IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコン・エスエルエム・ソルーションズ・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-546022各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備
<>
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図1
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図2
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図3
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図4
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図5
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図6
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図7
  • 特表-各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】各種原料粉末による生成層構築方法及びそのための設備
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/28 20210101AFI20241210BHJP
   B22F 10/68 20210101ALI20241210BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241210BHJP
   B29C 64/307 20170101ALI20241210BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20241210BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20241210BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241210BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
B22F10/28
B22F10/68
B29C64/153
B29C64/307
B29C64/35
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527442
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 DE2022200241
(87)【国際公開番号】W WO2023083422
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021212624.3
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523460981
【氏名又は名称】ニコン・エスエルエム・ソルーションズ・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Nikon SLM Solutions AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】マチック,ミロヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ティーマン,アンドレ
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL72
4F213WL74
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
本開示は、選択的に-生成層構築方法を用いる第1の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第1の原料粉末(9)から少なくとも1つの第1のワークピース(25)、及び-生成層構築方法を用いる第2の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第2の原料粉末(23)から少なくとも1つの第2のワークピース(33)を製造するための設備(1)であって、構築ジョブ中に第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)を案内するための少なくとも1つの原料粉末ガイドを有する、設備(1)において、設備(1)が清掃動作モードを有し、清掃動作モードにおいて、第1の構築ジョブと第2の構築ジョブとの間に所定の清掃量の第2の原料粉末(23)が原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末(9)の残留分を含む原料粉末(9、23)が原料粉末ガイドのセクションから排出されることを特徴とする、設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に
生成層構築方法を用いる第1の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第1の原料粉末(9)から少なくとも1つの第1のワークピース(25)、及び
生成層構築方法を用いる第2の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第2の原料粉末(23)から少なくとも1つの第2のワークピース(33)
を製造するための設備(1)であって、
前記構築ジョブ中に前記第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)を案内するための少なくとも1つの原料粉末ガイドを有する、前記設備(1)において、
前記設備(1)が清掃動作モードを有し、前記清掃動作モードにおいて、前記第1の構築ジョブと前記第2の構築ジョブとの間に所定の清掃量の第2の原料粉末(23)が前記原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末(9)の残留分を含む原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出されることを特徴とする、設備。
【請求項2】
前記原料粉末ガイドの前記セクションがプロセスチャンバ(3)を通過し、前記清掃動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末(23)が粉末床(15)として層単位で前記プロセスチャンバ(3)に供給され、前記清掃動作モードにおいて前記粉末床(15)を選択的に溶融することなく、前記原料粉末混合物(9、23)が前記プロセスチャンバ(3)から排出される、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項3】
前記設備(1)は、前記清掃動作モードにおいて、ワークピース空間(5、5’)の底板(28、28’)を規定の位置に保持するように設定されている、請求項1又は2に記載の設備(1)。
【請求項4】
前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量は、前記設備(1)に定められた絶対最小清掃量である、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項5】
前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される原料粉末混合物(9、23)中の第1の原料粉末(9)の残留分の上限が予め定められている、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項6】
前記設備(1)は、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)を、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションに1回又は数回再供給するように設定されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項7】
分析ユニットを更に備え、前記分析ユニットは、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分を検知するように設定されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項8】
前記設備は、前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)を前記原料粉末ガイドの前記セクションに何度も、又は前記清掃動作モードにおいて前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給するように設定されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項9】
前記設備(1)は、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が、予め定められた上限を超える場合、前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量を増加させるように設定されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項10】
前記設備は、それぞれ第1の原料粉末及び第2の原料粉末(9、23)として予め選定された異なる原料(9、23)を用いて動作可能であり、第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)としての前記異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性の尺度が予め定義された割り当てマトリックス(35)に保存されている、及び/又は呼び出し可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載の設備(1)。
【請求項11】
選択的に
第1の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第1の原料粉末(9)から少なくとも1つの第1のワークピース(25)、及び
第2の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第2の原料粉末(23)から少なくとも1つの第2のワークピース(33)
を製造するための設備(1)を用いる生成層構築方法において、
前記設備(1)が、前記第1の構築ジョブと前記第2の構築ジョブとの間で、清掃動作モードにおいて所定の清掃量の第2の原料粉末(23)が前記設備(1)の原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末(9)の残留分を含む原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出されることによって清掃されることを特徴とする、生成層構築方法。
【請求項12】
前記原料粉末ガイドの前記セクションがプロセスチャンバ(3)を通過し、前記原料動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末(23)が粉末床(15)として層単位で前記プロセスチャンバ(3)に供給され、前記清掃動作モードにおいて前記粉末床(15)を選択的に溶融することなく、前記原料粉末混合物(9、23)が前記プロセスチャンバ(3)から排出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記清掃運転モードにおいて、ワークピース空間(5、5’)の底板(28、28’)が規定の位置に保持される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量は、前記設備(1)に定められた絶対最小清掃量である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分の上限が予め定められる、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションに1回又は数回再供給される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が検知される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションに何度も、又は前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給される、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を超える場合、前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量が増加される、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)としての前記異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性の尺度が、予め定義され保存された割り当てマトリックス(35)から呼び出される、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか一項に記載の方法を実行するための請求項1~10のいずれか一項に記載の設備(1)のための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に選択的レーザ溶融(レーザ粉末床溶融結合(LPBF))による異なる原料粉末を用いた生成層構築方法、及びそのための設備に関する。本開示は、この方法を実行するためのそのような設備のためのソフトウェア及び/又はハードウェアの形態の制御プログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
生成層構築方法を用いる3次元ワークピースの製造は、多くの場合、3Dプリントと呼ばれる。生成層構築方法の特殊な形式は、粉末状の原料である処理対象の材料が薄層の形でベースプレート上に設けられる選択的レーザ溶融である。粉末状の原料は、レーザ照射により選択的に、すなわち場所特定的に(ortsspezifisch)溶融若しくは焼結され、凝固後にワークピースの層を形成する。ワークピース層が完成するとすぐに、ベースプレートが1層の厚さ分だけ下降し、次層のための原料粉末が載置され、次いでこれが再びレーザ照射によって選択的に溶融若しくは焼結される。これは、いわゆる「構築ジョブ(Baujob)」の間、溶融されたすべてのワークピース層が一緒に3次元ワークピースを形成するまで繰り返される。構築ジョブ中、ワークピース空間の囲壁によって周囲を取り囲まれたワークピース空間の中に底板が段階的に下降する。すなわち、ワークピース空間は、構築ジョブの過程で3次元ワークピースが大きくなっていくにつれて拡大し、3次元ワークピースによって満たされないワークピース空間の容積が溶融されない原料粉末で満たされる。例えば、セラミック材料、金属材料又はプラスチック材料、或いはそれらの材料混合物、若しくは異なる種類のセラミック材料、金属材料又はプラスチック材料の混合物を材料粉末として用いることができる。
【0003】
ワークピースを作成するための生成層構築方法の設備は、多くの場合、1つのタイプの原料粉末のみで動作できることに限定されない。いくつかの多種材料設備は、2つ以上の異なる原料粉末からワークピースを製造できるが、設備において異なる原料粉末が別々に案内される(例えば、国際公開第2014/111072号を参照)。単一材料設備であるのか、多種材料設備であるのかに関係なく、異なる構築ジョブに異なるタイプの原料粉末を使用することができる。ただし、新たな構築ジョブにおいて、設備の同一の原料粉末ガイドで以前の構築ジョブとは別の原料粉末を使用できるようにするには、新しいワークピースに以前の原料粉末が許容できないほど高い割合で残留しないようにするために、設備の対応する原料粉末ガイドを徹底的に清掃しなければならない。ワークピースの高い材料品質を保証できるようにするために、原料粉末によっては、対応する汚染の限度が非常に厳しくなる場合がある。
【0004】
しかし、設備を徹底的に清掃するには、多大な手作業が必要になることが多く、設備の多数の部品を分解し、個別に手動で吸引及び/又は清掃し、最後に再び組み立てなければならない。設備の規模によっては、これには特別な訓練を受けた経験豊富な従業員でも数時間、それどころか数日かかる場合がある。対応する清掃コストに加えて、設備を操業できない時間に対する操業停止コストが追加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/111072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本開示の課題は、異なる原料粉末を用いる2つの構築ジョブ間で設備を清掃する時間とコストを削減することである。
【0007】
上記課題は、独立請求項のいずれかに記載の設備、生成層構築方法、及び制御プログラムによって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項、以下の説明及び図面から読み取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様によれば、選択的に、
生成層構築方法を用いる第1の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第1の原料粉末から少なくとも1つの第1のワークピース、及び
生成層構築方法を用いる第2の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第2の原料粉末から少なくとも1つの第2のワークピース
を製造するための設備であって、
構築ジョブ中に第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末を案内するための少なくとも1つの原料粉末ガイド(Rohmaterialpulverfuhrung)を有する、設備において、
設備が清掃動作モード(Reinigungsbetriebsmodus)を有し、清掃動作モードにおいて、第1の構築ジョブと第2の構築ジョブとの間に所定の清掃量の第2の原料粉末(Reinigungsmenge an zweitem Rohmaterialpulver)が原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末の残留分を含む原料粉末混合物が原料粉末ガイドのセクションから排出されることを特徴とする、設備が提供される。
【0009】
原料粉末ガイドは、対応する原料粉末と接触する設備のすべての部品を含む。原料粉末は、例えば、重力により、機械により及び/又は流体により原料粉末ガイドに沿って移送することができる。清掃動作モードにおいて前記清掃量の第2の原料粉末が通過する原料粉末ガイドのセクションは、原料粉末ガイド全体、又はその一部分のみ、又はいくつかの部分にわたって延在し得る。原料粉末ガイドは、任意的にリサイクリングシステムを含むことができ、それにより原料粉末の少なくとも一部が原料粉末ガイドを通して循環移送される。清掃動作モードにおいて前記清掃量の第2の原料粉末が通過する原料粉末ガイドのセクションは、特にリサイクリングシステムにわたって延びる。マルチ材料設備は、互いに大きく離間した複数の原料粉末ガイドを有することができる。この場合、清掃動作モードは、1つ、複数又はすべての原料粉末ガイドの少なくとも1つのセクションに対して個別に提供され得る。特に、原料粉末を正圧又は負圧によって配管に沿って流体移送する原料粉末ガイドのセクションは、原料粉末ガイドの部品を事前に分解し、続いて再び組み立てなければならないということなしには手作業での清掃が困難又は不可能である。したがって、清掃動作モードは、特に原料粉末ガイドのそのようなセクションにとって有利である。
【0010】
殊に、清掃動作モードで清掃されるべき原料粉末ガイドのセクションは、構築ジョブ中に原料粉末が粉末床として層単位で(schichtweise)選択的に溶融されるプロセスチャンバを通過する。任意的に、清掃動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末が粉末床として層単位でプロセスチャンバに供給され、原料粉末混合物がプロセスチャンバから排出される。ただし、構築ジョブとは異なり、清掃モードでは粉末床は選択的に溶解されない。これには、本発明による清掃動作モードを実行できるようにするために、設備のハードウェアを適合させるか、又は変更しなくても、ソフトウェアアップデート版(Software-Update)を再生又は実行するだけで既存の従来設備を適合させることができるという利点がある。
【0011】
すなわち清掃動作モードにおいて、第2の原料粉末は、殊に構築ジョブ中に行われるのと全く同様に設備を通して搬送されるが、粉末床を選択的に溶融するためにレーザを動作させることはないという点で異なる。したがって、清掃動作モードを「電力なしの」ダミー構築ジョブ、又は「0ワット構築ジョブ」と呼ぶことができる。前記清掃量の第2の原料粉末は、第1の原料粉末の残留分があったとしても第2の原料粉末がこれを運び去り、清掃量に混ぜ込むことによって、少なくとも清掃動作モードにおいて清掃されるべき原料粉末ガイドのセクションを清掃する。それによって、清掃動作モードにおいて清掃されるべき原料粉末ガイドのセクションに存在する第1の原料粉末の残留分が、第2の原料粉末と一緒に原料粉末混合物として排出される。すなわち、清掃運転モードによって、異なる原料粉末を用いる2つの構築ジョブ間での清掃が自動化され、そのことが清掃の時間とコストを大幅に削減する。特に、比較的大型の設備及び/又は自動の原料粉末リサイクリング、すなわち循環式原料粉末ガイドを有する設備では、手動の清掃と比べて清掃動作モードの利点が非常に大きい可能性がある。
【0012】
清掃されるべき原料粉末ガイドのセクションはプロセスチャンバを通過するが、清掃動作モードにおいて粉末床が構築されないことも考えられる。構築ジョブとは異なり清掃動作モードでは、前記清掃量の第2の原料粉末をオーバーフロー又は収集容器に直接落下させる、及び/又は移送することができる。このために、構築ジョブにおいて粉末床を敷設するコータを、清掃動作モードにおいてオーバーフロー又は収集容器に直接搬送するよう、相応に制御することができる。粉末床の片側又は両側で、構築ジョブにおいて粉末床を敷設するためにコータに充填する中間貯蔵器の真下にオーバーフロー又は収集容器が位置する設備もある。このような設備では、清掃動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末が中間貯蔵器からオーバーフロー又は収集容器に直接落下することが考えられる。その場合、コータを同様に洗い流すために、それらの間に位置決めし、下向きに開くことができ、又は洗い流さないようにするために原料粉末ガイドから遠ざけることができる。代替的又は追加的に、例えば粉末床のための底板がワークピース容器内の下降した位置に位置決めされる場合、清掃動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末はプロセスチャンバの下に位置決めされたワークピース容器に直接搬送されることが考えられる。構築ジョブ中に原料粉末が粉末床の横に上向きの粉末山として搬送され、ドクターブレードの形態のコータが粉末山を横方向に平滑にならして粉末床にする設備においても清掃動作モードを適用することができる。
【0013】
ただし、清掃動作モードの主な目的は、事前に設備の部品を分解し、続いて再びこれらを組み立てなければならないということなしには、手動で清掃することが困難又は不可能な設備の原料粉末ガイドのセクションを清掃することである。これらは、例えば、原料粉末を移送する配管である。すなわち、プロセスチャンバの構造とアクセス性によっては、プロセスチャンバを、場合によっては中間貯蔵器、コータ、及びオーバーフローを含めて、部品取外しなしに比較的容易に手動で清掃できる可能性がある。したがって、清掃動作モードでは、前記清掃量の第2の原料粉末を必ずしもプロセスチャンバを通過させる必要はない。例えば、前記清掃量の第2の原料粉末をプロセスチャンバの傍らを通過させ、したがって清掃サイクルの継続時間を短縮するために清掃バイパスを設けることができる。
【0014】
前記清掃量の第2の原料粉末が、通過後に排出される原料粉末混合物を廃棄しなければならず、再利用できないほど第1の原料粉末の残留分によって汚染されているということがあるかもしれない。しかし、近年、多くの原料粉末のコストが大幅に低下しているため、前記清掃量の第2の原料粉末にかかるコストは、最近では清掃コストや操業停止コストよりもはるかに低くなっている。更に、清掃動作モードに加えて、第1の原料粉末の残留量を最小限に抑えるために、予め、簡単にアクセスできるすべての設備部品、特にプロセスチャンバの迅速で手動の大まかな清掃を部品取外しなしに行うことができる。これは、専門知識や経験の少ない従業員によって、例えば吸引などにより、わずか数分で行うことができる。原料粉末ガイドのセクションから排出された原料粉末混合物中の汚染物が許容範囲を下回る場合、原料粉末混合物を第2の構築ジョブ又はその他のことに使用することさえできる。
【0015】
任意的に、設備を、清掃動作モードにおいてワークピース空間の底板を規定の位置に保持するように設定することができる。構築ジョブとは異なり、清掃動作モードではワークピース空間が下に向かって拡大しない。規定の位置は、最上に位置するゼロ位置であることができ、この位置にあるときワークピース空間は事実上閉じたままであり、底板上に粉末床が形成されない。その場合、前記清掃量の第2の原料粉末は、オーバーフロー又は収集容器に直接搬送される。規定の位置が、例えば一層分の厚さより低い場合、粉末床は形成されるが、第1の層の後に粉末床に設けられる別の層は、清掃動作モードにおいて、殊に粉末床からほぼ完全に落とされ、プロセスチャンバから排出される。清掃運転モードでは原料粉末が層の載置と載置との間に選択的に溶融されないため、清掃動作モードでは、層の載置と載置との間の期間が構築ジョブよりもはるかに短い。層の載置と層の除去は、シームレスに次々行うことができ、そのことが清掃動作モードを加速させる。清掃動作モードにおいて、底板上に粉末床としての層が載置されず、オーバーフロー又は収集容器に直接搬送される場合、清掃動作モードを更に加速させることができる。底板の規定の位置がワークピース容器内の比較的深いところにあり、すなわちワークピース空間が清掃動作モードにおいて上向きに開いた容積を形成する場合、清掃動作モードにおいて、ワークピース空間に直接搬送することができ、すなわち、清掃動作モードにおいてワークピース空間を原料粉末混合物のための収集容器として使用することができる。
【0016】
任意的に、第2の原料粉末の前記清掃量を第2の構築ジョブに必要な第2の原料粉末の量の最大30%、好ましくは最大10%とすることができる。この清掃量は、設備、並びに第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末に依存し得る。この場合、設備、並びに第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末に依存して、原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分が許容範囲を下回るようにするために十分な清掃量を示す経験値を指定することができる。任意的に、第2の原料粉末の清掃量を設備に定められた絶対最小清掃量、例えば5リットルとすることができる。
【0017】
任意的に、清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分の上限を予め定めることができる。これは、ゼロ許容範囲でもあり得、すなわち、徹底的な手動の清掃によってのみ上限を達成できるため、第1の原料粉末と第2の原料粉末の特定の組み合わせでは清掃動作モードが不可能になるということである。汚染許容範囲が大きいほど、清掃動作モードを可能な限り少ない清掃量及び短い通過時間でより良く適用できる。汚染許容範囲が小さいほど、清掃動作モードをより長く実行でき、及び/又は清掃量をより多く選択できる。
【0018】
任意的に、設備を、清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物を、例えばリサイクリングシステム又は手動により、原料粉末ガイドのセクションに1回又は数回再供給するように設定することができる。これは、清掃動作モードの継続時間を長くするが、清掃量をより良く利用する。各通過時にいつも清掃量のごく一部のみが能動的に清掃する、すなわち第1の原料粉末を運び去るため、それによって、原料粉末ガイドのセクションに残存する第1の原料粉末を大幅に低減することができる。通過と通過の間に原料粉末混合物を清掃することも可能である。このような中間清掃は、特に、第1の原料粉末と第2の原料粉末が、例えば粒度が大きく異なり、シーブ又はフィルタによって容易かつ確実に分離できる場合、或いは、例えば原料粉末のうちの1つがもう1つの原料粉末よりも高い強磁性を示し、磁気分離により容易かつ確実に分離できる場合に有意義である。
【0019】
任意的に、設備は分析ユニットを更に有することができ、分析ユニットは、清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分を検知するように設定されている。これは、清掃効果を検出若しくは測定できるようにするために有意義である。分析ユニットによって、設備が十分に清掃されているかどうかを検査できる。
【0020】
任意的に、設備を、清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物を何度も、又は原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給するように設定することができる。これは、例えば分析ユニットを用いて清掃動作モード中に1回、定期的に、又は継続的に、或いは清掃動作モードの終わりに検査することができる。代替的に、これを実験室で抜き取り検査的にサンプルを採取することによって検査することができる。
【0021】
任意的に、設備を、清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分が予め定められた上限を超える場合、第2の原料粉末の清掃量を増加させるように設定することができる。第2の原料粉末の清掃量の消費を少なくするために、まず、清掃動作モードのために比較的少ない清掃量を使用すること、及び清掃の成功を調べるために、原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分を決定することが有利であり得る。清掃量が足りない場合は、上限を超えたため清掃量を増加させることができる。しかし、最初に清掃量を増加させるのではなく、設備の原料粉末ガイドの清掃されるべきセクションを清掃量が通過する回数を増加させることが好ましい。
【0022】
任意的に、設備を、それぞれ第1の原料粉末及び第2の原料粉末として予め選定された異なる原料を用いて動作可能にすることができ、第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末としての異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性(Restanteilvertraeglichkeit)の尺度(程度 Maβ)が予め定義された割り当てマトリックスに保存される、及び/又は呼び出し可能である。割り当てマトリックス(Zuordnungsmatrix)には経験値、標準化された許容値、上限及び/又は禁止(Vetos)を保存することができる。割り当てマトリックスは、正確に定義された原料を相互に、又は原料のグループに割り当てることができる。例えば、グループとしての特定の原料は、残留分適合性に関して類似又は同じ挙動を示すことができ、それにより残留分適合性はその原料のグループ全体に当てはまる。一例として、例えばAlSi10Mg、AlSiMg0.6、及びAlSiCuなどのアルミニウム系原料粉末のグループ、例えばTiAlV ELI(グレード23)、TA15,Ti(グレード2)などのチタン系原料粉末のグループ、例えばCuNi2SiCr、CuSn10、CuCr1Zrなどの銅系原料粉末のグループ、例えば316L(1.4404)、15-5PH(1.4545)、17-4PH(1.4542)、1.2709、H13(1.2344)などの鉄系原料粉末のグループ、例えばHX、IN625、IN718、IN939などのニッケル系原料粉末のグループ、及び例えばCoCR28Mo6、SLM(登録商標) MediDentなどのコバルト系原料粉末のグループなどがあり得る。代替的又は追加的に、割り当てマトリックスは、原料を粒度別にグループに分けること、粒度グループを相互に割り当てること、及び対応する残留分適合性を含むことができる。割り当てマトリックスを設備自体に保存、並びに/或いは、例えば外部サーバー又はクラウドなどの外部に保存することができ、データ接続を介して設備から呼び出すことができる。
【0023】
割り当てマトリックスのエントリとしての残留分適合性は、例えば、0と1の間の絶対値又は相対値、或いは清掃動作モードにおいて原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の許容可能な残留分の尺度であるパーセンテージであり得る。これは、例えば、体積分率、重量分率、又は量分率などであり得る。残留分適合性は、2つの原料間の残留適合性がゼロになることもあり、すなわち、特定の別の第1の原料に特定の第2の原料が続く場合に、清掃動作モードが場合によっては清掃のために十分でないということである。残留分適合性は非常に低いか、又は残留分適合性がゼロである場合、手動での徹底的な清掃が場合によっては絶対に必要である。
【0024】
本開示の第2の態様によれば、選択的に
-第1の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第1の原料粉末から少なくとも1つの第1のワークピース、及び
-第2の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第2の原料粉末から少なくとも1つの第2のワークピース
を製造するための設備を用いる生成層構築方法において、
設備が、第1の構築ジョブと第2の構築ジョブとの間で、清掃動作モードにおいて所定の清掃量の第2の原料粉末が設備の原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末の残留分を含む原料粉末混合物が原料粉末ガイドのセクションから排出されることによって清掃されることを特徴とする生成層構築方法が提供される。
【0025】
任意的に、原料粉末ガイドのセクションがプロセスチャンバを通過し、原料動作モードにおいて前記清掃量の第2の原料粉末が粉末床として層単位でプロセスチャンバに供給され、清掃動作モードにおいて粉末床を選択的に溶融することなく、原料粉末混合物がプロセスチャンバから排出され得る。
【0026】
任意的に、清掃運転モードにおいて、ワークピース空間の底板を規定の位置に保持することができる。
【0027】
任意的に、第2の原料粉末の清掃量を第2の構築ジョブに必要な第2の原料粉末の量の最大30%、好ましくは最大10%とすることができる。
【0028】
任意的に、第2の原料粉末の清掃量を設備に定められた絶対最小清掃量、例えば5リットルとすることができる。
【0029】
任意的に、清掃動作モードにおいて排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分の上限を予め定めることができる。
【0030】
任意的に、清掃動作モードにおいて、原料粉末ガイドのセクションから排出される原料粉末混合物を原料粉末ガイドのセクションに1回又は数回再供給することができる。
【0031】
任意的に、清掃動作モードにおいて排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分を検知することができる。
【0032】
任意的に、清掃動作モードにおいて、プロセスチャンバから排出される原料粉末混合物を、原料粉末ガイドのセクションに何度も、又は清掃動作モードにおいて排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給することができる。
【0033】
任意的に、清掃動作モードにおいて排出される原料粉末混合物中の第1の原料粉末の残留分が予め定められた上限を超える場合、第2の原料粉末の清掃量を増加させることができる。
【0034】
任意的に、第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末としての異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性の尺度を、予め定義され保存された割り当てマトリックスから呼び出すことができる。
【0035】
本開示の第3の態様によれば、前述の方法を実行するための前述の設備のための制御プログラムが提供される。制御プログラムは、ソフトウェア及び/又はハードウェアとして設備においてインストール可能及び/又は実行可能であり得る。制御プログラムは、特に清掃動作モードのための制御命令を含む。制御プログラムを設備の既存の制御プログラムのアップデート版として、及び/又は追加モジュールとして設計することができる。すでに存在する設備を、設備のハードウェアを変更することなく、アップデート版及び/又は追加モジュールとしての制御プログラムのインストール及び/又は実行性だけで、本明細書に開示される本発明による清掃動作モードを備えた設備となるように修正される。
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1の構築ジョブの開始時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図2】第1の構築ジョブの終了時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図3】第1の構築ジョブ後の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図4】第2の構築ジョブ前の清掃動作モードにおける本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図5】清掃動作モードにおける本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図5】清掃動作モードにおける本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図6】第2の構築ジョブの開始時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図7】第1の構築ジョブの終了時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図8】割り当てマトリックスの例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1図7は、選択的レーザ溶融(レーザ粉末床溶融結合(LPBF))の形態の生成層構築方法を使用して3次元ワークピース25、33を製造するための設備1を示す。設備1は、ここでは非常に簡略化して示された、プロセスチャンバ3を通過する原料粉末ガイドを有している。設備1はまた、プロセスチャンバ3の下に配置されたワークピース空間5、5’を有する。更に、設備1は、中間貯蔵器11に供給する、新鮮な及び/又は処理された、すなわちリサイクルされた原料粉末9の補充容器7を有する。水平移動可能なコータ13により、原料粉末9からなる粉末床15をワークピース空間5上に載置することができる。コータ13の一部であってもよいドクターブレード又はスキージ(図示せず)は、粉末床の表面を平滑にならし、過剰な原料粉末9をプロセスチャンバ3から収集容器17に送る。原料粉末9は、主に重力によって下へ移送される。原料粉末ガイドは、対応する原料粉末と接触する設備のすべての部品を含む。
【0039】
ここでの設備1の原料粉末ガイドは、任意的にリサイクリングシステム19を有し、最終的に収集容器17に入る原料粉末9は、フィルタ要素及び処理要素21を介して再び補充容器7に供給される。リサイクリングシステム19は、原料粉末9がラインを通じて流体移送される負圧搬送システムを有することができる。しかしながら、リサイクリングシステム19は設備1の一部である必要はなく、収集容器17を手動で取り外して空にし、その中に含まれる原料粉末9を外部フィルタ設備及び処理設備で処理して新しい補充容器7を満たすことができる。そのために、補充容器7は手動で交換できるように接続されている。本明細書に開示される設備1の利点は、リサイクリングシステム19が組み込まれた比較的大型の設備1においてより顕著であるが、本発明による効果は、リサイクリングシステム19が組み込まれていない小型の設備1でも得られる。
【0040】
本発明によれば、設備1は、少なくとも2つの異なる原料粉末9、23、すなわち、図1~3に示される第1の原料粉末9と、図4図7に示される第2の原料粉末23を用いて動作することができる。図1は、第1の原料粉末9から第1のワークピース25(図2及び図3を参照)を製造するための第1の構築ジョブの開始時の設備1を示す。ワークピース空間5は、第1の構築ジョブのためにプロセスチャンバ3の底側の開口の下に位置決めされている可搬型ワークピース容器27によって形成される。図1に示されるように、ワークピース空間5の垂直方向に移動可能な底板28は、第1の構築ジョブの開始時には最上に配置され、それにより底板28がプロセスチャンバ3の底部と一直線に並び、プロセスチャンバ3の底側の開口を実質的に塞ぐ。次に、コータ13によって、底板29上に第1の原料粉末9の第1層が載置される。次いで、プロセスチャンバ3の天井側にあるレーザ光出力結合装置29を用いて、粉末床15が所望の箇所で選択的に溶融されるように、レーザビーム31が粉末床15上を誘導される。レーザ溶融が終了するとすぐに、床板28がワークピース容器27内に1層の厚さ分だけ下へ移動し、コータ13によって新しい層が載置され、その後再びレーザビーム31を用いて選択的に溶融される。コータ13は各層の後に中間貯蔵器11から新たに補充され、中間貯蔵器11は補充容器7から充填される。粉末床15として真っ直ぐな層を生成できるようにするために、コータ13は常に過剰な原料9を載置し、それに続いて粉末床15を平滑にならし、過剰分はプロセスチャンバ3から収集容器17に移送される。
【0041】
図2は、第1のワークピース25が完成したばかりの第1の構築ジョブの終了時の状況を示す。第1の構築ジョブ後、設備の原料粉末ガイドは、厳密には第1の原料粉末9と接触した設備1のすべての部分にわたって、第1の原料粉末9で汚染されていることがすでに認識される。次の構築ジョブのために、ワークピース容器27が搬出され、新しいワークピース容器27’と交換され、新しいワークピース容器は、新たな構築ジョブを開始するためにプロセスチャンバ3の下に位置決めされていることが図3に示される。第1のワークピース25を有するワークピース容器27は、取り出すために取出しステーション(ここでは図示せず)に移送される。図3には、設備1が、依然として第1の原料粉末9で汚染されている原料粉末ガイドの多くの部品を有することが示される。サービス開口(図示せず)を通じて通常はアクセス可能なプロセスチャンバ3は、比較的簡単かつ迅速に手動で吸引可能及び/又は清掃可能である。プロセスチャンバ3は、任意的に、自動吸引によって事前清掃、事後清掃、又は中間清掃することもできる。更に、第1の原料粉末9をできるだけ一種だけ(sortenrein)除去するために、第1の構築ジョブの後に設備1の原料粉末ガイドをできるだけ空の状態で搬送することが有意義である。しかしながら、例えばリサイクリングシステム19、補充容器7、中間貯蔵器11、コータ13などの設備の原料粉末ガイドの特定のセクションと収集容器17は、多大な手間と部品の取外しなしには手動で清掃できない。それに続く構築ジョブが同じ原料粉末9を用いて行われる場合には、場合によっては清掃の必要がない。しかし、その場合でも、例えば、第1の原料粉末9の塊や焼結残留物を除去するために清掃モードは有意義であり得る。少なくともそれに続く構築ジョブのための別の第2の原料粉末23が同一の原料粉末ガイドにおいて使用される場合、第1の原料粉末9によって汚染された設備の原料粉末ガイドのセクションを第2の構築ジョブの前に清掃する必要があるかもしれない。
【0042】
本発明によれば、設備の原料粉末ガイドの汚染されたセクションのこの清掃は、部品取外しを含めた手間のかかる手動の徹底的清掃を回避するために、図4に示された自動清掃動作モードでわれる。このために、補充容器7が所定の清掃量の第2原料粉末23で満たされ、設備1が「電力なしの」ダミー構築ジョブ又は「0ワット構築ジョブ」で動作する。これは、前記清掃量の第2の原料粉末23が通常の構築ジョブでのように設備1を通して移送されるが、レーザ光出力結合装置29が動作せず、底板28が下降されないことを意味する。殊に、清掃動作モードは、通常の構築ジョブと同様に、不活性雰囲気下で、環境に対して閉鎖された原料粉末ガイドにおいて行われる。
【0043】
レーザ溶融の工程なしで、コータ13によって個々の層を比較的迅速に次々載置することができる。しかし、底板28は層の載置と載置の間で下降しないので、各載置後、載置された層全体がすべて再び収集容器17に送られる。すなわち、設備1の原料粉末ガイドを通る前記清掃量の第2の原料粉末23の通過は、清掃動作モードでは通常の構築ジョブよりもはるかに迅速になり得る。
【0044】
殊に、前記清掃量の第2の原料粉末23は、設備1の原料粉末ガイドの清掃されるべきセクションを数回通過する。前記清掃量の第2の原料粉末23の通過時に、設備1の原料粉末ガイドの汚染物も第1の原料粉末9と共に運び去られる。したがって、収集容器17には、第2の原料粉末23中の第1の材料粉末9の所定の残留分が蓄積され、それにより原料粉末混合物9、23が形成される。使用される清掃量と、設備1の原料粉末ガイドを通過する回数とによって決定される第2の原料粉末23の所定の流量の後、収集容器17における原料粉末混合物9、23中の第1の原料粉末9の残留分が安定する。その場合、清掃動作モードにおける清掃移動を終了することができ、図5に示されるように、設備1の原料粉末ガイドを収集容器17内にあけて空にすることができる。
【0045】
その場合、収集容器17は、原料粉末9の残留分を含む第2の原料粉末23からなる原料粉末混合物9、23を有する。設備1は、大部分が第2の原料粉末23によって汚染され、第1の原料粉末9による汚染の残留分はわずかにすぎない。この残留分は、第1の原料粉末9の残留分による残存汚染が許容できるかどうかを判定するために、別個の実験室又は設備1に組み込まれた分析ユニット(図示せず)でこの残留分を検知することができる。第2の原料粉末23と第1の原料9の残留分とからなる原料粉末混合物9、23を含む収集容器17を廃棄して、新たな収集容器17’を使用することができる。設備1の原料粉末ガイドは、殊に、清掃動作モードの終わりにもできる限り空の状態で搬送される。任意的に、清掃動作モードの後に、プロセスチャンバ3を手動で、又は自動吸引によって清掃することができる。安全上の理由から、清掃動作モードは、原料粉末ガイドが閉じている場合、特にプロセスチャンバのドアが閉じている場合にのみ清掃動作モードを保護雰囲気下で操作できるように、或いは原料粉末ガイドの開放、特にプロセスチャンバのドアの開放が清掃動作モード中は不可能であるように構成することができる。
【0046】
図6は、図4の清掃動作モードですでに使用された第2の原料粉末23から第2のワークピース33(図7参照)を製造するための第2の構築ジョブの開始を示す。ここでは、第1の原料粉末9の残留分による汚染は許容限度を下回る。図7は、第2の構築ジョブの終わり近くの結果を示す。
【0047】
図8において、設備1又は外部サーバー又はクラウドに保存され、及び/又はそこから呼び出すことができる割り当てマトリックス35が例示的に示される。図示の例示的実施形態では、割り当てマトリックス35は6つの原料グループを有し、そのそれぞれを第1の原料粉末9又は第2の原料粉末23として使用することができる。100%の残留分適合性は、構築ジョブ間で清掃する必要がないことを意味する。残留分適合性0は、設備1の個々の部品を取り外して徹底的に手動で清掃することによってのみ十分な清掃が可能であるため、清掃動作モードの使用が許されないことを意味する。割り当てマトリックス35は、対称であることが好ましいが、そうである必要はない。割り当てマトリックス35は、原料グループの代わりに、正確に定義された原料粉末を含んでもよい。例えば、グループは次の原料、すなわちAlSi10Mg、AlSiMg0.6及びAlSiCuのアルミニウム系原料粉末のAlグループ、Ti6Al4V ELI(グレード23)、TA15、Ti(グレード2)のチタン系原料粉末のTiグループ、CuNi2SiCr、CuSn10、CuCr1Zrの銅系原料粉末のCuグループ、316L(1.4404)、15-5PH(1.4545)、17-4PH(1.4542)、1.2709、H13(1.2344)の鉄系原料粉末のFeグループ、HX、IN625、IN718、IN939のニッケル系原料粉末のNiグループ、並びにCoCR28Mo6、SLM(登録商標) MediDentのコバルト系原料粉末のCoグループを含むことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 設備
3 プロセスチャンバ
5、5’ ワークピース空間
7 補充容器
9 第1の原料粉末
11 中間貯蔵器
13 コータ
15 粉末床
17、17’ 収集容器
19 リサイクリングシステム
21 フィルタ要素及び処理要素
23 第2の原料粉末
25 第1のワークピース
27、27’ ワークピース容器
28、28’ 床板
29 レーザ光出力結合装置
31 レーザビーム
33 第2のワークピース
35 割り当てマトリックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的に
生成層構築方法を用いる第1の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第1の原料粉末(9)から少なくとも1つの第1のワークピース(25)、及び
生成層構築方法を用いる第2の構築ジョブにおいて、少なくとも1つの第2の原料粉末(23)から少なくとも1つの第2のワークピース(33)
を製造するための設備(1)であって、
前記構築ジョブ中に前記第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)を案内するための少なくとも1つの原料粉末ガイドを有する、前記設備(1)において、
前記設備(1)が清掃動作モードを有し、前記清掃動作モードにおいて、前記第1の構築ジョブと前記第2の構築ジョブとの間に所定の清掃量の第2の原料粉末(23)が前記原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末(9)の残留分を含む原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出されることを特徴とする、設備。
【請求項2】
前記原料粉末ガイドの前記セクションがプロセスチャンバ(3)を通過し、前記清掃動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末(23)が粉末床(15)として層単位で前記プロセスチャンバ(3)に供給され、前記清掃動作モードにおいて前記粉末床(15)を選択的に溶融することなく、前記原料粉末混合物(9、23)が前記プロセスチャンバ(3)から排出される、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項3】
前記設備(1)は、前記清掃動作モードにおいて、ワークピース空間(5、5’)の底板(28、28’)を規定の位置に保持するように設定されている、請求項1又は2に記載の設備(1)。
【請求項4】
前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量は、前記設備(1)に定められた絶対最小清掃量である、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項5】
前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される原料粉末混合物(9、23)中の第1の原料粉末(9)の残留分の上限が予め定められている、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項6】
前記設備(1)は、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)を、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションに1回又は数回再供給するように設定されている、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項7】
分析ユニットを更に備え、前記分析ユニットは、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分を検知するように設定されている、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項8】
前記設備は、前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)を前記原料粉末ガイドの前記セクションに何度も、又は前記清掃動作モードにおいて前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給するように設定されている、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項9】
前記設備(1)は、前記清掃動作モードにおいて前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が、予め定められた上限を超える場合、前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量を増加させるように設定されている、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項10】
前記設備は、それぞれ第1の原料粉末及び第2の原料粉末(9、23)として予め選定された異なる原料(9、23)を用いて動作可能であり、第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)としての前記異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性の尺度が予め定義された割り当てマトリックス(35)に保存されている、及び/又は呼び出し可能である、請求項1に記載の設備(1)。
【請求項11】
選択的に
第1の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第1の原料粉末(9)から少なくとも1つの第1のワークピース(25)、及び
第2の構築ジョブにおいて少なくとも1つの第2の原料粉末(23)から少なくとも1つの第2のワークピース(33)
を製造するための設備(1)を用いる生成層構築方法において、
前記設備(1)が、前記第1の構築ジョブと前記第2の構築ジョブとの間で、清掃動作モードにおいて所定の清掃量の第2の原料粉末(23)が前記設備(1)の原料粉末ガイドの少なくとも一セクションを通過し、第1の原料粉末(9)の残留分を含む原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出されることによって清掃されることを特徴とする、生成層構築方法。
【請求項12】
前記原料粉末ガイドの前記セクションがプロセスチャンバ(3)を通過し、前記原料動作モードにおいて、前記清掃量の第2の原料粉末(23)が粉末床(15)として層単位で前記プロセスチャンバ(3)に供給され、前記清掃動作モードにおいて前記粉末床(15)を選択的に溶融することなく、前記原料粉末混合物(9、23)が前記プロセスチャンバ(3)から排出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記清掃運転モードにおいて、ワークピース空間(5、5’)の底板(28、28’)が規定の位置に保持される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量は、前記設備(1)に定められた絶対最小清掃量である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分の上限が予め定められる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションに1回又は数回再供給される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が検知される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記清掃動作モードにおいて、前記原料粉末ガイドの前記セクションから排出される前記原料粉末混合物(9、23)が前記原料粉末ガイドの前記セクションに何度も、又は前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を下回るまで再供給される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記清掃動作モードにおいて排出される前記原料粉末混合物(9、23)中の前記第1の原料粉末(9)の残留分が予め定められた上限を超える場合、前記第2の原料粉末(23)の前記清掃量が増加される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
第1の原料粉末及び/又は第2の原料粉末(9、23)としての前記異なる原料のうちのそれぞれ2つの間の残留分適合性の尺度が、予め定義され保存された割り当てマトリックス(35)から呼び出される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
請求項11に記載の方法を実行するための請求項1に記載の設備(1)のための制御プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
図1】第1の構築ジョブの開始時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図2】第1の構築ジョブの終了時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図3】第1の構築ジョブ後の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図4】第2の構築ジョブ前の清掃動作モードにおける本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図5】清掃動作モードにおける本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である
図6】第2の構築ジョブの開始時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図7】第1の構築ジョブの終了時の本明細書に開示される設備の例示的実施形態の概略図である。
図8】割り当てマトリックスの例示的実施形態の概略図である。
【国際調査報告】