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特表2024-546013シングルユースバルブを有する試薬含有マイクロ流体チップにロードするためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】シングルユースバルブを有する試薬含有マイクロ流体チップにロードするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241210BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
B81B1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527313
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2022060851
(87)【国際公開番号】W WO2023084454
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,945
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520489282
【氏名又は名称】パターン バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウー チュー-ユ
【テーマコード(参考)】
3C081
4G075
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA23
3C081BA25
3C081DA10
3C081EA27
3C081EA28
3C081EA39
4G075AA13
4G075AA32
4G075AA39
4G075AA65
4G075BA04
4G075BA10
4G075BB05
4G075BB10
4G075CA02
4G075CA32
4G075DA02
4G075EA06
4G075EB50
4G075FA01
4G075FA12
(57)【要約】
マイクロ流体チップは、ポートと、1つまたは複数の試験容積と、流体がポートから試験容積までの間通る必要がある1つまたは複数のチャネルとを含むマイクロ流体ネットワークを含むことができる。架橋性材料がチャネルを通って流動可能であるように、マイクロ流体ネットワーク内に架橋性材料を配置することもできる。マイクロ流体チップの架橋性材料は、内部の材料を架橋させ、それによってチャネルを閉塞するために、光および/または熱に曝露され得る。マイクロ流体チップにロードする方法は、1つまたは複数の試験容積と、1つまたは複数のチャネルとを含むマイクロ流体ネットワークのポート内に液体を配置する工程;液体の1つまたは複数の部分の各々を、ポートから、チャネルのうちの少なくとも1つを通して、試験容積のうちのそれぞれ1つに流す工程;ならびに液体の部分が試験容積内にあるときに試験容積のいずれもポートと流体連通しないように、架橋性材料をチャネルのうちの少なくとも1つの中に導きかつ架橋性材料を架橋させる工程、を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、マイクロ流体チップにロードする方法:
1つまたは複数の試験容積と、
1つまたは複数のチャネルと
を含むマイクロ流体ネットワークのポート内に液体を配置する工程;
前記液体の1つまたは複数の部分の各々を、前記ポートから、前記チャネルのうちの少なくとも1つを通して、前記試験容積のうちのそれぞれ1つに流す工程;ならびに
前記液体の前記部分が前記試験容積内にあるときに前記試験容積のいずれも前記ポートと流体連通しないように、光架橋性材料および/または熱架橋性材料を前記チャネルのうちの少なくとも1つの中に導きかつ前記架橋性材料を架橋させる工程。
【請求項2】
前記1つまたは複数の試験容積が、2つ以上の試験容積を含み;
前記液体の前記1つまたは複数の部分が、前記液体の2つ以上の部分を含み;かつ
前記液体の前記部分が前記試験容積内にあるときに前記試験容積が他のどの前記試験容積とも流体連通しないように、前記架橋性材料を導きかつ架橋させる工程が行われる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液体の前記部分の各々に試薬を導入する工程を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記架橋性材料を導くことが、前記架橋性材料を前記ポートから前記チャネルのうちの少なくとも1つの中に導くことを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記流す工程の前に、前記架橋性材料が前記ポート内の前記液体上に配置される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記架橋性材料の密度が前記液体の密度よりも低い、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記架橋させることが、前記液体の1つの部分が前記試験容積のうちの1つに流入する前に行われる、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ流体ネットワークが、前記試験容積の各々に対して、流体が前記試験容積に入る前に通る必要があるチャンバを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ流体ネットワークが、前記試験容積の各々に対して、液滴生成領域を含み;かつ
前記流す工程が、前記液体の部分の各々について、
液滴を生成するために前記部分が前記液滴生成領域のうちのそれぞれ1つを通って流れ、かつ
前記液滴が前記試験容積に流入する
ように行われる、
請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記液体が水性液体を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記架橋性材料が、
モノマー;
架橋剤;および
開始剤
を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーが、モノメタクリレート末端ポリ(ジメチルシロキサン)、3-[トリスト(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、および/または2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレートを含み;
前記架橋剤が、ポリジメチルシロキサン-ジアクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキシルジアクリレートを含み;かつ
前記開始剤が、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、および/または1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
ポートと、
1つまたは複数の試験容積と、
流体が前記ポートから前記試験容積までの間通る必要がある1つまたは複数のチャネルと
を含むマイクロ流体ネットワークを画成するマイクロ流体チップであって、
光架橋性材料および/または熱架橋性材料が、前記マイクロ流体ネットワーク内に、前記架橋性材料が前記チャネルを通って流動可能であるように配置される、
前記マイクロ流体チップ。
【請求項14】
前記1つまたは複数の試験容積が2つ以上の試験容積を含む、請求項13記載のマイクロ流体チップ。
【請求項15】
前記マイクロ流体ネットワークが、前記試験容積の各々に対して、流体が前記試験容積に入る前に通る必要があるチャンバを含む、請求項13または14記載のマイクロ流体チップ。
【請求項16】
前記チャンバの各々が試薬を収容する、請求項15記載のマイクロ流体チャンバ。
【請求項17】
前記試験容積に液滴が流入するように、前記マイクロ流体ネットワークが、前記試験容積の各々に対して、液滴生成領域によって前記ポートから受け取られた液体から前記液滴を生成するように構成された前記液滴生成領域を含む、請求項13~15のいずれか一項記載のマイクロ流体チップ。
【請求項18】
前記架橋性材料が、
モノマー;
架橋剤;および
開始剤
を含む、請求項13~17のいずれか一項記載のマイクロ流体チップ。
【請求項19】
前記モノマーが、モノメタクリレート末端ポリ(ジメチルシロキサン)、3-[トリスト(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、および/または2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレートを含み;
前記架橋剤が、ポリジメチルシロキサン-ジアクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキシルジアクリレートを含み;かつ
前記開始剤が、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、および/または1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む、
請求項18記載のマイクロ流体チップ。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか一項記載のマイクロ流体チップの架橋性材料を光および/または熱に曝露して内部の前記材料を架橋させ、それによって前記チャネルを閉塞する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月10日に出願された米国特許出願第63/277,945号の恩典を主張する。参照される出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、シングルユースバルブを有するマイクロ流体チップのローディングに関し、具体的には、試薬試験のためのマイクロ流体チップのローディングに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
マイクロ流体チップは、化粧品、医薬品、病理、化学、生物学、およびエネルギーを含む多種多様な分野での使用が増加している。マイクロ流体チップは、典型的には、1つまたは複数の試料をその分析のために輸送、混合、および/または分離するように配置された1つまたは複数のチャネルを有する。チャネルのうちの少なくとも1つが1マイクロメートルまたは数十マイクロメートル程度の寸法を有することができ、比較的小量(例えば、ナノリットルやピコリットル)の試料の分析を可能にする。マイクロ流体チップで使用される少量の試料は、従来のベンチトップ法に優るいくつかの利点を提供する。例えば、チップの構成部品の規模により、単一の細胞および/または分子の操作および分析を含むより正確な生物学的測定が、マイクロ流体チップで達成可能であり得る。マイクロ流体チップはまた、細胞の増殖、老化、抗生物質耐性などに関連する実験を容易にするために、その中の細胞環境の制御の改善をもたらすこともできる。また、マイクロ流体チップは、試料体積が小さく、低コストで、廃棄可能であるため、病原体の同定およびポイントオブケア診断を含む診断用途によく適している。
【0004】
いくつかの用途では、マイクロ流体チップは、感染症疾患用のインビトロ診断製品(IVD)、癌用のIVD、臓器チップ、多重化PCR、多重化ELISA、キャピラリーELISA、遺伝子配列決定(例えば、単一細胞遺伝子配列決定)、医薬品の遺伝子合成(例えば、個別化医療)、多重化フローサイトメトリー、初代細胞選別、治療のためのT細胞選別、グリーンエネルギーのための藻類選別、および細胞分泌アッセイ(例えば、単一細胞分泌アッセイ)などの多重化用途のための統合された流体ネットワークとして構成される。例えば、試料に対する複数の試薬の影響を試験することは有益であり得る。例えば、抗生物質感受性試験の場合、複数の抗生物質を多重化して個別に試験することにより、感染症を治療するために細菌の増殖を抑制するのに最も効果的な抗生物質の選択が可能になり得る。従来、そのような試験は、試験装置の個々のウェルに異なる試薬を配置し、ピペットを使用して手動で、またはロボットにより試料の一部分をウェルの各々に導入することによって行われる。しかしながら、そのようなプロセスは誤差を生じやすく、高価で複雑になる可能性がある。
【0005】
多重化用途向けに構成されたマイクロ流体チップは、このプロセスを合理化することができ、生体試料および試薬の量の低減、診断処理の高速化および単純化、ならびに試料汚染に由来する誤診断の低減という利点を提供する。従来、チップ上の反応チャンバの数が最大化される多重化用途では、個々の流体反応または操作を分離するためにマイクロバルブが利用される。特に、マイクロバルブは、個々のチャンバにおける、分離され、独立した反応、診断、および/または製品製造の多重化を可能にするために、チップの入口で分注された、またはチップの入口に圧送された流体試料がチップの反応チャンバに流入する開位置と、反応チャンバが互いにシールされる閉位置との間で操作される。
【0006】
静電弁、電気化学弁、圧電弁、磁気弁、電磁弁、およびガス作動弁を含む、流体ネットワークまたは反応チャンバを分離するための異なる作用機構を有するいくつかの種類のマイクロバルブが以前に記載されている。静電マイクロバルブは、柔軟な膜を移動させて弁を閉じるために電極の静電力を使用して適用される。電気化学マイクロバルブは、溶液を電解することによって発生する水素気泡を利用して膜を作動させて弁を閉じる。圧電マイクロバルブは、電気信号を曲げ力に変換して膜を変位させる。磁気マイクロバルブは、柔軟な弾性膜に取り付けられるか、または埋め込まれた軟磁性材料、例えば、磁気カンチレバービームや磁気ビーズを使用して構築され、膜の偏向は、近くの磁石によって発生した磁場によって生じる。同様に、電磁マイクロバルブは、電気エネルギーを利用して電磁場を発生させ、電磁場が膜を変位または偏向させる。ガス作動弁は、膜を偏向させて弁を開閉するためにシステムの内外に空気を圧送する外部システムを必要とする空気圧マイクロバルブを含み、熱空気圧マイクロバルブは、加熱要素、および温度上昇によって引き起こされる空気膨張を使用して弁運動を作動させる。
【0007】
特に、多数の反応チャンバを必要とする多重化用途のためのマイクロ流体チップの本体サイズは物理的な空間的制約を受け、比較的かさばる機械的、光学的、または磁気的なマイクロバルブをチップ上の各反応チャンバに対して構築することは困難であり得る。さらに、マイクロ流体チップは、典型的には、光透過性および生体適合性を可能にする選択された数の材料から製造される。これらの材料は、従来のマイクロバルブを製造するために使用される材料とは異なる場合があり、チップの本体上のマイクロバルブと相互作用することが困難な可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
概要
したがって、当該技術分野では、マイクロ流体ネットワーク内における、分離されかつ独立した反応、診断、および/または製品製造の多重化のための統合されたマイクロ流体ネットワークを画成するマイクロ流体チップに流体試料を効率的にロードおよび分配する装置および方法に対する必要性が存在している。この必要性に対処するために、本マイクロ流体チップのうちのいくつかは、活性化すると硬化して、マイクロ流体ネットワークの1つまたは複数の第1の部分をネットワークの1つまたは複数の第2の部分からシールする架橋性材料を含む弁機構を利用する。
【0009】
マイクロ流体チップは、流体がポートから試験容積までの間通る必要がある1つまたは複数のチャネルを介して1つまたは複数の試験容積と流体連通する少なくとも1つのポートを含むことができる。流体に加えて、マイクロ流体チップは、同様にポートから試験容積までの間チャネルを通って流動可能であり得る、チップのマイクロ流体ネットワーク内に配置された架橋性(例えば、光架橋性および/または熱架橋性)材料を含むことができる。
【0010】
マイクロ流体チップは、液体の1つまたは複数の部分の各々をポートからチャネルのうちの少なくとも1つを通して試験容積のうちのそれぞれ1つに流すことによってロードすることができる。マイクロ流体チップにロードすることは、チャネル内に架橋性材料を導くことをさらに含むことができる。架橋性材料が流体ネットワークのチャネル内に導かれると、液体の部分が試験容積内にあるときに試験容積がもはやポートと流体連通しないように、架橋性材料を、チャネル内で架橋させることができる。よって、架橋した材料は、チャネルを閉塞し、架橋した材料による閉塞後に生じるマイクロ流体ネットワーク内の1つまたは複数の流路に沿って生じるもの以外の、試験容積へのおよび試験容積からの流体の流れを防止し、それによって試験容積をマイクロ流体ネットワークの少なくとも一部分から分離することができる。これにより、液体の個々の部分に対する、マイクロ流体ネットワークに導入された試薬の制限を容易にすることができ、液体の複数の個々の部分に対する、複数の試薬の同時かつ別個の導入が可能になり得る。
【0011】
架橋性材料は、生体反応および化学反応に適合する方法でマイクロ流体ネットワーク本体とシームレスに統合することができるので、多重化用途はより単純かつより効率的であり得る。流体ネットワーク内に弁機構を実装するための、マイクロ流体ネットワーク本体上の余分な空間もマイクロ流体チップと弁機構との間のインターフェースも不要であり、架橋性材料を活性化するために必要な機器(例えば、UV/可視光照射や熱)は、物理的な弁よりも安価であり、管理および操作が容易である。さらに、ネットワーク内の弁は、物理的な弁の個別の位置に制約されず、代わりに、弁機構の作動は、ネットワークチャネルと流体連通するマイクロ流体ネットワーク内の任意の位置で行うことができる。
【0012】
本発明のマイクロ流体チップのいくつかは、ポートと、1つまたは複数の試験容積と、流体がポートから試験容積までの間通る必要がある1つまたは複数のチャネルとを含むマイクロ流体ネットワークを含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の試験容積は2つ以上の試験容積を含み、マイクロ流体ネットワークは、試験容積の各々に対して、流体が試験容積に入る前に通る必要があるチャンバを含む。いくつかの態様では、チャンバは、2ミリメートル以下の最大横断寸法を有する。さらに、いくつかの態様では、チャンバの各々は試薬を収容する。
【0013】
いくつかの態様では、液滴が試験容積に流入するように、マイクロ流体ネットワークは、試験容積の各々に対して、液滴生成領域によってポートから受け取られた液体から液滴を生成するように構成された液滴生成領域を含む。
【0014】
いくつかの態様では、架橋性材料がチャネルを通って流動可能であるように、マイクロ流体ネットワーク内に架橋性材料が配置される。架橋性材料は、いくつかの態様では、光架橋性材料および/または熱架橋性材料を含む。架橋性材料は、いくつかの態様では、モノマー、架橋剤、および開始剤を含む。いくつかの態様では、モノマーは、モノメタクリレート末端ポリ(ジメチルシロキサン)、3-[トリスト(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、および/または2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレートを含む。いくつかの態様では、架橋剤は、ポリジメチルシロキサン-ジアクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキシルジアクリレートを含む。いくつかの態様では、開始剤は、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび/またはエオシンYを含む。
【0015】
本方法のいくつかは、内部の材料を架橋させるために、本明細書に開示されるマイクロ流体チップの架橋性材料をUV/可視光および/または熱に曝露する工程を含む。いくつかの方法では、架橋性材料を架橋させることは、それによってチャネルを閉塞する。
【0016】
本発明の、マイクロ流体チップにロードする方法のいくつかは、マイクロ流体ネットワークのポート内に液体を配置する工程を含む。いくつかの方法では、マイクロ流体ネットワークは、1つまたは複数の試験容積および1つまたは複数のチャネルを含み、液体の1つまたは複数の部分は、ポートから、チャネルのうちの少なくとも1つを通って、試験容積のうちのそれぞれ1つに流入する。1つまたは複数の試験容積は、いくつかの方法では、2つ以上の試験容積を含む。液体の1つまたは複数の部分は、いくつかの方法では、液体の2つ以上の部分を含む。いくつかの方法では、液体の部分の各々に試薬が導入される。液体は、いくつかの方法では、水性液体を含む。
【0017】
いくつかの方法では、マイクロ流体ネットワークは、試験容積の各々に対して、流体が試験容積に入る前に通る必要があるチャンバをさらに含む。チャンバは、いくつかの方法では、2ミリメートル以下の最大横断寸法を有する。
【0018】
いくつかの方法では、マイクロ流体ネットワークは、試験容積の各々に対して、液滴生成領域をさらに含む。液体の各部分について、いくつかの方法では、流す工程は、液滴を生成するために前記部分が液滴生成領域のうちのそれぞれ1つを流れるように行われる。いくつかの方法では、液滴は試験容積に流入する。
【0019】
いくつかの方法では、架橋性材料がチャネルのうちの少なくとも1つの中に導かれる。架橋性材料は、いくつかの方法では、液体の部分が試験容積内にあるときに試験容積のいずれもポートと流体連通しないように、架橋される。いくつかの方法では、液体の各部分が試験容積内にあるときに試験容積が他のどの試験容積とも流体連通しないように、架橋性材料を導きかつ架橋させる工程が行われる。いくつかの方法では、架橋性材料を導く工程は、架橋性材料をポートからチャネルのうちの少なくとも1つの中に導く工程を含む。いくつかの方法では、液体の1つまたは複数の部分を流す前に、架橋性材料はポート内の液体上に配置される。いくつかの方法では、架橋させる工程は、液体の1つの部分が試験容積のうちの1つに流入する前に行われる。
【0020】
架橋性材料は、いくつかの方法では、光架橋性材料および/または熱架橋性材料を含む。いくつかの方法では、架橋性材料の密度は液体の密度よりも低い。架橋性材料は、いくつかの方法では、モノマー、架橋剤、および開始剤を含む。いくつかの方法では、モノマーは、モノメタクリレート末端ポリ(ジメチルシロキサン)、3-[トリスト(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、および/または2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレートを含む。いくつかの方法では、架橋剤は、ポリジメチルシロキサン-ジアクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキシルジアクリレートを含む。いくつかの方法では、開始剤は、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、および/または1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む。
【0021】
「結合された」という用語は、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的ではないが、接続されていると定義され、「結合された」2つのものは、互いに一体であり得る。「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本開示が特に明示的に必要としない限り、1つまたは複数として定義される。「実質的に(substantially)」という用語は、当業者によって理解されるように、指定されたものの大部分であるが、必ずしも全部ではないとして定義され、指定されたものを含み、例えば、実質的に90度は90度を含み、実質的に平行は、平行を含む。任意の開示の態様では、「実質的に」という用語は、指定されたものの「[パーセンテージ]内」で置き換えられてもよく、パーセンテージは0.1、1、5、および10パーセントを含む。
【0022】
「備える(comprise)」という用語およびその任意の形態、例えば「備える(comprises)」や「備える(comprising)」、「有する(have)」およびその任意の形態、例えば「有する(has)」や「有する(having)」、「含む(include)」およびその任意の形態、例えば「含む(includes)」や「含む(including)」、ならびに「含有する(contain)」およびその任意の形態、例えば「含有する(contains)」や「含有する(containing)」は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つまたは複数の要素を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、または「含有する(contains)」装置は、それらの1つまたは複数の要素を保持または含有するが、それらの要素のみを保持または含有することに限定されない。同様に、1つまたは複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」方法は、それらの1つまたは複数の工程を有するが、それらの1つまたは複数の工程のみを有することに限定されない。
【0023】
装置、システム、および方法のいずれかの任意の態様は、記載の工程、要素、および/または特徴のいずれかを備える/含む/有するのではなく、記載の工程、要素、および/または特徴のいずれかからなるか、またはから本質的になることができる。よって、特許請求の範囲のいずれかにおいて、所与の請求項の範囲を、そうでなければオープンエンドの連結動詞を使用することになるものから変更するために、「~からなる(consisting of)」または「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を、上記のオープンエンドの連結動詞の代わりに使用することができる。
【0024】
さらに、特定の方法で構成されるデバイスまたはシステムは、少なくともその方法で構成されるが、具体的に記載されたもの以外の他の方法で構成することもできる。
【0025】
一態様の1つまたは複数の特徴は、本開示または態様の性質によって明示的に禁止されていない限り、記載または例示されていなくても、他の態様に適用されてもよい。
【0026】
上記の態様および他の態様と関連付けられるいくつかの詳細を以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面は、限定ではなく例として示されている。簡潔および明瞭にするために、所与の構造のすべての特徴は、その構造が現れるすべての図においてラベル付けされているとは限らない。同一の参照符号は、必ずしも同一の構造を指示するものではない。むしろ、同じ参照符号は、同一ではない参照符号と同様に、類似の特徴または類似の機能を有する特徴を指示するために使用され得る。図面中の図は、特に断らない限り、縮尺通りに描かれており、これは、少なくとも図内の態様に関して図示の要素のサイズが互いに対して正確であることを意味する。
【0028】
図1A図1Aは、図1Bの線1A-1Aに沿った、本発明のマイクロ流体チップのうちの1つのマイクロ流体ネットワークのポートの断面図である。このマイクロ流体チップは、例えばポートを介して1つまたは複数の液体、試薬、および/または架橋性材料がロードされ、かつ多重化用途に使用することができる。
図1B図1Bは、図1Aのマイクロ流体ネットワークの一部分の底面図であり、その液滴生成領域および試験容積を示している。
図1C図1Cは、図1Bの線1C-1Cに沿った図1Aのマイクロ流体ネットワークの断面図であり、その液滴生成領域を示している。
図2A図2Aは、水性試料液体および架橋性材料がそのポートに配置された、図1Aのマイクロ流体ネットワークの断面図である。
図2B図2Bは、図1Aのマイクロ流体ネットワークの一部分の底面図であり、ポートから、マイクロ流体ネットワークのうちの少なくとも1つのチャネルを通って、マイクロ流体ネットワークのそれぞれの試験容積に流入する、試料の流れを示している。
図2C図2Cは、図1Aのマイクロ流体ネットワークの断面図であり、ネットワークの液滴生成領域における液滴形成を示している。
図2D図2Dは、図1Aのマイクロ流体ネットワークの一部分の底面図であり、ネットワークのチャネルに配置された水性液体および架橋性材料を示し、架橋後の架橋性材料の適切な位置も示している。
図3図3A~3Bは、ネットワークに流入した蛍光色素試薬あり(図3A)およびなし(図3B)で生成された、マイクロ流体ネットワークの試験容積内の液滴の重複蛍光および明視野画像である。
図4図4は、蛍光色素試薬が注入されなかったマイクロ流体ネットワークの試験容積内の液滴(液滴コンテナ2、4、6、8、9、11、13、および15)の平均蛍光強度と比較した、蛍光色素試薬が注入されたマイクロ流体ネットワークの試験容積内の液滴(液滴コンテナ1、3、5、7、10、12、14、および16)の平均蛍光強度である。
図5A図5Aは、架橋性材料の生体適合性試験を概略的に示す。(a)(左パネル)には、架橋性材料が水性液体の上に配置された、マイクロ流体ネットワーク(左画像)および96ウェルプレート(右画像)における架橋性材料の生体適合性を試験するための構成の比較が示されている。(b)(右パネル)には、その後の細菌培養に対する、トリス緩衝液および可変濃度の架橋性材料を含む溶液を細菌水溶液の上に配置する効果を試験するための実験用の96ウェルプレートレイアウトが示されている。行ごとに編成された試験細菌株は、以下を含む:行Aおよび行E:対照(細菌溶液なし);行Bおよび行F:肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)87;行Cおよび行G:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)262;行Dおよび行H:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)29213。行および列ごとに編成された試験架橋性材料溶液は、以下を含む:行A~D、列1~3:トリス緩衝液;行A~D、列4~6:トリス緩衝液+10mg/mL架橋性材料;行A~D、列7~9:トリス緩衝液+20mg/mL架橋性材料;行A~D、列10~12:トリス緩衝液+40mg/mL架橋性材料;行E~H、列1~3:対照(トリス緩衝液または架橋性材料なし)。
図5B図5Bは、図5Aのパート(b)に記載された96ウェルプレートの24時間の培養後の細菌細胞生存率に対応する比色分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
図1A図1Cを参照すると、多重化用途で使用するための1つまたは複数の液体、試薬、および/または架橋性材料をロードするための、本発明のマイクロ流体チップ100のうちの1つのマイクロ流体ネットワークの態様10が示されている。ネットワーク10は、分析のために液体試料を受け取ることができるポート14を含むことができる。ネットワーク10はまた、2個以上、3個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上、16個以上、20個以上、24個以上、28個以上、もしくは32個以上のうちのいずれか1つ、または2、3、4、6、8、10、12、14、16、20、24、28、もしくは32個のうちのいずれか2つの間の試験容積などの、1つまたは複数の試験容積22と、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、もしくは8個以上のうちのいずれか1つ、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個のうちのいずれか2つの間のチャネルなどの、1つまたは複数のチャネル18とを含むことができる。図1Bに示すように、ネットワークは、4つの試験容積22と、ポート14の各側から横方向に分岐する2つのチャネルとを含む。以下でさらに詳細に説明するように、各チャネル18は、ポート14に導入された試料が流路26に沿って、試料と試薬との間の相互作用を分析することができる試験容積22に流入するように構成することができる。
【0030】
ネットワーク10の一部分の底面図を示す図1Bをさらに参照すると、各マイクロ流体ネットワークは、試料が試験容積22に入る前に通る1つまたは複数のチャンバ30をさらに含むことができる。チャンバのうちの少なくとも1つは試薬を収容する。複数の試薬の分析を可能にするために、ネットワーク10は、単一のネットワークの一部であれ、複数のネットワークの一部であれ、2個以上、3個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上、16個以上、20個以上、24個以上、28個以上、もしくは32個以上のうちのいずれか1つ、または2、3、4、6、8、10、12、14、16、20、24、28、もしくは32個のうちのいずれか2つの間のチャンバなどの、複数のチャンバ30を有することができる。例えば、図示の態様では、ネットワーク10は、4つのチャンバ30を有する。チャンバ30のうちの少なくとも1つは(例えば、対照分析を行うことができるように)試薬を省くことができ、チャンバの他のものは異なる試薬を有することができる。チャンバ30は、例えば、2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、もしくは25μm以下のうちのいずれか1つ、または2,000、1,500、1,000、500、300、200、100、50、もしくは25μmのうちのいずれか2つの間の最大横断寸法などの、マイクロ流体の流れを促進するための任意の適切な最大横断寸法を有してもよい。
【0031】
マイクロ流体ネットワーク10はまた、図2A図2Bに示すように、ネットワーク10内に配置された架橋性材料80(例えば、光架橋性材料および/または熱架橋性材料)を含むことができる。架橋性材料80は、流路26に沿ってチャネル18を通って流動可能とすることができ、架橋させてチャネル18に永久的な閉塞を形成することができ、それによって、2個以上、3個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上、16個以上、20個以上、24個以上、28個以上、もしくは32個以上のうちのいずれか1つ、または2、3、4、6、8、10、12、14、16、20、24、28、もしくは32個のうちのいずれか2つの間の試薬および/またはチャンバなど、複数のチャンバ30内の複数の試薬の別個のかつ独立した分析を容易にする。
【0032】
ネットワーク10内のインサイチューの架橋に使用される架橋性材料は、モノマー、架橋剤、および開始剤を含むことができる。モノマーは、例えば、モノメタクリレート末端ポリ(ジメチルシロキサン)、3-[トリスト(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート、および/または2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレートとすることができる。架橋剤は、例えば、ポリジメチルシロキサン-ジアクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキシルジアクリレートとすることができる。開始剤は、例えば、それぞれ、紫外線および/または可視光および/または熱によって活性化すると、硬化する、または固まるように構成された光開始剤および/または熱開始剤とすることができる。光開始剤は、例えば、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、および/または1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとすることができる。これらのモノマー、架橋剤、および開始剤の任意の組合せが、架橋性材料80を製造するために使用され得る。
【0033】
液体試料76と同様に、架橋性材料80は、ネットワーク10のポート14によって受け取ることができる。場合によっては、架橋性材料80は、液体試料76の密度より低い密度を有し、例えば、架橋性材料の比重は、0.3g/cm3以下、0.4g/cm3以下、0.5g/cm3以下、0.6g/cm3以下、0.7g/cm3以下、0.8g/cm3以下、もしくは0.9g/cm3以下のうちのいずれか1つ、または0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、もしくは0.9g/cm3のうちのいずれか2つの間(例えば、0.5g/cm3以下)とすることができ、液体試料76とは混合しない。そのような場合、架橋性材料80は、図2Aに示すように、ポート14内の液体試料上に配置することができ、図2Dに示すように、試料76の後に流路26に沿ってチャネル18を通って流動可能とすることができる。
【0034】
各試薬が試料に導入されることを可能にするために、各チャンバ30は、図1A図1Bに示すように、ネットワーク10の少なくとも1つのポート14と流体連通することができる。そのような流体連通は、ポート14とチャンバ30との間に延在する流路26を介して達成することができる。図示のように、例えば、流路26は、試料を受け入れるためのポート14(図1A)を含むことができる。流路26は、ポート14と、流体がそこを通ってチャンバ30に入ることができる通路96との間に延在する1つまたは複数のチャネル18をさらに備えることができる(図1B)。例示として、各マイクロ流体ネットワーク10について、ポート14からの液体試料の一部分は、チャネル18を通って流れ、各チャンバ30について、通路96を通ってチャンバに流入することができる(図2A図2B)。
【0035】
各チャンバ30は、マイクロ流体チップ100に結合された本体によって画成することができる。本体は、チャンバ30を含む内部容積を備えることができる。本体の端部は、内部容積と連通する開口部を画成することができ、チップ100の入口ポートを受け入れるかまたはチップ100の入口ポートによって受け入れられることができる。チップ入口ポートに結合されると、本体はまた、上述したように、ネットワーク10のチャネル18のうちの1つからの試料液体が(例えば、チップ入口ポートから流出することなく)チャンバ30に入って、存在する場合には、チャンバ内の試薬と接触することを可能にする通路96を画成することができる。代表的なチャンバ30の構成要素およびその構成は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第63/227,303号に記載されている。
【0036】
チップ入口ポートは、チャンバ30から試料液体を受け取るように構成することができ、液滴生成のための非水性液体(例えば、88)を収容することができるリザーバを画成することができる。試料は、試薬がロードされるとリザーバに入り、分析のためにネットワーク10の試験容積22のうちの1つに導かれ得る。
【0037】
さらに図1Bおよび1Cを参照すると、各マイクロ流体ネットワーク10は、そのチャンバ30の各々に対して、(例えば、チップ入口ポートによって画成された)リザーバと、試験容積22と、リザーバと試験容積との間に延在する1つまたは複数の流路34とを含む試験部分を有することができる。各流路34は、液滴生成領域38を含むことができ、液滴が形成され、分析のために試験容積に導入されるように、流路34に沿って、流体がリザーバから液滴生成領域38を通って試験容積22に流れることができる。各流路34は、流体がそこを通って流れることができる1つまたは複数のチャネルおよび/または他の通路によって画成することができ、2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、もしくは25μm以下のうちのいずれか1つ、または2,000、1,500、1,000、500、300、200、100、50、もしくは25μmのうちのいずれか2つの間の、マイクロ流体の流れを促進するための任意の適切な最大横断寸法、例えば、流路34の中心線に垂直に取られた最大横断寸法などを有することができる。各マイクロ流体ネットワーク10の各試験部分は、任意で、少なくともいくつかの(例えば、過剰な)液滴が試験容積22から入ることができる出口ポート42を含み、出口ポート42は、出口ポートと試験容積との間の流路を介する場合を除いて、流体が出口ポートに出入りするのを阻止するようにシールすることができる。
【0038】
液滴生成は、任意の適切な方法で達成することができる。例えば、図1Cに示すように、液滴生成領域38において、流路34の最小断面積は、リザーバから離れる方向に流路に沿って増加し得る。例示として、流路34は、狭窄区間46および拡張領域50を含むことができ、流路の最小断面積は、狭窄区間よりも拡張領域において大きい。よって、非水性液体の存在下で水性試料を含む液体は、狭窄区間46から拡張領域50まで流路34に沿って流れるときに膨張して液滴を形成することができる。
【0039】
流路34の断面積のそのような変化は、流路の深さの変動からもたらされ得る。例えば、拡張領域50において、流路34は、(例えば、そこに沿った流路の深さが実質的に同じである)一定区間および/または(例えば、そこに沿った流路の深さが流路に沿って増加する)拡張区間を含むことができ、各々の最大深さ62bは、狭窄区間46の最大深さ58より大きい、例えば、少なくとも10%、50%、100%、150%、200%、250%、または400%大きい。例示として、狭窄区間46の最大深さ58は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、もしくは5μm以下のうちのいずれか1つ、または20、15、10、もしくは5μmのうちのいずれか2つの間(例えば、10~20μm)とすることができ、拡張領域50の最大深さ62bは、15μm以上、30μm以上、45μm以上、60μm以上、75μm以上、90μm以上、105μm以上、もしくは120μm以上のうちのいずれか1つ、または15、30、45、60、75、90、105、もしくは120μmのうちのいずれか2つの間(例えば、65~85μm)とすることができる。
【0040】
図示のように、拡張領域50は、拡張区間の深さが狭窄区間から離れると(例えば、最小深さ62aから最大深さ62bまで)増加するように角度70だけ狭窄区間46に対して角度を付けて配置された傾斜部66を有するランプ54を含む拡張区間を備える。角度70は、狭窄区間46の中心線に平行な方向に対して測定した場合に、5°以上、10°以上、20°以上、30°以上、40°以上、50°以上、60°以上、70°以上、もしくは80°以上のうちのいずれか1つ、または5°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、もしくは80°のうちのいずれか2つの間(例えば、20°~40°)とすることができる。図示のように、ランプ54は、ランプが上述の傾斜部66のうちのいずれかを有するような立上りおよび奥行きを有する複数の段74によって画成されており、しかしながら、他の態様では、ランプを単一の平坦な表面によって画成することができる。
【0041】
液滴生成領域38は、液滴を形成するために他の構成を有することができる。例えば、他の態様では、液体の膨張は、一定区間のみ、拡張区間の上流の一定区間、または一定区間の上流の拡張区間を用いて達成することができる。また、他の態様では、液滴生成領域38は、T接合部(例えば、そこで2つのチャネル、すなわち、一方を通って流れる水性液体と他方を通って流れる非水性液体が、非水性液体が水性液体をせん断して液滴を形成するように接続する)、流れ集束、共流などを介して液滴を形成するように構成することができる。そのような代替の態様の一部では、マイクロ流体ネットワーク10の各々は複数のチップ入口ポートを含むことができ、水性および非水性液体を、異なる入口ポートに(例えば、それらが液滴生成のための接合部で出会うことができるように)受け入れることができる。
【0042】
液滴生成領域38の幾何学的形状に少なくとも部分的に起因して、液滴生成領域内で生成される液滴は、例えば、10,000ピコリットル(pL)以下、5,000pL以下、1,000pL以下、500pL以下、400pL以下、300pL以下、200pL以下、100pL以下、75pL以下、もしくは25pL以下のうちのいずれか1つ、または10,000、5,000、1,000、500、400、300、200、100、75、もしくは25pLのうちのいずれか2つの間(例えば、25~500pL)の体積などの、比較的小さい体積を有することができる。各液滴は、例えば、100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、もしくは60μm以下のうちのいずれか1つ、または100、95、90、85、80、75、70、65、もしくは60μmのうちのいずれか2つの間(例えば、60~85μm)の直径を有することができる。比較的少量の液滴は、例えば、水性試料液体によって含有される微生物の分析を容易にすることができる。液滴生成中、微生物のうちの1つまたは複数の各々を、液滴のうちの1つによって(例えば、カプセル化する液滴の各々が単一の微生物および、任意でその子孫を含むように)カプセル化することができる。液滴中のカプセル化された微生物の濃度は、液滴体積が小さいために比較的高くすることができ、これにより、微生物を増殖させるための長時間の培養を必要とせずにその検出が可能になり得る。
【0043】
液滴生成領域38からの液滴は試験容積22に流れることができ、試験容積は、分析に十分な液滴を収容する液滴容量を有することができる。例えば、試験容積22は、1,000個以上、5,000個以上、10,000個以上、20,000個以上、30,000個以上、40,000個以上、50,000個以上、60,000個以上、70,000個以上、80,000個以上、90,000個以上、もしくは100,000個以上のうちのいずれか1つ、または1,000、5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、もしくは100,000個のうちのいずれか2つの間の液滴(例えば、13,000~25,000個の液滴)を収容するようなサイズとすることができる。そうするために、試験容積22は、各々、試験容積の最大深さの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、もしくは120倍の大きさの長さおよび幅など、その最大深さに対して各々大きい長さおよび幅を有することができる。例として、長さおよび幅は、各々、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、11mm以上、12mm以上、13mm以上、14mm以上、15mm以上、16mm以上、もしくは17mm以上のうちのいずれか1つ、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、もしくは17mmのうちのいずれか2つの間とすることができ、図示のように、長さは幅よりも大きい(例えば、長さは11~15mmであり、幅は5~9mmである)。試験容積22の深さは、液滴の積み重ねを軽減しながら(例えば、液滴を圧縮せずに)液滴を収容することができる。その深さは、例えば、15μm以上、30μm以上、45μm以上、60μm以上、75μm以上、90μm以上、105μm以上、もしくは120μm以上のうちのいずれか1つ、または15、30、45、60、75、90、105、もしくは120μmのうちのいずれか2つの間(例えば、15~90μm、65~85μmなど)(例えば、拡張領域50の最大深さ62bと実質的に同じ)とすることができ、任意で、試験容積22にわたって実質的に同じとすることもできる。
【0044】
図2A~2Dを参照すると、マイクロ流体チップ(例えば、100)のマイクロ流体ネットワーク(例えば、10)(例えば、本明細書に記載されるものいずれか)をロードするために、いくつかの方法は、そのポート(例えば、14)内に水性液体(例えば、76)(例えば、患者からの尿、唾液、血液、軟組織、粘液などの分析のための試料を含有する液体)を配置する工程を含む。上述したように、ポート内の水性液体は、ポートに流体連通するネットワークのチャンネル(例えば、18)に流入することができる(図2A~2B)。
【0045】
いくつかの方法は、1つまたは複数の、任意で2つ以上の試薬を水性液体に導入する工程を含み、試薬の各々は、マイクロ流体デバイスの1つまたは複数のチャンバ(例えば、30)のうちのそれぞれ1つに収容される。例えば、マイクロ流体チップを使用して、抗生物質が微生物を死滅させるかまたは微生物の増殖を抑制する能力を評価することができるように、水性液体は、1つまたは複数の微生物を含有することができ、試薬の各々は、抗生物質(例えば、抗菌剤や抗真菌剤)などの薬物を含むことができる。真空ローディングを使用して、試薬を水性液体に導入することができる。真空ローディングでは、いくつかの方法は、ポート(例えば、14)に流体連通するチャンバ(例えば、30)の各々について、気体がチャンバから(例えば、中に配置された水性液体を通って)ポートの外に流出するように、ポート(例えば、14)における圧力を低下させることを含む。ポートにおける圧力は、周囲圧力を下回って低下させることができる。例えば、圧力を低下させることは、入口ポートにおける圧力が、0.5atm以下、0.4atm以下、0.3atm以下、0.2atm以下、0.1atm以下、もしくは0atm以下のうちのいずれか1つ、または0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、もしくは0atmのうちのいずれか2つの間になるように行うことができる。より大きな圧力低下は、チャンバの各々から排出される気体の量を増加させることができる。
【0046】
次いで、ポートに流体連通するチャンバの各々に対して、水性液体の少なくとも一部分がポートからチャンバ内に流入するように、ポートにおける圧力を(例えば、周囲圧力まで)上昇させることができる(図2B)。例えば、上述したように、チャンバの各々について、水性液体の一部分は、ポート(例えば、14)から、1つまたは複数のチャネル(例えば、18)に沿って、通路(例えば、96)を通ってチャンバに流入することができる。液体をチャンバに導入する前に気体を排出することによって、チャンバ内の圧力は、液体がその中に導入されるときに周囲圧力に戻ることができ、減圧を必要とせずにその後の工程が行われることを可能にする。しかしながら、他の態様では、気体排出なしで(例えば、ポートにおける圧力を上昇させる前にポートにおける圧力を低下させることなく)正圧ローディングを使用することができる。
【0047】
試薬を含むチャンバに受け入れられた水性液体の部分は、チャンバを完全に満たすことができ、水性液体が試薬を含むようにチャンバ内の試薬と接触することができる。デバイスが複数のチャンバを含む場合、チャンバのうちの少なくとも1つは、対照実験を行うことができるように試薬を省くことができる。
【0048】
図示のように、複数の試薬(例えば、複数の抗生物質)を対照と共に評価することができるように、複数のチャンバおよび試験容積に同時にロードすることができる。そうするためのいくつかの方法は、マイクロ流体チップ(例えば、100)(例えば、本明細書に記載されるもののいずれか)のマイクロ流体ネットワーク(例えば、10)に、マイクロ流体ネットワークのポート(例えば、14)において水性試料と共に架橋性材料(例えば、80)(例えば、上述のように、モノマー、架橋剤、および開始剤を含む材料)をさらにロードすることを含む。上述のように、水性試料と同様に、ポート内の架橋性材料を、ポートと流体連通するネットワークのチャネル(例えば、18)に導くことができる(図2A図2B)。架橋性材料を導くことは、架橋性材料をポートからチャネルのうちの少なくとも1つの中に導くことを含むことができる。図2Dで例示するように、ネットワークのチャネル内に導かれると、液体の部分が試験容積(例えば、92)内にあるときに試験容積(例えば、22)のいずれもポートと流体連通しないように、架橋性材料を架橋させることができる。
【0049】
場合によっては、架橋性材料は、ポート内の水性液体上に配置され、かつ、水性液体がチャネルに流入した後に架橋性材料がチャネルに流入するように、液体の密度よりも低い密度を有する。水性液体の1つまたは複数の部分がチャンバ内にロードされてチャンバを完全に満たした後、チャネル内の水性液体の部分とその後ろを流れる架橋性材料は、架橋性材料が水性液体と不混和性であり、かつチャンバが水性液体で満たされているためにチャンバには入らず代わりにチャンバに接続しているチャネル内に留まるため、チャンバへの入口で接する。架橋材料がチャネルへの入口で水性材料と接している所で、アクチベータ、例えば紫外線、可視光、または熱を適用して架橋材料を架橋させることができ、それによって、チャネルを閉塞する(例えば、92)(図2D)。いくつかの方法では、架橋は、液体の1つの部分が試験容積のうちの1つに流入する前であるが、液体の1つの部分がチャンバのうちの1つに流入した後に行われる。
【0050】
チャネルの局所的な閉塞は、通常はネットワークと流体連通するチャンバを、水性液体の部分がチャンバ内にあるときにチャンバがもはやポートと流体連通しないようにネットワークからシールする。これにより、異なるチャンバに含まれる異なる試薬間の干渉またはクロストークなしに、複数のチャンバおよび試験容積内の複数の試薬の同時評価が可能になる。
【0051】
いくつかの方法は、チャンバの各々に対して、水性液体の液滴を生成する工程を含む。液滴生成は、チャンバの各々に対して、非水性液体を収容するリザーバにチャンバ内の水性液体を導く工程を含むことができる。試薬導入と同様に、液滴生成は真空ローディングによって達成することができ、そのような液滴生成を説明する方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第63/227,303号に記載されている。水性液体の少なくとも一部分(例えば、76)および非水性液体の少なくとも一部分(例えば、88)が、リザーバから液滴生成領域を通って流れる(図2C)。水性液体は、液滴生成領域を通過するときに液滴(例えば、76)を形成することができ、次いで、分析のために試験容積(例えば、22)に入ることができる。上述したように、液滴生成領域において、流路の最小断面積は、リザーバから離れる方向に流路に沿って増加することができ、これにより、非水性液体の存在下で水性液体が液滴を形成することが可能になる。液滴生成を促進するために、非水性液体を水と比較して比較的高密度とすることができ、例えば、非水性液体の比重は、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、もしくは1.7以上のうちのいずれか1つ、または1.3、1.4、1.5、1.6、もしくは1.7のうちのいずれか2つの間(例えば、1.5以上)とすることができる。真空ローディングでは、水性液体および非水性液体が試験容積に入ると、試験容積内の圧力は、実質的に周囲圧力に達するまで上昇することができる。
【0052】
真空ローディングはいくつかの利益を提供する。正圧勾配を使用する従来のローディング技術では、試験容積は、液滴がロードされるときに周囲圧力を上回るまで加圧される可能性があり、よって、その方法でロードされた液滴は、マイクロ流体チップの周囲の環境が周囲圧力に戻ると、移動して試験容積から排出される傾向があり得る。その排出を軽減するために、従来方式でロードされたチップは、液滴を試験容積内に保持するためのシールまたは他の保持機構を必要とする場合があり、外部環境内の圧力は周囲圧力にゆっくり戻される必要があり得る。負圧勾配を使用して試験容積とマイクロ流体チップの外部の環境との間の(例えば、周囲圧力までの)圧力均等化を達成することによって、追加のシールまたは他の保持機構を必要とせずに分析のために試験容積内の液滴の位置を維持することができ、圧力均等化をより速く行うことができる。さらに、マイクロ流体チップにロードするために使用される負圧勾配は、(例えば、その異なる部分間の)シールを補強して層間剥離を防止することができ、故障がある場合に気体を漏れ口に引き込むことによって意図しない漏れを封じ込めることができる。漏れの封じ込めは、例えば、水性液体が病原体を含む場合に安全性を促進することができる。それにもかかわらず、いくつかの態様では、正圧勾配を使用して液滴生成を行うことができる。
【0053】
液滴が生成され、マイクロ流体デバイスの試験容積に配置された後に、いくつかの方法は、試験容積の各々について、試験容積内の液体(例えば、液滴)の画像を取り込む工程を含む。水性液体は、微生物の存在下で経時的に変化する特定の蛍光を有することができる生存率指示薬(例えば、ALAMARBLUE(登録商標)における活性化合物であるレサズリン)などの蛍光化合物を含むことができる。例えば、微生物をカプセル化する液滴では、微生物は生存率指示薬と相互作用して蛍光シグネチャを示し得る。液滴は、(存在する場合に)液滴がそのような蛍光を示すことができるように1つまたは複数の光源で照射することができ、これは、水性液体に導入された試薬の影響を評価するために画像取込みを使用して測定することができる。例えば、抗生物質は、液滴にカプセル化された微生物の増殖を抑制し得、より少ない液滴が対照試験容積中の液滴に対して蛍光シグネチャを示すことは、抗生物質の有効性を証明し得る。
【実施例
【0054】
本発明を、具体例を用いてより詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的で提供するにすぎず、いかなる点でも本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正することができる様々な重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【0055】
本明細書に開示される架橋性材料を使用したマイクロ流体ネットワーク内のチャンバと試験容積との分離を、蛍光色素ALAMARBLUE(登録商標)を含む水性液体を使用して実証した。
【0056】
第1の実験では、蛍光色素を含有する水性液体の上に架橋性材料を配置し、架橋性材料および水性液体をマイクロ流体ネットワークのポートに導入し、水性液体は、架橋性材料の前にネットワークに入った。蛍光流体をネットワークのチャネルを通してネットワークのチャンバ内に流してチャンバを満たし、一方、チャネル内の架橋性材料の流れは、チャネルからチャンバの入口まで蛍光流体の流れをたどった。次いで、架橋性材料を活性化させて(例えば、架橋させて)チャンバの入口でチャネルを閉塞して、蛍光色素を含有する水性液体がチャンバから出てチャネル内に逆流するのを防止した。次いで、真空ローディングを使用して、水性蛍光色素含有液体をネットワークの非水性液体収容リザーバに導き、水性蛍光色素含有液体の一部分および非水性液体の一部分がネットワークの液滴生成領域を流れたときに、液滴生成が達成された。最後に、蛍光色素を含有する液滴をネットワークの試験容積に蓄積させた。
【0057】
ネットワークを通る水性蛍光色素含有液体の流れおよび試験容積内の液滴蓄積を観察するために、タイムラプス画像を撮影してネットワーク内の液体を可視化した。撮影されたすべての画像において、水性蛍光色素含有液体は、蛍光液体がチャネル内に逆流することなく、個々のチャンバに完全に局在していた(データは示さず)。
【0058】
ネットワークに蛍光色素を含まない水性流体をロードした後、ネットワークの特定のチャンバに代わりに濃縮蛍光色素を注入する、第2の実験を行った。第2の実験は、他の点では第1の実験と同一であった。第2の実験の結果を図3および図4に示す。
【0059】
蛍光色素が注入されたネットワークのチャンバ1、3、5、7、10、12、14、および16から生成された液滴は、対応する試験容積で収集された液滴の重複蛍光および明視野画像において強い蛍光信号を示した(図3A)。対照的に、蛍光色素が注入されなかったネットワークのチャンバ2、4、6、8、9、11、13、および15から生成された液滴は、対応する試験容積で収集された液滴の重複蛍光および明視野画像において無視できるほどの蛍光信号を有していた(図3B)。図4は、蛍光色素が、蛍光色素が注入されたチャンバからネットワーク内に逆流して蛍光色素が注入されなかったチャンバ内へと通過しなかったことを定量的に示すために、16個すべての試験容積からの対象領域における平均蛍光強度を示している。これらの結果は、液滴生成中にチャンバおよび/または試験容積に及ぼされる圧力変化または他の機械的力に起因するチャンバおよび/または試験容積に対する応力にもかかわらず、架橋性材料の活性化時のチャネルの閉塞により、チャンバ、試験容積、およびその中の液体をネットワーク内で互いに完全に分離することができることを実証している。
【0060】
生物学的アッセイ、反応、および/または操作に利用されるべき架橋性材料の能力を、96ウェルプレート中の、架橋性材料を伴う細菌株の培養を使用して実証した。図5A(左パネル)に示すように、相当する細菌水溶液および架橋性材料がマイクロ流体ネットワークのポートにおいて導入される条件をシミュレートするために、蛍光色素を含有する細菌水溶液の上に架橋性材料溶液を配置した。
【0061】
図5A(右パネル)で例示するように、3つの細菌株を含む3つの細菌溶液、培地、および細菌細胞生存率をアッセイするためのALAMARBLUE(登録商標)を調製し、各々3つ複製して培養した。細菌溶液中の細菌は、肺炎桿菌87(96ウェルプレートの行Aおよび行E)、緑膿菌262(96ウェルプレートの行Bおよび行F);または黄色ブドウ球菌29213(96ウェルプレートの行Cおよび行G)を含んでいた。ALAMARBLUE(登録商標)のみを含む溶液も対照として含めた(96ウェルプレートの行Dおよび行H)。
【0062】
図5A(右パネル)でさらに例示するように、トリス緩衝液および濃度を高めた架橋性材料を含む以下の4つの架橋性材料溶液を試験した:トリス緩衝液+0mg/mL架橋性材料(96ウェルプレートの行A~D、列1~3);トリス緩衝液+10mg/mL架橋性材料(96ウェルプレートの行A~D行、列4~6);トリス緩衝液+20mg/mL架橋性材料(96ウェルプレートの行A~D、列7~9);およびトリス緩衝液+40mg/mL架橋性材料(96ウェルプレートの行A~D、列10~12)。トリス緩衝液も架橋性材料も含まない溶液も対照として含めた(96ウェルプレートの行E~H、列1~3)。
【0063】
細菌および架橋性溶液を24時間培養した後、96ウェルプレートのカラー画像を撮影して、細菌細胞生存率を比色測定で可視化した(図5B)。架橋性材料を含むすべてのウェルが、3つすべての細菌種について対照と同じ色指標および同様のサイズの細菌クラスタを示し、架橋性材料が細菌の増殖および生存を損なわないことを示した。これらの結果は、架橋性材料が生体試料と適合性を有し、生物学的アッセイ、反応、および/または操作を妨げることなくマイクロ流体用途に使用できることを示唆している。
【0064】
上記の明細書および例は、例示的な態様の構造および使用の完全な説明を提供している。特定の態様を、ある程度の特殊性を伴って、または1つもしくは複数の個々の態様を参照して上述したが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、開示の態様に多くの変更を加えることができる。よって、方法およびシステムの様々な例示的な態様は、開示の特定の形態に限定されることを意図されていない。むしろ、それらは特許請求の範囲内に入るすべての修正例および代替例を含み、図示されたもの以外の態様は、図示の態様の特徴の一部または全部を含んでもよい。例えば、要素は省略されても、または一体構造として組み合わされてもよく、かつ/または接続部が置き換えられてもよい。さらに、適切な場合には、同等の、または異なる特性および/または機能を有し、同じか、または異なる問題に対処するさらなる例を形成するために、上述した例のいずれかの局面が説明したその他の例のいずれかの局面と組み合わされてもよい。同様に、上述した利益および利点は、1つの態様に関連してもよいし、またはいくつかの態様に関連してもよいことが理解されよう。
【0065】
特許請求の範囲は、そのような限定が、それぞれ、「~する手段(means for)」または「~する工程(step for)」という語句を使用して所与の請求項に明示的に記載されていない限り、ミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの限定を含むことを意図されておらず、そのような限定を含むと解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】