(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチ及びその調製方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20241210BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241210BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20241210BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241210BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20241210BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61K8/02
A61K8/362
A61K8/49
A61K8/46
A61Q19/00
A61M37/00 505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527472
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2023098758
(87)【国際公開番号】W WO2023236973
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】202210645460.4
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513065550
【氏名又は名称】中国科学院理化技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】521085113
【氏名又は名称】中科微針(北京)科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高 雲華
(72)【発明者】
【氏名】▲けい▼ 夢真
【テーマコード(参考)】
4C083
4C267
【Fターム(参考)】
4C083AC292
4C083AC772
4C083AC852
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE14
4C267AA72
4C267FF10
(57)【要約】
本発明は三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチを開示し、前記マイクロニードルパッチはマイクロニードルを含み、前記マイクロニードルの原料にはポリビニルアルコール及びアクリル樹脂水分散体が含まれ、前記アクリル樹脂水分散体にポリビニルアルコールを均一に混合して成形して前記マイクロニードルを得る。当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチは比較的高い強度を有し、また優れた膨潤性能と穿刺性能を兼ね備える。本発明はさらに当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製方法及び応用を開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチであって、前記マイクロニードルパッチはマイクロニードルを含み、
前記マイクロニードルの原料にはポリビニルアルコール及びアクリル樹脂水分散体が含まれ、
前記アクリル樹脂水分散体にポリビニルアルコールを均一に混合して成形して前記マイクロニードルを得、
ここで、前記マイクロニードルパッチにおいて、前記アクリレート樹脂水分散体は骨格構造としてポリビニルアルコールで形成されたゲルを囲む、ことを特徴とする三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールは高アルコール分解度ポリビニルアルコールである、ことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールのアルコール分解度は98%以上である、ことを特徴とする請求項2に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記アクリル樹脂水分散体系はアクリル樹脂、乳化剤、防腐剤、アルカリ化剤、有機溶剤及び精製水のうちの1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記アクリル樹脂はアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸トリメチルアミンエチルクロリド、アクリル酸メチル、メタクリル酸から選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記乳化剤はステアリルアルコールポリエーテル-2、ノニルフェノールエトキシレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート-80から選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
前記防腐剤はソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、メチルパラベンから選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
前記アルカリ化剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、エタノールアミンから選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
前記有機溶剤はエタノール、ブタンジオールから選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項4に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
前記アクリル樹脂水分散体において、アクリル樹脂は、モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体、モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体、モル比が1:2:0.1のアクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸塩化トリメチルアミノエチル共重合体、モル比が1:2:0.2のアクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸塩化トリメチルアミノエチル共重合体、モル比が1:1のメタクリル酸とアクリル酸エチル共重合体から選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項11】
前記マイクロニードルにはさらにポロゲンが含まれ、前記ポロゲンはアクリル樹脂水分散体及び/又はポリビニルアルコール内に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項12】
前記マイクロニードルにおけるポロゲンの質量百分含有量は0.1~10wt%である、ことを特徴とする請求項11に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項13】
前記ポロゲンはポリビニルピロリドン、リン酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トレハロース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ガラクトース、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛から選択される1種又は数種の混合である、ことを特徴とする請求項11に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチ。
【請求項14】
ポリビニルアルコールの水溶液を調製するステップと、
当該ポリビニルアルコールの水溶液を高温で溶解した後、アクリル樹脂水分散体を加え、均一に混合し、混合水溶液を得て、気泡を除去し、成形し、架橋して前記ハイドロゲルマイクロニードルパッチを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製方法。
【請求項15】
前記架橋は赤外光照射架橋、物理凍結融解架橋、化学剤架橋、アニール処理架橋、マイクロ波補助架橋、放射線架橋から選択される1種である、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
前記赤外照射架橋の赤外光波長は1000~5000nmである、ことを特徴とする請求項15に記載の調製方法。
【請求項17】
前記混合水溶液において、ポリビニルアルコールの質量百分含有量は5~50wt%である、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項18】
前記混合水溶液において、アクリル樹脂水分散体の質量百分含有量は0.1~10wt%である、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮投与技術分野に関する。より具体的には、三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチ及びその調製方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルマイクロニードルとは体液環境において、間質皮膚液を吸収することによって針体膨張を実現し、薬物放出を促進するが、基質自体が溶解せず且つ薬物放出が完了した後に完全に取り出されることができるマイクロニードル技術であり、ハイドロゲルネットワークの架橋強度を調整することによって薬物放出の制御可能を実現することができ、使用後に基質や補助材料の体内残留がなく、生体安全性がより高い等の利点を有する。2010年から初めて報告され、ハイドロゲルマイクロニードルは皮膚に作用した後に組織液の膨張を迅速に吸収することができ、且つ皮膚マイクロチャネルの開放状態を長時間維持することができるため、その応用分野をより広くする。1)ハイドロゲルマイクロニードルは単結晶シリコン中実マイクロニードルを代替することができ、経皮浸透促進装置とし、2)ハイドロゲルマイクロニードルは従来の薬物担持経皮製剤と組み合わせて使用することができ、水剤、乳剤、貼付剤、ゲル剤等の従来の皮膚製剤の有効な経皮薬物送達効率を向上させ、3)ハイドロゲルマイクロニードルは薬物担体とすることができ、活性成分を直接搭載し、薬物担持量が大きく、及び体系内部の架橋度を制御することにより薬物放出速度の制御可能を実現するという特徴を有し、4)ハイドロゲルマイクロニードルは間質液における生体分子の迅速な検出及び抽出に用いることができ、顕著な効率及びコストのメリットを有する。金属、単結晶シリコンの固体マイクロニードルに比べ、ハイドロゲルマイクロニードルはより良好な材料靭性を有し、使用中に針先が皮内で破断し、残留するリスクを心配する必要がなく、溶解マイクロニードルに比べ、ハイドロゲルマイクロニードルは体液環境で溶解せず、分解せず、長期使用による高分子ポリマー体内蓄積の問題を心配する必要がなく、その使用をより便利で、安全で、確実にさせる。
【0003】
従来報告されたハイドロゲルマイクロニードルは多く高分子鎖間の水素結合作用又はエステル形成反応を利用して得られた架橋マイクロニードルである。上海交通大学の金拓課題グループは-20℃で冷凍し、4℃で解凍する繰り返し凍結融解プロセスによってポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルマイクロニードルを調製し、生体高分子薬物への効果的な送達を実現することができるが、当該マイクロニードルの調製は繰り返し凍結融解循環の架橋プロセスを必要とし、時間が長く、プロセスが煩雑であり、産業化調製に適せず、イギリス女王大学のDonnelly課題グループはポリメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(PMVE/MA)とポリエチレングリコール(PEG)が80℃の高温又はマイクロ波条件で架橋してエステルを形成するプロセスの研究に取り組み、膨潤率が1600%に達するスーパーハイドロゲルマイクロニードルを調製し、異なる分子量薬物の経皮送達を実現することができるが、マイクロニードルのエステル形成架橋過程は80℃の条件で24h反応し又はマイクロ波環境で8h架橋しなければならず、マイクロニードルの調製効率が低く、量産化に不利であり、また、高温の調製条件は薬物安定性の破壊を引き起こしやすく、その薬物適用範囲を制限させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチを提供することであり、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチはアクリル樹脂水分散体の骨格構造を利用して凝集力が比較的低いポリビニルアルコールゲルを囲み、またポリビニルアルコールは機械的強度がないアクリル樹脂水分散体に一定の力学的強度を付与し、優れた膨潤性能と穿刺性能を同時に兼ね備えるハイドロゲルマイクロニードルパッチを調製する。
【0005】
本発明の第2の目的は三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製方法を提供することであり、当該方法は自然乾燥針付け条件でハイドロゲルマイクロニードルを調製することができ、従来技術における架橋条件に対する制限を克服し、マイクロニードルの調製プロセスが簡単で、操作しやすく、針付け速度が速い等の利点を有する。
【0006】
本発明の第3の目的は、三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチの応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用し、
三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチであって、前記マイクロニードルパッチはマイクロニードルを含み、
前記マイクロニードルの原料にはポリビニルアルコール及びアクリル樹脂水分散体が含まれ、
前記アクリル樹脂水分散体にポリビニルアルコールを均一に混合して成形して前記マイクロニードルを得る。
【0008】
さらに、前記マイクロニードルパッチにおいて、アクリレート樹脂水分散体は骨格構造としてポリビニルアルコールで形成されたゲルを囲む。
【0009】
さらに、前記ポリビニルアルコールとアクリル樹脂水分散体の質量比は5~50:0.1~10である。
【0010】
さらに、理解されるように、当該マイクロニードルの構造は針先とベースを含み、針先とベースは一体成形されてもよく、別々に成形されてもよい。
【0011】
さらに、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチにはさらにバッキングが含まれる。バッキングは、ベースと組み合わされる。
【0012】
さらに、前記ハイドロゲルマイクロニードルパッチには、さらに実際の必要に応じて機能性添加剤、活性物質等を添加することができる。例示的には、ハイドロゲルマイクロニードルパッチにおいて、バッキングは中空の水性接着剤パッチであり、マイクロニードルを皮膚に固定する役割を果たし、活性物質は中間の空洞に添加することができ、すなわち活性物質は直接マイクロニードル基底に接触し、もう1つは、粘着性スポンジバックを用い、バッキング自体が良好な粘着性を有すると共に、薬物担持性を兼ね備え、活性物質を担持するものである。
【0013】
さらに、前記ポリビニルアルコールは高アルコール分解度ポリビニルアルコールである。さらに、前記ポリビニルアルコールのアルコール分解度は98%以上である。
【0014】
アクリル樹脂水分散体は水を分散媒とし、アクリル樹脂が100~1000nmの固体又は半固体球型又は類球型粒子で水に分散して構成される水性システムであり、生物媒体において限定的に膨潤し、緻密な三次元骨格構造を形成する。高アルコール分解度、高分子量のポリビニルアルコールは膨潤性ハイドロゲル材料であり、マイクロニードル溶液をニードルに乾燥する過程において、ポリビニルアルコール分子内、間に水素結合作用力を形成し、水に遭遇した後、一部のポリビニルアルコールは水分子と水素結合を形成し、ポリビニルアルコール分子内部の水素結合作用を弱め、マイクロニードルの凝集力を低下させ、水中に膨潤した後にマイクロニードルがゲル化し、完全に皮から取り出すことができない。以上の2種類の材料の性質に基づき、本発明は両者を均一に混合し、アクリル樹脂水分散体の骨格構造を利用して凝集力が比較的低いポリビニルアルコールゲルを囲み、またポリビニルアルコールは機械的強度がないアクリル樹脂水分散体に一定の力学的強度を付与し、優れた膨潤性能と穿刺性能を同時に兼ね備えるハイドロゲルマイクロニードル製剤を調製する。
【0015】
さらに、前記アクリル樹脂水分散体系はアクリル樹脂、乳化剤、防腐剤、アルカリ化剤、有機溶剤及び精製水のうちの1種又は数種の混合である。
【0016】
さらに、前記アクリル樹脂はアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸トリメチルアミンエチルクロリド、アクリル酸メチル、メタクリル酸から選択される1種又は数種の混合である。
【0017】
さらに、前記乳化剤はステアリルアルコールポリエーテル-2、ノニルフェノールエトキシレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80から選択される1種又は数種の混合である。
【0018】
さらに、前記防腐剤はソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、メチルパラベンから選択される1種又は数種の混合である。
【0019】
さらに、前記アルカリ化剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、エタノールアミンから選択される1種又は数種の混合である。
【0020】
さらに、前記有機溶剤はエタノール、ブタンジオールから選択される1種又は数種の混合である。
【0021】
さらに、前記アクリル樹脂水分散体において、アクリル樹脂は、モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体、モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体、モル比が1:2:0.1のアクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸塩化トリメチルアミノエチル共重合体、モル比が1:2:0.2のアクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸塩化トリメチルアミノエチル共重合体、モル比が1:1のメタクリル酸とアクリル酸エチル共重合体から選択される1種又は数種の混合である。
【0022】
さらに、前記マイクロニードルにはさらにポロゲンが含まれる。
【0023】
さらに、前記ポロゲンはアクリル樹脂水分散体及び/又はポリビニルアルコール内に位置する。
【0024】
さらに、前記マイクロニードルにおけるポロゲンの質量百分含有量は0.1~10wt%である。
【0025】
さらに、前記ポロゲンはポリビニルピロリドン、リン酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トレハロース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ガラクトース、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛から選択される1種又は数種の混合である。
【0026】
ポロゲンは三次元骨格に溶出可能な小分子物質であり、このようにマイクロニードル内部のネットワーク隙間を拡大することに有利であり、より大きな薬物送達空間を形成し、タンパク質などのような大分子量の薬物に対し、より大きなチャネルは薬物の高速輸送に有利である。PVA架橋程度を制御することにより三次元ネットワークの疎密程度を制御して薬物送達速度の制御を実現する一方で、ポロゲンの使用を制御することにより異なる性質の薬物送達の制御を実現する。また、赤外架橋過程では、PVA架橋の程度が大きくなると、マイクロニードルのエッジにめくれが生じる場合があり、ポリビニルピロリドンを添加すると、ポロゲンとして機能するだけでなく、マイクロニードルの平坦性を改善することができる。
【0027】
上記第2の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用し、
三次元骨格構造に基づくハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製方法であって、
ポリビニルアルコールの水溶液を調製するステップと、
当該ポリビニルアルコールの水溶液を高温で溶解した後、アクリル樹脂水分散体を加え、均一に混合し、混合水溶液を得て、気泡を除去し、成形し、架橋して前記ハイドロゲルマイクロニードルパッチを得るステップと、を含む。
【0028】
さらに、前記架橋プロセスは赤外照射架橋、物理凍結融解架橋、化学剤架橋、アニール処理架橋、マイクロ波補助架橋、放射線架橋から選択される1種である。
【0029】
さらに、前記赤外照射架橋において、赤外照射光波長は1000~5000nmである。
【0030】
さらに、前記混合水溶液において、ポリビニルアルコールの質量百分含有量は5~50wt%である。
【0031】
さらに、前記混合水溶液において、アクリル樹脂水分散体の質量百分含有量は0.1~10wt%である。
【0032】
上記第3の目的を達成するために、本発明はさらに上記のようなハイドロゲルマイクロニードルパッチの活物質に対する経皮送達における応用を保護する。
【0033】
さらに、前記経皮送達の方式は、経皮浸透促進装置とすること、薬物担持パッチと組み合わせること又は薬物の1種を直接搭載することを含む。
【0034】
本発明はさらに上記ハイドロゲルマイクロニードルパッチが皮膚間質液における生体分子の抽出における応用を保護する。
【0035】
さらに、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチは皮膚穿孔作用を発揮することができ、経皮浸透促進装置として機能し、活性成分の経皮浸透を促進する。具体的な使用方法は従来の金属、単結晶シリコンの固体マイクロニードルの使用方法を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0036】
さらに、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチは活性成分を担持する溶液、エマルジョン、クリーム、ゲル、貼付剤と組み合わせて使用することができる。具体的な使用方法は従来のハイドロゲルマイクロニードルパッチの使用方法を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0037】
さらに、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチは活性成分を直接搭載することができ、皮内投与を実現する。
【0038】
さらに、当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチは組織液を吸収することができ、それにより皮膚間質液における生体分子の抽出を実現する。
【0039】
さらに、前記活性物質は小分子化薬、漢方薬抽出物、ポリペプチド、タンパク質、ワクチンから選択される1種又は数種である。
【発明の効果】
【0040】
本発明により提供されるハイドロゲルマイクロニードルパッチにおいて、アクリル樹脂水分散体の骨格構造を利用して凝集力が比較的低いポリビニルアルコールゲルを囲み、またポリビニルアルコールは機械的強度がないアクリル樹脂水分散体に一定の強度を付与し、優れた膨潤性能と穿刺性能を同時に兼ね備えるハイドロゲルマイクロニードル製剤を調製する。本発明の調製方法において、当該特定のアクリル樹脂水分散体とポリビニルアルコールを選択するため、新たな架橋方式を採用することが可能になり、また自然乾燥針付け条件でハイドロゲルマイクロニードルを調製することができ、マイクロニードル調製プロセスが簡単で、操作しやすく、針付け速度が速い等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下図面を参照して本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。
【
図1】本発明のハイドロゲルマイクロニードルパッチの4つの応用形態の概略図を示す。
【
図2】aは、本発明のハイドロゲルマイクロニードルパッチの構造概略図を示し、bは、その体液吸収膨潤後の構造及び内部構造概略図を示す。
【
図3】本発明の実施例1のハイドロゲルマイクロニードルパッチの実体顕微鏡下トポグラフィー図を示す。
【
図4】本発明の実施例1のハイドロゲルマイクロニードルパッチの皮膚穿刺性図を示す。
【
図5】本発明の実施例2のハイドロゲルマイクロニードルパッチの膨潤前(左)、後(右)のトポグラフィー比較図を示す。
【
図6】本発明の実施例20のアゼライン酸とマトリン水溶液のハイドロゲルマイクロニードルの穿孔後の皮膚表面の累積経皮透過率を示す。
【
図7】本発明の実施例21のアゼライン酸とマトリン水溶液とハイドロゲルマイクロニードルパッチの組み合わせを皮膚表面で使用した後の累積経皮透過率を示す。
【
図8】本発明の実施例22で市販されている15%のアゼライン酸ゲルとハイドロゲルマイクロニードルパッチの組み合わせを皮膚表面で使用した後の累積経皮透過量を示す。
【
図9】本発明の実施例23におけるアゼライン酸とマトリンを直接搭載したハイドロゲルマイクロニードルパッチを皮膚に作用させた後の累積経皮透過率を示す。
【
図10】本発明の実施例24のハイドロゲルマイクロニードルがニキビに罹患したボランティアの皮膚から抽出したニキビプロピオン酸菌を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明をより明確に説明するために、以下、好ましい実施例及び図面を合わせて本発明についてさらに説明する。図面において同様の構成要素は同じ参照符号で示されている。以下に具体的に記載される内容は、限定的ではなく例示的なものであり、それにより本発明の保護範囲が限定されるべきではないことが、当業者によって理解されるであろう。
【0043】
(実施例1)
ハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製及び穿刺効果
メスシリンダーを用いて17mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.2g(11wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、0.8g(4wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを乾燥して成膜した後、前記ハイドロゲルマイクロニードルのパッチを得た。当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチの構造概略図は
図2aに示すとおりであり、その体液吸収膨潤後の構造及び内部構造概略図は
図2bに示すとおりである。
【0044】
当該ハイドロゲルマイクロニードルパッチを実体顕微鏡に置いてマイクロニードルのトポグラフィーを観察し、且つインビトロで体外豚皮膚の穿刺試験によってマイクロニードルの皮膚穿刺性能をテストした。具体的な操作は以下のとおりであり、冷凍した体外豚皮膚(脱毛、皮膚厚さ600μm)を-20℃の冷蔵庫から取り出し、室温で自然解凍した後、メスを用いて1cm×1cmの領域を切り取り、濾紙を用いて皮膚角層側の水分を吸い取り、皮膚角層側が上になるようにシリカゲル金型の表面に敷いた。針送り装置(20N/cm2)を用いてマイクロニードルを皮膚20sに作用させ、マイクロニードルを剥がし、4mg/mLのトリパンブルー染料を用いて皮膚を30min染色した。染色が終了した後、綿棒を用いて皮膚表面の余分な染料を拭き取り、皮膚に完全なピンホールアレイが形成されることを観察し、結果を
図3、4に示し、調製されたハイドロゲルマイクロニードルは完全な針体トポグラフィーを有し、針先が鋭く、豊かで、良好な皮膚穿刺性を有する。
【0045】
(実施例2)
ポロゲン-トレハロースを含むハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて16.2mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに入れて高温で溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.4g(7wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、
金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを乾燥して成膜した後、pH=7.4のリン酸塩緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤し、取り出して観察し、膨潤前、後のマイクロニードルのトポグラフィー変化を比較し、結果を
図5に示し、結果としては、8h膨潤した後、マイクロニードルの吸水体積が顕著に増加することを示すが、針先等のミクロ構造は依然として良好であり、マイクロニードルは良好な膨潤性能を有することを示す。
【0046】
(実施例3~14)
他のタイプのポロゲンを含むハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
実施例2のマイクロニードルの調製方法に基づき、表1の異なるタイプのポロゲンを含有するハイドロゲルマイクロニードル処方を結合してマイクロニードル溶液を調製し、一連のハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。各処方のマイクロニードルをpH=7.4のリン酸塩緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤した後に針先完全性を保持するか否かを観察することにより、マイクロニードルが膨潤性能を備えるか否かを判断し、結果を表1に示し、各処方のハイドロゲルマイクロニードルはいずれも良好なインビトロ膨潤性を有することを示す。
【0047】
【0048】
(実施例15)
赤外架橋ハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて16.2mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.8g(14wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1g(5wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを乾燥して成膜した後、2400~3500nmの波長の赤外線ランプに置き、70℃で1分間照射して架橋を促進した。赤外架橋されていないマイクロニードル及び赤外架橋されたマイクロニードルを取り、それぞれ秤量した後にpH=7.4のリン酸緩衝液に入れ、37℃の条件で8h膨潤し、取り出し、濾紙を用いてマイクロニードル表面の水分を吸収し、再び秤量し、公式:膨潤率=(膨潤後マイクロニードル重量-膨潤前マイクロニードル重量)/膨潤前マイクロニードル重量*100%を用いて、赤外架橋によるマイクロニードル膨潤率への影響を算出し、結果を表2に示し、結果としては、赤外架橋群によるマイクロニードルの膨潤率が著しく低下し、赤外照射によりポリビニルアルコール分子間の凝集力をさらに向上させ、より多くの水素結合を形成し、それによりマイクロニードル膨潤率を低下させることを示す。既存のPVAと水分散体で形成されたネットワークに基づき、PVA自体は赤外光照射によってその自体架橋を実現できることを発見した。PVAは水分散体のネットワーク骨格内に制御され、膨潤した後に依然として完全な針状を有することを保証するが、実際にPVAのゲル性質により、少量のPVAが溶媒媒体に溶け込む可能性があり、PVAの溶出をさらに制御したい場合、PVA分子間の架橋をさらに強化することにより、より高い架橋度を実現することができる。
【0049】
【0050】
(実施例16)
凍結融解架橋されたハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて16.8mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール3g(15wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、0.2g(1wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを成形した後、金型を-20℃の冷蔵庫に置いて8h冷凍処理し、続いて4℃の冷蔵庫に置いて8h融解処理を行い、上記循環を2回行った後、架橋されたハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。凍結融解架橋されていないマイクロニードル及び凍結融解架橋されたマイクロニードルを取り、それぞれ秤量した後にpH=7.4のリン酸緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤し、取り出し、濾紙を用いてマイクロニードル表面の水分を吸収し、再び秤量し、公式:膨潤率=(膨潤後マイクロニードル重量-膨潤前マイクロニードル重量)/膨潤前マイクロニードル重量*100%を用いて、凍結融解架橋によるマイクロニードル膨潤率への影響を算出し、結果を表3に示し、結果としては、凍結融解架橋によるマイクロニードルの膨潤率が著しく低下し、凍結融解を繰り返すことによりポリビニルアルコール分子間の凝集力をさらに向上させ、より多くの水素結合を形成し、それによりマイクロニードル膨潤率を低下させることを示した。既存のPVAと水分散体で形成されたネットワークに基づき、PVA自体は繰り返し凍結融解処理によってその自体架橋を実現できることを発見した。PVAは水分散体のネットワーク骨格内に制御され、膨潤した後に依然として完全な針状を有することを保証するが、実際にPVAのゲル性質により、少量のPVAが溶媒媒体に溶け込む可能性があり、PVAの溶出をさらに制御したい場合、PVA分子間の架橋をさらに強化することにより、より高い架橋度を実現することができる。
【0051】
【0052】
(実施例17)
化学剤で架橋されたハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて16.2mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.2g(6wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、さらに架橋剤として0.2g(1wt%)のグルタルアルデヒドを加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルが成形された後、化学剤で架橋されたハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。架橋されていないマイクロニードル及び架橋されたマイクロニードルを取り、それぞれ秤量した後にpH=7.4のリン酸緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤し、取り出し、濾紙を用いてマイクロニードル表面の水分を吸収し、再び秤量し、公式:膨潤率=(膨潤後マイクロニードル重量-膨潤前マイクロニードル重量)/膨潤前マイクロニードル重量*100%を用いて、架橋剤架橋によるマイクロニードル膨潤率への影響を計算し、結果を表4に示し、結果としては、架橋群によるマイクロニードルの膨潤率が著しく低下し、化学架橋剤がポリビニルアルコールの水酸基と化学結合を形成することができ、体系架橋程度を向上させ、それによりマイクロニードル膨潤率を低下させることを示した。既存のPVAと水分散体で形成されたネットワークに基づき、PVA自体は化学架橋剤によってその自体架橋を実現できることを発見した。PVAは水分散体のネットワーク骨格内に制御され、膨潤した後に依然として完全な針状を有することを保証するが、実際にPVAのゲル性質により、少量のPVAが溶媒媒体に溶け込む可能性があり、PVAの溶出をさらに制御したい場合、PVA分子間の架橋をさらに強化することにより、より高い架橋度を実現することができる。
【0053】
【0054】
(実施例18)
マイクロ波架橋されたハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて15.9mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール4g(20wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、0.1g(0.5wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを乾燥して成膜した後、マイクロ波ボックスに置いて10分間マイクロ波処理して架橋を促進した。マイクロ波架橋されていないマイクロニードル及び架橋されたマイクロニードルを取り、それぞれ秤量した後にpH=7.4のリン酸緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤し、取り出し、濾紙を用いてマイクロニードル表面の水分を吸収し、再び秤量し、公式:膨潤率=(膨潤後マイクロニードル重量-膨潤前マイクロニードル重量)/膨潤前マイクロニードル重量*100%を用いて、マイクロ波架橋によるマイクロニードル膨潤率への影響を算出し、結果を表5に示し、結果としては、マイクロ波架橋群によるマイクロニードルの膨潤率が著しく低下し、マイクロ波架橋はポリビニルアルコール分子間の凝集力をさらに向上させ、より多くの水素結合を形成し、それによりマイクロニードル膨潤率を低下させることを示した。既存のPVAと水分散体で形成されたネットワークに基づき、PVA自体はマイクロ波処理によってその自体架橋を実現できることを発見した。PVAは水分散体のネットワーク骨格内に制御され、膨潤した後に依然として完全な針状を有することを保証するが、実際にPVAのゲル性質により、少量のPVAが溶媒媒体に溶け込む可能性があり、PVAの溶出をさらに制御したい場合、PVA分子間の架橋をさらに強化することにより、より高い架橋度を実現することができる。
【0055】
【0056】
(実施例19)
電子線照射架橋ハイドロゲルマイクロニードルパッチの調製
メスシリンダーを用いて15.2mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール3.2g(16wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.6g(8wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が1:1:1のメタクリル酸及びアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、マイクロニードルを乾燥して成膜した後、電子ビームで20分間放射処理して架橋を促進した。放射線架橋されていないマイクロニードル及び架橋されたマイクロニードルを取り、それぞれ秤量した後にpH=7.4のリン酸緩衝液に置き、37℃の条件で8h膨潤し、取り出し、濾紙を用いてマイクロニードル表面の水分を吸収し、再び秤量し、公式:膨潤率=(膨潤後マイクロニードル重量-膨潤前マイクロニードル重量)/膨潤前マイクロニードル重量*100%を用いて、放射線架橋によるマイクロニードル膨潤率への影響を算出し、結果を表6に示し、結果としては、放射線架橋群によるマイクロニードルの膨潤率が著しく低下し、放射線架橋はポリビニルアルコール分子鎖における第2の級炭素と第三級炭素がヒドロキシラジカルを形成し、放射線を除去した後、ラジカル間は二基カップリング反応を介して化学結合架橋を形成し、それによりマイクロニードル膨潤率を低下させることを示した。既存のPVAと水分散体で形成されたネットワークに基づき、PVA自体は電子線照射によってその自体架橋を実現できることを発見した。PVAは水分散体のネットワーク骨格内に制御され、膨潤した後に依然として完全な針状を有することを保証するが、実際にPVAのゲル性質により、少量のPVAが溶媒媒体に溶け込む可能性があり、PVAの溶出をさらに制御したい場合、PVA分子間の架橋をさらに強化することにより、より高い架橋度を実現することができる。
【0057】
【0058】
(実施例20)
ハイドロゲルマイクロニードルパッチを経皮浸透促進装置としての活性成分水溶液に対する経皮浸透性
メスシリンダーを用いて16.4mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.2g(6wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、乾燥した後にハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。アゼライン酸及びマトリンの質量含有量がそれぞれ1%及び1.3%である水溶液を活性成分溶液として調製した。ハイドロゲルマイクロニードルを体外豚皮膚角層側に貼付し、自製針送り装置(20N/cm2)を用いて20秒間押した後、マイクロニードルパッチを取り外し、皮膚を経皮カップに固定し、投与タンク側に活性成分水溶液100μLを加え、全自動経皮計により定時に自動サンプリングし、高速液体クロマトグラフを用いて受信タンクにおける薬物の含有量を分析し、薬物の累積経皮透過率を求め、結果を
図6に示し、結果としては、ハイドロゲルマイクロニードルパッチを用いて経皮浸透促進装置として使用した後、皮膚表面の投与マイクロチャネルを効果的に開くことができ、活性成分水溶液の経皮透過を促進した。連続10hのインビトロ経皮浸透試験において、アゼライン酸及びマトリンの累積送達率はそれぞれ14.90±3.77%及び12.30±2.95%であった。また、ブランク対照群を設定して同じ体積の活性成分溶液を未処理の完全な皮膚角層側に滴下し、同様に皮膚を経皮カップに固定してインビトロ経皮浸透性試験を行い、結果としては、ブランク対照群のアゼライン酸とマトリンが10h内にいずれも皮膚角層バリアを効果的に透過して受信プールに入ることができず、ハイドロゲルマイクロニードルパッチが皮膚ポロシティ作用を効果的に発揮することができ、活性成分水溶液の経皮送達を促進した。
【0059】
(実施例21)
ハイドロゲルマイクロニードルパッチと活性成分水溶液との組み合わせの経皮透過性
メスシリンダーを用いて16.4mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.2g(6wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、乾燥した後にハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。アゼライン酸及びマトリンの質量含有量がそれぞれ1%及び1.3%である水溶液を活性成分溶液として調製した。ハイドロゲルマイクロニードルを体外豚皮膚角層側に貼付し、自製針送り装置(20N/cm2)を用いて20秒間押した後、マイクロニードルを皮膚に突き刺し、マイクロニードルが貼付された皮膚を経皮カップに固定し、活性成分水溶液100μLを加え、全自動経皮計により定時に自動サンプリングし、高速液体クロマトグラフを用いて受信タンク中の薬物の含有量を分析し、薬物の累積経皮透過率を求め、結果を
図7に示し、結果としては、活性成分水溶液を配合したヒドロゲルマイクロニードルパッチを用いて使用する場合、薬物の効果的な透過を実現することができ、10h連続的に作用し、アゼライン酸及びマトリンの累積透過率はそれぞれ29.42±2.43%及び27.51±1.57%であり、経皮透過率が比較的悪い水溶性薬物は経皮送達分野において良好な透過効率を有する。
【0060】
(実施例22)
ハイドロゲルマイクロニードルパッチと活性成分ゲル剤との組み合わせの経皮透過性
メスシリンダーを用いて16.4mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、1.2g(6wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、乾燥した後にハイドロゲルマイクロニードルパッチを得た。ハイドロゲルマイクロニードルを体外豚皮膚角層側に貼付し、自製針送り装置(20N/cm2)を用いて20秒間押した後、マイクロニードルを皮膚に突き刺し、マイクロニードルを貼付した皮膚を経皮カップに固定し、投与タンク側に市販の15(wt)%のアゼライン酸ゲルを100μL加え、全自動経皮計により定時に自動サンプリングし、高速液体クロマトグラフを用いて受信タンク中の薬物の含有量を分析し、薬物の累積経皮透過率を求め、結果を
図8に示し、結果としては、市販のアゼライン酸ゲル製剤を、ハイドロゲルマイクロニードルパッチを用いて配合して使用する場合、薬物の効果的な透過を実現することができ、10h連続的に作用し、アゼライン酸の累積透過量は228μgに達し、市販製剤に対する良好な経皮浸透を実現することができる。
【0061】
(実施例23)
アゼライン酸とマトリンを直接搭載したハイドロゲルマイクロニードルパッチの経皮透過性
メスシリンダーを用いて15.58mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール2.4g(12wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、2g(10wt%)のポリビニルピロリドンを秤量してポリビニルアルコール溶液に加え、さらに0.02g(0.1wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、マイクロニードルマトリックス溶液を得た。1%質量含有量のアゼライン酸及び1.3%質量含有量のマトリン水溶液を調製し、2種類の活性成分が完全に溶解した後、活性成分溶液をマイクロニードル基質溶液と混合し、薬物担持マイクロニードル溶液を得て、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、乾燥した後にアゼライン酸及びマトリンを搭載するハイドロゲルマイクロニードルを得た。マイクロニードルを70℃の赤外線照射ランプに置いて2分間照射し、マイクロニードルの架橋を促進した後、マイクロニードルを体外豚皮膚角層側に貼付し、自製針送り装置(20N/cm2)を用いて20秒間押した後、マイクロニードルを皮膚に突き刺し、マイクロニードルが貼付された皮膚を経皮カップに固定し、全自動経皮計により定時に自動サンプリングし、高速液体クロマトグラフを用いて受信プール中の薬物の含有量を分析し、薬物の累積経皮透過率を求め、結果を
図9に示し、結果としては、10h連続貼付した後、アゼライン酸とマトリン塩基の累積経皮浸透率はいずれも50%以上に達することができ、且つ2種類の薬物は良好な同期放出を保持することができる。
【0062】
(実施例24)
ハイドロゲルマイクロニードルパッチは皮膚ニキビにおけるニキビプロピオン酸菌の抽出に用いられる
メスシリンダーを用いて16.4mLの超純水を量り取り、ポリビニルアルコール4g(20wt%)を加え、90℃のオーブンに置いて高温溶解し、ポリビニルアルコール水溶液を得て、0.4g(2wt%)のアクリル樹脂水分散体(モル比が2:1のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチル共重合体)を秤量してポリビニルアルコール水溶液に加え、均一に撹拌し、気泡を除去し、金型法を用いてマイクロニードルを調製し、乾燥した後にハイドロゲルマイクロニードルパッチを得て、且つハイドロゲルマイクロニードルパッチを紫外線ランプに置いて一晩照射滅菌した。アルコール綿棒を用いてニキビに罹患したボランティアの顔ニキビ領域に消毒処理を行い、続いて無菌ハイドロゲルマイクロニードルパッチを用いてニキビの皮膚に突き刺し、3分間貼付し続けた後、マイクロニードルパッチを取り外し、マイクロニードルを予め準備された無菌チオグリコール酸塩液体培地に入れ、同時に、皮膚に接触しない一枚のハイドロゲルマイクロニードルを取って空白対照とし、直接無菌チオグリコール酸塩液体培地に入れ、二部の培地溶液を37℃、嫌気環境に置いて72h培養し、取り出し、2つの培養瓶内の培地に細菌繁殖があるか否かを観察し、且つ各ボトル内の培地を少量取り、無菌のコロンビア寒天固体培地に滴下し、培地を37℃、嫌気環境に置いて72h培養し、取り出し、培養板におけるコロニーの成長状況を観察し、陽性対照--購入したニキビプロピオン酸菌菌株と比較し、皮膚からニキビ菌を抽出することに成功したか否かを判断し、結果を
図9に示した。結果としては、ハイドロゲルマイクロニードルは皮膚ニキビに作用した後、チオグリコール酸塩液体培地に明らかな混濁現象が発生し、細菌が成長することを示し、むしろ、皮膚に接触していないハイドロゲルマイクロニードル群の培地は清澄のままであり、細菌は存在しなかった。また、血液寒天培養皿に接種した後、皮膚ニキビに作用した後のハイドロゲルマイクロニードル群は寒天に白いコロニーが成長し、コロニー表面が滑らかであり、ニキビプロピオン酸菌の陽性対照群のコロニー形態と一致し、ハイドロゲルマイクロニードルパッチは皮膚ニキビにおけるニキビプロピオン酸菌の抽出に用いることができることを示した。
【0063】
本発明の上記実施例は、本発明を明確に説明するために例示するものに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではなく、当業者にとって、上記説明に加えて、他の異なる形態の変化又は変動を行ってもよく、ここで、全ての実施形態を網羅することはできず、本発明の技術的解決手段による明らかな変化又は変動は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【国際調査報告】