(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】気密接続アセンブリ
(51)【国際特許分類】
C03C 27/02 20060101AFI20241210BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241210BHJP
B23K 26/211 20140101ALI20241210BHJP
【FI】
C03C27/02 Z
B23K26/21 G
B23K26/211
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527708
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022081460
(87)【国際公開番号】W WO2023083957
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129411.8
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウルリヒ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アンティ マーテネン
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ホッペ
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン オット
【テーマコード(参考)】
4E168
4G061
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168BA14
4E168BA30
4E168BA31
4E168BA90
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA37
4E168DA46
4E168DA47
4G061AA10
4G061BA09
4G061BA12
4G061CC01
4G061CD02
4G061DA35
(57)【要約】
気密接続アセンブリであって、該気密接続アセンブリは、少なくとも一部の領域でおよび/または少なくとも部分的に少なくとも1つの波長範囲に対して透明に形成されている第1の基材と、金属箔であって、金属箔は、第1の基材の接触領域に隣接する接触領域5を有するように配置されているものとする、金属箔と、金属箔を第1の基材に接触領域上または接触領域内で直接かつ無媒介に接合するための少なくとも1つのレーザ接合線または複数の結合点とを備える、気密接続アセンブリが示される。レーザ接合線あるいは複数の結合点は、一方では第1の基材に、他方では金属箔に入り込んでおり、溶融により2つの接合パートナーを互いに直接的に接合している。ここで、金属箔は、可撓性を有するように準備されているため、第1の基材の接触領域の凹凸を平坦化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密接続アセンブリ(1)であって、前記気密接続アセンブリ(1)は、
少なくとも一部の領域でおよび/または少なくとも部分的に少なくとも1つの波長範囲に対して透明に形成されている第1の基材(4)と、
金属箔(3)であって、
前記金属箔は、前記第1の基材の接触領域(11)に隣接する接触領域(12)を有するように配置されているものとする、金属箔(3)と、
前記金属箔を前記第1の基材に前記接触領域上または前記接触領域内で直接かつ無媒介に接合するための少なくとも1つのレーザ接合線(6,6a,6b,6c)または複数の結合点であって、
前記レーザ接合線あるいは前記複数の結合点は、一方では前記第1の基材に、他方では前記金属箔に入り込んでおり、溶融により互いに直接的に接合しているものとする、レーザ接合線または複数の結合点と
を備え、
前記金属箔は、可撓性を有するように準備されているため、前記第1の基材の前記接触領域への前記金属箔の密着が可能である、気密接続アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記金属箔(3)が、前記第1の基材(4)の外周縁領域に沿って配置されており、かつ/または
前記金属箔(3)が、前記第1の基材(4)の前記接触領域(11)を部分的にまたは一部の領域のみ覆っており、かつ/または
前記金属箔(3)により、前記第1の基材(4)の前記接触領域(11)上に1つ以上の接触点が形成されている、請求項1記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記金属箔(3)が、前記レーザ接合線(6,6a,6b,6c)を含む接合領域において、接合工程プロセスによる前記レーザ接合線の導入後に、前記第1の基材(4)への付着ゆえに可撓性を有しておらず、かつ/または
前記金属箔(3)が、前記レーザ接合線(6,6a,6b,6c)を含む接合領域の外側で、前記レーザ接合線の導入後も可撓性を維持している、請求項1または2記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記レーザ接合線(6,6a,6b,6c)あるいは前記複数の結合点において、前記金属箔(3)の材料と前記第1の基材(4)の材料とが混ざり合った融合ゾーン(62,64)が存在し、かつ/または、
前記融合ゾーン(62,64)において、前記金属箔(3)の金属材料が前記第1の基材(4)に入り込んでおり、かつ/または
前記融合ゾーン(62,64)において、前記第1の基材(4)の材料が前記金属箔(3)に入り込んでいる、請求項1から3までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記融合ゾーン(62,64)が、接触面(15)に対して垂直な方向で測定される高さを有し、かつ
前記融合ゾーンが、好ましくは少なくとも1μm、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上の高さを有し、かつ/または
前記融合ゾーンが、前記第1の基材(4)に1μm以上入り込んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記金属箔(3)が、500μm以下、好ましくは250μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下の厚さを有し、かつ/または
前記金属箔(3)が、10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上の厚さを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記金属箔が前記第1の基材への押し付けによって永久変形することにより、前記金属箔(3)が前記第1の基材(4)の前記接触領域(11)の凹凸に密着している、請求項1から6までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記金属箔(3)が、前記接触領域(12)の反対側の下面に溶接リブ(32)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記気密接続アセンブリ(1)が、
金属部材(44)をさらに含み、前記金属部材は、分離ができないように前記金属箔(3)に接続、特に接合されており、かつ/または
プラスチック部材(44a)をさらに含み、前記プラスチック部材は、分離ができないように前記金属箔(3)に接続、特に接合されており、かつ/または
結晶部材(106)をさらに含み、前記結晶部材(106)は、分離ができないように前記金属箔(3)に接続、特に接合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記金属部材(44)、前記結晶部材(106)または前記プラスチック部材(44a)が、従来の接合プロセスによって、すなわち、熱および/または圧力を用いて、溶接充填材を用いるかまたは用いずに、特にアーク溶接のような溶融金属溶接によって前記金属箔(3)に材料接続されている、請求項9記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記金属箔(3)が、垂直部(3a)を有し、
前記レーザ接合線(6)において、水平面だけでなく垂直領域の一部のセクションにおいても融接が導入されているか、または
従来の接合プロセスによる側方の接合も側方の周縁領域へと延びていることにより、前記金属部材(44)が、前記気密アセンブリ(1)の枠部あるいは包囲部を提供している、請求項9または10記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記第1の基材(4)の前記接触領域(11)が、少なくとも1つの相接接触領域を有し、前記相接接触領域において、前記第1の基材が前記金属箔(3)と面状に接触しており、
前記相接接触領域が、特に、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下の、第1の基材と金属箔との間の平均間隙を有し、かつ/または
前記相接接触領域が、特に前記接触面(15)と一致している、請求項1から11までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記金属箔(3)が、金属材料からなり、特にアルミニウム箔であり、かつ/または
前記金属箔(3)が、周期表の定義の趣意における金属を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項14】
前記金属箔(3)が、モリブデン、タングステン、ケイ素、アルミニウム、白金、銀または金のうちの少なくとも1つを含むかまたはこれらからなり、かつ/または
前記金属箔(3)が、合金を含み、特に、炭素、銅、マンガン、クロム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、ニオブ、パラジウム、レニウム、インジウム、タンタル、チタンまたはイリジウムのうちの少なくとも1つを含むかまたはこれらからなる、請求項1から13までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項15】
前記第1の基材(4)が、透明基材であり、
前記第1の基材(4)が、ファイバプレートまたはファイバロッドであり、かつ/または
前記第1の基材(4)が、以下の材料:
ガラス、ガラスセラミック、ケイ素、ゲルマニウム、サファイアまたはそれらの組み合わせ、
セラミック材料、特に酸化物セラミック材料、
結晶、特に、結晶質石英、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、イットリウムドープ酸化ジルコニウム、イットリウムドープ酸化アルミニウム、ランタンドープ酸化イットリウム、アルミニウムドープ窒化アルミニウムおよびマグネシウムドープ酸化アルミニウム、
石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ガラスセラミック、例えば、Zerodur、CeranまたはRobax、オプトセラミック、例えば、酸化アルミニウム、スピネル、パイロクロアまたはオキシ窒化アルミニウム、フッ化カルシウム結晶またはカルコゲナイドガラス
のうちの少なくとも1つを含むかまたはこれらからなる、請求項1から14までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)。
【請求項16】
特に請求項1から15までのいずれか1項記載の気密接続アセンブリ(1)を備えた気密封止エンクロージャ(9)であって、前記気密封止エンクロージャ(9)は、
少なくとも一部の領域でおよび/または少なくとも部分的に少なくとも1つの波長範囲に対して透明に形成されている第1の基材(4)と、
金属箔(3)であって、
前記金属箔は、前記第1の基材の接触領域(11)に隣接する接触領域(12)を有するように配置されており、
前記金属箔は、可撓性を有するように準備されているため、前記第1の基材の前記接触領域の凹凸を平坦化することができるものとする、金属箔(3)と、
少なくとも1つの機能領域(2,2a)と、
特に前記機能領域を気密封止するために前記機能領域の周囲に存在する、前記金属箔を前記第1の基材に前記接触領域上または前記接触領域内で直接かつ無媒介に接合するための少なくとも1つのレーザ接合線(6,6a,6b,6c)または複数の結合点であって、
前記レーザ接合線あるいは前記複数の結合点は、一方では前記第1の基材に、他方では前記金属箔に入り込んでおり、溶融により互いに直接的に接合しているものとする、レーザ接合線または複数の結合点と
を備える、気密封止エンクロージャ(9)。
【請求項17】
前記機能領域(2,2a)が、前記第1の基材(4)の光学コーティング、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む層、偏光子、または電子回路、センサ、MEMSなどの収容物を収容するための気密封止収容キャビティである、請求項16記載の気密封止エンクロージャ(9)。
【請求項18】
少なくとも2つの部分から構成される気密封止接続体(1)の製造方法であって、前記方法は、
第1の基材(4)および金属箔(3)を提供する工程と、
前記金属箔を前記第1の基材に押し付けて、前記金属箔と前記第1の基材との間に接触面(15)を形成する工程であって、前記接触面(15)では、前記金属箔が前記第1の基材と少なくとも部分的にまたは一部の領域で接触しており、
前記金属箔は、前記押し付けにより前記第1の基材の前記接触領域の凹凸に密着しており、
前記第1の基材は、透明材料を含むものとする工程と、
前記金属箔と前記第1の基材を、前記少なくとも1つの接触領域の領域で互いに直接的に接合することにより互いに気密封止接続し、その結果、一方では前記第1の基材に、他方では前記金属箔に入り込んでいる融合ゾーン(62,64)が形成され、前記融合ゾーン(62,64)は、溶融によりこれらを互いに直接的に接合しているものとする工程と
を含む、方法。
【請求項19】
気密封止接続後に、前記接続体上に金属部材(44)を配置し、
熱および/または圧力を用いて、溶接充填材を用いるかまたは用いずに前記金属部材を前記接続体に接合する工程
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記金属箔(3)が、垂直部(3a)を有し、
前記レーザ接合線(6)において、水平面だけでなく垂直領域の一部のセクションにおいても融接を導入するか、または
従来の接合プロセスによる側方の接合も側方の周縁領域へと延ばすことにより、前記金属部材(44)が、前記気密アセンブリ(1)の枠部あるいは包囲部を提供している、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの接合パートナー(3,4)間の間隔プロファイルを決定することにより、前記気密接続体(1)を試験する工程、および/または
前記接続体(1)の機械的強度および/または気密性を試験するための第1の接合品質指数Q
1を決定する工程
をさらに含む、請求項18から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項18から21までのいずれか1項記載の方法により製造された、エンクロージャ(9)あるいは気密接続アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密接続アセンブリ、エンクロージャ、気密封止接続体の製造方法、および該方法により製造された気密接続アセンブリに関する。
【0002】
発明の背景技術および全般的説明
複数の部材を様々なレーザプロセスにより接合して気密封止接続体またはエンクロージャを形成することは、原理的に知られている。例えば、本出願人による欧州特許第3012059号明細書から、気密接続されたガラス・ガラス接合体が知られている。該文献には、光学部材を保護するための透明部材の製造方法が示されている。この方法では、新規なレーザプロセスが示されている。
【0003】
異なる材料が互いに接続される接続は、継続的に開発されている。中でも、特に金属とガラスとの組み合わせは幅広い応用が可能であるため、金属・ガラス接合体は特に注目されている。例えば、生物物理学や技術医学の分野で、特にバイオプロセッサや宇宙航空学での応用に関する改良および新たな応用が実際に実現できる。
【0004】
気密封止エンクロージャの構築により、そこでエンクロージャ内の1つ以上の部材を劣悪な環境条件から保護することができる。例えば、医療用インプラントを、例えば心臓の領域で、網膜内で、または総じてバイオプロセッサ用に構築して使用するために、高感度の電子機器、回路またはセンサを気密封止エンクロージャ内に配置することができる。また、気圧計、血液ガスセンサまたはグルコースセンサなどのセンサ技術におけるMEMS(微小電気機械システム)や、アンテナの提供、ガラスコンポーネントへの導体ストリップの施与などのエレクトロニクス用途といった応用分野も可能である。本発明はまた、基材に、この基材とは著しく異なるCTE(Coefficient of Thermal Expansion、熱膨張係数)を有する材料を施与し、強固に固定することにより、「CTEブリッジ」を提供することができる。潜在的な用途は、特に、時計製造分野や、総じて、例えば防水性や耐圧性が必要なウェアラブルやデバイスの分野にも同様に見出すことができる。特に、スマートウォッチなどのカバーを本発明により改良することができる。本発明の広範な使用分野は、航空、高温用途、エレクトロモビリティの範囲、例えば燃料電池の製造、分析、例えば光学的アクセスおよびフローセルの形態、ならびにマイクロオプティクスの分野にも見出すことができる。
【0005】
2つの類似した構成要素を互いに接続するのとは異なり、異なる材料を使用する場合の問題は、2つの接合パートナーがしばしば互いに良好に付着しないか、あるいは特に接続できないことである。ここで、本発明は、本出願人の社内で実施された予備調査に基づいている。この範囲において、未公開のドイツ特許出願DE102020129380.1が参照され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
本発明は、異なる材料から構成される2つの構成要素間の気密接続アセンブリを提供すること、すなわち、例えばガラス材料またはガラス状材料を含む第1の基材を金属と接続することを課題として設定した。さらに、異なる材料の2つの部材が互いに接続されるエンクロージャを提供することも課題として設定された。
【0007】
特に、本課題の一部分態様は、特に2つの部材が互いに分離しないか、あるいはわずかな力の作用下では分離されないようにするため、気密接続アセンブリまたはエンクロージャが十分な耐久性を有するように製造できることである。したがって、本発明の1つの目的は、より信頼性が高く、より耐久性のある気密接続アセンブリまたはエンクロージャを提供することである。
【0008】
本発明による気密接続アセンブリは、第1の基材を備えており、この第1の基材は、少なくとも一部の領域でおよび/または少なくとも部分的に少なくとも1つの波長範囲に対して透明に形成されている。第1の基材は、金属箔の接触領域に隣接する接触領域を有するように配置されている。換言すれば、第1の基材上に金属箔が配置されており、例えば、この金属箔は、第1の基材に付着しているか、またはそこに押し付けられているか、または仮接着されている。
【0009】
基材および金属箔は、通常はそれらの接続のためにまず互いに接するように配置され、したがって例えば互いに積み重ねられる。その後、重力によって上側の基材を下側の金属箔に押し付けることができる。ここで、上あるいは下の向きは単に説明的なものであり、アセンブリは当然のことながら空間内で任意の向きをとることができ、横に並んだアセンブリであっても保護範囲から逸脱するものではない。金属箔は、通常は、その延在部の大きい側が基材に隣接するように配置されている。例えば、基材および/または金属箔は、ディスク状あるいは平坦に形成されているため、それぞれ少なくとも1つの大きな平坦面を有する。しかし、基材と金属箔とを「押し付け合う」力を加えることは、これにより接合プロセス中に様々な応力(例えば、せん断応力)が基材に永久的に「焼き付け」られるおそれがあることから、典型的には不可能であるか、あるいは望ましくない。接合工程を応力下で実施した場合、気密接続体あるいはエンクロージャは、強度の低下や破断傾向の高まりを示すおそれがある。そのため、レーザ接合プロセスで良好な品質でかつ再現性のある結果を得るためには、基材を金属部材に十分に密接するように配置することができない場合がある。そのため、接合結果をさらに向上させるために、金属箔が含まれる。本発明による金属箔の使用により、エンクロージャあるいは基材の最終強度を高めることができ、金属箔および基材を応力なしに互いに接合することができる。応力がないことが、特に金属コーティングのスパッタリングなどの「高温」コーティングプロセスに対する本方法の相違点である。このようなプロセスを使用すると、コーティングされた基材に冷却後に応力が残ることがある。また、金属箔を使用することで、さらにはコスト効率よく、特に基材上に金属コーティングをスパッタリングする場合よりもコスト効率よく製造することができ、金属箔は、そのようなコーティングよりも厚く、かつ堅牢に提供することができ、さらには、金属箔は、基材表面の凹凸を容易に平坦化あるいはふさぐことができる。これにより、基材をスパッタリングするための中間工程を完全に省くことができ、これにより、プロセス運転時間がさらに短縮され、コストが削減される。
【0010】
気密接続アセンブリは、金属箔を第1の基材に接触領域上または接触領域内で直接かつ無媒介に接合するための少なくとも1つのレーザ接合線または複数の結合点をさらに備える。レーザ接合線あるいは複数の結合点は、一方では第1の基材に、他方では金属箔に入り込んでおり、溶融により第1の基材を金属箔に直接的に接合する。換言すれば、第1の基材および金属箔は、レーザ接合線で互いに接合されている。
【0011】
本出願でいうところの接触領域とは、それぞれの基材が他の基材または金属箔に隣接するあるいは隣接するように配置されている、それぞれの基材あるいは金属箔の表面の領域もしくは一部、または面全体である。通常、基材は、金属箔の隣または金属箔上に配置されている。基材と金属箔が直接かつ無媒介に接触すると、相接接触領域が形成される。したがって、相接接触領域とは、例えば2つの基材間の間隙が光学的に測定不可能であるほど小さい接触領域の部分領域である。
【0012】
第1の基材は、接触領域において可能な限り平らに形成されている。しかしこの場合、絶対的に平らな表面は理論的にしか達成できない。なぜならば、観察のスケールによっては、窪み、隆起、湾曲または前述の複数のばらつきが、研磨された表面にも認められることがあるためである。したがって、特にガラスなどの基材を金属部材上に配置する場合には、全面的な接触を実現するのは困難である。基材は、非常にわずかな範囲であっても、膨らみ、傾斜、湾曲、窪みまたは隆起を有している。例えば、第1の基材が金属箔に対して1μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下の平均間隙を有する場合に、相接接触領域を画定することができる。
【0013】
基材の表面のばらつきのなおもさらなる低減には、非常に手間がかかる場合がある。基材によっては、ばらつきの十分に大幅な低減が全くできないかまたは望ましくない場合がある。例えば、表面を研磨すると、今度は第1の基材の光学特性が変化したり、第1の基材の表面応力が変化したりする場合がある。また、基材は、さらなる低減に際して膨らみ始めるか、あるいは変形し始める可能性があり、その結果、所望の接合パートナーまでの距離、すなわち生じる空隙がさらに増大する。特に金属物体の研磨された表面は、特定の状況下では、レーザ接合プロセスにとって不利になることもある。なぜならば、研磨された表面では、生じる反射または散乱の量が増加するため、接合プロセスのための正確な位置決めおよびパワーデポジションが困難であるか、あるいは接合プロセスをこのように実施することができなくなる可能性があるためである。
【0014】
ここで、本発明の範囲において、金属箔を使用することにより、金属箔あるいは金属物体と第1の基材との間の特に良好な付着をもたらすことができることが驚くべきことに発見された。ここで、金属箔は、可撓性であり、かつ第1の基材の接触領域に密着した状態である。特に、金属箔は、それ自体の凹凸、すなわち金属箔表面の凹凸を、この場合には平坦化することができる。これらの凹凸(通常は湾曲)を平坦化することにより、金属箔と第1の基材との間の間隙を狭くすることができる。例えば、アルミニウム箔を使用することができ、このアルミニウム箔は、第1の基材の片面に押し付けられる。この場合、アルミニウム箔は、第1の基材への押し付けあるいは密着によって得られる形状のままである。換言すれば、金属箔は、例えば撓みやよじれや湾曲といった変形を生じ、接触領域に当たっており、それによって接触領域と相補的な形状をとる。こうして金属箔は、金属箔と第1の基材との間の相接接触領域が増加し、かつ/または空隙が減少するように第1の基材の接触領域を補うため、補完的な金属箔となる。
【0015】
特に、接触領域への密着のための金属箔の変形は非弾性的であるため、金属箔は、大きな力を加えなくても変更された形状を保持する。このことは、例えばガラス基材やガラス状基材の場合に重要であり、なぜならば、外部からの力が加わった状態で接合プロセスが行われると、特定の状況下では基材に応力場が導入されるためである。したがって、金属箔を使用した場合には、接合工程を、特に好ましくは外力を加えることなく行うことができる。なぜならば、金属箔は変更された形状のままであり、それ自体で元の形状に戻ることはないためである。したがって、変更された形状は、本質的に安定あるいは不可逆的であり、変形は、特に非弾性的である。例えば、第1の基材の自重は、それが金属箔上に配置されたときに十分であるため、金属箔は第1の基材に密着しており、通常であれば接合工程によって基材に「焼き付けられる」可能性のある大きな基材応力が第1の基材に発生することなく、改善された接触領域を提供することができる。
【0016】
金属箔は好ましくは、第1の基材の外周縁領域に沿って配置されている。換言すれば、金属箔は、例えば内部が空いた正方形あるいは矩形の形態で周縁領域に沿って延在している。例えば、金属箔は、第1の基材の接触領域を部分的にまたは一部の領域のみ覆い、すなわち、特に完全には覆わない。金属箔により、第1の基材の接触領域上に1つ以上の接触点が形成されている場合もある。金属箔の目的は、金属部材に対する第1の基材の改善された接続を確立することであってよく、その際、まず、本明細書で提示されるレーザ接合プロセスによって第1の基材に金属箔が溶接され、その後、金属部材を、従来の接合プロセスによって、第1の基材に接続された金属箔を用いて第1の基材に接合することができる。
【0017】
追加的または代替的に、金属箔は、垂直部を有することができる。ここで、垂直部によって、レーザ接合線において、水平面内だけでなく垂直領域の一部のセクションにおいても融接を導入することができる。さらに、追加的または代替的に従来の接合プロセスによる側方の接合が側方の周縁領域へと延びていることにより、接合される部材、特に金属部材は、気密アセンブリの枠部あるいは包囲部を提供することができる。
【0018】
金属箔はさらに、例えば、プロファイルによる打ち抜きまたはエンボス加工により導入可能な垂直構造を有することができる。これらの垂直構造は、接合される部材を基材と位置合わせする際の位置合わせ補助体またはセンタリング補助体として機能することができる。
【0019】
金属部材の代わりに、例えばプラスチック部材や結晶部材も、金属箔を介して第1の基材に接合することができる。結晶部材の例は特に、ケイ素またはゲルマニウムウェハ、サファイア、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、イットリウムドープ酸化ジルコニウム、イットリウムドープ酸化アルミニウム、ランタンドープ酸化イットリウム、アルミニウムドープ窒化アルミニウム、マグネシウムドープ酸化アルミニウムである。
【0020】
接合領域、すなわち、レーザ接合線または複数のレーザ接合線を含む領域において、金属箔は、接合工程プロセスによるレーザ接合線の導入後に、第1の基材への付着ゆえに可撓性を(もはや)有しない場合がある。この箔は、接合領域において分離ができないように第1の基材に接続されているため、金属箔は、第1の基材も可撓性である場合にのみ、この領域において可撓性を維持することができる。しかし、金属箔は、レーザ接合線が導入された後でも、レーザ接合線を含む接合領域の外側では可撓性を維持することができる。
【0021】
レーザ接合線あるいは複数の結合点において、第1の基材の材料と金属箔の材料とが混ざり合った融合ゾーンが存在する。融合ゾーンでは、金属箔の金属材料が第1の基材に入り込んでいる場合がある。融合ゾーンでは、第1の基材の材料が金属箔に入り込んでいる場合もある。特に好ましくは、融合ゾーンでは、第1の基材の金属材料が金属箔に入り込んでいるだけでなく、金属箔の材料も第1の基材に入り込んでいる。融合ゾーンは、接触領域に対して垂直な方向で測定される厚さを有することができ、融合ゾーンの厚さは、好ましくは少なくとも1μm、さらに好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上の厚さを有することができる。
【0022】
金属箔は、接触領域に密着可能であるほど十分に可撓性を有するように形成されている。とりわけ、これは材料に依存する。なおも十分に可撓性であり得るためには、金属箔は、500μm以下、好ましくは250μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下の厚さを有することができる。他方では、金属箔が、金属箔を第1の基材になおも確実に溶接することができる最小厚さを有すると有利である。金属箔の最小厚さは、10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは40μm以上とすることができる。
【0023】
接触領域の反対側に配置される金属箔の下面は、その後の従来の溶接プロセスに有利な表面特性を提供できるように形成されていてよい。プロセスによっては、下面は非常に粗さの低い表面として形成されている。しかし、他のプロセスでは、μm範囲の高い粗さが有利となる場合や、溝状や轍状の構造体が必要である場合がある。
【0024】
金属箔は、接触領域の反対側の下面に溶接リブを有することができる。この溶接リブは、接合工程中に生成することができる。例えば、レーザ溶接時に金属箔が特定の箇所で強く加熱され、金属箔の材料が接合ゾーンから逃げると、ノーズや溶接リブが下面に形成されることがある。この溶接リブは有利である場合があり、なぜならばこれにより、この場合には下面に溶接リブが存在すると、その後の金属部材との従来の溶接を簡略化できるためである。このような金属部材は、例えば、第1の基材に溶接された金属箔に、分離ができないように接続、すなわち例えば接合することができる。
【0025】
金属部材は、好ましくは、従来の接合プロセスによって、すなわち、熱および/または圧力を用いて、溶接充填材を用いるかまたは用いずに、特にアーク溶接のような溶融金属溶接によって、金属箔に材料接続される。金属部材-例えばスマートウォッチ用の時計ケーシング-をアセンブリ-例えば時計ガラスまたは時計カバー-と接続するためのこのような溶接プロセスの使用は、このように、本発明による金属箔の使用によって初めて可能となる。なぜならば、ここで金属と金属との接合が可能であるためである。
【0026】
したがって例えば、金属箔がすでに接合されている気密アセンブリを、さらなる加工に向けて納品することができるため、時計製造業者は、場合によっては、レーザ接合プロセスを実施するための追加設備を用意する必要が全くなく、気密アセンブリが完成した状態で納品される際に、時計製造業者(あるいは、例えば時計の最終エンクロージャの製造業者)が、従来の接合プロセスにより気密性でかつ永久的な接続体を製造することができ、これは、最終エンクロージャの製造業者-例えば時計製造業者-側の製造プロセスの大幅な簡略化を意味する場合がある。
【0027】
融合ゾーンは、好ましくは、第1の基材に1μm以上入り込んでいる。好ましくは、融合ゾーンは、第1の基材に5μm入り込んでいる。さらに好ましくは、融合ゾーンは、第1の基材に再凝固ゾーンと同じほど入り込んでいるため、融合ゾーンは、再凝固ゾーンと重なっている。例えば、融合ゾーンは、金属箔とほぼ同じ距離まで第1の基材に入り込んでいる。これは一見驚くべきことであり、なぜならば、例えば金属・ガラス接続体の場合には、金属箔のCTEはガラス(第1の基材)のCTEよりも3倍~10倍高い。また、金属の熱容量および熱伝導率も、通常は、第1の基材の熱容量および熱伝導率よりもかなり高い。しかし、レーザ接合線あるいは結合点において融合ゾーンを有利に調整することで、融合ゾーンを第1の基材とほぼ同じ距離まで金属箔に入り込ませることができ、ひいては接合による接続を改善できることが判明した。
【0028】
融合ゾーンは、幅を有し、融合ゾーンの幅は、好ましくは第1の基材における融合ゾーンの高さよりも大きい。また、融合ゾーンの幅は、融合ゾーンの高さよりも50%以上大きく、さらに好ましくは融合ゾーンの高さよりも100%以上大きくすることもできる。
【0029】
ここで、幅は、例えば、第1の基材と第1の基材との間の接触領域において、接触領域に対して平行でかつレーザ接合線に対して垂直な方向で測定することができる。
【0030】
少なくとも1つのレーザ接合線あるいは複数の結合点は、再凝固ゾーンをさらに含むことができ、再凝固ゾーンは、接触領域に対して垂直な方向で測定される高さを有する。再凝固ゾーンの高さは、好ましくは20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とすることができる。
【0031】
再凝固ゾーンは、第1の基材に、好ましくは20μm以下、好ましくは10μm以下、なおもさらに好ましくは5μm以下の深さで入り込んでいてもよい。
【0032】
少なくとも1つのレーザ接合線あるいは複数の結合点の再凝固ゾーンは、レーザ接合線に沿って延在してもよいし、それぞれの結合点内に配置されていてもよい。再凝固ゾーンは、第1の基材と金属箔との間の接触領域で、接触領域に対して平行な方向において、例えば10μm±5μmの幅を有することができる。好ましくは、この幅は、20μm±10μm、さらに好ましくは30μm±10μmとすることができる。
【0033】
再凝固ゾーンは、接触領域に対して平行でかつレーザ接合線に対して垂直な方向で、再凝固ゾーンの高さよりも大きい幅を有することもできる。
【0034】
再凝固ゾーンは、可能な限り小さいことが特に有利であり、すなわち、接合レーザの照射パラメータは、再凝固ゾーンが可能な限り小さくなるように選択することができる。再凝固ゾーンには、第1の基材と金属箔との間に咬み合いや付着を生じさせる材料が混在しないため、接合プロセスにとって大きな有用性はない。したがって、再凝固ゾーンは、付着性の目的を改善することなくレーザエネルギーを吸収する。同時に、再凝固ゾーンには、その冷却時に亀裂および/または穴または空洞が形成されることがあるが、これは、加熱時に接合材料が膨張することにより応力が発生し、冷却時に接合材料が再び収縮することにより説明できる場合がある。
【0035】
したがって好ましくは、融合ゾーンを可能な限り大きく設定し、一方で再凝固ゾーンを可能な限り小さく設定することができる。好ましくは、融合ゾーンは、再凝固ゾーンの高さの少なくとも1/5、さらに好ましくは再凝固高さの1/2の高さを有し、さらに好ましくは、融合ゾーンは、再凝固ゾーンと同じ高さを有する。ここで、例えば融合ゾーンの高さが5μmの場合、融合ゾーンの高さが再凝固ゾーンの高さの1/5であれば、再凝固ゾーンの高さは、融合ゾーンを上回って25μmである。融合ゾーンの高さが10μmであり、さらに第1の基材の再凝固ゾーンの高さも同様に10μmである場合、再凝固ゾーンの高さは、融合ゾーンの高さと一致する。融合ゾーンは、再凝固ゾーンよりも大きな厚さを有することもでき、例えば再凝固ゾーンの1.5倍以上の厚さ、例えば5倍の厚さを有することもできる。
【0036】
金属箔が、融合ゾーンの下面に再凝固ゾーンを有することもできる。金属箔の再凝固ゾーンのサイズが、第1の基材の場合のように接合工程に不利になるか否かは定められていない。それどころか、第1の基材の材料が金属箔の再凝固ゾーンに入り込み、そこでデントライトの形成を誘発することができ、すなわち、第1の基材と金属箔とのアンカー状の接続が、1つ以上のデントライトを介して行われ、デントライトは、金属箔の再凝固ゾーンに入り込むことができる。
【0037】
融合ゾーンでは、第1の基材の材料および金属箔の材料が、第1の基材の材料と金属箔の材料との間に形状接続の咬み合いが生じるように配置されていてよい。気密接続アセンブリは、第1の基材と金属箔との間の互いに融合しあった咬み合い構造を含むことができる。この互いに融合しあった咬み合い構造では、材料の反転、陥入または食い込みが存在する場合があり、これによって気密接続アセンブリの接続を強化することができる。このような互いに融合しあった咬み合い構造は、形状接続による接続体を提供し、これは、異なる材料間の材料接続が、場合によってはわずかな付着力やわずかな材料接続しか提供できない場合に特に有利である。ここで、この咬み合い構造は、微細なファスナーのような働きをする。
【0038】
融合ゾーンでは、金属箔の金属材料が、ドロップレットおよび/またはデントライトの形態で存在することができ、ドロップレットおよび/またはデントライトとしての集成体が、接続体の強化を生じさせる。
【0039】
さらに注目すべきことは、金属箔の金属材料および/または第1の基材の材料が、特にドロップレット、溶融物および/またはデントライトの形態で、再凝固ゾーンの少なくとも1つにも入り込んでいる場合があり、これが接続体の強化を引き起こすことである。換言すれば、第1の基材の金属材料および/または金属箔の材料がそれぞれ他の構成要素に属する再凝固ゾーンに入り込むように接合プロセスを調整するために、接合パートナー、すなわち第1の基材の材料および/または金属箔の材料が選択され、かつ/またはビーム発生器が設定されかつ/または準備されている。
【0040】
例えば、第1の基材の材料は、レーザ接合線の導入に起因して、または導入後に、非晶質領域またはゾーンを有することができる。このような非晶質領域、すなわち例えば非晶質金属材料は、咬み合いをさらに改善することができる。
【0041】
第1の基材の接触領域は、第1の基材が金属箔と面状に接触する少なくとも1つの相接接触領域を有する。相接接触領域は、特に、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下の平均間隙を有することができる。ここで、技術的な理由やその他の理由により、接触面における非常にわずかなガス介在物や不純物、例えば塵埃や研磨工程による凹凸を避けることができない場合がある。これは、接触面や構成要素表面に場合により存在する、マイクロ範囲に至ることもある凹凸によって生じることもある。相接接触領域は、全面的な接触の確立が可能であれば、接触領域と一致することがある。
【0042】
レーザ接合線は、第1の基材と金属箔とを、保持力に打ち勝たなければこれらを互いに分離ができないように互いに接続することができる。接合はまた、せん断強度が第1の基材の材料強度、例えばエッジ強度よりも大きい場合に、第1の基材を破壊しなければ分離を達成できないような強さで達成することができる。例えば、せん断強度は、ISO 13445:2003規格を用いて決定することができる。金属箔と第1の基材との間の接続体のせん断強度は、例えば10N/mm2より大きく、好ましくは25N/mm2より大きく、さらに好ましくは50N/mm2より大きく、なおもさらに好ましくは75N/mm2より大きく、最終的に最も好ましくは100N/mm2より大きくすることができる。
【0043】
第1の基材の接触領域が平坦、すなわち特に平らに形成されていることが好ましい。第1の基材の接触領域は、金属箔が接触領域に密着している場合、研磨されていてよい。第1の基材の接触領域は、例えば、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下、なおもさらに好ましくは50nm以下、最終的に好ましくは20nm以下の平均粗さ値Raを有することができる。金属箔は、第1の基材の接触領域に密着しており、場合によっては接触領域の凹凸に沿う。金属箔自体が、例えば反り(すなわち曲がり)によって変形して例えば巻いているという理由で平らな状態で提供されない場合には、金属箔の密着とは、金属箔が第1の基材の平らな接触領域に密着していることを暗に指す場合がある。
【0044】
レーザ接合線は、接合レーザを用いて導入される。例えば、接合レーザは、1000nm~1100nm、好ましくは赤外線レーザであれば1030nm~1060nmの範囲の波長を有し、または500nm~550nmの波長も有する。例えば、50ps以下、好ましくは10ps、さらに好ましくは1ps、またはさらに好ましくは500fs以下の範囲のパルス長の超短パルスレーザを用いることができる。
【0045】
接合レーザは、ビーム焦点を有する。ビーム焦点は、ビームウエスト幅2w0を有することができる。さらに、接合レーザは、接合プロセスのビーム幅2wレーザを有し、これは、ビームウエスト幅2w0以上とすることができる。レーザ接合線の貫通のための焦点面は、接合面に対して遠位側にシフトされていてよい。ビーム幅2wレーザは、特に、レーザ接合線の貫通のための焦点面が遠位側にシフトされている場合、ビームウエスト幅2w0よりも大きい。特に、焦点面は、レーザ接合線が導入される際に金属箔内に位置する。焦点面は、金属箔に遠位側に好ましくは10μm±10μm、さらに好ましくは20μm±10μmシフトされる。
【0046】
ビーム幅2wレーザは、接合面で好ましくは4μm±1μm、さらに好ましくは4μm±2μm、さらに好ましくは4μm±3μmである。これは、例えば、レーザ接合線が導入される際に焦点面が金属箔内に位置する場合、すなわち、例えば、金属箔に遠位側に10μm±10μmまたは20μm±10μmシフトされている場合に達成することができる。ビーム幅2wレーザを所望の幅に調整するために、代替的または累積的に、例えばアパーチャまたは望遠鏡によって内接レンズの前でレーザビームを広げることも狭くすることもできる。
【0047】
金属箔は、好ましくは、完全に金属材料または半金属材料からなる。ここで、金属箔は好ましくは、周期表の定義の趣意における金属または半金属を含む。金属箔は、アルミニウム、モリブデン、タングステン、ケイ素、白金、銀または金のうちの少なくとも1つを含むことも、これらからなることもできる。金属箔は、合金を含むこともできる。特に、金属箔は、炭素、銅、マンガン、クロム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、ニオブ、パラジウム、レニウム、インジウム、タンタル、チタンまたはイリジウムのうちの少なくとも1つを含むことも、これらからなることもできる。
【0048】
第1の基材は、好ましくは透明基材である。第1の基材は、ガラス、ガラスセラミック、ケイ素、ゲルマニウム、サファイアまたは前述の材料の組み合わせを含むことも、これらからなることもできる。IR領域で良好な透明性を有するガラスの一例は、SCHOTT AGからIRG11Aの名称で入手可能なアルミン酸Caガラスである。
【0049】
第1の基材はまた、ファイバプレートまたはファイバロッドであってもよいし、これからなってもよい。このようなファイバプレートまたはファイバロッドは、複数の光ファイバを含み、各ファイバは、細長いガラスコアを有する。コアはガラスクラッドに取り囲まれているため、クラッドがコアと共に剛性のある連続的なガラスエレメントを形成している。コアは、クラッドよりも高い屈折率を有するため、光を全反射によってガラスコアに沿って導くことができる。また、例えば独国特許出願公開第102020116444号明細書から知られている導波路のように、アンダーソン局在によって光を導くこともできる。この場合、直径の異なる高屈折率ガラスおよび低屈折率ガラスのシリンダが、無秩序に、または明確に予め定められた規則にしたがって不均等に配置されている。マルチファイバ導光体のガラスエレメントは、2つの隣接面を有しており、その際、光を一方の端面から他方の端面までコアに沿って導くことができるように、コアが両端面で終端している。
【0050】
また、第1の基材は、セラミック材料、特に酸化物セラミック材料を含むことも、これからなることもできる。第1の基材はまた、結晶材料あるいは結晶、特に結晶質石英、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、イットリウムドープ酸化ジルコニウム、イットリウムドープ酸化アルミニウム、ランタンドープ酸化イットリウム、アルミニウムドープ窒化アルミニウムおよびマグネシウムドープ酸化アルミニウムを含むことも、これらからなることもできる。ここで、ドーパントは、好ましくはそれぞれ金属酸化物である。
【0051】
第1の基材は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ガラスセラミック、例えば、Zerodur、CeranまたはRobax、オプトセラミック、例えば、酸化アルミニウム、スピネル、パイロクロアまたはオキシ窒化アルミニウム、フッ化カルシウム結晶またはカルコゲナイドガラスのうちの少なくとも1つを含むことも、これらからなることもできる。
【0052】
一発展形態では、気密接続アセンブリは、第1の基材と金属部材との間の間隙を定めるためのスペーサを含むことができる。スペーサは、金属箔の間、すなわち、例えば金属箔によって縁取られた窓部のような金属箔から凹んだ領域に水平に導入または含まれていてよい。例えば、第1の基材は、スペーサを介して金属部材と接触することができる。換言すれば、スペーサは、例えば、第1の基材の接触領域上の一部の領域に配置されていてよく、これにより、基材はスペーサと接触するが、第1の基材の接触領域とスペーサの外側の金属部材の接触領域との間には、例えばスペーサの厚さのサイズおよび/または金属箔の厚さで隙間が残る。
【0053】
スペーサは、基材と基材に接合される部材、特に金属部材との間の領域を埋めることができる。これにより、基材は、接合状態で金属部材上に自立することができる。例えば、スペーサは、第1の基材上にコーティングとして形成されていてもよいし、金属箔として形成されていてもよい。また、スペーサは、例えば、そこに突起部や隆起部を形成する突出部の形態で、第1の基材と一体的に形成されていてもよい。例えば、スペーサは、第1の基材の接触領域の領域が研磨されず、その結果そこに隆起部が残る場合に、第1の基材の接触領域の研磨時に製造することができる。とりわけ、第1の基材として、例えば特に一般的にはすでにサファイアガラスの手間のかかる研磨が行われる時計用ガラスとしてサファイアが使用される場合、サファイアガラスの追加研磨あるいは修正研磨を研磨工程で一緒に行うことができるため、製造中に追加の作業工程は不要である。
【0054】
スペーサは、スパッタリング可能である。スペーサは、直接堆積されたリソグラフィガラス層を含むことができる。スペーサは、例えばインクジェット印刷法を用いて印刷することもできる。スペーサは、3D印刷を使用して製造することもできる。この場合、スペーサは、レーザ接合線に沿って延在することができ、スペーサは、レーザ接合線の外側または結合点の領域の外側に配置されている。スペーサは、例えば金属部材に対して第1の基材を支持することができる。しかし好ましくは、スペーサは、第1の基材を分離ができないように金属部材に接続するためのものではない。スペーサは、少なくとも5μmの厚さ、さらに好ましくは少なくとも10μmの厚さ、なおもさらに好ましくは少なくとも20μmの厚さを有することができる。スペーサは、好ましくは金属箔と同じ厚さを有する。
【0055】
スペーサはまた、隆起部、膨張部および/または凹部の形態の構造を有することができ、これは、位置合わせ補助体またはセンタリング補助体として機能することができ、基材に接続される部材に対する基材の正確な位置決めを容易にすることができる。
【0056】
本発明の一発展形態では、レーザ接合線または結合点からの溶融材料を収容するために、少なくとも1つの回避ゾーンが設けられていてもよい。ここで好ましくは、少なくとも1つの回避ゾーンは、レーザ接合線または複数の結合点に隣接して配置されている。換言すれば、回避ゾーンは、特にレーザ接合線が生成される瞬間に、溶融材料が回避ゾーンに逃げることができるように配置されている。例えば、回避ゾーンは、レーザ接合線の周囲に、したがってこれと連通した状態で配置されていてよいため、レーザ接合線で溶融加熱される材料は、回避ゾーンにわずかに逃げることができる。この場合、溶融材料は、回避の過程で圧力勾配に従うことができる。
【0057】
例えば、第1の基材および/または金属箔は、レーザ接合線が導入されると、膨張、例えば熱膨張を示すことがある。レーザは材料を局所的にしか加熱せず、すなわち材料はレーザ接合線の周囲で固体状態のままであるため、場合によってはレーザ接合線の材料とレーザ接合線を取り囲む材料との間に甚大な応力が生じることがあり、この応力によって、応力亀裂などの亀裂や空洞が生じる可能性がある。回避ゾーンが保持された状態で、溶融材料は回避ゾーンに逃げることができるため、亀裂や空洞の形成が低減される。少なくとも1つの回避ゾーン、またはさらには緩衝ゾーンまたは緩和ゾーンが、さらに好ましくは第1の基材と金属箔との間に、例えばそこで接触領域に配置されている。
【0058】
回避ゾーンは、スペーサが含まれていることによっても形成することができ、このスペーサは、第1の基材が金属箔上に配置される際に、2つの接触領域を所定の間隙で互いに配置するものである。スペーサがない領域にこの場合に形成される空洞を、レーザ接合時に逃げる材料の回避ゾーンとして使用できるように予め構成または配置しておくことができる。これにより、生じるレーザ接合線は、より応力の少ないものとなり、その結果、より強度が高くあるいはより高い付着力が得られる可能性があると同時に、応力を第1の基材から逃がすことができるため、第1の基材に応力亀裂や空洞が形成されることが少なくなる。
【0059】
溶融材料が互いに融合されるゾーンを融合ゾーンと呼び、レーザ接合線の隣接ゾーンを再凝固ゾーンと呼ぶとすると、特に再凝固ゾーンは、レーザ接合線の導入によりそこに亀裂あるいは空洞が形成される可能性があるという点で問題がある。これは、第1の基材が例えばサファイアのような単結晶である場合に特に不利であり、レーザ接合線の導入によって生じた損傷は、カバーがオフセットされた後続のレーザ接合線をその後に導入することによって直すことができない。したがって、本発明の構想、特に回避ゾーンおよび/またはスペーサを用いれば、再凝固ゾーンを可能な限り小さく抑えつつ、同時に融合ゾーンを可能な限り大きくすることも、基材あるいは金属箔の中に可能な限り広範囲に突出させることもできる。理想的な事例では、融合ゾーンを再凝固ゾーンと同じ大きさにし、その結果、融合ゾーンが再凝固ゾーンと完全に重なり、再凝固ゾーン自体が認識されないままとなる。その場合、互いの付着は特に良好であると同時に、亀裂や空洞の発生も最小限に抑えられる。
【0060】
第2のレーザ接合線は、同じレーザを以前のまたはそれと同様の接合位置に再調整することにより達成でき、すなわち、新しいレーザ焦点は、すでに設定されているあるいはすでに接近している焦点と重なる。特にまだ温かいあるいは熱い第1のレーザ接合線への第2のレーザ接合線の導入は、レーザ発生器の二重焦点を使用することによっても行うことができる。例えば、このために、ビームスプリッターや回折格子を使用することも、2つのレーザ発生器を使用することもできる。ここで、第2のレーザ接合線は、接合パートナーのまだ温かい、特にまだ溶融している材料に導入される。
【0061】
このような効果、すなわち、まだ温かい、あるいはまだ溶融してさえいる材料へのレーザエネルギーの導入は、例えば、レーザ発生器がバースト機能を有し、このようにして、複数のレーザ点を重複してかつ短い時間的シーケンスでアセンブリに導入することができる場合にも達成することができる。換言すれば、第1のレーザ接合線の焦点において、さらなる焦点が、所定の時間間隔および/または所定の空間間隔で接近されるか、あるいは第2のレーザ接合線が導入される。第2のレーザ接合線は、接続体を場合によってはさらに改善し、ひいては第1の基材上での金属箔の保持力を増加させることができる。
【0062】
本発明の範囲において、特に上記で詳細に説明したような気密接続アセンブリを備えた気密封止エンクロージャも示されている。気密封止エンクロージャは、少なくとも一部の領域でおよび/または少なくとも部分的に少なくとも1つの波長範囲に対して透明に形成されている第1の基材と、金属箔とを備えており、金属箔は、第1の基材の接触領域に隣接する接触領域を有するように配置されている。金属箔は、可撓性を有するように準備されているため、第1の基材の接触領域の凹凸を平坦化することができる。さらに、機能領域が設けられている。機能領域は、金属箔と第1の基材との間に配置されていてよい。機能領域は、第1の基材の接触領域上に、例えば金属箔に囲まれた状態で配置されていてよい。
【0063】
エンクロージャは、金属箔を第1の基材に接触領域上または接触領域内で直接かつ無媒介に接合するための少なくとも1つのレーザ接合線または複数の結合点を、特に機能領域を気密封止するために機能領域の周囲に有する。レーザ接合線あるいは複数の結合点は、一方では第1の基材に、他方では金属箔に入り込んでおり、溶融によりこれらを互いに直接的に接合する。
【0064】
気密封止エンクロージャにおいて、エンクロージャのレーザボンディング線は、機能領域の周囲を完全に閉鎖するように設計されていてよい。さらにまたは代替的に、レーザ接合線における潜在的な空隙、すなわち第1の基材と金属箔との間の距離は、一貫して0.75μm未満、好ましくは0.5μm未満、さらに好ましくは0.2μm未満とすることができる。
【0065】
エンクロージャの機能領域は、電子回路、センサ、MEMSなどの収容物を収容するための気密封止収容キャビティを有することができる。一方で、1つ以上の収容物が、場合により金属部材の領域にも配置されていてよい。機能領域は、第1の基材の光学コーティング、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む層、偏光子であってよい。
【0066】
以下の工程を有する、少なくとも2つの部分から構成される気密封止接続体の製造方法も、本発明の範囲に包含される:第1の基材および金属箔を提供する工程と、金属箔を第1の基材に押し付けて、金属箔と第1の基材との間に接触領域を形成する工程であって、接触領域では、金属箔が第1の基材と接触しており、金属箔は、押し付けにより第1の基材の接触領域の凹凸に密着し、永久変形するものとする工程。これに続いて、金属箔と第1の基材を、少なくとも1つの接触領域の領域で互いに直接的に接合することにより互いに気密封止接続し、その結果、一方では第1の基材に、他方では金属箔に入り込んでいる融合ゾーンが形成され、この融合ゾーンは、溶融によりこれらを互いに直接的に接合する。
【0067】
接触領域とは、接触させる2つの構成要素の対向面からなる平面と理解することができる。相接接触領域とは、2つの基材間の間隙が光学的に測定不可能であるほど小さい接触領域の部分領域を指す。最後に、本発明の趣意において、良好領域とは、以下に詳述するように、基材の間隙が十分に小さいもの、または2つの基材が実際に接触しているものと定義される。総じて、ここで、接触領域は良好領域より大きいかまたはそれと同じであり、良好領域は、相接接触領域より大きいかまたはそれと同じである。第1の基材のみならず金属箔も、それぞれ少なくとも1つの接触領域を有することができる。接触面とは、第1の基材と金属箔との接触が行われる面であると理解することができる。金属箔が永久変形しているか、あるいは第1の基材の接触領域に密着している場合、接触面もそれに応じて「変形」しており、すなわち、接触領域が重なり合った接触構造に沿う。
【0068】
換言すれば、金属箔は、まず第1の基材の下方または上方に配置され、したがって例えば互いに積み重ねられ、重力によって上側の典型的には第1の基材を金属箔に押し付ける。ここで、上あるいは下の向きは単に説明的なものである。なぜならば、当然のことながら、構成要素は空間内で任意の向きをとることができ、横に並んだアセンブリであっても保護範囲から逸脱するものではないためである。2つの構成要素は、通常は、その延在部の大きい側が互いに隣接するように配置されている。
【0069】
特に、第1の基材と金属箔の間には、例えば接着剤やガラスフリットなどの他の材料や層が存在または導入されていない。技術的な理由から、わずかなガス介在物や不純物、例えば塵埃を避けることができない場合がある。これは、基材層間や基材層表面に場合により存在する、マイクロ範囲に至ることもある凹凸によって生じることもある。レーザによって生成される接合ゾーンあるいはレーザボンディング線が、好ましくは例えば4~25μmの高さHLを提供する場合、2つの基材間に発生する可能性のある間隙をふさぐことができるため、レーザボンディング線によって気密封止を確保することができる。
【0070】
1つまたは複数のレーザボンディング線は、距離DFで機能領域を取り囲むことができる。機能領域の周囲の距離DFは一定とすることができ、これにより、レーザボンディング線は、全ての側で機能領域の周囲にほぼ同じ距離で配置されている。距離DFは、用途に応じて変化させることも可能であり、例えば、1回の共通する作業工程で複数のエンクロージャを接合する場合や、機能領域が円形または任意の形状を有し、レーザボンディング線が直線状に引かれる場合には、生産技術上有利となる場合がある。キャビティが光学特性を有し、例えば集束レンズのようなレンズ形状で形成されている場合でも、レーザボンディング線は、キャビティの周囲に形成されていてよく、場合によってはキャビティからの距離が異なる。1つのエンクロージャが、複数のキャビティを含むこともできる。
【0071】
本方法は、以下の工程をさらに含むことができる:少なくとも2つの基材間の間隔プロファイルを決定することにより、少なくとも2つの基材の気密接続体を試験する工程。また、接続体の機械的強度あるいは気密性を試験するための第1の接合品質指数Q1を決定する工程が含まれていてもよい。
【0072】
第1の接合品質指数Q1は、Q1=1-(A-G)/Aとして決定することができる。ここで、Aは、接触領域の面積を表し、Gは、良好領域を表す。良好領域Gは、特に相接接触領域に対応し、良好領域Gは、構成要素である第1の基材と金属箔との間の間隙が5μm未満、好ましくは1μm未満、さらに好ましくは0.5μm未満、最も好ましくは最終的に0.2μm未満である接触領域の一部を表すことができる。接合品質指数Q1は、0.8以上、好ましくは0.9以上、さらに好ましくは0.95以上であってよい。
【0073】
接触領域は、利用可能領域Nを有することができ、この利用可能領域を、第1の接合品質指数Q1の算出に使用することができる。この場合、Q1は、Q1=1-(N-G)/Nとして求められる。
【0074】
本方法の範囲において、この目的のために、アセンブリの少なくとも1つの接触領域で入射するようにアセンブリに照射することによって生成される反射放射線を検出することができる。換言すれば、表面で入射放射線から反射放射線が生成されるようにアセンブリに照射あるいは照光される。ここで、反射放射線は、一方の表面である程度反射される、入射放射線の反射体であってよい。金属箔の反対側にさらなる基材が配置された2つの基材の場合、この目的のために、このような反射がすでに起こり得る3つの表面を考慮することができる。これは、第1の基材の上面、第2の基材の内面、および第2の基材の外面である。
【0075】
換言すれば、第1の基材は、周囲に向いており、かつ実質的に面状あるいは平坦に形成された外面またはさらには平坦な外面を有する。平坦な外面に隣接し、典型的には平坦な外面に対して直角に配向され、例えば平坦な外面の周縁部を周回するように構成された、周囲の狭い面が存在する。一例では、第1の基材は、2つの大面積面(すなわち、外面および内面)と、大面積面の間に配置された、特に2つの大面積面に対して垂直でありかつ大面積面に隣接する4つの小面積面とを有する板状または直方体と表すことができる。そして、4つの小面積面は一緒になって周囲の狭い面を形成し、上面は、第1の基材の平坦な外面を形成する。ここで、上面は通常、周囲の狭い面の小面積面の合計よりも大きな表面積を有する。サイズとサイズ比に関するこれらの指摘は、他の基材にも同様に適用できる。
【0076】
基材が金属箔と接触している領域では、内面では反射が全く生じないか、または言及に値する反射は生じないため、この割合は比較的低い。そこに間隙が存在する場合、すなわちこの部分領域で基材が金属箔と接触していない場合、入射光は、3つの表面すべてでそれぞれある程度反射される。例えば、基材が3つなど複数である場合は、それに応じてより多くの表面を考慮する必要があり得る。
【0077】
アセンブリの接触領域の第1の接合品質指数Q1は、基材スタックから測定あるいは観測装置に入る反射放射線から決定される。例えば、第1の接合品質指数Q1は、第1の基材が金属箔に接合される前に決定される。さらに、気密封止接合接続体の接触領域の第2の接合品質指数Q2を決定する工程が含まれていてよく、特に、Q2は、Q1より大きい。さらに、特にQ2/Q1は1.001より大きい。
【0078】
反射放射線は、好ましくはパターン、特に干渉パターンを生成し、さらに特に、このパターンは、エンクロージャの少なくとも1つの接触領域上での後方散乱と入射放射線との重ね合わせから生成される。その場合、干渉パターンを認識あるいは検出し、そこから基材と金属箔との間の間隙を算出あるいは導出できるように測定あるいは観測装置を設計することが可能である。
【0079】
反射放射線からのパターンは、パターンが1つ以上の欠陥の周囲に延びる配置を有することができる。換言すれば、パターンは、特に、基材が金属箔と接触していない箇所の周囲に配置されていることができる。その場合、基材が金属箔と接触していない箇所を測定あるいは観測装置で特定することは特に容易である。ここで、欠陥は、これらの欠陥における間隔が5μmより大きい、好ましくは2μmより大きい、さらに好ましくは1μmより大きい、0.5μmより大きい、または好ましくは0.2μmより大きいことを特徴とし得る。換言すれば、欠陥は、特に好ましくはまさに良好領域Gの基準を満たさないところに存在する。この場合、基材と金属箔との間の接触領域は、良好領域Gと欠陥Fとに完全に分けることができる。
【0080】
対応する領域の割り当ては、一例としてニュートンリングの形の干渉パターンを用いて特定することができる。入射放射線を可視光域、例えばλ=500nmとすると、各ニュートンリングはλ/2=250nmの高低差を示す。例えば、ニュートンリングが3個発生することを良好領域の存在の有無を定めるための限界値基準とした場合、エンクロージャからの反射放射線の光学画像解析において、基材と金属箔との間隙が3λ/2=750nm以下である領域を良好領域と定義することができる。
【0081】
本発明の範囲には、上述の方法を用いて製造されたエンクロージャも包含される。
【0082】
提案されたエンクロージャは、時計ケーシングとしての使用に特に適している。さらなる応用分野は、特に、例えば内視鏡検査、サンプリング容器または反応容器への光学的アクセスおよびフローセルなどの光学分析用装置に関する。
【0083】
以下に、実施例をもとに図面を参照して本発明をより詳細に説明するが、同一および類似の要素には、部分的に同一の参照符号が付されており、様々な実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】気密接続体の第1の実施形態を示す図である。
【
図1a】レーザ接合前の接合ゾーンの部分詳細図である。
【
図1b】レーザ接合線が導入された接合ゾーンの部分詳細図である。
【
図2】気密接続体の上面図であり、気密接続体は、ここでは機能領域を有するエンクロージャとして設計されている。
【
図4】金属部材が接合された気密接続体の側断面図である。
【
図5】金属部材が接合された気密接続体の側断面図である。
【
図7】金属箔で部分的にのみ覆われた気密接続体の側断面図である。
【
図8a】エンクロージャの実施形態を示す図である。
【
図8b】側方に枠部を有するエンクロージャのさらなる実施形態を示す図である。
【
図9a】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9b】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9c】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9d】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9e】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9f】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9g】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図9h】気密接続体あるいはエンクロージャの製造工程の実施形態を示す図である。
【
図10】エッジ接合を有する気密接続体のさらなる実施形態を示す図である。
【
図11】金属部材が接合された
図10の実施形態を示す図である。
【
図11a】側方に金属部材が接合された
図10のさらなる実施形態を示す図である。
【
図12】気密接続体のさらなる実施形態を示す図である。
【
図13】フランジに溶接されたファイバロッドを示す図である。
【
図14】結晶部材を備えた気密エンクロージャを示す図である。
【
図15】ウェハ上の複数の気密エンクロージャの製造を示す図である。
【0085】
発明の詳細な説明
図1を参照すると、本発明による気密接続体1の第1の実施形態が図示されており、誘電体4あるいは第1の基材4が金属箔3の全面に配置されている。誘電体4あるいは第1の基材4は、その内面11が金属箔3の内面12に当接するように金属箔3に載置されている。したがって、2つの接合パートナー3,4は、互いに接触している。特定の表面特性に応じて、接合パートナー3,4は、面状に互いに接触することができる。第1の基材4の表面が粗い場合、接合パートナー3,4は、最初は部分的あるいは一部の領域でしか接触していない可能性がある。接合パートナー3,4が互いに重ねられている場合、重力により接合パートナー3,4はすでに最低限接触している。この場合、金属箔3は第1の基材4の内面11に押し付けられて永久変形することができ、それにより、第1の基材4の内面11に存在し得る凹凸を平坦化することができる。
【0086】
図1の例では、2つの接合パートナー3,4を一緒に接合するために、3本のレーザ接合線6a,6b,6cあるいは結合点6a,6b,6cが導入されている。接合点/接合線6a,6b,6cは、接合パートナー3,4の側面に沿って配置されており、レーザ80を用いて(例えば
図9c参照)接合点が(図面では)上方から導入される。ここで、焦点面は、好ましくは内面11,12の領域の下方に設定されている。有利には、焦点面は、金属箔3内に位置するようにされており、例えば金属箔3内に10~20μm入り込むように、すなわち金属箔3の内面12より10~20μm下方に位置するように設定されている。これにより、レーザビーム82は、接触面15において、好ましくは4μm±1μm、さらに好ましくは4μm±2μm、さらに好ましくは4μm±3μmの所望の幅を達成することができる。この幅は、レンズ前での適切なビーム整形によっても達成することができる。
【0087】
図1に示すような事例において、2つの接合パートナー3,4がその内面11,12で互いに直に隣接している、すなわち特に面状に接触している場合には、
図1に図示されているように、接触面15はまた、2つの内面11,12と同じである。
【0088】
図1にはさらに、3本のレーザ接合線6a,6b,6cが図示されており、これらは互いに重なり合っているため、レーザ接合線6a,6b,6c同士も相互作用する。ここで、目的に応じて様々な効果を誘発あるいは達成することができる。例えば、レーザ接合線をウォーム・イン・ウォームに設定することはできないが、連続するレーザ接合線6bは、前のレーザ接合線6aがすでに冷却された状態となってから導入される。ここで、導入される熱エネルギーの総量は極めてわずかのみであり、また金属箔3の金属材料は主に優れた熱伝導性を有するため、レーザ接合線の冷却プロセスは極めて迅速に行われる。第1のレーザ接合線6aにより、2つの接合パートナー3,4の材料がすでに混合され、存在し得る凹凸や間隙(空隙)がわずかに溶融状態でふさがれる。ここで、表面品質に応じて、例えば接合される接触領域15の領域に5μmにものぼる大きな空隙が存在する場合には、第1のレーザ接合線6aでは、ともすると接合が不十分にしか形成されないことがあり得る。しかし、接合される接触領域15の領域は、第1のレーザ接合線6aの導入により閉鎖されており、空隙が存在する場合には空隙は閉鎖されており、材料はすでに少なくとも「混ざり合って」いるため、第2のレーザ接合線6bおよび場合によっては第3のレーザ接合線6cの導入により可能であるのは、単に接合パートナー3,4の2つの材料の最適なさらなる融合を生じさせることのみである。
【0089】
図1aは、レーザ接合前の接合ゾーンの部分詳細図を示す。金属箔3は、第1の接触領域11の凹凸に沿って密着しているため、金属箔3は、場合によってはもはや元の平坦な形状ではなく、湾曲したまたは複雑な表面形状となり得る。金属箔3の接触領域12は、接触領域11の形状規定に沿うことができる。これにより、第1の基材4と金属箔3との接触面15の最大の間隙を超えずに、金属箔3が第1の接触領域11の輪郭に沿うことを保証することができる。
【0090】
図1bは、レーザ接合線6が導入された
図1aの部分詳細図を示す。金属箔3が第1の基材の接触領域11の凹凸にシームレスに沿って接触領域11に密着していることにより、2つの接触領域11,12間の間隙を狭く抑えることができるため、レーザ接合線6も接合工程の予定位置に確実に導入することができる。つまり2つの接触領域11,12間の間隙が広すぎると、確実な接合ができず、ひいては空隙をふさぐことができない場合や、不十分な接続しか生じない場合がある。金属箔3を使用することにより、接合パートナー3,4間の間隙は狭いままであり、接合線6の導入が保証されている。接合線6は溶融ゾーン62を有し、このゾーン62では、第1の基材4の材料および金属箔3の材料が溶融して互いに混合される。接合線6の内部には、1つ(または複数)の気泡64が発生する可能性があり、この気泡64は、典型的には(図示の面では、しかし典型的には実際の実施でも)上方から射出されるレーザ80の射出方向を向いている。膨らみ32やアーチ状物が下面に残ることがあるが、これは、場合によってはその後の金属部材との通常の溶接プロセスに有利となることがあり、溶接リブのように作用する。
【0091】
図2は、気密接続体1の上面図を示し、ここで、レーザ接合線6a,6b,6cが機能領域2の周囲を囲んでいる。簡略化のため、以下の図ではレーザ接合線6が1本のみ図示されているが、各実施形態では複数のレーザ接合線6,6a,6b,6cを使用することもできる。
図2の実施形態では、機能領域2を全周にわたって気密封止するために、レーザ接合線6a,6b,6cが機能領域2の周囲を完全に囲んでいる。原理的には、機能領域2の気密封止は、単一のレーザ接合線6でもすでに達成できる。複数のレーザ接合線6,6a,6b,6cを使用すると、せん断強度が向上し、さらに、複数のレーザ接合線6,6a,6b,6cを使用すると、冗長性によって気密性を場合によっては確保または向上させることができる。
【0092】
例えば、リークガスとして例えばヘリウムを用いたガスリーク試験を適用してエンクロージャあるいは気密接続体1の気密性を試験または判定することができる。気密性は特に、圧力差1barで気密接続体1の内部と周囲との間のガスリークレートが10-7mbar・ls-1以下、好ましくは10-8mbar・ls-1以下、さらに好ましくは10-9・ls-1以下である場合に得られる。
【0093】
ここで、レーザ接合線6a,6b,6cの周囲の溶融ゾーン62は、幅Wを有する。機能領域2には、例えば電子回路などの収容物5が配置されていてよい(例えば
図9g参照)。
【0094】
図3は、気密接続体1のさらなる一実施形態を示し、該気密接続体1は、使用されるレーザ波長の範囲において典型的には透明である第1の基材4を備えている。基材4は、その外面に機能領域2aを有しており、これは例えば、反射防止コーティングのような光学コーティング、発光素子を含む層、特に発光ダイオードを含む層、偏光子、またはさらには電気的もしくは電子的機能を有する層である。
【0095】
第1の基材4の内面11には、機能層2が施与されている。機能領域あるいは機能層2,2aは、コーティングのように第1の基材に塗布されていてもよいし、そこに配置あるいは接着されていてもよい。機能層あるいは機能領域2にレーザ接合線6を照射することが可能であると有利である場合がある。その場合、機能領域を、例えば第1の基材4の内面11の表面全体に施与することができるが、それでもレーザ接合プロセスを実施することができる。
図3の実施形態がこれに該当し、この実施形態では、全面的な機能層2が図示されており、レーザ接合線が基材4の外側に沿って走り、閉じた線を形成している(
図2参照)。あまり複雑でない図示とするため、解像度がさほど高くなるようには選択されていない。この点に関して、すべての実施形態において、対応する詳細を示す
図1aおよび
図1bが暗示的に参照され、したがって、金属箔の使用による重要な利点、すなわち、金属箔が第1の基材4の内面11のすべての凹凸に沿うことができるという利点も引き継がれる。
【0096】
図4を参照すると、気密接続体1が示されており、金属箔の下面14は、明瞭にするために、明らかに凹凸のあるいは粗い形状を有する。金属部材44も粗い形状を有することができ、なぜならば、そこでは平坦なまたは研磨された表面が不要であるためである。これは、金属部材44と基材4との間の直接的な接触を確立する必要があった以前の試験に比べ、かなりの利点となる。金属箔3を金属部材44と基材4との間の中間体として同等に使用することにより、製造コストを大幅に削減することができると同時に、強力で耐荷重性があり、かつ/または気密性の接続体を実現することができる。
【0097】
図5は、
図3の実施形態を示しており、金属部材44が、従来の方法、すなわち接合シーム42の導入によって取り付けられている。金属箔3が金属を含むことにより、この場合には金属と金属とが接続されるため、特に溶接のような従来の接合プロセスを用いることができる。ここで特に有利であるのが、例えば表面品質あるいは表面仕上げの点で、従来の接合プロセスの要求が、レーザ接合の要求に比べて低いことである。したがって、基材と反対側の金属箔3の下面および/または金属体44の接触領域18を加工あるいは研磨する必要がない場合がある。したがって、金属箔3を施与する中間工程によって、場合によってはそれ以降のすべてのプロセス工程が大幅に簡略化される。これは、まず金属箔3が接触面15のクリティカルな空隙をふさぐのに役立ち、次に、特に金属溶接のような従来の接合プロセスを用いて金属部材を最終的にその接触領域18で金属箔3に接続することができ、その際にかなり大きな空隙をふさぐことができ、しかも安定した確実な接続を生じさせることができるという点で、様々なサイズの金属部材44またはプラスチック部材44aの内面18が粗いあるいは平坦でない場合であっても施与が可能であるためである。したがって、金属箔3が場合によってはその外面にも凹凸を有しており、例えばこれらの凹凸が、金属箔3の内面12に形成される凹凸を拾っても問題にはならない。なぜならば、従来の金属溶接プロセスは、粗さあるいは凹凸に対してより寛容あるいはより堅牢であるためである。
【0098】
図6を参照すると、気密接続体1の一実施形態が示されており、金属箔3が、基材4の外側を囲む環状部分に配置されており、基材4の中央領域には、金属箔3が配置されていない窓部が残っている。換言すれば、金属箔3は、基材4上に一部の領域にしか配置されていない。
【0099】
図7は、このような、金属箔3が一部の領域にしか配置されていない実施形態の断面を示しており、金属箔3は、レーザ接合線6によって基材4に接合されている。金属箔3が一部の領域に配置されていることに対応して、例えば基材4上に電気接点を設けるために、金属箔の一部のセクションの配置が提供されていてもよい。このような金属箔3の施与による一部のセクションでの接触は、例えば、少なくともレーザ接合点のサイズを有することができる。金属箔3の幅W
cは、典型的には、レーザ接合線6の幅Wの1.5倍以上に相当することができる。換言すれば、金属箔は、例えば50μm、100μm以上、200μm以上、あるいは数百μmの比較的小さな延在部を有することができる。基材4を金属箔3に気密接合して分離不可能な接続を生じさせるために、レーザ接合線6,6a,6b,6cは、典型的には完全に気密状態で導入される。本発明はまた、本出願人の社内ですでに確立された既知の接合プロセスを背景として、接合対象物3,4間の様々なパラメータあるいは接合プロセスの一貫したさらなる開発を取り扱う。ここで、本発明の範囲において、1つの焦点は、金属箔3の接合パートナーおよび自由に設計可能な金属部材42を介した基材4の接続に当てられる。ここで、基材4は通常は、誘電体、特にガラス、ガラスセラミック、サファイアなどとして提供される。例えば、気密アセンブリ1は、スマートウォッチ用の時計ガラスとして提供される。この場合、接合工程に関与する様々な材料の大幅に異なるCTE値、および場合によっては異なる脆性などを考慮しなければならない。特に、基材4と金属箔3の第1の接合パートナーとの間に残る空隙がクリティカルとなる場合があり、この空隙を、導入されるレーザ接合線6の全領域において可能な限り狭く抑えるべきであることが判明した。形成されるレーザ接合線6のレーザ接合点の領域における、このような、存在し得る、場合によっては望ましくない空隙は、有利には可能な限り狭くなるように形成されており、少なくともまずレーザの射出に伴ってレーザ接合点でプラズマが発火し得る程度に狭くなるように形成されている。プラズマ発火は、レーザ80を用いてレーザ接合線6に沿って十分なスポット状の熱量を加えることができるための前提条件である。この目的のためには、再凝固ゾーンをレーザ接合線6の領域に可能な限り限定することができることも有利である。ここで、本発明の範囲において、金属箔3を有利に使用することにより、空隙をさらに狭くすることができ、あるいは計画されたレーザ接合線6の延在部にわたって空隙を連続的に十分に狭く抑えることができ、その結果、好ましくない光学的障害および/または機械的安定性に影響を及ぼす亀裂もしくは細孔の低減に役立ち得ることが明らかになった。これにより、特に非常に高品質の製品において望まれるあるいは必要とされる、さらに改善された製品を提供することができる。この例としては、前述のスマートウォッチが挙げられるが、実施形態によっては、航空宇宙や医療技術への応用も挙げられる。その場合、融合ゾーン62において基材4の材料を金属箔3の材料と融合させることができ、これは、両者を同時に溶融状態で混ぜ合わせた場合に該当する。例えば、すでに融合ゾーン64での融合により、接続体1の十分な付着力、ひいては十分な保持力を生じさせることができる。例えば、金属箔3の永久変形および基材4の接触領域11への密着によって、導入されるレーザ接合線6の領域において連続的に0.5μm以下である空隙を接触面15に残すことが望ましい場合がある。例えば、レーザ82がレーザ接合線6に射出される際に、材料の融合領域にデントライトおよび/またはドロップレットを形成することができ、これにより基材4と金属箔3との間の咬み合いが提供または改善される。ここで、ドロップレットは、それぞれの他の接合パートナー材料に投射され、デントライトは、それぞれの接合パートナー材料からそれぞれの他の接合パートナー材料の中へのアンカーまたはペグとして作用する。
【0100】
金属箔3が接触領域11に密着することにより、金属箔3を基材4の接触領域11から理想的な距離とすることにより、接触領域11と接触領域12との間の空隙を理想的な大きさにすることができる。この場合、この理想的な大きさがゼロではなく、非常に短い距離が維持されると有利であり、なぜならば、これにより、レーザ接合線6の導入中に接合パートナー3,4の材料が溶融液状態である場合にその材料が逃げ込むことができる回避ゾーンを形成あるいは提供することができるためである。このようにして、場合によっては接合パートナー3,4の亀裂あるいは空洞を低減することができる。これは、金属箔3が基材4上で一部の領域にしかあるいは一部のセクションにしか配置されない場合にも当てはまり、なぜならば、この場合には、接合工程中に溶融液材料が流れ込むことができる空隙領域が自動的に形成されるためである。この場合、接触領域11,12間の空隙を完全に省略することができ、金属箔3と基材4との完全な接触を設定することができる。
【0101】
図8aを参照すると、気密エンクロージャ9が図示されており、まずレーザ接合線6により第1の基材4が金属箔3に接合されている。機能領域2が基材4の下面全体に配置されており、レーザ接合線3は機能領域2を貫通している。それにもかかわらず、内部領域50には、機能領域2の完全に連続した部分が配置されており、この部分がキャビティ50の上面を形成している。例えばスマートウォッチの表示面を形成するために、例えばLEDを含む層2がここに設けられていてよい。金属箔3には、従来の金属溶接によって接合シーム42が施与されており、この接合シーム42によって金属部材44が取り付けられており、かつアセンブリ1に対して堅固かつ気密に接続されている。
【0102】
図8bは、エンクロージャ9のさらなる一実施形態を示し、エンクロージャ9によってキャビティ50が気密封止されている。アセンブリ1は、基材4と、レーザ接合線6によりこの基材4と接合された金属箔3とを備えている。金属箔3は、接合シーム42によって、分離ができないように金属部材44に接続されている。金属部材44はアセンブリ1を取り囲んでいるため、基材4は、その側面も保護され、改善された状態で保持されている。こうして、基材スタックの角部46が金属部材44によって側方でも保持される。ここで、レーザ接合シーム6および接合シーム42は、原則として重なり合うことができ、また融合していてもよく、なぜならば、融合ゾーン62,64全体に(
図1b参照)金属材料が存在し、したがって金属溶接もそこで行うことができるためである。したがって、直接的におよびレーザ接合線6によって、基材4を従来の接合プロセスによって金属部材44と接合して使用することができる。換言すれば、基材4から金属箔3を通じて金属部材44へと連続的な融接が形成される。
【0103】
図9aから
図9hを参照して、気密接続体1あるいはエンクロージャ9の製造を個々の工程で説明する。
図9aに示す工程では、溶射あるいはスパッタリングにより機能層2を基材4の内面11に施与する。層2は、光学活性層や電気的または電子的特性を有する層であってもよく、例えば発光ダイオード(LED)を含むことができる。
【0104】
図9bでは、基材4の内面11の接触面15の領域に金属箔3を配置する。この場合、金属箔3は、基材4上に一部の領域にしか配置されておらず、すなわち、外側を囲む領域にしか配置されていない。
図9cに示す工程は、レーザ発生器80から供給される集束レーザビーム82によって金属箔3を基材4に気密接続するためのレーザ接合線6の導入を示す。例えば、気密アセンブリ1をレーザ発生器80の下方にて可動テーブル上でレーザ発生器80に対して動かすことで、気密接続体1においてレーザ接合シームを形成する。
【0105】
図9dに図示した工程により完成レーザ接合線6が生成され、例えばエッジ研磨やフライス加工工程によって後処理されたエッジ74を形成する。場合によっては、
図9eに示す工程により、第1の基材4の外面のアブレシブ研磨72を行うことも、基材4の外面に例えばコーティングや光学被覆などのさらなる機能層2a(
図9e)を施与することもできる。
【0106】
図9fに、機能層52の周囲の気密アセンブリを補足的に図示し、機能層52は、例えばLEDを有する。
【0107】
図9gを参照すると、金属部材44上の気密アセンブリ1の配置構成が示されている。形成されたキャビティ50内に、収容物5が配置されている。収容物5は、バッテリやアキュムレータなどの電源であってもよいし、演算装置や電子部材などであってもよい。金属箔3は、金属部材44の突出部45に隣接して配置され、金属箔3が少なくとも部分的に突出部45と接触するようになっている。これにより、金属箔3と金属部材44との間の電気伝導性が確保され、それにより金属溶接プロセスを実施するための前提条件が得られる。
【0108】
さらに
図9hを参照すると、導入された金属接合シーム42が図示されており、これによって気密アセンブリ1は、分離ができないように金属部材44に接続されている。全体として、キャビティ50は、この時点で外部から気密に遮断されており、したがって気密封止されている。
【0109】
図10を参照すると、金属箔3の代替的な配置構成が提示されており、金属箔3は垂直部3aを有しており、集束レーザビーム82が基材4の周縁領域に十分に接近して導入される場合、レーザ接合線6において、水平面内だけでなく垂直領域の一部のセクションにおいても融接を導入することができる。この場合、特に有利には、金属箔3,3aが基材の周縁領域にこのように接近していないと、通常は作業することができない。なぜならば、応力のないあるいは信頼できる接合結果を達成できるほど十分な基材材料4がレーザ接合ゾーンの側方に残っていないためである。レーザは基材4の側縁部によって偏向され、レーザ接合6を実現し得るのに十分にエネルギーが焦点に到達しない。しかし、遮光を行うか、あるいは基材4の側縁部を金属箔3,3aで囲むことにより、レーザ接合シーム6を明らかにさらに基材4の周縁部で導入することができ、その結果、全体として、レーザ接合シーム6の間に目的領域用のエリアをより多く残すことができ、同時に、レーザ接合シーム6の外側の場合によっては魅力に乏しい外周縁部をさらに小さくすることができる。この構成は、特にスマートウォッチにとって非常に魅力的であり得る。場合によってはまた、変更された金属接合シーム42aをさらに小さくし、したがって魅力的でない周縁領域をなおもさらに減少させることも可能である(
図11および
図11a参照)。この場合、従来の接合プロセスを用いて側方の接合を側方の周縁領域へと延ばすこともできることにより、金属部材44は、気密アセンブリ1の枠部あるいは包囲部も提供することができる。
【0110】
図11および
図11aは、対応する可能なアセンブリあるいは構成体を示しており、これらのアセンブリあるいは構成体を互いに組み合わせることで、金属箔3,3aと金属部材44との間の金属結合を生じさせ、ひいては基材-金属接合をなおもさらに改善することも可能である。
【0111】
最後に、
図12を参照すると、気密アセンブリ1の一実施形態がさらに図示されており、レーザ接合線6の下面に隆起部あるいは溶接リブ32が図示されており、これらによって、確実な接触、ひいては確実な導電接続が確立され、かつその後の金属接合工程による金属接合線42,42aの導入が簡略化されるため、そこに取り付けられる金属部材44との導電接続を改善することができる。場合によっては、例えば溶融材料がそれ自体で溶接リブを形成することによって、または金属箔3,3aがレーザ接合線の領域でひだを形成し、これがレーザ接合プロセス後に下面に残ることによって、レーザ接合線の導入時に溶接リブ32を残すことができる。場合によっては、金属箔3,3aを、その下面に最初から溶接リブ32が設けられるように前もって調整あるいは準備しておくことができ、それによって、その後の金属接合工程が簡略化される。
【0112】
金属部材44の代わりにプラスチック部材(44a)が取り付けられていてもよく、金属箔3,3aとプラスチック部材との間で従来の接合プロセスを使用してエンクロージャ9を形成することができる。
【0113】
また、金属部材44の代わりに繊維複合材製の部材を使用し、これを従来の方法で金属箔3に接続することも想定可能である。取り付ける部材の考えられる他の材料としては、TeflonやPEEKが挙げられる。
【0114】
このようにして、中間箔、すなわち金属箔を使用することにより、特に好ましくは金属部材44、またはプラスチック部材44aあるいは繊維複合材製の部材のような複数の部材について、こうした部材への材料接続を確立することができる。
【0115】
最後に、レーザ接合線6,6a,6b,6cあるいは結合点が1つだけ導入される場合、レーザ接合線の幅Wは、レーザ発生器(
図10参照)によって生成される接触領域15上のビーム幅2w
レーザとほぼ一致することが補足される。平行に配置されたN本のレーザ接合線6,6a,6b,6cでは、例えばレーザ作用領域のオーバーラップを達成することが目的であるため、達成されるレーザ接合線の幅Wは、通常は、接触領域15上のビーム幅2w
レーザのN倍以下である。H
mは、融合ゾーン62の高さを表し、H
rは、再凝固領域の高さを表す。理想的には、H
mは、H
r以上である。
【0116】
図13は、例えば反応容器に接続できるように調整されたフランジ102を示す。反応容器に収容された媒体の光学試験を実施するために、光学的アクセスを可能にし、分光計のような光学測定器を接続することが想定される。ここで、分光計や分光計の測定ヘッドに接続するためにアダプタ104が設けられており、このアダプタ104は、例えば溶接によってフランジ102に接続されている。光学的アクセスのために、フランジ102内にはボア103が配置されており、そこにファイバロッド100が導入されている。ここで、ファイバロッド100は、光を反応容器内に導き、再び反応容器から出すためのライトガイドとして機能する。導光体100とフランジ102との間の気密封止接続のために、部材を互いに溶接することが想定される。
【0117】
図13の部分拡大図に図示されているように、これに関して金属箔6がファイバロッド100の一端の領域に配置されており、レーザ溶接点またはレーザボンディング線6によって第1の基材4としてのファイバロッド100に接続されている。ここで、
図13に図示されているように、金属箔3は、好ましくは垂直部3aを有しており、この垂直部3aは、ボア103の壁に接続するように設けられている。次に、ボア103にファイバロッド100が導入され、このファイバロッド100は、ファイバロッド100に固定された金属箔3を介して、金属部材44であるフランジ102に例えば溶接によって接続される。
【0118】
図14および
図15にはそれぞれ、基材スタック1が結晶部材106に接続された気密エンクロージャ9が図示されている。
図14および
図15に図示された実施形態では、基材スタック1は、第1の基材4およびさらなる基材4’から形成されている。ここで、さらなる基材4’は、エンクロージャ9の蓋部または底部を形成している。第1の基材4は、エンクロージャ9の側壁を形成している。第1の基材4と結晶部材106とを接合するために、上述のように金属箔3が第1の基材4の端面に配置され、ここでは例えばレーザボンディング線6により接続される。その後、結晶部材106を基材スタック1上に配置するか、または逆に基材スタック1を結晶部材106上に配置し、溶接接続によりエンクロージャ9を閉じることができる。
【0119】
図15は、
図14を参照してすでに説明したように、ウェハ全体を加工することによって複数のエンクロージャ9の製造方法を示している。この目的のために、スペーサウェハとして形成される第1の基材4をさらなる基材4’に接続することによって、基材スタック1が形成される。ここで、スペーサウェハは、形成される各エンクロージャ9のための窪みあるいはキャビティを含む。ここで、第1の基材4およびスペーサウェハの双方とも、例えば、ケイ素やゲルマニウムのような半金属製であってもよいし、ガラス製であってもよく、レーザボンディングプロセスにより直接、すなわち金属箔3を用いずに互いに気密接合することができる。その後、後にエンクロージャ9の内部を形成する個々の窪み用に抜かれた金属箔3が基材スタック1上に配置され、レーザ接合線6または個々の結合点によって接続される。その後、
図15に図示されているように、例えば結晶部材106として設計された個々のディスクが配置され、金属箔3に溶接される。また、ウェハ全体を結晶部材106として配置して接合することも当然のことながら可能である。その後、形成されたエンクロージャ9は、ダイシングライン108に沿った基材スタック1の分離により個別に切り離される。
【0120】
このように、本明細書により、レーザ接合プロセスによって2つの異なる接合パートナーを互いに接合する方法、すなわちこれを、残りの空隙寸法の制御をなおもより良好にし、あるいは相接接触領域をさらに増大させ、ひいてはレーザ接合線6,6a,6b,6cの品質を向上させる金属箔を使用することにより行う方法を、完全にかつ理解し易いように示すことができた。対応する気密接続体についても詳細に説明し、再現可能に説明した。本明細書には、「従来の」知識と矛盾する可能性のある、あるいは意想外に発見することができた記述が多数含まれている。この点においても、本発明は、ドイツ特許出願DE102020129380.1(本出願の時点で未公開)のさらなる発展形態を示すものであり、その内容全体が本明細書において参照により援用され、その全てが本願に組み込まれる。
【0121】
上述した実施形態は例示的なものとして理解されるべきであり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく様々に変更を加えてもよいことは当業者には自明である。さらに、各特徴は、本明細書、特許請求の範囲、図面などに開示されているか否かにかかわらず、他の特徴とともに記載されている場合であっても、個々に本発明の実質的な構成要素を定めるものであることも明らかである。すべての図面において同一の参照符号は同一の特徴を示すため、1つの図面でしか言及されていない特徴、または少なくともすべての図面に関して言及されているわけではない特徴の記載を、その特徴が明細書に記載されていない図面にも移すことができる。
【符号の説明】
【0122】
1 接続体あるいは基材スタック
2,2a 機能領域
3 金属箔
3a 金属箔の永久変形
4 第1の基材(例えば誘電体、例えばガラス)
4’ さらなる基材
5 収容物
6,6a,6b,6c 接合ゾーンあるいはレーザボンディング線
9 エンクロージャ
10 窓部
11 第1の基材の接触領域または内面
12 金属箔の接触領域または内面
14 金属箔の下面
15 接合パートナー間の接触領域
18 金属部材の接触領域
32 隆起部あるいは溶接リブ
42 従来の接合線あるいは金属接合線
44 金属部材
44a プラスチック部材
45 金属部材の突出部
46 基材スタックの角部
50 キャビティまたは内部空間
52 機能エレメント、例えばLED層
62 溶融ゾーンあるいは融合ゾーン
64 「バブル」
70 施与手段、例えばスパッタノズル
72 研磨手段
74 第1の基材4の後処理されたエッジ
80 レーザ発生器
82 集束レーザビーム
W レーザ接合線6,6a,6b,6cの幅
100 ファイバロッド
102 フランジ
103 ボア
104 アダプタ
106 結晶部材
108 ダイシングライン
【国際調査報告】