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特表2024-546046TREML1により誘導された免疫抑制を逆転させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】TREML1により誘導された免疫抑制を逆転させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241210BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241210BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20241210BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241210BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241210BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20241210BHJP
【FI】
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C12Q1/6886 Z
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P43/00
A61P35/02
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/543 545A
C12N15/13
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528552
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022079865
(87)【国際公開番号】W WO2023087016
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/279,670
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520154058
【氏名又は名称】アセンド バイオテクノロジー インク
(71)【出願人】
【識別番号】522442504
【氏名又は名称】フランク・ウェン-チ・リー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェン-タ・ル
(72)【発明者】
【氏名】チア-ミン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ-チェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】イ-ファン・ツァイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA11
4B063QA12
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS34
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
可溶性TREML1は、多くの炎症性疾患に関与しており、免疫抑制において重要な役割を果たす。可溶性TREML1は、CD11bのI-ドメインに結合し、免疫抑制表現型を誘導し得る。したがって、可溶性TREML1は、炎症性疾患を治療するための優れた標的であり得る。本発明は、CD11b+免疫細胞への可溶性TREML1結合を低減し得る抗体、及びTREML14により誘導された免疫抑制を逆転させるためのそれらの使用に関する。抗TREML1抗体は、これらの疾患状態、例えばがんの新規で可能性のある治療を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄系細胞によって発現される誘発性受容体(TREM)様転写産物-1(TREML1)の、CD11bへの結合を阻害する薬剤であって、抗体又はその抗原結合性断片である薬剤。
【請求項2】
前記CD11bが、免疫細胞上で発現される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体又はそれらの抗原結合性断片である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
i) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYX1X2YYADTVTG(配列番号29)を含むCDR-H2;及びEDYGX3NGAX4DY(配列番号30)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQX5IVHSNGNTYLE(配列番号31)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
又は
ii) 重鎖可変(VH)領域であって、X6YVX7H(配列番号49)を含むCDR-H1;YX8NPYX9X10X11X12KX13X14X15X16X17X18X19(配列番号50)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDX20(配列番号51)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、X21SX22QSLX23HSNGNTYX24H(配列番号52)を含むCDR-L1;X25VSNRFS(配列番号53)を含むCDR-L2;及びSQSX26X27X28WT(配列番号54)を含むCDR-L3を含む、VL領域
を含み;
X1~X28が、任意のアミノ酸であり;場合により、
X1が、非荷電又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X2が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X3が、非荷電又は負荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X4が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X5が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X6が、負荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X7が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X8が、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X9が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X10が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X11が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X12が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X13が、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X14が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X15が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X16が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X17が、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X18が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X19が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X20が、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X21が、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X22が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X23が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X24が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X25が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X26が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸であり;X27が、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸であり;X28が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸である、
抗TREML抗体又はその抗原結合性断片を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
X1が、S又はRであり;X2が、V又はIであり;X3が、D又はNであり;X4が、I又はMであり;X5が、N又はSであり;X6が、D、E又はNであり;X7が、I又はMであり;X8が、I、M又はFであり;X9が、T又はNであり;X10が、D又はGであり;X11が、G又はHであり;X12が、P、S又はAであり;X13が、Y又はFであり;X14が、S又はNであり;X15が、D又はEであり;X16が、K又はTであり;X17が、I、A又はFであり;X18が、K、R又はTであり;X19が、D又はGであり;X20が、F又はYであり;X21が、R又はKであり;X22が、S又はTであり;X23が、L、V又はIであり;X24が、L又はVであり;X25が、K又はQであり;X26が、T又はSであり;X27が、H又はYであり;X28が、I又はVである、請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
(i) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYRIYYADTVTG(配列番号27)を含むCDR-H2;及びEDYGNNGAMDY(配列番号28)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号26)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(ii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYSVYYADTVTG(配列番号21)を含むCDR-H2;及びEDYGDNGAIDY(配列番号22)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQNIVHSNGNTYLE(配列番号23)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(iii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYSVYYADTVTG(配列番号21)を含むCDR-H2;及びEDYGDNGAIDY(配列番号22)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号26)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(iv) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YMNPYTDGPKYSDKIKD(配列番号33)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLLHSNGNTYLH(配列番号35)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTHIWT(配列番号36)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(v) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YINPYTGGPKYSETARG(配列番号37)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSTQSLVHSNGNTYVH(配列番号38)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTYVWT(配列番号56)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(vi) 重鎖可変(VH)領域であって、EYVIH(配列番号39)を含むCDR-H1;YFNPYTGGSKFNEKFKD(配列番号40)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDY(配列番号55)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号41)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSSHIWT(配列番号42)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(vii) 重鎖可変(VH)領域であって、NYVMH(配列番号43)を含むCDR-H1;YFNPYNGHAKYSEKFTG(配列番号44)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDY(配列番号55)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLIHSNGNTYLH(配列番号45)を含むCDR-L1;QVSKRFS(配列番号46)を含むCDR-L2;及びSQSTHIWT(配列番号36)を含むCDR-L3を含む、VL領域;又は
(viii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YINPYTGGPKYSETAKG(配列番号47)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、KSTQSLVHSNGNTYVH(配列番号48)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTYVWT(配列番号56)を含むCDR-L3を含む、VL領域
を含む抗TREML抗体又はその抗原結合性断片を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項7】
(i) 配列番号4を含むVH領域、及び配列番号5を含むVL領域;
(ii) 配列番号6を含むVH領域、及び配列番号7を含むVL領域;
(iii) 配列番号8を含むVH領域、及び配列番号9を含むVL領域;
(iv) 配列番号10を含むVH領域、及び配列番号11を含むVL領域;
(v) 配列番号12を含むVH領域、及び配列番号13を含むVL領域;
(vi) 配列番号14を含むVH領域、及び配列番号15を含むVL領域;
(vii) 配列番号16を含むVH領域、及び配列番号17を含むVL領域;又は
(viii) 配列番号18を含むVH領域、及び配列番号19を含むVL領域
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
それを必要とする対象における免疫抑制と関連付けられるか又は免疫抑制によって特徴付けられる疾患又は状態の1つ又はそれ以上の症状を治療又は緩和する方法であって、前記対象へ請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤を投与する工程、及び前記対象において免疫抑制を逆転させる工程を含み、これによって前記疾患又は状態の1つ又はそれ以上の症状を治療又は緩和する、方法。
【請求項9】
免疫抑制を逆転させる工程が、炎症を阻害することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
炎症反応が、単球媒介性、マクロファージ媒介性及び/又は好中球媒介性炎症反応であり得る、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患又は状態が、悪性腫瘍増殖、腫瘍血管新生、がん、慢性感染、敗血症、免疫疲弊、又は加齢における免疫老化を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが、黒色腫、肺がん、肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎がん、脳がん、肝がん、結腸がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚性又は眼内悪性黒色腫、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫及び消化管がんを含み、場合により、前記がんが結腸がんを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記慢性又は急性白血病が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CD11bへのTREML1の結合を阻害する方法であって、請求項1に記載の薬剤を、CD11bを発現しTREML1の存在下にある細胞へ投与する工程を含み、これによって、CD11bへのTREML1の結合を阻害する、方法。
【請求項15】
細胞において免疫抑制を逆転させる方法であって、請求項1に記載の薬剤を、TREML1が結合したCD11bのI-ドメインによって、免疫抑制性になるように誘導された細胞へ、投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
細胞上のPD-L1発現を阻害する方法であって、請求項1に記載の薬剤を、TREML1が結合したCD11bのI-ドメインによって、PD-L1を発現するように誘導された細胞へ、投与する工程を含む、方法。
【請求項17】
前記細胞が、免疫細胞を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、自然免疫応答系の細胞を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、マクロファージ、好中球、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞及び顆粒球を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、対象において存在し、場合により、前記対象が哺乳動物である、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞の免疫抑制を逆転させ、且つ/又は免疫抑制と関連付けられる疾患若しくは状態を治療する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象においてがんを診断するか若しくは悪性腫瘍の存在を検出し、且つ/又は対象が、1つ若しくはそれ以上のがん治療に応答性であり得るかどうかを決定する方法であって、前記対象から生体試料を取得する工程、及び前記試料中のTREML1を検出する工程を含み、これによって、前記対象においてがん又は腫瘍を検出する、方法。
【請求項23】
前記試料中のTREML1の発現を定量する工程を更に含み、場合により、前記対象におけるTREML1の発現を、対照のTREML1の発現と比較する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料が、体液、細胞又は組織を含み、場合により、体液が、血液、尿、唾液、胆汁、骨髄穿刺液、母乳、脳脊髄液(CSF)、血漿、血清、便、膣液又は滑液を含み;場合により、細胞が、血液細胞、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、免疫細胞、幹細胞、末梢血細胞又は幹細胞を含み;場合により、前記組織が、生検又は切除された腫瘍からの組織である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
TREML1の存在を検出する工程が、免疫学的アッセイ、組織学的アッセイ、細胞学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ビーズベースの検出アッセイ、DNA若しくはRNA発現アッセイ、又はアプタマーベースのアッセイを行うことを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
TREML1の存在を検出する工程が、TREML1の存在を検出するために請求項1から7のいずれか一項に記載の1つ又はそれ以上の薬剤を使用することを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項27】
前記がんが、黒色腫、肺がん、肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎がん、脳がん、肝がん、結腸がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚性又は眼内悪性黒色腫、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫及び消化管がんを含み、場合により、前記がんが結腸がんを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
それを必要とする前記対象をICB療法により治療する工程を更に含み、場合により、ICB療法が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又は他の抗PDL1薬物を前記対象へ投与することを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から7のいずれか一項に記載の1つ又はそれ以上の薬剤を投与することによって、それを必要とする前記対象を治療する工程を更に含む、請求項22、23又は28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月15日出願の米国仮特許出願第63/279,670号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表情報
本出願に付随する配列表は、ハードコピーに代わるXML形式において提供され、本明細書に参照によりこれにより組み込まれる。配列表を含有するXMLファイルの名称は、A263-1005PCT.xmlである。XMLファイルは、51,147バイトであり、2022年10月20日に作出され、PatentCenter(米国)を介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は、抗体、抗体を含む組成物、及び免疫抑制を阻害又は逆転させるための抗体を使用する方法を説明する。
【背景技術】
【0004】
TREM様転写産物-1(TREML1;TLT-1)は、TREMファミリーの一員である。TREML1は、単一のV-セット免疫グロブリン(Ig)ドメイン、荷電残基を含有する柄領域、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部からなる。TREML1は、ヒトの末梢血中の血小板において排他的に見出される。活性化に際して、TREML1は血小板の膜に迅速に曝露され、続いてTREML1の細胞外ドメイン(TREML1 ECD)が切断され、可溶性TREML1の放出をもたらす。研究から、敗血症を有する患者は、健康な個体とは対照的に、血漿中に高レベルの可溶性TREML1を有することが示されている。敗血症で亡くなった患者は、血漿中の高レベルの可溶性TREML1の維持を有したが、一方で、一命をとりとめた患者は、この同じ期間中に可溶性TREML1の下落を示した。敗血症を有する患者において観察された免疫抑制のインジケーターとして、リンパ球異常、ヒト白血球抗原-DR(HLA-DR)表面発現の減少による単球活性解除、及びex vivo刺激下における低TNF-α生産が挙げられる。単球HLA-DR発現の低減の維持は、院内感染及び敗血症を有する患者の死について高いリスクを示す。最近、敗血症性ショックを有する患者の単球においてプログラム死リガンド-1(PD-L1)発現の上昇が観察され、二次的院内感染及び死亡率の増加と関連付けられた。以前に、可溶性TREML1は、免疫細胞へ直接的に結合し、細胞を誘発して免疫抑制表現型、例えば、HLA-DRのダウンレギュレーション及びPD-L1のアップレギュレーションを発現させることが報告された(WO2016197975A1)。また、他の疾患、例えば急性呼吸促迫症候群、急性冠動脈症候群及び冠動脈疾患において、高い可溶性TREML1血漿濃度は、負のアウトカムと関連付けられている。これらの結果は、可溶性TREML1が、炎症関連疾患において重要な役割を果たすことを示唆する。したがって、可溶性TREML1は、炎症関連疾患のバイオマーカー及び治療標的として働き得る。
【0005】
マクロファージ-1抗原(Mac-1、インテグリンαMb2、CD11b/CD18)は、自然免疫細胞(単球、好中球、NK細胞等を含む)並びに一部のB細胞(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008年4月1日;105(13):5195~200)及びT細胞(J. Immunol. 2001年1月15日;166(2):900~7)の集団の表面上において主に発現する。Mac-1は、非共有結合インテグリンαM(CD11b、CR3A、ITGAM)及びインテグリンβ2(CD18、ITGB2)を含むヘテロ二量体糖タンパク質である。CD11bは、大きな細胞外ドメイン及び短い細胞質尾部を有する膜貫通タンパク質である。その細胞外ドメインは、I-ドメイン、β-プロペラドメイン、thighドメイン、calf-1ドメイン及びcalf-2ドメインを含む。CD11bのI-ドメインは、β-プロペラドメインに挿入された約179個のアミノ酸を有する。このI-ドメインは、無差別のリガンド(例えば、iC3b、フィブリノーゲン、ICAM-1、CD40L等)に結合する原因であり、細胞接着、遊走、走化性及びファゴサイトーシスに参加し、免疫細胞の炎症反応を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2016197975A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008年4月1日;105(13):5195~200
【非特許文献2】J. Immunol. 2001年1月15日;166(2):900~7
【非特許文献3】J. Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、98~118ページ(N.Y. Academic Press 1983)
【非特許文献4】Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.
【非特許文献5】Chothiaら、1989、Nature 342:877~883
【非特許文献6】Lefranc, M. -P.ら、1999、Nucleic Acids Res. 27:209~212
【非特許文献7】MacCallumら、1996、J. Mol. Biol. 262:732~745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
炎症関連疾患を治療するための新しい標的を開発し使用する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本要約は、以下の詳細な説明において更に説明される選定された概念を、単純な形態において紹介するために提供される。本要約は、請求される主題のすべての重要な特性又は本質的な特性を特定するとは意図されず、請求される主題の範囲を決定することにおける補助として単独で使用されるとは意図されない。
【0010】
本開示は、TREML1 ECDがCD11bのI-ドメインに結合することができるという驚くべき発見に基づく。CD11b+免疫細胞へのTREML1 ECD結合の結果として、TREML1 ECDは、免疫抑制を誘導することができる。抗CD11b抗体は、TREML1 ECDにより誘導された免疫抑制を逆転させることができる。また、抗TREML1抗体治療は、CD11b+免疫細胞へのTREML1 ECD結合を低減する。したがって、抗TREML1抗体は、免疫抑制性障害、例えばがんを治療するために使用することができる。
【0011】
本開示は、TREML1に結合する抗体を含む薬剤を説明する。これらの抗体は、CD11b+免疫細胞へのTREML1 ECDの結合を防止することによって、腫瘍増殖を抑制することができる。また、本開示は、TREML1に結合する抗体を含む、本明細書において説明される薬剤を含む組成物及び医薬組成物を説明する。実施形態において、抗体は、TREML1 ECDに結合する。
【0012】
更に、本開示は、本明細書において説明される抗体を含む薬剤を使用して免疫抑制を逆転させる方法を説明する。
【0013】
更に、本開示は、がんを含む、免疫抑制と関連付けられる様々な疾患及び状態を治療するために、本明細書において説明される抗体等の薬剤を使用する方法を説明する。
【0014】
更に、本開示は、対象においてがんを診断するか若しくは悪性腫瘍の存在を検出するため、並びに/又は対象が、免疫療法及び他の形態のがん治療を含む様々ながん治療に応答性であり得るかどうかを決定するための方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、TREML1 ECDが、ヒト単球及び好中球のCD11bに結合し得ること、並びにCD11b特異的抗体が、CD11b+免疫細胞(単球及び好中球)へのTREML1 ECD結合と競合し得ることを示す図である。白血球(WBC)を、ヒトTREML1 ECD 10μg/ml及び抗CD11b抗体(ICRF44)10μg/mlと共にインキュベートした。処理後、細胞を染色緩衝液により洗浄し、Alexa Fluor 488をコンジュゲートした抗ヒトTREML1抗体(FAB2394G、R&D systems社)で染色した。単球及び好中球を、フローサイトメトリーにより解析した。MFIは、平均蛍光強度である。
図2図2は、TREML1 ECDが、CD11bのI-ドメインに濃度依存的様式において結合することを示す図である。
図3図3は、抗CD11b抗体は、TREML1により誘導された免疫抑制を逆転させ得ることを示す図である。単球を、ヒトTREML1 ECD(10μg/ml)と共に、アイソタイプ対照IgG(MOPC21)10μg/ml又は抗CD11b抗体(ICRF44)10μg/mlいずれかの存在下において3日間インキュベートした。示される時点において、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより解析した。同じ時点において、アイソタイプ対照IgG処理単球又は抗CD11b抗体処理単球のHLA-DR及びPD-L1発現を、偽(対照)処理した単球のHLA-DR及びPD-L1発現と比較して示す。
図4図4は、抗TREML1抗体がTREML1 ECDに濃度依存的様式において結合することを示す図である。
図5図5は、抗TREML1抗体が、細胞表面上にヒト又はマウスTREML1を発現するHEK293細胞に結合し得ることを示す図である。HEK293/ヒトTREML1又はHEK293/マウスTREML1を、抗TREML1抗体10μg/ml又はアイソタイプ対照IgG(MOPC21)により処理した。その後、細胞を37℃において30分間インキュベートした。その後、細胞を、APCをコンジュゲートした抗マウスIgG抗体により処理し、フローサイトメトリーにより解析した。
図6A図6Aは、抗TREML1抗体が、CD11b+免疫細胞(単球及び好中球)へのTREML1 ECD結合を遮断し得ることを示す図である。WBCを、様々な濃度のヒトTREML1 ECD及び抗TREML1抗体(26A6)10μg/mlと共にインキュベートした。処理後、細胞を染色緩衝液により洗浄し、Alexa Fluor 488をコンジュゲートした抗ヒトTREML1抗体(FAB2394G、R&D systems社)により染色した。単球及び好中球を、フローサイトメトリーにより解析した。
図6B図6Bは、抗TREML1抗体が、CD11b+免疫細胞(単球及び好中球)へのTREML1 ECD結合を遮断し得ることを示す図である。WBCを、ヒトTREML1 ECD 10μg/ml及び抗TREML1抗体(18D8、23F10、27D3、28A9及び29F4)10μg/mlと共にインキュベートした。処理後、細胞を染色緩衝液により洗浄し、Alexa Fluor 488をコンジュゲートした抗ヒトTREML1抗体(FAB2394G、R&D systems社)により染色した。単球及び好中球を、フローサイトメトリーにより解析した。
図7図7は、抗TREML1抗体が、TREML1により誘導された免疫抑制を逆転させ得ることを示す図である。単球をヒトTREML1 ECD(1、5、10μg/ml)と共に、アイソタイプ対照IgG(MOPC21)10μg/ml又は抗TREML1抗体(26A6)10μg/mlいずれかの存在下において24時間(hrs)インキュベートした。細胞を回収し、フローサイトメトリーによりPD-L1発現について解析した。
図8A図8Aは、血小板由来TREML1が、腫瘍において富化されていることを示す図である。ヒト組織におけるTREML1発現を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織における免疫染色によって調べ、ヒト腫瘍の大半におけるTREML1発現の強度は、正常組織における強度より有意に高かった。TREML-1結合マクロファージの百分率を定量し、腫瘍組織におけるTREML1/CD68二重陽性細胞の百分率を、腫瘍に隣接する正常組織(NAT)におけるその百分率で割ることによって、変化の倍数を計算した。鼻、胸部、子宮、前立腺、卵巣、腎臓、皮膚、食道及び胃(図8Aにおいてアステリスクにより示される)を含む一部の正常組織において、TREML1/CD68二重陽性細胞の0の百分率が見出されたので、0の代わりに1の百分率を、変化の倍数を計算するために使用した。
図8B図8Bは、血小板由来TREML1が、腫瘍において富化されていることを示す図である。TREML1(茶色)は、マクロファージ(緑色)と共局在しており、腫瘍間質領域の周囲に分布することが見出され得る。ヒト胃がん組織の代表的な写真は、TREML1及びマクロファージ共局在の部位(矢印により示す)を示し、結腸がんの代表的な写真は、腫瘍におけるTREML1(アステリスクにより示す)を示す。
図9図9は、TREML1が、腫瘍微小環境において高度に富化されていることを示す図である。MC38腫瘍におけるTREML1のin vivoモニタリング。VivoTag680XLをコンジュゲートしたアイソタイプ対照IgG(MOPC21)又は抗TREML1抗体(26A6)を受容した後の、MC38腫瘍保有マウスのIVIS画像。抗TREML1抗体により処置したマウスのIVIS画像は、MC38腫瘍領域における陽性生物発光シグナル(白色矢印)を示す。
図10図10は、MC38結腸がんモデルにおける抗TREML1抗体(26A6及び23F10)の抗がん効果を示す図である。MC38腫瘍保有マウスを、抗TREML1抗体10mg/kg又はアイソタイプ対照IgG(MOPC21)抗体により1週間に2回腹腔内処置した。毎週2回、マウスをモニターし、触知できる腫瘍の形成についてスコア付けした。
【発明を実施するための形態】
【0016】
免疫系は、2つのカテゴリー又はサブシステムである、自然免疫系及び適応免疫系に分けることができる。自然免疫とは、対象における抗原の存在の直後又は数時間以内に応答する非特異的防御機構を指す。これらの防御機構は、皮膚等の物理的障壁、血液中の化学物質、及び体内の外来細胞を攻撃する免疫細胞を含む。自然免疫応答は、抗原の化学特性によって活性化される。対照的に、適応免疫とは、抗原特異的免疫応答を指し、抗原提示プロセス中の特異的「非自己」抗原の認識を必要とする。適応免疫応答は、それが以前に遭遇した分子を認識することを学習することによって、各刺激に対して適合させた応答を提供する。また、適応免疫は、特定の抗原に対して適合させた応答を維持するメモリー細胞を含むので、同じ抗原による将来の攻撃への応答はより効率的である。
【0017】
骨髄系細胞(TREM)によって発現される誘発性の受容体は、MHCに連結される、遺伝子クラスターによってコードされる活性化及び阻害性アイソフォームを含む受容体のファミリーに属する。TREM1は、アダプタータンパク質DAP12を通してシグナル伝達することによって、骨髄系細胞を活性化する。TREM1は炎症促進性ケモカイン及びサイトカインの食細胞による分泌を誘発し、細菌及び真菌によって誘導される炎症を増幅する。
【0018】
本開示は、TREML1 ECD(可溶性TREML1、可溶性TLT1)が、CD11bのI-ドメインに結合し、免疫抑制を誘導すること、及び抗CD11b抗体が、TREML1 ECDにより誘導される免疫抑制を逆転させ得ることという予期されない発見に基づく。本明細書において説明される抗体は、CD11b+免疫細胞へのTREML1 ECD結合を阻害又は低減し、TREML1 ECDにより誘導される免疫抑制を逆転させる。また、本開示は、がん、敗血症、感染、自己免疫疾患、慢性疾患、免疫疲弊、又は加齢における免疫老化を含む様々な免疫抑制性障害を治療するための、本明細書において説明される抗TREML1抗体の使用を説明する。
【0019】
CD11bは、自然免疫応答細胞ネットワークの主な担い手であるマクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞及び顆粒球を含む白血球の表面上において構成的に発現され、また、CD11bは、T細胞のサブセット(J. Immunol. 2001年1月15日;166(2):900~7)及びB細胞のサブセット(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008年4月1日;105(13):5195~200)上において条件付きで発現される。したがって、CD11bのI-ドメインへのTREML1の結合は、自然免疫応答と関連付けられる。対照的に、CD3+及びCD8+ T細胞へのTREML1の結合は、適応免疫応答と関連付けられる。
【0020】
定義
請求される主題を説明する文脈において(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される「a」、「an」、「the」という用語及び同様の指示物は、本明細書において別のように示されるか、又は明らかに文脈により否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈すべきである。
【0021】
アミノ酸残基は、以下の通り略される:アラニン(Ala、A)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、アルギニン(Arg、R)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)。
【0022】
当業者により理解される通り、本明細書において開示される各実施形態は、その特定の示される要素、工程、成分又は構成成分を含むか、から本質的になるか又はからなり得る。したがって、「を含む(include)」又は「を含むこと(including)」という用語は、「を含むか、からなるか又はから本質的になる(comprise, consist of, or consist essentially of)」を列挙すると解釈すべきである。移行用語である「を含む(comprise又はcomprises)」は、特定されていない要素、工程、成分又は構成成分を含むが、これらに限定されず、それらの包含を、大量である場合でさえも、許容する。移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていない任意の要素、工程、成分又は構成成分を除外する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、実施形態の範囲を、特定される要素、工程、成分又は構成成分に、及び実施形態に実質的に影響を及ぼさない要素、工程、成分又は構成成分に限定する。実施形態において、実施形態に影響を及ぼさないそれらの要素又は工程は、実施形態の、in vitro又はin vivoにおける機能、例えばin vitro又はin vivoでがん細胞を死滅させることを行う能力を統計的に有意な様式で変更しない要素又は工程である。
【0023】
「親和性」という用語は、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合相互作用全体の強度を指す。別に示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYについての親和性は、一般的に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、本明細書において説明される方法を含む、当該技術分野において公知の通常の方法によって測定することができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、最も広い意味において使用され、特に、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、一価抗体、多価抗体、並びに抗体断片が所望の生物活性を呈する限り抗体断片(例えばFab及び/又はシングルアーム抗体)を包含する。
【0025】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を含む抗体断片を指す。抗体断片は、インタクトな抗体が結合する抗原へのその結合を保持することができる。そのような抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ディアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体(scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0026】
抗体の「抗原結合性断片」又は「抗原結合性部分」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ又はそれ以上の部分を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合性断片」という用語に包含される結合断片の例として、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片;並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。これらの抗体断片は、従来型手技、例えば、J. Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、98~118ページ(N.Y. Academic Press 1983)において説明されるタンパク質溶解断片化手技を使用して得られる。断片は、インタクトな抗体と同じ様式において利用性についてスクリーニングされる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR)という用語は、これらのタンパク質が抗原の形状を補完する、抗体内の領域を指す。CDRという頭字語は、「相補性決定領域」を意味するために本明細書で使用される。単一の抗体は、2つの抗原受容体を有するので、それは12個のCDRを有する。抗体において1つの可変領域当たり3つのCDRループがある。
【0028】
抗体の「可変領域」とは、単独又は組合せいずれかの、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域各々は、超可変領域としても公知の3つのCDRによって接続される4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRによって接近して結合されており、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRの境界を特定するために使用され得る例示的な従来法として、例えば、Kabat定義及びChothia定義が挙げられる。Kabat定義は、配列可変性に基づき(Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.を参照されたい)、Chothia定義は、構造ループ領域の場所に基づく(Chothiaら、1989、Nature 342:877~883)。CDR特定への他の手法として、「IMGT定義」(Lefranc, M. -P.ら、1999、Nucleic Acids Res. 27:209~212)、及びKabatとChothiaとの折衷案であり、Oxford Molecular社のAbM抗体モデリングソフトウェアを使用して得られる「AbM定義」、又はMacCallumら、1996、J. Mol. Biol. 262:732~745において示される、観察される抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。本明細書で使用される場合、CDRは、Kabat番号付けシステムによって定義されるCDRを指し得る。
【0029】
「ヒト化抗体」又は「ヒト化抗体断片」という用語は、所定の抗原に結合する能力があり、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する1つ又はそれ以上のフレームワーク(FR)と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)とを含む免疫グロブリンアミノ酸配列バリアント又はその断片を含む特定の型のキメラ抗体である。多くの場合「インポート」配列と称されるこの非ヒトアミノ酸配列は、典型的に「インポート」抗体ドメイン、特に可変領域からとられる。一般的に、ヒト化抗体は、ヒト重鎖又は軽鎖可変領域のFR間に挿入された、非ヒト抗体の少なくともCDR又は超可変領域(HVL)を含む。
【0030】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト若しくはヒト細胞によって生産されるか、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体の配列に対応するアミノ酸配列を所有する抗体を指す。ヒト抗体は特に、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0031】
「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体からの1つ又はそれ以上の領域と、1つ又はそれ以上の他の抗体からの1つ又はそれ以上の領域とを含有する抗体を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「重鎖」という用語は、全長重鎖、及びエピトープへの特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長重鎖は、可変領域、VH又はVH及び3つの定常領域ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、CH3ドメインは、カルボキシル末端にある。
【0033】
「軽鎖」という用語は、全長軽鎖、及びエピトープへの特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。全長軽鎖は、可変領域、VL又はVL及び定常領域ドメイン、CLを含む。重鎖と同様に、軽鎖の可変領域は、ポリペプチドのアミノ末端にある。
【0034】
「CD11b」という用語は、ヘテロ二量体インテグリンαMβ2の1サブユニットであるインテグリンアルファM(ITGAM、CR3A)を指す。インテグリンαMβ2の第2のサブユニットは、CD18として公知の一般のインテグリンβ2サブユニットである。また、インテグリンαMβ2は、マクロファージ-1抗原(Mac-1)又は補体受容体3(CR3)と呼ばれ、単球、好中球、顆粒球、マクロファージ、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞を含む白血球の表面上において構成的に発現され、T細胞のサブセット(J. Immunol. 2001年1月15日;166(2):900~7)及びB細胞のサブセット(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008年4月1日;105(13):5195~200)上において条件付きで発現される。
【0035】
「PD-L1」という用語は、プログラム死リガンド1(PD-L1)、表面抗原分類274(CD274)、又はB7ホモログ1(B7-H1)を指す。PD-L1は、免疫系を抑制することにおいて主要な役割を果たす膜貫通タンパク質である。
【0036】
「PD-1」という用語は、CD279としても公知のプログラム死タンパク質1を指す。それは、免疫系をダウンレギュレートする、T及びB細胞の表面上のタンパク質である。PD-1は、T細胞の活性をモジュレートすることによって、免疫応答を阻害すること及び自己寛容を促進することにおいて重要な役割を果たす。PD-1及びそのリガンドであるPD-L1は、がん細胞内におけるT細胞活性化、増殖、生存及び細胞傷害性分泌を阻害する。PD-1及びPD-L1は、自己免疫疾患、がん、慢性関節リウマチ、神経変性疾患、敗血症並びに他の感染性疾患、例えば結核菌、サイトメガロウイルス及び肝炎において免疫系を抑制することに関与していることが報告されている。
【0037】
単核白血球とも呼ばれる「単球」という用語は、第一線防御機構に関与し、樹状細胞又はマクロファージ前駆体に分化することが可能と認識されている型の白血球に属する。単球は、通常、血液系内を移動する。外部刺激シグナルに応答して、単球は、多くの免疫調節サイトカインを分泌し、組織における感染の部位へ移動し、マクロファージに分化する。
【0038】
「モジュレートすること」という用語は、対照と比較して統計的に有意な又は生理学的に有意な量で、「増加すること」、「誘導すること」、「促進すること」又は「刺激すること」及び「減少すること」、「低減すること」又は「阻害すること」を含む。
【0039】
「阻害すること」及び「逆転させること」という用語は、免疫抑制の文脈において互換的に使用されて、免疫応答の抑制を緩和又は低減することを意味する。
【0040】
「薬学的に許容される担体」という用語は、対象にとって非毒性である、有効成分以外の、医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体として、緩衝液、賦形剤、安定化剤又は保存剤が挙げられる。
【0041】
「有効量」という用語は、有益な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量を指す。有効量は、1回又はそれ以上の投与において投与され得る。
【0042】
「治療的」という用語は、治療及び/又は予防を指す。治療効果は、疾患状態の抑制、鎮静若しくは根絶、又は疾患状態の症状の緩和によって得られる。
【0043】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医者又は別の臨床医によって求められる、組織、系又は対象の生物学的又は医学的応答を誘発する、組成物又は薬剤の量を指す。「治療有効量」という用語は、投与された場合、治療される疾患又は状態の徴候又は症状のうちの1つ又はそれ以上の発症を防止するか、又はある程度緩和するのに十分である化合物の量を含む。治療有効量は、薬剤、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重等に依存して変動する。治療有効量は、疾患状態又は細胞プロセスの進行を診断、軽減、改善、安定化、逆転、阻害、鈍化又は遅延させるのに十分である量である。
【0044】
「治療」、「治療すること」又は「治療する」という用語等は、一般的に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に防止する点で予防的であってもよく、且つ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害効果についての部分的若しくは完全な安定化若しくは治癒の点で治療的であってもよい。治療は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を含み:(a)対象において1つ若しくはそれ以上の疾患症状を阻害すること、すなわち、その発症が起こることを阻止すること;又は(b)対象において1つ若しくはそれ以上の疾患症状を解放、改善若しくは緩和すること、すなわち、疾患若しくは症状の退縮をもたらすことを含む。
【0045】
「防止する」又は「防止」という用語は、対象において、疾患状態若しくは状態、又は疾患状態若しくは状態の1つ若しくはそれ以上の症状の開始、再発又は広がりが起こることを防止する防止又は予防手段を指す。この用語は、疾患状態又は状態を発症するリスクを有する対象への、症状の開始前の、本明細書において説明される組成物又は薬剤の投与を含む。この用語は、疾患状態又は状態と関連付けられる1つ又はそれ以上の症状の阻害又は低減を含む。「防止」という用語は、「予防的処置」という用語と互換的に使用され得る。
【0046】
「免疫チェックポイント阻害(ICB)療法」という用語は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-L1、抗CTLA-4及び抗PD-1抗体を使用するがん免疫療法を指す。抗PD-1、抗CTLA-4及び抗PD-L1モノクローナル抗体は、様々ながんを有する患者において、耐久性のある応答を提供することが報告されることが報告されている。
【0047】
「がん治療の形態として投与され得る治療に応答性」又は「がん治療に応答性」という用語は、がん又は悪性腫瘍の増殖を有すると診断され、がんを治療するために投与され得る1つ又はそれ以上の治療に応答するか又はそれから利益を享受する対象を指す。対象は、1つ又はそれ以上の治療に抵抗性でなく、がん細胞若しくは腫瘍の増殖の阻害、又はがん細胞若しくは腫瘍のサイズの低減等、治療に応答するか又は利益を享受する。がん治療の例として、ICB療法を含む免疫療法が挙げられる。
【0048】
「すべての治療」又は「治療」という用語は、互換的に使用されて、がん治療の形態として投与され得る1つ又はそれ以上のがん治療及び/又は様々ながん治療を含み得る。
【0049】
「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物を含む。非ヒト動物として、哺乳動物、例えばマウス、ラット、イヌ、ブタ、サル及び類人猿、並びに非哺乳動物、例えば鳥類、爬虫類、魚類及び両生類が挙げられる。治療を必要とするか又はそれを必要とする対象は、治療することを必要とする疾患又は状態を有する対象を含む。また、それを必要とする対象は、疾患又は状態の治療又は防止を必要とする対象を含む。実施形態において、疾患又は状態は、がんを含む免疫抑制疾患である。
【0050】
「配列同一性」という用語は、2つ又はそれ以上のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列を比較することによって決定される、それらの配列間の関係を指す。また、「配列同一性」という用語は、ポリペプチド又はポリペプチド配列の列間の適合によって決定される、それらの間の配列関連性の程度を指す。配列同一性は、公知のバイオインフォマティクス法によって容易に計算され得る。一例として、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、GAPコンピュータープログラム(GCG Wisconsin Package、バージョン10.3の一部(Accelrys社、サンディエゴ、カリフォルニア))を使用して、そのデフォルトパラメーターを使用して配列を比較することによって決定される。
【0051】
本明細書中の値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各別々の値を個々に言及することを簡略化する方法として働くと意図される。本明細書において別に示されない限り、各個々の値は、それが本明細書において個々に列挙されているのと同様に、本明細書に組み込まれる。範囲形式での説明は、単に、便利及び簡潔さのためであり、本開示の範囲に対する変更の余地がない限定として解釈すべきでないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、その範囲内の具体的に開示されるすべての可能な下位範囲及び個々の数値を有すると考えるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の具体的に開示される下位範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、2.5、2.7、3、4、5、5.1、5.3、5.8及び6を有すると考えるべきである。このことは、範囲の幅にかかわらず、適用される。更に、本明細書において引用される任意の範囲は、範囲の上限及び下限を包含する。
【0052】
更なる明確さが必要とされる場合、「約」という用語は、示される数値又は範囲と合わせて使用される場合、当業者が、合理的にそれに帰するとする意味を有する、すなわち、示される値又は範囲よりもいくらか多いか又はいくらか少ないこと、示される値の±20%;示される値の±15%;示される値の±10%;示される値の±5%;示される値の±4%;示される値の±3%;示される値の±2%;示される値の±1%;又は示される値の±1%~20%の任意の百分率の範囲内を示す。
【0053】
TREML1及びその組成物に結合する薬剤
本開示は、TREML1に結合し、CD11bへのTREML1結合によって誘導される免疫抑制を逆転させる薬剤を説明する。TREML1に結合する薬剤は、TREML1 ECDに結合し、CD11bへのTREML1結合によって誘導される免疫抑制を逆転させ得る任意の化合物又は分子を含む。実施形態において、本明細書において説明される薬剤は、TREML1 ECDに結合する抗体を含む。
【0054】
本明細書において説明される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体及びその抗原結合性断片を含む。これらの抗体は、TREML1に結合し、CD11bへのTREML1結合によって誘導される免疫抑制を逆転させる。実施形態において、これらの抗体は、TREML1 ECDに結合する。本明細書において説明される抗体は、ファージディスプレイ技術、組換え技術、コンピューター技術、ハイブリドーマ技術又は動物を免疫化することを含む任意の公知の方法によって得ることができる。一例として、本明細書において説明される抗体は、マウスを、ヒトTREML1抗原により免疫化し、その後、TREML1 ECDを認識し得る特異的抗体遺伝子を有するハイブリドーマをスクリーニング及び単離することによって得られる。
【0055】
TREML1に結合する例示的な抗体は、以下のTables 1(表1及び表2)~Table 3(表5~表12)に示される。Tables 1(表1及び表2)のコンセンサス配列又は保存された配列によって示される通り、本開示は、アミノ酸配列番号20(CDR-H1)、配列番号29(CDR-H2)及び配列番号30(CDR-H3)を含むVH領域、並びにアミノ酸配列番号31(CDR-L1)、配列番号24(CDR-L2)及び配列番号25(CDR-L3)を含むVL領域を含む、TREML1に結合する抗体を説明する。Tables 2(表3及び表4)のコンセンサス配列又は保存された配列によって示される通り、本開示は、アミノ酸配列番号49(CDR-H1)、配列番号50(CDR-H2)及び配列番号51(CDR-H3)を含むVH領域、並びに配列番号52(CDR-L1)、配列番号53(CDR-L2)及び配列番号54(CDR-L3)を含むVL領域を含む、TREML1に結合する抗体を説明する。実施形態において、CDRのアミノ酸配列中のアミノ酸「X」は、任意のアミノ酸であり得る。
【0056】
アミノ酸は、それらの側鎖(又はR基)について互いに異なる。例えば、それらの側鎖は、構造、電荷及び極性が異なり得る。3種類の極性アミノ酸である、中性アミノ酸、正に荷電したアミノ酸及び負に荷電したアミノ酸がある。非荷電側鎖を有する極性アミノ酸として、セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C)、プロリン(P)、アスパラギン(N)及びグルタミン(Q)が挙げられる。正に荷電した側鎖を有する極性アミノ酸として、リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)が挙げられ、負に荷電した側鎖を有する極性アミノ酸として、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)が挙げられる。脂肪族又は疎水性側鎖を有する非極性アミノ酸として、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、グリシン(G)及びバリン(V)が挙げられ、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸として、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)及びチロシン(Y)が挙げられる。
【0057】
実施形態において、Table 1(表1及び表2)並びにTable 2(表3及び表4)において示される配列に基づいて、アミノ酸「X」は、以下の例において示される特定のアミノ酸であり得る。配列番号29において、第1のアミノ酸Xは、非荷電又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばS又はRを含んでもよく、第2のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばV又はIを含んでもよい。配列番号30において、第1のアミノ酸Xは、非荷電又は負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばD又はNを含んでもよく、第2のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばI又はMを含んでもよい。配列番号31において、アミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばN又はSを含んでもよい。配列番号49において、第1のアミノ酸Xは、負荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばD、E又はNを含んでもよく、第2のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばI又はMを含んでもよい。配列番号50において、第1のアミノ酸Xは、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばI、M又はFを含んでもよく;第2のアミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばT又はNを含んでもよく;第3のアミノ酸Xは、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばD、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばGを含んでもよく;第4のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばG、又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばHを含んでもよく;第5のアミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばP若しくはS、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばAを含んでもよく;第6のアミノ酸Xは、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばアミノ酸Y又はFを含んでもよく;第7のアミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばS又はNを含んでもよく;第8のアミノ酸Xは、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばD又はEを含んでもよく;第9のアミノ酸Xは、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばK又はTを含んでもよく;第10のアミノ酸Xは、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばI、A又はFを含んでもよく;第11のアミノ酸Xは、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばK、R又はTを含んでもよく;第12のアミノ酸Xは、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばD、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばGを含んでもよい。配列番号51において、アミノ酸Xは、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばF又はYを含んでもよい。配列番号52において、第1のアミノ酸Xは、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばR又はKを含んでもよく;第2のアミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばS又はTを含んでもよく;第3のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばL、V又はIを含んでもよく;第4のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばL又はVを含んでもよい。配列番号53において、アミノ酸Xは、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばK又はQを含んでもよい。配列番号54において、第1のアミノ酸Xは、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばT又はSを含んでもよく;第2のアミノ酸Xは、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、例えばH、又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばYを含んでもよく;第3のアミノ酸Xは、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、例えばI又はVを含んでもよい。上記に説明される各配列における「X」アミノ酸は、第1のXアミノがペプチドのアミノ末端に最も近いものとして連続的に番号付けられる。
【0058】
Table 1(表1及び表2):例示的な抗体のCDR
【表1】
【表2】
【0059】
Table 2(表3及び表4):例示的な抗体のCDR
【表3】
【表4】
【0060】
実施形態において、抗TREML1抗体は、Table 3(表5~表12)において示されるアミノ酸配列を含むVH及びVL領域を含む様々なクローンを含む。本明細書において説明される例示的な抗体は、アミノ酸配列番号4(VH)及び配列番号5(VL)を含むクローン17E6;配列番号6(VH)及び配列番号7(VL)を含むクローン25C6;配列番号8(VH)及び配列番号9(VL)を含むクローン26A6;配列番号10(VH)及び配列番号11(VL)を含むクローン18D8;配列番号12(VH)及び配列番号13(VL)を含むクローン23F10;配列番号14(VH)及び配列番号15(VL)を含むクローン27D3;配列番号16(VH)及び配列番号17(VL)を含むクローン28A9;並びに配列番号18(VH)及び配列番号19(VL)を含むクローン29F4を含む。
【0061】
Table 3(表5~表12):例示的な抗TREML1抗体
各抗体のCDR配列を下線で示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0062】
また、本開示は、本明細書において説明されるTREML1 ECDに結合する抗体を含む、TREML1に結合し、CD11bへのTREML1結合によって誘導される免疫抑制を逆転させる1つ又はそれ以上の薬剤を含む組成物を説明する。また、組成物は、担体を含み得る。実施形態において、組成物は、医薬組成物である。医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0063】
「担体」という用語は、組成物に添加することができ、有効成分、特に本明細書において説明される抗体に影響を及ぼさない希釈剤、アジュバント又は賦形剤を含む。アジュバントの例として、動物、特に研究動物に使用される完全及び不完全フロイントアジュバントが挙げられる。薬学的に許容される担体として、滅菌液体、例えば水、及び石油、動物、植物の油又は合成起源からの油を含む油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等が挙げられる。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合、好ましい賦形剤である。また、生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液は、液体賦形剤として、特に注射用溶液のために、用いることができる。好適な医薬賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、白墨、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0064】
また、本明細書において説明される組成物又は医薬組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、維持放出製剤等の形態をとり得る。医薬組成物は、製剤として調製され得る。経口製剤は、標準の担体、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含み得る。そのような製剤は、治療有効量の本明細書において説明される抗体を、精製された形態で、対象への適切な投与のための形態を提供するのに好適な量の担体と共に、含有する。製剤は、投与様式に適するべきである。
【0065】
本明細書において説明される医薬組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、注入、埋入又は移植による様式を含む任意の従来型様式において行うことができる。また、本明細書において説明される組成物は、経口で、局所的に、鼻内に、経腸的に、直腸に、口腔に、膣に、舌下に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節内に、髄内に、筋内に、静脈内に、頭蓋内に、腹腔内に又はそれらの組合せで対象へ投与され得る。医薬組成物の投与は、治療及び/又は予防有効量の本明細書において説明されるコンジュゲートを、それを必要とする対象へデリバリーするのに有効である任意の様式であってもよい。
【0066】
「免疫学的に有効な量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、「治療的量」又は「有効量」という用語は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染又は転移の程度及び対象の状態における個々の相違を考慮して医師によって決定され得る、投与される有効成分、例えば本明細書において説明される抗体の正確な量を指す。
【0067】
対象へ本明細書において説明される医薬組成物を投与するための投与量は、治療される状態の正確な性質及び治療のレシピエントにより変動する。ヒト投与のための投与量の設定は、本明細書において説明される様々な因子に依存して、医師によって、当該技術分野において許容されている実施に従って行われ得る。特定の対象についての最適投与量及び治療レジームは、標的、体重、疾患の段階及び投与経路を含む身体的、生理的及び精神的因子等のパラメーターを考慮に入れて、医師によって容易に決定することができる。
【0068】
本明細書において説明される抗体等の薬剤を含む医薬組成物の例示的な用量は、0.0001mg/対象の体重kg~200mg/kgを含み得る。1日の全用量は、対象へ1日1~3回投与される0.1mg/kg~50.0mg/kgであり得る。追加の有用な用量は、多くの場合、0.1μg/kg~5μg/kg、5μg/kg~100μg/kg、50μg/kg~500μg/kg、450μg/kg~1mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~50mg/kg、25mg/kg~75mg/kg、50mg/kg~100mg/kg、75mg/kg~125mg/kg、100mg/kg~150mg/kg、125mg/kg~175mg/kg、又は150mg/kg~200mg/kgに及び得る。示される例示的な用量は、対象の体重に基づく。
【0069】
本明細書において説明される薬剤の使用
実施形態は、CD11b+免疫細胞への可溶性TREML1結合を低減し得る、本明細書において説明される薬剤、及びTREML1により誘導される免疫抑制を逆転させるためのそれらの使用に関する。抗TREML1抗体は、免疫抑制と関連付けられる疾患及び状態のための新規で可能性のある治療を提供する。
【0070】
本明細書において説明される薬剤は、HEK293/TREML1細胞及びCD11b+免疫細胞上のTREML1に結合する抗TREML1抗体を含む。抗TREML1抗体結合自然免疫細胞、及び自然免疫細胞に結合することについてのTREML1 ECDとの競合の結果として、抗TREML1抗体は、がんを治療するために使用することができる。
【0071】
本開示は、本明細書において説明される抗体を含む1つ又はそれ以上の薬剤、及び本明細書において説明される医薬組成物を、免疫抑制と関連付けられるか又は免疫抑制によって特徴付けられる疾患又は状態の1つ又はそれ以上の症状を治療又は緩和するために、それを必要とする対象へ投与する工程を含む方法を説明する。実施形態において、免疫抑制を逆転させることは、炎症反応、例えば単球媒介性、マクロファージ媒介性及び/又は好中球媒介性炎症反応を阻害することを含む。実施形態において、疾患又は状態は、悪性腫瘍の増殖、腫瘍血管新生、がん、慢性感染、敗血症、免疫疲弊、又は加齢における免疫老化を含む。
【0072】
がん及び悪性腫瘍の例として、黒色腫、肺がん、肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎がん、脳がん、肝がん、結腸がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚性又は眼内悪性黒色腫、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫及び消化管がんが挙げられる。慢性又は急性白血病の例として、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病及び慢性リンパ球性白血病が挙げられる。実施形態において、がん又は悪性腫瘍は、結腸がんである。
【0073】
また、本開示は、CD11bへのTREML1の結合を阻害するために、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を使用する方法を説明する。
【0074】
更に、本開示は、細胞において免疫抑制を逆転させるために、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を使用する方法を説明する。
【0075】
更に、本開示は、がん細胞又は悪性腫瘍の増殖を阻害するために、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を使用する方法を説明する。
【0076】
加えて、本開示は、細胞上のPD-L1発現を阻害するために、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を使用する方法を説明する。方法は、本明細書において説明される抗体を含む薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を、TREML1結合CD11bによって、PD-L1を発現するように誘導された細胞へ投与する工程を含む。
【0077】
更に、本開示は、TREML1とCD11bとの相互作用を遮断し、TREML1により誘導される免疫抑制を逆転させるために1つ又はそれ以上の抗CD11b抗体を使用する方法を説明する。CD11bのI-ドメインは、TREML1の受容体である。抗CD11b抗体は、HLA-DR発現のレベルを正常化し、免疫抑制と関連付けられるPD-L1発現のレベルを低減し得る。
【0078】
実施形態において、本明細書において説明される方法は、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を、in vitro、ex vivo又はin vivoで、例えば対象において、細胞へ投与する工程を含む。細胞は、免疫細胞を含む。実施形態において、細胞は、免疫応答系の1つ又はそれ以上の細胞を含む。そのような細胞の例として、マクロファージ、好中球、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球、T細胞のサブセット(J. Immunol. 2001年1月15日;166(2):900~7)及びB細胞のサブセット(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2008年4月1日;105(13):5195~200)が挙げられる。
【0079】
実施形態において、本明細書において説明される方法は、細胞の免疫抑制を逆転させ、且つ/又は免疫抑制と関連付けられる疾患若しくは状態を治療する。
【0080】
実施形態において、本明細書において説明される方法は、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を、免疫細胞へ投与する工程を含む。免疫細胞は、自然免疫応答系の細胞であり得る。自然免疫応答系の細胞の例として、マクロファージ、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球及び顆粒球が挙げられる。実施形態において、細胞は、対象において存在する。実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0081】
実施形態において、本明細書において説明される方法は、細胞の免疫抑制を逆転させ、且つ/又は免疫抑制と関連付けられる疾患若しくは状態を治療する。本明細書において説明される方法は、炎症を阻害する。
【0082】
また、本開示は、がんを診断し、がん治療の様々な形態について対象を特定するために有用なマーカーとしてのTREML1を説明する。したがって、また、本開示は、対象においてがんを診断するか若しくは悪性腫瘍の存在を検出するため、及び/又は対象が、がん治療の形態として投与され得る1つ若しくはそれ以上の治療に応答性であり得るかどうかを決定するための方法を説明する。そのような方法は、対象から生体試料を取得する工程、及び試料中のTREML1の存在を検出する工程を含み、これによって、対象においてがん若しくは悪性腫瘍を検出し、且つ/又は1つ若しくはそれ以上のがん治療について対象を特定する。実施形態において、本明細書において説明される方法は、試料中のTREML1の発現を定量する工程を更に含む。方法は、対象におけるTREML1の発現を、対照におけるTREML1の発現と比較する工程を更に含み得る。対照は、健康な対象、又は健康な対象若しくは正常対照におけるTREML1の発現と関連付けられる基準値であってもよい。対象におけるTREML1の発現が対照よりも高い場合、それは、対象ががん若しくは悪性腫瘍を有し、且つ/又はがん治療の形態として投与され得る1つ若しくはそれ以上の治療についての候補者であることを示す。
【0083】
実施形態において、TREML1の存在を検出する工程は、免疫学的アッセイ、組織学的アッセイ、細胞学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ビーズベースの検出アッセイ、DNA若しくはRNA発現アッセイ、又はアプタマーベースのアッセイを行うことを含み得る。実施形態において、方法は、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を使用して行われる。
【0084】
実施形態において、本明細書において説明される生体試料は、体液、細胞又は組織を含み、場合により、体液は、血液、尿、唾液、胆汁、骨髄穿刺液、母乳、脳脊髄液(CSF)、血漿、血清、便、膣液又は滑液を含み;場合により、細胞は、血液細胞、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、免疫細胞(例えばT細胞、B細胞、NK細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞等)、幹細胞、末梢血細胞又は幹細胞を含み;場合により、組織は、生検又は切除された腫瘍からの組織である。
【0085】
がん及び悪性腫瘍の例は、本明細書において説明される。実施形態において、がん又は悪性腫瘍は、消化管のがん、例えば結腸がんを含む。
【0086】
実施形態において、がん若しくは悪性腫瘍と診断されたか、又はがん治療について特定された対象は、1つ又はそれ以上のがん治療、例えば化学療法、放射線療法、免疫療法、及び幹細胞又は骨髄移植療法で治療され得る。一例として、がんと診断又は特定された対象は、免疫チェックポイント遮断又は免疫チェックポイント阻害剤が対象を治療するために使用され得る場合、ICB療法を含む免疫療法の候補者である。
【0087】
実施形態において、方法は、対象をICB療法により治療する工程を更に含む。ICB療法は、免疫細胞の表面上に発現される阻害性受容体(免疫チェックポイント)とそれらのリガンドとの相互作用を遮断するチェックポイント阻害剤及びモノクローナル抗体ベースの治療を含む。一例として、PD-1及びPD-L1の発現は、PD-1遮断に応答したある特定のがん患者において増加している。PD-L1を遮断することを伴うICB療法は、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))、アベルマブ(フォティブダ(Fotivda)(登録商標))又はデュルバルマブ(イミフィンジ(Imfinzi)(登録商標))を投与することを含む。アテゾリズマブは、FDAにより承認された免疫療法であり、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん、肝細胞癌、三種陰性乳がん、及び膀胱がんを含む尿路上皮がんを治療することにおいて有効であることが示されている。アベルマブは、皮膚がん、例えばメルケル細胞癌及び尿路上皮がんを治療するための、FDAにより承認された薬物である。デュルバルマブは、NSCLCを治療するための、FDAにより承認された免疫療法である。
【0088】
PD-1阻害剤を使用するICB療法は、ペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))及びセミプリマブ(リブタヨ(登録商標))を含む。ペンブロリズマブは、米国において2014年に医学的使用について承認され、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、胃がん、子宮頸がん及びある特定の種類の乳がんを治療するために使用されている。ニボルマブは、2014年以来医学的使用について承認されており、黒色腫、肺がん、悪性胸膜中皮腫、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸がん、食道扁平上皮癌、肝がん、胃がん、及び食道又は食道胃接合部がんを治療するために使用されている。セミプリマブは、扁平上皮がんの治療に使用されている。2018年に、セミプリマブは、治療的手術又は治療的放射線照射についての候補者ではない、転移性有棘細胞癌(CSCC)又は局所進行性CSCCを有する患者の治療について承認された。
【0089】
チェックポイント阻害剤の別の例は、CTLA-4阻害剤である。CTLA-4は、免疫系を抑制することを補助するある種の「オフスイッチ」として作用する、T細胞上のチェックポイントタンパク質である。CTLA-4は、免疫系をダウンレギュレートする。CTLA-4阻害剤を使用するICB療法は、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))を含む。イピリムマブは、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の阻害性機構をオフにし、がん細胞に対する身体の免疫応答を高める。イピリムマブは、2011年以来、皮膚がんの治療について承認されている。それは、NSCLC、SCLC、膀胱がん及び転移性ホルモン抵抗性前立腺がんを含む他のがんの治療についての臨床試験中である。
【0090】
実施形態において、がん若しくは悪性腫瘍と診断された、且つ/又はがん治療について応答性であると特定された対象は、本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物により治療され得る。
【0091】
実施形態において、対象は、ICB療法等の免疫療法、標的化療法、化学療法、放射線療法、手術及び他のがん治療を含む、がん治療の形態として投与され得るすべての治療により治療され得る。実施形態において、対象は、本明細書において説明される治療の組合せにより治療され得る。実施形態において、対象は、がん治療の形態として投与され得る治療、及び本明細書において説明される抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物により治療され得る。
【0092】
また、本開示は、がんを診断し、悪性腫瘍を検出し、且つ/又はがん治療の形態として投与され得る治療について対象を特定するためのキットを説明する。実施形態において、キットは、対象からの生体試料においてTREML1の発現を検出するための、本明細書において説明される抗体を含む1つ又はそれ以上の薬剤を含有する。また、キットは、がん若しくは悪性腫瘍の増殖を検出し、且つ/又は対象が、がん治療の形態として投与され得る様々な治療についての候補者であるかどうかを決定するための、対象からの生体試料を収集するための容器又はデバイス、及び薬剤と生体試料とを混合するための容器又はデバイスを含み得る。更に、キットは、比較のための基準標準又は対照を含み得る。更に、キットは、1つ又はそれ以上の薬剤を使用するための使用説明書を含み得る。
【0093】
加えて、本開示は、がんと診断された対象を治療するためのキットを説明する。実施形態において、キットは、本明細書において説明される1つ若しくはそれ以上の抗体を含む1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される医薬組成物を含む。実施形態において、キットは、がん治療の形態として投与され得るすべての治療、及び1つ又はそれ以上の薬剤、例えば本明細書において説明される1つ若しくはそれ以上の抗体、又は本明細書において説明される医薬組成物を含む。キットは、がん治療の形態としてのチェックポイント阻害剤又は抗体を投与することを含む、ICB等の免疫療法を含む1つ又はそれ以上のがん治療を行うための手段を含み得る。また、キットは、本明細書において説明される1つ若しくはそれ以上の薬剤、及び/又は1つ若しくはそれ以上のがん治療を、対象へ投与するための手段、例えばデバイス又は装置を含み得る。更に、キットは、対象を治療するために、本明細書において説明される1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は本明細書において説明される1つ若しくはそれ以上の薬剤を、1つ又はそれ以上のがん治療と組み合わせて使用するための使用説明書を含み得る。
【0094】
以下の例示的な実施形態及び実施例は、本明細書において提供される例示的な方法を例示する。これらの例示的な実施形態及び実施例は本開示の範囲の限定とは意図されず、それらは本開示の範囲の限定として解釈すべきでない。方法は、本明細書において特に説明される方法とは異なって実施してもよいことが明らかである。本明細書における教示に照らして、多くの改変及び変形が可能であり、それゆえ、それらは本開示の範囲内にある。
【0095】
例示的な実施形態
以下は、例示的な実施形態である:
1. CD11bへの、骨髄系細胞によって発現される誘発性受容体(TREM)様転写産物-1(TREML1)の結合を阻害する薬剤であって、場合により、TREML1が可溶型で存在する、薬剤。
2. CD11bが、免疫細胞上で発現され、場合により、CD11bが、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞及び顆粒球を含む1つ又はそれ以上の白血球上で構成的に発現され、場合により、CD11bが、T細胞及びB細胞のサブセット上で条件付きにて発現される、実施形態1に記載の薬剤。
3. 抗TREML1抗体又はその抗原結合性断片を含む、実施形態1又は2に記載の薬剤。
4. i) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYX1X2YYADTVTG(配列番号29)を含むCDR-H2;及びEDYGX3NGAX4DY(配列番号30)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQX5IVHSNGNTYLE(配列番号31)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
又は
ii) 重鎖可変(VH)領域であって、X6YVX7H(配列番号49)を含むCDR-H1;YX8NPYX9X10X11X12KX13X14X15X16X17X18X19(配列番号50)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDX20(配列番号51)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、X21SX22QSLX23HSNGNTYX24H(配列番号52)を含むCDR-L1;X25VSNRFS(配列番号53)を含むCDR-L2;及びSQSX26X27X28WT(配列番号54)を含むCDR-L3を含む、VL領域
を含み;
X1~X28が、任意のアミノ酸を含み;場合により、
X1が、非荷電又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X2が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X3が、非荷電又は負荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X4が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X5が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X6が、負荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X7が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X8が、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X9が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X10が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X11が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸、又は正荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X12が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X13が、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X14が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X15が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X16が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X17が、脂肪族又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X18が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X19が、負荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X20が、芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X21が、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X22が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X23が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X24が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X25が、正荷電又は非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X26が、非荷電側鎖を有する極性アミノ酸を含み;X27が、正荷電側鎖を有する極性アミノ酸、又は芳香族側鎖を有する非極性アミノ酸を含み;X28が、脂肪族側鎖を有する非極性アミノ酸を含む、
抗TREML抗体又はその抗原結合性断片を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の薬剤。
5. X1が、S又はRであり;X2が、V又はIであり;X3が、D又はNであり;X4が、I又はMであり;X5が、N又はSであり;X6が、D、E又はNであり;X7が、I又はMであり;X8が、I、M又はFであり;X9が、T又はNであり;X10が、D又はGであり;X11が、G又はHであり;X12が、P、S又はAであり;X13が、Y又はFであり;X14が、S又はNであり;X15が、D又はEであり;X16が、K又はTであり;X17が、I、A又はFであり;X18が、K、R又はTであり;X19が、D又はGであり;X20が、F又はYであり;X21が、R又はKであり;X22が、S又はTであり;X23が、L、V又はIであり;X24が、L又はVであり;X25が、K又はQであり;X26が、T又はSであり;X27が、H又はYであり;X28が、I又はVである、実施形態1から4のいずれか1つに記載の薬剤。
6. (i) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYSVYYADTVTG(配列番号21)を含むCDR-H2;及びEDYGDNGAIDY(配列番号22)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQNIVHSNGNTYLE(配列番号23)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(ii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYSVYYADTVTG(配列番号21)を含むCDR-H2;及びEDYGDNGAIDY(配列番号22)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号26)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(iii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYGMA(配列番号20)を含む重鎖相補性決定領域1(CDR-H1);FISNLAYRIYYADTVTG(配列番号27)を含むCDR-H2;及びEDYGNNGAMDY(配列番号28)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号26)を含む軽鎖相補性領域1(CDR-L1);KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びFQGSHVPPT(配列番号25)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(iv) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YMNPYTDGPKYSDKIKD(配列番号33)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLLHSNGNTYLH(配列番号35)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTHIWT(配列番号36)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(v) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YINPYTGGPKYSETARG(配列番号37)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSTQSLVHSNGNTYVH(配列番号38)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTYVWT(配列番号56)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(vi) 重鎖可変(VH)領域であって、EYVIH(配列番号39)を含むCDR-H1;YFNPYTGGSKFNEKFKD(配列番号40)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDY(配列番号55)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号41)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSSHIWT(配列番号42)を含むCDR-L3を含む、VL領域;
(vii) 重鎖可変(VH)領域であって、NYVMH(配列番号43)を含むCDR-H1;YFNPYNGHAKYSEKFTG(配列番号44)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDY(配列番号55)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、RSSQSLIHSNGNTYLH(配列番号45)を含むCDR-L1;QVSKRFS(配列番号46)を含むCDR-L2;及びSQSTHIWT(配列番号36)を含むCDR-L3を含む、VL領域;又は
(viii) 重鎖可変(VH)領域であって、DYVIH(配列番号32)を含むCDR-H1;YINPYTGGPKYSETAKG(配列番号47)を含むCDR-H2;及びDFNYYVGAMDF(配列番号34)を含むCDR-H3を含む、VH領域;並びに
軽鎖可変(VL)領域であって、KSTQSLVHSNGNTYVH(配列番号48)を含むCDR-L1;KVSNRFS(配列番号24)を含むCDR-L2;及びSQSTYVWT(配列番号56)を含むCDR-L3を含む、VL領域
を含む抗TREML抗体又はその抗原結合性断片を含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載の薬剤。
7. (i) 配列番号4を含むVH領域、及び配列番号5を含むVL領域;
(ii) 配列番号6を含むVH領域、及び配列番号7を含むVL領域;
(iii) 配列番号8を含むVH領域、及び配列番号9を含むVL領域;
(iv) 配列番号10を含むVH領域、及び配列番号11を含むVL領域;
(v) 配列番号12を含むVH領域、及び配列番号13を含むVL領域;
(vi) 配列番号14を含むVH領域、及び配列番号15を含むVL領域;
(vii) 配列番号16を含むVH領域、及び配列番号17を含むVL領域;
(viii) 配列番号18を含むVH領域、及び配列番号19を含むVL領域
を含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載の薬剤。
8. それを必要とする対象における免疫抑制と関連付けられるか又は免疫抑制によって特徴付けられる疾患又は状態の1つ又はそれ以上の症状を治療又は緩和する方法であって、対象へ実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を投与する工程、及び対象において免疫抑制を逆転させる工程を含み、これによって疾患又は状態の1つ又はそれ以上の症状を治療又は緩和する、方法。
9. 免疫抑制を逆転させる工程が、IL-10等のサイトカインの放出を阻害すること若しくはTNF-α等のサイトカインの放出を誘導することを含む炎症反応を阻害することを含むか、又は免疫抑制が炎症を阻害することを含む、実施形態8に記載の方法。
10. 炎症反応が、単球媒介性、マクロファージ媒介性及び/又は好中球媒介性炎症反応であり得る、実施形態8又は9に記載の方法。
11. 疾患又は状態が、悪性腫瘍の増殖、腫瘍血管新生、がん、慢性感染、敗血症、免疫疲弊、又は加齢における免疫老化を含む、実施形態8から10のいずれか1つに記載の方法。
12. がんが、黒色腫、肺がん、肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、胃癌、子宮頸がん、食道癌、膀胱がん、腎がん、脳がん、肝がん、結腸がん、骨がん、膵がん、皮膚がん、皮膚性又は眼内悪性黒色腫、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫及び消化管がんを含み、場合によりがんが、結腸がんを含む、実施形態8から11のいずれか1つに記載の方法。
13. 慢性又は急性白血病が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病である、実施形態12に記載の方法。
14. 悪性腫瘍又はがん細胞の増殖を阻害する、実施形態8から12のいずれか1つに記載の方法。
15. CD11bへのTREML1の結合を阻害する方法であって、実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を、CD11bを発現しTREML1の存在下にある細胞へ投与する工程を含み、これによって、CD11bへのTREML1の結合を阻害する、方法。
16. 細胞において免疫抑制を逆転させる方法であって、実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を、TREML1が結合したCD11bのI-ドメインによって、免疫抑制性になるように誘導された細胞へ、投与する工程を含む、方法。
17. 細胞上のPD-L1発現を阻害する方法であって、実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を、TREML1が結合したCD11bのI-ドメインによって、PD-L1を発現するように誘導された細胞へ、投与する工程を含む、方法。
18. 細胞が、免疫細胞を含む、実施形態15から17のいずれか1つに記載の方法。
19. 細胞が、自然免疫応答系の細胞を含む、実施形態15から18のいずれか1つに記載の方法。
20. 細胞が、マクロファージ、好中球、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球又はそれらの組合せを含む、実施形態15から19のいずれか1つに記載の方法。
21. 細胞が、対象において存在し、場合により、対象が哺乳動物である、実施形態15から20のいずれか1つに記載の方法。
22. 細胞の免疫抑制を逆転させ、且つ/又は免疫抑制と関連付けられる疾患若しくは状態を治療する、実施形態15から21のいずれか1つに記載の方法。
23. 対象においてがんを診断するか又は悪性腫瘍の存在を検出する方法であって、対象から生体試料を取得する工程、及び試料中のTREML1を検出する工程を含み、これによって、対象においてがん又は腫瘍を検出する、方法。
24. 対象が、がん治療の形態として施され得るすべての治療に応答性であり得るかどうかを決定する方法であって、対象から生体試料を取得する工程、及び試料中のTREML1の存在を検出する工程を含み、これによって、対象が、がん治療の形態として施され得るすべての治療に応答性であり得るかを決定する、方法。
25. 試料中のTREML1の発現を定量する工程を更に含み、場合により、対象におけるTREML1の発現を、対照のTREML1の発現と比較する工程を更に含む、実施形態23又は24に記載の方法。実施形態において、対照は、健康な対象である。実施形態において、対照は、健康な対象におけるTREML1の発現と関連付けられる基準値である。
26. 生体試料が、体液、細胞又は組織を含み、場合により、体液が、血液、尿、唾液、胆汁、骨髄穿刺液、母乳、脳脊髄液(CSF)、血漿、血清、便、膣液又は滑液を含み;場合により、細胞が、血液細胞、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、免疫細胞(例えばT細胞、B細胞、NK細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞等)、幹細胞、末梢血細胞又は幹細胞を含み;場合により、組織が、生検又は切除された腫瘍からの組織である、実施形態23から25のいずれか1つに記載の方法。
27. TREML1の存在を検出する工程が、免疫学的アッセイ、組織学的アッセイ、細胞学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ビーズベースの検出アッセイ、DNA若しくはRNA発現アッセイ、又はアプタマーベースのアッセイを行うことを含む、実施形態23から26のいずれか1つに記載の方法。
28. TREML1の存在を検出する工程が、TREML1の存在を検出するために実施形態1から7のいずれか1つに記載の薬剤を使用することを含む、実施形態23から27のいずれか1つに記載の方法。
29. がん又は悪性腫瘍が、実施形態12又は13に規定のがんを含む、実施形態23から28のいずれか1つに記載の方法。
30. 対象をICB療法により治療する工程を更に含み、場合により、ICB療法が、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブを対象へ投与することを含む、実施形態23から29のいずれか1つに記載の方法。
31. 実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を投与することによって対象を治療する工程を更に含む、実施形態23から30のいずれか1つに記載の方法。
32. 実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ又はそれ以上の薬剤を含む組成物であって、場合により、担体を更に含む、組成物。
33. 医薬組成物であり、場合により、担体が、薬学的に許容される担体である、実施形態32に記載の組成物。
34. がんを診断し、悪性腫瘍の存在を検出し、且つ/又は対象が、がん治療の形態として施され得るすべての治療に応答性であり得るかどうかを決定するための、実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は実施形態33に記載の医薬組成物を含むキット。
35. 対象を治療するための、実施形態1から7のいずれか1つに記載の1つ若しくはそれ以上の薬剤、又は実施形態33に記載の医薬組成物を含むキットであって、場合により、薬剤を対象へ投与するためのデバイスを含むキット。
36. がん治療の形態として施され得る1つ又はそれ以上の治療を更に含み、場合により、がん治療の形態として施され得る1つ又はそれ以上の治療を対象へ施すための手段を含む、実施形態35に記載のキット。
【実施例
【0096】
材料及び方法
細胞培養及び安定なトランスフェクション
HEK293細胞(BCRC社)におけるヒト又はマウスTREML1の安定なトランスフェクションを、jetPRIME(PolyPlus社)トランスフェクションプロトコールを使用して行った。簡潔に説明すると、HEK293細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco社)並びにペニシリン及びストレプトマイシン50IU/mL(Corning社)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Corning社)中において37℃にて培養した。細胞を、6ウェルプレート(Coster社)上に細胞8x105個/ウェルにおいて播種した。翌日、jetPRIME試薬と、ネオマイシン耐性遺伝子を有するpcDNA 3.1/ヒトTREML1(GenScript社)又はpcDNA 3.1/マウスTREML1(GenScript社)発現プラスミド2μgとの混合物を細胞に添加し、細胞を24時間培養した。その後、選択抗生物質であるG418(InVivoGen社)を1mg/mlの濃度において添加し、抗生物質を含有する培養培地の半分を2~3日毎に交換した。3週間後、ヒト又はマウスTREML1発現細胞を、Cell Sorter(SH800Z、SONY社)を使用して収集して、ヒト又はマウスTREML1高発現細胞を採取し、24ウェルプレート(Coster社)及び6ウェルプレート上に、単一細胞/ウェル及び細胞5000個/ウェルにおいて播種した。細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清、ペニシリン及びストレプトマイシン50IU/mL、並びにG418 1mg/mlを含むDMEM培地中において37℃にて維持した。細胞を富化した後、ヒト又はマウスTREML1発現を、抗ヒトTREML1/TLT-1(MAB2394、R&D systems社)又は抗マウスTREML1/TLT-1(MAB24241、R&D systems社)抗体によりフローサイトメトリーによって解析した。最後に、HEK293/ヒトTREML1及びHEK293/マウスTREML1の安定なクローンを、採取した。
【0097】
フローサイトメトリー
HEK293/ヒトTREML1又はHEK293/マウスTREML1をカウントし、染色緩衝液(FBS1%及びアジ化ナトリウム0.1%を含有するPBS)により2回洗浄した。細胞を、染色緩衝液中の細胞1x105個/mlの濃度に調節し、抗TREML1抗体又はアイソタイプ対照(MOPC21)10μg/mlにより処理した。その後、細胞を37℃において30分間インキュベートした。染色緩衝液により洗浄した後、細胞を、APCをコンジュゲートした抗マウスIgG抗体により15分間処理した。染色緩衝液による洗浄後、細胞をフローサイトメトリーによって解析した。
【0098】
固相結合アッセイ
TREML1/CD11bのI-ドメイン相互作用を調査するために、組換えCD11bのI-ドメイン(配列番号1)5μg/ml及びBSA(陰性対照)タンパク質を、96ウェルプレート上に別々に塗り、4℃において一晩インキュベートした。非特異的結合を回避するために、プレートに、ブロッキング緩衝液(PBS中の2%BSA)を室温において2時間(hrs)添加した。連続希釈したTREML1 ECDを添加し、室温において2時間インキュベートした。抗TREML1抗体(MAB2394、R&D systems社)1μg/mlを1時間添加した。次に、HRP標識化した二次抗体である抗ラットIgG-HRPをプレートに添加し、室温において30分間インキュベートした。プレートを、各段階の間に0.05% tween 20 PBS緩衝液(PBST)により3回洗浄した。最後に、TMB基質を添加し、10~15分間インキュベートして、HRP標識化抗体を検出した。その後、反応を停止させるために、1N HCLの停止溶液を添加した。OD450/540nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダーによって測定した。TREML1への抗TREML1抗体の最大飽和結合半量を測定するために、ヒトTREML1 ECD(配列番号2)又はマウスTREML1 ECD(配列番号3)5μg/mlを、96ウェルプレート上に塗り、4℃において一晩インキュベートした。非特異的結合を回避するために、プレートに、ブロッキング緩衝液(PBS中の2%BSA)を室温において2時間添加した。連続希釈した抗TREML1抗体を添加し、室温において2時間インキュベートした。次に、HRP標識化した二次抗体である抗マウスIgG-HRPをプレートに添加し、室温において30分間インキュベートした。プレートを、各段階の間に0.05% tween 20 PBS緩衝液(PBST)により3回洗浄した。最後に、TMB基質を添加し、10~15分間インキュベートして、HRP標識化抗体を検出した。その後、反応を停止させるために、1N HCLの停止溶液を添加した。OD450/540nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダーによって測定した。
【0099】
ヒト白血球(WBC)及びヒト単球の調製
健康なボランティアドナーから静脈穿刺及びACD採血管への採血によって、末梢血試料fを収集した。ACK溶液を含有する塩化アンモニウム中における低張赤血球溶解を使用して、末梢血からヒト白血球(WBC)を分離した。Ficoll-Paque密度勾配遠心分離を通して白血球から分離されたヒト末梢血単核球から、ヒト単球を単離した。陽性CD14単離キット(Miltenyi Biotec社)により選択を行った。
【0100】
TREML1免疫染色プロトコール及びスコア付け
ヒト腫瘍組織アレイを、抗TREML1抗体(26A6)により1mg/mlの濃度(1:100、室温において60分間)を使用して、マウス/ウサギDouble Stain Kit(DAB Brown/HRP Greenを伴う)(BioTnA社、TADS03)検出キット技術によるマウスプローブDAB Brown(室温において30分間)及び二重染色CD68マクロファージマーカー(緑色により標識化されている)により染色した。ジアミノベンジジン(DAB)染色によりシグナル可視化を行い、切片をヘマトキシリンにより対比染色した。TREML1発現を、全領域の陽性百分率によってスコア付けし、すべての陽性染色強度における百分率の合計を計算することによって、H-スコアは、TREML1強度を示した。
【0101】
in vivoでのTREML1検出
抗TREML1抗体(26A6)又はアイソタイプ対照(MOPC21)抗体を、VivoTag 680XL(PerkinElmer社)により製造業者の使用説明書に従って標識化した。C57BL/6マウスに、MC38結腸がん細胞を皮下注射した。腫瘍体積が300mm3を超えた後、VivoTag 680XLをコンジュゲートした抗TREML1抗体(26A6)及びアイソタイプ対照(MOPC21)10μgを皮下注射し、IVISスペクトラム及びFMT器具を使用して様々な時点において画像化した。示される画像は、抗体コンジュゲート注射24時間後の画像である。
【0102】
がん治療のためのプロトコール
C57BL/6マウスに、MC38細胞3x105個を皮下接種した。腫瘍接種の11日後に治療を開始した。腫瘍保有マウスを、抗TREML1抗体10mg/kgにより1週間に2回腹腔内処置した。マウスをモニターし、触知できる腫瘍の形成について週に2回スコア付けし、腫瘍が2,000mm3の所定のサイズを超えた場合は殺した。腫瘍体積をノギスにより測定し、以下の式:A×B×B×0.52(Aは最大直径であり、Bは最小直径である)により計算した。
【0103】
(実施例1)
CD11bのI-ドメインは、TREML1の受容体であり、TREML1とCD11bとの相互作用を遮断することは、TREML1により誘導される免疫抑制を逆転させ得る。
可溶性TREML1は、自然免疫細胞に直接的に結合し、細胞が免疫抑制表現型を発現するように誘発すると以前に報告された(WO2016197975A1)。単球膜上のTREML1の潜在的な免疫抑制性受容体についてスクリーニングするために、Ni-カラムに結合した、組換えヒスチジンタグ付きTREML1 ECDを使用した。その後、単球溶解物を、TREML1 ECD結合カラムとインキュベートした。TREML1 ECD結合複合体を溶離し、その後、SDS-PAGEにより分離した。TREML1 ECD結合複合体のトリプシン消化後、消化されたペプチドを、LC-MS/MSにおいて決定した。MS/MSスペクトルの解釈は、MASCOTデータベースによって行った。MASCOT可能性解析によると、一部の免疫抑制性受容体(例えばCD11b、CD18、CD33(Siglec-3)、CD329(Siglec-9)及びHSP90b)は、他のタンパク質候補物よりも高いスコアを有する。CD11bを、代表的な免疫抑制性受容体として更なる研究のために選択した。
【0104】
可溶性TREML1がCD11b+免疫細胞に結合するかどうかを調べるために、抗CD11b抗体(ICRF44)の存在下におけるヒト単球及び好中球へのTREML1 ECDの結合を、フローサイトメトリーによって決定した。図1において示される通り、CD11b特異的抗体は、細胞表面上にCD11b+を発現する単球及び好中球への結合についてTREML1 ECDと競合し得る。固相結合研究は、TREML1 ECDがCD11bのI-ドメインに濃度依存的様式において結合することを示した(図2)。抗CD11b抗体(ICRF44)による処理は、HLA-DR発現のレベルを正常化した。それは、TREML1 ECD処理した単球上のPD-L1発現のレベルを低減した(図3)。これらの結果は、CD11bが、TREML1により誘導される免疫抑制に参加することを示した。CD11bとTREML1との相互作用を遮断することは、TREML1により誘導される免疫応答を逆転させ得る。
【0105】
(実施例2)
抗TREML1抗体は、TREML1 ECDに特異的に結合し、CD11b+免疫細胞へのTREML1 ECD結合を遮断する。
ヒト及びマウスTREML1 ECDに結合する能力のあるいくつかの抗TREML1抗体を生成した。図4において示される通り、抗TREML1抗体は、固相結合アッセイにおいてヒト及びマウスTREML1 ECDに濃度依存的に結合する。ヒトTREML1 ECD及びマウスTREML1 ECDへの抗TREML1抗体の最大飽和結合半量を、Table 4(表13)に示す。これらのTREML1抗体のVH及びVL領域を、Table 3(表5~表12)に列挙する。これらのTREML1結合抗体(17E6、25C6及び26A6)は、すべてのCDR領域にわたり、高レベルのパラトープ残基保存を呈する(Table 1(表1及び表2))。対照的に、(18D8、23F10、27D3、28A9及び29F4)のCDR-H1、CDR-H3、CDR-L1及びCDR-L2は、CDR-H2及びCDR-L3よりも大きなレベルの生殖細胞系保存を保持するように見える(Table 2(表3及び表4))。これらの抗TREML1抗体が細胞表面上のTREML1に結合し得るかどうかを調べるために、内因性TREML1を発現しないHEK293細胞に、pcDNA3.1/ヒトTREML1及びpcDNA3.1/マウスTREML1プラスミドを、リポソームトランスフェクションを使用してトランスフェクトした。G418選択後、細胞表面上にヒト及びマウスTREML1を安定に発現するいくつかの単一細胞クローンを得た。アイソタイプ対照抗体(MOPC21)と比較して、抗TREML1抗体(26A6、23F10、28A9及び29F4)は、HEK293/ヒトTREML1上のヒトTREML1に結合することができる(図5、上部)。加えて、クローン26A6、23F10及び29F4は、HEK293/マウスTREML1上のマウスTREML1と更に交差反応し得る(図5、下部)。抗TREML1抗体がCD11b+免疫細胞へのTREML1 ECD結合を遮断し得るかどうかを調べるために、抗TREML1抗体の存在下におけるヒト単球及び好中球へのTREML1 ECDの結合を、フローサイトメトリーによって決定した。図6において示される通り、TREML1特異的抗体を使用することは、細胞表面上にCD11b+を発現する好中球及び単球へのTREML1 ECD結合を低減し得る。
【0106】
【表13】
【0107】
(実施例3)
抗TREML1抗体による処理は、TREML1 ECDにより誘導されるPD-L1発現を有意に低減し得る。
抗TREML1抗体がTREML1 ECD媒介細胞抑制を逆転させ得るかどうかを調べるために、ヒトWBCを、ヒトTREML1 ECD、1、5、10μg/mlの存在下において、抗TREML1抗体(26A6)10μg/mlあり/なしで24時間処理し、PD-L1発現をフローサイトメトリーによって解析した。図7において示される通り、ヒト単球におけるPD-L1発現は、TREML1 ECD、1、5及び10μg/mlによる24時間のインキュベーション後に増加し、抗TREML1抗体の存在下において低減した。
【0108】
(実施例4)
TREML1は、腫瘍微小環境において富化されている。
血小板由来TREML1が腫瘍において富化されているかどうかを調べるために、抗TREML1抗体(26A6)を使用して、ヒトがん生検におけるTREML1蓄積を検出した。ヒト組織におけるTREML1発現を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織において免疫染色することによって調べ、ヒト腫瘍の大半におけるTREML1発現の強度は、正常組織における強度より有意に高かった(図8A)。TREML-1結合マクロファージの百分率を定量し、腫瘍組織におけるTREML1/CD68二重陽性細胞の百分率を、腫瘍に隣接する正常組織(NAT)における百分率で割ることによって、変化の倍数を計算した。鼻、胸部、子宮、前立腺、卵巣、腎臓、皮膚、食道及び胃(図8Aにおいてアステリスクにより示される)を含む一部の正常組織において、TREML1/CD68二重陽性細胞の0の百分率が見出されたので、0の代わりに1の百分率を、変化の倍数を計算するために使用した。
【0109】
可溶性TREML1は、活性化された血小板によって分泌され、免疫細胞に結合し得るので、TREML1(茶色)は、マクロファージ(緑色)と共局在し、また腫瘍間質領域周辺に分布することが見出され得る(図8B)。図8Bにおいて、TREML1(茶色)は、マクロファージ(緑色)と共局在し、腫瘍間質領域周辺に分布することが見出され得る。ヒト胃がん組織の代表的な写真は、TREML1及びマクロファージ共局在の部位(矢印によって示される)を示し、結腸がんの代表的な写真は、腫瘍におけるTREML1(アステリスクによって示される)を示す。
【0110】
TREML1がマウスの腫瘍微小環境において存在したかどうかを調べるために、マウスに、MC38結腸がんを皮下注射した。抗TREML1抗体(26A6)をコンジュゲートしたVivoTag 680XL(PerkinElmer社)を使用して、in vivoでのTREML1蓄積を検出した。IVIS画像を使用して、TREML1は、MC38結腸がんにおいて高度に富化していることが観察された(図9)。まとめると、これらのデータは、TREML1が、腫瘍微小環境において高度に増加していることを示唆する。TREML1は、予後マーカーとして、及びがん治療の潜在的標的として働き得る。
【0111】
(実施例5)
抗TREML1抗体による処置は、腫瘍増殖を有意に低減し得る。
抗腫瘍免疫に対するTREML1遮断の効果を調べるために、抗TREML1抗体を、MC38結腸がんモデルにおいて単一療法として試験した。0日目に、マウスにMC38結腸がん細胞を皮下注射した。腫瘍体積が約30~100mm3になったとき、マウスに、対照IgG(MOPC21;10mg/kg)、抗TREML1(26A6;10mg/kg)又は抗TREML1(23F10;10mg/kg)抗体のいずれかを腹腔内注射した(ip)。注射を3~4日毎に反復した。各群について腫瘍体積をモニターすることによって、効率を決定した。図10において示される通り、抗TREML1抗体によるTREML1遮断は、MC38腫瘍の皮下増殖を強力に遅延させた。
【0112】
(実施例6)
がん治療についてのがん患者の特定
がんと診断された患者から生検を得る。抗TREML1抗体を使用して生検試料について免疫組織化学染色を行う。染色の強度及び百分率を定量し、対応する対照(正常又は健康)組織における染色と比較する。対照と比較して高レベルのTREML1を有する患者は、がん治療の候補者として特定される。
【0113】
上記に説明した主題は、例示のためにのみ提供され、限定として解釈すべきでない。本明細書において説明される主題について、例示及び説明した実施形態及び適用の例に従わずに、以下の特許請求の範囲に示される本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変化を行うことができる。
【0114】
本明細書において引用されるすべての出版物、特許及び特許出願は、各個々の出版物、特許又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個々に示されているのと同様に、それら全体として参照により本明細書に組み込まれる。上記は、様々な実施形態について説明しているが、当業者は、その趣旨から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略及び変化を行うことができることを理解する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】