
多くの実施形態では、第1通信モードおよび第2通信モードに従って送信される2つのデータセットがそれぞれ、異なる変更/変動を要求することができ、選択器513は、検出された変更/変動が両方のデータセットから生じる組み合わされた変更/変動とより密接に一致するかどうか、またはデータシンボルの第2のセットのみから生じる変更/変動とより密接に一致するかどうか、すなわち、第2通信モードを使用して送信される要求データシンボルのみから生じる変更/変動とより密接に一致するかどうかに応じて、異なる通信モード間で選択するように構成されることができる。
【0186】
多くの実施形態では、第1通信モードに従って送信される要求データシンボルの第1のセットは、第2通信モードに従って送信される要求データシンボルの第2のセットによって要求されるものに対して反対の変化を要求することができる。例えば、要求データシンボルの第2のセットは電力ダウン要求で構成され、要求データシンボルの第1のセットは電力アップ要求で構成されることができる。これらの要求の組み合わされた効果は一定の電力レベルであるが、要求データシンボルの第2のセットのみの効果は電力レベルの連続的な減少である。そして、電力受信機は、電力レベルが実質的に同じままであるか(その場合、第1通信モードが選択される)、またはそれが減少するか(その場合、第2通信モードが選択される)を単に検出することができる。選択後、通常の電力制御ループ動作が再開または初期化されることができ、選択された通信モードを使用して制御誤差メッセージが送信される。
【0187】
いくつかの実施形態では、電力受信機は、1つまたは複数の従来の電力制御誤差メッセージのシーケンスと、1つまたは複数のチップシーケンス変調電力制御誤差メッセージのシーケンスとを交互にするように構成されることができる。
【0188】
例えば、Qiシステムなどのいくつかの実施形態では、電力受信機は、最初に(電力レベルの増加を要求する)正の値を含む従来の制御誤差データパケット(例えば、Qi CEデータパケット)を使用して所望のレベルに電力を制御し、その後、(電力ダウンを要求する)負の値を含む従来の変調制御誤差データパケットと、(電力アップを要求する)正の値を含むチップシーケンス変調制御誤差データパケットと交互にすることができる。電力レベルが下がる場合、無線電力送信機はレガシー電力送信機と見なされることができ、それが所望のレベルに近いままである場合、電力送信機はチップシーケンス対応電力送信機と見なされることができる。
【0189】
多くの実施形態では、例えば、要求される特定の電力レベル変動パターンのようなより複雑な変動が使用されることができることが理解され、検出された電力レベルの変動とのこのパターンの相関に応じた検出が行われる。
【0190】
いくつかの実施形態では、第1通信モードを使用して送信される要求データシンボルは電力伝送の終了の要求であることができ、具体的にはそれは電力伝送が終了されるべきとの要求であることができる。電力送信機が電力伝送を終了することに進む場合、電力受信機は、電力送信機がレガシー電力送信機ではないとみなすことができ、新しい電力伝送が第1通信モードに従う通信に基づいて開始されることができる。したがって、選択器513は、電力伝送の終了が検出された場合、第1通信モードを選択することができ、そうでない場合、第2通信モードを使用し続けることができる。
【0191】
例えば、電力受信機は、電力伝送フェイズに進むためにレガシー通信を使用することができる。電力送信機がチップシーケンス通信をサポートするかどうかをテストすることを望むとき、電力受信機は、(従来のデータパケットと混合された)チップシーケンス変調EPT(End Power Transfer)データパケットを電力送信機に送信することができる。レガシー電力送信機は、これらのEPTデータパケットを検出せず、したがって、電力伝送を継続する。しかしながら、適切に装備された電力送信機は、要求されたように電力伝送を再開し、電力伝送を再開するときにチップシーケンス通信に切り替えることができることを無線電力受信機に示す。
【0192】
いくつかの実施形態では、電力受信機および電力送信機は、第1通信モードのための通信パラメータを適応させるように構成されることができ、通信パラメータは、具体的にはチップシーケンス長であることができ、以下の説明はこの例に焦点を当てる。しかしながら、他の実施形態では、データレート、変調深度などの他の通信パラメータが適応されることができることが理解されよう。
【0193】
いくつかの実施形態では、第1通信モードは、デフォルト動作パラメータを使用して、具体的にはデフォルトチップシーケンス長を使用して、初期化されることができる。セットアップ後、データ送信機509は、異なる通信パラメータを使用していくつかの要求データシンボルを送信することができ、具体的には、異なるチップシーケンス長を使用していくつかの要求データシンボルを送信することができる。そして、選択器513は、後続の変動がこれらの要求データシンボルの要求と一致するかどうか、または変更された通信パラメータを使用して送信された要求データシンボルが受信されていない場合に生じる変動と一致するかどうかを検出することができる。前者の場合、選択器513は通信パラメータを新しい値に変更することに進むことができ、そうでない場合、通信パラメータのために以前の値を使用することに進むことができる。
【0194】
特定の例として、そのようなアプローチは、変調深度を決定または適応させるために使用されることができる。第1通信モードで通信するとき、電力受信機は、異なる変調深度を使用して開始することができる。電力送信機が依然として(電力アップまたは電力ダウン要求の)データシンボルを受信することができる場合、電力受信機は要求に応じて変化する電力レベルを見ることになり、電力受信機は、新しい変調深度を使用して進行することができることを知る。しかしながら、電力送信機がもはや確実にデータシンボルを受信することができない場合(例えば、ビットエラーが多すぎる場合)、電力受信機は、期待される変動から逸脱する電力レベルを見ず、前の変調深度に戻ることができる。
【0195】
別の例として、このアプローチは、チップシーケンス長を変更または適応させるために使用されることができる。
【0196】
例えば、第1通信モードで通信するとき、電力受信機は、例えば、ノイズ、減衰などの条件に応じて、異なるチップシーケンス長を選択するように構成されることができる。それは、例えば、より短いチップシーケンスとより長いチップシーケンスとの間で切り替えるように構成されることができる。
【0197】
例えば、より短いチップシーケンスを使用するときの電力受信機が電力送信機に送信されるデータシンボル(電力アップ/電力ダウン)から期待されるように電力レベルが変化しないと見なす場合、電力送信機は、それらのデータシンボルを確実に受信しないと予想することができる。特に、信号対雑音比が低すぎることによるビットエラーが原因である可能性がある。電力送信機が異なるシーケンス長を使用することができることが知られている場合、電力送信機は、より長いシーケンスに直接切り替えることができる。しかしながら、それは、より長いチップシーケンスで動作するとき、より短いシーケンスに切り替えようとすることがある。それは、例えば、以下のアプローチを用いてそうすることができる:
a)電力受信機は、それぞれ短いチップシーケンスおよび長いチップシーケンスを使用して送信されるデータシンボルを混在させて開始することができ、長いチップシーケンスを使用するデータシンボルは電力レベルを一定に保つことを要求し、短いチップシーケンスを使用するデータシンボルは、電力レベルを増加または減少させることを要求する。電力レベルが予想通りに変化する(増加または減少する)ことが観察されるとき、短いチップシーケンスのみを使用し続けることができる。
b)電力受信機は、長いチップシーケンスの使用を停止し、電力レベルの変化を要求するために使用するデータシンボルのために短いチップシーケンスの使用を開始することができる。電力レベルの変化が見られない場合、電力送信機は現在、短いチップシーケンスを確実に受信することができないと考えられ、したがって、電力受信機は長いシーケンスを使用することに戻る。一方、電力レベルが期待どおりに変化することが観察される場合、短いチップシーケンスを使用し続ける。
【0198】
別の例として、第1通信モードで通信するとき、電力受信機は、第1通信モードをサポートする任意の電力送信機が受信することができる長さを有するチップシーケンスを使用することによって開始することができる。しかしながら、いくつかの電力送信機はより長いチップシーケンスを使用することも可能である場合があり、したがって、電力受信機は、信号対雑音比を増加させて、それによってより信頼性の高い通信を提供するために、チップシーケンス長を増加させようとすることが可能である。そのような場合に電力受信機が利用することができる異なるアプローチは、以下を含むことができる:
a)電力受信機は、それぞれ短いチップシーケンスおよび長いチップシーケンスを使用して送信されるデータシンボルを混在させて開始することができ、短いチップシーケンスを使用するデータシンボルは電力レベルを一定に保つことを要求し、長いチップシーケンスを使用するデータシンボルは、電力レベルを増加または減少させることを要求する。電力レベルが予想通りに変化する(増加または減少する)ことが観察されるとき、長いチップシーケンスのみを使用し続けることができる。
b)電力受信機は、短いチップシーケンスの使用を停止し、電力レベルの変更を要求するために使用するデータシンボルのために長いチップシーケンスの使用を開始することができる。電力レベルの変化が見られない場合、電力送信機は、長いチップシーケンスを受信することができないと考えられ、短いシーケンスを使用することに戻る。一方、電力レベルが予想どおりに変化することが観察される場合、長いチップシーケンスを使用し続ける。
【0199】
上記のシーケンス長を適応する例では、電力受信機は、異なる長さを有するチップシーケンスの使用を開始することを通知することによって、例えば、短いおよび長いチップシーケンスのデータシンボルを混在させることによってそれを開始するかどうか、または(電力レベルを変更することを要求するデータシンボルのために)他の長さのチップシーケンスを排他的に使用することを開始するかどうかを電力送信機に通知することによって、電力送信機を支援することができる。このメッセージ送信の一部として、それは、現在の長さのチップシーケンスに戻る前に、他の長さのチップシーケンスを使用する期間を示すことができる。これは、電力送信機がその通信復号を最適化することを可能にすることができる。
【0200】
どちらの場合も、電力受信機は、短いチップシーケンスの使用を開始すること、ならびに、短いおよび長いチップシーケンスのデータシンボルを混在させることによってそれを開始するかどうか、または(電力レベルを変更することを要求するデータシンボルのために)短いチップシーケンスを排他的に使用することを開始するかどうかを電力送信機に通知することによって、電力送信機を支援することができる。この警告の一部として、短いチップシーケンスを使用する期間を示すことができる。これは、電力送信機がその通信復号を最適化することを可能にすることができる。
【0201】
上記の例では、このアプローチは、電力伝送初期化の後、および電力伝送フェイズ中に適用されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、このアプローチは電力伝送フェイズの前に適用されることができる。
【0202】
具体的には、いくつかの実施形態では、データ送信機509は、電力送信機によって生成される検出電力伝送信号に応じて、要求データシンボルを送信するように構成されることができる。この検出電力伝送信号は、電力伝送フェイズの前に電力送信機によって生成される電磁検出信号であることができる。検出電力伝送信号は、具体的には、電力送信機の存在を電力受信機に示すために、および電力送信機が電力受信機の存在を検出することを可能にするために生成される電磁検出信号であることができる。
【0203】
検出電力伝送信号は、送信機コイル103によって生成され、電力送信機から電力受信機に電力を伝送することもできる(通常は非常に小さい値であるが)。したがって、検出電力伝送信号は、電力伝送信号でもある。
【0204】
検出電力伝達信号は、具体的にはping信号であることができる。検出電力伝達信号は、具体的にはQi規格に従った、具体的にはQi規格バージョン1.0以降に従ったping信号であることができる。
【0205】
したがって、そのような例では、電力受信機は、検出電力伝送ping信号上で要求データシンボルを送信することができ、電力送信機は、要求データシンボルを受信することができる場合、対応する変化を電力伝送信号に適用することによって応答することができる。電力受信機が対応する期待される変動を検出した場合、電力受信機は、第1通信モードを使用して電力伝送フェイズを開始することに進むことができ、そうでない場合、電力受信機は、第2通信モードを使用することができる。
【0206】
特定の例として、電力受信機は、検出電力伝送信号の検出に応じて、特別なテストチップシーケンスを送信することができる。このチップシーケンスは、チップシーケンスの第1のセットのチップシーケンスであることができる。レガシー電力送信機はこのチップシーケンスを無視するだろうが、第1通信モード互換送信機はこのチップシーケンスを検出し、例えば、検出電力伝送信号に所定の変動を適用することに進むことができる。そして、電力受信機はこの所定の変化を監視し、それが検出されるかどうかに応じて、第1通信モードと第2通信モードとの間で選択することができる。
【0207】
Qiシステムの特定の例として、電力受信機は、従来のSIGデータパケットによって無線電力送信機からのデジタルpingに応答する前に、電力送信機にテストチップシーケンスを送信することができる。レガシー無線電力送信機はこれを雑音と見なし、従来のSIGデータパケットを待つことになる。その後、レガシーアプローチを使用して電力伝送セットアップに進む。しかしながら、第1通信モード対応無線電力送信機は、テストチップシーケンスを検出したことを示すために、デジタルPing信号上にシグネチャ/変動を提供するように構成されることができる。単純なシグネチャ/変動は、デジタルPing信号の動作周波数または電力レベルの変化(例えば、ステップ)であってもよい。無線電力受信機は、シグネチャ/変動を検出すると、チップシーケンスデータパケット(第1通信モード)を続行することができ、潜在的に従来のデータパケット通信を全く使用しないことがある。
【0208】
図8は第2通信モードによる通信を白背景で示し、第1通信モードによる通信を黒背景で示した例である。
【0209】
図8は、電力送信機がレガシー電力送信機である例(上半分)と、電力送信機がチップシーケンス通信をサポートする例(下半分)とを示す。前者の場合、無線電力送信機はテストチップシーケンスを検出せず、無線電力受信機はレガシー通信方法を使用するように進む。後者の場合、無線電力送信機はテストチップシーケンスを検出し、デジタルPing信号にシグネチャ変動を導入する。無線電力受信機はこのシグネチャ変動を認識し、チップシーケンスベースの通信のみを使用するように進む。
【0210】
いくつかの実施形態では、第2通信モードは低帯域幅通信モードであることができる。典型的には、各々のデータシンボルは、N・1/Tを超えない帯域幅(例えば、3dB帯域幅)を有するデータシンボル形状によって変調されることができ、ここで、Nは4以下の整数であり、Tはデータシンボル時間である。多くの実施形態では、帯域幅は2/Tを超えないだろう。
【0211】
チップシーケンスの第1のセットのためのチップシーケンス長は典型的には比較的長く、典型的には例えば16個以上のチップを含む。第1通信モードに従って変調されたデータシンボルの帯域幅は、典型的には第1通信モードに従って変調されたデータシンボルの帯域幅よりも大幅に大きい。
【0212】
いくつかの実施形態では、各データシンボルは、N・1/T以上の帯域幅(例えば、3dB帯域幅)を有するチップシーケンスによって変調されることができ、Nは8以上の整数であり、Tはデータシンボル時間である(Tはチップシーケンス長と見なされることもできる)。多くの実施形態では、帯域幅は16/T以上だろう。
【0213】
多くの実施形態では、チップシーケンスの第1のセットの各チップシーケンスは、4、8または16以上の負荷変調レベル変化を含むことができる。対照的に、第2通信モードは、多くの実施形態では、データシンボルあたり1以下の負荷変調レベル、またはいくつかの実施形態では2つの負荷変調レベルを含むことができる。第2通信モードは、データシンボルのための最大1つの負荷変調レベル変化を含むことができる。
【0214】
多くの実施形態では、第2通信モードは、特に、二位相符号化を使用することができる。多くの実施形態では,各データシンボルは、第2通信モードにおいて、差動マンチェスタ符号化(DM)を使用して送信されることができる。各データシンボルは特定のDM符号化シーケンスにリンクされることができる。
【0215】
いくつかの実施形態において、第2通信モードでは、チップシーケンスの第2のセットのチップシーケンスに対応する変調負荷値のシーケンスによって各データシンボルが変調され、チップシーケンスの第2のセットのチップシーケンスは異なるデータシンボル値にリンクされる。しかしながら、チップシーケンスの第2のセットのチップシーケンスは、チップシーケンスの第1のセットのチップシーケンスとは異なり、具体的には、2つのセットのチップシーケンスの長さは典型的に異なり、多くの場合、チップシーケンスの第2のセットのチップシーケンスは、チップシーケンスの第1のセットのチップシーケンスよりも短く、典型的には2倍、4倍、8倍もしくは16倍短く、またはそれ以上に短い。
【0216】
例えば、いくつかの実施形態では、チップシーケンスの第1のセットは15、31、63または127チップ以上の長さを有するチップシーケンスを含むことができ、チップシーケンスの第2のセットは2チップの長さを有する2つのチップシーケンスを含むことができる。例えば、チップシーケンスの第2のセットは、バイナリ通信のために、2つの同一の負荷変調値の1つのチップシーケンスと、2つの異なる負荷変調値の1つのチップシーケンスとを含むことができる。したがって、1つのバイナリデータシンボルは負荷変化を伴わないチャネルデータシンボルによって表されることができ、1つのバイナリデータシンボルは1つの負荷変化または遷移を伴うチャネルデータシンボルによって表されることができる。例えば、マンチェスタ符号化が使用されることができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、チップシーケンスの第1および第2のセットが同じ長さを有するが、この2つのセットは依然として異なるチップシーケンスを含む。2つのセットは、典型的には、良好な自己相関特性を有し、同じセット内の他のシーケンスだけでなく、他のセット内のシーケンスに対しても良好な相互相関特性を有するチップシーケンスを有することができる。
【0218】
そのようなアプローチは、例えば、追加のチップシーケンスが使用されることを可能にするように既存のシステムに対するアップグレードを可能にする。
【0219】
例えば、1つのチップシーケンスが定義され、2つのバイナリ値がこのチップシーケンスと逆チップシーケンスとによって表される、バイナリチップシーケンス通信を使用する無線電力システムが展開されることができる。したがって、いくつかのレガシー装置は、2つの逆のチップシーケンスに基づいてバイナリチップシーケンス通信を使用して通信するように構成されることができる。そのようなアプローチは、多くの実施形態において適切な動作を提供することができる。しかしながら、幾つかの点において、追加のチップシーケンスを使用するように拡張することが有利であることが認識されるだろう。例えば、バイナリ通信のために選択されることができる代替のチップシーケンスペアを導入することが有利である。これは、例えば、より多くのチップシーケンスが選択のために利用可能であるので、例えば、増加した干渉性能を可能にすることができる。それは、例えば、異なるシーケンスが異なる電力受信機に適用されることができるので、通信がそれ程多くの相互干渉を引き起こすことなく、異なる電力受信機が近接して配置されることを可能にすることができる。そのようなシナリオは、例えば、電力送信機装置が、複数の電力受信機に同時に電力を供給するための複数のコイルおよび機能を備える状況において発生する可能性がある。
【0220】
しかしながら、そのような場合には、いくつかの電力受信機がチップシーケンスのいずれかを使用して通信するように構成された近年の電力受信機であり、一方他の電力受信機はレガシーチップシーケンスを含む第2のセットのシーケンスのみをサポートするレガシー電力受信機である可能性がある。同様に、いくつかの電力送信機は、任意のチップシーケンスを使用して通信するように構成され、一方他の電力送信機は第2のセットのチップシーケンスを使用して通信することのみが可能であるレガシー電力送信機である可能性がある。
【0221】
そのような場合、説明されたアプローチは、同じ長さの追加のチップシーケンスを含むような適応を可能にするために使用されることができる。新しい電力送信機は2つの通信モードを用いて導入されることができ、一方は第2のセットのシーケンスを使用するレガシーモードであり、他方は第2のセットと異なるが同じ長さを有するシーケンスの異なるセットを使用する新しいモードである。レガシー電力受信機は、シーケンスの第2のセットを使用して通信し、そのような電力受信機は、任意の電力送信機によってサポートされることができる。新しい電力受信機は、例えば、最初に電力送信機を検出したときに、第1のセットのチップシーケンスを使用して電力送信機と通信することを試みることができ、この通信は電力伝送信号の変化を要求する。その後この変化が検出される場合、電力受信機は第1のセットのチップシーケンスを使用するように進むことができ、そうでなければ、電力受信機は、第2のセットのチップシーケンスを使用することに切り替わることができる。
【0222】
したがって、この構成は、レガシー装置を依然としてサポートしながら、可能なときに新しいチップシーケンスを使用するように電力受信機をバイアスすることができる。
【0223】
変調負荷は、負荷変調に起因する/依存する/変化する、電力伝送信号/駆動信号の負荷の負荷成分であり得る。
【0224】
明確にするための上記の説明は、異なる機能回路、ユニットおよびプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明したことが理解されるであろう。しかしながら、本発明から逸脱することなく、異なる機能回路、ユニットまたはプロセッサ間での機能の任意の適切な分散を使用できることは明らかであろう。例えば、別個のプロセッサまたはコントローラによって実行されることが示されている機能が同じプロセッサまたはコントローラによって実行されてもよい。したがって、特定の機能ユニットまたは回路への言及は、厳密な論理的または物理的構造または編成を示すのではなく、説明された機能を提供するための適切な手段への言及としてのみ見なされるべきである。
【0225】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの任意の組合せを含む任意の適切な形態で実施することができる。本発明は、オプションで、1つまたは複数のデータプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサ上で実行されるコンピュータソフトウェアとして少なくとも部分的に実装されることができる。本発明の実施形態の要素およびコンポーネントは、任意の適切な方法で物理的、機能的および論理的に実装されることができる。実際、機能は、単一のユニットで、複数のユニットで、または他の機能ユニットの一部として実装されてもよい。したがって、本発明は、単一のユニットで実施されてもよく、または異なるユニット、回路およびプロセッサの間で物理的および機能的に分散されてもよい。
【0226】
本発明はいくつかの実施形態に関連して説明されてきたが、本明細書に記載された特定の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、或る特徴が特定の実施形態に関連して説明されるように見えるかもしれないが、当業者は説明された実施形態の様々な特徴が本発明に従って組み合わされることができることを認識するであろう。請求項において、「有する(comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0227】
さらに、個別に列挙されているが、複数の手段、素子、回路または方法ステップが、例えば単一の回路、ユニットまたはプロセッサによって実装されることができる。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれている場合があるが、これらは場合によっては有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれることは特徴の組み合わせが実現可能ではない及び/又は有利ではないことを意味しない。また、或る特徴を請求項の1つのカテゴリに含めることは、このカテゴリへの限定を意味するものではなく、むしろ、その特徴が必要に応じて他の請求項カテゴリに等しく適用可能であることを示す。1つの独立請求項の従属請求項に或る特徴を含めることは、この独立請求項に対する限定を意味するものではなく、むしろ、その特徴が適切な場合には他の独立請求項に等しく適用可能であることを示す。さらに、請求項における特徴の順序は、当該特徴が動作しなければならない特定の順序を意味するものではなく、特に、方法の請求項における個々のステップの順序は、当該ステップがこの順序で実行されなければならないことを意味するものではない。むしろ、ステップは任意の適切な順序で実行されることができる。さらに、単数への言及は複数を除外しない。従って、「a」、「an」、「第1」、「第2」等の参照も、複数を排除するものではない。請求項中の参照符号は、単に明確な例として提供されているにすぎず、請求項の範囲を何らかの態様で限定するものと解釈してはならない。
図1
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【国際調査報告】