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特表2024-546048アルミニウムから成る電気的な線路を銅から成る管に結合する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-17
(54)【発明の名称】アルミニウムから成る電気的な線路を銅から成る管に結合する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20241210BHJP
   B23K 33/00 20060101ALI20241210BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B23K1/00 330D
B23K1/00 K
B23K33/00 310B
H01R43/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528575
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022081208
(87)【国際公開番号】W WO2023083838
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129706.0
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518322573
【氏名又は名称】シュトルンク コネクト オートメイテッド ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Strunk Connect automated solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Siegtalstrasse 20, 57548 Kirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ シュトルンク
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ シリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ウヴェ カイル
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051LA01
5E051LB03
(57)【要約】
アルミニウム製の電気的な線路を銅製の接続部に結合する方法は、線路と接続部との間で長期的に安定した電気的な結合部を、できるだけ排除された品質変動で迅速かつ廉価に製造することができるように、改善されることが望ましい。このために、線路を接続部に第1のステップにおいて硬ろう付けし、第2のステップにおいてアルミニウム-リッツ線束の軟化によって硬ろう層との拡散結合および/または溶融結合を行うことが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金から成るリッツ線(4)として形成されている電気的な線路を、銅または銅合金から成る電気接続部(1)に結合する方法であって、前記電気接続部(1)が、接続要素(3)の他に、前記電気的な線路の端部を収容するための管(2)を有している、方法において、以下の方法ステップ、すなわち、
a)前記管(2)の内面に硬ろう材(5)をコーティングするか、または内面に硬ろう材(5)がコーティングされた管(2)を使用するステップと、
b)前記管(2)内への前記電気的な線路の前記端部の挿入後に、前記管(2)の接続要素側の端部の領域において前記管(2)を塑性変形加工するステップであって、押込み加工によって前記リッツ線(4)の非導電性の層を破壊し、個別ワイヤを遊びなしに押し合わせるように、前記リッツ線(4)の前記個別ワイヤを変形加工する、ステップと、
c)電極(7,7’)を介して、前記管(2)および前記リッツ線(4)の幾何学形状および材料特性に依存して、アルミニウム-リッツ線束のジュール発熱を引き起こすために、少なくとも予め設定可能な押圧力および少なくとも予め設定可能な電流を少なくとも予め設定可能な時間の間加えるステップであって、前記ジュール発熱によって前記硬ろう材(5)が溶融し、前記管(2)の前記内面と前記アルミニウム-リッツ線束の、前記内面に接触している外側領域との間で硬ろう材結合部が生じる、ステップと、
d)同様に前記管(2)および前記リッツ線(4)の幾何学形状および材料特性に依存して、少なくとも予め設定可能な別の押圧力および少なくとも予め設定可能な別の電流を少なくとも予め設定可能な別の時間の間加えることによって、前記アルミニウム-リッツ線束の拡散および/または前記アルミニウム-リッツ線束の少なくとも部分的な溶融が行われるように、前記アルミニウム-リッツ線束を軟化させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法特徴b)およびc)を同時に、または直接互いに連続して実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
e)前記管(2)内への前記電気的な線路の前記端部の挿入後に、前記管(2)がシールカフス(10)の形態で前記電気的な線路に当接するように、前記管(2)をその前記線路側の端部の領域において塑性変形加工する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
f)前記接続要素側の変形加工部と前記線路端部側の変形加工部との間に溶融物貯蔵部(12)を成形する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記方法ステップe)およびf)を、前記方法ステップb)と同時に、または遅くとも前記方法ステップd)の開始前までに実施する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記方法ステップb)および/または前記方法ステップc)および/または前記方法ステップd)中に、プレス工具もしくは電極(7,7’)を加熱するか、または前記プレス工具もしくは電極(7,7’)が、電流通流時に加熱される材料から成っている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記プレス工具対の工具および/または前記電極対の電極(7,7’)を同時に運動させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法ステップc)において、前記方法ステップb)における前記変形加工工具の作用面に対して小さな作用面を備える電極(7,7’)を使用し、前記管(2)の非導電性の側方の制限部(15)が、前記変形加工領域および通電領域において所望の形状を与える、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成るリッツ線として形成されている電気的な線路を、銅または銅合金から成る電気接続部に結合する方法であって、電気接続部が、接続要素の他に、電気的な線路の端部を収容するための管を有している、方法に関する。管は、片側または両側で開いた管であってよい。
【背景技術】
【0002】
電流のための導体として銅または銅合金を使用することは、以前から知られている。自動車、特にEモビリティでは、この銅または銅合金から成る電気的な導体を、重量上の理由から、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る導体に置き換えることが求められている。欧州特許出願公開第2362491号明細書または欧州特許出願公開第2621022号明細書から既に、別の材料から成る接続要素にまず圧着され、次いで溶接されるアルミニウム線路を使用することが知られている。
【0003】
このような結合部は、例えばアルミニウム線路と銅接続要素との使用時に、結合部の機械的に安定的な期間および導電率に関して大きな問題がある。このような結合部内に湿分が侵入した場合、接触腐食が発生し、この接触腐食は、接触抵抗を増大させ、結合部の機械的な耐久性を著しく低下させる。
【0004】
しかし、電気的なアルミニウム線路と、異種の材料から成る接続要素との結合時の主要な問題は、アルミニウムが酸素に対して強い親和性を有し、したがって、極めて短時間で、電気絶縁性の密で極めて硬い、かつ極めて安定的な酸化物層で覆われることにある。コランダムとも呼ばれるこの酸化物層の融点は約2050℃であり、つまり約660℃であるアルミニウムの融点または約1080℃である銅の融点よりも著しく高い。
【0005】
リッツ線のアルミニウムワイヤの、通常は円形である形状に基づいて、非導電性のコーティングの有無にかかわらず、ワイヤ間に空所が生じる。この空所内に湿分が侵入し、アルミニウムワイヤの局所的な腐食をもたらしてしまう。これは、機械的な弱化および導電抵抗の増大につながる。しかし、コーティングの有無にかかわらず、成形ワイヤにおいても空所は存在している。
【0006】
さらに、接続すべきアルミニウム材料と銅材料との両方の溶融時に、脆く比較的に高抵抗の金属間相が生じてしまうので、この領域では、後の電流通流時に大きな熱生成が生じてしまう。この高まった温度によって、金属間層は経時的にさらに厚くなる。結合部の脆性により、機械的な負荷が小さい場合でも既に、容易に結合部の破壊が生じてしまう。欧州特許出願公開第2621022号明細書によれば、手間のかかるCUPALスリーブを使用することによって金属間相の発生を回避することが試みられている。
【0007】
別の問題は、両結合パートナの溶融温度が極めて乖離していることにある。したがって、アルミニウムが既に溶融物に移行している一方で、銅のような異種の材料がまだ溶融温度に達していない恐れが生じる。これによって、要求される強度に達しない不十分な溶接箇所が生じてしまう。この種の不十分な溶接箇所は、通常、外部から識別することができないので、このように不十分に接続要素に結合された電気的な導体が使用される恐れが生じる。
【0008】
また、酸化物層が破壊される、第1の段階で行われる圧着と、要素同士が互いに溶接される、場所的に分離された第2の段階との間での、従来技術による時間のずれも、新たな酸化が生じることにつながり、これによって、結合部品質における追跡不能な強い変動が生じてしまう。さらに、結合部の品質は、アルミニウムリッツ線の品質に大きく左右される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底を成す課題は、上述した欠点を回避しながら、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る電気的な導体と、銅または銅合金から成る電気接続部との間で、できる限り排除された品質変動を有する、長期的に安定した電気的な結合部を形成し、さらにこの結合部を迅速かつ廉価に形成することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、以下の方法ステップが提案される:すなわち、
a)管の内面に硬ろう材をコーティングするか、または内面に硬ろう材がコーティングされた管を使用するステップと、
b)管内への電気的な線路の端部の挿入後に、管の接続要素側の端部の領域において管を塑性変形加工するステップであって、押込み加工によってリッツ線の非導電性の酸化層を破壊し、複数の個別ワイヤを遊びなしに押し合わせるように、リッツ線の個別ワイヤを変形加工する、ステップと、
c)電極を介して、管およびリッツ線の幾何学形状および材料特性に依存して、アルミニウム-リッツ線束のジュール発熱を引き起こすために、予め設定可能な押圧力および予め設定可能な電流を予め設定可能な時間の間加えるステップであって、ジュール発熱によって硬ろう材が溶融し、管の内面と、アルミニウム-リッツ線束の、この内面に接触している外側領域との間に硬ろう材結合部が生じる、ステップと、
d)同様に管およびリッツ線の幾何学形状および材料特性に依存して、予め設定可能な別の押圧力および予め設定可能な別の電流を予め設定可能な別の時間の間加えることによって、アルミニウム-リッツ線束の拡散および/またはアルミニウム-リッツ線束の少なくとも部分的な溶融が行われるように、アルミニウム-リッツ線束を軟化するステップと、
が提案される。
【0011】
ここで硬ろう材とは、アルミニウムまたはアルミニウム合金と一緒に、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶融温度を下回る共晶溶融温度を有する金属であると理解される。好適には、アルミニウムと銅との間の金属間相の形成を阻止するために、拡散バリアとして作用する硬ろう材が選択される。それほど高価値でない耐久性かつ安定的な結合部のためには、軟ろう材によるコーティングも使用することができる。塑性変形加工中の管の押込み加工によって、リッツ線の個別のワイヤ上の酸化物層が破壊されるだけでなく、酸素または気体が侵入または残留し得る隙間がもはや個別のワイヤ間に残らないように、複数のワイヤが互いに密に押し合わせられるので、押込み加工されたこの領域での再酸化はもはや行われ得ない。リッツ線ワイヤ同士の緊密な接合、ひいてはこれに伴うリッツ線ワイヤの接触面の増大により、ワイヤの全体的な接触抵抗が減じられる。次いで、この結合の二段階性により、つまり外側のアルミニウムワイヤまたはアルミニウムワイヤの合金をコーティングに硬ろう付けによって取り付けることにより、リッツ線の表面に新たな酸化物層が発生してしまうことが阻止され、特に銅管とリッツ線の外側の表面との間の接触抵抗は最小限になる。これに続く、リッツ線の芯のための拡散過程および/または部分的な溶融過程は、リッツ線の個別のワイヤ間の接触抵抗を最小限にする。この場合、変形加工過程のために、例えば硬ろう付け過程のための電極の作用面に対して異なる大きさの作用面を備えた別の工具を使用することができる。これらの2つの段階のそれぞれのために、通常、互いに異なるプロセスパラメータの少なくとも1つのセットが必要である。これらの段階は、異なる圧力、または力/電流/時間設定を有する複数のインターバルまたは区分に分割することもできる。これにより、エネルギ供給を、例えば線路の激しい溶融を阻止するために、より細かく調量可能となる。
【0012】
しかし、方法特徴b)およびc)を同時に、または直接互いに連続して実施することが模範的でもある。
【0013】
この場合、電極は、塑性変形加工部を形成するためにも、硬ろう付け過程を実施するためにも使用されるが、これにより変形加工過程と硬ろう付け過程との間でより短い時間が達成され、その結果、リッツ線表面の再酸化を十分に阻止することができる。
【0014】
電極による、直接に連続しているかまたは同時的な塑性変形加工時に、電極は、付加的に管の変形およびリッツ線ワイヤのコンパクティングを引き起こす。必要とされる力は、電極を介して流れる一定のまたは変調された予熱電流によって大幅に減じることができる。コンパクティング段階、硬ろう付け段階、拡散段階もしくは溶融段階および冷却段階は、異なる押圧力および/またはエネルギ入力によって規定されていてよい。しかし、このコンパクティング段階は、硬ろう付け段階および/または拡散段階に部分的に組み込まれていてもよい。後者は、ろう付け段階および/または拡散段階中に別の連続的なコンパクティングが行われる過程を記載している。硬ろう付け温度に対してだけではなく、軟ろう付け温度への斜面状の昇温中の力作用期間は、コンパクティングのためにも使用することができる。管およびリッツ線から成る複合体内の空間的に異なる温度分布により、硬ろう付け過程、拡散過程または溶融過程が時間的に重畳してよい。
【0015】
拡散過程も、押圧力、温度および時間を介して制御される。この場合、結合ゾーンにおける温度は、結合パートナの最も低い溶融温度と最も高い再結晶温度との間でなければならない。
【0016】
管がシールカフスの形態で電気的な線路に当接するように、管の線路側の端部の領域を塑性変形加工すると有利であることが判った。
【0017】
これにより、リッツ線が、後続のまたは同時の硬ろう付け過程のために、さらに確実に管内に保持されることになる。接続部側の塑性変形加工部と線路側の塑性変形加工部との間のリッツ線の移行領域は、過延伸によるリッツ線ワイヤの損傷を回避するために、できるだけ僅かな負荷しか加えられないことが望ましい。さらに、線路側のシールカフスの接触抵抗が、接続部側の塑性変形加工部に対して著しく高抵抗でなければならず、これにより硬ろう付け、拡散または溶融のために必要な電流のための分路が回避される。
【0018】
リッツ線の個別のワイヤが、単に拡散によって互いに固定的に結合されるのではなく、リッツ線のコアが部分的または完全に溶融される場合、接続要素側の変形加工部と線路端部側の変形加工部との間に溶融物貯蔵部を成形すると好都合である。
【0019】
これにより、溶融物がいざというときに溶融物貯蔵部内に到達するが、外方に向かって流出することはできないことが達成される。溶融物貯蔵部のサイズは変形加工過程前に決定することができる。なぜならば、溶融物は完全にリッツ線のコンパクティングされていない領域間にも達することができ、そこから外方に向かって流出する必要がないからである。
【0020】
塑性変形加工は、この場合も、硬ろう付け過程前にまたは硬ろう付け過程と同時に実施されてよい。
【0021】
有利には、変形加工過程中および/または硬ろう付け過程中および/または拡散過程または溶融過程中に、プレス工具または電極を加熱することができ、あるいは、プレス工具または電極が、電流通流時に加熱される材料から成っている。
【0022】
基本的には、硬ろう付け、拡散または溶融のために必要な熱は、結合すべき要素を通って流れる電流によって、ジュール自己発熱に基づいて生成されることが望ましい。圧縮に用いられる変形加工過程では、加熱された工具または電極のために、結合されるべき材料がより柔軟になるため、押込み加工のために費やす力がより小さくなる。押圧力の減少によって、管ならびにリッツ線ワイヤの穏やかな変形、延伸および撓みが生じ、電極への圧力負荷がより小さくなる。硬ろう付け時には、電極が加熱される限り、硬ろう付けのために必要なより少ない熱が電極を介して流れるだろう。電極が例えばタングステン材料から製造されている場合、電極は電流通流時に発熱し、この結果、ろう付け過程および/または拡散過程および/または溶融過程のための付加的な熱源が生じる。
【0023】
プレス工具対の工具および/または電極対の電極を同時に運動させると模範的である。
【0024】
これにより、リッツ線のコンパクティング領域の隣のリッツ線の上外側または下外側のワイヤの延伸が減少する。
【0025】
硬ろう付け時に、圧縮ステップにおける変形加工工具の作用面に対して小さな作用面を備える電極を使用し、管の非導電性の側方の制限部が、変形加工領域および通電領域において実質的に長方形または正方形の形状を与えると有利である。
【0026】
変形加工工具のプレス面の、電極に対して異なる大きさにより、管において側方の締結ゾーンが生じ、この締結ゾーンは、電極の、塑性変形加工された管との側方での接触を回避する働きをする。変形加工性の圧縮および硬ろう付け中の発熱により、管は軟化され得る。しかし、上面および下面ならびに側方で全面的に接触する制限部は、例えば六角形輪郭の場合に生じ得るような拡張を阻止する。圧縮された結合部の解除は、周囲の挟込みにより阻止される。つまり、付加的な側方での挟込みが、管またはコンパクティングされたリッツ線の拡張を阻止する。側方の制限構成要素のコーティングは、好適には導電性でも熱伝導性でもない。ここでは、できるだけ熱導出も電気的な分路も生じないことが望ましい。好適には、セラミックによりコーティングされた鋼が使用されるか、または直接にセラミックが使用される。管の輪郭は、塑性変形加工時に形成される。後続の硬ろう付け、拡散または溶融時に、側方の制限部は、圧着された結合部が緩むことを防止する。
【0027】
本発明を以下では、本発明を図示した図面に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】リッツ線を硬ろう付けし、次いで拡散させるための、予備変形加工を伴う本発明による例を示す図である。
図2】予備変形加工部、シールカフスおよび溶融物貯蔵部を備えた別の例を示す図である。
図3】予備変形加工部、シールカフスおよび小さな溶融物貯蔵部を備えた第3の例を示す図である。
図4】電極により実施される塑性変形加工を伴う本発明による例を示す図である。
図5】付加的なシールカフスを備えた、図4に示した本発明による例を示す図である。
図6】電極の構造のための例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、断面図で電気接続部1を示しており、この電気接続部1は、銅から成る管2と、接続要素3とから成っており、管2内には、アルミニウムから成るリッツ線4の端部が押し込まれている。管2の内側は硬ろう材5によってコーティングされている。
【0030】
管2は、既に接続部側で塑性変形加工6を受けている。この場合、図示されていない変形加工工具の有効な面積は電極7の面積よりも大きく、これによって管2には、中心に載置された電極7の隣で締結ゾーン8が形成されており、この締結ゾーン8は、硬ろう付け電流および/または拡散電流もしくは溶融電流が、電流ライン9によって示唆されるように主にリッツ線4を介して流れることを保証する。
【0031】
接続部側の塑性変形加工部6の下側では、リッツ線4が強くコンパクティングされていることが示唆されており、これによって、一方ではリッツ線4の個別のワイヤの酸化物層が破壊されており、リッツ線4の個別のワイヤは互いに遊びなしに押し合わせられている。電極への通電により、まず、管2と、硬ろう材5と、リッツ線4との間のより高抵抗の接触抵抗の領域においてジュール自己発熱が生じ、この自己発熱は、硬ろう材の溶融によってリッツ線4の外側の層と管2との結合を引き起こし、これにより、この領域における接触抵抗が減少する。通常は硬ろう付けのために異なるプロセスパラメータでさらに通電された場合、リッツ線の個別のワイヤ間でより大きな接触抵抗を提供する領域においてジュール熱が生じ、この結果、個別のワイヤが、拡散過程または溶融過程によって互いに結合され、これにより個別のワイヤ間の接触抵抗がさらに減少する。ここで、電極の加熱または自己発熱によって熱導入を支援することができる。
【0032】
図2は、接続部側の塑性変形加工部6の形成中に、線路側でシールカフス10として別の変形加工部が形成されていることを示している。シールカフス10は、接続部側の塑性変形加工部6よりも小さく管2内に押し込まれている。しかし、シールカフス10によって、溶融ゾーン11において生じる溶融物は、溶融物貯蔵部12にまでしか到達することができず、外方に到達することはできない。
【0033】
図3でも、接続部側の塑性変形加工部6の他に、シールカフス10を成形するための線路側の変形加工部が設置されている。しかし、この例では、溶融物貯蔵部12は極めて小さいか、または全く存在していない。場合により生じる溶融物は、確かに延伸ゾーン13の領域でリッツ線4の個別のワイヤ間に到達し得るが、シールカフス10により、同様に流出することはできない。
【0034】
図4は、電気接続部1を示している。この電気接続部1は電極7によって変形加工されており、次いで第1の段階で硬ろう付け過程が、かつ第2の段階で拡散過程または溶接過程が行われている。電極7は接続部側の塑性変形加工部6の側壁にも部分的に結合しているので、図4では溶融された硬ろう材14の比較的大きな領域を確認することができる。
【0035】
図5は、図4に対する変化形を示している。ここでは、付加的にシールカフス10が押込み加工されており、図5も同様に、シールカフスと接続部側の塑性変形加工部6との間の溶融物貯蔵部12を示している。
【0036】
図6は、電極7,7’を示している。特に図6は、これら2つの電極7が相互に接近するように送られ得ることを示している。これにより、リッツ線4の外側ワイヤは塑性変形加工過程においてほぼ等しく延伸される。これは、単に1つの電極7が運動させられる電極対7,7’に比べて、リッツ線をあまり強く延伸しない。
【0037】
さらに、管2は、管2内にあるリッツ線4と一緒に強く押し潰されており、その結果、管2が実質的に長方形の形状をとることを確認することができる。管2が電極7,7’の間で側面から流出することができないようにするために、側方の制限部15が設けられており、この制限部15は付加的に、管2およびリッツ線4が、起こり得る拡張が生じることなしにその塑性変形加工部を維持することで、後続の結合ステップにおいて気体がリッツ線4に到達し得ないようにする。
【0038】
したがって、重要なのは、コンパクティング過程後に、管が第1のステップにおいてリッツ線の表面にあるワイヤにろう付けされ、第2のステップにおいて、リッツ線の内側の領域が、拡散および/または溶融によって互いに固定的に結合されることである。
【0039】
Al-Cu溶融物では、高抵抗で脆いAl-Cu金属間相(IMP)が成長することが知られている。これは既知の実地問題である。高抵抗は、圧着部における部分的な過熱をもたらし、脆性は、外部から力が作用した場合または温度変動が生じた場合に、結合箇所に亀裂を生じさせ、この亀裂は強く変動する接触抵抗および部分的な過熱を伴う。この亀裂において、これらの電気化学的に互いに極めて異なる材料間に接触腐食も形成され得る。酸化防止剤、大抵は錫層を、アルミニウムワイヤおよび/または銅管に被着させ、これらをろう付けする提案も生じる。この場合、CuSn金属間相が生じ、CuSn金属間相も同様に高抵抗で脆性である。これによっても、実地故障が発生してしまう。
【0040】
こうした実地リスクを回避するために、付加的にアルミニウムとの共晶を形成する拡散バリアが提案される。共晶の温度は、2つの結合パートナAlおよびCuの溶融温度よりも低くなければならない。拡散バリアの特性は、危機的なAl-Cu金属間相の発生を阻止する。このために適したコーティング材料は、銀材料の他に、特にニッケル材料およびその合金である。錫ろう材または亜鉛ろう材の場合のように、温度による強度損失は、銀ろう材またはニッケルろう材の場合には生じない。ニッケルは、拡散バリアとして、ワイヤボンディング(カーケンダルボイドの回避)時、軟ろう付け(エプシロン-エータ層の回避)時および点溶接(錫ウィスカの回避)時に成功裏に使用される。したがって、第1のステップ中に、銅に被着されたコーティングと、押圧されて酸化皮膜が除去された、まだ溶融していないAlワイヤとの間で、硬ろう材結合部が生じる。コーティングも同様に酸化され得るが、前置された変形加工プロセスによって、その酸化皮膜も破壊される。
【0041】
ニッケルとアルミニウムとの間の硬ろう材結合部の形成後に、Al複合体は第2のステップにおいて、Alワイヤが電極ゾーン間で局所的に制限された溶融または拡散結合部に移行するまで、引き続き発熱する。これは、アルミニウム-リッツ線ワイヤの抵抗溶接ではなく、完全にまたは互いに接触する接触面においてのみ生じる部分的な溶融または拡散である。このために必要な昇温プロセスは、硬ろう材結合が溶融前に行われるように、閉ループ制御/開ループ制御されなければならない。このシーケンスは、結合プロセスを、通常は互いに異なる調節パラメータを有する少なくとも2つの異なる区分に分割することによって達成される。第1の区分では、予熱段階(段階的かつ/または斜面状の電流上昇)で開始し、硬ろう付けのために必要な十分に調量されたエネルギが導入される。第2の区分では、Alワイヤの溶融または拡散に必要とされるエネルギが供給される。ここでは、通常、別の調節パラメータが必要である。調整されなければならない重要なパラメータは、電流、時間および押圧力である。成形工具の付加的な発熱を伴う塑性変形加工が使用される場合、対応して使用されるエネルギは、硬ろう付け-拡散-溶融過程の全エネルギに費やされ得る。機械的な寸法、電極サイズ、電極材料、変形加工ゾーンの形成等に応じて、異なる調節を伴う別の区分が必要となり得る。
【0042】
硬ろう材は成形部分として挿入されてよいが、好適には電着式のまたは物理的な(例えば吹付け、スパッタリング)方法によって管および場合によってはリッツ線上に被着される。コーティングにより、基材の付加的な酸化保護が得られる。
【0043】
結合中の電流の流れは、上面および下面に接触している対向する電極を介して行われる。電極の導電率は、結合過程のために電極が付加的に熱を発生させるように選択することができる。この目的は、必要な発熱を結合すべき材料においてジュール熱によって生成することであるが、付加的な電極熱は加熱過程を加速し、電極を介した熱導出を減じることができる。したがって、結合のために必要な熱は、主に電極の自己発熱を介して供給されるのではなく、銅管-コーティング-アルミニウムリッツ線の結合システムにおける電流の流れによって生じる。ここでも、ニッケルが導電性の低い材料として有利である。なぜならば、ジュール熱は、アルミニウム部分に対して付加的に直接に接触ゾーンで発生するからである。
【0044】
電極材料による僅かな付加発熱は、電極を介した熱の流出を低減するので、有益であり得る。
【0045】
電極電流の作用には、接触面および接触側の輪郭によっても影響を与えることができる。ここで、電極は、面平行であるか、部分的または完全に凸状または凹状に構成されていてよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電気接続部
2 管
3 接続要素
4 リッツ線
5 硬ろう材
6 接続部側の塑性変形加工部
7 電極
8 締結ゾーン
9 電流ライン
10 シールカフス
11 溶融ゾーン
12 溶融物貯蔵部
13 延伸ゾーン
14 溶融された硬ろう材
15 側方の制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金から成るリッツ線(4)として形成されている電気的な線路を、銅または銅合金から成る電気接続部(1)に結合する方法であって、前記電気接続部(1)が、接続要素(3)の他に、前記電気的な線路の端部を収容するための管(2)を有している、方法において、以下の方法ステップ、すなわち、
a)前記管(2)の内面に硬ろう材(5)をコーティングするか、または内面に硬ろう材(5)がコーティングされた管(2)を使用するステップと、
b)前記管(2)内への前記電気的な線路の前記端部の挿入後に、前記管(2)の接続要素側の端部の領域において前記管(2)を塑性変形加工するステップであって、押込み加工によって前記リッツ線(4)の非導電性の層を破壊し、個別ワイヤを遊びなしに押し合わせるように、前記リッツ線(4)の前記個別ワイヤを変形加工する、ステップと、
c)電極(7,7’)を介して、前記管(2)および前記リッツ線(4)の幾何学形状および材料特性に依存して、アルミニウム-リッツ線束のジュール発熱を引き起こすために、少なくとも予め設定可能な押圧力および少なくとも予め設定可能な電流を少なくとも予め設定可能な時間の間加えるステップであって、前記ジュール発熱によって前記硬ろう材(5)が溶融し、前記管(2)の前記内面と前記アルミニウム-リッツ線束の、前記内面に接触している外側領域との間で硬ろう材結合部が生じる、ステップと、
d)同様に前記管(2)および前記リッツ線(4)の幾何学形状および材料特性に依存して、少なくとも予め設定可能な別の押圧力および少なくとも予め設定可能な別の電流を少なくとも予め設定可能な別の時間の間加えることによって、前記アルミニウム-リッツ線束の拡散および/または前記アルミニウム-リッツ線束の少なくとも部分的な溶融が行われるように、前記アルミニウム-リッツ線束を軟化させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法特徴b)およびc)を同時に、または直接互いに連続して実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
e)前記管(2)内への前記電気的な線路の前記端部の挿入後に、前記管(2)がシールカフス(10)の形態で前記電気的な線路に当接するように、前記管(2)をその前記線路側の端部の領域において塑性変形加工する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
f)前記接続要素側の変形加工部と前記線路端部側の変形加工部との間に溶融物貯蔵部(12)を成形する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記方法ステップe)およびf)を、前記方法ステップb)と同時に、または遅くとも前記方法ステップd)の開始前までに実施する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記方法ステップb)および/または前記方法ステップc)および/または前記方法ステップd)中に、プレス工具もしくは電極(7,7’)を加熱するか、または前記プレス工具もしくは電極(7,7’)が、電流通流時に加熱される材料から成っている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記プレス工具対の工具および/または前記電極対の電極(7,7’)を同時に運動させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記方法ステップc)において、前記方法ステップb)における前記変形加工工具の作用面に対して小さな作用面を備える電極(7,7’)を使用し、前記管(2)の非導電性の側方の制限部(15)が、前記変形加工領域および通電領域において所望の形状を与える、請求項1記載の方法。
【国際調査報告】