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特表2024-546021電気加熱用グレージング、電気加熱用グレージングの製造方法、及び電気加熱用グレージングの使用
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  • 特表-電気加熱用グレージング、電気加熱用グレージングの製造方法、及び電気加熱用グレージングの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電気加熱用グレージング、電気加熱用グレージングの製造方法、及び電気加熱用グレージングの使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241210BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C03C27/12 M
C03C27/12 N
C03C27/12 L
B60S1/02 400Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527431
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 GB2022052799
(87)【国際公開番号】W WO2023084194
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2116143.5
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】アラステア フレンチ
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー チェンバレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ピーター ヴォス
【テーマコード(参考)】
3D225
4G061
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AB01
3D225AC10
3D225AD02
4G061AA02
4G061AA23
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、電気加熱用グレージング(10)であって、第1のガラスシート(1)と、第1のガラスシート(1)の外縁周りの第1のマスキング層(2)と、第1のマスキング層(2)内におけるセンサ用のアパーチャ(3)と、第1のガラスシート(1)に中間層材料のプライ(5)によって接合された第2のガラスシート(4)と、中間層材料のプライ(5)と第1のガラスシート(1)との間に位置決めされたキャリアフィルム(6)と、キャリアフィルム(6)上の電気加熱素子(7)と、キャリアフィルム(6)上の第2のマスキング層(8)と、を備える、電気加熱用グレージング(10)に関する。キャリアフィルムに位置決めされる第2のマスキング層により、成形中のガラスシートの応力を低減することで光学的歪みを低減する。本発明は、グレージングの製造方法、及び例えば車両の窓としてのグレージングの使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱用グレージング(10)であって、
第1のガラスシート(1)と、
前記第1のガラスシート(1)の外縁周りの第1のマスキング層(2)と、
前記第1のマスキング層(2)内のセンサ用のアパーチャー(3)と、
前記第1のガラスシート(1)に中間層材料のプライ(5)によって接合された第2のガラスシート(4)と、
前記中間層材料のプライ(5)と前記第1のガラスシート(1)との間に配置されたキャリアフィルム(6)と、
前記キャリアフィルム(6)上の電気加熱素子(7)と、
前記キャリアフィルム(6)上の第2のマスキング層(8)と、
を備える、グレージング(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のグレージング(10)において、前記第2のマスキング層(8)は、前記電気加熱素子(7)側と反対側の前記キャリアフィルム(6)の表面上にある、グレージング(10)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグレージング(10)において、前記電気加熱素子(7)は、前記第1のガラスシート(1)と接触している、グレージング(10)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記第2のマスキング層(8)は内端縁を有し、該内端縁の形状は、直線、弓形、楕円形、円形、三角形、正方形、長方形、平行四辺形、又は台形から選択される、グレージング(10)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記第2のマスキング層(8)は外端縁を有し、前記内端縁と前記外端縁との間の幅は1~100mm、より好ましくは3~30mm、最も好ましくは5~25mmである、グレージング(10)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記第2のマスキング層(8)の前記内端縁は、第1のマスキング層の端縁から距離を開けて離れており、該距離が1~50mm、より好ましくは2~20mm、最も好ましくは3~10mmである、グレージング(10)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記キャリアフィルム(6)はポリビニルブチラールからなる、グレージング(10)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記キャリアフィルムの厚さは1mm以下、好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である、グレージング(10)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記電気加熱素子(7)は、導電性コーティング、導電性トラック、導線、又はこれらの組み合わせから選択される、グレージング(10)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、前記電気加熱素子(7)は、銀印刷、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ若しくはグラファイト、又はエッチングした銅を含む導電性トラックである、グレージング(10)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のグレージング(10)において、加熱されたコーティングにおける電力密度は、100~3,000W/m、より好ましくは200~2,000W/m、最も好ましくは300~1,000W/mである、グレージング(10)。
【請求項12】
電気加熱用グレージング(10)を製造する方法であって、
第1のガラスシート(1)を準備するステップと、
前記第1のガラスシート(1)の外縁周りに第1のマスキング層(2)を堆積するステップと、
前記第1のマスキング層(2)内にセンサ用のアパーチャー(3)を配置するステップと、
第2のガラスシート(4)を、中間層材料のプライ(5)によって前記第1のガラスシート(1)に接合するステップと、
を備え、並びに
接合するステップの前に、
キャリアフィルム(6)を、前記中間層材料のプライ(5)と前記第1のガラスシート(1)又は前記第2のガラスシート(4)との間に位置決めするステップと、
電気加熱素子(7)を前記キャリアフィルム(6)上に設けるステップと、
第2のマスキング層(8)を前記キャリアフィルム(6)上に堆積するステップと、
を備える、電気加熱用グレージング(10)の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のグレージング(10)の製造方法において、前記第2のマスキング層(8)をデジタル印刷で堆積する、グレージング(10)の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のグレージング(10)の製造方法において、前記第1のマスキング層(2)をスクリーン印刷で堆積する、グレージング(10)の製造方法。
【請求項15】
自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、又はルーフウィンドウとして、或いは建物の窓、又は冷蔵庫の扉若しくは街頭設置物の窓としての、請求項1に記載のグレージング(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱用グレージング、電気加熱用グレージングの製造方法、及び例えば車両の窓としての電気加熱用グレージングの使用である。
【背景技術】
【0002】
ガラスシート、ガラスシート上のマスキング層、及びマスキング層内のセンサ用のアパーチャを備える電気加熱用グレージングはよく知られている。通常、電気加熱素子は、曇りの除去又は霜の除去のために設けられ、センサはアパーチャを通じてデータの送信及び受信ができる。
【0003】
特許文献1(EP3118036A1 (Sakamoto))では、マスク層を利用したガラスシートを備えるウインドシールドを開示している。マスク層の成形プロセス中に熱で引き起こされる膨張量は、ガラスシートの膨張量と異なる。その結果、ガラスシートを通して見える像の歪みがマスク層と開口の境界付近で生じる。情報取得デバイスは、開口において、開口の縁から所定の範囲で生じる歪みの影響を低減するように、又は情報取得デバイスにより照射又は受光される光の通過範囲が開口の中央付近を通過するように構成される。
【0004】
特許文献2(US2017297310A1 (Mannheim Astete))では、紫外線を遮断することでポリウレタン接着剤を保護するガラス上のブラックバンド(black band)を記載している。曲げ工程で、ブラックバンドは、ガラスよりも多くの放射熱を吸収する。数十℃の温度勾配が短距離で上昇するため、ブラックバンドの内縁に沿って「バーン」ラインとして知られる光学的歪みが生じる。バーンラインの歪みの問題の解決策は、熱可塑性中間層の少なくとも2層のシート間に積層されたプラスチックフィルムの表面上に、直接オブスキュレーションを印刷することである。ポリエチレンテレフタレート(PET)からできており、またオブスキュレーションが印刷されるプラスチックフィルムは、ジオプターで測定した歪みがより小さく、変調伝達関数(MTF)が向上している。加熱素子については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3118036号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/297310号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
代替の電気加熱用グレージングの必要性が依然として存在する。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、歪みが所定量である電気加熱用グレージングを提供することである。他の目的は、歪みが所定量である電気加熱用グレージングの簡単な製造方法を提供することである。
【0008】
(本発明の概要)
第1の態様では、本発明は、請求項1に記載の特徴を備える電気加熱用グレージングを提供する。
【0009】
本発明は、電気加熱用グレージングを提供し、該電気加熱用グレージングは、第1のガラスシートと、第1のガラスシートの外縁周りの第1のマスキング層と、第1のマスキング層内におけるセンサ用のアパーチャと、中間層材料のプライによって第1のガラスシートに接合された第2のガラスシートと、中間層材料のプライ及び第1のガラスシートの間に位置決めされたキャリアフィルムと、キャリアフィルム上に配置された電気加熱素子と、キャリアフィルム上に位置決めされた第2のマスキング層と、を備える。
【0010】
本発明は、キャリアフィルムに配置された第2のマスキング層を有するグレージングにより、成形中のガラスシートの応力をより小さくし、歪みをより小さくできるため、非常に有利である。
【0011】
驚くべきことに、発明者らは、キャリアフィルムに配置されてセンサ用のアパーチャの端縁を画定する第2のマスキング層により、第1のマスキング層におけるアパーチャをより大きくできることを見出した。その結果、第1のマスキング層に起因する歪みがセンサの視野内で生じない。
【0012】
さらに、キャリアフィルムに配置される第2のマスキング層により、グレージングの製造方法において、第2のマスキング層が第1のガラスシートに対して相対移動するのを可能にする。その結果、第2のマスキング層と第1のガラスシートの熱膨張係数が異なっても歪まない。
【0013】
本発明の効果は、グレージングが、例えば車両の窓の歪み、曇り除去、霜の除去の産業試験の必要条件を満たすことである。
【0014】
好ましくは、第2のマスキング層は、電気加熱素子側とは反対側のキャリアフィルムの表面上にある。
【0015】
好ましくは、電気加熱素子は、第1のガラスシートと接触している。
【0016】
好ましくは、第2のマスキング層は内端縁を有し、該内端縁の形状は、直線、弓形、楕円形、円形、三角形、正方形、長方形、平行四辺形、又は台形から選択される。各形状は、開いていてもよいし、閉じていてもよい。
【0017】
好ましくは、第2のマスキング層は外端縁を有し、また外端縁と内端縁との間の幅を有し、該幅は1~100mm、より好ましくは3~30mm、最も好ましくは5~25mmである。
【0018】
好ましくは、第2のマスキング層の内端縁は、第1のマスキング層の端縁から距離を開けて離れており、該距離が1~50mm、より好ましくは2~20mm、最も好ましくは3~10mmである。
【0019】
好ましくは、キャリアフィルムは、ポリビニルブチラール(PVB)である。PVBは、グレージングの製造方法において、オートクレーブを用いた永久接合のステップ中に接着剤としても機能し、また流動するため有利である。
【0020】
好ましくは、キャリアフィルムの厚さは1mm以下、好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下である。
【0021】
好ましくは、グレージングの総表面積に対するキャリアフィルムの総面積の割合は、15%以下、より好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。
【0022】
好ましくは、電気加熱素子は、導電性コーティング、導電性トラック、導線、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0023】
好ましくは、電気加熱素子は、銀、透明導電性酸化物、酸化スズ、又はフッ素をドープした酸化スズから選択される層を含む導電性コーティングである。
【0024】
好ましくは、電気加熱素子は、銀印刷、銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ若しくはグラフェン、又はエッチングした銅を含む導電性トラックである。
【0025】
好ましくは、電気加熱素子は、銅、タングステン、又は銀を含む導線である。
【0026】
好ましくは、電気加熱素子は、シート抵抗が325Ω/□未満、より好ましくは20Ω/□未満、最も好ましくは7Ω/□未満である導電性コーティングである。
【0027】
好ましくは、電気加熱素子における電力密度は、100~3,000W/m、より好ましくは200~2,000W/m、最も好ましくは300~1,000W/mである。
【0028】
好ましくは、第1のバスバー及び第2のバスバーは、電気加熱素子の対向する端縁に沿ってキャリアフィルム上に配置される。
【0029】
好ましくは、第1のバスバー及び第2のバスバーは、第2のマスキング層で覆われている。
【0030】
好ましくは、第1のバスバー及び第2のバスバーは銀を含む。第1のバスバー及び第2のバスバーは、銀粉末、銀球、グラファイト粉末、グラファイト棒、カーボンナノチューブ、又は導電性コーティングを有するガラスフレークを含む導電性インクを使用して印刷されていてもよい。第1のバスバー及び第2のバスバーは、銅ストリップであってもよい。第1のバスバー及び第2のバスバーは、エッチングした銅であってもよく、好ましくは電気加熱素子のエッチングした銅の導電性トラックと同一の材料であってもよい。
【0031】
好ましくは、導電性トラックは、幅が1μm~5mm、より好ましくは5μm~4mm、最も好ましくは10μm~1mmである。
【0032】
第2の態様では、本発明は、特許請求の範囲請求項12に記載におけるステップセットを含むグレージングの製造方法を提供する。
【0033】
本発明は、本発明のグレージングの製造方法を提供し、該グレージングの製造方法は、第1のガラスシートを準備するステップと、第1のガラスシートの外縁周りに第1のマスキング層を堆積するステップと、第1のマスキング層内にセンサ用のアパーチャを配置するステップと、第2のガラスシートを、中間層材料のプライによって第1のガラスシートに接合するステップと、を備え、並びに接合するステップの前に、キャリアフィルムを中間層材料のプライと第1のガラスシート又は第2のガラスシートとの間に位置決めするステップと、電気加熱素子をキャリアフィルム上に設けるステップと、第2のマスキング層をキャリアフィルム上に堆積するステップと、を備える。
【0034】
好ましくは、第2のマスキング層は、デジタル印刷によって堆積させる。
【0035】
好ましくは、第1のマスキング層は、スクリーン印刷によって堆積させる。
【0036】
好ましくは、導電性コーティングは、スパッタリングで堆積され、より好ましくは化学気相蒸着(CVD)で堆積される。好ましくは、導電性トラックは、導電性材料の層をエッチングすることで設けられ、より好ましくは、銅の層をエッチングすることで設けられる。好ましくは、導線は、ワイヤー配索装置でキャリアフィルム中に埋設される。
【0037】
好ましくは、電気加熱素子をキャリアフィルム上に準備するステップは、第2のマスキング層をキャリアフィルム上に堆積するステップより前である。
【0038】
好ましくは、第2のガラスシートを、中間層材料のプライによって第1のガラスシートと接合するステップは、キャリアフィルムを中間層材料のプライと第1のガラスシートとの間に位置決めするステップより後である。
【0039】
第3の態様では、本発明は、陸上用、海用、及び航空用の車両の熱窓としての、例えば、自動車のフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、ルーフウィンドウとしての本発明のグレージングの使用を提供する。また、本発明は、建物の窓、又は冷蔵庫のドア若しくは街頭設置物の窓としても使用され得る。
【0040】
本明細書では、本発明を、非限定的な図面、非限定的な実施例及び比較例により開示する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】直線形の内端縁を有する本発明の実施形態である。
図2図1のラインA-Aでの断面図である。
図3】長方形の内端縁を有する本発明の実施形態である。
図4】加熱素子が内側シート上にある図3のラインA-Aでの断面図である。
図5図4と同様であるが、第2のマスキング層が内側シート上にある。
図6図4と同様であるが、加熱素子が外側シート上にある。
図7図4と同様であるが、第2のマスキング層が外側シート上にある。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、第1のガラスシート(1)と、第1のガラスシート(1)の表面に堆積された第1のマスキング層(2)と、を備える本発明の電気加熱用グレージング(10)を開示する。
【0043】
第1のガラスシート(1)は、フロート法で製造されたソーダ石灰シリカガラスであることが好ましい。ガラスの厚さは、2~12mmであることが好ましい。第1のガラスシート(1)は、表面応力が65MPaより大きい強化ガラス、又は表面応力が40~55MPaの熱強化ガラス、又は表面応力が20~25MPaの半強化ガラス、又は焼きなましガラスであってもよい。
【0044】
第1のガラスシート(1)は、合わせガラス(10)の窓ガラスの内側シートであってもよい。合わせガラス(10)の窓ガラスは、自動車等のボディに適しており、第1のガラスシート(1)はボディの内側を向いている。第1のマスキング層(2)は、外側を向く表面1(S1)から番号付けした、合わせガラス(10)の窓ガラスの表面4(S4)上に堆積される。
【0045】
第1のマスキング層(2)は、第1のガラスシート(1)上の選択領域内に黒色インクをスクリーン印刷することで堆積させた黒色エナメルを含んでいてもよい。第1のガラスシート(1)を、その後、印刷したインクが硬質エナメルになるように、所定温度で所定時間にわたり乾燥する。有利には、第1のマスキング層(2)は、グレージング(10)の外縁周りに延在し、グレージング(10)を車体(図示せず)に接合するために使用されるポリウレタン等の接着材料をマスキングする。
【0046】
アパーチャ(3)は、第1のマスキング層(2)内にセンサ(図示せず)のために配置される。センサは、カメラ、RFIDタグ、又は電磁放射を送信又は受信する任意の電子デバイスであり得る。例えば、車両窓は、料金徴収のため又は先進運転支援システム(ADAS)のためのデータの取得を可能にし、運転及び駐車において運転手を手助けできる。センサは、第1のガラスシート(1)の表面上のブラケット上にあってもよい。センサは、ハウジング(図示せず)内にあってもよい。
【0047】
キャリアフィルム(6)は、グレージング(10)内に設けられる。キャリアフィルム(6)の総面積は、通常、アパーチャ(3)の総面積よりも大きい。
【0048】
キャリアフィルム(6)は、通常、ポリビニルブチラール(PVB)でできている。電気加熱素子(7)は、キャリアフィルム(6)の第1の表面上に設けられる。電気加熱素子(7)は、通常、銀印刷又はエッチングした銅を含む導電性ライン、又は導線である。
【0049】
第2のマスキング層(8)は、キャリアフィルム(6)の第2の表面上に設けられる。第2のマスキング層は、任意の形状であり得る。例えば、第2のマスキング層(8)は、閉じた長方形状のバンドであってもよい。第2のマスキング層(8)は、第1のマスキング層(2)の内端縁と電気加熱素子(7)との間に延在していてもよい。
【0050】
図2は、本発明のグレージング(10)の図1におけるラインA-Aでの断面図を開示する。
【0051】
第1のガラスシート(1)及び第2のガラスシート(4)は、共に中間層材料のプライ(5)によって接合される。
【0052】
第1のマスキング層(2)は、中間層材料のプライ(5)から離れた面の第1のガラスシート(1)の表面上に存在する。通常、第1のマスキング層(2)の第1の部分は、第1のガラスシート(1)の頂端縁に沿ってオブスキュレーションバンドを形成する。センサ用のアパーチャ(3)は、第1のマスキング層(2)の第1の部分と第1のマスキング層(2)の第2の部分との間に存在する。マスキングされていない領域(11)は、第1のマスキング層(2)の第2の部分と第1のガラスシート(1)の底端縁に沿って存在する第1のマスキング層(2)の第3の部分との間に存在する。
【0053】
キャリアフィルム(6)は、第1のガラスシート(1)と中間層材料のプライ(5)との間に位置決めされる。加熱素子(7)は、キャリアフィルム(6)と第1のガラスシート(1)との間に存在する。第2のマスキング層(8)は、中間層材料のプライ(5)に面している加熱素子(7)側とは反対側のキャリアフィルム(6)の表面上に存在する。
【0054】
第3のマスキング層(12)は、中間層材料のプライ(5)に面している第2のガラスシート(4)の表面上に堆積される。第3のマスキング層(12)は、第2のマスキング層(8)の少なくとも一部を覆っている。
【0055】
図3は、図1と同様であるが、さらに、開口長方形状の第2のマスキング層(8)を備える本発明のグレージング(10)を開示する。開口とは、外端縁によって囲まれる内端縁を有し、これら端縁のいずれか又は両方の端縁が長方形状であることを意味する。
【0056】
図4は、本発明のグレージング(10)の図3におけるラインA-Aでの断面図を開示する。加熱素子(7)は、第1のガラスシート(1)に接触する。これは、表面4(S4)を高速で加熱するのに有利であり、曇りをより早く除去できる。
【0057】
図5は、図4と同様であるが、第2のマスキング層(8)が第1のガラスシート(1)と接触しており、加熱素子(7)が中間層材料のプライ(5)と接触している。これは、中間層材料のプライをより早く加熱するのに有利であり、第1に表面4(S4)の曇りを除去すること、及び第2に表面1(S1)の霜を除去することの最適なバランスをもたらす。
【0058】
図6は、図4と同様であるが、加熱素子(7)が第2のガラスシート(4)と接触しており、第2のマスキング層が中間層材料のプライ(5)と接触している。これは、表面1(S1)を早く加熱するのに有利であり、霜をより早く除去することにつながる。
【0059】
図7は、図4と同様であるが、第2のマスキング層(8)が第2のガラスシート(4)と接触しており、加熱素子(7)が中間層材料のプライ(5)と接触している。これは、中間層材料のプライを早く加熱するのに有利であり、第1に表面1(S1)の曇りを除去すること、及び第2に表面4(S4)の霜を除去することの最適なバランスをもたらす。
【0060】
加熱素子(7)は、幅が400μm~700μmの、好ましくは銀粒子を含む印刷された導電性トラックを含んでいてもよい。加熱素子(7)は、直径が70μm~300μmの銅ワイヤーを含んでいてもよい。加熱素子(7)は、直径が10μm~50μmのタングステンワイヤーを含んでいてもよい。加熱素子(7)は、キャリアフィルム(6)上で銅の層をエッチングし、幅1μm~50μmの導電性トラックをもたらすことで形成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
図面における参照符号は、以下のとおりである。
1 第1のガラスシート(内側シート)
2 第1のマスキング層
3 アパーチャ
4 第2のガラスシート(外側シート)
5 中間層材料のプライ
6 キャリアフィルム
7 電気加熱素子
8 第2のマスキング層
9 バスバー
10 グレージング
11 マスクされていない領域
12 第3のマスキング層
S1 第1の表面
S2 第2の表面
S3 第3の表面
S4 第4の表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】