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特表2024-546017熱可塑性化合物のためのレシピを生成するためのシステムおよび方法
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  • 特表-熱可塑性化合物のためのレシピを生成するためのシステムおよび方法 図1
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  • 特表-熱可塑性化合物のためのレシピを生成するためのシステムおよび方法 図3C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】熱可塑性化合物のためのレシピを生成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/70 20190101AFI20241210BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241210BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G16C20/70
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527378
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077457
(87)【国際公開番号】W WO2023088604
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21208386.9
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘーメルレイク, エレン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, アンジェリカ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドリーブ, ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ホウベン, アーウィン ヨハネス エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング, イェレ フォッケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルバース, アーノルド セオドール マリー
(57)【要約】
熱可塑性化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムおよび方法(100)が提供され、レシピは、熱可塑性化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義する。成分は、ベースポリマーに添加される添加剤を含み得る。レシピは、入力レシピから化合物材料特性の値を予測するように既存の(過去の)化合物の化合物データ(20)に対して機械学習可能モデルを訓練すること(110)と、候補レシピを提供すること(120)と、スコアリング関数に基づいて最良のレシピを選択すること(140)と、化合物の試料を製造(200)および測定(210)することを可能にするために、例えばディスプレイを介して選択されたレシピを出力すること(150)と、試料の測定データを受信し(160)、目標仕様に対する偏差を決定することと、レシピが許容可能であるかどうかを判定すること(170)とによって生成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性化合物のレシピを生成するコンピュータ実装方法(100)であって、前記熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、前記レシピが、前記化合物を製造するための成分のセットおよび前記成分の相対的寄与を定義し、前記成分のセットが、前記ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の化合物データ(20)を取得するステップであって、前記化合物データが、それぞれの化合物について、前記それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、ステップと;
前記化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して(110)、入力レシピから前記1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るステップと;
前記1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)前記化合物の候補レシピを生成し(120)、前記予測モデルを使用して各候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)前記候補レシピからレシピを選択するステップ(140)であって、スコアリング関数を評価するステップを含み、前記スコアリング関数が、候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して(150)、前記化合物の試料の生成、および前記試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)前記試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を受信し、前記試料測定値を前記目標値と比較して、前記目標値に対する偏差を決定するステップ(160);ならびに
v)前記偏差が許容性基準を満たす場合、前記選択されたレシピを前記化合物のレシピとして出力し(170)、前記偏差が前記許容性基準を満たさない場合、前記試料測定値および前記試料レシピを使用して前記予測モデルを再訓練(110)または更新し、前記予測モデルを使用してステップi)~v)(120~170)を繰り返すステップ
によって、前記化合物のレシピを生成するステップと
を含む、コンピュータ実装方法(100)。
【請求項2】
前記予測モデルがニューラルネットワークを含み、前記ニューラルネットワークが再訓練される;および/または
前記予測モデルが、ガウス過程を含み、前記ガウス過程が、推論のために前記化合物データを使用し、前記ガウス過程が、前記試料測定値および前記試料レシピを前記化合物データに追加することによって更新される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記化合物の候補レシピを生成するステップ(120)が、ランダムなレシピのセットを提供するステップ(122)と、前記ランダムなレシピのセットに基づいて前記候補レシピを生成するステップとを含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項4】
前記化合物の候補レシピを生成するステップ(120)が、遺伝的アルゴリズムを使用して、前記ランダムなレシピのセットを反復的に変更して(130~133)、前記スコアリング関数による改善されたスコアを取得するステップを含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項5】
前記ランダムなレシピのセットを反復的に変更するステップが、
レシピ内の前記成分の相対的寄与をランダムに変更するステップ(130);
2つ以上のレシピを混合するステップ(131);
レシピから成分をランダムに省略するステップ(132);
レシピに成分をランダムに追加するステップ(133);
前記遺伝的アルゴリズムの前の反復における前の変更方向に基づいて選択された方向にレシピを変更するステップ;および
勾配降下技術を使用して、レシピを前記スコアリング関数の極小値に向かって変更するステップ
の少なくとも1つを含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項6】
前記レシピのランダムなセットを提供するステップ(122)が、
下限としてゼロを含み、前記公知のレシピにおける前記成分の最大相対的寄与を上限として含む範囲から選択される値に、成分の寄与をランダムに設定する工程;および
成分の寄与をゼロにランダムに設定する工程
の好ましくは少なくとも1つによって、前記成分の相対的寄与をランダムに選択するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項7】
前記スコアリング関数が、
より少ない成分を有するレシピ;および
前記化合物のベース成分と比較して相対的寄与が低いレシピ内の成分のセット
の少なくとも1つにリワードを与えるようにさらに構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項8】
前記1つまたは複数の化合物材料特性が、
CIELABなどの知覚的に均一な色空間における色値として、および/または反射率スペクトルとして好ましくは定義される、前記化合物の色;
破断伸び、引張強度および引張弾性率の好ましくは1つまたは複数である、前記化合物の1つまたは複数の機械的特性
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法(100)。
【請求項9】
プロセッサシステムで請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法(100)を実行するステップを含む、化合物のレシピを生成する方法であって、
前記化合物の試料を生成するステップ(200);および
前記試料の1つまたは複数の材料特性を測定して(210)、前記試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を取得するステップ
をさらに含む、方法。
【請求項10】
前記化合物の試料を生成するステップ(200)が、
押出成形と射出成形との組合せ;および
押出なしの射出成形
の少なくとも1つを使用する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レシピを生成するステップ(200)が、前記ステップi)~v)(120~170)を実行する少なくとも2回の反復を含み、
第1の反復では、前記試料を生成するステップが、押出なしで射出成形を使用する工程を含み、
第2および以降の反復では、前記試料を生成するステップが、押出成形と射出成形との組合せを使用する工程を含む
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記機械学習可能モデルが、前記選択されたレシピの不確実性定量化を提供するように構成され、前記方法が、前記選択されたレシピと共に前記不確実性定量化を出力するステップをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物データに対して前記機械学習可能モデルを訓練するステップが、
前記化合物データを、
前記化合物データから化合物の対を選択する工程であって、各対が、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含む、工程;ならびに
前記第1の化合物をベースポリマーとして使用して前記第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定する工程であって、前記第3のレシピが、前記第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、前記第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、前記第3のレシピが、前記第1のレシピと前記第2のレシピとの間の差に基づいて決定される、工程
によって処理するステップと;
前記機械学習可能モデルを訓練して、入力としての前記第1の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性および前記第3のレシピに基づいて前記第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性を予測することができ、それによって前記予測モデルとして、a)前記入力レシピとb)前記ベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値との組合せから製造される前記化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するモデルを得るステップと
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ベースポリマーがバージンポリマー、再生ポリマー、ブレンドポリマー、着色ポリマーまたはスクラップポリマーである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ベースポリマーが着色ポリマーである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15または19または20のいずれか一項に記載の方法によって生成されたレシピを使用して熱可塑性化合物を製造する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られる熱可塑性化合物。
【請求項18】
コンピュータプログラムを表すデータ(410)を含む一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体(400)であって、前記コンピュータプログラムが、プロセッサシステムに請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を実行させるための命令を含む、一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体(400)。
【請求項19】
熱可塑性化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステム(300)であって、前記熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、前記レシピが、前記化合物を製造するための前記レシピに対する成分のセットおよび前記成分の相対的寄与を定義し、前記成分のセットが、前記ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の化合物データ(20)にアクセスするように構成されたデータ記憶インターフェース(320)であって、前記化合物データが、それぞれの化合物について、前記それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、データ記憶インターフェース(320)と;
前記化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピから前記1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るように;
前記1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)前記化合物の候補レシピを生成し、前記予測モデルを使用して各候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)前記候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、前記スコアリング関数が、候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して、前記化合物の試料の生成、および前記試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)前記試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を受信し、前記試料測定値を前記目標値と比較して、前記目標値に対する偏差を決定するステップ;ならびに
v)前記偏差が許容性基準を満たす場合、前記選択されたレシピを前記化合物のレシピとして出力し、前記偏差が前記許容性基準を満たさない場合、前記試料測定値および前記試料レシピを使用して前記予測モデルを更新し、前記更新された予測モデルを使用してステップi)~v)を繰り返すステップ
によって、化合物のレシピを生成するように
構成された処理サブシステム(310)と
を備える、プロセッサシステム(300)。
【請求項20】
熱可塑性化合物のレシピを生成するコンピュータ実装方法(100)であって、前記熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、前記レシピが、前記化合物を製造するための成分のセットおよび前記成分の相対的寄与を定義し、前記成分のセットが、前記ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
熱可塑性化合物である化合物の化合物データ(20)を取得するステップであって、前記化合物データが、それぞれの化合物について、a)前記それぞれの化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、b)それぞれのベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびc)前記それぞれの化合物を得るために前記それぞれのベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義するレシピを含む、ステップと;
前記化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して(110)、前記ベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値および入力レシピから前記化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るステップと;
前記1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)前記化合物の候補レシピを生成し(120)、前記予測モデルを使用して各候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)前記候補レシピからレシピを選択するステップ(140)であって、スコアリング関数を評価するステップを含み、前記スコアリング関数が、候補レシピの前記1つまたは複数の化合物材料特性の予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ(140);および
iii)前記選択されたレシピを出力するステップ(150)
によって、前記化合物を製造するためのレシピを生成するステップと
を含む、コンピュータ実装方法(100)。
【請求項21】
前記化合物データが第2の化合物データであり、
公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の第1の化合物データにアクセスするステップであって、前記化合物データが、それぞれの化合物について、前記それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、ステップと;
前記第2の化合物データを、
前記第1の化合物データから化合物の対を選択する工程であって、各対が、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含む、工程;ならびに
前記第1の化合物をベースポリマーとして使用して前記第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定する工程であって、前記第3のレシピが、前記第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、前記第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、前記第3のレシピが、前記第1のレシピと前記第2のレシピとの間の差に基づいて決定される、工程
によって、生成するステップと
をさらに含む、請求項20に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、熱可塑性化合物のレシピを生成するためのコンピュータ実装方法およびプロセッサシステムに関し、熱可塑性化合物は、ベースポリマーを含む化合物であり、レシピは、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義する。本発明はさらに、コンピュータ実装方法を実行するためのコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読媒体、熱可塑性化合物の試料を生成するステップをさらに含む方法、レシピを使用して熱可塑性化合物を製造する方法、および方法によって得ることができる熱可塑性化合物に関する。
【0002】
[発明の背景]
例えば、ガラス繊維、安定剤、難燃剤、着色料などの他の成分と混合された熱可塑性ポリマーなどの化合物は、例えば顧客の要求に応じて、目標仕様に従って製造することができる。例えば、顧客は、化合物が特定の色を有するように要求することができ、その色は、例えばCIELAB値として表現することができ、CIELAB値は、特定の光源下で化合物から製造されたターゲットプレート上で測定することができる。化合物が目標仕様を完全にまたは少なくとも許容可能な程度まで満たすように、化合物の製造のためのレシピが決定され得る。そのようなレシピは、例えば、着色ポリマーを製造するための着色剤などの化合物の製造に使用される成分のセット、および成分の質量分率などの成分の互いに対する相対的寄与を定義することができる。
【0003】
このようなレシピは経験的に決定されることが知られている。例えば、着色化合物の場合、色専門家は、顧客の色目標仕様に視覚的に最も近い既存のカラープレートを自分の(物理)データベースで探すことができる。既存のカラープレートのレシピ、すなわちプレートが製造される化合物は、公知であり得る。経験的に、スマート理論を使用して、色専門家は、最良に一致するカラープレートのレシピを出発点として使用して着色剤レシピを生成することができる。次いで、この着色剤レシピを用いて、例えば配合(押出)および射出成形によって試験プレートを作製することができ、
色値は、顧客ターゲットプレートと同じ光源下で測定することができる。色値が遠すぎる場合、目標仕様に対する色値の偏差が許容可能になるまで開発サイクルを繰り返すことができる。
【0004】
しかしながら、目標仕様は、多くの場合、1つの材料特性、例えば色だけでなく、化合物のいくつかの材料特性、例えば機械的特性、UV安定性性能、熱老化性能、粘度、CTI(比較トラッキング指数)値、可燃性などに及ぶことができ、この材料特性は他の場所では「化合物材料特性」とも呼ばれる。例えば、着色化合物の場合、色目標仕様が満たされた場合、着色化合物の試料に対していくつかの機械的試験を行うことができ、着色化合物の機械的特性が機械的特性の目標値からあまりにも大きく逸脱する場合、化合物の色値および機械的特性の両方が目標仕様に従うまで開発プロセスを繰り返すことができる。色を最適化したときに機械的特性が不十分であることがしばしば起こり得る。例えば、高温ポリマーをベースとする着色化合物の場合、所望の色を得るためにベースポリマーに添加され得る硬質無機顔料は、配合中に化合物中のガラス繊維を分解させる可能性があり、その結果、機械的特性が低下する可能性がある。また、一般に、1つの材料特性に関して目標仕様を満たすように化合物のレシピを最適化する場合、最適化中のレシピの変更によって、他の材料特性も影響を受ける可能性があり、したがって、適合性についても確認が必要な場合がある。
【0005】
上述の開発プロセスは、時間がかかり、高価であり、スループット時間がより長い可能性があるが、一方で、目標仕様が常に満たされるとは限らない可能性がある。例えば、色合わせプロセス中に遭遇し得る典型的な困難の例は、出発点として使用する最良の既存レシピの選択、および化合物の色に対する着色剤の変更の効果の推定である。機械的特性などの他の材料特性を最適化する場合、同様の困難に遭遇する可能性がある。
【0006】
したがって、より時間のかからない、および/またはスループット時間がより短い化合物の製造のためのレシピを生成することができることが望ましい場合がある。
【0007】
[発明の概要]
本発明の第1の態様によれば、熱可塑性化合物のレシピを生成するためのコンピュータ実装方法であって、熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、レシピが、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義し、成分のセットが、ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
公知のレシピを使用して生成された化合物の化合物データを取得するステップであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、ステップと;
機械学習可能モデルを化合物データに対して訓練して、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを取得するステップと;
1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数が、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して、化合物の試料の生成、および試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を受信し、試料測定値を目標値と比較して、目標値に対する偏差を決定するステップ;ならびに
v)偏差が許容性基準を満たす場合、選択されたレシピを化合物のレシピとして出力するステップ(170)
によって、化合物のレシピを生成するステップと
を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、一時的または非一時的データコンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読媒体が、コンピュータプログラムを表すデータを含み、コンピュータプログラムが、プロセッサシステムに本明細書に記載のコンピュータ実装方法のいずれか1つを実行させるための命令を含む、一時的または非一時的データコンピュータ可読媒体が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、熱可塑性化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムであって、熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、レシピが、化合物を製造するためのレシピに対する成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義し、成分のセットが、ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
公知のレシピを使用して生成された化合物の化合物データにアクセスするように構成されたデータ記憶インターフェースであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、データ記憶インターフェースと;
化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るように;
1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数が、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して、化合物の試料の生成、および試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を受信し、試料測定値を目標値と比較して、目標値に対する偏差を決定するステップ;ならびに
v)偏差が許容性基準を満たす場合、選択されたレシピを化合物のレシピとして出力するステップ
によって、化合物のレシピを生成するように
構成された処理サブシステムと
を備える、プロセッサシステムが提供される。
【0010】
上記の手段は、熱可塑性化合物の製造のためのレシピを生成するステップを含み得る。レシピは、化合物の製造に使用することができる化合物の成分のセットを定義することができる。そのような成分は、ベースポリマーに添加される添加剤、例えば、染料および顔料などの着色剤(「着色料」)、ガラス繊維、安定剤、難燃剤、加工助剤、流動改善剤などを含み得る。いくつかの例では、レシピは、ベースポリマーを含む化合物のすべての成分を定義することができるが、他の例では、レシピは、ベースポリマーまたはベースポリマーおよび他のベース構成成分に添加される添加剤のみを定義することができる。後者のタイプのレシピの例は、着色ポリマーを得るためにどの着色剤をベースポリマーに添加するかを定義するレシピである。レシピは、例えば質量分率として、成分の相対的寄与をさらに定義することができる。この段落で定義されたタイプのレシピはそれ自体公知であることに留意されたい。疑義を回避するために、レシピが添加される1つの成分および添加される成分の量を識別することができるという点で、成分のセットは単一の成分のみを含む場合があることにさらに留意されたい。言い換えれば、セットは、単体のセットであってもよい。
【0011】
上記の手段は、公知のレシピを使用して以前に生成された化合物の化合物データを取得するステップをさらに含み得る。そのような化合物データは、既存の化合物、すなわち、例えば大量生産によってまたは個々の試料として以前に製造された化合物に関連し得るので、他の場所では「過去の」化合物データと呼ばれることもある。これらの既存の化合物から、1つまたは複数の化合物材料特性が測定されている場合がある。引き続き背景のセクションに与えられた例を参照すると、化合物の色値は、例えば、化合物から製造された試験プレートを使用して測定されている場合がある。さらに、そのような既存の化合物のレシピは、例えば、そのレシピまたは他の方法で取得したレシピを使用して内部で製造された化合物によって公知であり得る。そのような化合物データは、例えば、物理的データベース、デジタルデータベース、または両方の組合せのいずれであってもよく、化合物のレシピを生成するプロセス、例えば経験的に化合物の試料を製造し、試料の1つまたは複数の化合物材料特性を測定するプロセス中に経時的に構築された既存のデータベースから検索されてもよい。いくつかの例では、化合物データを提供するステップは、測定された材料特性および化合物のレシピの両方に併せてアクセスすることができるように、物理的形態でのみ以前に存在したデータをデジタル化するステップ、または既存のデジタルデータを構造化するステップを含むことができる。他の例では、そのような化合物データを提供するステップは、例えば試験プレートとして、化合物の既存の試料にアクセスし、そのような既存の化合物を新たに測定するステップを含むことができる。
【0012】
上記の手段は、機械学習可能モデルを提供するステップと、化合物データ上で機械学習可能モデルを訓練するステップとをさらに含むことができる。具体的には、機械学習可能モデルは、公知のレシピおよびそのような公知のレシピを使用して製造された化合物の材料特性に対して訓練することができる。訓練によって、機械学習可能モデルを学習させて、機械学習可能モデルへの入力として提供されるレシピから、1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測することができる。例えば、機械学習可能モデルは、コンピュータ可読形式の既存のレシピを入力として受信することができ、このレシピを使用して製造された化合物の化合物材料特性を予測するように逆伝播を使用して訓練することができるニューラルネットワークを含むことができる。別の例では、機械学習可能モデルは、その共分散関数が化合物データに基づいて選択され得るガウス過程を含むことができる。そのような訓練の結果として、機械学習モデルを得ることができ、これは以下では単に「訓練済モデル」または「予測モデル」とも呼ばれ、後者は入力として提供されるレシピに基づいて1つまたは複数の化合物材料特性を予測するように訓練されたモデルを指す。
【0013】
上記の手段は、目標仕様が与えられた化合物のレシピを生成するステップをさらに含み得る。目標仕様は、例えば、1つまたは複数の化合物材料特性の目標値の形態で与えられてもよい。そのような目標値は、例えば、CIELAB単位の所望の色値またはPa単位の所望の引張強度を定義するなど、所望の材料特性を表すことができる数値であってもよい。他の例では、少なくともいくつかの目標値は、より良い値、例えばより高い引張強度が望まれ得るという点で、最小値を表し得る。したがって、目標値は、化合物が許容できないと見なされ得る上限または下限の境界を表し得る。
【0014】
化合物の予測モデルおよび目標仕様を考慮すると、化合物のレシピは以下のように生成することができる。化合物についていくつかの候補レシピを生成することができる。他の場所で説明したように、そのような候補レシピは、例えば、初期レシピから出発し、目標仕様により良く一致するように初期レシピを変更することによって生成することができる。変更が改善をもたらすか否かを評価することができるように、予測モデルを使用して、レシピ(初期レシピまたは変更されたレシピのいずれかである)を所与として、レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測することができる。さらに、目標仕様を満たすためのこのレシピの適合性を定量化することができるスコアリング関数を提供することができる。この目的のために、スコアリング関数は、レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の予測値と目標値との間の対応にリワードを与えることができる。例えば、目標材料特性が色値を含む場合、このレシピの適合性を判定するために、この目標色値をレシピの予測色値と比較することができる。すなわち、目標材料特性に対する大きな偏差は、レシピがあまり適切ではない、または不適切である可能性があることを示すことができ、目標材料特性に対する小さな偏差または偏差がないことは、レシピが(より)適切であることを示すことができる。いくつかの例では、候補レシピは、スコアリング関数を使用することによって、例えばランダムに生成された初期レシピを改善することによって生成されてもよく、他の例では、候補レシピは、異なる方式で、例えばユーザが候補レシピを手動で指定することによって生成されてもよい。
【0015】
次いで、候補レシピのセットから、スコアリング関数を使用してレシピを選択することができ、この候補レシピは、スコアリング関数に従って「最良の」レシピを表すことができる。レシピを検証するために、例えば人間が読める形式でレシピを出力して、レシピを使用して化合物の試料を作製することを可能にすることができる。化合物のそのような試料は、本明細書に記載されるものを含むがこれらに限定されない任意の公知の技術を使用して作製され得る。化合物の試料が作製されると、試料の1つまたは複数の化合物材料特性を、例えば、化合物の目標仕様が定義されるのと同じまたは同様の条件下で測定することができ、得られた試料測定値は、プロセッサシステムまたはコンピュータ実装方法に再び入力され得る。目標値に対する偏差の程度が予め予測されてもよいが、実際の測定はこの予測を確認してもよく、または確認しなくてもよい。特に、実際の測定値と目標値との間の偏差を決定することができ、偏差が許容可能な場合、レシピは、化合物のレシピとして選択することができる。そのような許容性は、例えば、許容範囲を定義することができ、プロセッサシステムおよび方法によって評価することができるコンピュータ可読許容性基準によって評価することができる。他の例では、許容性基準は、ユーザの基準であってもよく、ユーザは、目標値に対する偏差に基づいてレシピを承認または否認する。
【0016】
上記の手段は、そのレシピに基づいて化合物の材料特性を予測することができるように過去のデータに対して訓練され得る機械学習可能モデルが提供されるという効果を有し得る。多くの場合、大量のそのような過去のデータが利用可能であるか、または様々な既存の物理的およびデジタルデータベースからのデータを統合することによって利用可能にすることができるため、機械学習可能モデルは、そのようなデータ内の関係およびパターンを学習して、十分な精度で材料特性を予測することができる。したがって、このように選択されたレシピは、ユーザがデータ内の関係およびパターンを認識する能力には限りがあり得るため、経験的に決定されたものよりも良い出発点を表し得る。特に、例えば、かなりの数の可能な成分から選択された成分を含み得るレシピ(レシピが次元の大きいN次元ベクトルであり得ることを意味する)では、データ空間が非常に大きくなる可能性があるため、ユーザがさらなる最適化のために出発レシピを選択することは困難な場合がある。しかしながら、選択されたレシピは、例えば上述のデータ空間の次元が大きいことに起因して、依然として不十分である可能性があり、これにより、このデータ空間のいくつかの部分において予測モデルの精度を欠く可能性があることが認識される。したがって、ユーザは、レシピがプロセッサシステムおよび方法によって出力され得るので、レシピを使用して試料を製造し、その材料特性を測定し、プロセッサシステムおよび方法が化合物が目標仕様を十分に満たすかどうかを判定することを可能にするように、得られた測定値をプロセッサシステムおよび方法にフィードバックすることが可能になる。
【0017】
化合物を製造するためのレシピを生成するプロセスは、現在、上記の手段によって、特に、過去の化合物データに対して訓練された機械学習モデルを提供し使用することによって、少なくとも部分的に自動化されているので、以前のように出発レシピの経験的選択のみに依存する場合よりも、第1の試料が目標仕様により良い一致を既にもたらし得るという点で、製造される試料が少なくても十分であり得る。好適には、化合物のレシピは、より時間のかからない方式で生成することができ、および/またはより短いスループット時間を必要とし得る。
【0018】
偏差が許容性基準を満たさない場合、試料測定値および試料レシピを使用して予測モデルを再訓練または更新することができ、予測モデルを使用してステップi)~v)を繰り返すことができる。製造された試料の偏差が大きい場合、特にこの偏差が当初予測されたものより大きい場合、これは、予測モデルがデータ空間の特定の部分における関係を正確に捕捉することが不十分であり得るという点で、予測モデルの精度が不十分であり得ることを示し得る。これは、例えば、訓練データの量がデータ空間のサイズ、例えばレシピの次元に対して小さい場合、または訓練データがデータ空間にわたって不均一に分布している場合、例えば、過去の化合物データが特定の成分を有する化合物をわずかのみ有するかまたは全く有しない場合に起こり得る。この不十分さに対処するために、試料化合物のレシピおよび測定値を使用して予測モデルのパラメータを更新することができるという点で、予測モデルを再訓練することができる。そのような再訓練は、次の化合物のレシピを再生成するために使用されるときの予測モデルの精度を改善するだけでなく、化合物のレシピをさらに最適化するときにも予測モデルの精度を改善することができる。すなわち、目標仕様に対する偏差が許容できない可能性があるとき、レシピをさらに最適化することができ、これは、再訓練された予測モデルを使用してステップi)~v)を再び実行することを含むことができる。ここで、化合物の以前に選択されたレシピは、例えば候補レシピを生成するときに再使用することができるが、破棄することもでき、再訓練された予測モデルを使用して候補レシピを新たに生成することができる。予測モデルは、特定の化合物に関連する可能性が高いデータ空間の部分でより正確になり得るので、レシピ選択プロセスは、より正確になり得る。好適には、予測モデルの精度は、化合物間だけでなく、特定の化合物のレシピ生成中にも経時的に改善され得る。
【0019】
いくつかの予測モデルは、再訓練を必要とせずにより正確な予測を提供するために更新され得ることに留意されたい。例えば、推論中に化合物データを使用し、したがって化合物データが予測モデルの一部を効果的に形成するガウス過程および同様の予測モデルの場合、試料測定値および試料レシピは、新しいデータ点として化合物データに追加され得る。そのような更新は、再訓練と同じまたは同様の効果を達成することができるが、予測モデルを再訓練するために通常必要とされる計算労力を伴わない。いくつかの実施形態では、N個の新しいデータ点ごとに予測モデルを化合物データ上で再訓練することができるという点で、データ点の追加および再訓練を交互に行うことができる。
【0020】
以下は、本発明の任意選択の態様を定義することができ、これは、コンピュータ実装方法のステップを示すことができ、それぞれのステップを実行するように構成されたプロセッサシステムの処理サブシステムを示すことができる。
【0021】
任意選択的に、予測モデルはニューラルネットワークを含み、ニューラルネットワークは再訓練される。そのような再訓練は、重みまたはバイアス値などのニューラルネットワークのパラメータを更新することを含むことができる。
【0022】
任意選択的に、予測モデルは、ガウス過程を含み、ガウス過程は、推論のために化合物データを使用し、ガウス過程は、試料測定値および試料レシピを化合物データに追加することによって更新される。したがって、ガウス過程を更新するために、ガウス過程の入力データに試料測定値および試料レシピを追加することができる。
【0023】
任意選択的に、化合物の候補レシピを生成するステップは、ランダムなレシピのセットを提供するステップと、ランダムなレシピのセットに基づいて候補レシピを生成するステップとを含む。候補レシピは、例えば、初期レシピのセットを「シード」として提供し、予測モデルおよびスコアリング関数を使用して初期レシピを改善することによって、多数の方法で生成することができる。興味深いことに、ランダムに生成されたレシピは、十分に適切な出発点を表すことができ、これは、そのようなレシピが、ユーザの労力を必要とする代わりに、例えば計算によって容易に生成することができるので好適であり得ることが分かった。すなわち、それらのランダムな性質のために、そのような初期レシピは、レシピのデータ空間、すなわち、成分のすべての可能な組合せおよび量によって構成されるデータ空間を網羅することができる。これは、完全に異なるレシピ(例えば、データ空間の完全に異なる部分のデータ点、例えば、完全に異なる成分および/または完全に異なる量の成分を使用するレシピを表す)が同様の化合物を生成し得るので、特に重要であり得る。例えば、出発点として1つのみのレシピ、例えばユーザ選択レシピを使用する場合、最適化プロセスは、最適化プロセスが、選択される出発点の近傍のレシピをもたらし得るが(「近傍」という用語は、レシピのN次元データ空間内の近傍を指す)、化合物のための適切で、おそらく包括的に優れたレシピをさらに提供し得るデータ空間の完全に異なる部分に到達する可能性が低い(「包括的に」は、成分の可能な組合せを考慮することを指す)という「極小」問題に悩まされる場合がある。したがって、ランダムなレシピのセットから出発することによって、包括的に最適以下のレシピの選択をもたらすデータ空間内の局所最適解の問題を低減することができる。
【0024】
任意選択的に、化合物の候補レシピを生成するステップは、遺伝的アルゴリズムを使用して、ランダムなレシピのセットを反復的に変更して、スコアリング関数による改善されたスコアを取得するステップを含む。ランダムなレシピはレシピのデータ空間を十分に網羅することができるが、そのようなランダムに生成されたレシピはデータ空間全体の少数のデータ点のみを表し得るので、ランダムに生成されたレシピが化合物の最適なレシピを表す可能性は低い。これは、ランダムに生成されるレシピの量を増加することによって、または極端な場合には、すべての可能なレシピを考慮することによって対処され得るが、これは、データ空間が大きすぎて実現不可能であり得る。例えば、50個の成分が利用可能な場合、データ空間は50次元である可能性があり、これは、レシピの網羅的な評価を実現不可能にする。むしろ、ランダムに生成されたレシピのセットを出発点、例えばシードとして使用して、個々のレシピを変更することによってさらに改善することができる。変更が改善をもたらしたかどうかを評価するために、スコアリング関数を評価することができる。変更は、例えば、初期のランダムに選択されたレシピを変更し、得られたレシピを再び変更することによって、反復的に行うことができる。そのような反復が何回か行われてもよい。各反復中に、予測モデルおよびスコアリング関数を使用してレシピを評価することができる。最適なレシピのこの探索を効率的に構造化するために、最低スコアのレシピを破棄しながら最高スコアのレシピを反復的に最適化する進化原理を使用することができる遺伝的アルゴリズムを使用することができる。したがって、最適解のための効率的な進化的局所探索は、データ空間内のランダムに選択された各データ点から出発して実行され得る。このようにして、レシピのデータ空間は、包括的に最適な解、すなわちレシピを見つける可能性がより高くなるという点で、より良く網羅され得る。
【0025】
任意選択的に、ランダムなレシピのセットを反復的に変更するステップは、
レシピ内の成分の相対的寄与をランダムに変更するステップ;
2つ以上のレシピを混合するステップ;
レシピから成分をランダムに省略するステップ;
レシピに成分をランダムに追加するステップ;
遺伝的アルゴリズムの前の反復における前の変更方向に基づいて選択された方向にレシピを変更するステップ;および
勾配降下技術を使用して、レシピをスコアリング関数の極小値に向かって変更するステップ
の少なくとも1つを含む。
【0026】
上記の変更のいくつかは、遺伝的アルゴリズムにおける「交差」および「突然変異」を表すことができ、したがって、最高スコアのレシピをさらに最適化することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、レシピに対する変更は(擬似的に)ランダムであり得るが、他の実施形態では、変更はスコアリング関数の極小値に意図的に向けられ得る。例えば、勾配降下技術を使用することができ、勾配降下技術は、レシピのスコアリング関数および/またはレシピの潜在的な変更を評価して、レシピが変更される方向を決定することを含み得る。別の例は、レシピが前の反復における変更の方向に続く方向に変更され得ることである。例えば、成分の1つの量の増加が、前の反復においてスコアリング関数による改善をもたらした場合、量は、後続の反復においてさらに増加され得る。レシピに対する変更のタイプはまた、時間的に変化してもよく、または交互に行われてもよい。例えば、1つまたは複数の初期反復では、レシピはランダムに(擬似的に)変更され得るが、その後の反復では、レシピは、例えば勾配降下を使用して、または特定の方向の変更を継続することによって意図的に変更され得る。
【0027】
任意選択的に、レシピのランダムなセットを提供するステップは、成分の相対的寄与をランダムに選択するステップを含む。ランダムなレシピは、これらの成分の相対的寄与をランダムに選択することによって生成され得る。
【0028】
任意選択的に、成分の相対的寄与をランダムに選択するステップは、下限としてゼロを含み、公知のレシピにおける成分の最大相対的寄与を上限として含む範囲から選択される値に、成分の寄与をランダムに設定するステップを含む。したがって、個々の成分、例えばその質量分率の寄与は、公知のレシピからの最大値に限定され得る。このようにして、既存のレシピによって表されるデータ点の大幅に外側にあり、それによって、予測モデルがそのようなレシピの化合物材料特性を正確に予測することができない可能性があるレシピを生成することを回避することができる。
【0029】
任意選択的に、成分の相対的寄与をランダムに選択するステップは、成分の寄与をゼロにランダムに設定するステップを含む。可能な成分の数は多くてもよいが、化合物は実際には比較的少ない成分を有してもよく、これは、そのような少ない成分が目標仕様を満たすのに十分であり得る、および/またはより少ない成分が化合物の製造可能性に肯定的に寄与し得るためである。したがって、より少ない成分を含むレシピは、レシピのより現実的な出発点を構成し得る。材料の寄与をゼロに設定することによって、そのような成分はレシピから省略され得る。いくつかの例では、すべての可能な成分の大部分、例えばすべての可能な成分の50%、60%、70%、80%、85%または90%の寄与は、ゼロに設定され得る。例えば、ランダムに生成されたレシピは、異なる、場合によってはわずかな相対的寄与ですべての可能な成分、例えば合計で50または100の利用可能な成分のすべてを含むことができるが、例えば10以下の成分を有するランダムなレシピが生成されてもよく、それによってレシピのより現実的な出発点として機能し得る。
【0030】
任意選択的に、化合物の候補レシピを生成するステップは、出発レシピを入力として受信し、出発レシピに基づいて候補レシピを生成するステップを含む。いくつかの実施形態では、システムおよび方法によるレシピ生成は、出発レシピの成分および成分の量を最小限で含むレシピを出力として生成するように制約される。したがって、そのような実施形態では、生成されたレシピは、さらなる成分および/またはさらなる量の成分のみを含み得る。このようにして、1つまたは複数の添加剤を提供することによって、熱可塑性化合物の目標仕様を達成または近似する方法を決定することができる。
【0031】
任意選択的に、スコアリング関数は、
より少ない成分を有するレシピ;および
化合物のベース成分と比較して相対的寄与が低いレシピ内の成分のセット
の少なくとも1つにリワードを与えるようにさらに構成される。
【0032】
スコアリング関数は、一方の目標値と、他方の化合物の予測値または実際の測定値との間の一致を定量化するだけでなく、レシピに関する他の選好をさらに具現化することができる。例えば、一般に、例えば、成分間の予期しない相互作用の可能性を限定するために、および化合物の製造可能性に寄与する成分がより少ないことに起因して(例えば、より少ない成分を供給および貯蔵しなければならないことなどによって)、より少ない成分を有するレシピが好ましい場合がある。したがって、スコアリング関数は、材料特性と目標仕様との対応を表現することに加えて、例えばスコアリング関数において負の因数として成分の数を使用することによって、より少ない成分を有するレシピを優先することができる。同様に、添加剤などのいくつかの成分については、化合物のベース成分に対して可能な限り少ない成分を使用することが好ましい場合がある。この要望はまた、例えば、スコアリング関数において、ベース成分に対する成分の量を負の因数として使用することによって、スコアリング関数で表現され得る。
【0033】
上記で説明したように、化合物は、ベース構成成分として熱可塑性ポリマー、好ましくは少なくとも200℃、または150℃、または100℃の融解温度を有する熱可塑性ポリマーを含み得る。
【0034】
上記で説明したように、レシピは、ベースポリマーに添加される添加剤を定義することができる。任意選択的に、添加剤は、少なくとも1つの着色剤を含む。任意選択的に、少なくとも1つの着色剤は、少なくとも1つの染料または少なくとも1つの顔料を含む。
【0035】
任意選択的に、化合物データの一部として、1タイプの着色剤のみを含む化合物の測定値およびレシピが提供される。したがって、そのような化合物は、1タイプの着色剤、例えば1タイプの顔料によってのみ着色され得るという点で、「純粋な」着色化合物を表し得る。そのような化合物の測定値は、化合物の色に対する単一の着色剤の効果を示すことができ、化合物データのデータ空間内のすべてのレシピの境界上のデータ点を効果的に表すことができるので、そのようなタイプの化合物データは、予測モデルの訓練において有益であり得る。
【0036】
任意選択的に、1つまたは複数の化合物材料特性は、
CIELABなどの知覚的に均一な色空間における色値として、および/または反射率スペクトルとして好ましくは定義される、化合物の色;
破断伸び、引張強度および引張弾性率の好ましくは1つまたは複数である、化合物の1つまたは複数の機械的特性
を含む。
【0037】
好適には、反射率スペクトルを予測するように予測モデルを訓練することによって、いわゆるメタメリズムを回避または少なくとも予測することができ、それによって、色値に関して同じ色を有する化合物は、1つのタイプの光源、例えば高い演色評価数を有する光源の下では同じ色を有するが、別のタイプの光源、例えば低い演色評価数を有する光源の下では異なる色を有するように見える場合がある。反射率曲線を予測することによって、化合物の外観は、そのような異なるタイプの照明について、例えば物理的実験を実行する必要なしに計算的に評価され得る。好適には、目標仕様が目標反射率曲線を提供する場合、レシピは、化合物が目標反射率曲線に近似するように生成され得る。
【0038】
任意選択的に、機械学習可能モデルは、ニューラルネットワークまたはガウス過程を含む。例えば、いくつかの実施形態では、機械学習可能モデルは、いくつかの材料特性を予測することができる1つのモデルから構成され得る。他の実施形態では、機械学習可能モデルは、各々が別個の材料特性または材料特性のサブセットを予測することができるいくつかの個々のサブモデルから構成されてもよく、サブモデルは一緒に機械学習可能モデルを表す。
【0039】
任意選択的に、機械学習可能モデルは、選択されたレシピの不確実性定量化を提供するように構成され、不確実性定量化は、選択されたレシピと共に出力される。そのような不確実性定量化は、熱可塑性化合物が目標仕様を満たすと予測される確実性に関するフィードバックをユーザが取得することを可能にし得る。このようにして、ユーザは、選択されたレシピに従って製造された化合物が目標仕様を満たす確率に関するフィードバックを取得することができる。さらに、不確実性が非常に高い場合、これは、予測モデルが解空間のこの部分における予測を改善するために、より多くの訓練データが必要とされ得ることを示し得る。
【0040】
任意選択的に、ユーザがプロセッサシステムと対話することを可能にするためにユーザインターフェースサブシステムを設けることができ、選択されたレシピは、ユーザインターフェースサブシステムを介して出力され、試料測定値は、ユーザインターフェースサブシステムを介して受信される。
【0041】
本発明のさらなる態様では、化合物のレシピを生成する方法であって、本明細書に記載のコンピュータ実装方法のいずれか1つをプロセッサシステム上で実行するステップを含み、
化合物の試料を生成するステップ;および
試料の1つまたは複数の材料特性を測定して、試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を取得するステップ
をさらに含む、方法が提供される。
【0042】
したがって、上記の方法は、プロセッサシステムを使用して本明細書に記載のコンピュータ実装方法のいずれか1つを実行するステップに加えて、化合物の試料を生成するステップ、および1つまたは複数の材料特性を測定するステップの物理的ステップを実行するステップを含み得る。
【0043】
任意選択的に、化合物の試料を生成するステップは、押出成形と射出成形との組合せ、および押出なしの射出成形の少なくとも1つを使用する工程を含む。
【0044】
任意選択的に、レシピを生成するステップは、ステップi)~v)を実行する少なくとも2回の反復を含み、
第1の反復では、試料を生成するステップが、押出なしで射出成形を使用する工程を含み、
第2および以降の反復では、試料を生成するステップが、押出成形と射出成形との組合せを使用する工程を含む。
【0045】
好適には、いわゆる「ショートフィードバックループ」(または単に「ショートループ」とも)を最初に使用することができ、試料は、射出成形を使用して、ただし押出なしで、生成される。押出工程を省略することによって、試料は、より効率的に生成することができ、例えば、より少ない時間および労力を必要とする(したがって、形容詞「ショート」である)。それにもかかわらず、射出成形によって生成された試料は、選択されたレシピが目標仕様に少なくとも合理的に近似するかどうかを最初に検証するのに十分であり得る。この最初の反復の後、またはいくつかのそのような最初の反復の後、レシピは目標仕様に近づくことができ、レシピのより正確な評価が好ましい場合がある。したがって、次いで、押出成形と射出成形との組合せ(「ロングループ」)を使用して試料を生成することができ、これは実際の(大量生産された)製品により良く似ており、したがって、より多くの時間および労力を必要とすることを犠牲にして、より正確な測定値をもたらすことができる。好適には、ロングループは、より高い精度が必要とされるとき、すなわち目標仕様に近づくときにのみ実行されてもよく、そうでなければ、時間および労力を節約するために、ショートループが実行されてもよい。
【0046】
任意選択的に、ベースポリマーは、バージンポリマー、再生ポリマー、ブレンドポリマーもしくはスクラップポリマー、着色ポリマー、または前述のタイプのポリマーの混合物であり得る。したがって、レシピは、例えば色および/または機械的特性に関して目標仕様を満たすように、バージンポリマー、再生ポリマー、ブレンドポリマーもしくはスクラップポリマー、またはそれらの混合物のいずれかに添加される添加剤を定義することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、2つ以上のベースポリマーを含んでもよく、その場合、各ベースポリマーは、前述のタイプのポリマーの同じまたは異なるポリマーであり得る。
【0047】
任意選択的に、ベースポリマーは着色ポリマーである。例えば、ベースポリマーは、特定の色を有する再生ポリマーであってもよい。本明細書に記載の方法およびシステムを使用して、着色ベースポリマーを出発点として使用して異なる着色の熱可塑性化合物を得るレシピを生成することができる。そのような実施形態では、レシピは、所望の色を得るために、および任意選択的に機械的特性などの所望の他の特性を得るために添加される着色剤を定義することができる。
【0048】
任意選択的に、1つまたは複数の化合物材料特性は、色の目標値を定義し、ベースポリマーは、目標値に最も近い色を有するように選択される。このようにして、目標値に最も近い色に関して出発点を選択することができる。例えば、目標値がCIELAB色空間の点として定義される場合、例えば、その点に最も近いCIELAB色を有する公知のベースポリマーのデータベースからベースポリマーが選択され得る。同様に、目標値が反射率スペクトルとして定義される場合、目標反射率スペクトルに最も近い反射率スペクトルを有するベースポリマーが選択され得る。「最も近い」は、任意の適切なメトリックを使用して、例えば3D CIELAB色空間におけるユークリッド距離として、またはスペクトルメトリックを使用して定量化され得ることが理解されよう。
【0049】
任意選択的に、化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練するステップは、
化合物データを、
化合物データから化合物の対を選択する工程であって、各対が、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含む、工程;ならびに
第1の化合物をベースポリマーとして使用して第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定する工程であって、第3のレシピが、第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、第3のレシピが、第1のレシピと第2のレシピとの間の差に基づいて決定される、工程
によって処理するステップと;
機械学習可能モデルを訓練して、入力としての第1の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性および第3のレシピに基づいて第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性を予測することができ、それによって予測モデルとして、a)入力レシピとb)ベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値との組合せから製造される化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するモデルを得るステップと
を含む。
【0050】
本発明のさらなる態様では、熱可塑性化合物のレシピを生成するコンピュータ実装方法であって、熱可塑性化合物が、ベースポリマーを含む化合物であり、レシピが、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義し、成分のセットが、ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含み、
熱可塑性化合物である化合物の化合物データを取得するステップであって、化合物データが、それぞれの化合物について、a)それぞれの化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、b)それぞれのベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびc)それぞれの化合物を得るためにそれぞれのベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義するレシピを含む、ステップと;
化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、ベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値および入力レシピから化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るステップと;
1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数が、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;および
iii)前記選択されたレシピを出力するステップ
によって、化合物を製造するためのレシピを生成するステップと
を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0051】
任意選択的に、化合物データは、第2の化合物データであり、
公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の第1の化合物データにアクセスするステップであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、ステップと;
第2の化合物データを、
第1の化合物データから化合物の対を選択する工程であって、各対が、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含む、工程;ならびに
第1の化合物をベースポリマーとして使用して第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定する工程であって、第3のレシピが、第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、第3のレシピが、第1のレシピと第2のレシピとの間の差に基づいて決定される、工程
によって、生成するステップと
をさらに含み、
第2の化合物データは、それぞれの化合物について、a)それぞれの化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、b)それぞれのベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびc)それぞれの化合物を得るためにそれぞれのベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義するレシピを含む。
【0052】
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって生成されるレシピを使用して化合物を製造する方法が提供される。
【0053】
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載の化合物を製造する方法によって得ることができる化合物が提供される。
【0054】
本発明のさらなる態様では、目標仕様に従って製造される化合物のレシピのパラメータ空間を視覚化するためのコンピュータ実装方法であって、化合物が、熱可塑性化合物であり、目標仕様が、化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の目標値を含み、
公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の化合物データを取得するステップであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含み、レシピが、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義する、ステップと;
化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るステップと;
製造される熱可塑性化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の目標値を取得するステップと;
予測モデルを使用して、1つまたは複数の化合物材料特性に関連するパラメータ空間を視覚化するステップであって、レシピが1つまたは複数の化合物材料特性の目標値をもたらすまたは近似するパラメータ空間内の1つまたは複数の領域を示すステップを含む、ステップと
を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
【0055】
例えば、視覚化は、レシピを予測モデルに入力し、どのレシピが目標値をもたらすかまたは近似するかを決定することによって生成することができる。別の例は、目標値をもたらすまたは近似する化合物材料特性のためのレシピを見つけるために遺伝的アルゴリズムを使用して視覚化が生成され得ることである。
【0056】
本発明の上述の実施形態、実装形態および/または任意選択の態様の2つ以上を、有用であると考えられる任意の方法で組み合わせることができることが当業者には理解されよう。
【0057】
前記エンティティの別の1つの説明された修正および変形に対応する、任意のプロセッサシステム、任意の方法、コンピュータ実装方法もしくは他の方法、または任意のコンピュータ可読媒体の修正および変形は、本明細書に基づいて当業者によって行われ得る。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明において例として記載されている実施形態を参照し、添付の図面を参照してさらに明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】化合物のレシピを生成するための方法を示し、この方法は、いくつかのコンピュータ実装ステップと、選択されたレシピに基づいて試料を生成するステップと、試料の1つまたは複数の材料特性を測定するステップとを含む。
図2】化合物の候補レシピを生成するステップを示し、生成するステップは、ランダムなレシピのセットを提供し、ランダムなレシピのセットを反復的に変更して、スコアリング関数による改善されたスコアを取得するステップを含む。
図3A】レシピが求められている化合物についての目標材料特性の値をユーザが指定することを可能にするユーザインターフェース要素を示す。
図3B図1の方法を使用して生成されたレシピについて、材料特性の予測を示すユーザインターフェース要素を示す。
図3C】レシピに基づいて生成された試料の材料特性の測定値をユーザが入力することを可能にするユーザインターフェース要素を示す。
図4】化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムを示す。
図5】データを含むコンピュータ可読媒体を示す。 図面は純粋に概略図であり、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。図面において、既に説明した要素に対応する要素は、同じ参照番号を有する場合がある。
【0060】
[参照番号および略語の説明]
以下の参照番号のリストは、図面の解釈を容易にするために提供され、特許請求の範囲または条項を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0061】
20 過去の化合物データ
40 試料化合物データ
100 レシピ生成のコンピュータ実装方法
110 機械学習可能モデルを訓練するステップ
120 候補レシピを生成するステップ
122 ランダムなレシピのセットを提供するステップ
124 化合物材料特性を予測するステップ
126 スコアリング関数を評価するステップ
128 上位Nを選択する
130 質量分率を変更するステップ
131 レシピを混合するステップ
132 成分を省略するステップ
133 成分を添加するステップ
134 レシピを保持するステップ
136 レシピの新しいセットを取得するステップ
138 M回繰り返すステップ
140 スコアリング関数に基づいてレシピを選択するステップ
150 選択レシピを出力するステップ
160 測定データを受信し、目標に対する偏差を決定するステップ
170 レシピが許容可能であるかどうかを判定するステップ
200 試料を生成するステップ
210 試料を測定するステップ
300 プロセッサシステム
310 処理サブシステム
320 データ記憶インターフェース
330 データ記憶部
340 ユーザインターフェースサブシステム
350 ディスプレイ
360 ユーザ入力デバイス
370 ネットワークインターフェース
380 ネットワーク
400 非一時的コンピュータ可読媒体
410 データ
【0062】
[実施形態の詳細な説明]
以下では、本明細書で使用される定義を紹介し、次に、図1図2を参照して化合物のレシピを生成するための方法を説明し、図3A図3Cを参照して、ユーザが本方法または化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムと対話することを可能にするユーザインターフェースを、図4を参照して化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムを、図5を参照して本明細書に記載の実施形態のデータを記憶するコンピュータ可読媒体を説明する。
【0063】
定義
以下の定義は、本発明の文脈において使用される。
【0064】
「化合物」:「化合物」という用語は、ベースポリマーと添加剤との混合物などの成分の混合物を指すことができ、「ベース」は化合物の主成分を構成するポリマーを指し得る。ポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーは、例えば、少なくとも200℃、または少なくとも150℃、または少なくとも100℃の融解温度を有し得る。
【0065】
「成分」:「成分」という用語は、化合物の構成成分を指すことができ、この構成成分は、レシピによってタイプおよび量が規定され得る。そのような成分には、ベースポリマーのようなベース成分だけでなく、ガラス繊維、安定剤、難燃剤、着色剤(すなわち、顔料または染料などの着色料)、加工助剤、流動改善剤などのベース成分に添加され得る添加剤も含まれ得る。
【0066】
「レシピ」:レシピは、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義することができる。相対的寄与は、例えば、質量分率またはパーセンテージとして表現することができる。レシピは、例えば、コンピュータ可読形式で、例えば、テキストファイルもしくはCSVファイルとして、またはXMLなどのマークアップ言語で、またはSQLベースのデータベースなどのデータベース内の1つもしくは複数のエントリとして提供されてもよい。
【0067】
「化合物の試料の製造」:押出と組み合わせて、または押出、ブロー成形およびフィルム押出なしで、射出成形を含むがこれらに限定されない任意の公知の製造技術を含むことができる。そのようなフィルム押出は、例えば、フィルムから評価および測定することができる材料特性について、化合物のフィルムを製造することによって化合物の試料を製造するために使用することができる。
【0068】
「材料特性」は、化合物の機械的特性、例えば破断伸び、引張強度、引張弾性率などの物理的特性を含むことができるが、UV安定性性能、熱老化性能、粘度、CTI(比較トラッキング指数)値、可燃性などの非機械的特性も含むことができる。
【0069】
図1は、化合物のレシピを生成するための方法を示し、この方法は、いくつかのコンピュータ実装ステップ100を含み、これらのステップは合わせて、いくつかの物理的ステップ200、210と共に方法100と呼ばれることもある。本方法によるレシピ生成は、以下のように説明することができる。最初に、化合物データ20を取得または生成することができる。化合物データ20は、他の場所では「データセット」と呼ばれることがあり、化合物の各々または少なくともサブセットについて、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含むことができる。レシピおよびその測定データは、他の場所では、データセット内の「データ点」と呼ばれることもある。測定値およびレシピの両方は、コンピュータ可読形式で、例えば、テキストファイルもしくはCSVファイルとして、またはXMLなどのマークアップ言語で、またはSQLベースのデータベースなどのデータベース内のエントリとして提供されてもよい。
【0070】
例として、本発明の実施された一実施形態では、2000を超える過去のレシピの成分およびCIELAB色値が取得され、データベースに構造化された。多くのこれらのレシピについて、破断伸び、引張強度および引張弾性率などの化合物の物理的特性を測定した。約1400レシピについて、化合物の全反射曲線を測定した。
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物データに含まれるレシピは、1つまたは複数の基準に従って選択することができる。例えば、使用されなくなった成分、例えばもはや利用可能ではない成分または例えば規制上の理由で使用してはならない成分を含むレシピは、省略されてもよい。別の例としては、明らかなエラーを有するレシピ、例えば質量分率の合計が1.0から遠く離れているレシピ、または不明/未知の成分を有するレシピは省略されてもよい。いくつかの実施形態では、化合物データの一部として、着色剤などの1タイプの添加剤のみを含む化合物の測定値およびレシピを追加することができる。例えば、単一の顔料のレシピおよび測定値をデータセットに追加することができる。上述の実施された実施形態では、20個の異なる顔料および染料について、反射曲線および物理的特性を4つの異なる濃度で測定し、データセットに80個の(追加の)データ点を得た。いくつかの実施形態では、例えば、化合物が高温ポリマー(例えば、100℃または150℃または200℃を超える融点を有する)などの熱可塑性ポリマーを含む実施形態では、化合物データはグレードタイプも指定することができ、このグレードタイプは化合物の色の変形を示すことができる。例えば、上述の実施された実施形態では、化合物データは、化合物の熱可塑性ポリマーが6つの可能なグレードのうちのいずれに属するかについて指定した。成分が添加剤を含む実施形態では、添加剤を含まない化合物もデータセットに追加することができる。例えば、上述の実施された実施形態では、天然ポリマー(例えば、顔料および染料を含まない)を6つの異なるグレードのデータセットに追加した。
【0072】
例えば、既存のデータの(再)構造化または新たな測定によって化合物データ20を取得した後、機械学習可能モデルを化合物データに対して訓練して110、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測することができる。したがって、化合物データ20は、機械学習可能モデルの訓練データを構成することができる。例えば、ニューラルネットワーク(NN)またはガウス過程(GP)を訓練データとしての化合物データ20に対して訓練して、材料特性値を予測するための予測モデルを得ることができる。特定の例では、化合物データは、化合物の色および化合物の1つまたは複数の機械的特性などの化合物材料特性の測定値を含むことができ、機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピに基づいてそのような材料特性の値を予測することができる。例えば、化合物データにおいて、色は、CIELABなどの知覚的に均一な色空間における色値および/または反射率スペクトルとして定義されてもよく、化合物の機械的特性は、破断伸び、引張強度および引張弾性率の1つまたは複数であってもよい。これにより、機械学習可能モデルを学習させて、化合物のレシピから色および機械的特性を予測することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、機械学習可能モデルはまた、その予測の、例えば各々の化合物材料特性の予測、またはその全体の予測の信頼区間を提供することができる。いくつかの実施形態では、機械学習可能モデルは、いくつかの材料特性を併せて予測するように訓練された単一のモデルであってもよい。そのようなモデルは、いくつかの材料特性の組合せ、例えば色値の組合せ(同時にL*、a*、b*)または機械的特性の組合せ(引張強度、引張弾性率、シャルピー衝撃試験スコアなど)または色値と機械的特性との組合せを予測することができるという点で、「組合せ」モデルと呼ばれることもある。他の実施形態では、機械学習可能モデルは、モデルのセット、例えば、色もしくは機械的特性などの個々の材料特性、または組合せモデルのセットなどをそれぞれ予測することができる個々のモデルから構成されてもよい。そのような機械学習可能モデルは、「複合モデル」と呼ばれることもある。機械学習可能モデルは、特性の1つまたは少数の値を予測することに加えて、多数の値、例えば反射曲線全体を予測することもでき、これにより、例えば、任意のタイプの光源のCIELAB色値の計算を可能にすることができる。そのような機械学習可能モデルは、反射曲線または他のタイプの測定曲線を予測するように訓練され得るので、「曲線モデル」と呼ばれることもある。機械学習可能モデルは、一般に、予測する材料特性に対して最適化され得る。例えば、NNモデルは、層の数、ノードの数およびオーバーフィッティングリスクに関して最適化され得る。GPモデルは、2つのカーネルの組合せと、入力データおよび出力データの両方の適切なスケーリングとを含むことができる。モデルアーキテクチャおよびパラメータのそのようなタイプの最適化は、それ自体知られている。
【0074】
化合物データ20に対して機械学習可能モデルを訓練110した後、目標仕様に近似するように、すなわち、1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、化合物のレシピを生成することができる。その目的のために、化合物の候補レシピを生成することができる120。候補レシピを生成するそのようなステップ120は、予測モデルを使用して、各候補レシピについて1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測することを含むことができる。候補レシピの生成に続いて、レシピを選択するステップ140を行うことができる。両方のステップは、候補レシピを生成するための例示的なステップ122~138、それに続くレシピ選択ステップ140を示す図2を参照してさらに説明することができる。候補レシピを生成するためのステップ122~138は、以下に関連し得る:そのような候補レシピを生成するステップ120は、ランダムなレシピのセットが取得され、スコアリング関数による改善されたスコアを取得するために反復的に変更され得るという点で、ランダムなレシピに基づき得る。そのような反復的変更は、例えば、スコアリング関数による改善されたスコアを取得するために、遺伝的アルゴリズムを使用してランダムなレシピのセットを反復的に変更することを含み得る。このような遺伝的アルゴリズムを使用する場合、また一般にも、候補レシピの材料特性は予測モデルによって予測することができ、予測された材料特性はスコアリング関数によって評価することができる。この定量化は、レシピ、特にスコアリング関数によるスコアによってそのレシピが化合物の有望な候補であることが既に示されているレシピの改善された変形を作成することを可能にし得る。最も有望なレシピの変形を生成することができることが効果的である。次いで、これらのステップ122~138は、目標仕様との偏差が許容可能であると考えられるレシピが選択される140まで繰り返すことができる。
【0075】
スコアリング関数を引き続き参照すると、そのようなスコアリング関数は、目標仕様に照らして予測された材料特性の適合性を評価するために提供され得る。特に、スコアリング関数は、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成され得る。そのようなスコアリング関数は、様々な形態をとることができる。例として、上述の実施された実施形態では、4つの部分から構成され得るスコアリング関数が提供されてもよく、4つの部分は、それぞれサブスコアとして見ることができる。すなわち、総スコアは、色スコア、物理的特性スコア、成分数スコアおよび質量分率和スコアから構成され得る。数学的には、総スコアは、これらのスコアの重み付けされた組合せとして、例えば、以下のように決定することができる。
【数1】
【0076】
ここで、パラメータa1、a2、a3、a4は、必要に応じて、任意の個々のスコアにより重要度を与えるように最適化することができる。例えば、パラメータa3およびa4は負のパラメータとして選択することができ、その結果、スコアリング関数は、より少ない成分を有するレシピにリワードを与え(すなわち、成分の数はスコアの計算においてペナルティを表し得る)、ベースポリマーの質量に対する顔料の総質量分率がより小さいレシピにリワードを与える(すなわち、顔料の総質量分率はペナルティを表し得る)。この例では、スコアリング関数は、より適切であり得る、すなわち目標仕様により近いと考えられるレシピについてより高いスコアを提供し、あまり適切ではない、すなわち目標仕様からかなり離れていると考えられるレシピについてより低いスコアを提供することができる。しかしながら、これに限定されず、いくつかのタイプのスコアリング関数については、より低いスコアが好ましい場合がある。
【0077】
色スコアを引き続き参照すると、そのような色スコアは、例えば、3D CIELAB色空間における距離として表現することができ、以下のように計算することができる。
【数2】
【0078】
ここで、L、aおよびbは、CIELAB色空間における個々の色座標を表すことができ、「モデル」色座標は、予測モデルによって予測された色座標を表すことができ、「目標」は、目標仕様の色座標を表すことができる。上記の例のように色距離が色スコアとして使用される場合、パラメータa1は、より小さい距離にリワードを与えるように、および/またはより大きい距離にペナルティを課すように負に選択することができる。
【0079】
必要な最小仕様を超えるべき機械的特性などの物理的特性の場合、必要な最小値でスコアを急激に増加させた、いわゆるs曲線を使用することができる。このようにして、最小仕様を下回るスコアは厳しくペナルティを課され得るが、最小仕様を上回るスコアは依然としてインセンティブが与えられ得る。目標値10を有する物理的特性(シャルピー衝撃試験スコア)のスコアの例は、以下であってもよく、スコアは関数として定義されてもよい。
【表1】
【0080】
引き続き図2を参照すると、ステップ122において、いくつかのランダムなレシピを提供することができる。例えば、そのようなランダムなレシピは、レシピの成分および/または成分の相対的寄与をランダムに選択することによって提供することができる。いくつかの実施形態では、そのような相対的寄与は、例えば、成分の質量分率の許容帯域幅を定義するために、一範囲に限定され得る。この範囲は、例えば、下限としてのゼロから最大値まで延びることができる。この最大値は、例えばユーザ定義であってもよく、または例えば公知のレシピにおける成分の最大相対的寄与に基づいて自動的に選択されてもよい。したがって、そのような範囲は、成分ごとの相対的寄与の許容帯域幅を表すことができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、一成分を除外するために最大値を0に定義することができる。いくつかの実施形態では、レシピがランダムに生成された後に、相対的寄与に対する任意のそのような限定をレシピに適用することができる。ステップ122を引き続き参照すると、例えば最初にランダムに生成されたような成分の相対的寄与はまた、ゼロにランダムに設定されてもよい。すなわち、ほとんどの実際のレシピは少数の成分のみを有するため、例えばレシピがランダムに生成された後に、ほとんどの成分の寄与はゼロにランダムに設定され得る。これにより、レシピを常に同じデータ構造、例えば、各可能な成分の相対的寄与を定義する同じベクトル、例えば50、75または100次元ベクトルによって定義することが可能になるが、少数の成分、例えば最大10または5のみの成分を有するように限定される。
【0081】
ステップ124において、予測モデルを使用して、ランダムに生成されたレシピごとに材料特性の値を予測することができる。ステップ126において、スコアリング関数を評価して、各レシピの(数値)スコアを決定することができる。ステップ128~134において、遺伝的アルゴリズムを使用してレシピを改善することができる。すなわち、ステップ128において、例えばM個の全レシピのうちの上位Nとして、最良のレシピを選択することができる。ステップ130~133において、これらの最良のレシピの様々な変形を生成することができ、例えば、相対的寄与(例えば、レシピ内の成分の質量分率)をランダムに変更することを含み得るステップ130によって、2つ以上のレシピを混合することを含み得るステップ131によって、レシピから成分をランダムに省略する(「落とす」)ことを含み得るステップ132によって、およびレシピに成分をランダムに追加することを含み得るステップ133によって生成することができる。ステップ134によって、ステップ136で取得される新しいレシピが、最良のレシピ(例えば、上位N)およびステップ130~133によって生成されたそれらの変形から構成され得るという点で、最良のレシピ自体を保持することもできる。特定の例では、1000個のレシピが最初にランダムに生成され得る。1000個のレシピのうち、200個の最良のレシピ(最高のスコアを有する)のみが保持されてもよく、800個の新しいレシピが、それらの200個のレシピの変形を生成することによって作成され得る。これは、例えば、200個の質量分率のランダムな変更、200個の2つのレシピの混合、200個のランダムな成分の落下、および200個のランダムな成分の追加を含み得る。遺伝的アルゴリズムを使用してレシピを改善するこのプロセスは、138回、例えば50回または100回繰り返すことができる。
【0082】
図1および図2を併せて参照すると、ステップ122~138によって生成された候補レシピから、例えば、ステップ122~138の反復によって最後に生成された候補レシピの最新のセットに予測モデルを適用し、スコアリング関数に従って最良のレシピを選択することによって、最良のレシピを選択することができる(140)。次いで、ステップ150において、選択されたレシピを、例えば人間が読める形式で、ディスプレイなどの出力デバイスを使用して出力することができる。出力されたレシピに基づいて、ステップ200において、例えば押出成形と射出成形との組合せまたは押出なしの射出成形などの製造ステップを使用して、試料を生成することができる。ステップ210において、試料の1つまたは複数の材料特性を測定することができるという点で、試料を測定することができる。結果として、試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を取得することができる。ステップ160において、これらの測定値は、例えば、ユーザがグラフィカルユーザインターフェースを使用して値を入力することによって、方法100によって再び受信されてもよい。また、ステップ160において、試料測定値を目標値と比較して、目標値に対する偏差を決定することができる。そのような偏差は、例えば、絶対差の和または平均二乗誤差として、多くの方法で表現することができる。次いで、ステップ170において、偏差を許容性基準に対して評価することができ、偏差が許容性基準を満たす場合、選択されたレシピを、例えば上述のディスプレイを使用して、またはデータ記憶部にデータとしてレシピを書き込むことによって、化合物のレシピとして出力することができる。許容性基準の例は、閾値、例えば絶対閾値または相対閾値である。他の例では、偏差は、例えばディスプレイ上のグラフィカルユーザインターフェースを使用してユーザに提示され、ユーザが受け入れるか拒否することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、偏差が許容性基準を満たさない場合、試料測定値および試料レシピを使用して予測モデルを再訓練することができ110、この再訓練は、前述の試料測定値および試料レシピを含む試料データ40に基づいて再び実行される訓練110として図1に示されている。他の実施形態では、特に推論中に試料データ40が予測モデルによって使用される実施形態では、予測モデルを再訓練する代わりに、試料測定値および試料レシピを試料データ40に単に追加することができる。両方のタイプの実施形態では、方法100は、例えば、許容性基準に従って許容可能と考えられるレシピが取得されるまで繰り返すことができる。
【0084】
図3A図3Cは、ユーザが図1図2の方法を用いて、図4を参照して説明されるプロセッサシステムと対話することを可能にするためのユーザインターフェースの一部を示す。ここで、図3Aは、レシピが求められている化合物についての目標材料特性の値をユーザが指定することを可能にするユーザインターフェース要素を示す。そのような値は、例えば、キーボードを使用して数値的に入力されてもよく、または例えばマウスを使用してグラフィカルに選択されてもよい。さらに、目標値は、例えば等しい演算子(「=」)を使用して到達される値として、または例えばより大きい演算子(「>」)を使用して最小値として、または例えばより小さい演算子(「<」)を使用して最大値として指定することができる。図3A自体には示されていないが、目標材料特性自体は、例えばいくつかの利用可能な目標材料特性からユーザによって予め選択されてもよく、またはグラフィカルユーザインターフェースで事前定義されてもよい。いくつかの実施形態では、各目標材料特性に対して重要度を選択することができ、その重要度は、例えば上述のパラメータa1、a2、a3、a4を調整することによってスコアリング関数を調整するために使用することができる。
【0085】
図3Bは、図1の方法を使用して生成されたレシピについて、材料特性の予測を示すユーザインターフェース要素を示す。そのようなユーザインターフェース要素は、例えば、ステップ150において、試料の生成を可能にするために選択されたレシピを出力するために、および/またはステップ170において、選択されたレシピの許容性を検証するために使用することができる。図3Bに見られるように、ユーザインターフェース要素は、精度を含む、図3Aの材料特性の少なくともいくつかの予測値を表示することができる。
【0086】
図3Cは、レシピに基づいて生成された試料の材料特性の測定値をユーザが入力することを可能にするユーザインターフェース要素を示す。この例では、CIELAB値L*=55.8、a*=-0.5およびb*=-11.2を入力した。いくつかの実施形態では、例えば、測定変動性を説明するために、例えば同じ試料のいくつかの測定値を表すいくつかの値セットを入力することができる。
【0087】
図3A図3Cには示されていないが、ユーザインターフェースは、いくつかの実施形態では、任意の所与の目標仕様の最近傍レシピを提示することができ、最近傍レシピは、スコアリング関数によるスコアが目標仕様、または色などの目標仕様の少なくとも一部の最良の近似を示す化合物データからの過去のレシピである。そのような最近傍レシピは、遺伝的アルゴリズムによって生成されたレシピの改善を判断するために使用することができる。
【0088】
以下の実施形態は、訓練および推論における入力としてベースポリマーの材料特性をさらに使用するように訓練される機械学習可能モデルに関する。そのような実施形態では、化合物データに対する機械学習可能モデルの訓練は、化合物データを最初に処理することを含むことができる。例えば、化合物データは、化合物データから化合物の対を選択することによって処理することができ、各対は、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含み、次いで、第1の化合物をベースポリマーとして使用して第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定し、第3のレシピは、第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、第3のレシピは、第1のレシピと第2のレシピとの間の差に基づいて決定される。次いで、機械学習可能モデルを訓練して、入力としての第1の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性および第3のレシピに基づいて第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性を予測することができ、それによって予測モデルとして、入力レシピとベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値との組合せから製造される化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するモデルを得ることができる。
【0089】
関連する実施形態では、熱可塑性化合物のレシピを生成するためのコンピュータ実装方法を提供することができる。熱可塑性化合物は、ベースポリマーを含む化合物であってもよく、レシピは、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義することができ、成分のセットは、ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を含む。本方法は、熱可塑性化合物である化合物の化合物データを取得することを含むことができ、化合物データは、それぞれの化合物について、a)それぞれの化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、b)それぞれのベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびc)それぞれの化合物を得るためにそれぞれのベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義するレシピを含む。機械学習可能モデルを化合物データに対して訓練して、ベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の値および入力レシピから化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測することができ、それによって予測モデルを得ることができる。
【0090】
他の場所にも記載されているように、製造される化合物のレシピは、1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、候補レシピからレシピを選択するステップによって、生成することができ、レシピを選択するステップは、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数は、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成され、前記選択されたレシピを出力する。例えば、他の場所で説明されているように、遺伝的アルゴリズムが使用されてもよい。
【0091】
入力としてベースポリマーの材料特性をさらに使用するように訓練される機械学習可能モデルに関する上記の実施形態によれば、以下が留意される。機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピと入力レシピが関連するベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性との組合せから1つまたは複数の化合物材料特性を予測することができる。すなわち、入力レシピは、ベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義することができる。機械学習可能モデルは、入力レシピならびにベースポリマーの化合物材料特性を入力として受信することができ、入力レシピを使用して製造される化合物の化合物材料特性を予測するように訓練することができる。これにより、機械学習可能モデルが、出発ポリマー、例えば添加剤が添加されるベースポリマーをより良く考慮することが可能になり、これは、異なる特性で利用可能な異なる出発ポリマーが存在し得るので好適である。例えば、バージンポリマーは、それらの材料特性に関して異なり得る。したがって、製造される化合物が目標の色を有する場合、目標の色に最もよく到達する方法を決定するときに、出発ポリマーの色を考慮に入れることができる。いくつかの実施形態では、ベースポリマーの化合物材料特性は、レシピの一部として明示的または暗黙的に定義され得ることに留意されたい。後者の例は、レシピが、その材料特性が公知であり、明確に定義されている特定のベースポリマーを規定し得ることである。そのような場合、ベースポリマーの材料特性を入力として機械学習可能モデルに提供する必要はなく、むしろベースポリマーの識別子を機械学習可能モデルに提供すれば十分であり得る。
【0092】
入力としてベースポリマーの材料特性をさらに使用するように訓練される機械学習可能モデルに再び関するいくつかの実施形態では、機械学習可能モデルが訓練される化合物データは、第2の化合物データである。そのような実施形態では、公知のレシピを使用して生成された熱可塑性化合物である化合物の第1の化合物データにアクセスすることができ、化合物データは、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む。次いで、第2の化合物データは、第1の化合物データから化合物の対を選択することによって生成することができ、各対は、第1のレシピを使用して製造された第1の化合物および第2のレシピを使用して製造された第2の化合物を含み、第1の化合物をベースポリマーとして使用して第2の化合物を製造するための第3のレシピを決定し、第3のレシピは、第2の化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の値に近似するように、第1の化合物に添加される1つまたは複数の添加剤を定義し、第3のレシピは、第1のレシピと第2のレシピとの間の差に基づいて決定される。次いで、第2の化合物データは、それぞれの化合物について、a)それぞれの化合物の1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、b)それぞれのベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびc)それぞれの化合物を得るためにそれぞれのベースポリマーに添加される1つまたは複数の添加剤を定義するレシピを含む。このようにして、入力レシピと入力レシピが関連するベースポリマーの1つまたは複数の化合物材料特性との組合せから1つまたは複数の化合物材料特性を予測するように訓練される機械学習可能モデルを訓練するための訓練データを取得することができる。そのような訓練データを取得することは、以下の理由から特に重要であり得る。
【0093】
化合物の過去のデータは、化合物の化合物材料特性の測定値、およびそれぞれの化合物を製造するためのレシピを含み得るが、これらの化合物で使用されるベースポリマーの化合物材料特性の測定値を含まなくてもよい。むしろ、レシピは、来歴的には典型的にバージンポリマーであり得るベースポリマーを単に識別することができる。しかしながら、非バージンポリマーは、例えば、再生ポリマー、ブレンドポリマーまたはスクラップポリマーなど、持続可能性の理由から重要性が高まっている。これらのポリマーは、例えば、色、機械的特性などに関して、大きく異なる材料特性を有し得る。そのようなベースポリマーを出発点として使用してレシピを生成することができるようにするためには、大量の新しい測定値が必要とされ得るが、これは複雑で費用がかかり、時間がかかる努力である。
【0094】
上記の手段は、既存の過去の化合物データを使用し、過去の化合物データを以下のように処理することによって、そのような新しい測定データを取得する必要性を回避する。すなわち、化合物の対、例えば材料特性に関して同様の化合物の対が化合物データとして識別される。「第2の」化合物と呼ばれることがある化合物の1つのレシピは、第1の化合物と比較して、追加の添加剤またはさらなる量の既存の添加剤を含むことができる。これは、第2の化合物が、第1の化合物を出発点として使用し、追加のまたはさらなる量の添加剤を添加することによって製造可能であり得ることを意味し得る。言い換えれば、第1の化合物は、第2の化合物のためのベースポリマーと考えることができる。このベースポリマーから第2の化合物が製造される方法を定義するレシピは、第1の化合物および第2の化合物のレシピを比較することによって決定することができる。特定の例では、レシピがベクトルとして定義される場合、第1の化合物のレシピを定義するベクトルを第2の化合物のレシピを定義するベクトルから減算して、第1の化合物をベースポリマーとして使用して第2の化合物を得るためのレシピのためのベクトルを得ることができる。このようにして、大量の新しい測定を実行しなければならないことを回避することができ、これにより、コストを節約し、複雑さを低減し、時間を節約することができる。
【0095】
図4は、化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステム300を示す。プロセッサシステム300は、データ記憶部330からおよび/またはデータ記憶部330に本明細書に記載の任意のタイプのデータを読み取りおよび/または書き込むためのデータ記憶インターフェース320を備えることができる。データ記憶部330は、例えば、化合物データ20、機械学習可能モデルのコンピュータ可読バージョン、および選択されたレシピを表すデータなどのプロセッサシステム300によって生成された出力データを記憶することができる。データ記憶部330は、ハードドライブまたはハードドライブのアレイ、ソリッドステートドライブまたはソリッドステートドライブのアレイ、メモリなどの様々な形態をとることができる。例として、図4は、外部データ記憶部であるデータ記憶部330を示しているが、データ記憶部330はまた、プロセッサシステム300の内部構成要素であってもよい。プロセッサシステム300は、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはインターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)などのネットワーク380へのネットワークインターフェース370をさらに備えることができる。ネットワークインターフェース370は、例えば、イーサネットまたは光ファイバベースのインターフェースなどの有線通信インターフェース、または例えば5G、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBeeなどに基づく無線通信インターフェースであってもよい。さらに他の例では、ネットワークインターフェース370は、仮想、すなわちソフトウェア定義ネットワークインターフェースであってもよい。
【0096】
プロセッサシステム300は、化合物のレシピの生成に関連する限り、本明細書に記載の動作を実行するように、例えばハードウェア設計またはソフトウェアによって構成され得る処理サブシステム310をさらに備えることができる。一般に、処理サブシステム310は、x86またはARMベースのCPUなどの単一のCPUによって具現化されてもよいが、そのようなCPUおよび/またはGPU、NPUなどの他のタイプの処理ユニットの組合せまたはシステムによって具現化されてもよい。プロセッサシステム300が異なるエンティティ、例えば異なるサーバに分散される実施形態では、処理サブシステム310はまた、例えばそれぞれのCPUなどに分散されてもよい。
【0097】
プロセッサシステム300は、プロセッサシステム300の動作中に、例えばグラフィカルユーザインターフェースを使用して、ユーザがプロセッサシステム300と対話することを可能にするように構成され得るユーザインターフェースサブシステム340をさらに備えることができる。特に、グラフィカルユーザインターフェースは、ユーザがプロセッサシステム300の出力を読み取りまたは解釈し、例えば材料特性の目標値を指定するための、測定値を入力するための、レシピを承認または拒否するためなどの入力を提供することを可能にすることができる。その目的のために、および他の目的のために、ユーザインターフェースサブシステム340は、ユーザによって動作可能なユーザ入力デバイス360からユーザ入力データを受信するように構成されたユーザ入力インターフェース(図4には明示的に示さず)を備えることができる。ユーザ入力デバイス360は、コンピュータマウス、タッチスクリーン、コンピュータキーボード、マイクロフォンなどを含むがこれらに限定されない様々な形態をとることができる。図4は、コンピュータキーボードおよびコンピュータマウス360であるユーザ入力デバイスを示す。一般に、ユーザ入力インターフェースは、ユーザ入力デバイス360のタイプに対応するタイプのものであってもよく、すなわち、それに対応するタイプのユーザデバイスインターフェースであってもよい。ユーザインターフェースサブシステム180は、プロセッサシステム300の出力を視覚化するためにディスプレイ350に表示データを提供するように構成されたディスプレイ出力インターフェース(図4には明示的に示さず)をさらに備えることができる。図1の例では、ディスプレイは外部ディスプレイ350である。あるいは、ディスプレイは、プロセッサシステム300の内部ディスプレイであってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、プロセッサシステム300は、クライアントサーバモデルに従ってクライアント(図4には示さず)と共に動作することができるサーバであり得る。そのような実施形態では、グラフィカルユーザインターフェースは、クライアント上に提示されてもよく、グラフィカルユーザインターフェースを使用してユーザに示される情報、およびグラフィカルユーザインターフェースを使用してユーザによって提供される入力は、プロセッサシステム300からおよびプロセッサシステム300に送信され得る。例えば、プロセッサシステム300は、インターネットまたはイントラネットを介してクライアントによってアクセスされ得るウェブアクセス可能なグラフィカルユーザインターフェースを確立するように、またはクライアントによるアクセスのためのそのようなグラフィカルユーザインターフェースを確立するためにウェブサーバとインターフェース接続するように構成することができる。
【0099】
一般に、本明細書に記載の各エンティティは、デバイスまたは装置として、またはそれらの中で具現化され得る。デバイスまたは装置は、適切なソフトウェアを実行する1つまたは複数の(マイクロ)プロセッサを備えることができる。それぞれのエンティティのプロセッサは、これらの(マイクロ)プロセッサの1つまたは複数によって具現化され得る。それぞれのエンティティの機能を実装するソフトウェアは、対応する1つまたは複数のメモリ、例えばRAMなどの揮発性メモリ、またはフラッシュなどの不揮発性メモリにダウンロードおよび/または記憶され得る。あるいは、それぞれのエンティティのプロセッサは、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として、プログラマブルロジックの形態でデバイスまたは装置に実装されてもよい。任意の入力インターフェースおよび/または出力インターフェースは、デバイスまたは装置のそれぞれのインターフェースによって実装されてもよい。それぞれのエンティティの各機能ユニットは、回路または回路網の形態で実装されてもよい。それぞれのエンティティはまた、例えば異なるデバイスまたは装置を含む分散方式で実装されてもよい。デバイスまたは装置の例は、ワークステーションまたはサーバなどのコンピュータである。
【0100】
本明細書、例えば特許請求の範囲または条項のいずれかに記載の方法のいずれも、コンピュータ実装方法として、専用ハードウェアとして、または両方の組合せとしてコンピュータ上に実装され得ることに留意されたい。コンピュータのための命令、例えば実行可能コードは、例えば図5に示すように、例えば機械可読物理的マークの一連410の形態で、および/または異なる電気的、例えば磁気的もしくは光学的特性もしくは値を有する一連の要素として、コンピュータ可読媒体400に記憶され得る。実行可能コードは、一時的または非一時的に記憶されてもよい。コンピュータ可読媒体の例には、メモリデバイス、光記憶デバイス、集積回路などが含まれる。図5は、例として光記憶デバイス400を示す。
【0101】
以下の条項は、化合物のレシピを生成するためのコンピュータ実装方法およびプロセッサシステム、化合物を製造する方法、ならびに化合物の実施形態を定義し、これらの実施形態は、別個に特許請求されてもよく、および/または本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせてもよい。条項:
条項1.化合物のレシピを生成するコンピュータ実装方法であって、レシピが、化合物を製造するための成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義し、
公知のレシピを使用して生成された化合物の化合物データを取得するステップであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、ステップと;
化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るステップと;
1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数が、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して、化合物の試料の生成、および試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)試料の1つまたは材料特性の試料測定値を受信し、試料測定値を目標値と比較して、目標値に対する偏差を決定するステップ;ならびに
v)偏差が許容性基準を満たす場合、選択されたレシピを化合物のレシピとして出力するステップ
によって、化合物のレシピを生成するステップと
を含む、コンピュータ実装方法。
【0102】
条項2.偏差が許容性基準を満たさない場合、試料測定値および試料レシピを使用して予測モデルを再訓練し、再訓練された予測モデルを使用してステップi)~v)を繰り返すステップをさらに含む、条項1に記載のコンピュータ実装方法。
【0103】
条項3.化合物の候補レシピを生成するステップが、ランダムなレシピのセットを提供するステップと、ランダムなレシピのセットに基づいて候補レシピを生成するステップとを含む、条項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【0104】
条項4.化合物の候補レシピを生成するステップが、遺伝的アルゴリズムを使用して、ランダムなレシピのセットを反復的に変更して、スコアリング関数による改善されたスコアを取得するステップを含む、条項3に記載のコンピュータ実装方法。
【0105】
条項5.ランダムなレシピのセットを反復的に変更するステップが、
レシピ内の成分の相対的寄与をランダムに変更するステップ;
2つ以上のレシピを混合するステップ;
レシピから成分をランダムに省略するステップ;および
レシピに成分をランダムに追加するステップ
の少なくとも1つを含む、条項4に記載のコンピュータ実装方法。
【0106】
条項6.レシピのランダムなセットを提供するステップが、
下限としてゼロを含み、公知のレシピにおける成分の最大相対的寄与を上限として含む範囲から選択される値に、成分の寄与をランダムに設定する工程;および
成分の寄与をゼロにランダムに設定する工程
の好ましくは少なくとも1つによって、成分の相対的寄与をランダムに選択するステップを含む、条項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0107】
条項7.スコアリング関数が、
より少ない成分を有するレシピ;および
化合物のベース成分と比較して相対的寄与が低いレシピ内の成分のセット
の少なくとも1つにリワードを与えるようにさらに構成される、条項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0108】
条項8.1つまたは複数の化合物材料特性が、
CIELABなどの知覚的に均一な色空間における色値として、および/または反射率スペクトルとして好ましくは定義される、化合物の色;
破断伸び、引張強度および引張弾性率の好ましくは1つまたは複数である、化合物の1つまたは複数の機械的特性
を含む、条項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【0109】
条項9.プロセッサシステムで条項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実行するステップを含む、化合物のレシピを生成する方法であって、
化合物の試料を生成するステップ;および
試料の1つまたは複数の材料特性を測定して、試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を取得するステップ
をさらに含む、方法。
【0110】
条項10.化合物の試料を生成するステップが、
押出成形と射出成形との組合せ;および
押出なしの射出成形
の少なくとも1つを使用する工程を含む、条項9に記載の方法。
【0111】
条項11.レシピを生成するステップ(200)が、ステップi)~v)を実行する少なくとも2回の反復を含み、
第1の反復では、試料を生成するステップが、押出なしで射出成形を使用する工程を含み、
第2および以降の反復では、試料を生成するステップが、押出成形と射出成形との組合せを使用する工程を含む
条項9または10に記載の方法。
【0112】
条項12.条項1~11のいずれか一項に記載の方法によって生成されたレシピを使用して化合物を製造する方法。
【0113】
条項13.条項12に記載の方法によって得ることができる化合物。
【0114】
条項14.コンピュータプログラムを表すデータを含む一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体であって、コンピュータプログラムが、プロセッサシステムに条項1~11のいずれか一項に記載の方法を実行させるための命令を含む、一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0115】
条項15.化合物のレシピを生成するためのプロセッサシステムであって、レシピが、化合物を製造するためのレシピに対する成分のセットおよび成分の相対的寄与を定義し、
公知のレシピを使用して生成された化合物の化合物データにアクセスするように構成されたデータ記憶インターフェースであって、化合物データが、それぞれの化合物について、それぞれの化合物のa)1つまたは複数の化合物材料特性の測定値、およびb)レシピを含む、データ記憶インターフェースと;
化合物データに対して機械学習可能モデルを訓練して、入力レシピから1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測し、それによって予測モデルを得るように;
1つまたは複数の化合物材料特性の目標値に近似するように、
i)化合物の候補レシピを生成し、予測モデルを使用して各候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の値を予測するステップ;
ii)候補レシピからレシピを選択するステップであって、スコアリング関数を評価するステップを含み、スコアリング関数が、候補レシピの1つまたは複数の化合物材料特性の前記予測値と目標値との間の対応にリワードを与えるように構成される、ステップ;
iii)前記選択されたレシピを出力して、化合物の試料の生成、および試料の1つまたは複数の材料特性の測定を可能にするステップ;
iv)試料の1つまたは複数の材料特性の試料測定値を受信し、試料測定値を目標値と比較して、目標値に対する偏差を決定するステップ;ならびに
v)偏差が許容性基準を満たす場合、選択されたレシピを化合物のレシピとして出力するステップ
によって、化合物のレシピを生成するように
構成された処理サブシステムと
を備える、プロセッサシステム。
【0116】
実施例、実施形態または任意選択の特徴は、非限定的であるか否かにかかわらず、特許請求の範囲に記載された、または条項のいずれかによって定義された本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0117】
数学記号および表記は、本発明の解釈を容易にするために提供されており、特許請求の範囲または条項を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0118】
上記の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲または条項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲または条項において、括弧の間に置かれた参照符号は、特許請求の範囲または条項を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「備える(comprise)」およびその活用形の使用は、特許請求の範囲または条項に記載されたもの以外の要素または段階の存在を排除しない。要素に先行する冠詞「a」または「an」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。要素のリストまたは群に先行する場合の「少なくとも1つ」などの表現は、リストまたは群からの要素のすべてまたは任意のサブセットの選択を表す。例えば、「A、BおよびCの少なくとも1つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBの両方、AおよびCの両方、BおよびCの両方、またはA、BおよびCのすべてを含むものとして理解されるべきである。本発明は、いくつかの別個の要素を含むハードウェアによって、および適切にプログラムされたコンピュータによって実施することができる。いくつかの手段を列挙するデバイスもしくはシステムの特許請求項またはデバイスもしくはシステムの条項では、これらの手段のうちのいくつかは、1つの同じハードウェア項目によって具現化され得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項または従属条項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有効に使用することができないことを示すものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【国際調査報告】