(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】悪性神経膠腫を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20241210BHJP
C07K 14/21 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241210BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241210BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61P35/00
A61P25/00
C07K19/00
C07K14/54
C07K14/21
C12N15/24
C12N15/31
C12N15/62 Z
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527735
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022079654
(87)【国際公開番号】W WO2023086896
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524176258
【氏名又は名称】ターゲピューティクス,インク
【氏名又は名称原語表記】TARGEPEUTICS,INC.
【住所又は居所原語表記】1214 Research Blvd.,Suite 1011 Hummelstown,PA 17036 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュレーセンゴスト,ランディー
(72)【発明者】
【氏名】ルートケヴィッテ,サード,シルヴァン ビー.
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB26
2G045CB30
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FA40
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA26
4C084BA41
4C084CA04
4C084CA59
4C084DA12
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZB261
4C084ZC411
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA83
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法であって、治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含み、悪性神経膠腫はインターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する、方法が開示される。IL13Rα2を発現する悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法で使用するための変異誘発IL13であって、本方法は、治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含む、変異誘発IL13も開示される。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法であって、
治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(mIL13)(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与すること
を含み、
前記悪性神経膠腫はインターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する、方法。
【請求項2】
前記cmIL13は4時間から96時間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記cmIL13は0.03μg/mLから1μg/mLの用量で投与される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記cmIL13の投与は最大1mL/時間の流量で施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サイトトキシンは細菌由来毒素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌由来毒素はシュードモナスエクソトクシンAを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記悪性神経膠腫はハイグレード神経膠腫を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記悪性神経膠腫は、成人膠芽腫、小児膠芽腫、退形成性星状細胞腫、退形成性乏突起神経膠腫、退形成性乏突起星細胞腫、退形成性上衣腫、および/または退形成性神経節腫を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
撮像成分の同時注入をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
試料中のIL13Rα2の発現を検出することをさらに含み、前記IL13Rα2の発現は、前記悪性神経膠腫がcmIL13による治療に反応することを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記試料は、
血液、血漿、唾液、尿、および/もしくは脳脊髄液の液体生検、ならびに/または
臓器および/もしくは組織の固体生検
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織は腫瘍を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍は前記悪性神経膠腫を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記液体生検は細胞外小胞および/または無細胞遺伝物質を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
IL13Rα2の発現の検出は、質量分析法、分析アッセイ、免疫染色法、および/またはシーケンシングによって行われる、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a)前記分析アッセイは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含み、
(b)前記免疫染色法は、免疫組織化学法(IHC)および/もしくは蛍光細胞化学を含み、ならびに/または
(c)前記シーケンシングは、全ゲノムシーケンシング、全エクソームシーケンシング、RNAシーケンシング、および/もしくはプロテオミクスシーケンシングを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記投与によって、治療効果のある量のcmIL13が投与されない悪性神経膠腫を有するコントロール対象に対して、前記対象の生存率が向上する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生存率の向上は、カプランマイヤー生存曲線分析によって判定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法によって、神経膠腫でない細胞内および/または神経膠腫でない組織内では、臨床的に関係のあるバイオマーカーに検出可能な変化がない、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマーカーは、NeuNおよびCD68+タンパク質を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IL13Rα2を発現する細胞への前記cmIL13の前記投与によって、
(i)前記悪性神経膠腫の体積が減少し、
(ii)IHCもしくは蛍光細胞化学によって測定される、検出可能な切断型カスパーゼ3が増加し、および/または
(iii)IHCもしくは蛍光細胞化学によって測定される、Ki‐67陽性細胞のレベルが少なくとも10%低下する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記悪性神経膠腫の前記体積の減少は、分散分析(ANOVA)試験によって判定され、統計的有意性はp値<0.05によって判定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記悪性神経膠腫の前記体積の減少は、スチューデントの両側t検定によって判定され、統計的有意性はp値<0.05によって判定される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記mIL13は、天然型ヒトIL13と比べてIL13Rα2に対する親和性が上昇する、および/または天然型ヒトIL13と比べてインターロイキン13受容体α1(IL13Rα1)に対する親和性が低下するように改変される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記m13は、配列番号1または配列番号2と比べたときに少なくとも1つのアミノ酸の置換を特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記mIL13は、位置E13、R66、S69、および/またはK105において、野生型IL13に対するアミノ酸変化を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記mIL13は、1つまたは複数のアミノ酸置換基E13K.R66D.S69D.K105Rを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記mIL13は、配列番号3から24の1つもしくはその相同物または配列番号1もしくは配列番号2の一方の相同物に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記mIL13は、20以下の残基が配列番号1または配列番号2とは異なる、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
インターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法で使用するための、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)であって、前記方法は、治療効果のある量のcmIL13を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含み、および/または、前記治療方法はさらに、場合により、請求項1~29に記載の特徴のうちのいずれかによって特徴づけられている、変異誘発IL13(cmIL13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月10日出願の米国特許仮出願第63/277,866号の利益を主張するものであり、その文献を本願に引用して援用する。
【0002】
技術分野
本開示は癌治療に関する。
【背景技術】
【0003】
効果的な治療処置がないせいで悪性神経膠腫の予後は不良なままである。特定の癌に対する現在の治療様式は効果が限られているため、それらの疾患を患う患者のための効果的かつ新規の治療を開発する必要が顕著である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法であって、治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(mIL13:mutagenized IL13)(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED:convection‐enhanced delivery)によって最大96時間にわたって投与することを含み、悪性神経膠腫はインターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する、方法が、本明細書で開示される。
【0005】
IL13Rα2を発現する悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法で使用するための、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)であって、本方法は、治療効果のある量のcmIL13を対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含む、変異誘発IL13(cmIL13)も本明細書で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】びまん性正中神経膠腫(DMG:diffuse midline glioma)および成人膠芽腫(GBM:glioblastoma)の細胞モデルのRNAシーケンスを示す。
【
図1B】DMGおよびGBMの細胞モデルの免疫ブロットを示す。
【
図2A】DMG細胞株の細胞増殖および用量反応曲線をcmIL13投与量の関数の反応パーセントとして示す。
【
図2B】DMG細胞株の細胞生存能力および用量反応曲線をcmIL13投与量の関数の反応パーセントとして示す。
【
図2C】DMG細胞のIL13Rα2発現と、cmIL13に対する感度との間の反比例関係のグラフを示す。
【
図2D】野生型IL13(10ng/mL)曝露の8、24、48、および72時間後の、SU‐DIPG XIII‐P、SF8628、およびPED17細胞株の免疫ブロットを示す。
【
図2E】cmIL13(細胞株特異的IC
50)曝露の8、24、48、および72時間後の、SU‐DIPG XIII‐P、SF8628、およびPED17細胞株の免疫ブロットを示す。
【
図2F】IC
50のcmIL13による処理の72時間後の、SF8628細胞の免疫蛍光検査染色を示す。
【
図3】成人GBM細胞株の細胞生存能力および用量反応曲線をcmIL13投与量の関数の反応パーセントとして示す。
【
図4】DMGおよびGBM細胞株に関するcmIL13のIC
50値をIL‐13Rα2発現の関数として示す。
【
図5A】腫瘍細胞注射およびCEDのワークフローの概略図である。
【
図5B】GBM6担持動物にcmIL13を1μg注射した後の日数の関数として、生物発光(BLI:Biolumiscence)信号を示す。
【
図5C】GBM6担持動物の生存期間が延びたことを、cmIL13を1μg注射した後の日数の関数として生存パーセントによって示す。
【
図5D】PED17異種移植片にcmIL13を1μg注射した後の日数の関数としてBLI信号を示す。
【
図5E】PED17異種移植片の生存期間が延びたことを、cmIL13を1μg注射した後の日数の関数として生存パーセントによって示す。
【
図5F】SU‐DIPG‐XIII‐P動物にcmIL13を1μg注射した後の日数の関数としてBLI信号を示す。
【
図5G】SU‐DIPG‐XIII‐P動物の生存期間が延びたことを、cmIL13を1μg注射した後の日数の関数として生存パーセントによって示す。
【
図6A】ビヒクル溶液または1μgのcmIL13それぞれのCEDの後、55日目(コントロール)および86日目(実験)に採取した、HGGを担持するマウス脳の免疫組織化学法を示す。
【
図6B】コントロールと比べたときの、cmIL13で治療したマウスにおける、IL‐13Rα2レベル、アポトーシス誘導、および細胞増殖のIHC分析を示す。
【
図6C】コントロールおよび1μgのcmIL13で治療したマウスに関する、Ki‐67、切断型カスパーゼ3、およびNeuNを含有する細胞の密度を示す。
【
図7A】IC
50のcmIL13で曝露した8、24、48、および72時間後の、SF8628細胞の免疫蛍光検査(IF)を示す。cmIL13は赤色で、IL‐13Rα2は緑色で、DAPIは青色で示されている。
【
図7B】IC
50のcmIL13で曝露した8、24、48、および72時間後のSF8628細胞のIFを示す。切断型カスパーゼ3は緑色で、Ki‐67は赤色で、DAPIは青色で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別段の定義がない限り、本明細書で用いる技術用語および化学用語はすべて、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の試験を実施する際に本明細書に記載するものと同様または等価の任意の方法および材料を使用できるが、好ましい材料および方法は本明細書に記載されている。
【0008】
以下の詳細な説明のために、別段の明確な指示がある場合を除き、本開示が様々な代替的な変形例および工程の連続を想定できることを理解するべきである。さらに、操作例を除き、または別段の指示がある場合を除き、値、量、百分率、範囲、下位範囲、および分数を表す数字など、すべての数字は、明確に表れていなくても「約」という単語が接頭されているかのように読むことができる。したがって、別段の指示がない限り、以下で明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは概数であり、本開示によって得ようとしている所望の結果に応じて変わることがある。少なくとも、さらに特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数に照らしておよび通常の端数処理を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。クローズドエンドまたはオープンエンドの数値範囲が本明細書に記載されている場合、その数値範囲内にあるかまたはその数値範囲によって包含されるすべての数字、値、量、百分率、下位範囲、および分数は、それらの数字、値、量、百分率、下位範囲、および分数の全体が明示的に記載されているかのように、本願の元来の開示に具体的に含まれており属しているものと見なすべきである。
【0009】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは概数であるが、特定の例に記載されている数値は可能な限り正確に報告している。ただし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。
【0010】
本明細書で用いるように、別段の指示がない限り、複数形の用語は、対応するその単数形の用語を含むことができ、その逆も同様である。例えば、本明細書では「1つの(a)」変異誘発IL13、または「1つの(a)」サイトトキシンについて言及しているが、それらの成分の組み合わせ(すなわち、複数)を使用できる。さらに、本願において、ある特定の場合に「および/または」を明示的に使用できる場合でも、「または」の使用は別段の具体的な記述がない限り「および/または」を意味する。
【0011】
本明細書で用いるように、「含む(including)」、「含有する(containing)」、および同様の用語は、本願の文脈において、「含む(comprising)」と同義であると理解され、したがってオープンエンドであり、記載されていないおよび/または列挙されていない付加的な要素、材料、成分、および/または方法の工程の存在を除外しない。
【0012】
本明細書で用いるように、「~からなる(consisting of)」は、本願の文脈において、明記されていない要素、成分、および/または方法の工程の存在はいずれも除外すると理解される。
【0013】
本明細書で用いるように、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、本願の文脈において、明記されている要素、材料、成分、および/または方法の工程、ならびに記載されているものの「基本的特徴および新規特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」を含むと理解される。
【0014】
本明細書で用いるように、「患者(patient)」、「対象(subject)」、「個人(individual)」などは、区別なく用いられており、インビトロであれインサイチュであれ、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、霊長類、および/またはげっ歯類を含む哺乳類を含む、任意の動物またはその細胞を指す。
【0015】
本明細書で用いるように、用語「インターロイキン‐13」または「IL13」は、別段の指示がない限り、霊長類およびげっ歯類などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然型または野生型のIL13を意味し、プロセシングを受けていないIL13および細胞中でのプロセシングによって生じる任意の形態のIL13、ならびにスプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントなど、IL13の天然に存在する任意のバリアントを含む。例示的なヒトIL13のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。第2の例示的なヒトIL13のアミノ酸配列は、配列番号2に示されている。
【0016】
ポリペプチドにおける「変異(mutation)」とは、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化などによる、任意のアミノ酸の置換、欠失(例えば、ペプチドなど、短縮版のタンパク質)、挿入、および/または修飾を有するタンパク質を包含することが意図されている。一例では、「変異型IL13(mutated IL13)」または「変異誘発IL13(mutagenized IL13)」は、アミノ酸の1つまたは複数が天然型のIL13における対応するアミノ酸とは異なるIL13を指す。変異型IL13および/または変異誘発IL13は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ラット、ネズミ、ブタ、ウシ、イヌなどに見られる天然型のIL13由来でよい。変異型IL13および/または変異誘発IL13は、本明細書では「mIL13」と称される場合がある。
【0017】
本明細書で用いるように、用語「IL‐13受容体」または「IL13R」は、IL‐13に結合する受容体を指す。
【0018】
本明細書で用いるように、用語「IL‐13受容体α2」または「IL13Rα2」は、特定の細胞サブセットの表面で発現され、IL13に結合する、単量体のIL13受容体を指す。
【0019】
本明細書で用いるように、用語「cmIL13」または「cmIL‐13」は、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13を指す。
【0020】
本明細書で用いるように、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、または「治療する(treating)」は、発症を予防するか、または疾患によって生じるものなどの患者もしくは対象が経験する病理もしくは症状を変えるつもりで患者または対象に提供される治療手段を意味する。患者または対象に施される「治療」は、患者または対象が治療を受けている状態の任意の臨床的または定量的に測定可能な減少を実現でき、その現象には完全な除去が含まれる。
【0021】
本明細書で用いるように、「治療効果のある量」は、疾患(例えば、癌)を治療するために患者に投与されるときにその疾患を治療するために十分な量と定義される。例えば、癌治療のための化合物の治療効果のある量は、例えば、悪性腫瘍の体積を減らすかまたは患者の生存期間を延ばすのに十分な量とすることができる。
【0022】
本明細書で用いるように、「サイトトキシン(cytotoxin)」は、細胞の機能を妨害するか、細胞の破壊を引き起こすか、またはその両方を行う、毒素または抗体などの物質と定義される。
【0023】
本明細書で用いるように、用語「親和性(affinity)」は、受容体の単一の結合部位とリガンドとの間の非共有相互作用全体の強度と定義される。リガンドに対する受容体の親和性は、それぞれ解離速度定数Koffと会合速度定数Konの比である解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、当業者に知られた方法によって測定できる。
【0024】
「強化された結合(increased binding)」は、mIL13の結合レベルが、野生型IL13よりも少なくとも10%以上、例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上高いか、または1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、100倍、1000倍以上高く、ならびにそれらの間の任意のおよび全体的もしくは部分的な増分であることを指す。
【0025】
「減弱された結合(decreased binding)」は、mIL13の結合レベルが、野生型IL13よりも少なくとも10%以上、例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低いか、または1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、100倍、1000倍以上低く、ならびにそれらの間の任意のおよび全体的もしくは部分的な増分であることを指す。
【0026】
本明細書で用いるように、用語「リンク(link)」は、例えば接合または融合による、第2の遺伝子に対するある遺伝子の化学的付着(共有または非共有)と定義される。本明細書で用いるように、用語「リンクさせること(linking)」は、ある遺伝子を第2の遺伝子に(共有または非共有で)化学的に付着させることと定義される。本明細書で用いるように、用語「接合(conjugation)」は、翻訳後にある遺伝子を第2の遺伝子にリンクさせることと定義される。本明細書で用いるように、用語「融合(fusion)」は、翻訳前にある遺伝子を第2の遺伝子にリンクさせることと定義される。
【0027】
本明細書で用いるように、用語「コントロール(control)」または「参照(reference)」または「比較コントロール(comparator control)」は、対流強化薬剤送達法によるcmIL13の投与が行われない対象と定義され、そのため、コントロールまたは参照標準は、実験試料を比較できるコンパレーターとして働くことができる。
【0028】
本明細書で用いるように、用語「マーカー(またはバイオマーカー)の発現レベルを判定すること」は、「IL13Rα2のレベルを判定する」など、任意のマーカー発現産物の十分な部分を検出するために当業者が利用可能な技術を用いて、試料中のマーカーの発現または存在の程度を核酸またはタンパク質のレベルで評価することが意図されている。
【0029】
本明細書で用いるように、1つまたは複数のマーカー(またはバイオマーカー)の「レベル(level)」は、試料中のマーカー(またはバイオマーカー)の絶対的または相対的な量または濃度を意味する。
【0030】
「測定する(measuring)」もしくは「測定(measurement)」、または代替的に「検出する(detecting)」もしくは「検出(detection)」は、臨床試料または対象由来の試料に含まれるいずれかの所与の物質の定性的もしくは定量的な濃度レベルの導出を含む、このような物質の存在、不在、質、もしくは量(効果的な量とすることができる)を評価すること、またはそうでなければ対象の臨床パラメーターの値もしくはカテゴリー分類を査定することを意味する。
【0031】
「試料(sample)」または「生物学的試料(biological sample)」は、本明細書で用いるように、生検(すなわち、「液体生検(liquid biopsy)」または「固体生検(solid biopsy)」)によって採取された液体または固体の生物学的試料など、個人から切り離された生物学的材料を意味する。液体生検は、例えば、血液、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、および/または他の体液を含むことができる。液体生検は、細胞外小胞および/または無細胞遺伝物質を含有できる。固体生検は、例えば、臓器、および/または腫瘍などの組織を含むことができる。生物学的試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適切な任意の生物学的材料を含有でき、個人から取得される細胞性物質および/または非細胞性物質を含むことができる。
【0032】
用語「癌(cancer)」は、本明細書で用いるように、異常な細胞の異常な増殖を特徴とする疾患と定義される。癌細胞は、血流およびリンパ系で局所的にまたはそれらを通って身体の他の部分に広がることがある。様々な癌の例には、神経膠腫などを含むがそれに限定されない、組織細胞がIL13Rα2を発現する脳腫瘍が含まれる。
【0033】
用語「神経膠腫(glioma)」は、脳または脊髄のグリア細胞に生じる腫瘍と定義される。
【0034】
本開示は、悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法であって、治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含むか、本質的にその投与からなるか、またはその投与からなり、悪性神経膠腫は、インターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する、方法を対象とする。
【0035】
本開示は、IL13Rα2を発現する悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法で使用するための、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)であって、本方法は、治療効果のある量のcmIL13を対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含む、変異誘発IL13(cmIL13)も対象とする。
【0036】
本方法は、変異誘発IL13(mIL13)の投与を含むか、本質的にその投与からなるか、またはその投与からなる。mIL13は、サイトトキシンにリンクされ得る(cmIL13)。
【0037】
mIL13は、天然型ヒトIL13と比べてIL13Rα2に対する親和性が上昇する、および/または天然型ヒトIL13と比べてインターロイキン13受容体α1(IL13Rα1)に対する親和性が低下するように改変され得る。例えば、mIL13は、IL13Rα2の結合または活性を少なくとも維持しながら、野生型ポリペプチドと比べてIL13Rα1に対して低下した、例えば、運動学的KDの2倍低下、3倍低下、5倍低下、10倍低下、100倍以上低下した、親和性を有し得る。一部の例では、IL13Rα1に対するmIL13の親和性は、IL13Rα2の結合または活性を維持しながら、KDによって検出可能な結合がなくなるように、完全に弱められる。一部の例では、IL13Rα2に対するmIL13の親和性は、少なくとも維持されるか、または一部の例では野生型IL13と比べて、例えば、運動学的KDの2倍上昇、3倍上昇、5倍上昇、10倍上昇、100倍上昇、1000倍以上上昇され得る。
【0038】
いくつかの例では、mIL13は、cDNA変異誘発、DNA合成、ペプチド/タンパク質合成、または当業者に知られた任意の方法によって生成され得る。
【0039】
mIL13は、ヒト全長型IL13分子など、全長型IL13分子でよい。いくつかの例では、mIL13は、ヒトIL13(配列番号1)の残基13に対応する位置に、配列番号1の残基66に対応する位置に、配列番号1の残基69に対応する位置に、および/または配列番号1の残基105に対応する位置に、野生型IL13に対するアミノ酸変化を含み得る。mIL13は、ヒトIL13(配列番号1)の位置13においてグルタミン酸に対する置換を含み得る。例えば、位置13においてグルタミン酸をリシンで置換し得る。mIL13は、ヒトIL13(配列番号1)の位置66においてアルギニンに対する置換を含み得る。例えば、位置66においてアルギニンをアスパラギン酸で置換し得る。mIL13は、ヒトIL13(配列番号1)の位置69においてセリンに対する置換を含み得る。位置69においてセリンをアスパラギン酸で置換し得る。mIL13は、ヒトIL13(配列番号1)の位置105においてリシンの置換を含み得る。位置105においてリシンをアルギニンで置換し得る。mIL13は、位置E13、R66、S69、および/またはK105における変化を含み得る。mIL13は、IL13.E13K.R66D.S69D.K105Rと呼ばれ得る。一例では、mIL13は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み得る。他の例では、mIL13は、配列番号4から22のいずれかを含み得るか、または配列番号1から24のいずれかと少なくとも50、60、70、80、85、90、95、もしくは99%の相同性を共有するシーケンスを含み得るか、または配列番号1から24のいずれかとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20以上の残基が異なるシーケンスを含み得る。いくつかの例では、本願に引用して援用する2017年5月17日出願の米国特許出願第15/597,823号「Therapeutic IL13 Polypeptides」のcol.2,l.16~47、col.2,l.56~col.3,l.3には、野生型IL13(本明細書では配列番号2として開示されている)、および本明細書では配列番号3から24として提供されているIL13Rα2に特異的な変異が開示されている。用語「相同性(homology)」および「相同(homologous)」は、2つのタンパク質またはペプチド分子など2つの分子間の、サブユニットのシーケンスの同一性を指す。両方の分子サブユニットの位置が同じサブユニットで占有されているときは、それらの分子はその位置で相同である。2つのシーケンスの間の相同性は、一致するかまたは相同な位置の数の一次関数である。例えば、2つのシーケンスの位置の半分が相同である場合、それら2つのシーケンスは50%相同であり、それらの位置の70%(すなわち、10のうちの7)が一致するかまたは相同である場合、それら2つのシーケンスは70%相同である。本開示の相同物は、自然変異を含む自然対立遺伝子変異の結果であり得る。本開示の相同物は、自然変異を含む自然対立遺伝子変異の結果であり得る。本開示の相同物は、タンパク質への直接的な修飾を含む当技術分野で公知の技術を用いて、例えば、ランダム変異誘発または標的変異誘発を行う組換えDNA技術を用いて生成することもできる。
【0040】
mIL13は、細胞外小胞(EV)と複合化して細胞外小胞複合体(EV複合体)を形成し得る。細胞外小胞は、特定のタイプの生物学的試料(尿、血清、血漿、脳脊髄液、臓器、組織など)から取得され得る、および/または神経膠腫幹細胞など、特定のタイプの細胞から採取され得る。いくつかの例では、神経膠腫幹細胞は、間葉性神経膠腫幹細胞または前神経性神経膠腫幹細胞でよい。細胞外小胞は、腫瘍関連エクソソームなどのエクソソームを含み得る。細胞外小胞は、分画遠心分離、超遠心分離、および/または当業者に知られた他の方法を用いて生物学的試料から精製または濃縮され得る。
【0041】
細胞外小胞の亜集団は、生物学的マーカーを用いることによって切り離され得る。生物学的マーカーは、腫瘍関連の受容体などの受容体でよい。腫瘍関連の受容体はIL13Rα2でよい。各エクソソームは、例えば、1、2、5、10、15、20、25、50、100、250、500、1000以上の生物学的マーカーを発現し得る。
【0042】
サイトトキシンは、本明細書で開示するmIL13の1つにリンクされてcmIL13を形成し得る。例えば、リンクは、EDC化学作用または精製ゲルろ過によって起こり得る。
【0043】
サイトトキシンは、細菌由来毒素を含み得るか、本質的に細菌由来毒素からなるか、または細菌由来毒素からなる。細菌由来毒素は、例えば、シュードモナスエクソトクシンAを含み得る。
【0044】
治療効果のある量のcmIL13は、対流強化薬剤送達法(CED)によって投与され得る。CEDは、少なくとも1つのカテーテルを、例えば脳の間質空間に、脳の切除空所に、または手つかずの脳腫瘍に直接的に挿入することを含む。当業者は、CEDによるcmIL13の送達のために適切なカテーテルを選択することができる。本明細書で用いるように、「対流強化薬剤送達法」すなわち「CED」は、治療を受ける構造、例えば、悪性神経膠腫腫瘍または切除空所に治療薬を直接的に投与する低流量陽圧注入法と定義される。cmIL13は、外部のシリンジポンプによって制御される規定の流量での対流注入によって投与され得る。本方法は、治療を受ける領域内にカテーテルの先端を位置決めすることを含む。外部のポンプは、カテーテルに連結され得、そうすることで、陽圧勾配を維持しながら、治療効果のある用量の治療薬、例えば、cmIL13を含む組成を供給する。cmIL13の投与は、薬物送達のための代用マーカー、例えば、ガドリニウムまたはガドリニウム‐DTPAとして働く撮像成分の同時注入を伴って行われる場合もあり行われない場合もある。
【0045】
cmIL13の投与は、少なくとも4時間にわたって行うことができる。いくつかの例では、cmIL13の投与は、4時間から96時間にわたって行うことができる。
【0046】
cmIL13は、少なくとも0.03μg/mLから1μg/mL以下の用量で投与され得る。cmIL13の投与は、最大1mL/時間の流量で施され得る。
【0047】
本明細書で開示する方法による治療を受ける悪性神経膠腫は、ハイグレード神経膠腫を含み得るか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書で開示する方法を用いて治療できる悪性神経膠腫の例には、限定されるものではないが、成人膠芽腫、小児膠芽腫、びまん性正中神経膠腫などの退形成性星状細胞腫、退形成性乏突起神経膠腫、退形成性乏突起星細胞腫、退形成性上衣腫、および/または退形成性神経節腫が含まれる。
【0048】
開示されている方法による治療を受ける悪性神経膠腫は、IL13特異的受容体を発現し得る。IL13特異的受容体は、インターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を含み得る。IL13Rα2の発現は、cmIL13の投与の前に悪性神経膠腫の試料中で検出され得る。いくつかの例では、悪性神経膠腫の試料は、IL13Rα2の発現の検出前に精製され得る。IL13Rα2の発現の検出は、質量分析法、分析アッセイ、免疫染色法、および/またはシーケンシングによって検出され得る。いくつかの例では、分析アッセイは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA:enzyme‐linked immunosorbent assay)を含み得る。他の例では、免疫染色法は、免疫組織化学法(IHC)および/または蛍光細胞化学を含み得る。他の例では、シーケンシングは、全ゲノムシーケンシング、エクソームシーケンシング、プロテオミクスシーケンシング、および/またはRNAシーケンシングを含む。悪性神経膠腫によるIL13Rα2の発現は、悪性神経膠腫がcmIL13による治療に反応することを示す。
【0049】
驚くべきことに、本明細書に記載する悪性神経膠腫を治療する方法が、本明細書に記載する方法による治療を受けない悪性神経膠腫を有するコントロール対象に対して、悪性神経膠腫を有する対象の生存率を向上させることが見出された。生存率の向上は、例えば、カプランマイヤー生存曲線分析によって判定され得る。生存曲線分析は、限定されるものではないが、治療を受ける対象のcmIL13とコントロールとの間の生存確率の比較を含み、ここで、生存確率(St)は、[開始時に生存していた対象数-死亡した対象数]/開始時に生存していた対象数、と定義される。得られたデータはグラフにプロットされており、グラフでは、生存確率がy軸に、本研究に参加してからの時間がx軸にある。少なくとも異なる2つのグラフ化されたデータセット間の統計的な差は、各群の各事象時間についてカイ二乗を計算して結果を合計するログランク検定、または各事象時間についてカイ二乗を計算して結果を合計し曲線全体の最終的な観測結果および予測結果を与えるハザード比の少なくともいずれかによって判定され得る。統計的有意性はpが0.05以下であると定義される。
【0050】
驚くべきことに、本明細書に記載する悪性神経膠腫を治療する方法によって、健康な細胞および/または健康な組織(例えば、神経膠腫でない細胞および神経膠腫でない組織)内での臨床的に関係のあるバイオマーカーには検出可能な変化がないことも見出された。臨床的に関係のあるバイオマーカーの例には、限定されるものではないが、NeuNおよびCD68+タンパク質が含まれる。
【0051】
最後に、驚くべきことに、本明細書に開示する悪性神経膠腫を治療する方法が、悪性神経膠腫の体積を減少させることが見出された。神経膠腫の体積の減少は、当業者に知られた統計分析によって、例えば、1元配置分散分析もしくは2元配置分散分析(ANOVA)試験またはスチューデントの両側t検定によって判定され得、統計的有意性は、p<0.05によって判定され得る。したがって、本明細書に記載する悪性神経膠腫を治療する方法は、健康な細胞および組織を害することなく悪性神経膠腫を事実上治療することができる。
【0052】
態様
以下に、本開示のいくつかの非限定的な態様を要約する。
【0053】
態様1
悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法であって、
治療効果のある量の、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(mIL13)(cmIL13)を、対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与すること
を含み、
悪性神経膠腫はインターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する、方法。
【0054】
態様2
cmIL13は4時間から96時間にわたって投与される、態様1に記載の方法。
【0055】
態様3
cmIL13は0.03μg/mLから1μg/mLの用量で投与される、態様1または態様2に記載の方法。
【0056】
態様4
cmIL13の投与は最大1mL/時間の流量で施される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0057】
態様5
cmIL13は、天然型ヒトIL13と比べてIL13Rα2に対する親和性が上昇する、および/または天然型ヒトIL13と比べてインターロイキン13受容体α1(IL13Rα1)に対する親和性が低下するように改変される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0058】
態様6
cmIL13は、位置E13、R66、S69、および/またはK105において、野生型IL13に対するアミノ酸変化を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0059】
態様7
cmIL13は、1つまたは複数のアミノ酸置換基E13K.R66D.S69D.K105Rを含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0060】
態様8
cmIL13は、配列番号3から24の1つもしくはその相同物または配列番号1もしくは配列番号2の一方の相同物に記載のアミノ酸配列を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0061】
態様9
cmIL13は、20以下の残基が配列番号1または配列番号2とは異なる、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0062】
態様10
サイトトキシンは細菌由来毒素を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0063】
態様11
細菌由来毒素はシュードモナスエクソトクシンAを含む、態様10に記載の方法。
【0064】
態様12
悪性神経膠腫はハイグレード神経膠腫を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0065】
態様13
悪性神経膠腫は、成人膠芽腫、小児膠芽腫、退形成性星状細胞腫、退形成性乏突起神経膠腫、退形成性乏突起星細胞腫、退形成性上衣腫、および/または退形成性神経節腫を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0066】
態様14
退形成性星状細胞腫は、びまん性正中神経膠腫を含む、態様13に記載の方法。
【0067】
態様15
撮像成分の同時注入をさらに含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0068】
態様16
撮像成分は、ガドリニウム、ガドリニウム‐DTPA、またはそれらの組み合わせを含む、態様15に記載の方法。
【0069】
態様17
試料中のIL13Rα2の発現を検出することをさらに含み、IL13Rα2の発現は、悪性神経膠腫がcmIL13による治療に反応することを示す、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0070】
態様18
試料は、
血液、血漿、唾液、尿、および/もしくは脳脊髄液の液体生検、ならびに/または
臓器および/もしくは組織の固体生検
を含む、態様17に記載の方法。
【0071】
態様19
組織は腫瘍を含む、態様18に記載の方法。
【0072】
態様20
腫瘍は悪性神経膠腫を含む、態様19に記載の方法。
【0073】
態様21
液体生検は、細胞外小胞および/または無細胞遺伝物質を含む、態様18から20の何れかに記載の方法。
【0074】
態様22
試料を精製することをさらに含む、態様18から21の何れかに記載の方法。
【0075】
態様23
IL13Rα2の発現の検出は、質量分析法、分析アッセイ、免疫染色法、および/またはシーケンシングによって行われる、態様18から22のいずれかに記載の方法。
【0076】
態様24
(a)分析アッセイは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含み、
(b)免疫染色法は、免疫組織化学法(IHC)および/もしくは蛍光細胞化学を含み、ならびに/または
(c)シーケンシングは、全ゲノムシーケンシング、全エクソームシーケンシング、RNAシーケンシング、および/もしくはプロテオミクスを含む、態様23に記載の方法。
【0077】
態様25
投与によって、治療効果のある量のcmIL13が投与されない悪性神経膠腫を有するコントロール対象に対して、対象の生存率が向上する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0078】
態様26
生存率の向上は、カプランマイヤー生存曲線分析によって判定される、態様25に記載の方法。
【0079】
態様27
本方法によって、神経膠腫でない細胞内および/または神経膠腫でない組織内では、臨床的に関係のあるバイオマーカーに検出可能な変化がない、先の態様のいずれかに記載の方法。
【0080】
態様28
バイオマーカーは、NeuNおよびCD68+タンパク質を含む、態様27に記載の方法。
【0081】
態様29
IL13Rα2を発現する細胞へのcmIL13の投与によって、
(i)悪性神経膠腫の体積が減少し、
(ii)IHCもしくは蛍光細胞化学によって測定される、検出可能な切断型カスパーゼ3が増加し、および/または
(iii)IHCもしくは蛍光細胞化学によって測定される、Ki‐67陽性細胞のレベルが少なくとも10%低下する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0082】
態様30
悪性神経膠腫の体積の減少は、分散分析(ANOVA)試験によって判定され、統計的有意性はp値<0.05によって判定される、態様29に記載の方法。
【0083】
態様31
悪性神経膠腫の体積の減少は、スチューデントの両側t検定によって判定され、統計的有意性はp値<0.05によって判定される、態様29に記載の方法。
【0084】
態様32
変異誘発IL‐13は、配列番号1または配列番号2と比べたときに少なくとも1つのアミノ酸置換を特徴とする、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0085】
態様33
インターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を発現する悪性神経膠腫を有する対象を治療する方法で使用するための、サイトトキシンにリンクされた変異誘発IL13(cmIL13)であって、本方法は、治療効果のある量のcmIL13を対流強化薬剤送達法(CED)によって最大96時間にわたって投与することを含む、および/または、前記治療方法はさらに、場合により、先行する態様に記載の特性のうちのいずれかを特徴とする、変異誘発IL13(cmIL13)。
【0086】
以下の実施例は本開示を示しているが、本開示をそれらの実施例の詳細に限定することを意図するものではない。別段の指定がない限り、以下の実施例および本明細書全体にわたってすべての部分および百分率は重量によるものである。
【実施例】
【0087】
研究1
材料および方法
材料
cmIL13(IL13.E13K‐PE4E)をTargepeutics,Inc.(Hershey、PA)から入手した。cmIL13をリン酸緩衝生理食塩水(PBS:Phosphate-Buffered Saline)に溶解し、2.6mg/mLストックとして-80℃で保管した。ヒトIL13組換えタンパク質(カタログ番号:A2525)をInvitrogen(Thermo Fisher Scientific)から入手した。製造者のプロトコルに準拠して、IL13を2回蒸留水(ddH2O)に溶解し、5μg/mLストックとして-80℃で保存した。
【0088】
細胞株および培養
すべての患者由来細胞株について、インフォームドコンセントおよび治験審査委員会の承認を得た。細胞株に関する詳細を表1に示す。
【0089】
【0090】
初期継代のHGG株を使用し、すべての細胞株を、ショートタンデムリピートDNAフィンガープリント法によって年1回検証し、マイコプラズマ汚染については3か月ごとに試験した。H3K27M変異を有する細胞株を、K27M変異のヒストン発現について、ウエスタンブロットおよびサンガーシーケンシングを用いて3か月ごとに検証した。すべての患者由来腫瘍細胞株を細胞株に適切な培地で維持した。その詳細を表2に示す。
【0091】
【0092】
ニューロスフェアとして培養した細胞を1~2週間ごとに継代した。接着性単分子層として培養した細胞を1週間に1~2回継代した。
【0093】
RNAシーケンシングおよびデータ分析
製造者の指示に従ってRNeasy Plus micro kit(Cat#74034;QIAGEN、Germantown、MD、USA)を用いて、全細胞溶解物からトータルRNAを抽出した。細胞株の大規模ライブラリーをスクリーニングするために、単一反復としてRNAシーケンス研究を行った。RNAライブラリー調製およびシーケンシングをNovogene(北京、中国)によって行った。Illuminaシーケンサー(New England Biolabs、Ipswich、MA、USA)のためのNEBNext UltraTM RNA Library Prep Kitをライブラリー調製のために使用し、その後、AMPure XP磁性ビーズ(Beckman Coulter、Pasadena、CA、USA)を用いてcDNAライブラリーをサイズ選択した。試料を利用できる時間枠および利用可能なシーケンシング技術に応じてシングルエンドまたはペアエンドシーケンシングを用いて、NovaSeq 6000シーケンサー(Illumina、San Diego、CA、USA)で試料を配列した。成人GBM細胞株のペアエンドシーケンシングデータをcBioPortalから取得した。cBioPortalとは、Mayo Clinicの脳腫瘍患者由来異種移植片についてのRNAシーケンスデータを含むウェブベースのフリーツールである。FASTQCを用いて、生成したFASTQファイルの品質評価を行った。STARv2.7.3aを用いて、トリミングしたリードをhg38にマッピングし、-quantMode geneCounts機能を用いて注釈付きの遺伝子計数を取得した。転写数(TPM)またはリード値100万個当たりの1キロベース当たりのリード数(RPKM:reads per kilo base per million)を、シングルエンドまたはペアエンドのライブラリーステータスに合わせてRSEMを用いて計算した。
【0094】
免疫ブロット
免疫ブロット用の患者由来腫瘍細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含有するTriton X‐100溶解バッファーで溶解して、超音波処理した。採取したタンパク質溶解物を-20℃で保管した。Pierce BCAタンパク質アッセイキット(Cat#23227;Thermo Fisher Scientific)を用いてタンパク質濃度を判定した。総タンパク量15μgを12.5%SDS‐PAGEによってサイズ分画した。電気泳動で分離したタンパク質を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に電気的に転写し、PBSTバッファーで洗浄し、2%無脂肪ミルクで1時間、室温でブロッキングし、次いで、4℃で一晩、一次抗体と共にインキュベートした。一次抗体のブロットの後に、SuperSignal West Pico PLUS Chemiluminescent Substrate(Cat#34580;Thermo Fisher Scientific)を用いて種に適したペルオキシダーゼ接合二次抗体(Thermo Fisher Scientific)で特定の信号を検出し、Azure 600 ウエスタンブロット撮像系(Azure Biosystems、Dublin、CA、USA)を用いてその信号を撮像した。ウエスタンブロットに使用した抗体に関する詳細は表3で確認できる。
【0095】
【0096】
細胞の増殖および生存能力のアッセイ
96ウェルのクリアボトム黒色マイクロプレート(Cat#3917;Corning Costar、Corning、NY、USA)の培地で、成人GBM細胞株(GBM6、GBM10、GBM14、GBM39、GBM43、およびGBM108)の場合は1ウェル当たり2,500個の細胞、またはDMG細胞株(SU‐DIPG XIII‐P、SU‐DIPG XVII、SF8628、SF8628‐B23、およびPED17)の場合は1ウェル当たり5,000個の細胞という濃度で、単一細胞懸濁液中の細胞を播種し、5%CO2で一晩、37℃で培養した。翌日、ビヒクル(ddH20またはPBS)、またはIL13(最終濃度100ng/mL、50ng/mL、20ng/mL、10ng/mL、5ng/mL、1ng/mL、および0.5ng/mLまで)もしくはcmIL13(最終濃度320ng/mL、100ng/mL、32ng/mL、10ng/mL、3.2ng/mL、1ng/mL、0.32ng/mL、0.1ng/mL、0.032ng/mL、0.01ng/mL、0.0032ng/mL、および0.001ng/mLまで)の連続希釈度で、細胞を3回処理した。細胞を72時間インキュベートし、次いで、製造者の推奨に従ってCellTiter‐Glo Luminescent Cell Viability Assay(Cat#G7570;Promega、Madison、WI、USA)でアッセイした。Infinite M200 PROマルチモードマイクロプレートリーダー(Tecan Group、Maennedorf、Switzerland)を用いてルミネセンスを測定し、コントロールウェル(ddH20またはPBSのみ)に対して正規化し、相対ルミネセンス処理を薬物濃度の関数としてプロットした。各処理の有効性(50%阻害濃度、IC50)を、Prism 9(GraphPad、San Diego、CA、USA)を用いて、非線形最小二乗カーブフィッティング法によって計算した。
【0097】
免疫蛍光検査法
4 Chamber Cell Culture Slides(Cat#50‐114‐9053;CELLTREAT Scientific Products、Pepperell、MA、USA)上で、1ウェル当たり10,000細胞の密度で、単一細胞懸濁液に細胞を播種し、5%CO2で一晩、37℃で培養した。24時間後に、細胞をビヒクル(PBS)、またはCellTiter‐Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)によって判定されるIC50濃度のcmIL13で処理した。次いで、特定の時点(8時間、24時間、48時間、および72時間)で細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを用いて20分間固定した。細胞を3回、それぞれ5分間PBSで洗浄し、0.5%Triton X‐100のPBSで5分間インキュベートした。透過処理バッファーのカバースリップを洗浄するために、細胞をPBSで3回、それぞれ5分間インキュベートし、その後、3%BSAのPBS‐Tで1時間、室温でブロッキングした。次いで、最大2つの異なる一次抗体を1%BSAのPBSTに添加し、4℃で一晩置いた。細胞特異的ネガティブコントロールには一次抗体の代わりに希釈バッファーを使用した。翌日、細胞をPBS‐Tで3回、それぞれ5分間洗浄した。次いで、暗所で1時間、室温で、1%BSAのPBS‐TでAlexa Fluor結合二次抗体(Thermo Fisher Scientific)と共に細胞をインキュベートした。交差反応を試験するために、他の二次抗体を一次抗体に適用することによって、一次抗体の条件1つにつき1つのコントロールを含めた。さらに3回5分ずつPBSで洗浄した後で、チャンバーを取り外してスライドをdH20で3回濯いだ。DAPI含有のProLong Gold Antifade試薬(Cat#P36935;Thermo Fisher Scientific)を用いてスライドを取り付け、顕微鏡による撮像まで37℃で保存した。すべてのスライドを検査し、LSM780共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy、White Plains、NY、USA)を用いて画像を取り込んだ。免疫蛍光検査法に使用する抗体に関する詳細情報は上記の表3で確認できる。
【0098】
患者由来異種移植片
いずれの動物実験も、実験動物の使用に関するNIHおよびIACUCのガイドラインに従って実行し、Mayo Clinic Institutional Committee for Animal Researchによって承認された。HGG細胞株(GBM6、PED17、およびSU‐DIPG XIII‐P)に、腫瘍体積の生物発光読出しを可能にするルシフェラーゼレポーター系(eGFP/fLuc2)を形質導入した。Welby JP、Kaptzan T、Wohl A、Peterson TE、Raghunathan A、Brown DA、Gupta SK、Zhang L、Daniels DJ(2019)Current Murine Models and New Developments in H3K27M Diffuse Midline Gliomas、Front Oncol9:92およびCarlson BL、Pokorny JL、Schroeder MA、Sarkaria JN(2011)Establishment, maintenance and in vitro and in vivo applications of primary human glioblastoma multiforme(GBM) xenograft models for translational biology studies and drug discovery.Curr Protoc Pharmacol Chapter 14:Unit 14.16で先に説明されているように、培養した細胞を用いて同所性腫瘍接種を行った。それらの文献を本願に引用して援用する。簡潔に言えば、各マウスへの生着のために、単一細胞懸濁液に細胞を置いて、滅菌PBS3μl中に300,000の細胞を用意した。0.5mmの穿頭孔を以下の座標:ブレグマの1mm後方かつ2mm右(GBM6)またはラムダ縫合の1mm後方かつ正中矢状面の1mm側方(PED17およびSU‐DIPGXIII)に作った。Envigo(Madison、WI、USA)から入手した生後6から7週齢の雌性Hsd:Athymic Nude‐Foxn1nu変異マウスの、大脳半球(GBM6)または脳橋(PED17およびSU‐DIPGXIII)に、26ゲージ(51mm、ポイントスタイルAS)シリンジ(Cat.#203185;Hamilton Company、Bonaduz、Switzerland)を用いて腫瘍細胞を一定流量0.5μl/分で定位固定法によって注射した。すべての群で注射の深さは4mmであった。インビボの腫瘍の生着および増悪を生物発光撮像(BLI)によってモニタリングした。腹腔内注射でCycluc10mg/kgを動物に投薬した。10分後に、ソフルラン麻酔下で、IVIS‐200撮像系(Xenogen Corporation、Berkeley、CA)を用いてマウスを撮像した。LivingImage 4.3(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を用いて画像解析を行って、対象領域内の総フラックス(1秒当たりの光子数)を定量した。
【0099】
脳標的薬物送達のために、研究の開始時(BLIが約1,000,000総対数フラックスに達したとき)に腫瘍サイズが確実に均等に配分されるように、BLI信号に基づいてコントロール群(PBS)および治療群(cmIL13)に動物を無作為に分けた。ケタミン100mg/kgおよびキシラジン10mg/kgを用いた麻酔下にマウスを置いた。眼の後ろから耳の高さまで延びる2cmの中線皮膚切開を行った。先に作った穿頭孔を再度開き、Rodent Warmer X1(Cat#53800M;Stoelting、Wood Dale、IL、USA)を用いた自動熱補助器を有する定位固定台にマウスを固定した。台座の下方に4mm突出した33ゲージの内部カニューレ(Cat#8IC315IS5SPC;P1 Technologies、Roanoke、VA)を、台座の下方に3.5mm突出した26ゲージのガイドカニューレ(Cat#8IC315GS5SPC、P1 Technologies)に挿入し、両方ともPEチュービングに連結し、シングルコネクターアセンブリー(#C313C/SPC;P1 Technologies)と固定した。ユニット全体は、カニューレホルダー(Cat#505254;World Precision Instruments、Sarasota、FL、USA)を用いて垂直に固定し、Legato130シリンジポンプ(Cat#788130;KD Scientific、Holliston、MA、USA)に配置された22ゲージ(51mm、ポイントスタイルAS)シリンジ(Cat#80400;Hamilton Company)に連結した。その後、ビヒクル(PBS)および薬物(濃度が50μg/ml(1μg用量)、15μg/ml(0.3μg用量)、または5μg/ml(0.1μg用量)のcmIL13)溶液を内部カニューレおよび関連するチュービングを通してプライミングした。内部カニューレが取り付けられたカニューレホルダーを、所望の注射の深さの4mm(GBM6)または4.2mm(PED17およびSU‐DIPGXIII)に達するようにマウス頭蓋骨と面一になるまで下降させた。すべての研究群において、同じ増減のCED注入プロトコルを行い、注入した全体積が20μlであり、注入速度は以下の通りであった:0.2μl/分で3μl、0.5μl/分で5μl、および0.8μl/分で12μl。注射管への逆流を避けるために、注入完了後10分でカニューレを取り外した。動物を毎日モニタリングし、進行性の神経欠損を示す場合または瀕死状態にあることが分かった場合には安楽死させた。
【0100】
免疫組織化学法
二酸化炭素吸入による動物の安楽死の後に脳を採取し、室温で一晩、4%パラホルムアルデヒドに固定化した。次いで、脳をパラフィン包埋し、ミクロトーム(CM1860UV;Leica Biosystems、Buffalo Grove、IL、USA)を用いて前頭面で薄切した(5μm/切片)。標準的な手順に従ってヘマトキシリンおよびエオジン(H&E:hematoxylin and eosin)染色を行った。免疫組織化学法のために、パラフィン包埋した組織切片をキシレンで脱ろうし、エタノールで再水和した。抗原賦活化は、予熱したクエン酸ナトリウムバッファー(10mMクエン酸三ナトリウム、0.05%Tween20、pH6.0)で30分間スライドを蒸し焼きすることによって行った。切片を室温まで冷却し、dH20で1分間濯いだ。その後に、切片を0.6%過酸化水素のMeOHで20分間浸漬した。次いで、10%正常ヤギ血清(NGS)のトリス緩衝食塩水(TBS)で、切片を室温で30分間ブロッキングした。一次抗体を2%NGSおよび0.5%Triton X‐100のTBSで希釈し、切片に加えて4℃で一晩置いた。組織特異的ネガティブコントロールには一次抗体の代わりに希釈バッファーを使用した。翌日、切片を3回5分間、2%NGSおよび0.5%Triton X‐100のTBSで洗浄した。ビオチン化二次抗体を含有するVECTASTAIN Elite ABC kit(Cat#PK‐6100;VECTOR Laboratory、Burlingame、CA)を、製造者の推奨に従って1.5%NGSを含むTBSで希釈して切片に加えた。さらに3回5分間TBSで洗浄した後に、アビジン/ビオチン酵素複合体(ABC:Avidin/Biotinylated Enzyme Complex)溶液(Cat#PK‐6100;VECTOR Laboratory)を用いて室温で30分間、切片をインキュベートした。その後、視覚化のために、製造者のプロトコルに準拠して、SignalStain DAB Substrate Kit(Cat#8059P;Cell Signaling、Danvers、MA、USA)を用いて切片を現像し、ヘマトキシリンで対比染色し、パーマウント(Cat#SP15‐100、Thermo Fisher Scientific)で取り付けた。画像をデジタルスライドスキャナー(Axio Scan.Z1;Carl Zeiss Microscopy)で取得し、倍率40xで表示した。免疫組織化学法(IHC)に使用した抗体に関する詳細情報は上記の表3に提供されている。組織切片の染色の一貫性を示すために低拡大率の画像を含めた。
【0101】
統計分析
データを取得し、適切な場合に平均±標準偏差または標準誤差として提示した。2群の間の直接的な統計比較を、スチューデントの両側t検定を用いて実行した。非線形最小二乗カーブフィッティング分析を使用してインビトロcmIL13治療の有効性(IC50)を判定した。ログランク検定と共にカプランマイヤー推定を用いて生存率分析を行った。統計試験および分析をPrism 9(GraphPad)を用いて実行し、統計的有意性をα閾値0.05に設定し、図にはp<0.05にアステリスクを付けた。
【0102】
結果
HGG腫瘍細胞モデルにおいて異なるレベルでIL‐13Rα2が発現される
HGG細胞におけるIL‐13Rα2のベースライン転写レベルおよびタンパク質レベルを特定するために、RNAシーケンシングおよび免疫ブロットを患者由来HGG細胞株10種類(DMGが4種類および成人GBMが6種類)に対して行った(
図1A、
図1B)。以前の調査によれば、シーケンシングされたHGGトランスクリプトームのコホートは、HGG細胞株間でIL‐13Rα2 RNAの発現パターンが異なることが確認された(
図1A)。DMGおよび成人GBMの両方のモデルにおいて、IL‐13Rα2転写レベルは、低発現(SU‐DIPG XIII‐P、GBM39、GBM108)から中発現(SU‐DIPG XVII、SF8628、GBM43、GBM6)および高発現(PED17、GBM10、GBM14)まであった。次に、入手可能なHGG細胞株のIL‐13Rα2タンパク質レベルを査定した。それに対応して、IL‐13Rα2タンパク質レベルは、DMGおよび成人GBM細胞株の両方で遺伝子発現と一致した(
図1B)。PED17、GBM10、GBM14、GBM59、およびGBM118を含むいくつかの細胞モデルは、高いIL‐13Rα2発現を示したが、SU‐DIPG XVII、SF8628、SF8628‐B23、GBM6、GBM12、およびGBM43など他の細胞モデルは(無いわけではないが)著しく低いIL‐13Rα2レベルを示した。SU‐DIPG XIII‐P、GBM39、GBM108、およびGBM123を含む、HGG細胞株の第3のカテゴリーは、IL‐13Rα2タンパク質レベルがアッセイの検出閾値未満であったことを示した。
【0103】
HGGの増殖および生存に対するIL13Rα2の機能的影響
DMGおよび成人GBMの腫瘍細胞モデルにIL‐13Rα2の細胞株依存の過剰発現があると仮定して、HGGにおけるIL‐13Rα2のシグナル伝達の役割を調査した(
図2A~
図2F)。サイトカイン刺激がインビトロで細胞増殖に影響するかどうかを判定するために、様々な濃度のIL‐13Rα2の標準リガンド、IL13でHGG細胞を処理した。SU‐DIPG XIII‐Pの反応が無いことは、アッセイした細胞モデルにおけるIL‐13Rα2の低発現と矛盾しなかったが、IL13で刺激したIL‐13Rα2が中発現の細胞株も、IL‐13Rα2が高発現の細胞株も、コントロールとしての媒体に対して細胞増殖の有意な増大を示さなかった(
図2A)。IL‐13Rα2が細胞の増殖および浸潤よりも細胞の生存に関係があることを示した以前の報告に基づいて、サイトカイン刺激がその抗アポトーシス効果を強めるIL‐13Rα2発現の増大と関連していると仮定した。これを試験するために、HGG細胞をIL‐13(10ng/mL)で刺激して、様々な時点でタンパク質レベルを調査した(
図2C)。IL13による刺激は、IL‐13Rα2が中発現の細胞株およびIL‐13Rα2が高発現の細胞株において、8時間、24時間、48時間、および72時間後にIL‐13Rα2の強固な上方制御をもたらした。逆に、IL‐13Rα1のレベルは、アッセイしたいずれのHGG細胞モデルでもIL13刺激による影響を受けなかった。
【0104】
cmIL13はHGG細胞モデルにおいて強力な抗腫瘍効果を発揮する
IL‐13Rα2発現がインビトロでIL‐13Rα2標的療法に対する感度をもたらすかどうかを評価するために、cmIL13に対するHGG細胞の薬理学的反応を試験した。HGG細胞株11種類(DMGが5種類および成人GBMが6種類)を選択し、0.001ng/mL~320ng/mLの範囲の様々な濃度のcmIL13に曝露した。その結果は、IL‐13Rα2発現とcmIL13感度との間に直接的な関係を示した(
図2B、
図3)。cmIL13は、IL‐13Rα2が高い細胞株において強い細胞毒性を示し、そのことは、比較的感度が低くIL‐13Rα2が低い細胞モデルに対して、用量反応曲線上で顕著に左に寄っていることで特徴付けられた。IL‐13Rα2が高い細胞におけるcmIL13のIC
50値は、PED17細胞で0.02ng/mL、GBM14で0.06ng/mL、およびGBM10で0.58ng/mLであった。IL‐13Rα2が中程度の細胞は、cmIL13に関して以下のIC
50値を示した:SF8628で0.10ng/mL、SU‐DIPG XVIIで0.75ng/mL、SF8628‐B23で0.81ng/mL、GBM6で0.12ng/mL、およびGBM43で9.08ng/mL。最後に、IL‐13Rα2が低い細胞におけるcmIL13のIC
50値は、SU‐DIPG XIII‐Pで10.63ng/mL、GBM108で15.74ng/mL、GBM39で53.82ng/mLであった。DMGおよび成人GBM細胞モデルは両方とも、IL‐13Rα2の状態に応じてcmIL13に対する同様の感度を示した。
【0105】
次に、IL‐13Rα2に対するcmIL13の作用を明らかにするために、HGG細胞をIC
50濃度の薬物で処理し、8時間、24時間、48時間、および72時間の時点のタンパク質レベルを調査した(
図2D)。IL13刺激と同様に、cmIL13は、IL‐13Rα2の下方制御を誘発しなかったが、むしろタンパク質レベルは経時的に安定したかまたは上昇した。興味深いことに、IL‐13Rα1は、cmIL13に曝露された、いくつかのIL‐13Rα2が中程度の細胞モデルおよびIL‐13Rα2が高い細胞モデルにおいて上方制御された。さらに、アポトーシス誘導は、切断型カスパーゼ3および/または切断型PARPのレベルの上昇によって特徴付けられた。それらの結果は、共焦点顕微鏡検査によって確認され(
図2E、
図4)、そこでは、ベースラインにおいて顕著なIL‐13Rα2レベルが見られ、これはcmIL13で処理された細胞において最大72時間維持された。cmIL13のPEドメインの染色によって、受容体への薬物の共局在化ならびに細胞質および細胞核への内在化を確認した。アポトーシスのレベルの上昇に加えて、cmIL13の存在下で細胞増殖が低下した。
【0106】
cmIL13の腫瘍内投与によって、インビボでの腫瘍負荷が軽減され生存期間が延びた
cmIL13のインビボでの抗腫瘍効果を検証するために、IL‐13Rα2低発現(SU‐DIPG XIII‐P)、IL‐13Rα2中発現(GBM6)、およびIL‐13Rα2高発現(PED17)のモデルを含む、HGGの同所性患者由来ネズミ異種移植モデルを利用した。腫瘍担持動物を4つのコホートに無作為に分け、1治療群当たり4~5匹の動物に、単回の脳標的用量のcmIL13のCEDによって治療した(
図5A)。ビヒクル溶液(PBS)または様々な用量のcmIL13を大脳半球のGBM6腫瘍領域に注入することによって、薬物送達システムをまず成体GBM動物に確立した。すべてのCEDシステムが合併症なく配置され、許容された。処置関係の死亡は起きず、注入完了後の動物の臨床評価はいずれも異常がなく、急性毒性もしくは遅発毒性または神経欠損の兆候は見られなかった。BLIで測定した腫瘍体積は、0.3μg(p=0.14)、0.1μg(p=0.08)、およびビヒクル治療群と比べて、1μgのcmIL13で治療した動物(p=0.01)において有意に低かった(
図5B)。0.3μgのcmIL13で64日間(p=0.35)、0.1μgのcmIL13で68日間(p=0.17)、およびビヒクル群で57日間であることと比べて、単回用量の1μgのcmIL13は、生存期間を有意に延ばし、生存期間中央値が84日間(p=0.01)であった(
図5C)。
【0107】
瀕死状態で安楽死させられたマウスの脳の組織学的査定は、cmIL13治療後に組織構造が維持されたことおよび腫瘍サイズが小さくなったことを示した(
図6A)。コントロールと比べたときの薬物治療したマウスのIL‐13Rα2レベル、アポトーシス誘導、および細胞増殖のIHC分析によって、腫瘍内の薬物のオンターゲット効果を検証した。インビトロデータと一致して、GBM6細胞ではIL‐13Rα2の高い状態が維持された(
図6B)。Ki‐67染色で判定した細胞増殖は、cmIL13への曝露の後に低下した(
図6Bおよび
図6C)。興味深いことに、アポトーシスマーカーの切断型カスパーゼ3の強い染色は、腫瘍領域全体でおよびすべてのcmIL13群において明らかであったが、ビヒクル治療された動物にはcmIL13投与の後数週間は見られなかった(
図6B)。脳へのイムノトキシンの送達を伴うことがある毒性を考慮するために、成熟神経細胞のマーカーであるNeuNならびにミクログリアおよび単球によって高いレベルで発現するCD68に関して付加的なIHC分析を行った。cmIL13のCEDは、注入された同側大脳半球においてNeuN陽性細胞がビヒクルと比べて減少しなかった(
図6Bおよび
図6C)。いずれの研究群でも免疫細胞浸潤がなかったことが明らかである(
図6Bおよび
図6C)。
【0108】
これらの発見を、IL‐13Rα2が上方制御されたDMG異種移植モデルにおいて検証した。PED17細胞を脳橋の同所性に植え込み、腫瘍担持動物をビヒクル溶液、0.1μg、0.3μg、または1μgのcmIL13で再び治療した。以前の観察と同じく、すべての動物がCED処置に耐えたが、最大用量(1μgのcmIL13のCED注入)のときに、注入後24時間以内に5/5の動物に毒性の発症の兆候(片側不全麻痺または運動失調などの神経欠損、円背姿勢、皮膚炎)が見られ、4/5の動物を薬物投与後72時間以内に安楽死させなければならなかった。術後臨床評価は、0.1μgまたは0.3μgのcmIL13で治療した動物については異常がなかった。BLI信号の比較は、単回の0.1μgまたは0.3μgのcmIL13の注入が腫瘍体積を有意に減少させ(p=0.0001および0.0004、
図5D)、ビヒクル群(128日間)と比べて生存期間中央値を有意に延ばした(0.1μgのcmIL3で147日間(p=0.003)および0.3μgのcmIL13で155日間(p=0.003))ことを示した(
図5E)。大脳半球GBM6腫瘍での発見と同様に、0.1μg用量も0.3μg用量も、NeuN+細胞密度およびCD68+細胞浸潤に影響しなかった。臨床毒性の観測された差と一致して、1μg用量のcmIL13は、より低用量のcmIL13またはビヒクルコントロールと比べて、脳幹のNeuN陽性細胞の顕著な減少をもたらした。1μgのcmIL13への曝露の後に単球細胞の浸潤は認められなかった。検出されたIL‐13Rα2のレベルは、治療群の間で一定のままであった。薬物治療した腫瘍において、DMGに特徴的なH3 K27Mの減少およびH3 K27me3の増加が明らかであった。付加的なIHCの発見は、第1の研究の結果と同等であった(
図7Aおよび
図7B)。
【0109】
最後に、IL‐13Rα2タンパク質レベルの低いHGG異種移植モデルを確立するために、DMG細胞株SU‐DIPG XIII‐Pを使用した。インビトロデータに基づいて、以前に確立した投薬計画を用いてcmIL13が腫瘍体積または生存期間に影響することは予期していなかった。実際に、0.1μg、0.3μg、または1μgのcmIL13のCEDは、有意な腫瘍増殖の減少を示すことができず(それぞれp=0.16、0.18、および0.27、
図5F)、コントロール動物(ビヒクルで24.5日間、0.1μgのcmIL13で23日間(p=0.92)、0.3μgのcmIL13で24日間(p=0.68)、および1μgのcmIL13で24日間(p=0.57))と比べて、大きい生存利益を提供しなかった(
図5G)。CED処置はすべての治療群の間で実行可能であり安全であることを証明し、0.1μgまたは0.3μgのcmIL13で治療したマウスでは、NeuN陽性細胞の免疫細胞浸潤または減少が観測されなかったが、1μgのcmIL13で治療した動物の脳幹におけるNeuN+細胞密度の低下もやはり認められなかった。IHCは、cmIL13で薬物治療したIL‐13Rα2の低い異種移植片では切断型カスパーゼ3の染色増加を示さず、cmIL13の注入後にそれらの腫瘍で高い細胞増殖が維持された。インビトロのタンパク質レベル分析に従って、IL‐13Rα2のIHC染色はSU‐DIPG XIII‐P異種移植片には存在しなかった。さらに、H3 K27MおよびH3 K27me3は、ビヒクル対cmIL13治療した腫瘍との間でほぼ変わらないままであった。これらの結果は、HGG同所性異種移植モデルの治療効果をもたらすためにcmIL13などの標的療法にはIL‐13Rα2の上方制御が必要であることを示している。
【0110】
本開示の特定の態様を詳細に説明してきたが、それらの詳細に対する様々な修正例および改変例を本開示の教示全体に鑑みて考案できることが当業者には理解されよう。したがって、開示されている特定の構成は単なる例示を目的とし、添付の特許請求の範囲および態様ならびにそれらのあらゆる等価物の最大の範囲を与えられるべき本開示の範囲を限定する意図はない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
政府契約
本開示は、国立衛生研究所により授与された政府契約番号R43 CA275560の下で政府の支援によってなされたものである。米国政府は本発明の一定の権利を有する。 関連出願の相互参照
本願は、2021年11月10日出願の米国特許仮出願第63/277,866号の利益を主張するものであり、その文献を本願に引用して援用する。
【国際調査報告】